(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-02
(45)【発行日】2022-05-13
(54)【発明の名称】エアバッグ装置のカバー体
(51)【国際特許分類】
B60R 21/215 20110101AFI20220506BHJP
B60R 21/203 20060101ALI20220506BHJP
B60R 13/00 20060101ALI20220506BHJP
【FI】
B60R21/215
B60R21/203
B60R13/00
(21)【出願番号】P 2018094840
(22)【出願日】2018-05-16
【審査請求日】2021-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000229955
【氏名又は名称】日本プラスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100062764
【氏名又は名称】樺澤 襄
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【氏名又は名称】山田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】大木 拓也
(72)【発明者】
【氏名】木内 陽平
【審査官】飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-069931(JP,A)
【文献】特開2014-233986(JP,A)
【文献】特開2007-314135(JP,A)
【文献】特開2004-345551(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0315306(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第10027240(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/16-21/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カバー本体部と、前記カバー本体部の表面側に取り付けられる装飾部材とを具備し、エアバッグを覆うエアバッグ装置のカバー体であって、
前記装飾部材は、光源と、この光源を覆う光透過性を有する装飾体と、前記カバー本体部に固定され前記装飾体の外周部を保持する保持体とを備え、
前記装飾体は、装飾部と、この装飾部の外周部に設けられ前記保持体が係合する係合部を
備え、前記係合部は前記係合部の表面側に設けられる係合部側突部及び係合部側溝部を有し、
前記保持体は、前記装飾体の前記係合部の表面側に重なる保持部を備え、前記保持部は前記係合部側突部に嵌合する保持部側溝部及び前記係合部側溝部に嵌合する保持部側突部を有し、
前記係合部側突部と前記保持部側溝部、及び前記係合部側溝部と前記保持部側突部は、それぞれテーパー嵌合する
ことを特徴とするエアバッグ装置のカバー体
。
【請求項2】
前記装飾体の前記係合部は、全周に亘って形成され、
前記保持体は、環状に形成され、前記装飾体の前記係合部と全周に亘って嵌合されている
ことを特徴とする請求項
1記載のエアバッグ装置のカバー体。
【請求項3】
前記装飾部材は、前記カバー本体部の裏面側に配置される係止体を備え、
前記保持体は、前記カバー本体部の表面側から裏面側に貫通するとともに前記係止体に係止される係止部を有する
ことを特徴とする請求項1
または2記載のエアバッグ装置のカバー体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カバー本体部の表面側に装飾部材が取り付けられたエアバッグ装置のカバー体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車などの車両のハンドルのハブコアなどの固定部に備えられるエアバッグ装置が用いられている。このエアバッグ装置は、袋状のエアバッグと、このエアバッグにガスを供給するインフレータと、エアバッグを非展開時に覆って収納するカバー体とを備えている。そして、車両が例えば衝突などにより衝撃を受けた際に、インフレータからエアバッグへとガスが供給されることでエアバッグが膨張し、このエアバッグの膨張によりカバー体が予め設けられた破断線すなわちテアラインに沿って破断して複数の扉部が形成され、これら扉部がそれぞれヒンジ部を中心として展開することにより、エアバッグが乗員側に展開して、乗員を拘束して保護するように構成されている。
【0003】
このようなエアバッグ装置のカバー体において、カバー本体部の表面側の略中央部に装飾部材としてのエンブレム(オーナメント)が取り付けられ、さらに、このエンブレムが発光する構成が知られている。
