IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コンビ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-チャイルドシート 図1
  • 特許-チャイルドシート 図2
  • 特許-チャイルドシート 図3
  • 特許-チャイルドシート 図4
  • 特許-チャイルドシート 図5
  • 特許-チャイルドシート 図6
  • 特許-チャイルドシート 図7
  • 特許-チャイルドシート 図8
  • 特許-チャイルドシート 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-02
(45)【発行日】2022-05-13
(54)【発明の名称】チャイルドシート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/28 20060101AFI20220506BHJP
【FI】
B60N2/28
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019145481
(22)【出願日】2019-08-07
(65)【公開番号】P2021024476
(43)【公開日】2021-02-22
【審査請求日】2021-04-01
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】391003912
【氏名又は名称】コンビ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100208188
【弁理士】
【氏名又は名称】榎並 薫
(72)【発明者】
【氏名】西田 剛
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 圭亮
【審査官】小原 正信
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0062919(US,A1)
【文献】特開2008-194298(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0091166(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0090097(US,A1)
【文献】特開2015-091687(JP,A)
【文献】特開2001-310695(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0135142(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第4023641(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
座部と前記座部に接続する背部とを有する座席と、
前記座席に着座した乳幼児の頭部と対面するよう前記背部に取り付けられた緩衝材と、を備え、
前記緩衝材の硬さが、JIS S 6050:2002で定められた硬さの試験で20°~35°であり、
前記背部は、前記緩衝材に対面する第2の緩衝材を含み、
前記第2の緩衝材の幅方向の中央且つ前側面には凹部が形成されており、
前記緩衝材は、前記座席の前後方向に見て前記凹部と重なる位置に取り付けられており
前記凹部における前記第2の緩衝材の厚みが、下方に向かうにつれて小さくなっており、
前記緩衝材の厚みが、下方に向かうにつれて大きくなっており、
前記凹部のより厚みの小さい部分に、前記緩衝材のより厚みの大きい部分が配置されている、チャイルドシート。
【請求項2】
前記緩衝材は、エチレンビニルアセテートまたは電子線架橋ポリオレフィンフォームで作製されている、請求項1に記載のチャイルドシート。
【請求項3】
前記緩衝材は、前記座席の幅方向に垂直な断面が上底よりも下底が大きい台形をなす、請求項1又は2に記載のチャイルドシート。
【請求項4】
前記第2の緩衝材は、発泡スチロールで作製されている、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のチャイルドシート。
【請求項5】
前記座席を支持する受台ユニットを更に備え、
前記受台ユニットは、前後方向に延びるレール部材を有し、
前記レール部材は、前後方向に延びる基部と、前記基部から延び出したレール側接続突出部と、を有し、
前記座席は、座席フレームと、座席側接続突出部と、を有し、
