(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-02
(45)【発行日】2022-05-13
(54)【発明の名称】スマートキーシステム
(51)【国際特許分類】
E05B 49/00 20060101AFI20220506BHJP
B60R 25/24 20130101ALI20220506BHJP
【FI】
E05B49/00 J
B60R25/24
(21)【出願番号】P 2019196039
(22)【出願日】2019-10-29
【審査請求日】2020-09-16
(73)【特許権者】
【識別番号】593079944
【氏名又は名称】株式会社ビートソニック
(74)【代理人】
【識別番号】100090239
【氏名又は名称】三宅 始
(74)【代理人】
【識別番号】100100859
【氏名又は名称】有賀 昌也
(72)【発明者】
【氏名】戸谷 勉
【審査官】芝沼 隆太
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-79600(JP,A)
【文献】特開2012-82653(JP,A)
【文献】特開2010-179834(JP,A)
【文献】特開2017-14834(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 1/00-85/28
B60R 25/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定周波数帯域の検知波を周期的に発信し、当該検知波を所定強さの電界強度で発信する第1アンテナを中心に所定広さの検知エリアを形成する第1送信部、
前記検知エリア内で発信された所定周波数帯域の応答波、及び前記検知エリア外からも発信される所定周波数帯域の鍵制御波を受信可能な第2アンテナを備えた第2受信部、
及び、所定のオン・オフ操作にしたがってエンジンを始動又は停止可能なパワースイッチを備え、
前記応答波に含まれる識別信号が、予め登録された識別信号であるか否か照合して、合致している場合、前記識別信号に基づく照合結果信号を出力し、
前記鍵制御波に含まれる車体のドアをロックすることを要求するドアロック要求信号又は前記ドアをアンロックすることを要求するドアアンロック要求信号を出力し、
或いは、前記パワースイッチに係るエンジン始動許可信号又はエンジン停止許可信号を出力する制御を行う照合ECUと、
前記ドアロック要求信号に基づいて前記ドアをロックし、又は前記ドアアンロック要求信号に基づいて前記ドアをアンロックする制御を行う車体ECUと、
前記エンジン始動許可信号に基づいて前記エンジンを始動し、又は前記エンジン停止許可信号に基づいて前記エンジンを停止する制御を行うエンジンECUと、
少なくともACC電源とイグニッション電源を制御自在に有し、前記パワースイッチの前記オン・オフ操作にしたがって、前記ACC電源と前記イグニッション電源を共に起動させるか、又は前記ACC電源のみを起動させるか自動的に切替可能に形成された電源ECUと、
前記照合ECU、前記車体ECU、前記エンジンECU、及び前記電源ECUが接続され、少なくともそれら各ECUが送受信する制御情報に係る一の制御信号を伝送する車載ネットワークを有する車両、
及び、前記検知エリア内で前記検知波を受信する第1受信部、及び前記車両の前記第2受信部に対して前記応答波又は前記鍵制御波を送信する第2送信部を有する鍵端末装置とからなり、
当該鍵端末装置が前記検知エリア内にあって、前記第1送信部が発信した前記検知波を、前記第1受信部が受信して無線通信が成立したとき、
前記鍵端末装置は、前記第2送信部から前記応答波を発信し、当該応答波を前記車両の前記第2受信部が受信した場合に、
前記照合ECUが前記車載ネットワークへ出力した前記照合結果信号に基づいて、前記車体ECU、前記エンジンECU、及び前記電源ECUが動作して、
前記車体ECUでは、前記ドアのロック又はアンロックが制御可能に有効化され、
前記エンジンECUでは、前記エンジンの始動又は停止が制御可能に有効化され、
前記電源ECUでは、前記ACC電源及び前記イグニッション電源のオン又はオフが制御可能に有効化されて、
前記鍵端末装置が前記検知エリア外にあって、前記第1送信部が発信した前記検知波を、前記第1受信部が受信できずに無線通信が成立していないとき、
前記照合ECU、前記車体ECU、前記エンジンECU、及び電源ECUが動作しないようにしたスマートキーシステムにおいて、
他の外部機器を接続可能な外部入出力端子を備え
、前記検知波の発信を停止させて、前記検知エリアを消滅させる遮断装置を、前記車載ネットワークに接続し、
前記外部入出力端子は、前記外部機器が前記遮断装置を制御する他の制御信号が入力可能に、また前記外部機器に対して前記遮断装置の動作状態を示す信号を出力可能に構成され、
前記ドアが施錠されたとき、
前記遮断装置が、前記車両の前記第1送信部と前記鍵端末装置の前記第1受信部間の前記無線通信を遮断し、
前記車両の前記第2受信部が、前記鍵端末装置の前記第2送信部から送信された前記鍵制御波を受信して、
当該鍵制御波に係るドアアンロック要求信号に基づいて前記ドアが解錠されたとき、
前記遮断装置が、前記車両の前記第1送信部と前記鍵端末装置の前記第1受信部間の前記無線通信を成立させるようにしたことを特徴とするスマートキーシステム。
【請求項2】
前記鍵端末装置の前記第2送信部から送信された前記鍵制御波が、前記車両の前記第2受信部で受信され、
前記照合ECUが前記鍵制御波に係るドアロック要求信号を照合し、当該ドアロック要求信号に基づいて前記車体ECUがドアロック制御信号を出力して、前記ドアをロックする制御を行ったとき、
前記ドアロック制御信号に基づいて、前記遮断装置が前記無線通信を遮断するようにしたことを特徴とする請求項1に記載のスマートキーシステム。
【請求項3】
前記パワースイッチの前記オン操作に基づいて、前記車載ネットワークへ、前記ACC電源の起動を許可するACC電源起動許可信号が出力されたとき、
当該ACC電源起動許可信号に基づいて起動した前記ACC電源に係る前記電源ECUが、前記車載ネットワークへ、ACC電源起動状態信号を出力し、
前記パワースイッチの前記オフ操作に基づいて、前記車載ネットワークへ、前記ACC電源の停止を許可するACC電源停止許可信号が出力されたとき、
当該ACC電源停止許可信号に基づいて停止した前記ACC電源に係る前記電源ECUが、前記車載ネットワークへ、ACC電源停止状態信号を出力するようにして、
前記ACC電源起動状態信号又は前記ACC電源停止状態信号に基づいて、前記遮断装置が所定の動作をするようにしたことを特徴とする請求項1に記載のスマートキーシステム。
【請求項4】
前記遮断装置に、モード切替スイッチを備えたスイッチ部を設け、
当該モード切替スイッチを所定の操作で操作した場合に、
前記遮断装置が、所定のモードに切り替わるようにしたことを特徴とする請求項3に記載のスマートキーシステム。
【請求項5】
前記遮断装置へ前記ACC電源起動状態信号が入力されている場合に、前記モード切替スイッチを操作する第1操作を行ったとき、前記モードがオートモードへ切り替わるようにし、
当該オートモードは、前記ACC電源停止状態信号が、前記車載ネットワークを介して前記遮断装置に入力されたときに、当該遮断装置を自動的に動作させて、前記無線通信を遮断するモードであることを特徴とする請求項4に記載のスマートキーシステム。
【請求項6】
前記ACC電源停止状態信号が、前記車載ネットワークを介して、前記遮断装置に入力された後、前記モード切替スイッチを操作する第2操作を行ったとき、前記モードがセミオートモードへ切り替わるようにし、
当該セミオートモードは、前記ドアに設けたドアスイッチの操作に伴う前記ドアロック要求信号にしたがって、前記遮断装置を半自動的に動作させて前記無線通信を遮断するモードであることを特徴とする請求項4に記載のスマートキーシステム。
【請求項7】
前記セミオートモードは、前記遮断装置が前記無線通信を成立させたときに解除されるようにしたことを特徴とする請求項6に記載のスマートキーシステム。
【請求項8】
前記モード切り替えスイッチを第3操作で操作したとき、タイマーモードが有効となるように設定し、
当該タイマーモードは、前記遮断装置が、前記無線通信を遮断する前に、当該遮断装置の遮断動作を所定時間遅らせるモードであることを特徴とする請求項4に記載のスマートキーシステム。
【請求項9】
前記スイッチ部は、前記モード切替スイッチで切り替えた前記モードに応じて、所定の点滅パターンで点灯するLEDを有していることを特徴とする請求項4に記載のスマートキーシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スマートキーシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車はスマートキーシステムを有している。
スマートキーシステムとは、物理的、機械的なキーを使用せず車両のドア、トランクの施解錠、エンジンの始動等を行うことができるようにしたシステムをいう。スマートキーシステムは、従来のキーに付属されたリモコンのボタンを押して、車両のドアを施解錠していたキーレスエントリーを発展させたものであって、キーを携帯したユーザが車両へ近づく、又はドアハンドルに触れるだけでドアを解錠することができる。また、スマートキーシステムを有する車両は、プッシュスタートボタンを押すことによってエンジンを始動させることができるように形成されている。
スマートキーシステムは、ユーザが携帯する鍵端末と、自動車が有しているECU(Electronic Controll Unit)との間でリクエスト信号とレスポンス信号の無線通信を行って、通信が成立したとき、ECUが車両のドアを集中的に管理制御する施解錠装置に解錠又は施錠する指令を出すように構成されている。ユーザが鍵端末を携帯しているだけで、車両のドアを施錠又は解錠することができ、エンジンも容易に始動することができることから、上記のスマートキーシステムは急速に普及しつつある。
【0003】
しかし、上記のスマートキーシステムを有する自動車は、リレーアタックと呼ばれる手法で盗まれるおそれがある。
リレーアタックとは、鍵端末と車両が離れていて無線通信が成立しない距離にあるとき、すなわち、通常であればドアを開けることはできず、またエンジンも始動できない状態にあるとき、鍵端末と車両との間に中継器を置いて強制的に通信を成立させて、ドアを解錠し、エンジンを始動させて自動車を盗み出す窃盗方法である。
【0004】
