(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-02
(45)【発行日】2022-05-13
(54)【発明の名称】燃焼装置
(51)【国際特許分類】
F23Q 3/00 20060101AFI20220506BHJP
F23N 5/26 20060101ALI20220506BHJP
F23N 5/12 20060101ALI20220506BHJP
【FI】
F23Q3/00 102G
F23N5/26 Z
F23N5/12 Z
(21)【出願番号】P 2018097750
(22)【出願日】2018-05-22
【審査請求日】2021-05-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000129231
【氏名又は名称】株式会社ガスター
(74)【代理人】
【識別番号】100098796
【氏名又は名称】新井 全
(74)【代理人】
【識別番号】100121647
【氏名又は名称】野口 和孝
(74)【代理人】
【識別番号】100187377
【氏名又は名称】芳野 理之
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】須田 裕行
(72)【発明者】
【氏名】小泉 進
【審査官】藤原 弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-219299(JP,A)
【文献】特開2017-219300(JP,A)
【文献】特開2000-283462(JP,A)
【文献】特開2011-33244(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23Q 3/00
F23N 5/26
F23N 5/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の燃焼バーナを有するバーナユニットと、
前記バーナユニットを収容するバーナケースと、
前記バーナケースの前面に取り付けられるとともに前記バーナケースとともに燃焼室を形成する板状部材と、
前記燃焼バーナの点火用または炎検出用の電極と、
前記電極を外周側から保持する絶縁性の碍子部材と、
前記碍子部材を前記板状部材に取り付けるための取付部材と、を備え、
前記板状部材は、
平坦状に形成されるとともに前記取付部材が取り付けられる取付面と、
前記取付面よりも前記燃焼室側に配置されるとともに前記電極および前記碍子部材が挿入される挿入穴が形成された底面と、
前記取付面と前記底面とを連結する傾斜面と、を有し、
前記碍子部材は、
軸線に沿って延びる略筒状に形成されて前記挿入穴に挿入される先端部と、
前記軸線に対する外径が前記挿入穴の内径よりも大きく前記傾斜面と対応する形状に形成された突出部と、を有し、
前記取付部材は、前記突出部が前記傾斜面の少なくとも2点に接触した状態を保持するように前記板状部材に取り付けられることを特徴とする燃焼装置。
【請求項2】
前記突出部は、前記軸線に直交する形状が略四角形状であり、
前記傾斜面は、同一方向に延びるように形成される一対の第1傾斜部を有し、
前記取付部材は、前記軸線を挟んで平行に延びる前記突出部の一対の辺が前記一対の第1傾斜部に接触した状態を保持するように前記板状部材に取り付けられることを特徴とする請求項1に記載の燃焼装置。
【請求項3】
前記傾斜面は、前記第1傾斜部と直交する方向に延びるように形成される第2傾斜部を有し、
前記取付部材は、前記突出部の前記一対の辺とは異なる他の辺が前記第2傾斜部に接触した状態を保持するように前記板状部材に取り付けられることを特徴とする請求項2に記載の燃焼装置。
【請求項4】
前記挿入穴と該挿入穴に挿入される前記先端部との隙間を封止するための封止部材を備え、
前記取付部材は、前記突出部との間に前記封止部材を挟んだ状態で前記板状部材に取り付けられることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の燃焼装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の燃焼バーナを有するバーナユニットと、バーナユニットを収容するバーナケース本体と、点火用の電極が取り付けられている前板とを備える燃焼器具が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の燃焼器具は、バーナケース本体に対してバーナユニットを挿入し、かつねじを用いて前板をバーナケース本体に対して固定するものである。特許文献1の燃焼器具は、バーナケース本体,バーナユニット,前板の3つを含むため、ねじの挿入穴の製造公差等により、これらの相対的な位置ずれが生じてしまう。そこで、特許文献1に開示される燃焼器具は、バーナユニットに形成された穴にねじをはめ込むことで、バーナユニットと前板の位置決めをしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示される燃焼器具において、イグナイタ電極およびフレームロッド電極を含む電極ユニットは、ねじにより前板に着脱可能に取り付けられている。電極ユニットをねじにより前板に取り付ける場合、製造上の公差を吸収するために、電極ユニットに形成されるねじの挿入穴の内径寸法はねじの外径寸法よりも大きくなる。そのため、前板に対するイグナイタ電極およびフレームロッド電極の先端の燃焼バーナに対する位置は、挿入穴の内径寸法とねじの外径寸法の差の分だけずれる可能性がある。よって、バーナユニットと前板の位置決めが正確になされた場合であっても、イグナイタ電極およびフレームロッド電極の先端を燃焼バーナに対して正確に位置決めすることができない。