【0004】
このようなエアバッグ装置のカバー体において、カバー本体部の表面側の略中央部に、発光するようにした装飾部材としてのエンブレム(オーナメント)が取り付けられる構成が知られている。この構成では、カバー本体部の表面側に光源、及びこの光源を覆って光透過性を有する装飾体としてのエンブレム体がそれぞれ配置されている。エンブレム体は、裏側に複数の脚部が突出され、これら脚部がカバー本体部に貫通されて熱溶着により係止されることで、エンブレム体がカバー本体部に固定されている。エアバッグの展開時に、エンブレムはカバー本体部に固定された状態を維持しなければならないため、エンブレム体の裏面全域に多数の脚部が設けられている。そして、光源の光がエンブレム体内に入射し、エンブレム体が発光するように構成されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-226348号公報(第9頁、
図8)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の構成では、エンブレム体の裏面全域に複数の脚部が突出されているため、脚部の位置とこの脚部の周辺の位置とでエンブレム体の発光効果に差異が生じやすく、エンブレム体の発光の均一性が得られない。
【0007】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、装飾体の発光の均一性が得られるエアバッグ装置のカバー体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載のエアバッグ装置のカバー体は、カバー本体部と、前記カバー本体部の表面側に取り付けられる装飾部材とを具備し、エアバッグを覆うエアバッグ装置のカバー体であって、前記装飾部材は、光源と、この光源を覆う光透過性を有する装飾体と、前記カバー本体部に固定され前記装飾体の外周部を保持する保持体とを備え、前記装飾体は、装飾部と、この装飾部の外周部に設けられ前記保持体が係合する係合部を備え、前記係合部は、前記係合部の表面側に設けられる係合部側突部及び係合部側溝部を有し、前記保持体は、前記装飾体の前記係合部の表面側に重なる保持部を備え、前記保持部は前記係合部側突部に嵌合する保持部側溝部及び前記係合部側溝部に嵌合する保持部側突部を有し、前記係合部側突部と前記保持部側溝部、及び前記係合部側溝部と前記保持部側突部は、それぞれテーパー嵌合するものである。
【0009】
請求項2記載のエアバッグ装置のカバー体は、請求項1記載のエアバッグ装置のカバー体において、前記装飾体の前記係合部は、全周に亘って形成され、前記保持体は、環状に形成され、前記装飾体の前記係合部と全周に亘って嵌合されているものである。
【0010】
請求項3記載のエアバッグ装置のカバー体は、請求項1または2記載のエアバッグ装置のカバー体において、前記装飾部材は、前記カバー本体部の裏面側に配置される係止体を備え、前記保持体は、前記カバー本体部の表面側から裏面側に貫通するとともに前記係止体に係止される係止部を有するものである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載のエアバッグ装置のカバー体によれば、装飾体の装飾部の外周部に設けられた係合部に保持体が係合し、この保持体で装飾体をカバー本体部に保持できるため、装飾体の装飾部には保持構造が不要で、装飾体の装飾部における発光の均一性が得られる。さらに、装飾体の係合部と保持体の保持部とが凹凸嵌合するため、エアバッグの展開時に装飾体をカバー本体部に確実に保持した状態を維持できる。さらに、係合部側突部と保持部側溝部、及び係合部側溝部と保持部側突部がそれぞれテーパー嵌合するため、保持体により装飾体をカバー本体部に押え付けることに加えて、保持体と装飾体とを強固に固定でき、装飾体のがたつきや異音の発生を防止できる。
【0012】
請求項2記載のエアバッグ装置のカバー体によれば、請求項1記載のエアバッグ装置のカバー体の効果に加えて、環状の保持体が装飾体の係合部と全周に亘って嵌合するため、強固な固定ができる。
【0013】
請求項3記載のエアバッグ装置のカバー体によれば、請求項1または2記載のエアバッグ装置のカバー体の効果に加えて、保持体の係止部を、カバー本体部を貫通させて係止体に係止することにより、これら保持体と係止体とにより装飾体、光源及びカバー本体体部を挟み込んで固定することができるため、組立作業性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第1の実施の形態を示すエアバッグ装置のカバー体の
図4A-A視の断面図である。
【
図2】同上カバー体の装飾体と保持体の分解状態の断面図である。
【
図4】同上カバー体を備えたハンドルの正面図である。
【
図5】第2の実施の形態を示す装飾体の正面図である。