前記座席側接続突出部は、前記レール側接続突出部に下方から接触することで、前記座席が前記受台ユニットから外れることを規制する、請求項1乃至のいずれか一項に記載のチャイルドシート。
【請求項6】
前記座席側接続突出部は、前記座席フレームから下方に延び出す突出部と、当該突出部から前後方向に延び出すフランジ部と、を有し、
前記レール側接続突出部は、前記基部から上方に延び出す突出部と、当該突出部から前後方向に延び出すフランジ部と、を有し、
前記座席側接続突出部の前記フランジ部が前記レール側接続突出部の前記フランジ部に下方から接触することで、前記座席が前記受台ユニットから外れることが規制される、請求項に記載のチャイルドシート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チャイルドシートに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1にも開示されているように、子供(乳児、幼児、児童等の年少者)を安全に車両に乗車させることを目的として、車両の座席上に配置されるチャイルドシートが広く用いられてきた。チャイルドシートは、子供の臀部と対面する座部と子供の背中と対面する背部とを有する座席を有している。上記背部には、一般に、子供の頭部と対面する位置に、頭部保護用の緩衝材が取り付けられている。頭部保護用の緩衝材は、車両が衝突する等して急激に加減速した際にチャイルドシートに着座した子供の頭部が座席の背部から受ける衝撃を、緩和する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-301964号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記頭部保護用の緩衝材へのニーズの一つとして、車両が急激に加減速した際の座席に対する子供の頭部の移動加速度を、十分に低くすることがある。これにより、子供の頭部が座席から受ける衝撃を、さらに効果的に緩和することができる。
【0005】
本件発明は、このような点を考慮してなされたものであって、車両が急激に加減速した際の座席に対する子供の頭部の移動加速度を効果的に低くすることが可能な緩衝材を備えたチャイルドシートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によるチャイルドシートは、
座部と前記座部に接続する背部とを有する座席と、
前記座席に着座した乳幼児の頭部と対面するよう前記背部に取り付けられた緩衝材と、を備え、
前記緩衝材の硬さが、JIS S 6050:2002で定められた硬さの試験で20°~35°、好ましくは23°~33°である。
【0007】
本発明によるチャイルドシートにおいて、
前記緩衝材は、エチレンビニルアセテートまたは電子線架橋ポリオレフィンフォームで作製されていてもよい。
【0008】
本発明によるチャイルドシートにおいて、
前記緩衝材は、前記座席の幅方向に垂直な断面が上底よりも下底が大きい台形をなしてもよい。
【0009】
本発明によるチャイルドシートにおいて、
前記背部は、発泡スチロール(EPS:Expanded Poly-Styrene)で作製され前記緩衝材に対面する第2の緩衝材を含んでもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、車両が急激に加減速した際の座席に対する子供の頭部の移動加速度を効果的に低くすることが可能な緩衝材を備えたチャイルドシートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明によるチャイルドシートの一実施の形態を示す斜視図。
図2】受台ユニットに対する座席の回転動作を説明するための側面図。
図3】受台ユニットの斜視図。
図4】受台ユニットの分解斜視図。
図5】座席の底部の側を示す斜視図。
図6】座席フレームと座席側接続突出部とを示す斜視図。
図7】座席フレームとレール部材とを示す側面図。
図8図1に示すヘッドレストおよび緩衝材の、座席の幅方向に垂直な断面を示す図。
図9】緩衝材を構成する材料の違いによる頭部加速度の違いを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。
【0013】
図1は本発明によるチャイルドシート(チャイルドカーシート)10の一実施の形態を説明するための図である。図2は、チャイルドシート10の回転動作を説明するための図である。
【0014】
