(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-02
(45)【発行日】2022-05-13
(54)【発明の名称】水素の生産のためのプロセスおよび装置
(51)【国際特許分類】
C25B 1/04 20210101AFI20220506BHJP
C25B 9/00 20210101ALI20220506BHJP
C25B 15/08 20060101ALI20220506BHJP
C25B 13/04 20210101ALI20220506BHJP
C25B 13/08 20060101ALI20220506BHJP
C25B 15/023 20210101ALI20220506BHJP
C25B 9/21 20210101ALI20220506BHJP
H01M 8/0656 20160101ALI20220506BHJP
H01M 8/00 20160101ALI20220506BHJP
F02G 1/043 20060101ALI20220506BHJP
【FI】
C25B1/04
C25B9/00 A
C25B15/08 302
C25B15/08 304
C25B13/04 301
C25B13/08 301
C25B15/023
C25B9/21
H01M8/0656
H01M8/00 Z
F02G1/043 E
(21)【出願番号】P 2021544281
(86)(22)【出願日】2019-10-08
(86)【国際出願番号】 GB2019052854
(87)【国際公開番号】W WO2020074886
(87)【国際公開日】2020-04-16
【審査請求日】2021-07-30
(32)【優先日】2018-10-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521151164
【氏名又は名称】シージーイー エナジー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】シルバ, ヌーノ ミゲル マチャド コスタ ダ
【審査官】大塚 美咲
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-001117(JP,A)
【文献】特開2004-210591(JP,A)
【文献】特開2002-104801(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第1093759(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25B 1/04
C25B 9/00
C25B 15/08
C25B 13/04
C25B 13/08
C25B 15/023
C25B 9/21
H01M 8/0656
H01M 8/00
F02G 1/043
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素の生産のためのプロセスであって、前記プロセスは、
電解槽の中で水を電解し、水素ガスおよび酸素ガスを生産することであって、前記電解槽は、水素ガスのための第1の出口を有する、ことと、
前記電解槽の前記第1の出口から反応チャンバに前記水素ガスを通過させることであって、前記反応チャンバは、前記電解槽から前記水素ガスを受容するための第1の入口と、前記反応チャンバから外に通過する水素ガスのための第2の出口とを備え、前記反応チャンバは、少なくとも部分的に、アルカリ溶液中に浸漬される、金属またはその合金の1つ以上の部片を含有し、前記第1の入口は、前記水素ガスが、前記アルカリ溶液を通して発泡するように配列されている、ことと、
前記第2の出口からガス浄化チャンバに前記水素ガスを通過させることであって、前記ガス浄化チャンバは、前記反応チャンバから水素ガスを受容するための第2の入口と、前記浄化チャンバから外に通過する水素ガスのための第3の出口とを備え、前記ガス浄化チャンバは、水溶液を含有し、前記第2の入口は、前記水素ガスが、前記水溶液を通して発泡するように配列されている、ことと、
前記第3の出口から水素ガスを回収することと
を含む、プロセス。
【請求項2】
前記電解槽は、少なくとも0.25S/cmの伝導性を有するイオン性溶液を含有する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記イオン性溶液は、少なくとも0.3Mの濃度を有するKOH(aq)から成る、請求項2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記イオン性溶液は、少なくとも0.0001Mの濃度における、水酸化アルミニウム、または前記反応チャンバから回収される金属水酸化物から成る、請求項2または請求項3に記載のプロセス。
【請求項5】
前記プロセスはさらに、前記電解槽から酸素を回収することを含む、
請求項1~4のいずれかに記載のプロセス。
【請求項6】
前記金属またはその合金は、アルミニウムから成る、
請求項1~5のいずれかに記載のプロセス。
【請求項7】
前記金属またはその合金は、金属屑である、
請求項1~6のいずれかに記載のプロセス。
【請求項8】
前記反応チャンバは、それぞれが0.1kg未満の重量を有する、金属またはその合金の複数の部片を含有する、
請求項1~7のいずれかに記載のプロセス。
【請求項9】
前記アルカリ溶液は、NaOHまたはKOHから成る、
請求項1~8のいずれかに記載のプロセス。
【請求項10】
前記プロセスはさらに、前記反応チャンバから金属酸化物または金属水酸化物を回収することを含む、
請求項1~9のいずれかに記載のプロセス。
【請求項11】
前記プロセスはさらに、前記金属酸化物または金属水酸化物を処理し、前記金属を回収することを含む、請求項10に記載のプロセス。
【請求項12】
前記プロセスはさらに、使用済み水溶液を前記ガス浄化チャンバから前記電解槽に再生利用することを含む、
請求項1~11のいずれかに記載のプロセス。
【請求項13】
水素を生産するための装置であって、前記装置は、
水素および酸素ガスを生産するための水の電解のための電解槽であって、前記電解槽は、水素ガスのための第1の出口を有する、電解槽と、
前記第1の出口と流体連通する第1の入口と、第2の出口とを備える、反応チャンバと、
