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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-02
(45)【発行日】2022-05-13
(54)【発明の名称】位置計測方法
(51)【国際特許分類】
   E21D 9/093 20060101AFI20220506BHJP
   G01C 15/00 20060101ALI20220506BHJP
【FI】
E21D9/093 B
G01C15/00 104D
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2018190970
(22)【出願日】2018-10-09
(65)【公開番号】P2020060014
(43)【公開日】2020-04-16
【審査請求日】2021-03-26
(73)【特許権者】
【識別番号】596119571
【氏名又は名称】サン・シールド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003214
【氏名又は名称】特許業務法人服部国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100093779
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 雅紀
(72)【発明者】
【氏名】米森 清祥
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 俊二
(72)【発明者】
【氏名】山本 将太
【審査官】高橋 雅明
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-184094(JP,A)
【文献】特開2010-190829(JP,A)
【文献】特開平10-038569(JP,A)
【文献】特開平08-189827(JP,A)
【文献】特開2001-021355(JP,A)
【文献】特開2009-025264(JP,A)
【文献】特開2009-198329(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 9/093
G01C 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発進立坑(6)を起点として地中を掘進する掘進機(1)について、基準位置に対する前記掘進機の相対位置を計測する位置計測システムを用い、前記基準位置に対する前記掘進機の相対位置を計測する位置計測方法であって、
前記位置計測システムは、
撮像対象物までの距離及び方向を当該撮像対象物の位置として計測する複数のセンサであって、前記掘進機の後部に設置され、掘進経路の後方の撮像対象物の位置を計測する先頭センサ(S)、前記掘進機の後方に連続して接続される複数の推進管(2)に設置され、掘進経路の前方及び後方の撮像対象物の位置を計測する一つ以上の中間センサ(S~S)、並びに、前記基準位置に設置され、掘進経路の前方の撮像対象物の位置を計測する基準位置センサ(Sz)を含む複数のセンサと、
複数の前記センサによる撮像対象物として、前記先頭センサと前記基準位置センサとの間に設置された複数の目印(T~T)と、
複数の前記センサ間の相対位置(L)をベクトル和により合計して、前記基準位置に対する前記先頭センサの相対位置(L)を算出し、さらに、前記先頭センサから前記掘進機の先端までの相対位置(L)を加算して、前記基準位置に対する前記掘進機の先端の相対位置(LL)を算出する計測装置(8)と、
を備え
前記掘進機の後部に前記先頭センサが設置され、前記掘進機に後続する前記推進管に前記目印が設置されるステップと、
前記掘進機が掘進を開始し、所定距離を前進した後、掘進を停止するステップと、
掘進経路後方及び掘進経路前方に隣接する後方センサと前方センサとの間に設置された複数の前記目印の位置を、当該後方センサ及び前方センサにより共通に計測するステップと、
前記計測装置が前記目印の位置に基づき、隣接する前記センサ間の相対位置(L )を算出するステップと、
前記計測装置が前記センサ間の相対位置を合計して、前記基準位置に対する前記先頭センサの相対位置(L)を算出するステップと、
前記計測装置が、前記基準位置に対する前記先頭センサの相対位置に、前記先頭センサから前記掘進機の先端までの相対位置(L )を加算して、前記基準位置に対する前記掘進機の先端の相対位置(LL)を算出するステップと、
前記掘進機が最終目的地に到達したか否か判断するステップと、
を含み、
前記掘進機が最終目的地に到達していない場合、最後尾の前記推進管の後ろに新たな前記推進管が接続され、新たな前記推進管に前記目印又は前記センサが設置され、前記掘進機の掘進開始から、前記基準位置に対する前記掘進機の先端の相対位置の算出までのステップが繰り返され、
