(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-02
(45)【発行日】2022-05-13
(54)【発明の名称】高い粘度を有するごま組成物
(51)【国際特許分類】
A23L 25/00 20160101AFI20220506BHJP
A23L 29/256 20160101ALI20220506BHJP
A23L 29/269 20160101ALI20220506BHJP
A23L 29/238 20160101ALI20220506BHJP
A23G 3/34 20060101ALI20220506BHJP
【FI】
A23L25/00
A23L29/256
A23L29/269
A23L29/238
A23G3/34 106
(21)【出願番号】P 2019232196
(22)【出願日】2019-12-24
【審査請求日】2020-07-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000006770
【氏名又は名称】ヤマサ醤油株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山谷 好生
(72)【発明者】
【氏名】向山 信
【審査官】安孫子 由美
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/084848(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/080233(WO,A1)
【文献】特開2019-088338(JP,A)
【文献】特開昭51-121544(JP,A)
【文献】特開2004-159530(JP,A)
【文献】特開2017-099307(JP,A)
【文献】特開2013-138661(JP,A)
【文献】特開2019-193678(JP,A)
【文献】特開2018-174798(JP,A)
【文献】特開平05-030947(JP,A)
【文献】特開昭63-014668(JP,A)
【文献】国際公開第2015/037294(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第109588680(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第103783355(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23
A21
(57)【特許請求の範囲】
【請求項5】
米加工食品に用いられることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載のごま組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い粘度を有するごま組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ごま成分を含有した調味料は、ごま独特の風味が好まれ、和風調味料の代表的なものとなっており、野菜類、畜肉類、魚介類、菓子類、米飯類、麺類等に対して広く使用されている。
【0003】
菓子類、特に和菓子においては、ごまを用いた組成物が広く用いられている。例えば、団子に利用する場合には、団子の上にごまペーストを載せる、団子の中にごまペーストを包み込むなど、様々な態様で利用されている。そのため、団子と一体となって加工ないし喫食できる性状であることが好ましく、高い粘度を有するごま組成物が求められている。
【0004】
ごまを含有する組成物は、キサンタンガム等の増粘多糖類を含有する場合に、ゲル化する性質が知られている。組成物のゲル化は、容器詰めの際などに著しく取扱い性を悪化させるため、工業上好ましくないものと考えられてきた。さらに、ゲル化したごま組成物は、ごま組成物中の成分が分離するなど、ゲル状組成物としての応用も期待できなかった。
そのため、当業者が容器詰めごま組成物を製造する際には、増粘多糖類との併用を避ける、ごまと増粘多糖類との配合比率をゲル化しないよう調整する(特許文献1)、安定化剤としてセルロース系安定剤を用いる(特許文献2)、エタノールを添加することによりゲル化を抑制する(特許文献3)、ゲル化を引き起こさない特殊な増粘多糖類を使用する(特許文献4)など、粘度を抑制するために様々な工夫がなされていた。
【0005】
ごま組成物の粘度抑制については、上記の通り多くの先行技術がある一方で、高粘度化、特に産業上利用可能となる態様で粘度を適切に制御する技術については、ほとんど知見がないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平4-16161公報
【文献】特開2004-159530公報
【文献】特開2006-25658公報
