(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-02
(45)【発行日】2022-05-13
(54)【発明の名称】軌間可変車輪セット用のシール装置および軌間可変車輪セット
(51)【国際特許分類】
F16J 15/16 20060101AFI20220506BHJP
B61F 15/26 20060101ALI20220506BHJP
B61F 7/00 20060101ALI20220506BHJP
【FI】
F16J15/16 D
F16J15/16 A
F16J15/16 B
B61F15/26
B61F7/00
(21)【出願番号】P 2021546033
(86)(22)【出願日】2019-09-26
(86)【国際出願番号】 CN2019108096
(87)【国際公開番号】W WO2020143251
(87)【国際公開日】2020-07-16
【審査請求日】2021-04-14
(31)【優先権主張番号】201910012719.X
(32)【優先日】2019-01-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】516183897
【氏名又は名称】中▲車▼青▲島▼四方▲機車車▼輌股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】CRRC QINGDAO SIFANG CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】No.88 Jinhongdong Road, Chengyang District, Qingdao, Shandong, 266111, P.R. China
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【氏名又は名称】小林 俊弘
(74)【代理人】
【識別番号】100215142
【氏名又は名称】大塚 徹
(72)【発明者】
【氏名】ウェイ,ジャチー
(72)【発明者】
【氏名】ユー,シィァン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,シン
(72)【発明者】
【氏名】チェン,シュォ
(72)【発明者】
【氏名】ワン,シュ
【審査官】羽鳥 公一
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-327121(JP,A)
【文献】実公昭37-17427(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/16
B61F 15/26
B61F 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軌間可変車輪セット用のシール装置であって、
前記シール装置は、軌間可変車輪セットのスライド機構と軸箱体の軸箱後側カバーとの間に設けられ、前記スライド機構は、前記軸箱体に対して軸方向に移動可能であるとともに、前記軸箱体に対して回転可能であり、
前記シール装置は、摺動シール部材と回転シール部材とを備え、前記摺動シール部材は、前記スライド機構の外側に外嵌され且つ前記軸箱後側カバーとシール接続するための摺動リングを備え、前記摺動リングの内壁軸方向に貫通溝が設けられ、前記スライド機構の外壁軸方向に前記貫通溝に摺動係合される凸部が設けられ、
前記回転シール部材は、前記軸箱後側カバーの外側に固定されるシールバッフルを備え、前記摺動リングの外壁周方向に環状溝が設けられ、前記シールバッフルの下端が前記環状溝内に延びることを特徴とする軌間可変車輪セット用のシール装置。
【請求項2】
第1のシールリングをさらに備え、
前記軸箱後側カバーに軸方向貫通孔が設けられ、前記軸箱後側カバーの前記軸方向貫通孔の内周に第1の取付溝が設けられ、前記第1のシールリングの外周が前記第1の取付溝に締まり嵌めで取り付けられ、前記第1のシールリングの内周が前記摺動リングの外周に押し付けられていることを特徴とする請求項1に記載の軌間可変車輪セット用のシール装置。
【請求項3】
