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特許7066415医用画像処理装置、医用画像診断装置及び医用画像処理プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-02
(45)【発行日】2022-05-13
(54)【発明の名称】医用画像処理装置、医用画像診断装置及び医用画像処理プログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/03 20060101AFI20220506BHJP
   A61B 6/00 20060101ALI20220506BHJP
   A61B 5/055 20060101ALI20220506BHJP
   A61B 6/12 20060101ALI20220506BHJP
【FI】
A61B6/03 360E
A61B6/00 370
A61B6/03 377
A61B5/055 380
A61B5/055 382
A61B5/055 390
A61B6/12
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2018002153
(22)【出願日】2018-01-10
(65)【公開番号】P2019118711
(43)【公開日】2019-07-22
【審査請求日】2020-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】特許業務法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】山守 恭平
(72)【発明者】
【氏名】川崎 友寛
(72)【発明者】
【氏名】若井 智司
【審査官】松岡 智也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/047818(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/031742(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/120704(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0348408(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055、6/00-6/14
A61F 2/82-2/97
A61M 25/00-29/04、35/00-36/08、
37/00、99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液が流れる血流領域を含む医用画像データを取得する取得部と、
前記血流領域に留置された医療デバイスの形状を抽出する抽出部と、
前記血流領域に対して留置される医療デバイスについて、前記医療デバイスが留置された際の形状に基づいて、当該医療デバイスを透過する前記血液のの程度を示す指標値を算出する算出部と、
前記指標値を出力するように制御する出力制御部と、
を備える、医用画像処理装置。
【請求項2】
前記医療デバイスの種類ごとに、前記医療デバイスの留置された際の形状と前記指標値とを関連付けて記憶する記憶部とを更に有し、
前記算出部は、前記医療デバイスが留置された際の形状に基づき、前記記憶部に記憶された関連付けられた前記指標値を読み出すことにより、前記指標値を算出する、請求項1に記載の医用画像処理装置。
【請求項3】
前記記憶部は、前記医療デバイスの芯線に直交する断面の径及び傾きによって示される形状ごとに前記指標値を対応付けた対応情報を記憶し、
前記抽出部は、前記血流領域に留置された医療デバイスの位置ごとに、芯線に直交する断面の径及び傾きを抽出し、
前記算出部は、前記対応情報及び前記医療デバイスの位置ごとの芯線に直交する断面の径及び傾きに基づいて、前記医療デバイスの位置ごとの前記指標値を算出する、請求項2に記載の医用画像処理装置。
【請求項4】
前記抽出部は、前記医療デバイスの留置計画に沿って前記医療デバイスが留置された後に収集された前記医用画像データに含まれる医療デバイスの形状を抽出し、
前記算出部は、前記医療デバイスの形状に基づいて、前記医療デバイスにおける位置ごとの前記指標値を算出する、請求項2又は3に記載の医用画像処理装置。
【請求項5】
前記抽出部は、術中に収集された前記医用画像データに含まれる医療デバイスの形状を抽出し、
前記算出部は、前記対応情報に基づいて、前記術中に収集された前記医用画像データに含まれる医療デバイスにおける位置ごとの前記指標値を算出する、請求項3に記載の医用画像処理装置。
【請求項6】
前記出力制御部は、血管の治療対象部位に対応する前記医療デバイスの位置の前記指標値が予め設定された条件を満たすように、前記血管内における前記医療デバイスの形状に関するシミュレーション情報を表示させる、請求項4又は5に記載の医用画像処理装置。
【請求項7】
前記記憶部は、経時的に算出された被検体ごとの前記指標値を記憶し、
前記出力制御部は、前記被検体ごとに、前記指標値を時系列順に並べた表示情報を表示させる、請求項2~6のいずれか1つに記載の医用画像処理装置。
【請求項8】
前記算出部は、前記指標値として、血管の治療対象部位に対して前記医療デバイスが覆う領域の比率を示す被覆率を算出し、
前記出力制御部は、算出された前記被覆率を表示させる、請求項1~7のいずれか1つに記載の医用画像処理装置。
【請求項9】
前記算出部は、脳動脈瘤のネック面における前記被覆率を算出し、
前記出力制御部は、前記脳動脈瘤のネック面を示す医用画像上に算出された被覆率を表示させる、請求項8に記載の医用画像処理装置。
【請求項10】
血液が流れる血流領域を含む医用画像データを収集する収集部と、
前記血流領域に留置された医療デバイスの形状を抽出する抽出部と、
前記血流領域に対して留置される医療デバイスについて、前記医療デバイスが留置された際の形状に基づいて、当該医療デバイスを透過する前記血液のの程度を示す指標値を算出する算出部と、
前記指標値を出力するように制御する出力制御部と、
を備える、医用画像診断装置。
【請求項11】
血液が流れる血流領域を含む医用画像データを取得する取得手順と、
前記血流領域に留置された医療デバイスの形状を抽出する抽出手順と、
前記血流領域に対して留置される医療デバイスについて、前記医療デバイスが留置された際の形状に基づいて、当該医療デバイスを透過する前記血液のの程度を示す指標値を算出する算出手順と、
前記指標値を出力するように制御する出力制御手順と、
をコンピュータに実行させる、医用画像処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、医用画像処理装置、医用画像診断装置及び医用画像処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、医療デバイスの進化が目覚ましく、特に、カテーテルを利用した血管内治療のための医療デバイスの進化が顕著である。例えば、脳動脈瘤の塞栓に利用されるステントとして、Flow Diverter(Pipeline等)が注目され、実臨床でも活用され始めている。Flow Diverterは、従来の脳動脈瘤治療ステントとは異なり、高密度の網目と、形状の柔軟性が特徴であり、網目の密度を局所的に変化させることも可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-31655号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、血流に対する医療デバイスの留置の効果を把握することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係る医用画像処理装置は、取得部と、抽出部と、算出部と、出力制御部とを備える。取得部は、血液が流れる血流領域を含む医用画像データを取得する。抽出部は、前記血流領域に留置された医療デバイスの形状を抽出する。算出部は、前記血流領域に対して留置される医療デバイスについて、前記医療デバイスが留置された際の形状に基づいて、前記血液の透過の程度を示す指標値を算出する。出力制御部は、前記指標値を出力するように制御する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、第1の実施形態に係る医用画像処理システムの構成の一例を示す図である。
図2図2は、第1の実施形態に係る医用画像処理装置の構成の一例を示す図である。
図3図3は、第1の実施形態に係るFlow Diverterを説明するための図である。
図4図4は、第1の実施形態に係る記憶回路によって記憶される対応情報の一例を示す図である。
図5図5は、第1の実施形態に係る抽出機能による処理の一例を説明するための図である。
図6図6は、第1の実施形態に係る抽出機能による処理の一例を説明するための図である。
図7図7は、第1の実施形態に係る制御機能の制御によって表示される指標値の一例を示す図である。
図8図8は、第1の実施形態に係る制御機能の制御によって表示される指標値の一例を示す図である。
図9図9は、第1の実施形態に係る医用画像処理装置による処理手順を示すフローチャートである。
図10図10は、第1の実施形態に係る医用画像処理装置による処理手順を示すフローチャートである。
図11図11は、第2の実施形態に係る抽出機能による処理の一例を説明するための図である。
図12図12は、第2の実施形態に係る医用画像処理装置による処理手順を示すフローチャートである。
図13図13は、第3の実施形態に係る制御機能による処理の一例を示す図である。
図14図14は、第3の実施形態に係る医用画像処理装置による処理手順を示すフローチャートである。
図15図15は、第4の実施形態に係る制御機能による処理の一例を示す図である。
図16図16は、第4の実施形態に係る医用画像処理装置による処理手順を示すフローチャートである。
図17図17は、第5の実施形態に係るX線診断装置の構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に添付図面を参照して、本願に係る医用画像処理装置、医用画像診断装置及び医用画像処理プログラムの実施形態を詳細に説明する。なお、本願に係る医用画像処理装置、医用画像診断装置及び医用画像処理プログラムは、以下に示す実施形態によって限定されるものではない。
【0008】
(第1の実施形態)
