(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-02
(45)【発行日】2022-05-13
(54)【発明の名称】硬貨摩耗又は変形検出装置、硬貨処理機、及び、硬貨摩耗又は変形検出方法
(51)【国際特許分類】
G07D 5/02 20060101AFI20220506BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20220506BHJP
G01B 11/16 20060101ALI20220506BHJP
G01B 11/08 20060101ALI20220506BHJP
【FI】
G07D5/02 101
G06T7/00 610A
G01B11/16 H
G01B11/08 H
(21)【出願番号】P 2018079068
(22)【出願日】2018-04-17
【審査請求日】2020-11-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000001432
【氏名又は名称】グローリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 秀和
(72)【発明者】
【氏名】芝尾 秀人
【審査官】木村 麻乃
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-227366(JP,A)
【文献】特開2017-220136(JP,A)
【文献】特開2004-220205(JP,A)
【文献】特開2015-060564(JP,A)
【文献】再公表特許第2010/035314(JP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07D 1/00-13/00
G07F 19/00
G06T 7/00
G01B 11/16
G01B 11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬貨周縁のエッジ部における摩耗又は変形を検出する装置であって、
硬貨径よりも大きい円環状で硬貨面に対する照射角度が0度を超えて45度以下の範囲内で光を照射する光源部と、
前記光源部により照明された前記硬貨の全体反射画像を撮像する撮像部と、
前記撮像部で撮像された前記全体反射画像における周縁の輝度分布に基づいて前記硬貨の周縁における摩耗又は変形の有無を判定する判定部と、
を有することを特徴とする硬貨摩耗又は変形検出装置。
【請求項2】
前記判定部は、前記全体反射画像の前記周縁に位置する環状明部の幅を測定する測定部を含むことを特徴とする請求項1に記載の硬貨摩耗又は変形検出装置。
【請求項3】
前記測定部は、前記全体反射画像の硬貨径と、前記環状明部に囲まれた前記全体反射画像の中央暗部の径との差から、前記環状明部の幅を求めることを特徴とする請求項2に記載の硬貨摩耗又は変形検出装置。
【請求項4】
更に、予め前記環状明部の幅の基準値を記憶する記憶部を有し、
前記判定部は、前記測定部で検出した前記環状明部の幅の測定値と前記記憶部に記憶された前記基準値とを比較する比較部を含むことを特徴とする請求項2又は3に記載の硬貨摩耗又は変形検出装置。
【請求項5】
硬貨周縁のエッジ部における摩耗又は変形を検出する装置であって、
硬貨面に対する照射角度が45度を超えて90度以下の範囲内で光を照射する光源部と、
前記光源部により照明された前記硬貨の反射光画像を取得する反射光撮像部と、
前記光源部により照明された前記硬貨面を含む領域の透過光を受光し、前記硬貨の陰影画像を取得する透過光撮像部と、
前記反射光画像から得られる前記硬貨の径と前記陰影画像から得られる前記硬貨の径との差に基づいて前記硬貨の周縁における摩耗又は変形の有無を判定する判定部と、
を有することを特徴とする硬貨摩耗又は変形検出装置。
【請求項6】
硬貨周縁のエッジ部における摩耗又は変形を検出する装置であって、
硬貨径よりも大きい円環状で硬貨面に対する照射角度が0度を超えて45度以下の範囲内で光を照射するローアングル光源部と、
硬貨面に対する照射角度が45度を超えて90度以下の範囲内で光を照射するハイアングル光源部と、
前記ローアングル光源部により照明された前記硬貨のローアングル全体反射画像、及び、前記ハイアングル光源部により照明された前記硬貨のハイアングル全体反射画像を撮像する撮像部と、
前記ローアングル全体反射画像の硬貨径と前記ハイアングル全体反射画像の硬貨径とを比較し、前記硬貨の周縁における摩耗又は変形の有無を判定する判定部と、
を有することを特徴とする硬貨摩耗又は変形検出装置。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載の硬貨摩耗又は変形検出装置を備えることを特徴とする硬貨処理機。
【請求項8】
前記判定部により摩耗有り又は変形有りと判定された硬貨を除去するリジェクト部を更に有することを特徴とする請求項7に記載の硬貨処理機。
【請求項9】
硬貨周縁のエッジ部における摩耗又は変形を検出する方法であって、
硬貨径よりも大きい円環状の光源部が、硬貨面に対して0度を超えて45度以下の範囲内の照射角度で光を照射するとともに、撮像部が、前記光源部により照明された前記硬貨の全体反射画像を撮像する撮像ステップと、
判定部が、前記撮像部で撮像された前記全体反射画像における周縁の輝度分布に基づいて前記硬貨の周縁における摩耗又は変形の有無を判定する判定ステップと、
を有することを特徴とする硬貨摩耗又は変形検出方法。
【請求項10】
硬貨周縁のエッジ部における摩耗又は変形を検出する方法であって、
光源部が、硬貨面に対して45度を超えて90度以下の範囲内の照射角度で光を照射するとともに、反射光撮像部が、前記光源部により照明された前記硬貨の反射光画像を取得し、透過光撮像部が、前記光源部により照明された前記硬貨面を含む領域の透過光を受光して前記硬貨の陰影画像を取得する撮像ステップと、
判定部が、前記反射光画像から得られる前記硬貨の径と前記陰影画像から得られる前記硬貨の径との差に基づいて前記硬貨の周縁における摩耗又は変形の有無を判定する判定ステップと、
を有することを特徴とする硬貨摩耗又は変形検出方法。
【請求項11】
硬貨周縁のエッジ部における摩耗又は変形を検出する方法であって、