前記スライド機構の外壁軸方向に位置決め溝が設けられ、前記位置決め溝に前記位置決め溝から突出する位置決めキーが配置されて前記凸部が形成されることを特徴とする請求項1に記載の軌間可変車輪セット用のシール装置。
【請求項4】
前記摺動リングの内壁周方向に前記貫通溝が複数設けられ、前記スライド機構の外壁周方向に前記貫通溝と一対一で対応する前記凸部が設けられることを特徴とする請求項1に記載の軌間可変車輪セット用のシール装置。
【請求項5】
前記摺動リングの内壁周方向に前記貫通溝が2つ設けられ、2つの前記貫通溝は前記摺動リングの内壁の径方向両側にそれぞれ設けられることを特徴とする請求項4に記載の軌間可変車輪セット用のシール装置。
【請求項6】
前記シールバッフルは、突き合わされて環状に形成される第1のバッフルと第2のバッフルを備え、前記第1のバッフルと第2のバッフルとが突き合わされた後の内周は前記摺動リングの環状溝内に位置することを特徴とする請求項1に記載の軌間可変車輪セット用のシール装置。
【請求項7】
前記第1のバッフルと第2のバッフルの断面は、いずれもL型を呈し、前記L型の短辺は、締結具により前記軸箱後側カバーの外周に締結され、前記L型の長辺は、前記軸箱後側カバーの外側に近接して設置されることを特徴とする請求項6に記載の軌間可変車輪セット用のシール装置。
【請求項8】
前記摺動リングと前記スライド機構との間に第2のシールリングが設けられ、前記第2のシールリングは前記スライド機構の外周の第2の取付溝内に固定的に外嵌されることを特徴とする請求項1に記載の軌間可変車輪セット用のシール装置。
【請求項9】
スライド機構、軸箱体、および請求項1乃至8のいずれか一項に記載の軌間可変車輪セット用のシール装置を備え、
前記シール装置は、前記スライド機構と前記軸箱体の軸箱後側カバーとの間に設けられ、前記スライド機構の軸方向スライドシールと回転シールに用いられることを特徴とする軌間可変車輪セット。
【請求項10】
車輪と車軸とをさらに備え、
前記車輪は、前記車軸の両端に摺動可能に設けられ、前記スライド機構は、前記車輪にそれぞれ接続され、かつ前記車軸の両端の前記軸箱体内に位置し、前記車輪は、前記スライド機構によりロック解除とロックが実現され、前記スライド機構は内側スリーブを備え、前記内側スリーブは、前記車軸に外嵌されて前記車軸に隙間嵌めされ、前記シール装置は、前記内側スリーブと前記軸箱体の軸箱後側カバーとの間に設けられることを特徴とする請求項9に記載の軌間可変車輪セット。
【発明の詳細な説明】
【相互参照】
【0001】
本願は、2019年01月07日に提出された、出願番号が2019100112719.Xであり、発明の名称が「軌間可変車輪セット用のシール装置および軌間可変車輪セット」である中国特許出願を引用し、その全体が参照により本願に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本開示は、鉄道車両の軌間変更の技術分野に関し、特に、軌間可変車輪セット用のシール装置および軌間可変車輪セットに関する。
【背景技術】
【0003】
世界的な経済の一体化の急速な発展に伴い、国境を越えた旅客及び貨物の輸送は近年急速に成長しているが、国によって鉄道の軌間が異なることで国境を越えた鉄道輸送に深刻な障害をもたらす。国によって鉄道の軌間が異なることで国境を越えた鉄道輸送を障害するという問題を解決するために、軌間可変車輪セットが提案されている。つまり、列車が他国の鉄道を走行する際、自身の車輪セットにおける車輪の間の間隔を変更することにより、他の国の鉄道の軌間に適応する。
【0004】
改軌過程で車輪セットにおけるスライド機構は地面ガイドレールの押圧に伴って軸箱体に対してスライドし、従来のシール構造は軌間可変車輪セットに適用できない。どのようにスライド機構と軸箱体との間をシールするかは早急に解決すべき問題である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、従来技術又は関連技術に存在する技術課題の少なくとも1つを解決することを目的とする。
【0006】
