(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-02
(45)【発行日】2022-05-13
(54)【発明の名称】小便器装置
(51)【国際特許分類】
E03D 5/10 20060101AFI20220506BHJP
E03D 13/00 20060101ALI20220506BHJP
E03D 9/00 20060101ALI20220506BHJP
G01V 3/12 20060101ALI20220506BHJP
G01P 13/00 20060101ALI20220506BHJP
【FI】
E03D5/10
E03D13/00
E03D9/00 Z
G01V3/12 A
G01P13/00 C
(21)【出願番号】P 2018133350
(22)【出願日】2018-07-13
【審査請求日】2021-05-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100159846
【氏名又は名称】藤木 尚
(72)【発明者】
【氏名】松本 健志
(72)【発明者】
【氏名】小林 基紀
(72)【発明者】
【氏名】正平 裕也
(72)【発明者】
【氏名】轟木 健太郎
【審査官】油原 博
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-299726(JP,A)
【文献】特開平10-252117(JP,A)
【文献】特開2014-070905(JP,A)
【文献】特開2003-056046(JP,A)
【文献】特開2006-009556(JP,A)
【文献】特開2006-183400(JP,A)
【文献】中国実用新案第207278992(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03D 1/00-13/00
G01V 3/12
G01P 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吐水された洗浄水によりボウル面を洗浄する小便器装置であって、
排尿を受ける上記ボウル面を形成し、その底部に排水口を形成するボウル部と、上記ボウル部の上記排水口から延びて内部に溜水を形成する排水トラップ部と、を有する小便器本体と、
上記ボウル部へ洗浄水を供給する吐水装置と、
電波を送信した後、溜水面によって反射された電波を受信することによりドップラー信号を生成するドップラーセンサと、
上記溜水面の状態に応じて得られる上記ドップラー信号に基づいて、上記ボウル部より下流側の排水流路の排水状態を判断する制御部と、を備え、
上記制御部は、上記吐水装置からの洗浄水の供給が停止した後における上記溜水面の下がり幅が第1閾値以上となるときに、上記排水流路の排水状態が不良であると判断することを特徴とする小便器装置。
【請求項2】
上記制御部は、上記吐水装置からの洗浄水の供給が停止した後から、第1期間を経過するまでの間において上記排水流路の排水状態を判断する請求項1に記載の小便器装置。
【請求項3】
上記制御部は、上記吐水装置からの洗浄水の供給が停止した後から、上記ドップラー信号の振幅が閾値以下になるまでの第2期間内において、上記排水流路の排水状態を判断する請求項1又は2に記載の小便器装置。
【請求項4】
上記制御部は、上記ドップラー信号のうち所定周波数以上の周波数を有する上記ドップラー信号を除いた上記ドップラー信号に基づいて、上記排水流路の排水状態を判断する請求項1乃至3の何れか1項に記載の小便器装置。
【請求項5】
上記制御部は、上記吐水装置からの洗浄水の供給が停止した後における上記溜水面の下がり幅が第2閾値以上であるとき、上記排水流路の排水状態が不良であると判断しないこととする請求項1乃至4の何れか1項に記載の小便器装置。
【請求項6】
上記制御部は、上記吐水装置からの洗浄水の供給の停止から待機時間を経過した後に、上記排水流路の排水状態を判断する請求項1乃至5の何れか1項に記載の小便器装置。
【請求項7】
上記ドップラーセンサは、上記小便器本体の下方領域において上記小便器本体の待機状態における上記排水トラップ部内の上記溜水面よりも上方に配置されると共に上記ドップラーセンサからの電波の放射方向が斜め下方に向けられるように配置される請求項1乃至6の何れか1項に記載の小便器装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小便器装置に関し、特に、吐水された洗浄水によりボウル面を洗浄する小便器装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、特許文献1に記載されているように、ドップラーセンサにより排水トラップ内の溜水面の揺れを検知して、排水配管の詰まりを検知する小便器装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1記載の小便器装置においては、洗浄水の吐水開始時刻から、信号が所定の強度以下の振幅になるまでの時間を計測して排水配管の詰まりを判断しているため、排水配管が完全に詰まった状態となる前に排水配管の詰まりを判断しにくいという課題があった。また、排水配管が完全に詰まってしまうと小便器装置が使用できなくなるため排水配管が完全に詰まった状態となる前に排水配管が詰まりかかっている等の排水流路の排水状態の不良等が発生していることを判断したいという課題があった。
【0005】
従って、本発明は、排水流路が完全に詰まった状態となる前に、排水流路の排水状態が不良であると判断することができる小便器装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明は、吐水された洗浄水によりボウル面を洗浄する小便器装置であって、排尿を受ける上記ボウル面を形成し、その底部に排水口を形成するボウル部と、上記ボウル部の上記排水口から延びて内部に溜水を形成する排水トラップ部と、を有する小便器本体と、上記ボウル部へ洗浄水を供給する吐水装置と、電波を送信した後、溜水面によって反射された電波を受信することによりドップラー信号を生成するドップラーセンサと、上記溜水面の状態に応じて得られる上記ドップラー信号に基づいて、上記ボウル部より下流側の排水流路の排水状態を判断する制御部と、を備え、上記制御部は、上記吐水装置からの洗浄水の供給が停止した後における上記溜水面の下がり幅が第1閾値以上となるときに、上記排水流路の排水状態が不良であると判断することを特徴としている。
このように構成された本発明によれば、制御部が、例えば排水流路が詰まりかかっている等の排水流路の排水状態の不良等が発生しているときは、吐水装置からの洗浄水の供給中に溜水面が上がりやすく且つ供給停止後における溜水面の下がり幅が大きく、これに対し排水流路の排水状態の不良等が発生していないときは、吐水装置からの洗浄水の供給中に溜水面が上がりにくく、供給停止後における溜水面の下がり幅が小さいという性質(知見)に基づいて、上記吐水装置からの洗浄水の供給が停止した後における上記溜水面の下がり幅が第1閾値以上となるときに、上記排水流路の排水状態が不良であると判断することができる。これにより、排水流路が完全に詰まった状態となる前に排水流路の排水状態が不良であると判断することができる。
【0007】
本発明において、好ましくは、上記制御部は、上記吐水装置からの洗浄水の供給が停止した後から、第1期間を経過するまでの間において上記排水流路の排水状態を判断する。
