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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-02
(45)【発行日】2022-05-13
(54)【発明の名称】炒めニンニクの結着防止方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 19/00 20160101AFI20220506BHJP
【FI】
A23L19/00 C
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2017202407
(22)【出願日】2017-10-19
(65)【公開番号】P2019071861
(43)【公開日】2019-05-16
【審査請求日】2020-10-05
(73)【特許権者】
【識別番号】519127797
【氏名又は名称】三菱商事ライフサイエンス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100160978
【弁理士】
【氏名又は名称】榎本 政彦
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 未来
(72)【発明者】
【氏名】池田 咲子
【審査官】田ノ上 拓自
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-272413(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 19/00-19/20
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
おろしニンニク、刻みニンニクまたはスライスニンニクを食用油脂と共に加熱調理する工程において、酵母細胞壁を含有させる、前記ニンニクの結着を防ぐ方法。
【請求項2】
前記酵母細胞壁の含有量が、加熱前のニンニクの量に対して0.2~10重量%である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記酵母細胞壁が、トルラ酵母由来のものである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
酵母細胞壁を含有する、ニンニク炒め用の分散剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニンニクの油炒めにおいて、結着を防止する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ニンニクはその香味から、世界中のあらゆる料理に好んで使用されている。たとえば、ニンニクをすりおろしたもの(おろしニンニク)、刻んだもの(刻みニンニク)、またはスライスしたもの(スライスニンニク)を熱した油に入れて炒めることで、特有の香味が生じ、料理の美味しさを一段と向上させることができる。また、おろしニンニクや刻みニンニク、スライスニンニク(以下、「おろしニンニク等」とも言う)を食用油脂で炒めたものは、包装されて食品の中間加工原料として流通しているものもある。
【0003】
しかしながら、おろしニンニク等を食用油脂で炒めたり、あるいは食用油脂中で加熱したりすると、ニンニク同士が結着して固まりを形成しやすい。その結果、加熱効率の低下、加熱ムラや焦げの発生のみならず、これを調理に用いた際に、ニンニクの分散ムラが起こりやすいという問題があった。また、おろしニンニク等を油で炒めたものを中間加工原料として流通させる場合、固形物であるニンニクが不均一であるため、容器への分包が困難であるという問題があった。
【0004】
これを解決するためには、加熱工程において、高速撹拌、せん断、押しつぶし等の機械的な力を作用させる方法が考えられるが、これらは特殊な設備や装置を必要とするものである。
【0005】
特許文献1には、乾燥調味料を含む食用オイルソースについて、調味料成分などが加熱調理器具に付着することを防止するために、オイルソースに可食性乳化剤や食物繊維を配合することが記載されている。