本開示の目的は、スライド機構と軸箱体との間をシールし、シール環境を改善し、シール効果を向上させるために、軌間可変車輪セット用のシール装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示の実施例は、軌間可変車輪セット用のシール装置を提供し、前記シール装置は、軌間可変車輪セットのスライド機構と軸箱体の軸箱後側カバーとの間に設けられ、前記スライド機構は、前記軸箱体に対して軸方向に移動可能であるとともに、前記軸箱体に対して回転可能であり、前記シール装置は、摺動シール部材と回転シール部材とを備え、前記摺動シール部材は、前記スライド機構の外側に外嵌され且つ前記軸箱後側カバーとシール接続するための摺動リングを備え、前記摺動リングの内壁軸方向に貫通溝が設けられ、前記スライド機構の外壁軸方向に前記貫通溝に摺動係合される凸部が設けられ、前記回転シール部材は、前記軸箱後側カバーの外側に固定されるシールバッフルを備え、前記摺動リングの外壁周方向に環状溝が設けられ、前記シールバッフルの下端が前記環状溝内に延びる。
【0008】
本開示の実施例において、第1のシールリングをさらに備え、前記軸箱後側カバーに軸方向貫通孔が設けられ、前記軸箱後側カバーの前記軸方向貫通孔の内周に第1の取付溝が設けられ、前記第1のシールリングの外周が前記第1の取付溝に締まり嵌めで取り付けられ、前記第1のシールリングの内周が前記摺動リングの外周に押し付けられている。
【0009】
本開示の実施例において、前記スライド機構の外壁軸方向に位置決め溝が設けられ、前記位置決め溝に前記位置決め溝から突出する位置決めキーが配置されて前記凸部が形成される。
【0010】
本開示の実施例において、前記摺動リングの内壁周方向に前記貫通溝が複数設けられ、前記スライド機構の外壁周方向に前記貫通溝と一対一で対応する前記凸部が設けられる。
【0011】
本開示の実施例において、前記摺動リングの内壁周方向に前記貫通溝が2つ設けられ、2つの前記貫通溝は前記摺動リングの内壁の径方向両側にそれぞれ設けられる。
【0012】
本開示の実施例において、前記シールバッフルは、突き合わされて環状に形成される第1のバッフルと第2のバッフルを備え、前記第1のバッフルと第2のバッフルとが突き合わされた後の内周は前記摺動リングの環状溝に位置する。
【0013】
本開示の実施例において、前記第1のバッフルと第2のバッフルの断面は、いずれもL型を呈し、前記L型の短辺は、締結具により前記軸箱後側カバーの外周に締結され、前記L型の長辺は、前記軸箱後側カバーの外側に近接して設置される。
【0014】
本開示の実施例において、前記摺動リングと前記スライド機構との間に第2のシールリングが設けられ、前記第2のシールリングは前記スライド機構の外周の第2の取付溝内に固定的に外嵌される。
【0015】
本開示の実施例は、軌間可変車輪セットをさらに提供し、前記軌間可変車輪セットは、スライド機構、軸箱体、および上記の軌間可変車輪セット用のシール装置を備え、前記シール装置は、前記スライド機構と前記軸箱体の軸箱後側カバーとの間に設けられ、前記スライド機構の軸方向スライドシールと回転シールに用いられる。
【0016】
本開示の実施例において、車輪と車軸とをさらに備え、前記車輪は、前記車軸の両端に摺動可能に設けられ、前記スライド機構は、前記車輪にそれぞれ接続され、かつ前記車軸の両端の前記軸箱体内に位置し、前記車輪は、前記スライド機構によりロック解除とロックが実現され、前記スライド機構は内側スリーブを備え、前記内側スリーブは、前記車軸に外嵌されて前記車軸に隙間嵌めされ、前記シール装置は、前記内側スリーブと前記軸箱体の軸箱後側カバーとの間に設けられる。
【発明の効果】
【0017】
従来技術に比べて、本開示は以下の利点を有する。
【0018】
