(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-02
(45)【発行日】2022-05-13
(54)【発明の名称】ポリウレタン積層シートおよび粘着シート
(51)【国際特許分類】
B32B 27/40 20060101AFI20220506BHJP
C09J 7/29 20180101ALI20220506BHJP
C09J 7/25 20180101ALI20220506BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20220506BHJP
C09J 7/35 20180101ALI20220506BHJP
【FI】
B32B27/40
C09J7/29
C09J7/25
C09J7/38
C09J7/35
(21)【出願番号】P 2018088825
(22)【出願日】2018-05-02
【審査請求日】2021-04-13
(73)【特許権者】
【識別番号】390003562
【氏名又は名称】株式会社ニトムズ
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136423
【氏名又は名称】大井 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100154449
【氏名又は名称】谷 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100174159
【氏名又は名称】梅原 めぐみ
(72)【発明者】
【氏名】武田 安洋
(72)【発明者】
【氏名】阪下 貞二
(72)【発明者】
【氏名】小山 貴史
【審査官】吉川 潤
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/090346(WO,A1)
【文献】国際公開第2007/114295(WO,A1)
【文献】特開2009-155306(JP,A)
【文献】特開2009-292770(JP,A)
【文献】特表2002-541094(JP,A)
【文献】特開2004-182916(JP,A)
【文献】製品案内2014-2015,日本,大日精化工業株式会社,2014年05月31日,初版,第68頁,https://expydoc.com/doc/7185676/
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 27/00 - 27/40
A61K 9/70
A61F 13/02
A61L 15/58
C09J 7/00 - 7/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ポリウレタン材料からなる第1ポリウレタン層と、第2ポリウレタン材料からなる第2ポリウレタン層と、を含むポリウレタン積層シートであって、
前記第1ポリウレタン材料は水膨潤性を有し、
前記第2ポリウレタン材料は水膨潤性を有
せず、
ここで、前記水膨潤性の有無は、以下に示す水膨潤性試験の結果に基づいて判定され、
[水膨潤性試験]
試験対象材料からなる表面を有するサイズ50×50mm、厚み44μmの試験片を用意する。温度23℃、湿度50%RHの環境下において、上記試験片の表面上に、駒込ピペットを用いて温度23℃の脱イオン水を3滴落とし、5分経過後、試験片上の水分をウエスで拭き取り、直ちに試験片の形状に変化があるか否かを横から目視で観測する。その結果、試験片の形状に変化が観測された場合は水膨潤性あり、変化が観測されなかった場合は水膨潤性なしと判定する。
前記第2ポリウレタン層の厚みD
2
に対する前記第1ポリウレタン層の厚みD
1
の比であるD
1
/D
2
が2以上20以下である、
ポリウレタン積層シート。
【請求項2】
前記第1ポリウレタン材料は、厚み20μmでの透湿度が3000g/(m
2・24時間)以上であり、
前記第2ポリウレタン材料は、厚み20μmでの透湿度が2500g/(m
2・24時間)以下である、請求項1に記載のポリウレタン積層シート。
【請求項3】
前記第2ポリウレタン層の厚みD
2が8μm以下である、請求項1または2に記載のポリウレタン積層シート。
【請求項4】
前記第1ポリウレタン層の厚みD
1が10μm以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載のポリウレタン積層シート。
【請求項5】
前記第2ポリウレタン層の厚みD
2に対する前記第1ポリウレタン層の厚みD
1の比であるD
1/D
2が3~20である、請求項1~4のいずれか一項に記載のポリウレタン積層シート。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載のポリウレタン積層シートと、
前記ポリウレタン積層シートの前記第1ポリウレタン層側の表面に設けられた粘着剤層と、
を含む粘着シート。
【請求項7】
前記粘着剤層は、ホットメルト型粘着剤を含む、請求項6に記載の粘着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリウレタン積層シートに関する。本発明は、また、ポリウレタン積層シートを基材として用いた粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
蒸発する水分を透過する機能を備えた粘着シートは、高機能を有する部材として、様々な分野で日常的に用いられている。例えば、ヒトの肌に貼付する用途で用いられるサージカルドレッシング材、創傷保護テープ等の医療用または衛生材料用の粘着シートは、皮膚からの発汗による水分を外部へ蒸散できるように、高い透湿性が要求される。
【0003】
また、このような医療用や衛生材料用の粘着シートは、外部からの水、細菌、ウイルス等の侵入を阻止することができ、かつ、皮膚の曲面や動きに追随できる柔軟性と一定の機械的強度とを有することが必要とされる。このような性質を満足させるために、この種の医療用または衛生材料用の粘着シートの基材(支持体)には、透湿性に優れたポリウレタンのような高いゴム弾性を有するエラストマーフィルムが用いられることがある。この種の技術に関する先行技術文献として特許文献1が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながらポリウレタンは、水で膨潤する性質(水膨潤性)を有することがある。水膨潤性を有するポリウレタンを粘着シートの基材として使用すると、粘着シートに水が接触した際に、該基材が水で膨潤して粘着シートの外観が損なわれたり、該基材の寸法が変化して粘着シートが剥がれやすくなったりする不都合が生じることがある。このため粘着シートの基材には水膨潤しにくい性質が要求される。しかしながら、水膨潤しにくいポリウレタンは、概して、透湿性に劣る傾向があり、ポリウレタンシートにおいて透湿性と水膨潤の抑制とを両立させることは困難であった。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、優れた透湿性と水膨潤の抑制とが両立したポリウレタン積層シートを提供することを目的とする。本発明の他の目的は、優れた透湿性と水膨潤の抑制とが両立した粘着シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によると、第1ポリウレタン材料からなる第1ポリウレタン層と、第2ポリウレタン材料からなる第2ポリウレタン層と、を含むポリウレタン積層シートが提供される。ここで、上記第1ポリウレタン材料は水膨潤性を有し、上記第2ポリウレタン材料は水膨潤性を有しない。かかる構成によると、第2ポリウレタン層は、水分に対するバリア層として機能する。このため、第2ポリウレタン層側の外部から侵入した水分は、第1ポリウレタン層にまで到達しにくい。また、第2ポリウレタン層自体は、水膨潤しないポリウレタン材料からなるため、水膨潤しない。このため、かかる構成によると、全体として水膨潤しにくいポリウレタン積層シートが実現し得る。
また、一般に、水膨潤性を有するポリウレタンシートは、優れた透湿性を示す傾向がある。このため、水膨潤性を有する材料からなる第1ポリウレタン層を含むポリウレタン積層シートは、高い透湿性を示す傾向がある。
よって、上記第1ポリウレタン層と、上記第2ポリウレタン層とを含むポリウレタン積層シートは、優れた透湿性を持ちながら水膨潤しにくいものとなり得る。
【0008】
ここに開示される好ましい一態様に係るポリウレタン積層シートによると、上記第1ポリウレタン材料は、厚み20μmでの透湿度が3000g/(m2・24時間)以上である。上記第1ポリウレタン材料として透湿性が高いものを用いると、第1ポリウレタン層の透湿性が向上し、ポリウレタン積層シート全体の透湿性が向上する傾向がある。