硬貨径よりも大きい円環状のローアングル光源部が、硬貨面に対して0度を超えて45度以下の範囲内の照射角度で光を照射するとともに、撮像部が、前記ローアングル光源部により照明された前記硬貨のローアングル全体反射画像を撮像する第一の撮像ステップと、
ハイアングル光源部が、硬貨面に対して45度を超えて90度以下の範囲内の照射角度で光を照射するとともに、撮像部が、前記ハイアングル光源部により照明された前記硬貨のハイアングル全体反射画像を撮像する第二の撮像ステップと、
判定部が、前記ローアングル全体反射画像の硬貨径と前記ハイアングル全体反射画像の硬貨径とを比較し、比較結果に基づいて前記硬貨の周縁における摩耗又は変形の有無を判定する判定ステップと、
を有することを特徴とする硬貨摩耗又は変形検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬貨摩耗又は変形検出装置、硬貨処理機、及び、硬貨摩耗又は変形検出方法に関する。より詳しくは、硬貨周縁のエッジ部における摩耗や変形を検出する硬貨摩耗又は変形検出装置、硬貨処理機、及び、硬貨摩耗検出方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、硬貨の画像を取得し、予め用意した基準値との比較結果に基づき硬貨の識別を行う技術が知られている。当該技術においては、比較結果を用いて、硬貨表面における摩耗や損傷を検出することが可能である。
【0003】
例えば、特許文献1には、コイン又は他の製造品の鑑定の方法及び装置に係る発明が開示されており、具体的には、デジタルカメラ等の感知デバイスを用いてコインの画像を撮影するステップと、当該コインの目印を使用して画像の取得領域の場所を特定するステップと、取得領域のデジタル表現を生成するステップとを含む方法等が開示されている。また、鑑定対象のコインのデジタル表現が、データベース中のコインのデジタル表現と一致するか判定する際に、コイン表面の劣化及びコイン表面細部の摩耗を評価する基準を用いてもよいことが記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、円形被検出体の識別方法に係る発明が開示されており、具体的には、硬貨等の円形被検出体の凹凸パターンをセンサで検出し、検出した凹凸パターンのデータを予め用意しておいた基準パターンデータと比較してパターン類似度を求め、パターン類似度がしきい値を超えているかどうかに基づき円形被検出体を識別することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表2014-513350号公報
【文献】特開2003-187289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、硬貨処理機において硬貨を処理する際、硬貨周縁のエッジ部が摩耗していると、特に硬貨の径差を利用して選別を行う場合に、硬貨を誤って選別する可能性がある。特許文献1及び2の技術によれば、硬貨表面における摩耗については検出することが可能であるが、硬貨周縁のエッジ部の摩耗については検出できない。これらのことから、硬貨周縁で生じる摩耗や変形を検出する方法が求められていた。
【0007】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、硬貨周縁のエッジ部の摩耗又は変形を検出することが可能な硬貨摩耗又は変形検出装置、硬貨処理機、及び、硬貨摩耗又は変形検出方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、硬貨周縁のエッジ部における摩耗又は変形を検出する装置であって、硬貨径よりも大きい円環状で硬貨面に対する照射角度が0度を超えて45度以下の範囲内で光を照射する光源部と、前記光源部により照明された前記硬貨の全体反射画像を撮像する撮像部と、前記撮像部で撮像された前記全体反射画像における周縁の輝度分布に基づいて前記硬貨の周縁における摩耗又は変形の有無を判定する判定部と、を有することを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、上記発明において、前記判定部は、前記全体反射画像の前記周縁に位置する環状明部の幅を測定する測定部を含むことを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、上記発明において、前記測定部は、前記全体反射画像の硬貨径と、前記環状明部に囲まれた前記全体反射画像の中央暗部の径との差から、前記環状明部の幅を求めることを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、上記発明において、更に、予め前記環状明部の幅の基準値を記憶する記憶部を有し、前記判定部は、前記測定部で検出した前記環状明部の幅の測定値と前記記憶部に記憶された前記基準値とを比較する比較部を含むことを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、硬貨周縁のエッジ部における摩耗又は変形を検出する装置であって、硬貨面に対する照射角度が45度を超えて90度以下の範囲内で光を照射する光源部と、前記光源部により照明された前記硬貨の反射光画像を取得する反射光撮像部と、前記光源部により照明された前記硬貨面を含む領域の透過光を受光し、前記硬貨の陰影画像を取得する透過光撮像部と、前記反射光画像から得られる前記硬貨の径と前記陰影画像から得られる前記硬貨の径との差に基づいて前記硬貨の周縁における摩耗又は変形の有無を判定する判定部と、を有することを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、硬貨周縁のエッジ部における摩耗又は変形を検出する装置であって、硬貨径よりも大きい円環状で硬貨面に対する照射角度が0度を超えて45度以下の範囲内で光を照射するローアングル光源部と、硬貨面に対する照射角度が45度を超えて90度以下の範囲内で光を照射するハイアングル光源部と、前記ローアングル光源部により照明された前記硬貨のローアングル全体反射画像、及び、前記ハイアングル光源部により照明された前記硬貨のハイアングル全体反射画像を撮像する撮像部と、前記ローアングル全体反射画像の硬貨径と前記ハイアングル全体反射画像の硬貨径とを比較し、前記硬貨の周縁における摩耗又は変形の有無を判定する判定部と、を有することを特徴とする。
【0014】
