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特許7066271画像処理装置、画像処理方法及びヘッドアップディスプレイシステム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-02
(45)【発行日】2022-05-13
(54)【発明の名称】画像処理装置、画像処理方法及びヘッドアップディスプレイシステム
(51)【国際特許分類】
   B60K 35/00 20060101AFI20220506BHJP
   G02B 27/01 20060101ALI20220506BHJP
   G09G 5/00 20060101ALI20220506BHJP
   G09G 5/10 20060101ALI20220506BHJP
【FI】
B60K35/00 A
G02B27/01
G09G5/00 550C
G09G5/00 530H
G09G5/00 530D
G09G5/10 B
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018100254
(22)【出願日】2018-05-25
(65)【公開番号】P2019202698
(43)【公開日】2019-11-28
【審査請求日】2021-01-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000101732
【氏名又は名称】アルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】木村 豪
【審査官】楠永 吉孝
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-009677(JP,A)
【文献】特開2017-007481(JP,A)
【文献】特開2015-221651(JP,A)
【文献】特開2010-120617(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 35/00
G02B 27/01
G09G 5/00
G09G 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のフロントガラスに投影することで、該車両の前方に位置する対象物がオブジェクトに囲まれているように視認される投影画像を出力する画像処理装置であって、
前記車両の高さ方向の動作及び幅方向の動作を検出する検出部と、
前記検出部が、前記高さ方向の動作を検出した場合に、前記投影画像に含まれる前記オブジェクトの高さ方向の辺または面を残したまま高さ方向と略直交する方向の辺または面を非表示にし、または、視認しにくくし、前記検出部が、前記幅方向の動作を検出した場合に、前記投影画像に含まれる前記オブジェクトの幅方向の辺または面を残したまま幅方向と略直交する方向の辺または面を非表示にする、または、視認しにくくする補正部と
を有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
車両のフロントガラスに投影することで、該車両の前方に位置する対象物がオブジェクトに囲まれているように視認される投影画像を出力する画像処理方法であって、
前記車両の高さ方向の動作及び幅方向の動作を検出する検出工程と、
前記検出工程において、前記高さ方向の動作検出された場合に、前記投影画像に含まれる前記オブジェクトの高さ方向の辺または面を残したまま高さ方向と略直交する方向の辺または面を非表示にし、または、視認しにくくし、前記検出工程において、前記幅方向の動作が検出された場合に、前記投影画像に含まれる前記オブジェクトの幅方向の辺または面を残したまま幅方向と略直交する方向の辺または面を非表示にする、または、視認しにくくする補正工程と
を有することを特徴とする画像処理方法。
【請求項3】
車両の前方を撮影し、撮影画像を出力する撮像装置と、
車両のフロントガラスに投影することで、該車両の前方に位置する対象物がオブジェクトに囲まれているように視認される投影画像を、前記撮影画像に基づいて生成し、出力する画像処理装置と、
出力された前記投影画像を前記車両のフロントガラスに投影する光学部材と、を有するヘッドアップディスプレイシステムであって、
前記画像処理装置は、
前記車両の高さ方向の動作及び幅方向の動作を検出する検出部と、
前記検出部が、前記高さ方向の動作を検出した場合に、前記投影画像に含まれる前記オブジェクトの高さ方向の辺または面を残したまま高さ方向と略直交する方向の辺または面を非表示にし、または、視認しにくくし、前記検出部が、前記幅方向の動作を検出した場合に、前記投影画像に含まれる前記オブジェクトの幅方向の辺または面を残したまま幅方向と略直交する方向の辺または面を非表示にする、または、視認しにくくする補正部と
を有することを特徴とするヘッドアップディスプレイシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置、画像処理方法及びヘッドアップディスプレイシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両にヘッドアップディスプレイシステムを搭載し、運転者に通知する情報を、車両前方の虚像として視認させる投影技術が知られている。当該ヘッドアップディスプレイによれば、運転者は、運転中に視線を大きく動かすことなく情報を視認することができる。
【0003】
また、最近では、かかる投影技術を応用して、運転者がフロントウィンドウ越しに視認する実景(例えば、自車両の前方を走行する他車両)に、AR(Augmented Reality)マーカと呼ばれるオブジェクトを重ね合わせる画像処理技術も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-221651号公報