上記のリレーアタックに対して、自動車メーカーでは、鍵端末側で車両から発信される電波の受信待機を停止する節電モードを設けて対策している。また、リレーアタック対策として、鍵端末を金属製の缶や函、又は金属箔・金属繊維を使用したキーケース等といった電波を遮蔽可能な容器が市販されている。これは、車両側から発信されるリクエスト信号に係る電波が鍵端末に届かないようにするためであり、またそれに応答して発信されるレスポンス信号に係る電波が、鍵端末から周囲へ漏洩しないようにするためである。
【0005】
さらに、特開2019-073206号公報に開示されているシステムは、スマートキーシステムに後付けして組み込むシステムであって、車両側から発信される電波を遮断する車載装置と、当該車載装置と無線通信を行い、スマートキーシステムの鍵端末とは別個であって、一緒に携帯されるリモート装置とからなり、車載装置とリモート装置との位置を測定して、所定の距離以上に離れた場合には、車載装置が車両側から発信される電波を遮断するように構成されている。このように、いわばスマートキーシステムを二重鍵のように構成することによって、車両のセキュリティを向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、節電モードに設定を変えることは手間がかかって面倒である。また、電波を遮蔽可能な容器に鍵端末を入れる方法では、たとえば、缶の蓋を閉め忘れたり、袋を閉め忘れたり等して電波が漏えいするような場合に、リレーアタックを防止することができない。
さらに、上記文献に開示されたシステムは、スマートキーシステムと共にリモート装置を携帯しなければならず、鍵端末装置とリモート装置の二つを携帯することは煩わしい。
そして当該システムでは、スマートキーシステムと同様に、車載機器とリモート装置との間で電波強度に基づいて距離を判定したり、スマートホンのGPS機能を利用したりと、車載機器とリモート装置間の距離判定に電波を利用している。そのため、同様に電波を利用するリレーアタックを応用して、いずれ無効化されるおそれがある。
【0008】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、セキュリティ性を向上させて、リレーアタックによる車両盗難を防止するようにしたスマートキーシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載のスマートキーシステムは、所定周波数帯域の検知波を周期的に発信し、当該検知波を所定強さの電界強度で発信する第1アンテナを中心に所定広さの検知エリアを形成する第1送信部、
前記検知エリア内で発信された所定周波数帯域の応答波、及び前記検知エリア外からも発信される所定周波数帯域の鍵制御波を受信可能な第2アンテナを備えた第2受信部、
及び、所定のオン・オフ操作にしたがってエンジンを始動又は停止可能なパワースイッチを備え、
前記応答波に含まれる識別信号が、予め登録された識別信号であるか否か照合して、合致している場合、前記識別信号に基づく照合結果信号を出力し、
前記鍵制御波に含まれる車体のドアをロックすることを要求するドアロック要求信号又は前記ドアをアンロックすることを要求するドアアンロック要求信号を出力し、
或いは、前記パワースイッチに係るエンジン始動許可信号又はエンジン停止許可信号を出力する制御を行う照合ECUと、
前記ドアロック要求信号に基づいて前記ドアをロックし、又は前記ドアアンロック要求信号に基づいて前記ドアをアンロックする制御を行う車体ECUと、
前記エンジン始動許可信号に基づいて前記エンジンを始動し、又は前記エンジン停止許可信号に基づいて前記エンジンを停止する制御を行うエンジンECUと、
少なくともACC電源とイグニッション電源を制御自在に有し、前記パワースイッチの前記オン・オフ操作にしたがって、前記ACC電源と前記イグニッション電源を共に起動させるか、又は前記ACC電源のみを起動させるか自動的に切替可能に形成された電源ECUと、
前記照合ECU、前記車体ECU、前記エンジンECU、及び前記電源ECUが接続され、少なくともそれら各ECUが送受信する制御情報に係る一の制御信号を伝送する車載ネットワークを有する車両、
及び、前記検知エリア内で前記検知波を受信する第1受信部、及び前記車両の前記第2受信部に対して前記応答波又は前記鍵制御波を送信する第2送信部を有する鍵端末装置とからなり、
当該鍵端末装置が前記検知エリア内にあって、前記第1送信部が発信した前記検知波を、前記第1受信部が受信して無線通信が成立したとき、
前記鍵端末装置は、前記第2送信部から前記応答波を発信し、当該応答波を前記車両の前記第2受信部が受信した場合に、
前記照合ECUが前記車載ネットワークへ出力した前記照合結果信号に基づいて、前記車体ECU、前記エンジンECU、及び前記電源ECUが動作して、
前記車体ECUでは、前記ドアのロック又はアンロックが制御可能に有効化され、
前記エンジンECUでは、前記エンジンの始動又は停止が制御可能に有効化され、
前記電源ECUでは、前記ACC電源及び前記イグニッション電源のオン又はオフが制御可能に有効化されて、
前記鍵端末装置が前記検知エリア外にあって、前記第1送信部が発信した前記検知波を、前記第1受信部が受信できずに無線通信が成立していないとき、
前記照合ECU、前記車体ECU、前記エンジンECU、及び電源ECUが動作しないようにしたスマートキーシステムにおいて、
他の外部機器を接続可能な外部入出力端子を備え、前記検知波の発信を停止させて、前記検知エリアを消滅させる遮断装置を、前記車載ネットワークに接続し、
前記外部入出力端子は、前記外部機器が前記遮断装置を制御する他の制御信号が入力可能に、また前記外部機器に対して前記遮断装置の動作状態を示す信号を出力可能に構成され、
前記ドアが施錠されたとき、
前記遮断装置が、前記車両の前記第1送信部と前記鍵端末装置の前記第1受信部間の前記無線通信を遮断し、
前記車両の前記第2受信部が、前記鍵端末装置の前記第2送信部から送信された前記鍵制御波を受信して、
当該鍵制御波に係るドアアンロック要求信号に基づいて前記ドアが解錠されたとき、
前記遮断装置が、前記車両の前記第1送信部と前記鍵端末装置の前記第1受信部間の前記無線通信を成立させるようにしたことを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載のスマートキーシステムは、請求項1に記載の発明において、前記鍵端末装置の前記第2送信部から送信された前記鍵制御波が、前記車両の前記第2受信部で受信され、
前記照合ECUが前記鍵制御波に係るドアロック要求信号を照合し、当該ドアロック要求信号に基づいて前記車体ECUがドアロック制御信号を出力して、前記ドアをロックする制御を行ったとき、
前記ドアロック制御信号に基づいて、前記遮断装置が前記無線通信を遮断するようにしたことを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載のスマートキーシステムは、請求項1に記載の発明において、前記パワースイッチの前記オン操作に基づいて、前記車載ネットワークへ、前記ACC電源の起動を許可するACC電源起動許可信号が出力されたとき、
当該ACC電源起動許可信号に基づいて起動した前記ACC電源に係る前記電源ECUが、前記車載ネットワークへ、ACC電源起動状態信号を出力し、
前記パワースイッチの前記オフ操作に基づいて、前記車載ネットワークへ、前記ACC電源の停止を許可するACC電源停止許可信号が出力されたとき、
当該ACC電源停止許可信号に基づいて停止した前記ACC電源に係る前記電源ECUが、前記車載ネットワークへ、ACC電源停止状態信号を出力するようにして、
前記ACC電源起動状態信号又は前記ACC電源停止状態信号に基づいて、前記遮断装置が所定の動作をするようにしたことを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載のスマートキーシステムは、請求項3に記載の発明において、前記遮断装置に、モード切替スイッチを備えたスイッチ部を設け、
当該モード切替スイッチを所定の操作で操作した場合に、
前記遮断装置が、所定のモードに切り替わるようにしたことを特徴とする。
【0013】
請求項5に記載のスマートキーシステムは、請求項4に記載の発明において、前記遮断装置へ前記ACC電源起動状態信号が入力されている場合に、前記モード切替スイッチを操作する第1操作を行ったとき、前記モードがオートモードへ切り替わるようにし、
当該オートモードは、前記ACC電源停止状態信号が、前記車載ネットワークを介して前記遮断装置に入力されたときに、当該遮断装置を自動的に動作させて、前記無線通信を遮断するモードであることを特徴とする。
【0014】
請求項6に記載のスマートキーシステムは、請求項4に記載の発明において、前記ACC電源停止状態信号が、前記車載ネットワークを介して、前記遮断装置に入力された後、前記モード切替スイッチを操作する第2操作を行ったとき、前記モードがセミオートモードへ切り替わるようにし、
当該セミオートモードは、前記ドアに設けたドアスイッチの操作に伴う前記ドアロック要求信号にしたがって、前記遮断装置を半自動的に動作させて前記無線通信を遮断するモードであることを特徴とする。
【0015】
請求項7に記載のスマートキーシステムは、請求項6に記載の発明において、前記セミオートモードは、前記遮断装置が前記無線通信を成立させたときに解除されるようにしたことを特徴とする。
【0016】
請求項8に記載のスマートキーシステムは、請求項4に記載の発明において、前記モード切り替えスイッチを第3操作で操作したとき、タイマーモードが有効となるように設定し、
当該タイマーモードは、前記遮断装置が、前記無線通信を遮断する前に、当該遮断装置の遮断動作を所定時間遅らせるモードであることを特徴とする。
【0017】
請求項9に記載のスマートキーシステムは、請求項4に記載の発明において、前記スイッチ部は、前記モード切替スイッチで切り替えた前記モードに応じて、所定の点滅パターンで点灯するLEDを有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によるスマートキーシステムによれば、車両側から発信される検知波を停止して、当該検知波に係る検知エリアを消滅させる遮断装置を設けた。これによって、当該遮断装置が、車両と鍵端末装置間の検知波に係る無線通信を遮断したとき、鍵端末装置を検知する検知エリアが消滅するので、車両と鍵端末装置の間に中継器を介入させて検知波を乗っ取り、車両のドアを解錠し、エンジンを始動するリレーアタックを防止することができる。
また、遮断装置を車載ネットワークに接続するようにした。これによって、純正の鍵端末装置と、車両に既設のスマートキーシステムを流用することができ、遮断装置を容易に車両へ取り付けることができる。
