(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-02
(45)【発行日】2022-05-13
(54)【発明の名称】削孔装置および削孔方法
(51)【国際特許分類】
B26F 3/00 20060101AFI20220506BHJP
E21B 7/18 20060101ALI20220506BHJP
B28D 1/14 20060101ALI20220506BHJP
【FI】
B26F3/00 M
E21B7/18
B28D1/14
(21)【出願番号】P 2018078831
(22)【出願日】2018-04-17
【審査請求日】2021-02-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】510181909
【氏名又は名称】株式会社久野製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【氏名又は名称】山口 朔生
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【氏名又は名称】山口 真二郎
(72)【発明者】
【氏名】高倉 克彦
(72)【発明者】
【氏名】久野 浩二
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 一広
【審査官】石川 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-060091(JP,A)
【文献】特開2017-144503(JP,A)
【文献】特開2000-073681(JP,A)
【文献】特開2004-169376(JP,A)
【文献】特開平11-028720(JP,A)
【文献】特許第2887270(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26F 3/00
E21B 7/18
B28D 1/14
B26F 1/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送り出し方向と異なる方向に削進するための削孔装置であって、
削孔部と、
屈曲可能な筒形状を呈し、一端を前記削孔部に接続した、伝達部と、
を少なくとも具備し、
前記伝達部は、
弾性を有する外筒と、
前記外筒の内側に配置して該外筒の屈曲に追従可能に構成した、内筒と、を少なくとも含み、
前記内筒が、前記伝達部の軸方向に重ねて配置する複数のリング体からなり、
前記内筒の外周面のうち少なくとも一部に、螺旋状に連続形成した螺旋溝を設けてあることを特徴とする、
削孔装置。
【請求項2】
送り出し方向と異なる方向に削進するための削孔装置であって、
削孔部と、
屈曲可能な筒形状を呈し、一端を前記削孔部に接続した、伝達部と、
を少なくとも具備し、
前記伝達部は、
弾性を有する外筒と、
前記外筒の内側に配置して該外筒の屈曲に追従可能に構成した、内筒と、を少なくとも含み、
前記内筒が、前記伝達部の軸方向に重ねて配置する複数のリング体からなり、
前記内筒の外周面のうち少なくとも一部に、ループ状に形成した複数の環溝を設けてあることを特徴とする、
削孔装置。
【請求項3】
送り出し方向と異なる方向に削進するための削孔装置であって、
削孔部と、
屈曲可能な筒形状を呈し、一端を前記削孔部に接続した、伝達部と、
を少なくとも具備し、
前記伝達部は、
弾性を有する外筒と、
前記外筒の内側に配置して該外筒の屈曲に追従可能に構成した、内筒と、を少なくとも含み、
前記内筒が、前記伝達部の軸方向に重ねて配置する複数のリング体からなり、
前記リング体の外周面に、軸方向へと連続形成した複数の環溝を設け、
前記外筒が、前記環溝を埋めるように前記リング体の外周を被覆してなる弾性樹脂からなることを特徴とする、
削孔装置。
【請求項4】
前記外筒が、コイルスプリングであることを特徴とする、
請求項1または2に記載の削孔装置。
【請求項5】
前記リング体同士を、前記伝達部の軸方向に対してテーパを有する面で雌雄嵌合可能に構成してあることを特徴とする、
請求項
1乃至4のうち何れか1項に記載の削孔装置。
【請求項6】
前記外筒と内筒との間、または、前記内筒に設けた穴または溝にワイヤーを配置してあり、
前記ワイヤーの一端は、前記削孔部に接続してあり、