まず、第1の実施形態について説明する。第1の実施形態では、本願が開示する技術を医用画像処理装置に適用した場合の例を説明する。なお、以下、医用画像処理装置を含む医用画像処理システムを例に挙げて説明する。
【0009】
図1は、第1の実施形態に係る医用画像処理システムの構成の一例を示す図である。図1に示すように、第1の実施形態に係る医用画像処理システムは、医用画像診断装置100と、画像保管装置200と、医用画像処理装置300とを備える。
【0010】
例えば、医用画像処理システムにおいては、第1の実施形態に係る医用画像処理装置300が、図1に示すように、ネットワーク400を介して、医用画像診断装置100と、画像保管装置200に接続される。
【0011】
医用画像診断装置100は、医療デバイスを用いた手技に利用されるモダリティであり、例えば、X線診断装置、X線CT(Computed Tomography)装置、超音波診断装置、MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置等である。例えば、医用画像診断装置100は、被検体を撮影することにより投影データを収集し、収集した投影データに基づいて2次元又は3次元の医用画像データを収集する。なお、医用画像診断装置100は、造影剤が注入された被検体を撮影することにより、2次元又は3次元の造影画像データを収集することもできる。例えば、医用画像診断装置100としてのX線CT装置は、3次元の造影画像データとして、造影剤が注入された被検体からCTA(CT Angio)画像データを収集する。また、例えば、医用画像診断装置100としてのX線診断装置は、2次元の造影画像データとして、造影剤が注入された被検体からX線画像データを収集する。
【0012】
また、医用画像診断装置100は、収集した医用画像データを画像保管装置200や、医用画像処理装置300に送信する。なお、医用画像診断装置100は、医用画像データを画像保管装置200や、医用画像処理装置300に送信する際に、付帯情報として、例えば、患者を識別する患者ID、検査を識別する検査ID、医用画像診断装置100を識別する装置ID、医用画像診断装置100による1回の撮影を識別するシリーズID等を送信する。
【0013】
画像保管装置200は、ネットワーク400を介して、医用画像診断装置100によって収集された医用画像データを保管する。例えば、画像保管装置200は、サーバ装置等のコンピュータ機器によって実現される。本実施形態では、画像保管装置200は、ネットワーク400を介して医用画像診断装置100から2次元又は3次元の医用画像データを取得し、取得した医用画像データを装置内又は装置外に設けられた記憶回路に記憶させる。
【0014】
医用画像処理装置300は、ネットワーク400を介して医用画像診断装置100や、画像保管装置200から医用画像データを取得し、取得した医用画像データを処理する。例えば、医用画像処理装置300は、ワークステーション等のコンピュータ機器によって実現される。本実施形態では、医用画像処理装置300は、ネットワーク400を介して医用画像診断装置100又は画像保管装置200から医用画像データを取得し、取得した医用画像データに対して各種画像処理を行う。そして、医用画像処理装置300は、画像処理後の医用画像や、画像処理によって得られる解析結果等をディスプレイ等に表示する。
【0015】
図2は、第1の実施形態に係る医用画像処理装置300の構成の一例を示す図である。例えば、図2に示すように、医用画像処理装置300は、I/F(インターフェース)回路310と、記憶回路320と、入力インターフェース330と、ディスプレイ340と、処理回路350とを有する。
【0016】
I/F回路310は、処理回路350に接続され、ネットワーク400を介して接続された医用画像診断装置100又は画像保管装置200との間で行われる各種データの伝送及び通信を制御する。例えば、I/F回路310は、ネットワークカードやネットワークアダプタ、NIC(Network Interface Controller)等によって実現される。本実施形態では、I/F回路310は、医用画像診断装置100又は画像保管装置200から医用画像データを受信し、受信した医用画像データを処理回路350に出力する。ここで、I/F回路310は、医用画像診断装置100によって収集されたリアルタイムの医用画像データを受信して、処理回路350に出力することもできる。
【0017】
記憶回路320は、処理回路350に接続され、各種データを記憶する。例えば、記憶回路320は、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子や、ハードディスク、光ディスク等によって実現される。本実施形態では、記憶回路320は、医用画像診断装置100又は画像保管装置200から受信した医用画像データを記憶する。例えば、記憶回路320は、X線CT装置によって経時的に収集されたCT画像データや、X線診断装置によって収集されたX線画像データ、超音波診断装置によって収集された超音波画像データ等を記憶する。一例を挙げると、記憶回路320は、造影剤が注入された被検体を撮影することにより収集されたCTA画像データや、X線画像データなどを記憶する。
【0018】
また、記憶回路320は、処理回路350の処理に用いられる種々の情報や、処理回路350による処理結果等を記憶する。例えば、記憶回路320は、処理回路350によって参照される対応情報などを記憶する。なお、対応情報の詳細については、後述する。
【0019】
入力インターフェース330は、所定の領域(例えば、治療対象部位)などの設定などを行うためのトラックボール、スイッチボタン、マウス、キーボード、操作面へ触れることで入力操作を行うタッチパッド、表示画面とタッチパッドとが一体化されたタッチスクリーン、光学センサを用いた非接触入力回路、及び音声入力回路等や、X線の照射などを行うためのフットスイッチ等によって実現される。
【0020】
入力インターフェース330は、処理回路350に接続されており、操作者から受け付けた入力操作を電気信号に変換して処理回路350に出力する。なお、本明細書において入力インターフェース330は、マウス、キーボードなどの物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、装置とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を制御回路へ出力する電気信号の処理回路も入力インターフェースの例に含まれる。
【0021】
ディスプレイ340は、処理回路350に接続され、処理回路350から出力される各種情報及び各種画像を表示する。例えば、ディスプレイ340は、液晶モニタやCRT(Cathode Ray Tube)モニタ、タッチパネル等によって実現される。例えば、ディスプレイ340は、操作者の指示を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)や、種々の画像、処理回路350による種々の処理結果を表示する。
【0022】
処理回路350は、入力インターフェース330を介して操作者から受け付けた入力操作に応じて、医用画像処理装置300が有する各構成要素を制御する。例えば、処理回路350は、プロセッサによって実現される。本実施形態では、処理回路350は、I/F回路310から出力される医用画像データを記憶回路320に記憶させる。また、処理回路350は、記憶回路320から医用画像データを読み出し、読み出した医用画像データから生成した医用画像をディスプレイ340に表示させる。また、処理回路350は、医用画像データに対して種々の解析処理を実行して、解析結果をディスプレイ340に表示させる。
【0023】
このような構成のもと、本実施形態に係る医用画像処理装置300は、血流に対する医療デバイスの留置の効果を把握することを可能にする。具体的には、医用画像処理装置300は、血管に留置された医療デバイスにおける血液の透過の程度を示す指標値を表示することにより、医療デバイスの留置の効果を操作者に把握させる。ここで、上述したように、近年、カテーテルを利用した血管内治療のための医療デバイスの進化が目覚ましい。例えば、Flow Diverterは、柔軟性が高く、網目の密度(金属密度)を変化させることができる。
【0024】
図3は、第1の実施形態に係るFlow Diverterを説明するための図である。図3に示すように、Flow Diverterは、従来のステントよりも網目が細かい(網目の密度が高い)。そして、Flow Diverterは、高い柔軟性を備えており、形状の変化に伴って網目が変化する。例えば、Flow Diverterは、径方向に伸縮し、直径の変化に伴って網目の形状が変化する。一例を挙げると、Flow Diverterは、図3の左側の矢印で示すように、直径が小さくなるほど、四角で形成された網目の長手方向の対角の角度がより鋭角になる。また、例えば、Flow Diverterは、図3の右側の矢印で示すように、直径が大きくなるほど、四角で形成された網目の長手方向の対角の角度がより鈍角になる。
【0025】
ここで、Flow Diverterにおいては、直径が変化した場合でも、網目の四角の各辺の長さは変化しない。従って、Flow Diverterにおける網目の面積は、網目が正方形となっている場合が最大となり、直径が小さくなるほど、或いは、直径が大きくなるほど、狭くなる。換言すると、Flow Diverterは、直径を小さくするか、或いは、直径を大きくするかにより、網目の密度を高めることができる。
【0026】
さらに、Flow Diverterは、局所的に網目の密度を変化させることもできる。例えば、Flow Diverterは、図3に示す長手方向における範囲「a」に含まれる網目のみの面積を狭くすることで、範囲「a」における網目の密度を高めることもできる。
【0027】
このようなFlow Diverterは、動脈瘤などの治療対象部位に対して留置する場合に、血液の流入を低減させたい部位(例えば、動脈瘤のネック面など)に対しては高密度で、その他の周辺部位に対しては低密度で被覆するように留置することで、高い治療効果が期待されている。すなわち、Flow Diverterは、動脈瘤のネック面に対して高密度の網目で被覆することで、母血管から動脈瘤内への血液の流入量を低減しつつ、その他の周辺部位に対して低密度の網目で被覆することで、動脈瘤の周辺にある血管分岐への血液の流入量の低減を抑止することができる。
【0028】