また、本発明は、前記硬貨摩耗又は変形検出装置を備えることを特徴とする硬貨処理機である。
【0015】
また、本発明は、上記発明において、前記判定部により摩耗有り又は変形有りと判定された硬貨を除去するリジェクト部を更に有することを特徴とする。
【0016】
また、本発明は、硬貨周縁のエッジ部における摩耗又は変形を検出する方法であって、硬貨径よりも大きい円環状の光源部が、硬貨面に対して0度を超えて45度以下の範囲内の照射角度で光を照射するとともに、撮像部が、前記光源部により照明された前記硬貨の全体反射画像を撮像する撮像ステップと、判定部が、前記撮像部で撮像された前記全体反射画像における周縁の輝度分布に基づいて前記硬貨の周縁における摩耗又は変形の有無を判定する判定ステップと、を有することを特徴とする。
【0017】
また、本発明は、硬貨周縁のエッジ部における摩耗又は変形を検出する方法であって、光源部が、硬貨面に対して45度を超えて90度以下の範囲内の照射角度で光を照射するとともに、反射光撮像部が、前記光源部により照明された前記硬貨の反射光画像を取得し、透過光撮像部が、前記光源部により照明された前記硬貨面を含む領域の透過光を受光して前記硬貨の陰影画像を取得する撮像ステップと、判定部が、前記反射光画像から得られる前記硬貨の径と前記陰影画像から得られる前記硬貨の径との差に基づいて前記硬貨の周縁における摩耗又は変形の有無を判定する判定ステップと、を有することを特徴とする。
【0018】
また、本発明は、硬貨周縁のエッジ部における摩耗又は変形を検出する方法であって、硬貨径よりも大きい円環状のローアングル光源部が、硬貨面に対して0度を超えて45度以下の範囲内の照射角度で光を照射するとともに、撮像部が、前記ローアングル光源部により照明された前記硬貨のローアングル全体反射画像を撮像する第一の撮像ステップと、ハイアングル光源部が、硬貨面に対して45度を超えて90度以下の範囲内の照射角度で光を照射するとともに、撮像部が、前記ハイアングル光源部により照明された前記硬貨のハイアングル全体反射画像を撮像する第二の撮像ステップと、判定部が、前記ローアングル全体反射画像の硬貨径と前記ハイアングル全体反射画像の硬貨径とを比較し、比較結果に基づいて前記硬貨の周縁における摩耗又は変形の有無を判定する判定ステップと、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明の硬貨摩耗又は変形検出装置、硬貨処理機、及び、硬貨摩耗又は変形検出方法によれば、硬貨周縁のエッジ部の摩耗又は変形を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】(a)~(d)は、硬貨の形状の一例を示した図であり、(a)は、円形硬貨の平面図であり、(b)は、多角形硬貨の平面図であり、(c)は、円形硬貨又は多角形硬貨の断面図であり、(d)は、(c)中の点線で囲んだ部分を拡大して示した断面図である。
【
図2】実施形態1の硬貨摩耗又は変形検出装置が備える光学センサの斜視模式図である。
【
図3】
図2の光学センサの搬送面を示す平面模式図である。
【
図4】
図2の光学センサから搬送路側カバーを取り外して内部構造を示した図である。
【
図6】撮像部によって撮像される硬貨の全体反射画像の例を示した模式図であり、(a)は、硬貨周縁のエッジ部が摩耗した硬貨(摩耗貨)を示し、(b)は、硬貨周縁のエッジ部が摩耗していない硬貨(正常貨)を示している。
【
図7】硬貨周縁のエッジ部における摩耗が発生した硬貨と、全体反射画像の硬貨径Φ1及び全体反射画像の環状明部に囲まれた中央暗部の径Φ2との関係を示す図である。
【
図8】実施形態1の硬貨摩耗又は変形検出装置の機能的な構成の一例を説明するブロック図である。
【
図11】実施形態1の硬貨処理機の処理機本体を処理機枠体から引き出した状態の平面図である。
【
図13】実施形態2の硬貨摩耗又は変形検出装置が備える光学センサの断面模式図である。
【
図14】(a)は、硬貨の陰影画像を取得する透過光撮像部における透過光の受光パターンを示す図であり、(b)は、反射光撮像部で得られる硬貨の反射光画像と、透過光撮像部で得られる硬貨の陰影画像を比較して示した図である。
【
図15】実施形態2の硬貨摩耗又は変形検出装置の機能的な構成の一例を説明するブロック図である。
【
図16】実施形態2の変形例の硬貨摩耗又は変形検出装置が備える光学センサの断面模式図である。
【
図17】実施形態2の変形例においてビームスプリッターの下方に配置される反射光撮像部の反射光の受光パターンを示す図である。
【
図18】実施形態3の硬貨摩耗又は変形検出装置が備える光学センサの断面模式図である。
【
図19】ローアングル全体反射画像とハイアングル全体反射画像とを比較して示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明に係る硬貨摩耗又は変形検出装置及び硬貨摩耗又は変形検出方法の実施形態を詳細に説明する。なお、本発明に係る硬貨摩耗又は変形検出装置及び硬貨摩耗又は変形検出方法は、硬貨の摩耗、欠け等の硬貨周縁で生じる変形全般の検出に適用することが可能なものであるが、以下の実施形態1~3では、説明の便宜上、硬貨の摩耗を検出する場合を中心に説明する。
【0022】
(実施形態1)
実施形態1の硬貨摩耗又は変形検出装置は、光源部及び撮像部を含む光学センサにより硬貨を撮像し、取得した硬貨の全体反射画像を基に、硬貨周縁のエッジ部における摩耗又は変形を検出するものである。なお、本明細書において「硬貨」とは、硬貨及びそれに類似する大きさ及び形状を有する媒体全般を意味し、金属製の貨幣だけでなく、メダルや、樹脂製の貨幣(樹脂コイン)等も含まれる。
図1(a)~(d)は、硬貨の形状の一例を示した図であり、
図1(a)は、円形硬貨の平面図であり、
図1(b)は、多角形硬貨の平面図であり、
図1(c)は、円形硬貨又は多角形硬貨の断面図であり、
図1(d)は、
図1(c)中の点線で囲んだ部分を拡大して示した断面図である。
図1(a)及び(b)に示すように、硬貨周縁100aとは、硬貨100を平面視したときに硬貨面の輪郭を形成する外縁を指し、
図1(c)に示すように、硬貨周縁のエッジ部100bとは、硬貨100の硬貨面と側面とで形成される角部を指す。すなわち、実施形態1の硬貨摩耗又は変形検出装置が検出する「硬貨周縁のエッジ部」とは、硬貨面に施された模様の凹凸によるエッジとは異なるものである。
