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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-02
(45)【発行日】2022-05-13
(54)【発明の名称】引戸アシスト装置
(51)【国際特許分類】
   E05F 13/02 20060101AFI20220506BHJP
   E05F 7/00 20060101ALI20220506BHJP
   E05B 65/08 20060101ALI20220506BHJP
【FI】
E05F13/02
E05F7/00 Z
E05B65/08 G
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2017195230
(22)【出願日】2017-10-05
(65)【公開番号】P2019065676
(43)【公開日】2019-04-25
【審査請求日】2020-09-30
(73)【特許権者】
【識別番号】390037028
【氏名又は名称】美和ロック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080838
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 光康
(74)【代理人】
【識別番号】100194261
【弁理士】
【氏名又は名称】栢原 崇行
(72)【発明者】
【氏名】中村 勝則
(72)【発明者】
【氏名】三浦 知之
【審査官】秋山 斉昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-73631(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 1/00-13/04
E05F 17/00
E05B 65/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
引戸に設けられた操作部材と、
前記引戸の戸先側の内部に設けた筐体と、
この筐体内に配設された駆動部材と、
この駆動部材の駆動力により作動するように前記筐体内に配設された蹴り出し機構を備えた引戸アシスト装置に於いて、
前記蹴り出し機構は、アシストベースに進退動自在に支持されたアシストロッドと前記アシストベースの所定箇所に設けたクラッチ手段と、前記クラッチ手段を作動させることができるように前記アシストベースの後端部に組み込まれたたロックピンを備え
閉扉時に前記アシストロッドの先端部が戸枠側の受け部に対して接触或いは接近するように該アシストロッドを付勢するアシスト付勢手段を含み、
前記開扉時、前記駆動部材は前記操作部材の操作力により作動し、該駆動部材の駆動力により前記アシストロッドを前記戸枠側の受け部に対して押圧させ、これにより前記引戸を開く方向へ移動させることを特徴とする引戸アシスト装置。
【請求項2】
請求項1の引戸アシスト装置に於いて、前記クラッチ手段を構成する係合部は、前記駆動部材と共働する前記ロックピンが該駆動部材の駆動力により前進すると、このロックピンに追動して前記係合部が前記アシストロッドを支持すると共に、この支持状態で前記アシストベース及びアシストロッドが押圧方向に一緒に移動可能であることを特徴とする引戸アシスト装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は引戸アシスト装置に関し、特に引戸を開く際に適合する引戸アシスト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、引っ張りバネ44のバネ力が、常に蹴り出し部材7を収納箱26へ戻す方向に作用するものであることから、閉扉時、チリ(戸先と戸枠の垂直面の隙間)が変動すると、例えばチリが0.1mmから5mmに変わると、蹴り出し部材7が戸枠の垂直面、受け片、ストライク等の受け部に対して、すぐに蹴り出すことができない、或いは十分に蹴り出すことができない等の問題点があった(符号は特許文献1のもの)。
【0003】
