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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-02
(45)【発行日】2022-05-13
(54)【発明の名称】絆創膏及び絆創膏用フィルム
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/02 20060101AFI20220506BHJP
   A61F 13/06 20060101ALI20220506BHJP
   A61F 13/10 20060101ALI20220506BHJP
   A61F 13/12 20060101ALI20220506BHJP
【FI】
A61F13/02 310D
A61F13/02 310Z
A61F13/02 380
A61F13/06 Z
A61F13/10 H
A61F13/10 Z
A61F13/12
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018039214
(22)【出願日】2018-03-06
(65)【公開番号】P2019150410
(43)【公開日】2019-09-12
【審査請求日】2020-04-28
(73)【特許権者】
【識別番号】591069570
【氏名又は名称】東洋化学株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000156042
【氏名又は名称】株式会社麗光
(74)【代理人】
【識別番号】100092727
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 忠昭
(74)【代理人】
【識別番号】100146891
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 ひろ美
(72)【発明者】
【氏名】宇古 学
(72)【発明者】
【氏名】矢野 昌彦
(72)【発明者】
【氏名】窪田 大亮
(72)【発明者】
【氏名】相馬 幸良
(72)【発明者】
【氏名】橋岡 徹
【審査官】冨江 耕太郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2000-510739(JP,A)
【文献】特開2008-274231(JP,A)
【文献】特開平10-258119(JP,A)
【文献】特開2011-11047(JP,A)
【文献】実開昭59-122122(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/00-13/14、15/00-17/00
A61L15/00-33/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
創膏用フィルムと、
前記絆創膏用フィルムの裏面が仮接着された支持体と、を備え、
前記絆創膏用フィルムは、厚み5μm~2000μmの絆創膏用フィルムとした場合に下記弾性ヒステリシス試験後の残留歪みが30%以上であり、200%以上の破断伸度を有し、下記引張試験において、20%伸度応力が0.2N/mm2~10.0N/mm2であり、20%伸度応力と100%伸度応力の差が-2.0N/mm2~2.0N/mm2となるポリウレタン系樹脂を原料とするものであり、
前記支持体にはアクセス空間が設けられ、
身体の出張部位が前記アクセス空間を介して前記絆創膏用フィルムに裏面側から押しつけられると、前記絆創膏用フィルムは前記出張部位の形状に応じて塑性変形し、前記出張部位を内包することを特徴とする絆創膏。
弾性ヒステリシス試験:引張試験機により、チャック間距離50mmで、80mm(長さ)×20mm(幅)の試験片を引張速度200mm/分にて試験片の伸びが100%となるまで引張り1分間保持した後、戻り速度200mm/分で元の位置にまでもどす試験。
引張試験:引張試験機により、チャック間距離50mmで80mm(長さ)×20mm(幅)の試験片を引張速度300mm/分で引っ張る試験。
【請求項2】
創膏用フィルムと、
前記絆創膏用フィルムの裏面が仮接着された支持体と、を備え、
