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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-02
(45)【発行日】2022-05-13
(54)【発明の名称】電動モータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 5/04 20060101AFI20220506BHJP
【FI】
H02K5/04
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020533913
(86)(22)【出願日】2018-07-30
(86)【国際出願番号】 JP2018028500
(87)【国際公開番号】W WO2020026314
(87)【国際公開日】2020-02-06
【審査請求日】2021-04-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000001340
【氏名又は名称】マーレエレクトリックドライブズジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099612
【弁理士】
【氏名又は名称】菊池 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100064469
【弁理士】
【氏名又は名称】菊池 新一
(74)【代理人】
【識別番号】100073450
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 英俊
(72)【発明者】
【氏名】玉井 真史
(72)【発明者】
【氏名】佐久間 剛太
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 亮介
(72)【発明者】
【氏名】松川 芳生
【審査官】若林 治男
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-52214(JP,A)
【文献】国際公開第2012/046380(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 5/04
H02K 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線方向の一端が端部壁により閉じられ、軸線方向の他端が外部に開口し得るように構成されたモータハウジングと、前記モータハウジング内に収容されたステータ及びロータを有して前記ロータの回転軸の一端側及び他端側がそれぞれ前記モータハウジングの端部壁に保持された第1の軸受及び前記モータハウジングの軸線方向の他端を閉じる部材に保持された第2の軸受により支持されたモータ本体と、前記モータハウジングの軸線方向の一端に固定された取り付けフランジとを備えた電動モータであって、
前記取り付けフランジは、前記モータハウジングの端部壁に接した状態で配置された主板部と、前記主板部から前記モータハウジングと反対側に突出した状態で設けられて前記回転軸を該回転軸が駆動する負荷の入力軸に対して位置決めするために用いられる円筒状のインロー凸部と、前記インロー凸部の内側で前記主板部を貫通した回転軸導出用開口部と、前記主板部の外縁から前記モータハウジング側に突出した側壁部とを備え、
前記回転軸は、前記回転軸導出用開口部を通して前記インロー凸部の内側に導出され、
前記取り付けフランジの側壁部は、前記モータハウジングの周壁部の外周面に外接し得る内周面を有する被固定部を少なくとも2箇所に有して、該少なくとも2箇所の被固定部の内周面を前記モータハウジングの周壁部の外周面に接触させた状態で配置され、
前記取り付けフランジの主板部の前記インロー凸部と回転軸導出用開口部との間に位置する領域に、第1の接合スポットが前記モータハウジングの周方向に間隔をあけて複数個設定されるとともに、前記取り付けフランジの側壁部の各被固定部に第2の接合スポットが前記モータハウジングの周方向に間隔をあけて複数個設定され、
前記取り付けフランジの各第1の接合スポット及び各第2の接合スポットがそれぞれ前記モータハウジングの端部壁及び周壁部にトックス加締めにより接合されていることを特徴とする電動モータ。
【請求項2】
前記取り付けフランジの主板部の前記インロー凸部の内側に位置する部分と前記モータハウジングの端部壁との間に液体ガスケットが介在していることを特徴とする請求項1に記載の電動モータ。
【請求項3】
前記液体ガスケットは接着性を有していることを特徴とする請求項2に記載の電動モータ。
【請求項4】
前記モータハウジング及び取り付けフランジは、金属製板材の成形加工品からなり、
前記取り付けフランジのインロー凸部の周壁部は、その頂部で板材が折り返されることにより二重構造とされ、
前記取り付けフランジのインロー凸部の周壁部が二重構造とされることにより該インロー凸部の周壁部の内側に形成された隙間が前記液体ガスケットを溜める液溜め部となっている請求項2又は3に記載の電動モータ。
【請求項5】
前記取り付けフランジの主板部は、その外縁が、前記モータハウジングの周壁部の径方向に相対する1対の円弧状部分と、前記1対の円弧状部分の隣り合う端部から前記モータハウジングの周壁部の径方向の外側に突出して前記1対の円弧状部分が相対する方向に対して直角な方向に相対する1対の突出部分とを有する輪郭形状を持つように形成され、
