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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-02
(45)【発行日】2022-05-13
(54)【発明の名称】軒先構造
(51)【国際特許分類】
   E04D 13/064 20060101AFI20220506BHJP
   E04D 13/158 20060101ALI20220506BHJP
【FI】
E04D13/064 502G
E04D13/158 501Q
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018095858
(22)【出願日】2018-05-18
(65)【公開番号】P2019199770
(43)【公開日】2019-11-21
【審査請求日】2021-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000165505
【氏名又は名称】元旦ビューティ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095337
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100174425
【弁理士】
【氏名又は名称】水崎 慎
(74)【代理人】
【識別番号】100203932
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 克宗
(72)【発明者】
【氏名】舩木 元旦
【審査官】山口 敦司
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-009433(JP,A)
【文献】特開平10-331350(JP,A)
【文献】特開平11-100953(JP,A)
【文献】特開平10-266476(JP,A)
【文献】実開昭57-093524(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 13/064
E04D 13/158
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軒先側の側面上端に係合受部を備える軒樋と、
一端に前記軒樋の係合受部に外側から係合する係合部を有すると共に他端に建築物の外装下地又は躯体に固定される固定部を有して前記軒樋の開放上面を覆うカバー材と、からなり、
前記カバー材には、裏面側へ折り曲げ可能に設けた複数の係止片が形成され、該係止片が下向きになるように折り曲げられて前記軒樋の係合受部の内側に当接していることを特徴とする軒先構造。
【請求項2】
前記カバー材の係合部は、複数の導水口が形成される化粧面の軒先端に延設され、該軒先端から斜め上方へ延在する傾斜上面部と、その先端を下方へ折曲した側面部と、更にその下端を内側へ折曲した下面部と、からなることを特徴とする請求項1に記載の軒先構造。
【請求項3】
前記カバー材の化粧面と係合部との境界には、下方へ凹む排水溝が形成され、所定間隔で導水孔が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の軒先構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軒樋とカバー材の一体性が強固であって、軒樋からカバー材が容易に外れることがなく、軒樋内部への落ち葉等の侵入や、軒樋内部での雪や落ち葉等の堆積が継続的に防止される軒先構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、屋根の樋としては、軒先に設ける軒樋が一般的に広く知られている。
例えば特許文献1には、複数の通孔を設けた屋根受け金具7や水切り8を介して軒樋9を取り付けた構造が記載され、特許文献2には、軒樋吊具を介して軒樋4を取り付けた構造が記載され、これらの軒樋9,4としては、丸型や箱形の断面構造が記載されている。