前記第2の出口と流体連通する第2の入口と、前記生産された水素ガスのための第3の出口とを備える、ガス浄化チャンバと
を備え、
前記反応チャンバは、少なくとも部分的に、アルカリ溶液中に浸漬される、金属またはその合金の1つ以上の部片を含有し、前記第1の入口は、前記アルカリ溶液を通して水素ガスを発泡させるためのものであり、
前記ガス浄化チャンバは、水溶液を含有し、前記第2の入口は、前記水溶液を通して水素ガスを発泡させるためのものである、装置。
【請求項14】
前記電解槽はさらに、前記電解槽内で水を処理するためのマグネトロンを備える、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記電解槽は、カソードと、アノードと、その間に配列された複数の中性プレートとを備え、各中性プレートは、電解液を保持するための容積によって、各隣接する中性プレートから分離され、前記容積は、メッシュ膜を含有し、それによってカソード側容積およびアノード側容積を画定し、各カソード側容積は、前記第1の出口と流体連通し、前記メッシュ膜は、気体酸素および水素に対し
て不浸透性である、請求項13または請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記メッシュ膜は、ナイロンメッシュ膜である、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記第1の出口と前記第1の入口との間に配列され、それらと流体連通する、逆流防止部をさらに備える、請求項13~16のいずれかに記載の装置。
【請求項18】
前記装置は、複数の交換可能な反応チャンバを備える、請求項13~17のいずれかに記載の装置。
【請求項19】
前記第1の入口と連通する第1のセンサと、前記第2の出口と連通する第2のセンサとをさらに備え、前記第1および第2のセンサは、水素ガス流率を判定するためのものである、請求項18に記載の装置。
【請求項20】
前記装置は、請求項1~12のいずれかに記載のプロセスのためのものである、請求項13~19のいずれかに記載の装置。
【請求項21】
請求項13~20のいずれかに記載の装置を備える、車両用軽油またはガソリンエンジンであって、前記第3の出口は、前記エンジンの燃焼チャンバに水素ガスを供給するように配列されている、車両用軽油またはガソリンエンジン。
【請求項22】
請求項13~
20のいずれかに記載の装置
と、燃料電池
とを備える、発電
機であって、前記第3の出口は、前記燃料電池に水素ガスを供給するように配列されている、発電
機。
【請求項23】
請求項13~20のいずれかに記載の装置と、バーナヘッドとを備える、調理デバイスであって、前記第3の出口は、前記バーナヘッドに水素ガスを供給するように配列されている、調理デバイス。
【請求項24】
請求項13~20のいずれかに記載の装置と、ガストーチとを備える、溶接デバイスまたはプラズマ切断デバイスであって、前記第3の出口は、前記ガストーチに水素ガスを供給するように配列されている、溶接デバイスまたはプラズマ切断デバイス。
【請求項25】
請求項13~20のいずれかに記載の装置と、パイロット火炎を備える燃焼チャンバとを備える、加熱ボイラであって、前記第3の出口は、前記ボイラの燃焼チャンバに水素ガスを供給するように配列されている、加熱ボイラ。
【請求項26】
請求項13~20のいずれかに記載の装置と、熱機関とを備える、スターリングエンジンであって、前記第3の出口は、前記熱機関に水素ガスを供給するように配列されている、スターリングエンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、水素の生産のためのプロセスおよび装置に関する。具体的には、本開示は、可動式エネルギー発生システムを含む、ある範囲の用途における使用のための、好適に清浄かつ純粋な水素ガス源を提供する。
【背景技術】
【0002】
燃料の枯渇についての懸念点に起因して、エネルギーを発生させるための新しい方法が、これまでの10年間にわたって調査されている。環境にやさしく、持続可能であり得る、水素エネルギーは、その有望な用途のために、研究者から大いに関心を集めている。水電解は、特に、(風、太陽光電池、潮汐等からの)再生可能電気と併せて、水素の「ゼロエミッション」源を提供することができる。
【0003】
エネルギーを発生させるための水素の使用は、ガソリンの値の約2.5倍である、高い発熱量を有するため、望ましい。純粋な酸素の存在下でのその燃焼は、水の同時形成を伴い、完全に清浄である。水素はまた、地域のエネルギーニーズに従って、現場でまたは要求に応じて生産されるための能力も有する。
【0004】
従来的に、水素は、高温および高圧を必要とする、メタノール水蒸気改質によって生産される。加えて、取得されるH2ガスは、典型的には、COで汚染され、これは、燃料電池触媒を汚濁し、動作の間にそれらを急速に劣化させるであろう。
【0005】
従来的な水電解は、超高純度のH2生産のための良好に確立された商業用技術である。再生可能エネルギー(風、太陽光電池、潮汐等)からの発電のための技術が、広く開発されているが、現在の電気生産は、時間的スケールに基づくエネルギー要求に良好に合致することに失敗している。したがって、ピーク電力使用時間外において緩和条件下で水素を生産するために電気を使用することに、焦点が当てられている。
【0006】
しかしながら、従来的な電解は、H2の大量生産に関するいくつかの限界を有する。第1に、これは、高価な電気エネルギー消費を伴う。第2に、H2を生産されたO2で汚染する、任意のクロスオーバ効果が、プロセスを内破のリスクに曝す。さらに、化学試薬の多用もまた、開発のコストを増大させる。
【0007】
エネルギー消費を減少させるために、いくつかの方略が、研究されている。第1の方略は、オーム損失を低減させることである。より低いオーム損失は、電解システムが、より高い水素生産効率および純度を伴って、より高い電流密度下で動作されることを可能にする。
【0008】
第2の方略は、高い活性および安定性を伴う、電解質触媒を開発することである。水電解のための標準的電位は、1.23Vであり、これは、水分解が、強烈な上り坂反応であることを意味する。水素生起反応または酸素生起反応のための多数の優れた電気触媒が、報告されているが、水電解槽は、依然として、動作するために1.6~2.0Vを必要とする。これは、主に、水電解のアノード酸素生起反応プロセスが、動態学的に緩慢であり、駆動するために強化された過電位を必要とするためである。
