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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-02
(45)【発行日】2022-05-13
(54)【発明の名称】舵面のがたつき量計測装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   B64F 5/40 20170101AFI20220506BHJP
   B64C 9/02 20060101ALI20220506BHJP
   B64C 13/24 20060101ALI20220506BHJP
   G01C 23/00 20060101ALI20220506BHJP
【FI】
B64F5/40
B64C9/02 Z
B64C13/24
G01C23/00 Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018064946
(22)【出願日】2018-03-29
(65)【公開番号】P2019172175
(43)【公開日】2019-10-10
【審査請求日】2021-03-25
(73)【特許権者】
【識別番号】508208007
【氏名又は名称】三菱航空機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100140914
【弁理士】
【氏名又は名称】三苫 貴織
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100196117
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 利恵
(74)【代理人】
【識別番号】100191961
【弁理士】
【氏名又は名称】藤澤 厚太郎
(72)【発明者】
【氏名】齋木 康寛
(72)【発明者】
【氏名】小林 瑞人
(72)【発明者】
【氏名】可川 禎之
(72)【発明者】
【氏名】下條 三月
(72)【発明者】
【氏名】水田 龍司
(72)【発明者】
【氏名】森崎 雄貴
(72)【発明者】
【氏名】上原 元秀
【審査官】川村 健一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0188332(US,A1)
【文献】特表2009-528813(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0041050(US,A1)
【文献】実開平3-121200(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64F 5/40
B64C 9/02
B64C 13/24
G01C 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空機の同一の舵面を操舵する第1及び第2のアクチュエータと、
前記第1及び第2のアクチュエータのストローク値を各々取得して、前記第1及び第2のアクチュエータを各々駆動する駆動部と、
前記駆動部を用いて、前記舵面のがたつき量を計測する計測部とを有し、
前記計測部は、
前記第2のアクチュエータを駆動しない状態とし、
前記第1のアクチュエータを一方向に駆動し、前記第2のアクチュエータの前記ストローク値が前記舵面の動きに追従して前記一方向に変化した後、前記第1のアクチュエータを他方向に駆動し、前記一方向から前記他方向に変更したときの前記第1のアクチュエータの前記ストローク値を第1のストローク値として取得し、
前記第1のアクチュエータを前記他方向に駆動した後、前記第2のアクチュエータの前記ストローク値が前記舵面の動きに追従して前記他方向に変化し始めたときの前記第1のアクチュエータの前記ストローク値を第2のストローク値として取得し、
前記舵面に対する前記第1及び第2のアクチュエータのがたつき量の和として、前記第1のストローク値と前記第2のストローク値の差分を求める
ことを特徴とする舵面のがたつき量計測装置。
【請求項2】
請求項1に記載の舵面のがたつき量計測装置において、
前記駆動部は、
前記舵面の舵角を検出する舵角センサから前記舵角を取得しており、
前記計測部は、
前記第1のアクチュエータを前記他方向に駆動した後、前記舵面の前記舵角が前記他方向に変化し始めたときの前記第1のアクチュエータの前記ストローク値を第3のストローク値として取得し、
前記舵面に対する前記第1のアクチュエータのがたつき量として、前記第1のストローク値と前記第3のストローク値の差分を求め、
前記舵面に対する前記第2のアクチュエータのがたつき量として、前記第3のストローク値と前記第2のストローク値の差分を求める
ことを特徴とする舵面のがたつき量計測装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の舵面のがたつき量計測装置において、
前記計測部は、
前記第1のアクチュエータに対して、前記一方向及び前記他方向への往復の駆動を複数回行って、複数の前記差分を求める
ことを特徴とする舵面のがたつき量計測装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1つに記載の舵面のがたつき量計測装置において、
前記計測部は、前記差分又は複数の前記差分の最大値が予め規定した規定値を超えたときに注意喚起を行う注意喚起部を有する
ことを特徴とする舵面のがたつき量計測装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1つに記載の舵面のがたつき量計測装置において、
