(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-02
(45)【発行日】2022-05-13
(54)【発明の名称】低地球軌道衛星通信システムにおける位置推定
(51)【国際特許分類】
G01S 19/48 20100101AFI20220506BHJP
【FI】
G01S19/48
(21)【出願番号】P 2018554392
(86)(22)【出願日】2017-05-16
(86)【国際出願番号】 AU2017000108
(87)【国際公開番号】W WO2017197433
(87)【国際公開日】2017-11-23
【審査請求日】2020-03-02
(32)【優先日】2016-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(73)【特許権者】
【識別番号】518233372
【氏名又は名称】マイリオタ ピーティーワイ エルティーディー
【氏名又は名称原語表記】Myriota Pty Ltd
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヘイリー、デイビッド、ビクター、ロウリー
(72)【発明者】
【氏名】グラント、アレキサンダー、ジェイムズ
(72)【発明者】
【氏名】マッキリアム、ロバート、ジョージ
(72)【発明者】
【氏名】ポロック、アンドレ
【審査官】山下 雅人
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-099907(JP,A)
【文献】特開2013-221943(JP,A)
【文献】特表2003-527567(JP,A)
【文献】特開平02-243984(JP,A)
【文献】特開2011-220854(JP,A)
【文献】米国特許第03063048(US,A)
【文献】国際公開第2014/195712(WO,A1)
【文献】欧州特許出願公開第0856957(EP,A2)
【文献】冠 昇,衛星を用いた渡り鳥ルートの追跡,電子情報通信学会誌,日本,社団法人電子情報通信学会,1992年09月25日, 第75巻,第9号,pp.995-998
【文献】竹内 義明,ARGOS DCP 位置決定アルゴリズム,気象衛星センター 技術報告,日本,気象衛星センター,1990年03月,第20号,pp.1-9
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S19/00-19/55
G01S 5/00- 5/14
G01S 1/68
G01S11/00-11/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
衛星の通信システム内の地上ベースの端末の位置の推定のための方法であって、
該端末から離れたロケーションにおいて、該端末から該衛星への送信の時間遅延、ドップラー周波数、ドップラー周波数変化率のそれぞれを、該送信に関する情報から推定するステップであって、該送信に関する該情報が、少なくとも該衛星によって受信された信号、または該衛星によって受信された信号の1つもしくは複数のデジタル・サンプルを含む、推定するステップと、
該端末から該衛星への該送信の時間における該衛星の位置の推定値を受信するステップと、
該送信の時間における該衛星の位置の該推定値と、該時間遅延の該推定値、該ドップラー周波数の該推定値、および該ドップラー周波数変化率の該推定値のそれぞれを使用して、該端末の位置を推定するステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記送信は、前記端末が前記衛星に送信しているユーザ・データを含み、前記送信に関する前記情報が、前記衛星から地上局への1つまたは複数の衛星送信を介して受信され、前記時間遅延、前記ドップラー周波数、および前記ドップラー周波数変化率のそれぞれを推定するステップが、該地上局に動作可能に接続された通信受信機によって実行され、前記時間遅延、前記ドップラー周波数、または前記ドップラー周波数変化率が、前記送信における該ユーザ・データの推定値を回復するために該通信受信機によって復号プロセス中に推定される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記端末から離れたロケーションにおいて、前記時間遅延、前記ドップラー周波数、および前記ドップラー周波数変化率のそれぞれを推定するステップは、前記時間遅延、前記ドップラー周波数、および前記ドップラー周波数変化率のそれぞれについて、それぞれの誤差を推定することをさらに含み、前記端末の位置を推定するステップは、前記端末の位置を推定する際に、前記時間遅延、前記ドップラー周波数、および前記ドップラー周波数変化率の推定値を重み付けするために、該誤差を使用する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記端末から離れたロケーションで、前記時間遅延、前記ドップラー周波数、および前記ドップラー周波数変化率のそれぞれの推定するステップは、前記衛星の通過中に前記端末が送信し、前記衛星が受信したJ個のパケットのそれぞれについて実行され、前記端末の位置を推定するステップは、各パケットの時間遅延誤差関数、ドップラー周波数誤差関数、およびドップラー周波数変化率誤差関数を推定するステップと、J個のパケットの前記時間遅延誤差関数、前記ドップラー周波数誤差関数、および前記ドップラー周波数変化率誤差関数の合計に基づいて総合誤差関数を計算するステップとをさらに含み、前記端末の位置を推定するために、非線形最小二乗最適化、他の最適化手法、または該総合誤差関数を最小化する反復法を使用する、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
Δτ
j(x
t)が時間遅延誤差関数、Δω
j(x
t)がドップラー周波数誤差関数、Δv
j(x
t)がドップラー周波数変化率誤差関数、α
j、β
j、γ
jが前記総合誤差関数への寄与を重み付けするために使用される非負の定数であるとして、前記総合誤差関数が下記式によって定義される、請求項4に記載の方法。
【数1】
【請求項6】
前記端末から離れたロケーションで、前記時間遅延、前記ドップラー周波数、および前記ドップラー周波数変化率のそれぞれの推定するステップは、前記衛星の通過中に前記端末が送信し、前記衛星が受信したJ個のパケットのそれぞれについて実行され、前記端末の位置を推定するステップは、各パケットの時間遅延誤差関数、ドップラー周波数誤差関数、およびドップラー周波数変化率誤差関数を推定するステップと、J個のパケットの前記時間遅延誤差関数、前記ドップラー周波数誤差関数、および前記ドップラー周波数変化率誤差関数の合計に基づいて総合誤差関数を計算するステップとをさらに含み、前記端末の位置を推定するために、非線形最小二乗最適化、他の最適化手法、または該総合誤差関数を最小化する反復法を使用し、
Δτ
j(x
t)が時間遅延誤差関数、Δω
j(x
t)がドップラー周波数誤差関数、Δv
j(x
t)がドップラー周波数変化率誤差関数、α
j、β
j、γ
jが前記総合誤差関数への寄与を重み付けするために使用される非負の定数であるとして、前記総合誤差関数が下記式によって定義され、
前記復号プロセスは、前記時間遅延、前記ドップラー周波数および前記ドップラー周波数の変化率の推定値のそれぞれについて品質測定値を生成するように構成され、α
j、β
j、γ
jは、j番目のパケットについての品質測定値に基づいて、全誤差関数における各パケットの寄与度を個別に重み付けする、請求項2に記載の方法。
【数2】
【請求項7】
前記衛星のエフェメリスデータを用いて得られる前記衛星の位置の推定値を受信する、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記送信に関する情報が、前記衛星に搭載されている時間基準に対する、前記送信が前記衛星によって受信されたタイム・スタンプをさらに含む、請求項1または2記載の方法。
【請求項9】
前記送信に関する情報が、前記端末における時間基準に対する、前記送信が前記端末によって送信されたタイム・スタンプをさらに含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
衛星通信システム内の地上ベースの端末の位置の推定のために地上局内に含まれ、または該地上局に動作可能に接続された通信受信機であって、
該端末から衛星への送信の時間遅延、ドップラー周波数、ドップラー周波数変化率のそれぞれを、該衛星からの、該地上局によって受信された該送信に関する情報から推定するように構成されたデコーダであって、該送信に関する該情報が、少なくとも該衛星によって受信された信号、または該衛星によって受信された信号の1つもしくは複数のデジタル・サンプルを含む、デコーダと、
該端末から該衛星への該送信の時間における該衛星の位置の推定値を受信するためのインターフェースと、
それぞれの送信の時間における該衛星の位置の該推定値と、該時間遅延の該推定値、該ドップラー周波数の該推定値、該ドップラー周波数変化率の該推定値のそれぞれを使用して端末位置を推定するように構成されたプロセッサを備える位置推定モジュールと
を備える通信受信機。
【請求項11】
前記デコーダは、前記時間遅延、前記ドップラー周波数、および前記ドップラー周波数変化率のそれぞれについて、それぞれの誤差を推定するように構成され、前記位置推定モジュールは、前記誤差を使用して、前記端末の位置を推定する際に、前記時間遅延、前記ドップラー周波数、および前記ドップラー周波数変化率の推定値を重み付けする、請求項10に記載の通信受信機。
【請求項12】
前記デコーダは、前記衛星の通過中に前記端末が送信し、前記衛星が受信したJ個のパケットのそれぞれについて、前記時間遅延、前記ドップラー周波数、および前記ドップラー周波数変化率を推定するように構成されており、前記位置推定モジュールは、さらに各パケットについて、時間遅延誤差関数、ドップラー周波数誤差関数、およびドップラー周波数変化率誤差関数を推定するように構成され、J個のパケットの前記時間遅延誤差関数、前記ドップラー周波数誤差関数、および前記ドップラー周波数変化率誤差関数の合計に基づいて総合誤差関数を計算し、非線形最小二乗最適化、他の最適化手法、または該総合誤差関数を最小化する反復法を使用して、前記端末の位置を推定する、請求項10に記載の通信受信機。