特許文献2には、水と油を乳化させる食品用乳化剤として、ペプチド、RNA高含有の酵母エキスが、水と油の食品用乳化剤として用いうることが記載されている。しかしながら、このような酵母エキスをおろしニンニク等を炒める際に添加した場合、十分な結着抑制効果は見られない。
【0006】
また、ニンニクは、特許文献3に記載されているように、さまざまな料理に用いられるが、調理時には、ニンニク加工に手間がかかるため、ニンニク加工品として、生ニンニクに近い加工方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2016-152782号公報
【文献】特開2012-231747号公報
【文献】特開2017-184663号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の解決しようとする課題は、おろしニンニク等を炒める際に起こるニンニクの結着を防止する方法を提供することである。また、おろしニンニク等が均一に分散した炒めニンニクを提供することである。そのために用いる方法は、特殊な設備や装置、または煩雑な作業を必要としないことが望ましい。また工程で添加するものは、食品として用いられる安全なものであり、かつ味や食感に大きく影響しないことが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、おろしニンニク等を炒める際に、酵母の細胞壁を添加することで、ニンニクの粒が結着せず、均一に分散することを見出した。
【0010】
すなわち、本発明は、
(1)おろしニンニク、刻みニンニクまたはスライスニンニクを食用油脂と共に加熱調理する工程において、酵母細胞壁を含有させる、前記ニンニクの結着を防ぐ方法、
(2)前記酵母細胞壁の含有量が、加熱前のニンニクの量に対して0.2~10重量%である、前記(1)に記載の方法、
(3)前記酵母細胞壁が、トルラ酵母由来のものである、前記(1)または(2)に記載の方法、
(4)前記(1)~(3)に記載の方法で得られる、ニンニク組成物、
(5)酵母細胞壁を含有する、ニンニク炒め用の分散剤、
に係るものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の方法によると、ニンニクの粒同士が結着せず、均一に分散した炒めニンニクが得られる。また、炒めニンニクだけでなく、ガーリックバターのような、より食用油脂の比率の高いニンニク組成物も製することができる。
本発明の方法は、工程において酵母細胞壁を添加するだけでよいため、特殊な設備や装置も、煩雑な作業も必要とせず、炒めニンニクの製造効率を著しく上げることができる。酵母細胞壁は、一般の食品として用いられている安全なものであり、呈味もほとんど無い。さらに、酵母細胞壁は酵母エキスやビールの製造工程で抽出残渣としても得られるため、資源の有効利用ともなる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施例1のサンプル1(コントロール)の写真。キャノーラ油と、おろしニンニクを加熱する際に、何も添加しなかったものである。
図2】サンプル2の写真。キャノーラ油と、おろしニンニクを加熱する際に、トルラ酵母の酵母エキス抽出残渣を添加したものである。
図3】サンプル3の写真。酵母エキス抽出残渣を含むキャノーラ油を加熱してから、おろしニンニクを添加して加熱したものである。
図4】サンプル4の写真。キャノーラ油と、おろしニンニクを加熱する際に、トルラ酵母菌体を添加したものである。
図5】サンプル5の写真。キャノーラ油と、おろしニンニクを加熱する際に、トルラ酵母消化物を添加したものである。
図6】サンプル7の写真。キャノーラ油と、おろしニンニクを加熱する際に、トルラ酵母エキスを添加したものである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の方法は、おろしニンニク、刻みニンニクまたはスライスニンニクを食用油脂と共に加熱調理する工程において、酵母細胞壁を含有させることである。
【0014】
酵母細胞壁とは、酵母菌体の外殻を成すものであり、β-グルカンを含有することが知られている。
本発明で用いる酵母細胞壁としては、食用酵母の酵母細胞壁を含んでいるものであれば何でもよい。具体的には、乾燥酵母菌体、酵母エキス抽出残渣、ビール酵母残渣、酵母消化物、及びそれらのいずれかを含有する組成物が挙げられる。