前記計測部は、前記駆動部、前記航空機を整備する整備用端末及び前記航空機のコックピットの操作端末のいずれかに組み込まれている
ことを特徴とする舵面のがたつき量計測装置。
【請求項6】
航空機の同一の舵面を操舵する第1及び第2のアクチュエータの内の第2のアクチュエータを駆動しない状態とし、
前記第1のアクチュエータを一方向に駆動し、前記第2のアクチュエータのストローク値が前記舵面の動きに追従して前記一方向に変化した後、前記第1のアクチュエータを他方向に駆動し、前記一方向から前記他方向に変更したときの前記第1のアクチュエータのストローク値を第1のストローク値として取得し、
前記第1のアクチュエータを前記他方向に駆動した後、前記第2のアクチュエータの前記ストローク値が前記舵面の動きに追従して前記他方向に変化し始めたときの前記第1のアクチュエータの前記ストローク値を第2のストローク値として取得し、
前記舵面に対する前記第1及び第2のアクチュエータのがたつき量の和として、前記第1のストローク値と前記第2のストローク値の差分を求める
ことを特徴とする舵面のがたつき量計測方法。
【請求項7】
請求項6に記載の舵面のがたつき量計測方法において、
前記第1のアクチュエータを前記他方向に駆動した後、前記舵面の舵角が前記他方向に変化し始めたときの前記第1のアクチュエータの前記ストローク値を第3のストローク値として取得し、
前記舵面に対する前記第1のアクチュエータのがたつき量として、前記第1のストローク値と前記第3のストローク値の差分を求め、
前記舵面に対する前記第2のアクチュエータのがたつき量として、前記第3のストローク値と前記第2のストローク値の差分を求める
ことを特徴とする舵面のがたつき量計測方法。
【請求項8】
請求項6又は請求項7に記載の舵面のがたつき量計測方法において、
前記第1のアクチュエータに対して、前記一方向及び前記他方向への往復の駆動を複数回行って、複数の前記差分を求める
ことを特徴とする舵面のがたつき量計測方法。
【請求項9】
請求項6から請求項8のいずれか1つに記載の舵面のがたつき量計測方法において、
前記差分又は複数の前記差分の最大値が予め規定した規定値を超えたときに注意喚起を行う
ことを特徴とする舵面のがたつき量計測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機の舵面のがたつき量計測装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の航空機の舵面は、軽量化を目的とし、保持剛性ならびにアクチュエータ減衰のいずれか一方もしくは両方で空力弾性安定性が確保される舵面(unbalanced control surface:空力弾性不安定を防止する調整質量付ではない舵面)が採用されており、規定の飛行領域に対して、空力弾性設計上安定となる十分な保持剛性、減衰を設定している。
【0003】
その一方で、実際の機体の舵面には、アクチュエータ、連結構造部材等の製造公差ならびに組立公差により、少なからず舵面回転方向の舵角の緩み(遊び)、いわゆる、舵面のがたつき(freeplay, backlash;以降、舵面ガタと呼ぶ)が存在するため、この舵面ガタの範囲内では、保持剛性が低下することにより、舵面は空力弾性不安定(連成フラッターが発生)となり、舵面ガタによる励起振動(freeplay-induced vibration)が発生する。
【0004】
このような、舵面ガタによる空力弾性不安定事象の取扱いに関し、規定により耐空性証明要求項目が、航空局から出されており、機体運用中に、舵面ガタが規定値を超えないよう維持管理する(LCM: Life Cycle Maintenanceだけでなく、CBM: Condition Based Maintenanceの考え方に基づく管理)ことが求められている。
【0005】
航空機の舵面の監視装置及び方法としては、下記の特許文献1が開示されており、この特許文献1では、舵面ガタ量を直接計測するのではなく、舵面ガタ量に関係する舵面回転振動数の変化を計測して、舵面ガタ量の変化を間接的に検知している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許出願公開第2007/0173988号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の特許文献1に開示された装置及び方法は、舵面ガタ量の変化を間接的に検知するものであり、舵面ガタ量が規定値を超えないよう維持管理するためには、舵面ガタ量を直接計測することが望ましい。
【0008】
ここで、図9図11を参照して、舵面ガタ量を直接計測する従来の装置及び方法を説明する。ここでは、図9及び図10に示すように、航空機50のスタビライザ51を計測対象としており、そのため、スタビライザ51の上面にヒンジライン52から離してダイヤルゲージ53を設置している。図9において、スタビライザ51の前端51aを上げ、後端51bを下げる場合には、実線に示す荷重54の負荷位置とし、その荷重負荷量を変更しながら、ダイヤルゲージ53による舵面移動量を計測し、そして、前端51aを下げ、後端51bを上げる場合には、点線に示す荷重54の負荷位置とし、その荷重負荷量を変更しながら、ダイヤルゲージ53による舵面移動量を計測する。
【0009】
このような計測を行うと、図11に示す荷重負荷量(縦軸)と舵面移動量(横軸)との関係を示すグラフ、つまり、荷重負荷量と舵角変化量との関係を示すグラフを取得することができる。図11に示すグラフにおいて、荷重負荷量が0であるグラフAの位置C1と荷重負荷量が0であるグラフBの位置C2との間の領域は、舵角変化量に対する荷重負荷量が0となる領域であり、位置C1と位置C2との間を舵面ガタ量Cとして、計測することができる。
