(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-02
(45)【発行日】2022-05-13
(54)【発明の名称】コンクリートの防食方法
(51)【国際特許分類】
C04B 41/71 20060101AFI20220506BHJP
B05D 7/00 20060101ALI20220506BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20220506BHJP
B05D 5/00 20060101ALI20220506BHJP
C09D 5/08 20060101ALI20220506BHJP
C09D 5/00 20060101ALI20220506BHJP
C09D 4/00 20060101ALI20220506BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20220506BHJP
B05D 1/36 20060101ALI20220506BHJP
【FI】
C04B41/71
B05D7/00 D
B05D7/24 303G
B05D7/24 303A
B05D7/24 302N
B05D7/24 301K
B05D5/00 Z
C09D5/08
C09D5/00 D
C09D4/00
C09D7/61
B05D1/36 Z
(21)【出願番号】P 2021163510
(22)【出願日】2021-10-04
【審査請求日】2021-11-01
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591279054
【氏名又は名称】大泰化工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高木 将也
(72)【発明者】
【氏名】木村 航平
(72)【発明者】
【氏名】川口 圭太
【審査官】▲高▼橋 真由
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-060282(JP,A)
【文献】特開平03-150251(JP,A)
【文献】特開2009-143776(JP,A)
【文献】特開昭52-032919(JP,A)
【文献】特開2003-165187(JP,A)
【文献】特開昭54-111523(JP,A)
【文献】特開2019-038972(JP,A)
【文献】特開2006-240950(JP,A)
【文献】特開平02-265708(JP,A)
【文献】特開平05-147149(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 41/00-41/72
B05F 7/00
B05D 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート表面を粗面化処理する工程、
粗面化された表面にプライマー組成物を塗布する工程、
素地調整材を塗布する工程、
(A)ビニルエステル系樹脂、(B)短繊維補強材、および、(C)揺変剤を含有するコンクリート防食用樹脂組成物を塗布する工程、ならびに、
トップコート用樹脂組成物を塗布する工程
を含むコンクリートの防食方法。
【請求項2】
コンクリート防食用樹脂組成物がガラスフレークを含まない請求項1に記載のコンクリート防食用樹脂組成物を使用したコンクリートの防食方法。
【請求項3】
繊維補強布を使用せず、含浸脱泡工程を含まない請求項1に記載のコンクリート防食用樹脂組成物を使用したコンクリートの防食方法。
【請求項4】
防食方法を施したコンクリートを、10%硫酸水溶液および水酸化カルシウム飽和水溶液に45日間浸漬した後、塗膜にふくれ、割れ、軟化および溶出がない請求項1
~3のいずれか1項に記載のコンクリートの防食方法。
【請求項5】
防食方法を施したコンクリートを、10%硫酸水溶液に120日間浸漬した後、電子線マイクロアナライザーで測定した塗膜への硫黄侵入深さが塗膜の厚さの10%以内かつ200μm以下であり、硬化塗膜の透水量が0.2g以下である請求項1~
4のいずれか1項に記載のコンクリートの防食方法。
【請求項6】
防食方法を施したコンクリートを、10%硫酸水溶液および水酸化カルシウム飽和水溶液に60日間浸漬した後、塗膜にふくれ、割れ、軟化および溶出がない請求項
4または
5に記載のコンクリートの防食方法。
【請求項7】
防食方法を施したコンクリートを、10%硫酸水溶液に120日間浸漬した後、電子線マイクロアナライザーで測定した塗膜への硫黄侵入深さが塗膜の厚さの5%以内かつ100μm以下であり、硬化塗膜の透水量が0.15g以下である請求項
4~
6のいずれか1項に記載のコンクリートの防食方法。
【請求項8】
素地調整材が、(D)粒度が30~1000μmである骨材を含む請求項1~
7のいずれか1項に記載のコンクリートの防食方法。
【請求項9】
短繊維補強材(B)が、ガラスファイバー、カーボンファイバーまたはセルロースナノファイバーである請求項1~
8のいずれか1項に記載のコンクリートの防食方法。
【請求項10】
短繊維補強材(B)が、ガラスミルドファイバーまたはガラスカットファイバーである請求項
9に記載のコンクリートの防食方法。
【請求項11】
(A)ビニルエステル系樹脂、(B)短繊維補強材、(C)揺変剤を含有するコンクリート防食用樹脂組成物からなる塗膜とコンクリートの間に、プライマー層および素地調整
材層を有するコンクリート防食塗膜。
【請求項12】
コンクリート防食用樹脂組成物がガラスフレークを含まない請求項11に記載のコンクリート防食塗膜。
【請求項13】
素地調整
材層が、(D)粒度が30~1000μmである骨材を含む請求項
11または12に記載のコンクリート防食塗膜。
【請求項14】
短繊維補強材(B)が、ガラスファイバー、カーボンファイバーまたはセルロースナノファイバーである請求項