【0009】
Porciuncula et.al.,Braz.J.Chem.Eng.の「Production of hydrogen in the reaction between aluminium and water in the presence of NaOH and KOH」vol.29 no.2 Sao Paulo Apr./June 2012は、アルミニウムと水の反応からの水素の生産を開示する。
【0010】
Soler et.al.,の「Aluminium and aluminium alloys as sources of hydrogen for fuel cell applications」Journal of Power Sources 169(2007)144-149は、水性アルカリ溶液を用いたアルミニウムおよびアルミニウム合金からの水素の生産を開示する。
【0011】
第CN2249251号は、ナイロン/テリレン混紡織物から作製される水素/酸素分離フィルムを備える、電解槽を開示する。
【0012】
故に、水素を生産する改良された方法、したがって、装置を提供すること、および/または先行技術と関連付けられる問題のうちの少なくともいくつかに取り組むこと、または少なくとも、商業的に実行可能なその代替物を提供することが、望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0014】
第1の側面の側面では、水素の生産のためのプロセスが提供される。プロセスは、
電解槽の中で水を電解し、水素ガスおよび酸素ガスを生産することであって、電解槽は、水素ガスのための第1の出口を有する、ことと、
電解槽の第1の出口から反応チャンバに水素ガスを通過させることであって、反応チャンバは、電解槽から水素ガスを受容するための第1の入口と、反応チャンバから外に通過する水素ガスのための第2の出口とを備え、反応チャンバは、少なくとも部分的に、アルカリ溶液中に浸漬される、金属またはその合金の1つ以上の部片を含有し、第1の入口は、水素ガスが、アルカリ溶液を通して発泡するように配列される、ことと、
第2の出口からガス浄化チャンバに水素ガスを通過させることであって、ガス浄化チャンバは、反応チャンバから水素ガスを受容するための第2の入口と、浄化チャンバから外に通過する水素ガスのための第3の出口とを備え、ガス浄化チャンバは、水溶液を含有し、第2の入口は、水素ガスが、水溶液を通して発泡するように配列される、ことと、
第3の出口から水素ガスを回収することと
を含む。
【0015】
本発明は、ここでさらに説明されるであろう。以下の段落では、本発明の異なる側面が、より詳細に定義される。そのように定義される各側面は、明確にそうではないことが示されない限り、任意の他の側面または複数の側面と組み合わせられ得る。特に、好ましい、または有利であるものとして示される、任意の特徴が、好ましい、または有利であるものとして示される、任意の他の特徴または複数の特徴と組み合わせられ得る。
【0016】
本発明は、アルミニウム等の金属からの水素の化学的生産によって補完される様式における、水素の電解生産を提供する。本「化学的に支援される」水素生産は、水酸化アルミニウム等の有用な付加価値のある副生成物を生じさせる。
【0017】
本プロセスは、水素の生産のためのものである。本プロセスは、電解槽の中で水を電解し、水素ガスおよび酸素ガスを生産する、第1のステップを含む。水の電解は、周知の技法であり、水溶液を通した電位の印加を伴う。任意の標準的電解装置も、使用されることができるが、好ましい設計が、本明細書に説明される。
【0018】
好ましい電解槽は、片側においてアノードと、他側において、カソードとを有し、その間にイオン性溶液を伴う。電解ユニットは、電解質を含有する水溶液である、イオン性溶液に依拠し、溶液の導電性を改良する。溶液の増加された伝導性は、電解反応が進行し得る率を増加させ、水成分の分解を増加させ、単位時間あたりの水素収率を増加させる。好ましくは、電解ユニット内のイオン性溶液は、少なくとも0.25S/cm、より好ましくは、少なくとも0.5S/cm、最も好ましくは、0.5~1S/cmの伝導性を有する。イオン性溶液の伝導性は、従来の機器を使用して測定されることができ、20℃において測定されるべきである。
【0019】
電解ユニット内での使用のための好ましいイオン性溶液は、KOHまたはNaOH等のアルカリ溶液である。そのような溶液は、好ましくは、少なくとも0.1M、好ましくは、少なくとも0.2M、最も好ましくは、約0.3Mの濃度を有するであろう。下記に解説されるように、本イオン性溶液は、本プロセスの後の段階から再生利用されることができる。
【0020】
一実施形態によると、イオン性溶液は、(KOHまたはNaOH等のアルカリに加えて)水酸化アルミニウムまたは別の可溶性金属水酸化物で補完されてもよい。ある量の添加される金属水酸化物が、好ましくは、0.001~0.01M等、少なくとも0.0001Mの量において存在する。これは、いくつかの重要な利点を有する。第1に、これは、酸素および他の不純物と反応するための強力な衝動を有するため、電解反応を改良する。これは、添加が、いくつかの水不純物を引き離し、H2生産の純度をわずかに増加させることを意味する。これはまた、わずかなプロセス温度上昇も提供し得る。さらに、金属水酸化物は、全体として、本プロセスの副生成物として容易に取得されることができ、例えば、水酸化アルミニウムが、アルミニウムが下記に議論される反応チャンバ内で金属として使用される場合、使用されることができる。したがって、金属水酸化物は、反応チャンバから回収されることができる。例えば、水酸化アルミニウムの0.001M溶液が、1gのAlOHを20LのKOH溶液中で溶解することによって取得されることができる。
【0021】
電解槽の中のイオン性溶液内に、典型的には、複数の中性プレートが、提供される。これらの中性プレートは、好ましくは、相互および電極と平行であり、均等に離間される。これらは、イオン性溶液によって被られる電圧を、直列の複数の個々のサブ槽のようなより小さいステップに分割するように作用し、それによって、電極上の腐食摩耗を低減させる。水素が、カソードにおいて生産され、酸素が、アノードにおいて生産される。加えて、各「サブ槽」の中で、水素が、中性プレート上のカソード側において生産され、酸素が、アノード側において生産される。