【請求項13】
Δτ
j(x
t)が時間遅延誤差関数、Δω
j(x
t)がドップラー周波数誤差関数、Δv
j(x
t)がドップラー周波数変化率誤差関数、α
j、β
j、γ
jが前記総合誤差関数への寄与を重み付けするために使用される非負の定数であるとして、前記総合誤差関数が下記式によって定義される、請求項12に記載の通信受信機。
【数3】
【請求項14】
前記デコーダは、前記時間遅延、ドップラー周波数およびドップラー周波数変化率の推定値のそれぞれについて品質測定値を生成するように構成され、α
j、β
j、γ
jは、第j番目のパケットの品質測定値に基づいて、前記総合誤差関数における各パケットの寄与を個別に重み付けするように構成されている、請求項13に記載の通信受信機。
【請求項15】
それぞれの送信時の前記衛星の位置の推定値を受信する前記インターフェースは、前記衛星のエフェメリスデータを受信するように構成されており、前記衛星の位置の推定値は、エフェメリスデータを用いて生成される請求項10から14のいずれか一項に記載の通信受信機。
【請求項16】
前記送信に関する前記情報が、前記衛星に搭載されている時間基準に対する、前記送信が前記衛星によって受信されたタイム・スタンプをさらに含む、請求項10から15のいずれか一項に記載の通信受信機。
【請求項17】
前記送信に関する前記情報が、前記端末における時間基準に対する、前記送信が前記端末によって送信されたタイム・スタンプをさらに含む、請求項10から16のいずれか一項に記載の通信受信機。
【請求項18】
地上局と、
複数の端末と、
複数の衛星であって、各衛星が、端末から信号を受信するように、および、該衛星によって受信された該信号または該衛星によって端末から受信された信号の1つもしくは複数のデジタル・サンプルのどちらかを該地上局に再送信するように構成される、複数の衛星と、
該地上局内に含まれる、または該地上局に動作可能に接続された、請求項10から17のいずれか一項に記載の通信受信機と
を備える衛星通信システム。
【請求項19】
請求項1から9のいずれか一項に記載の方法をプロセッサに実施させる命令が格納されている、プロセッサ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権書類
本出願は、2016年5月20日に出願された「Position Estimation in a Low Earth Orbit Satellite Communications System」という名称のオーストラリア仮特許出願第2016901913号の優先権を主張するものであり、その内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、衛星通信システムにおける地上ベースのトランシーバの位置の推定に関する。特定の形態では、本開示は、端末から離れて推定が実行されるシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
本出願は、無線信号を使用してデータ12を1つまたは複数の低地球軌道周回衛星20に送信する、端末10と呼ばれる地上ベースのトランシーバからなる衛星通信システム1を対象とする。これらの衛星は、信号22を送信して、端末の無線信号を地上局30へ中継し、地上局30において、受信された信号22が復号され、宛先に配信される。
【0004】
対象となるいくつかの適用例では、端末10のロケーション(たとえば、緯度、経度および高度)の推定値を地上局30において取得することが望ましい。例示的な適用例としては、家畜、産業用機械、出荷容器、パレット、および環境センサなどの、遠隔にあり、潜在的に可動性である、資産の追跡がある。これらは、資産またはセンサそれ自体がそれ自体の位置を知る必要はない適用例である。むしろ、中央管理システムが、すべての資産/センサのロケーションを決定することを望む。そのような適用例は、端末それ自体がそれ自体のロケーションの推定値を必要とするナビゲーション・アプリケーションと対比可能である。
【0005】
そのようなシステムでは、広範囲にわたる長期間の使用を可能にするために、端末のコスト、複雑さ、および電力要件を可能な限り低く保つことが望ましいことが多い。端末10は、それらのロケーションを(LEO衛星20を介して)地上局30に送信するために使用可能なGPS受信機を取り付け可能であるが、GPSモジュール/受信機を追加することによって、コストと電力要件の両方が増す。GPSモジュールは、位置を推定するために著しい計算リソースを必要とし、加えて、GPSモジュールは、最新の衛星エフェメリス・データを有さなければならない。これによって、一般的に、GPSモジュールが、周期的にウェイク・アップし、最新のGPSアルマナックを獲得することが要求される。コールド・スタートでは、GPS受信機は、端末に対する電力要件に著しい負荷をかける完全なアルマナックをダウンロードするのに12分かかる。
【0006】
支援型GPSシステムは、最近のアルマナック情報を端末に送信することによって、および/または端末がGPS信号をサンプリングし、より能力の高い処理デバイスにサンプルを送信することを可能にすることによって、端末にかかる計算負荷または電力要件を減少させるために使用可能である。しかしながら、これには、端末が、端末とより能力の高い処理デバイスとの間の通信チャネルを通じてサンプルを送信するのに十分な能力をもつ通信リンクを確立することが可能であることが必要とされる。上記で説明されたような遠隔端末10に関する適用例では、この要件によって、著しいコストおよび電力要件が端末10に追加され得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、端末内でのGPSモジュールの必要性を回避する、衛星通信システムにおける地上ベースの端末の位置の遠隔推定のためのシステムおよび方法を提供すること、または少なくとも既存のシステムおよび方法に有用な代替策を提供することが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の態様によれば、衛星通信システム内の地上ベースの端末の位置の推定のための方法であって、
端末から離れたロケーションにおいて、端末から衛星への送信の時間遅延、ドップラー周波数、またはドップラー周波数変化率のうちの1つまたは複数を、送信に関する情報から推定することであって、この送信に関する該情報は、少なくとも衛星によって受信された信号、または衛星によって受信された信号の1つもしくは複数のデジタル・サンプルを含む、推定することと、
送信の時間における衛星の位置の推定値を受信することと、
衛星の位置の推定値と、時間遅延の推定値、ドップラー周波数の推定値、またはドップラー周波数変化率(遅延、ドップラー、またはドップラー率)の推定値のうちの少なくとも1つとを使用して、端末位置を推定することと
を含む方法が提供される。
【0009】
一形態では、情報は、衛星から地上局への1つまたは複数の送信を介して受信され、端末と衛星との間の送信に関する情報から遅延、ドップラー、またはドップラー率のうちの1つまたは複数を推定することは、地上局に動作可能に接続された通信受信機によって実行され、遅延、ドップラー、またはドップラー率は、送信におけるユーザ・データの推定値を回復するために通信受信機によって復号プロセス中に推定される。情報は、地上局に送信された送信信号の1つまたは複数のデジタル・サンプルであってよく、または、情報は、地上局に再送信される衛星(すなわち、ベント・パイプ型衛星)によって受信される再送信されたアナログ信号であってよい。
【0010】
一形態では、端末と衛星との間の送信に関する情報は、オン・ボード時間基準もしくはオン・ボード周波数基準に対する、送信が衛星によって受信されたタイム・スタンプ、および/または時間基準もしくは周波数基準に対する、送信が端末によって送信されたタイム・スタンプをさらに含む。一形態では、端末と衛星との間の送信に関する情報は、端末の時間基準または周波数基準に対して決定された所定の送信スケジュールに基づいた、端末による推定送信時間をさらに含む。
【0011】
一形態では、端末は衛星に送信のシーケンスを送信し、衛星は、送信のシーケンスに関する情報を地上局に送信し、遅延、ドップラー、またはドップラー率のうちの1つまたは複数を受信情報から推定することは、送信のシーケンス内の各送信に対して実行され、端末位置を推定することは、各送信の時間における衛星の位置の推定値と、送信のシーケンス内の各送信に対する推定値の各々とを使用する。
【0012】
さらなる形態では、端末位置を推定することは、送信のシーケンス内の送信間の推定値間の差に対して異なって実行される。これは、オン・ボード時間基準またはオン・ボード周波数基準がいかなる全世界時間基準もしくは全世界周波数基準にも同期されない、および/または衛星がオン・ボード位置基準を含まない、および/または端末がいかなる全世界時間基準または全世界周波数基準にも同期されない場合に、実行され得る。
【0013】
一形態では、端末は、安定したクロックを備え、いかなる全世界時間基準または全世界周波数基準にも同期されず、端末位置を推定することは、全世界時間基準または全世界周波数基準に対する端末オフセットを推定することをさらに含む。
【0014】
一形態では、衛星は、オン・ボード位置基準を含まず、端末位置の推定は、衛星位置を推定することをさらに含む。
【0015】
一形態では、方法は、
衛星において、地上ベースのソースまたは宇宙ベースのソースから1つまたは複数のビーコン信号を受信することであって、このビーコン信号は、ビーコン位置と、基準に対する全世界タイミングとを含み、衛星は、信号のサンプルを地上局に転送する、受信することをさらに含み、端末のロケーションを推定することは、各ビーコン信号に対するビーコン遅延、ビーコン・ドップラー、またはビーコン・ドップラー率のうちの少なくとも1つを推定することをさらに含む。この推定値は、衛星位置の推定値と、したがって端末位置とを改善するために使用可能である。
【0016】
一形態では、方法は、