前記計測装置は、隣接する前記センサ間の相対位置を算出するステップにおいて、
前記後方センサが計測した前方の前記目印の位置(Pf 、Pf )と、前記前方センサが計測した後方の前記目印の位置(Pr 、Pr )とのベクトル和により、前記後方センサと前記前方センサとの相対位置(L ka 、L kb )を算出し、
複数の前記目印に主従関係を設定し、主となる前記目印を介して算出された相対位置のばらつきが所定以上の場合にのみ、従となる他の前記目印を介して算出された相対位置を補助的に用いて、算出した相対位置を補正する位置計測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中を掘進する掘進機の位置を計測する位置計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の撮像手段を用いて掘進機の位置を計測する位置計測システムが知られている。例えば特許文献1に記載の位置計測システムでは、掘進機の後部、及び各撮像手段の後部にターゲット部材が固定されており、各撮像手段が撮像した次のターゲット部材の位置情報に基づいて、掘進機の位置を算出する。したがって、基準撮像手段から掘進機までの掘進路が直線の場合に限らず屈曲している場合でも、掘進機の位置を計測することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-198329号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の位置計測システムでは、各撮像手段は前方の一方向にあるターゲット部材のみを撮像し、前方の撮像データのみに基づいて掘進機の位置が計測される。そのため、位置計測システム単独では、各撮像手段による計測誤差を評価し補正することができず、誤差の修正に多大な工数を要するという問題があった。
【0005】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、基準位置に対する掘進機の相対位置の計測誤差を低減する位置計測方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、発進立坑(6)を起点として地中を掘進する掘進機(1)について、基準位置に対する掘進機の相対位置を計測する位置計測システムを用い、基準位置に対する掘進機の相対位置を計測する位置計測方法である。用いられる位置計測システムは、撮像対象物までの距離及び方向を当該撮像対象物の位置として計測する複数のセンサと、複数の目印(T~T)と、計測装置(8)と、を備える。
【0007】
複数のセンサは、先頭センサ(S1)、一つ以上の中間センサ(S2~S5)、並びに基準位置センサ(Sz)を含む。先頭センサは、掘進機の後部に設置され、掘進経路の後方の撮像対象物の位置を計測する。一つ以上の中間センサは、掘進機の後方に連続して接続される複数の推進管(2)に設置され、掘進経路の前方及び後方の撮像対象物の位置を計測する。基準位置センサは、基準位置に設置され、掘進経路の前方の撮像対象物の位置を計測する。
【0008】
複数の目印は、複数のセンサによる撮像対象物として、先頭センサと基準位置センサとの間に設置されている。計測装置は、複数のセンサ間の相対位置(Lk)をベクトル和により合計して、「基準位置に対する先頭センサの相対位置(L)」を算出し、さらに、「先頭センサから掘進機の先端までの相対位置(L0)」を加算して、「基準位置に対する掘進機の先端の相対位置(LL)」を算出する。
【0009】
の位置計測システムでは、複数のセンサは前方及び後方の目印の位置を計測し、計測装置は、計測された目印の位置に基づいて、基準位置に対する掘進機の先端の相対位置を算出する。したがって、前方の撮像データのみに基づいて相対位置を計測する従来技術に対し、計測誤差を低減することができる。
【0010】
参考形態の位置データ処理システムは、上記の位置計測システム(80)と、データ処理装置(9)と、を含む。データ処理装置は、掘進機の位置データに基づく画像処理を実行し、又は、複数のセンサ以外の検出器から取得した情報もしくは外部から受信した情報に基づき、掘進機の位置データの分析評価処理を実行する。例えば位置データを画像処理することにより、掘進状況を視覚的にわかりやすく表示することができ、実用的な利便性が向上する。
【0011】
本発明の位置計測方法は、上記の位置計測システムを用い、基準位置に対する掘進機の相対位置を計測する位置計測方法であって、以下のステップを含む。
(A)掘進機の後部に先頭センサが設置され、掘進機に後続する推進管に目印が設置されるステップ。
(B)掘進機が掘進を開始し、所定距離を前進した後、掘進を停止するステップ。