【文献】特開2015-226304号公報
【文献】特開2015-009677号公報
【文献】国際公開第2015/128985号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前方を走行する他車両と自車両との相対的な位置関係は、例えば、路面の凹凸やバンクの有無等、走行環境によって大きく変動する。このような変動に対して、ARマーカをリアルタイムに追従させることは困難であり、例えば、前方を走行する他車両に対してARマーカが位置ずれを起こすことがある。このような位置ずれは、運転者に対して違和感を与える。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、ヘッドアップディスプレイシステムにおいて、運転者に与える違和感を低減させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様によれば、画像処理装置は以下のような構成を備える。即ち、
車両のフロントガラスに投影することで、該車両の前方に位置する対象物がオブジェクトに囲まれているように視認される投影画像を出力する画像処理装置であって、
前記車両の高さ方向の動作及び幅方向の動作を検出する検出部と、
前記検出部が、前記高さ方向の動作を検出した場合に、前記投影画像に含まれる前記オブジェクトの高さ方向の辺または面を残したまま高さ方向と略直交する方向の辺または面を非表示にし、または、視認しにくくし、前記検出部が、前記幅方向の動作を検出した場合に、前記投影画像に含まれる前記オブジェクトの幅方向の辺または面を残したまま幅方向と略直交する方向の辺または面を非表示にする、または、視認しにくくする補正部とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
ヘッドアップディスプレイシステムにおいて、運転者に与える違和感を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1の実施形態に係るヘッドアップディスプレイシステムのシステム構成の一例を示す図である。
図2】第1の実施形態に係るヘッドアップディスプレイシステムを構成する各装置の配置例を示す図である。
図3】ARマーカを含む投影画像の投影例を示す第1の図である。
図4】画像処理装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
図5】ARマーカ部の機能構成の詳細を示す図である。
図6】ARマーカ対象検出部及びARマーカ生成部による処理の具体例を示す第1の図である。
図7】車両動作検出部による処理の具体例を示す図である。
図8】ARマーカ補正部による処理の具体例を示す第1の図である。
図9】ARマーカ部によるARマーカ処理の流れを示すフローチャートである。
図10A】ARマーカを含む投影画像の補正時間帯における投影例を示す第1の図である。
図10B】ARマーカを含む投影画像の補正時間帯における投影例を示す第2の図である。
図10C】ARマーカを含む投影画像の補正時間帯における投影例を示す第3の図である。
図11】第2の実施形態に係るヘッドアップディスプレイシステムを構成する各装置の配置例を示す図である。
図12】ARマーカを含む投影画像の投影例を示す第2の図である。
図13】ARマーカ対象検出部及びARマーカ生成部による処理の具体例を示す第2の図である。
図14】ARマーカ補正部による処理の具体例を示す第2の図である。
図15】ARマーカを含む投影画像の補正時間帯における投影例を示す第4の図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、各実施形態について添付の図面を参照しながら説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く。
【0011】
[第1の実施形態]
<ヘッドアップディスプレイシステムのシステム構成>
はじめに、車両に搭載されるヘッドアップディスプレイシステムのシステム構成について説明する。図1は、第1の実施形態に係るヘッドアップディスプレイシステムのシステム構成の一例を示す図である。図1に示すように、ヘッドアップディスプレイシステム100は、撮像装置110、車両動作検出センサ120、画像処理装置130、光学部材150を有する。なお、本実施形態において、ヘッドアップディスプレイシステム100は、車両のイグニッションスイッチがON状態になることで起動し、OFF状態になることで停止するものとする。ただし、ヘッドアップディスプレイシステム100の起動、停止のタイミングはこれに限定されず、例えば、車両のイグニッションスイッチがON状態になった後で、車両の運転者の指示に基づいて起動、停止するように構成してもよい。
【0012】
撮像装置110は車両の幅方向中央位置において前方を撮影し、撮影画像を画像処理装置130に送信する。車両動作検出センサ120は、車両の所定方向の動作を、基準位置からの変位を示す変位信号として検出し、画像処理装置130に送信する。なお、本実施形態では、車両動作検出センサ120として、6軸のジャイロセンサを用いるものとする。
【0013】
画像処理装置130には、ARマーカプログラムがインストールされており、当該プログラムが実行されることで、画像処理装置130は、ARマーカ部140として機能する。ARマーカ部140は、撮影画像よりARマーカ(オブジェクト)を重ね合わせる対象物(ARマーカ対象物)を検出する。また、ARマーカ部140は、検出したARマーカ対象物の位置及び大きさに応じて、車両のフロントガラスに投影する投影画像(ARマーカを含む投影画像)を生成し、出力する。
