(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-02
(45)【発行日】2022-05-13
(54)【発明の名称】水栓装置及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
E03C 1/044 20060101AFI20220506BHJP
E03C 1/042 20060101ALI20220506BHJP
F16K 27/00 20060101ALI20220506BHJP
F16K 11/02 20060101ALI20220506BHJP
【FI】
E03C1/044
E03C1/042 B
F16K27/00 D
F16K11/02 B
(21)【出願番号】P 2018131594
(22)【出願日】2018-07-11
【審査請求日】2021-05-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100107537
【氏名又は名称】磯貝 克臣
(72)【発明者】
【氏名】鶴田 幸人
(72)【発明者】
【氏名】村田 八千穂
(72)【発明者】
【氏名】井上 貴文
(72)【発明者】
【氏名】金城 政信
(72)【発明者】
【氏名】畠山 真
【審査官】神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-152869(JP,A)
【文献】特開2015-096753(JP,A)
【文献】特開2017-137663(JP,A)
【文献】特表2003-530529(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0112287(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/044
E03C 1/042
F16K 27/00
F16K 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
給湯源から供給される湯と給水源から供給される水とを混合した湯水を吐止水可能にする水栓装置であって、
上記水栓装置が設置される設置面に固定される台座部材と、
上記台座部材に取り付けられる概ね筒状の支柱部を備えた外殻部材と、
この外殻部材の支柱部内に挿入され、その一端側が上記台座部材に固定される金属製のケーシング部材と、
このケーシング部材の内部に設けられ、上記台座部材から下流側にそれぞれ延びて湯及び水をそれぞれ供給する一次側流路を形成する湯供給流路及び水供給流路と、
上記ケーシング部材の他端側の内部に設けられたシングルレバーカートリッジであって、上記湯供給流路及び上記水供給流路から供給される湯水の混合比と流量を調整する開閉弁と、この開閉弁の開閉操作を可能にする単一のレバーと、を備えた上記シングルレバーカートリッジと、
上記ケーシング部材の内部に設けられ、上記湯供給流路及び上記水供給流路のそれぞれの下流端と上記シングルレバーカートリッジとを接続する接続部材と、
上記シングルレバーカートリッジを上記接続部材に固定する固定部材と、
を有し、
上記ケーシング部材は、上記外殻部材の支柱部内に挿入可能な寸法で金属製の板材又は管材によって形成されており、
上記ケーシング部材は、他側ケーシング部材と、当該他側ケーシング部材の一側に設けられた一側ケーシング部材と、上記他側ケーシング部材と上記一側ケーシング部材との間に介在するケーシング棚部と、を有しており、
上記接続部材は、上記ケーシング棚部の他側の弁座部材と、上記ケーシング棚部の一側の一次側アダプタ部材と、を有しており、
上記弁座部材及び上記一次側アダプタ部材は、上記ケーシング棚部を間に挟みつつ、上記湯供給流路及び上記水供給流路のそれぞれの下流端と上記シングルレバーカートリッジとを互いに水密に接続するようになっており、
上記ケーシング棚部の他側面と、上記弁座部材と、の間を面シールするために他側弾性面シール部材が設けられており、
上記ケーシング棚部の一側面と、上記一次側アダプタ部材と、の間を面シールするために一側弾性面シール部材が設けられている
ことを特徴とする水栓装置。
【請求項2】
上記他側ケーシング部材と上記ケーシング棚部とは、一体的に構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の水栓装置。
【請求項3】
上記ケーシング棚部は、絞り加工によって形成されている
ことを特徴とする請求項2に記載の水栓装置。
【請求項4】
上記他側弾性面シール部材と上記一側弾性面シール部材とは、互いに同一の部材である
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の水栓装置。
【請求項5】
上記他側弾性面シール部材と上記一側弾性面シール部材とは、平面視で互いに同一の向きに配置されている
ことを特徴とする請求項4に記載の水栓装置。
【請求項6】
上記弁座部材と上記ケーシング棚部とは、互いに対して位置決めされており、
上記一次側アダプタ部材と上記ケーシング棚部とも、互いに対して位置決めされている
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の水栓装置。
【請求項7】
上記弁座部材には、上記他側弾性面シール部材を保持するための保持溝が設けられており、
上記一次側アダプタ部材には、上記一側弾性面シール部材を保持するための保持溝が設けられている
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の水栓装置。
【請求項8】
上記他側弾性面シール部材は、湯用開口と水用開口とを有しており、
上記一側弾性面シール部材も、湯用開口と水用開口とを有している
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の水栓装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水栓装置及びその製造方法に係り、特に、給湯源から供給される湯と給水源から供給される水とを混合した湯水を吐止水可能にする水栓装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、給湯源から供給される湯と給水源から供給される水とを混合した湯水を吐止水可能にする水栓装置として、例えば、特許文献1に記載されているように、水栓装置の種類に応じた形状に形成された外殻部材を備えているものが知られている。
また、この従来の水栓装置の外殻部材の内部には、別体のケーシング部材が挿入されている。このケーシング部材には、水栓機能ユニットが内蔵されており、この水栓機能ユニットは、給水源及び給水源のそれぞれから一次側流路により供給された湯と水とを混合し、この混合した湯水を吐止水する機能を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の水栓装置においては、外殻部材の内部に挿入されているケーシング部材が樹脂材料で形成されているため、水栓装置の種類に応じた外殻部材の寸法や形状に応じて、射出成形用の型を用意する必要があり、製造コストがかかるという問題がある。
また、従来の水栓装置の樹脂製のケーシング部材については、金属製のものに比べて強度が低く、経年変化等による耐久性も低いという問題もある。これにより、長期的な安全性を確保するためには、点検や部品交換等のメンテナンスにおいてもコストがかかるという問題がある。
【0005】
一方、従来の水栓装置のケーシング部材について、仮に、樹脂材料とは異なる銅合金等の金属を用いて鋳造した場合には、銅合金から鉛成分が溶出することを規制する対策が必要となるという問題や、ケーシング部材のサイズ自体も大型化するという問題、或いは、銅価格の相場変動に影響を受け易いという問題もある。
また、常時湯水に晒される水栓装置の事情を考慮し、ケーシング部材として耐食性が高いステンレス材料を採用した場合には、ステンレス材料が高い加工精度で加工することが難しいという問題もある。
したがって、脱銅合金や脱鋳物を実現し、銅合金以外の素材を活用し、水栓装置の種類に応じて様々な仕様に対しても、いかに製造コストを抑制しつつ、設計の自由度を高めていくかが、近年要請された課題となっている。
【0006】