前記絆創膏用フィルムは、厚み5μm~2000μmの絆創膏用フィルムとした場合に下記弾性ヒステリシス試験後の残留歪みが30%以上であり、200%以上の破断伸度を有し、下記引張試験において、20%伸度応力が0.2N/mm2~10.0N/mm2であり、20%伸度応力と100%伸度応力の差が-2.0N/mm2~2.0N/mm2となるポリウレタン系樹脂を原料とするものであり、
前記支持体にはアクセス空間が設けられ、
指先が前記アクセス空間を介して前記絆創膏用フィルムに裏面側から押しつけられると、前記絆創膏用フィルムは前記指先の形状に応じて塑性変形し、前記指先を内包することを特徴とする絆創膏。
弾性ヒステリシス試験:引張試験機により、チャック間距離50mmで、80mm(長さ)×20mm(幅)の試験片を引張速度200mm/分にて試験片の伸びが100%となるまで引張り1分間保持した後、戻り速度200mm/分で元の位置にまでもどす試験。
引張試験:引張試験機により、チャック間距離50mmで80mm(長さ)×20mm(幅)の試験片を引張速度300mm/分で引っ張る試験。
【請求項3】
前記絆創膏用フィルムの表面を覆う押さえ部材を更に備え、
前記押さえ部材には前記絆創膏用フィルムの表面を部分的に露出させる開口部が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の絆創膏。
【請求項4】
前記絆創膏用フィルムには切取線又は切断線が形成され、
前記切取線又は前記切断線を境界として、前記絆創膏用フィルムはフィルム部と前記フィルム部を包囲する周縁部とを有し、前記アクセス空間を介して前記フィルム部にアクセス可能であることを特徴とする請求項1~3の何れかに記載の絆創膏。
【請求項5】
前記アクセス空間は、前記支持体に形成された開口部又は切り欠き部からなることを特徴とする請求項1~4の何れかに記載の絆創膏。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、身体の出張部位や関節部位を被覆するための絆創膏及び絆創膏用フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
身体にできた傷口などを覆うための創傷被覆材として、家庭用の絆創膏や、ドレッシング材と呼ばれる医療用の絆創膏が挙げられる。しかしながら、一般的な家庭用の絆創膏は、比較的平坦な身体部位に貼付することを想定した形状であるため、指先等の出張部位や肘などの関節部位に貼付すると、皺が入ったり直ぐに剥がれてしまったりするという問題があった。そこで、指先用絆創膏として、指先全体を包み込むように折り返して貼付される複雑形状の絆創膏(特許文献1,2)や、指先に嵌められる指サック型の絆創膏(特許文献3)等が提案されている。また、従来のドレッシング材は高い伸縮性を有し、膝や肘などの曲げ伸ばしにも対応できるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開平6-70716号公報
【文献】再表第00/33777号公報
【文献】特開第2005-9058号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、折り返して貼付される複雑形状の絆創膏の場合、貼付方法が複雑で手間がかかったり、決められた手順で貼付しないと僅かな隙間から水が浸入したりするといった問題があった。更に、重なり部分が多いため厚ぼったく、見た目や使い心地も悪いという問題があった。また、指サック型の絆創膏の場合、使用者によってはサイズが合わないという問題が生じていた。
【0005】
また、身体の出張部位や関節部位に従来のドレッシング材を用いると、たとえ当該ドレッシング材が伸縮性に優れていても、皮膚が引っ張られるような不快感を生じるという問題が生じていた。即ち、膝や肘などを伸ばした状態でドレッシング材を貼付すると、膝や肘の曲げ伸ばしを行う度に皮膚が引っ張られ、不快感が生じる。
【0006】
本発明は、身体の出張部位や関節部位に良好に用いられる絆創膏及びこれに用いられる絆創膏用フィルムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の絆創膏用フィルムは、下記弾性ヒステリシス試験後の残留歪みが30%以上であることを特徴とする。
【0008】
弾性ヒステリシス試験:引張試験機により、チャック間距離50mmで、80mm(長さ)×20mm(幅)の試験片を引張速度200mm/分にて試験片の伸びが100%となるまで引張り1分間保持した後、戻り速度200mm/分で元の位置にまでもどす試験。