【0014】
また、ARマーカ部140は、車両動作検出センサ120から送信される変位信号を監視し、車両の所定方向の動作を検出した場合に、投影画像に含まれるARマーカの一部を、動作方向に応じて補正する。これにより、ARマーカ部140によれば、車両の所定方向の動作により、車両の運転者により視認されるARマーカがARマーカ対象物に対して位置ずれを起こした場合でも、運転者に与える違和感を低減させることができる。
【0015】
光学部材150は、画像処理装置130から出力される投影画像を、車両のフロントガラスに投影する。光学部材150は、車両のフロントガラスに投影された投影画像が、車両前方の虚像として、運転者により視認されるように構成されている。これにより、実景のARマーカ対象物がARマーカに囲まれているように運転者に視認されることになる。
【0016】
<ヘッドアップディスプレイシステムを構成する各装置の配置例>
次に、ヘッドアップディスプレイシステム100を構成する各装置の配置例について説明する。図2は、第1の実施形態に係るヘッドアップディスプレイシステムを構成する各装置の配置例を示す図である。
【0017】
図2に示すように、撮像装置110は、車両のフロントガラス160近傍であって、車両の幅方向中央位置の天井部分に、車両の前方に向けて配置される。これにより、撮像装置110は、車両の幅方向中央位置において前方を撮影することができる。また、車両動作検出センサ120、画像処理装置130は、車両のセンタコンソールの裏側または床下に配置される。
【0018】
図2に示すように、画像処理装置130より出力された投影画像は、光学部材150を構成するスクリーン151に描画され、反射ミラー152、153を介してフロントガラス160に投影される。これにより、運転者は、投影画像に含まれるARマーカを、図2に示す虚像の位置において視認することになる。このため、ARマーカ対象物の位置及び大きさに応じて、投影画像に含まれるARマーカの位置及び大きさを制御することで、ARマーカ対象物がARマーカに囲まれているように運転者に視認させることができる。なお、図2に示すように、本実施形態においては、車両の高さ方向をy軸方向、車両の前後方向をz軸方向とおく。
【0019】
<投影画像の投影例>
次に、投影画像の投影例について説明する。図3は、ARマーカを含む投影画像の投影例を示す第1の図である。図3に示すように、運転者は、車両のフロントガラス160を介して、自車両の前方の実景を視認することができる。運転者が視認する実景には、自車両の前方を走行する他車両300が含まれる。本実施形態において他車両300は、ARマーカ対象物として検出される。
【0020】
このため、投影画像には、他車両300を囲むように構成されたARマーカが含まれる。具体的には、図3に示すように、投影画像がフロントガラス160に投影されることで、運転者に視認されるARマーカ310が他車両300を囲むように、投影画像内のARマーカの位置座標、幅方向長さ、高さ方向長さが算出される。なお、図3に示すように、本実施形態では、車両の幅方向をx軸とおく。
【0021】
<画像処理装置のハードウェア構成>
次に、画像処理装置130のハードウェア構成について説明する。図4は、画像処理装置のハードウェア構成の一例を示す図である。図4に示すように、画像処理装置130は、CPU(Central Processing Unit)401、ROM(Read Only Memory)402、RAM(Random Access Memory)403を有する。また、画像処理装置130は、GPU(Graphic Processing Unit)404、I/F(Interface)装置405を有する。なお、画像処理装置130の各部は、バス406を介して相互に接続されている。
【0022】
CPU401は、ROM402にインストールされている各種プログラム(例えば、ARマーカプログラム等)を実行するデバイスである。ROM402は、不揮発性メモリであり、CPU401によって実行される各種プログラムを格納する、主記憶デバイスとして機能する。RAM403は、DRAM(Dynamic Random Access Memory)やSRAM(Static Random Access Memory)等の揮発性メモリである。RAM403は、ROM402にインストールされている各種プログラムがCPU401によって実行される際に展開される作業領域を提供する、主記憶デバイスとして機能する。
【0023】
GPU404は、画像処理を行う専用の集積回路であり、第1の実施形態では、ARマーカプログラムを実行するCPU401からの指示に基づき、投影画像の生成等を行う。I/F装置405は、撮像装置110及び車両動作検出センサ120と、画像処理装置130とを接続するための接続デバイスである。
【0024】
<画像処理装置のARマーカ部の機能構成>
次に、画像処理装置130のARマーカ部140の機能構成の詳細について説明する。図5は、ARマーカ部の機能構成の詳細を示す図である。図5に示すように、ARマーカ部140は、ARマーカ対象検出部501、ARマーカ生成部502、車両動作検出部503、ARマーカ補正部504、ARマーカ出力部505を有する。
【0025】
ARマーカ対象検出部501は、撮像装置110より撮影画像を取得し、撮影画像に含まれるARマーカ対象物を検出する。また、ARマーカ対象検出部501は、検出したARマーカ対象物の位置座標、幅方向長さ、高さ方向長さを、ARマーカ生成部502に通知する。
【0026】