このように構成された本発明によれば、排水流路の排水状態を判断する期間が、洗浄水の供給が停止した後から、第1期間を経過するまでの間に限定されるので、本発明の小便器装置以外の小便器装置の洗浄の振動や洗浄による水圧の変動による溜水面の揺れの影響、又はドップラーセンサが小便器装置の近くの人の動きを誤検知する影響等を抑制することができる。よって、制御部が排水流路の排水状態の判断を行う精度をより向上させることができる。
【0008】
本発明において、好ましくは、上記制御部は、上記吐水装置からの洗浄水の供給が停止した後から、上記ドップラー信号の振幅が閾値以下になるまでの第2期間内において、上記排水流路の排水状態を判断する。
このように構成された本発明によれば、排水流路の排水状態を判断する期間が、洗浄水の供給が停止した後から、ドップラー信号の振幅が閾値以下になるまでの第2期間内に限定される。よって、本発明によれば、本発明の小便器装置以外の小便器装置の洗浄の振動による溜水面の揺れの影響、又はドップラーセンサが小便器装置の近くの人の動きを誤検知する影響等を抑制することができる。従って、本発明によれば、制御部が排水流路の排水状態の判断を行う精度をより向上させることができる。
【0009】
本発明において、好ましくは、上記制御部は、上記ドップラー信号のうち所定周波数以上の周波数を有する上記ドップラー信号を除いた上記ドップラー信号に基づいて、上記排水流路の排水状態を判断する。
このように構成された本発明によれば、上記制御部は、ドップラー信号のうち、小便器装置の近くの人の動きにより生じると想定される所定周波数以上の周波数を有するドップラー信号を除いたドップラー信号に基づいて、排水流路の排水状態を判断する。よって、本発明によれば、ドップラーセンサが小便器装置の近くの人の動きを誤検知する影響等をより抑制することができ、制御部が排水流路の排水状態の判断を行う精度をより向上させることができる。
【0010】
本発明において、好ましくは、上記制御部は、上記吐水装置からの洗浄水の供給が停止した後における上記溜水面の下がり幅が第2閾値以上であるとき、上記排水流路の排水状態が不良であると判断しないこととする。
このように構成された本発明によれば、制御部は、第2閾値を、溜水面がボウル部から待機状態の溜水面まで下がる下がり幅の構造的な限度の基準として設定することができ、上記吐水装置からの洗浄水の供給が停止した後における上記溜水面の下がり幅が第2閾値以上であるときに、排水流路の排水状態が不良であると判断しないことする。これにより、制御部は、溜水面の下がり幅が第2閾値以上であるとき、溜水面以外のもの、例えば人の動きやボウル面の水滴の動き等、を誤検知した可能性があると判断することができる。よって、本発明によれば、ドップラーセンサの誤検知の影響をより抑制することができ、制御部が排水流路の排水状態の判断を行う精度をより向上させることができる。
【0011】
本発明において、好ましくは、上記制御部は、上記吐水装置からの洗浄水の供給の停止から待機時間を経過した後に、上記排水流路の排水状態を判断する。
このように構成された本発明によれば、制御部は、吐水装置からの洗浄水の供給の停止後に洗浄水が吐水装置からボウル面に沿って流下する可能性があることを想定し、上記吐水装置からの洗浄水の供給の停止から待機時間を経過した後に、排水流路の排水状態を判断をする。よって、制御部は洗浄水が吐水装置からボウル面に沿って流れていないと想定されるときに排水状態を判断することができる。よって、制御部が排水流路の排水状態の判断を行う精度をより向上させることができる。
【0012】
本発明において、好ましくは、上記ドップラーセンサは、上記小便器本体の下方領域において小便器本体の待機状態における上記排水トラップ部内の溜水面よりも上方に配置されると共に上記ドップラーセンサからの電波の放射方向が斜め下方に向けられるように配置される。
このように構成された本発明によれば、ドップラーセンサは、上記小便器本体の下方領域において排水トラップ部内の溜水面よりも上方に配置されると共に上記ドップラーセンサからの電波の放射方向が斜め下方に向けられるように配置される。これにより、ドップラーセンサから送信される電波の放射方向に小便器本体の近くの使用者が含まれにくくなる。従って、本発明によれば、ドップラーセンサが使用者の動きを誤検知することを抑制することができ、制御部が排水流路の排水状態の判断を行う精度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の小便器装置によれば、排水流路が完全に詰まった状態となる前に、排水流路の排水状態が不良であると判断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態による小便器全体を示す斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態による小便器装置の断面図である。
【
図3】本発明の一実施形態による小便器装置のドップラーセンサ及び制御部の接続関係を示す概略ブロック図である。
【
図4】本発明の一実施形態による小便器装置のドップラーセンサから送信される電波の最大放射方向を説明する図である。
【
図5】
図5(a)は本発明の一実施形態による小便器装置のドップラーセンサから送信される送信信号に対し、対象物が接近する場合に、対象物が第1信号、第2信号の順に送信信号を反射することになる様子を原理的に説明する図であり、
図5(b)は
図5(a)により送信信号が反射され、ドップラーセンサが受信する受信信号を原理的に説明する図である。
【
図6】
図6(a)は本発明の一実施形態による小便器装置のドップラーセンサから送信される送信信号に対し、対象物が離反する場合に、対象物が第2信号、第1信号の順に送信信号を反射することになる様子を原理的に説明する図であり、
図6(b)は
図6(a)により送信信号が反射され、ドップラーセンサが受信する受信信号を原理的に説明する図である。
【
図7】本発明の一実施形態による小便器装置において、排水トラップ部又は排水流路の排水状態を判断する排水状態判断処理モードにおける制御部の制御動作を示すフローチャートである。
【
図8】
図8(a)は本発明の一実施形態による小便器装置において、溜水面の状態に応じてドップラーセンサにより生成されるドップラー信号の波形と、時間経過とを説明する図であり、
図8(b)は
図8(a)の第1信号Iの移動平均IA及び第2信号Qの移動平均QAの一部の波形を拡大して説明する図であり、
図8(c)は
図8(b)における移動平均IA及び移動平均QAに対応するステップ値Rの変化を説明する図である。
【
図9】本発明の一実施形態による小便器装置のドップラーセンサが便器本体前の人の動きも検出している場合のドップラー信号の波形を説明する図である。
【
図10】
図9のドップラー信号の波形に対しローパスフィルタを用いた処理を行った波形を説明する図である。
【
図11】本発明の一実施形態による小便器装置のドップラーセンサが溜水面の下降の状態を検出したドップラー信号の波形を説明する図である。
【
図12】
図11のドップラー信号の波形に対しローパスフィルタを用いた処理を行った波形を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、添付図面を参照して、本発明の一実施形態による小便器装置を説明する。
まず、
図1及び
図2を参照して、本発明の一実施形態による小便器装置を説明する。
