(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-02
(45)【発行日】2022-05-13
(54)【発明の名称】圧延装置及び圧延装置の構築方法
(51)【国際特許分類】
B21B 31/08 20060101AFI20220506BHJP
B21B 35/14 20060101ALI20220506BHJP
【FI】
B21B31/08 J
B21B35/14 Z
(21)【出願番号】P 2018067236
(22)【出願日】2018-03-30
【審査請求日】2020-11-09
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】306022513
【氏名又は名称】日鉄エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(74)【代理人】
【識別番号】100171099
【氏名又は名称】松尾 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100223424
【氏名又は名称】和田 雄二
(74)【代理人】
【識別番号】100223376
【氏名又は名称】小林 紀史
(72)【発明者】
【氏名】池▲崎▼ 徹
(72)【発明者】
【氏名】森 宏
(72)【発明者】
【氏名】新保 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】保木本 達也
【審査官】中西 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-532214(JP,A)
【文献】特開平10-137824(JP,A)
【文献】実開平02-127301(JP,U)
【文献】特開平10-286611(JP,A)
【文献】実開昭59-171801(JP,U)
【文献】特開平06-126335(JP,A)
【文献】実開昭60-131212(JP,U)
【文献】特開昭56-117808(JP,A)
【文献】特開昭61-212414(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21B 27/00-35/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一ベースの上に設置される第二ベースと、
前記第二ベースの上に設けられ、二本の圧延ロールを保持するスタンドと、
前記第二ベースの上に設けられ、入力軸、及び前記入力軸の回転に応じて互いに逆向きに回転する二本の出力軸を有する動力分配部と、
前記二本の出力軸から前記二本の圧延ロールにそれぞれ回転を伝達する二本の出力伝達軸と、
前記第一ベースの上面に沿って前記第二ベースを移動させる直動駆動部と、
前記第一ベースに設けられ、回転トルクを発生させる回転駆動部と、
前記直動駆動部による前記第二ベースの移動に応じて伸縮し、前記回転駆動部から前記入力軸に回転トルクを伝達する伸縮式の入力伝達軸と、を備える圧延装置。
【請求項2】
前記第二ベースの移動ストロークに比較して小さいストロークにて前記出力伝達軸と前記圧延ロールとの間隔を可変にしつつ、前記出力伝達軸と前記圧延ロールとを接続するカップリングを更に備える、請求項
1記載の圧延装置。
【請求項3】
第一ベースと、圧延ロール用の回転トルクを発生させるために前記第一ベース上に設けられた回転駆動部と、前記第一ベースの上面に沿って前記圧延ロールを移動させるために前記第一ベース上に設けられた直動駆動部と、を備える稼働サイトの外にて、第二ベースと、前記第二ベースの上に設けられ、二本の圧延ロールを保持するスタンドと、前記第二ベースの上に設けられ、入力軸と、前記入力軸の回転に応じて互いに逆向きに回転する二本の出力軸を有する動力分配部と、前記二本の出力軸から前記二本の圧延ロールにそれぞれ回転を伝達する二本の出力伝達軸と、を備えるロールユニットを組み立てることと、
前記ロールユニットを前記稼働サイトの前記第一ベースの上に設置することと、
前記直動駆動部と前記ロールユニットとを接続することと、