ARマーカ生成部502は、ARマーカ対象検出部501より通知された、位置座標、幅方向長さ、高さ方向長さに基づいて、投影画像内におけるARマーカの位置、大きさを算出し、ARマーカを含む投影画像を生成する。また、ARマーカ生成部502は、生成した投影画像を、ARマーカ補正部504に通知する。
【0027】
車両動作検出部503は検出部の一例であり、車両動作検出センサより取得した変位信号を監視し、車両の所定方向の動作を検出する。また、車両動作検出部503は、車両の所定方向の動作を検出した場合に、検出結果をARマーカ補正部504に通知する。
【0028】
ARマーカ補正部504は補正部の一例である。ARマーカ補正部504は、車両動作検出部503より所定方向の動作を検出した旨の検出結果を受信した場合に、ARマーカ生成部502により生成された投影画像に含まれるARマーカの少なくとも一部を、動作方向に応じて補正する。また、ARマーカ補正部504は、少なくとも一部が補正された補正後のARマーカを含む投影画像をARマーカ出力部505に通知する。
【0029】
なお、ARマーカ補正部504は、車両動作検出部503より所定方向の動作を検出した旨の検出結果を受信しなかった場合には、ARマーカ生成部502により生成された投影画像に含まれるARマーカを補正することなく、ARマーカ出力部505に通知する。
【0030】
ARマーカ出力部505は、ARマーカ補正部504より通知された投影画像を出力する。これにより、車両のフロントガラス160には、ARマーカを含む投影画像が投影される。
【0031】
<ARマーカ部の各部の処理の具体例>
次に、ARマーカ部140の各部(ARマーカ出力部505を除く、ARマーカ対象検出部501、ARマーカ生成部502、車両動作検出部503、ARマーカ補正部504)の処理の具体例について説明する。
【0032】
(1)ARマーカ対象検出部及びARマーカ生成部による処理の具体例
はじめに、ARマーカ対象検出部501及びARマーカ生成部502による処理の具体例について説明する。図6は、ARマーカ対象検出部及びARマーカ生成部による処理の具体例を示す第1の図である。
【0033】
このうち、図6(a)は、ARマーカ対象検出部501が撮像装置110より取得した撮影画像600を示している。図6(a)に示すように、撮影画像600には、自車両の前方を走行する他車両300が含まれる。
【0034】
図6(b)は、ARマーカ対象検出部501により、撮影画像600に含まれるARマーカ対象物として、他車両300が検出された様子を示している。図6(b)の例は、ARマーカ対象検出部501が、他車両300の撮影画像600内での位置座標(x,y)、幅方向長さ(w)、高さ方向長さ(h)を算出した様子を示している。
【0035】
図6(c)は、撮影画像600における他車両300の位置座標、幅方向長さ、高さ方向長さに基づいて、ARマーカ生成部502が、投影画像610内におけるARマーカ611の、
・位置座標(x、y)、
・幅方向長さ(w
・高さ方向長さ(h
を算出した様子を示している。
【0036】
(2)車両動作検出部による処理の具体例
次に、車両動作検出部503による処理の具体例について説明する。図7は、車両動作検出部による処理の具体例を示す図である。このうち、図7(a)は、車両動作検出部503による、車両のy軸方向の動作の基準位置からの変位710と、変位信号711と、変位信号の処理結果712とを示した図である。
【0037】
図7(a)に示すように、車両動作検出部503は、車両のy軸方向の動作として、変位710を検出する。変位信号711において、横軸は時間を表し、縦軸はy軸方向の変位710を表している。更に、変位信号の処理結果712は、変位信号711を、単位時間ごとにp-p(ピークtoピーク)の振幅値に変換することで得られた処理結果である。
【0038】
車両動作検出部503では、変位信号の処理結果712が閾値713を超えた場合に、車両のy軸方向の動作を検出した旨の検出結果を、ARマーカ補正部504に通知する。図7(a)の例は、車両動作検出部503が、矢印714で示す時間帯(補正時間帯)において、車両のy軸方向の動作を検出した旨の検出結果を、ARマーカ補正部504に通知した様子を示している。なお、図7(a)に示す処理結果712は、例えば、車両が、舗装された道路を走行した後に、舗装されていない砂利道等を一時的に走行し、再び、舗装された道路を走行した場合等に発生する。
【0039】
図7(b)は、車両動作検出部503による、車両のx軸方向の動作の基準位置からの変位720と、変位信号722とを示した図である。図7(b)に示すように、車両動作検出部503は、車両のx軸方向の動作として、変位720を検出する。変位信号722において、横軸は時間を表し、縦軸はx軸方向の変位720を表している。
【0040】
車両動作検出部503では、変位信号722が閾値723を超えた場合に、車両のx軸方向の動作を検出した旨の検出結果を、ARマーカ補正部504に通知する。図7(b)の例は、車両動作検出部503が、矢印724で示す時間帯(補正時間帯)において、車両のx軸方向の動作を検出した旨の検出結果を、ARマーカ補正部504に通知した様子を示している。なお、図7(b)に示す変位信号722は、例えば、車両が、直線の道路を走行した後に、一時的に右方向に急激なカーブを走行し、その後、再び、直線の道路を走行した場合等に発生する。
【0041】
図7(c)は、車両動作検出部503による、車両のz軸周りの動作の基準位置からの変位730と、変位信号732とを示した図である。図7(c)に示すように、車両動作検出部503は、車両のz軸周りの動作として、変位730を検出する。変位信号732において、横軸は時間を表し、縦軸はz軸周りの変位730を表している。