11~13のいずれか1項に記載のコンクリート防食塗膜。
【請求項15】
短繊維補強材(B)が、ガラスミルドファイバーまたはガラスカットファイバーである請求項
11~
14のいずれか1項に記載のコンクリート防食塗膜。
【請求項16】
(A)ビニルエステル系樹脂、
(B)短繊維補強材、及び
(C)揺変剤
を含む、コンクリート防食用樹脂組成物。
【請求項17】
ガラスフレークを含まない請求項16に記載のコンクリート防食用樹脂組成物。
【請求項18】
短繊維補強材(B)が、ガラスファイバー、カーボンファイバーまたはセルロースナノファイバーである請求項
16または17に記載のコンクリート防食用樹脂組成物。
【請求項19】
短繊維補強材(B)が、ガラスミルドファイバーまたはガラスカットファイバーである請求項
18に記載のコンクリート防食用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートの防食方法に関する。詳しくは、下水道などの屋内コンクリート施設の塗膜防食被覆工法に関する。
【背景技術】
【0002】
下水道関連施設では、嫌気性下にある下水中に含まれる硫酸塩が、硫酸塩還元細菌によって分解されて硫化水素ガスが発生する。その硫化水素ガスは処理槽などの湿潤した気相部のコンクリート表面の結露水に溶解し、硫黄酸化細菌の酸化作用によって硫酸に変化する。コンクリート構造物が酸性の雰囲気に晒されると、硫酸と反応して最終的にエトリンガイドが生成する。エトリンガイド生成時に体積が膨張し、その膨張圧によりコンクリートが破壊され、ひび割れや剥離が生じ、さらに硫酸の浸透が進むとコンクリート内にある鉄筋を腐食させる。近年では、食品や油脂類から発生するとされている有機酸も、腐食を促進させる役割を果たすという報告も上がっており、硫酸のみならず有機酸に対しても対処する必要が生じてきた。
【0003】
下水道施設はこのような厳しい条件下で常時稼働しており、機能を維持し、施設の破損等による不測の事態を防ぐために、コンクリート表面に防食被覆工法を施すことでコンクリート構造物の耐用年数を長く保持している。具体的な防食被覆工法の一つとして、コンクリートに防食塗料を塗装する塗布型ライニング工法があり、補強材積層仕様(ガラス短繊維をシート状に加工したものを用い、これに樹脂を含侵させて被膜を形成するガラスクロス工法)、積層仕様(積層用繊維状シートを使用しないノンクロス工法)、樹脂モルタル仕様(樹脂に骨材と硬化剤を入れ、パテ状にしたものをコテで塗布する仕様)の3つに分類される。
【0004】
一般的にガラスクロス工法ではビニルエステル樹脂を用いており、その特性上、硫酸や有機酸に対しても耐薬品性が高く、非常に高強度であるため、多くのFRP防食業者に使用されている(非特許文献1等)。しかしながら、補強材の含浸脱泡工程が必要であり、工期が長く、高コストになるという問題がある。
【0005】
一般的にノンクロス工法ではエポキシ塗料を用いており、防食性に優れているために、多くの施設で採用されている(例えば特許文献1)。しかしながら、施工時に、エポキシ樹脂系に含まれるアミン化合物によるカブレの問題があった。また、近年問題とされている有機酸がエポキシ塗膜の劣化を促進させるため、使用可能なエポキシ塗材は限定されるという問題もある。
【0006】
フレークライニング工法ではビニルエステル樹脂を使用し、鱗片状のガラスを樹脂に配合することで迷路効果により腐食を遅らせるものである(特許文献2)。しかしながら、ガラスクロスがないため、膜厚維持が困難で強度や防食性の不足する部分が発生し、防食層が局部的に劣化損傷する問題があり、安定した施工ができず、腐食環境の厳しいJS防食技術マニュアルに掲載されたC種、D種施設での実績はほとんどなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2007-182508号公報
【文献】特開2008-189330号公報
【非特許文献】
【0008】
【文献】https://www.sdk-k.com/dobokuzai_kp/download/cat_bosyoku/shozet_vinylester.pdf
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、エポキシ樹脂を使用したノンクロス工法と同等以上の作業性と、エポキシ樹脂よりも優れた防食性を有するコンクリートの防食方法、コンクリート防食塗膜、および、コンクリート防食用樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、前述した課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、(A)ビニルエステル系樹脂、(B)短繊維補強材、(C)揺変剤を含有する組成物が、作業性だけでなく防食性にも優れることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、
コンクリート表面を粗面化処理する工程、
粗面化された表面にプライマー組成物を塗布する工程、
素地調整材を塗布する工程、
(A)ビニルエステル系樹脂、(B)短繊維補強材、および、(C)揺変剤を含有するコンクリート防食用樹脂組成物を塗布する工程、ならびに、
トップコート用樹脂組成物を塗布する工程
を含むコンクリートの防食方法に関する。
【0012】
前記コンクリートの防食方法において、繊維補強布を使用せず、含浸脱泡工程を含まないことが好ましい。
【0013】
前記コンクリートの防食方法において、防食方法を施したコンクリートを、10%硫酸水溶液および水酸化カルシウム飽和水溶液に45日間浸漬した後、塗膜にふくれ、割れ、軟化および溶出がないことが好ましい。
【0014】
前記コンクリートの防食方法において、防食方法を施したコンクリートを、10%硫酸水溶液に120日間浸漬した後、電子線マイクロアナライザーで測定した塗膜への硫黄侵入深さが塗膜の厚さの10%以内かつ200μm以下であり、硬化塗膜の透水量が0.2g以下であることが好ましい。