さらに、鍵端末装置が送受信する電波を鍵端末装置側で遮蔽するのではなく、車両側から発信される検知波を停止させて検知エリアを消滅させるようにした。これによって、鍵端末装置を金属缶等の金属製ケースに入れたりする手間を省くことができ、鍵端末装置が電波を送受信可能な状態で放置していても、リレーアタックを防止して、車両盗難防止効果を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】第1実施例に係るスマートキーシステムの検知エリアの概略を示す説明図である。
【
図2】第1実施例に係るスマートキーシステムの鍵端末装置の構成の概略を示す説明図である。
【
図3】第1実施例に係るスマートキーシステムの構成の概略を示すブロック図である。
【
図4】第1実施例に係るスマートキーシステムの動作の概略を示すチャート図である。
【
図5】第1実施例に係るスマートキーシステムのマニュアルモードの動作の概略を示すチャート図である。
【
図6】第1実施例に係るスマートキーシステムのオートモードの動作の概略を示すチャート図である。
【
図7】第1実施例に係るスマートキーシステムのセミオートモード及びタイマーモードの動作の概略を示すチャート図である。
【実施例1】
【0020】
本発明に係るスマートキーシステムの実施例を、添付した図面にしたがって説明する。
図1は本実施例に係るスマートキーシステムの検知エリアの概略を示す説明図、
図2は本実施例に係るスマートキーシステムの鍵端末装置の構成の概略を示す説明図、
図3は本実施例に係るスマートキーシステムの構成の概略を示すブロック図である。
【0021】
スマートキーシステム10は、
図1に示すように、車両11と鍵端末装置12とからなり、検知エリア26内に鍵端末装置が存在しているとき、ユーザがドアハンドルのスイッチ又はセンサに触れてドア31をロック又はアンロックするスマートエントリー操作、或いはパワースイッチ24のオン操作でエンジン41をスタートさせたり、当該パワースイッチ24のオフ操作でエンジン41をストップさせるスマートスタート・ストップ操作を行うことができるようにしたシステムである。
また、スマートキーシステム10と併設されたキーレスエントリーシステムは、同様に、車両11と鍵端末装置12とからなり、
図1に示す検知エリア26外からであっても、
図2に示す鍵端末装置12のドアロックスイッチ60をオンにして、ドア31をロックしたり、又はドアアンロックスイッチ61をオンにして、ドア31をアンロックすることができるようにしたシステムである。
【0022】
車両11は、
図3に示すように、車載ネットワーク13上に、照合ECU(Electronic Control Unit)14、車体ECU15、エンジンECU16、電源ECU17及び遮断装置50が接続されている。
【0023】
車載ネットワーク13は、各種情報に係る信号が所定の通信規格で伝送可能に形成されている。各種情報は、たとえば、照合ECU14、車体ECU15、エンジンECU16、電源ECU17の各ECU間で互いに伝送される制御情報であったり、また、各ECUの動作状況、或いは当該各ECUに接続されている各デバイスの動作状況を示す各部位の状態に係る情報である。
本実施例において、車載ネットワーク13は、CAN(Controller Area Network)である。しかし、これに限定されることなく、遮断装置50を搭載する車両11にあわせて、当該車両11で利用されている車載ネットワーク13を適宜選択しても良い。
【0024】
照合ECU14は、
図3に示すように、第1アンテナ21を備えた第1送信部20と、第2アンテナ23を備えた第2受信部22と、パワースイッチ24を有している。
照合ECU14は、第1送信部20を用いて、
図1に示すような鍵端末装置12を検知する検知エリア26を形成するように構成されている。また、照合ECU14は、車載ネットワーク13へ各種信号を出力し、また車載ネットワーク13から各種信号をピックアップして車両の状態を検知し、スマートキーシステム10又はキーレスエントリーシステム全体を制御するように形成されている。さらに、照合ECU14は、電源ECU17が有するACC電源45又はイグニッション電源46(IG電源)のオン・オフをパワースイッチ24で操作可能に形成されている。
【0025】
第1送信部20は、所定の条件下で起動して、
図1又は
図3に示すように、複数の第1アンテナ群21のうち、第1アンテナ21a等の各アンテナから所定周波数帯域の検知波27を周期的に発信するように形成されている。
これによって、
図1に示すように、第1アンテナ21を中心に車両内外に複数の検知エリア26が形成され、周期的な検知波27の発信によって、鍵端末装置12を携帯しているユーザの接近を検知することができる。
なお、本実施例では、
図1又は
図3に示すように、複数の第1アンテナ群21を設けたが、これに限定されることなく、少なくとも1本若しくは2本以上の任意の数の第1アンテナ21を用いるようにしても良い。
検知波27の発信周期は、本実施例では0.25秒毎に設定されている。しかし、これに限定されるものではなく任意に設定可能である。当該発信周期の検知波27には、リクエスト信号が含まれている。
リクエスト信号は、検知エリア26内に入った鍵端末装置12に対し、当該鍵端末装置12の位置確認のために発せられる信号であり、また当該鍵端末装置12が正規のものであるか否かを識別する識別信号を要求する信号である。
【0026】
検知波27の周波数帯域は、車両11の周囲からの影響を受け難い長波(LF)であって、125kHz~134kHz帯の周波数帯域が好ましい。当該検知波27を所定強さの電界強度で発信することによって、
図1に示すように、第1アンテナ21を中心として、車両内外に所定広さの検知エリア26が形成される。
第1アンテナ21は、
図1に示すように、車両のドアを開け閉めする左右の外側ドアハンドル近傍に、車両から外側へ指向した車室外用アンテナ21a,21b,21c,21dが設けられている。これによって、検知エリア26a,26b,26c,26dは、左右の外側ドアハンドル中央部から半径約70cm~約1mの半円状に形成されている。また、ラゲージ室を開閉するラゲージコンパートメントドア32のハンドル近傍には、車両11から外側へ指向したラゲージ室外用アンテナ21eが設けられている。これによって、検知エリア26eは、ラゲージコンパートメントドア32のハンドルを中心として半径約70cm~約1mの半円状に形成されている。
そして、車室内は、前席側と後席側にそれぞれの車室内用アンテナ21f,21gが設けられている。これによって、車室内には、当該車室内全体をカバーする検知エリア26fが形成されている。さらにラゲージ室内には、ラゲージ室内用アンテナ21hが設けられている。これによって、ラゲージ室内に検知エリア26hが形成されている。
【0027】
検知エリア26は、所定の条件にしたがって、第1送信部20が複数の第1アンテナ群21のうち、それぞれ所定の位置に設けた第1アンテナ21a,21b,21c,21d,21e,21f,21g,21hを起動させることによって、当該第1アンテナ21a,21b,21c,21d,21e,21f,21g,21hのそれぞれの位置に対応した車両内外のいずれかの位置に形成される。
たとえば、
図1に示すように、車室外用アンテナ21a,21b,21c,21dにしたがって形成される検知エリア26a,26b,26c,26dは、駐車状態のときに形成される。駐車状態とは、後述するACC電源45及びIG電源46がオフであって、かつ、外側ドアハンドルのスイッチ又はセンサに触れてドア31をロックするスマートドアロック操作、又は、鍵端末装置12のドアロックスイッチ60をオンにするドアロック操作によってドア31がロックされている状態をいう。
そして、ラゲージ車室外用アンテナ21eにしたがって形成される検知エリア26eは、駐車状態、又は鍵端末装置12のラゲージオープンスイッチ62をオンにすることによって形成される。
このように、車両外側を指向するアンテナ21a,21b,21c,21d,21eによって形成される検知エリア26a,26b,26c,26d,26eは、基本的に駐車状態のときに形成される。
【0028】
一方、車室内用アンテナ21f,21gにしたがって形成される検知エリア26fは、鍵端末装置12を車内に閉じ込めてしまうことを防止するため、車室内に鍵端末装置12が存在しているか否か、多重的にチェックされるように形成されている。
また、ラゲージ室内用アンテナ21hにしたがって形成される検知エリア26hもまた、鍵端末装置12をラゲージ室内に閉じ込めてしまうことを防止するため、ラゲージ室内に鍵端末装置12が存在しているか否か、多重的にチェックされるように形成されている。
このように、車体各部の操作や車両11の状態に係る所定の条件にしたがって、外側ドアハンドルの近傍等、各所に検知エリア26が形成され、当該検知エリア26内でリクエスト信号を含んだ検知波27が周期的に発信される。
鍵端末装置12が検知エリア26内にある場合、当該検知波27が受信されて無線通信が成立し、リクエスト信号に基づいて、鍵端末装置12が所定のレスポンスを返す。これによって、鍵端末装置12が、リクエスト信号を発信している検知エリア26内のいずれかに存在しているという位置確認を行うことができる。
一方、鍵端末装置12が検知エリア26内に無い場合、鍵端末装置12から所定のレスポンスが返ってこない。そのため、たとえば、上記の駐車状態の下で位置確認が行われたときに、鍵端末装置12が検知エリア26a,26b,26c,26d内に存在していない場合、照合ECU14及びその他の各ECUは動作を停止する。これによって、セキュリティ性を向上させることができる。
【0029】
第2受信部22は、
図3に示すように、第2アンテナ23を介して鍵端末装置12から送信された所定周波数帯域の応答波65又は所定周波数帯域の鍵制御波66を受信可能に形成されている。応答波65と鍵制御波66の使用周波数帯域は、共に短距離無線通信に適した極超短波(UHF)であって、たとえば、300MHz帯の周波数帯域が用いられている。本実施例においては、315MHz帯が用いられているがこれに限定されるものではなく、法規又は電波使用割り当てにしたがって任意の周波数帯域を使用することができる。
ここで、応答波65は、鍵端末装置12が検知波27を受信したときに応答発信する電波であって、鍵制御波66は、鍵端末装置12からドアのロック又はアンロックを遠隔操作するときに発信される電波である。したがって、応答波65と鍵制御波66は、以下のように異なる信号を含んでいる。当該信号に基づいて、照合ECU14は、スマートキーシステム10又はキーレスエントリーシステムのいずれかを制御するように形成されている。