図1(d)は、摩耗後の硬貨周縁のエッジ部100bの断面形状を示しており、比較のため、二点破線によって摩耗前の断面形状が示されている。
図1(d)に示すように、摩耗していない硬貨周縁のエッジ部100bは、断面視したときに直角又は略直角であるが、長期使用等によって摩耗した硬貨周縁のエッジ部100bは、角が面取りされて曲面状である。
【0023】
まず、
図2~5を用いて、実施形態1の硬貨摩耗又は変形検出装置が備える光学センサの構成について説明する。
図2は、実施形態1の硬貨摩耗又は変形検出装置が備える光学センサの斜視模式図である。
図3は、
図2の光学センサの搬送面を示す平面模式図である。
図4は、
図2の光学センサから搬送路側カバーを取り外して内部構造を示した図である。
図5は、
図2の光学センサの断面模式図である。
図2及び4中の矢印は、搬送路を上流側から下流側に向かって通過する硬貨100の搬送方向を示している。
【0024】
硬貨100は、搬送路に沿って搬送面の上方に張られた搬送ベルト21aと、搬送ベルト21aに対して一定間隔で固定された搬送ピン21bとを含む搬送部21により搬送され、光学センサ20を通過する。搬送ベルト21aは、プーリー、モータ等を備える駆動装置によって駆動される。円柱状の搬送ピン21bが硬貨100の外縁部に接触し、搬送ベルト21aが移動することによって、硬貨100は、一枚ずつ間隔を空けて搬送路上を搬送される。なお、搬送部21の構成は、硬貨100を搬送することができるものであれば図示した構成に限定されず、搬送ピン21bを省略して搬送ベルト21aのみとしてもよいし、搬送ピン21bの形状及び大きさを変更してもよい。搬送ピン21bが省略される場合には、搬送ベルト21aが硬貨100の上面を押さえつつ硬貨100とともに移動する。搬送ベルト21aを設けることにより、搬送路の表面や搬送ガイド28に硬貨100を接触させた状態で摺動させることができるので、光学センサ20による検出の精度を向上することができる。硬貨100は、搬送路の端部に片寄せされた状態で、すなわち、硬貨100の端面が搬送ガイド28に接触した状態で、搬送面上を摺動することが好ましい。
【0025】
光学センサ20は、撮像領域22aに対応して設けられた円形の平面形状を有する透明部22の下方に、撮像領域22aを照明する光源部23と、撮像領域22aを撮像する撮像部24とを有する。上記構成により、透明部22上を通過する硬貨100を照明しつつ撮像することができる。
【0026】
具体的には、上方が開口した箱状の筐体26の内部に、光源部23及び撮像部24が設置され、筐体26の上部に、搬送路側カバー27及び搬送ガイド28が取り付けられる。搬送路側カバー27の中央には、上記透明部22が設けられている。透明部22の材質は、強度及び透明性に優れていることが望ましく、サファイヤガラスが好適に用いられる。透明部22の寸法は、撮像対象となる1種以上の硬貨100のうちで最大径を有する硬貨の径よりも大きいことが望ましい。搬送ガイド28は、搬送路側カバー27の上面よりも突出するように設けられており、硬貨100が通過する搬送路の幅を規定する側壁として機能する。搬送路側カバー27及び搬送ガイド28の材質は特に限定されず、硬質樹脂、セラミック、金属等で構成される。
【0027】
光源部23は、平面視において撮像領域22aの中心を囲むように配置された複数の発光素子23aと、発光素子23aの上に配置された円環状のプリズム(導光体)23bと、を含む円環状照明である。円環状照明の径は、撮像対象となる1種以上の硬貨100のうちで最大径を有する硬貨の径よりも大きくされる。このような円環状照明を用いることにより、撮像領域22aを通過する硬貨100を周囲から均一に照明することができるので、硬貨100の全周の周縁について鮮明な画像を撮影することができる。
【0028】
図5中の二点鎖線は、光源部23が発した光の光路を示している。図示されているように、光源部23は、硬貨面(透明部22の上面)に対する照射角度が0度を超えて45度以下の範囲内で光を照射する。照射角度が45度を超えると、硬貨周縁のエッジ部100bが摩耗している場合に得られる反射光量が少なくなるため、摩耗の有無を判定し難くなる。光源部23の硬貨面に対する照射角度は、20~25度の範囲内であることが好ましい。なお、本明細書において、硬貨面に対する照射角度が0度を超えて45度以下の範囲内で光を照射する光源部を「ローアングル光源部」ともいい、硬貨面に対する照射角度が45度を超えて90度以下の範囲内で光を照射する光源部を「ハイアングル光源部」ともいう。上記のように、実施形態1では、ローアングル光源部が用いられる。
【0029】
発光素子23aとしては、発光ダイオード(LED)が好適である。複数の発光素子23aが発する光の波長域は特に限定されず、赤外光、可視光等を用いることができ、硬貨100の色の検知能力を高める観点からは、白色光が好適である。また、複数の発光素子23aの各々が異なる波長域の光を発してもよく、例えば、赤色、緑色及び青色の光をそれぞれ照射する3種のLEDで白色光を得てもよい。各発光素子23aの発光面は上方に設けられ、発光素子23aが発した光は、プリズム23bに入射する。プリズム23bは、
図4に示したように、発光素子23aの発光面に対向する下面(入光面)と、下面から入射した上方へ向かう光を撮像領域22aの方向へ反射させる反射面と、撮像領域22aに対向する出光面とを有する。プリズム23bの出光面と撮像領域22aとの間には、光を拡散させる機能を有する円環状の光拡散フィルムを設けてもよい。
【0030】
撮像部24は、光源部23により照明された硬貨100の全体反射画像を撮像するものであり、CMOSイメージセンサ、CCDイメージセンサ等が配置された光電変換部24aと、撮像領域22aを通過する硬貨100で反射された光を受光して光電変換部24aの受光面に結像させるレンズユニット24bとを含む。撮像部24は、撮像領域22aの法線方向に配置されることが好ましい。
【0031】