そこで、本発明は、上述した従来技術の問題や近年要請された課題を解決するためになされたものであり、設計の自由度を向上させることができると共に、製造コストを抑制することができる水栓装置及びその製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明は、給湯源から供給される湯と給水源から供給される水とを混合した湯水を吐止水可能にする水栓装置であって、上記水栓装置が設置される設置面に固定される台座部材と、上記台座部材に取り付けられる概ね筒状の支柱部を備えた外殻部材と、この外殻部材の支柱部内に挿入され、その一端側が上記台座部材に固定される金属製のケーシング部材と、このケーシング部材の内部に設けられ、上記台座部材から下流側にそれぞれ延びて湯及び水をそれぞれ供給する一次側流路を形成する湯供給流路及び水供給流路と、上記ケーシング部材の他端側の内部に設けられたシングルレバーカートリッジであって、上記湯供給流路及び上記水供給流路から供給される湯水の混合比と流量を調整する開閉弁と、この開閉弁の開閉操作を可能にする単一のレバーと、を備えた上記シングルレバーカートリッジと、上記ケーシング部材の内部に設けられ、上記湯供給流路及び上記水供給流路のそれぞれの下流端と上記シングルレバーカートリッジとを接続する接続部材と、上記シングルレバーカートリッジを上記接続部材に固定する固定部材と、を有し、上記ケーシング部材は、上記外殻部材の支柱部内に挿入可能な寸法で金属製の板材又は管材によって形成されており、上記ケーシング部材は、他側ケーシング部材と、当該他側ケーシング部材の一側に設けられた一側ケーシング部材と、上記他側ケーシング部材と上記一側ケーシング部材との間に介在するケーシング棚部と、を有しており、上記接続部材は、上記ケーシング棚部の他側の弁座部材と、上記ケーシング棚部の一側の一次側アダプタ部材と、を有しており、上記弁座部材及び上記一次側アダプタ部材は、上記ケーシング棚部を間に挟みつつ、上記湯供給流路及び上記水供給流路のそれぞれの下流端と上記シングルレバーカートリッジとを互いに水密に接続するようになっており、上記ケーシング棚部の他側面と、上記弁座部材と、の間を面シールするために他側弾性面シール部材が設けられており、上記ケーシング棚部の一側面と、上記一次側アダプタ部材と、の間を面シールするために一側弾性面シール部材が設けられていることを特徴とする水栓装置である。
【0008】
このように構成された本発明においては、水栓装置を組み立てる際、水栓装置の種類に応じた形状に形成された外殻部材の概ね筒状の支柱部内に対して、概ね少なくとも半筒状の金属製のケーシング部材が挿入される。その際、予め金属製のケーシング部材により、水栓装置の種類に応じた形状の外殻部材に応じて、その支柱部内の軸方向のスペースや距離寸法を定めることができると共に、支持部内に挿入されている内部構造の強度を高めることができる。
さらに、金属製のケーシング部材については、水栓装置の種類に応じた形状の外殻部材の支柱部内に挿入可能に金属製の板材又は管材によって概ね少なくとも半筒状に形成することができる。これにより、ケーシング部材が樹脂材料で射出成形された場合や金属材料で鋳造成形された場合に比べて、水栓装置の種類に応じた外殻部材の形状毎にケーシング部材の成形用の型を用意する必要がないため、比較的安価な加工方式でケーシング部材の寸法や形状を容易に調整することができる。
また、ケーシング部材が金属製の板材又は管材によって概ね少なくとも半筒状に形成されるため、ケーシング部材について、必要な強度を保ちながら、薄く形成することもできる。これにより、水栓装置の内部寸法を抑制することができる。
さらに、水栓装置の種類に応じた様々な形状の外殻部材に対しても、ある程度共通化させたケーシング部材を用意しておけば、このケーシング部材の一部に切断加工等を施すだけで、比較的安価な加工方式で所望の軸方向の寸法に調整することができる。これにより、例えば台座部材と接続部材との間のケーシング部材の軸方向の寸法距離についても、ケーシング部材の軸方向の寸法に応じて自由に設定することができる。また、軸方向の寸法を調整した状態のケーシング部材を外殻部材の支柱部内に挿入するだけで、簡単に組み付けることができる。
これらの結果、水栓装置の設計の自由度を向上させることができると共に、製造コストを抑制することができる。
【0009】
そして更に、本発明においては、ケーシング部材は、他側ケーシング部材と、当該他側ケーシング部材の下側に設けられた一側ケーシング部材と、上記他側ケーシング部材と上記一側ケーシング部材との間に介在するケーシング棚部と、を有しており、上記接続部材は、上記ケーシング棚部の他側の弁座部材と、上記ケーシング棚部の一側の一次側アダプタ部材と、を有しており、上記弁座部材及び上記一次側アダプタ部材は、上記ケーシング棚部を間に挟みつつ、上記湯供給流路及び上記水供給流路のそれぞれの下流端と上記シングルレバーカートリッジとを互いに水密に接続するようになっており、上記他側ケーシング棚部の他側面と、上記弁座部材と、の間を面シールするために他側弾性面シール部材が設けられており、上記他側ケーシング棚部の一側面と、上記一次側アダプタ部材と、の間を面シールするために一側弾性面シール部材が設けられている。
すなわち、本発明においては、他側ケーシング部材と一側ケーシング部材との間にケーシング棚部が介在し、接続部材を構成する弁座部材及び一次側アダプタ部材が当該ケーシング棚部を間に挟む形態が採用され、ケーシング棚部の他側面と弁座部材との間が他側弾性面シール部材で面シールされ、ケーシング棚部の一側面と一次側アダプタ部材との間が一側弾性面シール部材で面シールされている。
本発明の構成によれば、ケーシング棚部の他側面に他側弾性面シール部材による反発力が作用すると同時に、ケーシング棚部の一側面に一側弾性面シール部材による反発力が作用する。この両者が相殺しあうことによって、ケーシング棚部の厚みが薄い場合であっても、当該ケーシング棚部の変形が効果的に抑制される。
【0010】
本発明において、上記他側ケーシング部材と上記ケーシング棚部とは、一体的に構成されていることが好ましい。
これによれば、他側ケーシング部材とケーシング棚部とを溶接する必要がないため、溶接箇所が接水することによる腐食発生のリスクを軽減することができる。
【0011】
例えば、上記ケーシング棚部は、絞り加工によって形成され得る。絞り加工を利用すれば、金属材料を用いて有底筒状の形態(おわん状の形態)を比較的容易に形成することができる。
【0012】
また、本発明において、上記他側弾性面シール部材と上記一側弾性面シール部材とは、互いに同一の部材であることが好ましい。
これによれば、部品種類の数を低減できることに加えて、ケーシング棚部の他側面に作用する面シール力とケーシング棚部の一側面に作用する面シール力とのバランスの調整が容易となる。
【0013】
この場合、更に、上記他側弾性面シール部材と上記一側弾性面シール部材とが、平面視で互いに同一の向きに配置されることが好ましい。
これによれば、ケーシング棚部の他側面に作用する面シール力とケーシング棚部の一側面に作用する面シール力とを、互いに均等(対称)に調整することができる。
【0014】
また、本発明において、上記弁座部材と上記ケーシング棚部とは、互いに対して位置決めされており、上記一次側アダプタ部材と上記ケーシング棚部とも、互いに対して位置決めされていることが好ましい。
これによれば、弁座部材及びケーシング棚部に対する他側弾性面シール部材の位置ずれの発生が抑制され、同様に、一次側アダプタ部材及びケーシング棚部に対する一側弾性面シール部材の位置ずれの発生も抑制され得る。
【0015】
また、本発明において、上記弁座部材には、上記他側弾性面シール部材を保持するための保持溝が設けられており、上記一次側アダプタ部材には、上記一側弾性面シール部材を保持するための保持溝が設けられていることが好ましい。
これによれば、弁座部材に対する他側弾性面シール部材の位置ずれの発生が効果的に抑制され、同様に、一次側アダプタ部材に対する一側弾性面シール部材の位置ずれの発生も効果的に抑制され得る。
【0016】
また、本発明において、上記他側弾性面シール部材は、湯用開口と水用開口とを有しており、上記一側弾性面シール部材も、湯用開口と水用開口とを有していることが好ましい。
これによれば、湯の通流路に対する面シールと水の通流路に対する面シールとを共通の弾性面シール部材によって実現できるため、より細径のケーシング部材を実現することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の水栓装置及びその製造方法によれば、設計の自由度を向上させることができると共に、製造コストを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の第1実施形態による水栓装置を斜め前方から見た概略斜視図である。
【
図2】本発明の第1実施形態による水栓装置全体の分解斜視図である。
【
図3】本発明の第1実施形態による水栓装置の中央側面断面図である。
【
図4】本発明の第1実施形態による水栓装置の水栓機能ユニットを分解した斜視図である。
【
図5】本発明の第1実施形態による水栓装置の水栓機能ユニットを斜め後方から見た斜視図である。
【
図6】本発明の第1実施形態による水栓装置の水栓機能ユニットの正面断面図であり、湯側及び水側のそれぞれの一次側流路の縦断面を示す。
【
図7】
図3に示す本発明の第1実施形態による水栓装置の中央側面断面図において、水栓機能ユニットの上方部分を拡大した部分拡大断面図である。
【
図8】本発明の第1実施形態による水栓装置のケーシング部材の分解斜視図である。
【
図10】本発明の第1実施形態による水栓装置の下側ケーシング部材において、穴開け加工により形成された場合の下方ピン係合穴(又は上方ピン係合穴)の部分を概略的に示した図である。
【
図11】本発明の第1実施形態による水栓装置の下側ケーシング部材において、曲げ加工により形成された場合の下方ピン係合穴(又は上方ピン係合穴)の部分を概略的に示した図である。
【
図12】本発明の第2実施形態による水栓装置のケーシング部材の分解斜視図である。
【
図13】
図12のXIII-XIII線に沿った断面図である。
【
図14】弾性面シール部材の一例を下方から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して本発明の第1実施形態による水栓装置について説明する。
まず、
図1は、本発明の第1実施形態による水栓装置を斜め前方から見た概略斜視図である。