前記ワイヤーの他端は、前記ワイヤーの張力を調整可能な張力調整治具に接続してあることを特徴とする、
請求項1乃至5のうち何れか1項に記載の削孔装置。
【請求項7】
前記内筒の外表面、または前記外筒の内表面に、前記ワイヤーを収納可能な収納溝を設けてあることを特徴とする、
請求項6に記載の削孔装置。
【請求項8】
送り出し方向と異なる方向に削進するための削孔方法であって、
送り出し方向と削孔方向とを連絡するコーナー部に、ガイド材を配置し、
請求項1乃至7のうち何れか1項に記載の削孔装置を、前記伝達部が前記ガイド材によって屈曲した状態を維持したまま送り出すことによって、前記削孔部を前記削孔方向に進行させて削進を行うことを特徴とする、
削孔方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は削孔装置に関し、特に、送り出し方向と異なる方向に削進可能な削孔装置および該削孔装置を用いた削孔方法に関する。
【背景技術】
【0002】
構造物の削孔装置にかかる公知技術として以下の特許文献に記載の装置がある。
特許文献1には、ノズルを削孔方向に沿って進退可能な前進後退手段と、ノズルと前進後退手段を2方向に移動させる直交方向移動手段とを備えたウォータージェット削孔装置が開示されている。
また、特許文献2には、駆動モータと、駆動モータの先端に設けたノズルと、後端に設けた剛性ホースと、外方に設けた外筒と、を備えた削孔装置が開示されている。
【0003】
これらの削孔装置は、スライドベースや高圧ホースによって削孔部を被削孔体内に送り出して直線状に削進するもので、送り出し方向と削孔方向が同一である場合に限られている。
そこで、本願出願人は、構造物の内部で送り出し方向と異なる方向に折曲して削進可能な削孔装置(折曲進行式掘削装置)の開発に着手した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平11-28720号公報
【文献】特許第2887270号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この折曲進行式掘削装置の開発にあっては、如何に先端の削孔部の直進性を確保するかが重要な課題である。
【0006】
よって、本願発明は、送り出し方向と異なる方向に削進可能な削孔装置において、前進する削孔部の直進性を確保することが可能な手段の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題を解決すべくなされた本願の第1発明は、送り出し方向と異なる方向に削進するための削孔装置であって、削孔部と、屈曲可能な筒形状を呈し、一端を前記削孔部に接続した、伝達部と、を少なくとも具備し、前記伝達部は、弾性を有する外筒と、前記外筒の内側に配置して該外筒の屈曲に追従可能に構成した、内筒と、を少なくとも含み、前記内筒が、前記伝達部の軸方向に重ねて配置する複数のリング体からなり、前記内筒の外周面のうち少なくとも一部に、ループ状に形成した複数の環溝を設けてあることを特徴とする。
また、本願の第2発明は、送り出し方向と異なる方向に削進するための削孔装置であって、削孔部と、屈曲可能な筒形状を呈し、一端を前記削孔部に接続した、伝達部と、を少なくとも具備し、前記伝達部は、弾性を有する外筒と、前記外筒の内側に配置して該外筒の屈曲に追従可能に構成した、内筒と、を少なくとも含み、前記内筒が、前記伝達部の軸方向に重ねて配置する複数のリング体からなり、前記内筒の外周面のうち少なくとも一部に、ループ状に形成した複数の環溝を設けてあることを特徴とする。
また、本願の第3発明は、送り出し方向と異なる方向に削進するための削孔装置であって、削孔部と、屈曲可能な筒形状を呈し、一端を前記削孔部に接続した、伝達部と、を少なくとも具備し、前記伝達部は、弾性を有する外筒と、前記外筒の内側に配置して該外筒の屈曲に追従可能に構成した、内筒と、を少なくとも含み、前記内筒が、前記伝達部の軸方向に重ねて配置する複数のリング体からなり、前記リング体の外周面に、軸方向へと連続形成した複数の環溝を設け、前記外筒が、前記環溝を埋めるように前記リング体の外周を被覆してなる弾性樹脂からなることを特徴とする。
また、本願の第4発明は、前記第1発明または第2発明において、前記外筒が、コイルスプリングであることを特徴とする。