また、特許文献3には、軒樋1の前方を化粧カバー材4で覆う構成が記載され、特許文献4には、樋受面24を有する軒樋受金物20の前面側に化粧モール27を取り付ける構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-355979号公報
【文献】特開2002-317539号公報
【文献】特開2006-233536号公報
【文献】特開2003-239474号公報
【文献】特開2018-003291号公報
【文献】特開2018-009433号公報
【文献】特開2018-066110号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、前記特許文献1~4の構造では、カバー材に設けたフック状の係合部を軒樋の軒先端に係合させているに過ぎないので、突風等の外力が加わった際には、軒樋からカバー材が外れてしまうことがあった。
また、前記特許文献3,4の樋金具は、前述のように軒樋や軒樋受金物に化粧材を取り付けて軒先を装飾するので、意匠性が改善されるものの、金具の形状や軒樋の形状に制約を受け、汎用性の低いものであった。さらに、これらの構造では、樋吊り金具等が躯体側のみに固定された片持ち状であるため、降雪時等に破損する恐れのあるものであった。また、室内への漏水リスク、構造的に複雑でコスト高になるなどのデメリットもあった。さらに、屋根勾配毎に部材を変更する必要があった。しかも軒樋を化粧材で覆う構造では、メンテナンスが困難となるという欠点もあった。
【0005】
そのため、本願出願人は、軒樋の開放上部を覆うカバー材にて、軒樋の軒先側の上端を引っ張るように保持するアームの役割を果たさせる構造(特許文献5~7)を提案した。これらの特許文献5~7等に記載の構造におけるカバー材は、軒樋の内部に降雪が堆積したり、落ち葉等が侵入、堆積することを防止する作用を果たす。
【0006】
しかしながら、これらの構造では、カバー材に設けたフック状の係合部を軒樋の軒先端に係合させているに過ぎないので、突風等の外力が加わった際には、軒樋からカバー材が外れてしまうことがあった。
【0007】
そこで、本発明は、軒樋とカバー材の一体性が強固であって、軒樋からカバー材が容易に外れることがなく、軒樋内部への落ち葉等の侵入や、軒樋内部での雪や落ち葉等の堆積が継続的に防止される軒先構造を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記に鑑み提案されたものであって、軒先側の側面上端に係合受部を備える軒樋と、一端に前記軒樋の係合受部に外側から係合する係合部を有すると共に他端に建築物の外装下地又は躯体に固定される固定部を有して前記軒樋の開放上面を覆うカバー材と、からなり、前記カバー材には、裏面側へ折り曲げ可能に設けた複数の係止片が形成され、該係止片が下向きになるように折り曲げられて前記軒樋の係合受部の内側に当接していることを特徴とする軒先構造を提案するものである。
【0010】
また、本発明は、前記軒先構造において、カバー材の係合部は、複数の導水孔が形成される化粧面の軒先端に延設され、該軒先端から斜め上方へ延在する上面部と、その先端を下方へ折曲した側面部と、更にその下端を内側へ折曲した下面部と、からなることを特徴とする軒先構造をも提案する。
【0011】
さらに、本発明は、前記軒先構造において、カバー材の化粧面と係合部との境界には下方へ凹む排水溝が形成され、所定間隔で導水口が形成されていることを特徴とする軒先構造をも提案する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の軒先構造は、軒樋の軒先側の側面上端(係合受部)を、建築物の外装下地又は躯体に固定したカバー材にて抱持状に保持している構造であって、しかも複数の係止片を裏面側へ折り曲げられて軒樋の係合受部の内側に当接しているので、軒樋の係合受部を、内側(係止片)と外側(係合部)から挟むように保持するため、例えば強風やその他の外力が加わっても突発的に外れることがないような高い一体性を有するものである。特にカバー材の係止片が軒樋の係合受部に当接し、具体的には係止片の先端(側端や下端)が係合受部へ係止状に当接しているので、係止片の折り曲げが安定に維持され、導入穴も安定に確保されるため、より安定にカバー材を軒樋と一体化できると共により安定に雨水等を軒樋内へ導くことができる。