【0030】
応答波65は、鍵端末装置12が検知エリア26内にある場合に、リクエスト信号に応じて当該鍵端末装置12が返すレスポンス信号を含む電波である。当該応答波65は、鍵端末装置12が検知エリア26内にある場合に第2アンテナ23で受信可能であれば十分であるから、微弱な電波であっても良い。レスポンス信号は、鍵端末装置12が車両11に紐付けされたものであるか否かを識別するキー識別信号を含んでいる識別信号である。
そして、照合ECU14は、応答波65に乗せられたレスポンス信号に係る識別信号とそれに含まれるキー識別信号が、予め登録されたものであるか否かを照合して判定する処理を行うように形成されている。
識別信号が合致しているときは、スマートキーシステム10が有効化される。これによって、車両11のドア、或いはドアハンドルに設けられたセンサ又はスイッチに触れることでドア31をロック又はアンロックするスマートエントリー操作を行うことができ、さらにパワースイッチ24を操作してエンジン41を始動するスマートスタート操作を行うことができる。
識別信号が合致していないときは、スマートキーシステム10が無効化される。これによって、スマートエントリー操作を行うことができず、スマートスタート操作もまた行うことができない。
【0031】
鍵制御波66は、鍵端末装置12が検知エリア26内にあろうが、また検知エリア26外にあろうが、車両11から所定の距離以内であれば第2受信部22で受信可能な電波であって、
図2に示す鍵端末装置12に設けた各スイッチ60,61,62の操作に応じて出力されるドアロック要求信号、ドアアンロック要求信号、或いはラゲージオープン要求信号のいずれかを含む電波である。これらのドアロック要求信号、ドアアンロック要求信号、またラゲージオープン要求信号は、鍵制御波66で識別信号と共に入力され、照合ECU14は、当該識別信号によって鍵端末装置12を識別すると共に、車載ネットワーク13へ、ドアロック要求信号、ドアアンロック要求信号、又はラゲージオープン要求信号を出力する。
車載ネットワーク13上へ出力されたドアロック要求信号、ドアアンロック要求信号、又はラゲージオープン要求信号は、車体ECU15へ入力される。車体ECU15はそれら要求信号に基づいて、ドア31をロックするドアロック制御信号、又はドア31をアンロックするドアアンロック制御信号、或いはラゲージコンパートメントドア32を開くラゲージオープン制御信号を出力して、ドア31をロック又はアンロックし、或いはラゲージコンパートメントドア32をロック又はアンロックするドアロック装置30を制御する。これによって、ドアロック装置30は、ドア31をロック又はアンロックし、或いは、ラゲージ室のラゲージコンパートメントドア32は開放される。
【0032】
パワースイッチ24は、所定のオン操作によって所定の許可信号を出力してエンジン41を遠隔始動し、又は所定のオン操作によって所定の許可信号を出力してエンジン41を遠隔停止するように構成されている。
また、パワースイッチ24は、RFID(Radio Frequency IDentification)用アンテナ25を設けても良い。この場合に、RFID用アンテナ25は、鍵端末装置12内に設けられたトランスポンダ67と所定の周波数帯を用いてイモビライザに係る近距離通信を行うことができる。これによって、たとえば、エンジンECU16の動作を制限して、エンジン41に対するセキュリティ性を向上させることができる。
【0033】
パワースイッチ24の所定のオン操作とは、たとえば、ブレーキペダルを踏みながらパワースイッチ24をオンにするか、又はブレーキペダルを踏まずにパワースイッチ24をオンにする操作である。これらいずれかの操作にしたがって、次のような電源のパターンが自動的に切り替わるように形成されている。
ブレーキペダルを踏みながらパワースイッチ24をオンにする操作の場合は、電源遷移パターンとなる。
電源遷移パターンとは、ACC電源45が起動し、続いてIG電源46が起動してエンジン41が起動する電源の起動パターンと、IG電源46が停止してエンジン41が停止し、続いてACC電源45が停止する電源の停止パターンとからなるパターンをいう。
ブレーキペダルを踏まずにパワースイッチ24をオンにする操作の場合は、ACC電源パターンとなる。
ACC電源パターンは、ACC電源45のみが起動又は停止するパターンをいう。
なお、本実施例においては、電源遷移パターンとACC電源パターンをブレーキペダルの操作によって振り分けたがこれに限定されず、他にもたとえば、プッシュスイッチからなるパワースイッチ24の押し方の違い等、任意の操作方法によって振り分けるようにしても良い。
【0034】
車体ECU15は、
図3に示すように、車体のドア31,32をロック又はアンロック可能なドアロック装置30を有している。そして、車体ECU15は、車載ネットワークを介して入力された要求信号に応じて制御信号を出力し、ドアロック装置30を制御して、ドア31,32をロック又はアンロックするように形成されている。
上記したように、検知エリア26内に鍵端末装置12がある場合、照合ECU14が応答波65に含まれているキー識別信号を照合し、合致しているときはスマートキーシステム10が有効化される。
当該スマートキーシステム10が有効であるとき、車体ECU15は、ユーザのスマートエントリー操作に伴って車載ネットワーク上へ出力されたドアロック要求信号に応じてドアロック制御信号を出力し、ドアロック装置30を制御してドア31をロックする。
または、車体ECU15は、ユーザのスマートエントリー操作に伴って車載ネットワーク上へ出力されたドアアンロック要求信号に応じてドアアンロック制御信号を出力し、ドアロック装置30を制御してドア31をアンロックする。
さらに、車体ECU15は同様に、ユーザのスマートエントリー操作に伴って車載ネットワーク上へ出力されたラゲージオープン要求信号に応じてラゲージオープン制御信号を出力し、ドアロック装置30を制御してラゲージコンパートメントドア32のロックを外して開放する。
【0035】
一方、キーレスエントリーシステムでは、鍵端末装置12から鍵制御波66に乗せて、識別信号と共にドアロック要求信号、ドアアンロック要求信号、或いはラゲージオープン要求信号のいずれかが車両へ送信される。
それらの識別信号付き要求信号は、照合ECU14で照合判定されて、車載ネットワーク13へ出力される。
このとき、車体ECU15は、車載ネットワーク上へ出力された識別信号付きドアロック要求信号に応じてドアロック制御信号を出力し、ドアロック装置30を制御してドア31をロックする。
または、車体ECU15は、車載ネットワーク上へ出力された識別信号付きドアアンロック要求信号に応じてドアアンロック制御信号を出力し、ドアロック装置30を制御してドア31をアンロックする。
さらに、車体ECU15は同様に、車載ネットワーク上へ出力された識別信号付きラゲージオープン要求信号に応じてラゲージオープン制御信号を出力し、ドアロック装置30を制御してラゲージコンパートメントドア32のロックを外して開放する。
【0036】
図3に示すように、エンジンECU16は、エンジン41を有し、電源ECU17は、少なくともACC電源45と、IG電源46を有している。
電源ECU17は、車載ネットワーク13上を伝送しているACC電源起動許可信号又はACC電源停止許可信号を取得し、それら許可信号に応じて、ACC電源45の動作状態を示すACC電源起動状態信号又はACC電源停止状態信号を車載ネットワーク13へ出力するように構成されている。
これら車載ネットワーク13上を伝送しているACC電源起動許可信号と、それに対するACC電源起動状態信号、又はACC電源停止許可信号と、それに対するACC電源停止状態信号は、後述する遮断装置50がスマートキーシステム10を有効又は無効にする制御を行うために利用される。
【0037】
なお、本実施例においては、便宜上、車載ネットワークに照合ECU14、車体ECU15、エンジンECU16、及び電源ECU17を設けて簡略化したスマートキーシステム10、キーレスエントリーシステムについて説明している。
しかしながら、実際には、照合ECU14、車体ECU15、エンジンECU16、又は電源ECU17以外にも、車載ネットワーク13には他のECUが複数接続されている。これら各ECUから、車載ネットワークへ様々な信号が出力されており、照合ECU14、車体ECU15、エンジンECU16、又は電源ECU17以外の他のECUからも、上記に例示した制御信号等が車載ネットワーク上へ出力されている場合があり、一方では照合ECU14、車体ECU15、エンジンECU16、又は電源ECU17は、上記に例示した制御信号以外の制御信号を車載ネットワークへ出力している場合がある。そして各ECUから車載ネットワーク上へ出力された様々な制御信号に基づいてその他の機能を制御することができ、様々な状態信号に基づいて各部位の状態を各ECUで共有することができるように構成されている。これによって、たとえば、ハンドルの回転角やスロットル開度からエンジンやサスペンションの制御をしたりといった車両11の各部に設置された各種センサの検知結果に基づいて車両11全体の制御を各ECUで協働して行うことができる。
【0038】
鍵端末装置12は、
図2に示すように、ドアロックスイッチ60、ドアアンロックスイッチ61、ラゲージドアスイッチ62を有し、
図3に示すように、第1受信部63と第2送信部64を有している。
第1受信部63は、車両の第1送信部20から発信される検知波27を受信可能に形成されている。そして、鍵端末装置12が検知波27によって形成された検知エリア26内に入ったとき、検知波27を発信した車両11と検知波27を受信した鍵端末装置12間で無線通信が成立するように形成されている。
このとき、
図1に示した複数個形成されている検知エリア26のうち、どの検知エリア26内で無線通信が成立したかによって、鍵端末装置12の位置確認が照合ECU14側で行われる。
【0039】
第2送信部64は、応答波65又は鍵制御波66を送信可能に形成されている。応答波65又は鍵制御波66のどちらが発信されるかは、鍵端末装置12の動作によって分けられる。
