(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-02
(45)【発行日】2022-05-13
(54)【発明の名称】密閉型圧縮機及び冷凍サイクル装置
(51)【国際特許分類】
F04C 29/04 20060101AFI20220506BHJP
F04C 23/00 20060101ALI20220506BHJP
F04C 29/12 20060101ALI20220506BHJP
F04C 18/356 20060101ALI20220506BHJP
【FI】
F04C29/04 M
F04C23/00 F
F04C29/12 A
F04C29/12 F
F04C18/356 L
(21)【出願番号】P 2018081100
(22)【出願日】2018-04-20
【審査請求日】2021-03-29
(73)【特許権者】
【識別番号】505461072
【氏名又は名称】東芝キヤリア株式会社
(72)【発明者】
【氏名】平山 卓也
(72)【発明者】
【氏名】木村 茂喜
【審査官】所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】特開昭58-148295(JP,A)
【文献】実開昭59-097291(JP,U)
【文献】実開昭57-160987(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 29/04
F04C 23/00
F04C 29/12
F04C 18/356
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
密閉ケース内に
回転軸と、電動機部と、圧縮機構部を収容し、
前記圧縮機構部は、シリンダ室を有するシリンダと、
前記シリンダの一方の端面に固定され、前記シリンダ室を閉塞する閉塞部材と、
前記閉塞部材に重ねられる端板と、
前記シリンダ室内に流入した冷媒を圧縮するローラと、
前記シリンダ室内に冷媒を供給するインジェクション流路と、
前記インジェクション流路に設けられた逆止弁装置と、
を有し、
前記インジェクション流路は、前記閉塞部材に設けられ一端が前記シリンダ室に開口し、
他端が前記端板側に開口する注入路と、
前記閉塞部材と前記端板との間に形成され、前記注入路と連通する連通路と、
前記閉塞部材あるいは前記端板のどちらか一方に設けられ、一端側が前記連通路に前記閉塞部材と前記端板とが重なる方向に開口し、他端に前記密閉ケース外部に連通するインジェクション導入管が接続される導入路と、から構成され、
前記逆止弁装置は、前記導入路を開閉するリード弁と、前記リード弁の開度を規制する弁押さえと、前記リード弁と前記弁押さえを固定する固定部材を備え、前記リード弁と前記弁押さえは前記導入路が設けられる前記閉塞部材または前記端板に固定される密閉型圧縮機。
【請求項2】
前記リード弁の弁座面が、前記閉塞部材と前記端板の接合面と同一面である請求項1に記載の密閉型圧縮機。
【請求項3】
前記シリンダ室で圧縮された冷媒を密閉ケース内に吐出する吐出孔と、前記吐出孔を開閉する吐出弁とを備え、
前記逆止弁装置は、前記吐出弁が前記吐出孔を開く差圧よりも大きい差圧で前記導入路の連通路側開口部を開くように構成されている請求項1または請求項2に記載の密閉型圧縮機。
【請求項4】
前記リード弁は前記固定部材により固定される固定支持部と、前記導入路の連通路側開口部を開閉する開閉部と、前記固定支持部と前記開閉部を連結するリード部とを有し、前記固定支持部は、前記シリンダ室よりも前記回転軸の径方向外側に配置されるとともに、前記回転軸の軸方向から見て前記インジェクション流路に重ならない位置に設けられる請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の密閉型圧縮機。
【請求項5】
前記逆止弁装置は、前記連通路内に設けられ、
前記逆止弁装置の体積は前記連通路から前記逆止弁装置の体積を除いた空間容積よりも大きい請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の密閉型圧縮機。