本開示の実施例は、軌間可変車輪セット用のシール装置を提供し、前記シール装置は、軌間可変車輪セットのスライド機構と軸箱体の軸箱後側カバーとの間に設けられ、前記シール装置は、摺動シール部材と回転シール部材とを備え、前記摺動シール部材は、前記スライド機構の外側に外嵌され且つ前記軸箱後側カバーとシール接続するための摺動リングを備え、前記摺動リングの内壁軸方向に貫通溝が設けられ、前記スライド機構の外壁軸方向に前記貫通溝に摺動係合される凸部が設けられ、スライド機構の移動時に、凸部が貫通溝に沿って移動することで、摺動リングはスライド機構と共に回転可能であり且つ両者が軸方向に相対的に摺動可能であることが確保される。前記回転シール部材は、前記軸箱後側カバーの外側に固定されるシールバッフルを備え、前記摺動リングの外壁周方向に環状溝が設けられ、前記シールバッフルの下端が前記環状溝内に延び、摺動リングの軸方向の位置決めが提供されることで、摺動リングは軸方向に移動せず、軸箱後側カバーに対して周方向の回転しか発生できなく、スライド機構に対して軸方向の摺動しか発生できないようになる。当該シール装置は、2自由度のシールを2段の単一自由度のシールにデカップリングし、各層のシールは相対的並進または相対的回転のみに対するものとなることで、シール環境を改善し、シール効果を向上させる。また、シール部材の単一の影響因子での最適化にも有利で、最終的に複合自由度構造のシールが実現される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本開示の実施例に係る軌間可変車輪セット用のシール装置の軸方向断面図である。
【
図3】本開示の実施例に係る軌間可変車輪セット用のシール装置における摺動リングの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面及び実施例を参照しながら、本開示の具体的な実施形態を詳細に説明する。以下の実施例は、本開示を説明するためのものに過ぎず、本開示の範囲を制限するためのものではない。
【0021】
本開示の説明において、「中心」、「縦方向」、「横方向」、「上」、「下」、「前」、「後」、「左」、「右」、「垂直」、「水平」、「頂」、「底」、「内」、「外」などの用語が示す方位又は位置関係は、図面に示す方位又は位置関係に基づく方位又は位置関係であり、本開示の実施を便利に又は簡単に説明するためのものに過ぎず、示された装置又は素子が必ず特定の方位にあり、特定の方位において構成されて操作されると明示又は暗示するものではないので、本開示に対する限定であると理解されるべきではない。なお、「第1の」、「第2の」、「第3の」などの用語は、説明するためのものに過ぎず、相対的な重要性を明示又は暗示すると理解されるべきではない。
【0022】
本開示の説明において、明確な規定と限定がない限り、「取り付け」、「互いに接続」、「接続」の用語の意味は広く理解されるべきである。例えば、固定接続や、着脱可能な接続や、あるいは一体的な接続でも可能であり、機械的な接続や、電気的な接続でも可能であり、直接接続することや、中間媒体を介して互いに間接接続することや、2つの素子の内部の連通でも可能である。当業者にとって、具体的な状況に応じて上記用語の本開示での具体的な意味を理解することができる。
【0023】
また、本開示の説明において、特に明記しない限り、「複数」、「複数本」、「複数組」とは、2つ又は2つ以上を意味する。
【0024】
図1~
図4に示すように、本開示の実施例は、軌間可変車輪セット用のシール装置を提供し、軌間可変車輪セットは、スライド機構3と軸箱体1とを備え、軌間変更の要求に適応するように、スライド機構3が軸箱体1の軸方向に対して往復移動可能である。軸箱体1の基本的なシール要求を満たすために、軸箱体1は、一端に軸箱前側カバーが設けられ、他端に軸箱後側カバー2が設けられ、スライド機構3は、軸箱体内1に位置して軸箱後側カバー2を貫通して車輪に接続される。軌間可変車輪セットの正常な運転中において、スライド機構3が車輪と共に回転し、軸箱体1が相対的に固定されることで、スライド機構3は前記軸箱体1に対して回転する可能である。つまり、スライド機構3は回転自由度と軸箱体1に沿って移動する並進自由度を有する。前記シール装置は、軌間可変車輪セットのスライド機構3と軸箱体1の軸箱後側カバー2との間に設けられる。具体的に、前記シール装置は、摺動シール部材と回転シール部材とを備え、前記摺動シール部材は、前記スライド機構3の外側に外嵌され且つ前記軸箱後側カバー2とシール接続するための摺動リング4とを備える。