(C)掘進経路後方及び掘進経路前方に隣接する後方センサと前方センサとの間に設置された複数の目印の位置を、当該後方センサ及び前方センサにより共通に計測するステップ。
【0012】
(D)計測装置が目印の位置に基づき、隣接するセンサ間の相対位置(Lk)を算出するステップ。
(E)計測装置がセンサ間の相対位置を合計して、基準位置に対する先頭センサの相対位置(L)を算出するステップ。
(F)計測装置が、基準位置に対する先頭センサの相対位置に、先頭センサから掘進機の先端までの相対位置(L0)を加算して、基準位置に対する掘進機の先端の相対位置(LL)を算出するステップ。
(G)掘進機が最終目的地に到達したか否か判断するステップ。
【0013】
掘進機が最終目的地に到達していない場合、最後尾の推進管の後ろに新たな推進管が接続され、新たな推進管に目印又はセンサが設置され、掘進機の掘進開始から、基準位置に対する掘進機の先端の相対位置の算出までのステップが繰り返される
【0014】
測装置は、隣接するセンサ間の相対位置を算出するステップ(D)において、後方センサが計測した前方の目印の位置(Pf、Pf)と、前方センサが計測した後方の目印の位置(Pr、Pr)とのベクトル和により、後方センサと前方センサとの相対位置(Lka、Lkb)を算出する。そして、計測装置は、複数の目印に主従関係を設定し、主となる目印を介して算出された相対位置のばらつきが所定以上の場合にのみ、従となる他の目印を介して算出された相対位置を補助的に用いて、算出した相対位置を補正する。
【0015】
参考例の位置計測方法では、相対的に後方及び前方に配置された一対のセンサは、相手方のセンサに付随する目印の位置を計測することにより、一方が他方の相対位置を検出可能である。計測装置は、基準位置センサから先頭センサまで前方に向かって計測した相対位置と、先頭センサから基準位置センサまで後方に向かって計測した相対位置とを平均して、基準位置に対する先頭センサの相対位置を算出する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1実施形態の位置検出システムの全体模式図。
図2図1の推進管内の天地方向断面図。
図3】第1実施形態の位置検出方法のフローチャート。
図4】第1実施形態の位置検出方法を説明する模式図(1)。
図5】同上の模式図(2)。
図6】同上の模式図(3)。
図7】同上の模式図(4)。
図8】第2実施形態の位置検出方法を説明する模式図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、位置計測システム及び位置計測方法の実施形態を図面に基づいて説明する。この位置計測システム及び位置計測方法は、発進立坑を起点として地中を掘進する掘進機について、複数の撮像センサを用いて、基準位置に対する掘進機の相対位置を計測するシステム、及びその方法である。このシステム及び方法は、特に小口径推進工法で有用である。
【0018】
(第1実施形態)
第1実施形態の位置計測システム及び位置計測方法について、図1図7を参照して説明する。図1は、地中の掘進機1の掘進経路を上方から透視した模式図である。掘進機1は、発進立坑6を起点として、地中をS字状に湾曲して進む。掘進機1の後方には複数の推進管2が逐次、連続して接続される。最初に図1を参照し、掘進工程がある程度進んだ状態でのシステム構成を説明する。なお、この掘進経路は、2次元方向に湾曲することを想定しているが、高さ方向の変化は無いものと仮定する。
【0019】
図2に、推進管2内の天地方向の断面を示す。推進管2の下部には、掘進機1が掘削した土泥を後方に送り排出する排泥管5が延設される。排泥管5の両側には、台車3を支えるジャッキ4が立設される。台車3上にはセンサS及び目印Tが設置される。図1では、センサSをハッチング付きの四角印で示し、目印Tを白抜き丸印で示す。センサSと目印Tとは、図2における奥行き方向の位置が異なる。
【0020】
センサSは、CCDイメージセンサに類する撮像素子であり、撮像対象物である目印Tまでの距離と方向を検出する。目印Tは、撮像範囲内の形状や光の反射が安定しており、撮像誤差が生じにくいものであることが好ましい。特に本実施形態では、一部の方向のみでなく広範囲(例えば270°以上の広角域)を計測可能な3次元側域センサが複数用いられる。そして、各3次元側域センサSが前方及び後方の目印Tを共に計測する点が特徴である。
【0021】
図1で、掘進機1側から後方に向かって推進管2に設置される複数のセンサSに、順にS1~S5のように符号を付す。隣接するセンサS同士は、例えば10m以内の間隔で配置される。その中で、掘進機1の後部に設置されるセンサS1を「先頭センサS1」といい、その他のセンサS2~S5を「中間センサS2~S5」という。発進立坑6の掘進方向とは反対側の内壁近くに基準位置が設定される。基準位置にはトランシットが設置され、当地点の絶対的な位置が計測される。そして、基準位置に設置されるセンサSを「基準位置センサSz」という。