また、係止片の裏面側への折り曲げ加工は、表面側(上方)からの押圧操作で容易に行うことができ、少なくともビス止め等(=側方からの操作)に比べて容易に且つ美麗に取り付け加工を行うことができる。
さらに、係止片の折り曲げは、係止片の大きさに相当する導入穴を形成するので、その導入穴より雨水等を容易に軒樋内へ導く(流入させる)ことができる。
【0014】
また、カバー材の係合部は、複数の導水口が形成される化粧面の軒先端に延設され、該軒先端から斜め上方へ延在する傾斜上面部と、その先端を下方へ折曲した側面部と、更にその下端を内側へ折曲した下面部と、からなる場合、該係合部は側面視が略コ字状に成形されるため、軒樋の軒先端を抱持するように係合させることができる。
【0015】
さらに、カバー材の化粧面と係合部との境界には、下方へ凹む排水溝が形成され、所定間隔で導水孔が形成されている場合、化粧面に形成される複数の導水口から軒樋内へ導入できなかった雨水があったとしても、当該排水溝から導水孔にて確実に軒樋内へ雨水を導く(落下させる)ことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】(a)本発明の第1実施例の軒先構造を示す側断面図、(b)該軒先構造に用いたカバー材(第1態様)を示す平面図、(c)該カバー材の拡大側面図である。
図2】(a)本発明の第2実施例の軒先構造におけるカバー材の係止片の折り曲げを示す側面図及び部分的平面図等、(b)その拡大図、(c)折り込み加工以前(係止片用の切り抜き加工後)のカバー材を示す展開図である。
図3】(a)本発明の第3実施例の軒先構造におけるカバー材の係止片の折り曲げを示す側面図及び部分的平面図等、(b)その拡大図、(c)折り込み加工以前(係止片用の切り抜き加工後)のカバー材を示す展開図である。
図4】(a)本発明の第4実施例の軒先構造を示す側断面図、(b)該軒先構造に用いたカバー材を示す平面図、(c)該カバー材の拡大側面図である。
図5】(a)本発明の第5実施例の軒先構造におけるカバー材の係止片の折り曲げを示す側面図及び部分的平面図等、(b)その拡大図、(c)折り込み加工以前(係止片用の切り抜き加工後)のカバー材を示す展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の軒先構造は、軒先側の側面上端に係合受部を備える軒樋と、一端に前記軒樋の係合受部に外側から係合する係合部を有すると共に他端に建築物の外装下地又は躯体に固定される固定部を有して前記軒樋の開放上面を覆うカバー材と、からなり、前記カバー材には、裏面側へ折り曲げ可能に設けた複数の係止片が形成され、該係止片が下向きになるように折り曲げられて前記軒樋の係合受部の内側に当接していることを特徴とする。
【0018】
本発明の軒先構造を形成する軒樋とカバー材は、設置部位の条件(軒の長さ、屋根勾配、取り合い等)や作業性等を勘案して長さを設定すればよく、それぞれ通し材でも所定長さのものを用いてもよいし、所定長さや異なる長さのものを組み合わせて用いるようにしてもよい。なお、複数の軒樋を組み合わせる場合、その性能上、止水処理を施した連結を行うことが好ましい。
【0019】
前記軒樋は、雨水等を排水する内部空間を有するものであり、底面と二つの側面とからなる断面略U字状に形成され、軒先側の側面上端には係合受部を備えている構成である。
この軒樋の係合受部は、カバー材の一端に形成される係合部に係合されるものであればその具体的形状を限定するものではないが、後述する図示実施例のように略L字状に形成することで、内側が開放するコ字状に形成した係合部に側方(=軒先側)から容易に係合されることができる。
この軒樋としては、長さ方向に雨水を排水することができれば、特にその材質を限定するものではなく、各種の金属板材の成型品でも、硬質の樹脂成型品でもよい。
【0020】
前記カバー材は、前述のように一端には前記軒樋の係合受部に外側から係合する係合部を有し、他端には建築物の外装下地又は躯体に固定される固定部を有する。