【0009】
本発明に係る絆創膏は、本発明の絆創膏用フィルムと、前記絆創膏用フィルムの裏面が仮接着された支持体と、を備え、前記支持体にはアクセス空間が設けられ、身体の出張部位が前記アクセス空間を介して前記絆創膏用フィルムに裏面側から押しつけられると、前記絆創膏用フィルムは前記出張部位の形状に応じて塑性変形し、前記出張部位を内包することを特徴とする。
【0010】
前記出張部位は、手の指先,足の指先,肘,膝,踵,肩先,顎先、又は鼻先であって、前記絆創膏は、指先用絆創膏、肘用絆創膏、膝用絆創膏、肩先用絆創膏、顎先用絆創膏、又は鼻先用絆創膏であるのが好ましい。
【0011】
本発明に係る他の絆創膏は、絆創膏用フィルムと、前記絆創膏用フィルムの裏面が仮接着された支持体と、を備え、前記支持体にはアクセス空間が設けられ、指先が前記アクセス空間を介して前記絆創膏用フィルムに裏面側から押しつけられると、前記絆創膏用フィルムは前記指先の形状に応じて塑性変形し、前記指先を内包することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の絆創膏用フィルムによれば、弾性ヒステリシス試験後の残留歪みが30%以上であるので、出張部位の形状に応じて良好に塑性変形し、出張部位を良好に内包することができ、また関節部位に貼付された場合には、関節部位の曲げ伸ばしに伴い塑性変形するので、被貼付部位にかかる伸縮方向のテンションが軽減され、貼付時の不快感を軽減できる。
【0013】
また、本発明に係る絆創膏によれば、絆創膏用フィルムは出張部位の形状に応じて塑性変形して出張部位を内包するので密着性がよく隙間から水が侵入することを防止することができ防水性が向上する。また、出張部位を絆創膏用フィルムに押しつけるだけで絆創膏用フィルムが出張部位に容易に密着するので、複雑な手順が不要であり、使い勝手がよい。
【0014】
本発明に係る他の絆創膏によれば、絆創膏用フィルムは指先の形状に応じて塑性変形して指先を内包するので密着性がよく隙間から水が侵入することを防止することができ防水性が向上する。また、指先を絆創膏用フィルムに押しつけるだけで絆創膏用フィルムが指先に容易に密着するので、複雑な手順が不要であり、使い勝手がよい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】(a)は本発明の第1実施形態に係る絆創膏の斜視図、(b)はその分解斜視図、(c)は図1(a)のIcーIc線断面図。
図2図1に示す絆創膏の出張部位への貼付手順を示す図。
図3】実施例と比較例の諸特性の評価結果を示す表。
図4】実施例と比較例の弾性ヒステリシス試験結果を示すグラフ。
図5】実施例と比較例の残留歪みを示す表。
図6図1に示す絆創膏の変形例を示す斜視図。
図7】(a)は本発明の第2実施形態に係る絆創膏の斜視図、(b)はその分解斜視図、(c)は図7(a)のVIIcーVIIc線断面図。
図8図7に示す絆創膏の出張部位への貼付手順を示す図。
図9】(a)は本発明の第3実施形態に係る絆創膏の斜視図、(b)はその分解斜視図、(c)は図9(a)のIXcーIXc線断面図。
図10】本発明の第4実施形態に係る絆創膏の断面斜視図。
図11】実施例と比較例の諸特性の評価結果を示す表。
図12】本発明の変形形態に係る絆創膏の斜視図。
図13】本発明の他の変形形態に係る絆創膏の斜視図。
図14】本発明の更に他の変形形態に係る絆創膏を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[第1実施形態]
図1図2を参照して本発明の第1実施形態に係る絆創膏1について説明する。本実施形態の絆創膏1は、身体における出張部位(例えば、手足の指先,肘,膝,踵,肩先,顎先、鼻先等)を内包するための創傷被覆材であって、図1に示すように絆創膏用フィルム2と、絆創膏用フィルム2の裏面2aの一部が仮接着された支持体3と、を有する。支持体3には絆創膏用フィルム2に裏側からアクセスするためのアクセス空間Sが設けられており、アクセス空間Sを介して絆創膏用フィルム2の裏面2aが部分的に露出されている。本実施形態では、支持体3に設けられた中央開口部3aがアクセス空間Sとして機能し、絆創膏用フィルム2は、アクセス空間Sを表側から覆う様に支持体3の表面3bに図示しない粘着層又は絆創膏用フィルム2が備える自着性によって仮接着されている。