【0009】
ここに開示される好ましい他の一態様に係るポリウレタン積層シートによると、上記第2ポリウレタン材料は、厚み20μmでの透湿度が2500g/(m2・24時間)以下である。一般に、透湿性が低いポリウレタンシートは、水で膨潤しにくい傾向がある。よって、かかる透湿度を有する第2ポリウレタン材料からなる第2ポリウレタン層を含む構成によると、非水膨潤性が向上(即ち、水膨潤性が抑制)されたポリウレタン積層シートが得られやすい。
【0010】
ここに開示される好ましい他の一態様に係るポリウレタン積層シートによると、上記第2ポリウレタン層の厚みD2が8μm以下である。第2ポリウレタン層は、水膨潤性を有しない第2ポリウレタン材料からなるため、第1ポリウレタン層よりも相対的に透湿性に劣ったものとなりやすい。よって、上記厚みD2を有する第2ポリウレタン層を含む構成によると、ポリウレタン積層シート全体の透湿性の過度の低下が抑制され得る。
【0011】
ここに開示される好ましい他の一態様に係るポリウレタン積層シートによると、上記第1ポリウレタン層の厚みD1が10μm以上である。かかる厚みD1を有する第1ポリウレタン層を含む構成によると、機械的強度が向上して取扱い性が向上したポリウレタン積層シートが得られやすい。
【0012】
ここに開示される好ましい他の一態様に係るポリウレタン積層シートによると、上記第2ポリウレタン層の厚みD2に対する上記第1ポリウレタン層の厚みD1の比であるD1/D2が3~20である。かかる構成のポリウレタン積層シートによると、透湿性と非水膨潤性とが両立して達成されやすい。
【0013】
本発明によると、ここに開示されるいずれかのポリウレタン積層シートを含む粘着シートが提供される。好ましい一態様において、上記粘着シートは、ここに開示されるいずれかのポリウレタン積層シートと、該ポリウレタン積層シートの上記第1ポリウレタン層側の表面に設けられた粘着剤層と、を含む。かかる構成の粘着シートによると、水膨潤性を有しない第2ポリウレタン材料からなる第2ポリウレタン層が、粘着剤層から離れた位置に配置されるため、粘着シートが被着体に貼付されて使用される態様において、外部からの水分の接触に対して第2ポリウレタン層がバリア層として機能し、水膨潤しにくい粘着シートとなり得る。また、かかる構成の粘着シートは、透湿性に優れたポリウレタン積層シートを基材として含むため、全体として透湿性に優れたものになりやすい。よって、かかる構成によると、透湿性に優れながら水膨潤しにくい粘着シートが実現し得る。
【0014】
ここに開示される好ましい一態様に係る粘着シートによると、上記粘着剤層は、ホットメルト型粘着剤を含む。かかる粘着剤の使用は、生産性や環境負荷軽減の観点から好ましい。また、かかる粘着剤を含む粘着シートは、典型的には、被着体としてヒトの皮膚に貼付する用途などにおいて、被着体に対して低刺激のものとなりやすい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】一実施形態に係るポリウレタン積層シートの構成を示す模式的断面図である。
【
図2】他の一実施形態に係るポリウレタン積層シートの構成を示す模式的断面図である。
【
図3】一実施形態に係る粘着シートの構成を示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、本明細書に記載された発明の実施についての教示と出願時の技術常識とに基づいて当業者に理解され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。また、以下の図面において、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付して説明することがあり、重複する説明は省略または簡略化することがある。また、図面に記載の実施形態は、本発明を明瞭に説明するために模式化されており、実際に提供される製品のサイズや縮尺を必ずしも正確に表したものではない。
【0017】
<ポリウレタン積層シートの構成>
図1は、本発明の好適な一実施形態に係るポリウレタン積層シート10(以下、単に「積層シート10」と記載することがある。)の断面図である。
図1に示すように、本実施形態の積層シート10は、第1ポリウレタン層20と第2ポリウレタン層30とが積層されて構成される。第1ポリウレタン層20は積層シート10の一方の表面12を構成しており、第2ポリウレタン層30は積層シート10の他方の表面14を構成している。
【0018】
図示はしないが、ここに開示される積層シート10は、本発明の効果を著しく阻害しない限りにおいて、第1ポリウレタン層20と第2ポリウレタン層30のほかに、1または2以上の他のポリウレタン層を備えていてもよい。上記他のポリウレタン層が含まれる態様において、当該他のポリウレタン層が配置される位置は、第1ポリウレタン層20と第2ポリウレタン層30との間であってもよいし、第2ポリウレタン層30における第1ポリウレタン層20とは反対側であってもよいし、第1ポリウレタン層20における第2ポリウレタン層30とは反対側であってもよいし、上記いずれかの位置から選択される2以上の位置であってもよい。このような他のポリウレタン層を含む積層シートは、3層以上の多層構造を有するポリウレタン積層シート10として把握され得る。
【0019】
ここに開示される積層シートに含まれる第1ポリウレタン層および第2ポリウレタン層は、いずれもポリウレタン材料からなる。また、ここに開示される積層シートが、上記他のポリウレタン層を含む場合において、当該他のポリウレタン層もまた、ポリウレタン材料からなる。以下、第1ポリウレタン層、第2ポリウレタン層、または他のポリウレタン層を構成するポリウレタン材料に好適に用いられ得るポリウレタンについて、簡単に説明する。
【0020】
ここに開示されるポリウレタン層に含まれるポリウレタンとしては、水蒸気透過性(以下、「透湿性」ともいう。)に優れているものが好ましく採用され得る。このようなポリウレタンとして、ポリエステルポリウレタン、ポリエーテルポリウレタン等が好ましく使用される。なかでも、透湿性、柔軟性の観点から、ポリエーテルポリウレタンが好ましく用いられる。
【0021】
一般に、ポリエーテルポリウレタンは、ポリオール成分とポリイソシアネート成分とを反応させて得られる。ここに開示されるポリエーテルポリウレタンを構成するポリオール成分は、ポリオキシアルキレン骨格を有するポリエーテルポリオールを少なくとも1種類含むことが好ましい。
【0022】
ポリオキシアルキレン骨格を有するポリエーテルポリオールは、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを少なくとも1種類重合させて得ることができる。ポリオキシアルキレン骨格を有するポリエーテルポリオールは、分子量が500~3000のものが好ましく使用される。
ここに開示されるポリエーテルポリウレタンにおいては、ポリオール成分として、ポリオキシアルキレン骨格を有するポリエーテルポリオールに、他のポリオール、例えば、ポリオキシテトラメチレングリコール、あるいはブタンジオール、ヘプタンジオール、ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール等のポリオールを一部混合して使用することができる。
【0023】
上記ポリエーテルポリウレタンを構成するポリイソシアネート成分としては、従来公知の材料を用いることができる。例えば、芳香族、脂肪族、脂環族のジイソシアネート、これらのジイソシアネートの二量体、三量体などが挙げられる。芳香族、脂肪族、脂環族のジイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5-ナフチレンジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、ブタン-1,4-ジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4-ジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、m-テトラメチルキシリレンジイソシアネートなどが挙げられる。また、これらの二量体、三量体や、ポリフェニルメタンポリイソシアネートが用いられる。三量体としては、イソシアヌレート型、ビューレット型、アロファネート型等が挙げられ、適宜、使用することができる。これらのポリイソシアネートは単独で用いても、あるいは2種以上を混合して用いてもよい。
【0024】
ここに開示されるポリエーテルポリウレタンには、さらに鎖延長剤を使用することができる。鎖延長剤としては従来公知の材料を用いることができるが、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール等のジオール類、エチレンジアミン、トリレンジアミン、イソホロンジアミン等のジアミン類を挙げることができる。