【0042】
車両動作検出部503では、変位信号732が閾値733を超えた場合に、車両のz軸周りの動作を検出した旨の検出結果を、ARマーカ補正部504に通知する。図7(c)の例は、車両動作検出部503が、矢印734で示す時間帯(補正時間帯)において、車両のz軸周りの動作を検出した旨の検出結果を、ARマーカ補正部504に通知した様子を示している。なお、図7(c)に示す変位信号732は、例えば、車両が、平坦な道路を走行した後に、バンクのついた左カーブを一時的に走行し、その後、再び、平坦な道路を走行した場合等に発生する。
【0043】
(3)ARマーカ補正部による処理の具体例
次に、ARマーカ補正部504による処理の具体例について説明する。図8は、ARマーカ補正部による処理の具体例を示す第1の図である。図8において、"補正前"は、ARマーカ生成部502より通知される投影画像に含まれるARマーカを示している。図8に示すように、ARマーカ生成部502より通知される投影画像に含まれるARマーカは、矩形形状を有している。
【0044】
一方、図8において、"補正後"は、ARマーカ補正部504により補正された後のARマーカを示している。このうち、"y軸方向"は、車両動作検出部503より、車両のy軸方向の動作を検出した旨の検出結果が通知された場合の補正後のARマーカを示している。図8に示すように、車両のy軸方向の動作を検出した旨の検出結果が通知された場合、ARマーカ補正部504では、ARマーカに含まれる4辺のうち、y軸方向に略直交する辺を非表示にする、または視認しにくくする、といった補正を施す。これにより、投影画像が投影されることで視認されるARマーカの、y軸方向に略直交する辺が変更されることになる。なお、視認しにくくする補正とは、例えば、輝度を下げる、色を変える等の補正を指す。
【0045】
また、"x軸方向"は、車両動作検出部503より、車両のx軸方向の動作を検出した旨の検出結果が通知された場合の補正後のARマーカを示している。図8に示すように、車両のx軸方向の動作を検出した旨の検出結果が通知された場合、ARマーカ補正部504では、ARマーカに含まれる4辺のうち、x軸方向に略直交する辺を非表示にする、または視認しにくくする、といった補正を施す。これにより、投影画像が投影されることで視認されるARマーカの、x軸方向に略直交する辺が変更されることになる。
【0046】
更に、"z軸周り"は、車両動作検出部503より、車両のz軸周りの動作を検出した旨の検出結果が通知された場合の補正後のARマーカを示している。図8に示すように、車両のz軸周りの動作を検出した旨の検出結果が通知された場合、ARマーカ補正部504では、ARマーカの4隅を曲線にする、または、ARマーカを楕円形状にする、といった補正を施す。これにより、投影画像が投影されることで視認されるARマーカの辺が、曲線に変更されることになる。
【0047】
このように、ARマーカ補正部504では、車両の所定方向の動作が検出されると、ARマーカ生成部502により生成された投影画像に含まれるARマーカの少なくとも一部を、車両動作検出部503より通知された動作方向に応じて補正する。
【0048】
<ARマーカ部によるARマーカ処理の流れ>
次に、ARマーカ部140によるARマーカ処理の流れについて説明する。図9は、ARマーカ部によるARマーカ処理の流れを示すフローチャートである。ヘッドアップディスプレイシステム100が起動することにより、図9に示すフローチャートのうちのいずれかのフローチャートが実行される。
【0049】
このうち、図9(a)は、車両のy軸方向の動作に基づいて、ARマーカを補正するARマーカ処理の流れを示すフローチャートである。ステップS901において、ARマーカ対象検出部501は、撮像装置110より撮影画像を取得する。ステップS902において、車両動作検出部503は、車両動作検出センサ120よりy軸方向の変位信号を取得する。
【0050】
ステップS903において、ARマーカ対象検出部501は、取得した撮影画像から、ARマーカ対象物を検出したか否かを判定する。ステップS903において、ARマーカ対象物を検出していないと判定した場合には(ステップS903においてNoの場合には)、ステップS901に戻る。一方、ステップS903において、ARマーカ対象物を検出したと判定した場合には(ステップS903においてYesの場合には)、ステップS904に進む。
【0051】
ステップS904において、ARマーカ生成部502は、ステップS903において検出されたARマーカ対象物の位置座標、幅方向長さ、高さ方向長さに基づいて、投影画像内におけるARマーカの位置座標、幅方向長さ、高さ方向長さを算出する。また、ARマーカ生成部502は、算出結果に基づくARマーカを含む投影画像を生成する。
【0052】
ステップS905において、車両動作検出部503は、取得したy軸方向の変位信号に基づいてp-pの振幅値を算出し、算出したp-pの振幅値が所定の閾値713を超えたか否かを判定する。ステップS905において、閾値713を超えていないと判定した場合には(ステップS905においてNoの場合には)、ステップS907に進む。
【0053】
一方、ステップS905において、閾値713を超えたと判定した場合には(ステップS905においてYesの場合には)、ステップS906に進む。ステップS906において、ARマーカ補正部504は、ステップS904において生成された投影画像においてARマーカを構成する4辺のうち、y軸方向に略直交する2辺に対して補正を施す。
【0054】