図1は本発明の一実施形態による小便器装置全体を示す斜視図であり、
図2は本発明の一実施形態による小便器装置の断面図である。
【0016】
図1に示すように、本発明の一実施形態の小便器装置1は、駅、店舗等の公共の施設や家庭等の壁面Wに取り付けて使用する壁掛け形の小便器装置である。小便器装置1は、壁面Wに沿って複数個が並べて配置されている。小便器装置1は、陶器製の小便器本体である便器本体2を備えている。便器本体2は、前方側に形成されたボウル部3を備えている。ボウル部3は、使用者の排尿を受けるボウル面4を形成し、ボウル面4の底部に排水口である排水口部6を形成する。
なお、小便器装置の「後方」は、小便器装置の壁面に当接する背面側の方向とし、小便器装置の「前方」は、小便器装置を使用する使用者側から見て手前側の方向(「後方」の反対方向)とし、小便器装置を前方から見て右側の方向を右方向とし、前方から見て左側の方向を左方向とし、右方向及び左方向を小便器装置の側方として説明する。
【0017】
図2に示すように、便器本体2は、さらに、ボウル部3の排水口部6から延びて内部に溜水を形成する排水トラップ部である排水トラップ管路8を備えている。排水トラップ管路8は、排水口部6から下方に延び、その内部の溜水が便器本体2の待機状態において封水を形成する。排水トラップ管路8は排水トラップ管路8の下流側に設けられている排水流路である排水配管9に接続されている。排水配管9は、壁面Wを通って壁面Wの裏側まで延び、さらに下流側の排水設備(図示せず)まで延びている。排水配管9には、排水配管9の排水不良が便器本体2からの排水状態に影響を与えるような、排水トラップ管路8の下流側に設けられている排水配管が含まれる。排水トラップ管路8及び排水配管9は、ボウル部3より下流側の排水流路を構成している。排水口部6には、排水口部6を覆うように、概ね円盤状の目皿12が配置されている。
【0018】
ボウル面4は、壁面Wと概ね平行に延びる正面部4aと、この正面部4aの両側から、前方に向けて延びる側面部4bと、便器本体2の前端の頂部を形成する前端部4cとを備えている。正面部4aは、ボウル面4の正面向きの縦壁を形成している。正面部4aは、便器本体2の上方領域において概ね鉛直方向に延びる平面部4dと、便器本体2の下方領域Bにおいて湾曲する湾曲部4eとを備えている。便器本体2の下方領域Bは、便器本体2の上端と下端の間の中間線Cより下方側の領域をいう。正面部4a及び側面部4bの上方は開放されており、ボウル面4には「天井面」に相当する部分がない。湾曲部4eは、平面部4dの下端から前方側に向けて湾曲する。前端部4cは、斜め上方に延びる縦壁を形成する。前端部4cは、使用者が立つ前方側にせり出すように形成されている。前端部4cは、ボウル面4の側壁の中で最も低い側壁を形成し、溢れ面を形成している。なお、便器本体2の下方領域Bにおいて、平面部4dと湾曲部4eとが形成されていてもよい。便器本体2の下方領域Bにおいて、少なくとも湾曲部4eが形成される。
【0019】
小便器装置1は、さらに、便器本体2のボウル面4の左右方向中央の上部に吐水装置であるスプレッダー10と、スプレッダー10に設けられて便器本体2の正面側(手前側)に立って便器本体2を使用する使用者の有無を検知する人体検知センサ11と、電波を送信した後、溜水面によって反射された電波を受信することによりドップラー信号を生成するドップラーセンサ22と、溜水面の状態に応じて得られるドップラー信号に基づいて、ボウル部3より下流側の排水トラップ管路8又は排水配管9の排水状態を判断する制御部24と、使用者又は小便器装置1の管理者等に排水状態の不良を報知する報知手段36(
図3参照)とを備えている。
【0020】
スプレッダー10は、ボウル部3へ洗浄水を供給する。スプレッダー10は、ボウル面4に取り付けられ、供給された洗浄水を吐水口部14から吐出することにより、ボウル面4に洗浄水を供給し、ボウル面4を洗浄するようになっている。吐水口部14には、吐水口部14からボウル面4の正面部4aの裏側へ延びる導水路16が接続され、導水路16には、給水源である水道18から電磁弁20を介して洗浄水が供給される。
図1の矢印Fに示すように、スプレッダー10から吐出される洗浄水は、ボウル面4の正面部4aに沿って下方に広がるように流れる。
【0021】
人体検知センサ11は、赤外線式の人体検知センサである。人体検知センサ11は、便器本体2の前に立って便器本体2を使用する使用者の有無を検知する。人体検知センサ11は、便器本体2の前に立って便器本体2を使用する使用者を検知する電波センサであってもよい。人体検知センサ11は、制御部24と電気的に接続されている。
【0022】
つぎに、
図2乃至
図6を参照して、本発明の一実施形態による小便器装置1のドップラーセンサ22について説明する。
図3は本発明の一実施形態による小便器装置のドップラーセンサ及び制御部の接続関係を示す概略ブロック図であり、
図4は本発明の一実施形態による小便器装置のドップラーセンサから送信される電波の最大放射方向を説明する図であり、
図5(a)は本発明の一実施形態による小便器装置のドップラーセンサから送信される送信信号に対し、対象物が接近する場合に、対象物が第1信号、第2信号の順に送信信号を反射することになる様子を原理的に説明する図であり、
図5(b)は
図5(a)に示すように送信信号が反射され、ドップラーセンサが受信する受信信号を原理的に説明する図であり、
図6(a)は本発明の一実施形態による小便器装置のドップラーセンサから送信される送信信号に対し、対象物が離反する場合に、対象物が第2信号、第1信号の順に送信信号を反射することになる様子を原理的に説明する図であり、
図6(b)は
図6(a)に示すように送信信号が反射され、ドップラーセンサが受信する受信信号を原理的に説明する図である。
【0023】
ドップラーセンサ22は、ボウル部3及び排水トラップ管路8内において形成される溜水の溜水面の状態を検知する電波センサユニットを形成している。ドップラーセンサ22は、ドップラセンサのうちいわゆる2出力式センサを構成するユニットである。ドップラーセンサ22は、信号を生成する信号生成部28と、発振波を電波(マイクロ波)である送信波Jとして放射する送信アンテナ30と、対象物(例えば溜水面や使用者等)からの電波の反射波Kを受信する受信アンテナ32とを備えている。
ドップラーセンサ22は、電波を送信アンテナ30から送信した後、溜水面によって反射された電波を受信アンテナ32により受信することによりドップラー信号を生成する機能を有している。ドップラーセンサ22は、送信アンテナ30と受信アンテナ32とが一体となって構成されている。信号生成部28は、制御部24と電気的に接続され、ドップラー信号を制御部24に送信する。ドップラーセンサ22は、例えば制御部24が後述するような排水流路の排水状態の判断処理を実行できるような態様のドップラー信号を制御部24に送信する。また、ドップラーセンサ22による検出の開始及び停止等は、制御部24によって制御される。
【0024】
信号生成部28は、発振波を発振する発振機(図示せず)と、受信アンテナ32から得られる第1受信信号と発振波とを重ね合わせる第1ミキサ(図示せず)と、受信アンテナ32から得られる第1受信信号から分岐した第2受信信号と発振波とを重ね合わせる第2ミキサ(図示せず)と、第1受信信号を発振波の波長λに対しλ/4(π/2)分だけ位相がずれた第2受信信号とする位相調整部(図示せず)とを備えている。第1ミキサ(図示せず)は、第1信号I(Ich)を出力して制御部24に送る。第2ミキサ(図示せず)は、第2信号Q(Qch)を出力して制御部24に送る。第2信号Qは、第1信号Iからλ/4分だけ位相がずれた状態として得られる。出力した信号はアンプ(図示せず)及び制御部24に設けられたA/Dコンバータ34を通して処理される。