前記取り付けフランジの側壁部の被固定部は、前記主板部の外縁の前記1対の円弧状部分に沿う部分に設定され、
前記取り付けフランジの主板部の外縁の前記1対の突出部分の内側の部分が前記取り付けフランジの一対の耳部となっていて、前記取り付けフランジを負荷に対して固定する締結具を貫通させるための取付け孔が前記耳部に形成されていること、
を特徴とする請求項1ないし4のいずれか一つに記載の電動モータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、適宜の負荷を駆動するために用いる電動モータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
本発明が適用される電動モータは、ステータとロータとからなるモータ本体と、このモータ本体を収容したモータハウジングとを備えている。この種のモータは、例えば特許文献1に示されている。
【0003】
本発明が適用される電動モータにおいて、ステータは、例えば、内周側に磁極部を有する環状の電機子鉄心と、この電機子鉄心のスロットに巻回された電機子コイルとにより構成される。ロータは、例えば、軸心部に回転軸が取り付けられたロータコアと、ロータコアの外周に取り付けられた偶数個の永久磁石とにより構成される。ロータは、その中心軸線をステータの電機子鉄心の中心軸線に一致させた状態でステータの内側に配置され、永久磁石により構成されたロータ界磁の磁極部が、ステータの磁極部にギャップを介して対向させられる。
【0004】
モータ本体を収容するモータハウジングは、例えば、軸線方向の一端が端部壁により閉じられた円筒状の部材からなっている。モータハウジングの軸線方向の他端は、モータハウジング内へのモータ本体の組み込みを可能にするために外部に開口し得るようになっていて、モータハウジング内にモータ本体を挿入した後に適宜の構成を有する蓋部材により閉じられる。モータハウジングの軸線方向の他端を閉じる蓋部材は、単なる蓋である場合もあり、制御回路を構成する回路基板等を収容する空間を内部に有するフレームを構成する部材である場合もある。モータ本体のロータの回転軸の一端側は、モータハウジングの端部壁の中央部に設けられた軸受保持部に保持された第1の軸受により支持され、当該回転軸の他端側は、モータハウジングの軸線方向の他端を閉じる端部材に保持された第2の軸受により支持される。
【0005】
電動モータを負荷のフレームのモータ取り付け箇所に取り付けるため、モータ本体を収容したモータハウジングの軸線方向の一端側に取り付けフランジが設けられ、該取り付けフランジに、電動モータを負荷のフレームに固定するための締結具(通常はボルト)を貫通させるための取り付け孔が設けられる。
【0006】
取り付けフランジは、モータハウジングの端部壁に接した状態で配置された主板部と、この主板部からモータハウジングと反対側に突出した状態で設けられた円筒状のインロー凸部と、このインロー凸部の内側で主板部を貫通した回転軸導出用開口部と、主板部の外縁からモータハウジング側に突出した側壁部とを備えている。インロー凸部は、電動モータを負荷のフレームに取り付ける際に負荷のフレームに設けられたインロー凹部と嵌合し合って、回転軸を負荷の入力軸に対して位置決めする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2015-227161号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が対象とする電動モータは、そのモータハウジングの軸線方向の一端側に配置された取り付けフランジを負荷のフレームに設けられたモータ取り付け箇所に位置決め固定することにより負荷のフレームに取り付けられて、モータの回転軸が負荷の入力軸に結合される。そのため、本発明が対象とするモータにおいては、駆動する負荷のモータ取り付け箇所の仕様が異なる毎に、取り付けフランジの構造や寸法を異ならせる必要がある。
【0009】
ところが、従来のこの種のモータにおいては、モータハウジング及びフランジが鋳造品からなっていて、モータハウジングと取り付けフランジとが一体に成形されていたため、駆動する負荷を変更する際には、取り付けフランジの部分のみを変更すれば済む場合であっても、モータハウジングと取り付けフランジとを含む鋳造品全体を成形し直す必要があった。鋳造品を設計し直すためには、当該鋳造品を成形する高価な金型を設計し直す必要があるため、設計変更に要するコストが高くなるのを避けられなかった。
【0010】
上記の問題を解決するため、モータハウジングと取り付けフランジとを別体として、これらを鋼板等の板材の成形加工品により構成し、モータハウジングの軸線方向の一端に取り付けフランジを適宜の手段により固定する構造にすることが考えられる。このように構成しておけば、例えば負荷側のモータ取り付け部の構成が変更された際には、取り付けフランジの部分の構成のみを変更すればよく、モータハウジングは変更する必要がないため、コストの低減を図ることができる。
【0011】
しかし、モータハウジングと取り付けフランジとを別体に構成しておいて、モータを組み立てる際にモータハウジングに取り付けフランジを固定するようにするためには、モータハウジングと取り付けフランジとを十分な強度を持たせて機械的に結合することを可能にする、信頼性が高い結合構造を確立しておくことが必要である。
【0012】