【0010】
図9図11で説明した装置及び方法では、舵面ガタ量Cを計測することができるが、以下のような課題がある。
(1)装置の舵面への設置が必要であるので、足場が必要となり、高所作業が強いられる。
(2)実際の機体の舵面に荷重を負荷し、舵角変化量を計測する装置及び方法は、単純ではあるが、装置が大規模となり、足場も必要であり、準備作業に時間がかかってしまう。
(3)翼単体の弾性変形が生じないような荷重負荷の方法が求められ、部位の剛性に応じて適切な荷重負荷量を設定する必要がある。
(4)舵面ガタ量の管理に対する費用を極力小さくしたい要求があるが、準備作業に時間がかかり、高所の作業であることから、低コスト化を図ることが難しい。
【0011】
本発明は上記課題に鑑みなされたもので、作業を簡単にし、作業工数を減らして、低コスト化を図ることができる舵面のがたつき量計測装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決する第1の発明に係る舵面のがたつき量計測装置は、
航空機の同一の舵面を操舵する第1及び第2のアクチュエータと、
前記第1及び第2のアクチュエータのストローク値を各々取得して、前記第1及び第2のアクチュエータを各々駆動する駆動部と、
前記駆動部を用いて、前記舵面のがたつき量を計測する計測部とを有し、
前記計測部は、
前記第2のアクチュエータを駆動しない状態とし、
前記第1のアクチュエータを一方向に駆動し、前記第2のアクチュエータの前記ストローク値が前記舵面の動きに追従して前記一方向に変化した後、前記第1のアクチュエータを他方向に駆動し、前記一方向から前記他方向に変更したときの前記第1のアクチュエータの前記ストローク値を第1のストローク値として取得し、
前記第1のアクチュエータを前記他方向に駆動した後、前記第2のアクチュエータの前記ストローク値が前記舵面の動きに追従して前記他方向に変化し始めたときの前記第1のアクチュエータの前記ストローク値を第2のストローク値として取得し、
前記舵面に対する前記第1及び第2のアクチュエータのがたつき量の和として、前記第1のストローク値と前記第2のストローク値の差分を求める
ことを特徴とする。
【0013】
上記課題を解決する第2の発明に係る舵面のがたつき量計測装置は、
上記第1の発明に記載の舵面のがたつき量計測装置において、
前記駆動部は、
前記舵面の舵角を検出する舵角センサから前記舵角を取得しており、
前記計測部は、
前記第1のアクチュエータを前記他方向に駆動した後、前記舵面の前記舵角が前記他方向に変化し始めたときの前記第1のアクチュエータの前記ストローク値を第3のストローク値として取得し、
前記舵面に対する前記第1のアクチュエータのがたつき量として、前記第1のストローク値と前記第3のストローク値の差分を求め、
前記舵面に対する前記第2のアクチュエータのがたつき量として、前記第3のストローク値と前記第2のストローク値の差分を求める
ことを特徴とする。
【0014】
上記課題を解決する第3の発明に係る舵面のがたつき量計測装置は、
上記第1又は第2の発明に記載の舵面のがたつき量計測装置において、
前記計測部は、
前記第1のアクチュエータに対して、前記一方向及び前記他方向への往復の駆動を複数回行って、複数の前記差分を求める
ことを特徴とする。
【0015】
上記課題を解決する第4の発明に係る舵面のがたつき量計測装置は、
上記第1~第3のいずれか1つの発明に記載の舵面のがたつき量計測装置において、
前記計測部は、前記差分又は複数の前記差分の最大値が予め規定した規定値を超えたときに注意喚起を行う注意喚起部を有する
ことを特徴とする。
【0016】
上記課題を解決する第5の発明に係る舵面のがたつき量計測装置は、
上記第1~第4のいずれか1つの発明に記載の舵面のがたつき量計測装置において、
前記計測部は、前記駆動部、前記航空機を整備する整備用端末及び前記航空機のコックピットの操作端末のいずれかに組み込まれている
ことを特徴とする。
【0017】
上記課題を解決する第6の発明に係る舵面のがたつき量計測方法は、
航空機の同一の舵面を操舵する第1及び第2のアクチュエータの内の第2のアクチュエータを駆動しない状態とし、
前記第1のアクチュエータを一方向に駆動し、前記第2のアクチュエータのストローク値が前記舵面の動きに追従して前記一方向に変化した後、前記第1のアクチュエータを他方向に駆動し、前記一方向から前記他方向に変更したときの前記第1のアクチュエータのストローク値を第1のストローク値として取得し、
前記第1のアクチュエータを前記他方向に駆動した後、前記第2のアクチュエータの前記ストローク値が前記舵面の動きに追従して前記他方向に変化し始めたときの前記第1のアクチュエータの前記ストローク値を第2のストローク値として取得し、
前記舵面に対する前記第1及び第2のアクチュエータのがたつき量の和として、前記第1のストローク値と前記第2のストローク値の差分を求める
ことを特徴とする。
【0018】
上記課題を解決する第7の発明に係る舵面のがたつき量計測方法は、
上記第6の発明に記載の舵面のがたつき量計測方法において、
前記第1のアクチュエータを前記他方向に駆動した後、前記舵面の舵角が前記他方向に変化し始めたときの前記第1のアクチュエータの前記ストローク値を第3のストローク値として取得し、
前記舵面に対する前記第1のアクチュエータのがたつき量として、前記第1のストローク値と前記第3のストローク値の差分を求め、
前記舵面に対する前記第2のアクチュエータのがたつき量として、前記第3のストローク値と前記第2のストローク値の差分を求める
ことを特徴とする。
【0019】
上記課題を解決する第8の発明に係る舵面のがたつき量計測方法は、