図3に示すように、前記摺動リング4の内壁軸方向に貫通溝41が設けられ、前記スライド機構3の外壁軸方向に前記貫通溝41に摺動係合される凸部が設けられる。スライド機構3が移動する時に、凸部が貫通溝41に沿って移動することにより、摺動リング4とスライド機構3とが共に回転し、かつ両者が軸方向に沿って相対的に摺動することができることが確保される。前記回転シール部材は、前記軸箱後側カバー2の外側に固定されるシールバッフル5を備える。
図4に示すように、前記摺動リング4の外壁周方向に環状溝42が設けられ、前記シールバッフル5の下端が前記環状溝42内に延び、摺動リング4の軸方向の位置決めに供されることで、摺動リング4は、軸方向に移動せず、軸箱後側カバー2に対して周方向の回転しか発生できなく、スライド機構3に対して軸方向の摺動しか発生できないようになる。本開示では、2自由度のシールを2段の単一自由度のシールにデカップリングし、各層のシールは相対的並進または相対的回転のみに対するものとなることで、シール環境を改善し、シール効果を向上させる。また、シール部材の単一の影響因子での最適化にも有利で、最終的に複合自由度構造のシールが実現される。
【0025】
本開示の実施例において、
図1に示すように、軸箱後側カバー2と摺動リング4との間のシール接続を実現するために、第1のシールリング6をさらに備え、第1のシールリング6はゴムシールリングであってもよい。前記軸箱後側カバー2に軸方向貫通孔が設けられ、前記軸箱後側カバー2の前記軸方向貫通孔の内周に第1の取付溝が設けられ、第1の取付溝が環状を呈し、前記第1のシールリング6の外周が前記第1の取付溝に締まり嵌めで取り付けられ、前記第1のシールリング6の内周が前記摺動リング4の外周に押し付けられている。摺動リング4が回転する時に、摺動リング4の外周と第1のシールリング6とが回転可能にシール接続される。
【0026】
本開示の実施例において、凸部の形成を容易にするために、前記スライド機構3の外壁軸方向に位置決め溝が設けられ、前記位置決め溝に前記位置決め溝から突出する位置決めキー34が配置される。位置決めキー34の長さが位置決め溝の長さに合わせ、位置決めキー34の厚さが位置決め溝の深さよりも大きいことにより、位置決めキー34が位置決め溝に取り付けられると、位置決めキー34の上表面が位置決め溝よりも高くなり、前記凸部が形成される。前記凸部によって摺動リング4をスライド機構3とともに回転させることができ、凸部はスライド機構3の軸方向での移動を規制しない。
【0027】
本開示の実施例において、摺動リング4の内壁周方向に一つの貫通溝41が設けられてもよいが、摺動リング4の力受けのバランスを確保するために、前記摺動リング4の内壁周方向に前記貫通溝41が複数設けられることが好ましく、複数の貫通溝41は摺動リング4の内壁周方向に均一に分布してもよく、前記スライド機構3の外壁周方向に、前記貫通溝41と一対一で対応する前記凸部が設けられている。
【0028】
本開示の実施例において、構造の簡易化のため、前記摺動リング4の内壁の周方向に前記貫通溝41が2つ設けられ、2つの前記貫通溝41は、それぞれ、前記摺動リング4の内壁の径方向両側に設けられている。
【0029】
本開示の実施例において、摺動リング4の外側の環状溝42に嵌合するために、環状溝42の周方向を完全にシールする。前記シールバッフル5は、突き合わされて環状を形成する第1のバッフルと第2のバッフルを備える。シールバッフル5を第1のバッフルと第2のバッフルに分けて設けることで、上下二方向からの取り付けをしやすくする。前記第1のバッフルと第2のバッフルとが突き合わされた後の内周は前記摺動リング4の環状溝42内に位置する。摺動リング4が回転する時に、前記第1のバッフルと第2のバッフルの内周は環状溝42と回転シールされる。
【0030】
本開示の実施例において、具体的には、前記第一バッフル及び第二バッフルの断面は、具体的には径方向断面がいずれもL型を呈し、前記L型の短辺は、締結具例えばボルトによって前記軸箱リアカバー2の外周に締結され、前記L型の長辺は、前記軸箱リアカバー2の外側に近接して設置され、且つ環状溝42内に延びる。