特に、自動車の電装品に用いる電動モータのように、万一破損すると重大な事故につながるおそれがある用途に用いる電動モータにあっては、モータハウジングと取り付けフランジとの結合部の強度に高い信頼性を持たせておくことが必要とされる。また量産性を高めるためには、モータハウジングに取り付けフランジを取り付ける作業を能率よく行うことができるようにしておく必要がある。
【0013】
別体に構成された取り付けフランジとモータハウジングとを結合する方法として、スポット溶接を採用することが容易に考えられる。しかしながら、取付フランジとモータハウジングとの結合をスポット溶接により行うと、モータハウジング及び取り付けフランジが高温に曝されるため、モータを負荷のフレーム等に取り付ける際に位置決め手段として用いる取付フランジのインロー凸部やモータハウジングの端部壁に設けられた軸受保持部が熱歪みにより変形することがある。インロー凸部やモータハウジングの端部壁に設けられた軸受保持部が変形すると、モータの回転軸と負荷の入力軸との同軸性が保たれなくなるため、モータの取り付けに支障を来すことになる。
【0014】
また取り付けフランジのモータハウジングへの取り付けをスポット溶接により行うと、取り付けフランジとモータハウジングとの間のシールを図る場合に、シール素材が熱により損傷するという問題が生じる。特に車両の電動パワーステアリングに用いる電動モータのように、雨水に曝されることがあるモータの場合には、モータに防水性を持たせるために、取り付けフランジとモータハウジングとの接合部のシールを完全に図ることができるようにしておくことが必要不可欠である。
【0015】
上記の理由により、機械的な信頼性を重視する電動モータにおいて、取り付けフランジとモータハウジングとの接続にスポット溶接を採用することは許容されなかった。スポット溶接に代えて、ボルト等の締結手段により取り付けフランジをモータハウジングに締結することが考えられる。しかしながら、ボルト等の締結手段を用いると、締結手段を貫通させるための多数の貫通孔やネジ孔を取付フランジやモータハウジングの端部壁に加工することが必要になるため、取り付けフランジやモータハウジングの端部壁の機械的強度が低下するおそれがある。
【0016】
本発明の目的は、取り付けフランジ及びモータハウジングの各部の変形や機械的強度の低下を招くことなく、モータハウジングと取り付けフランジとの間の機械的結合を行うことができるようにして、モータハウジングと取り付けフランジとを別体に構成することを可能にした電動モータを提供することにある。
【0017】
本発明の他の目的は、モータの防水性を損なうことなく、モータハウジングと取り付けフランジとを別体に構成することを可能にした電動モータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、軸線方向の一端が端部壁により閉じられ、軸線方向の他端が外部に開口し得るように構成されたモータハウジングと、モータハウジング内に収容されたステータ及びロータを有してロータの回転軸の一端側及び他端側がそれぞれモータハウジングの端部壁に保持された第1の軸受及びモータハウジングの軸線方向の他端を閉じる部材に保持された第2の軸受により支持されたモータ本体と、モータハウジングの軸線方向の一端に固定された取り付けフランジとを備えた電動モータを対象とする。
【0019】
本明細書には、前記の目的を達成するために少なくとも下記の第1ないし第5の発明が開示される。
<第1の発明>
本発明は下記の構成を有する。
(1.1)取り付けフランジは、モータハウジングの端部壁に接した状態で配置された主板部と、該主板部からモータハウジングと反対側に突出した状態で設けられて回転軸を該回転軸が駆動する負荷の入力軸に対して位置決めするために用いられる円筒状のインロー凸部と、インロー凸部の内側で主板部を貫通した回転軸導出用開口部と、主板部の外縁からモータハウジング側に突出した側壁部とを備えていて、回転軸が回転軸導出用開口部を通してインロー凸部の内側に導出される。
(1.2)取り付けフランジの側壁部は、モータハウジングの周壁部の外周面に外接し得る内周面を有する被固定部を少なくとも2箇所に有して、該少なくとも2箇所の被固定部の内周面が前記モータハウジングの周壁部の外周面に接した状態で配置されている。
(1.3)取り付けフランジの主板部の前記インロー凸部と回転軸導出用開口部との間に位置する領域に、第1の接合スポットがモータハウジングの周方向に間隔をあけて複数個設定されるとともに、取り付けフランジの側壁部の各被固定部に第2の接合スポットがモータハウジングの周方向に間隔をあけて複数個設定されている。
(1.4)取り付けフランジの各第1の接合スポット及び各第2の接合スポットがそれぞれモータハウジングの端部壁及び周壁部にトックス加締めにより接合されている。
【0020】
トックス加締めは、2枚の金属板の接合スポットを雌型(パンチ)と雄型(ダイ)との間に配置して、雄型により当該接合スポットを雌型の型穴内に押し込んで加締めることにより両金属板を接合する周知の接合方法である。この接合方法によれば、雄型により被接続金属板の接合スポットを雌型内に押し込んで加締めを行う過程で雄型側の金属板の一部を雌型側の金属板の一部に食い込ませるように変形させるため、両金属板の接合スポットを強固に接合することができる。またこの接合方法によれば、2枚の金属板の接合箇所を冷間で接合するため、取付フランジの各部が熱により変形させられるのを防ぐことができる。
【0021】