このように、Flow Diverterのような柔軟性が高く、網目の密度を変化させることができる医療デバイスを用いた治療は、高い治療効果が期待されているが、現状、その治療効果を直接的に確認することが困難である。すなわち、従来技術では、局所的な網目の密度の違いを判別することが困難であり、血流に対する医療デバイスの留置のより正確な効果を把握することが難しい。そこで、本願に係る医用画像処理装置300では、局所的な網目の密度の違いを判別することで、血流に対する医療デバイスの留置のより正確な効果を把握することを可能にする。
【0029】
以下、本実施形態に係る医用画像処理装置300の詳細について説明する。本実施形態に係る医用画像処理装置300においては、記憶回路320が、医療デバイスの種類ごとに、医療デバイスの留置された際の形状と指標値とを関連付けて記憶する。具体的には、記憶回路320が、血管に対して留置される医療デバイスごとに、医療デバイスがとりうる形状と、形状ごとの血液の透過の程度を示す指標値とを対応付けた対応情報を記憶する。例えば、記憶回路320は、医療デバイスの芯線に直交する断面の径及び傾き(曲率)によって示される形状ごとに指標値を対応付けた対応情報を記憶する。
【0030】
図4は、第1の実施形態に係る記憶回路320によって記憶される対応情報の一例を示す図である。図4に示すように、記憶回路320は、「医療デバイス」と、「径」と、「傾き」と、「密度」と、「被覆率」とを対応付けた対応情報を記憶する。ここで、図4における「医療デバイス」は、血管に対して留置されるデバイスを意味し、例えば、図4に示すように、「FD(Flow Diverter)」等である。また、図4における「径」とは、医療デバイスの芯線に直交する断面の直径を示す。また、図4における「傾き」とは、芯線に直交する断面の芯線上の任意の位置(例えば、隣接する断面の芯線上の位置)に対する傾きを示す。また、図4における「密度」とは、医療デバイスの網目の密度を示す。また、図4における「被覆率」とは、血管の治療対象部位に対して医療デバイスが覆う領域の比率を示す。
【0031】
ここで、本願に係る「被覆率」について説明する。本願に係る「被覆率」は、血液の流入を低減させたい対象部位(例えば、動脈瘤のネック面など)の面積に対する医療デバイスの面積を意味する。すなわち、本願に係る「被覆率」は、「被覆率=医療デバイスそのものの面積/対象部位の面積」で表される。例えば、対象部位がネック面であり、医療デバイスがステントの場合、ネック面の被覆率は、「ネック面の被覆率=ステントの金属面積/ネック面の面積」となる。従って、Flow Diverterのような柔軟性が高く、網目の密度を変化させることができる医療デバイスの場合、網目の密度が高いほど、「被覆率」が高くなる。
【0032】
例えば、記憶回路320は、「医療デバイス:FD」について、「径」及び「傾き」で示される形状ごとの指標値「密度」及び指標値「被覆率」を記憶する。すなわち、記憶回路320は、医療デバイスがとりうる形状ごとに、血液が医療デバイスをどの程度透過するかの指標値を記憶する。上述したように、Flow Diverterのような柔軟性が高く、網目の密度を変化させることができる医療デバイスは、形状に応じて網目の密度が変化し、血液の透過の程度が変化する。そこで、本実施形態では、形状ごとの指標値を予め取得しておき、記憶回路320に格納しておく。
【0033】
なお、図4に示す対応情報はあくまでも一例であり、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、医療デバイスの形状として、「径」及び「傾き」以外のものが記憶される場合であってもよい。例えば、「傾き」の代わりに、芯線に直交する複数の断面において、各断面円周状の点間の距離が記憶される場合であってもよい。また、例えば、「密度」及び「被覆率」以外のものが指標値として記憶される場合であってもよく、或いは、「密度」又は「被覆率」のどちらか一方が記憶される場合であってもよい。
【0034】
図2に戻って、処理回路350は、制御機能351と、抽出機能352と、算出機能353とを実行する。ここで、制御機能351は、特許請求の範囲における取得部及び出力制御部の一例である。また、抽出機能352は、特許請求の範囲における抽出部の一例である。また、算出機能353は、特許請求の範囲における算出部の一例である。ここで、第1の実施形態では、医療デバイス(例えば、Flow Diverter)を留置する際に策定された留置計画の効果を把握する場合の例を説明する。
【0035】
制御機能351は、医用画像処理装置300の全体制御を実行する。例えば、制御機能351は、I/F回路310を介して、医用画像診断装置100、或いは、画像保管装置200から医用画像データを取得する。具体的には、制御機能351は、血液が流れる血流領域を含む医用画像データを取得する。一例を挙げると、制御機能351は、造影剤が注入された頭部のCT画像データ(CTA画像データ)を取得する。そして、制御機能351は、取得したCTA画像データを記憶回路320に格納する。また、制御機能351は、種々の画像処理によってCTA画像データからCT画像を生成し、生成したCT画像をディスプレイ340にて表示するように制御する。また、制御機能351は、算出機能353による算出結果に基づく情報をディスプレイ340にて表示するように制御する。
【0036】
抽出機能352は、血流領域に留置された医療デバイスの形状を抽出する。具体的には、抽出機能352は、制御機能351によって取得された医用画像データに含まれる血液が流れる血流領域(例えば、血管)に留置された医療デバイスの形状を抽出する。例えば、Flow Diverterを留置する際の留置計画に沿って配置された医療デバイスの形状を抽出する場合、抽出機能352は、Flow Diverterを留置した後に収集された医用画像データに含まれる医療デバイスの形状を抽出する。
【0037】
医療デバイスの留置計画では、例えば、医師が、CTA画像データから生成されたCT画像内の血管を参照しながら、血管の治療対象部位に対して留置する医療デバイスの種類やサイズを決定する。すなわち、医師は、被検体の治療対象部位の位置や状態を、CT画像を参照しながら判断して、留置する医療デバイスを決定する。ここで、本実施形態に係る医用画像処理装置300では、入力インターフェース330を介して、血管に対して医療デバイスを仮想的に留置する操作を受け付ける。
【0038】
例えば、制御機能351が、CTA画像データから治療対象部位を含む血管のCT画像を生成して、ディスプレイ340に表示させる。操作者(例えば、医師等)は、ディスプレイ340に表示されたCT画像を参照しながら、入力インターフェース330を操作して、CT画像上の血管に対して医療デバイスを留置する入力操作を実行する。
【0039】
このように、医療デバイスの留置計画では、被検体から収集した医用画像データに対して医療デバイスを仮想的に留置し、留置した位置に基づいて、実際の手技が行われる。例えば、医療デバイスを留置する手技を実施する医師は、血管の治療対象部位にFlow Diverterが仮想的に留置されたCT画像を参照しながら、実際の手技を実施する。この場合、制御機能351が、血管の治療対象部位にFlow Diverterが仮想的に留置されたCT画像をディスプレイ340に表示させる。
【0040】
第1の実施形態に係る医用画像処理装置300は、このように留置された医療デバイス(例えば、Flow Diverter)の密度や被覆率を算出して表示させることによって、治療対象部位に対して留置された医療デバイスの実際の効果を把握させることを可能にする。以下、医療デバイスの密度や被覆率を算出して表示させる処理の詳細について説明する。
【0041】
かかる場合、まず、制御機能351は、I/F回路310を介して、医用画像診断装置100、或いは、画像保管装置200から、医療デバイスが留置された後に収集された医用画像データを取得する。例えば、制御機能351は、動脈流のネック面に対してFlow Diverterが留置された後に収集されたCT画像データを取得する。
【0042】
抽出機能352は、血管領域に対して留置された医療デバイスの形状を抽出する。具体的には、抽出機能352は、医療デバイスが留置された後に収集された医用画像データにおける医療デバイスの位置(医療デバイスの位置に対応するボクセルの位置)を特定する。そして、抽出機能352は、特定した医療デバイスの位置に基づいて、留置された医療デバイスの形状を抽出する。例えば、抽出機能352は、CT画像データのCT値に基づいて、CT画像データに含まれるFlow Diverterの位置を特定し。特定したFlow Diverterの形状を抽出する。
【0043】
図5は、第1の実施形態に係る抽出機能352による処理の一例を説明するための図である。ここで、図5においては、留置計画に沿ってFlow Diverterが留置された場合の例を示す。例えば、図5の上段に図に示すように、動脈瘤のネック面に対して留置されたFlow Diverterについて、抽出機能352は、留置されたFlow Diverterの種類と、CT画像データにおけるFlow Diverterの位置を特定する。
【0044】
一例を挙げると、抽出機能352は、留置計画において、血管の形状及び治療対象部位の位置やサイズに基づいて選択されたFlow Diverterの情報に基づいて、Flow Diverterの種類を特定する。さらに、抽出機能352は、特定したFlow Diverterの種類と、留置されたFlow DiverterのCT画像データにおけるCT値に基づいて、CT画像データにおいて、Flow Diverterに対応するボクセルの位置を特定する。すなわち、抽出機能352は、CT画像データにおけるFlow Diverterの3次元的な位置を特定する。
【0045】
そして、抽出機能352は、特定したFlow Diverterの3次元的な位置に基づいて、Flow Diverterの芯線を抽出し、抽出した芯線に直交する断面を抽出する。例えば、抽出機能352は、ベッセルトラッキング法や、内部領域を細線化する方法などを用いて、図5の中段の図に示すように、CT画像データにおけるFlow Diverterの3次元的な位置からFlow Diverterの芯線L1を抽出する。さらに、抽出機能352は、抽出した芯線に直交するFlow Diverter上の断面を抽出する。例えば、抽出機能352は、図5の下段の図に示すように、抽出した芯線L1に直交するFlow Diverterの断面31~38を抽出する。ここで、抽出する断面の間隔は任意であり、例えば、断面の直径に応じて断面の間隔が決定される場合であってもよい。一例を挙げると、断面の直径が大きいほど、断面の間隔を大きくする場合であってもよい。また、例えば、医療デバイスの長手方向において所定の距離ごとに断面が抽出される場合であってもよい。