図1および図2に示すように、本実施の形態におけるチャイルドシート10は、チャイルドシート本体11として、車両(例えば自動車)の座席1に取り付けられる受台ユニット20と、受台ユニット20に対して回転可能に受台ユニット20に支持された座席40と、を有する。座席40は、座席40に着座する乳幼児の臀部に対面する座部40aと、当該乳幼児の背部に対面する背部40bと、を含む。座席40は、クッション性のシート45で覆われている。また、チャイルドシート10は、受台ユニット20の背部20aから後方に延び出す一対の固定ユニット100を有している。固定ユニット100が車両の座席1に設けられた図示しない固定具(例えばISOFIX方式対応のラッチ)に接続されることにより、受台ユニット20は、車両の座席1に対して固定される。また、チャイルドシート10は、チャイルドシート本体11の受台ユニット20から延び出したサポートレッグ110を有している。図1に示すように、サポートレッグ110は、車両の座席1を支持する車両の床面3まで延び、チャイルドシート本体11(受台ユニット20)の前方部分を下方から支持する。
【0015】
なお、本明細書中において、受台ユニット20に対する「上」、「下」、「前」、および「後」の用語は、特に指示がない場合、車両の通常の走行を基準とした「上」、「下」、「前」および「後」を意味するものとする。また、座席40に対する「上」、「下」、「前」、および「後」の用語は、特に指示がない場合、座席40に着座した乳幼児を基準とした「上」、「下」、「前」および「後」を意味するものとする。
【0016】
以下において、図1乃至図8を参照して、チャイルドシート本体11の各部分について詳細に説明する。図3は、受台ユニット20の斜視図であり、図4は、受台ユニット20の分解斜視図である。また、図5は、座席40の底部の側を示す斜視図であり、図6は、座席フレーム41および座席側接続突出部42の斜視図である。また、図7は、座席フレーム41と座席側接続突出部42とレール部材23とを示す側面図である。また、図8は、後述するヘッドレスト40cおよび緩衝材70の、座席40の幅方向に垂直な断面を示す図である。
【0017】
まず、図1乃至図4を参照して、受台ユニット20について説明する。図1乃至図3に示すように、受台ユニット20は、車両の座席1の座面1a上に配置される受台21と、受台21に保持され座席40と接続するベース22と、を含む。受台21は、一対の固定ユニット100を保持している。また、受台21の前端部には、サポートレッグ110が接続されている。
【0018】
図4に示すように、ベース22は、前後方向に延びる二本のレール部材23,23を有する。二本のレール部材23、23は、ベース22の幅方向に互いから離間して配置され、受台21に保持されている。各レール部材23は、前後方向に延びる基部24と、基部24から延び出したレール側接続突出部25と、を有する。
【0019】
図示された例では、各レール部材23のレール側接続突出部25は、前後方向に互いから離間した第1レール側接続突出部25aおよび第2レール側接続突出部25bを含んでいる。各レール側接続突出部25a,25bは、基部24から上方に延び出す突出部26と、突出部26から前後方向に延び出すフランジ部27と、を含む。座席40は、4つのレール側接続突出部25a,25a,25b,25bの周りを回転可能である。
【0020】
ベース22は、また、レール部材23,23を上方から覆う第1ベースカバー35および第2ベースカバー36を有する。第1ベースカバー35は、後述する座席40の外側突出部52を収容する凹部35aを有する。凹部35aは、円筒状の周壁面35bと底面35cとによって画成されている。底面35cにはレール側接続突出部25が通過する貫通穴35hが設けられている。第2ベースカバー36は、第1ベースカバー35の貫通穴35hを通過して第1ベースカバー35の上方に延び出すレール側接続突出部25を上方から覆う。第2ベースカバー36の中央には、後述する座席40の内側突出部51を収容する円形の貫通穴36hが形成されている。
【0021】
次に、図1並びに図5乃至図8を参照して、座席40について説明する。図1および図5に示すように、座席40は、座席フレーム41と、座席フレーム41から延び出す座席側接続突出部42と、座席フレーム41を下方且つ後方から覆う座席カバー50と、を有する。
【0022】
座席フレーム41は、座席40に着座する乳幼児の臀部と対面する座部41aと、乳幼児の背中と対面する背部41bと、を含む。
【0023】