【0017】
絆創膏用フィルム2は、少なくとも樹脂からなり、絆創膏用フィルム2に、絆創膏用フィルムの特性を発揮する範囲で紙、繊維が含まれていてもよい。
【0018】
絆創膏用フィルム2に使用する樹脂は、絆創膏用フィルムとした場合に残留歪みが30%以上となる樹脂であれば制限なく使用することができる。例えばポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリサルフォン系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエチレン系樹脂等、公知の樹脂を使用することができ、これらのいずれか1種、または2種以上の混合樹脂としてもよく、目的に応じて適宜選択すればよい。
【0019】
絆創膏用フィルム2は単層であっても良く、上記公知の樹脂を2層以上積層させたものであってもよい。絆創膏用フィルム2を2層以上とする場合に、使用する樹脂は同種でも異種であってもよく、目的に応じて適宜選択すればよい。また、絆創膏用フィルム2で使用する樹脂に、無機粒子、有機粒子等の粒子、及び硬化剤、着色剤等の添加剤の中から選択された1種又は2種以上の粒子及び/又は添加剤を添加してもよい。
【0020】
絆創膏用フィルム2は中央部から径方向外方に放射状に膨出する4個の膨出部2cを有し、全体として平面視略十字形状を有する。支持体3は例えばポリプロピレン製であって、中央開口部3aは絆創膏用フィルム2の形状に対応して平面視略十字形状を有し、絆創膏用フィルム2よりも一回り小さく形成されている。
【0021】
次に、絆創膏1の貼付手順について説明する。なお、ここでは出張部位が指先Fの場合を例に説明する。図2を参照して、指先Fを絆創膏1の裏側からアクセス空間Sを介して絆創膏用フィルム2に押し込むと、絆創膏用フィルム2は、周縁部が支持体3に仮接着した状態のまま中央部が指先Fの形状に応じて塑性変形し、指先Fを包み込む(図2(a),図2(b))。指先Fを更に押し込むと、絆創膏用フィルム2の周縁部は支持体3から剥がれるので(図2(c))、絆創膏用フィルム2の周縁部を手で押さえて指先Fに貼付させ、指先Fを支持体3から引き抜けばよい(図2(d))。
【0022】
このように、本実施形態の絆創膏1は、絆創膏用フィルム2が出張部位の形状に応じて塑性変形するので密着性が良く、防水性を向上できる。また、出張部位を絆創膏用フィルム2に押し付けるだけで絆創膏用フィルム2が出張部位に密着するので、複雑な手順を要することなく簡単に貼付できる。また、絆創膏用フィルム2には複数の膨出部2cが設けられていることから、絆創膏用フィルム2の周縁部を出張部位に貼付させても重なり部分を少なくできる。
【0023】
なお、出張部位が肘や膝の場合には、肘や膝を曲げた状態で貼付すればよい。また、絆創膏用フィルム2の寸法は、貼付対象となる出張部位に応じて適宜設定すればよく、例えば指先用とする場合には、図2(d)に示すように指の第1関節程度までを内包可能な寸法であれば良い。更に、アクセス空間Sの寸法としては、出張部位を挿通可能な大きさであればよい。
【0024】
次に、絆創膏用フィルム2の好適な特性について説明する。なお、以下の説明において、「引張試験」というときは、引張試験機により、チャック間距離50mmで80mm(長さ)×20mm(幅)の試験片を引張速度300mm/分で引っ張る試験をいう。
「弾性ヒステリシス試験」というときは、引張試験機により、チャック間距離50mmで、80mm(長さ)×20mm(幅)の試験片を引張速度200mm/分にて試験片の伸びが100%となるまで引張り1分間保持した後、戻り速度200mm/分で元の位置にまでもどす試験をいう。また「残留歪み」というときは、上記弾性ヒステリシス試験後の試験片の残留歪みをいう(図4参照)。
【0025】
絆創膏用フィルム2の厚みは、好ましくは5μm~2000μmであり、より好ましくは10μm~1000μmであり、最も好ましくは15μm~500μmである。絆創膏用フィルム2の厚みが上記範囲内にあれば、絆創膏用フィルム2により出張部位を内包した際における優れたフィット感(密着性)を有することができる。
【0026】