【0046】
上述したように、Flow Diverterにおける芯線に直交する断面を抽出すると、抽出機能352は、各断面について、直径及び芯線に対する断面の傾きを抽出する。例えば、抽出機能352は、断面31~38の直径をそれぞれ抽出する。すなわち、抽出機能352は、網目の密度を算出するために、各断面の直径をそれぞれ抽出する。ここで、Flow Diverterは、血管の曲がりに沿って曲がった場合、曲りの内側と外側で密度差が生じることとなる。そこで、抽出機能352は、上記した直径に加えて、各断面の傾きを抽出する。
【0047】
図6は、第1の実施形態に係る抽出機能352による処理の一例を説明するための図である。ここで、図6においては、断面34と断面35との間の傾きを抽出する場合を例に挙げて説明する。例えば、抽出機能352は、図6に示すように、断面34と断面35との角度「α」及び角度「β」を抽出する。すなわち、抽出機能352は、血管に留置されたFlow Diverterの曲がり具合を抽出する。ここで、Flow Diverterは血管の走行に沿って曲がるが、血管の走行は複雑であり、様々な方向に曲がる。したがって、血管に留置されたFlow Diverterの曲がり具合も複雑な状態となるため、抽出機能352は、図6に示すように、断面間の傾きを抽出する場合に、少なくとも2箇所以上の傾きを抽出することが望ましい。
【0048】
なお、上述した例では、Flow Diverterの曲がり具合を断面の傾きで抽出する場合について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではなく、例えば、複数の断面の円周上の点間の距離を算出する場合であってもよい。一例を挙げると、抽出機能352は、図6に示す断面34と断面35において、角度「α」を形成する2本の直線において、断面34の円周上の点と断面35の円周上の点との距離を算出する。同様に、抽出機能352は、図6に示す断面34と断面35において、角度「β」を形成する2本の直線において、断面34の円周上の点と断面35の円周上の点との距離を算出する。複数断面の各円周上の点間の距離は、断面の傾きに応じて変化するため、断面の円周上の点間の距離を算出することにより、抽出機能352は、各断面の傾きを抽出することができる。
【0049】
図2に戻って、算出機能353は、血流領域に対して留置される医療デバイスについて、医療デバイスが留置された際の形状に基づいて、血液の透過の程度を示す指標値を算出する。具体的には、算出機能353は、医療デバイスが留置された際の形状に基づき、記憶回路320に記憶された関連付けられた指標値を読み出すことにより、指標値を算出する。すなわち、算出機能353は、対応情報に基づいて、形状が抽出された医療デバイスにおける位置ごとの指標値を算出する。例えば、算出機能353は、対応情報及び医療デバイスの位置ごとの芯線に直交する断面の径及び傾きに基づいて、医療デバイスの位置ごとの指標値を算出する。以下、図6を用いて、算出機能353による処理の一例を説明する。例えば、算出機能353は、対応情報と、断面34の直径と、断面35の直径と、角度「α」とに基づいて、角度「α」を形成する2本の直線の断面34の円周上の点と断面35の円周上の点との間の網目の密度を算出する。
【0050】
上述したように、記憶回路320によって記憶される対応情報は、芯線に直交する断面の「径」と「傾き」ごとの「密度」が対応付けられた情報である。ここで、対応情報における「密度」は、傾いた側の密度と、対向する側の密度とが記憶される。例えば、対応情報は、Flow Diverterの表面において、角度「α」で傾いた側の密度と、角度「α」で傾いた側に対向する側の密度とが記憶される。従って、算出機能353は、断面34の直径、断面35の直径、及び、角度「α」に対応する密度を対応情報から取得することにより、Flow Diverterの表面における角度「α」で傾いた側の密度と、角度「α」で傾いた側に対向する側の密度とを算出する。
【0051】
ここで、断面34の直径と断面35の直径が略同一である場合、算出機能353は、角度「α」を形成する2本の直線の断面34の円周上の点と断面35の円周上の点との間の網目の密度を同一の密度として算出する。一方、断面34の直径と断面35の直径が異なる場合、算出機能353は、例えば、断面34の円周上の点と断面35の円周上の点との間を中心から2つの範囲に分割する。そして、算出機能353は、断面34側の範囲における網目の密度として、断面34の直径と角度「α」に対応する密度を対応情報から取得する。また、算出機能353は、断面35側の範囲における網目の密度として、断面35の直径と角度「α」に対応する密度を対応情報から取得する。
【0052】
同様に、算出機能353は、断面34の直径、断面35の直径、及び、角度「β」に対応する密度を対応情報から取得することにより、Flow Diverterの表面における角度「β」で傾いた側の密度と、角度「β」で傾いた側に対向する側の密度とを算出する。
【0053】
そして、算出機能353は、Flow Diverterの表面における角度「α」で傾いた側の密度と、角度「α」で傾いた側に対向する側の密度と、角度「β」で傾いた側の密度と、角度「β」で傾いた側に対向する側の密度とを用いて、Flow Diverterの表面全体の密度の分布を算出する。例えば、算出機能353は、角度「α」で傾いた側と、角度「β」で傾いた側との間を中心から2つの範囲に分割する。そして、算出機能353は、角度「α」で傾いた側の範囲における網目の密度として、角度「α」で傾いた側の密度を適用する。また、算出機能353は、角度「β」で傾いた側の範囲における網目の密度として、角度「β」で傾いた側の密度を適用する。
【0054】
同様に、算出機能353は、角度「α」で傾いた側と、角度「β」で傾いた側に対向する側との間を中心から2つの範囲に分割する。そして、算出機能353は、角度「α」で傾いた側の範囲における網目の密度として、角度「α」で傾いた側の密度を適用する。また、算出機能353は、角度「β」で傾いた側に対向する側の範囲における網目の密度として、角度「β」で傾いた側に対向する側の密度を適用する。
【0055】
同様に、算出機能353は、角度「β」で傾いた側に対向する側と角度「α」で傾いた側に対向する側との間、及び、角度「α」で傾いた側に対向する側と角度「β」で傾いた側との間の範囲について、密度の分布を算出する。
【0056】
なお、上述した密度の算出はあくまでも一例であり、算出機能353は、その他種々の方法により密度を算出することができる。例えば、記憶回路320が、Flow Diverterの「径」及び「傾き」ごとに、Flow Diverterの表面全体の密度分布を対応付けた対応情報を予め記憶する。一例を挙げると、記憶回路320は、断面の「径」及び「傾き」の組み合わせごとに、Flow Diverterの表面全体の密度分布を対応付けた対応情報を予め記憶する。そして、算出機能353は、抽出機能352によって抽出されたFlow Diverterの「径」及び「傾き」に対応する密度分布を取得することで、Flow Diverterの網目の密度を算出する。
【0057】
さらに、算出機能353は、指標値として、血管の治療対象部位に対して医療デバイスが覆う領域の比率を示す被覆率を算出する。具体的には、算出機能353は、算出した網目の密度に基づいて、Flow Diverterによって覆われた血管の位置ごとの被覆率を算出する。例えば、算出機能353は、脳動脈瘤のネック面における被覆率を算出する。ここで、図4に示すように、対応情報に被覆率が含まれる場合、算出機能353は、密度を算出した範囲ごとに対応する被覆率を取得することで、各範囲に覆われた血管の位置ごとの被覆率を算出する。
【0058】
図2に戻って、制御機能351は、位置ごとの指標値を出力するように制御する。例えば、制御機能351は、算出機能353によって算出された密度や被覆率をディスプレイ340に表示するように制御する。図7及び図8は、第1の実施形態に係る制御機能351の制御によって表示される指標値の一例を示す図である。ここで、図7は、指標値として、Flow Diverterの網目の密度を表示させる場合を示す。また、図8は、指標値として、Flow Diverterによる被覆率を表示させる場合を示す。
【0059】
例えば、制御機能351は、図7に示すように、密度の高低を色の違いで示したカラーマップを生成して、ディスプレイ340に表示させる。一例を挙げると、Flow Diverterが留置された後に収集されたCT画像データに基づいて生成されたCT画像のFlow Diverterを密度の違いで色分けした表示画像を表示させる。ここで、図7に示す動脈瘤に留置されたFlow Diverterは、曲りの内側の密度が高く、曲りの外側の密度が低いことがわかる。
【0060】
また、例えば、制御機能351は、図8に示すように、動脈瘤のネック(Neck)面における被覆率をディスプレイ340に表示させる。ここで、図8における右側のネック面の画像は、矢印41の方向から領域R1を見た場合の画像を示す。例えば、制御機能351は、CT画像データを用いて領域R1を矢印41の方向から見た場合の画像を生成し、生成した画像とともに、動脈瘤のネック面(図8の右側の図において網目がかかった領域)の被覆率「87.5%」を表示させる。ここで、制御機能351は、図8に示すように、組織とステント(Flow Diverter)との距離分布を合わせて表示させる場合であってもよい。
【0061】
上述したように、第1の実施形態に係る医用画像処理装置300では、医療デバイス(例えば、Flow Diverter)を留置計画に沿って留置した医療デバイスの位置ごとの網目の密度や被覆率を表示させる。これにより、操作者は、留置計画に沿って留置した医療デバイスの効果を視覚的に把握することできる。例えば、操作者は、動脈瘤のネック面の被覆率に基づいて、動脈瘤内への血液の流入をどの程度抑止することができるかを判断することができる。例えば、操作者は、動脈瘤のネック面の被覆率が所定の値以上となっているか否かを確認することで、動脈瘤の破裂の恐れについてより正確に把握する(すなわち、高い治療効果を得られているか否かを判断する)ことができる。
【0062】