【請求項6】
前記連通路の少なくとも一部が、前記注入路の連通路側開口部より下方に位置する請求項5に記載の密閉型圧縮機。
【請求項7】
前記圧縮機構部は、前記シリンダを複数有し、
前記複数のシリンダの間に前記インジェクション流路を備える請求項1乃至6に記載の密閉型圧縮機。
【請求項8】
前記複数のシリンダの間に前記シリンダ室を閉塞し、回転軸の軸方向に並ぶ2つの仕切板を備え、
前記仕切板の一方は前記閉塞部材であって、他方は前記端板である請求項7に記載の密閉型圧縮機。
【請求項9】
前記注入路は一方の前記シリンダの前記シリンダ室に開口し、
前記端板に設けられ、一端が他方の前記シリンダの前記シリンダ室に開口し、他端が前記連通路に開口する補助注入路を有する請求項7または請求項8に記載の密閉型圧縮機。
【請求項10】
請求項1乃至請求項9のいずれかに記載の密閉型圧縮機と、前記密閉型圧縮機に接続される放熱器と、前記放熱器に接続される膨張装置と、前記膨張装置と前記密閉型圧縮機の間に接続される吸熱器を備える冷凍サイクル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、インジェクション流路を備えた密閉型圧縮機及び冷凍サイクル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、密閉型圧縮機において、冷却を目的として、圧縮機構部のシリンダ室に冷凍サイクル内の中間圧の液冷媒を導くインジェクション流路を備える場合がある。この中間圧の液冷媒は、シリンダ室で蒸発し、シリンダ室から吐出される吐出冷媒の温度を低下させる。
【0003】
さらに、このような密閉型圧縮機は、シリンダ室からインジェクション流路へ圧縮された冷媒が逆流することによる圧縮損失を低減するために、インジェクション流路の途中に、逆止弁を備えたものもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実開62-173585号公報
【文献】特許5760836号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1と特許文献2に記載の圧縮機のインジェクション流路は、液冷媒を圧縮機構部へ導入する導入路と、この導入路を通って導かれた液冷媒をシリンダ室に注入する注入路からなり、注入路は圧縮機の回転軸の軸方向に形成され、導入路は径方向に形成される。この場合、導入路と注入路を連通させるために、位置の設計自由度が制限されてしまう。
【0006】
また、特許文献1は、ガスインジェクション管から繋がる連通管と、シリンダ室に冷媒を注入するガスインジェクション流路と、を備える。逆止弁は連通管の流れ方向と直交する方向に設けられるため、連通管と逆止弁との間にわずかに隙間ができ、圧縮冷媒が逆流し、圧縮損失が発生してしまう。
特許文献2は、インジェクション導入路の途中にスライド弁を精度よく挿入する必要があり、製造性が極めて悪い。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、インジェクション流路の導入路と注入路の連通位置について設計自由度を高くして製造性を向上するとともに、インジェクション流路の逆止弁からの冷媒の逆流を防止して圧縮効率の高い圧縮機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を達成するために、実施形態の密閉型圧縮機は、密閉ケース内に回転軸と電動機部と圧縮機構部を収容し、圧縮機構部はシリンダ室を有するシリンダと、シリンダの一方の端面に固定され、 シリンダ室を閉塞する閉塞部材と、閉塞部材に重ねられる端板と、シリンダ室内に流入した冷媒を圧縮するローラと、シリンダ室内に冷媒を供給するインジェクション流路と、インジェクション流路に設けられた逆止弁装置と、を有する。インジェクション流路は、閉塞部材に設けられ一端がシリンダ室に開口し、他端が端板側に開口する注入路と、閉塞部材と端板との間に形成され、注入路と連通する連通路と、閉塞部材あるいは端板のどちらか一方に設けられ、一端側が連通路に閉塞部材と前記端板とが重なる方向に開口し、他端に密閉ケース外部に連通するインジェクション導入管が接続される導入路と、から構成される。