【0022】
また、図1において、掘進機1側から後方に向かって推進管2に設置される複数の目印Tに、順にT1~T9のように符号を付す。第1実施形態では、隣接する二つのセンサSである「後方センサ」と「前方センサ」との間に各二つの目印Tが設置される。これらの二つの目印Tは、「後方センサ」及び「前方センサ」により共通に位置が計測される「共通目印」である。二つの共通目印Tは、一方が推進管2の左寄り、他方が推進管2の右寄りというように、推進管2の左右に互い違いに配置される。つまり、「後方センサ」及び「前方センサ」と一方の共通目印Tとを結ぶ直線上に他方の共通目印Tが位置し、撮像が干渉しないように配置される。
【0023】
各センサS1~S5、Szが計測した位置信号は、発進立坑6内に設けられた中継ボックス7に送信される。中継ボックス7に集められた位置信号は、多芯ケーブル等を介して計測装置8に通信される。計測装置8は、各センサS1~S5、Szの位置信号に基づいて、基準位置に対する掘進機1の先端位置P0の相対位置を計測する。以上の複数のセンサS、複数の目印T及び計測装置8が位置計測システム80の構成要素である。
【0024】
さらに、計測装置8により計測された掘進機1の位置データはデータ処理装置9に通信される。データ処理装置9はコンピュータにより構成され、例えば掘進機1の位置データに基づく画像処理を行い、掘進状況をディスプレイに表示する。また、データ処理装置9は、撮像センサ以外の各種検出器から取得した掘進機1の速度、モータ出力等の駆動情報や、掘進経路の温度、湿度等の環境情報、或いは外部から受信した情報等に基づき、分析評価処理を実行する。データ処理の内容や方法は適宜設定される。位置計測システム80にデータ処理装置9を加えたシステムを位置データ処理システム90という。
【0025】
次に、第1実施形態による位置計測方法について、図3のフローチャート及び図4図7の模式図を参照して説明する。図4図6は、発進立坑6から掘進機1の先端までの範囲を上から見た模式図である。図の左側が掘進機1の前進方向であり、前進方向とは反対側の発進立坑6の端部に基準位置センサSzが設置される。図7は、図1に示されたS字状の掘進経路を簡略化して直線状に示した模式図である。
【0026】
<ステップ1>では、図4に示すように、掘進機1は、掘進起点である発進立坑6内でスタンバイしている。掘進機1の後部に先頭センサS1が設置され、掘進機1に後続する推進管2に目印T1が設置される。<ステップ1>の後、以下に説明する<ステップ2>から<ステップ8>までの一連の工程が実施される。そして、<ステップ9>でYESと判断されて終了するまで、<ステップ10>を経て<ステップ2>の前に戻り、<ステップ2>から<ステップ8>までの一連の工程が繰り返される。<ステップ10>では、最後尾の推進管2の後ろに新たな推進管2が接続される。
【0027】
以下、一巡目の<ステップ2>から<ステップ8>までの一連の工程を「初回ループ」という。また、二巡目以降の<ステップ2>から<ステップ8>までの一連の工程を「繰り返しループ」という。繰り返しループでは、対象となる目印T又は中間センサSが順に増える点を除き、基本的には初回ループと同様である。図4図6は、主に初回ループの工程を説明する図である。繰り返しループの説明では、図4図6に加え、図1及び図7を参照する。
【0028】
まず、図4図6に沿って初回ループの工程を説明する。<ステップ2>では、図4の位置から掘進機1が稼働し、地中の掘進を開始する。掘進機1が進むに従ってジャッキ4が伸びる。図5に示すように、掘進機1が所定距離を前進しジャッキ4が伸びきったら、<ステップ3>で掘進を停止する。図5の位置で、<ステップ4>~<ステップ8>が引き続き実行される。
【0029】
<ステップ4>では、基準位置センサSzは、前方に隣接するセンサSとの間にある前方目印を計測する。初回ループでは、基準位置センサSzは、先頭センサS1との間に存在する唯一の前方目印T1の位置を計測する。計測された前方目印T1の位置ベクトルをPfと表す。
【0030】
<ステップ5>では、各センサSは、後方に隣接するセンサSとの間にある後方目印、及び、前方に隣接するセンサSとの間にある前方目印を計測する。初回ループでは、先頭センサS1は、基準位置センサSzとの間にある唯一の後方目印T1の位置を計測する。計測された後方目印T1の位置ベクトルをPrと表す。なお、後方目印T1から先頭センサS1に向かう方向では、位置ベクトルを(-Pr)と表す。
【0031】