上記第6又は第7の発明に記載の舵面のがたつき量計測方法において、
前記第1のアクチュエータに対して、前記一方向及び前記他方向への往復の駆動を複数回行って、複数の前記差分を求める
ことを特徴とする。
【0020】
上記課題を解決する第9の発明に係る舵面のがたつき量計測方法は、
上記第6~第8のいずれか1つの発明に記載の舵面のがたつき量計測方法において、
前記差分又は複数の前記差分の最大値が予め規定した規定値を超えたときに注意喚起を行う
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、舵面の操舵を行うための第1及び第2のアクチュエータを用いて、舵面のがたつき量を計測できるので、計測の作業自体を簡単にし、作業工数を減らして、低コスト化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明に係る舵面のがたつき量計測装置の実施形態の一例を示す概略図である。
図2図1に示した舵面のがたつき量計測装置の計測手順を説明する図であって、アクチュエータの初期状態を示す断面図である。
図3図1に示した舵面のがたつき量計測装置の計測手順を説明する図であって、第1のアクチュエータを伸ばして、第1のアクチュエータにより舵面を押し始めた状態を示す断面図である。
図4図1に示した舵面のがたつき量計測装置の計測手順を説明する図であって、第1のアクチュエータを更に伸ばし、舵面の動きに追従して、第2のアクチュエータが伸び始めた状態を示す断面図である。
図5図1に示した舵面のがたつき量計測装置の計測手順を説明する図であって、伸ばした第1のアクチュエータを縮めて、第1のアクチュエータにより舵面を戻し始めた状態を示す断面図である。
図6図1に示した舵面のがたつき量計測装置の計測手順を説明する図であって、第1のアクチュエータを更に縮め、舵面の動きに追従して、第2のアクチュエータが縮み始めた状態を示す断面図である。
図7図1に示した装置で計測されたストローク値及び舵角(縦軸)と時間(横軸)との関係を示すグラフである。
図8】舵角センサを使用せずに図1に示した装置で計測されたストローク値(縦軸)と時間(横軸)との関係を示すグラフである。
図9】航空機の斜視図である。
図10】舵面ガタ量を計測する従来の装置及び方法を説明する概略図である。
図11図10に示した装置及び方法で計測された荷重負荷量(縦軸)と舵面移動量(横軸)との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面に基づいて、本発明に係る舵面のがたつき量計測装置及び方法の実施形態を説明する。
【0024】
[実施例1]
図1は、本実施例の舵面のがたつき量計測装置を示す概略図である。また、図2図6は、図1に示した舵面のがたつき量計測装置の計測手順を説明する図であり、図2は、アクチュエータの初期状態を示す断面図、図3は、第1のアクチュエータを伸ばして、第1のアクチュエータにより舵面を押し始めた状態を示す断面図、図4は、第1のアクチュエータを更に伸ばし、舵面の動きに追従して、第2のアクチュエータが伸び始めた状態を示す断面図、図5は、伸ばした第1のアクチュエータを縮めて、第1のアクチュエータにより舵面を戻し始めた状態を示す断面図、図6は、第1のアクチュエータを更に縮め、舵面の動きに追従して、第2のアクチュエータが縮み始めた状態を示す断面図である。また、図7は、図1に示した装置で計測されたストローク値及び舵角(縦軸)と時間(横軸)との関係を示すグラフであり、図8は、舵角センサを使用せずに図1に示した装置で計測されたストローク値(縦軸)と時間(横軸)との関係を示すグラフである。
【0025】
最初に、図1図6を参照して、舵面駆動装置の構成を説明し、その後、本実施例の舵面のがたつき量計測装置の構成を説明する。
【0026】
航空機の機体の翼、例えば、スタビライザには、その支持部材となる桁(スパー)10が設けられており、舵面20は、桁10に回転可能に支持されている。また、桁10には、同一の舵面20を操舵する同じ構成(仕様)の2本のアクチュエータ11A、11Bが設けられており、アクチュエータ11A、11Bは、ヒンジ14に回転可能に支持されている。また、アクチュエータ11A、11Bは、各々、ピストンロッド12A、12Bを有しており、後述するアクチュエータ駆動装置30(駆動部)からの制御値により、ピストンロッド12A、12Bが各々伸縮される。
【0027】
ここでは、2本のアクチュエータ11A、11Bのうち、アクチュエータ11A(第1のアクチュエータ)を駆動用のアクティブとし、アクチュエータ11B(第2のアクチュエータ)をバックアップ用のスタンバイとしており、アクティブのアクチュエータ11Aを駆動のために使用し、スタンバイのアクチュエータ11Bをダンパのために使用している。なお、アクティブとスタンバイは、逆であってもよいし、両方ともアクティブであってもよい。また、アクチュエータ11A、11Bは、油圧式でも電動式でもよい。
【0028】
舵面20は、ヒンジ21により回転可能に支持されており、ヒンジ21は、桁10に支持されている。また、舵面20には、舵角センサ22が設けられており、ピストンロッド12A、12Bの伸縮により、舵面20が回転したときには、その舵角を舵角センサ22で検出している。
【0029】