なおこの接合方法の呼称は、この接合方法を実施する金属加工機械について、TOXの語が商用登録されていることに由来する。この接合は、クリンチング接合と呼ばれることもある。
【0022】
上記のように、ハウジングと取り付けフランジとをトックス加締めにより接合すると、各接合スポットを冷間で強固に接続することができるため、取り付けフランジの各部に熱歪みを生じさせることなく、取り付けフランジとモータハウジングとを強固に接続することができる。
【0023】
また上記のように、取り付けフランジの主板部のインロー凸部と回転軸導出用開口部との間に位置する領域に複数設定した第1の接合スポットと、取り付けフランジの側壁部の各被固定部に複数設定した第2の接合スポットとの双方をトックス加締めにより接合する構造にしておくと、モータの軸線方向に沿って取り付けフランジに作用する外力とモータの径方向に沿って取り付けフランジに作用する外力との双方に対して取り付けフランジの取り付け強度を高めることができるため、モータハウジングに取り付けフランジを一体に設けていた従来のモータと比べて遜色がない機械的強度を取り付けフランジとモータハウジングとの結合部に持たせることができる。
【0024】
本発明によれば、モータハウジングと取り付けフランジを別体として、しかも強度が高い取り付けフランジ付きのモータハウジングを得ることができるため、負荷のモータ取付部の構成が変更された場合に、取り付けフランジの仕様の変更のみを行えばよく、また負荷のモータ取付部の構成はそのままで、負荷が要求するモータの仕様のみが変更された場合には、モータハウジング側の構成のみを変更すれば済むため、モータハウジング及び取り付けフランジの部分の全体を設計し直す場合に比べてコストの低減を図ることができる。
【0025】
<第2の発明>
第2の発明は、第1の発明に適用されるもので、本発明においては、取り付けフランジの主板部の前記インロー凸部の内側に位置する部分とモータハウジングの端部壁との間に液体ガスケットが介在している。
【0026】
上記のように、取り付けフランジの主板部のインロー凸部の内側に位置する部分とモータハウジングの端部壁との間に液体ガスケットを介在させておくと、取り付けフランジの主板部のインロー凸部の内側に位置する部分とモータハウジングの端部壁との間を通して雨水などが通過するのを防ぐことができるため、モータに雨水がかかった場合に、その雨水が取り付けフランジの主板部とモータハウジングの端部壁との間を通して回転軸側に侵入するのを防ぐことができ、該雨水などが回転軸を伝わって負荷側に侵入するのを防ぐことができる。
【0027】
取り付けフランジの主板部の前記インロー凸部の内側に位置する部分とモータハウジングの端部壁との間に液体ガスケットを介在させるには、例えば、モータハウジングの端部壁の、取付フランジのインロー凸部の内側に配置される部分に液体ガスケットを塗布してから各接合スポットにトックス加締めを施すようにすればよい。
【0028】
モータハウジングの端部壁の、取付フランジのインロー凸部の内側に配置される部分に液体ガスケットを塗布してから各接合スポットにトックス加締めを施すと、取り付けフランジの主板部とモータハウジングの端部壁との間に介在する液体ガスケットが圧縮されて、取り付けフランジの主板部とモータハウジングの端部壁との間の隙間内に広がり、このガスケットがフランジの主板部とモータハウジングの端部壁との間の隙間を埋めるため、取り付けフランジの主板部とモータハウジングの端部壁との間にシールを形成することができる。
【0029】
このように液体ガスケットを用いて取り付けフランジの主板部とモータハウジングの端部壁との間にシールを形成する場合に、取り付けフランジとモータハウジングとを接合する各接合スポットを溶接により接合したとすると、液体ガスケットが熱により劣化してしまうため、シールを形成することができない。
【0030】
これに対し、本発明では、各接合スポットをトックス加締めにより冷間で接合するため、液体ガスケットを劣化させることなく取り付けフランジをモータハウジングに接続することができる。
【0031】
取り付けフランジとモータハウジングの端部壁との間をネジやリベットなどの締結手段により接続した場合には、締結手段が取り付けフランジの主板部とモータハウジングの端部壁とを貫通するため、その貫通部でシールが破られるおそれがあるが、本発明のように両者を接合した場合には、各接合スポットに貫通部が形成されることがないため、シール性が損なわれることはない。従って、本発明によれば、モータハウジングの端部壁と取り付けフランジとの間の接合部のシールを完全にして、取り付けフランジの主板部とモータハウジングの端部壁との間を通して雨水などが侵入するのを確実に防ぐことができる。
【0032】
<第3の発明>
第3の発明は、第2の発明に適用されるもので、本発明においては、液体ガスケットが接着性を有している。
【0033】
液体ガスケットは必ずしも接着性を有している必要はないが、接着性を有する液体ガスケットを用いると、取り付けフランジとモータハウジングとの接合強度を更に高めることができる。
【0034】
<第4の発明>
第4の発明は、第2の発明又は第3の発明に適用されるもので、本発明においては、モータハウジング及び取り付けフランジが金属製板材の成形加工品からなり、取り付けフランジのインロー凸部の周壁部は、その頂部で板材が折り返されることにより二重構造とされている。また取り付けフランジのインロー凸部の周壁部が二重構造とされることにより該インロー凸部の周壁部の内側に形成された隙間が液体ガスケットを溜める液溜め部となっている。