この係合部は、前記軒樋に形成される係合受部に係合するものであればその具体的形状を限定するものではなく、後述する図示実施例のように軒先端から斜め上方へ延在する傾斜上面部と、その先端を下方へ折曲した側面部と、更にその下端を内側へ折曲した下面部と、からなる、内側が開放するコ字状に形成することが望ましい。略L字状に形成した係合受部を側方(=軒先側)から容易に且つ安定に抱持(係合)できるからである。
また、前記カバー材の固定部は、前述のように建築物の外装下地又は躯体に固定されるものであって、例えば後述する図示実施例のように外装下地に固定される軒先唐草(軒先支持材)にビス等の固定具を用いて強固に固定してもよいし、鼻隠し等の躯体に固定される取付部材に固定するようにしてもよい。
このようにカバー材には、一端に軒樋の係合受部に外側から係合する係合部を設け、他端に建築物の外装下地又は躯体に固定される固定部を設けているので、前記軒樋の側面上端(係合受部)を上方から引っ張るように保持して軒樋の荷重を負担することができる。即ちこのカバー材は、軒樋の軒先端を引っ張るように保持するアームの役割をも果たす。
【0021】
しかも、このカバー材には、裏面側へ折り曲げ可能に設けた複数の係止片が形成され、該係止片が下向きになるように折り曲げて前記軒樋の係合受部の内側に臨ませている。
この係止片は、後述する図示実施例に示すように係合部を形成する傾斜上面部に、四方の何れか一方が開放する略C字状の切り込みを形成し、その切り込みによって形成される内側部分を裏面側へ折り曲げて形成されるものであり、その形状等は特に具体的に限定するものではない。
また、この係止片の折り曲げにより、係止片の大きさに相当する導入穴も形成するので、その導入穴より雨水等を容易に軒樋内へ導く(流入させる)ことができる。
そのため、このカバー材には、前記軒樋の係合受部に外側から係合する係合部と、前記軒樋の係合受部の内側に臨ませる複数の係止片とが形成されているので、前記軒樋の係合受部を、内側(係止片)と外側(係合部)から挟むように保持するため、ビス等の固定具を必要とすることなく、例えば強風やその他の外力が加わっても突発的に外れることがないような高い一体性を有する。
【0022】
なお、この折り曲げた係止片の先端(下端や側端)が、前記軒樋の係合受部(内面)に当接(係止)する場合、係止片の折り曲げが安定に維持され、前記導入穴も安定に確保されるため、より安定に前記カバー材を前記軒樋と一体化できると共により安定に雨水等を軒樋内へ導くことができる。
【0023】
また、前記カバー材は、前記軒樋の開放上面を覆う部材であって、軒樋の内部に降雪が堆積したり、落ち葉等が侵入、堆積することを防止する部材であって、特にその材質(材料)を限定するものではなく、前述のように所定長さのものを用いてもいし、複数の一定長さのものを組み合わせて用いてもよい。なお、このカバー材は、軒樋の開放上面の全面を覆うものでも一部のみを覆うものでもよい。
このカバー材の表面(化粧面)には、雨水を内部へ導く導水口、例えば小径のスリット孔が形成され、該スリット孔の縁部をプレス加工等で下方へ湾曲状に変形させた導水口を形成し、該導水口の存在により、降雪の堆積や落ち葉等の浸入の防止も果たされる。
なお、このカバー材としては、経年の使用により変形しない材料であれば、各種の金属板材の成型品でも硬質の樹脂成型品でもよい。また、ある程度は変形しても、経年の使用により脱離や飛散しないものであれば、金属メッシュ材(金網状材)でもよい。この金属メッシュ材の開口寸法については、前記導水口と同様に広過ぎると落ち葉等の侵入が生じるため、その侵入を防止して雨水を導水できるものであればよい。
【0024】
なお、前記カバー材の化粧面と係合部との境界には、下方へ凹む排水溝が形成され、所定間隔で導水孔を形成してもよい。
前記排水溝は、後述する図示実施例のように略直線状に形成され、前記導水孔は、略円孔状に形成されることが多いが特にこれに限定するものではない。
このように排水溝及び導水孔を形成した場合には、化粧面に形成される複数の導水口から軒樋内へ雨水を導入できなかったとしても、当該排水溝及び導水孔にて確実に軒樋内へ雨水を導く(落下させる)ことができる。
【0025】
以上の構成を有する前記軒樋及び前記カバー材からなる本発明の軒先構造は、軒樋とカバー材の一体性が強固に高く、軒樋を高い支持強度にて保持できるものである。