ここで、上述した例では、留置計画に沿って留置された医療デバイスの指標値を表示する場合について説明した。医用画像処理装置300は、さらに、最適な留置計画のシミュレーション情報を表示させることもできる。例えば、制御機能351は、血管の治療対象部位に対応する医療デバイスの位置の指標値が予め設定された条件を満たすように、留置する医療デバイスの種類や、血管内における医療デバイスの形状に関するシミュレーション情報を表示させる。例えば、制御機能351は、留置計画において、候補となる医療デバイスの種類や、医療デバイスを治療対象部位に留置する際に、指標値が所定の値以上となる医療デバイスの形状の情報を表示させる。一例を挙げると、制御機能351は、動脈瘤のネック面における被覆率が所定の値以上となるFlow Diverterの形状を表示させる。
【0063】
また、上述した例では、記憶回路320によって記憶された対応情報を用いて密度及び被覆率を算出する場合について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではなく、取得した医用画像データから算出する場合であってもよい。かかる場合には、例えば、算出機能353は、抽出機能352によって抽出された医療デバイスの網目の状態から、医療デバイスの密度や、被覆率を算出する。
【0064】
次に、第1の実施形態に係る医用画像処理装置300による処理の手順について、図9及び図10を用いて説明する。図9及び図10は、第1の実施形態に係る医用画像処理装置300による処理手順を示すフローチャートである。ここで、図10は、図9のフローチャートにおけるステップS105に対応する処理を示す。また、図9及び図10においては、脳動脈瘤に対するFlow Diverterの留置を行う場合の例を示す。
【0065】
図9におけるステップS101、ステップS102、ステップS107は、例えば、処理回路350が制御機能351に対応するプログラムを記憶回路320から読み出して実行することにより実現される。また、ステップS103は、例えば、入力インターフェース330が操作者からの入力操作を受け付けることにより実現される。また、ステップS104は、例えば、処理回路350が抽出機能352に対応するプログラムを記憶回路320から読み出して実行することにより実現される。また、ステップS105、ステップS106は、例えば、処理回路350が算出機能353に対応するプログラムを記憶回路320から読み出して実行することにより実現される。
【0066】
本実施形態に係る医用画像処理装置300では、まず、処理回路350が、医用画像診断装置100或いは画像保管装置200から頭部CTA画像データを取得する(ステップS101)。そして、処理回路350が、取得したCTA画像データに含まれる脳血管及び動脈瘤を抽出する(ステップS102)。そして、入力インターフェース330が操作者から入力操作を受け付けることで、CTA画像データに対して仮想Flow Diverterを留置する(ステップS103)。
【0067】
その後、留置計画に沿ってFlow Diverterが留置され、留置後のCT画像データを取得されると、処理回路350は、仮想Flow Diverterの位置に基づいて留置されたFlow Diverterの形状及び位置を検出して(ステップS104)、Flow Diverterの表面の金属密度を算出する(ステップS105)。さらに、処理回路350は、脳動脈瘤のネック面における被覆率を算出して(ステップS106)、算出した金属密度及び被覆率を表示する(ステップS107)。
【0068】
また、医用画像処理装置300では、Flow Diverterの表面の金属密度の算出において、図10に示すように、処理回路350は、Flow Diverterの芯線を抽出して(ステップS1051)、Flow Diverterの芯線に対する直交断面を検出する(ステップS1052)。そして、処理回路350は、直交断面の径を算出して(ステップS1053)、芯線に対する直交断面の傾きを算出する(ステップS1054)。さらに、処理回路350は、直交断面の径と傾きからFlow Diverterの表面の金属密度を算出する(ステップS1055)。
【0069】
上述したように、第1の実施形態によれば、制御機能351が、血液が流れる血流領域を含む医用画像データを取得する。抽出機能352は、血流領域に留置された医療デバイスの形状を抽出する。算出機能353は、血流領域に対して留置される医療デバイスについて、医療デバイスが留置された際の形状に基づいて、血液の透過の程度を示す指標値を算出する。制御機能351は、指標値を出力するように制御する。従って、第1の実施形態に係る医用画像処理装置300は、医療デバイスの位置ごとの血液の通りやすさの情報を提供することができ、血流に対する医療デバイスの留置の効果を把握することを可能にする。
【0070】
また、第1の実施形態によれば、記憶回路320は、医療デバイスの種類ごとに、医療デバイスの留置された際の形状と指標値とを関連付けて記憶する。算出機能353は、医療デバイスが留置された際の形状に基づき、記憶回路320に記憶された関連付けられた指標値を読み出すことにより、指標値を算出する。従って、第1の実施形態に係る医用画像処理装置300は、指標値の算出に係る処理負荷を低減することを可能にする。
【0071】
また、第1の実施形態によれば、記憶回路320は、医療デバイスの芯線に直交する断面の径及び傾きによって示される形状ごとに指標値を対応付けた対応情報を記憶する。抽出機能352は、血流領域に留置された医療デバイスの位置ごとに、芯線に直交する断面の径及び傾きを抽出する。算出機能353は、対応情報及び医療デバイスの位置ごとの芯線に直交する断面の径及び傾きに基づいて、医療デバイスの位置ごとの指標値を算出する。従って、第1の実施形態に係る医用画像処理装置300は、Flow Diverterのように、柔軟性が高く、形状の変化に伴って密度が変化するような医療デバイスの留置の効果をより正確に把握させることを可能にする。
【0072】
また、第1の実施形態によれば、抽出機能352は、医療デバイスの留置計画に沿って医療デバイスが留置された後に収集された医用画像データに含まれる医療デバイスの形状を抽出する。算出機能353は、医療デバイスの形状に基づいて、医療デバイスにおける位置ごとの指標値を算出する。従って、第1の実施形態に係る医用画像処理装置300は、留置計画に沿って留置された医療デバイスの留置の効果をより正確に把握させることを可能にする。
【0073】
また、第1の実施形態によれば、制御機能351は、血管の治療対象部位に対応する医療デバイスの位置の指標値が予め設定された条件を満たすように、血管内における医療デバイスの形状に関するシミュレーション情報を表示させる。従って、第1の実施形態に係る医用画像処理装置300は、最適な留置計画を策定することを可能にする。
【0074】
また、第1の実施形態によれば、算出機能353は、指標値として、血管の治療対象部位に対して医療デバイスが覆う領域の比率を示す被覆率を算出する。制御機能351は、算出された被覆率を表示させる。従って、第1の実施形態に係る医用画像処理装置300は、医療デバイスによって血流がどの程度遮断されているかの情報を提示することができ、医療デバイスの留置の効果を容易に判断することを可能にする。
【0075】
また、第1の実施形態によれば、算出機能353は、脳動脈瘤のネック面における被覆率を算出する。制御機能351は、脳動脈瘤のネック面を示す医用画像上に算出された被覆率を表示させる。従って、第1の実施形態に係る医用画像処理装置300は、動脈瘤内への血液の流入に関する指標を提供することを可能にする。
【0076】
(第2の実施形態)
上述した第1の実施形態では、留置計画に沿って留置された医療デバイス(例えば、Flow Diverter)の指標値を表示する場合について説明した。第2の実施形態では、治療中に指標値を表示する場合について説明する。なお、以下、第1の実施形態と同様の構成については、同一の符号を付し、説明を省略する場合がある。また、第2の実施形態では、X線診断装置(X線アンギオ装置)を用いて、脳動脈瘤にFlow Diverterを留置する場合を一例に挙げて説明する。
【0077】
第2の実施形態に係る制御機能351は、X線診断装置によって収集されたX線画像データを取得する。具体的には、制御機能351は、被検体に対して造影剤を注入して撮影された造影Angio画像データと、造影剤を注入せずに撮影された非造影Angio画像データとを取得する。例えば、制御機能351は、留置計画に用いられたCTA画像データとの位置合わせを行うための収集された造影Angio画像データを取得する。また、例えば、制御機能351は、Flow Diverterの留置中(治療中)に収集されたリアルタイムの非造影Angio画像データを取得する。
【0078】
また、制御機能351は、画像間の位置合わせを実行する。具体的には、制御機能351は、留置計画に用いられた医用画像データと、治療中に収集される医用画像データとの位置合わせを実行する。例えば、制御機能351は、留置計画に用いられたCTA画像データと、造影Angio画像データとの位置合わせを実行する。ここで、制御機能351は、画像間の位置合わせに先立ち、造影Angio画像データにおける血管及び治療対象部位(例えば、動脈瘤)を抽出する。
【0079】
そして、制御機能351は、骨の解剖学的ランドマークや、血管構造などの幾何学的な特徴などに基づいて、画像間の位置合わせを実行する。例えば、制御機能351は、CTA画像データと造影Angio画像データとの位置合わせを行うことで、CTA画像データと非造影Angio画像データとを位置合わせするための位置合わせ行列を算出する。なお、制御機能351は、上記した位置合わせだけではなく、既存の種々の位置合わせの手法を用いることができる。
【0080】
このように、制御機能351は、留置計画に用いられた医用画像データと、術中に用いられる医用画像データとを予め位置合わせすることにより、術中に収集された医用画像データに含まれる医療デバイスの3次元的な位置や形状(姿勢)を推定することを可能にする。例えば、術中に、非造影Angio画像データなどの2次元のX線画像が用いられる場合、X線画像に含まれる医療デバイスの血管における3次元的な位置や形状(姿勢)を推定することが困難である。そこで、制御機能351は、留置計画に用いられた医用画像データと、術中に用いられる医用画像データとの位置合わせを行うことで、術中に留置された医療デバイスの血管における3次元的な位置や形状(姿勢)を推定することを可能にする。
【0081】
第2の実施形態に係る抽出機能352は、術中に収集された医用画像データに含まれる医療デバイスの形状を抽出する。具体的には、抽出機能352は、医療デバイスの留置中に収集された医用画像データから医療デバイスの位置や形状(姿勢)を推定する。例えば、抽出機能352は、Flow Diverterの留置中(治療中)に収集されたリアルタイムの非造影Angio画像データに含まれるFlow Diverterの3次元的な位置や形状(姿勢)を推定する。