また、本願の第5発明は、前記第1発明乃至第4発明のうち何れか1つの発明において、前記リング体同士を、前記伝達部の軸方向に対してテーパを有する面で雌雄嵌合可能に構成してあることを特徴とする。
また、本願の第6発明は、前記第1発明乃至第5発明のうち何れか1つの発明において、前記外筒と内筒との間、または、前記内筒に設けた穴または溝にワイヤーを配置してあり、前記ワイヤーの一端は、前記削孔部に接続してあり、前記ワイヤーの他端は、前記ワイヤーの張力を調整可能な張力調整治具に接続してあることを特徴とする。
また、本願の第7発明は、前記第6発明において、前記内筒の外表面、または前記外筒の内表面に、前記ワイヤーを収納可能な収納溝を設けてあることを特徴とする。
また、本願の第8発明は、送り出し方向と異なる方向に削進するための削孔方法であって、送り出し方向と削孔方向とを連絡するコーナー部に、ガイド材を配置し、前記第1発明乃至第7発明のうち何れか1つの発明に記載の削孔装置を、前記伝達部が前記ガイド材によって屈曲した状態を維持したまま送り出すことによって、前記削孔部を前記削孔方向に進行させて削進を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、以下に記載する効果のうち、少なくとも何れか1つの効果を有する。
(1)弾性を有する外筒に、複数のリング体で構成した内筒を追加することで、伝達部の剛性向上に繋がる。よって、前進する削孔部の直進性を確保して削孔精度をより向上させることができる。
(2)リング体同士を雌雄嵌合する際に、伝達部の軸方向に対してテーパを有する面を設けておくことで、伝達部を曲げた状態から直線状態に戻す際の位置の復元性がより向上する。
(3)内筒の外周面に、外筒の内周形状に対応する螺旋溝または環溝を設けることで、伝達部の曲げ伸ばし動作の際に、外筒と内筒とのずれが生じにくい。
(4)伝達部の剛性調整が可能となる。
外筒と内筒との間にワイヤーを配置することで、ワイヤーにテンション(張力)を掛けることにより、伝達部の剛性調整が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施例1に係る削孔装置の使用状態を示す概略図。
【
図2】実施例1に係る削孔装置の構成を示す概略図。
【
図3】実施例1に係る伝達部の構成を示す概略斜視図。
【
図4】実施例1に係る伝達部の構成を示す概略断面図。
【
図5】実施例2に係る削孔装置の構成を示す概略図。
【
図6】実施例3に係る削孔装置の構成を示す概略図。
【
図7】実施例4に係る削孔装置の構成を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0011】
<1>全体構成(
図1)
図1は、本実施例に係る削孔装置の使用状態を示す概略図であり、
図2は、当該削孔装置の構成を示す概略図である。
本発明に係る削孔装置は、送り出し方向D1と異なる方向である削孔方向D2に向けて削孔を要する被削孔体Xに用いる装置である。
そして、本実施例では、削孔装置を、先端に設けた削孔部Aと、削孔部Aの後端に接続する伝達部Bとを少なくとも具備して構成する。
図1に示すように、本発明に係る削孔装置を使用する際には、被削孔体Xの外から伝達部Bを送り出し方向D1へと送り出していき、被削孔体Xの内部において削孔部Aが削孔方向D2に屈曲した先で被削孔体Xを削進していく。
以下、各構成要素の詳細について説明する。
【0012】
<2>削孔部(
図1,2)
削孔部Aは、被削孔体Xの削孔機能を備えた部材である。
本実施例では、
図2に示すように、削孔部Aを、ヘッド10と、ヘッド10を回転可能に接続するスイベル20と、を少なくとも備えた、いわゆるウォータージェット式の削孔機構を採用している。
よって、削孔部Aの後端にはヘッド10へと高圧水を供給可能な高圧ホースCを接続している。
【0013】
<2.1>ヘッド
ヘッド10は、回転しながら高圧水を噴出することで被削孔体Xの削孔を行うための部材である。
ヘッド10は、先端に噴出孔11を有するとともにヘッド10の前後方向を回転軸として回転可能に構成している。
使用時には、ポンプ(図示せず)から供給され、高圧ホースCを経由して送られる高圧水を、ヘッド10を回転させながら噴出孔11から噴出することで、被削孔体Xの削孔を可能としている。
【0014】
<2.1.1>ヘッド外周面の態様
なお、