図6に示すように、座席側接続突出部42は、前後方向に互いから離間して設けられた第1座席側接続突出部42aおよび第2座席側接続突出部42bを有する。図示された例では、第1座席側接続突出部42aは、座席40の幅方向の一側および他側にそれぞれ設けられた一側第1座席側接続突出部42cおよび他側第1座席側接続突出部42dを含む。また、第2座席側接続突出部42bは、座席40の幅方向の一側および他側にそれぞれ設けられた一側第2座席側接続突出部42eおよび他側第2座席側接続突出部42fを含む。各座席側接続突出部42c,42d,42e,42fは、座席フレーム41から下方に延び出す突出部43と、突出部43から前後方向に延び出すフランジ部44と、を有する。
【0024】
ここで、図7から理解されるように、回転軸線Rxに平行な方向への投影において、一側第1座席側接続突出部42cおよび他側第1座席側接続突出部42dのフランジ部44がそれぞれ一方および他方のレール部材23,23の第1レール側接続突出部25aのフランジ部27に重なるとき、一側第2座席側接続突出部42eおよび他側第2座席側接続突出部42fのフランジ部44は、それぞれ一方および他方のレール部材23,23の第2レール側接続突出部25bのフランジ部27に重なる。さらに、一側第1座席側接続突出部42cおよび他側第1座席側接続突出部42dのフランジ部44がそれぞれ他方および一方のレール部材23,23の第2レール側接続突出部25bのフランジ部27に重なるとき、一側第2座席側接続突出部42eおよび他側第2座席側接続突出部42fのフランジ部44は、それぞれ他方および一方のレール部材23,23の第1レール側接続突出部25aのフランジ部27に重なる。
【0025】
図5に示すように、座席カバー50は、座席フレーム41を座席側接続突出部42と共に、後方且つ下方から覆う。座席カバー50は、受台ユニット20の第2ベースカバー36の貫通穴36hに収容される円錐台形の内側突出部51と、内側突出部51を囲むように形成され第1ベースカバー35の凹部35aに収容される円筒状の外側突出部52と、を有する。
【0026】
座席カバー50の内側突出部51と外側突出部52との間には、座席側接続突出部42c,42d,42e,42fが通過する貫通穴50hが設けられている。座席側接続突出部42c,42d,42e,42fは、貫通穴50hを通過して座席カバー50の外側に露出している。
【0027】
図7に示すように、座席側接続突出部42のフランジ部44が、レール側接続突出部25のフランジ部27の下方且つ基部24の上方に配置されることにより、座席40は受台ユニット20に対して回転可能に受台ユニット20に接続される。そして、座席側接続突出部42のフランジ部44がレール側接続突出部25のフランジ部27に下方から接触することにより、座席40が受台ユニット20から外れることが規制される。なお、座席40が受台ユニット20に対して回転するとき、座席側接続突出部42の突出部43およびフランジ部44は、それぞれ、レール側接続突出部25のフランジ部27および突出部26の周囲を回転する。
【0028】
また、図3および図5に示すように、受台ユニット20および座席40には、座席40の受台ユニット20に対する回転を規制する回転規制手段60が設けられている。図示された例では、回転規制手段60は、座席40から受台ユニット20に向かう方向に突出する回転規制突出部61と、受台ユニット20に設けられた回転規制凹部65と、を含む。
【0029】
回転規制突出部61は、座席フレーム41の前端部から受台ユニット20の第2ベースカバー36に向かう方向に延び出している。回転規制突出部61は、座席40に設けられた操作部62を操作することにより、第2ベースカバー36から座席フレーム41に向かう方向に移動可能である。
【0030】
回転規制凹部65は、受台ユニット20の第2ベースカバー36の上面に設けられている。回転規制凹部65は、第2ベースカバー36の前方領域および後方領域にそれぞれ設けられた第1回転規制凹部66および第2回転規制凹部67を含む。第1回転規制凹部66は、回転軸線Rxに平行な方向への投影において、第1座席側接続突出部42aのフランジ部44が第1レール側接続突出部25aのフランジ部27に重なり、第2座席側接続突出部42bのフランジ部44が第2レール側接続突出部25bのフランジ部27に重なるとき、回転規制突出部61を収容して受台ユニット20に対する座席40の回転を規制する。また、第2回転規制凹部67は、回転軸線Rxに平行な方向への投影において、第1座席側接続突出部42aのフランジ部44が第2レール側接続突出部25bのフランジ部27に重なり、第2座席側接続突出部42bのフランジ部44が第1レール側接続突出部25aのフランジ部27に重なるとき、回転規制突出部61を収容して受台ユニット20に対する座席40の回転を規制する。すなわち、第1回転規制凹部66に回転規制突出部61が収容されるとき、座席40は、座席40に着座した乳幼児が受台ユニット20の前方を向く前向き状態で、その受台ユニット20に対する回転が規制され、受台ユニット20から外れることが規制される。また、第2回転規制凹部67に回転規制突出部61が収容されるとき、座席40は、座席40に着座した乳幼児が受台ユニット20の後方を向く後向き状態で、その受台ユニット20に対する回転が規制され、受台ユニット20から外れることが規制される。