【0025】
ここに開示されるポリエーテルポリウレタンには、必要に応じて、通常、フィルムに使用される添加剤、例えば紫外線吸収剤、老化防止剤、充填剤、顔料、着色剤、難燃剤、帯電防止剤などを添加することができる。これらの添加剤は、その種類に応じて通常の量で用いられる。
【0026】
ポリエーテルポリウレタンは、例えば、ワンショット法又はプレポリマー法を用いて重合することができる。また、溶剤を使用しないバルク重合であっても、粘度低減のために溶液中で重合を行ってもよい。以下、バルク重合について具体的に説明する。反応容器にポリオールを投入し、温度が50~80℃になるように調整し攪拌しつつ、ポリイソシアネートを添加してウレタン化を起こさせる。さらに鎖延長剤を添加して反応させた後、反応生成物をトレーに移動して、100~150℃で4時間以上保持し、反応を完結させることによって、塊状のポリエーテルポリウレタンを得ることができる。
【0027】
<第1ポリウレタン層>
ここに開示される積層シートに含まれる第1ポリウレタン層について、当該第1ポリウレタン層を構成するポリウレタン材料を、以下、第1ポリウレタン材料という。ここに開示される第1ポリウレタン層は、水膨潤性を有する第1ポリウレタン材料からなる。水膨潤性を有するポリウレタン材料は、優れた透湿性を有する傾向があるため、かかる第1ポリウレタン材料を用いることにより、第1ポリウレタン層の透湿性が向上し、ひいては積層シート全体の透湿性を向上させることができる。
【0028】
ここで、本明細書において「水膨潤性」とは、水で膨潤する性質のことをいう。本明細書において水膨潤性の有無は、以下に示す水膨潤性試験の結果に基づいて判定される。
【0029】
[水膨潤性試験]
試験対象材料からなる表面を有する試験片(サイズ50×50mm、厚み44μm)を用意する。温度23℃、湿度50%RHの環境下において、上記試験片の表面上に、駒込ピペットを用いて温度23℃の脱イオン水を3滴落とし、5分経過後、試験片上の水分をウエスで拭き取り、直ちに試験片の形状に変化があるか否かを横から目視で観測する。その結果、試験片の形状に変化が観測された場合は水膨潤性あり、変化が観測されなかった場合は水膨潤性なしと判定する。なお、上記試験片のサイズおよび厚みは、厳密に上述するものと同一でなくてもよい。例えば、縦が凡そ20mm~100mm、横が凡そ20mm~100mm、厚みが凡そ10μm~1mmの範囲で適宜変更してもよい。後述する実施例では、サイズ50×50mm、厚み44μmの試験片を用いた。
【0030】
第1ポリウレタン材料の水膨潤性の制御は、第1ポリウレタン材料に含まれるポリウレタンの水膨潤性を制御することにより行うことができる。あるいは、第1ポリウレタン材料が2以上のポリウレタンを含む混合物である場合において、水膨潤性の異なるポリウレタンの混合比を調整することにより、第1ポリウレタン材料の水膨潤性を制御することができる。ポリウレタンの水膨潤性の制御は、モノマー成分の種類や配合比率を調整することにより行うことができる。例えば、ポリエーテルポリウレタンにおける水膨潤性の制御は、ポリオール成分の種類や配合比率を調整することで行うことができる。
【0031】
ポリウレタン積層シート全体の透湿性(水蒸気を透過させる性質)を向上させる観点から、ポリウレタン積層シートに含まれる第1ポリウレタン層の透湿性は高い方が好ましい。特に、後述するように、積層シートが、積層シートの第1ポリウレタン層側に粘着剤層が設けられて構成された粘着シートの態様で使用される場合において、第1ポリウレタン層は被着体に相対的に近い位置に配置されるため、第1ポリウレタン層にはヒトの皮膚等の被着体から発生する水蒸気を好適に透過させる性質が要求される。
【0032】
本明細書において、「透湿度」とは、JIS Z0208の透湿度試験(カップ法)に準拠して温度40℃、相対湿度90%RH、測定時間24時間の条件下で測定したときの値を指す。具体的には、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
【0033】
第1ポリウレタン材料の厚み20μmでの透湿度は、通常、2000g/(m2・24時間)より大きいことが適切であり、好ましくは3000g/(m2・24時間)以上、より好ましくは3500g/(m2・24時間)以上、さらに好ましくは4000g/(m2・24時間)以上(例えば4500g/(m2・24時間)以上)である。第1ポリウレタン材料の上記透湿度が上述する下限より小さすぎると、第1ポリウレタン層の透湿度が低くなり、ひいては積層シート全体の透湿性が低いものとなりやすい。第1ポリウレタン材料の透湿度の上限は特に限定されない。積層シートの透湿性と機械的強度等を両立して向上させる観点から、第1ポリウレタン材料の厚み20μmでの透湿度は、通常は7000g/(m2・24時間)未満であることが適切であり、6500g/(m2・24時間)以下でもよく、6000g/(m2・24時間)以下でもよく、5500g/(m2・24時間)以下でもよく、5200g/(m2・24時間)以下でもよい。
【0034】
第1ポリウレタン層の厚みD1は特に限定されない。積層シートの機械的強度を向上させ、取扱い性を向上させる観点から、厚みD1は10μm以上であることが好ましく、より好ましくは20μm以上であり、さらに好ましくは30μm以上(例えば35μm以上)である。厚みD1の上限は特に限定されないが、積層シートの透湿度を過度に低下させない観点から、厚みD1は通常、100μm以下であることが適切であり、好ましくは50μm以下であり、より好ましくは45μm以下である。
【0035】
積層シートの総厚みに占める第1ポリウレタン層の厚みD1の割合は、積層シート全体の透湿度を確保する観点から、50%以上であることが好ましく、より好ましくは60%以上、さらに好ましくは70%以上である。積層シートが第1ポリウレタン層と第2ポリウレタン層のみからなる態様においては、積層シートの総厚みに占める第1ポリウレタン層の厚みD1の割合は、80%以上であることが好ましく、より好ましくは85%以上(例えば88%以上)である。また、積層シートの非水膨潤性を向上させる観点から、積層シートの総厚みに占める第1ポリウレタン層の厚みD1の割合は、98%以下であることが好ましく、より好ましくは95%以下、さらに好ましくは92%以下である。
【0036】
第1ポリウレタン層は、多孔性ポリウレタン層であってもよいし、非多孔性ポリウレタン層であってもよい。機械的強度を向上させる観点から、第1ポリウレタン層は非多孔性ポリウレタン層であることが好ましい。一方、透湿性を向上させる観点からは、第1ポリウレタン層は多孔性ポリウレタン層であってもよい。
【0037】
第1ポリウレタン層として多孔性ポリウレタン層を採用する場合において、当該多孔性ポリウレタン層は連続気泡を含むことが好ましい。気泡の大きさは、特に限定されないが、20μm以上300μm以下であることが好ましい。多孔性ポリウレタン層は湿式製膜法により作製することができる。
【0038】
<第2ポリウレタン層>
ここに開示される積層シートに含まれる第2ポリウレタン層について、当該第2ポリウレタン層を構成するポリウレタン材料を、以下、第2ポリウレタン材料という。ここに開示される第2ポリウレタン層は、水膨潤性を有しない第2ポリウレタン材料からなる。水膨潤性を有しない第2ポリウレタン材料を用いることにより、第2ポリウレタン層を外部からの水の侵入に対するバリア層として機能させることができる。
【0039】
第2ポリウレタン材料の水膨潤性の制御は、第1ポリウレタン材料と同様に、第2ポリウレタン材料に含まれるポリウレタンの水膨潤性を制御することにより行うことができる。あるいは、第2ポリウレタン材料が2以上のポリウレタンを含む混合物である場合において、水膨潤性の異なるポリウレタンの混合比を調整することにより、第2ポリウレタン材料の水膨潤性を制御することができる。ポリウレタンの水膨潤性の制御は、モノマー成分の種類や配合比率を調整することにより行うことができる。例えば、ポリエーテルポリウレタンにおける水膨潤性の制御は、ポリオール成分の種類や配合比率を調整することで行うことができる。例えば、ジオール成分として、ポリオキシテトラメチレングリコール、ブタンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等を用い、イソシアネート成分としてメタンジフェニレンジイソシアネートを用いて得られるポリエーテルポリウレタンは、配合の種類や配合量等を適宜、選択することによって、水膨潤性が低いポリウレタンとなり得る。あるいはまた、更にアジピン酸等のジカルボン酸成分を配合してなるポリエステルポリウレタンも、水膨潤性が低いものとなり得る。