【0025】
図5及び
図6に示すように、制御部24は、第1信号Iと第2信号Qとに基づいて、対象物Lがドップラーセンサ22へ接近する動作又は離反する動作の区別を判断することができると共に、対象物Lがドップラーセンサ22へ接近する接近距離又はドップラーセンサ22から離反する下がり幅である離反距離を推定することができる。
図5(a)に示すように、対象物Lがドップラーセンサ22に接近する場合、
図5(b)に示すように、ドップラーセンサ22が受信する反射波Kに基づいて生成されるドップラー信号の第1信号Iは第2信号Qよりも先行する。よって、制御部24は、第1信号Iが第2信号Qよりも先行することにより、対象物Lがドップラーセンサ22に接近することを判断できる。
【0026】
図6(a)に示すように、対象物Lがドップラーセンサ22から離反する場合、
図6(b)に示すように、ドップラーセンサ22が受信する反射波Kに基づいて生成されるドップラー信号の第2信号Qが第1信号Iよりも先行する。よって、制御部24は、第2信号Qが第1信号Iよりも先行することにより、対象物Lがドップラーセンサ22から離反することを判断できる。この原理に基づいて、制御部24は、対象物Lに対応する溜水面がドップラーセンサ22から離反する、すなわち溜水面が下降することを判断できる。
また、このような原理を応用して、制御部24は、第2信号Qが第1信号Iよりも先行する関係が成立したと判断する毎に対象物L(溜水面)が所定距離(後述するステップ値R)ずつ離反(下降)すると判断することができる。
【0027】
次に、
図2に示すように、ドップラーセンサ22は、便器本体2の下方領域Bにおいて待機状態における溜水の溜水面W0よりも上方に配置されると共にドップラーセンサ22からの電波の放射方向が斜め下方に向けられるように配置される。待機状態とは、制御部24が便器本体2を洗浄する洗浄モードを実行していない状態且つ便器本体2を使用している使用者がいない状態である。具体的には、便器本体2を使用している使用者が立ち去った後、便器本体2を洗浄する洗浄モードが実行され、洗浄モードが終了した後は、便器本体2は待機状態となっており、制御部24も待機状態となっている。待機状態は、便器本体2の次回の使用前に待機している状態となっている。
【0028】
ドップラーセンサ22は、ボウル部3のボウル面4とボウル面4の後方側の壁面Wとの間に形成されるボウル面裏側空間26内に配置される。ボウル面裏側空間26は、主にボウル面4の湾曲部4eと壁面Wとの間に形成される。下方領域Bにおいては、湾曲部4eが下方に向かうにつれて前方側に湾曲して形成されているため、ボウル面裏側空間26が比較的大きく形成され、ドップラーセンサ22を施工しやすくすることができる。ドップラーセンサ22から送信される電波は、陶器を透過することができ、水に反射される特性を有する。よって、ドップラーセンサ22は、ボウル面4の表側(使用者から見える側)の面に取付けられること又はボウル面4に電波を通す開口を形成することなく、ボウル面4の裏側のボウル面裏側空間26内に配置されることができる。
【0029】
ドップラーセンサ22は、便器本体2の下方領域Bにおいてボウル部3の前端部4cよりも下方に配置される。ドップラーセンサ22は、ドップラーセンサ22から送信される電波の最大放射方向Dが、好ましくは、前端部4cよりも下方の向き、より好ましくは便器本体2の待機状態における排水トラップ管路8内の排水口部6の真下の溜水面W0を通るような向きに配置される。例えば最大放射方向Dと溜水面W0(又は溜水面W0の仮想延長線上の部分)とが成す角度は、40度~60度の範囲に規定される。
【0030】
図4に示すように、ドップラーセンサ22から送信される電波の最大放射方向Dは、ドップラーセンサ22の設計により決定される。
図4においては、ドップラーセンサ22から送信される電波の放射パターンEが例示されている。最大放射方向Dは、ドップラーセンサ22から送信される電波の放射パターンEのうち最も強い方向(ドップラーセンサ22の指向性を有する方向)である。最大放射方向Dにおいては、最も感度よく対象物である溜水面の状態を検知することができる。ドップラーセンサ22から送信される電波の放射方向は、主に放射パターンEのように示され、最大放射方向Dを中心に広がっている。放射パターンEのうち電波の最も強い方向が最大放射方向Dとなっている。最大放射方向Dは、例えば、ドップラーセンサ22の正面の方向、より具体的には送信アンテナ30のパターン面に対して垂直な方向である。最大放射方向Dは、パターン面に対して曲げられて規定されていてもよい。ドップラーセンサ22の最大放射方向Dの方向を0度とすれば、時計回りに90度の方向においては放射される電波が弱くなっており、また時計回りに270度の方向においても放射される電波が弱くなっている。
【0031】
図2に示すように、ドップラーセンサ22は、最大放射方向Dを中心とした同心円状に有効検知領域Gを有している。有効検知領域Gは、ドップラーセンサ22から離れるにつれて徐々に同心円状の領域の径が広がるような形状に形成されている。有効検知領域Gは、ドップラーセンサ22がドップラー信号によって溜水面の状態を有効に検知できる領域である。ドップラーセンサ22の有効検知領域Gは前端部4cより下のボウル面4等に向けられるようになっている。有効検知領域Gの全体がボウル面4に向けられることが好ましいが、有効検知領域Gの一部が前端部4cを超えてボウル面4外に形成されていてもよい。最大放射方向Dも前端部4cより下のボウル面4に向けられる。ドップラーセンサ22の有効検知領域Gは、ボウル面4に当たるため、前端部4cより下のボウル面4を透過してさらに便器本体2の前の使用者A側に延びにくくなっている。例えば、ドップラーセンサ22をボウル面4に対して垂直偏波となるように配置し、1回目に透過する陶器のボウル面4とドップラーセンサ22の最大放射方向Dとのなす角を90度よりも小さくし、2回目に透過する陶器の面と、最大放射方向Dとのなす角を90度付近とすることで、有効検知領域Gを使用者A側に延びにくくすることができる。よって、有効検知領域Gがボウル面4の前端部4cの上方を超えて便器本体2の前の使用者Aまで及びにくくすることができる。なお、使用者Aには、次に便器本体2を使用しようとして便器本体2の前に存在する使用者、便器本体2の前を通過するトイレ施設の使用者等も含まれる。
【0032】
図2に示すように、ドップラーセンサ22は、ボウル部3のボウル面4の後方且つボウル部3の左右方向のほぼ中央に配置されている。なお、ドップラーセンサ22は、ボウル部3のボウル面4の側方に配置されていてもよく、前端部4cに配置されていてもよい。ドップラーセンサ22がボウル面4の側方に配置される場合には、ドップラーセンサ22は溜水面W0に向けて斜め側方向きに配置される。ドップラーセンサ22がボウル面4の前端部4cに配置される場合には、ドップラーセンサ22は溜水面W0に向けて斜め後方向きに配置される。
【0033】