【0015】
前記コンクリートの防食方法において、防食方法を施したコンクリートを、10%硫酸水溶液および水酸化カルシウム飽和水溶液に60日間浸漬した後、塗膜にふくれ、割れ、軟化および溶出がないことが好ましい。
【0016】
前記コンクリートの防食方法において、防食方法を施したコンクリートを、10%硫酸水溶液に120日間浸漬した後、電子線マイクロアナライザーで測定した塗膜への硫黄侵入深さが塗膜の厚さの5%以内かつ100μm以下であり、硬化塗膜の透水量が0.15g以下であることが好ましい。
【0017】
前記コンクリートの防食方法において、素地調整材が、(D)粒度が30~1000μmである骨材を含むことが好ましい。
【0018】
前記コンクリートの防食方法において、短繊維補強材(B)が、ガラスファイバー、カーボンファイバーまたはセルロースナノファイバーであることが好ましい。
【0019】
前記コンクリートの防食方法において、短繊維補強材(B)が、ガラスミルドファイバーまたはガラスカットファイバーであることが好ましい。
【0020】
また、本発明は、(A)ビニルエステル系樹脂、(B)短繊維補強材、(C)揺変剤を含有するコンクリート防食用樹脂組成物からなる塗膜とコンクリートの間に、プライマー層および素地調整層を有するコンクリート防食塗膜に関する。
【0021】
コンクリート防食塗膜において、素地調整層が、(D)粒度が30~1000μmである骨材を含むことが好ましい。
【0022】
コンクリート防食塗膜において、短繊維補強材(B)が、ガラスファイバー、カーボンファイバーまたはセルロースナノファイバーであることが好ましい。
【0023】
コンクリート防食塗膜において、短繊維補強材(B)が、ガラスミルドファイバーまたはガラスカットファイバーであることが好ましい。
【0024】
さらに、本発明は、(A)ビニルエステル系樹脂、
(B)短繊維補強材、および
(C)揺変剤
を含む、コンクリート防食用樹脂組成物に関する。
【0025】
コンクリート防食用樹脂組成物において、短繊維補強材(B)が、ガラスファイバー、カーボンファイバーまたはセルロースナノファイバーであることが好ましい。
【0026】
コンクリート防食用樹脂組成物において、短繊維補強材(B)が、ガラスミルドファイバーまたはガラスカットファイバーであることが好ましい。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、エポキシ樹脂を使用したノンクロス工法と同等以上の作業性と、エポキシ樹脂よりも優れた防食性を達成することができる。その結果、品質の安定したノンクロスビニルエステル防食被覆工法を提供することができる。防食層を形成するビニルエステル塗材に繊維補強材、揺変剤が含まれるため、立面部、天井部、出隅部等での強度および膜厚も確保することができる。
【0028】
また、このような本願発明の効果は、素地調整材に一定サイズの骨材を配合することで最低膜厚を確保し、骨材により素地調整材の表面粗度が大きくなることで防食層を形成するビニルエステル塗材との層間密着性をさらに向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】
図1は、本発明のコンクリートの防食方法を施工した6層構成の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態について詳述するが、本発明は以下に示す実施形態に限定されるものではない。
【0031】
本発明のコンクリートの防食方法は、
コンクリート表面を粗面化処理する工程、
粗面化された表面にプライマー組成物を塗布する工程、
素地調整材を塗布する工程、
(A)ビニルエステル系樹脂、(B)短繊維補強材、および、(C)揺変剤を含有するコンクリート防食用樹脂組成物を塗布する工程、ならびに、
トップコート用樹脂組成物を塗布する工程
を含むことを特徴とする。
【0032】
<コンクリート表面を処理する工程>
コンクリート表面にはレイタンス、脆弱部、異物が存在する場合があるため、表面処理する。表面処理方法としては特に限定されずディスクサンダー、サンドブラスト、グリットブラストなどが挙げられる。
【0033】
<粗面化された表面にプライマー組成物を塗布する工程>
プライマー組成物は特に限定されず、樹脂成分としては、ビニルエステル樹脂、ウレタン樹脂などが挙げられる。なかでも、耐水性、耐薬品性の点で、ビニルエステル樹脂が好ましい。
【0034】
プライマー組成物を塗布することで作製されたプライマーの塗布量は、0.1~0.5kg/m2が好ましく、0.15~0.3kg/m2がより好ましい。
【0035】
(A)ビニルエステル系樹脂は、特に限定されず、例えば、エポキシ樹脂と不飽和一塩基酸との反応によって得られる反応生成物が挙げられる。
【0036】
エポキシ樹脂としては、例えば、フェノール類のグリシジルエーテル類として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂類とその臭素化樹脂類、フェノールノボラック型エポキシ樹脂とその臭素化樹脂類、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂類、ジプロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物のジグリシジルエーテル、水素化ビスフェノールA・グリシジルエーテル等の多価アルコール類のグリシジルエーテル類、3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキサンカルボキシレート、1-エポキシエチル-3,4-エポキシシクロヘキサン等の脂環式エポキシ樹脂類、フタル酸ジグリシジルエステル、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、ジグリシジル-p-オキシ安息香酸、ダイマー酸グリシジルエステルなどのグリシジルエステル類、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、テトラグリシジル-m-キシレンジアミン、トリグリシジル-p一アミノフェノール、N,N-ジグリシジルアニリンなどのグリシジルアミン類、1,3-ジグリシジル-5,5-ジメチルヒダントイン、トリグリシジルイソシアヌレート等の複素環式エポキシ樹脂等が挙げられる。また、これらのエポキシ樹脂は、単独でも、2種以上を併用してもよい。