図6は、撮像部24によって撮像される硬貨100の全体反射画像110の例を示した模式図である。ローアングル光源部により照明した場合には、硬貨面に対する照射角度が小さいことから、硬貨周縁のエッジ部100bが摩耗していると、摩耗した部分での反射光量が大きくなる。したがって、全体反射画像110における周縁の輝度分布に基づいて硬貨100の周縁における摩耗の有無を判定することができる。上記周縁の輝度分布としては、例えば、上記周縁の輝度の大きさや、上記周縁の高輝度領域の大きさを利用することができる。本実施形態では、全体反射画像110の周縁に形成される環状明部(輝度が所定のしきい値よりも高い環状の領域)110bを利用する。硬貨周縁のエッジ部100bにおける摩耗の発生量が大きいほど、全体反射画像110の周縁に位置する環状明部110bの幅が大きくなる。例えば、硬貨周縁のエッジ部100bが摩耗した硬貨(以下、「摩耗貨」ともいう)の場合には、エッジ部100bの摩耗した部分により光が反射されるため、
図6(a)に示したように環状明部110bの幅が大きい。一方、硬貨周縁のエッジ部100bが摩耗していない硬貨(以下、「正常貨」ともいう)の場合、
図6(b)に示したように環状明部110bの幅が小さい。
【0032】
判定方法の具体例としては、硬貨100の全体反射画像110から環状明部110bの幅を測定し、予め設定した環状明部110bの幅の基準値と比較する方法が挙げられる。環状明部110bの幅は、例えば、全体反射画像110の硬貨径Φ1と、全体反射画像の環状明部110bに囲まれた中央暗部の径Φ2との差から求めることができる。
図7に示すように、全体反射画像110に含まれる環状明部110bの幅(Φ1-Φ2)は、硬貨周縁のエッジ部100bにおける摩耗が発生した部分の幅に対応する。
【0033】
図6(a)に示した摩耗貨の全体反射画像110から測定される環状明部110bの幅は、以下のように求められる。
(21mm(Φ1)-19mm(Φ2))/2=1mm(環状明部の幅)
【0034】
一方、
図6(b)に示した正常貨の全体反射画像110から測定される環状明部110bの幅は、以下のように求められる。
(21mm(Φ1)-20.4mm(Φ2))/2=0.3mm(環状明部の幅)
【0035】
次に、
図8に示すブロック図を用いて、実施形態1の硬貨摩耗又は変形検出装置の機能的な構成の一例を説明する。
図8に示す例では、硬貨摩耗又は変形検出装置は、搬送部21、光源部23(発光素子23a)、撮像素子24といった既出の構成要素に加え、制御部30、記憶部50及び判定部70を備える。
【0036】
制御部30は、搬送制御部31、撮像制御部33及び画像検出部34を含む。搬送制御部31は、搬送ベルト21a等で構成される搬送部21による硬貨100の搬送を制御する。撮像制御部33は、発光素子23aの発光タイミング及び撮像部24の撮影タイミングを制御し、両者を同期させる。画像検出部34は、撮像部24の出力に基づいて硬貨100の全体反射画像110を作成する。なお、制御部30と、発光素子23a、撮像部24等のセンサ構成部材との間には、適宜、増幅回路、フィルタ回路、AD変換回路、駆動回路等の硬貨処理機の分野において一般的な回路が介在してもよい。
【0037】
記憶部50は、硬貨摩耗又は変形検出装置で行われる処理に必要な各種のデータを記憶するために利用され、具体的には、環状明部110bの幅の基準値51等の処理対象の硬貨100に関する硬貨情報を予め格納しており、硬貨100の処理に伴い、硬貨100の全体反射画像110や、硬貨100の全体反射画像110から測定された環状明部110bの幅の測定値52を格納する。なお、環状明部110bの幅の基準値51は、処理対象の硬貨100の種類(金種)ごとに準備されることが好ましい。この場合、硬貨摩耗又は変形検出装置における摩耗の有無の判定前に、硬貨摩耗又は変形検出装置が組み込まれる硬貨処理機内において金種判定が先行して行われることが好ましい。
【0038】
判定部70は、硬貨100の全体反射画像110における周縁の輝度分布に基づいて硬貨100の周縁における摩耗の有無を判定するために利用され、具体的には、全体反射画像110から環状明部110bの幅の測定値52を取得する測定部71と、得られた測定値52と環状明部110bの幅の基準値51とを比較する比較部76とを含む。測定部71は、全体反射画像110の硬貨径と、環状明部110bに囲まれた全体反射画像110の中央暗部(輝度が所定のしきい値よりも低い領域)の径との差から、環状明部110bの幅の測定値52を取得する。比較部76で得られた比較結果により、硬貨100の周縁における摩耗の有無が判定される。
【0039】
制御部30及び判定部70の物理的な構成としては、例えば、各種の処理を実現するためのソフトウェアプログラム、当該ソフトウェアプログラムを実行するCPU(中央処理装置)、当該CPUによって制御される各種ハードウェア、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の論理デバイス等を含むものが挙げられる。各部の動作に必要なソフトウェアプログラムやデータの保存には、記憶部50や、別途専用に設けられたRAMやROM等のメモリ、ハードディスク等が利用される。
【0040】
記憶部50の物理的な構成としては、例えば、揮発性又は不揮発性のメモリやハードディスク等の記憶装置が挙げられる。
【0041】
実施形態1の硬貨摩耗検出装置は、上記機能的構成を備えることから、以下の処理フローを実施できる。
まず、光源部23が、硬貨面に対して0度を超えて45度以下の範囲内の照射角度で光を照射するとともに、撮像部24が、光源部23により照明された硬貨100の全体反射画像を撮像する撮像ステップが実施される。続いて、判定部70が、撮像部24で撮像された全体反射画像110における周縁の輝度分布に基づいて硬貨100の周縁における摩耗の有無を判定する判定ステップが実施される。
【0042】
実施形態1の硬貨摩耗又は変形検出装置は、硬貨を識別及び計数するために利用される硬貨処理機内に設けられてもよい。ここで、硬貨摩耗又は変形検出装置は、硬貨処理機から着脱可能に構成されたユニット部品であってもよいし、硬貨処理機と一体不可分に構成された硬貨処理機の一部分であってもよい。
【0043】
以下、
図9~12を用いて、実施形態1の硬貨摩耗又は変形検出装置が組み込まれた硬貨処理機の構成の一例について説明する。
図9は、実施形態1の硬貨処理機の断面図、
図10は、実施形態1の硬貨処理機の斜視図、
図11は、実施形態1の硬貨処理機の処理機本体を処理機枠体から引き出した状態の平面図、
図12(a)は、
図11のA-A断面図、
図12(b)は、
図11のB-B断面図である。
【0044】