図1に示すように、本発明の第1実施形態による水栓装置1は、給湯源(図示せず)から供給される湯と給水源(図示せず)から供給される水とを混合して吐止水する、いわゆる、「シングルレバー式」と呼ばれる水栓装置であり、台所のシンク又は洗面台のカウンター等の設置面F1上に設置されている。
すなわち、このシングルレバー式の水栓装置1においては、いわゆる、「シングルレバー」と呼ばれる単一の操作ハンドル2が手動で回動操作されることにより、流量と温度が調整された湯水がスパウト4の吐水口6から吐止水されるようになっている。
【0020】
例えば、
図1に示すように、本実施形態の水栓装置1において、まず、操作ハンドル2が最下方の止水操作位置に設定されている場合には、スパウト4の吐水口6から吐出される湯水が止水されるようになっている。
また、
図1に示すように、操作ハンドル2が止水操作位置から上方の操作位置に回動操作された場合には、スパウト4の吐水口6から吐出される湯水が吐水状態に設定されるようになっている。
すなわち、操作ハンドル2は、吐水状態において、より上方(
図1に示す矢印「開」の方向)に回動操作される程、湯水の流量が大きく設定され、より下方(
図1に示す矢印「閉」の方向)に回動操作される程、湯水の流量が小さく設定されるようになっている。
【0021】
さらに、
図1に示すように、操作ハンドル2は、水栓装置1の鉛直方向に延びる中心軸線(回転中心軸線A1)を中心に水側(
図1に示す矢印「C」側)に回動操作された場合には、スパウト4の吐水口6から吐出される湯水の温度が低温側に設定されるようになっている。
一方、
図1に示すように、操作ハンドル2が回転中心軸線A1を中心に湯側(
図1に示す矢印「H」側)に回動操作された場合には、スパウト4の吐水口6から吐出される湯水の混合比を湯が大きく設定されるようになっている。
【0022】
つぎに、
図2~
図9により、本発明の第1実施形態による水栓装置の内部構造について具体的に説明する。
図2は、本発明の第1実施形態による水栓装置全体の分解斜視図である。また、
図3は、本発明の第1実施形態による水栓装置の中央側面断面図である。
まず、
図2及び
図3に示すように、本実施形態の水栓装置1は、その種類又は仕様に応じた形状に形成された中空の外殻部材8を備えている。この外殻部材8は、上下方向に概ね筒状に延びる支柱部8a、及び、この支柱部8aの側面から外側に延びるスパウト部8bをそれぞれ備えている。
なお、外殻部材8については、金属材料で形成されていてもよいし、樹脂材料で形成されていてもよい。
【0023】
つぎに、
図2及び
図3に示すように、本実施形態の水栓装置1は、外殻部材8の下方側(上流側)において、湯供給管10、水供給管12、固定金具14(把持金具14a、締結金具14b)、及び、台座部材16をそれぞれ備えている。
図2及び
図3に示すように、台座部材16は、水栓装置1の設置面F1に配置された状態で固定金具14の馬蹄形の把持金具14a及び締結金具14bにより固定されるようになっている。
また、
図2に示すように、台座部材16には、縦方向に貫く通湯穴16a及び通水穴16bがそれぞれ形成されている。通湯穴16aには、給湯器等の給湯源(図示せず)から湯を供給する湯供給管10が下方から接続されている。同様に、通水穴16bには、水道等の給水源(図示せず)から水を供給する水供給管12が下方から接続されている。
さらに、
図2及び
図3に示すように、本実施形態の水栓装置1は、外殻部材8の支柱部8aの内部において、詳細は後述する水栓機能ユニット18を備えている。
【0024】
つぎに、
図4は、本発明の第1実施形態による水栓装置1の水栓機能ユニット18を分解した斜視図である。また、
図5は、本発明の第1実施形態による水栓装置1の水栓機能ユニット18を斜め後方から見た斜視図である。
図4及び
図5に示すように、本実施形態の水栓装置1は、水栓機能ユニット18の外側において、下方から上方に向って、下側下方シール保持部材20、下方シール部材22、上側下方シール保持部材24、下側上方シール保持部材26、上方シール部材28、及び、上側上方シール保持部材30をそれぞれ備えている。
また、
図4及び
図5に示すように、下方シール部材22及び上方シール部材28のそれぞれは、水栓機能ユニット18の外側面と外殻部材8の支柱部8aの内側面との間を水密にシールするものである。
さらに、
図4及び
図5に示すように、下側下方シール保持部材20及び上側下方シール保持部材24のそれぞれは、下方シール部材22を保持するためのものでもあり、一方、下側上方シール保持部材26及び上側上方シール保持部材30のそれぞれは、上方シール部材28を保持するためのものである。
【0025】
さらに、
図2及び
図3に示すように、本実施形態の水栓装置1は、外殻部材8とその上方の操作ハンドル2との上下方向の間において、下方から上方に向って、Cリング32、シール部材34、固定部材36、及び、留め具38(ビス38a、キャップ38b)をそれぞれ備えている。
これらの部材32,34,36,38については、外殻部材8の支柱部8a内に挿入された水栓機能ユニット18について、上方から水密に保持するものである。
【0026】
つぎに、
図6は、本発明の第1実施形態による水栓装置1の水栓機能ユニット18の正面断面図であり、湯側及び水側のそれぞれの一次側流路の縦断面を示す。また、
図7は、
図3に示す本発明の第1実施形態による水栓装置1の中央側面断面図において、水栓機能ユニット18の上方部分を拡大した部分拡大断面図である。
まず、
図3~
図7に示すように、本実施形態の水栓装置1の水栓機能ユニット18は、詳細については後述する金属製のケーシング部材40を備えている。この金属製のケーシング部材40は、外殻部材8の支柱部8a内に挿入された状態で、その一端側(下端側)が台座部材16に対して固定されている。
【0027】
つぎに、
図4及び
図6に示すように、水栓機能ユニット18は、ケーシング部材40の内部において、下方から上方に且つ内側から外側に向って(或いは、上流側から下流側に向って)、軸シール部材42(湯側軸シール部材42a、水側軸シール部材42b)、湯供給管44、水供給管46、軸シール部材48(湯側軸シール部材48a、水側軸シール部材48b)、一次側アダプタ部材50、下側(一側)弾性面シール部材81、上側(他側)弾性面シール部材82、弁座部材52、シングルレバーカートリッジ54(固定弁体54a、可動弁体54b、単一のレバー54c)、及び、カートリッジ押さえ部材56をそれぞれ備えている。
また、
図4及び
図5に示すように、水栓機能ユニット18は、ケーシング部材40の外側面において、台座部材保持用の機械的係合ピン58、及び、一次側アダプタ部材保持用の機械的係合ピン60をそれぞれ備えている。
【0028】
また、
図4及び
図6に示すように、湯供給管44及び水供給管46のそれぞれは、下方の台座部材16の通湯穴16a及び通水穴16bのそれぞれと、上方の一次側アダプタ部材50の通湯穴50a及び通水穴50bのそれぞれとを互いに連通させる一次側通湯路(湯供給流路)及び一次側通水路(水供給流路)を形成している。
また、
図6に示すように、湯供給管44は、下側被接続部44a及び上側被接続部44bをそれぞれ備えている。湯供給管44の下側被接続部44aは、台座部材16の通湯穴16aの上端(下流端)の湯側接続受け部16c内に湯側軸シール部材42aを介して差し込まれて水密に接続され、いわゆる、軸シールされている。一方、湯供給管44の上側被接続部44bは、一次側アダプタ部材50の通湯穴50aの下端(上流端)の湯側接続受け部50c内に湯側軸シール部材48aを介して差し込まれて水密に接続され、いわゆる、軸シールされている。
同様に、
図6に示すように、水供給管46は、下側被接続部46a及び上側被接続部46bをそれぞれ備えている。水供給管46の下側被接続部46aは、台座部材16の通水穴16bの上端(下流端)の水側接続受け部16d内に水側軸シール部材42bを介して差し込まれて水密に接続され、いわゆる、軸シールされている。一方、水供給管46の上側被接続部46bは、一次側アダプタ部材の通水穴50bの下端(上流端)の水側接続受け部50d内に水側軸シール部材48bを介して水密に接続され、いわゆる、軸シールされている。
【0029】
つぎに、
図6に示すように、台座部材16及び一次側アダプタ部材50の各接続受け部16c,16d,50c,50dにおいて、湯供給管44及び水供給管46の各被接続部44a,44b,46a,46bに対するクリアランスd1,d2,d3,d4がそれぞれ設けられている。
これらのクリアランスd1,d2,d3,d4により、湯供給管44の各被接続部44a,44b及び水供給管46の各被接続部46a,46bが、台座部材16の各接続受け部16c,16d及び一次側アダプタ部材50の各接続受け部50c,50dにおける各クリアランスd1~d4の範囲内で水密状態を保ちながら移動することができるようになっている。
【0030】
つぎに、
図4~
図7に示すように、一次側アダプタ部材50の上面には、弁座部材52が水密に接続されており、この弁座部材52の上面には、シングルレバーカートリッジ54が水密に接続されている。これらの一次側アダプタ部材50及び弁座部材52のそれぞれは、ポリフェニレンサルファイド(PPS)等の樹脂材料で概ね円柱状に形成されており、互いに別部材となっている。
また、これらの一次側アダプタ部材50及び弁座部材52は、詳細は後述する上側ケーシング部材74の底部74aを間に挟みつつ、湯供給管44及び水供給管46のそれぞれの下流端とシングルレバーカートリッジ54とを互いに水密に接続する接続部材として機能するようになっている。