【0040】
水膨潤性を有しない限りにおいて、第2ポリウレタン材料の透湿度は特に限定されない。第2ポリウレタン材料の厚み20μmでの透湿度は、通常、3000g/(m2・24時間)未満であることが適切であり、好ましくは2500g/(m2・24時間)以下、より好ましくは2300g/(m2・24時間)以下、さらに好ましくは2100g/(m2・24時間)以下である。第2ポリウレタン材料の上記透湿度が上述する上限よりも大きすぎると、第2ポリウレタン層の非水膨潤性が低下する傾向がある。水に対する非膨潤性をより好適に実現させる観点からは、第2ポリウレタン材料の厚み20μmでの透湿度は、2000g/(m2・24時間)以下であってもよく、1500g/(m2・24時間)以下であってもよく、1000g/(m2・24時間)以下であってもよく、600g/(m2・24時間)以下であってもよく、500g/(m2・24時間)以下であってもよい。
【0041】
第2ポリウレタン材料の透湿度の下限は特に限定されない。積層シート全体の透湿性を過度に低下させない観点からは、第2ポリウレタン材料の厚み20μmでの透湿度は、通常は0g/(m2・24時間)より大きいことが適切であり、好ましくは100g/(m2・24時間)以上、より好ましくは300g/(m2・24時間)以上、さらに好ましくは400g/(m2・24時間)以上である。積層シート全体の透湿性をより向上させる観点から、第2ポリウレタン材料の厚み20μmでの透湿度は、700g/(m2・24時間)以上であってもよく、1100g/(m2・24時間)以上であってもよく、1600g/(m2・24時間)以上であってもよく、1900g/(m2・24時間)以上であってもよい。
【0042】
第2ポリウレタン層の厚みD2は、特に限定されない。積層シート全体の透湿度の低下を抑制する観点から、厚みD2は10μm未満であることが好ましく、より好ましくは8μm以下であり、さらに好ましくは6μm以下(例えば5μm以下)である。水に対するバリア層としての機能を好適に働かせる観点から、厚みD2は1μm以上であることが好ましく、より好ましくは2μm以上、さらに好ましくは3μm以上である。
【0043】
積層シートの総厚みに占める第2ポリウレタン層の厚みD2の割合は、積層シート全体の透湿性を確保する観点から、20%以下であることが好ましく、より好ましくは15%以下、さらに好ましくは10%以下である。また、積層シートの非水膨潤性を向上させる観点から、積層シートの総厚みに占める第2ポリウレタン層の厚みD2の割合は、2%以上であることが好ましく、より好ましくは5%以上、さらに好ましくは8%以上である。
【0044】
第2ポリウレタン層の厚みD2に対する第1ポリウレタン層の厚みD1の比であるD1/D2は、特に限定されないが、通常、2以上であることが適切であり、積層シートの透湿性を確保する観点からは、3以上であることが好ましく、より好ましくは6以上、さらに好ましくは8以上(例えば9以上)である。水に対する非膨潤性を確保する観点からは、D1/D2は20以下であることが好ましく、より好ましくは15以下であり、さらに好ましくは12以下(例え11以下)である。
【0045】
第2ポリウレタン層は、多孔性ポリウレタン層であってもよいし、非多孔性ポリウレタン層であってもよい。機械的強度を向上させる観点から、第2ポリウレタン層は非多孔性ポリウレタン層であることが好ましい。一方、透湿性を向上させる観点からは、第2ポリウレタン層は多孔性ポリウレタン層であってもよい。
【0046】
第2ポリウレタン層として多孔性ポリウレタン層を採用する場合において、当該多孔性ポリウレタン層は連続気泡を含むことが好ましい。気泡の大きさは、特に限定されないが、20μm以上300μm以下であることが好ましい。
【0047】
<ポリウレタン積層シート>
ここに開示されるポリウレタン積層シートは、例えば、第1ポリウレタン層および第2ポリウレタン層のそれぞれを構成するポリウレタン材料を溶融させた後、Tダイ押出し機やインフレーションダイ押出機を用いて、2層押し出しすることによりシート状に形成することができる。あるいは、第1ポリウレタン層、第2ポリウレタン層、および他のポリウレタン層を含む3層以上の多層構造を有するポリウレタン積層シートを形成する場合は、各層を構成するポリウレタン材料を溶融させた後、Tダイ押出し機などを用いて3層以上の押し出しすることによりシート状に形成することができる。
【0048】
あるいは、ここに開示されるポリウレタン積層シートは、例えば、予め作製した第1ポリウレタン材料からなるポリウレタンシートと第2ポリウレタン材料からなるポリウレタンシートとを用いて、これらを積層することにより作製することができる。
【0049】
積層シートの厚み(以下、総厚みともいう。)は、特に限定されないが、機械的強度および取扱い性の観点から10μmより大きいことが好ましく、より好ましくは25μm以上であり、さらに好ましくは35μm以上(例えば40μm以上)である。積層シートの厚みの上限は特に限定されない。透湿度を過度に低下させず、かつ、柔軟性を確保する観点から、積層シートの厚みは通常、150μm以下であることが適切であり、好ましくは100μm以下であり、より好ましくは60μm以下(例えば50μm以下)である。なお、ここでいう積層シートの厚み(総厚み)には、後述する担持シートの厚みを含まない。
【0050】
積層シートの透湿度は、特に限定されない。例えば、積層シートが、医療用または衛生材料用粘着シートの基材として使用される場合において、当該積層シートの透湿度は、通常、1000g/(m2・24時間)以上であることが適当であり、2200g/(m2・24時間)以上であることが好ましく、より好ましくは2500g/(m2・24時間)以上であり、さらに好ましくは3000g/(m2・24時間)以上(例えば4000g/(m2・24時間)以上)である。また、積層シートの透湿度は、通常、7000g/(m2・24時間)以下であり、非水膨潤性など他の性質とのバランスをとる観点から、6500g/(m2・24時間)以下であることが好ましく、より好ましくは6000g/(m2・24時間)以下である。
【0051】
積層シートは透明または半透明であることが好ましい。かかる積層シートによると、積層シートを基材として含む粘着シートにおいて、粘着シートを被着体へ貼付する際に、被着体の貼着部位を粘着シートの上から視覚的に確認することができる。
【0052】
<担持シート>
積層シートの表面には、当該積層シートを支持する目的で、担持シートを設けることができる。担持シートを用いることにより、積層シートを基材として含む粘着シートの製造時の加工性や貼付時の操作性を向上させることができる。担持シートは、典型的には、上記粘着シートが被着体に貼付された後に剥離除去される。
【0053】
図2に、担持シートが設けられたポリウレタン積層シート10の構成を模式的に示す。また、
図3に、担持シートが設けられた粘着シート50の構成を模式的に示す。
図2に示す実施形態では、担持シート40は、積層シート10の第2ポリウレタン層30側の表面に設けられている。かかる構成によると、
図3に示すように、積層シート10の第1ポリウレタン層20側の表面に粘着剤層60が設けられて構成される粘着シート50において、粘着シート50が被着体に貼付された後に、担持シート40を粘着シート50から剥離除去することができる。
【0054】
担持シートは、積層シートに高い弾性率を付与することができるものであることが好ましい。例えば、担持シートの常温常湿における引張り試験による50%伸張時のモジュラスは、2N/mm2以上200N/mm2以下であることが好ましく、8N/mm2以上50N/mm2以下であることがさらに好ましい。
【0055】
担持シートは透明または半透明であることが好ましい。かかる担持シートによると、粘着シートを被着体へ貼付する際に、被着体の貼着部位を粘着シートの上から視覚的に確認しやすい。
【0056】
担持シートを構成する材料は、特に限定されない。例えば、担持シートを構成する材料として、ポリオレフィン系樹脂を好ましく用いることができる。上記ポリオレフィン系樹脂としては、公知または慣用の各種のポリオレフィン系樹脂を特に限定なく用いることができる。例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、メタロセン触媒系直鎖状低密度ポリエチレン等のポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。なかでも、LDPEを好ましく用いることができる。このようなポリオレフィン系樹脂は、1種を単独で、または2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0057】