また、絆創膏用フィルム2は全方向において200%以上の破断伸度を有するのが好ましい。200%以上の破断伸度を有することで、絆創膏用フィルム2は破断することなく出張部位を確実に内包できる。なお、破断伸度とは、引張試験において、試験片が破断した際の伸びをいう。
【0027】
更に、絆創膏用フィルム2の20%伸度応力(σ20)は、好ましくは0.2N/mm~10.0N/mmであり、より好ましくは1.0N/mm~10.0N/mmである。絆創膏用フィルム2の20%伸度応力が上記範囲内にあれば、出張部位により絆創膏用フィルム2を塑性変形させた際におけるツッパリ感の発生を抑制できる。なお、伸度応力とは、引張試験における試験力(引張時荷重値)を試験片の断面積で除した値をいう。
【0028】
絆創膏用フィルム2の20%伸度応力と100%伸度応力(σ100)との差(σ100-σ20)は、-2.0N/mm~2.0N/mmであるのが好ましく、-1.0N/mm~1.0N/mmであるのがより好ましい。絆創膏用フィルム2の20%伸度応力と100%伸度応力との差がこの範囲内であれば、出張部位を絆創膏用フィルム2に押し付けて塑性変形させる際に過度な力が不要になり、絆創膏用フィルム2を塑性変形させた際におけるツッパリ感の発生をより確実に抑制できる。
【0029】
絆創膏用フィルム2の破断強度は、5.0N/mm以上であるのが好ましく、15.0N/mm~100N/mmであるのがより好ましい。絆創膏用フィルム2の破断強度が上記範囲内にあれば、出張部位により塑性変形させた際に絆創膏用フィルム2が破れるのを防止できる。なお、破断強度とは、引張試験において試験片が破断したときの強度(引張時重荷値)を試験片の断面積で除した値をいう。
【0030】
絆創膏用フィルム2の透湿度は、JIS Z0208に準拠したカップ法により測定された透湿度が、好ましくは500g/m・24h以上であり、より好ましくは800g/m・24h以上である。絆創膏用フィルム2の透湿度が上記範囲内にあれば、例えば発汗が盛んな指先Fに長時間貼付した場合であっても蒸れの発生を抑制できる。
【0031】
絆創膏用フィルム2の残留歪みは全方向において30%以上であるのが好ましく、より好ましくは40%以上である。絆創膏用フィルム2の残留歪みがこの範囲であれば、絆創膏用フィルム2は出張部位の形状に応じて十分に塑性変形し、確実に出張部位を内包できると共に優れたフィット感(密着性)を達成でき、更に皮膚に過剰なテンションがかかるのを防止できる。
【0032】
また、絆創膏用フィルム2の対SUS、180°ピールにおける粘着力(絆創膏用フィルム2に設けられた図示しない粘着層の粘着力又は絆創膏用フィルム2が自ら備える粘着力)は、好ましくは0.01N/20mm~20.0N/20mmであり、より好ましくは0.1N/20mm~15.0N/20mmである。なお、当該粘着力は、110mm(長さ)×20mm(幅)の試験片を剥離速度300mm/分で剥離させた際における、JIS Z0237に準拠した方法により測定されたものである。
【0033】
以下に示す本発明の実施例1,2と比較例1~3の諸特性の評価結果を図3の表1に示す。表1における官能評価は、手の指先を支持体3のアクセス空間S(直径約3cm)を介して絆創膏用フィルム2に押しつけ、第1関節付近まで押し込んだ際のツッパリ感(押し込み易さ)、フィット感(密着性)、蒸れ感について社内モニターテスト(10名の合議)を行い評価した。また、当該実施例1,2及び比較例1~3の弾性ヒステリシス試験結果を示すグラフを図4に、弾性ヒステリシス試験後における残留歪みを図5の表2に示す。なお、上述したように、弾性ヒステリシス試験では試験片を引張速度200mm/分で引っ張るため、試験片を引張速度300mm/分で引っ張る引張試験とは条件が異なり、図4のグラフが示す各試験片の伸度応力値は引張試験により測定される伸度応力値とは必ずしも一致しない。
【0034】
実施例1:テーブル1に示す物性を有するポリウレタン系樹脂Aと、トルエンと、メチルエチルケトン(MEK)とを、91.0:4.45:4.45の重量比で配合した混合溶液を、PETフィルムに離型層が積層された離型PETフィルムの離型層上にバーコーターを用いて塗布し、80℃のオーブンにて10分間乾燥させた後、40℃のオーブンにて3日間乾燥させた後、離型PETフィルムを離型層とともに取り除いて厚み約40μmの絆創膏用フィルムを得た。
【0035】