変形例として、小便器装置1のドップラーセンサ22は、便器本体2の上部や上下方向の中央部等に配置され、便器本体2の前に立って便器本体2を使用する使用者の有無を検知する人体検知センサの機能を兼ねていてもよい。ドップラーセンサ22が人体検知センサの機能を兼ねる場合には、小便器装置1の人体検知センサ11を省略することができる。このとき、ドップラーセンサ22は、ドップラーセンサ22からの電波の放射方向が斜め下方に向けられるように配置される。ドップラーセンサ22は、ドップラーセンサ22の有効検知領域Gに排水トラップ管路8からボウル面4までの溜水面の想定される移動範囲が含まれるように配置される。このようなドップラーセンサ22により得られるドップラー信号に基づいて、制御部24は、排水流路の排水状態が不良であると判断することができると共に、便器本体2を使用する使用者を検知することができる。
【0034】
また、他の変形例として、小便器装置1のドップラーセンサ22は、便器本体2の下方領域Bにおいてボウル部3の前端部4cよりも上方に配置されていてもよい。ドップラーセンサ22は、ドップラーセンサ22からの電波の放射方向が斜め下方に向けられるように配置される。例えばドップラーセンサ22は、ボウル面裏側空間26内において平面部4dの下端近傍に配置される。ドップラーセンサ22は、ドップラーセンサ22から送信される電波の最大放射方向Dが、好ましくは、前端部4cよりも下方の向き、より好ましくは排水トラップ管路8内の排水口部6の真下の溜水面W0を通るような向きに配置される。例えば最大放射方向Dと溜水面W0(又は溜水面W0の仮想延長線上の部分)とが成す角度は、40度~70度の範囲に規定される。ドップラーセンサ22は、前端部4cよりも上方に配置されるので、最大放射方向Dと溜水面W0とが成す角度がより大きくなり、この成す角度が小さい場合と比べて、溜水面の変動をより精度よく検知することができ、排水トラップ管路8又は排水配管9の排水状態の不良の判断精度をより向上させることができる。
ドップラーセンサ22の有効検知領域Gが前端部4cより下のボウル面4に向けられるようになっている。有効検知領域Gの全体がボウル面4より下方に向けられることが好ましいが、有効検知領域Gの一部が前端部4cを超えてボウル面4外に形成されていてもよい。最大放射方向Dも前端部4cより下方に向けられる。ドップラーセンサ22の有効検知領域Gは、ボウル面4に当たるため、さらに信号強度が減衰され、前端部4cより下のボウル面4を透過してさらに便器本体2の前の使用者A側に延びにくくなっている。よって、有効検知領域Gがボウル面4の前端部4cの上方を超えて便器本体2の前の使用者Aまで及びにくくすることができる。
【0035】
制御部24は、マイクロプロセッサ、メモリ、インターフェイス回路、及びこれらを作動させるプログラム等(図示せず)により、小便器装置1の電磁弁20の開閉動作を制御して便器本体2を洗浄する洗浄モードを実行する機能、及び人体検知センサ11、ドップラーセンサ22及び報知手段36の動作を制御する機能を少なくとも有する。制御部24は、人体検知センサ11、電磁弁20、ドップラーセンサ22及び報知手段36のそれぞれと有線又は無線により電気的に接続され、制御信号を送受信している。制御部24は、壁面Wの裏側に配置されている。制御部24は、便器本体2内に取付けられていてもよい。また、制御部24は、機能ごと、対応する機器ごと又は任意の機器のグループごとに制御部が分かれていてもよい。さらに、制御部24は、例えば便器本体2とは離れた場所に配置され、インターネット等の通信ネットワークを介して人体検知センサ11、電磁弁20、ドップラーセンサ22及び報知手段36のそれぞれと電気的に接続されていてもよい。本実施形態の小便器装置1は、制御部24がインターネット等の通信ネットワークを介して人体検知センサ11、電磁弁20、ドップラーセンサ22及び報知手段36のそれぞれと電気的に接続されることにより、構成されることができる。
【0036】
制御部24は、さらに、スプレッダー10からの洗浄水の供給の停止から所定の待機時間T(
図8参照)を経過した後に、排水トラップ管路8又は排水配管9の排水状態を判断する待機モードを有する。この待機モードによれば、制御部24は、スプレッダー10からの洗浄水の供給の停止後に洗浄水がスプレッダー10から垂れるようにボウル面4に沿ってドップラーセンサ22の前方側を流下する可能性があることを想定し、洗浄水の流下が想定される待機時間Tにわたって待機する。制御部24は、待機時間Tが経過し、洗浄水がスプレッダー10からボウル面4に沿って流れていないと想定されるときに排水状態を判断する。
【0037】
また、制御部24は、さらに、排水トラップ管路8又は排水配管9の排水状態が不良であると判断する排水状態判断処理モードを備える。排水状態判断処理モードにおいて、制御部24は、スプレッダー10からの洗浄水の供給が停止した後における溜水面の下がり幅が第1閾値以上となるときに、排水トラップ管路8又は排水配管9の排水状態が不良であると判断する。
【0038】
制御部24は、スプレッダー10からの洗浄水の供給が停止した後から、第1期間T1を経過するまでの間において排水トラップ管路8又は排水配管9の排水状態を判断する機能を有する。また、制御部24は、スプレッダー10からの洗浄水の供給が停止した後から、ドップラー信号の電圧の振幅値Hが閾値H1以下になるまでの第2期間T2内において、排水トラップ管路8又は排水配管9の排水状態を判断する機能を有する。さらに、制御部24は、ドップラー信号のうち所定周波数以上の周波数を有するドップラー信号を除いたドップラー信号に基づいて、排水トラップ管路8又は排水配管9の排水状態を判断する機能を有する。さらに、制御部24は、スプレッダー10からの洗浄水の供給が停止した後における溜水面の下がり幅が第2閾値X2以上であるとき、排水トラップ管路8又は排水配管9の排水状態が不良であると判断しないこととする機能を有する。
【0039】
報知手段36は、LEDランプ及び/又は小型スピーカー等を備え、制御部24から受信した情報を使用者等に視覚及び/又は音声で報知することができる。例えば、報知手段36は、使用者又は管理者等にLED表示を点灯させる又は文字を表示させる等の手段により排水状態の不良を報知することができる。報知手段36は、モニタ上に情報を表示させることにより報知する手段であってもよい。報知手段36は、例えば便器本体2とは離れた場所に配置され、インターネット等の通信ネットワークを介して制御部24と電気的に接続されていてもよい。
【0040】
次に、
図1乃至
図3、
図7乃至
図12を参照して、本発明の一実施形態による小便器装置の動作(作用)について説明する。
【0041】
使用者が小便器装置1の便器本体2のボウル部3の前側に立つと、人体検知センサ11が使用者の存在を検知している検知状態となり、その検知信号が制御部24に送信され、制御部24が使用者の存在を認識する。この時点では電磁弁20は閉弁された状態であり、スプレッダー10からの吐水は行われていない状態となっている。使用者が排尿を終えて、便器本体2の前から立ち去ると、人体検知センサ11が非検知状態となる。人体検知センサ11が非検知状態となると、制御部24は、電磁弁20を開弁させ、吐水口部14からの吐水を開始させる。
図1に示すように、吐水口部14から吐水された洗浄水Fは、ボウル面4に沿って左右方向に広がるように吐水され、ボウル面4を広範囲に洗浄する。
【0042】
ボウル面4を流下した洗浄水Fは、排水口部6から排水トラップ管路8内に流入する。洗浄水Fは、排水トラップ管路8から排水トラップ管路8の下流側の排水配管9に向かって流れることにより、排水トラップ管路8や排水配管9内の尿を下流側に排出させる。