担持シートの厚みは特に限定されない。担持シートの厚みは、積層シートを好適に支持する観点から、20μm以上であることが好ましく、より好ましくは30μm以上であり、さらに好ましくは40μm以上である。担持シートが備えられた態様における積層シートの柔軟性を確保する観点から、担持シートの厚みは、100μm以下であることが好ましく、より好ましくは75μm以下であり、さらに好ましくは60μm以下である。
【0058】
<粘着剤層>
図3に示す実施形態の粘着シート50は、ポリウレタン積層シート10と担持シート40と粘着剤層60を備える。担持シート40は、ポリウレタン積層シート10の第2ポリウレタン層30側の表面に設けられている。粘着剤層60は、ポリウレタン積層シート10の第1ポリウレタン層20側の表面に設けられている。
【0059】
ここに開示される粘着シートにおいて、粘着剤層を構成する粘着剤は特に限定されない。上記粘着剤としては、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ポリエーテル系粘着剤、シリコーン系粘着剤等を用いることができる。ここで、ゴム系粘着剤とは、ベースポリマーとしてゴム系ポリマーを含む粘着剤をいう。他の粘着剤についても同様である。なお、本明細書においてベースポリマーとは、ポリマー成分のなかの主成分(最も配合割合の高い成分)を指す。ここに開示される粘着剤に含まれるポリマー成分に占めるベースポリマーの割合は、固形分基準で、典型的には凡そ50重量%以上であり、通常は凡そ70重量%以上が適当であり、凡そ90重量%以上であってもよい。上記ベースポリマーの割合は、上限が100重量%であり、例えば凡そ99重量%以下であってもよい。
【0060】
いくつかの態様において、粘着性能やコストの観点から、上記粘着剤としてゴム系粘着剤またはアクリル系粘着剤を好ましく採用し得る。
【0061】
(ゴム系粘着剤)
ゴム系粘着剤としては、天然ゴムやその変性物等の天然ゴム系重合体、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン-エチレン/ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)、結晶性ポリオレフィン-エチレン/ブチレン-結晶性ポリオレフィンブロック共重合体(CEBC)、およびスチレン-エチレン/ブチレン-結晶性ポリオレフィンブロック共重合体(SEBC)等のゴム系ポリマーの1種または2種以上をベースポリマーとして含む粘着剤が挙げられる。ゴム系粘着剤の一好適例として、SISをベースポリマーとする粘着剤(SIS系粘着剤)が挙げられる。
【0062】
ゴム系粘着剤は、ベースポリマーとしての上記ゴム系ポリマーの他、例えば、粘着付与剤(タッキファイヤー)およびプロセスオイルを主要な成分として含有し得る。
上記粘着付与剤としては、一般的なロジン系、テルペン系、炭化水素系、エポキシ系、ポリアミド系、エラストマー系、フェノール系、ケトン系等の各種粘着付与樹脂を、1種を単独でまたは2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。特に限定するものではないが、ベースポリマー100重量部に対する粘着付与剤の配合量は、例えば凡そ50~200重量部程度であってよく、通常は凡そ80~150重量部程度が適当である。
上記プロセスオイルとしては、例えば、一般的なパラフィン系、ナフテン系、芳香族系等のプロセスオイルを、1種を単独でまたは2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。特に限定するものではないが、ベースポリマー100重量部に対するプロセスオイルの配合量は、例えば凡そ50~200重量部程度であってよく、通常は凡そ90~150重量部程度が適当である。
【0063】
(アクリル系粘着剤)
アクリル系粘着剤は、ベースポリマーとしてアクリル系ポリマーを含む粘着剤である。ここでアクリル系ポリマーとは、一分子中に少なくともひとつの(メタ)アクリロイル基を有するモノマー(以下、これを「アクリル系モノマー」ということがある。)を主構成モノマー成分とするポリマーを指す。上記主構成モノマー成分とは、アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分の総量のうち50重量%以上を占める成分をいう。上記モノマー成分の70重量%以上(例えば90重量%以上)がアクリル系モノマーであってもよい。なお、本明細書中において(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基およびメタクリロイル基を包括的に指す意味である。同様に、本明細書中において(メタ)アクリレートとは、アクリレートおよびメタクリレートを包括的に指す意味である。
【0064】
アクリル系ポリマーは、該ポリマーを構成するモノマー成分が2種以上のモノマーを含む場合、ランダム共重合体であってもよく、ブロック共重合体やグラフト共重合体等であってもよい。製造容易性や取扱い性の観点から好ましいアクリル系ポリマーとして、ランダム共重合体およびブロック共重合体が挙げられる。アクリル系ポリマーは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0065】
好ましい一態様において、上記アクリル系ポリマーは、アルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートを主モノマーとして含むモノマー原料から合成されたアクリル系ランダム共重合体を含む。アルキル(メタ)アクリレートとしては、炭素原子数1~20の鎖状アルキル基をエステル末端に有するアルキル(メタ)アクリレート、すなわちC1-20アルキル(メタ)アクリレートを好ましく使用することができる。粘着剤の貯蔵弾性率等の観点から、C1-12(例えばC2-10、典型的にはC4-8)アルキル(メタ)アクリレートが好ましい。これらは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。好ましいアルキル(メタ)アクリレートとして、n-ブチル(メタ)アクリレートおよび2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。なかでも、n-ブチルアクリレート(BA)および2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)の一方または両方を用いることが好ましい。
【0066】
アクリル系ランダム共重合体を構成する全モノマー成分に占める主モノマーの割合は、凡そ60重量%以上であることが好ましく、凡そ80重量%以上であることがより好ましく、凡そ90重量%以上であることがさらに好ましい。全モノマー成分に占める主モノマーの割合の上限は特に限定されないが、粘着剤の特性(粘着力、凝集力など)の調整を容易とする観点から、通常は凡そ99重量%以下(例えば凡そ98重量%以下、典型的には凡そ95重量%以下)とすることが好ましい。アクリル系ランダム共重合体は、実質的に主モノマーのみを重合したものであってもよい。
【0067】
上記アクリル系ランダム共重合体を重合するために用いられるモノマー原料は、粘着剤の特性調節等を目的として、主モノマーに加えて、該主モノマーと共重合可能な副モノマーをさらに含んでもよい。そのような副モノマーの好適例として、官能基を有するモノマー(以下、官能基含有モノマーともいう。)が挙げられる。上記官能基含有モノマーは、アクリル系ポリマーに架橋点を導入し、粘着剤の特性(粘着力、凝集力等)を調節しやすくする目的で添加され得る。上記官能基含有モノマーの例としては、カルボキシ基含有モノマー、酸無水物基含有モノマー、水酸基含有モノマー、アミド基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、エポキシ基(グリシジル基)含有モノマー、アルコキシ基含有モノマー、アルコキシシリル基含有モノマー等が挙げられる。これらは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。アクリル系ポリマーに架橋点を導入しやすく、また架橋密度を調節しやすいことから、カルボキシ基、水酸基およびエポキシ基の少なくともいずれかを有する官能基含有モノマーを好ましく採用し得る。なかでも好ましい官能基含有モノマーとして、カルボキシ基含有モノマーおよびヒドロキシ基含有モノマーが挙げられる。カルボキシ基含有モノマーの好適例としては、アクリル酸、メタクリル酸等が挙げられる。水酸基含有モノマーの好適例としては、2-ヒドロキシエチルアクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート等が挙げられる。