さらに、逆止弁装置は、導入路を開閉するリード弁と、リード弁の開度を規制する弁押さえと、リード弁と弁押さえを導入路が設けられる閉塞部材と端板の一方に固定する固定部材を備え、リード弁は固定部材により固定される固定支持部と、導入路の連通路側開口部を開閉する開閉部と、前記固定支持部と前記開閉部を連結するリード部とからなる密閉型圧縮機。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1の実施形態に係る密閉型圧縮機の内部構造を示す図及び冷凍サイクル装置の冷凍サイクル構成図である。
【
図2】同実施形態に係る圧縮機構部の平面図である。
【
図4】同実施形態に係る逆止弁装置が閉じているときのインジェクション流路の構造を示す図である。
【
図5】同実施形態に係る逆止弁装置が開いているときのインジェクション回路の構造を示す図である。
【
図6】同実施形態に係るインジェクション流路と逆止弁装置の位置関係を示す図である。
【
図7】第2の実施形態に係る密閉型圧縮機の内部構造を示す図及び冷凍サイクル装置の冷凍サイクル構成図である。
【
図8】同実施形態に係る逆止弁装置が開いているときのインジェクション回路の構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、発明を実施するための実施形態について説明する。
(第1の実施形態)
第1の実施形態の密閉型圧縮機について、
図1乃至
図6を参照して説明する。
図1は、密閉型圧縮機の内部構造を示す図及び冷凍サイクル装置の冷凍サイクル構成図である。
まず、冷凍サイクル1を説明する。冷凍サイクル1は、密閉型圧縮機2(以下、圧縮機という。)と、放熱器である凝縮器3と、膨張装置4と、吸熱器である蒸発器5と、圧縮機2に取り付けられるアキュームレータ6が冷媒配管で順に接続される。圧縮機2はガス冷媒を圧縮し、凝縮器3は圧縮機2から吐出されるガス冷媒を凝縮して液冷媒にする。膨張装置4は冷媒を減圧する減圧器である。蒸発器5は液冷媒を蒸発してガス冷媒にする。アキュームレータ6はガス冷媒と液冷媒とを分離し、ガス冷媒を圧縮機2に供給する。第1の実施形態の冷凍サイクル1では、凝縮器3を通った液冷媒を圧縮機2へ導くためのインジェクション管7が設けられ、圧縮機2に備えられるインジェクション流路40と連通する。
【0011】
圧縮機2は密閉ケース10と、密閉ケース10の上部側に設けられた電動機部14と下部側に設けられた圧縮機構部17を備えている。電動機部14は、密閉ケース10内に固定されたステータ(固定子)15と、回転軸12に固定されたロータ(回転子)16を有する。回転軸12には電動機部14の反対側に偏心部13が設けられ、偏心部13に対応する位置に圧縮機構部17が備えられる。したがって、電動機部14と圧縮機構部17は回転軸12で連結されている。
【0012】
圧縮機構部17は密閉ケース10に固定されたシリンダ18を有する。シリンダ18の内側にはシリンダ室19が形成される。シリンダ18の上下に主軸受25と、閉塞部材である副軸受26とが配置される。主軸受25のフランジ部25fには、この周囲を囲む中空のケースで、マフラ室28を形成するマフラ27が取り付けられている。
【0013】
シリンダ室19内には回転軸12の偏心部13が位置し、偏心部13にはローラ22が回転自在に嵌合されている。ローラ22は回転軸12の回転時に外周壁をシリンダ18の内周面に油膜を介して線接触させながら偏心回転するように配置されている。シリンダ18には、ブレード溝24が形成されている。ブレード溝24内には往復動しながら、
図2に示すように先端部をローラ22の外周壁に当接させる方向に押圧されるブレード23が収容されている。ブレード23はシリンダ室19を2つの空間19a,19bに仕切っている。
【0014】
さらに、シリンダ18には、アキュームレータ6から供給されるガス冷媒をシリンダ室19に導く吸込みポート20が形成され、ブレード23によって仕切られた空間のうち、吸込みポート20が位置する方を吸込み室19a、他方を圧縮室19bという。すなわち、