また特許文献2は、水平の押し出し棒19を上下一対のガイド棒13、13に案内される引手(レバー)14と共働する傾倒状態のリンク部材17を介して戸枠2の垂直面に押圧させ、これにより開閉体としての引戸を圧縮ばね20のバネ力に抗して開けるものであるが、前記圧縮ばね20は、前記引手(レバー)14と前記リンク部材17との間に介在し、そのばね力は、前記水平の押し出し棒19をケース内に戻す方向に作用することから、特許文献1と同様に、戸枠の受け部に対して、チリ寸法の変動に対応してすぐに蹴り出すことができない、或いは十分に蹴り出すことができない等の問題点があった(符号は特許文献2のもの)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4677211号公報
【文献】特開2004-84338号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の主たる課題は、特許文献1及び特許文献2の問題点に鑑み、これらの特許文献の主たる課題を前提としつつ、さらに、蹴り出し部材(本願のアシストロッド)の先端部が付勢手段の付勢力により常に戸枠の垂直面、受け片、ストライク等の受け部に接した状態或いは接近するようにして、「チリ」が変動しても、前記受け部に対して直ちに蹴り出すようにすることである。第2の目的は、前記主たる課題を前提として、簡単な機構と合理的な手段によって、アシスト力を十分に発揮することができるようにすることである。その他の目的は、従属項によって特定される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の引戸アシスト装置は、引戸に設けられた操作部材と、前記引戸の戸先側の内部に設けた筐体と、この筐体内に配設された駆動部材と、この駆動部材の駆動力により作動するように前記筐体内に配設された蹴り出し機構を備えた引戸アシスト装置に於いて、前記蹴り出し機構は、アシストベースに進退動自在に支持されたアシストロッドと前記アシストベースの所定箇所に設けたクラッチ手段と、前記クラッチ手段を作動させることができるように前記アシストベースの後端部に組み込まれたたロックピンを備え、閉扉時に前記アシストロッドの先端部が戸枠側の受け部に対して接触或いは接近するように該アシストロッドを付勢するアシスト付勢手段を含み、前記開扉時、前記駆動部材は前記操作部材の操作力により作動し、該駆動部材の駆動力により前記アシストロッドを前記戸枠側の受け部に対して押圧させ、これにより前記引戸を開く方向へ移動させることを特徴とする。
【0007】
ここで「受け部に対して接触或いは接近する」とは、当業者の間で称されている「チリ」の概念であり、このチリは0mm(接触)を含み、さらに、例えば10mm(接近)までの範囲である。実施形態では、好ましくは0mm~8mmであり、より好ましくは、0mm~6mmである。
【発明の効果】
【0008】
(a)請求項1に記載の発明は、蹴り出し機構は、アシストベースに進退動自在に支持されたアシストロッドと前記アシストベースの所定箇所に設けたクラッチ手段と、前記クラッチ手段を作動させることができるように前記アシストベースの後端部に組み込まれたたロックピンを備え、閉扉時に前記アシストロッドの先端部が戸枠側の受け部に対して接触或いは接近するように該アシストロッドを付勢するアシスト付勢手段を含み、前記開扉時、前記駆動部材は前記操作部材の操作力により作動し、該駆動部材の駆動力により前記アシストロッドを前記戸枠側の受け部に対して押圧させ、これにより前記引戸を開く方向へ移動させるので、チリが、例えば0mmから5mm、0.1mmから3mm、0.2mmから4mm等という具合に変動しても、前記受け部に対して直ちに蹴り出すようにすることができる。付言すると、例えば操作部材側の共用のレバーが水平方向に位置変位する実施形態の場合に於いて、前記レバーのストローク「略8mm」に対して引戸アシスト装置を構成するアシストロッドのストロークが「略5.2mm」なので、約1.5倍のアシスト力を得ることができる。したがって、チリ変動が仮に3mm、4mm、5mm等であっても、受け部に対して直ちに蹴り出すようにすることができる。