【0031】
図4に示すように、本実施形態による水栓装置1の金属製のケーシング部材40は、下方から上方に向って、下側ケーシング部材72、底部(棚部の一例)74aを有する上側ケーシング部材74、及び、上部円環部材76をそれぞれ備えている。
そして、上側ケーシング部材74の底部74aの下面(一側面)と一次側アダプタ部材50との間を面シールするために、下側(一側)弾性面シール部材81が設けられており、上側ケーシング部材74の底部74aの上面(他側面)と弁座部材52との間を面シールするために、上側(他側)弾性面シール部材82が設けられている。
すなわち、本実施形態においては、上側ケーシング部材74と下側ケーシング部材72との間に底部74a(ケーシング棚部)が介在し、接続部材を構成する弁座部材52及び一次側アダプタ部材50が当該底部74aを間に挟む形態が採用され、底部74aの上面と弁座部材52との間が上側弾性面シール部材82で面シールされ、底部74aの下面と一次側アダプタ部材50との間が下側弾性面シール部材81で面シールされている。
本実施形態の構成によれば、底部74aの上面に上側弾性面シール部材82による面シール力が作用すると同時に、底部74aの下面に下側弾性面シール部材81による面シール力が作用するため、底部74aの厚みが薄い場合であっても、当該底部74aの変形が効果的に抑制される。
【0032】
本実施形態においては、後述されるように、底部74aは上側ケーシング部材74の一部として一体的に構成されている。
【0033】
また、本実施形態においては、上側弾性面シール部材82と下側弾性面シール部材81とは、互いに同一の部材(材質、形状及びサイズが同一の部材)であり、平面視で互いに同一の向きに配置されている。
【0034】
また、本実施形態においては、弁座部材52と底部74a(の上面)とは、互いに対して位置決めされるようになっており、一次側アダプタ部材50と底部74a(の下面)とも、互いに対して位置決めされるようになっている。
【0035】
また、
図3に示すように、弁座部材52には、上側弾性面シール部材82を保持するための保持溝52gが設けられており、一次側アダプタ部材50には、下側弾性面シール部材81を保持するための保持溝50gが設けられている。
【0036】
また、本実施形態において、各弾性面シール部材81、82は、例えば
図14に示すように、湯用開口81a(82a)と、水用開口81b(82b)と、それらとバランスを取るためのバランス開口81c(82c)と、を有している。
【0037】
また、
図4~
図7に示すように、シングルレバーカートリッジ54の構造については、周知のシングルレバーカートリッジの構造と同様であるため、詳細な説明は省略するが、代表的には、下方から上方に向って、固定弁体54a、可動弁体54b、及び、レバー54cをそれぞれ備えている。
【0038】
また、
図4~
図7に示すように、固定弁体54aは、シングルレバーカートリッジ54内の底部に固定されている。
つぎに、
図6及び
図7に示すように、可動弁体54bは、固定弁体54aの上面に対して並進及び回転する摺動が可能に配置されている。
さらに、
図6及び
図7に示すように、レバー54cは、その下端が可動弁体54bに連結されており、上端が操作ハンドル2に連結されている単一の軸部材となっている。
なお、
図6に示すように、固定弁体54a及び可動弁体54bのそれぞれには、弁座部材52の通湯穴52a及び通水穴52bのそれぞれと連通する一次側流路である通湯路54d及び通水路54eがそれぞれ形成されている。
また、
図7に示すように、固定弁体54a及び可動弁体54bのそれぞれには、通湯路54d及び通水路54eのそれぞれから供給された湯と水を混合する二次側流路である湯水混合路54fがそれぞれ形成されている。通湯路54d及び通水路54eから湯水混合路54fに供給される湯水の混合比と流量は、可動弁体54bの位置に応じて調整されるようになっている。
また、
図5及び
図7に示すように、シングルレバーカートリッジ54の湯水混合路54fの流出口54gは、詳細は後述するケーシング部材40の上側ケーシング部材74の側面の流出穴74fと連通している。
【0039】
つぎに、
図3及び
図7に示すように、本実施形態の水栓装置1は、シングルレバーカートリッジ54の側方のケーシング部材40の外側と外殻部材8の支柱部8aの内側との間において、二次側流路形成部材62、二次側アダプタ部材64、及び、スペーサ部材66をそれぞれ備えている。
また、
図3及び
図7に示すように、本実施形態の水栓装置1は、外殻部材8のスパウト部8b内において、スパウト流路68aを形成するスパウト側流路形成部材68と、吐水口6を形成する吐水口形成部材70と、をそれぞれ備えている。
【0040】
つぎに、
図8及び
図9を参照して、本実施形態による水栓装置1のケーシング部材40の詳細について、このケーシング部材40の加工方法と共に説明する。
図8は、本発明の第1実施形態による水栓装置1のケーシング部材40の分解斜視図である。また、
図9は、
図8のIX-IX線に沿った断面図である。
図4、
図8及び
図9に示すように、本実施形態による水栓装置1の金属製のケーシング部材40は、下方から上方に向って、下側ケーシング部材72、上側ケーシング部材74、及び、上部円環部材76をそれぞれ備えている。
また、これらの部材72,74,76の金属材料としては、耐食性が比較的高く、耐久性や強度等も比較的高いステンレス材料(例えば、SUS304等)等が用いられている。
しかしながら、本実施形態による水栓装置1の金属製のケーシング部材40に用いられる金属材料については、耐食性が比較的高く、耐久性や強度等も比較的高い材料であれば、ステンレス材料以外の他の金属材料であってもよい。
そして、
図4、
図8及び
図9に示すように、下側ケーシング部材72の上端と上側ケーシング部材74の下端とは、溶接加工等により互いに一体的に接続されていると共に、上側ケーシング部材74の上端と上部円環部材76の下端とは、溶接加工等により互いに一体的に接続されている。
【0041】
ここで、
図8及び
図9に示すように、上側ケーシング部材74と溶接される前の状態の下側ケーシング部材72おいては、外殻部材8の支柱部8a内に挿入可能な寸法で金属製の板材又は管材によってほぼ円筒状に形成されている。
例えば、ほぼ円筒状の金属製の下側ケーシング部材72を成形する際には、金属製の薄板材について、ロール成形等の曲げ加工を行うことにより湾曲状に成形し、最終的には、外殻部材8の支柱部8a内に挿入可能な寸法でほぼ円筒状に形成する。
或いは、予め外殻部材8の支柱部8a内に挿入可能な寸法径の金属製の管材を用意し、この管材について、切断加工又は切削加工を行うことにより、外殻部材8の支柱部8a内に挿入可能な軸方向の長さ寸法に調整する。
すなわち、金属製の下側ケーシング部材72を成形する際には、鋳型等を用いる鋳造加工は採用されていないため、水栓装置1の種類に応じた外殻部材8の形状毎に下側ケーシング部材72の成形用の型を用意する必要がない。
【0042】
つぎに、
図4、
図8及び
図9に示すように、下側ケーシング部材72の側面の下方において、穴開け加工等により径方向に貫く下方ピン係合穴72aが周方向に間隔を置いて複数形成されている。
これにより、
図3、
図4、
図8及び
図9に示すように、台座部材保持用の機械的係合ピン58は、下方ピン係合穴72aに対して外側から挿入されるようになっている。そして、この機械的係合ピン58は、下方ピン係合穴72aに係合した後、その内側端部が台座部材16の側面の係合穴16eに係合するようになっている。
したがって、これらの下側ケーシング部材72の下方ピン係合穴72a、台座部材保持用の機械的係合ピン58、及び、台座部材16の係合穴16eは、下側ケーシング部材72が機械的係合により台座部材16を保持可能にする機械的係合手段として機能するようになっている。
【0043】
同様に、
図4、
図8及び
図9に示すように、下側ケーシング部材72の側面の上方においても、穴開け加工等により径方向に貫く上方ピン係合穴72bが周方向に複数形成されている。
これにより、
図3、
図4、
図8及び
図9に示すように、一次側アダプタ部材保持用の機械的係合ピン60は、上方ピン係合穴72bに対して外側から挿入されるようになっている。そして、この機械的係合ピン60は、上方ピン係合穴72bに係合した後、その内側端部が一次側アダプタ部材50の側面の係合穴50eに係合するようになっている。
したがって、これらの下側ケーシング部材72の上方ピン係合穴72b、一次側アダプタ部材保持用の機械的係合ピン60、及び、一次側アダプタ部材50の係合穴50eは、下側ケーシング部材72が機械的係合により一次側アダプタ部材50を保持可能にする機械的係合手段として機能するようになっている。
なお、本実施形態の水栓装置では、下側ケーシング部材72の側面について穴開け加工を行うことにより、下方ピン係合穴72aや上方ピン係合穴72bを下側ケーシング部材72の機械的係合部とするような形態を採用している。
しかしながら、下側ケーシング部材72の機械的係合部として、下方ピン係合穴72aや上方ピン係合穴72bの代わりに、下側ケーシング部材72について曲げ加工を行うことにより、下側ケーシング部材72の側面に機械的係合を可能にする係合面等を設けた形態を採用してもよい。
【0044】
ここで、