図2に示すように、平面視でローラ22は反時計回りに回転する。このとき吸込みポート20はブレード23の左側に設けられ、シリンダ室19の左側が吸込み室19a、右側が圧縮室19bとなる。
【0015】
また、主軸受25には
図3に示す吐出ポート25aと、この吐出ポート25aを上方向から開閉する吐出弁25bが設けられている。吐出弁25bはリード弁である。吐出ポート25aは、シリンダ室19で圧縮された冷媒をマフラ27を介して密閉ケース10内に吐出する。吐出弁25bは、圧縮室19bと密閉ケース25bの差圧により吐出ポート25aを開閉する。つまり、吐出弁25bは、圧縮室19bの圧力が密閉ケース10内の圧力より所定値以上高くなったとき吐出ポート25aを開口する。
密閉ケース10内に吐出された圧縮冷媒は吐出管11を通って圧縮機2外部へ吐出される。
なお、吐出ポートを副軸受26に設けても良い。このとき、副軸受26のフランジ部26fに図示しないマフラと、このマフラが形成するマフラ室と主軸受25のフランジ部25fに設けられたマフラ27のマフラ室28とを連通する通路をシリンダ18および主軸受25に貫通するように設け、副軸受26の吐出ポートからマフラ室に吐出された圧縮冷媒を通路を介して主軸受25側のマフラ室28の圧縮冷媒と合流させる構成とする。
【0016】
次にインジェクション管7及びインジェクション流路40について説明する。前述したように、第1の実施形態のインジェクション管7は、冷凍サイクル1の凝縮器3で凝縮された液冷媒を圧縮機2に導く。インジェクション管7を通った液冷媒は、インジェクション流路40に流入し、シリンダ室19に注入される。
【0017】
図4及び
図5は逆止弁装置44のリード弁60が伸びる方向に沿った縦断面図である。なお、一点鎖線で示した箇所は想像線である。インジェクション流路40は、注入路41と、連通路42と、導入路49とから構成されている。それぞれの流路41,42,49は、シリンダ室19の下側を閉塞する副軸受26と、副軸受26のフランジ部26fの下側に重ねられ、締結ボルト31によってシリンダ18に固定される端板30に設けられている。また、インジェクション管7には、凝縮器4の下流側から導かれる冷媒の圧力を減圧するとともに、インジェクション流量を調整する調整弁8が設けられている。
【0018】
注入路41は副軸受26に設けられ、シリンダ室19に開口する第1の開口部51と端板30側に開口する第2の開口部52を有している。シリンダ室19に中間圧の液冷媒を注入する第1の開口部51は、
図2に示すように、シリンダ室19に備えられているローラ22の下面により開閉される位置に設けられている。
【0019】
連通路42は端板30と副軸受26によって形成される。端板30の上端面に溝部43を設け、端板30と副軸受26を重ねることで溝部43が連通路42となる。連通路42は注入路41の第2の開口部52によって注入路41と連通している。
【0020】
導入路49は副軸受26の径方向に水平に設けられ、一端側に連通路42に向かって軸方向に開口する第3の開口部53を有しているとともに、他端54は副軸受26の外周面に開口している。導入路49の他端54には密閉ケース10の外部に連通するインジェクション導入管70が接続されており、インジェクション導入管70には、密閉ケース10の外部でインジェクション管7が接続されている。導入路49の第3の開口部53の断面積は注入路41の第1の開口部51の断面積よりも大きく形成される。
【0021】
連通路42内に逆止弁装置44が設けられる。逆止弁装置44は、リード弁60と、リード弁60の開度を規制する弁押さえ64と、リード弁60と弁押さえ64とを固定する固定部材65とから構成されている。リード弁60は、一端が副軸受26のフランジ部26fに固定される固定支持部61と、他端が導入路49の第3の開口部53を開閉する開閉部62と、固定支持部61と開閉部62を連結するリード部63とから構成されている。固定部材65としてはリベットを用いている。
【0022】
図4は逆止弁装置44が導入路49の第3の開口部53を閉じているときのインジェクション流路40を示し、