端末において、地上ベースのソースまたは宇宙ベースのソースから1つまたは複数のビーコン信号を受信することであって、このビーコン信号は、ビーコン位置と、基準に対する全世界タイミングとを含み、端末は、各ビーコン信号に対するビーコン・ドップラーまたはビーコン・ドップラー率のうちの1つまたは複数を推定し、衛星への1つまたは複数の送信内に推定値を含む、受信することをさらに含み、端末のロケーションを推定することは、各ビーコン信号に対するビーコン遅延、ビーコン・ドップラー、またはビーコン・ドップラー率のうちの少なくとも1つを推定することをさらに含む。
【0017】
一形態では、位置推定は、時間tにおける端末の位置ベクトルの仮説に基づく衛星の経時変化する位置ベクトルのための非線形最適化プロセスを使用して実行される。
【0018】
さらなる形態では、方法は、衛星のフットプリントを推定することと、端末の位置ベクトルをこのフットプリント内に存在するように拘束することをさらに含む。
【0019】
一形態では、端末は、GPS L1信号を受信し、C/Aコードの「位相」(遅延)およびドップラー周波数の粗推定を実行し、衛星への1つまたは複数の送信内でC/Aコードの推定値およびドップラー周波数の推定値を提供するように構成され、端末位置を推定することは、GPSアルマナックを受信することと、C/Aコードの受信された推定値およびドップラー周波数の受信された推定値を使用して、端末の位置を推定することをさらに含む。
【0020】
さらなる形態では、端末は、
信号を受信し、複素ベースバンド信号にダウンコンバートし、
この複素ベースバンド信号をサンプリングして、W個の複素サンプルのシーケンスを生じさせ、
このW個の複素サンプルの直列並列変換を実行し、W個の複素サンプルにM個の複素正弦曲線を並列に乗算して、各々長さNのサンプルのM個のシーケンスを生じさせ、使用されるM個の正弦曲線の周波数は、ドップラー周波数の予想範囲をカバーするように選択され、
サンプルのM個のシーケンスの各々に対するゼロ・パディング離散フーリエ変換を実行して、各ブロックに対するN個の複素周波数領域サンプルのベクトルを生じさせ、
それぞれのC/AコードのN点ゼロ・パディング離散フーリエ変換である、ベクトルの各々に長さNのベクトルを要素ごとに乗算するコード位相推定器ごとのモジュールの各々に、M個のベクトルを提供し、乗算後の大きさが最大の要素に対応する関連付けられたコード遅延およびドップラー周波数を出力すること
によって、C/Aコードの推定値およびドップラー周波数の推定値を取得する。
【0021】
第2の態様によれば、衛星通信システム内の地上ベースの端末の位置の推定のために地上局内に含まれ、またはこの地上局に動作可能に接続された通信受信機であって、
端末から衛星への送信の時間遅延、ドップラー周波数、またはドップラー周波数変化率のうちの1つまたは複数を、衛星からの、地上局によって受信された送信に関する情報から推定するように構成されたデコーダであって、この送信に関する情報は、少なくとも衛星によって受信された信号、または衛星によって受信された信号の1つもしくは複数のデジタル・サンプルを含む、デコーダと、
送信の時間における衛星の位置の推定値を受信するためのインターフェースと、
衛星の位置の推定値と、遅延の推定値、ドップラーの推定値、またはドップラー率の推定値のうちの少なくとも1つとを使用して端末位置を推定するように構成されたプロセッサを備える位置推定モジュールと
を備える通信受信機が提供される。
【0022】
さらなる形態では、通信受信機は、第1の態様の方法のさらなる形態を実行するようにさらに構成されてよい。通信システムおよび第1の態様の方法を実行するように構成された端末も提供されてよい。方法は、第1の態様の方法を実行するようにプロセスを構成するためにプロセッサ可読媒体内にも提供されてよい。
【0023】
本開示の実施形態について、添付の図面を参照しながら説明する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】一実施形態による、低地球軌道衛星通信システムの概略図である。
【0025】
【
図2】一実施形態による、ドップラー推定値および遅延推定値からの位置推定のためのシステムの概略図である。
【0026】
【
図3】一実施形態による、ハイブリッド分散位置決定のためのモジュールの概略図である。
【0027】
【
図4】一実施形態による、粗C/Aコード位相/ドップラー推定モジュールの概略図である。
【0028】
【
図5】一実施形態による、衛星通信システムにおける地上ベースの端末の位置の推定のための方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下の説明では、同じ参照文字は、図全体を通して同じまたは対応する部分を指す。
【0030】
図1は、広範なシステム構成要素および信号経路を示す、一実施形態による、低地球軌道衛星通信システムの概略図である。衛星通信システム1は、無線信号を使用してデータ12を1つまたは複数の低地球軌道周回衛星20に送信する、端末10と呼ばれる地上ベースのトランシーバからなる。これらの衛星は、受信信号22が復号されて宛先に配信される地上局30に端末の無線信号を中継するために、信号22を送信する。
図2は、本明細書において説明するようなドップラー推定値および遅延推定値からの位置推定を実行するためのさまざまなモジュールを示す、このシステムのより詳細な概略図である。
【0031】
システムおよび方法の実施形態は、低地球軌道周回(LEO)衛星20によって見られるように、飛行時間(端末から衛星までの送信経路長)、相対的ドップラー周波数(経路長の一次導関数)、および端末の送信信号12のドップラー周波数(経路長の二次導関数)の変化率から得られた測定値から、ロケーション推定値を取得する。飛行時間とは、信号の送信と受信の間の時間遅延であり、したがって、遅延(または時間遅延)と呼ばれる。同様に、相対的ドップラー周波数およびドップラー周波数の変化率は、ドップラーおよびドップラー率と呼ばれる。方法の実施形態は、任意選択で、そのような測定値のシーケンスを使用可能であり、その場合、これらの測定値は、絶対的な時間基準または周波数基準を参照する必要はなく、特定の選定された基準(たとえば第1の測定値の時間および周波数)に対して異ならせることができる。
【0032】
端末と衛星との間の(またはこれらからの)送信に関する情報は、(衛星において受信される)送信信号の1つまたは複数のデジタル・サンプルであってよく、この情報は、次いで、地上局に送信される。または、情報は、地上局に再送信される衛星(すなわち、ベント・パイプ型衛星)によって受信される再送信されたアナログ信号であってもよい。情報(または信号、またはサンプル)は、次いで、遅延、ドップラー、および/またはドップラー率の推定を含む推定プロセス(以下で詳細に説明する)を実行する通信受信機に提供される。
【0033】
端末と衛星との間の送信に関する情報は、オン・ボード時間基準またはオン・ボード周波数基準に対する、送信が衛星によって受信された時間のタイム・スタンプも含んでよい。以下で説明するように、この時間基準または周波数基準は、全世界基準に同期可能であり、非同期だが安定した時間基準または周波数基準であってもよい。同様に、情報は、端末における時間基準または周波数基準に対して送信が端末によって送信されたタイム・スタンプを含んでよい(すなわち、端末は、送信するときに、このタイム・スタンプを追加する)。同じく、これは、全世界基準に同期されてもよいし、非同期であってもよい。一実施形態では、端末は、その送信にタイム・スタンプを与えず、代わりに、端末の時間基準または周波数基準に対して決定された所定の送信スケジュールに基づいて送信する。たとえば、これは、毎秒であってもよいし、何らかの他の固定時間間隔(たとえば100ms、250ms、500ms、2s、5s)であってもよい。この場合、端末スケジュールは、地上局における位置推定モジュールによって知られている。タイム・スタンプ情報は、送信中に埋め込まれ、ひとたび送信が復号および回復されると利用可能になってもよいし、または衛星から地上局への追加送信すなわち側(side)送信として提供されてもよい。本明細書の文脈では、端末と衛星との間の送信に関する情報は、信号または信号のサンプルと、この信号またはサンプルから回復可能である、または信号とともに送信される、メタデータとを含む。
【0034】
地上局30(または地上局30と通信するサイト)における位置推定器40は、地上局30において計算される端末の遅延/ドップラー/ドップラー率の推定値を、端末のロケーションに関する特定の仮説に対して予想されるであろう対応する仮説化された量と比較することによって、機能する。これらの量は、衛星の位置20を知れば決定可能であり、その正確な推定値は、地上局に利用可能(別のソースから取得可能、または利用可能/取得可能データに基づいて推定可能、のどちらか)である。ロケーション推定値は、推定された量から仮説化された量の間の最小総合誤差をもつ仮説である。一般的には、遅延、ドップラー、およびドップラー率の推定は、これらの量における誤差の推定も含む。この誤差(または不確定度)は、位置推定器にも渡され、誤差に基づいて推定値を適切に重み付けすることなどによって、位置推定プロセスにおいて使用可能である。遅延、ドップラー、またはドップラー率のうちの1つのみが必要とされるが、性能は、一般的には、2つの値または3つの値すべての推定値が提供される場合に改善される。
【0035】
より一般には、遅延、ドップラー、またはドップラー率の推定が衛星において実行されてよいことが諒解されるであろう。さらに、方法全体は、十分な計算リソースおよび電力リソースを有するならば、衛星において実行されてもよい(遅延、ドップラー、またはドップラー率の推定、次いで、この情報を使用した位置推定)。これによって、一実施形態による衛星通信システムにおける地上ベースの端末の位置の推定のための方法のフローチャート500である
図5に示される一般的な方法がもたらされる。この方法は、
ステップ510において、端末から離れたロケーションにおいて、端末から衛星への送信の時間遅延、ドップラー周波数、またはドップラー周波数変化率のうちの1つまたは複数を、送信に関する情報から推定することと、
ステップ520において、送信の時間における衛星の位置の推定値を受信することと、