【
図6】第3の実施の形態を示す装飾体の正面図である。
【
図7】第4の実施の形態を示す装飾体と保持体の係合状態の断面図である。
【
図8】第5の実施の形態を示す装飾体の係合部の斜視図である。
【
図9】第6の実施の形態を示す装飾体の一部の正面図である。
【
図10】同上装飾体および保持体の
図9B-B視の断面図である。
【
図12】第7の実施の形態を示すカバー体の(
図4A-A視に対応した)断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施の形態を、
図1ないし
図4を参照して説明する。
【0016】
図4において、10は車両である自動車のハンドルとしてのステアリングホイールである。このステアリングホイール10は、ハンドル本体としてのステアリングホイール本体11と、このステアリングホイール本体11の乗員側に装着されるエアバッグ装置12とを備えている。なお、ステアリングホイール10は、通常傾斜した状態で車両に備えられるステアリングシャフトに装着されるものであるが、以下、車両の直進状態を基準とし、ステアリングシャフト側を背面側(裏面側)、乗員側を正面側(表面側)とし、フロントガラスに向かう方向(矢印U方向)を上側として説明する。
【0017】
そして、ステアリングホイール本体11は、円環状をなす把持部であるグリップ部であるリム部14と、このリム部14の内側に位置するボス部15と、これらリム部14とボス部15とを連結する複数のスポーク部16とから構成されている。
【0018】
また、図示しないが、ボス部15の背面部には、ステアリングシャフトに嵌着される略円筒状のボスが設けられているとともに、このボスに芯体を構成するボスプレートがマグネシウム合金などをダイカストで鋳ぐるみなどして一体的に固着されている。そして、このボスプレートから、スポーク部16の芯金が一体に延設され、あるいは溶接などして固着されている。さらに、このスポーク部16の芯金に、リム部14の芯金が溶接などして固着されている。また、これらリム部14の芯金の外周部と、スポーク部16の芯金のリム部14側の部分の外周部とには、軟質の発泡ポリウレタンなどからなる表皮部が形成され、さらに、この表皮部の外周の全部あるいは一部が、天然あるいは人工の皮革により覆われている。
【0019】
一方、エアバッグ装置12は、エアバッグモジュールとも呼ばれ、ステアリングホイール本体11のボス部の正面側を覆うように配置されるもので、金属板などからなる被取付部材としてのベースプレート、袋状のエアバッグ、ガスを噴射するインフレータなどを備えるとともに、カバー体18を備えている。そして、ベースプレートは、ホーンプレートあるいはブラケット部などを介してステアリングホイール本体11に取り付けられ、このベースプレートに、エアバッグ、インフレータ、及びカバー体18が取り付けられ、小さく折り畳まれたエアバッグがカバー体18により覆われている。
【0020】
図1及び
図3に示すように、カバー体18は、ケース体、パッド、あるいはモジュールカバーなどとも呼ばれるもので、例えばTPOなどの軟質の合成樹脂などにて一体成形されたカバー本体部19と、このカバー本体部19に取り付けられた装飾部材としてのエンブレム20とを備えている。
【0021】
カバー本体部19は、ボス部15及びスポーク部16の一部を覆う被覆部としてのカバー部21と、このカバー部21の背面側(裏面側)から筒状に突設された周壁部22とを備えている。そして、カバー部21と周壁部22とに囲まれた内側部分が、折り畳んだエアバッグを収納するエアバッグ収納部となる。このエアバッグ収納部の正面側に臨むカバー部21の部分が表面部23となるとともに、この表面部23の意匠面である正面側の中央部に、エンブレム20が収納される収納部としての取付凹部24が凹設されている。
【0022】
カバー部21の背面側には、エアバッグ収納部に臨み、表面部23の取付凹部24を避けた位置に図示しないテアラインが形成され、このテアラインの開裂によりエアバッグの展開時に複数の扉部が形成される。このテアラインは、予定線部あるいは破断予定部となどとも呼び得るもので、表面部23の背面側を溝状に凹設し、表面部23の他の部分より脆弱な弱部として形成されている。このテアラインは、設定したい扉部の形状及び枚数に応じて任意に設定できるが、本実施の形態では、例えば取付凹部24の一側部から下部を経由して他側部に表面部23のエアバック収納スペースを横断するように連続する中央テア部と、この中央テア部の左右端を始点として表面部23のエアバック収納スペースの外縁部に沿って各上下に延びる4本の外周テア部とが形成されている。表面部23のエアバック収納スペースの外周縁を回って外周テア部が延長されて向かう12時方向及び6時方向で外周テア部同士が出合い繋がってしまう前の所定位置で外周テア部を終端させ、所定幅で外周テア部を設けない箇所とし、エアバック展開時の扉を支持するヒンジ部としている。したがって、エンブレム20を含む側の扉部は、表面部23の取付凹部24の上方を、エンブレム20を含まない側の扉部は、表面部23の取付凹部24の下方を、それぞれヒンジ部として、それぞれ上及び下に開く扉を形成するようになっている。