実施例2:テーブル1に示す物性を有するポリウレタン系樹脂A及びポリウレタン系樹脂Bと、テーブル2に示す物性を有する硬化剤Cと、トルエンと、メチルエチルケトン(MEK)とを、70.1:20.9:0.104:4.45:4.45の重量比で配合した混合溶液を、離型PETフィルムの離型層上にバーコーターを用いて塗布し、80℃のオーブンにて10分間乾燥させた後、40℃のオーブンにて3日間乾燥させた後、離型PETフイルムを離型層とともに取り除いて厚み約40μmの絆創膏用フィルムを得た。
【テーブル1】
【0036】

【テーブル2】
【0037】

比較例1:アルゴフィットFT防水タイプ(ピアック株式会社製の救急絆創膏)に使用されているポリウレタンフィルム
比較例2: トーヨーキズテープ(東洋化学株式会社製の救急絆創膏)に使用されているポリ塩化ビニルフィルム
比較例3:エアウォール(株式会社共和製のフィルムドレッシング)に使用されているポリウレタンフィルム
[第1実施形態の変形例]
【0038】
次に、第1実施形態の変形例について説明する。なお、本変形例及び以下の実施形態においても、身体出張部位が指先Fである場合を例に説明する。また、本変形例及び以下の実施形態において、上述した第1実施形態のものと実質同一の部材には同一の参照番号を付し、その説明は省略する。
【0039】
図6を参照して、本変形例の絆創膏1Aでは、支持体3’が平面視円形状とされ、支持体3’を支持する持ち手部材6が設けられている。持ち手部材6は円筒状を有し、支持体3’は持ち手部材6の上面開口部(図示せず)を覆う様に取り付けられている。使用に際しては、例えば左手で持ち手部材6を把持し、右手の指先(F)を持ち手部材6の下側開口部6aから挿入して絆創膏用フィルム2に押し込み、上述したのと同様に指先に貼付させれば良い。このように持ち手部材6を設けることにより絆創膏1Aを把持しやすくなり、絆創膏1Aを貼付しやすくできる。
[第2実施形態]
【0040】
次に、本発明の第2実施形態に係る絆創膏について説明する。図7を参照して、本実施形態の絆創膏101は、第1実施形態の絆創膏1と略同一であるが、押さえ部材5を更に備える点で絆創膏1と異なる。
【0041】
本実施形態における押さえ部材5は、中央部に円形の開口部5aが設けられ、全体として平面視略円環形状を有するPETフィルム、ポリプロピレンフィルム等のフィルム材から成り、絆創膏用フィルム2の表面2bから支持体3の表面3bにかけて仮接着されて絆創膏用フィルム2の表面2bを覆っている。開口部5aは絆創膏用フィルム2の外径よりも小径であって、開口部5aを介して絆創膏用フィルム2の表面2bが露出する。また、押さえ部材5には径方向外方に突出する摘み部5bが設けられ、摘み部5bは支持体3の外縁から外方に延出している。
【0042】
絆創膏101の貼付手順を説明する。図8を参照して、上述した第1実施形態と同様に、まず絆創膏101の裏側からアクセス空間Sを介して指先Fを絆創膏用フィルム2に押し込む。すると、絆創膏用フィルム2は指先Fの形状に応じて塑性変形し指先Fを包み込み、このようにして絆創膏用フィルム2により内包された指先Fは押さえ部材5の開口部5aを介して表側に突出する(図8(a))。次に、摘み部5bを把持して押さえ部材5を絆創膏用フィルム2及び支持体3から剥がし、指先Fから引き抜く(図8(b))。この状態で指先Fを更に押し込むと、絆創膏用フィルム2は支持体3から剥がれる(図8(c))。その後、上述したのと同様に、絆創膏用フィルム2の周縁部を手で押さえて指先Fに貼付させ、指先Fを支持体3から引き抜けばよい。
【0043】
ここで、本実施形態の絆創膏101は押さえ部材5を有するので、絆創膏用フィルム2の支持体3に対する粘着力を第1実施形態におけるものより小さくでき、絆創膏用フィルム2による出張部位におけるツッパリ感を軽減できる。即ち、出張部位におけるツッパリ感は特に、図2(c)に示す段階で出張部位(指先F)を絆創膏用フィルム2に押し込んで支持体3から引き剥がす際に生じるため、絆創膏用フィルム2の支持体3に対する粘着力を小さくすれば、ツッパリ感は軽減される。しかしながら、粘着力をあまり小さくすると、図2(b)の段階で絆創膏用フィルム2が十分に塑性変形する前に絆創膏用フィルム2が支持体3から剥がれてしまうおそれが生じる。
【0044】