なお、カバー材の化粧面に形成する導水用の開口部を導水口とし、係止片の形成により形成される開口部を導水穴とし、排水溝に形成される開口部を導水孔としてそれぞれを区別したが、それぞれの開口形状を限定するものではない。
【実施例1】
【0026】
図1(a)に示す本発明の第1実施例の軒先構造は、軒先側の側面上端に係合受部121を備える軒樋1と、一端(軒先端)に前記軒樋1の係合受部121と係合する係合部22を有すると共に他端(建築物側端)に建築物の外装下地(軒先唐草3)又は躯体に固定される固定部23を有して前記軒樋1の開放上面を覆うカバー材2と、からなる。
【0027】
前記軒樋1は、雨水等を排水する内部空間を有し、底面11と二つの側面12,13とからなる断面略U字状に形成され、軒先側の側面12上端には係合受部121を備えている所定長さのものを用いている。
この第1実施例における軒樋1は、略水平状の底面11の軒先側(図面では左側)に、四つの縦傾斜面と三つの略水平面とで構成される段状の(外)側面12が形成され、前記底面11の内側(図面では右側)には、略垂直状に起立する(内)側面13が形成され、これらの底面11及び側面12,13にて断面略U字状の雨水等の排水路が形成されている。
また、前記軒先側の側面12の上端に位置する傾斜面と略水平面(=略L字状)は、カバー材2の一端に略コ字状に形成される係合部22に係合される係合受部121である。
また、前記内側面13の下端には、隅部状の被支持部131が設けられている。
【0028】
前記カバー材2は、内部に降雪が堆積したり、落ち葉等が侵入、堆積したり、鳥類等が巣作りすることを防止する部材である。
この第1実施例におけるカバー材2は、図1(b)に示すようにその表面(化粧面21)には雨水を内部へ導く導水口211として複数(軒先方向に6列)の小径のスリット孔が形成され、該スリット孔の縁部をプレス加工等で下方へ湾曲状に変形させて形成され、この化粧面21の建築物側へ延在する端縁には固定部23(2bは固着具)が形成されている。この固定部23は、当該第1実施例では、外装下地(野地材5D)に固定される軒先唐草3に連絡されて取り付けられている。
【0029】
また、この第1実施例のカバー材2には、一端(軒先端)に前記軒樋1の係合受部121に外側から係合する係合部22が、略コ字状に形成されている。より具体的には図1(c)に示すように化粧面21の軒先端から斜め上方へ延在する傾斜上面221と、その先端を斜め下方へ折曲した側面部222と、更にその下端を内側へ折曲した下面部223とからなる、内側が開放するコ字状に形成されている。
このようにカバー材2には、一端(軒先端)に軒樋1の係合受部121に外側から係合する係合部22を設け、他端(建築物側端)に建築物の外装下地(野地材5D)に固定される軒先唐草3に固定される固定部23を設けているので、前記軒樋1の側面上端(係合受部121)を上方から引っ張るように保持して軒樋1の荷重を負担することができる。即ちこのカバー材2は、軒樋1の軒先端を引っ張るように保持するアームの役割をも果たす。
【0030】
さらに、前記係合部22の傾斜上面221には、複数の係止片22aが形成されているが、該係止片22aは、図1(b)に示すように長さ方向の一方(図では左方)が開放する略C字状の切り込み22bを形成し、その切り込み22bによって形成される内側部分22a'を裏面側へ折り曲げて形成され、該折り曲げにより形成される開口部を導入穴22cとしている。なお、前記導入穴22cについては、図1(c)に示している。
このようにカバー材2には、前記軒樋1の係合受部121に外側から係合する係合部22と、前記軒樋1の係合受部121の内側に臨ませる複数の係止片22aとが形成されているので、前記軒樋1の係合受部121を、内側(係止片22a)と外側(係合部22)から挟むように保持するため、ビス等の固定具を必要とすることなく、例えば強風やその他の外力が加わっても突発的に外れることがないような高い一体性を有する。
【0031】
また、図1(b)に示すようにこの第1実施例のカバー材2の化粧面21と係合部22との境界には、下方へ凹む排水溝24が長さ方向に略直線状に形成され、該排水溝24には所定間隔で略円孔状の導水孔25が形成されている。