アクチュエータ11A、11Bのピストンロッド12A、12Bと舵面20との間は、リンク13A、13B、ピン受け23A、23B、ピン24A、24Bにより、連結されている。具体的には、ピストンロッド12A、12Bの先端にリンク13A、13Bが設けられており、リンク13A、13Bに対向して、舵面20に2対のピン受け23A、23Bが設けられおり、対となるピン受け23Aの内側にリンク13Aが挿入され、対となるピン受け23Bの内側にリンク13Bが挿入されている。そして、リンク13A、13B及びピン受け23A、23Bには、ピン24A、24Bを挿入する挿入孔が設けられており、挿入孔にピン24A、24Bを挿入することにより、リンク13Aとピン受け23Aとが連結され、リンク13Bとピン受け23Bとが連結されている。
【0030】
そして、アクチュエータ駆動装置30は、舵面20を所望の舵角に制御する際には、アクチュエータ11A、11Bで検出されたピストンロッド12A、12Bのストローク値や舵角センサ22で検出された舵角を取得し、取得したストローク値や舵角に基づいて、アクチュエータ11A、11Bへの制御値を演算し、この制御値により、ピストンロッド12A、12Bを伸縮することで、アクチュエータ11A、11Bを駆動して、舵面20を所望の舵角に操舵(制御)しており、これにより、舵面20が図1に示す矢印方向に回転することになる。
【0031】
このようにして、アクチュエータ駆動装置30は舵面20の操舵を行うが、上述したように、リンク13A、13B、ピン受け23A、23B及びピン24A、24Bからなる連結構造部材により、アクチュエータ11A、11Bと舵面20が連結されているので、アクチュエータ11A、11B、連結構造部材等の製造公差ならびに組立公差により、舵面ガタが生じることになり、舵面ガタ量が予め規定した規定値を超えないよう維持管理する必要がある。
【0032】
そのため、本実施例の舵面のがたつき量計測装置は、既に機体に実装されている構成、即ち、上述したアクチュエータ11A、11Bや舵角センサ22やアクチュエータ駆動装置30を用いて、後述する計測手順を実施することにより、舵面ガタ量を計測する計測部31を有している。更に、舵面ガタ量が規定値を超えたときに要整備の注意喚起を行う注意喚起部32を計測部31に設けるようにしてもよい。なお、ここでは、アクチュエータ駆動装置30に計測部31を組み込んでいるが、計測部31は、後述する整備用端末やコックピットの操作端末に組み込んでもよいし、また、注意喚起部32は、計測部31から独立した構成として、アクチュエータ駆動装置30や後述する整備用端末、操作端末に組み込んでもよい。
【0033】
次に、図2図8を参照して、本実施例の舵面のがたつき量計測装置の計測手順を説明する。ここでは、上述したように、アクチュエータ11Aをアクティブとし、アクチュエータ11Bをスタンバイとしており(アクティブ-スタンバイ方式)、アクチュエータ11Bは、能動的に駆動しない状態であり、アクチュエータ11Aに駆動される舵面20に追従して動くことになる。なお、アクチュエータ11A、11Bが共にアクティブ(アクティブ-アクティブ方式)の場合でも、例えば、アクチュエータ11Bを能動的に駆動しない状態(駆動や制御をオフ)として、アクチュエータ11Aに駆動される舵面20に追従してアクチュエータ11Bが動くようにすれば、以下に説明する計測手順と同じ手順で計測が可能となる。
【0034】
まず、アクチュエータ11A、11Bの初期状態では、図2に示すように、リンク13Aとピン24Aとの間、ピン24Aとピン受け23Aとの間、リンク13Bとピン24Bとの間及びピン24Bとピン受け23Bとの間は、隙間が空いている状態、あるいは、接触していても力がかかっていない状態である。これは、図7における時間T0の時点の状態である。なお、図7において、実線は、アクティブのアクチュエータ11Aのピストンロッド12Aのストローク値(以降、アクティブ側のストローク値Saと呼ぶ)を示し、破線は、スタンバイのアクチュエータ11Bのピストンロッド12Bのストローク値(以降、スタンバイ側のストローク値Ssと呼ぶ)を示し、点線は、舵面20の舵角(以降、舵角Arと呼ぶ)を示す。また、時間T0におけるアクティブ側のストローク値SaをSa0とする。
【0035】
図2に示す状態から、図3に示すように、アクチュエータ11Aを往方向(一方向)に駆動して、ピストンロッド12Aを伸ばす(矢印P1)。すると、図7に示すように、時間T0から時間T1の間は、アクティブ側のストローク値Saが増えても、アクティブのアクチュエータ11A側の舵面ガタにより、スタンバイ側のストローク値Ssは変化せず、舵角Arも変化しない。しかし、時間T1の時点において、舵角Arが増え始める。時間T1の時点を、図3を参照して説明すると、リンク13Aがピン24Aを押し、そのピン24Aがピン受け23Aを押して、アクチュエータ11Aにより舵面20を押し始めた状態である。
【0036】
そして、図3に示す状態から、図4に示すように、アクチュエータ11Aを更に往方向に駆動して、ピストンロッド12Aを更に伸ばす(矢印P2)。すると、図7に示すように、時間T1から時間T2の間は、アクティブ側のストローク値Saが更に増えると、舵角Arも更に増えるが、スタンバイのアクチュエータ11B側の舵面ガタにより、スタンバイ側のストローク値Ssは変化しない。しかし、時間T2の時点において、スタンバイ側のストローク値Ssが増え始める。時間T2の時点を、図4を参照して説明すると、アクティブのアクチュエータ11Aのピストンロッド12Aによる舵面20の移動により、ピン受け23Bがピン24Bを引っ張り、ピン24Bがリンク13Bを引っ張って、舵面20がピストンロッド12Bを引っ張り始めた状態(矢印P3)、つまり、アクチュエータ11Bが追従して動き始めた状態である。
【0037】