図5は逆止弁装置44が第3の開口部53を開いているときのインジェクション流路40を示している。
【0023】
固定支持部61は、固定部材であるリベット65で弁押さえ54とともに副軸受26のフランジ部26fに固定される。固定支持部61は導入路49が設けられる副軸受26に固定されることになり、リード弁60の固定面と逆止弁装置44の弁座面45aを同一面に設けられる。そのため、リード弁60の開閉部62を弁座面45aに対し、高精度に隙間なく位置させることができる。
図6は
図4のA―A線要部断面図であり、インジェクション流路40と逆止弁装置44の位置関係を示す図である。固定支持部61は、シリンダ室19よりも回転軸12の径方向に外側で、かつ回転軸12の軸方向から見てインジェクション流路40に重ならない位置に設けられる。固定支持部61をリベット65で固定する場合、リベット65が副軸受26を貫通して固定されるため、リベット65が導入路49を横切ることによるリークの発生や流路の障害となる恐れがあるが、上記のように配置することで、これを確実に防止することができる。
【0024】
逆止弁装置44は導入路49と連通路42の差圧により導入路49の第3の開口部53を開閉する。連通路42はシリンダ室19と注入路41を介して連通している。つまり、圧縮室19bの圧力が導入路49の圧力よりも大きいとき、逆止弁装置44は導入路49の第3の開口部53を閉じ、圧縮室19bの圧力が導入路49の圧力よりも所定値以上小さいとき、逆止弁装置44は導入路49の第3の開口部53を開く。
この所定値とは、吐出ポート25aが開く圧縮室19bの圧力と密閉ケース10内の圧力との差圧よりも大きい。逆止弁装置44と吐出ポート25aの差圧による開閉はリード弁60と吐出弁25bのそれぞれのばね定数や、弁部材の大きさ、吐出孔の大きさ等によって決まる。
【0025】
このような構成において、圧縮機2の電動機部14に通電することによりロータ16が回転する。その回転に伴って、回転軸12を介して圧縮機構部17が駆動される。圧縮機構部17が駆動されるとアキュームレータ6で分離したガス冷媒がシリンダ室19の吸込み室19aに吸い込まれる。シリンダ室19内のローラ22の回転により、ローラ22が吸込みポート20の位置を通り過ぎると同時にシリンダ18に形成される注入路41の第1の開口部51が開口される。吸込みポート20から吸込まれたガス冷媒は、ローラ22が回転することによって圧縮されるとともに、ローラ22の回転により開閉される注入路41の第1の開口部51から中間圧の液冷媒が圧縮室19bに注入され、圧縮室19bで蒸発して圧縮室19b内の冷媒を冷却し、吸込みポート20から吸込まれた冷媒と一緒に吐出ポート25aから吐出される。吐出ポート25aから吐出された冷媒は、マフラ室28を通って圧縮機2外部に吐出され、凝縮器3で凝縮された冷媒が分岐したインジェクション管7を通って圧縮機2に導かれる。
【0026】
インジェクション管7から導かれた液冷媒は、圧縮機2において、まずインジェクション流路40のインジェクション導入管70を介し、導入路49に流入する。次に導入路49の第3の開口部53に向かって流れるが、導入路49の第3の開口部53は通常、逆止弁装置44により閉口している。圧縮室19bの圧力が導入路49の圧力よりも所定値小さくなったとき、逆止弁装置44のリード弁60の開閉部62が連通路42側に押圧されて導入路49の第3の開口部53が開口される、液冷媒が連通路42に流入する。再び圧縮室19bの圧力が導入路49の圧力よりも大きくなると、逆止弁装置44が第3の開口部53を閉口する。
【0027】
導入路49の第3の開口部53から連通路42に流入した液冷媒は注入路41の第2の開口部52を通って注入路41に流入する。注入路41に流入された液冷媒は、前述したとおり、シリンダ室19内を回転するローラ22の下面により開閉する注入路41の第1の開口部51が開口したとき、シリンダ室19へ注入される。
【0028】