<ステップ6>で計測装置8は、後方及び前方のセンサSから共通に計測された目印Tの位置に基づき、センサS間の相対位置Lkを算出する。以下、「相対位置Lk」は、距離と方向とを含むベクトル量であり、「相対位置Lkを加算する」とは、ベクトル和を算出することを意味する。初回ループでは、共通目印T1が一つであり、基準位置センサSzから先頭センサS1までの相対位置L1は、位置ベクトルPfと位置ベクトル(-Pr)との和により一通り算出される(L1=Pf-Pr)。
【0032】
<ステップ7>で計測装置8は、センサS間の相対位置Lkを合計し、基準位置センサSzから先頭センサS1までの相対位置L、すなわち、「基準位置に対する先頭センサS1の相対位置L」を算出する。初回ループでは、L=L1であるため、実質的に合計の計算は行われない。
【0033】
<ステップ8>では先頭センサS1から掘進機1の先端P0までの相対位置L0が計測される。なお、相対位置L0の方向は随時変化するため、ベクトル量である相対位置L0は、ループ毎に変化する。計測装置8は、式(1)により、「基準位置に対する先頭センサS1の相対位置L」に「先頭センサS1から掘進機1の先端までの相対位置L0」を加算し、「基準位置に対する掘進機1の先端の相対位置LL」を算出する。
LL=L+L0・・・(1)
【0034】
<ステップ9>で計測装置8は、算出された位置LLを目標位置と比較し、掘進機1が最終目的地点に到達したか否か判断する。掘進機1が最終目的地点に到達すると、位置計測方法のルーチンは終了する。掘進機1が最終目的地点に到達していない場合、<ステップ10>に移行する。
【0035】
図6に示すように、<ステップ10>では、最後尾の推進管2の後ろに新たな推進管2が接続される。図6に示す、二巡目の繰り返しループの前の段階では、推進管2に二つ目の目印T2が設置される。目印T2は、撮像が干渉しないように、基準位置センサSzと目印T1、及び、中間センサS1と目印T1とを結ぶ直線上又はその延長線上を避けて配置される。また、識別のため、目印T2は目印T1と異なる形状に構成されてもよい。
【0036】
次に、二巡目以降の「繰り返しループ」の工程について、「初回ループ」と異なる点を説明する。二巡目の<ステップ4>では、基準位置センサSzは、前方目印T1に加え、もう一つの前方目印T2を計測する。計測された前方目印T1の位置ベクトルをPfa、前方目印T2の位置ベクトルをPfbと表す。二巡目の<ステップ5>では、先頭センサS1は、後方目印T1に加え、もう一つの後方目印T2を計測する。計測された前方目印T1の位置ベクトルをPra、前方目印T2の位置ベクトルをPrbと表す。
【0037】
三巡目の繰り返しループで中間センサS2が追加されると、中間センサS2は、<ステップ5>で、先頭センサS1との間にある前方目印T1、T2を計測する。四巡目の繰り返しループで中間センサS2の後ろに後方目印T3が追加されると、中間センサS2は、<ステップ5>で、さらに後方目印T3を計測する。
【0038】
二巡目の<ステップ6>では、二つの共通目印T1、T2を介して、二通りの相対位置L1a(=Pfa-Pra)及びL1b(=Pfb-Prb)が算出される。そして、式(2.1)により相対位置L1a、L1を平均し、基準位置センサSzから先頭センサS1までの相対位置L1が算出される。
1=(L1a+L1b)/2 ・・・(2.1)
【0039】
三巡目の繰り返しループで中間センサS2が追加されると、<ステップ6>で、基準位置センサSzから中間センサS2までの相対位置L2、及び、中間センサS2から先頭センサS1までの相対位置L1が算出される。ここで、図7に示すように基準位置センサSzの直前の中間センサをSnとすると、基準位置センサSzを含め合計(n+1)個のセンサが存在することとなり、基準位置センサSzは、先頭から(n+1)番目のセンサと見做される。中間センサSnと基準位置センサSzとの間には、二つの共通目印T2n-1、T2nが設置される。
【0040】
基準位置センサSzを起点とすると、中間センサSnの記号は、前方に向かって降順に並ぶこととなる。そして、(k+1)番目のセンサSk+1からk番目のセンサSkまでの相対位置をLkとすると、式(2.1)は一般式(2.2)に書き換えられる。
k=(Lka+Lkb)/2 ・・・(2.1)
また、「基準位置に対する先頭センサS1の相対位置L」は、式(3)で表される。
【0041】
【数1】
【0042】
二巡面以降の<ステップ9>でNOと判断され、<ステップ10>に移行したとき、三巡目の前では中間センサS2が設置され、四巡目の前では目印T3が設置される。以下、図1に示すように、「目印T→中間センサS→目印T→目印T→中間センサS→目印T・・・」の順で、新たな推進管2に目印T又は中間センサSが設置される。なお、目印T及び中間センサSの設置パターンは、適宜変更してよい。
【0043】
(第2実施形態)