【0068】
上述のような官能基含有モノマーを用いる場合、アクリル系ポリマーを重合するための全モノマー成分中に上記官能基含有モノマー(好適にはカルボキシ基含有モノマー)が凡そ1~10重量%(例えば凡そ2~8重量%、典型的には凡そ3~7重量%)配合されていることが好ましい。
【0069】
上記モノマー原料は、副モノマーとして、例えばアクリル系ポリマーの凝集力を高める等の目的で、上記官能基含有モノマー以外のモノマーを含んでもよい。そのようなモノマーとしては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル系モノマー;スチレン、置換スチレン(α-メチルスチレン等)、ビニルトルエン等の芳香族ビニル化合物;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等のシクロアルキル(メタ)アクリレート;アリール(メタ)アクリレート(例えばフェニル(メタ)アクリレート)、アリールオキシアルキル(メタ)アクリレート(例えばフェノキシエチル(メタ)アクリレート)、アリールアルキル(メタ)アクリレート(例えばベンジル(メタ)アクリレート)等の芳香族性環含有(メタ)アクリレート;エチレン、プロピレン、イソプレン、ブタジエン、イソブチレン等のオレフィン系モノマー;塩化ビニル、塩化ビニリデン等の塩素含有モノマー;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のビニルエーテル系モノマー;等が挙げられる。これらは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。上記官能基含有モノマー以外の副モノマーの量は、目的および用途に応じて適宜選択すればよく特に限定されないが、例えば、アクリル系ポリマーを重合するための全モノマー成分中、凡そ20重量%以下(例えば2~20重量%程度、典型的には3~10重量%程度)とすることが好ましい。
【0070】
アクリル系ポリマーの合成方法は特に限定されず、従来公知の溶液重合、乳化重合、塊状重合、懸濁重合等の一般的な重合方法を適宜採用することができる。重合の態様は特に限定されず、従来公知のモノマー供給方法、重合条件(温度、時間、圧力等)、モノマー以外の使用成分(重合開始剤、界面活性剤等)を適宜選択して行うことができる。アクリル系ランダム共重合体の重量平均分子量(Mw)は特に限定されず、例えば30×104~100×104程度であり得る。
【0071】
好ましい他の一態様において、上記アクリル系ポリマーは、アクリル系ブロック共重合体を含む。上記アクリル系ブロック共重合体は、熱可塑性ポリマー(典型的には熱可塑性エラストマー)の性質を示すものであり得る。このようなアクリル系ブロック共重合体をベースポリマーとして含む粘着剤は、ホットメルト形式での塗工に適したものとなり得る。粘着剤層の形成にホットメルト型粘着剤を用いることは、生産性や環境負荷軽減の観点から好ましい。溶融粘度低減等の観点から、星形構造や分岐構造に比べて、直鎖構造のアクリル系ブロック共重合体が有利である。
【0072】
上記アクリル系ブロック共重合体としては、例えば、少なくとも1つのアクリレートブロック(以下、Acブロックともいう。)と、少なくとも1つのメタクリレートブロック(以下、MAcブロックともいう。)とを1分子中に備えるものを好ましく採用し得る。上記Acブロックは、該Acブロックを構成する全モノマー単位のうち凡そ50重量%以上、好ましくは凡そ75重量%以上がアルキルアクリレートに由来するモノマー単位である。上記MAcブロックは、該MAcブロックを構成する全モノマー単位のうち凡そ50重量%以上、好ましくは凡そ75重量%以上がアルキルメタクリレートに由来するモノマー単位である。
【0073】
Acブロックを構成するアルキルアクリレートの例としては、炭素原子数1~20のアルキル基をエステル末端に有するアルキルアクリレート(すなわち、C1-20アルキルアクリレート)が挙げられる。構成モノマー単位としてC4-14アルキルアクリレートを含むAcブロックが好ましく、C4-9アルキルアクリレートを含むAcブロックがより好ましい。C4-9アルキルアクリレートの好適例として、BA、2EHA、n-ヘキシルアクリレート、n-オクチルアクリレート、イソオクチルアクリレート(IOA)、n-ノニルアクリレートおよびイソノニルアクリレート(INA)が挙げられる。例えば、BAおよび2EHAの少なくとも一方を含むAcブロックが好ましい。
【0074】
好ましい一態様において、Acブロックを構成するモノマー単位のうちC4-14アルキルアクリレートの割合は、例えば50重量%以上であり、75重量%以上でもよく、実質的に100重量%(例えば、99重量%を超えて100重量%以下)でもよい。例えば、Acブロックを構成するモノマー単位が実質的にBA単独である構成、2EHA単独である構成、BAおよび2EHAの2種からなる構成等を好ましく採用し得る。Acブロックを構成するモノマー単位がBAと2EHAの両方を含む態様において、BAと2EHAとの重量比は特に限定されない。BA/2EHAの重量比は、例えば10/90~90/10、好ましくは80/20~20/80、より好ましくは30/70~70/30であり、60/40~40/60であってもよい。
【0075】
MAcブロックを構成するアルキルメタクリレートとしては、C1-20(好ましくはC1-14)アルキルメタクリレートが挙げられる。MAcブロックを構成するモノマーのうちC1-4(好ましくはC1-3)アルキルメタクリレートの割合は、例えば凡そ50重量%以上であってよく、凡そ75重量%以上でもよく、実質的に100重量%(例えば、99重量%を超えて100重量%以下)でもよい。なかでも好ましいアルキルメタクリレートとして、メチルメタクリレート(MMA)およびエチルメタクリレート(EMA)が挙げられる。例えば、上記モノマー単位が実質的にMMA単独である構成、EMA単独である構成、MMAおよびEMAの2種からなる構成等を好ましく採用し得る。
【0076】
一態様において、C6-12アルキルアクリレートとC2-5アルキルアクリレートとを20/80~80/20(より好ましくは30/70~70/30、さらに好ましくは40/60~60/40、例えば45/55~55/45)の重量比で含むモノマー単位から構成されたAcブロックを有するアクリル系ブロック共重合体を用いることができる。このようなアクリル系ブロック共重合体は、低温性能と凝集性とのバランスに優れたものとなり得る。例えば、2EHAとBAとを上記重量比で含むモノマー単位から構成されたAcブロックを有するアクリル系ブロック共重合体を好ましく使用し得る。上記Acブロックが2EHAおよびBAのみから構成されていてもよい。
【0077】
アクリル系ブロック共重合体におけるAcブロック/MAcブロックの重量比は、特に限定されず、例えば4/96~90/10であってよく、7/93~70/30でもよく、10/90~50/50でもよく、15/85~40/60でもよく、15/85~25/75でもよい。2以上のMAcブロックを含むアクリル系ブロック共重合体では、それらのMAcブロックの合計重量とAcブロックとの重量比が上記範囲にあることが好ましい。2以上のAcブロックを含むアクリル系ブロック共重合体についても同様である。
【0078】
なお、アクリル系ブロック共重合体を構成するモノマー単位の組成は、NMR測定の結果に基づいて把握することができる。上記NMR測定は、具体的には、例えばNMR装置としてブルカー・バイオスピン(Bruker Biospin)社製の「AVAVCEIII-600(with Cryo Probe)」を使用して、下記の条件で行うことができる。例えば、モノマー原料に含まれる2EHAとMMAとの重量比は、1H NMRスペクトルの4.0ppm(2EHA1)と3.6ppm(MMA1)とのピーク積分強度比に基づいて算出することができる。
[NMR測定条件]
観測周波数:1H;600MHz
フリップ角:30°
測定溶媒:CDCl3
測定温度:300K
化学シフト基準:測定溶媒(CDCl3,1H:7.25ppm)
【0079】
アクリル系ブロック共重合体のMwは特に限定されず、3×104~30×104程度であり得る。上記Mwは、通常、3.5×104~25×104程度の範囲が好ましく、4×104~20×104(例えば4.5×104~15×104)の範囲がより好ましい。
なお、ここでいうアクリル系ブロック共重合体のMwは、当該共重合体をテトラヒドロフラン(THF)に溶かして調製したサンプルにつきゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)を行って求められる、ポリスチレン換算の値をいう。上記GPC測定は、具体的には、例えばGPC測定装置として東ソー社製の「HLC-8120GPC」を使用して、下記の条件で行うことができる。他のポリマーおよび後述するオリゴマーのMwも同様に測定することができる。