処理機枠体511内に処理機枠体511の前面開口を通じて処理機本体512が装着されているとともに、処理機枠体511の両側内壁面に配設された両側のガイドレール機構513によって処理機本体512が処理機枠体511に対して引き出し可能に支持されている。
【0045】
処理機本体512の前部512aには、前面側上部位置で、上面右側に硬貨受入口525が形成されているとともに、上面左側に操作部526が形成され、さらに、前面下部位置で、左側寄りに受皿状の硬貨払出口527が形成され、右側に着脱収納箱528が着脱自在すなわち前方へ引出可能に配設され、中央に電源スイッチ529が配設されている。
【0046】
硬貨受入口525は、処理機本体512内に投入される硬貨を受け入れるもので、底面が開口形成されている。硬貨払出口527は、処理機本体512内からの硬貨が払い出されるものである。
【0047】
また、処理機本体512は、硬貨を金種別に区分収納する金種別収納部541を有し、硬貨受入口525ヘ投入された硬貨を1枚ずつ繰り込んで金種別収納部541へ分類収納する入金機構、出金指令に応じて金種別収納部541から必要な硬貨を繰り出して硬貨払出口527へ払い出す出金機構、硬貨回収指令に応じて金種別収納部541から硬貨を繰り出して硬貨払出口527ヘ回収する回収機構を有している。
【0048】
硬貨受入口525の下側に硬貨受入口525の底面を構成する平ベルト542が前後方向に沿って配設され、この平ベルト542は後方の繰り込み方向に上昇傾斜され、平ベルト542の回転駆動によって平ベルト542上の硬貨が後方へ繰り込み搬送される。この平ベルト542の後端側上方には、平ベルト542の上面の回転方向と逆方向に逆転駆動されて平ベルト542上に載った硬貨が厚み方向に1枚ずつ通過するように規制する逆転ローラ543が配設されている。
【0049】
平ベルト542の後端は硬貨通路544の入口に接続されている。この硬貨通路544は、処理機本体512の右側に沿って配設される硬貨識別通路部545及び処理機本体512の後側に沿って配設される金種別硬貨選別通路部546を有し、全体としてほぼL字状に形成されている。硬貨通路544は、通路底面を構成する通路板547上でかつ通路両側を構成する両側のガイド側板548及び549間に形成され、硬貨識別通路部545及び金種別硬貨選別通路部546の上方に沿ってそれぞれ張設される搬送ベルト550、551及び552によって硬貨が搬送される。なお、搬送ベルト550、551及び552による硬貨の搬送速度は平ベルト542による硬貨の繰り込み速度より速く、硬貨通路544内に繰り込まれた硬貨は1枚ずつ前後の間隔があけられた状態で搬送される。
【0050】
硬貨識別通路部545には、一側のガイド側板548が通路中央側に突出して硬貨が接触しながら搬送される基準縁548aとされ、この基準縁548aに対応して、硬貨識別部(磁気センサ)553、光学センサ20及び硬貨選別部554が順に配設されている。なお、通常の搬送では、硬貨識別部553が光学センサ20の上流に位置するが、硬貨処理機は搬送方向を双方向に切り換え可能であり、逆搬送では、光学センサ20が硬貨識別部553の上流に位置することになる。硬貨識別部553では、硬貨の材質、直径、孔の有無等から正常、異常及び金種が識別される。硬貨選別部554は、光学センサ20で摩耗貨や変形貨、硬貨識別部553で異常硬貨及び金種別収納部541が満杯になったときのオーバーフロー硬貨等が識別されたとき、それら硬貨を強制的に落下させて選別するもので、通路板547に選別孔555が形成され、この選別孔555内に、ソレノイドSD1によって通路幅方向で通路内外に進退移動されるシャッタ556が配置されている。選別孔555の下側には選別孔555から落下した硬貨を着脱収納箱528に導くシュート557が取り付けられている。そして、通常はシャッタ556が通路内に進入した状態にあって硬貨の通過が許容され、また、光学センサ20で摩耗貨や変形貨、硬貨識別部553で異常硬貨及びオーバーフロー硬貨が識別された場合にシャッタ556が通路外に退避され、硬貨が選別孔555から落下されて下方の着脱収納箱528に収納される。このように、硬貨処理機は、判定部により摩耗有り又は変形有りと判定された硬貨(摩耗貨や変形貨)を除去するリジェクト(排出)部を有するものである。
【0051】
金種別硬貨選別通路部546は、他側のガイド側板549が通路中央側に突出して基準縁549aとされ、この基準縁549aに沿って上流側の小径硬貨から下流側の大径硬貨の順に金種別に径選別する選別孔558が形成されている。各選別孔558から落下された硬貨は下方の金種別収納部541に金種別に区分収納される。本実施形態では、摩耗貨や変形貨が選別孔555から落下させられ、金種別硬貨選別通路部546には搬送されないことにより、硬貨の誤選別が防止されている。
【0052】
金種別収納部541は、収納部枠581によって処理機本体512の左右方向に金種別に区画形成されており、収納部枠581の上部には蓋体582によって開閉される開口部583が形成されている。各金種別収納部541の底面は平ベルト584によって構成され、この平ベルト584は前方の払出方向へ向けて上昇する傾斜状に張設されて、その払出方向に回転駆動される。
【0053】
平ベルト584の前端側上方には、平ベルト584の上面の回転方向と逆方向に逆転駆動されて平ベルト584上に載った硬貨が厚み方向に1枚ずつ通過するように規制する逆転ローラ585が配設されている。逆転ローラ585の前側には、平ベルト584によって搬送される硬貨を停止させるストッパ機構586が配設されており、このストッパ機構586は、ストッパ587及びこのストッパ587を硬貨の搬送領域に対して進退させるソレノイドSD3を有している。ストッパ機構586の前側には、ストッパ機構586を通過して放出される硬貨を検知するフォトセンサにて構成された計数センサ588が配設されている。
【0054】
各金種別収納部541から硬貨が放出される前側位置には、各金種別収納部541から放出された硬貨を硬貨払出口527に導くシュート589が配設されている。
【0055】
硬貨処理機の使用状態では、硬貨処理機がレジ台の上面に載せられ、硬貨処理機上にキャッシュレジスタ607が載せられて使用される。
【0056】
(実施形態2)
実施形態2の硬貨摩耗又は変形検出装置は、ローアングル光源部の代わりにハイアングル光源部を備え、硬貨の反射光画像から得られる硬貨100の径と硬貨の陰影画像から得られる硬貨100の径を比較して摩耗又は変形の有無の判定を行う点で、実施形態1の硬貨摩耗又は変形検出装置とは異なる。以下、実施形態2の硬貨摩耗又は変形検出装置について具体的に説明するが、実施形態1の硬貨摩耗又は変形検出装置と共通する事項については、適宜説明を省略する。