そのため、化粧面21に形成される複数の導水口211から軒樋1内へ雨水を導入できなかったとしても、当該排水溝24及び導水孔25にて確実に軒樋1内へ雨水を導く(落下させる)ことができる。
【0032】
前述の軒樋1、カバー材2以外の構成を以下に簡単に説明する。
図中の3は軒先唐草であって、31は外装下地(野地材)5Dへの固定部(3bは固定ビス)、32は最軒側の外装材を保持する保持部、33は排水凹部、34は外装下地(野地材)5Dへの取付部、35は前記カバー材2の固定部23を支持して固定する被固定部である。この排水凹部33は、外装材6Aが近接状に敷設されていることにより、該近接状空間に至った雨水等が毛細管現象等で更に水上側へ浸透することがなく、この排水凹部33にて雨水等を側方へ流下させることができる。
また、5Aは流れ方向に延在するH躯体、5Bは水平方向に延在する角状躯体、5Cは鼻隠し壁面、5Dは流れ方向に敷設された外装下地(野地材)、5eはその上面に敷設された防水シートであり、6Aは外装材、6bは外装材の裏面側に添設された裏貼り材である。
さらに、横葺き外装材である外装材6Aは、裏面に裏貼り材4Bが添設され、略平坦状の面板部61の軒側、棟側に設けられて相互に係合する軒側成形部62、棟側成形部63を備え、外装下地5Dに固定された吊子4A(4bは固着具)にて取り付けられ(敷設され)ている。
また、7B,7Cは前記鼻隠し壁面5Aを被覆する化粧材であって、天井材7Aの端部に延設されている。
そして、8は前記カバー材2や前記軒先唐草3と共に安定に軒樋1を保持することができる補助材として用いられる支持材であり、金属板材等を適宜に成形して形成され、略垂直状の縦面81(8bは固着具)の下端を略水平状に軒先側へ折り曲げて支持部(下方保持部)82が形成され、上端を軒先側へ折り返して形成される下方が開放する溝状の上方保持部83に前記軒樋1の内側面13の上端が差し込まれる。
【0033】
これらの部材より構成される第1実施例の軒先構造は、軒樋1の軒先側の側面上端を、建築物の外装下地(野地材5D)に固定した軒先唐草3に連絡して抱持状に(引っ張り上げるように)保持しているので、軒樋1を優れた意匠性で且つ高い支持強度にて保持できる。しかも複数の係止片22aを裏面側へ折り曲げて軒樋1の係合受部121の内側に臨ませているので、軒樋1の係合受部121を、内側(係止片22a)と外側(係合部22)から挟むように保持するため、例えば強風やその他の外力が加わっても突発的に外れることがないような高い一体性を有するものである。
【0034】
図2(a),(b)に示す第2実施例の軒先構造は、その軒樋1'及びカバー材2-2のみを示しているが、軒樋1'については前記第1実施例における軒樋1より僅かに小さく(幅狭に)形成され、段状の(外)側面12'の形状が異なる(三つの縦傾斜面と二つの略水平面で構成される)に過ぎないので、図面に同一符号(但し「'」を付記して)を付して説明を省略する。
また、この第2実施例におけるカバー材2-2は、図2(c)に示すように前記第1実施例におけるカバー材2と殆ど同様であるが、前述のように幅狭の軒樋1'の開放上面を覆うので、化粧面21'が小さく、該化粧面21'に導水口211も軒先方向に4列しか形成されていない。
なお、この図2(c)には排水溝24が図示されていないが、折り込み加工以前のカバー材2-2を示すためであり、谷折りを行って排水溝24を形成する。
そして、この第2実施例におけるカバー材2-2は、係合部22-2自体の形状は、前記第1実施例におけるカバー材2と殆ど同様であるが、係止片22dを形成するための切り込み22eが、導水孔25の配設間隔の略中央に位置している点が異なる。図中、22d'は、切り込み22eによって形成される内側部分を指す。図2(a),(b)のような側面図では表せないが、導水孔25の配設間隔の略中央に裏面側へ折り込む係止片22dが形成され、それにより導水穴22fが形成される。
【0035】
なお、図2(c)は、折り込み加工以前のカバー材2-2を示すには展開図であって、導入口211や導入孔25を形成する位置を点線にて示している。また、排水溝24については、図示されていないが、導入孔25を通る直線状に谷折りを行って排水溝24を形成する。このことは、後述する第3実施例の図3(c)や第5実施例の図5(c)についても同様である。