応答波65は、第1受信部63で検知波27の無線通信が成立したとき、鍵端末装置12が車両11に対して発信する電波である。応答波65は、検知波27に含まれるリクエスト信号に応じるレスポンス信号が含まれている。上記したように、レスポンス信号は、少なくともキー識別信号を含んでいる識別信号からなる。レスポンス信号が照合ECU14で照合され合致していた場合、スマートキーシステム10が有効化する。このとき、たとえば、車両外の検知エリア26内で車両11に近づいている鍵端末装置12を携帯しているユーザは、ドア31のセンサやスイッチに触れることによって、ドア31をアンロックするスマートエントリー操作を行うことができ、続いて車に乗り込んでパワースイッチ24をオン操作することでエンジン41を始動するスマートスタート操作を行うことができる。そして、再度パワースイッチ24をオフ操作することでエンジン41を停止するスマートストップ操作を行い、車から降りて、ドア31のセンサやスイッチに触れることによって、ドア31をロックするスマートエントリー操作を行うことができる。
【0040】
鍵制御波66は、鍵端末装置12に設けたドアロックスイッチ60、ドアアンロックスイッチ61、ラゲージオープンスイッチ62が、ユーザによって押されたとき、鍵端末装置12が車両11に対して、当該車両11のドア31又はラゲージコンパートメントドア32を遠隔操作するために発信する電波である。鍵制御波66は、識別番号に下記のような要求信号を備えた鍵制御信号が含まれている。
ユーザがドアロックスイッチ60を押したとき、第2送信部64は、識別信号とドアロック要求信号備えた鍵制御信号を送信する。
そして、照合ECU14は、鍵端末装置12を照合判別して、車載ネットワーク13へ識別信号付きドアロック要求信号を出力する。車体ECU15は、車載ネットワーク13から取得した識別信号付きドアロック要求信号に基づいて、ドアロック制御信号を出力して、ドアロック装置30を制御する。
ユーザがドアアンロックスイッチ61を押したとき、第2送信部64は、識別信号とドアアンロック要求信号を備えた鍵制御信号を送信する。
そして、照合ECU14は、鍵端末装置12を照合判別して、車載ネットワーク13へ識別信号付きドアアンロック要求信号を出力する。車体ECU15は、車載ネットワーク13から取得した識別信号付きドアアンロック要求信号に基づいて、ドアアンロック制御信号を出力して、ドアロック装置30を制御する。
ユーザがラゲージオープンスイッチ62を押したとき、第2送信部64は、識別信号とラゲージオープン要求信号を備えた鍵制御信号を送信する。
そして、照合ECU14は、鍵端末装置12を照合判別して、車載ネットワーク13へ識別信号付きラゲージオープン要求信号を出力する。車体ECU15は、車載ネットワーク13から取得した識別信号付きラゲージオープン要求信号に基づいて、ラゲージオープン制御信号を出力して、ラゲージコンパートメントドア32を開放する制御を行う。
このように、鍵端末装置12の第2送信部64が、検知波27に含まれるリクエスト信号に応じてレスポンス信号を含む応答波65を発信した場合には、スマートキーシステム10が起動するように形成されている。
一方、ドアロックスイッチ60等の操作にしたがって、識別信号とドアロック要求信号等を備えた鍵制御信号を含む鍵制御波66を発信した場合には、キーレスエントリーシステムが起動するように形成されている。
【0041】
さらに、鍵端末装置12は、車両11側のRFID用アンテナ25と短距離無線通信可能なトランスポンダ67を設けても良い。この場合に、トランスポンダ67は、車両11側のRFID用アンテナ25と所定の周波数帯を用いてイモビライザに係る近距離通信を行うことができる。これによって、たとえば、エンジンECU16の動作を制限して、エンジン41に対するセキュリティ性を向上させることができる。
【0042】
上記のスマートキーシステム10によれば、鍵端末装置12を検知波27に基づいて形成される検知エリア26内に入れることによって、当該スマートキーシステム10を有効化して、車体ECU15がドア31のロック又はアンロックを制御し、電源ECU17がACC電源45及びIG電源46を制御することができる。そのため、鍵端末装置12を使ったキーレスエントリーシステムのリモコン操作で解錠操作をすることなく車両11のドア31をロックし、又はアンロックすることができ、さらには、エンジン41をスタートさせることができるので、利便性を高めることができる。
【0043】
本実施例に係る遮断装置50は、上記のスマートキーシステム10に組み込まれる装置である。
遮断装置50は、
図3に示すように、車載ネットワークに接続可能な入出力端子51と、遮断装置50とは別体に設けられ、有線で接続されているスイッチ部52を有している。スイッチ部52は、遮断装置50の動作モードを切替設定可能なモード切替スイッチ53と、LED54を有している。
なお、遮断装置50とスイッチ部52は、有線接続に限定されず、遮断装置50とスイッチ部52を無線で接続するようにしても良い。
また、好ましくは、遮断装置50に外部入出力端子55を設けても良い。外部入出力端子55は、当該遮断装置50を制御する制御信号を外部から入力し、遮断装置50の動作状態を示す信号を外部へ出力する端子である。
【0044】
スイッチ部52は、車両外部からLED54が視認できる位置、たとえば、
図1に示すようなダッシュボード上に配置されていることが好ましい。これによって、遮断装置50の起動中にLED54を点滅或いは点灯させたとき、従来の盗難防止装置の動作確認用LEDの点滅と同様に、周囲に対して何らかのセキュリティ機器が動作していることを報知することができる。これによって、盗難に対する抑止力が働き、セキュリティ効果が向上することを期待することができる。
【0045】
モード切替スイッチ53は、所定の操作によって、遮断装置50の動作モードを切替可能に構成されている。なお、本実施例に係るモード切替スイッチ53は、プッシュスイッチからなるが、これに限定されず、動作モードを切替可能なトグルスイッチやロータリースイッチ、その他各種スイッチを適宜選択可能である。
LED54は、各動作モードの設定状態、又は遮断装置50の動作状態を、それぞれ所定の点滅パターンで点灯したり、又は所定のカラーで点灯したりすることによって、周囲に対して報知可能に形成されている。
【0046】
遮断装置50は、ドアロック制御信号が車載ネットワーク13から入力されたとき、入出力端子51を介して車載ネットワーク13へ、スマートキーシステム10の動作を禁止するスマート動作禁止信号を出力するように形成されている。
また、遮断装置50は、ドアアンロック制御信号が車載ネットワーク13から入力されたとき、入出力端子51を介して車載ネットワーク13へ、スマートキーシステム10の動作を許可するスマート動作許可信号を出力するように形成されている。
【0047】
また好ましくは、遮断装置50が、外部入出力端子55を通じて、スマート動作禁止信号又はスマート動作許可信号を外部へ出力するようにしても良い。これによって、車載ネットワーク13と別系統で外部へ出力されたスマート動作禁止信号、又はスマート動作許可信号に基づいて、たとえば、リレーアタック防止を目的とする本実施例に係る遮断装置50とは別の車両盗難防止装置を、遮断装置50に連動させるといった拡張性を持たせることができる。
さらに、好ましくは、遮断装置50を動作させる所定の制御信号を、たとえば、本実施例とは異なる他の車両盗難防止装置のような外部機器から、外部入出力端子55を介し、車載ネットワーク13とは別系統で取得するようにしても良い。これによって、車載ネットワーク13上を伝送しているドアロック制御信号又はドアアンロック制御信号を取得して動作している遮断装置50を、それらとは異なる別の制御信号、たとえば、上記の外部機器が出力する制御信号に基づき、車載ネットワーク13上を伝送している各制御信号からは独立させて動作させることができる。
【0048】
車載ネットワーク13を介してスマート動作禁止信号が照合ECU14に入力された場合、照合ECU14は、スマート動作禁止信号に基づき、第1送信部20に対して検知波27の発信を停止する制御を行う。これによって、第1送信部20は、検知波27の発信を停止するので、当該検知波27に係る検知エリア26が消滅する。したがって、遮断装置50は、車両11と鍵端末装置12間の検知波27に係る無線通信を遮断することができる。
また、スマート動作禁止信号に基づいて照合ECU14は、スマートキーシステム10を無効化する制御を行う。さらに車載ネットワーク13へ出力されたスマート動作禁止信号に基づいて、車体ECU15は、ドアロック装置30の制御が禁止され、電源ECU17は、ACC電源45又はIG電源46の制御が禁止される。
これによって、たとえば、車外用アンテナ21a,21b,21c,21d近傍に鍵端末装置12が接近しても、検知エリア26a,26b,26c,26dが消滅しているので、検知波27に係るリクエスト信号が鍵端末装置12に入力されず、鍵端末装置12からはレスポンス信号に係る応答波65が発信されない。
このように、遮断装置50は、車両11と鍵端末装置間12の無線通信を遮断するので、車両11と鍵端末装置12との間に中継器を介入させて、検知波27と応答波65を乗っ取り車両11を盗み出すリレーアタックを防止することができる。
【0049】
車載ネットワーク13を介してスマート動作許可信号が照合ECU14に入力された場合、照合ECU14は、スマート動作許可信号に基づき、第1送信部20に対して検知波27の発信の停止を解除する制御を行う。これによって、第1送信部20は、検知波27を発信するので、当該検知波27に係る検知エリア26が形成される。したがって、遮断装置50は、車両11と鍵端末装置12間の検知波27に係る無線通信を成立させることができる。
また、スマート動作許可信号に基づいて照合ECU14は、スマートキーシステム10を有効化する制御を行う。さらに車載ネットワーク13へ出力されたスマート動作許可信号に基づいて、車体ECU15は、ドアロック装置30の制御が可能になり、電源ECU17は、ACC電源45又はIG電源46の制御が可能となる。
これによって、たとえば、車外用アンテナ21a,21b,21c,21d近傍に鍵端末装置12が接近して、検知エリア26a,26b,26c,26d内に鍵端末装置12が侵入したとき、検知波27に係るリクエスト信号が鍵端末装置12に入力され、鍵端末装置12からはレスポンス信号に係る応答波65が発信される。
このように、遮断装置50は、車両11と鍵端末装置間12の無線通信を成立させるので、スマートキーシステム10を動作させることができる。
【0050】
遮断装置50は、基本的にはドア31が施錠されたときに車体ECU15から出力されるドアロック制御信号に基づいてスマート動作禁止信号を出力して、無線通信を遮断するように形成されている。しかし、当該ドアロック制御信号が出力される過程の違いによって、すなわち、ユーザによる鍵端末装置12の操作、又はスイッチ部52の操作で設定した所定の動作モードにしたがって、動作手順が相違するように構成されている。