【0037】
不飽和一塩基酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、桂皮酸、アクリル酸ダイマー、モノメチルマレート、モノメチルフマレート、モノシクロヘキシルフマレート、あるいはソルビン酸等が挙げられる。これらの酸は、単独でも、2種以上を併用してもよい。
【0038】
さらに、得られたビニルエステル樹脂を、無水マレイン酸、無水コハク酸などの酸無水物類、トルエンジイソシアネート、イソプロペニル-ジメチル-ベンジルイソシアネートなどのイソシアネート化合物等で変性してもよい。
【0039】
<素地調整材を塗布する工程>
素地調整材は特に限定されず、樹脂成分としては、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂などが挙げられる。なかでも、耐水性、耐薬品性の点で、ビニルエステル樹脂が好ましい。素地調整材は、樹脂成分以外に、揺変剤、反応性希釈剤、還元剤、顔料、揺変助剤、消泡剤、フィラー、骨材などを配合してもよい。
【0040】
素地調整材と塗布することで作製した素地調整材層の厚みは、5000μm未満が好ましく、3000μm以下がより好ましい。5000μm以上では施工時に割れが発生する恐れがある。下限は、50μm以上が好ましく、150μm以上がより好ましい。また、0.1~3.0kg/m2が好ましく、0.5~1.5kg/m2がより好ましい。
【0041】
揺変剤としては、シリカ粉末、タルク粉末、マイカ粉末、ガラスフレーク、金属ウィスカー、セラミックウィスカー、硫酸カルシウムウィスカー、スメクタイト、有機系の揺変剤などが挙げられる。揺変剤の市販品としては、ヒュームドシリカ:レオロシールQSシリーズ(株式会社トクヤマ製)、アエロジルシリーズ(日本アエロジル株式会社製)、CLAYTONEシリーズ(ビックケミー・ジャパン株式会社製)、タルクMS、MLシリーズ(富士タルク工業株式会社製)などがある。
【0042】
揺変剤の添加量は、コンクリートの形状、特に垂直面の高さ、面積、形状や、塗布層の厚み、雰囲気温度、素地調整材に含まれる樹脂(重合体)の性状にもよるが、素地調整材に必要とされる粘度によって規定することができる。素地調整材の粘度は、2000Pa・s以下が好ましく、200~1500Pa・sがさらに好ましい。また、揺変度(2rpmと20rpmとの粘度比)が3.0~7.0となるような量で添加されることが好ましい。ここで、粘度は、BH型粘度計7号ローター2rpm、25℃の条件で測定した値である。
【0043】
反応性希釈剤は特に限定されず、スチレン系モノマー、(メタ)アクリル酸系モノマー等が挙げられる。これらの不飽和単量体は、単独でも、2種以上を併用してもよい。
【0044】
スチレン系モノマーとしては、例えば、スチレン、p-メチルスチレン、t-ブチルスチレン、クロルスチレン、ビニルベンジルアルキルエーテル等が挙げられる。これらの中でも、コストと硬化物の物性の観点から、スチレンが好ましい。
【0045】
また、(メタ)アクリル酸系モノマーとしては、例えば、1個の重合性不飽和基を有するモノマーとして、(メタ)アクリル酸や、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステル、シクロヘキシル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどの塩基性(メタ)アクリル酸エステルなどが挙げられる。また、2個の重合性不飽和基を有するモノマーとして、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの中でも、粘度低減効果と硬化反応性の観点から、1個の重合性不飽和基を有するモノマーが好ましく、メチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0046】
反応性希釈剤は、素地調整材中50質量%以下含まれることが好ましく、40質量%以下がより好ましい。下限は、3質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましい。反応性希釈剤は、樹脂に予め含有された形で供給されてもよい。
【0047】
還元剤としては、コバルト金属石鹸等の公知の還元剤を使用できる。例えばナフテン酸コバルト、オクチル酸コバルト、水酸化コバルトなどが挙げられる。還元剤は、通常希釈された状態で取り扱われ素地調整材中にコバルトとして0.8質量%以下含まれることが好ましく、0.4質量%以下がより好ましい。下限は、0.00005質量%以上が好ましく、0.0001質量%以上がより好ましい。
【0048】
顔料は、素地調整材の装飾性、美観性、あるいは耐候性の向上などの目的で適宜選択されるものであって、特に限定されるものではないが、たとえば、酸化チタン白、酸化鉄赤、水酸化鉄黄、縮合アゾレッド、DPPレッド、チタンエロー、コバルトブルー、キナクリドンレッド、カーボンブラック、鉄黒、ペリノン、イソインドリノン、クロームグリーン、フタロシアニンブルー、シアニングリーンなど、一般に着色用途で使用されるものを挙げることができる。また、その添加量も特に限定されるものではない。
【0049】