【0035】
上記のように、取り付けフランジを金属板の成形加工品として、取り付けフランジのインロー凸部の周壁部を二重構造にし、該インロー凸部の周壁部の内側に形成された隙間を液体ガスケットを溜める液溜め部にしておくと、取り付けフランジとモータハウジングの端部壁との間に液体ガスケットを介在させて、各接合スポットを加締めた際に、液体ガスケットがインロー凸部の周壁部よりも外側の領域に拡散するのを防ぐことができるため、インロー凸部の内側で取り付けフランジの主板部とモータハウジングの端部壁との間に施したシールが薄くなって、そのシール性能が低下するのを防ぐことができる。
【0036】
<第5の発明>
第5の発明は、第1の発明ないし第4の発明の何れかに適用されるもので、下記の構成を有している。
(5.1) 取り付けフランジの主板部は、その外縁が、モータハウジングの周壁部の周方向に沿って延び、該周壁部の径方向に相対する1対の円弧状部分と、該1対の円弧状部分の隣り合う端部から前記モータハウジングの周壁部の径方向の外側に突出して、前記1対の円弧状部分が相対する方向に対して直角な方向に相対する1対の突出部分とを有する輪郭形状を持つように形成されている。
(5.2) 取り付けフランジの側壁部の被固定部は、主板部の外縁の前記1対の円弧状部分に沿う部分に設定されている。
(5.3) 取り付けフランジの主板部の外縁の1対の突出部分の内側の部分が取り付けフランジの一対の耳部となっていて、取り付けフランジを前記回転軸が駆動する負荷に対して固定する締結具を貫通させるための取付け孔が前記耳部に形成されている。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、取り付けフランジを、モータハウジングの端部壁に接した状態で配置された主板部と、該主板部からモータハウジングと反対側に突出した円筒状のインロー凸部と、インロー凸部の内側で主板部を貫通した回転軸導出用開口部と、該主板部の外縁からモータハウジング側に突出した側壁部とを備えた構造として、取り付けフランジの主板部のインロー凸部と回転軸導出用開口部との間に位置する領域に、第1の接合スポットをモータハウジングの周方向に間隔をあけて複数個設定するとともに、取り付けフランジの側壁部の各被固定部に第2の接合スポットをモータハウジングの周方向に間隔をあけて複数個設定して、取り付けフランジの各第1の接合スポット及び各第2の接合スポットをそれぞれモータハウジングの端部壁及び周壁部にトックス加締めにより接合するようにしたので、取り付けフランジをモータハウジングに強固に固定することができる。また各接合スポットの接合は冷間で行われるため、取り付けフランジの各部が変形してモータの回転軸と負荷の入力軸との接続に支障を来す事態が生じるのを防ぐことができる。
【0038】
上記のように、本発明によれば、取り付けフランジとモータハウジングとの間の接続部の機械的強度の低下や取り付けフランジの各部の機械的精度の低下を招くおそれを生じさせることなく、モータハウジングと取り付けフランジを別体に構成することができる。従って本発明によれば、負荷のモータ取付部の構成が変更された場合には、取り付けフランジの仕様の変更のみを行えばよく、また負荷のモータ取付部の構成はそのままで、負荷が要求するモータの仕様のみが変更された場合には、モータハウジング側の構成のみを変更すれば済むため、モータハウジング及び取り付けフランジの部分の全体を設計し直す場合に比べてコストの低減を図ることができる。
【0039】
特に本願に開示された第2の発明又は第3の発明によれば、取り付けフランジのインロー部の周壁部よりも内側の領域でモータハウジングの端部壁と取り付けフランジとの間を液体ガスケットによりシールしたため、取り付けフランジの主板部の外周寄りの領域とモータハウジングの端部壁の外周寄りの領域との間から侵入した雨水などがインロー凸部の周壁部よりも内側の領域に侵入するのを防ぐことができ、雨水などが回転軸を伝わって負荷側に侵入して負荷を劣化させる事態が生じるのを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1図1は、本発明に係る電動モータの一実施例の外観を示した斜視図である。
図2図2は、同電動モータの上面図である。
図3図3は、同電動モータの正面図である。
図4図4は、図2のA-A線に沿った断面図である。
図5図5は本実施形態の電動モータで用いるモータハウジングを伏せた状態で示した斜視図である。
図6図6は、本実施形態の電動モータで用いるモータハウジングを、その開口部を上方に向けた状態で示した斜視図である。
図7図7は、本実施形態の電動モータで用いる取り付けフランジの上面図である。
図8図8は、本実施形態の電動モータで用いる取り付けフランジの正面図である。
図9図9は、本実施形態の電動モータで用いる取り付けフランジを図7のB-B線に沿って断面して示した断面図である。
図10図10は、同取り付けフランジの斜視図である。
図11図11は同取り付けフランジを裏返しにした状態を示した斜視図である。
図12】トックス加締めにより2枚の金属板の接合スポットを接合する方法を説明する説明図である。
図13図4のC部を拡大して示した断面図である。
図14図4のD部を拡大して示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下本発明に係る電動モータの一実施形態について詳細に説明する。