【0023】
周壁部22には、図示を省略しているが、ベースプレートとカバー体18とを係合するための係合爪部及び係合開口部などの係合構造が設けられている。
【0024】
取付凹部24は、エンブレム20の形状に対応して設けられており、本実施の形態では、例えば正面から見て略円形状となっている。この取付凹部24(表面部23)には、エンブレム20を取り付けるための複数の挿通孔25、及び図示しない配線孔が形成されている。複数の挿通孔25は、取付凹部24の外周部の位置に形成されており、例えば、取付凹部24の外周部で周方向に沿って等間隔の位置に形成されている。この挿通孔25は、円形孔状で、表面部23(取付凹部24)を厚さ方向である前後方向に貫通して形成されている。この配線孔は、取付凹部24の外周部であって、例えば取付凹部24の下部側で、表面部23(取付凹部24)を厚さ方向である前後方向に貫通して形成されている。また、取付凹部24の外周部の背面側には、各挿通孔25の周囲に円形の窪み部26が形成されているとともに、この窪み部26よりも内周側に位置決め突部27が突設されている。この位置決め突部27は、周方向に環状に形成されていてもよいし、周方向の複数箇所に突起状に突出されていてもよい。
【0025】
また、
図1ないし
図3に示すように、エンブレム20は、オーナメントなどとも呼ばれるもので、光源としての面状光源30と、この面状光源30を覆う装飾体としてのパネル31と、このパネル31をカバー本体部19に保持する保持体としての加飾部品32と、この加飾部品32をカバー本体部19に係止する係止体としてのクリップ33とを備えている。そして、エンブレム20は、面状光源30、パネル31及び加飾部品32がカバー本体部19の取付凹部24に配置されるとともにクリップ33がカバー本体部19の背面側(裏面側)に配置され、加飾部品32とクリップ33との間でパネル31、面状光源30及びカバー本体部19の表面部23を挟み込んだ状態で、カバー本体部19に固定されている。
【0026】
面状光源30は、例えば、基板36の表面に有機EL素子が実装されて平面状に連続した一つの発光面37が形成された有機EL基板である。なお、面状光源30としては、例えば、LEDと、このLEDから入射する光を導光して表面から出射する導光板とで構成される導光板方式を用いてもよい。また、面状光源30は、取付凹部24に配置可能とする円板状に形成されている。面状光源30は、取付凹部24の挿通孔25が形成されている外周部よりも内側域に配置され、カバー本体部19とパネル31との間に挟み込まれて固定される。基板36には給電用の図示しないケーブルが接続され、このケーブルが取付凹部24の配線孔を通じてボス部15内に配置される給電コネクタなどに接続される。
【0027】
パネル31は、光透過性を有する例えばポリメチルメタクリレート(PMMA)、あるいはポリカーボネート(PC)などの合成樹脂により、取付凹部24に配置可能とする円板状に形成されている。パネル31は、装飾部としてのパネル部40と、このパネル部40の外周部に設けられた係合部41とを備えている。
【0028】
パネル31のパネル部40は、円板状に形成されている。このパネル部40の正面側(表面側)は、凹凸のない平滑な面であって、中央が突出する凸曲面状に形成されている。このパネル部40の背面側(裏面側)は、凹凸のない平滑な面であって、平面状に形成されている。このパネル部40の背面側は、係合部41の背面側まで連続した平面状に形成されている。また、このパネル部40の正面側には、適宜、表面処理が施されている。例えば、このパネル部40の正面側に光透過性を有するフィルムが貼り付けられている。このフィルムは、例えば、エンブレムデザインやロゴの形状に対応して金属薄膜が形成されたハーフミラーフィルムで、外部から金属薄膜に入射する光を反射し、面状光源30からの入射する光を透過するように構成されている。なお、このパネル部40の背面側には、面状光源30を収容する収容凹部が形成されていてもよい。
【0029】
パネル31の係合部41は、パネル部40の全周に亘って環状に形成されている。この係合部41は、この係合部41の最外周部で正面側に突出する突条である係合部側突部42と、この係合部側突部42よりも内周側であって係合部側突部42とパネル部40との間に溝状に設けられる係合部側溝部43とを有している。これら係合部側突部42及び係合部側溝部43は、係合部41の全周に亘って環状に形成されている。
【0030】