図10は、本発明の第1実施形態による水栓装置1の下側ケーシング部材72において、穴開け加工により形成された場合の下方ピン係合穴72a(又は上方ピン係合穴72b)の部分を概略的に示した図である。
まず、
図10に示すように、下側ケーシング部材72の下方ピン係合穴72a及び上方ピン係合穴72bのそれぞれが穴開け加工により形成された場合、下側ケーシング部材72の下方ピン係合穴72a(又は上方ピン係合穴72b)の内周面上の任意の各点Q1について、それぞれ下側ケーシング部材72の軸方向の中心軸線A1と平行に移動させることにより、下側ケーシング部材72の軸方向の中心軸線A1に対して垂直な任意の仮想平面S0上に投影させる。
このとき、仮想平面S0上には、各点Q1の鉛直方向に位置する各仮想点Q2が存在し、これらの各点Q2の集合をすべて結んだ状態の平面が、いわゆる、投影面S1,S2として、仮想平面S0上に形成される。
すなわち、本実施形態の水栓装置1においては、穴開け加工により形成された下側ケーシング部材72の下方ピン係合穴72a及び上方ピン係合穴72bのそれぞれが、下側ケーシング部材72の軸方向の中心軸線A1に対して垂直な任意の平面S0に投影面S1,S2をそれぞれ形成することが可能である。
また、
図10に示すように、下側ケーシング部材72の下方ピン係合穴72a及び上方ピン係合穴72bのそれぞれに対して上下に位置する側壁については、例えば、穴開け加工時の切削工具(図示せず)等によるせん断力f1等が下側ケーシング部材72の軸方向の中心軸線A1に対して垂直な方向(下側ケーシング部材72の径方向A2)に作用するため、互いにA2方向にずれる傾向にある。
さらに、
図10に示すように、下側ケーシング部材72の下方ピン係合穴72a及び上方ピン係合穴72bのそれぞれの上下の側壁が互いにA2方向にずれている状態では、各投影面S1,S2における下側ケーシング部材72の径方向A2の幅W1は、下側ケーシング部材72の側壁の厚みW2よりも大きくなっている(W1>W2)。
したがって、
図10に示すように、下側ケーシング部材72の下方ピン係合穴72a及び上方ピン係合穴72bのそれぞれが、投影面S1,S2のそれぞれを形成することができるということは、各係合穴72a,72bに係合する各機械的係合ピン58,60が下側ケーシング部材72に対して鉛直方向(中心軸線A1方向)に移動しようとした際に、下側ケーシング部材72の各係合穴72a,72bの内周面が、各機械的係合ピン58,60との機械的係合が可能な面を形成していることは当然であるが、各機械的係合ピン58,60を介しながら、台座部材16及び一次側アダプタ部材50のそれぞれとの機械的係合が可能な面を形成していることにもなる。
【0045】
つぎに、
図11は、本発明の第1実施形態による水栓装置1の下側ケーシング部材72において、曲げ加工により形成された場合の下方ピン係合穴72a(又は上方ピン係合穴72b)の部分を概略的に示した図である。
まず、
図11に示すように、下側ケーシング部材72の下方ピン係合穴72a及び上方ピン係合穴72bのそれぞれが曲げ加工により形成された場合、下側ケーシング部材72の側壁の一部分B1が、下側ケーシング部材72の径方向の内側方向A2に向って押圧力(曲げ力f2)で押圧されることにより折り曲げられている。
つぎに、
図11に示すように、下側ケーシング部材72の下方ピン係合穴72a(又は上方ピン係合穴72b)の内周面上の任意の点Q3について、それぞれ下側ケーシング部材72の軸方向の中心軸線A1と平行に移動させることにより、下側ケーシング部材72の軸方向の中心軸線A1に対して垂直な任意の仮想平面S0上に投影させる。
このとき、仮想平面S0上には、各点Q3の鉛直方向に位置する仮想点Q4が存在し、これらの各点Q4の集合をすべて結んだ状態の平面が、いわゆる、投影面S3,S4として、仮想平面S0上に形成される。
すなわち、本実施形態の水栓装置1においては、曲げ加工により形成された下側ケーシング部材72の下方ピン係合穴72a及び上方ピン係合穴72bのそれぞれが、下側ケーシング部材72の軸方向の中心軸線A1に対して垂直な任意の平面S0に投影面S3,S4をそれぞれ形成することが可能である。
また、
図11に示すように、各投影面S3,S4における下側ケーシング部材72の径方向A2の幅W3は、下側ケーシング部材72の側壁の厚みW4よりも大きくなっている(W3>W4)。
したがって、
図11に示すように、下側ケーシング部材72の下方ピン係合穴72a及び上方ピン係合穴72bのそれぞれが、投影面S3,S4のそれぞれを形成することができるということは、各係合穴72a,72bに係合する各機械的係合ピン58,60が下側ケーシング部材72に対して鉛直方向(中心軸線A1方向)に移動しようとした際に、下側ケーシング部材72の各係合穴72a,72bの内周面が、各機械的係合ピン58,60との機械的係合が可能な面を形成していること当然であるが、各機械的係合ピン58,60を介しながら、台座部材16及び一次側アダプタ部材50のそれぞれとの機械的係合が可能な面を形成していることにもなる。
【0046】
つぎに、
図8及び
図9に示すように、下側ケーシング部材72と溶接される前の状態の上側ケーシング部材74は、底部(棚部の一例)74aを備えており、その上方が開放された有底のカップ状の部材である。
また、
図8及び
図9に示すように、上側ケーシング部材74は、その底部74aから上方にほぼ円筒状に延びるように形成されている。
さらに、上側ケーシング部材74の上縁には、外側に突出するフランジ部74bが形成されている。
例えば、このような有底のカップ状の上側ケーシング部材74を成形する際には、金属製の薄板材について絞り加工等を行うことにより、外殻部材8の支柱部8a内に挿入可能な寸法で有底のカップ状に成形する。
すなわち、金属製の上側ケーシング部材74を成形する際には、鋳型等を用いる鋳造加工は採用されていないため、水栓装置1の種類に応じた外殻部材8の形状毎に上側ケーシング部材74の成形用の型を用意する必要がない。
【0047】
つぎに、
図6、
図7及び
図9に示すように、上側ケーシング部材74の底部74aにおいて、湯側連通穴74c、水側連通穴74d、及び、取付穴74eのそれぞれが穴開け加工により形成されている。
ちなみに、
図6に示すように、上側ケーシング部材74の底部74aの湯側連通穴74cにより、その下方の一次側アダプタ部材50の通湯穴50aと上方の弁座部材52の通湯穴52aとが連通可能となっている。
また、
図6及び
図9に示すように、上側ケーシング部材74の底部74aの水側連通穴74dにより、その下方の一次側アダプタ部材50の通水穴50bと弁座部材52の通水穴52bとが連通可能となっている。
さらに、
図7~
図9に示すように、上側ケーシング部材74の底部74aの取付穴74eにおいて、その上方の弁座部材52の底面から下側に突出する突起52cが挿入された後、その下方の一次側アダプタ部材50の取付穴50fに挿入されるようになっている。これにより、弁座部材52が上側ケーシング部材74の底部74aに固定されるようになっている。
【0048】
つぎに、
図8及び
図9に示すように、上側ケーシング部材74の側面において、複数(例えば、2個)の流出穴74fが、穴開け加工により互いに周方向に隣接して形成されている。
また、
図8及び
図9に示すように、上側ケーシング部材74の側面において、各流出穴74fに対して互いに周方向に離間する側には、複数(例えば、2個)の下方突起係合穴74gのそれぞれが、穴開け加工により互いに対角線上に形成されている。
ちなみに、
図2、
図5及び
図8に示すように、上側ケーシング部材74の側面の各下方突起係合穴74gについては、上側下方シール保持部材24の内周面に対角線上に設けられた複数(例えば、2個)の突起24aのそれぞれが嵌合されるようになっている。これにより、上側下方シール保持部材24の内周面が上側ケーシング部材74の外周面上に対して保持されるようになっている。
さらに、
図8及び
図9に示すように、上側ケーシング部材74の側面において、各流出穴74f及び各下方突起係合穴74gよりも上方には、複数(例えば、2個)の上方突起係合穴74hのそれぞれが、穴開け加工により互いに対角線上に形成されている。
ちなみに、
図2、
図5及び
図9に示すように、上側ケーシング部材74の側面の各上方突起係合穴74hについては、下側上方シール保持部材26の内周面に対角線上に設けられた複数(例えば、2個)の突起26aのそれぞれが嵌合されるようになっている。これにより、下側上方シール保持部材26の内周面が、上側下方シール保持部材24よりも上方の位置で上側ケーシング部材74の外周面に対して保持されるようになっている。
これらの穴開け加工の後、
図8及び
図9に示すように、有底のカップ状の上側ケーシング部材74の底部74aの外縁且つ下縁部分が下側ケーシング部材72の上方開口縁部72c内に挿入された状態で、この上側ケーシング部材74の底部74aの外縁且つ下縁部分と下側ケーシング部材72の上方開口縁部72cとが互いに溶接加工される。これにより、下側ケーシング部材72の上端と上側ケーシング部材74の下端とが互いに一体的に接続されるようになっている。
【0049】
つぎに、
図8及び
図9に示すように、上側ケーシング部材74と溶接される前の状態の上部円環部材76は、外殻部材8の支柱部8a内に挿入可能な寸法で金属製の板材又は管材によってほぼ円環状に形成されている。
例えば、ほぼ円環状の金属製の上部円環部材76を成形する際には、予め外殻部材8の支柱部8a内に挿入可能な寸法径の金属製の管材を用意し、この管材について切断加工又は切削加工を行うことにより、外殻部材8の支柱部8a内に挿入可能な軸方向の長さ寸法に調整する。