前記直動駆動部による第二ベースの移動に応じて伸縮する伸縮式の入力伝達軸により、前記回転駆動部と前記入力軸とを接続することと、を含む圧延装置の構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、圧延装置及び圧延装置の構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ワークロールと、駆動機とワークロールとを接続する駆動用スピンドルと、ワークロールがその軸方向にシフトした場合に、これに応じて駆動用スピンドルを伸縮可能にするように、駆動用スピンドルに形成されたスプラインと、を備える圧延機が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、圧延ロールの据付工事時又はメンテナンス時の休止期間を削減するのに有効な圧延装置及び圧延装置の構築方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一側面に係る圧延装置は、第一ベースの上に設置される第二ベースと、第二ベースの上に設けられ、二本の圧延ロールを保持するスタンドと、第二ベースの上に設けられ、入力軸、及び入力軸の回転に応じて互いに逆向きに回転する二本の出力軸を有する動力分配部と、二本の出力軸から二本の圧延ロールにそれぞれ回転を伝達する二本の出力伝達軸と、第一ベースの上面に沿って第二ベースを移動させる直動駆動部と、を備える。
【0006】
この圧延装置によれば、直動駆動部によって第二ベースを移動させることで、二本の圧延ロールを第一ベースに対してシフトさせることができる。第二ベース上には、スタンド及び動力分配部の両方が設けられるので、二本の圧延ロールがシフトしてもスタンド及び動力分配部の間隔は変わらない。このため、二本の圧延ロールのシフトに応じて出力伝達軸を伸縮させる必要がないので、伸縮式の軸の数を削減することができる。従って、装置構成の簡素化に有効である。
【0007】
圧延装置は、第一ベースに設けられ、回転トルクを発生させる回転駆動部と、第二ベースの移動に応じて伸縮し、回転駆動部から入力軸に回転トルクを伝達する伸縮式の入力伝達軸と、を更に備えていてもよい。動力分配部及び回転駆動部の両方を第一ベースに配置する場合、二本の出力伝達軸を二本の圧延ロールのシフトに応じて伸縮させる必要がある。これに対し、動力分配部を第二ベース側に配置し、回転駆動部を第一ベース側に配置する構成によれば、一本の入力伝達軸を伸縮式にすればよい。このため、伸縮式の軸の数を削減することができる。更に、回転駆動部を第一ベース側に配置することで、第二ベースを移動させる直動駆動部の負担を軽減することができる。従って、装置構成の簡素化に有効である。
【0008】
圧延装置は、第二ベースに設けられ、回転トルクを発生させる回転駆動部と、回転駆動部から入力軸に回転トルクを伝達する入力伝達軸と、を更に備えていてもよい。この場合、回転駆動部と入力軸との間の伝達軸についても伸縮させる必要がなくなるので、伸縮式の軸の数を更に削減することができる。
【0009】
圧延装置は、第二ベースの移動ストロークに比較して小さいストロークにて出力伝達軸と圧延ロールとの間隔を可変にしつつ、出力伝達軸と圧延ロールとを接続するカップリングを更に備えていてもよい。この場合、伸縮式の出力伝達軸を用いない構成においても、圧延ロールの少なくとも一方を移動させて圧延ロール同士の間隔を変更することが可能となる。従って、装置の簡素化と、装置の使い易さとの両立を図ることができる。
【0010】
本開示の他の側面に係る圧延装置の構築方法は、第一ベースと、圧延ロール用の回転トルクを発生させるために第一ベース上に設けられた回転駆動部と、第一ベースの上面に沿って圧延ロールを移動させるために第一ベース上に設けられた直動駆動部と、を備える稼働サイトの外にて、第二ベースと、第二ベースの上に設けられ、二本の圧延ロールを保持するスタンドと、第二ベースの上に設けられ、入力軸と、入力軸の回転に応じて互いに逆向きに回転する二本の出力軸を有する動力分配部、二本の出力軸から二本の圧延ロールにそれぞれ回転を伝達する二本の出力伝達軸と、を備えるロールユニットを組み立てることと、ロールユニットを稼働サイトの第一ベースの上に設置することと、直動駆動部とロールユニットとを接続することと、第二ベースの移動に応じて伸縮する伸縮式の入力伝達軸により、回転駆動部と入力軸とを接続することと、を含む。この場合、稼働サイトにおけるロールユニットの稼働中に、交換用の他のロールユニットを組み立てておくことで、稼働サイトにおけるロールユニットの交換時間を短縮し、圧延装置の休止期間の削減を図ることができる。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、圧延ロールの据付工事時又はメンテナンス時の休止期間を削減するのに有効な圧延装置及び圧延装置の構築方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図3】カップリングの概略構成を示す側面図である。
【
図6】ロールユニットの交換手順を示す模式図である。
【
図7】ロールユニットの交換手順を示す模式図である。
【