加飾部品32は、例えばポリエステル系エラストマーなどの合成樹脂により、取付凹部24に配置可能とする環状に形成されている。この加飾部品32は、環状の保持部46と、この保持部46の背面側から突出する複数の係止部47とを有している。この加飾部品32の保持部46の少なくとも正面側には加飾が施されている。加飾には、例えば、ピアノブラック塗装、メタリック塗装、いぶし銀調メッキ、木目流体印刷、及びカーボンコンポジット柄フィルムインサート成形などのいずれかが含まれる。
【0031】
加飾部品32の保持部46は、この保持部46の内周部側がパネル31の係合部41の正面側に重なって係合し、パネル31を位置決めするとともにパネル31をカバー本体部19の取付凹部24内に保持する。この保持部46は、この保持部46の背面側に溝状に設けられる保持部側溝部48と、この保持部側溝部48よりも内周側であって保持部46の最内周部で背面側に突出する保持部側突部49を有している。これら保持部側溝部48及び保持部側突部49は、保持部46の全周に亘って環状に形成されている。そして、この保持部46の背面側をパネル31の係合部41の正面側に重ね合せることにより、保持部側溝部48が係合部側突部42に嵌合され、保持部側突部49が係合部側溝部43に嵌合される。これら保持部側溝部48と係合部側突部42、及び保持部側突部49と係合部側溝部43は、全周に亘って嵌合される。また、この保持部46の表面は、パネル31の係合部41と加飾部品32の保持部46とが嵌合した状態でパネル31のパネル部40の正面側に対して段差なく連続した面となるように凸曲面状または平面状に形成されている。
【0032】
なお、パネル31と加飾部品32との周方向の位置を位置決めするための位置決め構造(回り止め構造)を備えていてもよい。この位置決め構造としては、例えば、パネル31の係合部側突部42及び係合部側溝部43と加飾部品32の保持部側溝部48及び保持部側突部49とは別に位置決め用の凹凸嵌合構造を設けてもよい。
【0033】
加飾部品32の係止部47は、保持部46の背面側で、カバー本体部19の取付凹部24に設けられる各挿通孔25の位置と対応する位置から突設されている。この係止部47は、円柱部52と、この円柱部52の先端側で段差状に径大となる係止爪部53とを有している。この係止部47は、カバー本体部19(取付凹部24)の挿通孔25を挿通可能とし、係止爪部53がカバー本体部19の背面側に配置されるクリップ33に係止される。
【0034】
クリップ33は、ロワエンブレムなどとも呼ばれるもので、例えばABSなどの合成樹脂を射出成形することにより環状に形成されている。このクリップ33は、加飾部品32の各係止部47が嵌挿(圧入)される複数の係止孔56と、この係止孔56に嵌挿された係止部47の係止爪部53を係止する複数の係止受部57とを備えている。
この係止受部57は、この係止受部57以外のクリップ33の前後方向の厚みよりも薄く、前面側に突出するように屈曲形成されている。この係止受部57の中央に係止孔56が形成されている。そして、このクリップ33は、このクリップ33の内周部が位置決め突部27の外周に係合して位置決めされた状態でカバー本体部19の背面側に配置される。このクリップ33の各係止受部57は、カバー本体部19の各窪み部26に配置され、カバー本体部19の各挿通孔25を挿通して各係止孔56に嵌挿(圧入)される係止部47の係止爪部53を係止する。
【0035】
そして、カバー体18の製造の際には、カバー部21及び周壁部22を含むカバー本体部19を予め合成樹脂により射出成形した後、カバー本体部19の取付凹部24に面状光源30、パネル31及び加飾部品32を順に組み込む。このとき、パネル31の係合部41と加飾部品32の保持部46とが互いに嵌合されて一体化され、すなわち、係合部41の係合部側突部42及び係合部側溝部43と保持部46の保持部側溝部48及び保持部側突部49とが互いに嵌合されて一体化される。さらに、加飾部品32の各係止部47が取付凹部24の各挿通孔25に挿通される。
【0036】
さらに、クリップ33をカバー本体部19の背面側に配置し、このクリップ33の各係止孔56に対して各挿通孔25から突出する係止部47の係止爪部53を含む先端側を嵌挿(圧入)することにより、係止爪部53が係止孔56を貫通して係止受部57の背面側に係止される。
【0037】
この結果、加飾部品32とクリップ33とにより、パネル31、面状光源30及びカバー本体部19が挟み込まれた状態で、エンブレム20がカバー本体部19に強固に固定される。さらに、この状態で、エンブレム20は、面状光源30、パネル31及び加飾部品32が取付凹部24に収納され、この取付凹部24の周囲の表面部23の前面側から大きく突出することなく、略面一となる。
【0038】