中でも、酵母細胞壁を主成分とする酵母エキス抽出残渣は、ニンニク粒子の結着を抑制する効果が高く、最も望ましい。
一方、水不溶性の酵母細胞壁をすべて除去して得られた酵母エキスは、ニンニクの結着を抑制する効果はほとんど無い。
【0015】
乾燥酵母菌体は、酵母を培養して得られた酵母菌体をそのまま乾燥したものであり、酵母細胞壁を含む。例として、興人ライフサイエンス社製の「酵母MG」などが挙げられる。
【0016】
酵母エキス抽出残渣とは、酵母を培養して得られた菌体に、熱水、酸・アルカリ性溶液、自己消化、機械的破砕、細胞壁溶解酵素、蛋白質分解酵素、リボヌクレアーゼ、またはデアミナーゼのいずれか一つ以上を用いて抽出処理することにより、酵母エキスまたは有用成分を抜いた後の残渣であり、酵母細胞壁を主成分とする。例として、興人ライフサイエンス社製の「KR酵母」などが挙げられる。
【0017】
ビール酵母残渣は、ビール酵母によりビールを生産した際に副産物として生じる菌体残渣、あるいはそれにアルカリ処理等を行ったものであり、酵母細胞壁を含む。
【0018】
酵母消化物とは、酵母菌体の自己消化及び/又は酵素添加による消化で得られた組成物であり、水不溶性の酵母細胞壁を含む。例として、興人ライフサイエンス社製の「アロマウエイ」などが挙げられる。
【0019】
本発明の酵母細胞壁の由来となる酵母は、食用となる酵母であれば何でも良いが、トルラ酵母(Candida utilis)であることが望ましい。トルラ酵母の細胞壁は、パン酵母やビール酵母(Saccharomyces cerevisiae)の細胞壁と比べると、明らかに炒めニンニクの分散効果において優れている。この理由は明らかではないが、本願発明者らは、酵母の種類によって細胞壁のβ-グルカンの構造が異なるためではないかと推測している。
【0020】
前段までに記載の酵母細胞璧は、ニンニク等及び油脂と共に加熱する際に、分散剤として利用することができる。本発明の分散剤は、本願に記載の酵母細胞璧を通常の酵母調味料と同様に濃縮、乾燥等することで製造することができる。また、市販の酵母細胞璧を含む酵母調味料は、そのまま分散剤として使用することができる。また、本発明の分散剤は、本願に記載の酵母細胞璧を含有していれば良く、本発明の効果に影響のない範囲で、デキストリン等の他の素材を混合して、分散剤としても良い。
【0021】
本発明の酵母細胞壁を添加するタイミングは、おろしニンニク等の粒同士が結着する前であれば、工程中のどこでもよい。具体的には、加熱前または加熱後の食用油脂に添加する方法、加熱前のおろしニンニク等に混ぜておく方法、食用油脂とおろしニンニク等と酵母細胞壁とを混合した後、その組成物を加熱する方法など、いずれの方法でも良い。
【0022】
本発明の酵母細胞壁の添加量は、たとえば酵母エキス抽出残渣の乾燥物の場合、加熱前のニンニクに対して、0.2~10重量%であることが望ましく、より望ましくは2~5重量%である。0.2重量%より少ないとおろしニンニク等の結着防止効果が十分でなく、10重量%より多いと、得られた炒めニンニクの口触りや味に影響することがある。
【0023】
本発明で原料として用いるニンニクの種類は、分球ニンニクでも一片種でもよい。ニンニクをすりおろしたもの(おろしニンニク)、細かく刻んだもの(刻みニンニク)、またはスライスしたもの(スライスニンニク)を用いる。市販のおろしニンニクでセルロース、増粘剤等を配合されているものは加熱中に分散しにくい傾向があるため、何も添加されていないおろしニンニク等を用いることが望ましい。
【0024】
本発明で原料として使用する食用油脂の種類は、特に限定されない。動物性油脂でも、植物性油脂でも用いることができる。植物性油脂としては、ナタネ油、キャノーラ油、大豆油、ヒマワリ種子油、綿実油、落花生油、米ぬか油、コーン油、サフラワー油、オリーブ油、カポック油、ゴマ油、月見草油、パーム油、シア脂、サル脂、カカオ脂、ヤシ油、パーム核油等が挙げられる。動物油脂としては、ラード(ポークオイル)や牛脂(ビーフオイル)、鶏油(チキンオイル)、バターなどが挙げられる。これらの混合物であっても良い。
【0025】