(b)請求項2に記載の発明は、蹴り出し機構は、クラッチ手段を構成する係合部は、駆動部材と共働するロックピンが該駆動部材の駆動力により前進すると、このロックピンに追動して係合部がアシストロッドを支持すると共に、この支持状態で前記アシストベース及びアシストロッドが押圧方向に一緒に移動可能である。したがって、操作部材の操作力により作動する駆動部材の駆動力を確実にアシストロッドに伝えることができる。それ故に、チリの変動がアシストロッドのストローク(水平移動量)未満であれば、前記(a)の効果を十分に達成することができる。
(c)実施形態では、クラッチ手段は、少なくとも一対の係合部を有し、これらの係合部は、アシストロッドの後端部をつかんだ状態で支持することから、係合部が片持ち式の実施形態よりも、アシストロッドを確実に支持して送り出すことができる。
(d)実施形態では、アシストロッドの後端部には、係合部と係合する係合溝が設けられていることから、チリ変動が変動しても、係合部が滑動しないようにしてアシストロッドを支持することができる。
(e)実施形態では、駆動部材は、操作部材のレバーの内端部を受ける略垂直部分を有する水平可動板とリンク部材(水平可動板に連係する第1リンクと、この第1リンクに連係する第2リンク)を含むので、駆動部材の駆動力を、水平可動板を介して下位側のリンク部材に確実に伝えることができる。
(f)実施形態では、筐体はカマを含む仮施錠機構を内装した錠箱であることから、操作部材のレバーを共用の部材として活用することができる。したがって、例えば仮施錠機構の解錠とアシストロッドの押し出しが同時に可能となる。なお、部材共用の効果は本発明の各課題とは直接関係のないものであるから、例えば錠箱とは別の収納箱に引戸アシスト装置を設けても良い。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1乃至図6は本発明の第1実施形態を示す各説明図。図7は第2実施形態の説明図。図8及び図9は第3実施形態を示す各説明図、図10は第4施形態を示す主要部の分解斜視図。
図1】電気錠の錠箱内に本発明の主要部を設けた概念図。
図2】主要部の正面視からの概略説明図(初期状態)。
図3】主要部の分解斜視図。
図4】操作部材の共用のレバーが駆動部材を構成する水平可動板の略垂直部分を押付けた時の概略説明図。
図5】アシストロッドが戸枠の受け部に対して直ちに蹴り出す状態を示す概略説明図。
図6】(a)操作部材が初期位置にある平面視からの概略説明図。(b)操作部材が水平方向に位置変位した平面視からの概略説明図。
図7】第2実施形態(蹴り出し機構の変形例)を示す説明図。
図8】第3実施形態の図2と同様の説明図。
図9】第3実施形態の主要部の分解斜視図。
図10】第4実施形態の主要部の分解斜視図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1乃至図6は、本発明の第1実施形態の引戸アシスト装置Xの各説明図である。図1は電気錠の錠箱内に本発明の主要部を設けた概念図である。まず図1に於いて、1は戸枠、2は引戸、3は前記引戸の戸先側2aの内部に設けた筐体である。
【0011】
実施形態では、筐体3は少なくとも仮施錠機構4を内装した錠箱である。仮施錠機構4は、周知技術なので、その詳細は割愛するが、例えば引戸2の扉面(壁面のこと)に固定された固定部材(例えば台座)5に軸支された操作部材6を図示しない人が手で操作すると、その操作力によって水平方向に位置変位する共用のレバー7の力が加わるカマ用駆動部8を有し、このカマ用駆動部8が錠箱3のフロント3a側にスライドすると、ラッチ機能を有するカマ9が前記カマ用駆動部5の駆動力により、戸枠1の受け具10に対して解錠方向へと回転可能となる(ラッチ解除状態)。
【0012】
また筐体3は、望ましくは機械的及び電気的に解錠可能な本施錠装置11を内装している。本施錠装置11は、例えば錠箱3内の上部空間に配設され、電源12、該電源から電力の供給を受けると共に、適宜箇所に設けられた検知手段13の検知信号を取得する制御部14、該制御部から起動・停止等の制御信号を受けると共に、本施錠片(カマデット)16を駆動する駆動部15を備えている。この本施錠装置11は発明の課題との関係で、付随的事項なので、その詳細を割愛する。
【0013】