【0005】
本発明は、前記課題を解決するためになされたものであり、燃焼バーナに対して燃焼バーナの点火用または炎検出用の電極を正確に位置決めすることができる燃焼装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題は、本発明によれば、複数の燃焼バーナを有するバーナユニットと、前記バーナユニットを収容するバーナケースと、前記バーナケースの前面に取り付けられるとともに前記バーナケースとともに燃焼室を形成する板状部材と、前記燃焼バーナの点火用または炎検出用の電極と、前記電極を外周側から保持する絶縁性の碍子部材と、前記碍子部材を前記板状部材に取り付けるための取付部材と、を備え、前記板状部材は、平坦状に形成されるとともに前記取付部材が取り付けられる取付面と、前記取付面よりも前記燃焼室側に配置されるとともに前記電極および前記碍子部材が挿入される挿入穴が形成された底面と、前記取付面と前記底面とを連結する傾斜面と、を有し、前記碍子部材は、軸線に沿って延びる略筒状に形成されて前記挿入穴に挿入される先端部と、前記軸線に対する外径が前記挿入穴の内径よりも大きく前記傾斜面と対応する形状に形成された突出部と、を有し、前記取付部材は、前記突出部が前記傾斜面の少なくとも2点に接触した状態を保持するように前記板状部材に取り付けられることを特徴とする燃焼装置により解決される。
【0007】
本発明に係る燃焼装置によれば、板状部材の底面に形成された挿入穴に電極および碍子部材が挿入され、取付部材が板状部材の取付面に取り付けられる。碍子部材の突出部が挿入穴の内径よりも大きく板状部材の傾斜面と対応する形状に形成されているため、碍子部材の突出部が挿入穴を通過せずに傾斜面に突き当てられた状態となる。取付部材によって突出部が傾斜面の少なくとも2点に接触した状態となるため、2点を結ぶ方向への碍子部材の移動が規制されて電極が板状部材に対して位置決めされた状態が保持される。
このように、本発明に係る燃焼装置によれば、燃焼バーナに対して燃焼バーナの点火用または炎検出用の電極を正確に位置決めすることができる。
【0008】
本発明に係る燃焼装置において、好ましくは、前記突出部は、前記軸線に直交する形状が略四角形状であり、前記傾斜面は、同一方向に延びるように形成される一対の第1傾斜部を有し、前記取付部材は、前記軸線を挟んで平行に延びる前記突出部の一対の辺が前記一対の第1傾斜部に接触した状態を保持するように前記板状部材に取り付けられることを特徴とする。
本構成の燃焼装置によれば、取付部材によって、平行に延びる突出部の一対の辺が平行に延びる一対の第1傾斜部に接触した状態となる。そのため、第1傾斜部が延びる方向に直交する方向への碍子部材の移動が規制されて電極が位置決めされた状態が保持される。
【0009】
本発明に係る燃焼装置において、好ましくは、前記傾斜面は、前記第1傾斜部と直交する方向に延びるように形成される第2傾斜部を有し、前記取付部材は、前記突出部の前記一対の辺とは異なる他の辺が前記第2傾斜部に接触した状態を保持するように前記板状部材に取り付けられることを特徴とする。
本構成の燃焼装置によれば、取付部材によって、突出部の他の辺が第1傾斜部と直交する方向に延びるように形成される第2傾斜部に接触した状態となる。そのため、第1傾斜部が延びる方向かつ第2傾斜部に向けた方向への碍子部材の移動が規制されて電極が位置決めされた状態が保持される。
【0010】
本発明に係る燃焼装置は、好ましくは、前記挿入穴と該挿入穴に挿入される前記先端部との隙間を封止するための封止部材を備え、前記取付部材は、前記突出部との間に前記封止部材を挟んだ状態で前記板状部材に取り付けられることを特徴とする。
本構成の燃焼装置によれば、板状部材の挿入穴と碍子部材の先端部との隙間が封止部材により封止されるため、燃焼室から外部への燃焼ガスの漏れを確実に防止することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、燃焼バーナに対して燃焼バーナの点火用または炎検出用の電極を正確に位置決めすることができる燃焼装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係る燃焼装置を示す斜視図である。
【
図2】燃焼室前板に取り付けられる部材を示す分解斜視図である。
【
図3】
図2に示す燃焼室前板の電極の取付部分を示す平面図である。
【
図4】
図3に示す燃焼室前板に電極を取り付けた状態を示す図である。
【
図5】
図3に示す燃焼室前板のI-I矢視断面図である。