第1の実施形態のインジェクション流路40は、副軸受26に注入路41と導入路49を備え、端板30に連通路42を備える構成としたが、副軸受26と端板30とを組み合わせて連通路42が形成され、導入路49の第3の開口部53を軸方向に開口し、連通路42に備えた逆止弁装置44の弁座面45aが副軸受26と端板30の接合面と同一面であれば良い。例えば、副軸受26のフランジ部26fに溝部43を設け、端板30を固定して連通路42を形成する。この場合、導入路49を端板30に形成すれば、第3の開口部53は軸方向に開口し、逆止弁装置44の弁座45は、端板30の副軸受26との接合面と同一面で、第3の開口部53の上側から開閉することができる。
【0029】
第1の実施形態の圧縮機2によれば、インジェクション流路40は、導入路49と、連通路42及び注入路41から形成される。これらの流路41,42,49が副軸受26と端板30に設けられ、さらに導入路49と注入路41を連通路42で連絡する構造としたため、導入路49と注入路41の連通位置について設計自由度を高めることができる。
【0030】
導入路49と注入路41について、導入路49の第3の開口部53の断面積を注入路41の第1の開口部51の断面積よりも大きく形成する。液冷媒の導入路49側の流量を大きくして、シリンダ室19に注入されやすくなる。また、導入路49の第3の開口部53の断面を大きくすることで、液冷媒の逆止弁装置44による流路抵抗を小さくするため、流路損失を低減することができる。よって、冷却能力が向上し、信頼性の高い圧縮機となる。
さらに、シリンダ室19からの圧縮冷媒の逆流を防ぐ逆止弁装置44が、導入路49の第3の開口部を開閉するように、連通路42に軸方向に備えられるため確実に逆流を防ぐことができ、流路損失を低減できる。
【0031】
また、連通路42を形成するために副軸受26に端板30を固定する構造としたが、その接合面にはシールが必要であるため、面粗さが小さく、高精度に形成されている。この接合面に逆止弁装置44の弁座面45aを設ければ、シール性を高めることができる。
【0032】
逆止弁装置44にはリード弁60が備えられる。リード弁60は薄板状で、一端が固定支持部61で固定されるものであり、応答性に優れている。そのため、逆止弁装置44は第3の開口部53を圧縮室19bの圧力変動に伴って開閉するが、開閉のタイミングのずれを最小限にしてインジェクション流量の低下を防ぐことができる。さらに、固定支持部61で固定されているため、開閉部62が安定して第3の開口部53を開閉することができ、開閉部53の不規則な動きに起因する打痕や摩耗を防止することができる。
【0033】
また、連通路42に設けられた逆止弁装置44は、その体積Vを逆止弁装置44を構成するリード弁60と弁押さえとリベットの体積の合計とし、連通路の空間容積Cを端板に形成された溝部の大きさとする。このとき、逆止弁装置44の体積Vは、連通路42の空間容積Cから逆止弁装置44の体積Vを除いた連通路42の実質の空間容積Sよりも大きい。連通路42の逆止弁装置44を連通路42に対して大きくすることで、実質の連通路42の空間容積Sを小さくし、シリンダ室19からインジェクション流路40へ逆流する圧縮冷媒量を少なくして、圧縮損失を抑えることができる。
【0034】
第1の実施形態では、副軸受26側に導入路49と連通路42を設け、
図3に示すように連通路42が注入路41の第2の開口部52よりも下方に位置している。これにより連通路42に潤滑油が溜まり、実質の連通路42の容積Sをさらに低減でき、シリンダ室19へインジェクションしていない場合の圧縮機の性能低下を抑制できる。
【0035】
さらに
図6に示すように、注入路41はリード弁60の固定支持部61中心と導入路49の第3の開口部53の任意の点を結んだ延長線上に位置している。この範囲に注入路41を設けると、リード弁60が第3の開口部53を開口してインジェクションされるとき、連通路42に流入した冷媒が注入路41に開口する第2の開口部52に略直線的に流れるため、流路抵抗を抑えインジェクション流量の低下を防止できる。
【0036】
(第2の実施形態)
第2の実施形態の圧縮機2について
図7および
図8に基いて説明する。第1の実施形態と同一又は類似する要素には同一の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。