さらに、筐体3は蹴り出し機構31を備えた引戸アシスト装置Xを内装している。引戸アシスト装置Xの主要部は、錠箱3内の下部空間に配設されている。
しかして、引戸アシスト装置Xは、前述した操作部材6側の共用のレバー7によって作動する駆動部材21と、この駆動部材の駆動力によって作動する蹴り出し機構31を備え、前記蹴り出し機構31は、後述するように、図1で示す閉扉時に、アシストロッド32の先端面32aが戸枠1側の受け部1aに対して接触或いは接近するように該アシストロッド32を付勢するアシスト付勢手段72を有している。
【0014】
さて、本発明の主たる課題は、「いわゆるチリが変動しても、アシストロッド32の先端面32aが戸枠1側の受け部1aに対して直ちに蹴り出すようにすること」であるから、この主たる課題に絞った構成を、主に図2及び図3を参照にして説明する。
図2は主要部の正面視からの概略説明図で、駆動部材21、蹴り出し機構31を構成するアシストベース40、このアシストベースの先端部側に設けられたアシストロッド32、一方、アシストベースの後端部側に単数又は複数の可動軸51を介して設けられたクラッチ手段50、このクラッチ手段を作動させることができるように前記アシストベース40の後端部に組み込まれたロックピン60は、それぞれ初期位置にある。図3は駆動部材21を除く主要部(蹴り出し機構31)の分解斜視図である。なお、図3に示す通り、蹴り出し機構31には、前記ロックピン60も含まれる。
【0015】
まず図2に於いて、駆動部材21は、図面上方に描かれている水平可動板22と、この水平可動板22よりも下方に位置する第1固定軸25、第2固定軸26にそれぞれ軸支された「リンク部材」とから成る。前記リンク部材は、上方に伸びる連係アームが前記水平可動板22に連係するように配設された正面視略L形状の第1リンク23と、この第1リンクに連結するアングル形状の第2リンク24とから成る。
【0016】
前記水平可動板22は不番の水平ガイド(例えば錠箱側の複数の水平長孔と水平可動板側のガイド突起)を介して水平方向に移動可能である。この水平可動板22は、例えば水平部22aと、この水平部の一端部(図面左)に上方方向に突出形成された垂直部22bを有し、前記垂直部22bには操作部材6のレバー7の内端部7aを受ける略垂直部分22cが設けられている。前記略垂直部分22cは前記内端部7aの一方の垂直側部の当たり面より垂直方向に幅広い受け面となっている。実施形態では、略垂直部分22cの上下方向の長さは、例えば前記一方の垂直側部の当たり面の4倍或いは5倍となっている。これにより、薄板状のレバー7の内端部7aが多少上下方向に傾いても水平可動板22を確実に押し込むことができる。
【0017】
第1リンク23及び第2リンク24は、それぞれ中間部或いは中間部寄りの部位が、第1固定軸25、第2固定軸26を介して軸支されている。リンク部材の詳細構造(連係構成)は割愛する。
【0018】
次に、主に図3を参照にして、蹴り出し機構31を構成する各部材を説明する。なお、細部的事項(例えば係合部の一例である係合腕52を初期位置に戻すための戻しバネ、他方の軸孔やガイドなど)は極力割愛する。
【0019】
40は長杆状のアシストベースで、このアシストベース40は、長杆状本体部41の長手方向の両側壁部に複数の係合突起42を有し、左右の両端部が開口する長い角筒状体である。アシストベース40は案内手段(例えば長杆状本体部41の係合突起42と錠箱の水平案内長孔3b)を介して錠箱3内に水平移動可能に組み込まれる。
【0020】
しかして、43は長杆状本体部41の先端部(図左)に形成された第1の内部空間、44は前記第1の内部空間に連通するように長杆状本体部41の略中央部に形成された第2の内部空間、45は前記第2の内部空間に連通するように長杆状本体部41の後端部寄りの部位に形成された第3の内部空間、そして、46は前記第3の内部空間に連通するように長杆状本体部41の後端部に形成された第4の内部空間で、これらの各内部空間は、それぞれ不番の周壁で適宜に区画され、かつ、先端部の透孔47と後端部の透孔48に一連に連通している。さらに、前記第2の内部空間44及び第3の内部空間45は、水平方向の可動軸51を介して挟み揺動可能にクラッチ手段50を組み込むために、それぞれ上壁部及び下壁部が開放する切欠部となっている。