[GPC測定条件]
・カラム:東ソー社製、TSKgel SuperHZM-H/HZ4000/HZ3000/HZ2000
・カラムサイズ:各6.0mmI.D.×150mm
・溶離液:THF
・流量:0.6mL/min
・検出器:示差屈折計(RI)
・カラム温度(測定温度):40℃
・サンプル濃度:約2.0g/L(THF溶液)
・サンプル注入量:20μL
【0080】
ここに開示される技術におけるアクリル系ブロック共重合体には、アルキル(メタ)アクリレート以外のモノマー(その他モノマー)が共重合されていてもよい。上記その他モノマーとしては、アルコキシ基やエポキシ基、水酸基、アミノ基、アミド基、シアノ基、カルボキシ基、酸無水物基等の官能基を有するビニル化合物、酢酸ビニル等のビニルエステル類、スチレン等の芳香族ビニル化合物、N-ビニルピロリドン等のビニル基含有複素環化合物等を例示することができる。上記その他モノマーの含有量は、アクリル系ブロック共重合体を構成する全モノマー成分の凡そ20重量%以下であってよく、凡そ10重量%以下でもよく、凡そ5重量%以下でもよい。好ましい一態様では、アクリル系ブロック共重合体が上記その他モノマーを実質的に含有しない。例えば、上記その他モノマーの含有量が全モノマー成分の1重量%未満(典型的には0~0.5重量%)または検出限界以下であるアクリル系ブロック共重合体が好ましい。
【0081】
このようなアクリル系ブロック共重合体は、公知の方法(例えば、特開2001-234146号公報、特開平11-323072号公報を参照)により容易に合成することができ、あるいは市販品を容易に入手することができる。上記市販品の例としては、クラレ社製の商品名「クラリティ」シリーズ(例えば、LA2140e,LA2250等の品番のもの)、カネカ社製の商品名「NABSTAR」等が挙げられる。
【0082】
アクリル系ブロック共重合体は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。例えば、相対的にMwの高いアクリル系ブロック共重合体BHと、該アクリル系ブロック共重合体BHよりもMwの低いアクリル系ブロック共重合体BLとを適宜の重量比で用いることができる。例えば、Mwが5×104~20×104(例えば7×104~20×104)の範囲にあるBHと、Mwが3×104~8×104の範囲であってかつ上記BHのMwよりも低いBLとの組合せが好ましい。BHとBLとの重量比(BH/BL)は特に限定されず、例えば5/95~95/5の範囲とすることができ、10/90~90/10であってもよく、40/60~90/10であってもよく、55/45~90/10であってもよい。Mwの異なる2種以上のアクリル系ブロック共重合体を含むことや、各アクリル系ブロック共重合体のMwおよび重量比は、例えば、上述したGPC測定を通じて把握することができる。
【0083】
アクリル系粘着剤層には、必要に応じて粘着付与剤を含ませることができる。上記粘着付与剤としては、一般的なロジン系、テルペン系、炭化水素系、エポキシ系、ポリアミド系、エラストマー系、フェノール系、ケトン系等の各種粘着付与樹脂を、1種を単独でまたは2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。ベースポリマー100重量部に対する粘着付与樹脂の配合量は、例えば凡そ1重量部以上であってよく、凡そ5重量部以上でもよく、凡そ10重量部以上でもよい。また、低温特性の低下を避ける観点から、ベースポリマー100重量部に対する粘着付与剤の使用量は、通常、凡そ50重量部以下が適当であり、凡そ30重量部以下でもよく、凡そ20重量部以下でもよい。粘着剤層が粘着付与剤を実質的に含有しなくてもよい。
【0084】
(可塑剤)
粘着剤層には、必要に応じて可塑剤を含有させることができる。可塑剤は、溶融粘度の低下、粘着力の抑制、低温特性の向上等に役立ち得る。可塑剤の例としては、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジブチル等のフタル酸エステル;アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ジイソノニル等のアジピン酸エステル;トリメリット酸トリオクチル等のトリメリット酸エステル;セバシン酸エステル;エポキシ化大豆油、エポキシ化亜麻仁油等のエポキシ化植物油;エポキシ化脂肪酸オクチルエステル等のエポキシ化脂肪酸アルキルエステル;ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタントリオレエート、それらのエチレンオキサイド付加物等の環状脂肪酸エステルおよびその誘導体;等が挙げられる。また、プロセスオイル等の軟化剤も可塑剤に包含される。可塑剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0085】
可塑剤を用いる場合における使用量は、特に限定されない。一態様において、ベースポリマー100重量部に対する粘着付与剤の使用量は、凡そ1重量部以上であってよく、凡そ5重量部以上でもよく、凡そ10重量部以上でもよい。被着体への可塑剤の移行を防ぐ観点から、可塑剤の使用量は、通常、ベースポリマー100重量部に対して凡そ100重量部以下が適当であり、凡そ50重量部以下でもよく、凡そ30重量部以下でもよい。粘着剤層が可塑剤を実質的に含有しなくてもよい。
【0086】
粘着剤層を構成する粘着剤は、粘度の調整や粘着特性の制御(例えば粘着力の低減)等の目的で、ベースポリマー以外のポリマーまたはオリゴマーを任意成分として含有してもよい。このようなポリマーまたはオリゴマー(以下、任意ポリマーともいう。)として、例えば、Mwが500~10000程度(典型的には800~5000程度)のアクリル系ランダム共重合体を用いることができる。
【0087】
このような任意ポリマーを用いる場合における使用量は、特に限定されない。一態様において、ベースポリマー100重量部に対する上記任意ポリマーの使用量は、例えば1重量部以上であってよく、5重量部以上でもよく、10重量部以上でもよく、15重量部以上でもよく、25重量部以上でもよい。いくつかの態様において、ベースポリマー100重量部に対する上記任意ポリマーの使用量は、例えば70重量部以下であってよく、50重量部以下でもよく、40重量部以下でもよく、35重量部以下でもよい。他のいくつかの態様において、ベースポリマー100重量部に対する上記任意ポリマーの使用量は、例えば5重量部未満であってよく、3重量部未満でもよく、1重量部未満でもよい。ここに開示される技術は、上記粘着剤がベースポリマー以外のポリマーを実質的に含有しない態様、例えばベースポリマー100重量部に対する上記任意ポリマーの使用量が0~0.5重量部である態様でも好適に実施され得る。
【0088】
(架橋剤)
粘着剤層を構成する粘着剤は、必要に応じて架橋されていてもよい。架橋には、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸バリウム等の有機金属塩や、エポキシ系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、金属キレート系架橋剤、メラミン系架橋剤等の、公知の架橋剤を使用することができる。架橋剤は、1種を単独でまたは2種類以上を組み合わせて用いることができる。架橋剤の使用量は特に限定されない。一態様において、ベースポリマー100重量部に対する架橋剤の使用量は、凡そ0.01重量部以上(典型的には凡そ0.02重量部以上、例えば凡そ0.05重量部以上)以下とすることができ、また、凡そ10重量部以下(例えば凡そ5重量部以下)とすることができる。粘着剤層は非架橋であってもよい。このことは簡便性等の観点から好ましい。
【0089】
(その他成分)
その他、ここに開示される技術における粘着剤層には、フィラー、老化防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、染料等の、粘着剤の分野において公知の各種添加成分を必要に応じて配合することができる。これら必須成分ではない添加成分の種類や配合量は、この種の材料における通常の種類および配合量と同様とすればよい。
【0090】