図1ないし図4は、本実施形態に係る電動モータ1の全体的な構成を示したもので、これらの図において、2はモータハウジング、3はモータハウジング2内に収容されたモータ本体(図4参照)、4はモータ1を負荷に取り付けるために、モータハウジング2の軸線方向の一端に固定された取り付けフランジ、5は、モータハウジング2の軸線方向の他端に形成された開口部を閉じる蓋部材である。
【0042】
図5及び図6に示されているように、モータハウジング2は、周壁部200と該周壁部200の軸線方向の一端を閉じる端部壁201とを有する円筒状の形状に形成されていて、端部壁201の中央部には、軸受を嵌合させて保持する円筒部を有する軸受保持部203が形成されている。図6に示されているように、モータハウジング2の軸線方向の他端は開口部204となっており、開口部204の外周部には、開口部204を閉じる蓋部材5を取り付ける際に用いる外フランジ205が形成されている。
【0043】
図4に示されているように、モータ本体3は、環状のステータコア301と、ステータコア301のスロットに巻回された多相の電機子コイル302とを有して、中心軸線をモータハウジング2の中心軸線に一致させた状態でモータハウジング2の内側に挿入されたステータ303と、ロータコア304とロータコア304の外周に取り付けられた永久磁石305とを備えて、ステータ303の内側に該ステータと中心軸線を共有した状態で配置されたロータ306と、ロータ306の軸心部を貫通した状態で設けられた回転軸307とを備えている。
【0044】
図示の例では、モータの特性を改善するために、界磁の構成を異ならせて軸線方向に並べて配置された2つの分割ロータ306A及び306Bによりロータ306が構成されているが、本発明においてこのようなロータを用いることは必須ではない。
【0045】
なお本実施形態の電動モータは、ロータの回転角度位置に応じてステータ側のコイルの励磁を切り換えることによりロータを回転させるブラシレスDCモータであるが、本発明はモータの形式の如何に関わりなく実施することができ、ブラシ付きのモータなどにも本発明を適用することができるのはもちろんである。
【0046】
モータ本体3の回転軸307の軸線方向の一端307a側は、モータハウジング2の軸線方向の一端を閉じる端部壁201の中央に設けられた環状の軸受保持部203の内側に嵌合されて保持された第1の軸受6により回転自在に支持され、回転軸307の軸線方向の他端307b側は、モータハウジング2の軸線方向の他端の開口部204を閉じるように取り付けられた蓋部材5の中央に設けられた環状の軸受保持部501の内側に保持された第2の軸受7により回転自在に支持されている。第1の軸受6及び第2の軸受7は、内輪と外輪との間にボールを保持した周知の球軸受けで、それぞれの外輪を軸受保持部203及び501の内側に圧入した状態で設けられている。
【0047】
図7ないし図11に示されているように、取り付けフランジ4は、モータハウジング2の端部壁201に接した状態で配置される平板状の主板部401と、主板部401からモータハウジング2と反対側に突出した状態で設けられて回転軸307が負荷の入力軸に連結される際に該負荷側に設けられたインロー凹部(図示せず。)に嵌合される円筒状のインロー凸部402と、回転軸307を外部に導出するためにインロー凸部402の内側で主板部401を貫通した回転軸導出用開口部403と、主板部401の外縁からモータハウジング2側に突出した側壁部404とを備えている。
【0048】
図示の例では、モータハウジング2の端部壁201の中央部に設けられた軸受保持部203の外端部が回転軸導出用開口部403の内側に配置され(図4参照)、第1の軸受5の内輪に嵌合された回転軸307の一端307aが回転軸導出用開口部403の中央部からインロー凸部402の内側に導出されている。インロー凸部402の内側に導出された回転軸307の一端307aには、このモータが駆動する負荷(図示せず。)の入力軸を回転軸307に連結するために用いるカップリング8が取り付けられている。
【0049】
本実施形態では、図7に示されているように、取り付けフランジ4の主板部401の外縁が、モータハウジング2の周壁部の周方向に沿って延びていて該周壁部の径方向に相対する1対の円弧状部分401a,401bと、これら1対の円弧状部分401a,401bの隣り合う端部からモータハウジングの周壁部の径方向の外側に山形に突出した形状を持って、1対の円弧状部分401a,401bが相対する方向に対して直角な方向に相対する1対の突出部分401c,401dとを有する輪郭形状を持つように,主板部401が形成されている。
【0050】
そして、取り付けフランジ4の側壁部404の各部のうち、主板部401の外縁の1対の円弧状部分401a,401bに沿う部分に側壁部404の被固定部404a,404bが設定され、これらの被固定部404a,404bの内周面がモータハウジング2の周壁部の外周面に外接されている。
【0051】
また本実施形態では、取り付けフランジ4の主板部401の外縁の1対の突出部分401c,401dの内側の部分が取り付けフランジ4の一対の耳部4c、4dとなっていて、これらの耳部に、取り付けフランジ4を負荷に対して固定するために用いるボルト等の締結具を貫通させるための取付け孔405c、405dが形成されている。
【0052】