図8】ロールユニットの交換手順を示す模式図である。
【
図9】ロールユニットの交換手順を示す模式図である。
【
図10】ロールユニットの交換手順を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0014】
〔圧延装置〕
本実施形態に係る圧延装置1は、圧延設備100において圧延を行う装置である。圧延設備100は、例えばスラブを圧延によって形鋼(例えばH形鋼)に成形する設備である。
図1に示すように、圧延設備100は、圧延装置1を稼働させるための稼働サイトSTを備える。稼働サイトSTは、水平な床面を構成する第一ベース110と、第一ベース110上に設けられたレール111とを有する。レール111は、水平に設けられており、鉛直上方から見てスラブの送り方向に交差(例えば直交)している。以下、レール111に平行な方向をシフト方向D1という。
【0015】
圧延装置1は、ロールユニット10と、シフト装置20と、回転駆動部30と、入力伝達軸32とを備える。ロールユニット10は、第二ベース11と、圧延機本体12と、分配減速機13と、出力伝達軸15A,15Bと、カップリング14A,14B,14C,14Dとを有する。第二ベース11は、稼働サイトSTにおいて第一ベース110の上に設置され、圧延機本体12及び分配減速機13を支持する。例えば第二ベース11は、その下部に複数の車輪11aを有しており、それぞれの車輪11aはレール111上に位置している。これにより、第二ベース11は、シフト方向D1に沿って移動可能となっている。
【0016】
圧延機本体12は、互いに平行な圧延ロール40A,40Bと、二つのスタンド50と、複数のセパレータ56とを有する。圧延ロール40A,40Bは、上下に並び、それぞれシフト方向D1に沿うように配置されている。圧延ロール40Aはワークの上に接し、圧延ロール40Bはワークの下に接する。以下における「前後左右」は、圧延ロール40A,40Bの一端側(例えば
図1の左側)を「左」とし、圧延ロール40A,40Bの他端側を「右」とした方向を意味する。圧延ロール40A,40Bのそれぞれは、左右方向に延びたロール本体41と、ロール本体41の左端から更に左に延びたロールネック42と、ロール本体41の右端から更に右に延びたロールネック43とを有する。
【0017】
二つのスタンド50は、第二ベース11の上に設けられ、圧延ロール40A,40Bの両端部をそれぞれ回転自在に保持する。例えば、左側のスタンド50は圧延ロール40A,40Bの左側のロールネック42を回転自在に保持し、右側のスタンド50は圧延ロール40A,40Bの右側のロールネック43を回転自在に保持する。
【0018】
図1及び
図2に示すように、左側のスタンド50は、ハウジング51と、上側軸受部52と、下側軸受部53と、圧下装置54とを有する。ハウジング51は、上側軸受部52と下側軸受部53とを包囲する。上側軸受部52は、ハウジング51内において圧延ロール40Aのロールネック42を回転自在に保持する。下側軸受部53は、ハウジング51内において圧延ロール40Bのロールネック42を回転自在に保持する。圧下装置54は、例えば油圧シリンダであり上側軸受部52に下向きの力を加える。圧下装置54は、ハウジング51の上に取り付けられており、ハウジング51内に突出した圧下ロッド55を有する。圧下ロッド55の下端部は上側軸受部52の上部に接続されている。
【0019】
右側のスタンド50も左側のスタンド50と同様に構成されている。右側のスタンド50の上側軸受部52は、圧延ロール40Aのロールネック43を回転自在に保持する。右側のスタンド50の下側軸受部53は、圧延ロール40Bのロールネック43を回転自在に保持する。複数のセパレータ56は、それぞれ左右方向に延び、左側のスタンド50と右側のスタンド50とを接続する。複数のセパレータ56は、例えば、圧延ロール40A,40Bの前方且つ上方、前方且つ下方、後方且つ上方、後方且つ下方の4箇所に1本ずつ配置され、左右方向に延びて左側のスタンド50と右側のスタンド50の上部同士を接続する4本のセパレータ56である。
【0020】
分配減速機13(動力分配部)は、第二ベース11の上に設けられており、圧延機本体12に対してシフト方向D1の一方側(例えば右側)に並んでいる。分配減速機13は、入力軸61と、二本の出力軸62A,62Bと、分配減速機構64とを有している。入力軸61及び出力軸62A,62Bは、いずれもシフト方向D1に平行な軸線まわりに回転可能となっている。分配減速機構64は、出力軸62A,62Bの回転が互いに等速で逆向きとなるように、入力軸61の回転トルクを出力軸62A,62Bに伝達する。出力軸62A,62Bは上下に並んでおり、入力軸61の回転に応じて互いに逆向きに回転する。出力伝達軸15A,15Bは、二本の出力軸62A,62Bから二本の圧延ロール40A,40Bにそれぞれ回転を伝達する。