ステップ530において、衛星の位置の推定値と、時間遅延、ドップラー周波数、またはドップラー周波数変化率の推定値のうちの少なくとも1つとを使用して、端末位置を推定することとを含む。送信に関する情報は、衛星によって受信された信号、または衛星によって受信された信号の1つもしくは複数のデジタル・サンプルを少なくとも含み、送信タイム・スタンプまたは受信タイム・スタンプまたは推定送信時間などのさらなる情報を含んでよい。したがって、この方法は、衛星内で、衛星と地上局における位置推定モジュールとの間で共同で、もっぱら地上局内で(すなわち、地上局は、遅延/ドップラー/ドップラー率の推定を実行するための通信受信機と、位置推定器とを含む)、または地上局から離れて配置されているが(たとえば通信リンクを経由して)地上局に動作可能に接続された位置推定モジュールに遅延の推定値、ドップラーの推定値、もしくはドップラー率の推定値を提供する地上局(通信受信機を含む)間で、実施可能である。
【0036】
方法の実施形態は、加えて、端末によって受信された他のビーコン信号50を任意選択で機会主義的に(opportunistically)活用することができる。これらのビーコン信号50は、ビーコン衛星51からのビーコン信号52であってもよいし、全地球測位システム(GPS)衛星53からのGPS L1信号54であってもよいし、または地上ビーコン55からのビーコン信号56であってもよい。本発明者らは、すべてのそのような信号50を「ビーコン」と呼ぶものとする。そのようなビーコン信号50が役立つために、
信号のソースのロケーションが、地上局では既知である、または推定可能であるが、端末では必ずしもそうではないこと、および
端末が、受信信号から遅延、ドップラー、またはドップラー変化率のうちの1つまたは複数を推定することができること
が必要とされる。
【0037】
この場合、端末10が、ビーコン信号(または複数のビーコン信号)のための遅延/ドップラー/ドップラー率推定値のうちの1つまたは複数を計算し、または別の方法で推定し、次いで、そのようなビーコン信号50の推定値をそのデータ送信12の一部として低地球軌道衛星20に送信する。次いで、位置推定器が、端末により計算された推定値を対応する仮説値と比較して、端末位置推定値を改良する。このプロセスについては、以下のセクション2でより詳細に説明する。
【0038】
いくつかの例では、低地球軌道衛星のロケーションは、地上局では演繹的に正確に知られていない場合がある。そのような場合、地上ビーコンは、任意選択で、地上局の衛星位置の推定値を改善するために活用される。この場合、低地球軌道衛星は、加えて、地上ビーコン信号をサンプリングし、これらのサンプルを地上局に中継する。次いで、地上局が、これらの信号の遅延/ドップラー/ドップラー率の推定値を使用して、衛星の位置を推定する、またはその衛星の位置の推定値を改善することができる。地上ビーコンは、信頼された既知のロケーションを有する、端末の一般集団の特殊な例であるかもしれない(たとえば、地上ビーコンは、自らの正確な位置を得て、それを地上局に送信する標準的なGPSモジュールを搭載してよい)。あるいは、ビーコンは、既知のロケーションから送信された、機会の信号であるかもしれない(たとえば、地上ラジオ放送またはテレビジョン放送)。
【0039】
提案される測位方法は、遠隔追跡アプリケーションのためのいくつかの利点を有する。
1.この方法は、端末におけるGPSモジュールを必要としない。これによって、端末は組み立てるためのコストが低くなり、はるかに少ない電力を使用するようになり、より長いバッテリ寿命をもたらす。
2.この方法は、端末が、GPS衛星、ビーコン衛星、または地上ビーコンの位置の知識を取得することを要求しない。たとえば、コールド・スタート・モードでは、GPS受信機が、完全なアルマナックをダウンロードするのに12分かかる。本明細書において説明する方法の実施形態は、このプロセスを回避する。
3.この方法は、主に、地上局において実施され、地上局では、より多くの計算リソースが利用可能であり、電力使用はそれほど重要ではなく、GPS衛星および他の衛星のためのエフェメリス・データは、たとえばインターネット・データベースへの直接接続を介して、利用可能である。
【0040】
本明細書において説明する方法は、非同期端末と同期端末の両方に適用可能である。
非同期:端末は、いかなる全世界時間基準または全世界周波数基準に同期されない。しかしながら、端末は、それ自体のローカルな時間基準および周波数基準を得ることができる、それ自体の十分に安定したクロックを有する。これは、端末の時間および周波数は、パケットによってあまり大きく変動しないことを意味する。
時間および/または周波数同期:端末は、全世界基準に正確に同期されている安定した時間基準および/または周波数基準を有する。
【0041】
本明細書において説明する方法はまた、オン・ボード全世界位置基準およびオン・ボード全世界タイミング基準の有無にかかわらず、低地球軌道衛星に独立して適用可能である。
位置認識:低地球軌道衛星は、宇宙におけるその位置の正確な知識および正確な全世界タイミング基準(たとえばオン・ボードGPSペイロードから取得された)を有する。
位置未認識:低地球軌道衛星は、オン・ボード位置基準を有さない。加えて、低地球軌道衛星は、正確な全世界タイミング基準を有さないことがある。
【0042】
2.0 位置推定
【0043】
2.1 詳細なシステム・モデル
【0044】
図2は、一実施形態による、ドップラー推定値および遅延推定値からの位置推定のためのシステム2の詳細な概略図である。このシステムは、ユーザ・データを含むデータ12のパケットのシーケンスを低地球軌道内の衛星ペイロード24を介して地上局30に送信する遠隔ユーザ端末10からなる。
【0045】
時間tにおいて、端末と衛星との間の距離d(t)は
d(t)=||xt(t)-xs(t)|| 式1
であり、ここで、xt(t)およびxs(t)はそれぞれ、時間tにおける端末および衛星の位置である。これらの位置は、たとえば、地球中心慣性(ECI)座標で表現可能であり、||・||は標準的なユークリッド距離測度である。しかしながら、他の類似の座標系も使用可能である。
【0046】
図2を参照すると、端末10は、たとえば端末(図示せず)と統合されたもしくはこれに接続されたセンサ・モジュールからのユーザ・データ112、および/またはメモリに記憶され得る、一意の端末識別子番号などの識別データ114を受信する。パケット・フォーマッティング・モジュール110は、ユーザ・データ112および識別データ114を受け取り、メッセージ・ビット116を生成する。送信機IQ波形生成器120は、メッセージ・ビット116およびスロット・タイミング情報122を受け取って、送信機IQサンプル124を生成する。デジタル・アナログ(DAC)変換器130は、アナログ信号をRFトランシーバ・フロント・エンド140に提供し、RFトランシーバ・フロント・エンド140は、アンテナ142を介して信号12を送信する。RFトランシーバ・フロント・エンド140は、広帯域トランシーバ・フロント・エンドであってよい。
【0047】
低地球軌道衛星20は、端末10から送信された信号12を受信するRFフロント・エンド25を有する衛星ペイロード24を含む。送信12の飛行時間τ(t)は、
τ(t)=d(t)/c 式2
であり、ここで、cは光のスピードである。相対速度は、ドップラー周波数を直接的に与える
【数1】
であり、ω(t)は、
【数2】
であり、ここで、ω
cは送信の中心周波数である。同様に、本発明者らは、ドップラー率を
【数3】
と定義することができる。
【0048】
以下で詳述するように、スケーリング定数に達するまで、基礎をなす対象となる量はd(t)と、その一次時間導関数および二次時間導関数d’(t)およびd’’(t)である。座標の選択は恣意的である。以下で、遅延、ドップラー、およびドップラー率を参照するが、方法は、距離、速度、および加速度、またはこれらの量の他の任意の可逆変換を使用しても、等しく機能するであろう。したがって、本明細書の文脈では、遅延、ドップラー、およびドップラー率の言及は、これらの量の可逆変換から取得された同等の量を包含することができる。
【0049】
端末によって送信されるパケットのシーケンスは、jによってインデックスが付けられる。一般性を失うことなく、j=0,1,・・・,J-1であると仮定し、ここで、Jは、衛星通過中に端末によって送信されたパケットの数である。衛星ペイロード24は、(ドップラー・シフトを可能にする端末送信を捕らえるのに十分に広い帯域幅を使用する)RFフロント・エンド25と地上局30への送信のためにダウンリンク・トランシーバ28にスペクトル・サンプル27を提供するアナログ・デジタル(ADC)変換器26とを介して、関連のある無線周波数帯域をサンプリングする。この実施形態では、端末と衛星との間の送信に関する情報は、少なくともこれらのスペクトル・サンプルを含む。加えて、情報は、追加されてもよいし地上局に別個に送信されてもよい、タイム・スタンプなどの他の任意のメタデータを含んでよい。
【0050】
衛星が、(たとえば全地球測位システムから取得される)正確な全世界時間基準へのアクセスを有する場合、衛星は、これらのデジタル化されたサンプル27にタイム・スタンプを与え、ダウンリンク・トランシーバ28は、異なる周波数上で異なる帯域幅であってよいデジタル通信リンク22を使用して、それらを地上局30に中継する。地上局30は、これらのデジタル・サンプルを処理のために通信受信機32に転送する。通信受信機32は、地上局30と同じ場所に配置されてもよいし、されなくてもよい。他の実施形態では、端末信号12を地上局30に中継することができる他の衛星ペイロード構成が使用可能である。衛星は、地上局が衛星20の観測視野角の範囲内にある場合、リアル・タイムで信号12を中継することができる、または、地上局が衛星20の観測視野角の範囲内にあるとき、受信信号12を後で記憶および転送することができることに留意されたい。
【0051】