本発明において、原料のニンニクと食用油脂の配合比は、用いる料理や、流通の形態に応じて自由に決めることができるが、ニンニク:食用油脂が99:1~1:99(重量比)であることが望ましい。一般的な炒めニンニクは概ね80:20~30:70の比率である。ガーリックバターのように固形油脂中におろしニンニク等を分散させたものを製する場合は、ニンニク:食用油脂を1:99~10:90とすることが望ましく、加熱後に冷却して固形にすればよい。
【0026】
本発明においては、ニンニク、食用油脂および酵母細胞壁の組成物の加熱温度と加熱時間は適宜決めることができる。ニンニクの香味が出やすい90~130℃で、20秒~10分加熱することが望ましい。
食用油脂と酵母細胞壁の混合物を加熱してからニンニクを添加してもよいし、食用油脂を加熱してからニンニクと酵母細胞壁の混合物を添加してもよいし、食用油脂とニンニクと酵母細胞壁を混合してから加熱してもよい。
【0027】
本発明においては、効果を阻害しない範囲で、刻み野菜、香料、香辛料など、他の原料を配合しても良い。
【実施例
【0028】
以下、実施例を用いて、本発明を具体的に説明する。なお、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0029】
<実施例1> おろしニンニクの結着抑制効果
・サンプル1(コントロール):ステンレスビーカーに、キャノーラ油70gと、おろしニンニク30gを入れ、良く撹拌しながら、95℃で4分間加熱した。
・サンプル2(トルラ酵母細胞壁):ステンレスビーカーに、キャノーラ油70gと、おろしニンニク30gと、トルラ酵母の酵母エキス抽出残渣(興人ライフサイエンス社製「KR酵母」)1.5gを入れ、良く撹拌しながら、95℃で4分間加熱した。
・サンプル3(トルラ酵母細胞壁、加熱後ニンニク添加):ステンレスビーカーに、キャノーラ油70gと、トルラ酵母の酵母エキス抽出残渣(興人ライフサイエンス社製「KR酵母」)1.5gを入れて95℃に加熱した後、おろしニンニク30gを添加し、良く撹拌しながら4分間加熱した。
・サンプル4(トルラ酵母菌体):ステンレスビーカーに、キャノーラ油70gと、おろしニンニク30gと、トルラ酵母菌体(興人ライフサイエンス社製「酵母MG」)1.5gを入れ、良く撹拌しながら、95℃で4分間加熱した。
・サンプル5(トルラ酵母消化物):ステンレスビーカーに、キャノーラ油70gと、おろしニンニク30gと、トルラ酵母消化物(興人ライフサイエンス社製「アロマウエイ」)1.5gを入れ、良く撹拌しながら、95℃で4分間加熱した。
・サンプル6(トルラ酵母消化物):ステンレスビーカーに、チキンオイル70gと、おろしニンニク30gと、トルラ酵母消化物(興人ライフサイエンス社製「アロマウエイ」)1.5gを入れ、良く撹拌しながら、95℃で4分間加熱した。
・サンプル7(トルラ酵母エキス):ステンレスビーカーに、キャノーラ油70gと、おろしニンニク30gと、トルラ酵母エキス(興人ライフサイエンス社製「アロマイルド」)1.5gを入れ、良く撹拌しながら、95℃で4分間加熱した。
・サンプル8(ビール酵母菌体):ステンレスビーカーに、キャノーラ油70gと、おろしニンニク30gと、ビール抽出菌体(MCフードスペシャリティーズ社製「ビール酵母BY-G」)1.5gを入れ、良く撹拌しながら、95℃で4分間加熱した。
・サンプル9(パン酵母消化物):ステンレスビーカーに、キャノーラ油70gと、おろしニンニク30gと、パン酵母自己消化物(DSM社製「マルチローム」)1.5gを入れ、良く撹拌しながら、95℃で4分間加熱した。
・サンプル10(おろしニンニク組成物のコントロール):ステンレスビーカーに、キャノーラ油70gと、市販のおろしニンニク(セルロース、増粘剤、香料を含む)30gを入れ、良く撹拌しながら、95℃で4分間加熱した。
・サンプル11(おろしニンニク組成物とトルラ酵母消化物):ステンレスビーカーに、キャノーラ油70gと、市販のおろしニンニク(セルロース、増粘剤、香料を含む)30gと、トルラ酵母消化物(興人ライフサイエンス社製「アロマウエイ」)1.5gを入れ、良く撹拌しながら、95℃で4分間加熱した。
【0030】
サンプル1~11につき、加熱後のニンニク粒子の外観を観察した。