その後、図4に示す状態から、アクチュエータ11Aを更に往方向に駆動して、予め設定した所定のストローク値まで、つまり、図7に示す時間T3の時点まで、ピストンロッド12Aを伸ばす。すると、図7に示すように、時間T2から時間T3までの間は、アクティブ側のストローク値Saの増加に追従して、舵角Arも増え、スタンバイ側のストローク値Ssも増えることになる。この間は、リンク13Aとピン24A同士、ピン24Aとピン受け23A同士、リンク13Bとピン24B同士及びピン24Bとピン受け23B同士は、図4に示す状態である。なお、上記の所定のストローク値は、予め設定した舵面20の舵角範囲の最大値に対応している。
【0038】
アクチュエータ11A、11Bの初期状態に応じて、スタンバイのアクチュエータ11Bの始動は、アクティブのアクチュエータ11Aの始動から遅れることになるが、時間T2において、図4に示すように、アクチュエータ11Aにおけるリンク13Aとピン24Aとの間、ピン24Aとピン受け23Aとの間、そして、アクチュエータ11Bにおけるリンク13Bとピン24Bとの間、ピン24Bとピン受け23Bとの間は、全て接することになり、ガタが無い状態となる。そのため、図7に示すように、時間T2から時間T3までの間は、アクティブ側のストローク値Saの増加に追従して、スタンバイ側のストローク値Ssも増えることになる。
【0039】
所定のストローク値までピストンロッド12Aを伸ばした後は、アクチュエータ11Aを往方向とは逆の復方向(他方向)に駆動して、ピストンロッド12Aを縮める(矢印P4)。すると、図7に示すように、時間T3から時間T4までの間は、アクティブ側のストローク値Saが減っても、アクティブのアクチュエータ11A側の舵面ガタにより、スタンバイ側のストローク値Ssは変化せず、舵角Arも変化しない。しかし、時間T4の時点において、舵角Arが減り始める。時間T4の時点を、図5を参照して説明すると、リンク13Aがピン24Aを引っ張り、そのピン24Aがピン受け23Aを引っ張って、アクチュエータ11Aにより舵面20を戻し始めた状態である。
【0040】
ここで、時間T3から時間T4までの間は、舵角Arは変化しないので、時間T3の時点のアクティブ側の第1のストローク値Sa1と時間T4の時点のアクティブ側の第3のストローク値Sa3との変位差が、アクティブのアクチュエータ11Aの舵面ガタ量Gaとなる。つまり、Ga=Sa1-Sa3である。
【0041】
そして、図5に示す状態から、図6に示すように、アクチュエータ11Aを更に復方向に駆動して、ピストンロッド12Aを更に縮める(矢印P5)。すると、図7に示すように、時間T4から時間T5の間は、アクティブ側のストローク値Saが更に減ると、舵角Arも更に減るが、スタンバイのアクチュエータ11B側の舵面ガタにより、スタンバイ側のストローク値Ssは変化しない。しかし、時間T5の時点において、スタンバイ側のストローク値Ssが減り始める。時間T5の時点を、図6を参照して説明すると、アクティブのアクチュエータ11Aのピストンロッド12Aによる舵面20の移動により、ピン受け23Bがピン24Bを押し、ピン24Bがリンク13Bを押して、舵面20がピストンロッド12Bを押し始めた状態(矢印P6)、つまり、アクチュエータ11Bが追従して動き始めた状態である。
【0042】
ここで、時間T3から時間T5までの間は、スタンバイ側のストローク値Ssは変化しないので、時間T3の時点のアクティブ側の第1のストローク値Sa1と時間T5の時点のアクティブ側の第2のストローク値Sa2との変位差が、アクティブのアクチュエータ11Aの舵面ガタ量Gaとスタンバイのアクチュエータ11Bの舵面ガタ量との和である舵面ガタ総量Gとなる。つまり、G=Sa1-Sa2である。
【0043】
従って、スタンバイのアクチュエータ11Bの舵面ガタ量をGbとすると、Gb=G-Gaとして求めることができる。言い換えると、Gb=G-Ga=(Sa1-Sa2)-(Sa1-Sa3)=Sa3-Sa2であり、時間T4の時点のアクティブ側の第3のストローク値Sa3と時間T5の時点のアクティブ側の第2のストローク値Sa2との変位差が、スタンバイのアクチュエータ11Bの舵面ガタ量をGbとなる。なお、上記の舵面ガタ量Ga、Gbは、ここで説明する計測手順において、アクティブとスタンバイを逆にすることで、つまり、アクチュエータ11Aをスタンバイとし、アクチュエータ11Bをアクティブとすることで、求めることもできる。
【0044】
その後、図6に示す状態から、アクチュエータ11Aを更に復方向に駆動して、アクティブ側のストローク値SaがSa0となるまで、ピストンロッド12Aを縮める。このストローク値Sa0の時点を時間T6とすると、図7に示すように、時間T5から時間T6までの間は、アクティブ側のストローク値Saの減少に追従して、舵角Arも減り、スタンバイ側のストローク値Ssも減ることになる。この間は、リンク13Aとピン24A同士、ピン24Aとピン受け23A同士、リンク13Bとピン24B同士及びピン24Bとピン受け23B同士は、図6に示す状態である。
【0045】
ここで、図7での計測手順を整理して以下に説明する。前提として、アクチュエータ11Bを能動的に駆動しない状態としている。
(1)アクチュエータ11Aを往方向に駆動し、アクチュエータ11Bのストローク値Ssが舵面20の動きに追従して往方向に変化した後、アクチュエータ11Aを復方向に駆動し、往方向から復方向に変更したときのアクチュエータ11Aのストローク値Saを第1のストローク値Sa1として取得する。
(2)アクチュエータ11Aを復方向に駆動した後、舵面20の舵角Arが復方向に変化し始めたときのアクチュエータ11Aのストローク値Saを第3のストローク値Sa3として取得する。
(3)アクチュエータ11Aを復方向に更に駆動した後、アクチュエータ11Bのストローク値Ssが舵面20の動きに追従して復方向に変化し始めたときのアクチュエータ11Aのストローク値Saを第2のストローク値Sa2として取得する。