【0057】
図13は、実施形態2の硬貨摩耗又は変形検出装置が備える光学センサ220の断面模式図である。
図14(a)は、硬貨の陰影を取得する透過光撮像部における透過光の受光パターンを示す図であり、
図14(b)は、反射光撮像部で得られる硬貨の反射光画像と、透過光撮像部で得られる硬貨の陰影画像を比較して示した図である。
図15は、実施形態2の硬貨摩耗又は変形検出装置の機能的な構成の一例を示すブロック図である。図中の二点鎖線は、ハイアングル光源部223の面発光光源(図示せず)が発した光が硬貨100に入射するまでの光路を示し、点線は、硬貨100で反射された光の光路を示している。
【0058】
光学センサ220が備えるハイアングル光源部223は、面発光光源の光をビームスプリッター223bで反射させる構成を有し、透明部22の下方側の法線方向から硬貨100の全面を照明する。実施形態2で用いられるハイアングル光源部223は、硬貨面に対する照射角度が80~90度の範囲内であることが好ましい。
【0059】
上記面発光光源は特に限定されないが、例えば、表面に複数の発光素子(LED)が実装された発光基板が用いられる。ビームスプリッター223bは、面発光光源から入射した光を撮像領域に向けて反射させ、かつ、撮像領域を通過する硬貨100の表面で反射された光を透過させる。ビームスプリッター223bを透過した光が反射光撮像部224aにより受光される。ビームスプリッター223bは、面発光光源から発せられた光の進行方向、及び硬貨100の搬送面に対して、斜め方向に向けられた反射面を有し、例えば、
図13に示すように、硬貨100の搬送面に対して45°に傾斜する反射面が設けられる。なお、ビームスプリッター223bは、入射光を反射させる機能と透過させる機能の両方を有するものであればよく、透過光と反射光の割合は特に限定されないが、透過光と反射光の割合が1:1となる特性を示すハーフミラーが好適に用いられる。
【0060】
光学センサ220は、ハイアングル光源部223により照明された硬貨の反射光を受光する反射光撮像部224aと、硬貨面を含む領域の透過光を受光する透過光撮像部224bとを備える。反射光撮像部224aは、実施形態1と同様に、CMOSイメージセンサ等が配置された光電変換部24aと、撮像領域を通過する硬貨100で反射された光を受光して光電変換部24aの受光面に結像させるレンズユニット24bとを含む。
図15に示したように、反射光撮像部224aで得られた反射光の受光パターンから、反射光画像検出部234aにより、実施形態1と同様にして硬貨100の反射光画像110Rを作成することができ、測定部71によって反射光画像110Rに基づき硬貨100の径Aが測定される。
【0061】
透過光撮像部224bには、エリアフォトセンサが用いられる。
図14(a)に示したように、硬貨100は光を透過しないので、透過光撮像部224bには、硬貨100と重なり合わなかった領域のみに透過光が入射する。したがって、透過光撮像部224bが受光しなかった領域を硬貨100が存在する領域とみなすことができる。透過光撮像部224bで得られた透過光の受光パターンから、陰影画像検出部234bにより、実施形態1と同様にして硬貨100の陰影画像110Tを作成することができ、測定部71によって硬貨100の径Bが測定される。
【0062】
本実施形態では、硬貨周縁のエッジ部100bにおける摩耗の発生量が大きいほど、反射光画像から得られる硬貨100の径Aと陰影画像から得られる硬貨100の径Bとの差が大きくなる。すなわち、陰影画像から得られる硬貨100の径Bは、硬貨周縁のエッジ部100bにおける摩耗の程度によって変化しないのに対し、反射光画像から得られる硬貨100の径Aは、硬貨周縁のエッジ部100bが摩耗していると、小さくなる。これは、摩耗したエッジ部100bに入射した光が拡散反射され、反射光が反射光撮像部224aで受光されないためである。したがって、本実施形態においては、判定部70が、反射光画像から得られる硬貨100の径Aと陰影画像から得られる硬貨100の径Bとの差を比較する硬貨径比較部77を備え、上記差の大きさに基づいて硬貨100の周縁における摩耗の有無を判定する。
【0063】
実施形態2の硬貨摩耗又は変形検出装置は、以下の処理フローを実施できる。
まず、ハイアングル光源部223が、硬貨面に対して45度を超えて90度以下の範囲内の照射角度で光を照射するとともに、反射光撮像部224aが、ハイアングル光源部223により照明された硬貨の反射光画像を取得し、かつ透過光撮像部224bが、ハイアングル光源部223により照明された硬貨面を含む領域の透過光を受光して硬貨の陰影画像を取得する撮像ステップが実施される。続いて、判定部70が、反射光画像から得られる硬貨100の径Aと陰影画像から得られる硬貨100の径Bとの差に基づいて硬貨100の周縁における摩耗の有無を判定する判定ステップが実施される。
【0064】
(実施形態2の変形例)
図16は、実施形態2の変形例の硬貨摩耗又は変形検出装置が備える光学センサ230の断面模式図である。
図16に示したように、実施形態2の硬貨摩耗又は変形検出装置は、光電変換部24a及びレンズユニット24bを含む反射光撮像部224aに代えて、エリアフォトセンサで構成される反射光撮像部234を備える構成としてもよい。
図17に示したように、ビームスプリッター223bの下方側に配置される反射光撮像部234を設ければ、実施形態2と同様に、反射光の受光パターンから反射光画像110Rを作成し、硬貨100の径Aを測定することができる。
【0065】
(実施形態3)
実施形態3の硬貨摩耗又は変形検出装置は、ローアングル光源部及びハイアングル光源部の両方を備え、ローアングル光源部により照明された硬貨100の全体反射画像だけでなく、ハイアングル光源部により照明された硬貨100の全体反射画像を採取して摩耗の有無の判定を行う点で、実施形態1の硬貨摩耗又は変形検出装置とは異なる。以下、実施形態3の硬貨摩耗又は変形検出装置について具体的に説明するが、実施形態1の硬貨摩耗又は変形検出装置と共通する事項については、適宜説明を省略する。
【0066】
図18は、実施形態3の硬貨摩耗又は変形検出装置が備える光学センサ320の断面模式図である。