【0031】
図示された例では、座席40の背部40bは、ヘッドレスト40cを含む。ヘッドレスト40cは、座席フレーム41の背部41bに、座席40に着座する乳幼児の頭部と対面するように接続されている。ヘッドレスト40cは、上記乳幼児の頭部を後方および側方から囲むヘッドレスト本体部40dと、座席フレーム41に取り付けられてヘッドレスト本体部40dを後方から支持するヘッドレスト基部40eと、を含む。図示された例では、ヘッドレスト本体部40dは、発泡スチロール(EPS:Expanded Poly-Styrene)で作製されている。図8に示すように、ヘッドレスト本体部40dの幅方向中央且つ前側面には、凹部40fが形成されている。凹部40fにおけるヘッドレスト本体部40dの厚みは、座席40の上下方向における下方に向かうにつれて小さくなっている。
【0032】
ヘッドレスト本体部40dには、座席40の前後方向に見て上記凹部40fと重なる位置に、乳幼児の頭部を後方且つ下方から支持する緩衝材70が取り付けられている。上記凹部40fと重なる位置に緩衝材70が取り付けられていることにより、緩衝材70が座席40の幅方向および上下方向(特に上方向)に移動することを、抑制することができる。
【0033】
図示された例では、図8によく示されているように、緩衝材70は、座席40の上下方向における下方に向かうにつれて、その厚みが大きくなっている。ヘッドレスト本体部40dの凹部40fのより厚みの小さい部分に、緩衝材70のより厚みの大きい部分を配置することにより、座席40の前後方向に見て上記凹部40fと重なる位置に配置された乳幼児の頭部を、下方かつ後方から適切に支持することができる。また、車両が急激に加減速して乳幼児の頭部が移動した際に当該頭部がヘッドレスト40cのうちヘッドレスト本体部40dの厚みが小さい部分から受ける衝撃を、緩和することができる。
【0034】
図8に示された例では、緩衝材70は、座席40の幅方向に直交する断面が台形をなす。より具体的には、緩衝材70は、座席40の幅方向に対面する一対の側面70a,70aが合同で互いに対して平行な台形である角柱の形状を有している。上記台形の断面(あるいは各側面)は、上底(座席40の上下方向における上側の辺)70xおよび下底(座席40の上下方向における下側の辺)70yを有し、下底70yの長さは上底70xの長さの2倍以上である。もちろん、緩衝材70の形状としてはこれに限られない。例えば、緩衝材70は、座席40の幅方向に対面する一対の側面70a,70aが合同で互いに対して平行な三角形である三角柱の形状を有していてもよい。
【0035】
緩衝材70は、日本工業規格のJIS S 6050:2002の「6.試験方法」の「6.2 硬さ」に定められた硬さの試験により測定される硬さが20°~35°、より好ましくは23°~33°である材料で作製されている。具体的には、緩衝材70は、エチレンビニルアセテート(EVA)または電子線架橋ポリオレフィンフォームで作製されている。このような材料で緩衝材を作製することにより、国連欧州経済委員会の「年少者用補助乗車装置に係る新協定規則(第129号)」(Regulation No.129, Uniform provisions concerning the approval of enhanced Child Restraint Systems used on board of motor vehicles (ECRS))の6.6.4.1.1項に記載されているように、同規則の附則6(Annex 6)に規定されている試験用座席を用いて同規則の7.1.3.1項で規定された試験方法に従って試験を行った場合に、座席40に着座したダミーの頭部加速度を、同規則の6.6.4.3.1項の表3(Table 3)の障害評価基準(Injury assessment criteria)に示された頭部加速度(Head acceleration)以下にすることができる。
【0036】