図1,2では図示しないが、ヘッド10の外周面には、ヘッド10の後方に向かって高圧水を噴出することで破砕屑をヘッド10の後方へ排除するための排出促進用の噴出孔や、ヘッド10の側方に向かって高圧水を噴出することでヘッド10そのものに回転力を与える自回転用の噴出孔を別途設けておいても良い。
また、前記したこれらの機能を兼用した噴出孔を設けても良い。
【0015】
<3>伝達部(
図1~4)
伝達部Bは、送り出しによる力を削孔部Aへ伝達するための部材である。
伝達部Bは、送り出し方向D1と削孔方向D2が異なる状態であっても、送り出しによる力を削孔部Aへ伝達可能な剛性を備えるものとする。
図2に示すように、本実施例に係る伝達部Bは、弾性を有する外筒30と、該外筒30の内側に配置して外筒30の屈曲に追従可能な内筒40とで構成している。
そして、内筒40の内部には高圧ホースCを挿通している。
よって、伝達部Bは、該伝達部Bに収容した可撓性を備えた高圧ホースCとともに任意の部分で屈曲して、屈曲部B1を形成することができる。
以下、
図3,4を参照しながら、伝達部を構成する各部材の詳細について説明する。
【0016】
<3.1>外筒(
図3,
図4(a))
外筒30は、伝達部Bを任意の部分で屈曲可能に構成するための弾性部材である。
図3、
図4(a)に示すように、本実施例では、外筒30を、鋼線をコイル状に巻いてなる素線を有するコイルスプリング31で構成している。
コイルスプリング31は自然状態において直線状を呈し、一定の曲げ応力を与えることで直線状態から屈曲でき、曲げ応力を解除すれば、再び直線状態に復元する性質を有する。
また、コイルスプリング31の外表面に対し、シリコンシーラントなどの公知の弾性樹脂材をコーティングしておいてもよい(図示せず)。
外筒30をコイルスプリング31で構成しておくと、コイルスプリング31を構成する素線を、後述する内筒40に設けた螺旋溝41へと収容することができるようになるため、より外筒30と内筒40とのずれが生じにくい。
【0017】
<3.2>内筒(
図3,
図4(a))
内筒40は、伝達部Bの剛性を高めるための部材である。
図4(a)に示すように、内筒40は、前記高圧ホースCを挿通可能な中空部を有する筒状部材である。
そして内筒40の外周面には外筒30を構成するコイルスプリング31の素線と噛み合うように形成した螺旋溝41を設けている。
【0018】
<3.2.1>螺旋溝(
図4(a))
螺旋溝41は、前記コイルスプリング31の素線と面接触して噛み合うための部材である。
螺旋溝41は、前記素線の螺旋形状と対応するように溝を連続形成してなる。この螺旋溝41の形成と同時に、螺旋溝41の間には、螺旋状の縁である外縁42も形成される。
【0019】
<3.2.2>複数のリング体(
図3,
図4)
本発明では、
図4(a)に示すように、内筒40を伝達部Bの軸方向に重ねて配置する複数のリング体50で構成することができる。
本実施例に係るリング体50は、前記伝達部Bの軸方向において前後する別のリング体50と嵌合構造によって脱着自在に構成している。
より詳細には、リング体50の本体部前方には凸部51を設け、本体部後方に前記凸部51に対応する凹部52を設けている。
そして、一方のリング体50の凹部52に他方のリング体の凸部51を嵌合してくことで、複数のリング体50でもって内筒40を形成することができる。
【0020】
<3.2.3>嵌合部分の形状(
図4(a))
同じく
図4(a)に示すように、本実施例に係るリング体50は、前記凸部51の側面を先端側に向けて先細となるようにテーパを設け、前記凹部52も当該テーパに対応する形状としている。
当該形状によれば、伝達部Bの曲げ伸ばしに伴うコイルスプリング31の素線間の離隔・接近動作の際に、各リング体50の螺旋溝41が素線に追従しやすくなる。よって、伝達部Bを曲げた状態から直線状態に戻す際の位置の復元性に優れる。
【0021】
<3.3>組立例(
図4(b))
図4(b)は、外筒30の内部に内筒40を配置した状態の断面を示す概略である。
外筒30と内筒40との結合方法は特段限定しない。
本実施例では、複数のリング体50を予め嵌合して一体とした状態の内筒40を、外筒30であるコイルスプリング31の内部を押し広げるように差し込み、その後内筒40を回転させて素線と螺旋溝41とが噛み合って正しい位置に収まるよう位置の微調整を行っている。
この噛み合いによって、伝達部Bの曲げ伸ばしに伴う、コイルスプリング31と内筒40との間のずれを抑制することができ、伝達部Bの曲げ伸ばしの際の形状復元性が良好となる。