ステップS907において、ARマーカ出力部505は、ARマーカ生成部502において生成された投影画像、または、ARマーカ補正部504においてARマーカが補正された投影画像のいずれかを出力する。
【0055】
ステップS908において、ARマーカ対象検出部501は、ARマーカ処理を終了するか否かを判定する。ステップS908において、ARマーカ処理を継続すると判定した場合には(ステップS908においてNoの場合には)、ステップS901に戻る。一方、ステップS908において、ARマーカ処理を終了すると判定した場合には(ステップS908においてYesの場合には)、ARマーカ処理を終了する。
【0056】
図9(b)は、車両のx軸方向の動作に基づいて、ARマーカを補正するARマーカ処理の流れを示すフローチャートである。なお、図9(b)のステップS911、S913、S914、S917、S918は、図9(a)のステップS901、S903、S904、S907、S908にそれぞれ対応しているため、ここでは、ステップS912、S915、S916について説明する。
【0057】
ステップS912において、車両動作検出部503は、車両動作検出センサ120よりx軸方向の変位信号を取得する。ステップS915において、車両動作検出部503は、取得したx軸方向の変位信号が所定の閾値723を超えたか否かを判定する。ステップS915において、閾値723を超えていないと判定した場合には(ステップS915においてNoの場合には)、ステップS917に進む。
【0058】
一方、ステップS915において、閾値723を超えたと判定した場合には(ステップS915においてYesの場合には)、ステップS916に進む。ステップS916において、ARマーカ補正部504は、ステップS914において生成された投影画像においてARマーカを構成する4辺のうち、x軸方向に略直交する2辺に対して補正を施す。
【0059】
図9(c)は、車両のz軸周りの動作に基づいて、ARマーカを補正するARマーカ処理の流れを示すフローチャートである。なお、図9(c)のステップS921、S923、S924、S927、S928は、図9(a)のステップS901、S903、S904、S907、S908にそれぞれ対応しているため、ここでは、ステップS922、S925、S926について説明する。
【0060】
ステップS922において、車両動作検出部503は、車両動作検出センサ120よりz軸周りの変位信号を取得する。ステップS925において、車両動作検出部503は、取得したz軸周りの変位信号が所定の閾値733を超えたか否かを判定する。ステップS925において、閾値733を超えていないと判定した場合には(ステップS925においてNoの場合には)、ステップS927に進む。
【0061】
一方、ステップS925において、閾値733を超えたと判定した場合には(ステップS925においてYesの場合には)、ステップS926に進む。ステップS926において、ARマーカ補正部504は、ステップS924において生成された投影画像においてARマーカの4隅を曲線にする、または、ARマーカを楕円形状にする補正を施す。
【0062】
なお、上記説明では、ヘッドアップディスプレイシステム100が起動することにより、図9に示すフローチャートのうちのいずれかのフローチャートが実行されるものとした。しかしながら、実行されるフローチャートは、いずれか1つに限定されず、いずれか2つのフローチャートまたは3つのフローチャートを、並行して実行させてもよい。ただし、この場合、フローチャート間で重複する工程については、いずれか1の工程が実行されるものとする。また、ステップS906、S916、S926(ARマーカの補正)については、例えば、ステップS906>S916>S926の優先度にしたがって、いずれか1の処理が実行されるものとする。
【0063】
<補正時間帯における投影例>
次に、補正時間帯における投影例について説明する。図10Aは、ARマーカを含む投影画像の補正時間帯における投影例を示す第1の図である。図10Aに示すように、車両が舗装されていない砂利道等を走行した場合、ARマーカ補正部504には、y軸方向の動作を検出した旨の検出結果が通知されることになる。このため、投影画像に含まれるARマーカが補正され、車両のフロントウィンドウには、補正後のARマーカを含む投影画像が投影されることになる。この結果、図10Aに示すARマーカ1000aが視認されることになる。
【0064】
ARマーカ1000aの場合、前方を走行する他車両300と自車両との間でy軸方向の相対的な位置関係が変動し、y軸方向の位置ずれを起こしたとしても、y軸方向に略直交する辺が変更されている。このため、運転者に対して与える、y軸方向の位置ずれによる違和感を低減させることができる。
【0065】
図10Bは、ARマーカを含む投影画像の補正時間帯における投影例を示す第2の図である。図10Bに示すように、車両が右方向に急激なカーブを走行した場合、ARマーカ補正部504には、x軸方向の動作を検出した旨の検出結果が通知されることになる。このため、投影画像に含まれるARマーカが補正され、車両のフロントウィンドウには、補正後のARマーカを含む投影画像が投影されることになる。この結果、図10Bに示すARマーカ1000bが視認されることになる。
【0066】
ARマーカ1000bの場合、前方を走行する他車両300と自車両との間でx軸方向の相対的な位置関係が変動し、x軸方向の位置ずれを起こしたとしても、x軸方向に略直交する辺が変更されている。このため、運転者に対して与える、x軸方向の位置ずれによる違和感を低減させることができる。
【0067】