顔料の添加量は、色調によって異なるが、樹脂成分100質量部に対して0.1~30質量部が好ましく、1~15質量部がより好ましい。
【0050】
揺変助剤は、素地調整材の性状にもよるが、添加することによって、揺変剤の添加量を少なくすることができる。
【0051】
揺変助剤としては、たとえば、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのグリコール類;ヒドロキシル基および/またはエーテル結合を有する単官能または多官能(メタ)アクリレート類((B)成分に該当するものを除く);ヒドロキシル基および/またはエーテル結合を有するエポキシエーテル類;ヒドロキシル基および/またはエーテル結合を有するエポキシエステル類;ポリオキシエチレンソルビタンモノラウラートなどの界面活性剤類などが挙げられるが、特に限定されるものではない。これらは2種類以上を併用してもよい。
【0052】
また、各種チキソ性増加剤、安定剤なども揺変化助剤として使用できる。チキソ性増加剤、安定剤の市販品としては、たとえばBYK R605、BYK410(ビックケミー・ジャパン株式会社製)などが挙げられる。
【0053】
揺変助剤の添加量は、素地調整材の性状や、揺変助剤の種類にもよるが、樹脂成分100質量部に対して5質量部以下が好ましく、3質量部以下がより好ましい。下限は、限定されず樹脂や揺変剤の種類によっては添加しない場合もある
【0054】
消泡剤も特に限定されるものではないが、たとえば、BYK A-515、BYK A-555、BYK A-501(ビックケミー・ジャパン株式会社製)、EFFKA2720(BASF社製)などのシリコーンを含まない破泡性ポリマー溶液(非シリコーン系消泡剤);ディスパロンAPシリーズ、OXシリーズ、Lシリーズ(楠本化成株式会社製)などのシリコーン系消泡剤;SHシリーズ(信越化学株式会社製)などが挙げられる。消泡剤の添加量は、樹脂成分100質量部に対して3質量部以下が好ましい。下限は、限定されず、添加しない場合もある。
【0055】
フィラーとしては、たとえば、シリカ、アルミナ、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、クレー、タルク、硫酸バリウムなどが挙げられる。フィラーの添加量は、樹脂成分100質量部に対して10~300質量部が好ましく、30~250質量部がより好ましい。
【0056】
骨材としては、たとえば、硅砂、ガラス粉、ガラスビーズ、およびマイカなどが挙げられる。なかでも、作業性の点で、珪砂、ガラス粉などが好ましい。骨材の添加量は、樹脂成分100質量部に対して10~300質量部が好ましく、30~250質量部がより好ましい。
【0057】
骨材の粒度は、30~1000μmが好ましく、50~500μmがより好ましい。1000μmを超えると、作業効率の低下、膜厚の不均一性を生む傾向がある。
【0058】
<コンクリート防食用樹脂組成物を塗布する工程>
該工程によって、中塗り層が形成される。該工程は、1回だけでなく、複数回塗布することもできる。2回行った場合には、5層構成(プライマー、素地調整材、中塗り2層、トップの計5層)の塗布膜が形成され、下水道品質規格C種の条件になる。3回行った場合には、6層構成(プライマー、素地調整材、中塗り3層、トップの計6層)の塗布膜が形成され、下水道品質規格D種の条件になる。
【0059】
1回の塗布で形成された中塗り層の厚みは、100~2000μmが好ましく、150~1000μmがより好ましい。2000μmを超えると、立面部、天井部で樹脂垂れを生じる等、施工に支障をきたす傾向がある。
【0060】
本発明のコンクリート防食用樹脂組成物は、(A)ビニルエステル系樹脂、(B)短繊維補強材、および(C)揺変剤を含むことを特徴とする。該組成物は、コンクリート防食用樹脂組成物を塗布する工程で使用する。
【0061】
ビニルエステル系樹脂(A)は、エポキシ樹脂と不飽和一塩基酸との反応によって得られる反応生成物であって、前述したものを使用することができる。
【0062】
短繊維補強材(B)としては、ガラスファイバー、カーボンファイバー、セルロースナノファイバーなどが挙げられる。なかでも、コストや作業性の点で、ガラスファイバーが好ましく、ガラス短繊維ミルドファイバーまたはガラス短繊維カットファイバーがより好ましい。短繊維補強材の配合量は、ビニルエステル系樹脂(A)100質量部に対して、1~100質量部が好ましく、5~50質量部が好ましく、5~30質量部がより好ましい。1質量部未満では、補強効果が乏しくなり、100質量部を超えると、塗装作業性が低下する傾向がある。
【0063】
短繊維補強材の平均繊維径は、5~30μmが好ましく、5~20μmがより好ましい。フィラーの平均繊維長は、50~1000μmが好ましく、150~800μmがより好ましい。
【0064】
揺変剤(C)としては、前述のものを使用することができる。揺変剤の配合量は、ビニルエステル系樹脂(A)100質量部に対して、0.5~10質量部が好ましく、0.8~5質量部がより好ましい。
【0065】
コンクリート防食用樹脂組成物には、ビニルエステル系樹脂(A)、短繊維補強材(B)、及び揺変剤(C)以外の成分として、反応性希釈剤、還元剤、顔料、揺変助剤、消泡剤、フィラーなどの成分を含むことが好ましい。これらの成分としては、前述のものを使用することができる。
【0066】
反応性希釈剤は、コンクリート防食用樹脂組成物中に60質量%以下含まれることが好ましく、40質量%以下がより好ましい。下限は、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましい。
【0067】
還元剤は、通常希釈された状態で取り扱われ、コバルトとしてコンクリート防食用樹脂組成物中に0.8質量%以下含まれることが好ましく、0.4質量%以下がより好ましい。下限は、0.0001質量部以上が好ましく、0.0003質量部以上がより好ましい。
【0068】