【0022】
酸素および水素は、生産されるにつれて、イオン性溶液から外に、ガスとして発泡する。電解槽は、各「サブ槽」の各カソード側から水素ガスを収集し、各「サブ槽」の各アノード側から酸素ガスを収集するための手段を有する。好ましくは、水素と酸素ガスの相互汚染を防止する、膜が、アノードとカソードとの間に提供される。中性プレートが、電解槽内に含まれる場合、別個の膜が、各中性プレートの間に、アノードと隣接する中性プレートとの間に、カソードと隣接する中性プレートとの間に提供されるであろう。
【0023】
本発明者らは、そのような膜の使用が、システムの安全性および収率を改良することを見出している。また、高価なタイプの膜は、要求されず、膜は、メッシュ膜であることができる。そのようなメッシュ膜は、液体電解質の流動を妨害することなく、気体酸素および水素種に対して不浸透性であるように容易に選択されることができる。これは、特に、電極表面から離れるようなガスの急激な発泡に当てはまる。メッシュ膜は、好ましくは、ポリマーメッシュ膜であり、化学的適合性のために採用されているイオン性溶液に応じて選択されることができる。ナイロンメッシュは、イオン性溶液としてのKOH(aq)のために好ましく、ポリエステルメッシュは、イオン性溶液としてのNaOH(aq)のために好ましい。
【0024】
好ましいナイロンモノフィラメントメッシュは、1インチあたり300~500個の交差数を有する。メッシュは、水がこれを通して通過することを可能にするが、気泡が通過することを可能にしない、薄壁を形成する。HおよびOイオンは、水を通して通過し、膜を交差し、それらが引き付けられる、電極プレート(正または負)上にガスを形成することができる。水素は、膜壁の負側に存在し、酸素は、正側に存在する。メッシュは、隔壁であり、これは、2つのチャンバを形成/分離する。ガスは、チャンバのそれらの個別の側の上部に上昇し、上部において集まる。
【0025】
電解槽は、水素ガスのための第1の出口を有する。出口は、以降の処理のために電解槽から収集される水素ガスを通過させるためのものである。出口は、臨界レベルの酸素が、本システムに進入し、内破のリスクに曝した場合、電解槽の損傷を防止するために、逆流抑制部に通過させてもよい。しかしながら、上記に説明されるように膜を使用すると、内破のリスクが低減されるように、酸素の水素汚染が、低減または回避される。
【0026】
本プロセスは、電解槽の第1の出口から反応チャンバに水素ガスを通過させる、さらなるステップを含む。反応チャンバは、電解槽から水素ガスを受容するための第1の入口と、反応チャンバから外に通過する水素ガスのための第2の出口とを備える。
【0027】
反応チャンバは、少なくとも部分的に、アルカリ溶液中に浸漬される、金属またはその合金の1つ以上の部片を含有する。金属または(金属を含有する)合金が、アルカリと反応し、水素および金属酸化物または水酸化物を生産する。選択された金属または合金は、そのような反応が進行するために十分な濃度を有する、アルカリとの組み合わせにおいて使用されるべきである。金属または合金は、好ましくは、アルミニウムまたは鋼鉄から成る。
【0028】
本発明において好ましい、アルミニウムに関して、本金属は、その表面上に、水分子の直接的打撃を防止する、Al2O3の非常に薄い不動態層を有するため、強力なアルカリ溶液が、要求される。
【0029】
アルカリは、反応の中で消費されず、触媒として作用し、完全に回収されることができる。これは、水素の発生において生産されるアルミン酸塩が、アルカリを再発生させる、分解反応を受けるためである。水素を生産するための水溶液中でのアルミニウムと水酸化カリウムの反応は、以下の通りである。
2Al+6H2O+2KOH→2K[Al(OH)4]+3H2
K[Al(OH)4]→KOH+Al(OH)3
【0030】
アルミニウムと水との間の反応は、以下の化学量論に従う。したがって、アルミニウムおよび水のみが、水素を生産するために消費される未加工材料である。
2Al+6H2O→2Al(OH)3+3H2
【0031】
必要である場合、K[Al(OH)4]生成物もまた、硫酸等の酸で処理され、水酸化アルミニウムを回収することができる。
【0032】
金属または合金の形態は、特に重要ではない。しかしながら、本発明は、アルミニウム缶等の廃棄または屑金属源を再生利用するための有用な機会を提供する。加えて、反応が合理的な率で進行し得るように、金属が、高表面積を有することが望ましい。故に、金属は、好ましくは、高表面対重量比を有するように処理される。缶等のアルミニウム屑の事例では、これらは、破片に粉砕または断片化されることができる。好ましくは、金属または金属合金は、各部片が、0.1kg未満の重量を有する、複数の部片として提供される。
【0033】
アルカリ溶液は、好ましくは、KOHまたはNaOHであり、好ましくは、1~5M等、少なくとも1Mの濃度を有する。
【0034】
第1の入口は、水素ガスがアルカリ溶液を通して発泡するように配列される。すなわち、第1の入口は、アルカリ溶液のレベルの下方に浸漬される。水素ガスは、好ましくは、単点を通して、またはシャワーヘッドタイプのノズルを通してアルカリ溶液に進入し、気泡を分散させることができる。
【0035】
本発明者らは、金属/アルカリ系の撹拌が、反応率および水素の生産を増加させるため、これが、特に重要であることを見出している。理解されるであろうように、燃料電池との組み合わせは、掻回器等の付加的な複雑な機器またはさらなるエネルギー入力を要求することなく、反応チャンバの撹拌を提供する。理論によって拘束されることを所望するわけではないが、撹拌が、溶液が良好に混合することを可能にし、反応のためのさらなる表面を生成するため、反応を強化することを理解されたい。したがって、撹拌は、アルミニウム/水反応が生じるためのより高い可能性を生じさせ、水素生産およびエネルギー効率の両方においてより効率的なプロセスを可能にする。
【0036】