【0043】
排水トラップ管路8及び排水配管9の排水状態が良好である場合は、例えば排水トラップ管路8又は排水配管9の内部に尿石の付着、尿石以外の物体の付着又は存在等がなく又は比較的少なく、排水トラップ管路8及び排水配管9の排水状態が良好である場合である。このような場合には、排水トラップ管路8及び排水配管9から排水が比較的良好に行われるので、排水トラップ管路8内の溜水の溜水面W0がボウル面4側まで比較的大きく上昇することが抑制される。
【0044】
これに対し、排水トラップ管路8又は排水配管9の排水状態が不良となる場合がある。排水状態が不良となる場合には、例えば、便器本体2が繰り返し使用されることにより、排水トラップ管路8又は排水配管9内に徐々に尿石が付着し、排水トラップ管路8又は排水配管9の通水可能な流路の内径が徐々に小さくなる、いわゆる詰まりかけの状態が発生する場合が含まれる。また、排水状態が不良となる場合には、尿石の付着により排水トラップ管路8又は排水配管9が詰まる場合も含まれる。また、排水状態が不良となる場合には、排水トラップ管路8又は排水配管9内に尿石以外の物体が付着、引っ掛かる、入り込む等して、排水トラップ管路8又は排水配管9が詰まりかけとなる、又は詰まる場合も含まれる。このような場合には、排水トラップ管路8又は排水配管9からの排水能力が低下し、排水が良好に行われなくなるので、排水トラップ管路8内の溜水の溜水面はボウル面4側まで比較的大きく上昇すると共に、上昇した溜水面が低下し溜水面W0まで到達するまでに時間を要することとなる。
【0045】
このようにスプレッダー10からの吐水が継続する間、排水トラップ管路8内の溜水の溜水面が、待機状態の溜水面W0から徐々に上昇し、排水口部6より上方まで上昇する場合がある。さらに、吐水が継続する間、溜水面(例えば溜水面W1により示す)は、排水配管9の頂部よりもさらに上昇する場合もある。
【0046】
スプレッダー10からの吐水の停止後、溢れ面である前端部4c以下の水位を境に溜水面の上昇は下降に転じ、溜水面は、再び下降する。下降中の溜水面の状態に応じて得られるドップラー信号に基づいて、制御部24は、後述するように排水トラップ管路8又は排水配管9の排水状態が不良であると判断することができる。
【0047】
次に、
図7乃至
図12に示すように、制御部24が、排水トラップ管路8又は排水配管9の排水状態が不良であると判断する排水状態判断処理モード及びこの排水状態判断処理モードの処理開始まで待機する待機モードについて説明する。
図7は、本発明の一実施形態による小便器装置において、排水トラップ部又は排水流路の排水状態を判断する排水状態判断処理モードにおける制御部の制御動作を示すフローチャートであり、
図8(a)は本発明の一実施形態による小便器装置において、溜水面の状態に応じてドップラーセンサにより生成されるドップラー信号の波形と、時間経過とを説明する図であり、
図8(b)は
図8(a)の第1信号Iの移動平均IA及び第2信号Qの移動平均QAの一部の波形を拡大して説明する図であり、
図8(c)は
図8(b)における移動平均IA及び移動平均QAに対応するステップ値Rの変化を説明する図であり、
図9は本発明の一実施形態による小便器装置のドップラーセンサが便器本体前の人の動きも検出している場合のドップラー信号の波形を説明する図であり、
図10は
図9のドップラー信号の波形に対しローパスフィルタを用いた処理を行った波形を説明する図であり、
図11は本発明の一実施形態による小便器装置のドップラーセンサが溜水面の下降の状態を検出したドップラー信号の波形を説明する図であり、
図12は
図11のドップラー信号の波形に対しローパスフィルタを用いた処理を行った波形を説明する図である。
図7において、Sは各ステップを示している。
なお、
図8(a)においては縦軸においてドップラー信号の第1信号I及び第2信号Qの電圧、第1信号Iの移動平均IA及び第2信号Qの移動平均QAの電圧を示し、横軸において時刻を示している。
図8(b)においては、説明のため
図8(a)における第1信号Iの移動平均IA及び第2信号Qの移動平均QAを示しており、縦軸において第1信号Iの移動平均IA及び第2信号Qの移動平均QAの電圧を示し、横軸において時刻を示している。
図8(c)においては、
図8(b)における第1信号Iの移動平均IA及び第2信号Qの移動平均QAに対応するステップ値Rを示しており、縦軸においてステップ値Rを示し、横軸において時刻を示している。
図8(c)においては、制御部24は、第2信号Qの移動平均QAが第1信号Iの移動平均IAよりも先行する関係が成立したと判断する毎にステップ値Rに1を加え、第1信号Iの移動平均IAが第2信号Qの移動平均QAよりも先行する関係が成立したと判断する毎にステップ値Rから1を引く処理を行っている。
【0048】
先ず、
図8(a)に示すように、制御部24は、スプレッダー10からの洗浄水の供給の停止、すなわち電磁弁20の閉弁の時刻t0から待機時間Tを経過するまで、排水状態判断処理モードを開始せずに待機する待機モードを実行する。この待機モードによれば、制御部24は、スプレッダー10からの洗浄水の供給の停止後に洗浄水がスプレッダー10から垂れるようにボウル面4に沿って流下する可能性があることを想定し、洗浄水が流下することが想定される待機時間Tにわたって待機する。よって、ドップラーセンサ22がボウル面4を流下する洗浄水を誤検知することが抑制される。制御部24は、待機時間Tが経過し、洗浄水がスプレッダー10からボウル面4に沿って流れていないと想定される状態となってから排水状態判断処理モードを実行することにより、排水状態判断処理モードによる排水状態の判断の精度を向上させることができる。
図8(a)に示すように、待機モード中において、ドップラーセンサ22は、ドップラー信号の検出を継続しているが、制御部24は、排水状態判断処理モードを開始せずに待機している。なお、待機モード中において、制御部24は、ドップラーセンサ22の作動を停止させ、排水状態判断処理モード開始時に再びドップラーセンサ22の作動を開始させてもよい。
制御部24は、待機モードによる待機時間Tの経過後、時刻t1から排水状態判断処理モードを開始させる。待機モードにおける待機時間Tは、数秒程度、例えば1秒乃至5秒の範囲内の時間である。
【0049】
次に、
図7に示すように、S0において、制御部24は、排水トラップ管路8又は排水配管9の排水状態を判断する排水状態判断処理モードを開始する。
【0050】
S1において、制御部24は、排水状態判断処理モードの実行開始の時刻t1における溜水面の位置から溜水面が下降すると想定できるので、実行開始時刻t1における溜水面の位置を基準として設定するように、離反距離に対応するステップ値Rを0と設定し(
図8(b)及び
図8(c)参照)、S2に進む。
図8(c)に示すように、時刻t0及び時刻t1において、ステップ値Rは0に設定されており、制御部24は、排水状態判断処理モードの実行開始の時刻t1における溜水面の位置を基準として溜水面の離反距離(下降する下がり幅)を判断できる。
【0051】
S2において、制御部24は、現在時刻がスプレッダー10からの洗浄水の供給が停止した時刻t0から、第1期間T1を経過する時刻t7までの間の時刻であるか否かを判定する。