本実施形態では、モータハウジング2及び取り付けフランジ4が、金属製板材の成形加工品からなっている。金属製板材を成形加工する方法は任意であるが、本実施形態では、鋼板をプレス加工することにより、モータハウジング2及び取り付けフランジ4が形成されていて、図4及び図9に見られるように、取り付けフランジ4のインロー凸部402の周壁部402aは、その頂部で鋼板が折り返されることにより二重構造とされている。
【0053】
本実施形態では、取り付けフランジ4をモータハウジング2に固定するため、取り付けフランジ4の主板部401のインロー凸部402と回転軸導出用開口部403との間に形成された環状の領域に、複数の第1の接合スポットがモータハウジングの周壁部の周方向に間隔をあけて設定されるとともに、取り付けフランジ4の側壁部404の被固定部404a,404bのそれぞれに第2の接合スポットが、モータハウジングの周方向に間隔をあけて複数個設定される。本実施形態では、第2の接合スポットが、モータハウジング2の軸受保持部203よりも開口部204側に位置させて設けられる。
【0054】
本実施形態では、図2に示されているように、インロー凸部402と回転軸導出用開口部403との間に形成された環状の領域に、6個の第1の接合スポットS11~S16が、モータハウジングの周壁部の周方向に間隔をあけて設定されている。
【0055】
また図1に示されているように、取り付けフランジ4の側壁部404の被固定部404aに3個の第2の接合スポットS21~S23がモータハウジングの周方向に間隔をあけて設定されている。また図示してないが、取り付けフランジ4の側壁部404の被固定部404bにも、3個の第2の接合スポットS21~S23が、モータハウジングの周方向に間隔をあけて設定されている。
【0056】
そして、第1の接合スポットS11~S16のそれぞれがモータハウジング2の端部壁201にトックス加締めにより接合されるとともに、第2の接合スポットS21~S22のそれぞれが、モータハウジング2の周壁部200にトックス加締めにより接合されている。
【0057】
トックス加締めは、図12に示すように、重ね合わせた2枚の金属板M1、M2を雌型Dfと雄型Dmとの間に配置して、雄型Dmの型部Dm1により、金属板M1、M2の一部(被接合部)を雌型Dfの型穴Df1内に押し込んで加締めることにより両金属板の接合スポットを冷間で接合する周知の接合方法である。この接合方法では、型Df、Dmの成形部の形状を工夫しておくことにより、例えば図13に示されているように、雄型側の金属板M1の一部M1aを雌型側の金属板M2の一部に食い込ませるように変形させて、雄型側の金属板M1の一部と雌型側の金属板M2の一部とを噛み合わせた状態にするため、両金属板の各接合スポットSを強固に接合することができる。
【0058】
本実施形態のように、モータハウジング及び取り付けフランジに接合スポットを多数設定する場合には、雄型と雌型とを接合スポットの数だけ備えた加工機を用意しておいて、各接合スポットを対応する型により成形するようにすることにより、複数の接合スポットの接合を同時に行うことができ、取り付けフランジとモータハウジングとの接続を能率よく行うことができる。また本実施形態のように、第2の接合スポットをモータハウジングの軸受保持部203よりも開口部204側に設定しておくと、十分な大きさと強度とを有する型を備えた加工機をモータハウジング内に挿入することができるため、各接合スポットを十分な大きさとして各接合スポットの接合強度を確保することができるだけでなく、加工機の寿命を長くすることができる。
【0059】
本発明に係る電動モータでは、負荷に取り付ける際に、取り付けフランジ4に設けられたインロー凸部402を利用して、モータの回転軸と負荷の入力軸との位置合わせを行うため、取り付けフランジ4をモータハウジングに接続する際に熱歪みによりインロー凸部402が変形すると、負荷へのモータの取付に支障を来すことになる。また取り付けフランジ4をモータハウジングに接続する際にモータハウジング2の端部壁201に設けられた軸受保持部203が熱歪みにより変形すると、モータの回転軸と負荷の入力軸との同軸性が保たれなくなるため、モータの取り付けに支障を来すことになる。従って、金属を接合する手段として、広く用いられているスポット溶接を採用する場合には、本実施形態のように、インロー凸部及びモータハウジングの軸受保持部に近接した位置に多数の接合スポットを設定することは困難である。
【0060】
これに対し、本実施形態のように、トックス加締めにより各接合スポットを接合するようにすれば、インロー凸部402や軸受保持部203が熱歪みにより変形するおそれがないため、取り付けフランジ上の限られたスペースに必要な個数の接合スポットを設定して、十分な接合強度を持たせて取り付けフランジをモータハウジングに接合することができる。
【0061】
モータが雨水に曝される環境で使用される場合には、モータ内に雨水が浸入するのを防ぐための措置を講じておく必要がある。例えば、電動パワーステアリングに用いる電動モータでは、モータ内に雨水が浸入すると、モータの回転軸を伝ってステアリング装置内に水が侵入して装置を劣化させるおそれがある。万一ステアリング装置が故障してステアリング操作のアシストを行うことができなくなると、運転に支障を来すことになる。従って、このような用途のモータでは、モータと負荷との接続部付近に水が侵入するのを防ぐための措置を講じておくことが特に重要である。
【0062】