図10Cは、ARマーカを含む投影画像の補正時間帯における投影例を示す第3の図である。図10Cに示すように、車両がバンクのついた左カーブを走行した場合、ARマーカ補正部504には、z軸周りの動作を検出した旨の検出結果が通知されることになる。このため、投影画像に含まれるARマーカが補正され、車両のフロントウィンドウには、補正後のARマーカを含む投影画像が投影されることになる。この結果、図10Cに示すARマーカ1000cが視認されることになる。
【0068】
ARマーカ1000cの場合、前方を走行する他車両300と自車両との間でz軸周りの相対的な位置関係が変動し、z軸周りの位置ずれを起こしたとしても、形状が楕円形状に変更されている。このため、運転者に対して与える、z軸周りの位置ずれによる違和感を低減させることができる。
【0069】
<まとめ>
以上の説明から明らかなように、第1の実施形態に係る画像処理装置130では、車両のフロントガラスに投影することで、車両の前方に位置するARマーカ対象物がARマーカに囲まれているように視認される投影画像を出力する際、
・車両の所定方向の変位信号を監視し、
・車両の所定方向の動作を検出した場合に、投影画像に含まれるARマーカの少なくとも一部を、動作方向に応じて補正する。
【0070】
これにより、第1の実施形態によれば、ARマーカ対象物に対してARマーカが位置ずれを起こしたとしても、運転者に与える違和感を低減させることができる。
【0071】
[第2の実施形態]
上記第1の実施形態では、運転者に対して2次元のARマーカを視認させる場合について説明した。これに対して、第2の実施形態では、運転者に対して3次元のARマーカを視認させる場合について説明する。以下、第1の実施形態との相違点を中心に説明する。
【0072】
<ヘッドアップディスプレイシステムを構成する各装置の配置例>
はじめに、運転者に対して3次元のARマーカを視認させるヘッドアップディスプレイシステムを構成する各装置の配置例について説明する。図11は、第2の実施形態に係るヘッドアップディスプレイシステムを構成する各装置の配置例を示す図である。
【0073】
図2との相違点は、光学部材1100を構成するスクリーン1110が可動する点である。このように、スクリーン1110が可動することにより、フロントガラス160までの光路長が変動する。これにより、虚像が視認される位置をz軸方向に動かすことが可能となる。この結果、第2の実施形態に係るヘッドアップディスプレイシステムによれば、虚像が視認される位置をz軸方向に1往復動かす間に、虚像の各位置に対応するARマーカを投影画像に含めることで、運転者に、3次元のARマーカを視認させることができる。
【0074】
<投影画像の投影例>
次に、投影画像の投影例について説明する。図12は、ARマーカを含む投影画像の投影例を示す第2の図である。図12に示すように、他車両300に対して、虚像の各位置でのARマーカを投影画像に含めることで、運転者に、3次元のARマーカ1210を視認させることができる。
【0075】
<ARマーカ対象検出部及びARマーカ生成部による処理の具体例>
次に、第2の実施形態におけるARマーカ対象検出部501及びARマーカ生成部502による処理の具体例について説明する。図13は、ARマーカ対象検出部及びARマーカ生成部による処理の具体例を示す第2の図である。
【0076】
このうち、図13(a)は、ARマーカ対象検出部501が撮像装置110より取得した撮影画像1300を示している。図13(a)に示すように、撮影画像1300には、自車両の前方を走行する他車両300が含まれる。
【0077】
図13(b)は、ARマーカ対象検出部501により、撮影画像1300に含まれるARマーカ対象物として、他車両300が検出された様子を示している。図13(b)の例は、ARマーカ対象検出部501が、他車両300の先端の位置座標(xpf,ypf)~後端の位置座標(xpr,ypr)を算出した様子を示している。また、ARマーカ対象検出部501が、他車両300の先端の幅方向長さ(wpf)~後端の幅方向長さ(wpr)、他車両300の先端の高さ方向長さ(hpf)~後端の高さ方向長さ(hpr)を算出した様子を示している。
【0078】
図13(c)は、撮影画像1300における他車両300の先後端の位置座標、幅方向長さ、高さ方向長さに基づいて、ARマーカ生成部502が、虚像の各位置に対応する複数の投影画像それぞれにおけるARマーカの、
・位置座標
・幅方向長さ
・高さ方向長さ
を算出した様子を示している。図13(c)の例は、6つの投影画像1320~1325それぞれにおけるARマーカ1330~1335の位置座標、幅方向長さ、高さ方向長さを算出した様子を示している。
【0079】
例えば、ARマーカ生成部502では、投影画像1320内におけるARマーカ1330の位置座標として、(xdf,ydf)を算出し、ARマーカ1330の幅方向長さとして(wdf)を算出し、高さ方向長さとして、(hdf)を算出する。同様に、ARマーカ生成部502では、投影画像1325内におけるARマーカ1335の位置座標として、(xdr,ydr)を算出し、ARマーカ1330の幅方向長さとして(wdr)を算出し、高さ方向長さとして(hdr)を算出する。
【0080】
<ARマーカ補正部による処理の具体例>
次に、第2の実施形態におけるARマーカ補正部504による処理の具体例について説明する。図14は、ARマーカ補正部による処理の具体例を示す第2の図である。図14において、"補正前"は、ARマーカ生成部502より通知される投影画像が投影されることで、該投影画像に含まれるARマーカが視認された場合を示している。図14に示すように、ARマーカ生成部502より通知される投影画像が投影されることで視認されるARマーカは、直方体形状を有している。
【0081】