【0082】
図11は、第2の実施形態に係る抽出機能352による処理の一例を説明するための図である。例えば、抽出機能352は、まず、図11の上段の図に示す非造影Angio画像データに対して位置合わせ行列を適用することで、CTA画像データと非造影Angio画像データとを位置合わせする。そして、抽出機能352は、図11の中段の図に示すように、非造影Angio画像データからFlow Diverter領域を抽出する。例えば、抽出機能352は、Flow Diverter留置前の非造影Angio画像データとFlow Diverter留置後の非造影Angio画像データとのサブトラクションや、予め抽出した動脈瘤周辺領域に限定した領域検索、金属のX線吸収率からFlow Diverterの信号値分布の抽出などを組み合わせることにより、非造影Angio画像データからFlow Diverter領域を抽出する。
【0083】
そして、抽出機能352は、非造影Angio画像データから抽出したFlow Diverter領域を用いて3次元のCTA画像データにおけるFlow Diverterの位置や形状(姿勢)を推定する。具体的には、抽出機能352は、位置合わせ済みのCTA画像データに対して抽出したFlow Diverter領域を投影することで、3次元空間におけるFlow Diverterの位置及び姿勢を推定する。例えば、抽出機能352は、まず、Flow Diverter領域及びCTA画像データにおける血管から複数のランドマークをそれぞれサンプリングする。さらに、抽出機能352は、Flow Diverter領域における複数のランドマークとCTA画像データにおける複数のランドマークを対応付ける。
【0084】
そして、抽出機能352は、CTA画像データに対するFlow Diverter領域の投影方向を変えながら、複数の投影結果を取得する。その後、抽出機能352は、各投影結果について、対応付けたランドマーク間の距離の総和をそれぞれ算出する。抽出機能352は、算出した距離の総和のうち、値が最も小さくなる投影結果を3次元空間におけるFlow Diverterの位置及び姿勢として抽出する。
【0085】
上述したように3次元空間におけるFlow Diverterの位置及び姿勢を推定すると、抽出機能352は、第1の実施形態と同様の処理を実行する。すなわち、抽出機能352は、3次元空間におけるFlow Diverterの位置及び姿勢に基づいて、Flow Diverterの芯線を抽出して、抽出した芯線に直交する断面の径と傾きを算出する。算出機能353は、算出された径と傾きに基づいて、Flow Diverterの表面の密度と、被覆率とを算出する。制御機能351は、算出された密度及び被覆率を表示させる。
【0086】
次に、第2の実施形態に係る医用画像処理装置300による処理の手順について、図12を用いて説明する。図12は、第2の実施形態に係る医用画像処理装置300による処理手順を示すフローチャートである。ここで、図12においては、「治療計画(留置計画)」、「治療準備」、「治療中」の各過程における処理について示す。また、図12においては、脳動脈瘤に対するFlow Diverterの留置を行う場合の例を示す。
【0087】
図12におけるステップS201~ステップS206、ステップS209は、例えば、処理回路350が制御機能351に対応するプログラムを記憶回路320から読み出して実行することにより実現される。また、ステップS207は、例えば、処理回路350が抽出機能352に対応するプログラムを記憶回路320から読み出して実行することにより実現される。また、ステップS208は、例えば、処理回路350が算出機能353に対応するプログラムを記憶回路320から読み出して実行することにより実現される。
【0088】
本実施形態に係る医用画像処理装置300では、まず、治療計画(留置計画)の過程において、処理回路350が、医用画像診断装置100或いは画像保管装置200から頭部CTA画像データを取得して、脳血管及び動脈瘤を抽出する(ステップS101、ステップS102)。
【0089】
そして、治療準備の過程において、処理回路350は、X線診断装置或いは画像保管装置200から造影Angio画像データを取得して(ステップS201)、脳血管及び動脈瘤を抽出する(ステップS202)。その後、処理回路350は、ステップS102にて脳血管及び動脈瘤を抽出した頭部CTA画像データと造影Angio画像データとの画像間位置合わせを実行する(ステップS203)。
【0090】
その後、治療中の過程において、処理回路350は、X線診断装置からリアルタイムの非造影Angio画像データを取得して(ステップS204)、非造影Angio画像データに対して位置合わせ行列を適用する(ステップS205)。また、処理回路350は、非造影Angio画像データにおけるFlow Diverterの形状及び位置を検出する(ステップS206)。そして、処理回路350は、非造影Angio画像データにおけるFlow Diverterの3次元位置及び姿勢を推定して(ステップS207)、Flow Diverterの表面の金属密度及び被覆率を算出する(ステップS208)。その後、処理回路350は、算出した金属密度及び被覆率を表示する(ステップS209)。
【0091】
上述したように、第2の実施形態によれば、抽出機能352は、術中に収集された医用画像データに含まれる医療デバイスの形状を抽出する。算出機能353は、対応情報に基づいて、術中に収集された医用画像データに含まれる医療デバイスにおける位置ごとの指標値を算出する。従って、第2の実施形態に係る医用画像処理装置300は、術中に医療デバイスの位置ごとの血液の通りやすさの情報を提供することができ、血流に対する医療デバイスの留置の効果を術中に把握させることを可能にする。
【0092】
また、第2の実施形態によれば、医用画像処理装置300は、非造影Angio画像データを用いて術中の医療デバイスの位置ごとの血液の通りやすさの情報を提供することができる。すなわち、医用画像処理装置300は、術中の造影剤の使用量を低減することができ、被検体への負担を軽減するとともに、治療費の増大を抑制することを可能にする。
【0093】
(第3の実施形態)
上述した第2の実施形態では、治療中に指標値を表示する場合について説明した。第3の実施形態では、治療中に医療デバイスの留置をナビゲーションする場合について説明する。なお、以下、第1の実施形態と同様の構成については、同一の符号を付し、説明を省略する場合がある。また、第3の実施形態では、X線診断装置(X線アンギオ装置)を用いて、脳動脈瘤にFlow Diverterを留置する場合を一例に挙げて説明する。
【0094】
第3の実施形態に係る制御機能351は、計画時に策定された最適な留置計画に対する治療中の乖離を解消するためのナビゲーション情報を表示させる。具体的には、制御機能351は、留置計画時に算出した指標値と治療中に算出した指標値との差分を算出し、算出した差分が所定の条件(例えば、所定の閾値以下等)を満たすように、ナビゲーション情報を表示させる。例えば、制御機能351は、第1の実施形態において説明した最適な留置計画における密度や被覆率と、第2の実施形態において説明した治療中における密度や被覆率との差分を算出し、算出した差分が所定の条件を満たすように、ナビゲーション情報を表示させる。
【0095】
図13は、第3の実施形態に係る制御機能351による処理の一例を示す図である。例えば、制御機能351は、図13の左側の図に示すように、Flow Diverterの端部51を中央に向かって「5mm」詰めさせるように、ナビゲーション情報「もっと密に5mm詰める」をリアルタイムの非造影Angio画像上に表示させる。また、例えば、制御機能351は、図13の右側の図に示すように、ネック面におけるFlow Diverterの網目の上半分をを「2mm」詰めさせるように、ナビゲーション情報「もっと密に2mm詰める」をネック面の断面画像上に表示させる。
【0096】
上記したナビゲーションを行うために、例えば、制御機能351は、まず、CTA画像データを用いて策定した最適留置計画における被覆率と、非造影Angio画像データから算出した被覆率との差分を算出する。そして、制御機能351は、算出した差分が所定の条件を満たすためのFlow Diverterの調整量(移動量)を対応情報に基づいて算出する。一例を挙げると、制御機能351は、対応情報を用いて、リアルタイムの非造影Angio画像データにおけるFlow Diverterの芯線に直交する断面の傾きを、条件を満たす断面の傾きに変化させるための調整量を算出する。そして、制御機能351は、図13に示すように、算出した調整量を、画像上に表示させる。
【0097】
なお、図13では、ナビゲーション情報のみを表示する場合について示しているが、実施形態はこれに限定されるものではなく、例えば、留置計画時の指標値、治療中の指標値、留置計画時の指標値と治療中の指標値との差分を適宜表示させる場合であってもよい。また、制御機能351は、リアルタイムで留置されているFlow Diverterの位置が、留置計画時に策定した留置位置からずれている場合に、調整するようにナビゲーション情報(例えば、Flow Diverter全体を移動させるナビゲーションや、端部の位置を調整させるナビゲーション等)を表示させることも可能である。また、制御機能351は、リアルタイムの非造影Angio画像において、指標値の差分が閾値を超えている領域や、留置位置からずれている箇所を識別可能に強調表示させることもできる。
【0098】
次に、第3の実施形態に係る医用画像処理装置300による処理の手順について、図14を用いて説明する。図14は、第3の実施形態に係る医用画像処理装置300による処理手順を示すフローチャートである。ここで、図14においては、「治療計画(留置計画)」、「治療準備」、「治療中」の各過程における処理について示す。また、図14においては、脳動脈瘤に対するFlow Diverterの留置を行う場合の例を示す。
【0099】
図14におけるステップS301、ステップS302は、例えば、処理回路350が制御機能351に対応するプログラムを記憶回路320から読み出して実行することにより実現される。
【0100】
本実施形態に係る医用画像処理装置300では、まず、治療計画(留置計画)の過程において、処理回路350が、医用画像診断装置100或いは画像保管装置200から頭部CTA画像データを取得して、脳血管及び動脈瘤を抽出する(ステップS101、ステップS102)。そして、入力インターフェース330が操作者から入力操作を受け付けることで、CTA画像データに対して仮想Flow Diverterを留置して(ステップS103)、処理回路350が、Flow Diverterの最適な留置計画を策定する(ステップS108)。