結果を表1に示す。ニンニク粒子の分散の程度について、以下のように示す。
◎:ニンニク粒子の結着がほとんど無く、十分に粒子が小さく、分散されているもの。
○:ニンニク粒子の結着が少なく、ある程度分散されているもの。
×:ニンニク粒子が結着し、大きな粒子になっているもの。
【0031】
【表1】
【0032】
表1に示す通り、コントロールであるサンプル1と比べて、酵母細胞壁を添加したサンプル2~6、サンプル8、9はニンニク粒子が細かく分散した。一方、酵母細胞壁を含まないサンプル7については、コントロールとの違いがほとんど認められなかった。
これにより、酵母細胞壁に炒めニンニクの結着を抑制する効果があることが示された。
サンプル4はサンプル8よりもニンニク粒子が細かく分散し、また、サンプル5はサンプル9よりもニンニク粒子が細かく分散した。このことから、酵母細胞壁の中でも、トルラ酵母の細胞壁は、パン酵母、ビール酵母の細胞壁よりも効果があることが示された。
【0033】
酵母細胞壁を含む油脂におろしニンニクを添加してから加熱したサンプル2と、酵母細胞壁を含む油脂を加熱してからおろしニンニクを添加したサンプル3は、いずれもニンニクの粒子が最も細かく分散し、十分な効果を示した。このことから、ニンニク等の添加のタイミングは、油脂の加熱前でも加熱後でもよいことが示された。
【0034】
キャノーラ油を用いたサンプル5とチキンオイルを用いたサンプル6では、ニンニク粒子が同様に分散したことから、本発明の方法は、油脂が植物油脂と動物油脂のいずれであっても効果を示すことが示された。
【0035】
セルロース、増粘剤、香料が配合された市販のおろしニンニクを用いたサンプル10は、ニンニク粒が大きく団子状になり、炒めニンニク特有の着色もほとんど起こらなかった。それに対して、酵母消化物を添加したサンプル11は、ニンニク粒子が小さくなっており、着色も起こった。
【0036】
<実施例2> スライスニンニクの結着抑制効果
・サンプル12(コントロール): ナタネ油4gをフライパンで120℃に熱し、約1.5mm厚さにスライスしたニンニクを10g入れてから2分加熱し、その後、直径5cmに入れて室温に放置した。
加熱中のスライスニンニクは、ニンニク片同士で重なるものもあった。室温への冷却後、約3割が、複数のニンニク片が貼り付いたものとなった。
【0037】
・サンプル13(食用油脂への酵母細胞壁の添加): ナタネ油4gをフライパンで120℃に熱した後、酵母エキス抽出残渣(興人ライフサイエンス社製「KR酵母」)0.3gを添加して混ぜ、次いで、約1.5mm厚さにスライスしたニンニクを10g入れてから2分加熱し、その後、直径5cmの皿に入れて室温に放置した。
加熱中のスライスニンニクは、フランパン上にひらたく広がる傾向があり、室温への冷却後もすべてのニンニク片が離れており、複数のニンニク片が貼り付いたものは無かった。また、試食すると、わずかに細かい粒子の舌触りはあるが、異味は感じられなかった。
【0038】
・サンプル14(ニンニクへの酵母細胞壁の添加): 約1.5mm厚さにスライスしたニンニク10gに、酵母エキス抽出残渣(興人ライフサイエンス社製「KR酵母」)0.3gを添加し均一にまぶした後、フライパンで120℃に熱したナタネ油4gに、これを加えて2分加熱し、その後、直径5cmの皿に入れて室温に放置した。
加熱中のスライスニンニクは、サンプル13と同様にフランパン上にひらたく広がる傾向があり、室温への冷却後もすべてのニンニク片が離れており、他のニンニク片と貼り付いたものは無かった。
また、試食すると、わずかに細かい粒子の舌触りはあるが、異味は感じられなかった。
【0039】
以上のことから、本発明の方法はスライスニンニクにおいても効果を奏し、また酵母細胞壁の添加は、食用油脂に添加することでも、加熱前のニンニクに添加することでも、どちらでも問題ないことが示された。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明の方法は、おろしニンニク等を食用油脂中で加熱するあらゆる調理にもちいることができる。また、得られた炒めニンニクやニンニク組成物は、加工食品の原料として、用いることができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6