一方、図14において、"補正後"は、ARマーカ補正部504により補正された後のARマーカが視認された場合を示している。このうち、"y軸方向"は、車両動作検出部503より、車両のy軸方向の動作を検出した旨の検出結果が通知された場合の補正後のARマーカが視認された場合を示している。
【0082】
図14に示すように、車両のy軸方向の動作を検出した旨の検出結果が通知された場合、ARマーカ補正部504では、ARマーカに含まれる4辺のうち、y軸方向に略直交する面を非表示にする、または視認しにくくする、といった補正を施す。これにより、投影画像が投影されることで視認されるARマーカの、y軸方向に略直交する面が変更されることになる。
【0083】
また、"x軸方向"は、車両動作検出部503より、車両のx軸方向の動作を検出した旨の検出結果が通知された場合の補正後のARマーカを示している。図14に示すように、車両のx軸方向の動作を検出した旨の検出結果が通知された場合、ARマーカ補正部504では、ARマーカに含まれる4辺のうち、x軸方向に略直交する面を非表示にする、または視認しにくくする、といった補正を施す。これにより、投影画像が投影されることで視認されるARマーカの、x軸方向に略直交する面が変更されることになる。
【0084】
更に、"z軸周り"は、車両動作検出部503より、車両のz軸周りの動作を検出した旨の検出結果が通知された場合を示している。図14に示すように、車両のz軸周りの動作を検出した旨の検出結果が通知された場合、ARマーカ補正部504では、ARマーカを円形状または楕円形状にする、といった補正を施す。これにより、投影画像が投影されることで視認されるARマーカは、円柱形状(側面が曲面で、断面が円形状または楕円形状)に変更されることになる。
【0085】
このように、ARマーカ補正部504では、車両の所定方向の動作が検出されると、ARマーカ生成部502により生成された投影画像に含まれるARマーカの少なくとも一部を、車両動作検出部503より通知された動作方向に応じて補正する。
【0086】
<補正時間帯における投影例>
次に、補正時間帯における投影例について説明する。図15は、ARマーカを含む投影画像の補正時間帯における投影例を示す第4の図である。図15に示すように、車両が舗装されていない砂利道等を走行した場合、ARマーカ補正部504には、y軸方向の動作を検出した旨の検出結果が通知されることになる。このため、投影画像に含まれるARマーカが補正され、車両のフロントウィンドウには、補正後のARマーカを含む投影画像が投影されることになる。この結果、図15に示すARマーカ1500が視認されることになる。
【0087】
ARマーカ1500の場合、前方を走行する他車両300と自車両との間でy軸方向の相対的な位置関係が変動し、y軸方向の位置ずれを起こしたとしても、y軸方向に略直交する面が変更されている。このため、運転者に対して与える、y軸方向の位置ずれによる違和感を低減させることができる。
【0088】
<まとめ>
以上の説明から明らかなように、第2の実施形態に係る画像処理装置130では、車両のフロントウィンドウに投影することで、該車両の前方に位置する対象物が3次元のARマーカに囲まれているように視認される投影画像を出力する際、
・車両の所定方向の変位信号を監視し、
・車両の所定方向の動作を検出した場合に、投影画像に含まれるARマーカの少なくとも一部を、動作方向に応じて補正する。
【0089】
これにより、第2の実施形態によれば、ARマーカ対象物に対してARマーカの位置ずれを起こしたとしても、運転者に与える違和感を低減させることができる。
【0090】
[その他の実施形態]
上記第1及び第2の実施形態では、ARマーカ対象検出部501が、ARマーカ対象物として、自車両の前方を走行する他車両300を検出する場合について説明したが、ARマーカ対象検出部501が検出するARマーカ対象物は、他車両に限定されない。例えば、前方を歩行する歩行者を検出してもよい。また、ARマーカ対象検出部501が検出する対象物は、動物体に限定されず、静止物体であってもよい。
【0091】
また、上記第1及び第2の実施形態では、車両動作検出センサからの変位信号に基づいて、所定方向の動作を検出するものとして説明した。しかしながら、所定方向の動作を検出する方法はこれに限定されない。例えば、ステアリング装置の舵角を示す信号に基づいて、所定方向の動作を検出するようにしてもよい。
【0092】
また、上記第2の実施形態では、スクリーン1110が可動することでフロントガラス160までの光路長を変動させる構成としたが、光路長を変動させる構成はこれに限定されない。例えば、反射ミラーが可動することでフロントガラス160までの光路長を変動させる構成としてもよい。
【0093】
なお、上記実施形態に挙げた構成等に、その他の要素との組み合わせ等、ここで示した構成に本発明が限定されるものではない。これらの点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【符号の説明】
【0094】
100 :ヘッドアップディスプレイシステム
110 :撮像装置
120 :車両動作検出センサ
130 :画像処理装置
140 :ARマーカ部
150 :光学部材
501 :ARマーカ対象検出部
502 :ARマーカ生成部
503 :車両動作検出部
504 :ARマーカ補正部
505 :ARマーカ出力部
610 :投影画像
611 :ARマーカ
1000 :ARマーカ
1100 :光学部材
1320~1325 :投影画像
1330~1335 :ARマーカ
1500 :ARマーカ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図10C
図11
図12
図13
図14
図15