制御部24は、時刻が時刻t0から時刻t7までの第1期間T1内の時刻である場合には、溜水面の下降が生じている可能性があり、制御部24が排水トラップ管路8又は排水配管9の排水状態の判断を行うことが有効であると判断できるので、S3に進む。
制御部24は、時刻が時刻t0から第1期間T1を経過した時刻t7以降の時刻である場合には、溜水面の下降が終了している可能性が高く、制御部24が振幅値Hに基づいて排水トラップ管路8又は排水配管9の排水状態の判断を行いにくいと判断できるので、S7に進む。
【0052】
S3において、制御部24は、ドップラーセンサ22が生成したドップラー信号の第2信号Qの電圧の移動平均QAを解析することにより、予め設定した所定時間毎のこのドップラー信号の電圧の振幅値Hを取得し、S4に進む。なお、振幅値Hは、ドップラーセンサ22が生成したドップラー信号の第2信号Qの電圧を解析することにより取得されてもよい。なお、制御部24は、第1信号Iの電圧又は第1信号Iの電圧の移動平均IAを解析して振幅値Hを取得してもよい。また、制御部24は、判断精度を向上させるため、第1信号I及び第2信号Qの両方の電圧等の平均値を取得し、この平均の電圧を解析して振幅値Hを取得してもよい。
【0053】
S3において、制御部24は、ドップラー信号のうち所定周波数以上の周波数を有するドップラー信号を除いたドップラー信号に基づいて、振幅値Hを取得する。例えば、
図8(a)に示すように、制御部24は、第2信号Qのうち所定周波数以上の周波数を有するドップラー信号を除いたドップラー信号として、第2信号Qの移動平均QAを取得する。第1信号Iの移動平均IA及び第2信号Qの移動平均QAは、第1信号I及び第2信号Qの電圧波形に対しローパスフィルタ処理を行った成分波形でもある。
【0054】
図9に示すように、仮にドップラーセンサ22が便器本体2前の人の動きを検出する場合には、第1信号I又は第2信号Q等の信号に人の動きの検出情報が含まれる。
図10に示すように、この信号を、所定周波数以上の周波数を有する信号を遮断し、所定周波数未満の周波数を有する信号を通過させるローパスフィルタを用いて処理する。これにより、信号成分のうち、比較的早く動くため周波数の高い信号として検出される人の動きの信号が除去される。また、信号成分のうち、溜水面の微動等のノイズ成分となる信号も除去できる。
一方で、
図11に示すように、ドップラーセンサ22が比較的遅い動きの溜水面の下降の状態を検出したドップラー信号は、所定周波数未満の比較的低い周波数の信号となる。よって、
図12に示すように、この信号をローパスフィルタを用いて処理したとしても、溜水面の下降の状態を示すドップラー信号は除去されにくくなっている。
よって、制御部24は、人の動きによる影響を低減した信号に基づいて排水トラップ管路8又は排水配管9の排水状態を判断することができる。また、制御部24は、ドップラーセンサ22が便器本体2前の人の動きを検出する場合であっても、排水トラップ管路8又は排水配管9の排水状態を判断することができる。例えば、所定周波数は、1Hz~10Hzの範囲内の周波数として設定される。
【0055】
図7のS4において、制御部24は、振幅値Hが閾値H1以下になっているか否かを判定する。
図8(a)に示すように、閾値H1は、待機状態においてドップラーセンサ22が生成したドップラー信号の振幅値H2(ノイズの振幅値)と同じレベル、好ましくは振幅値H2の3倍乃至5倍の範囲内の値に設定される。例えば閾値H1はノイズの振幅値H2の3倍乃至5倍の範囲内の値に設定されるので、ノイズが判定に与える影響を抑制することができると共に、溜水面の溜水面W0の位置までの下降も比較的精度よく判定することができる。
【0056】
図7のS4において、制御部24は、振幅値Hが閾値H1以下になっていない場合には、溜水面が依然として溜水面W0よりも上昇している状態であり、溜水面が微小に揺動しながら下方に移動しており、溜水面W0の位置まで下降している途中であると判断できるので、S5に進む。
図8(b)に示すように、制御部24は、時刻t0から振幅値Hが閾値H1以下になる時刻t8までの第2期間T2内において排水トラップ管路8又は排水配管9の排水状態を判断する。
制御部24は、振幅値Hが閾値H1以下となった場合には、溜水面の下方への移動が概ね終了し、溜水面の表面の揺動も低下しており、溜水面が待機状態の溜水面W0の位置まで既に下降していると判断できるので、S7に進む。このとき、制御部24は、第2期間T2の終了も決定する。
【0057】
S5において、制御部24は、第2信号Qの移動平均QAが第1信号Iの移動平均IAよりも先行して(進んで)いるか否かを判定する。
制御部24は、移動平均QAが移動平均IAよりも先行している場合には、溜水面が下降している状態が一定程度継続したと判断できるので、離反距離を増加させる処理を行うため、S6に進む。具体的には、
図8(b)において、制御部24が、移動平均QAが移動平均IAよりも先行していると判断した場合に、
図8(c)に示すような離反距離を増加させる処理を行うため、S6に進む。
制御部24は、移動平均QAが移動平均IAよりも先行していない場合には、溜水面が下降している状態が終了したと判断できるので、S7に進む。なお、S5の判定は、移動平均QAと移動平均IAとの比較に限られず、第2信号Qと第1信号Iとの比較により行うことができる。
【0058】
S6において、制御部24は、移動平均QAが移動平均IAよりも先行していることにより、溜水面が1つのステップ値R分の離反距離だけドップラーセンサ22から離反して下降したと判断し、この離反距離に対応するステップ値Rを加算させるため、ステップ値Rに1を加える処理を行い、S2に戻る。このような処理によれば、
図8(b)に示すように、制御部24は、第2信号Qが第1信号Iよりも先行する関係が成立したと判断する毎に溜水面が1つのステップ値Rの分だけ離反、すなわち下降したと判断することができる。例えば、
図8(b)においては、時刻t1からt8までの間において、制御部24は、第2信号Qが第1信号Iよりも先行する関係が5回成立したと判断し、溜水面が5つのステップ値Rの分まで離反、すなわち下降したと判断している。例えば、1つのステップ値Rが2mm乃至4mmの範囲で設定される場合、制御部24は、溜水面が、1つのステップ値Rの分と対応する2mm乃至4mmの範囲で下降すると判断する。ステップ値Rは、離反距離を示す指標でもある。
【0059】
また、
図8(c)に示すように、制御部24は、例えば時刻t2において、移動平均QAが移動平均IAよりも先行しているとの判断に基づき、ステップ値Rを0から1に増加させる処理を行っている。さらに、例えば時刻t3乃至t6に示すように、S6の処理を行った回数だけ、ステップ値Rを1増加させる処理を行っている。ステップ値Rがスプレッダー10からの洗浄水の供給が停止した時刻t0からある時刻までの溜水面の下がり幅を示す。少なくともS1、S5及びS6は、制御部24において離反距離を判定する離反距離判定モードとして機能している。
【0060】
S7において、制御部24は、スプレッダー10からの洗浄水の供給が停止した後におけるステップ値Rが第1閾値X1以上となるか否かを判定する。ステップ値Rは、溜水面の下がり幅である離反距離に対応する。また、溜水面の下降の動きは想定された下降の動きとなる。一方で、便器本体2の前の使用者Aの動きは離反のみならず接近、通過等の一定でない動きとなる。ステップ値Rを使用した判定により、溜水面の下降の動きと使用者Aの動きとを区別することができる。