そして、このカバー体18を備えたエアバッグ装置12をステアリングホイール10に備えた自動車が衝突などすると、制御装置がインフレータを作動させ、エアバッグにガスを供給する。すると、エアバッグが急速に膨張展開し、この膨張展開する圧力でカバー体18をテアラインに沿って破断し、扉部を形成し、この扉部がヒンジ部を軸として回動してエアバッグを膨出させる開口である突出口を形成し、この突出口からエアバッグが乗員の前方に展開し、乗員を保護する。
【0039】
また、このカバー体18を有するエアバッグ装置12をステアリングホイール10に備えた自動車において、外光がパネル31のパネル部40の前面側に設けられているフィルムの金属薄膜に入射すると、その金属薄膜によってエンブレムデザインなどが反射して見える。また、面状光源30が発光すると、この面状光源30の発光面37からの光がパネル31のパネル部40に入射するとともにパネル部40を透過してパネル部40の前面側から出射する。このとき、パネル部40は前面側及び背面側とも凹凸のない平滑な面に形成されているため、光がパネル部40全体を均一に透過し、パネル部40全体の発光の均一性が得られる。さらに、フィルムの金属薄膜によってエンブレムデザインなどが透過して見える。
【0040】
パネル部40の背面側には、カバー体18に取り付けるための係合突起などがなく、それに組み合わされる面状光源30にも、発光面37に係合突起などのための通孔を形成する必要がないから、発光面37には島状に非発光部分が生じないので、パネル部40を均一に発光させることができ、また加工の容易性、収率(歩留まり)の面でも有利で製造コストを抑えることができる。
【0041】
このように、本実施の形態によれば、パネル31のパネル部40の外周部に設けられた係合部41に加飾部品32が係合し、この加飾部品32でパネル31をカバー本体部19に保持できるため、パネル部40の光が透過する方向である正面側及び背面側に保持構造などが不要となるとともに、これらパネル部40の正面側及び背面側を平滑な面とすることが可能となり、面状光源30からの光がパネル部40全体を均一に透過し、パネル部40全体の発光の均一性が得られる。
【0042】
また、パネル31の係合部41と加飾部品32の保持部46とが互いに凹凸嵌合するため、エアバッグの展開時にパネル31をカバー本体部19に確実に保持した状態を維持できる。
【0043】
しかも、パネル31の全周に亘って形成されている係合部41と環状の加飾部品32とがその全周に亘って嵌合するため、加飾部品32でパネル31の強固な固定ができる。同時に、パネル31の外周に光が漏れにくくなる。
【0044】
また、加飾部品32の係止部47を、カバー本体部19を通じてクリップ33に係止することにより、加飾部品32とクリップ33との間でパネル31、面状光源30及びカバー本体部19を挟み込んで固定することができるため、つまりワンタッチで固定することができるため、組立作業性を向上できる。
【0045】
次に、第2の実施の形態を
図5に示し、第3の実施の形態を
図6に示して説明する。なお、上記の実施の形態と同じ構成及び作用については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0046】
図5または
図6に示すように、パネル31のパネル部40は、略四角形状に形成してもよい。なお、パネル部40は、楕円形、菱形、及び三角形などの他の形状でもよい。
【0047】
パネル31の係合部41は、パネル部40の形状に関わらず、パネル部40の全周に設けてもよいが、
図5に示すようにパネル部40の両側域のみに設けてもよいし、
図6に示すようにパネル部40の上側域以外の外周域に設けてもよい。
【0048】
次に、第4の実施の形態を、
図7を参照して説明する。なお、上記の各実施の形態と同じ構成及び作用については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0049】
係合部側突部42と保持部側溝部48、及び係合部側溝部43と保持部側突部49は、それぞれ互いにテーパー嵌合するように形成されている。すなわち、係合部側突部42及び保持部側突部49は、基端側の幅が広く、先端側の幅が狭まるように外側面がテーパー状に形成され、また、係合部側溝部43及び保持部側溝部48は、溝奥側の幅が狭く、開口側の幅が広がるように内側面がテーパー状に形成されている。本実施の形態では、係合部側突部42の内周側の外側面がテーパー面状に形成され、係合部側溝部43の内周側及び外周側の両内側面がテーパー面に形成され、また、保持部側突部49の内周側及び外周側の両外側面がテーパー状に形成され、保持部側溝部48の内周側の内側面がテーパー状に形成されている。
【0050】
そして、係合部側突部42と保持部側溝部48、及び係合部側溝部43と保持部側突部49がそれぞれ互いにテーパー嵌合することにより、加飾部品32でパネル31をカバー本体部19に押える力によってパネル31が外径方向に引き込まれ、あるいは内径方向に押し込まれ、パネル31と加飾部品32とが凹凸嵌合した状態で強固に固定されるため、パネル31のがたつきを防止できるとともに異音の発生を防止できる。