この点、本実施形態では押さえ部材5により絆創膏用フィルム2が支持体3に対して押さえられているので、支持体3に対する粘着力が比較的小さくても、絆創膏用フィルム2が十分に塑性変形されないうちに支持体3から剥がれるのを防止できる。また、押さえ部材5を取り外した状態で図8(c)に示す様に出張部位(指先F)を押し込めば、比較的小さな力で絆創膏用フィルム2を支持体3から剥がすことができ、ツッパリ感の発生を軽減できる。
[第3実施形態]
【0045】
次に、本発明の第3実施形態に係る絆創膏について説明する。図9を参照して、本実施形態の絆創膏201は、上述した絆創膏101と略同一であるが、絆創膏用フィルム202の外形は支持体3の外形と実質同一とされている。また、絆創膏用フィルム202には切取線Lが形成されており、切取線Lを境として第1実施形態や第2実施形態の絆創膏用フィルム2に対応するフィルム部202Aと、フィルム部202Aを包囲する周縁部202Bに区切られている。
【0046】
この絆創膏201を貼付するには、第2実施形態と同様に、絆創膏201の裏側からアクセス空間Sを介して出張部位(例えば、指先F)を絆創膏用フィルム202に押し込み、フィルム部202Aを出張部位の形状に塑性変形させる。次に、押さえ部材5を絆創膏用フィルム202から剥がして取り外す。この状態で、出張部位を更に押し込むと、フィルム部202Aは切取線Lに沿って周縁部202Bから分離すると共に支持体3から剥がれ、周縁部202Bから分離したフィルム部202Aが、第2実施形態の絆創膏用フィルム2として機能する。その後、上述したのと同様に、絆創膏用フィルム2(即ち、フィルム部202A)の周縁部を手で押さえて出張部位に貼付させればよい。
【0047】
なお、切取線Lは、製造工程において絆創膏用フィルム202を支持体3に仮接着した状態で形成するのが好ましく、また切断線Lの例としてミシン目やハーフカット線が挙げられる。また、切取線Lに代えて切断線を形成し、絆創膏用フィルム202をフィルム部202Aと周縁部202Bとに予め分離させておいてもよい。
【0048】
このように、絆創膏用フィルム202を支持体3に仮接着した状態で切取線L(又は切断線)を絆創膏用フィルム202に形成することにより、製造工程における絆創膏用フィルム2とアクセス空間Sとの精密な位置合わせが不要となり、製造工程を簡易化できる。
[第4実施形態]
【0049】
次に、図10を参照して本発明の第4実施形態に係る絆創膏301について説明する。図10に示すように、本実施形態の絆創膏301は、絆創膏用フィルム2と、絆創膏用フィルム2の裏面2aが仮接着された保護シート7と、を有する。絆創膏301を身体に貼付するには、保護シート7を剥がし、絆創膏用フィルム2を身体の被貼付部位に貼付すればよい。
【0050】
絆創膏301は身体の如何なる部位にも貼付できるが、主に関節部位(例えば、肘関節部,膝関節部,中手指関節部、肩関節部等)に好適に貼付される。例えば、絆創膏301を肘関節部に貼付する場合には、肘を伸ばした状態で貼付する。このように肘を伸ばした状態で貼付すると、初めのうちは肘を曲げると絆創膏用フィルム2が伸張されて被貼付部位にテンションがかかるが、絆創膏用フィルム2は伸張されると塑性変形するため、塑性変形後は肘の曲げ伸ばしをしてもこのようなテンションがかかり難くなり、違和感が生じにくくなる。また、肘などの関節部位を伸ばした状態(即ち、被貼付部位がより平面的に保たれた状態)で絆創膏301を貼付できるので、関節部位を曲げた状態で貼付する場合と比較して、絆創膏301の貼付を容易にできる。
【0051】
なお、本実施形態においては、引張試験による絆創膏用フィルム2の20%引張時荷重値は1.5N/20mm~3.0N/20mmであるのが好ましい。20%引張時荷重値を3.0N/20mm以下とすることにより、関節部位に貼付した直後における過度の違和感(ツッパリ感)を回避できる。また、20%引張時荷重値を1.5N/20mm以上とすることにより、絆創膏用フィルム2に十分なコシを持たせることができ、絆創膏用フィルム2の取扱性を容易に向上させることができる。即ち、絆創膏用フィルム2の表面に取扱性を向上させるための工程フィルムを設けなくても、絆創膏用フィルム2単体(保護シート7から剥がされた状態)でも皺になりにくく、対象部位への貼付を容易にできる。
【0052】