(4)取得した第1のストローク値Sa1と第2のストローク値Sa2の差分である舵面ガタ総量Gを求め、また、取得した第1のストローク値Sa1と第3のストローク値Sa3の差分である舵面ガタ量Gaを求める。また、舵面ガタ総量Gと舵面ガタ量Gaの差分(第3のストローク値Sa3と第2のストローク値Sa2の差分)である舵面ガタ量Gbを求める。
【0046】
本実施例の舵面のがたつき量計測装置では、以上説明した計測手順により、アクティブのアクチュエータ11Aのピストンロッド12Aを往復させて、アクティブ側のストローク値Saの変化と共に、スタンバイ側のストローク値Ssの変化及び舵面20の舵角の変化を取得している。この往復は、舵面20の常用領域を含んだ舵角範囲内となっている。また、この往復は、1往復でもよいが、図7に示すように、2往復以上してもよく、複数往復した場合には、舵面ガタ総量G、舵面ガタ量Ga、舵面ガタ量Gbは、統計的な処理(例えば、最大値や平均値等)により求めるようにして、計測の信頼性を高めるようにしてもよい。
【0047】
なお、図7で示したように、舵角センサ22も使用して、舵角Arも同時に計測することにより、舵面ガタ総量Gだけでなく、アクティブのアクチュエータ11Aの舵面ガタ量Gaやスタンバイのアクチュエータ11Bの舵面ガタ量Gbも計測することができるが、舵角センサ22を使用しない場合でも、図8に示すストローク値(縦軸)と時間(横軸)との関係を示すグラフを計測することができる。この場合は、アクティブのアクチュエータ11Aの舵面ガタ量Gaやスタンバイのアクチュエータ11Bの舵面ガタ量Gbは計測できないが、舵面ガタ総量Gは、図7で説明した場合と同様に計測することができる。
【0048】
図8での計測手順も整理して以下に説明する。ここでも、前提として、アクチュエータ11Bを能動的に駆動しない状態としている。
(1)アクチュエータ11Aを往方向に駆動し、アクチュエータ11Bのストローク値Ssが舵面20の動きに追従して往方向に変化した後、アクチュエータ11Aを復方向に駆動し、往方向から復方向に変更したときのアクチュエータ11Aのストローク値Saを第1のストローク値Sa1として取得する。
(2)アクチュエータ11Aを復方向に駆動した後、アクチュエータ11Bのストローク値Ssが舵面20の動きに追従して復方向に変化し始めたときのアクチュエータ11Aのストローク値Saを第2のストローク値Sa2として取得する。
(3)取得した第1のストローク値Sa1と第2のストローク値Sa2の差分である舵面ガタ総量Gを求める。
【0049】
図7図8に示したように、舵面ガタがあると、スタンバイのアクチュエータ11Bの始動がアクティブのアクチュエータ11Aの始動から舵面ガタ量分遅れるため、アクティブ側のストローク値Saとスタンバイ側のストローク値Ssとには、舵面ガタ量に起因する変位差が生じる。本実施例の舵面のがたつき量計測装置は、このような舵面ガタ量に起因する変位差に着目し、図7図8に示すような計測を行うことにより変位差を計測しており、計測した変位差から上述した舵面ガタ総量G、舵面ガタ量Ga、舵面ガタ量Gbを求めるようにしている。
【0050】
そして、このような舵面ガタ総量G、舵面ガタ量Ga、舵面ガタ量Gbの計測を計測部31で行い、舵面ガタ総量G、舵面ガタ量Ga、舵面ガタ量Gbが規定値を超えた場合や規定値を超えると予想される経時的傾向が示された場合には、計測部31が注意喚起信号を注意喚起部32へ送信し、注意喚起部32で要整備の注意喚起を表示するようにしている。このために、計測部31あるいは注意喚起部32には、これまでに計測された舵面ガタ総量G、舵面ガタ量Ga、舵面ガタ量Gbの計測結果を蓄積する記憶部を更に備えていてもよい。これにより、舵面ガタ総量G、舵面ガタ量Ga、舵面ガタ量Gbが規定値を超えないよう維持管理することができる。
【0051】
本実施例の舵面のがたつき量計測装置を用い、上述した計測手順により計測を行うことにより、舵面ガタ量として、図10に示した従来の計測装置及び方法と差異の無い結果を得られることを、本願の発明者等は既に実証済みである。
【0052】
航空機においては、安全確保のために舵面制御系を多重冗長化しており、通常は、一つの舵面に独立して制御可能な複数のアクチュエータが設けられており、それぞれのアクチュエータにはストローク値を計測し制御系へ伝える機能が備わっている。また、舵面の舵角を検出する舵角センサも通常設けられている。つまり、本実施例の舵面のがたつき量計測装置は、上述したような、通常機体に装備されている既存の構成を利用して、舵面ガタ量を計測する手段を提供することができる。そのため、図10に示した従来の計測装置及び方法とは異なり、大規模な装置の設置準備を行う必要は無く、計測のための作業準備時間を大幅に抑えることができ、また、高所での作業も不要となり、高所作業を強いられることもなくなる。つまり、計測の作業自体を簡単にし、作業工数を減らして、低コスト化を図ることができる。
【0053】
本実施例の舵面のがたつき量計測装置においては、上述した計測手順が計測モード(プログラム)として計測部31に予め用意されている。この計測モードでは、アクティブのアクチュエータ11Aに対し、所定のストローク範囲で複数回の往復運動を自動的に行うようにしている。例えば、図7及び図8に示すように、規定時間(時間T0~T6)において、所定のストローク範囲(ストローク値Sa0~Sa1の範囲)でアクチュエータ11Aを三角波駆動し、その三角波駆動で複数回往復するよう自動的に制御している。三角波駆動による所定のストローク範囲(ストローク値Sa0~Sa1の範囲)は、予め設定した舵面20の舵角範囲に対応している。
【0054】