【0021】
カップリング14A,14Bは、圧延ロール40A,40Bと出力伝達軸15A,15Bとをそれぞれ接続する。カップリング14Aは、第二ベース11の移動ストロークL1に比較して小さいストロークL2にて出力伝達軸15Aと圧延ロール40Aとの間隔を可変にしつつ、出力伝達軸15Aと圧延ロール40Aとを接続する。なお、第二ベース11の移動ストロークL1は、第二ベース11が移動し得る最大のストロークである。
【0022】
例えば
図3及び
図4に示すように、カップリング14Aは、圧延ロール40Aのロールネック43の端部に取り付けられた継手部71と、出力伝達軸15Aの先端部(圧延ロール40A側の端部)に設けられた継手部72と、継手部71,72を接続するユニバーサルジョイント73とを有する。継手部71は、ロール接続部71aと板状の外形を有するフォーク部71bとで構成されている。継手部71の中心軸はロールネック43の中心軸に一致している。フォーク部71bの端部の幅方向の中央には切欠き71cが形成されている。
【0023】
継手部72は、軸受孔72aと切欠き72bとを有する。軸受孔72aは、径方向(出力軸62Aの中心軸線に直交する方向)に沿って出力伝達軸15Aの先端部を貫通している。切欠き72bは、軸受孔72aの中心軸線と出力伝達軸15Aの中心軸線とを含む平面に沿うように形成されており、その幅は軸受孔72aの内径よりも小さく、継手部71の厚さよりも大きい。切欠き72bは、出力伝達軸15Aの先端面にて圧延ロール40A側に開放されている。出力伝達軸15Aの先端面を基準にして、切欠き72bは軸受孔72aよりも深部まで達している。このため、軸受孔72aの内周面は、切欠き72bによって二つの部分に分断されている。
【0024】
ユニバーサルジョイント73は、互いに直交する外側軸74及び内側軸75を有する。外側軸74は、軸受孔72aの中心軸線まわりに回転可能となるように、軸受孔72aに嵌合している。外側軸74は、その中心軸線に沿って第一部分74A及び第二部分74Bに分かれている。第一部分74A及び第二部分74Bは内側軸75によって接続されている。第一部分74A及び第二部分74Bの間隔はフォーク部71bの厚さと同等以上であり、切欠き72bの幅よりも小さい。内側軸75の外径は切欠き71cの幅以下である。フォーク部71bは、出力伝達軸15Aの先端面から切欠き72b内に挿入され、更に内側軸75を切欠き71c内に受け入れながら第一部分74A及び第二部分74Bの間に挿入されている。
【0025】
このような構造において、外側軸74及び内側軸75は、それぞれの中心軸線まわりに出力伝達軸15Aの傾動を許容しつつ、出力伝達軸15Aの回転を圧延ロール40Aに伝達する。この伝達機能は、切欠き71c内に内側軸75が位置する限りは維持される。このため、内側軸75が切欠き71c内に位置する範囲にて、圧延ロール40Aと出力伝達軸15Aとの間隔が可変となる。
【0026】
カップリング14Bは、上記移動ストロークL1に比較して小さいストロークL2にて出力伝達軸15Bと圧延ロール40Bとの間隔を可変にしつつ、出力伝達軸15Bと圧延ロール40Aとを接続する。カップリング14Bは、カップリング14Aと同様の継手部71、継手部72及びユニバーサルジョイント73を有する。カップリング14Bの継手部71は圧延ロール40Bのロールネック43の端部に取り付けられ、カップリング14Bの継手部72は出力伝達軸15Bの先端部に設けられている。
【0027】
カップリング14C,14Dは、出力伝達軸15A,15Bと出力軸62A,62Bとをそれぞれ接続する。カップリング14Cは、上記移動ストロークL1に比較して小さいストロークL2にて出力伝達軸15Aと出力軸62Aとの間隔を可変にしつつ、出力伝達軸15Aと出力軸62Aとを接続する。カップリング14Dは、上記移動ストロークL1に比較して小さいストロークL2にて出力伝達軸15Bと出力軸62Bとの間隔を可変にしつつ、出力伝達軸15Bと出力軸62Bとを接続する。
【0028】
カップリング14C,14Dのそれぞれは、カップリング14Aと同様の継手部71、継手部72及びユニバーサルジョイント73を有する。カップリング14Cの継手部72は出力伝達軸15Aの基端部(出力軸62A側の端部)に設けられ、カップリング14Cの継手部71は出力軸62Aの先端部(出力伝達軸15A側の端部)に取り付けられている。カップリング14Dの継手部72は出力伝達軸15Bの基端部(出力軸62B側の端部)に設けられ、カップリング14Dの継手部71は出力軸62Bの先端部(出力伝達軸15B側の端部)に取り付けられている。