動作モードは、所定のトリガに応じて自動で遮断装置50が動作するオートモード、所定のトリガに応じて半自動で遮断装置50が動作するセミオートモード、さらに、手動で遮断装置を動作させるマニュアルモードからなる。
【0051】
オートモードは、ACC電源起動状態信号が車載ネットワーク13上へ出力されている場合に、所定の第1操作でモード切替スイッチ53を操作したとき、有効か又は無効が設定されるモードである。
ACC電源起動状態信号とは、電源ECU17が、ACC電源45が起動しているときに車載ネットワークへ出力する信号をいう。すなわち、ACC電源45が単体で起動しているとき、若しくは、ACC電源45とIG電源46が協働してエンジン41が動作中であるときに出力される信号である。
オートモードが有効であると設定されている場合、遮断装置50は、ACC電源停止状態信号を車載ネットワーク13から取得したとき、常にドア31のセンサやスイッチに触れることによって、ドア31をロックするスマートエントリー操作に備えた動作スタンバイ状態に移行する。
ACC電源停止状態信号とは、パワースイッチ24が所定のオフ操作をされたとき、照合ECU14が車載ネットワーク13へ出力したACC電源停止許可信号に基づいて、電源ECU17がACC電源45を停止させた場合に、当該電源ECUが車載ネットワークへ出力する信号をいう。
そして、動作スタンバイ状態の遮断装置50は、ユーザがドアハンドルのスイッチ又はセンサに触れるスマートエントリー操作でドア31をロックしたとき、車体ECU15が車載ネットワークへ出力するドアロック制御信号に基づいて、スマート動作禁止信号を車載ネットワークへ出力して、検知波27に係る無線通信を遮断する。
このようにオートモードに設定されている場合、一度設定するとACC電源45が停止状態に移行したとき、すなわち、ACC電源停止状態信号が車載ネットワーク13へ出力されたとき、常に遮断装置50は、当該ACC電源停止状態信号に基づいて動作スタンバイ状態へ移行するように形成されている。そして、ユーザがスマートエントリー操作によってドアをロックすればいつでも遮断装置50は、検知波27に係る無線通信を遮断することができる。
これによって、ユーザは、駐停車したときに遮断装置50を起動し忘れることが無くなるので、リレーアタック防止効果を向上させることができる。
【0052】
セミオートモードは、上記のオートモードが無効に設定されている場合に、ACC電源停止状態信号が車載ネットワーク13上へ出力されているとき、所定の第2操作でモード切替スイッチ53を操作したときに遮断装置50が動作するモードである。
すなわち、セミオートモードは、ユーザがパワースイッチ24を所定の操作でオフにして、ACC電源45が停止している状態の下で、さらにユーザがモード切替スイッチ53を第2操作で操作した場合に、遮断装置50が無線通信を遮断する動作を行うように形成されている。
オートモードが無効に設定されている場合、遮断装置50がACC電源停止状態信号を車載ネットワーク13から取得した場合であっても、当該遮断装置は検知波27に係る無線通信を遮断する動作を行わない。そこで、第2操作を行ったとき、遮断装置50をドア31のセンサやスイッチに触れることによって、ドア31をロックするスマートエントリー操作に備えた動作スタンバイ状態に移行させることができる。
そして、動作スタンバイ状態の遮断装置50は、ユーザがドアハンドルのスイッチ又はセンサに触れるスマートエントリー操作でドア31をロックしたとき、車体ECU15が車載ネットワーク13へ出力するドアロック制御信号に基づいて、スマート動作禁止信号を車載ネットワークへ出力して、検知波27に係る無線通信を遮断する。
このように遮断装置50がセミオートモードで動作する場合、ユーザがスマートエントリー操作によってドア31をロックしたとき、遮断装置50が検知波27に係る無線通信を遮断するように構成されている。これによって、ユーザは、従来のスマートエントリー操作によってドア31をロックすることができるので、駐停車した後、違和感を覚えることなくドア31をロックして車から離れる一連の操作を行うことができ、同時に遮断装置50によって、検知波27に係る無線通信を遮断することができる。
また、セミオートモードは、ユーザがスマートエントリー操作を行ったとき、常に遮断装置50を動作させることができるオートモードと異なり、スマートエントリー操作によってドア31をロックするためにはその都度第2操作を行わなければならない。このように、セミオートモードで遮断装置50を動作させることによって、動作確認をその都度行うことができ、動作させることを忘れて車から離れてしまうようなことを防止することができるので、セキュリティ性を向上させることができる。
さらに、セミオートモードは、ユーザが第2操作を行うか否かというユーザの判断に任されていることから、検知波27による無線通信を遮断させる必要が無い場合には、あえて第2操作を行わずに無線通信を成立させたままにしておくことができ、またたとえば、第2操作を行わずに後述する鍵端末装置12を使ったマニュアルモードで操作して無線通信を即時遮断させても良い。このように、セミオートモードの場合は、ユーザの選択肢を増やすことができるので、遮断装置50をより一層使いやすくすることができる。
【0053】
オートモードの第1操作と、セミオートモードの第2操作は、たとえば、モード切替スイッチ53のプッシュスイッチを所定時間、たとえば5秒ほど長押しする操作である。
また、本実施例においては、遮断装置50にACC電源起動状態信号が入力されているときに第1操作を行い、オートモードが無効に設定されており、かつ、ACC電源停止状態信号が入力されているときに第2操作を行うことによって動作モードの切り替えを行うように構成した。しかし、これに限定されるものではなく、たとえば、第1操作と第2操作で長押しする時間を変えてモード切替を行っても良く、或いは、第1操作は2回長押し、第2操作は1回長押しといったように、プッシュスイッチを押す回数を変えてモード切替を行うようにしても良い。
【0054】
マニュアルモードは、鍵端末装置12のドアロックスイッチ60によってドア31をロックしたとき、遮断装置50が起動するモードである。
鍵端末装置12のドアロックスイッチ60をオンにしたとき、鍵端末装置12は、第2送信部64から、識別信号とドアロック要求信号を備える鍵制御波66を送信する。照合ECU14の第2受信部22で受信された鍵制御波66に係る識別信号付きドアロック要求信号は、当該照合ECU14で照合判定される。
照合結果が合致していたとき、識別信号付きドアロック要求信号は、車載ネットワーク13上へ出力され、車体ECU15はこれを車載ネットワーク13から取得する。車体ECU15は、識別信号付きドアロック要求信号に応じてドアロック制御信号を出力して、車両11のドアロック装置30を制御し、当該ドアロック装置30がドア31をロックする動作を行う。
一方、ドアロック制御信号は、車載ネットワーク13へ出力され、遮断装置50はこれを車載ネットワーク13から取得する。遮断装置50は、ドアロック制御信号に基づいて動作して、上記したように、スマート動作禁止信号を車載ネットワーク13上へ出力する。
マニュアルモードの場合、ユーザは鍵端末装置12のドアロックスイッチ60をオンにする操作を行うことによって、遮断装置50を動作させるようにした。これによって、ユーザは、鍵端末装置12を使用してドア31をロックするキーレスエントリー操作を行うことによって遮断装置50を動作させて、検知波27に係る無線通信を遮断することができる。
また好ましくは、オートモード又はセミオートモード下の動作スタンバイ状態時に、鍵端末装置12のドアロックスイッチ60をオンにしたときは、それらのモードに関わらずマニュアルモードに切り替えて遮断装置50を動作させて、検知波27に係る無線通信を遮断するようにしても良い。すなわち、本実施例によれば、遮断装置50の動作モードは、マニュアルモードがオートモード又はセミオートモードに優先するように設定されている。
【0055】
遮断装置50は、上記したオートモード、セミオートモード、マニュアルモードのいずれかで動作している場合であっても、ドア31が解錠されたとき、車体ECU15が車載ネットワーク13へ出力するドアアンロック制御信号に基づいて停止するように形成されている。
ただし、オートモード、セミオートモード、マニュアルモードのいずれかで動作している場合であっても、遮断装置50は、検知波27に係る無線通信を遮断しているので、検知エリア26は消滅しており、スマートエントリー操作を行うことができない。したがって、本実施例では、遮断装置50が検知波27に係る無線通信を成立させる動作を行うようにさせるため、鍵端末装置12のドアアンロックスイッチ60によってドア31を解錠するように構成されている。
【0056】
鍵端末装置12のドアアンロックスイッチ60をオンにしたとき、鍵端末装置12は、第2送信部64から、識別信号とドアアンロック要求信号を備える鍵制御波66を送信する。照合ECU14の第2受信部22で受信された鍵制御波66に係る識別信号付きドアアンロック要求信号は、当該照合ECU14で照合判定される。
照合結果が合致していたとき、識別信号付きドアアンロック要求信号は、車載ネットワーク13上へ出力され、車体ECU15はこれを車載ネットワーク13から取得する。車体ECU15は、識別信号付きドアアンロック要求信号に応じてドアアンロック制御信号を出力して、車両11のドアロック装置30を制御し、当該ドアロック装置30がドア31をアンロックする動作を行う。
一方、ドアアンロック制御信号は、車載ネットワーク13へ出力され、遮断装置50はこれを車載ネットワークから取得する。遮断装置50は、ドアアンロック制御信号に基づいて動作して、上記したように、スマート動作許可信号を車載ネットワーク13上へ出力する。
これによって、スマートキーシステム10は有効化するので、検知波27に係る検知エリア26が形成され、鍵端末装置12から応答波65によるレスポンス信号を受信して、パワースイッチ24をオンにすることでエンジン41を始動するスマートスタート操作を行うことができる。
【0057】
また、本実施例に係る遮断装置50は、ACC電源起動状態信号が車載ネットワーク13へ出力されている場合に、第1操作と異なる所定の第3操作でモード切替スイッチ53を操作したとき、タイマーモードの有効か又は無効かが設定されるようにしても良い。
タイマーモードは、遮断装置50が、検知波27に係る無線通信を遮断する前に、当該遮断装置50のスマート動作禁止信号の出力を所定時間中断して、遮断装置50が実際に検知波27に係る無線通信を遮断する動作を所定時間遅らせるようにしたモードである。