【文献】特開2007-159571公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、適切に高い粘度を付与されたごま組成物を提供すること、及び粘度を高度に制御可能なごま組成物の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、ごま組成物に特定の増粘多糖類と加工澱粉とを含有させることにより、ごま組成物の粘度を高度に制御できることを見出し、さらに検討を進めることにより、本発明を完成させた。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、ごま組成物に特定の増粘多糖類を0.01%(w/v)以上、かつ加工澱粉を1.0%(w/v)以上含有させることにより、喫食時に高い粘度を有するごま組成物が提供される。
【0010】
本発明の一態様によれば、本発明のごま組成物は、充填時に粘度を抑制することができるため、容器詰めが容易であり、工業的に有用である。
【0011】
本発明の一態様によれば、ごま組成物に特定の増粘多糖類と加工澱粉を含有させることにより、充填時には高粘度化を抑制しつつ、喫食時には高粘度化するごま組成物の製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、以下のものである。
[1]下記(1)~(3)を満たすことを特徴とする、ごま組成物;
(1)増粘多糖類として、キサンタンガム、タマリンドガム、カラギーナンより選ばれる少なくとも1種を、0.01~0.2%(w/v)含有する、
(2)加工澱粉を1.0~5.0%(w/v)含有する、
(3)B型粘度計で測定した喫食時の粘度が100~500Pa・sである。
[2]さらに寒天を含むことを特徴とする、[1]に記載のごま組成物。
[3]容器詰めされていることを特徴とする、[1]又は[2]に記載のごま組成物。
[4]容器詰め時の粘度が、喫食時の粘度より50Pa・s以上低いことを特徴とする、[3]に記載のごま組成物。
[5]米加工食品に用いられることを特徴とする、[1]から[4]のいずれか一項に記載のごま組成物。
[6]下記(A)~(C)を満たすことを特徴とする、ごま組成物の製造方法;
(A)増粘多糖類として、キサンタンガム、タマリンドガム、カラギーナンより選ばれる少なくとも1種を含有する、
(B)加工澱粉を含有する、
(C)充填時の温度が30℃以上である。
[7]下記(C’)をさらに満たすことを特徴とする、[6]に記載のごま組成物の製造方法;
(C’)容器詰めの際のごま組成物の温度が70℃以上である。
【0013】
以下、本発明の高い粘度を有するごま組成物について、詳細に説明する。
【0014】
本願明細書でいう「ごま組成物」とは、ごまを主要原料の一つとする組成物を意味する。本願でいう「粘度の高いごま組成物」とは、喫食時に高い粘度、具体的には100Pa・s(=100,000mPa・s)以上であるごま組成物のことを意味する。当該ごま組成物は、具体的な形態としてペースト状やゲル状といった性状を示す。
【0015】
本発明の一態様は、原料として特定の増粘多糖類と加工澱粉を含有するごま組成物である。後述する特定の増粘多糖類と、加工澱粉とを含有することにより、喫食適性を維持したまま、ごま組成物の粘度を顕著に高めることができる。
【0016】
本発明のごま含有量に関して特に制限はないが、増粘多糖類及び加工澱粉の添加による高粘度化効果を十分に得るため、1~80%(w/v)が好ましい。さらに、ごま組成物としての利用しやすさ及び製造のしやすさから、5~70%(w/v)がより好ましく、10~50%(w/v)がより好ましく、20~40%(w/v)がより好ましい。
【0017】
本発明において使用するごまの種類としては、食用に供されるものであれば、いずれも使用することができる。具体的には、白ごま、金ごま、黒ごまなどから選ばれる1種を用いればよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0018】
本発明において用いられるごまは、食用に供される範囲内で、何らかの処理を行われていてもよく、なんらの処理も行われていなくてもよい。処理の具体例としては、乾燥処理、破砕処理、焙煎処理等が挙げられる。すなわち、本発明には、乾燥ごま、炒りごま、皮むき乾燥ごま、皮むき炒りごま、切りごま、ひねりごま、擂りごま、搗きごま、練りごま、ごまペーストなど、食用として市販されている態様のものであれば、問題なく使用することができる。中でも、ごまに含まれる成分が特定の増粘多糖類と反応して高粘度化が進行しやすいことから、破砕処理されたごまである切りごま、ひねりごま、擂りごま、搗きごま、練りごま、ごまペーストを用いることが好ましい。
【0019】