【0029】
回転駆動部30は、第一ベース110に設けられ、回転トルクを発生させる。例えば回転駆動部30は、電動式の回転アクチュエータであり、その出力軸31がシフト方向D1に沿うように第一ベース110に設置されている。
【0030】
入力伝達軸32は、出力軸31と分配減速機13の入力軸61とを接続し、出力軸31から入力軸61に回転トルクを伝達する。入力伝達軸32は伸縮式であり、第二ベース11の移動に応じて伸縮する。例えば入力伝達軸32は、伸縮用のスプライン33を有している。
【0031】
なお、
図5に示すように、回転駆動部30は第二ベース11に設けられていてもよい。この場合、第二ベース11が移動しても分配減速機13と回転駆動部30との間隔は変わらないので、入力伝達軸32はスプライン33を有していなくてもよい。
【0032】
図1に戻り、シフト装置20(直動駆動部)は、第一ベース110に設けられ、第一ベース110の上面に沿って(例えば上記シフト方向D1に沿って)第二ベース11を移動させる。例えば、シフト装置20は油圧シリンダであり、シリンダチューブ21と、ピストン22と、ピストンロッド23とを有する。
【0033】
シリンダチューブ21は、シフト方向D1に沿った状態で第一ベース110に設置されている。ピストン22は、シフト方向D1に沿って移動可能な状態でシリンダチューブ21内に配置されている。ピストンロッド23は、ピストン22からロールユニット10側に突出している。ピストンロッド23の端部はシリンダチューブ21外に突出してロールユニット10に接続されている。ピストンロッド23の端部は、第二ベース11に対して不動な部分であればどの部分に接続されていてもよい。例えば、図示のようにスタンド50に接続されていてもよいし、第二ベース11自体に接続されていてもよい。
【0034】
シフト方向D1に沿って第二ベース11を移動させ得る限り、シフト装置20の配置に制限はない。例えばシフト装置20は、図示のように回転駆動部30との間に第二ベース11を挟む位置に設けられていてもよいし、第二ベース11の下に設けられていてもよいし、回転駆動部30側に設けられていてもよい。また、シフト装置20は第二ベース11に設けられていてもよい。すなわち、シリンダチューブ21が第二ベース11に設置され、ピストンロッド23の端部が第一ベース110に接続されていてもよい。更に、シフト装置20は、必ずしも油圧シリンダでなくてよく、第一ベース110の上面に沿って第二ベース11を移動させ得る限りいかなるものであってもよく、例えばシフト装置20は、電動式のリニアアクチュエータであってもよい。
【0035】
〔ロールユニットの交換手順〕
続いて、圧延装置1の構築方法の一例として、ロールユニット10の交換手順を説明する。この手順は、稼働サイトSTの外でロールユニット10を組み立てることと、当該ロールユニット10を稼働サイトSTの第一ベース110の上に設置することと、シフト装置20と当該ロールユニット10とを接続することと、第二ベース11の移動に応じて伸縮する伸縮式の入力伝達軸32により、回転駆動部30と入力軸61とを接続することと、を含む。
【0036】
具体的には、まず、
図6及び
図7に示すように、稼働サイトSTにおけるロールユニット10の稼働中に、交換用の他のロールユニット10を稼働サイトSTの外にて組み立てる。以下、稼働中のロールユニット10をロールユニット10Aとし、交換用のロールユニット10をロールユニット10Bとしてこれらを区別する。
【0037】
次に、
図8に示すように、稼働サイトSTにおけるロールユニット10Aの稼働を停止させ、シフト装置20及び入力伝達軸32をロールユニット10Aから取り外す。次に、
図9に示すように、ロールユニット10Aとロールユニット10Bとを交換する。すなわちロールユニット10Aを稼働サイトSTから搬出し、ロールユニット10Bを稼働サイトSTに搬入して第一ベース110の上に設置する。次に、
図10に示すように、シフト装置20及び入力伝達軸32をロールユニット10Bに取り付け、ロールユニット10Bの稼働を開始させる。以上でロールユニット10の交換が完了する。
【0038】
〔本実施形態の効果〕
以上に説明したように、圧延装置1は、第一ベース110の上に設置される第二ベース11と、第二ベース11の上に設けられ、二本の圧延ロール40A,40Bを保持するスタンド50と、第二ベース11の上に設けられ、入力軸61、及び入力軸61の回転に応じて互いに逆向きに回転する二本の出力軸62A,62Bを有する分配減速機13と、二本の出力軸62A,62Bから二本の圧延ロール40A,40Bにそれぞれ回転を伝達する二本の出力伝達軸15A,15Bと、第一ベース110の上面に沿って第二ベース11を移動させるシフト装置20と、を備える。