【0022】
<3.4>その他の変形例
その他、本発明に係る伝達部Bでは、以下の変形例を採用することができる。
【0023】
<3.4.1>内筒の外形
本発明では、内筒40の外形を外筒30(コイルスプリング31)の内径よりもやや大きめに構成することができる。
当該形状によれば、内筒40でもってコイルスプリング31が押し開かれることにより、コイルスプリング31が若干引っ張られて伸びた状態となるため、コイルスプリング31の復元力によって内筒40と密着することにより一体性が高まり、伝達部Bとしての剛性の向上効果が期待できる。
【0024】
<4>その他の部材(
図1)
本実施例では、さらに、掘削装置の送り出しに用いる送出部60と、送り出し方向D1と削孔方向D2とのコーナー部D3に配置するガイド材70とを設けている。
以下、各部材の詳細について説明する。
【0025】
<4.1>送出部
送出部60は、伝達部Bを介して削孔部Aを送り出すための部材である。
本実施例では、送出部60として、被削孔体Xの壁面に反力を取りつつ、伝達部Bを把持して送り出し方向D1にスライド可能な構造を採用する。
送出部60によって送り出し方向D1に送り出された伝達部Bは、屈曲部B1で屈曲し、削孔方向D2へと押し出される。
なお、本発明において、送出部60を介した伝達部Bの送り出し作業は機械に限らず、人力で行っても良い。
【0026】
<4.2>ガイド材
ガイド材70は、送り出し方向D1と削孔方向D2を連絡するコーナー部D3に位置する伝達部Bを屈曲した状態で保持するための部材である。
本実施例では、ガイド材70として伝達部Bの外径に対応したエルボ管を用いている。その他には、ガイド材70を、例えば伝達部Bを所定方向に案内するようにアールを付けた鋼板などで構成してもよい。
なお、本発明においてガイド材70は必須の構成要素ではなく、伝達部Bの屈曲動作を被削孔体Xの内壁を利用して行ってもよい。
【0027】
<5>使用方法(
図1)
再度
図1を参照しながら、本発明に係る削孔装置の使用方法について説明する。
図1では、RC構造物である被削孔体Xにおいて、壁面に対して直角方向に設けたコア孔H1の先端部分から、壁面に対して平行方向に平行孔H2を削孔する作業を想定している。
【0028】
<5.1>ガイド材の配置・送出部の固定
まず、被削孔体X内の送り出し方向D1から削孔方向D2を連絡するコーナー部D3の出口側に、ヘッド10およびスイベル20を収容できるスペースを削孔等によって確保する。そして、このスペースにヘッド10とスイベル20を先端に配置した伝達部Bを挿通させた状態のガイド材70を配置する。
ガイド材70の配置時または配置後、送出部60に連結した接続管61の先端にガイド材70を螺着する。この接続管61をコア孔H1内に差し入れて、ガイド材70の先端側の開口が平行孔H2の削孔方向D2を向くように位置合わせする。
その後、被削孔体Xの外壁面に送出部60をボルトなどで固定することで、ガイド材70とともに送出部60を位置決めする。
【0029】
<5.2>伝達部の送り出し
次に、送出部60でもって伝達部Bを把持し、伝達部Bを送り出し方向D1(コア孔H1の先端方向)へ送り出す。
伝達部Bは、ガイド材70内で、ガイド材70の内部形状に合わせて弾性変形し、ガイド材70の先端から、平行孔H2の削孔方向D2へ直線状に突出する。
伝達部Bの送り出しに伴い、スイベル20の後端は前方に押し出されて削孔部Aを前進させる。
【0030】
<5.3>平行孔の削孔
その後、削孔部Aのウォータージェットを稼働させ、削孔部Aから高圧水を噴出させながら、所定の削進速度で伝達部Bを送り出し方向D1へ押し込んで行く。
この押し込み作業により、被削孔体Xの内部が削孔部Aによって削孔方向D2に向かって直線状に削進してゆく。
このとき、ガイド材70から掘進方向に露出する伝達部Bの長さが長くなってきたとしても、伝達部Bは十分な剛性を備えているため、削孔部Aが通路内で傾斜しにくくなる。
【0031】
<5.4>屈曲角度について
本実施例では、削孔方向D1と送り出し方向D2との間の角度(屈曲角度)θを90°としているが、本発明では屈曲角度が本実施例に限定されるものではない。削孔装置1の用途に応じて屈曲角度θを(0°<θ<180°)の範囲で任意に設定することができる。
【0032】
<5.5>屈曲場所について