上述した計測部31や注意喚起部32は、図1に示すように、アクチュエータ駆動装置30に組み込んでもよいし、また、航空機を整備する整備用端末や航空機のコックピットの操作端末に組み込んでもよく、いずれの場合でも、以下に説明するように、航空機の整備やヘルスモニタリングに対して有用なものとなる。
【0055】
例えば、機体の実際の整備の現場では、整備用端末又は操作端末において、上記計測モードを起動することで、以下のように舵面ガタ量を計測でき、更に、整備計画策定に有用な要整備の注意喚起情報を受け取ることができる。なお、ここでは、前提として、機体の通信端子に接続するとアクチュエータ駆動装置30と通信可能となる整備用端末を用いるか、又は、アクチュエータ駆動装置30と通信するコックピットの操作端末を用いることとする。
【0056】
(1)整備担当者が整備用端末又は操作端末によりアクチュエータ駆動装置30へ上記計測モードの起動を指示する。
(2)アクチュエータ駆動装置30は、計測部31に用意された計測モードを起動し、計測部31は、アクティブ側のストローク値Sa、スタンバイ側のストローク値Ss及び舵角Arを自動で取得して、舵面ガタ総量G、舵面ガタ量Ga、舵面ガタ量Gbを求める。
(3)アクチュエータ駆動装置30の計測部31は、求めた舵面ガタ総量G、舵面ガタ量Ga、舵面ガタ量Gbが規定値を超えた場合又は規定値を超えると予想される経時的傾向が示された場合には、注意喚起信号を注意喚起部32へ送信し、注意喚起部32は、整備用端末又は操作端末に要整備の注意喚起を表示する。
【0057】
なお、アクチュエータ駆動装置30の計測部31は、アクティブ側のストローク値Sa、スタンバイ側のストローク値Ss及び舵角Arの計測及び整備用端末又は操作端末への出力のみを行い、整備用端末又は操作端末側で舵面ガタ総量G、舵面ガタ量Ga、舵面ガタ量Gbを求めて、注意喚起を表示するようにしてもよい。
【0058】
また、整備用端末又は操作端末への出力に代えて、アクチュエータ駆動装置30からの出力(アクティブ側のストローク値Sa、スタンバイ側のストローク値Ss及び舵角Ar)を出力できる出力端子を予め機体に設けておき、この出力端子にオシロスコープ等を接続し、アクティブ側のストローク値Sa、スタンバイ側のストローク値Ss及び舵角Arの出力を図7図8に示すグラフとしてオシロスコープ等で出力し、このグラフから舵面ガタ総量G、舵面ガタ量Ga、舵面ガタ量Gbを求めるようにしてもよい。特に、上記の出力端子をアクチュエータ11A、11Bあるいは舵面20の近傍に設けることで、舵面20の状況を近くで直接視認しながら測定することができる。
【0059】
また、上述した整備を定期的に実施することに加えて、操作端末を以下のように使用して、ヘルスモニタリングをフライト中やフライトの前後に実施してもよい。なお、ここでは、前提として、アクチュエータ駆動装置30と通信するコックピットの操作端末を用いることとする。
【0060】
(1)フライト中やフライトの前後に操作端末により自動的に上記計測モードを起動する。例えば、フライト中においては、舵面20への空気力がゼロになるタイミングであれば、自動的に何度でも計測モードを起動してもよく、フライト中ずっとモニタリングを行うようにしてもよい。また、パイロットによる操作端末の操作により計測モードを起動できるようにしてもよい。
(2)アクチュエータ駆動装置30で取得したアクティブ側のストローク値Sa、スタンバイ側のストローク値Ss及び舵角Arを操作端末に出力し、操作端末で舵面ガタ総量G、舵面ガタ量Ga、舵面ガタ量Gbを求め、操作端末に自動的に記録する。なお、フライト中の場合には、後述の理由により、1回のフライト中に複数回計測した舵面ガタ総量G、舵面ガタ量Ga、舵面ガタ量Gbの最大値を操作端末に自動的に記録する。
(3)操作端末に記録した舵面ガタ総量G、舵面ガタ量Ga、舵面ガタ量Gbがフライト毎に徐々に増加し、舵面ガタ総量G、舵面ガタ量Ga、舵面ガタ量Gbが規定値を超えた場合又は規定値を超えると予想される経時的傾向が示された場合には、操作端末で要整備の注意喚起を表示する。
【0061】
ここで、フライト中は、通常、舵面20への空気力により、アクティブのアクチュエータ11A及びスタンバイのアクチュエータ11Bが舵面ガタの同じ端の方に片当たりしているので、アクティブ側のストローク値Saとスタンバイ側のストローク値Ssの差はゼロ又は小さい値である。そのため、この状態で計測される舵面ガタ総量G、舵面ガタ量Ga、舵面ガタ量Gbも空気力がゼロの状態より小さくなる。しかしながら、飛行条件によっては、空気力がゼロになるタイミングがあり、舵面20が舵面ガタ量の範囲内でフリーとなる。このときに計測される舵面ガタ総量G、舵面ガタ量Ga、舵面ガタ量Gbは、空気力がある状態より必ず大きくなり、複数の舵面ガタ総量G、舵面ガタ量Ga、舵面ガタ量Gbの最大値を求めることは、上述した整備時に求めた舵面ガタ総量G、舵面ガタ量Ga、舵面ガタ量Gbと同等又は略同等のものを求めることになる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、航空機の舵面(例えば、エルロン、エレベータ、ラダー、スタビライザ等)のがたつき量の計測及び管理に好適なものであり、運用している機体の維持管理のための定期整備やフライト中のヘルスモニタリングとして有用なものである。
【符号の説明】
【0063】
11A、11B アクチュエータ
12A、12B ピストンロッド
13A、13B リンク
20 舵面
22 舵角センサ
23A、23B ピン受け
24A 24B ピン
30 アクチュエータ駆動装置
31 計測部
32 注意喚起部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11