タイマーモードが有効であると設定されているとき、遮断装置50が車載ネットワーク13上を伝送しているドアロック制御信号を検知したとき、カウントダウンタイマーが動作を開始するように形成されている。当該カウントダウンタイマーは、本実施例では10秒間に設けられているが、これに限定されるものではなく、任意に設定可能である。
そして、カウントダウンタイマーがカウントダウンを終了したとき、タイマーが終了したことを報知するようにしても良い。当該報知には、たとえば、ヘッドライト又はルームランプを点滅させたり、車両11に設けられたスピーカ又はブザー或いはこれらに類する音声出力装置類(図示略)を鳴らすアンサーバック機能を流用しても良い。
音声出力装置類は、たとえば、車両11のドア31がロックされたとき、ユーザにロックされたことを知らせるアンサーバック機能に係るブザーが知られているがこれに限定されるものではなく、たとえば、所定のメッセージを流すようなスピーカであっても良い。
タイマーモードが有効であると設定されているときに上記音声出力装置を鳴らす場合、遮断装置50は、スマート動作禁止信号に所定の音声出力信号を含めて車載ネットワーク13へ出力するように形成されている。当該音声出力信号付きスマート動作禁止信号が上記音声出力装置類を制御するECU、たとえば、照合ECU14又は車体ECU15へ入力されたとき、音声出力信号に基づいて、音声出力装置類を所定のパターン音で鳴らす制御を行う。これによって、ドア31をスマートエントリー操作又はキーレスエントリー操作によってロックしたときのアンサーバック機能を利用して、遮断装置50が検知波27に係る無線通信を遮断したことをユーザに知らせることができる。
【0058】
上記の構成を有する遮断装置が組み込まれたスマートキーシステム10は、次のような処理工程にしたがって動作する。当該処理工程を添付した図面にしたがって説明する。
図4から
図7は本実施例に係る遮断装置を組み込んだスマートキーシステムの処理工程の概略を示すチャート図である。
【0059】
ステップS100は、遮断装置50の処理工程を開始するステップである。ステップS100の時点で、スマートキーシステム10は有効に動作している。すなわち、少なくともACC電源45は起動中であって、電源ECU17はACC電源起動状態信号を出力し、鍵端末装置12は車室内の検知エリア26fに存在していることが、本実施例に係る遮断装置50の処理工程を開始する前提条件となる。
ここで、
図4に示すフローチャート及び以下の説明において、ユーザが、ドアハンドルに設けられたスイッチ、又はセンサに触れるスマートエントリー操作のうち、ドア31をロックすることを「Sロック」と示し、アンロックすることを「Sアンロック」と示す。
また、ユーザが、鍵端末装置12のドアロックスイッチ60をオンにしてドア31をロックすることを「Rロック」と示し、ドアアンロックスイッチ61をオンにしてドア31をアンロックすることを「Rアンロック」と示す。
【0060】
ステップS105は、遮断装置50が、車載ネットワーク13上を伝送しているACC電源起動状態信号を検知する処理が行われるステップである。
ステップS110は、ACC電源起動状態信号が検知されているとき、すなわち、ACC電源45がオンの場合に、モード切替スイッチ53が第1操作で入力操作される処理が行われるステップである。当該第1操作によって、ステップS115では、オートモードの設定を有効又は無効に切り替える処理が行われる。
【0061】
ステップS120は、ACC電源起動状態信号が検知されているとき、すなわち、ACC電源45がオンの場合に、モード切替スイッチ53が、第1操作と異なる第3操作で入力操作される処理が行われるステップである。当該第3操作によって、ステップS125では、タイマーモードの設定を有効又は無効に切り替える処理が行われる。
【0062】
ステップS130は、遮断装置50が、車載ネットワーク13上を伝送しているACC電源停止状態信号を検知する処理が行われるステップである。遮断装置50が、ACC電源停止状態信号を検知したとき、ACC電源45はオフになっている。
【0063】
ステップS135は、オートモードの設定が有効であるか無効であるかを判定する処理が行われるステップである。有効である場合(Y判定)には、ステップS140へ移行してLED54を点灯させる処理が行われる。無効である場合(N判定)には、ステップS170へ移行する。
【0064】
ステップS140でLED54が点灯した後、ステップS145へ移行する。
ステップS145は、「Rロック」でドア31をロックしたか否かを判定する処理を行うステップである。「Rロック」、すなわち、鍵端末装置を用いてドア31をロックした場合は、ステップS150のマニュアルモードへ移行する。当該マニュアルモードに係る処理は、
図5にしたがって、後述する。
「Rロック」していないときは、ステップS155に移行する。
【0065】
ステップS155は、「Sロック」でドア31をロックしたか否かを判定する処理を行うステップである。「Sロック」、すなわち、スマートエントリー操作によってドア31をロックした場合は、ステップS160のオートモードへ移行する。当該オートモードに係る処理は、
図6にしたがって、後述する。
「Sロック」していないときは、ステップS165へ移行する。
【0066】
ステップS165は、遮断装置50が、車載ネットワーク13上を伝送するACC電源起動状態信号を検知したか否かを判定するステップである。検知したとき、すなわち、ACC電源45がオンのとき、「Rロック」又は「Sロック」に係る判定を待たず、ステップS105の後に帰還する処理が行われる。検知していないときは、ステップS130でACC電源停止状態信号を検知しているので、ACC電源45がオフの状態が維持されている限り、ステップS140のLED点灯処理後に帰還し、「Rロック」又は「Sロック」に係る判定処理が繰り返される。
【0067】
一方、オートモードが無効に設定されているとき(ステップS135「N」判定)、移行したステップS170では、「Rロック」でドア31をロックしたか否かを判定する処理が行われる。
「Rロック」、すなわち、鍵端末装置を用いてドア31をロックした場合は、ステップS150のマニュアルモードへ移行する。当該マニュアルモードに係る処理は、
図5にしたがって、後述する。
「Rロック」していないときは、ステップS175に移行する。
【0068】
ステップS175は、モード切替スイッチ53を第2操作で入力操作したか否かを判定する処理を行うステップである。オートモードが無効に設定されており、かつ、ACC電源停止状態信号が検知されている場合、すなわち、ACC電源45がオフ状態の場合に、モード切替スイッチ53を第2操作で入力操作したとき、ステップS180へ移行して、遮断装置50はセミオートモードで動作するように形成されている。当該セミオートモードに係る処理は、
図7にしたがって、後述する。
モード切替スイッチ53を第2操作で入力操作していない場合は、ステップS185へ移行する。
【0069】
ステップ185は、ステップS165と同様に、遮断装置50が、車載ネットワーク13上を伝送するACC電源起動状態信号を検知したか否かを判定するステップである。検知したとき、すなわち、ACC電源45がオンのとき、「Rロック」又はモード切替スイッチ53の第2操作に係る判定を待たず、ステップS105の後に帰還する処理が行われる。検知していないときは、ステップS130でACC電源停止状態信号を検知しているので、ACC電源45がオフの状態が維持されている限り、ステップS170の「Rロック」に係る判定の前に帰還し、「Rロック」又はモード切替スイッチ53の第2操作に係る判定処理が繰り返される。
【0070】
ステップS190は、LED54を消灯させる処理を行うステップである。上記のステップS140の他、後述する各処理においてもLED54が点灯、点滅している場合があるので、本ステップS190では、ステップS185又はステップS165でACC電源45がオンになっていることを受けて、LED54を消灯してリセットする処理を行う。
【0071】
次にステップS150に係るマニュアルモードについて、
図5にしたがって説明する。
鍵端末装置12から識別信号付きドアロック要求信号が送信され、照合ECU14で受信したとき、遮断装置50は、マニュアルモードで動作するように形成されている。
すなわち、マニュアルモードは、ステップS200で、遮断装置50が、車載ネットワーク13上を伝送している識別信号付きドアロック要求信号を検知する処理を行い、これに応答して、車体ECU15が車載ネットワーク13上へ出力したドアロック制御信号を、遮断装置50がステップS205で検知する処理を行って動作するように形成されている。
遮断装置50がマニュアルモードで動作を始めたとき、ステップS210は、第1点滅パターンでLED54を点滅させる処理を行うステップである。
第1点滅パターンは、視覚的にゆっくり点滅していると感じるような周期で点滅するパターンであって、本実施例では、0.1秒間点灯し、2秒間消灯する点滅周期に設定されている。第1点滅パターンで点滅しているLED54は、遮断装置50が検知波27の発信を停止させて、車両11と鍵端末装置12との間の無線通信を遮断することによって、スマートキーシステム10が無効化していることをユーザに報知するものである。
なお、第1点滅パターンは、本実施例の設定例に限定されるものではなく、任意に設定可能であり、たとえば、他の盗難防止装置で広く用いられている点滅パターンと同様な点滅パターンに設定しても良い。
【0072】
ステップS215は、遮断装置50がマニュアルモードで動作を始めたとき、車載ネットワーク13上へスマート動作禁止信号を出力する処理を行うステップである。これによって、検知波27の発信が停止され、当該検知波27に係る車両11と鍵端末装置12間の無線通信は遮断され、スマートキーシステム10は無効化する。
【0073】
ステップS220は、検知波27が停止しているときに行われる処理であって、「Rアンロック」、すなわち、鍵端末装置12のドアアンロックスイッチ61を用いてドア31がアンロックされたか否かを判定する処理を行うステップである。
「Rアンロック」されていない場合、ステップS220の判定処理を繰り返すように形成されている。一方、「Rアンロック」されたとき、ステップS225に移行して、LED54を消灯させる処理が行われる。
【0074】
ステップS225でLED54を消灯させる処理が行われた後、続くステップS230は、遮断装置50が、車載ネットワーク13へ、スマート動作許可信号を出力する処理を行うステップである。これによって、検知波27の発信が開始され、当該検知波27に係る車両11と鍵端末装置12間の無線通信が成立し、スマートキーシステム10が有効化する。