【0101】
そして、治療準備の過程において、処理回路350は、X線診断装置或いは画像保管装置200から造影Angio画像データを取得して(ステップS201)、脳血管及び動脈瘤を抽出する(ステップS202)。その後、処理回路350は、ステップS102にて脳血管及び動脈瘤を抽出した頭部CTA画像データと造影Angio画像データとの画像間位置合わせを実行する(ステップS203)。
【0102】
その後、治療中の過程において、処理回路350は、X線診断装置からリアルタイムの非造影Angio画像データを取得して(ステップS204)、非造影Angio画像データに対して位置合わせ行列を適用する(ステップS205)。また、処理回路350は、非造影Angio画像データにおけるFlow Diverterの形状及び位置を検出する(ステップS206)。そして、処理回路350は、非造影Angio画像データにおけるFlow Diverterの3次元位置及び姿勢を推定して(ステップS207)、金属密度及び被覆率を算出する(ステップS208)。その後、処理回路350は、最適留置計画との差分を算出して(ステップS301)、最適留置計画との乖離を解消するためのナビゲーションを表示する(ステップS302)。
【0103】
上述したように、第3の実施形態によれば、制御機能351は、血管の治療対象部位に対応する医療デバイスの位置の指標値が予め設定された条件を満たすように、血管内における医療デバイスの形状に関するシミュレーション情報を表示させる。従って、第3の実施形態に係る医用画像処理装置300は、術中に、医療デバイスの最適な留置をナビゲーションすることを可能にする。
【0104】
(第4の実施形態)
第4の実施形態では、経過観察中に指標値を表示する場合について説明する。なお、以下、第1の実施形態と同様の構成については、同一の符号を付し、説明を省略する場合がある。
【0105】
第4の実施形態に係る記憶回路320は、経時的に算出された被検体ごとの指標値を記憶する。具体的には、記憶回路320は、被検体ごとに、留置計画、治療中、治療後の経過観察中の指標値を記憶する。ここで、経過観察中には、X線CT装置やX線診断装置だけではなく、血管内超音波検査(Intravascular Ultrasound:IVUS)が行われる場合もある。処理回路350は、種々の医用画像データについて、上述したように指標値をそれぞれ算出し、算出した指標値を記憶回路320に格納する。
【0106】
そして、制御機能351は、被検体ごとに、指標値を時系列順に並べた表示情報を表示させる。図15は、第4の実施形態に係る制御機能351による処理の一例を示す図である。例えば、制御機能351は、図15に示すように、縦軸に被覆率を示し、横軸に時間を示したグラフをディスプレイ340に表示させる。ここで、制御機能351は、図15に示すように、治療計画時の被覆率、治療時の被覆率、経過観察時の被覆率を含むグラフを表示させる。これにより、操作者は、留置した医療デバイスが安定的な状態を維持しているか否かを容易に確認することができる。
【0107】
例えば、被覆率は、動脈瘤が破裂するか否かを評価するための一因子になると期待されている。図15に示すように、被覆率の状態を監視することで、例えば、頭をぶつけた等によりFlow Diverterが動いたり、治療後に動脈瘤やネック面が広がったりした場合には被覆率が下がるため、被検体の状態を容易に観察することができる。例えば、被覆率が下がり、物理的にネック面を覆う面積が減ると、血液が動脈瘤に流入する可能性が高まるため、追加のFlow Diverterの留置や、他の治療(例えば、Clipなど)などを行うか否かが判断される。
【0108】
次に、第4の実施形態に係る医用画像処理装置300による処理の手順について、図16を用いて説明する。図16は、第4の実施形態に係る医用画像処理装置300による処理手順を示すフローチャートである。ここで、図16においては、「治療計画(留置計画)」、「治療」、「経過観察」の各過程における処理について示す。また、図16においては、脳動脈瘤に対するFlow Diverterの留置を行う場合の例を示す。
【0109】
図16におけるステップS1101、ステップS1102、ステップS2101、ステップS2102、ステップS3101、ステップS3102、ステップS401は、例えば、処理回路350が制御機能351に対応するプログラムを記憶回路320から読み出して実行することにより実現される。また、ステップS2104、ステップS3104は、例えば、処理回路350が抽出機能352に対応するプログラムを記憶回路320から読み出して実行することにより実現される。また、ステップS2105、ステップS2106、ステップS3105、ステップS3106は、例えば、処理回路350が算出機能353に対応するプログラムを記憶回路320から読み出して実行することにより実現される。
【0110】
本実施形態に係る医用画像処理装置300では、まず、治療計画(留置計画)の過程において、処理回路350が、医用画像診断装置100或いは画像保管装置200から医用画像データを取得して、脳血管及び動脈瘤を抽出する(ステップS1101、ステップS1102)。そして、入力インターフェース330が操作者から操作を受け付けることで、医用画像データに対して仮想Flow Diverterを留置する(ステップS1103)。そして、処理回路350が、Flow Diverterの最適な留置計画を策定して(ステップS1108)、策定結果を記憶回路320に格納する。処理回路350は、治療計画が実施されるごとに上記した処理を実行する。
【0111】
次に、治療の過程において、処理回路350は、医用画像診断装置100或いは画像保管装置200から医用画像データを取得して、脳血管及び動脈瘤を抽出する(ステップS2101、ステップS2102)。そして、医師がFlow Diverterを留置すると(ステップS2103)、処理回路350が、Flow Diverterの形状及び位置を検出して(ステップS2104)、Flow Diverterの表面の金属密度を算出する(ステップS2105)。さらに、処理回路350は、脳動脈瘤のネック面の被覆率を算出して(ステップS2106)、算出結果を記憶回路320に格納する。処理回路350は、治療が実施されるごとに上記した処理を実行する。
【0112】
次に、経過観察の過程において、処理回路350は、医用画像診断装置100或いは画像保管装置200から医用画像データを取得して、脳血管及び動脈瘤を抽出する(ステップS3101、ステップS3102)。そして、処理回路350が、Flow Diverterの形状及び位置を検出して(ステップS3104)、Flow Diverterの表面の金属密度を算出する(ステップS3105)。さらに、処理回路350は、脳動脈瘤のネック面の被覆率を算出して(ステップS3106)、算出結果を記憶回路320に格納する。処理回路350は、経過観察で医用画像データ収集されるごとに上記した処理を実行する。
【0113】
そして、処理回路350は、記憶回路320によって記憶された算出結果(金属密度や被覆率)の経時変化をディスプレイ340に表示させる(ステップS401)。なお、経時変化の表示は、治療計画、治療、経過観察のいずれかにおいて指標値が算出されるごとに実行される場合であってもよい。
【0114】
上述したように、第4の実施形態によれば、記憶回路320は、経時的に算出された被検体ごとの指標値を記憶する。制御機能351は、被検体ごとに、指標値を時系列順に並べた表示情報を表示させる。従って、第4の実施形態に係る医用画像処理装置300は、予後の状態を示す最適な情報を表示させることを可能にする。例えば、医用画像処理装置300は、密度や被覆率を用いることで、医用画像データを収集した医用画像診断装置100の種別に関係なく比較することができる情報を提示することができる。
【0115】
(第5の実施形態)
さて、これまで第1~4の実施形態について説明したが、上述した第1~4の実施形態以外にも、種々の異なる形態にて実施されてよいものである。
【0116】
上述した実施形態では、脳動脈瘤に対して医療デバイスを留置するケースを例に挙げて説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、大動脈瘤、冠動脈狭窄、心室・心房中隔欠損、下肢CTO(Chronic Total Occlusion)を治療する場合の医療デバイスの留置について適用する場合であってもよい。
【0117】
また、上述した実施形態では、治療対象部位にFlow Diverterを留置する場合を例に挙げて説明したが、実施形態はこれに限定されるものではなく、例えば、コイル、ステント、心房中隔欠損治療デバイス(アンプラッツァー:Amplatzerなど)などを留置する場合であってもよい。
【0118】
また、上述した実施形態では、医用画像処理装置300が各種処理を実行する場合について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではなく、種々の医用画像診断装置が各種処理を実行する場合であってもよい。例えば、X線診断装置において各種処理が実行される場合であってもよい。図17は、第5の実施形態に係るX線診断装置100aの構成の一例を示す図である。
【0119】
図17に示すように、第5の実施形態に係るX線診断装置100aは、高電圧発生器11と、X線管12と、X線絞り13と、天板14と、Cアーム15と、X線検出器16と、Cアーム回転・移動機構17と、天板移動機構18と、Cアーム・天板機構制御回路19と、絞り制御回路20と、処理回路21と、入力インターフェース22と、ディスプレイ23と、画像データ生成回路24と、記憶回路25と、画像処理回路26とを有する。
【0120】
図17に示すX線診断装置100aにおいては、各処理機能がコンピュータによって実行可能なプログラムの形態で記憶回路25へ記憶されている。Cアーム・天板機構制御回路19、絞り制御回路20、処理回路21、画像データ生成回路24、及び、画像処理回路26は、記憶回路25からプログラムを読み出して実行することで各プログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。換言すると、各プログラムを読み出した状態の各回路は、読み出したプログラムに対応する機能を有することとなる。
【0121】