第2の実施形態の圧縮機2は、圧縮機構部17に2つのシリンダ18A,18Bを有し、下側にAシリンダ18Aが位置し、上側にBシリンダ18Bが位置している。2つのシリンダ18A,18Bの間には、2つのシリンダ18A,18Bを仕切り、Aシリンダ18Aのシリンダ室19Aと、Bシリンダ18Bのシリンダ室19Bとを閉塞する仕切り板32が設けられている。仕切り板32は、2つの仕切り板部材32A,32Bを重ねて形成されている。
【0037】
第2の実施形態の圧縮機2は、インジェクション流路40を仕切り板32に設ける。つまり、仕切り板32は、Bシリンダ18Bのシリンダ室19Bを閉塞する閉塞部材と、Aシリンダ18Aのシリンダ室19Aを閉塞する端板として機能する。
【0038】
図7および
図8に示すように、仕切り板部材32Bにシリンダ室19Bに液冷媒を注入する注入路41が設けられ、仕切り板部材32Aにシリンダ室19Aに液冷媒を注入する補助注入路50が設けられる。注入路41はBシリンダ18Bのシリンダ室19Bに開口する第1の開口部51と、連通路42に開口する第2の開口部52と、を形成する。補助注入路50の一端はAシリンダ18Aのシリンダ室19Aに開口する第5開口部を形成し、他端は連通路42に開口している。連通路42は仕切板部材32Bに設けられた溝部43と仕切り板部材32Aの端面を重ねて形成される。導入路49は仕切り板部材32Aに径方向に水平に設けられ、一端側に連通路42に軸方向に開口する導入路42の第3の開口部53を有し、他端54は仕切り板部材32Aの外周面に開口している。導入路49の他端54には密閉ケース10の外部に連通するインジェクション導入管70が接続されており、インジェクション導入管70には、密閉ケース10の外部でインジェクション管7が接続されている。
【0039】
第2実施形態の圧縮機2では、導入路49の第3の開口部53に対して上側に連通路4が形成される。導入路49の第3の開口部53を開閉する逆止弁装置44を連通路42に設ける。第2の実施形態の逆止弁装置44は、固定支持部61と弁押さえ64がリベット65で導入路が設けられる仕切板部材32Aに固定され、その固定面が逆止弁装置44の弁座面45aと同一面に設けられている。
【0040】
このような構成において、インジェクション管7を流れる液冷媒は、第1の実施形態と同様にして、インジェクション導入管70、導入路49、連通路42、注入路41、補助注入路50を通って、各シリンダ室19A,19Bに注入される。このとき、逆止弁装置44は導入路49の圧力と、各シリンダ室19A,19Bの圧力との差圧によって導入路49の第3の開口部53を開閉する。
【0041】
第2実施形態の圧縮機2によれば、2つのシリンダ18A,18Bを有するロータリ圧縮機であっても、2つの仕切り板部材32A,32Bからなる仕切り板32にインジェクション流路40を形成することにより、各シリンダ室19A,19Bに液冷媒を供給することができる。
【0042】
インジェクション流路40に流入した液冷媒が、注入路41と補助注入路50とに分岐する前の導入路49の第3の開口部53に逆止弁装置44を備えるため、1つの逆止弁装置44で各シリンダ室19A,19Bからの逆流を阻止できる。
【0043】
また、第1の実施形態の圧縮機と同様に、主軸受25と副軸受26に圧縮冷媒を吐出する吐出ポート25aおよび吐出弁25bと、副軸受26側のマフラ室と主軸受25側のマフラ室28とを連通する通路を設けても良い。さらに、各シリンダ18A,18Bの仕切板32の端面に吐出ポートおよび吐出弁を設け、仕切板に吐出された冷媒を通路と合流させても良い。
このとき、各吐出弁は各シリンダ室19A,19Bと密閉ケース25bの差圧により吐出ポート25aを開くとともに、インジェクション流路40に設けられる逆止弁装置44が第3の開口部53を開く差圧は、吐出ポートを開く差圧よりも大きい。
【0044】