スマートキーシステム10が有効化した後、ステップS235に移行して本処理工程は終了する。
【0075】
次にステップS160に係るオートモードについて、
図6にしたがって説明する。
オートモードは、
図4に示すように、ステップS115でオートモードが有効である設定されている場合であって、かつ、ステップS155で「Sロック」によってドア31をドアロックしたと判定されたとき、動作するように形成されている。すなわち、
図6に示すように、ステップS156のスマートエントリー操作でドア31をドアロックする入力操作という処理が行われたとき、ステップS160へ移行し、さらにステップS250へ移行する。
【0076】
ステップS250は、スマートエントリー操作に伴って、車載ネットワーク13上を伝送しているドアロック要求信号を遮断装置50が検知する処理を行うステップである。これに基づいて、当該処理の後、遮断装置50はオートモードで動作し、自動的に検知波27の発信を停止させて、車両11と鍵端末装置12の間の無線通信を遮断する処理を行う。
ここで、マニュアルモードとオートモードとの相違点は、遮断装置50が車載ネットワーク13から取得して検知するドアロック要求信号が識別信号を有しているか否かである。識別信号を有している場合は、鍵端末装置12から発信されたドアロック要求信号と判断され、有していない場合は、スマートエントリー操作に伴って車載ネットワーク13上を伝送しているドアロック要求信号と判断される。
なお、本実施例上では、鍵端末装置12からのドアロック要求信号と、スマートエントリー操作によるドアロック要求信号の判定を識別信号の有無によるものとして例示したが、これに限定されるものではなく、各種判定方法又は車載ネットワーク13上を伝送している各種信号を適宜選択して、鍵端末装置12からの信号であるか否か、或いはスマートエントリー操作によるものか否かを判定するようにしても良い。
【0077】
ステップS255からステップS285は、
図5に示した上記のマニュアルモードの場合のステップS205からステップS235と対応し、処理動作が同様であるから説明を省略する。
【0078】
次にステップS180に係るセミオートモードについて、
図7にしたがって説明する。
セミオートモードは、
図4に示すように、ステップS115でオートモードが無効であると設定されている場合であって、かつ、ステップS175でモード切替スイッチ35を第2操作で入力操作したと判定されたとき、動作するように形成されている。
オートモードとセミオートモードは、遮断装置50が、車載ネットワーク13上を伝送しているACC電源停止状態信号を検知したとき、いわゆるACC電源45がオフ状態のときにスマートエントリー操作でドア31をロックすると、ドアロック制御信号に基づいて遮断装置50が検知波27に係る無線通信を遮断することについては同様である。
しかし、セミオートモードの場合は、オートモードと異なり、一旦、モード切替スイッチ53の第2操作という入力操作を間に置くことによって、本実施例に係る遮断装置50を使用するか否かユーザに判断を委ねられる点が相違している。これによって、たとえば、ユーザが車両11に対して目の届く範囲で、短時間当該車両11から離れるといったような盗難に警戒する必要が極めて低い場合に、第2操作を行わずにスマートエントリー操作でドア31を一時的にロックして離れ、戻ってきたときにスマートエントリー操作でドア31をアンロックして乗車することができる。
一方で、たとえば、家の車庫又は不特定多数の人間が出入りする駐車場に長時間停める時、第2操作を行ってからセミオートモード下でスマートエントリー操作を行ってドア31をロックすることによって、遮断装置50は、検知波27に係る無線通信を遮断することができる。
このように、同じスマートエントリー操作を行ったとしても、セミオートモードに係る第2操作を行ったか否かで、遮断装置50が検知波27に係る無線通信を遮断するか否かについて柔軟に対応させることができ、利便性を向上させることができる。
【0079】
ステップS300は、「Sロック」、すなわち、スマートエントリー操作でドア31をロックしたか否かを判定する処理を行うステップである。「Sロック」した場合には、ステップS305へ移行する。一方、「Sロック」してない場合は、「Sロック」が行われるまで当該判定処理が繰り返される。
【0080】
ステップS305のドアロック要求信号を検知する処理と、ステップS310のドアロック制御信号を検知する処理は、
図6に示したオートモードのステップS250とS255に対応し、処理動作が同様であるから説明を省略する。
【0081】
ステップS310に続くステップS315は、
図4のステップS125で有効か又は無効に設定したタイマーモードが有効に設定されているか否か判定する処理を行うステップである。タイマーモードが無効であると設定されている場合(N判定)は、ステップS320へ移行する。一方、タイマーモードが有効になっている場合(Y判定)は、ステップS350のタイマーモードへ移行する。タイマーモードについては後述する。
【0082】
ステップS320からステップS345は、
図5に示した上記のマニュアルモードの場合のステップS210からステップS235と対応し、処理動作が同様であるから説明を省略する。
【0083】
ステップS350のタイマーモードは、遮断装置50が、検知波27に係る無線通信を遮断する前に、当該遮断装置50のスマート動作禁止信号の出力を所定時間中断して、遮断装置50が実際に検知波27に係る無線通信を遮断する動作を所定時間遅らせるようにしたモードである。
図4に示すステップS125でタイマーモードが無効に設定されており、さらに
図7に示すステップS315でタイマーモードが無効に設定されていると判定された場合、セキュリティ効果を高めるために、セミオートモードで動作している遮断装置50は、スマートエントリー操作による「Sロック」処理後、車載ネットワーク13へスマート動作禁止信号を瞬時に出力することが好ましい。これによって、照合ECU14へ、スマート動作禁止信号を瞬時に入力することができ、ドアロックと略同時に検知波26に係る無線通信を遮断することができる。
一方、高いセキュリティ効果を求めず、利便性を高めたい場合は、タイマーモードを有効にして、スマート動作禁止信号の入力を一時的に遅らせてから、スマートキーシステム10を無効化するようにしても良い。
タイマーモードが有効になっている場合、ユーザが「Sロック」処理を行ってドア31をロックして、車から離れた後、忘れ物等に気付いて一時的に車へ戻ってきても、スマートキーシステム10は有効に動作している。そのため、ユーザはスマートエントリー操作に係る「Sアンロック」処理でドア31をアンロックさせることができるので、セキュリティ性は低くなるものの利便性を高めることができる。
【0084】
タイマーモードでは、ステップS355からステップS365の処理が行われる。
ステップS355は、LED54を第2点滅パターンで点滅させる処理を行うステップである。
第2点滅パターンは、視覚的に第1点滅パターンよりも早いと感じるような周期で点滅するパターンであって、本実施例においては、0.2秒間点灯し、0.2秒消灯する点滅周期に設定されている。LED54は、第2点滅パターンでカウントダウンタイマーで設定した時間と同じ時間、たとえば、本実施例においては10秒間点滅するように設定されている。第2点滅パターンで点滅しているLED54は、遮断装置50がタイマーモードで動作中であることをユーザに報知することができる。
【0085】
ステップS360は、カウントダウンタイマーがカウントを開始する処理を行うステップである。
カウントダウンタイマーのカウント開始は、ステップS310のドアロック制御信号を検知をトリガとして処理が行われる。当該カウントダウンタイマーは、本実施例では10秒間に設けられているが、これに限定されるものではなく、任意に設定可能である。
【0086】
ステップS365は、カウントダウンタイマーがカウントダウンを終了する処理を行うステップである。
ここで、タイマーが終了したことを報知するようにしても良い。当該報知は、たとえば、ヘッドライト(図示略)又はルームランプ(図示略)を点滅させる光によるもの、又は車両11に設けられたスピーカ又はブザー或いはこれらに類する音声出力装置類(図示略)を鳴らす音声による方法があるが、適宜選択可能である。
【0087】
ステップS365でタイマーモードが終了したとき、セミオートモードに係るステップS320の処理に移行する。
ステップS320からステップS345は、
図5に示した上記のマニュアルモードの場合のステップS210からステップS235と対応し、処理動作が同様であるから説明を省略する。
【0088】
本実施例に係るスマートキーシステム10によれば、従来のスマートキーシステム10に遮断装置50を組み込み、第1送信部20から周期的に発信する検知波27を停止させて、検知エリア26を消滅させるように、遮断装置50が検知波27に係る無線通信を遮断するようにした。
これによって、鍵端末装置12を所持携帯したユーザが車両11に近づいて検知エリア26内に入っても検知波27に係る無線通信は遮断されてるので、スマートエントリー操作でドア31をアンロックすることができない。また、同様にエンジン41を始動することもできない。そのため、車両11と鍵端末装置12との間に検知波27と応答波65を中継する中継器を設置したとしても、リレーアタックによる車両盗難を防止することができ、セキュリティ効果を高めることができる。
さらに、検知波27に係る無線通信を車両11側で遮断して鍵端末装置12が検知エリア26内で反応しないようにしたことによって、電波を遮蔽したり、電波の漏洩を防ぐために、鍵端末装置12を金属製の容器に入れて保管したりする必要が無くなるので、利便性を高めることができる。
【符号の説明】
【0089】
10…スマートキーシステム、11…車両、12…鍵端末装置、
13…車載ネットワーク、14…照合ECU、15…車体ECU、16…エンジンECU、17…電源ECU、
20…第1送信部、21…第1アンテナ群、22…第2受信部、23…第2アンテナ、24…パワースイッチ、25…RFID用アンテナ、26…検知エリア、27…検知波、
30…ドアロック装置、31…ドア、32…ラゲージコンパートメントドア、
41…エンジン、
45…ACC電源、46…IG電源、
50…遮断装置、51…入出力端子、52…スイッチ部、53…モード切替スイッチ、54…LED、55…外部入出力端子、
60…ドアロックスイッチ、61…ドアアンロックスイッチ、62…ラゲージオープンスイッチ、63…第1受信部、64…第2送信部、65…応答波、66…鍵制御波、67…トランスポンダ。