上述のような粘着剤は、水分散液や有機溶剤溶液等の形態で、粘着剤層の形成に用いられ得る。また、活性エネルギー線硬化型やホットメルト型等の粘着剤も好ましく用いられ得る。なかでも、生産性向上や環境負荷軽減の観点からホットメルト型粘着剤が好ましい。積層シートの表面に粘着剤層を設ける方法は特に限定されず、例えば、積層シートの表面に粘着剤を直接塗工して粘着剤層を形成する方法(直接法)、適切な剥離面上に形成した粘着剤層を基材に転写する方法(転写法)等を用いることができる。粘着剤の塗工には、ダイコーターやグラビアコーター等の、従来公知の塗工手段を用いることができる。粘着剤層の形成にホットメルト型粘着剤を使用する場合、該ホットメルト型粘着剤は、有機溶剤を実質的に含有しない加熱溶融液の形態で塗工され得る。
【0091】
粘着剤層の厚みは、本発明の効果を著しく損なわない範囲で、任意の適切な厚みを採用し得る。このような厚みとしては、好ましくは5μm~150μmであり、より好ましくは10μm~100μmであり、さらに好ましくは20μm~80μmであり、特に好ましくは20μm~60μmである。粘着剤層の厚みがこのような範囲にあることにより、本発明の効果がより発現し得る。
【0092】
<用途>
【0093】
本発明のポリウレタン積層シートは、本発明の効果を有効に利用できる任意の適切な用途に用いることができる。このような用途の例としては、粘着シートの基材(支持体)が挙げられる。例えば、医療用または衛生材料用の粘着シートの基材として好ましく用いることができる。
【0094】
本発明の粘着シートは、本発明の効果を有効に利用できる任意の適切な用途に用いることができる。このような用途の例としては、医療用または衛生材料用の粘着シートが挙げられる。特に、医療用または衛生材料用であって皮膚貼付用の粘着シートとして好適に用いられ得る。皮膚貼付用の粘着シートの典型例としては、サージカルドレッシング用テープ、創傷保護テープ、絆創膏などが挙げられる。
【0095】
以下、本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明をかかる実施例に示すものに限定することを意図したものではない。なお、以下の説明において「部」および「%」は、特に断りがない限り重量基準である。
【0096】
以下の実施例で使用したポリウレタン原料は以下の通りである。
TPU1:熱可塑性エーテル系ポリウレタン(製品名:PANDEX EX-6880N、ディーアイシー コベストロ ポリマー株式会社製)
TPU2:熱可塑性エーテル系ポリウレタン(製品名:PANDEX T-8180N、ディーアイシー コベストロ ポリマー株式会社製)
TPU3:熱可塑性エーテル系ポリウレタン(製品名:レザミン PM2081、大日精化工業社製)
【0097】
なお、以下の実施例で使用したポリウレタン原料について、それぞれを100%使用して作製したポリウレタンシートについて、後述する水膨潤性試験および透湿度測定を行った結果は、以下の通りであった。
TPU1:水膨潤性あり、厚み20μmでの透湿度:5000g/(m2・24時間)
TPU2:水膨潤性なし、厚み20μmでの透湿度:450g/(m2・24時間)
TPU3:水膨潤性なし、厚み20μmでの透湿度:2000g/(m2・24時間)
【0098】
<実施例1>
表1に示すポリウレタン原料と、担持シートの原料として低密度ポリエチレン(製品名:スミカセンG-701、住友化学社製)を使用して、Tダイ押出し機で3層押出しすることにより、第1ポリウレタン層、第2ポリウレタン層、担持シートがこの順で積層した構成の、実施例1に係る担持シート付きポリウレタン積層シートを製造した。このときの第1ポリウレタン層および第2ポリウレタン層の厚みは、表1に示す通りとした。担持シートの厚みは50μmとした。
【0099】
アクリル系ポリマー100部と、アクリル系オリゴマー30部と、可塑剤30部とを加熱溶融状態で混合して粘着剤組成物を調製した。上記アクリル系オリゴマーとしては、東亞合成株式会社製の「アルフォンUP1021」(無官能基タイプ、Mw約1600)を使用した。上記可塑剤としては、DIC株式会社製の商品名「モノサイザーW-242」(アジピン酸ジイソノニル)を使用した。上記アクリル系ポリマーとしては、ポリメチルメタクリレート(MMA)ブロック-ポリ2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)/n-ブチルアクリレート(BA)ブロック-ポリメチルメタクリレート(MMA)ブロック(以下、「MMA-2EHA/BA-MMA」と表記することがある。)のトリブロック構造を有し、ポリ2EHA/BAブロックにおける2EHAとBAとの重量比(すなわち、重量基準の共重合比率)が50/50であり、ポリ2EHA/BAブロックの重量に対するポリMMAブロックの重量(2つのポリMMAブロックの合計重量)の比(MMA/(2EHA+BA))が18/82であるアクリル系ブロック共重合体を使用した。このアクリル系ブロック共重合体は、公知のリビングアニオン重合法により合成されたものであり、Mwは10×104、Mnは8.4×104であった。
【0100】
実施例1に係る担持シート付きポリウレタン積層シートの第1ポリウレタン層側の表面に、上記粘着剤組成物を溶融状態でグラビア塗工により格子状に塗布して、粘着シートを作製した。このようにして得られた粘着シートを実施例1に係る担持シート付き粘着シートとした。粘着剤層の厚みは40μmとした。
【0101】
<実施例2~3および比較例1~3>
第1ポリウレタン層および第2ポリウレタン層の組成および厚みを表1に示す通りにしたこと以外は、実施例1に係る担持シート付き粘着シートと同様の製造方法により、実施例2~3および比較例1~3に係る担持シート付き粘着シートを作製した。
【0102】
[透湿度(カップ法)測定]
各例に係るポリウレタン積層シートの透湿度を、JIS Z0208の透湿度試験(カップ法)に準拠して測定した。具体的には、各例に係る担持シート付きポリウレタン積層シートから担持シートを剥離除去し、試験用カップ(アルミニウム製、直径30mm、JIS Z0208のカップ法で用いられるカップ)の口径に合わせて、直径30mmの円形状に切り取ったものを試験サンプルとして用いた。そして、上記カップの内部に所定量の塩化カルシウムを入れた状態で、上記で作製した試験サンプルでカップの口を密閉した。試験サンプルで覆われたカップを40℃、90%RHの恒温高湿チャンバー内に入れて、24時間)放置した前後における塩化カルシウムの重量変化を測定することにより、透湿度[g/(m2・24時間)]を求めた。
【0103】
[非浸軟性試験]
各例に係る粘着シートについて、該粘着シートをヒトの皮膚に貼り付けたときの浸軟現象の生じにくさ(非浸軟性)について、以下の試験結果に基づいて評価した。まず、各例に係る担持シート付き粘着シートを80mm×20mmの長方形状に裁断し、これをヒトの人差し指に巻きつけて貼付し、その後速やかに粘着シートから担持シートを剥離除去した。粘着シートを貼り付けてから24時間後に指から粘着シートを剥離し、そのときの皮膚の状態を目視で観察した。その結果、以下の2段階で粘着シートの非浸軟性を評価し、結果を表1の「非浸軟性」の欄に示した。
皮膚が通常の状態(即ち、白くふやけていない状態)である場合:非浸軟性良好(〇)
皮膚が白くふやけている場合:非浸軟性不良(×)
【0104】
[水膨潤性試験]
各例に係る粘着シートについて、その水膨潤性を以下のようにして測定した。まず、各例に係る担持シート付き粘着シートから担持シートを剥離除去し、粘着シートの第2ポリウレタン層側の表面上に、駒込ピペットを用いて温度23℃の脱イオン水を3滴落とし、5分経過後、評価対象シート上の水分をウエスで拭き取り、直ちに評価対象シートの水滴滴下箇所に膨れがあるか否かを目視で横から観測した。その結果、膨れが観測されなかった場合を水膨潤性なし(非水膨潤性良好:○)、膨れが観測された場合を水膨潤性あり(非水膨潤性不良:×)とした。結果を表1の「非水膨潤性」の欄に示す。
【0105】
【0106】
なお、実施例1~3に係る第1ポリウレタン層はいずれも水膨潤性があり、実施例1~3に係る第2ポリウレタン層はいずれも水膨潤性がなかった。また、表1に示される結果から明らかなように、透湿度が高い積層シートを基材として含む粘着シートによると、非浸軟性が良好な結果を示す傾向があった。
【0107】
表1に示す結果から明らかなように、水膨潤性を有する第1ポリウレタン層と、水膨潤性を有しない第2ポリウレタン層とを積層させて構成したポリウレタン積層シートを基材として含む実施例1~3に係る粘着シートによると、非浸軟性の結果が良好でありさらに非水膨潤性が良好であることがわかった。
【0108】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【符号の説明】
【0109】
10 ポリウレタン積層シート(積層シート)
12 一方の表面
14 他方の表面
20 第1ポリウレタン層
30 第2ポリウレタン層
40 担持シート
50 粘着シート
60 粘着剤層