【0021】
図3では、アシストベース40、クラッチ手段50、「複数の付勢手段」を装着したアシストロッド32、ロックピン60等が描かれている。アシストロッド32は、復帰バネ71が装着された棒状先端部33と、フランジ部34を介して棒状先端部に連設すると共にアシスト付勢手段72が装着された棒状略中間部35と、この棒状略中間部に連設すると共に、一側上面と反対側の一側下面にそれぞれ形成された細かな係合溝(例えばローレット状の溝、波状の溝など)36aを有する係合後端部36とから成る。
【0022】
図2で示すように、アシストロッド32は、アシストベース40の第1の内部空間43と第2の内部空間44に組み込まれる。実施形態では、図2の如く、アシストロッド32がアシストベース40の先端部側に組み込まれた場合、第1の内部空間43内に位置するフランジ部34が先端部の透孔47を形成する環状周壁の内面に圧接するようにアシスト付勢手段72によって付勢されていると共に、その先端面32aは戸枠1の受け部1aに常に接触している。また外周面が円形又は多角形の係合後端部36は、クラッチ手段50の上下一対の係合部52の先端部の係合歯52aに噛み合うように第2の内部空間44内に位置している。
【0023】
さらに、付勢手段の一例である圧縮バネ71は、その先端部は錠箱3のフロント側の内壁面と圧接し、一方、後端部はアシストベース40の先端面に圧接している。
【0024】
クラッチ手段50は、前述したように、アシストベースの後端部側に設けられ、可動軸51を支点に挟み揺動する一対の係合部(係合腕、係合板など)52を有し、これらの係合部52の後端部の後端面は、横向き矢印形状のロックピン60の山形係合部60aを受け入れることができるように後方に向かって外拡する傾斜状受け面52bとなっている。
前記ロックピン60は、山形係合部60aと、この山形係合部60aに連設する後端部60bとを有し、クラッチ手段50を作動させることができるようにアシストベース40の後端部に組み込まれている。
【0025】
上記構成の作用に関して、図4乃至図6を参照にして説明する。図4は操作部材6の共用のレバー7(その内端部7a)が、駆動部材21を構成する水平可動板22の略垂直部分22cを矢印方向に押付けた時の概略説明図、付言すると、図2の初期状態(係合部52用の戻しバネは省略)において、操作部材の操作力により、水平可動板22が矢印方向に移動し、これにより方向変換手段としてのリンク部材23、24がそれぞれ固定軸25、26を支点にして回転し、その結果、従動リンクとしての第2リンク24に押されたロックピン60の山形係合部60aがクラッチ手段50の上下一対の傾斜面52bをこじ開けるようにして押し込むので、上下一対の係合部52が可動軸51を支点にして回転し、前記係合部52がアシストロッド32の係合後端部36をかむように支持した状態を示す。
【0026】
次に図5は、アシストロッド32が戸枠1の受け部1aに対して直ちに蹴り出す状態を示す概略説明図。そして、図6の(a)は、操作部材6が初期位置にある平面視からの概略説明図で、一方、図6の(b)は、操作部材6が水平方向に位置変位した平面視からの概略説明図である。
【0027】
各部材の作用については、図の矢印で示す通りであるが、実施形態では、蹴り出し機構Xは、アシストベース40の所定箇所に設けたクラッチ手段50を備え、このクラッチ手段を構成する係合部52は、駆動部材21と共働するロックピン60が該駆動部材21の駆動力により前進すると、このロックピン60に追動して前記係合部52がアシストロッド32の係合後端部36をかむように支持すると共に、この支持状態で前記アシストベース40及びアシストロッド32が押圧方向に一緒に移動可能である。このように構成することにより、操作部材6の操作力により作動する駆動部材21の駆動力を確実にアシストロッド32に伝えることができる。
【0028】