顔料は、素地調整材の装飾性、美観性、あるいは耐候性の向上などの目的で適宜選択されるものであって、特に限定されるものではないが、たとえば、酸化チタン白、酸化鉄赤、水酸化鉄黄、縮合アゾレッド、DPPレッド、チタンエロー、コバルトブルー、キナクリドンレッド、カーボンブラック、鉄黒、ペリノン、イソインドリノン、クロームグリーン、フタロシアニンブルー、シアニングリーンなど、一般に着色用途で使用されるものを挙げることができる。また、その添加量も特に限定されるものではない。
【0069】
顔料の添加量は、色調によって異なるが、樹脂成分100質量部に対して1~30質量部が好ましく、3~15質量部がより好ましい。
【0070】
揺変助剤の添加量は、コンクリート防食用樹脂組成物の性状や、揺変助剤の種類にもよるが、樹脂成分100質量部に対して5質量部以下が好ましく、3質量部以下がより好ましい。下限は、限定されず樹脂や揺変剤の種類によっては添加しない場合もある。消泡剤の添加量は、樹脂成分100質量部に対して2質量部以下が好ましい。下限は、限定されず、添加しない場合もある。
【0071】
コンクリート防食用樹脂組成物を塗布する工程では、繊維補強布を使用しないため、使用した場合に必須となる含浸脱泡工程が不要となる。繊維補強布としては、ガラスクロス、ガラス不織布、有機不織布、ガラスチョップドストランドマットなどが挙げられる。
【0072】
<トップコート用樹脂組成物を塗布する工程>
トップコート用樹脂組成物は特に限定されず、樹脂成分としては、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂などが挙げられる。なかでも、耐水性、耐薬品性の点で、ビニルエステル樹脂が好ましい。トップコート用樹脂組成物は、樹脂成分以外に、着色顔料、体質顔料、揺変剤、補助増粘剤、還元剤、消泡剤等を含むことが好ましい。
【0073】
トップコート用樹脂組成物を塗布することで作製されたトップコート層の厚みは、2000μm以下が好ましく、1500μm以下がより好ましく、1000μm以下がさらに好ましい。2000μmを超えると、塗膜の割れが発生する傾向がある。下限は、50μm以上が好ましい。
【0074】
本発明の防食方法において、(A)ビニルエステル系樹脂、(B)短繊維補強材、(C)揺変剤を含有するコンクリート防食用樹脂組成物を塗布する工程を2回行って作製した5層構成のコンクリートを、10%硫酸水溶液および水酸化カルシウム飽和水溶液に45日間浸漬した後、塗膜にふくれ、割れ、軟化および溶出がないこと。これらの特性を満足することで、耐硫酸性、接着安定性、外観性、耐アルカリ性を達成することができる。
【0075】
本発明の防食方法において、(A)ビニルエステル系樹脂、(B)短繊維補強材、(C)揺変剤を含有するコンクリート防食用樹脂組成物を塗布する工程を2回行って作製した5層構成のコンクリートを、10%硫酸水溶液に120日間浸漬した後、電子線マイクロアナライザーで測定した塗膜への硫黄侵入深さが塗膜の厚さの10%以内かつ200μm以下であり、硬化塗膜の透水量が0.2g以下であること。これらの特性を満足することで、硫酸侵入や水の透水を阻止することができる。
【0076】
本発明の防食方法において、(A)ビニルエステル系樹脂、(B)短繊維補強材、(C)揺変剤を含有するコンクリート防食用樹脂組成物を塗布する工程を3回行って作製した6層構成のコンクリートを、10%硫酸水溶液および水酸化カルシウム飽和水溶液に60日間浸漬した後、塗膜にふくれ、割れ、軟化および溶出がないこと。これらの特性を満足することで、耐硫酸性、接着安定性、外観性、耐アルカリ性を達成することができる。
【0077】
本発明の防食方法において、(A)ビニルエステル系樹脂、(B)短繊維補強材、(C)揺変剤を含有するコンクリート防食用樹脂組成物を塗布する工程を3回行って作製した6層構成のコンクリートを、10%硫酸水溶液に120日間浸漬した後、電子線マイクロアナライザーで測定した塗膜への硫黄侵入深さが塗膜の厚さの5%以内かつ100μm以下であり、硬化塗膜の透水量が0.15g以下であること。これらの特性を満足することで、耐硫酸性、接着安定性を達成することができる。
【0078】
本発明のコンクリートの防食方法では、繊維補強布の含侵脱泡作業を必要とせず、ローラー塗装することで、膜厚の確保をするととともに下地追随性、耐食性に優れた防食層を形成することができる。硫酸や有機酸に対して高い耐性を有しているので、特に下水道関連施設に好適に適用することができる。
【実施例】
【0079】
次に、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、以下において「部」及び「%」は特記しない限りすべて質量基準である。
【0080】
実施例および比較例で使用した薬品等を以下に示す。
ビニルエステル樹脂:ビスフェノールA型ビニルエステル
揺変剤(増粘剤):ヒュームドシリカ
反応性希釈剤:スチレンモノマー
還元剤:8%オクテン酸コバルト溶液
白顔料:酸化チタン
黒顔料:カーボンブラック
補助揺変剤(補助増粘剤):ポリヒドロキシカルボン酸アミド
消泡剤:非シリコーン系
フィラー:タルク
骨材:珪砂7号、粒度分布50~450μm
短繊維補強材:ガラスミルドファイバー
プライマー:ビスフェノールA型ビニルエステル樹脂系プライマー
【0081】
製造例1(素地調整材の調製)
ビニルエステル樹脂100質量部に対し、揺変剤1.0質量部、還元剤0.8質量部、フィラー80質量部、骨材80質量部を、常温環境下で混合攪拌することにより素地調整材組成物を調製した。BH型粘度計7号ローター2rpm、25℃の条件で測定した粘度は、800Pa・s以下であった。
【0082】
製造例2(トップコート用樹脂組成物)
ビニルエステル樹脂100質量部に対し、揺変剤2.0質量部、還元剤0.5質量部、顔料10質量部、パラフィンワックス0.2質量部を常温環境下で混合攪拌することにより、トップコート用組成物を調製した。