以上説明した少なくとも一つの実施形態の圧縮機2によれば、液冷媒を圧縮機構部17のシリンダ室19に導くインジェクション流路40が、インジェクション導入管と、導入路49と、注入路41と、導入路49と、注入路41を連絡する連通路42から構成される。連通路42は閉塞部材26,32Aと端板30,32Bの2つの部材を組み合わせて形成され、導入路49は閉塞部材26,32Aまたは端板30,32Bのどちらかに形成することができ、導入路49と注入路41の連通位置について設計自由度を高めることが可能となる。連通路42に備えられる逆止弁装置44は、回転軸12の軸方向に開口する導入路49の第3の開口部53を開閉し、弁座面45aは面粗さが小さく高精度に形成された閉塞部材26,32Aと端板30,32Bと同一面に設けられているため、弁座面45aのシール性を高めることができる。したがって、逆止弁装置44からの冷媒の逆流を防止することができる。
【0045】
逆止弁装置44にリード弁60を備えたことで、インジェクション時に開閉のタイミングのずれを最小限にしてインジェクション流量の低下を防ぐことができる。さらに、開閉部62の不規則な動きに起因する打痕や摩耗を抑制できる。
逆止弁装置44は導入路49が設けられる部材に固定され、リード弁60の固定面と逆止弁装置44の弁座面45aを同一面に設けられる。リード弁60の開閉部62を弁座面45aに対し、高精度に隙間なく位置させることができる。
リード弁60の固定支持部61は、シリンダ室19よりも回転軸12の径方向に外側で、かつ回転軸12の軸方向から見てインジェクション流路40に重ならない位置に設けられる。固定支持部61を固定する固定部材65が、シリンダ室19や導入路49を覗くことによるリークの発生や流路の障害となるのを確実に防止することができる。固定部材65は実施形態ではリベットを用いたが、その他のねじ固定でも良い。
【0046】
また、連通路42に空間容積を小さくする構成とすることで、シリンダ室19からインジェクション流路40へ逆流する圧縮冷媒量を少なくして、圧縮損失を抑制するとともに、
シリンダ室19へインジェクションしていない場合の圧縮機の性能低下を抑制できる。
【0047】
また、導入路49と注入路41について、導入路49の第3の開口部53の断面積を注入路41の第1の開口部51の断面積よりも大きく形成する。これにより導入路49側の流量を大きくすることで、インジェクション流路40を流れる冷媒がシリンダ室19に注入されやすくなる。また、導入路49の第3の開口部53の断面を大きくすることで、液冷媒の逆止弁装置44による流路抵抗を小さくするため、流路損失を低減することができる。以上のような構成とすることで、冷却能力が向上し、信頼性の高い圧縮機2を提供することができる。
【0048】
実施形態の圧縮機2は複数のシリンダ19を有する場合でも適用でき、軸方向に2つの仕切り板部材32A,32Bを重ねて、それぞれにインジェクション流路40を設ける構成である。このような構造とすることで、1つの逆止弁装置44で複数のシリンダ室19からの逆流を阻止できるため、構造を簡素化した製造性が高く、低コストの圧縮機2とすることができる。
【0049】
また、実施形態の圧縮機2は、ブレード23とローラ22を用いたロータリ圧縮機としたが、ブレード23とロータ22が一体となったスイング式の圧縮機に実施形態のインジェクション流路40を形成した場合にも同等の効果が得られる。
【0050】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0051】
1…冷凍サイクル装置、2…圧縮機、3…凝縮器、4…膨張装置、5…蒸発器、6…アキュームレータ、7…インジェクション管、10…密閉ケース、12…回転軸、14…電動機部、17…圧縮機構部、18…シリンダ、19…シリンダ室、22…ローラ、23…ブレード、25…主軸受、26…副軸受、30…端板、32…仕切り板、32A,32B…仕切り板部材、40…インジェクション流路、41…注入路、42…連通路、44…逆止弁装置、47…ガイド壁、49…導入路、50…仕切り板流路、51…第1の開口部、52…第2の開口部、53…第3の開口部、54…導入路の他端、60…リード弁、61…固定支持部、62…開閉部、63…リード部、64…弁押さえ、65…リベット、C…連通路の容積、V…逆止弁装置の体積