第2の出口から退出するガスは、燃料電池から取得される、水素ガスであり、反応チャンバの中で金属とのアルカリ反応から生産される水素ガスによって補完される。これは、従来の燃料電池と比較して、水素生産収率が、増加され得ることを意味する。反応チャンバは、使用済みになると交換され得る、本システムの構成要素であり、したがって、補完的バッテリのような水素源として作用する。さらに、酸化物または水酸化物の形態にある、アルカリ反応金属が、有用な生成物になることができる。
【0037】
アルミニウムは、特に、金属として好ましい(アルミニウム合金もまた、採用されることができる)。アルミニウムを使用するいくつかの利点が、存在する。その副生成物である、Al(OH)3は、Al金属を回収するための電解の使用を含み、有用な副生成物として他のアルミニウム塩を生産するために使用されてもよい。反応において使用されるアルミニウムは、ソフトドリンクまたはビール缶等の再生利用可能な材料から取得されることができる。また、これは、KOHおよびNaOH等の容易かつ安価に入手可能なアルカリ源と反応する。上記の反応によって発生される水素は、純粋であり、高純度用途のために好適である。
【0038】
好ましくは、本プロセスはさらに、反応チャンバから金属酸化物または金属水酸化物を回収することを含む。好ましくは、本プロセスはさらに、金属酸化物または金属水酸化物を処理し、金属を回収することを含む。アルミニウムは、1800年代後期に開発された、2つのプロセス、すなわち、ボーキサイト鉱石から純粋なアルミナを生産する、Bayerプロセス、およびアルミナからアルミニウムを生産する、Hall-H´eroultプロセスによって、水酸化アルミニウムから再度発生されることができる。
【0039】
本プロセスは、反応チャンバの第2の出口からガス浄化チャンバに水素ガスを通過させる、さらなるステップを含む。反応チャンバから退出する水素ガスは、イオン性溶液の一部および/またはアルカリ溶液の一部を蒸気として同伴させ得る。これは、生産される水素ガスの有用性を低下させる、本システムにおける望ましくない汚染物質である。ガス浄化チャンバは、そのような蒸気を除去する役割を果たす。
【0040】
ガス浄化チャンバは、反応チャンバから水素ガスを受容するための第2の入口と、浄化チャンバから外に通過する水素ガスのための第3の出口とを備える。
【0041】
ガス浄化チャンバは、水溶液を含有する。これは、典型的には、単なる水である。しかしながら、経時的に、水素と同伴された蒸発したイオン性溶液および/またはアルカリ溶液が、水中に捕捉された状態になるであろう。本システムが、同一の試薬を使用し、電解槽内にイオン性溶液を、反応チャンバ内にアルカリ溶液(KOH等)を提供する場合、水は、本試薬の弱溶液の状態になるであろう。いったんレベルが、十分に高い濃度に到達すると、水は、入れ替えられることができる。好ましくは、本プロセスはさらに、イオン性溶液の少なくとも一部としての使用のために、使用済み水溶液をガス浄化チャンバから電解槽に再生利用することを含む。すなわち、汚染された水は、電解槽がKOH等の試薬を再生利用するための新鮮なイオン性溶液を作製するために使用されることができる。
【0042】
第2の入口は、水素ガスが水溶液を通して発泡するように配列される。すなわち、第1の入口は、水溶液のレベルの下方に浸漬される。水素ガスは、好ましくは、単点を通して、またはシャワーヘッドタイプのノズルを通して水溶液に進入し、気泡を分散させ、浄化を強化することができる。
【0043】
本プロセスは、第3の出口からの水素ガスの回収を可能にする。第3の出口は、本プロセスからの生成物流を表す。ガス浄化チャンバから、1~5バールの水素の流動が、取得され、これは、燃料電池、熱分解、加熱、調理、溶接、切断、研磨、およびエンジンの脱炭素化からの異なるタイプの用途のためのエネルギーの新しい源として使用されるように準備ができている。
【0044】
好ましくは、本プロセスはさらに、電解槽から酸素を回収することを含む。これは、有用な市販製品になることができる。代替として、これは、大気中に放出されることもできる。
【0045】
さらなる側面によると、水素を生産するための装置が提供される。装置は、
水素および酸素ガスを生産するための水の電解のための電解槽であって、水素ガスのための第1の出口を有する、電解槽と、
第1の出口と流体連通する第1の入口と、第2の出口とを備える、反応チャンバと、
第2の出口と流体連通する第2の入口と、生産される水素ガスのための第3の出口とを備える、ガス浄化チャンバと
を備え、
反応チャンバは、少なくとも部分的に、アルカリ溶液中に浸漬される、金属またはその合金の1つ以上の部片を含有し、第1の入口は、アルカリ溶液を通して水素ガスを発泡させるためのものであり、
ガス浄化チャンバは、水溶液を含有し、第2の入口は、水溶液を通して水素ガスを発泡させるためのものである。
【0046】
第1の側面において説明されるような要素全てが、本さらなる側面においても同じように適用および理解されることができ、逆もまた同様である。
【0047】
好ましくは、電解槽はさらに、電解槽内で水を処理するためのマグネトロンを備える。マグネトロンで電解質を処理することは、水が固有振動数になることを可能にし、水解槽が、より少ない量の電気を添加し、水分子を破壊することを可能にする。これは、電解槽のために要求される過電位を低減させる。
【0048】
好ましくは、電解槽は、カソードと、アノードと、その間に配列される、複数の中性プレートとを備え、各中性プレートは、電解液を保持するための容積によって、各隣接する中性プレートから分離され、該容積は、メッシュ膜を含有し、それによって、カソード側容積およびアノード側容積を画定し、各カソード側容積は、第1の出口と流体連通し、メッシュ膜は、気体酸素および水素に対して実質的に不浸透性である。好ましくは、メッシュ膜は、メッシュ膜、好ましくは、ナイロンメッシュ膜である。
【0049】
メッシュ膜は、コストを有意に低下させ、化学物質によって支援される水素電気触媒反応の安定性を大幅に強化することができる。メッシュ膜は、水がこれを通して通過することを可能にするが、気泡が通過することを可能にしない、薄壁を形成する。酸素の気泡が、アノードにおいて形成され、ヒドロニウムイオンが、水を通して通過し、膜を交差し、カソード上に水素ガスを形成する。水素は、膜壁の負側に存在し、酸素は、正側に存在する。メッシュ膜は、2つのチャンバを形成および分離する、隔壁である。ガスは、チャンバのそれらの個別の側の上部に上昇し、上部において集まり、それらの個別の出口によって退出する。