【0083】
実施例1(コンクリート防食用樹脂組成物(中塗り用組成物)
ビニルエステル樹脂100質量部に対し、揺変剤2.0質量部、還元剤0.5質量部、短繊維補強材20質量部を、常温環境下で混合攪拌することによりコンクリート防食用樹脂組成物を調製した。
【0084】
比較例1(コンクリート防食用樹脂組成物(中塗り用組成物)
下水道事業団D種規格に適合する他社製品のエポキシ樹脂組成物を用いて試験体を作製した。
【0085】
比較例2(コンクリート防食用樹脂組成物(中塗り用組成物)
揺変剤を配合しなかったこと以外は、実施例1と同様にしてコンクリート防食用樹脂組成物を作製した。
【0086】
比較例3(コンクリート防食用樹脂組成物(中塗り用組成物)>
短繊維補強材を配合しなかったこと以外は、実施例1と同様にしてコンクリート防食用樹脂組成物を作製した。
【0087】
実施例1および比較例1~3で作製した中塗り用組成物を用いて、以下の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0088】
<垂れ性>
ブリキ板に、各実施例または比較例で作製した中塗り用組成物を、サグテスター(100~500μm)を用いて塗布した。塗布後、直ちに壁面に立てかけ硬化までに垂れが発生するか観察し、以下の基準で評価を行った。
3:比較例1(エポキシ樹脂組成物)よりも垂れない
2:比較例1と同等
1:比較例1よりも垂れが発生する
【0089】
<中塗り用組成物の耐薬品性試験>
実施例1及び比較例1~3で作成した中塗り用樹脂組成物を用いて樹脂の注型板(40×40×3mm)を作製した。作成した注型板を各種用意した薬品に40℃、4ヶ月間浸漬し重量変化率を確認し、以下の基準で評価を行った。
3:比較例1(エポキシ樹脂組成物)よりも重量変化率が小さい
2:比較例1と同等
1:比較例1よりも重量変化率が大きい
【0090】
【0091】
表1の結果から、本願発明のコンクリート防食用樹脂組成物では、垂れ性に優れ、耐薬品性にも優れている。
【0092】
実施例2(コンクリートへの施工)
[中塗り2層の5層構成]
モルタル板(70×70×20mm,150×70×20mm)もしくはコンクリートブロック(300×300×30mm)もしくはスレート板(60×220×6mm,150×60×6mm)の全面もしくは片面を研磨(表面処理)、面取りを行った後、以下の工程で被覆を行った。
【0093】
プライマーを0.2kg/m2となるように塗布し、製造例1で作製した素地調整材を1.0kg/m2となるように塗布、実施例1で作製したコンクリート防食用樹脂組成物を0.5kg/m2×2となるように2回塗布、製造例2で作製したトップコート用樹脂組成物を0.3kg/m2となるように塗布し、コンクリートへの施工を行った。
【0094】
[中塗り3層の6層構成]
モルタル板(70×70×20mm,150×70×20mm)もしくはコンクリートブロック(300×300×30mm)もしくはスレート板(60×220×6mm,150×60×6mm)の全面もしくは片面を研磨、面取りを行った後、以下の工程で被覆を行った。
【0095】
プライマーを0.2kg/m2となるように塗布し、製造例1で作製した素地調整材を1.0kg/m2となるように塗布、実施例1で作製したコンクリート防食用樹脂組成物を0.5kg/m2×3となるように3回塗布、製造例2で作製したトップコート用樹脂組成物を0.3kg/m2となるように塗布し、コンクリートへの施工を行った。
【0096】
比較例4
[中塗り2層の5層構成]
モルタル板(70×70×20mm,150×70×20mm)もしくはコンクリートブロック(300×300×30mm)もしくはスレート板(60×220×6mm,150×60×6mm)の全面もしくは片面を研磨(表面処理)、面取りを行った後、以下の工程で被覆を行った。
【0097】
エポキシ塗材用素地調整材を1.0kg/m2となるように塗布し、プライマーを0.15kg/m2となるように塗布、比較例1で使用したエポキシ樹脂組成物を0.5kg/m2×2となるように2回塗布、エポキシ樹脂トップコート組成物を0.2kg/m2となるように塗布し、コンクリートへの施工を行った。
【0098】
[中塗り3層の6層構成]
モルタル板(70×70×20mm,150×70×20mm)もしくはコンクリートブロック(300×300×30mm)もしくはスレート板(60×220×6mm,150×60×6mm)の全面もしくは片面を研磨(表面処理)、面取りを行った後、以下の工程で被覆を行った。
【0099】
エポキシ塗材用素地調整材を1.0kg/m2となるように塗布し、プライマーを0.15kg/m2となるように塗布、比較例1で作製したエポキシ樹脂系組成物を0.6kg/m2×3となるように3回塗布、エポキシ樹脂トップコート組成物を0.2kg/m2となるように塗布し、コンクリートへの施工を行った。
【0100】
比較例5
[中塗り2層の5層構成]
比較例2で作製したコンクリート防食用樹脂組成物を用い、実施例2と同様に、5層構成の試験体を作製した。
【0101】
[中塗り3層の6層構成]
比較例2で作製したコンクリート防食用樹脂組成物を用い、実施例2と同様に、6層構成の試験体を作製した。
【0102】
比較例6
[中塗り2層の5層構成]
比較例3で作製したコンクリート防食用樹脂組成物を用い、実施例2と同様に、5層構成の試験体を作製した。
【0103】
[中塗り3層の6層構成]
比較例3で作製したコンクリート防食用樹脂組成物を用い、実施例2と同様に、6層構成の試験体を作製した。
【0104】
実施例2および比較例5~6で防食方法を以下の方法で評価した。評価結果を表2に示す。
【0105】
比較例4で防食方法を以下の方法で評価した。評価結果を表3に示す。
【0106】
<下地追従性>