【0039】
この圧延装置1によれば、シフト装置20によって第二ベース11を移動させることで、二本の圧延ロール40A,40Bを第一ベース110に対してシフトさせることができる。第二ベース11上には、スタンド50及び分配減速機13の両方が設けられるので、二本の圧延ロール40A,40Bがシフトしてもスタンド50及び分配減速機13の間隔は変わらない。このため、二本の圧延ロール40A,40Bのシフトに応じて出力伝達軸15A,15Bを伸縮させる必要がないので、伸縮式の軸の数を削減することができる。従って、装置構成の簡素化に有効である。
【0040】
圧延装置1は、第一ベース110に設けられ、回転トルクを発生させる回転駆動部30と、第二ベース11の移動に応じて伸縮し、回転駆動部30から入力軸61に回転トルクを伝達する伸縮式の入力伝達軸32と、を更に備えていてもよい。
【0041】
図11に示すように、分配減速機13及び回転駆動部30の両方を第一ベース110に配置する場合、二本の出力伝達軸15A,15Bを二本の圧延ロール40A,40Bのシフトに応じて伸縮させる必要がある。このため、出力伝達軸15A,15Bの両方に、スプライン16等の伸縮機構を付加する必要がある。これに対し、分配減速機13を第二ベース11側に配置し、回転駆動部30を第一ベース110側に配置する構成によれば、一本の入力伝達軸32を伸縮式にすればよい。このため、伸縮式の軸の数を削減することができる。更に、回転駆動部30を第一ベース110側に配置することで、第二ベース11を移動させるシフト装置20の負担を軽減することができる。従って、装置構成の簡素化に有効である。
【0042】
圧延装置1は、第二ベース11に設けられ、回転トルクを発生させる回転駆動部30と、回転駆動部30から入力軸61に回転トルクを伝達する入力伝達軸32と、を更に備えていてもよい。この場合、回転駆動部30と入力軸61との間の入力伝達軸32についても伸縮させる必要がなくなるので、伸縮式の軸の数を更に削減することができる。
【0043】
圧延装置1は、第二ベース11の移動ストロークに比較して小さいストロークにて出力伝達軸15A,15Bと圧延ロール40A,40Bとの間隔を可変にしつつ、出力伝達軸15A,15Bと圧延ロール40A,40Bとを接続するカップリング14A,14Bを更に備えていてもよい。この場合、伸縮式の出力伝達軸15A,15Bを用いない構成においても、圧延ロール40A,40Bの少なくとも一方を移動させて圧延ロール40A,40B同士の間隔を変更することが可能となる。従って、装置の簡素化と、装置の使い易さとの両立を図ることができる。
【0044】
圧延装置1の構築方法は、第一ベース110と、圧延ロール40A,40B用の回転トルクを発生させるために第一ベース110上に設けられた回転駆動部30と、第一ベース110の上面に沿って圧延ロール40A,40Bを移動させるために第一ベース110上に設けられたシフト装置20と、を備える稼働サイトSTの外にて、第二ベース11と、第二ベース11の上に設けられ、二本の圧延ロール40A,40Bを保持するスタンド50と、第二ベース11の上に設けられ、入力軸61と、入力軸61の回転に応じて互いに逆向きに回転する二本の出力軸62A,62Bを有する分配減速機13、二本の出力軸62A,62Bから二本の圧延ロール40A,40Bにそれぞれ回転を伝達する二本の出力伝達軸15A,15Bと、を備えるロールユニット10を組み立てることと、ロールユニット10を稼働サイトSTの第一ベース110の上に設置することと、シフト装置20とロールユニット10とを接続することと、第二ベース11の移動に応じて伸縮する伸縮式の入力伝達軸32により、回転駆動部30と入力軸61とを接続することと、を含む。この場合、稼働サイトSTにおけるロールユニット10の稼働中に、交換用の他のロールユニット10を組み立てておくことで、稼働サイトSTにおけるロールユニットの交換時間を短縮し、圧延装置1の休止期間の削減を図ることができる。
【0045】
以上、実施形態について説明したが、本発明は必ずしも上述した形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【符号の説明】
【0046】
1…圧延装置、11…第二ベース、13…分配減速機(動力分配部)、14A,14B…カップリング、15A,15B…出力伝達軸、20…シフト装置(直動駆動部)、30…回転駆動部、32…入力伝達軸、40A,40B…圧延ロール、50…スタンド、61…入力軸、62A,62B…出力軸、110…第一ベース、ST…稼働サイト。