S7において、制御部24は、離反距離に対応するステップ値Rが第1閾値X1以上となるとき、供給停止後における溜水面の下がり幅が大きいと判断して、S9に進む。
S7において、制御部24は、ステップ値Rが第1閾値X1未満であるとき、供給停止後における溜水面の下がり幅が小さいと判断して、S8に進む。
【0061】
S8において、制御部24は、排水トラップ管路8又は排水配管9からの排水が比較的良好に行われており、溜水面W0からの溜水面の上昇がほぼない又は比較的小さい範囲の上昇にとどまると判断できるので、排水トラップ管路8又は排水配管9の排水状態が比較的良好であると判断し、S12に進む。
【0062】
S9において、制御部24は、ステップ値Rが第2閾値X2以上であるか否かを判定する。制御部24は、第2閾値X2を、便器本体2において溜水面がボウル部3から溜水面W0まで下がる下がり幅の構造的な限度の基準として設定している。例えば、第2閾値X2は、ボウル部3の溢れ面である前端部4cから溜水面W0までの距離により設定される。
S9において、制御部24は、ステップ値Rが第2閾値X2以上であるとき、溜水面以外のもの、例えば人の動きやボウル面の水滴の動き等、を誤検知した可能性があると判断することができるので、S11に進む。
S9において、制御部24は、ステップ値Rが第2閾値X2未満であるとき、溜水面以外のものの誤検知の可能性が低く、且つこれまでの排水状態が不良であるとの判断の信頼性が比較的高いと判断して、S10に進む。
【0063】
S10において、制御部24は、排水トラップ管路8又は排水配管9が詰まりかかっている等してこれらの排水性能が低下しており、溜水面W0からの溜水面の上昇が比較的大きい範囲の上昇となっており、また排水に時間がかかっていると判断できるので、排水トラップ管路8又は排水配管9の排水状態が不良であると判断し、S12に進む。
なお、
図3に示すように、制御部24が排水トラップ管路8又は排水配管9の排水状態が不良であると判断した場合には、制御部24は、排水状態判断処理モード等の実行処理とは別に、報知手段36により、使用者又は小便器装置1の管理者等に排水状態の不良を報知する制御を実行する。
【0064】
S11において、制御部24は、ドップラーセンサ22が溜水面以外のものの動きを誤検知した可能性があると判断し、誤検知による排水状態の判断を防ぐように、排水流路の排水状態が不良であると判断せずに、S12に進む。
S12において、制御部24は、排水状態判断処理モードを終了する。
【0065】
制御部24は、排水状態判断処理モードの制御処理とは別に、電磁弁20の開弁から一定時間が経過した後、電磁弁20を閉弁し、スプレッダー10による吐水動作を停止させ、洗浄動作も終了させる。
【0066】
本発明の一実施形態の小便器装置1によれば、制御部24が、例えば排水流路が詰まりかかっている等の排水流路の排水状態の不良等が発生しているときは、スプレッダー10からの洗浄水の供給中に溜水面が上がりやすく且つ供給停止後における溜水面の下がり幅が大きく、これに対し排水流路の排水状態の不良等が発生していないときは、スプレッダー10からの洗浄水の供給中に溜水面が上がりにくく、供給停止後における溜水面の下がり幅が小さいという性質(知見)に基づいて、スプレッダー10からの洗浄水の供給が停止した後における溜水面の下がり幅が第1閾値X1以上となるときに、排水流路の排水状態が不良であると判断することができる。これにより、排水流路が完全に詰まった状態となる前に排水流路の排水状態が不良であると判断することができる。
【0067】
また、本発明の一実施形態の小便器装置1によれば、排水流路の排水状態を判断する期間が、洗浄水の供給が停止した後から、第1期間T1を経過するまでの間に限定されるので、本発明の小便器装置1以外の小便器装置の洗浄の振動や洗浄による水圧の変動による溜水面の揺れの影響、又はドップラーセンサ22が小便器装置1の近くの人の動きを誤検知する影響等を抑制することができる。よって、制御部24が排水流路の排水状態の判断を行う精度をより向上させることができる。
【0068】
また、本発明の一実施形態の小便器装置1によれば、排水流路の排水状態を判断する期間が、洗浄水の供給が停止した後から、ドップラー信号の振幅値Hが閾値H1以下になるまでの第2期間T2内に限定される。よって、本発明によれば、本発明の小便器装置1以外の小便器装置の洗浄の振動による溜水面の揺れの影響、又はドップラーセンサ22が小便器装置1の近くの人の動きを誤検知する影響等を抑制することができる。従って、本発明によれば、制御部24が排水流路の排水状態の判断を行う精度をより向上させることができる。
【0069】
また、本発明の一実施形態の小便器装置1によれば、制御部24は、ドップラー信号のうち、小便器装置の近くの人の動きにより生じると想定される所定周波数以上の周波数を有するドップラー信号を除いたドップラー信号に基づいて、排水流路の排水状態を判断する。よって、本発明によれば、ドップラーセンサ22が小便器装置1の近くの人の動きを誤検知する影響等をより抑制することができ、制御部24が排水流路の排水状態の判断を行う精度をより向上させることができる。
【0070】
また、本発明の一実施形態の小便器装置1によれば、制御部24は、第2閾値X2を、溜水面がボウル部3から待機状態の溜水面まで下がる下がり幅の構造的な限度の基準として設定することができ、スプレッダー10からの洗浄水の供給が停止した後における溜水面の下がり幅が第2閾値X2以上であるときに、排水流路の排水状態が不良であると判断しないことする。これにより、制御部24は、溜水面の下がり幅が第2閾値X2以上であるとき、溜水面以外のもの、例えば人の動きやボウル面の水滴の動き等、を誤検知した可能性があると判断することができる。よって、本発明によれば、ドップラーセンサ22の誤検知の影響をより抑制することができ、制御部24が排水流路の排水状態の判断を行う精度をより向上させることができる。
【0071】
また、本発明の一実施形態の小便器装置1によれば、制御部24は、スプレッダー10からの洗浄水の供給の停止後に洗浄水がスプレッダー10からボウル面に沿って流下する可能性があることを想定し、スプレッダー10からの洗浄水の供給の停止から待機時間を経過した後に、排水流路の排水状態を判断をする。よって、制御部24は洗浄水がスプレッダー10からボウル面4に沿って流れていないと想定されるときに排水状態を判断することができる。よって、制御部24が排水流路の排水状態の判断を行う精度をより向上させることができる。
【0072】
また、本発明の一実施形態の小便器装置1によれば、ドップラーセンサ22は、便器本体2の下方領域において排水トラップ管路8内の溜水面よりも上方に配置されると共にドップラーセンサ22からの電波の放射方向が斜め下方に向けられるように配置される。これにより、ドップラーセンサ22から送信される電波の放射方向に便器本体2の近くの使用者が含まれにくくなる。従って、本発明によれば、ドップラーセンサ22が使用者の動きを誤検知することを抑制することができ、制御部24が排水流路の排水状態の判断を行う精度を向上させることができる。
【符号の説明】
【0073】
1 :小便器装置
2 :便器本体
3 :ボウル部
4 :ボウル面
20 :電磁弁
22 :ドップラーセンサ
24 :制御部
A :使用者
B :下方領域
F :洗浄水
H :振幅値
H1 :閾値
T :待機時間
T1 :第1期間
T2 :第2期間
W :壁面
W0 :溜水面
W1 :溜水面
X1 :第1閾値
X2 :第2閾値