【0036】
図3(a),(b)に示す第3実施例の軒先構造は、その軒樋1'及びカバー材2-3のみを示しているが、軒樋1'については前記第2実施例における軒樋1'と全く同一であるから、図面に同一符号を付して説明を省略する。
また、この第2実施例におけるカバー材2-3は、図3(c)に示すように前記第2実施例におけるカバー材2-2と殆ど同様であるが、係止片22gを形成するための切り込み22hが大きく(下端が係合受部121に係止するように)形成されている点が異なる。図中、22g'は、切り込み22hによって形成される内側部分を指す。
そのため、この第3実施例では、図3(a),(b)に示すように係止片22gの下端が軒樋1'の係合受部121に当接(係止)するので、係止片22gの折り曲げが安定に維持され、導入穴22iも安定に確保されるため、より安定にカバー材2-3を軒樋1'と一体化できると共により安定に雨水等を軒樋1'内へ導くことができる。
【0037】
図4(a)に示す第4実施例の軒先構造は、そのカバー材2-4を除く全ての構造(軒樋1を含む)は、前記第1実施例と同様であるから、図面に同一符号を付して説明を省略する。
この第4実施例におけるカバー材2-4は、図4(b),(c)に示すように係止片22jを形成するための切り込み22kが軒先側から排水溝24へ向かって形成され、内側部分22j'の折り曲げ方向が流れ方向である点で前記第1~第3実施例とは異なる。即ち前記第1~第3実施例の係止片22a,22d,22gは、カバー材2~2-3の長さ方向に折り曲げていたが、当該第4実施例の係止片22jは流れ方向、即ちカバー材2-4の長さ方向と直交する方向に折り曲げられている。図中、22j'は、切り込み22kによって形成される内側部分を指す。
そのため、この第4実施例において折り曲げられた係止片22jは、図4(a),(c)に示すように軒樋1の(外)側面12に沿うように配置される点が他の第1~第3実施例と異なる。そのため、図4(c)に示すように形成される導水穴22mの一端が排水溝24至っているので、他の第1~第3実施例のように導水孔を設けることなく、排水溝24より集められた雨水を確実にこの導水穴22mにて軒樋1内へ導く(落下させる)ことができる。
【0038】
図5(a),(b)に示す第5実施例の軒先構造は、その軒樋1'及びカバー材2-5のみを示しているが、軒樋1'については前記第2,第3実施例における軒樋1'と全く同一であるから、図面に同一符号を付して説明を省略する。
また、この第5実施例におけるカバー材2-5は、図5(c)に示すように前記第4実施例におけるカバー材2-4と殆ど同様であるが、係止片22nを形成するための切り込み22oが大きく(下端が係合受部121に係止するように)形成されている点が異なる。図中、22n'は、切り込み22oによって形成される内側部分を指す。又、この第5実施例では、導水孔25も形成されている。
そのため、この第5実施例では、図5(a),(b)に示すように係止片22nの下端が軒樋1'の係合受部121に当接(係止)するので、係止片22nの折り曲げが安定に維持され、導入穴22pも安定に確保されるため、より安定にカバー材2-5を軒樋1'と一体化できると共により安定に雨水等を軒樋1'内へ導くことができる。なお、この第5実施例では、排水溝24より集められた雨水は導水孔25及び導水穴22pにて軒樋1'内へ導く(落下させる)ことができる。
【符号の説明】
【0039】
1,1' 軒樋
1b,1c ビス(固着具)
11 底面
12 (外)側面
121 係合受部
13 (内)側面
131 被支持部
2,2-2~2-5 カバー材
2b ビス(固着具)
21 化粧面
22,22-2~22-5 係合部
22a,22d,22g,22j,22n 係止片
22b,22e,22h,22k,22o 切り込み
22c,22f,22i,22m,22p 導入穴
23 固定部
24 排水溝
25 導水孔
3 軒先唐草
5A H躯体
5C 躯体(鼻隠し壁面)
5d 野地材(外装下地)
6A 横葺き外装材
61 面板部
62 軒側成形部
8 支持材
81 縦面
82 支持部
83 上方保持部)
8b ビス(固着具)
図1
図2
図3
図4
図5