【0051】
次に、第5の実施の形態を、
図8を参照して説明する。なお、上記の各実施の形態と同じ構成及び作用については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0052】
パネル31の係合部41に設けられる係合部側突部42は、係合部41に沿って複数の突起状に設けてもよい。この係合部側突部42は、例えば、円柱状に設けられるが、係合部41に沿って長い略長円形などでもよい。この場合、複数の突起状の係合部側突部42とパネル部40との間、及び隣り合う係合部側突部42,42の間などが、係合部側溝部43となる。
【0053】
このパネル31の係合部41に対応して、加飾部品32の保持部46の保持部側溝部48は、係合部41の各係合部側突部42を嵌合する複数の凹状に設けられている。この場合、保持部46の背面側で凹状の保持部側溝部48以外の部分が、保持部側突部49となる。
【0054】
この構成により、パネル31の係合部41と加飾部品32の保持部46とが凹凸嵌合することで、パネル31と加飾部品32との周方向の位置を位置決めして保持できる。
【0055】
なお、加飾部品32の保持部46の保持部側溝部48は、保持部46に沿って連続した溝状でもよく、この保持部側溝部48でも突起状の複数の係合部側突部42を嵌合できる。
【0056】
次に、第6の実施の形態を、
図9ないし
図11を参照して説明する。なお、上記の各実施の形態と同じ構成及び作用については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0057】
パネル31の係合部41に設けられる係合部側突部42は、係合部41に沿って複数に分割形成されている。各係合部側突部42の先端側内周面に係合爪部60が突設されている。各係合部側突部42の基部側とパネル部40との間には、係合爪部60を成形するための成形用開口部61が前後方向に貫通形成されている。
【0058】
このパネル31の係合部41に対応して、加飾部品32の保持部46の保持部側突部49は、保持部46がパネル31の係合部41に凹凸嵌合した状態で、係合爪部60が係合する係合受部62を有している。なお、保持部側突部49は、保持部46に沿って複数に分割形成されていてもよいし、保持部46に沿って連続して形成されていてもよい。
【0059】
この構成により、パネル31と加飾部品32とを組み合わせることで一体化でき、パネル31と加飾部品32との結合を強固にできるとともに、組立性を向上できる。
【0060】
次に、第7の実施の形態を、
図12を参照して説明する。なお、上記の各実施の形態と同じ構成及び作用については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0061】
加飾部品32の係止部47は、溶着によってカバー本体部19の背面側に固定してもよい。
【0062】
この構成により、クリップ33を省略でき、部品点数を削減できる。
【0063】
なお、上記の各実施の形態において、パネル31の係合部41及び加飾部品32の保持部46のいずれか一方に突部のみを設け、いずれか他方に溝部のみを設け、これらが凹凸嵌合するようにしてもよい。
【0064】
また、パネル31の係合部41と加飾部品32の保持部46とは、凹凸嵌合することが好ましいが、凹凸嵌合せず、単に係合部41と保持部46とが係合するだけでもよい。
【0065】
また、上記の各実施の形態において、カバー本体部19には、エンブレム20が配置される取付凹部24を設けたが、カバー本体部19に対してエンブレム20が突出するように取り付ける場合には、取付凹部24は不要である。
【0066】
また、エアバッグ装置12は、例えばホーンスイッチの操作部を兼ねるものでもよい。
【0067】
そして、カバー体18の形状は、それぞれステアリングホイール10の形状などに対応して任意に設定できる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、例えば、自動車のハンドル(ステアリングホイール)に用いられるエアバッグ装置のカバー体の他、種々の移動体のハンドルその他の部位に備えられるエアバッグ装置のカバー体に適用できる。
【符号の説明】
【0069】
12 エアバッグ装置
18 カバー体
19 カバー本体部
20 装飾部材としてのエンブレム
30 光源としての面状光源
31 装飾体としてのパネル
32 保持体としての加飾部品
33 係止体としてのクリップ
40 装飾部としてのパネル部
41 係合部
42 係合部側突部
43 係合部側溝部
46 保持部
47 係止部
48 保持部側溝部
49 保持部側突部