すなわち、金属製の上部円環部材76を成形する際には、鋳型等を用いる鋳造加工は採用されていないため、水栓装置1の種類に応じた外殻部材8の形状毎に上部円環部材76の成形用の型を用意する必要がない。
【0050】
つぎに、
図8及び
図9に示すように、上部円環部材76の内周面において、雌ねじ加工により雌ねじ76aが形成されている。
また、
図6及び
図7に示すように、上部円環部材76の雌ねじ76aにより、カートリッジ押さえ部材56の外周面に形成された雄ねじ56aが螺合可能であり、カートリッジ押さえ部材56がケーシング部材40の上端部(上部円環部材76)に対して固定されるようになっている。
このような雌ねじ加工の後、
図8及び
図9に示すように、上部円環部材76の下縁部分と上側ケーシング部材74のフランジ部74bの外縁部分とが互いに溶接加工され、上側ケーシング部材74の上端と上部円環部材76の下端とが互いに一体的に接続されている。
なお、本実施形態の水栓装置1では、上部円環部材76の内周面に雌ねじ76aを形成して雌側部材とし、カートリッジ押さえ部材56の外周面に雄ねじ56aを形成して雄側部材として互いに螺合させる形態を採用している。しかしながら、このような形態に限られず、上部円環部材76の外周面に雄ねじを形成して雄側部材とし、カートリッジ押さえ部材56の内周面に雌ねじを形成して雌側部材として互いに螺合させる形態を採用してもよい。
【0051】
つぎに、
図4及び
図7に示すように、一次側アダプタ部材50は、機械的係合ピン60により下側ケーシング部材72内の上方に保持されており、弁座部材52は、上側ケーシング部材74内の底部74aに保持されている。
また、
図7に示すように、概ね円柱状の一次側アダプタ部材50の外径D1は、弁座部材52の外径D2よりも大きく設定されている(D1>D2)。
【0052】
つぎに、
図7に示すように、上側ケーシング部材74内の弁座部材52の上方には、シングルレバーカートリッジ54が配置されている。
また、
図7に示すように、シングルレバーカートリッジ54の上方において、カートリッジ押さえ部材56の雄ねじ56aが上部円環部材76の雌ねじ76aに螺合されることにより、シングルレバーカートリッジ54が上側ケーシング部材74内の弁座部材52の上方において押圧された状態で保持されている。すなわち、カートリッジ押さえ部材56は、シングルレバーカートリッジ54を弁座部材52に固定する固定部材となる。
このとき、
図5及び
図7に示すように、シングルレバーカートリッジ54の湯水混合路54fの流出口54gは、上側ケーシング部材74の流出穴74fと連通している。
また、
図5及び
図7に示すように、上側ケーシング部材74の外周面とその外側の二次側流路形成部材62の内周面との間には、二次側流路78が形成されている。シングルレバーカートリッジ54の湯水混合路54fの流出口54gから流出した湯水は、上側ケーシング部材74の流出穴74fを介して二次側流路78に流出するようになっている。
さらに、
図7に示すように、二次側流路78内の湯水は、二次側流路形成部材62のスパウト側の側面に形成された流出穴62aから二次側アダプタ部材64内の流路64aに流出した後、スパウト側流路形成部材68内のスパウト流路68aに流出するようになっている。
【0053】
つぎに、上述した本発明の第1実施形態による水栓装置1の作用について、水栓装置1の組立方法や加工方法を交えながら説明する。
まず、本実施形態による水栓装置1によれば、この水栓装置1を組み立てる際、水栓装置1の種類に応じた形状に形成された外殻部材8の概ね筒状の支柱部8a内に対して、概ね円筒状の水栓機能ユニット18が挿入される。
その際、予め、この水栓機能ユニット18のケーシング部材40において、台座部材保持用の機械的係合ピン58及び一次側アダプタ部材保持用の機械的係合ピン60のそれぞれを介して、台座部材16及び一次側アダプタ部材50のそれぞれを保持することができる。これにより、台座部材16と一次側アダプタ部材50とをケーシング部材40を介して軸方向に接続することができる。
また、金属製のケーシング部材40により、水栓装置1の種類に応じた形状の外殻部材8に応じて、その支柱部8a内の台座部材16と一次側アダプタ部材50との間の軸方向のスペースや距離寸法を定めることができると共に、外殻部材8の支柱部8a内に挿入されている水栓機能ユニット18等の内部構造の強度を高めることができる。
さらに、金属製のケーシング部材40については、水栓装置1の種類に応じた形状の外殻部材8の支柱部8a内に挿入可能に金属製の板材又は管材によって概ね円筒状に形成することができる。
これにより、ケーシング部材40が樹脂材料で射出成形された場合や金属材料で鋳造成形された場合に比べて、水栓装置1の種類に応じた外殻部材8の形状毎にケーシング部材40の成形用の型を用意する必要がないため、比較的安価な加工方式でケーシング部材40の寸法や形状を容易に調整することができる。
また、ケーシング部材40が金属製の板材又は管材によって概ね円筒状に形成されるため、ケーシング部材40について、必要な強度を保ちながら、薄く形成することもできる。これにより、水栓装置1の内部寸法を抑制することができる。
さらに、水栓装置1の種類に応じた様々な形状の外殻部材8に対しても、ある程度共通化させたケーシング部材40を用意しておけば、このケーシング部材40を切断加工等の比較的安価な加工方式で所望の軸方向の寸法に調整することができる。これにより、台座部材16と一次側アダプタ部材50との間のケーシング部材40の軸方向の寸法距離についても、ケーシング部材40の軸方向の寸法に応じて自由に設定することができる。また、軸方向の寸法を調整した状態のケーシング部材40を外殻部材8の支柱部8a内に挿入するだけで、簡単に組み付けることができる。
これらの結果、水栓装置1の設計の自由度を向上させることができると共に、製造コストを抑制することができる。
【0054】
また、仮に、本実施形態の水栓装置1の機械的係合手段である下側ケーシング部材72の各ピン係合穴72a,72bや機械的係合ピン58,60を備えていないような形態の場合であって、例えば、ケーシング部材40が金属製の板材又は管材によって概ね少なくとも半筒状に形成されている場合、特に、下側ケーシング部材72の側部には、凹凸がない滑らかな状態となる。これにより、下側ケーシング部材72が台座部材16や一次側アダプタ部材50を保持することが難しいという課題が発生する。
したがって、何らかの手段によりケーシング部材40の側部等において、台座部材16や一次側アダプタ部材50に対して機械的に係合して保持可能にする面や係合部を設けることが必要になる。
そこで、本実施形態による水栓装置1によれば、金属製の板材又は管材によって概ね円筒状に形成されている下側ケーシング部材72であっても、機械的係合手段として、下側ケーシング部材72の側部について曲げ加工又は穴開け加工が施されることにより、下方ピン係合穴72a及び上方ピン係合穴72bをそれぞれ形成することができる。
また、
図10及び
図11に示すように、下側ケーシング部材72の各係合穴72a,72bは、その内周面を下側ケーシング部材72の軸方向(中心軸線A1の方向)に対して垂直な面S0に投影させることにより、投影面S1~S4をそれぞれ形成可能であり、台座部材16や一次側アダプタ部材50が下側ケーシング部材72に対して軸方向(中心軸線A1の方向)に相対的に移動しようとした際に台座部材16や一次側アダプタ部材50との機械的係合が可能な面を形成することができる。
すなわち、
図10及び
図11に示すように、下側ケーシング部材72の各係合穴72a,72bを下側ケーシング部材72の軸方向(中心軸線A1の方向)に対して垂直な面S0に投影させることにより投影面S1~S4を形成することができるということは、台座部材16や一次側アダプタ部材50が下側ケーシング部材72に対して軸方向(中心軸線A1の方向)に相対的に移動しようとした際に、下側ケーシング部材72の各係合穴72a,72bが、各機械的係合ピン58,60を介して台座部材16や一次側アダプタ部材50との機械的係合を可能にする面を形成することができることにもなる。
したがって、このような投影面S1~S4を形成可能な下側ケーシング部材72の各係合穴72a,72bにより、下側ケーシング部材72が台座部材16や一次側アダプタ部材50を保持することができるようになる。
これらの結果、下側ケーシング部材72の下方ピン係合穴72a、台座部材保持用の機械的係合ピン58、及び、台座部材16の係合穴16eは、下側ケーシング部材72が機械的係合により台座部材16を保持可能にする機械的係合手段として機能する。
さらに、下側ケーシング部材72の上方ピン係合穴72b、一次側アダプタ部材保持用の機械的係合ピン60、及び、一次側アダプタ部材50の係合穴50eは、下側ケーシング部材72が機械的係合により一次側アダプタ部材50を保持可能にする機械的係合手段として機能する。
これらにより、金属製の板材又は管材によって概ね円筒状に形成されているケーシング部材40であっても、このケーシング部材40が、台座部材16及び一次側アダプタ部材50を確実に保持することができる。
【0055】
さらに、本実施形態による水栓装置1によれば、
図6に示すように、特に、湯供給管44内を流れる湯の熱量等により、湯供給管44やその周辺の水供給管46、或いは、湯供給管44の各被接続部44a,44b及び水供給管46の各被接続部46a,46bにおいて、熱膨張が生じることにより軸方向に移動することがある。