通信受信機32は、受信されたスペクトル・サンプルから端末パケットのシーケンスを復号する。復号プロセスの主要な目標は、ユーザ・データ112の推定値を取得または回復させることである。パケットjに対する復号プロセスの一部として、通信受信機は、ドップラー・シフトω0j、ドップラー率v0j、および遅延τ0j34の関連付けられた推定値も生じさせる。これらの推定値34はすべて、正確で安定した時間基準を基準とし、この時間基準は、衛星、地上局、または位置プロセッサに利用可能な同じ基準であってもよいし、同じ基準でなくてもよい(これについては、以下で詳述する)。
【0052】
下付き文字0は、これらの推定値34を低地球軌道衛星を用いて識別するために使用され、この下付き文字は、後で、他の衛星に関連のある量を区別するために使用される(すなわち、これは、利用可能なビーコン衛星および/または地上ビーコンのリストに後でインデックスを付ける)。
【0053】
推定値のシーケンス{ω0j,v0j,τ0j}、j=0,1,・・・,J-1(34とラベルが付けられる)は、位置推定モジュール40に転送され、位置推定モジュール40は、通信受信機32と同じ場所に配置されてもよいし、されなくてもよい。本明細書の文脈では、ターム(term)・モジュールは、方法を実施するように構成された、特定用途向け集積回路(ASIC)、デジタル信号プロセッサ(DSP)、デジタル信号処理デバイス(DSPD)、プログラマブル論理デバイス(PLD)、もしくはフィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)、または他の支持構成要素(電源、データ・バス、通信ボード、またはチップなど)とともに、方法を実施するために実行可能な命令を記憶するプロセッサおよび関連メモリ(オン・ボードまたは動作可能にリンクされる)をもつプロセッサ・ボードなどのハードウェアを包含することに留意されたい。ターム・モジュールとプロセッサは互換的に使用され、その場合、プロセッサは、プロセッサ・ユニットならびに関連するハードウェアおよびソフトウェアとして広義に解釈されるべきである。
【0054】
位置推定プロセッサ40は、低地球軌道衛星に関する利用可能なエフェメリス・データ(軌道要素)41を有する。これらは、たとえば、所与のエポック(時点)に関する軌道要素を符号化するごく最近に公表された2行軌道要素(TLE)から取得される。シーケンス{ω0j,v0j,τ0j}34およびエフェメリス・データ41を使用して、位置推定プロセッサ40は、各パケットj=0,1,・・・,J-1の送信の時間における端末の位置の位置推定値42のシーケンスを生じさせる。
【0055】
時間同期動作および周波数同期動作の場合、位置推定プロセッサ40は、ω0j,v0j,τ0j34が「絶対的」である、すなわち、既知の基準を参照しているということを活用することができる。
【0056】
非同期動作(端末または衛星のどちらかが正確な全世界時間基準を有さない)の場合、位置推定プロセッサは、代わりに、異なるパケットからのこれらの推定値の安定性を活用することができる、すなわち、異なるインデックスjをもつパケット間で時間推定値および/または周波数推定値を比較することができる。たとえば、プロセッサは、以下の量を使用して、パケットj=0に対して異なって動作することができる。
【数4】
【0057】
基準パケットj=0の選択肢は恣意的であり、j=0,1,・・・,J-1の他の任意の選択肢であってよい。
【0058】
2.2 非線形最適化を介した位置推定
【0059】
衛星エフェメリス・データ41から、位置推定器40は、少なくとも低地球軌道衛星の経時変化する位置ベクトルxs(t)の近似を決定することができる。tjは、パケットj=0,1,・・・,Jの送信時間とする。xt(t)は、(xs(t)と同じ座標系内の)時間tにおける端末の位置ベクトルに対する仮説とする。簡単にするために、さしあたり、時間間隔(t0,tJ-1)に対するxt(t)≒xtを仮定する。
【0060】
所与のxs(t)の場合、衛星の「フットプリント」が決定可能である。これは、(障害がない場合)衛星が見える、地球上の位置X(t)のセットである。これは、時間tにおける端末位置に対する選択肢の実現可能なセットを表し、すなわち、xt∈X(t)であることがわかっている。このフットプリントは、衛星位置、タイミング、および衛星との通信に必要とされる最小仰角における小さい不確定度について説明するように容易に修正可能である。X=∩jX(tj)とする。
【0061】
次に、端末が同期端末である一実施形態による位置推定のための方法について説明する。次いで、セクション2.2.2において、この実施形態が、端末が非同期端末である一実施形態に一般化される。
【0062】
低地球軌道衛星20によって受信可能な地上ビーコン信号または宇宙ベースのビーコン信号58は、低地球軌道衛星の位置推定値を改善することによって性能を改善するために使用可能である。これについては、セクション3.1で説明する。ビーコン信号50は、端末によっても受信され、位置推定値42を改善するために使用可能である。これについては、セクション3.2で説明する。
【0063】
2.2.1 同期端末
【0064】
まず第一に、端末10が時間および周波数同期を有し、したがって、推定値ω0jおよびv0jがωcに関し、τ0jがパケットjの送信の正確な時間tjに関する(すなわち、飛行時間の推定値τ(tj)である)と仮定する。
【0065】
時間tにおける所与の仮説端末位置xtおよび衛星位置xs(t)の場合、
d(t|xt)=||xt-xs(t)||2 式9
を、時間tにおける端末と衛星との間の経時変化する距離に関する仮説とする。同様に、ω(t|xt)、v(t|xt)、およびτ(t|xt)を定義する。
【0066】
誤差関数
Δω0j(xt)=ω(tj|xt)-ω0j 式10
Δv0j(xt)=v(tj|xt)-v0j 式11
Δτ0j(xt)=τ(tj|xt)-τ0j 式12
を定義する。
【0067】
さらに、総合誤差を
【数5】
と定義し、ここで、α
0j、β
0j、γ
0jは、全世界誤差関数への寄与を重み付けするために使用される非負の定数である。これらの定数は、システム性能を調整するために使用可能であり、実験によって前もって決定可能であり、値をより同等の値に変換するための単位係数(unit factor)の変更を含んでよい。これらの定数は、それらのパケットに関して報告された品質尺度により、異なるパケットからの推定値の寄与を重み付けするためにも使用可能である(たとえば、より低い信号対雑音比をもつパケットからの推定値にあまり注目しないことができる)。τ、ω、およびvの異なる推定器は、これらの推定値の品質尺度も報告してよく、これらは、重み付け係数を選ぶために使用されてよい。
【0068】
位置推定プロセッサは、以下の非線形最適化問題を解くことによって、端末位置の推定値
【数6】
を生じさせる。
【数7】
【0069】
非線形最小二乗最適化問題の解決のための多くの既知の手法がある。一例が、Levenberg-Marquardtアルゴリズムである。そのようなアルゴリズムは反復的に機能し、誤差関数の勾配を考慮することによって最初の推測を改善する。最初の推測のための良好な選択肢は、時間tにおける衛星の地上軌跡位置である。本発明者らは、領域Xにおける全世界的な解を必要とするので、この空間を(たとえばグリッディングによって)離散化し、Levenberg-Marquardtなどのローカル最適化器を走らせ、各グリッド点を用いて初期化することができる。全世界的な解の候補は、結果として生じる最小のΔ(xt)をもつものである。
【0070】
他の実施形態では、推定は、他の関数または最適化方法を使用して実行されることがある。たとえば、線形最小二乗法が使用されてもよいし、または第1の推定値として線形方法を使用し、この推定値をさらに改良するために非線形方法を使用する(または、その逆)ハイブリッド解決策が使用されてもよい。同様に、たとえば関数を定義し、その関数を最小または最大にすることによって誤差を最小にしようとする反復的方法を含む他の方法がある。いくつかの場合では、推定プロセスは、最適な解決策であることが保証されることが必要であるが、所定の閾値より小さい誤差、または連続した反復もしくは反復のシーケンス間の変化が所定の閾値よりも小さいことなどの、精度または安定性に基づいた停止基準を満たすによって定義されてよい。
【0071】
端末位置に関する他の任意の情報がない場合に、解決不能の曖昧さがある可能性に留意されたい。これは、同じ最小Δ(xt)を有する、Xに属する2つの端末位置候補があることを意味する。いくつかの場合には、そのような曖昧さは、演繹的に既知であり得る端末位置についての追加情報を用いることによって解決可能である。たとえば、端末のおおよその位置は、すでに、たとえば以前に取得された位置フィックスから知られている場合があり、この情報は、不正確な曖昧さを除外するために使用可能である。
【0072】
前述のように、簡単にするために、端末は動かないと仮定された。しかしながら、いくつかの実施形態では、この仮定が緩和されることがある。その場合、式9~式13におけるxtをxt(t)で置き換え、そのため、誤差が各送信に対して推定され、最適化式14は、固定時間と速度成分における位置ベクトルまたは位置について解く。
【0073】
2.2.2 非同期端末
【0074】
端末が、既知の基準に対する時間および/または周波数の同期がない(ただし、対象となる持続時間にわたって別の方法で安定している)とき、式14に類似した最適化問題を作ることが依然として可能である。必要とされる主な修正は、異なるように動作し、式6~式8において定義された量
【数8】
に関する式10~式12に類似した誤差関数を定義することである。
【0075】
3.0 ビーコン信号
【0076】
システムは、任意選択で、地上無線送信機によって、または衛星によって送信された、ビーコン信号50を活用することができる。これらのビーコンが既知の(または推定可能な)位置を有することが必要とされる。例としては、
・GPS衛星53によって送信されたL1信号54、または、他の全地球測位システムからの信号
・地上GPS補強システムによって送信された信号
・既知の信頼された位置およびタイミングをもつ端末(たとえば、GPS受信機を取り付けられた端末)からの送信
・デジタル・オーディオ・ブロードキャスト無線信号などの、既知の周波数および既知のロケーションをもつ地上ビーコン55からの地上ブロードキャスト56
・他の衛星コンステレーション51から送信されたビーコン52
がある。
【0077】