そこで本実施形態では、取り付けフランジ4の主板部401をモータハウジング2の端部壁201に接続した状態で、該主板部401とモータハウジングの端部壁201との間に液体ガスケットを介在させておくことにより、取り付けフランジ4の主板部401とモータハウジング2の端部壁201との間のシールを図る。
【0063】
このように、液体ガスケットにより取り付けフランジ4とモータハウジング2の端部壁との間の接合部のシールを図る場合には、第1の接合スポットS11~S16にトックス加締めを施す前に、モータハウジング2の端部壁201の各部のうち、取り付けフランジ4のインロー凸部201の周壁部402aよりも内側に配置されることになる部分にシリコン系などの液状の液体ガスケット剤を塗布しておき、しかる後に第1の接合スポットS11~S16に同時にトックス加締めを施す。第1の接合スポットS11~S16に同時にトックス加締めを施すと、塗布された液体ガスケットが取付フランジ4の主板部401とモータハウジング2の端部壁との間の隙間に広がって、取り付けフランジ4とモータハウジング2の端部壁201との間の突き合わせ部のシールを構成する。
【0064】
本実施形態においては、モータハウジング及び取り付けフランジが金属製板材の成形加工品からなっていて、取り付けフランジのインロー凸部の周壁部402aが、その頂部で板材が折り返されることにより二重構造とされている。本実施形態では、図14に示されているように、取り付けフランジ4のインロー凸部402の周壁部402aが二重構造とされることにより該インロー凸部の周壁部402aの内側に形成された隙間dが液体ガスケットGを溜める液溜め部となっている。
【0065】
上記のように、取り付けフランジ4のインロー凸部402の周壁部を二重構造にして、該インロー凸部402の周壁部の内側に形成された隙間を液体ガスケットを溜める液溜め部にしておくと、取り付けフランジ4とモータハウジングの端部壁201との間に液体ガスケットGを介在させた状態で、第1の接合スポットS11~S16を加締めた際に、液体ガスケットGがインロー凸部402の周壁部402aよりも外側の領域にまで拡散して液体ガスケットの厚みが薄くなるのを防ぐことができるため、インロー凸部402の内側で取り付けフランジ4の主板部401とモータハウジングの端部壁との間に施したシールの性能が低下するのを防ぐことができる。
【0066】
本実施形態では、取り付けフランジ4の主板部401のインロー凸部402と回転軸導出用開口部403との間に位置する領域に複数設定した第1の接合スポットS11~S16と、取り付けフランジ4の側壁部404の被固定部404a、404bに複数設定した第2の接合スポットS21~S23との双方をトックス加締めにより接合している。このような構造にしておくと、モータの軸線方向に沿って取り付けフランジ4に作用する外力とモータの径方向に沿って取り付けフランジ4に作用する外力との双方に対して取り付けフランジの取り付け強度を高めることができるため、モータハウジングに取り付けフランジを一体に設けていた従来のモータと比べて遜色がない機械的強度を取り付けフランジ4とモータハウジング2との結合部に持たせることができ、取り付けフランジをモータハウジングと別体に設けたことによりモータの機械的強度に対する信頼性が低下するおそれを無くすことができる。また取り付けフランジ4とモータハウジング2との結合部の機械的強度が十分でないと、モータハウジング及び取り付けフランジの結合部付近で振動が生じ易くなるため、モータ駆動時に生じる騒音が大きくなるおそれがあるが、本実施形態のように構成しておくと、取り付けフランジ4とモータハウジング2との結合部の機械的強度を高めることができるため、モータハウジングと取り付けフランジとを別体に構成したことによりモータ駆動時に騒音が増加するのを防ぐことができる。
【0067】
従って本発明によれば、モータハウジングと取り付けフランジを別体として、しかもモータハウジングと取付フランジとの結合部の機械的強度が高い取り付けフランジ付きのモータハウジングを得ることができる。このように構成しておくと、負荷のモータ取付部の構成が変更された場合には、取り付けフランジの仕様の変更のみを行えばよく、また負荷のモータ取付部の構成はそのままで、負荷が要求するモータの仕様のみが変更された場合には、モータハウジング側の構成のみを変更すればよいため、モータハウジング及び取り付けフランジの部分の全体を設計し直す場合に比べてコストの低減を図ることができる。
【符号の説明】
【0068】
1 電動モータ
2 モータハウジング
200 モータハウジングの周壁部
201 モータハウジングの端部壁
203 軸受保持部
204 モータハウジングの開口部
205 外フランジ
3 モータ本体
301 ステータコア
302 電機子コイル
303 ステータ
304 ロータコア
305 永久磁石
306 ロータ
307 回転軸
4 取り付けフランジ
401 取付フランジの主板部
401a,401b 主板部の外縁の1対の円弧状部分
401c、401d 主板部の外縁の1対の突出部分
402 取付フランジのインロー凸部
403 取付フランジの回転軸導出用開口部
404 取付フランジの側壁部
404a,404b 取付フランジの側壁部の被固定部
405c,405d 取り付け孔
4c,4d 取り付けフランジの耳部
5 蓋部材
S11~S16 第1の接合スポット
S21~S23 第2の接合スポット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14