これに対し、本実施形態の水栓装置1では、
図6に示すように、湯供給管44の各被接続部44a,44b及び水供給管46の各被接続部46a,46bが、台座部材16の各接続受け部16c,16d及び一次側アダプタ部材50の各接続受け部50c,50dにおける各クリアランスd1~d4の範囲内で水密状態を保ちながら移動することができる。これにより、熱膨張による湯供給管44の各被接続部44a,44b及び水供給管46の各被接続部46a,46bの移動を吸収することができる。
【0056】
また、本実施形態による水栓装置1によれば、
図7に示すように、上側ケーシング部材74の底部74a上にシングルレバーカートリッジ54を配置することができる。これにより、有底の上側ケーシング部材74でシングルレバーカートリッジ54を確実に保持することができる。
【0057】
さらに、本実施形態による水栓装置1によれば、
図7に示すように、例えば、平面断面の大きさが比較的小さく設定されたシングルレバーカートリッジ54が用いられた場合において、このシングルレバーカートリッジ54が接続される弁座部材52の平面断面の大きさ(外径D2)について比較的小さく設定された場合であっても、一次側アダプタ部材50の外径D1を弁座部材52の外径D2よりも大きく設定することができる(D1>D2)。
したがって、一次側アダプタ部材50において、湯供給管44及び水供給管46のそれぞれが軸方向に接続されるスペースを十分に確保することができる。
【0058】
また、本実施形態による水栓装置1によれば、接続部材である一次側アダプタ部材50及び弁座部材52が樹脂材料で形成されている。これにより、安価で且つ軽量な一次側アダプタ部材50及び弁座部材52を提供することができると共に、浸出性能についても確保することができる。
【0059】
また、本実施形態による水栓装置1によれば、金属製のケーシング部材40が、下方から上方に向って、下側ケーシング部材72、底部(棚部の一例)74aを有する上側ケーシング部材74、及び、上部円環部材76を有しており、上側ケーシング部材74の底部74aの下面と一次側アダプタ部材50との間を面シールする下側弾性面シール部材81と、上側ケーシング部材74の底部74aの上面と弁座部材52との間を面シールする上側(他側)弾性面シール部材82と、が設けられている。
すなわち、本実施形態においては、上側ケーシング部材74と下側ケーシング部材72との間に底部74aが介在し、弁座部材52及び一次側アダプタ部材50が当該底部74aを間に挟む形態が採用され、底部74aの上面と弁座部材52との間が上側弾性面シール部材82で面シールされ、底部74aの下面と一次側アダプタ部材50との間が下側弾性面シール部材81で面シールされている。
従って、底部74aの上面に上側弾性面シール部材82による面シール力が作用すると同時に、底部74aの下面に下側弾性面シール部材81による面シール力が作用するため、底部74aの厚みが薄い場合であっても、当該底部74aの変形が効果的に抑制される。
【0060】
また、本実施形態による水栓装置1によれば、底部74aは上側ケーシング部材74の一部として一体的に構成されている。
従って、上側ケーシング部材74と底部74aとを溶接する必要がないため、溶接箇所が接水することによる腐食発生のリスクを軽減することができる。
【0061】
特に、本実施形態による水栓装置1によれば、有底状の上側ケーシング部材74を形成する際に、金属製の板材について絞り加工が行われることにより、溶接等による継ぎ目箇所がない状態で、底部74aを一体的に形成することができる。
これにより、上側ケーシング部材74に保持されるシングルレバーカートリッジ54の周辺の水により上側ケーシング部材74の溶接等の継ぎ目箇所が接水されるおそれがない。
したがって、金属製の上側ケーシング部材74が腐食されるリスクを軽減することができる。
【0062】
また、本実施形態においては、上側弾性面シール部材82と下側弾性面シール部材81は、互いに同一の部材(材質、形状及びサイズが同一の部材)である。
従って、部品種類の数を低減することができる。更に、底部74aの上面に作用する面シール力と底部74aの下面に作用する面シール力とのバランスの調整が容易である。
【0063】
更に、本実施形態においては、上側弾性面シール部材82と下側弾性面シール部材81は、平面視で互いに同一の向きに配置されている。
従って、底部74aの上面に作用する面シール力と底部74aの下面に作用する面シール力とを、互いに均等(対称)に調整することができる。
【0064】
また、本実施形態においては、弁座部材52と底部74a(の上面)とは、互いに対して位置決めされるようになっており、一次側アダプタ部材50と底部74a(の下面)とも、互いに対して位置決めされるようになっている。
従って、弁座部材52及び底部74aに対する上側弾性面シール部材82の位置ずれの発生が抑制され、同様に、一次側アダプタ部材50及び底部74aに対する下側弾性面シール部材81の位置ずれの発生も抑制され得る。
【0065】
また、本実施形態においては、弁座部材52には、上側弾性面シール部材82を保持するための保持溝52gが設けられており、一次側アダプタ部材50には、下側弾性面シール部材81を保持するための保持溝50gが設けられている。
従って、弁座部材52に対する上側弾性面シール部材82の位置ずれの発生が効果的に抑制され、同様に、一次側アダプタ部材50に対する下側弾性面シール部材81の位置ずれの発生も効果的に抑制され得る。
【0066】
また、本実施形態において、各弾性面シール部材81、82は、
図14に示すように、湯用開口81a(82a)と、水用開口81b(82b)と、それらとバランスを取るためのバランス開口81c(82c)と、を有している。
従って、湯の通流路に対する面シールと水の通流路に対する面シールとを共通の弾性面シールによって実現できるため、より細径のケーシング部材を実現することができる。
【0067】
なお、上述した本実施形態による水栓装置1においては、湯供給管44及び水供給管46のそれぞれが、その下方の台座部材16に対して別部材である形態について説明したが、湯供給管44及び水供給管46のそれぞれについては、台座部材16に対して一体に設けられていてもよい。
また、本実施形態による水栓装置1においては、湯供給管44及び水供給管46のそれぞれが互いに別部材である形態について説明したが、各供給管44,46内の各流路(湯供給流路、水供給流路)が互い独立した流路であれば、湯供給管44及び水供給管46のそれぞれが互いに一体に設けられた形態であってもよい。
【0068】
つぎに、
図12及び
図13を参照して、本発明の第2実施形態による水栓装置について説明する。
図12は、本発明の第2実施形態による水栓装置のケーシング部材の分解斜視図である。また、
図13は、
図12のXIII-XIII線に沿った断面図である。
ここで、
図12及び
図13に示す本発明の第2実施形態による水栓装置100のケーシング部材140において、
図8及び
図9に示す本発明の第1実施形態による水栓装置1のケーシング部材40と同一部分については同一の符号を付し、これらの説明については省略する。
【0069】
まず、
図12及び
図13に示すように、本発明の第2実施形態による水栓装置100のケーシング部材140は、下方から上方に向って、下側ケーシング部材172、中間ケーシング部材174、上側ケーシング部材74、及び、上部円環部材76をそれぞれ備えている。
すなわち、
図12及び
図13に示す本実施形態の水栓装置100のケーシング部材140おいては、上述した本発明の第1実施形態による水栓装置1のケーシング部材40の下側ケーシング部材72に相当する部材が、概ね円筒状の下側ケーシング部材172及び中間ケーシング部材174の二つの金属製の部材となっている点で異なった構造となっている。
また、これらの下側ケーシング部材172及び中間ケーシング部材174の金属材料としては、耐食性が比較的高く、耐久性や強度等も比較的高いステンレス材料(例えば、SUS304等)等が用いられている。
しかしながら、本実施形態による水栓装置100の金属製のケーシング部材140に用いられる金属材料については、耐食性が比較的高く、耐久性や強度等も比較的高い材料であれば、ステンレス材料以外の他の金属材料であってもよい。
そして、
図12及び
図13に示すように、下側ケーシング部材172の上縁部172aの外周面と中間ケーシング部材174の下方開口端部174aの内周面とは、溶接加工等により互いに一体的に接続されている。
さらに、
図12及び
図13に示すように、中間ケーシング部材174の上方開口端部174bの内周面と有底の上側ケーシング部材74の底部74aの外周面とは、溶接加工等により互いに一体的に接続されている。
【0070】
ここで、
図12に示すように、中間ケーシング部材174と溶接される前の下側ケーシング部材172においては、外殻部材8の支柱部8a内に挿入可能な寸法で金属製の板材又は管材によって、その横断面視の形状が概ねC字形形状に形成されている。これにより、この下側ケーシング部材172の両側縁部172b,172c同士は、互いに周方向に所定間隔d101[mm]となるように形成されている。
例えば、金属製の下側ケーシング部材172を成形する際には、金属製の薄板材について、ロール成形等の曲げ加工を行うことにより湾曲状に成形し、最終的には、外殻部材8の支柱部8a内に挿入可能な寸法で、その横断面視の形状が概ねC字形形状に形成する。