本発明は、ごま中の成分と反応して高粘度化する特定の増粘多糖類として、キサンタンガム、タマリンドガム、カラギーナンから選ばれる少なくとも1種を含有する。中でも、入手容易性及び製造時の扱いやすさの観点から、キサンタンガムを含有することが好ましい。
【0020】
本発明における上記特定の増粘多糖類の含有量は、0.01~0.15%(w/v)であり、好ましくは0.02~0.10%(w/v)である。上記範囲内とすることにより、ごま組成物の粘度を好適に調整することができる。0.2%(w/v)以上含有させた場合には、ごま組成物の高粘度化が迅速に進んでしまい、充填適性が損なわれるため、工業的製造に適しない。
【0021】
本発明に配合される加工澱粉は、食用に供されるものであれば特に限定はない。馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉及びワキシーコーンなどの原料澱粉に、エステル化、酸化及びエーテル化などの化学的加工を施したものが例示される。具体的にはリン酸架橋澱粉、酢酸澱粉、ヒドロキシプロピル澱粉、オクテニルコハク酸澱粉ナトリウム、酸化澱粉などを用いることができる。これらの加工澱粉は単独で添加しても、2種以上を組み合わせて添加してもよい。
【0022】
本発明における加工澱粉の含有量は、1.0~5.0%(w/v)であり、好ましくは2.0~4.0%(w/v)である。当該範囲内とすることによって、調味料の粘度を好適に制御することが可能となる。一方で、5.0%(w/v)以上含有する場合には、ごま組成物に加工澱粉に由来する異味が生じてしまうため、好ましくない。
【0023】
本発明のごま組成物には、キサンタンガム、タマリンドガム、カラギーナン以外の増粘剤も含有させることができる。含有させることができる増粘剤としては、食用に供されるものであれば特に限定はないが、グアーガム、ローカストビーンガム、アラビアガム、アルギン酸類、ペクチン、プルラン、サイリウムシードガム、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、結晶セルロース、寒天、グルコマンナン等が例示される。上記に例示した増粘剤の添加は、本発明の粘度付与のためには必須ではないが、レオロジー特性の改良など、性状改善効果を期待することができる。
【0024】
特に、本発明のごま組成物に寒天を配合した場合には、ロット間の粘度の振れが抑制され、ごま組成物がなめらかな口当たりとなることから、本発明のごま組成物は寒天を含有することがより好ましい。
【0025】
本発明のごま組成物は、特定の増粘多糖類及び加工澱粉を含有することにより、喫食時には100Pa・s以上となる。本発明のごま組成物の喫食時粘度は、喫食時に食材から流れ落ちず一体となって絡むため、125Pa・s以上であることがより好ましく、150Pa・s以上であることがより好ましい。一方で、調理時や喫食時に取扱い性が容易であるという観点から、500Pa・s以下であることが好ましく、400Pa・s以下であることがより好ましい。したがって、本発明のごま組成物の粘度は、100Pa・s以上が好ましく、125~500Pa・sがより好ましく、150~400Pa・sがより好ましい。
【0026】
本願における粘度の測定は、以下の条件で行われる。
B型粘度計:東機産業株式会社製 TV-10形粘度計
ローター:No.4
回転数:1.5rpm
容器:300mLビーカー
温度:25℃
条件:測定操作開始から30秒後、粘度の数値が安定したところで測定を実施した。
【0027】
本発明のごま組成物が比較的低粘度、すなわち100~250Pa・sの範囲内である場合には、本発明のごま組成物は流動性をもったペースト状の調味料として使用することができ、食材にかける、載せるといった使用態様を採用することができる。
本発明のごま組成物が比較的高粘度、すなわち250~500Pa・sの範囲内である場合には、本発明のごま組成物は流動性のないゲル状の調味料として使用することができ、成形する、食材を包むといった使用態様を採用することが可能となる。
【0028】
本発明のごま組成物には、上記の原料の他にも、任意の原料を配合することができる。配合可能な原料としては、例えば、野菜、肉、魚介、果物、穀物等の具材、醤油・味噌・魚醤等の発酵調味料、食酢・クエン酸等の酸味料、砂糖・液糖・水あめ等の糖類、菜種油・ごま油・コーン油・綿実油・サフラワー油・オリーブ油・紅花油・大豆油・パーム油・魚油等の動植物油及びこれらの精製油、グリセリン脂肪酸エステル・ポリグリセリン脂肪酸エステル・ソルビタン脂肪酸エステル等の乳化剤、グルタミン酸ナトリウム・グアニル酸ナトリウム・イノシン酸ナトリウム等のうま味調味料、動植物に由来するだし類・エキス類、果汁、食塩、みりん、酒類、アルコール、香辛料、デンプン、増粘剤、乳化剤、着色料、香料等が挙げられる。
【0029】