図19は、ローアングル全体反射画像とハイアングル全体反射画像とを比較して示した図である。光学センサ320が備えるローアングル光源部は、実施形態1と同様の構造を有する。ローアングル光源部によって摩耗貨を照明した場合には、摩耗したエッジ部100bにより光が拡散反射され、反射光が撮像部24に入射するため、硬貨100のローアングル全体反射画像110Lには、摩耗したエッジ部100bが含まれる。また、光学センサ320が備えるハイアングル光源部は、実施形態2と同様の構造を有するものであり、面発光光源(図示せず)からの光をビームスプリッター223bで反射させ、透明部22の下方側の法線方向から硬貨100の全面を照明する。硬貨面で反射され、ビームスプリッター223bを透過した光が撮像部24により撮像されることで、硬貨100のハイアングル全体反射画像110Hが得られる。ハイアングル光源部によって摩耗貨を照明した場合には、摩耗したエッジ部100bの反射光が撮像部24に入射しないため、硬貨100のハイアングル全体反射画像110Hには、摩耗したエッジ部100bが含まれない。
【0067】
本実施形態では、硬貨周縁のエッジ部100bにおける摩耗の発生量が大きいほど、ローアングル光源部による照明時に取得されたローアングル全体反射画像110Lの硬貨径(最外径)Dと、ハイアングル光源部による照明時に取得されたハイアングル全体反射画像110Hの硬貨径(最外径)Cとの差が大きくなる。すなわち、ローアングル全体反射画像110Lの硬貨径Dは、硬貨周縁のエッジ部100bにおける摩耗の程度によって変化しないのに対し、ハイアングル全体反射画像110Hの硬貨径Cは、硬貨周縁のエッジ部100bが摩耗していると、小さくなる。したがって、本実施形態においては、判定部が、ローアングル全体反射画像110Lの硬貨径Dと、ハイアングル全体反射画像110Hの硬貨径Cとを比較し、比較結果に基づいて、硬貨の周縁における摩耗の有無を判定する。
【0068】
実施形態3の硬貨摩耗検出装置は、以下の処理フローを実施できる。
まず、ローアングル光源部が、硬貨面に対して0度を超えて45度以下の範囲内の照射角度で光を照射するとともに、撮像部24が、ローアングル光源部により照明された硬貨100のローアングル全体反射画像110Lを撮像する第一の撮像ステップが実施される。また、第一の撮像ステップと並行して、ハイアングル光源部が、硬貨面に対して45度を超えて90度以下の範囲内の照射角度で光を照射するとともに、撮像部24が、ハイアングル光源部により照明された硬貨100のハイアングル全体反射画像110Hを撮像する第二の撮像ステップが実施される。続いて、判定部により、ローアングル光源部による照明時に取得されたローアングル全体反射画像110Lの硬貨径Dと、ハイアングル光源部による照明時に取得されたハイアングル全体反射画像110Hの硬貨径Cとを比較し、比較結果に基づいて硬貨100の周縁における摩耗の有無を判定する判定ステップが実施される。
【0069】
以上、本発明に係る硬貨摩耗又は変形検出装置及び硬貨摩耗又は変形検出方法の実施形態を説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態の構成は、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜削除されてもよいし、変更されてもよいし、組み合わされてもよい。
【0070】
また、実施形態2及び3では、ハイアングル光源部として、ビームスプリッターを備える落射照明を用いたが、ハイアングル光源部は、ローアングル光源部と同様の円環状照明を用いてもよい。例えば、ローアングル光源部及びハイアングル光源部の両方に円環状照明を用いる場合には、複数段の円環状照明からそれぞれ異なる照射角度で硬貨に対して光を照射すればよい。
【0071】
また、本発明は、硬貨の摩耗だけでなく、欠け等の硬貨周縁で生じる変形全般の検出に適用することが可能である。硬貨の摩耗は、硬貨の周縁全体で均一に発生することが多いが、硬貨の欠けは、硬貨の周縁の一部で発生することが多いので、例えば、硬貨周縁において摩耗幅が規定以上の大きさで変化している箇所がある場合には、変形と判断する方法を用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0072】
以上のように、本発明に係る硬貨摩耗又は変形検出装置及び硬貨摩耗又は変形検出方法は、硬貨周縁のエッジ部の摩耗又は変形を検出することができ、硬貨処理機における硬貨の適切な選別に有用な技術である。
【符号の説明】
【0073】
20、220、230、320:光学センサ
21:搬送部
21a:搬送ベルト
21b:搬送ピン
22:透明部
22a:撮像領域
23:光源部
23a:発光素子
23b:プリズム(導光体)
24:撮像部
24a:光電変換部
24b:レンズユニット
26:筐体
27:搬送路側カバー
28:搬送ガイド
30:制御部
31:搬送制御部
33:撮像制御部
34:画像検出部
50:記憶部
51:基準値
52:測定値
70:判定部
71:測定部
76:比較部
77:硬貨径比較部
100:硬貨
100a:硬貨周縁
100b:エッジ部
110:全体反射画像
110b:環状明部
110H:ハイアングル全体反射画像
110L:ローアングル全体反射画像
110R:反射光画像
110T:陰影画像
223:ハイアングル光源部
223b:ビームスプリッター
224a、234:反射光撮像部
224b:透過光撮像部
234a:反射光画像検出部
234b:陰影画像検出部
511:処理機枠体
512:処理機本体
512a:前部
513:ガイドレール機構
525:硬貨受入口
526:操作部
527:硬貨払出口
528:着脱収納箱
529:電源スイッチ
541:金種別収納部
542:平ベルト
543:逆転ローラ
544:硬貨通路
545:硬貨識別通路部
546:金種別硬貨選別通路部
547:通路板
548、549:ガイド側板
548a、549a:基準縁
550、551、552:搬送ベルト
553:硬貨識別部
554:硬貨選別部
555、558:選別孔
556:シャッタ
557:シュート
581:収納部枠
582:蓋体
583:開口部
584:平ベルト
585:逆転ローラ
586:ストッパ機構
587:ストッパ
588:計数センサ
589:シュート
607:キャッシュレジスタ
SD1、SD3:ソレノイド