或いは、予め外殻部材8の支柱部8a内に挿入可能な寸法径の金属製の管材を用意し、この管材について、切断加工又は切削加工を行うことにより、外殻部材8の支柱部8a内に挿入可能な軸方向の長さ寸法に調整すると共に、下側ケーシング部材172の側縁部172b,172c同士の周方向に所定間隔がd101[mm]となるように、この所定間隔d101とほぼ同一寸法の溝幅の縦溝G101を成形する。
すなわち、金属製の下側ケーシング部材172を成形する際には、鋳型等を用いる鋳造加工は採用されていないため、水栓装置100の種類に応じた外殻部材8の形状毎に下側ケーシング部材172の成形用の型を用意する必要がない。
【0071】
つぎに、
図12及び
図13に示すように、下側ケーシング部材172の側面の下方において、穴開け加工等により径方向に貫く下方係合穴172dが周方向に間隔を置いて複数形成されている。
これにより、
図12及び
図13に示すように、台座部材保持用の機械的係合ピン58は、下方係合穴172dに対して外側から挿入されることにより下方係合穴172dに係合した後、その内側端部が台座部材16の側面の係合穴16eに係合するようになっている。
したがって、これらの下側ケーシング部材172の下方係合穴172d、台座部材保持用の機械的係合ピン58、及び、台座部材16の係合穴16eは、下側ケーシング部材172が機械的係合により台座部材16を保持可能にする機械的係合手段として機能するようになっている。
【0072】
つぎに、
図12及び
図13に示すように、上側ケーシング部材74と溶接される前の状態の中間ケーシング部材174についても、外殻部材8の支柱部8a内に挿入可能な寸法で金属製の板材又は管材によってほぼ円筒状に形成されている。
例えば、ほぼ円筒状の金属製の中間ケーシング部材174を成形する際には、金属製の薄板材について、ロール成形等の曲げ加工を行うことにより湾曲状に成形し、最終的には、外殻部材8の支柱部8a内に挿入可能な寸法でほぼ円筒状に形成する。
或いは、予め外殻部材8の支柱部8a内に挿入可能な寸法径の金属製の管材を用意し、この管材について、切断加工又は切削加工を行うことにより、外殻部材8の支柱部8a内に挿入可能な軸方向の長さ寸法に調整する。
すなわち、金属製の中間ケーシング部材174を成形する際には、鋳型等を用いる鋳造加工は採用されていないため、水栓装置1の種類に応じた外殻部材8の形状毎に中間ケーシング部材174の成形用の型を用意する必要がない。
【0073】
つぎに、
図12及び
図13に示すように、中間ケーシング部材174の側面においても、穴開け加工等により径方向に貫く係合穴174cが周方向に複数形成されている。
これにより、
図12及び
図13に示すように、一次側アダプタ部材保持用の機械的係合ピン60は、係合穴174cに対して外側から挿入されることにより係合穴174cに係合した後、その内側端部が一次側アダプタ部材50の側面の係合穴50eに係合するようになっている。
したがって、これらの中間ケーシング部材174の係合穴174c、一次側アダプタ部材保持用の機械的係合ピン60、及び、一次側アダプタ部材50の係合穴50eは、下側ケーシング部材172が機械的係合により一次側アダプタ部材50を保持可能にする機械的係合手段として機能するようになっている。
【0074】
上述した本発明の第2実施形態による水栓装置100によれば、下側ケーシング部材172がその横断面視において概ねC字形形状に形成されているため、下側ケーシング部材172を概ねC字形形状に形成する際に、金属製の板材について比較的に安価な曲げ加工で簡単に成形することができる。
また、比較的に安価な曲げ加工で成形される下側ケーシング部材172のみを変更することにより、水栓装置1の種類に応じた様々な形態のケーシング部材40を用意することができるため、より一層のコストダウンを実現することもできる。
したがって、水栓装置100の設計の自由度を向上させることができると共に、製造コストを抑制することができる。
【0075】
なお、上述した本発明の第1実施形態及び第2実施形態による水栓装置1,100に用いられる金属製のケーシング部材40,140においては、外殻部材8の支柱部8a内に挿入可能な寸法で金属製の板材又は管材によって概ね円筒形状に形成されている形態について説明した。
しかしながら、本実施形態では、金属製のケーシング部材の形状については、必ずしも全周に亘って連続的に形成された完全な円筒形状に限られず、半円筒形状であってもよいし、この半円筒よりも周方向に延びて且つ完全な円筒未満の形状や、半円筒未満の形状等であってもよい。要するに、金属製のケーシング部材の形状については、少なくとも半円筒形状に形成された形状であってもよいし、半円筒未満の板形状であってもよい。
【符号の説明】
【0076】
1 本発明の第1実施形態による水栓装置
2 操作ハンドル
4 スパウト
6 吐水口
8 外殻部材
8a 支柱部
8b スパウト部
10 湯供給管(一次側流路)
12 水供給管(一次側流路)
14 固定金具
14a 把持金具
14b 締結金具
16 台座部材
16a 通湯穴
16b 通水穴
16c 湯側接続受け部
16d 水側接続受け部
16e 係合穴
18 水栓機能ユニット
20 下側下方シール保持部材
22 下方シール部材
24 上側下方シール保持部材
24a 突起
26 下側上方シール保持部材
28 上方シール部材
30 上側上方シール保持部材
32 Cリング
34 シール部材
36 固定部材
38 留め具
38a ビス
38b キャップ
40 ケーシング部材
42 軸シール部材
42a 湯側軸シール部材
42b 水側軸シール部材
44 湯供給管(一次側流路、湯供給流路)
44a 下側被接続部(被接続部)
44b 上側被接続部(被接続部)
46 水供給管(一次側流路、水供給流路)
46a 下側接続部
46b 上側接続部
48 軸シール部材
48a 湯側軸シール部材
48b 水側軸シール部材
50 一次側アダプタ部材(接続部材)
50a 通湯穴
50b 通水穴
50c 湯側接続部
50d 水側接続部
50e 係合穴
50f 取付穴
52 弁座部材(接続部材)
52a 通湯穴
52b 通水穴
52c 突起
54 シングルレバーカートリッジ
54a シングルレバーカートリッジの固定弁体
54b シングルレバーカートリッジの可動弁体(開閉弁)
54c シングルレバーカートリッジのレバー
54d シングルレバーカートリッジ内の通湯路(一次側流路)
54e シングルレバーカートリッジ内の通水路(一次側流路)
54f シングルレバーカートリッジ内の湯水混合路(二次側流路)
54g シングルレバーカートリッジの湯水混合路の流出口
56 カートリッジ押さえ部材(固定部材)
56a 雄ねじ
58 台座部材保持用の機械的係合ピン(第2機械的係合手段)
60 一次側アダプタ部材保持用の機械的係合ピン(機械的係合手段、第1機械的係合手段)
62 二次側流路形成部材
62a 流出穴
64 二次側アダプタ部材
64a 流路
66 スペーサ部材
68 スパウト側流路形成部材
68a スパウト流路
70 吐水口形成部材
72 下側ケーシング部材
72a 下方ピン係合穴(機械的係合手段、第2係合部)
72b 上方ピン係合穴(機械的係合手段、第1係合部)
72c 上方開口縁部
74 上側ケーシング部材
74a 上側ケーシング部材の底部(棚部の一例)
74b 上側ケーシング部材のフランジ部
74c 上側ケーシング部材の底部の湯側連通穴
74d 上側ケーシング部材の底部の水側連通穴
74e 上側ケーシング部材の底部の取付穴
74f 上側ケーシング部材の側面の流出穴
74g 上側ケーシング部材の側面の下方突起係合穴
74h 上側ケーシング部材の側面の上方突起係合穴
76 上部円環部材
76a 雌ねじ
78 二次側流路
81 下側面シール部材
81a 湯用開口
81b 水用開口
81c バランス開口
82 上側面シール部材
82a 湯用開口
82b 水用開口
82c バランス開口
100 本発明の第2実施形態による水栓装置
140 ケーシング部材
172 下側ケーシング部材
172a 上縁部
172b 側縁部
172c 側縁部
172d 下方係合穴
174 中間ケーシング部材
174a 下方開口端部
174b 下方開口端部
174c 係合穴
A1 回転中心軸線、下側ケーシング部材の軸方向の中心軸線
A2 下側ケーシング部材の径方向
A3 下側ケーシング部材の径方向における内側方向
B1 下側ケーシング部材の側壁の一部分
D1 一次側アダプタ部材の外径
D2 弁座部材の外径
d1 クリアランス
d2 クリアランス
d3 クリアランス
d4 クリアランス
d101 間隔
F1 設置面
f1 せん断力
f2 曲げ力
G101 縦溝
P401 一次側アダプタ部材の取付位置
P501 一次側アダプタ部材の取付位置
P601 一次側アダプタ部材の取付位置
P501 一次側アダプタ部材の取付位置
Q1 下方ピン係合穴(又は上方ピン係合穴)の内周面上の任意の点
Q2 下方ピン係合穴(又は上方ピン係合穴)の内周面上の任意の点
Q3 下方ピン係合穴(又は上方ピン係合穴)の内周面上の任意の点
Q4 下方ピン係合穴(又は上方ピン係合穴)の内周面上の任意の点
S0 下側ケーシング部材の軸方向の中心軸線に対して垂直な任意の仮想平面
S1 投影面(第2投影面)
S2 投影面(第1投影面)
W1 投影面の幅
W2 下側ケーシング部材の側壁の厚み
W3 投影面の幅
W4 下側ケーシング部材の側壁の厚み