セクション3.1は、低地球軌道衛星によって受信されたそのような信号をどのように使用するかについて説明する。セクション3.2は、端末によって受信されたそのような信号をどのように活用するかについて説明する。ビーコン信号はk=1,2,・・・,K-1によってインデックスが付けられるものとし、ビーコン位置はbkとする。
【0078】
3.1 衛星によって受信されたビーコン
【0079】
端末10の正確な位置推定値を取得するために、位置推定器40が衛星20の位置の正確な知識を有することが重要である。TLEデータから得られた推定値は、実際には、十分に正確でないことがある。性能を改善するために、衛星は、加えて、宇宙ベースのソースまたは地上ソース51、53、55から送信されたビーコン信号50をサンプリングすることができる。一例は、低地球軌道衛星20がGPS受信機ペイロードを持っており、GPS信号を受信してその位置を非常に正確に判断し、この情報を地上局30に中継することである。これは、そのようなGPSペイロードが存在しない場合があり、または大量の電力を使用する場合があり、および利用可能な帯域幅のうちのいくらかを使用することがあるので、いくつかの例では、望ましくない場合がある。
【0080】
GPS信号を受信および復号する代わりに、加えて、衛星は、
図1に示すように、地上ビーコン端末55(または他の任意のビーコン)からの信号58をサンプリングすることができる。
【0081】
地上ビーコン端末55は、自らの正確な位置および全世界タイミングを(送信し得る他の任意のデータに加えて)送信する。加えて、衛星20が、これらの信号をサンプリングし、これらのサンプルを、位置推定器40への提供のために地上局30に転送する。位置推定器40は、ビーコン信号k=0,1,・・・,K-1の各々に対して遅延τk、ドップラーωk、およびドップラー率vkの推定値を取得する。これらは、さらに、各ビーコンによって送信された特定のパケットによってインデックス付与可能であるが(たとえばωkj)、これは、明確にするため省略されている。
【0082】
セクション2.2.1における発展を一般化すると、所与の仮説端末位置xtおよび仮説衛星位置xs(t)に対して、ω(t|xt,xs(t))、v(t|xt,xs(t))および、τ(t|xt,xs(t))を、端末および衛星位置の特定の仮説選択肢に対応する時間tにおけるドップラー、ドップラー率、および遅延と定義する。同様に、ω(t|bk,xs(t))、v(t|bk,xs(t))、およびτ(t|bk,xs(t))が、ビーコンkの既知の位置および衛星の仮説位置に対する仮説量であると定義する。
【0083】
時間tjにおいて受信されるパケットj=0,1,・・・,J-1に対する誤差関数を、
Δω0j(xt,xs(tj))=ω(tj|xt,xs(tj))-ω0j 式15
Δv0j(xt,xs(tj))=v(tj|xt,xs(tj))-v0j 式16
Δτ0j(xt,xs(tj))=τ(tj|xt,xs(tj))-τ0j 式17
と定義し、時間tkにおいて観測されるビーコンを、
Δωk(bk,xs(tk))=ω(tk|xt,xs(tk))-ωk 式18
Δvk(bk,xs(tk))=v(tk|b,xs(tk))-vk 式19
Δτk(bk,xs(tk))=τ(tk|bk,xs(tk))-τk 式20
と定義する。
【0084】
総合誤差を、
【数9】
と定義し、ここで、以前と同様に、α
k、βk、γ
kは、全世界誤差関数に対するビーコン誤差の寄与を重み付けするために使用される追加の非負の定数である。
【0085】
Sを、衛星20の可能な位置の範囲(たとえば、現在TLEによって予測される軌道についての不確実性楕円として取得される)とする。位置推定モジュール40は、以下の非線形最適化問題
【数10】
を解くことによって、端末位置の推定値
【数11】
を生じさせる。
【0086】
式22の副産物は、低地球軌道衛星20に対する正確な位置推定値である。非同期動作への拡張は、セクション2.2.2において説明したものと同様のやり方で達成され、誤差関数のさまざまなバージョンに対して動作する。方法は、低地球軌道衛星20が正確な全世界時間基準を有さない状況にさらに拡張可能である。この場合、最適化は、衛星タイミング基準tに不確定度を含むように拡張される。Tは、このタイミング基準
【数12】
における不確定度とする。
【0087】
3.2 端末によって受信されたビーコン
【0088】
端末によって受信されたビーコンも利用可能である。これらの実施形態では、端末は、信号の時間遅延τk、ドップラーωk、およびドップラー率vkのうちの少なくとも1つをビーコンkから推定するために、およびこれらの推定値を、低地球軌道衛星20を介して地上局30に送信するために必要とされる。端末においてτk、ωk、および/またはvkの推定を実行することによって、これは、支援型GPSシステムと同様に信号のサンプルを地上局に送信する必要性を不要にし、端末が地上局に返送する必要があるデータの量を減少させる。推定は、受信されたビーコン信号を処理および復号するデコーダを使用して実行されてよい。
【0089】
セクション3.1において説明した拡張と同様に、次いで、位置推定器が、これらの追加推定値に対する項を含むように誤差関数(式14)を拡張し、ビーコンの既知の位置および端末xtの仮説化された位置が与えられれば仮説値と比較することによって、これらの推定値をその非線形最適化に組み込む。この方法は、セクション3.1において説明した方法に加えて使用可能である。唯一の違いは、τk、ωk、およびvk、およびビーコンの識別情報(またはその位置)が、地上局において計算されるのではなく、端末によって計算され、地上局に送信されることである。
【0090】
セクション3.3では、衛星のGPSコンステレーションによって送信されたL1信号から(差動)遅延およびドップラー推定値を取得するための特定の低複雑度方法について説明する。
【0091】
GPS信号は、長さ1023のゴールド符号であり、2つのm-シーケンスから構築されるcoarse acquisition C/Aコードを備え、衛星固有である。このコードは、正確に1msの周期を有する。暗号化された精度コード(P(Y))は10.23Mchip/sであり、1週間の周期を有する(約2.35×104チップ。ナビゲーション・データは、50ビット/sでC/Aコード上に変調される(ビット周期20ms、すなわち、ビットあたり20のC/Aコード反復)。ナビゲーション・データは、30ビットのテレメトリ・データと、30ビットのハンドオーバ・データと、GPS日付および時間と、エフェメリス・データと、アルマナック・データとを含む。テレメトリ・データおよびハンドオーバ・データは、6秒(300ビット)ごとに反復される。C/AコードおよびP(Y)コードは、P(Y)に対する3dBの減衰を用いて直交変調される。
【0092】
GPS受信機用語では、擬似距離とは、(サブフレームの開始に対する)衛星における送信の時間と受信の時間との絶対時間差である。標準的なGPS受信機処理では、受信機は、これらの擬似距離を取得するために絶対時間基準を有すると仮定される。
【0093】
標準的受信機は、
coarse acquisitionを取得し(どのC/Aコードが存在するかを検出し、おそらく、その検索では、以前に受信されたアルマナック・データによって支援される)、
コード追跡ループに入り、
C/Aコード内で搬送される50bpsナビゲーション・データを復調し、
各サブフレーム内のハンド・オーバー・ワード(HOW)から復調されたデータから衛星において時間を決定し、
ビュー内の各衛星のための擬似距離を計算する。これによって、受信機が、安定してGPS時間に同期されているクロックを有することが必要とされる。
【0094】
衛星jのための擬似距離は、2つの構成要素、すなわち、(a)ミリ秒単位で離散化された、フレームの開始において測定された時間差(C/Aコード期間)および(b)ミリ秒未満の解像度である、PLLからのコード位相、の合計である。システムでは、ローカルで安定し、いかなる外部ソースにも同期されていない受信機クロックのみが必要とされる。ローカルで安定するとは、信号サンプルの1つのベクトルを処理する持続時間にわたって十分な正確さをもつ、それ自体の時間を維持することを意味する。絶対擬似距離を決定する代わりに、本発明者らは、差動擬似距離を計算する。差動擬似距離は、各衛星に対する関連するサブフレーム境界と最も早い衛星との相対遅延である。
【0095】
3.3 ビーコンとしてのGPS L1信号の使用
【0096】
このセクションでは、ビーコン信号50の特定のインスタンス、すなわち、GPS衛星53によって送信されたL1信号54について説明する。受信されたL1信号54から必要とされる遅延およびドップラー推定値を取得するための位置推定方法の一実施形態について説明する。GPS信号から位置を取得するための従来の方法に関する1つの問題は、かなりの計算リソースと、あまり古くないGPSエフェメリス・データを必要とすることである。この実施形態では、そのような要件は、有利には回避可能である。
【0097】
端末におけるかなりの計算リソースという第1の問題に対処する1つの方策は、端末においてGPS信号をサンプリングし、これらのサンプルを、より能力の高い中央処理デバイスに送信することである。このアイデアは、セルラー式無線適用例において使用され、支援型GPSとして知られている。しかしながら、この手法は、端末と中央処理ユニットとの間における十分に有能な通信チャネルの存在を仮定するものである。地理的に分散された端末をもつ多くの適用例では、そのような通信チャネルまたは通信リンクは、インフラストラクチャの欠如により利用可能でない、もしくは実現可能でない、または、必要とされるリンクを確立もしくは維持するために必要とされるさらなるコスト、電力、もしくは帯域幅により禁止する、のどちらかである。
【0098】
本実施形態では、この第1の問題は、端末が端末から中央の位置推定プロセッサ40に少数のビットを送信することのみが必要であるように、端末とより能力の高い中央の受信機との間の計算を注意深く分割することによって対処される。第2の問題に関して、GPS衛星エフェメリス・データは、通常、「アルマナック」の送信を介して最新に保たれる。これは、GPS受信機モジュールにとって標準的な慣例である。これによって、デバイスがこれらの信号を受信することができ、デバイスが、アルマナックを受信するのに十分に長い間、オンにされ得る(または、スリープから引き出され得る)ことが必要とされる。