【0050】
好ましくは、本装置はさらに、第1の出口と第1の入口との間に配列され、それらと流体連通する、逆流防止部を備える。
【0051】
好ましくは、本装置は、複数の交換可能な反応チャンバを備える。これらは、使用済みになると、除去および交換されることができる。したがって、燃料電池からの水素の持続的生産が、金属のバッチ式反応に結合されることができる。
【0052】
好ましくは、本装置はさらに、第1の入口と連通する、第1のセンサと、第2の出口と連通する、第2のセンサとを備え、第1および第2のセンサは、水素ガス流率を判定するためのものである。これは、オペレータが、金属が完全に反応したときを判定することを可能にする。
【0053】
さらなる側面によると、水素を生産するための装置が提供される。装置は、
第2の出口を備える、反応チャンバと、
第2の出口と流体連通する第2の入口と、生産される水素ガスのための第3の出口とを備える、ガス浄化チャンバと
を備え、
反応チャンバは、少なくとも部分的に、アルカリ溶液中に浸漬される、金属またはその合金の1つ以上の部片を含有し、
ガス浄化チャンバは、水溶液を含有し、第2の入口は、水溶液を通して水素ガスを発泡させるためのものである。
【0054】
本側面の装置は、ガス浄化システムと結合され、水素生成物の中へのアルカリ溶液の飛沫同伴を回避する、上記に説明されるような反応チャンバに関する。
【0055】
さらなる側面によると、上記に説明されるような装置を備える、車両用軽油またはガソリンエンジンが提供され、第3の出口は、エンジンの燃焼チャンバに水素ガスを供給するように配列される。すなわち、車両用軽油またはガソリンエンジンであって、
第2の出口を備える、反応チャンバと、
第2の出口と流体連通する第2の入口と、生産される水素ガスのための第3の出口とを備える、ガス浄化チャンバと
を備え、
反応チャンバは、少なくとも部分的に、アルカリ溶液中に浸漬される、金属または合金を含有し、
ガス浄化チャンバは、水溶液を含有し、第2の入口は、水溶液を通して水素ガスを発泡させるためのものである、装置を伴う、第1の側面またはさらなる側面の装置を伴う、車両用軽油またはガソリンエンジンが、提供される。
【0056】
両方の実施形態では、本装置は、燃料の燃焼を補完するための水素源を提供する。これは、水素が、高温で燃え、すなわち、エンジンからの微粒子放出が、低減され、燃料の使用が、低減されるため、特に有利である。好ましくは、エンジンは、エンジン性能を監視し、水素の使用を制御するための、システムを備える。
【0057】
反応チャンバのみを提供し、電解槽を伴わない実施形態では、水素生産を助長するために要求される撹拌は、有利には、エンジンと、反応チャンバとを含有する車両の運動および振動によって取得されることができる。有利なこととして、反応チャンバは、入れ替えられ、新鮮な水素燃料源を提供することができ、(水酸化アルミニウム等の)使用済み金属は、さらなる処理のために回収されることができる。
【0058】
さらなる側面によると、本明細書に説明されるような装置を備える、燃料電池を備える、発電機、好ましくは、車両用発電機であって、第3の出口は、燃料電池に水素ガスを供給するように配列される、発電機、好ましくは、車両用発電機が、提供される。
【0059】
本明細書に説明される方法および装置は、従来的な水電解に優る、いくつかの有意な利点を有する。第1に、再生可能な源が、使用される場合、より低いエネルギーコストまたは「ほぼゼロ」のエネルギーコストが、存在する。第2に、より高い価値が、反応チャンバから取得され得る生成物に追加され、これは、使用される金属が、しっかりとした廃棄サイクルに由来する再生利用金属である場合、特に有利である。第3に、本プロセスは、望ましい純粋なH2のO2汚染を防止し、したがって、可能性として考えられる内破の危険を排除することによって、向上された安全性を提供することができる。第4に、これは、H2の純度の追加のみのために数百個の交差数を伴う、より低いコストのカスタマイズされたナイロンモノフィラメントメッシュ膜に依拠し得るため、低コストを有する。本プロセスは、高純度の水素、酸素、および水酸化アルミニウムを生産する。
【0060】
さらなる側面によると、上記に説明される側面のうちの1つによる装置と、バーナヘッドとを備える、調理デバイスであって、第3の出口は、バーナヘッドに水素ガスを供給するように配列される、調理デバイスが、提供される。バーナヘッドは、例えば、従来のガスレンジのための調理リングであってもよい。
【0061】
さらなる側面によると、上記に説明される側面のうちの1つによる装置と、ガストーチとを備える、溶接デバイスまたはプラズマ切断デバイスであって、第3の出口は、ガストーチに水素ガスを供給するように配列される、溶接デバイスまたはプラズマ切断デバイスが、提供される。ガストーチは、従来の酸素アセチレントーチまたはモノガストーチの形態をとってもよい。
【0062】
さらなる側面によると、上記に説明される側面のうちの1つによる装置と、パイロット火炎を伴う燃焼チャンバとを備える、加熱ボイラであって、第3の出口は、ボイラの燃焼チャンバに水素ガスを供給するように配列される、加熱ボイラが、提供される。好適なボイラの設計は、周知である。
【0063】
さらなる側面によると、上記に説明される側面のうちの1つによる装置と、熱機関とを備える、スターリングエンジンであって、第3の出口は、熱機関に水素ガスを供給するように配列される、スターリングエンジンが、提供される。熱機関は、バーナヘッドを使用し、スターリングエンジンは、熱エネルギーの機械的作業への正味変換が存在するように、異なる温度における空気または他のガス(作業流体)の周期的な圧縮および拡張によって動作する。
本願明細書は、例えば、以下の項目も提供する。
(項目1)
水素の生産のためのプロセスであって、前記プロセスは、
電解槽の中で水を電解し、水素ガスおよび酸素ガスを生産することであって、前記電解槽は、水素ガスのための第1の出口を有する、ことと、
前記電解槽の前記第1の出口から反応チャンバに前記水素ガスを通過させることであって、前記反応チャンバは、前記電解槽から前記水素ガスを受容するための第1の入口と、前記反応チャンバから外に通過する水素ガスのための第2の出口とを備え、前記反応チャンバは、少なくとも部分的に、アルカリ溶液中に浸漬される、金属またはその合金の1つ以上の部片を含有し、前記第1の入口は、前記水素ガスが、前記アルカリ溶液を通して発泡するように配列されている、ことと、