本実施例では、被削孔体Xの内部に伝達部Bの屈曲部B1が位置する状況を想定しているが、本発明は、被削孔体Xの外部に伝達部Bの屈曲部B1が位置するように使用してもよい。この場合、被削孔体Xの周囲空間が狭小で、削孔装置の取り回しに制限が生じる現場などにおいて好適である。
【実施例2】
【0033】
次に、
図5を参照しながら本発明に係る削孔装置の第2実施例について説明する。
本実施例では、外筒30を弾性樹脂層32で構成している。
弾性樹脂層32は、ウレタンゴム、シリコンゴムなどの公知の弾性樹脂を内筒40の外表面にコーティングしたり、弾性樹脂の部材を予め内筒の形状にあわせて成形したりして構成したりすることによって構成することができる。
【0034】
図5(a)では、伝達部Bを構成する外筒30および内筒40について、内筒40(リング体50)に軸方向へと連続形成した複数の環溝43を形成し、この内筒40の環溝43を埋めるように弾性樹脂材をコーティングしてなる弾性樹脂層32を、外筒30としている。
この弾性樹脂層32を設けることで、伝達部Bを構成する外筒30と内筒40との一体性を向上することができる。
【0035】
なお、
図5(b)に示すように、本発明では、実施例1に係る、螺旋溝42を設けた内筒40の外表面に弾性樹脂層32を設けた構成としてもよい。
【実施例3】
【0036】
次に、
図6を参照しながら本発明に係る削孔装置の第3実施例について説明する。
本発明に係る削孔装置は、外筒30と内筒40との間、または、内筒40に設けた穴または溝にワイヤー80を配置しておき、このワイヤー80を削孔部Aに接続して張力をかけるように構成することができる
本実施例では、
図6に示すように、伝達部Bを構成する外筒30と内筒40との間の隙間にワイヤー80を収納した構成を呈している。
ワイヤー80は、各コイルスプリングの周方向に間隔を設けて複数本を配置する態様が望ましい。
ワイヤー80の一端は、削孔部10のスイベル12と接続している。
そして、ワイヤー80の後端は、削孔装置Aを構成する伝達部Bの後端と接続する管材91を通って、該管材91の後端に設けた張力調整具92と接続している。
この張力調整具92でもってワイヤー80にかける張力(テンション)を調整することで、伝達部Bの剛性を高めたりすることができる。
【0037】
なお、本実施例に係る外筒30は、コイルスプリング31に限らず、弾性樹脂層32であってもよい。
外筒30を弾性樹脂層32で構成しておくと、伝達部20の曲げ伸ばしに伴う内筒40の追従性を維持しつつ、外筒30と内筒40との一体性も維持することができる。
【実施例4】
【0038】
次に、
図7を参照しながら本発明に係る削孔装置の第4実施例について説明する。
図7は、本実施例に係る削孔装置の伝達部の構造を示す概略図である。
本実施例に係る削孔装置は、伝達部Bを構成する内筒40の外表面に長手方向に連続する収納溝44を設け、この収納溝44にワイヤー80を収納した構成を呈している。
この収納溝44の中にワイヤー80が収まることで、ワイヤー80がコイルスプリング31や内筒40と干渉しにくくなり、ワイヤー80に所定のテンションをかける作業が容易となる。
【0039】
なお、収納溝44は、内筒40ではなく、外筒30の内表面側に設けてもよいし、内筒40および外筒30の両方に設けても良い。
【実施例5】
【0040】
前記した実施例1~4では、削孔装置Aにウォータージェット機構を採用したが、本発明による削孔機構はこれに限らずあらゆる削孔機構を採用することができる。
例えば、削孔部Aに電動ハンマードリルや振動ドリルなどの、電気ドリル機構を採用することができる。この場合、削孔部Aにはビット部とモータを含み、伝達部Bの内部には送電コードが通ることとなる。
また、回転する掘削ビットによる回転掘削機構や、ロータリー削孔機構、エア式のハンマードリルなどの各種公知技術を採用できる。
【符号の説明】
【0041】
10 ヘッド
11 噴出孔
20 スイベル
30 外筒
31 コイルスプリング
32 弾性樹脂層
40 内筒
41 螺旋溝
42 外縁
43 環溝
44 収納溝
50 リング体
51 凸部
52 凹部
60 送出部
61 接続管
70 ガイド材
80 ワイヤー
91 管材
92 張力調整具
A 削孔部
B 伝達部
B1 屈曲部
C 高圧ホース
D1 送り出し方向
D2 削孔方向
D3 コーナー部
H1 コア孔
H2 平行孔