【0099】
本明細書において説明する方法は、これらの要件の両方を回避する。有利には、他のソフトウェアにより定義されたGPS受信機とは異なって、この方法は、端末においてアルマナック(またはエフェメリス)・データを必要としない。その代わりに、位置推定が中央プロセッサで完了され、中央プロセッサは、標準的な通信リンクを介して(たとえばインターネットを介して)アルマナックを備えることができる。
【0100】
図3は、一実施形態による、ハイブリッド分散位置決定のためのモジュールの概略
図3を示す。
図2における対応する部分は、それに応じてラベルが付される。加えて、端末10は、GPSアンテナ144と、コード位相およびドップラー推定器モジュール160にGPS IQサンプルを提供するADC150にベースバンド・アナログ信号146を提供する広帯域RFトランシーバ・フロント・エンド140とを備える。これによって、パケット形成モジュール110にコード位相およびドップラー・ビットを提供する圧縮モジュール170によって圧縮されるコード位相およびドップラー推定値
【数13】
162が生成される。次いで、コード位相およびドップラー推定値
【数14】
162の推定値が、復号動作中に通信受信機32によって取得され、位置推定器40に提供される。
【0101】
3.3.1 粗遅延およびドップラー推定
【0102】
図4は、一実施形態によりC/Aコードの「位相」(遅延)およびドップラー周波数の粗推定を実行する、端末10内の粗C/Aコード位相/ドップラー推定モジュール400のより詳細な概略図である。この実施形態では、直列ドップラー/並列位相手法が推定に使用されるが、他の実施形態では、直列ドップラー/並列位相手法は、その逆に行われることも可能である。
【0103】
共通フロント・エンド410は、信号402を受信し、複素ベースバンド412にダウンコンバートし411、412をサンプリングして、W個の複素サンプルのシーケンス414を生じさせる。この実施形態では、W個のサンプルは直列並列変換器414に渡され、次いで、フロント・エンドが、これらのサンプルに(並列に)M個の複素正弦曲線
【数15】
415を乗算して、サンプルのM個のシーケンスx
m、m=1,2,・・・,M、416、各々の長さN416を生じさせる。各列に使用されるM個の正弦曲線の周波数は、予想ドップラー周波数の範囲をカバーするように選択される。固定された受信機のための一般的な選択肢は、500Hz刻みで-5kHzから5kHzの範囲に及ぶことであろう。これにより、M=21が得られる。モバイル受信機は、この範囲を±10KHzおよびM=41に拡張する必要があるであろう。次いで、フロント・エンドは、W個の時間領域サンプルのこれらのブロックの各々のゼロ・パディング離散フーリエ変換417を行って、N個の複素周波数領域サンプル
【数16】
421のベクトルを生じさせる。
【0104】
ベクトルy
1,y
2,・・・,y
M421が、衛星単位コード位相推定器モジュール420の各々に提供される。衛星jのためのコード位相推定器は、y
mの各々に長さNのベクトル
【数17】
を要素ごとに乗算し422、これは、C/AコードjのN点ゼロ・パディング離散フーリエ変換423である。分かりやすくするため、これは、
図4では、周波数ビンmおよび衛星jに対してのみ示されている。この演算の結果は、z
mj424とラベルが付されている。
【0105】
ピーク検出ブロック425は、複素ベクトルzmjの大きさが最大の要素のロケーションに対応するコード遅延(およびドップラー周波数ωj=2πfm)を出力する。これは、隣接要素の補間を使用しても改善可能である。ピーク検出ブロック425は、このピークの(補間された)大きさajも出力し、これを閾値と比較して、衛星jからの信号が存在するかどうかを判断することが可能である。あるいは、最大ピークと2番目に大きいピークの大きさの比が、Turkman-Walker検定を使用して検査可能である。
【0106】
前述の方法は、すべての衛星捕捉ユニットによって共有される、以下のフロント・エンド演算を必要とする。
・x1,x2,・・・,xMを生じさせるための、2つの長さのW個の複素ベクトルのM個の要素ごとの乗算。これは、O(MW)の演算を必要とする。
・y1,y2,・・・,yMを生じさせる、長さNのM回の離散フーリエ変換。これは、O(MNlog2N)の演算である。
【0107】
加えて、各衛星j=1,2,・・・,Jおよび各周波数m=1,2,・・・,Mに対して、ベクトルzjmを形成するためのN個の複素乗算が存在し、N個の複素数の大きさが、ピークを見つけるために比較される。J個の衛星では、これは、M(W+Nlog2N+2JN)の複素数演算に達する。
【0108】
たとえば、固定された受信機およびM=21、W=N=1024、およびJ=24(「コールド・スタート」に相当する)では、約1.27×106回の演算がある。100MHzで動作し、サイクルごとに単一の命令を仮定した汎用プロセッサの場合、これは、約12.7ミリ秒のプロセッサ時間に対応する。これは、GPSアルマナックをダウンロードするのに必要とされる12分およびアルマナック・データに基づいてGPS信号を実際に捕捉するさらなる処理時間と比較される。
【0109】
3.3.2 共同改良
【0110】
標準的なGPS受信機は、位相ロック・ループ(PLL)を使用して、サブ・チップ・レベルでコード位相を連続的に追跡する。これは、GPS衛星からの信号の連続的な受信を必要とし、安定したロックを確立するのに、ある程度の時間がかかる。これは、受信機が短いウィンドウの信号サンプルへのアクセスのみを有する場合には、可能でない。
【0111】
その代わり、本明細書において説明する方法では、検出された衛星に関する粗遅延とドップラー推定値142が共同で改良される。一実施形態では、これは、Levenberg-Marquardtなどの非線形最小二乗法を使用して実施可能である。これは、受信信号と検出された衛星のC/Aコードの時間シフト・バージョンおよび周波数シフト・バージョンの重ね合わせとして形成された仮説信号との間の誤差ノルムを最小にすることによって機能する。これらの個々の信号は、それらの複素利得の最小二乗推定値によって重み付けされる。この方法は、加えてドップラー率を仮説信号に適用させることによって、ドップラー率の推定値も生じさせることができる。
【0112】
i∈Iは、粗捕捉中に検出されたGPS衛星のセットにインデックスを付けるものとする。c
i(t)は、GPS衛星iからのC/Aコードとする。次いで、共同改良ステップは、
【数18】
として定義される誤差信号ε(t)に対して動作し、ここで、t
i、ω
i、v
iは、GPS衛星iに対する、仮説により改良される遅延、ドップラー、およびドップラー率である。加えて、a
iは、信号iに対する複素利得である。
【0113】
この手法の利点は、短いウィンドウのサンプルのみを使用して動作することができ、そのため、従来のGPS受信機とは異なり、連続的な動作を必要としないことである。これは、端末のかなりの電力節約を表す。第2の重要な利点は、この手法が、遅延、ドップラー、およびドップラー率を共に推定することである。これは、GPSによって使用されるゴールド符号間の小さな(しかし、重要な)相互相関を考慮に入れる。これは、観察窓サイズも適切に説明する。
【0114】
当業者は、情報および信号が、さまざまな技術および技法のいずれかを使用して表されてよいことを理解するであろう。たとえば、上記の説明全体を通じて参照され得るデータ、命令、コマンド、情報、信号、ビット、シンボル、およびチップは、電圧、電流、電磁波、磁場もしくは磁性粒子、光場もしくは光粒子、またはそれらの任意の組み合わせによって表されてよい。
【0115】
当業者は、本明細書で開示される実施形態に関連して説明したさまざまな例示的な論理ブロック、モジュール、回路、およびアルゴリズム・ステップは、電子ハードウェア、コンピュータ・ソフトウェアもしくは命令、または両方の組み合わせとして実装されてよいことをさらに諒解するであろう。ハードウェアとソフトウェアのこの互換性を明確に示すために、さまざまな例示的な構成要素、ブロック、モジュール、回路、およびステップについて、それらの機能に関して上記で概括的に説明してきた。そのような機能をハードウェアとして実装するか、ソフトウェアとして実装するかは、特定の適用例および全体的なシステムに課された設計上の制約に依存する。当業者は、説明した機能を、各特定の適用例に対してさまざまな方策で実装してよいが、そのような実装決定は、本発明の範囲からの逸脱を引き起こすと解釈されるべきではない。
【0116】
本明細書で開示される実施形態に関連して説明した方法またはアルゴリズムのステップは、ハードウェアにおいて直接的に実施されてもよいし、プロセッサによって実行されるソフトウェア・モジュールにおいて実施されてもよいし、またはこれら2つの組み合わせで実施されてもよい。ハードウェア実装形態では、処理は、1つまたは複数の特定用途向け集積回路(ASIC)、デジタル信号プロセッサ(DSP)、デジタル信号処理デバイス(DSPD)、プログラマブル論理デバイス(PLD)、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)、プロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ、マイクロプロセッサ、または本明細書において説明する機能を実行するように設計された他の電子のユニット、またはそれらの組み合わせの中で実装されてよい。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の中央処理ユニット(CPU)を備えるコンピューティング・デバイスは、位置の推定などの方法のステップのうちのいくつかを実行するために使用されることがある。CPUは、入出力インターフェースと、算術論理演算ユニット(ALU)と、入出力インターフェースを通して入力デバイスおよび出力デバイスと通信する制御ユニットおよびプログラム・カウンタ要素とを備えてよい。入出力インターフェースは、あらかじめ定義された通信プロトコル(たとえば、Bluetooth(登録商標)、Zigbee、IEEE802.15、IEEE802.11、TCP/IP、UDPなど)を使用する別のデバイス内の等価な通信モジュールと通信するために、ネットワーク・インターフェースおよび/または通信モジュールを備えてよい。コンピューティング・デバイスは、単一のCPU(コア)または複数のCPU(複数のコア)を備えてもよいし、複数のプロセッサを備えてもよい。コンピューティング・デバイスは、並列プロセッサ、ベクトル・プロセッサを使用してもよいし、分散型コンピューティング・デバイスであってもよい。メモリは、プロセッサに動作可能に結合され、RAM構成要素とROM構成要素とを含んでよく、デバイスの中に設けられてもよいし、デバイスの外部に設けられてもよい。メモリは、オペレーティング・システムおよび追加ソフトウェア・モジュールまたは命令を記憶するために使用されてよい。プロセッサは、メモリ内に記憶されたソフトウェア・モジュールまたは命令をロードおよび実行するように構成されてよい。