前記第2の出口からガス浄化チャンバに前記水素ガスを通過させることであって、前記ガス浄化チャンバは、前記反応チャンバから水素ガスを受容するための第2の入口と、前記浄化チャンバから外に通過する水素ガスのための第3の出口とを備え、前記ガス浄化チャンバは、水溶液を含有し、前記第2の入口は、前記水素ガスが、前記水溶液を通して発泡するように配列されている、ことと、
前記第3の出口から水素ガスを回収することと
を含む、プロセス。
(項目2)
前記電解槽は、少なくとも0.25S/cmの伝導性を有するイオン性溶液を含有する、項目1に記載のプロセス。
(項目3)
前記イオン性溶液は、少なくとも0.3Mの濃度を有するKOH(aq)から成る、項目2に記載のプロセス。
(項目4)
前記イオン性溶液は、少なくとも0.0001Mの濃度における、水酸化アルミニウム、または前記反応チャンバから回収される金属水酸化物から成る、項目2または項目3に記載のプロセス。
(項目5)
前記プロセスはさらに、前記電解槽から酸素を回収することを含む、前記項目のいずれかに記載のプロセス。
(項目6)
前記金属またはその合金は、アルミニウムから成る、前記項目のいずれかに記載のプロセス。
(項目7)
前記金属またはその合金は、金属屑である、前記項目のいずれかに記載のプロセス。
(項目8)
前記反応チャンバは、それぞれが0.1kg未満の重量を有する、金属またはその合金の複数の部片を含有する、前記項目のいずれかに記載のプロセス。
(項目9)
前記アルカリ溶液は、NaOHまたはKOHから成る、前記項目のいずれかに記載のプロセス。
(項目10)
前記プロセスはさらに、前記反応チャンバから金属酸化物または金属水酸化物を回収することを含む、前記項目のいずれかに記載のプロセス。
(項目11)
前記プロセスはさらに、前記金属酸化物または金属水酸化物を処理し、前記金属を回収することを含む、項目10に記載のプロセス。
(項目12)
前記プロセスはさらに、使用済み水溶液を前記ガス浄化チャンバから前記電解槽に再生利用することを含む、前記項目のいずれかに記載のプロセス。
(項目13)
水素を生産するための装置であって、前記装置は、
水素および酸素ガスを生産するための水の電解のための電解槽であって、前記電解槽は、水素ガスのための第1の出口を有する、電解槽と、
前記第1の出口と流体連通する第1の入口と、第2の出口とを備える、反応チャンバと、
前記第2の出口と流体連通する第2の入口と、前記生産された水素ガスのための第3の出口とを備える、ガス浄化チャンバと
を備え、
前記反応チャンバは、少なくとも部分的に、アルカリ溶液中に浸漬される、金属またはその合金の1つ以上の部片を含有し、前記第1の入口は、前記アルカリ溶液を通して水素ガスを発泡させるためのものであり、
前記ガス浄化チャンバは、水溶液を含有し、前記第2の入口は、前記水溶液を通して水素ガスを発泡させるためのものである、装置。
(項目14)
前記電解槽はさらに、前記電解槽内で水を処理するためのマグネトロンを備える、項目13に記載の装置。
(項目15)
前記電解槽は、カソードと、アノードと、その間に配列された複数の中性プレートとを備え、各中性プレートは、電解液を保持するための容積によって、各隣接する中性プレートから分離され、前記容積は、メッシュ膜を含有し、それによってカソード側容積およびアノード側容積を画定し、各カソード側容積は、前記第1の出口と流体連通し、前記メッシュ膜は、気体酸素および水素に対して実質的に不浸透性である、項目13または項目14に記載の装置。
(項目16)
前記メッシュ膜は、ナイロンメッシュ膜である、項目15に記載の装置。
(項目17)
前記第1の出口と前記第1の入口との間に配列され、それらと流体連通する、逆流防止部をさらに備える、項目13~16のいずれかに記載の装置。
(項目18)
前記装置は、複数の交換可能な反応チャンバを備える、項目13~17のいずれかに記載の装置。
(項目19)
前記第1の入口と連通する第1のセンサと、前記第2の出口と連通する第2のセンサとをさらに備え、前記第1および第2のセンサは、水素ガス流率を判定するためのものである、項目18に記載の装置。
(項目20)
前記装置は、項目1~12のいずれかに記載のプロセスのためのものである、項目13~19のいずれかに記載の装置。
(項目21)
水素を生産するための装置であって、前記装置は、
第2の出口を備える反応チャンバと、
前記第2の出口と流体連通する第2の入口と、前記生産された水素ガスのための第3の出口とを備える、ガス浄化チャンバと
を備え、
前記反応チャンバは、少なくとも部分的に、アルカリ溶液中に浸漬される、金属またはその合金の1つ以上の部片を含有し、
前記ガス浄化チャンバは、水溶液を含有し、前記第2の入口は、前記水溶液を通して水素ガスを発泡させるためのものである、装置。
(項目22)
項目13~21のいずれかに記載の装置を備える、車両用軽油またはガソリンエンジンであって、前記第3の出口は、前記エンジンの燃焼チャンバに水素ガスを供給するように配列されている、車両用軽油またはガソリンエンジン。
(項目23)
項目13~21のいずれかに記載の装置を備える、燃料電池を備える、発電機、好ましくは、車両用発電機であって、前記第3の出口は、前記燃料電池に水素ガスを供給するように配列されている、発電機、好ましくは、車両用発電機。
(項目24)
項目13~21のいずれかに記載の装置と、バーナヘッドとを備える、調理デバイスであって、前記第3の出口は、前記バーナヘッドに水素ガスを供給するように配列されている、調理デバイス。
(項目25)
項目13~21のいずれかに記載の装置と、ガストーチとを備える、溶接デバイスまたはプラズマ切断デバイスであって、前記第3の出口は、前記ガストーチに水素ガスを供給するように配列されている、溶接デバイスまたはプラズマ切断デバイス。
(項目26)
項目13~21のいずれかに記載の装置と、パイロット火炎を備える燃焼チャンバとを備える、加熱ボイラであって、前記第3の出口は、前記ボイラの燃焼チャンバに水素ガスを供給するように配列されている、加熱ボイラ。
(項目27)
項目13~21のいずれかに記載の装置と、熱機関とを備える、スターリングエンジンであって、前記第3の出口は、前記熱機関に水素ガスを供給するように配列されている、スターリングエンジン。