図9に、緩衝材70を構成する材料の違いによる、上記試験で得られる頭部加速度の違いを示す。図9に示す例では、Q0ダミーを用いて上記試験を行った。各材料で作製した緩衝材70の形状および寸法は、図1に示す緩衝材70の形状および寸法と同一であった。図9から理解されるように、緩衝材70の材料として発泡ポリエチレン(EPE)や軟質ウレタンフォーム、硬質ウレタンフォームを用いた場合、上記試験で得られたダミーの頭部加速度は、それぞれ87.80G、101.60Gおよび85.37Gであり(ただし、1.00G=9.80665m/s)、上記障害評価基準で規定されたQ0ダミーの頭部加速度よりも著しく高かった。これに対し、緩衝材70の材料としてエチレンビニルアセテート(EVA)を用いた場合、上記試験に用いられたダミーの頭部加速度が71.19Gとなり(ただし、1.00G=9.80665m/s)、上記障害評価基準で規定されたQ0ダミーの頭部加速度よりも著しく低くなった。
【0037】
ここで、発明者らが得た知見によれば、緩衝材70を構成する材料が適度な硬さを有している場合に限り、上記試験に用いられたダミーの頭部加速度が上記障害評価基準で規定されたダミーの頭部加速度以下となる。すなわち、緩衝材70を構成する材料が硬すぎても柔らかすぎても、上記試験に用いられたダミーの頭部加速度を上記障害評価基準で規定されたダミーの頭部加速度以下とすることはできない。なお、上記適度な硬さを有する材料としては、エチレンビニルアセテート(EVA)以外に、電子線架橋ポリオレフィンフォーム等が挙げられる。
【0038】
以上に説明した実施形態では、座席40にヘッドレスト40cが設けられ、ヘッドレスト40cは発泡スチロール(EPS)等の緩衝性を有する材料で作製されたヘッドレスト本体部40d(すなわち第2の緩衝材)を含むが、これに限られない。ヘッドレスト40cは、上記第2の緩衝材40dを含まなくてもよい。さらに、座席40にはヘッドレスト40cが設けられておらず、緩衝材70が座席フレーム41に取り付けられていてよい。これらの場合も、エチレンビニルアセテート(EVA)または電子線架橋ポリオレフィンフォームで作製された緩衝材70は、発泡ポリエチレン(EPE)や軟質ウレタンフォーム、硬質ウレタンフォームで作製された緩衝材と比較して、上記試験におけるダミーの頭部加速度を、著しく低くすることができる。ただし、発明者が得た知見によれば、第2の緩衝材40dの上に緩衝材70を配置することで、上記試験におけるダミーの頭部加速度を更に効果的に低くすることができる。
【0039】
以上のように、本実施の形態によれば、チャイルドシート10は、座部40aと座部40aに接続する背部40bとを有する座席40と、座席40に着座した乳幼児の頭部と対面するよう上記背部40bに取り付けられた緩衝材70と、を備え、緩衝材70の硬さが、JIS S 6050:2002で定められた硬さの試験で20°~35°、好ましくは23°~33°である。
【0040】
このようなチャイルドシート10によれば、車両が急激に加減速した際の座席40に対する子供の頭部の移動加速度を十分に低くすることができる。具体的には、国連欧州経済委員会の「年少者用補助乗車装置に係る新協定規則(第129号)」の附則6に規定されている試験用座席を用いて同規則の7.1.3.1項で規定された試験方法に従って試験を行った場合に、座席40に着座したダミーの頭部加速度を、同規則の6.6.4.3.1項の表5の障害評価基準に示された頭部加速度以下にすることができる。なお、上述した実施形態では、緩衝材70は、エチレンビニルアセテートまたは電子線架橋ポリオレフィンフォームで作製されている。
【0041】
本実施の形態において、緩衝材70は、座席40の幅方向に垂直な断面が上底よりも下底が大きい台形をなす。これにより、座席40に着座した乳幼児の頭部を下方かつ後方から適切に支持することができる。
【0042】
本実施の形態において、座席40の背部40bは、発泡スチロール(EPS)で作製され緩衝材70に対面する第2の緩衝材40dを含む。これにより、車両が急激に加減速した際の座席40に対する子供の頭部の移動加速度を、更に効果的に低くすることができる。
【0043】
なお、以上において上述した実施の形態に対するいくつかの変形例を説明してきたが、当然に、複数の変形例を適宜組み合わせて適用することも可能である。
【符号の説明】
【0044】
1 車両の座席
10 チャイルドシート
20 受台ユニット
40 座席
41 座席フレーム
40a 座部
40b 背部
40c ヘッドレスト
40d ヘッドレスト本体部(第2の緩衝材)
70 緩衝材
100 固定ユニット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9