高電圧発生器11は、処理回路21による制御の下、高電圧を発生し、発生した高電圧をX線管12に供給する。X線管12は、高電圧発生器11から供給される高電圧を用いて、X線を発生する。
【0122】
X線絞り13は、絞り制御回路20による制御の下、X線管12が発生したX線を、被検体Pの関心領域に対して選択的に照射されるように絞り込む。例えば、X線絞り13は、スライド可能な4枚の絞り羽根を有する。X線絞り13は、絞り制御回路20による制御の下、これらの絞り羽根をスライドさせることで、開口の形状、サイズ、位置を任意に変化させる。このように、X線絞り13によって開口のサイズ及び位置が調整されることで、X線検出器16の検出面へのX線照射領域のサイズ及び位置が調整される。すなわち、X線管12が発生したX線が、X線絞り13の開口によって絞り込まれ、被検体Pに照射される。また、X線絞り13は、線質を調整するための付加フィルタを備えることができる。付加フィルタは、例えば、検査に応じて設定される。天板14は、被検体Pを載せるベッドであり、図示しない寝台の上に配置される。
【0123】
X線検出器16は、被検体Pを透過したX線を検出する。例えば、X線検出器16は、マトリックス状に配列された検出素子を有する。各検出素子は、被検体Pを透過したX線を電気信号に変換して蓄積し、蓄積した電気信号を画像データ生成回路24に送信する。
【0124】
Cアーム15は、X線管12、X線絞り13及びX線検出器16を保持する。Cアーム15は、支持部(図示を省略)に設けられたモータにより、天板14上に横臥する被検体Pの周りをプロペラのように高速回転する。ここで、Cアーム15は、直交する3軸であるXYZ軸に関してそれぞれ回転可能に支持され、図示しない駆動部によって各軸で個別に回転する。X線管12及びX線絞り13とX線検出器16とは、Cアーム15により被検体Pを挟んで対向するように配置される。
【0125】
Cアーム回転・移動機構17は、Cアーム15を回転及び移動させるための機構である。また、Cアーム回転・移動機構17は、X線管12とX線検出器16との距離であるSID(Source Image receptor Distance)を変更することも可能である。また、Cアーム回転・移動機構17は、Cアーム15に保持されているX線検出器16を回転させることも可能である。天板移動機構18は、天板14を移動させるための機構である。
【0126】
Cアーム・天板機構制御回路19は、処理回路21による制御の下、Cアーム回転・移動機構17及び天板移動機構18を制御することで、Cアーム15の回転や移動、天板14の移動を調整する。絞り制御回路20は、処理回路21による制御の下、X線絞り13が有する絞り羽根の開度を調整することで開口の形状、サイズ、位置を変化させ、被検体Pに対して照射されるX線の照射範囲を制御する。
【0127】
画像データ生成回路24は、X線検出器16によってX線から変換された電気信号を用いて投影データを生成し、生成した投影データを記憶回路25に格納する。例えば、画像データ生成回路24は、X線検出器16から受信した電気信号に対して、電流・電圧変換やA(Analog)/D(Digital)変換、パラレル・シリアル変換を行い、投影データを生成する。そして、画像データ生成回路24は、生成した投影データ(X線画像データ)を記憶回路25に格納する。
【0128】
記憶回路25は、画像データ生成回路24によって生成された投影データを受け付けて記憶する。また、記憶回路25は、図17に示す各回路によって読み出されて実行される各種機能に対応するプログラムを記憶する。また、記憶回路25は、記憶回路320と同様に、対応情報や、被覆率などの算出結果を記憶する。なお、記憶回路25は、特許請求の範囲における記憶部の一例である。
【0129】
画像処理回路26は、処理回路21による制御のもと、記憶回路25が記憶する投影データに対して各種画像処理を行うことでX線画像を生成する。或いは、画像処理回路26は、後述する処理回路21による制御のもと、画像データ生成回路24から直接投影データを取得し、取得した投影データに対して各種画像処理を行うことでX線画像を生成する。なお、画像処理回路26は、画像処理後のX線画像を、記憶回路25に格納することも可能である。例えば、画像処理回路26は、移動平均(平滑化)フィルタ、ガウシアンフィルタ、メディアンフィルタ、リカーシブフィルタ、バンドパスフィルタなどの画像処理フィルタによる各種処理を実行することが可能である。
【0130】
入力インターフェース22は、所定の領域(例えば、部分透視におけるROI)などの設定などを行うためのトラックボール、スイッチボタン、マウス、キーボード、操作面へ触れることで入力操作を行うタッチパッド、表示画面とタッチパッドとが一体化されたタッチスクリーン、光学センサを用いた非接触入力回路、及び音声入力回路等や、X線の照射などを行うためのフットスイッチ等によって実現される。
【0131】
入力インターフェース22は、処理回路21に接続されており、操作者から受け付けた入力操作を電気信号へ変換し処理回路21へと出力する。なお、本明細書において入力インターフェース22は、マウス、キーボードなどの物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、装置とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を制御回路へ出力する電気信号の処理回路も入力インターフェースの例に含まれる。ディスプレイ23は、操作者の指示を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)や、画像処理回路26によって生成された種々の画像を表示する。また、ディスプレイ23は、処理回路21による種々の処理結果を表示する。
【0132】
処理回路21は、X線診断装置100a全体の動作を制御する。例えば、処理回路21は、入力インターフェース22から転送された操作者の指示に従って高電圧発生器11を制御し、X線管12に供給する電圧を調整することで、被検体Pに対して照射されるX線量やON/OFFを制御する。また、例えば、処理回路21は、操作者の指示に従ってCアーム・天板機構制御回路19を制御し、Cアーム15の回転や移動、天板14の移動を調整する。
【0133】
また、例えば、処理回路21は、操作者の指示に従って絞り制御回路20を制御し、X線絞り13が有する絞り羽根の開度を調整することで、被検体Pに対して照射されるX線の照射範囲を制御する。また、処理回路21は、操作者の指示に従って、画像データ生成回路24による投影データ生成処理や、画像処理回路26による画像処理、あるいは解析処理などを制御する。また、処理回路21は、操作者の指示を受け付けるためのGUIや記憶回路25が記憶する画像、処理結果などを、ディスプレイ23に表示するように制御する。
【0134】
そして、処理回路21は、図17に示すように、制御機能211と、抽出機能212と、算出機能213とを実行する。制御機能211は、X線診断装置100aの全体を制御する。また、制御機能211は、上述した制御機能351と同様の処理を実行する。抽出機能212は、上述した抽出機能352と同様の処理を実行する。算出機能213は、上述した算出機能353と同様の処理を実行する。
【0135】
上述した実施形態では、血管を主な治療対象として説明したが、心房中隔欠損に対して心房中隔欠損治療デバイス(アンプラッツァー:Amplatzerなど)を挿入する事例を挙げたように、対象領域は血管のみに限られない。血流の流れる血流領域であって、血流領域の一部を手術デバイスにより被覆するものであれば、実施形態で処理を適用することが可能である。また、上述した実施形態では、単一の処理回路(処理回路350及び処理回路21)によって各処理機能が実現される場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、処理回路350及び処理回路21は、複数の独立したプロセッサを組み合わせて構成され、各プロセッサが各プログラムを実行することにより各処理機能を実現するものとしても構わない。また、処理回路350及び処理回路21が有する各処理機能は、単一又は複数の処理回路に適宜に分散又は統合されて実現されてもよい。
【0136】
また、上述した各実施形態の説明で用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。ここで、記憶回路にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むように構成しても構わない。この場合には、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。また、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて一つのプロセッサとして構成され、その機能を実現するようにしてもよい。
【0137】
ここで、プロセッサによって実行されるプログラムは、ROM(Read Only Memory)や記憶部等に予め組み込まれて提供される。なお、このプログラムは、これらの装置にインストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD(Compact Disk)-ROM、FD(Flexible Disk)、CD-R(Recordable)、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記憶媒体に記憶されて提供されてもよい。また、このプログラムは、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納され、ネットワーク経由でダウンロードされることにより提供又は配布されてもよい。例えば、このプログラムは、後述する各機能部を含むモジュールで構成される。実際のハードウェアとしては、CPUが、ROM等の記憶媒体からプログラムを読み出して実行することにより、各モジュールが主記憶装置上にロードされて、主記憶装置上に生成される。
【0138】
以上説明した少なくとも一つの実施形態によれば、血流に対する医療デバイスの留置の効果を把握することができる。
【0139】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0140】
100 医用画像診断装置
100a X線診断装置
211、351 制御機能
212、352 抽出機能
213、353 算出機能
300 医用画像処理装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17