【0064】
本発明は、ここで、以下の非限定的な図に関連して説明されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【
図1】
図1は、本明細書に説明されるような電解槽を示す。
【
図2】
図2は、本明細書に説明されるような装置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0066】
図1は、電解槽1を示す。槽1は、KOH等のイオン水性流体10を保持するための、タンク5を備える。本システムは、好ましくは、30%電解質1MのKOH標準溶液を伴う精製水を使用し、最適な性能のために必要な伝導性を達成する。
【0067】
槽1は、タンク5の各端部において提供される、アノード20と、カソード25とを具備する。カソード25およびアノード20は、電解のための駆動力を提供する、外部回路(図示せず)に接続される。
【0068】
タンク5は、中性プレート30によって分割される。これは、2つのサブ槽の形成をもたらす。中性プレートは、孔を有し、電解質循環を可能にしてもよい、または電解質は、中性プレート30の側間に配管されることができる。
【0069】
タンク5はさらに、中性プレート30とアノード20およびカソード25のそれぞれとの間に位置する、ナイロンメッシュ膜35によって分割される。これは、2つのサブ槽が、カソード側容積40Aと、アノード側部分40Bとを有するように、それらのそれぞれを分割する。
【0070】
マグネトロン46が、タンク5の中の流体10を励起させるために提供される。これは、外部回路によって印加される必要がある、電位を低減させる。
【0071】
タンク5は、複数のガス出口(45、50)を具備する。水素ガス出口45は、各サブ槽のカソード側容積40Aと連通するように提供される。酸素ガス出口50は、各サブ槽のアノード側容積40Bと連通するように提供される。
【0072】
使用時、電圧が、カソード25とアノード20との間に印加される。これは、イオン性流体10を分解させる。酸素ガス気泡55が、各サブ槽のアノード20において、およびアノード側容積40Bの中の中性プレート30上に形成される。水素ガス気泡60が、各サブ槽のカソード25において、およびカソード側容積40Aの中の中性プレート30上に形成される。生産された酸素ガスは、異なる産業用途のために、出力として貯蔵される、または単に大気に放出されることができる。
【0073】
好ましい電気回路は、12/24Vおよび0~140Aで稼働する、パルス波モジュラを伴う。標準的な水電解槽のように、外部回路電力は、これらの反応を引き起こすが、はるかにより少ない電力入力を伴う、電位を提供する。
【0074】
水素ガス気泡60は、水素ガス出口45において収集される。酸素ガス気泡55は、酸素ガス出口50において収集される。本明細書に説明されるような膜35の使用はまた、生産されるH2の中でのO2汚染を防止し、したがって、可能性として考えられる爆発を回避する役割も果たす。
【0075】
単一の中性プレート30が、示されているが、典型的には、複数の中性プレート30が、採用されるであろう。
【0076】
図2は、上記に説明される電解槽1を組み込む、装置100を示している。上記の番号は、適宜、再利用されている。
【0077】
装置100は、水素ガス出口45から水素ガスを取り出す。これは、逆流抑制部105を通して、逆流防止弁110を越えて、反応チャンバ115の中に通過される。
【0078】
反応チャンバ115は、発泡器の形態をとる。すなわち、反応チャンバ115の中の水素ガス入口120は、反応チャンバ115の底部に向かって水素ガスをもたらすように配列される。反応チャンバ115は、1MのKOH溶液125と、アルミニウム屑廃棄物130の断片とを含有する。
【0079】
使用時、水素ガスは、KOH溶液125を通して発泡し、溶液125をアルミニウム屑廃棄物130に対して撹拌する。これは、反応および水素のさらなる生産を促す。
【0080】
出口135を通して反応容器から退出する水素ガスは、電解槽からのガスと、反応チャンバ115からの付加的な水素ガスとから成る。
【0081】
出口135を通して反応容器から退出する水素ガスは、ガス浄化チャンバ145の入口140まで通過される。ガス浄化チャンバ145は、水150を含有する。水150は、装置の中で、前段階から同伴される任意のKOH溶液125を捕捉する役割を果たす。
【0082】
浄化された水素ガスが、使用のために、出口155および制御弁160によってガス浄化チャンバ145から退出する。本装置は、水素貯蔵デバイス(図示せず)と結合され、水素が制御される率において使用されることを可能にしてもよい。
【0083】
好適な電解槽の構造の具体的な説明が、ここで提供される。層が、以下のように、槽を横断して順番に提供される(同様の用語は、同じ構成要素を説明する)。
1.150×150mmおよび10mm厚のアクリルプレートであって、プレートは、正電極、負電極、水入力、水素および酸素の出力のための接続を有する、アクリルプレート
2.正極プレート(Inox 316、110×110mmおよび1.5mm厚)
3.酸素分離器(酸素出口への接続を伴うガスケット)
4.(本明細書に説明されるような)メッシュ膜
5.通常のガスケット
6.水素分離器(水素出口への接続を伴うガスケット)
7.中性プレート(Inox 316)
8.酸素分離器
9.メッシュ膜
10.通常のガスケット
11.水素分離器
12.中性プレート
13.酸素分離器
14.メッシュ膜
15.通常のガスケット
16.水素分離器
17.中性プレート
18.酸素分離器
19.メッシュ膜
20.通常のガスケット
21.水素分離器
22.中性プレート
23.酸素分離器
24.メッシュ膜
25.通常のガスケット
26.水素分離器
27.負極プレート
28.水素分離器
29.150×150mmおよび10mm厚のアクリルプレート
【0084】
別様に記載されない限り、本明細書における割合は全て、重量によるものであり、圧力は全て、ゲージではなく、絶対値である。
【0085】
本発明の好ましい実施形態が、本明細書において詳細に説明されているが、変形例が、本発明または添付の請求項の範囲から逸脱することなく、それに成され得ることが、当業者によって理解されるであろう。