【0031】
本開示の実施例において、摺動リング4とスライド機構3との間は細長い小隙間を形成し、その自身はラビリンス機能を有する。
図2に示すように、前記摺動リング4と前記スライド機構3との間には、例えばO型ゴムシールリングである第2のシールリング7が設けられる。前記第2のシールリング7は、前記スライド機構3の外周の第2の取付溝に固定的に外嵌される。摺動リング4が移動する時に、摺動リング4の内周は第2のシールリング7とシール接触することで、シール効果をさらに向上させる。
【0032】
本開示の実施例は、軌間可変車輪セットをさらに提供し、当該軌間可変車輪セットは、スライド機構3、軸箱体1、および上記の軌間可変車輪セット用のシール装置を備え、前記シール装置は、前記スライド機構3と前記軸箱体1の軸箱後側カバー2との間に設けられ、前記スライド機構3の軸方向スライドシールと回転シールに用いられる。本開示は自由度を分解し、単一の自由度ごとに別々にシールをすることで、シール難易度を低減させ、多自由度運動のシール性能を確保するとともに、軌間可変車輪セットの高速運転性能を確保する。
【0033】
本開示の実施例において、
図1に示すように、車輪と車軸8とをさらに備え、前記車輪は前記車軸8の両端に摺動可能に設けられる。具体的に、車輪の内周に内スプラインが設けられ、前記車軸8の両端にそれぞれ外スプラインが設けられ、車輪と車軸8の両端は内スプラインおよび外スプラインを介して嵌合して接続されることで、トルクが容易に伝達されるとともに、車輪の移動も容易になる。前記スライド機構3はそれぞれ、前記車輪に接続され、かつ前記車軸8の両端の前記軸箱体1内に位置し、前記車輪は、前記スライド機構3によりロック解除とロックが実現され、前記スライド機構3は内側スリーブ31を備え、前記内側スリーブ31は、前記車軸8に外嵌されて前記車軸8に隙間嵌めされ、前記シール装置は、前記内側スリーブ31と前記軸箱体1の軸箱後側カバー2との間に設けられる。これにより、凸部は、内側スリーブ31の外側に設けられ、位置決め溝は、内側スリーブ31に設けられる。前記内側スリーブ31は、前記車輪の一端に向かって前記軸箱体1から延出し且つ締結具によって前記車輪と締結接続され、前記内側スリーブ31の延伸端と前記車軸8との間に軌間変更スペースが設けられ、これにより、軌間を変更する時、内側スリーブ31は、車軸8と干渉することなく、車軸8に沿って移動するのに十分な距離を有するように確保される。前記スライド機構3は、転がり軸受32と外側スリーブ33をさらに備え、前記内側スリーブ31、転がり軸受32と外側スリーブ33は、内から外へ順にしっかり嵌めて接続され、車輪が回転する時に、内側スリーブ31及び転がり軸受32の内輪は車輪にと共に回転し、外側スリーブ33と転がり軸受32の外輪は相対的固定に維持され、前記外側スリーブ33は前記軸箱体1の内表面に隙間嵌めされ、これにより、外側スリーブ33は、内側スリーブ31、転がり軸受32と共に全体として軸箱体1に沿って移動しやすくなる。内側スリーブ31と軸箱体1の軸箱後側カバー2との間にシール装置を設けることにより、内側スリーブ31が移動または回転する時にも好適なシールを実現することができ、そして、各層のシールは相対的並進または相対的回転のみに対するものとなることで、シール環境を改善し、シール効果を向上させる。
【0034】
以上の実施例から明らかなように、本開示は、自由度を分解し、単一の自由度ごとに別々にシールをすることで、シール難易度を低減させ、多自由度運動のシール性能を確保するとともに、軌間可変車輪セットの高速運転性能を確保する
【0035】
以上に説明した内容は、本開示の好適な実施例に過ぎず、本開示を制限するものではなく、本開示の精神及び原則の範囲内で実施されるいずれの変更、同等の交換、改良などは、本開示の保護の範囲に含まれるべきである。
【符号の説明】
【0036】
図面において、1:軸箱体、2:軸箱後側カバー、3:スライド機構、31:内側スリーブ、32:転がり軸受、33:外側スリーブ、34:位置決めキー、4:摺動リング、41:貫通溝、42:環状溝、5:シールバッフル、6:第1のシールリング、7:第2のシールリング、8:車軸。