第2実施形態の位置計測方法について、図8を参照して説明する。図7と同様に図8では、掘進経路を簡略化して直線状に示す。第2実施形態では、目印TとセンサSとは、互いの相対位置が固定された「実質的に同じ位置」に配置される。例えば目印Tは、センサSの真上又は真横の取り付け可能な最近接位置に固定される。つまり、先頭センサS1には目印T1、基準位置センサSzには目印Tzというように、各センサSに付随する目印Tが設置される。なお、センサSの筐体がそのまま目印Tとして使用可能な場合、センサSが目印Tの機能を兼ねると解釈してもよい。
【0044】
したがって、k番目のセンサSkから、(k-1)番目のセンサSk-1に付随した前方目印Tk-1を撮像することで、後方のセンサSkから前方の隣接センサSk-1までの相対位置Lfkを直接計測することができる。また、(k-1)番目のセンサSk-1から、k番目のセンサSkに付随した後方目印Tkを撮像することで、前方のセンサSk-1から後方の隣接センサSkまでの相対位置Lrkを直接計測することができる。
【0045】
つまり、相対的に後方及び前方に配置された一対のセンサSk、Sk-1は、相手方のセンサSk-1、Skに付随する目印Tk-1、Tkの位置を計測することにより、一方が他方の相対位置を検出可能である。計測装置8は、式(4)により、各センサS間について、前方に向かって計測した相対位置Lfkと後方に向かって計測した相対位置Lrkとの平均値をk=1からnまで合計して、基準位置に対する先頭センサS1の相対位置Lを算出する。
【0046】
【数2】
【0047】
或いは、計測装置8は、式(5)により、基準位置センサSzから先頭センサS1まで前方に向かって計測した相対位置Lfkの合計と、先頭センサS1から基準位置センサSzまで後方に向かって計測した相対位置Lrkの合計とを平均して、基準位置に対する先頭センサS1の相対位置Lを算出してもよい。
【0048】
【数3】
【0049】
従来技術である特許文献1(特開2009-198329号公報)の位置計測方法は、式(5)に対し、前方に向かって計測した相対位置Lfkの合計のみを算出するものに相当する。特許文献1の方法では、撮像手段が前方のターゲットに加え後方のターゲットを撮像するという思想は無い。したがって、位置計測システム単独では、各撮像手段による計測誤差を評価し補正することができない。そこで、別の計測技術を併用して誤差を修正しようとすると、多大な工数を要するという問題があった。
【0050】
それに対し第2実施形態では、広範囲を計測可能な3次元側域センサを用い、前方に向かって計測した相対位置Lfkと後方に向かって計測した相対位置Lrkとの平均値から、「基準位置に対する先頭センサS1の相対位置L」を算出することで、計測誤差を低減することができる。また、相対位置Lfkと相対位置Lrkとの乖離が大きい場合、いずれかのセンサS、目印T又は計測装置8に異常があると判断することができる。
【0051】
(その他の実施形態)
(a)第1実施形態と第2実施形態とを組み合わせ、隣接するセンサS間に複数の共通目印Tを設けつつ、各センサSに付随する目印Tを設けてもよい。これにより、各センサS間の相対位置Lkは、複数の共通目印Tの計測データに基づき平均されると共に、前方及び後方の計測データに基づき平均される。二重に平均値を算出することで、計測誤差をより低減することができる。
【0052】
(b)第1実施形態では各センサS間に二つの共通目印Tが設置されるが、各センサS間に一つ、又は三つ以上の共通目印Tを設置するようにしてもよい。三つ以上の共通目印Tを設置する場合、各共通目印Tを対等に扱い、三つ以上の相対位置Lkの単純平均を算出してもよい。或いは、複数の共通目印Tに主従関係を設定し、主となる共通目印Tを介して算出された相対位置Lkのばらつきが所定以上の場合にのみ、他の共通目印Tを介した相対位置Lkを補助的に用いて補正してもよい。
【0053】
(c)各センサSは、撮像の干渉が無い限り、前方又は後方に隣接するセンサSよりも遠くにある目印Tの位置をさらに計測してもよい。この場合、目印Tの立場から言うと、隣接する前後のセンサSのみでなく、その先のセンサSによっても位置が計測され、異なるセンサSによって計測された複数の位置データが平均され得る。したがって、計測装置8は、より多くの位置データに基づいて相対位置を算出することで、計測誤差をより低減することができる。
【0054】
以上、本発明はこのような実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において、種々の形態で実施することができる。
【符号の説明】
【0055】
1 ・・・掘進機、 2 ・・・推進管、 8 ・・・計測装置、
80・・・位置計測システム、
1・・・先頭センサ、 S2~S5・・・中間センサ、 Sz・・・基準位置センサ、
1~T9・・・目印。
図1
図2
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図4
図5
図6
図7
図8