【0117】
コンピュータ・プログラム、コンピュータ・コード、または命令としても知られるソフトウェア・モジュールは、いくつかのソース・コード・セグメントまたはオブジェクト・コード・セグメントまたは命令を含んでよく、RAMメモリ、フラッシュメモリ、ROMメモリ、EPROMメモリ、レジスタ、バード・ディスク、リムーバブル・ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、Blu-ray(登録商標)ディスク、または他の任意の形態のコンピュータ可読媒体などの、任意のコンピュータ可読媒体内に常駐してよい。いくつかの態様では、コンピュータ可読媒体は、非一時的なコンピュータ可読媒体(たとえば、有形媒体)を含んでよい。さらに、他の態様の場合、コンピュータ可読媒体は、一時的なコンピュータ可読媒体(たとえば、信号)を含んでよい。上記の組み合わせも、コンピュータ可読媒体の範囲内に含まれるべきである。別の態様では、コンピュータ可読媒体は、プロセッサと一体化されてもよい。プロセッサおよびコンピュータ可読媒体は、ASICまたは関連デバイス内にあってよい。ソフトウェア・コードはメモリ・ユニット内に記憶されてよく、プロセッサは、それらを実行するように構成されてよい。メモリ・ユニットは、プロセッサの中で実装されてもよいし、プロセッサの外部で実装されてもよく、その場合、メモリ・ユニットは、当技術分野で知られているようにさまざまな手段を介してプロセッサに通信可能に結合可能である。
【0118】
さらに、本明細書において説明する方法および技法を実行するためのモジュールおよび/または他の適切な手段は、コンピューティング・デバイスによってダウンロードされるおよび/または別の方法で取得されることが可能であることを諒解されたい。たとえば、そのようなデバイスは、本明細書において説明する方法を実行するための手段の移転を容易にするためにサーバに結合可能である。あるいは、本明細書において説明するさまざまな方法は、記憶手段(たとえば、RAM、ROM、コンパクト・ディスク(CD)またはフロッピー・ディスクなどの物理的記憶媒体など)を介して提供可能であり、したがって、コンピューティング・デバイスは、記憶手段をデバイスに結合または提供するときにさまざまな方法を取得することができる。さらに、本明細書において説明する方法および技法をデバイスに提供するための他の任意の適切な技法が利用可能である。
【0119】
本明細書で開示される方法は、説明された方法を達成するための1つまたは複数のステップまたはアクションを含む。方法ステップおよび/またはアクションは、特許請求の範囲から逸脱することなく、互いと置き換えられてよい。言い換えれば、ステップまたはアクションの特定の順序が指定されない限り、特定のステップおよび/またはアクションの順序および/または使用は、特許請求の範囲から逸脱することなく、修正されてよい。本明細書で使用されるとき、項目のリストのうちの「少なくとも1つ」を参照する句は、単一のメンバを含む、それらの項目の任意の組み合わせを指す。一例として、「a、b、またはcのうちの少なくとも1つ」は、a、b、c、a-b、a-c、b-c、およびa-b-cを包含することが意図されている。
【0120】
本明細書で使用されるとき、「推定する」または「決定する」という用語は、多種多様のアクションを包含する。たとえば、「推定する」または「決定する」は、算出する、計算する、処理する、導出する、調査する、調べる(たとえば、テーブル、データベースまたは別のデータ構造を調べる)、確かめるなどを含んでよい。また、「推定する」または「決定する」は、受信する(たとえば、情報を受信する)、アクセスする(たとえば、メモリ内のデータにアクセスする)などを含んでよい。また、「決定する」は、解く、選ぶ、選択する、確立するなどを含んでよい。
【0121】
上記の説明は、低地球軌道衛星に言及する。しかしながら、ペイロードを持っており長時間にわたってホバリングまたは飛行することができる、高高度バルーン、飛行船、または固定翼長航続時間無人航空機などの高高度プラットフォーム局を理解されたい。したがって、本明細書の文脈では、衛星は、LEO衛星と高高度プラットフォームの両方を包含すべきものである。
【0122】
本明細書において説明するシステム、方法、および装置の実施形態は、端末自体においてではなく、地上局において、端末位置の推定値(たとえば、緯度、経度、および高度)を生じさせるために使用可能である。これは、ナビゲーション・アプリケーションと対比可能であり、ナビゲーション・アプリケーションでは、端末それ自体がそれ自体のロケーションの推定値を必要とする。
【0123】
1つの適用例は、家畜、産業用機械、出荷容器、パレット、および環境センサなどの、遠隔にあり、潜在的に可動性である、資産の追跡がある。これらは、資産またはセンサそれ自体がそれ自体の位置を知る必要はない適用例である。むしろ、中央管理システムが、すべての資産/センサのロケーションを決定することを望む。
【0124】
別の適用例は、その位置を別個に報告していてよい、資産のロケーションの独立した検証を提供している。たとえば、自動識別システムを使用する船は、自らの位置(オン・ボードGPSモジュールから導出されてよい)をブロードキャストする。提案された方法は、セキュリティおよび/またはロバストネスの理由で、これらの報告された位置を独立して検証するために使用可能である。同様に、システムは、船団追跡システムにおける輸送手段の位置を検証するために使用可能である。
【0125】
提案される測位方法は、遠隔追跡アプリケーションのためのいくつかの利点を有する。
1.この方法は、端末におけるGPSモジュールを必要としない。これによって、端末は組み立てるためのコストが低くなり、はるかに少ない電力を使用するようになり、バッテリ寿命の延長につながる。
2.この方法は、端末が、GPS衛星、ビーコン衛星、または地上ビーコンの位置の知識を取得することを要求しない。たとえば、コールド・スタート・モードでは、GPS受信機が、完全なアルマナックをダウンロードするのに12分かかる。本明細書において説明する方法の実施形態は、このプロセスを回避する。
3.この方法は、主に、地上局において実施され、地上局では、より多くの計算リソースが利用可能であり、電力使用はそれほど重要ではなく、GPS衛星および他の衛星のためのエフェメリス・データは、たとえばインターネット・データベースへの直接接続を介して、利用可能である。
【0126】
上記で説明したように、地上局30(または地上局30と通信するサイト)における位置推定器40は、地上局30において計算される端末の時間遅延/ドップラー/ドップラー率の推定値を、端末のロケーションに関する特定の仮説に対して予想されるであろう対応する仮説化された量と比較することによって、機能する。これらの量は、衛星の位置20を知れば決定可能であり、その正確な推定値は、地上局に利用可能(別のソースから取得可能、または利用可能/取得可能データに基づいて推定可能、のどちらか)である。ロケーション推定値は、推定された量から仮説化された量の間の最小総合誤差をもつ仮説である。方法の実施形態は、加えて、任意選択で、端末によって受信された他のビーコン信号50を機会主義的に活用することができる。この場合、端末10が、ビーコン信号(または複数のビーコン信号)のための遅延/ドップラー/ドップラー率推定値のうちの1つまたは複数を計算し、または別の方法で推定し、次いで、そのようなビーコン信号50の推定値をそのデータ送信12の一部として低地球軌道衛星20に送信する。本明細書において説明する方法は、非同期端末と同期端末の両方に適用可能である。本明細書において説明する方法はまた、オン・ボード全世界位置基準およびオン・ボード全世界タイミング基準の有無にかかわらず、低地球軌道衛星に独立して適用可能である。さらに、いくつかの実施形態では、遅延、ドップラー、またはドップラー率の推定は、衛星において実行されてよく、地上局におけるもしくは地上局に接続された位置推定モジュール内での位置推定、または方法全体は、衛星内で実行されてもよい(すなわち、位置推定モジュールは衛星内にある)。
【0127】
明細書および以下の特許請求の範囲の全体を通じて、文脈がそれ以外を必要としない限り、「備える(comprise)」および「含む(include)」という語ならびに「備える(comprising)」および「含む(including)」などの変形は、述べられた整数または整数のグループの包含を暗示するが、他の任意の整数または整数のグループの除外は暗示しないと理解される。
【0128】
本明細書における任意の従来技術への参照は、従来技術が共通一般知識の一部を形成する、任意の形式の提案の承認でなく、そのようにみなすべきでない。
【0129】
本開示は、その使用に関して、説明した特定の1つまたは複数の適用例に制限されないことが、当業者によって諒解されよう。本開示は、その好ましい実施形態では、本明細書において説明または図示した特定の要素および/または特徴に関して制限されない。本開示は、開示する1つまたは複数の実施形態に限定されず、以下の特許請求の範囲によって記載および定義された範囲から逸脱することなく、多数の再配列、修正、および置換が可能であることが諒解されるであろう。