本発明の一態様では、ごま組成物が容器詰めされていることを特徴とする。本発明に用いることができる容器としては、市販されている調味料用容器であれば特に制限はなく、具体的にはレトルトパウチ、ペットボトル、ビン、缶、紙パック、アルミパウチ、ビニール袋、バッグインボックス、樹脂容器などを例示することができるが、これらに限定されない。中でも、容器を外側から押すことで高粘度の組成物を押し出すことができる点から、レトルトパウチ、ペットボトル、紙パック、アルミパウチ、ビニール袋、バッグインボックス、樹脂容器が好ましく、容器強度と容量のバランスの観点から、バッグインボックスの形態であることが好ましい。
【0030】
本発明のごま組成物は、野菜類、畜肉類、魚介類、菓子類、米飯類、麺類等に対して広く使用することができるが、特に餅や団子などの米加工食品等に対して好適である。米加工食品とは、米、うるち米及び/又はもち米を主原料とし、これを潰したり搗いたものを、適宜蒸す・ゆでる・焼く・揚げるなどの加熱工程に処し、味付けしたものをいう。具体的には、餅、団子、せんべいなどが例示される。
【0031】
本発明の一態様として、粘度を高度に制御可能な、ごま組成物の製造方法が提供される。
【0032】
本発明のごま組成物の製造方法は、前記の特定の増粘多糖類と加工澱粉を使用する以外、常法により製造することができる。例えば、前記増粘多糖類又は加工澱粉の少なくとも一方を除いた原料を、加熱可能な撹拌漕中の水に添加して撹拌溶解した後、増粘多糖類及び/又は加工澱粉を添加し、更に撹拌混合した後、容器充填する方法などを挙げることができる。
【0033】
本発明のごま組成物を製造する際にあっては、撹拌操作を続けることが好ましい。撹拌操作を止めた場合には、組成物中のごまが沈殿してしまい、製品としての価値が著しく低下してしまう危険性があるためである。
【0034】
本発明のごま組成物を製造する際にあっては、前記増粘多糖類及び/又は加工澱粉を加えた後、高粘度化を遅延させる目的で、加熱操作を行うことが好ましい。ごま組成物の温度としては、30℃以上であることが好ましく、50℃以上であることがより好ましく、70℃以上であることがより好ましく、80℃以上であることがより好ましい。上記加熱操作は、品質に顕著な悪影響を与えない範囲で限定なく行うことができる。組成物全体に熱が行きわたるには時間がかかるため、15分以上であることが好ましく、30分以上であることがより好ましく、60分以上であることがより好ましい。加熱状態が続くと組成物品質の劣化や高粘度化のリスクが高まることから、組成物を70℃以上とする時間は24時間以内が好ましく、12時間以内がより好ましく、6時間以内がより好ましい。
【0035】
本発明のごま組成物を容器詰めする際には、流動性を高める目的で、30℃以上に加熱することが好ましく、50℃以上に加熱することがより好ましく、70℃以上に加熱することがより好ましく、80℃以上に加熱することがより好ましい。
【0036】
上記の工程を適宜組み合わせることで、本発明のごま組成物は、喫食時の粘度と比較して容器詰め時の粘度を抑制することができる。本発明のごま組成物が容器詰めされるときの具体的な粘度としては、200Pa・s以下、より好ましくは150Pa・s以下、より好ましくは125Pa・s以下、より好ましくは100Pa・s以下、より好ましくは75Pa・s以下、より好ましくは50Pa・s以下とすることができる。なお、充填時の粘度を測定する際には、充填時の温度条件下で測定する。
【0037】
本発明のごま組成物の喫食時の粘度は、容器詰め時の粘度より、50Pa・s以上増大していることが好ましく、75Pa・s以上増大していることがより好ましく、100Pa・s以上増大していることがより好ましい。喫食時の粘度は、容器詰め時の粘度の1.5倍以上であることが好ましく、2倍以上であることがより好ましく、3倍以上であることがより好ましい。容器詰め時の粘度は、喫食時の粘度の0.67倍以下であることが好ましく、0.5倍以下であることがより好ましく、0.33倍以下であることがより好ましい。
【実施例】
【0038】
以下に実施例を記載するが、本願発明は以下に記載の内容に限定されないことは明らかである。
【0039】
(実験例1)本発明の応用例としての和菓子用ごま組成物の調製
下記に記載の工程により、和菓子用ごま組成物を調製した。
始めに、糖類650質量部、ごま破砕物309質量部、アルコール25質量部、塩12質量部をタンクに投入し、撹拌した。70℃以上に加温しつつ、適宜水を加えて総量を調整し、ごまベース1200質量部を調製した。
当該ごまベースに対して、下記表1に示す最終濃度となるように、キサンタンガム及び加工澱粉(ワキシーコーン加工澱粉)、寒天を添加し、加熱撹拌することで、ごま組成物を調製した。
【0040】
【0041】
当該組成物を、90~95℃となるよう15分間加熱及び撹拌した後、70℃以上を維持した状態で容器(ペットボトル)に充填し、一晩放冷することで、実施例1~3及び比較例1~3の和菓子用ごま組成物を得た。