したがって、本発明は、引戸2の壁面に固定された固定部材5と、この固定部材に軸支された操作部材6と、前記引戸2の戸先側2aの内部に設けた筐体3と、この筐体3内に配設された駆動部材21と、この駆動部材21の駆動力により作動するように前記筐体3内に配設された蹴り出し機構31を備えた引戸アシスト装置Xに於いて、前記蹴り出し機構31は、アシストベース40に進退動自在に支持されたアシストロッド32と、閉扉時に前記アシストロッド32の先端面32aが戸枠1側の受け部1aに対して接触或いは接近するように該アシストロッド32を付勢するアシスト付勢手段72を含み、開扉時、前記駆動部材21は前記操作部材6の操作力により作動し、該駆動部材21の駆動力により前記アシストロッド32を前記戸枠側の受け部1aに対して押圧させ、これにより前記引戸2を開く方向へ移動させる。
【0029】
ところで、図7は、本発明の蹴り出し機構X1の変形例を示す説明図(第2実施形態)である。この蹴り出し機構X1は、アシストベース40A、アシストロッド32A及びクラッチ手段50Aの構成に関して、第1実施形態を設計変更したもので、例えばアシスト付勢手段72Aの配設箇所を変更すると共に、クラッチ手段50Aの係合部52を一本にして片持ち式とし、さらに、横向き矢印形状のロックピン60を省略し、駆動部材21の駆動力が直接係合部52に伝わるように構成したものである。このように構成しても、本発明の主たる課題を達成することができる。なお、この第2実施形態の係合後端部36の外周面も、第1実施形態と同様に円形又は多角形である。また、クラッチ手段50Aを構成する係合部52を初期位置に戻すための戻しバネを可動軸51に適宜に設けても良い。
【0030】
次に図8乃至図10は、本発明の非本質的事項を念のために記述するもので、図8及び図9は第3実施形態を示す各説明図、図10は第4施形態を示す主要部の分解斜視図である。前記第3実施形態は、アシストロッド32Bの係合後端部36の外周を先端部33と同様に略円形にした点、係合溝36aを周方向に形成した点、一対の係合部52を初期位置に戻すための単数又は複数の戻しバネ53を図示し、この戻しバネ53の中央部を、例えば可動軸51に巻装し、その両端部を、前記可動軸を介して上下に設けられた一対の係合部52、52のバネ端支持部52c、52cに適宜に支持させた点である。
【0031】
また前記第4施形態は、第1実施形態或いは第3実施形態の主要部をそのまま含み一部を設計変更した点である。一部の設計変更例として、例えば一本の可動軸を同じ軸方向の「二軸51A、51A」とし、一対の係合部52、52は、それぞれ互いに別個の可動軸51A、51Aに軸支されている。このように可動軸を分離した理由は、アシストベース40に対する組立て時の利便性に配慮したからに他ならない。例えば組立て時、一対の係合部52、52をそれぞれアシストベース40の長さ方向にスライドさせながら、それぞれの可動軸51A、51Aに一対の係合部52、52を軸支させることができる。であるから、これらの事項は、発明の課題との関係では全く関係のない事項である。
【0032】
なお、操作部材6の操作態様も、本発明の本質的事項ではないが、例えば操作部材6をレバー式にするのが望ましい。レバー式ハンドルにした場合で、手前側に引く、引戸2の壁面側に押す、引戸2の壁面に沿ってスライドさせる、回転させる等の色々な形式があるが、より望ましくは、引戸2を引く方向に操作部材6を操作する。また本発明は仮施錠機構4や本施錠装置11を必須要件とするものではない。さらに付言すると、例えば復帰バネ71は、その取付け箇所如何を問わず、製品として、必要な部品である。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、錠前や建具の技術分野で利用することができる。
【符号の説明】
【0034】
X、X1…引戸アシスト装置、
1…戸枠、1a…受け部、
2…引戸、2a…戸先側、
3…筐体、
4…仮施錠機構、9…カマ、
5…固定部材、
6…操作部材、7…レバー、
21…駆動部材、
22…水平駆動板、
23…第1リンク、24…第2リンク、
25、26…固定軸、
31…蹴り出し機構、
32、32A、32B…アシストロッド、32a…先端部、
40、40A…アシストベース、
50、50A…クラッチ手段、
51、51A…可動軸、52…係合部、
53…戻しバネ、
60…ロックピン、
71…復帰バネ、
72、72A…アシスト付勢手段。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10