本発明の実施例3と上述の比較例1~3の諸特性の評価結果を図11の表3に示す。実施例3は上述の実施例1の薄膜品であって、絆創膏用フィルム2の厚みを20μmとした点を除いて実施例1と同一である。また、表3における官能評価は、肘を伸ばした状態で絆創膏用フィルム2を肘関節部に貼付し、絆創膏用フィルム2の肘関節部への貼りやすさ(絆創膏用フィルム2単体での取扱性、シワになりにくさ)と、貼付直後の違和感(ツッパリ感)と、肘関節の曲げ伸ばしを50回繰り返した後の違和感(ツッパリ感)について、社内モニターテスト(10名の合議)を行い評価した。
【0053】
以上、本発明の実施形態に係る絆創膏について添付の図面を参照して説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されず、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形、修正が可能である。
【0054】
例えば、絆創膏用フィルム2の形状(及びこれに対応するアクセス空間Sの形状)は必ずしも十字形状である必要はなく、例えば円形や多角形であっても良い。また、上記実施形態においては絆創膏用フィルム2の膨出部2cの数を4個にしたが、1個以上の任意の個数の膨出部2cを有するものとしても良い。更に、上述の変形例と同様に、第2及び第3実施形態の絆創膏101,201に持ち手部材6を設けても良い。
【0055】
上記各実施形態では支持体3は平面視矩形状を有するが、支持体3の形状は必ずしも平面視矩形状である必要はなく、例えば円形や他の多角形であってもよく、あるいは図12に示す様に外縁に一対の平面視略円弧状の凹部3dが設けられた形状であってもよい。
【0056】
また、上記各実施形態では、アクセス空間Sは絆創膏用フィルム2(フィルム部202A)と大きさの異なる同一形状を有するものとしたが、アクセス空間Sを介して絆創膏用フィルム2にアクセス可能であれば良く、アクセス空間Sと絆創膏用フィルム2とは必ずしも大きさの異なる同一の形状を有する必要はない。また、アクセス空間Sは、必ずしも周囲が閉鎖された開口部3aである必要はなく、図13に示す様に周囲の一部が開放された切り欠き部3gから構成されていてもよい。アクセス空間Sをこのような切り欠き部3gで構成した場合、支持体3を出張部位(指先F)から外す際に、出張部位をA方向に縦に引き抜く代わりにB方向へ横に引き抜くことができ、支持体3の取り外しがより容易になる。押さえ部材5に設けられる開口部5aについても同様に、必ずしも周囲が閉鎖されて押さえ部材5を厚み方向に貫通する貫通孔により構成される必要はなく、周囲の一部が開放された切り欠き部により構成されても良い。
【0057】
上記第2及び第3実施形態においては、押さえ部材5を支持体3とは別体のフィルム材から構成したが、押さえ部材5はこれに限定されず、例えば図14に示す押さえ部材5Aのように支持体3と一体に構成され、支持体3に対して折り畳まれて使用されるものであってもよい。即ち、図14に示す形態においては、1枚のシート材30の片側が支持体3として機能し、他側が押さえ部材5Aとして機能し、押さえ部材5Aが図14(a)に示す様に折り畳まれると、押さえ部材5Aは絆創膏用フィルム2の表面2aを覆う。また、押さえ部材5Aには開口部5aが設けられており、この開口部5aを介して絆創膏用フィルム2へのアクセスが可能になる。
【0058】
使用に際しては、図14(a)に示すように押さえ部材5Aが折り畳まれた状態で、上述したのと同様に出張部位を絆創膏用フィルム2に押し込んで開口部5aに挿入させる。押さえ部材5Aを図14(b)に示す様に開いて更に出張部位を押し込むと、絆創膏用フィルム2は支持体3から剥がれるので絆創膏用フィルム2の周縁部を出張部位に貼付させ、出張部位を支持体3から引き抜けばよい。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明の絆創膏は、家庭用絆創膏の他、医療用創傷被覆材としてのドレッシング材等に利用でき、本発明の絆創膏用フィルムは、家庭用絆創膏用フィルムの他、ドレッシング材用フィルムとして利用できる。
【符号の説明】
【0060】
1,101,201,301 絆創膏
2,202 絆創膏用フィルム
3 支持体
5 押さえ部材
6 持ち手部材
7 保護シート
F 指先(出張部位)
S アクセス空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14