60×110×5mmのスレート板2枚を60×220×5mmの大きさになるように設置し、その上に各実施例および比較例に示した5層又は6層構造の防食被覆を行い、試験体を作製した。万能試験機で1mm/分の速度でクラックが入るまで引張り、変位幅を下地追随幅として以下の基準で評価した。
3:比較例4(エポキシ防食工法の試験体)よりも下地追随幅が大きい
2:比較例4と同等
1:比較例4よりも下地追随幅が短い
【0107】
<耐酸性、耐有機酸性>
モルタル板(70×70×20mm)の全面を被覆した後に、10%硫酸に2ヶ月浸漬して外観異常や硫酸の侵入によりモルタルが侵されていないか観察した。また、硫酸侵入は試験体を切断し、断面をフェノールフタレイン溶液に晒すことで硫酸の浸入を確認した。モルタルが侵されていなければ赤く変色し、侵されていたら無色となる。以下の基準で評価した。
3:比較例4よりも良好かつ外観異常が無く、切断面も赤色である
2:比較例4と同等
1:比較例4よりも外観異常があるか、切断面が無色である
【0108】
<冷熱サイクル>
コンクリートブロック(300×300×30mm)の片面を被覆した後に、四隅をシーリングして水の侵入を防ぐ。60℃温水と常温水を10分ずつ交互に塗膜に晒すことで劣化促進させ、経年劣化時の挙動(塗膜の割れや剥離)を観察し、以下の基準で評価した。
3:比較例4よりもサイクル数が100以上多い
2:比較例4と同程度のサイクル数。
1:比較例4よりもサイクル数が少ない。
【0109】
<混酸浸漬>
コンクリートブロック(150×150×30mm)を全面被覆して試験体を作成する。10%硫酸と5%酢酸の混酸溶液を作り、試験体を4か月間浸漬し、取り出し後に建研式付着力試験機にて接着性が低下していないか測定し、以下の基準で評価を行った。
3:比較例4よりも良好で1.5N/mm2以上かつ母材破壊である。
2:比較例4と同等で1.5N/mm2以上。
1:比較例4よりも劣る。もしくは1.5N/mm2以下。
【0110】
<耐候性>
スレート板(150×60×6mm)の片面を被覆して試験体を作製し、サンシャインウェザーメーターにて紫外線による劣化を確認し、以下の基準で評価を行った。(経過時間:4000時間)
3:比較例4よりも良好で、割れ、剥離、軟化、溶出等の外観異常がない
2:比較例4と同等
1:比較例4よりも劣り、割れ、剥離、軟化、溶出等の外観異常が1つでもある
【0111】
<外観>
各実施例または比較例で作製した試験体を目視により観察し、以下の基準で評価した。
合格:塗膜にしわ、ムラ、割れ、剥がれ無
不合格:塗膜にしわ、ムラ、割れ、剥がれ有
【0112】
<硫黄侵入深さ>
モルタル板(150×70×20mm)の全面を被覆し、10%硫酸水溶液に120日間浸漬した後に、EPMA(電子線マイクロアナライザー)により防食被覆材への硫黄侵入深さを測定し、以下の基準で評価した。
合格 :5層構成で、侵入深さが設計厚さの10%以下で、かつ200μm下
6層構成で、侵入深さが設計厚さの5%以下で、かつ100μm下
不合格:5層構成で、侵入深さが設計厚さの10%よりも大きいまたは200μm以上
6層構成で、侵入深さが設計厚さの5%よりも大きいまたは100μm以上
【0113】
<透水性>
JIS A1404:1999(11.5項)に準じて透水性を評価した。JIS A5430:2013に規定するフレキシブル板上に施工を施した試験体に、3kgf/cm2の水圧をかけた後、透水量を測定した。
合格 :5層構成で、透水量が0.2g以下
6層構成で、透水量が0.15g以下
不合格:5層構成で、透水量が0.2g以上
6層構成で、透水量が0.15g超
【0114】
<耐アルカリ性>
モルタル板(150×70×20mm)の片面を被覆した後に水酸化カルシウム飽和水溶液に2ヶ月浸漬して、フクレや割れ、軟化、溶出等の異常がないか観察した。
合格 :フクレや割れ、軟化、溶出等の外観異常がない
不合格:フクレ、割れ、軟化、溶出等の外観異常が一つでもある
【0115】
<ピンホール>
コンクリート構造物の壁面に対し、比較例3及び実施例2,比較例4~5を被覆し、施工後にピンホールが残っているか確認した。
合格 :ピンホールなし
不合格:ピンホールあり
【0116】
<接着性>
標準状態として、コンクリートブロック(300×300×30mm)の片面に施工した試験体と、吸水状態として、コンクリートブロック(300×300×30mm)を常温水に24時間没水し、表面の水分をふき取った後に施工した試験体を作製した。
建研式付着力試験機にて接着力を測定し、以下の基準で合否を判定した。
標準状態
合格 :1.5N/mm2以上
不合格:1.5N/mm2以下
吸水状態
合格 :1.2N/mm2以上
不合格:1.2N/mm2以下
【0117】
【0118】
【0119】
表2~3の評価結果から、本願発明の防食方法では、下地追従性、耐酸性、耐有機酸性、硫黄侵入深さ、透水性、冷熱サイクル、混酸浸漬、耐候性に優れていた。比較例3に示したエポキシ樹脂を使用したノンクロス工法と比較して、耐薬品性が高く、下地追従性に優れているために、エポキシ工法よりもクラックが発生し難い。またエポキシ工法よりも冷熱サイクル数が高いために、長期耐久性が優れた防食性を有していた。
【符号の説明】
【0120】
1:表面処理層
2:プライマー層
3:素地調整材層(ビニルエステルパテ)
4:中塗り層1
5:中塗り層2
6:中塗り層3
7:トップコート層
【要約】
【課題】エポキシ樹脂を使用したノンクロス工法と同等以上の作業性と、エポキシ樹脂よりも優れた防食性を有するコンクリートの防食方法、コンクリート腐食塗膜、および、コンクリート防食用樹脂組成物を提供する。
【解決手段】コンクリート表面を粗面化処理する工程、粗面化された表面にプライマー組成物を塗布する工程、素地調整材を塗布する工程、(A)ビニルエステル系樹脂、(B)短繊維補強材、および、(C)揺変剤を含有するコンクリート防食用樹脂組成物を塗布する工程、ならびに、トップコート用樹脂組成物を塗布する工程を含むコンクリートの防食方法に関する。
【選択図】 なし