【0042】
得られた各組成物の充填前及び放冷後の粘度を、B型粘度計を用いて測定した。充填前の試料には、キサンタンガム及び加工澱粉、寒天を添加し、十分に混合された直後のものを用いた。放冷後の試料には、一晩放冷し、室温となったものを用いた。
【0043】
粘度の測定条件は、以下に記載の通りである。
B型粘度計:東機産業株式会社製 TV-10形粘度計
ローター:No.4
回転数:1.5rpm
容器:300mLビーカー
温度:25℃
条件:測定操作開始から30秒後、粘度の数値が安定したところで測定を実施した。
【0044】
なお、粘度測定において加熱撹拌時ないし充填時と同じ温度条件を維持再現することは難しいことから、本実験例においては、充填前のごま組成物粘度として25℃での粘度を測定した。
【0045】
得られた各ごま組成物の充填前及び一晩放冷後の粘度は、以下の表2に示す通りであった。
【0046】
【0047】
充填前(25℃)における粘度と、充填時(70℃以上)の粘度には相関が見られ、充填前で低粘度であるものは充填時にも低粘度であり、充填前で高粘度であるものは充填時にも高粘度であった。また、充填前(25℃)の粘度と比較して、加温された充填時(70℃以上)の粘度は明らかに低く、実施例1~3においては、充填時粘度は充填前粘度の半分程度であると考えられた。
【0048】
上記実施例1~3及び比較例1,2のいずれにおいても、容器詰め時には高粘度化しておらず、容易に容器詰めすることができた。比較例3においては、加温しているにも関わらず、容器詰め時には高粘度化しており、容器詰め作業は困難であった。このことから、キサンタンガム等の増粘多糖類を0.2%(w/v)以上含有させた場合には、高粘度化が迅速に進んでしまい、充填適性が損なわれることが明らかとなった。
【0049】
また、上記実施例の充填前及び放冷後の粘度の比較から、本発明のごま組成物を70℃以上に加熱することで、ごま組成物の充填時の粘度を、喫食時の粘度の半分以下にまで粘度を抑制できることが明らかとなった。
【0050】
(実験例2)実験例1で得られたごま組成物の評価
上記で得られた各種ごま組成物を、団子の上に載せて喫食し、食材との絡み、官能の観点から、評価を行った。評価の結果を以下表3に示す。
【0051】
【0052】
実施例1のごま組成物は、ある程度の流動性を保ちつつ、団子に乗せた際には流れ落ちず、団子を持ち上げた際には団子とともに引き上げられ数秒後に滴り落ちる程度の、良好な食材との絡み性を有していた(表3中の食材との絡み性:○)。さらに、ごま組成物の官能としても、ごまの濃厚な風味を楽しむことができ、良好であった(表3中の官能評価:○)。
【0053】
実施例2のごま組成物は、実施例1と同様に、ある程度の流動性を保ちつつ、団子に乗せた際には流れ落ちず、団子を持ち上げた際には団子とともに引き上げられ数秒後に滴り落ちる程度の、良好な食材との絡み性を有していた(表3中の食材との絡み性:○)。ごま組成物の官能は、ごまの濃厚な風味を楽しむことができ、さらに、なめらかな口当たりとなっていることから、非常に良好であった(表3中の官能評価:◎)。
【0054】
実施例3のごま組成物は高粘度化しており、流動性は見られず、団子を包むといった変形が可能であった。しかし、粘り気があることから、団子の上に乗せ団子を持ち上げた際には、団子と一体となって持ち上がり、容易には分離しなかった。すなわち、良好な食材との絡み性が観察された(表3中の食材との絡み性:○)。さらに、ごま組成物の官能としても、加工澱粉に由来する異味は感じられず、実施例2同様にごまの濃厚な風味を楽しむことができ、口当たりもなめらかであることから、非常に良好であった(表3中の官能評価:◎)。
【0055】
キサンタンガムを添加しなかった比較例1においては、調製後放置しても、調味料が高粘度化せず、団子にかけても流れ落ちてしまうなど、食材と一切絡みつかなかった(表3中の食材との絡み性:×1)。この傾向は、添加する寒天量を増加させた比較例2においても改善しなかった。官能についても、異味等は生じていなかったものの、団子から流れ落ちてしまうことに起因して、比較例1,2ともに風味が弱く、満足できるものではなかった(表3中の官能評価:△)。
【0056】
キサンタンガムを2.0%(w/v)となるよう添加した比較例3においては、組成物を容器から取り出すことが困難であった。更に、ゲル化によって変形性が失われており、団子を持ち上げた際には団子から組成物が自重で落下してしまい、食材とは絡まなかった(表3中の食材との絡み:×2)。加えて、ごま組成物の官能としても、加工澱粉に由来する粉っぽい異味が生じており、良好とは言えなかった(表3中の官能評価:×)。
【0057】
以上の結果から、特定の増粘多糖類と加工澱粉を含有させることによって、ごま組成物の粘度が適切に制御でき、高粘度のごま組成物が調製できることが明らかになった。