【
図6】
図4に示す燃焼装置のII-II矢視断面図である。
【
図7】
図4に示す燃焼装置のIII-III矢視断面図である。
【
図8】
図4に示す燃焼装置のIV-IV矢視断面図である。
【
図10】燃焼室前板に碍子部材を取り付ける際の状態を示す部分拡大図である。
【
図11】燃焼装置の電極取付部分を示す平面図である。
【
図12】燃焼装置の電極取付部分を示す背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の好ましい実施形態を、図面を参照して詳しく説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。また、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0014】
以下、本発明に係る燃焼装置100の一実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る燃焼装置100を示す斜視図である。
図2は、
図1に示す燃焼室前板30に取り付けられる部材を示す分解斜視図である。
図3は、
図2に示す燃焼室前板30の電極(スパーカー電極40およびフレームロッド電極60)の取付部分を示す平面図である。
本実施形態の燃焼装置100は、例えば、給湯器である。燃焼装置100は、ガス供給源(図示略)から供給される燃料ガスを燃焼バーナ11に供給して燃焼室Cで燃焼させ、燃焼室Cの上方に配置される熱交換器(図示略)により燃焼室Cで生成された高温の燃焼ガスと水との熱交換を行う。
【0015】
図1および
図2に示すように、本実施形態に係る燃焼装置100は、複数の燃焼バーナ11を有するバーナユニット10と、バーナユニット10を収容するバーナケース20と、燃焼室前板(板状部材)30と、スパーカー電極40と、碍子部材50と、フレームロッド電極60と、碍子部材70と、押え板(取付部材)80と、パッキン(封止部材)90と、を備える。
【0016】
燃焼室前板30は、金属材料により板状に形成される部材であり、バーナケース20とともに燃焼室Cを形成する。燃焼室前板30は、複数の締結ねじ(図示略)によりバーナケース20の前面に取り付けられる。燃焼室前板30には、碍子部材50を挿入するための挿入穴32aと、碍子部材70を挿入するための挿入穴32bと、締結ボルトBが締結される締結穴31a,31bが形成されている。
図3に示すように、挿入穴32aは、直径D1の円形に対して水平方向の一端側が略四角形状となるように形成された略D字形の穴となっている。挿入穴32bは、直径D2の円形となっている。
【0017】
スパーカー電極40は、燃焼バーナ11の点火用の電極であり、高電圧発生装置(図示略)が発生する高電圧が与えられることにより、燃焼バーナ11に対して火花放電を行うものである。スパーカー電極40は、耐熱性のある合金(例えば、エスイット)により棒状に形成されている。
碍子部材50は、棒状に形成されるスパーカー電極40の両端部を除く領域を外周側から保持し、絶縁性材料(例えば、磁器、ガラス、合成樹脂等)により形成される部材である。
【0018】
フレームロッド電極60は、燃焼バーナ11の炎検出用の電極であり、燃焼バーナ11が燃料ガスを燃焼させることにより発生する炎の中に先端が挿入される。フレームロッド電極60は、交流電源(図示略)に接続されており、燃焼バーナ11で炎が発生している場合には電流が流れ、燃焼バーナ11で炎が発生していない場合には電流が流れない。フレームロッド電極60に電流が流れない場合に燃焼バーナ11への燃料ガスの供給を電磁弁(図示略)により遮断することで、立ち消えを防止することができる。
碍子部材70は、棒状に形成されるフレームロッド電極60の両端部を除く領域を外周側から保持し、絶縁性材料(例えば、磁器、ガラス、合成樹脂等)により形成される部材である。
【0019】
押え板80は、金属材料により板状に形成され、碍子部材50および碍子部材70を燃焼室前板30に取り付けるための部材である。押え板80には、碍子部材50が挿入される挿入穴81と、碍子部材70が挿入される挿入穴82と、締結ボルトBが挿入される挿入穴83,84が形成されている。
【0020】
パッキン90は、燃焼室前板30に形成される挿入穴32aと挿入穴32aに挿入される碍子部材50との隙間、および燃焼室前板30に形成される挿入穴32bと挿入穴32bに挿入される碍子部材70との隙間を封止するための部材である。パッキン90は、例えば、グラスウールやロックウール等の不燃材料により形成される。パッキン90には、碍子部材50が挿入される挿入穴91と、碍子部材70が挿入される挿入穴92と、締結ボルトBが挿入される挿入穴93が形成されている。
【0021】
次に、燃焼室前板30に対するスパーカー電極40および碍子部材50、並びにフレームロッド電極60および碍子部材70の取付方法について説明する。
図2に示すように、燃焼室前板30に形成される挿入穴32aは軸線X1を中心とする穴であり、挿入穴32aにスパーカー電極40の先端と碍子部材50の先端が挿入される。また、燃焼室前板30に形成される挿入穴32bは軸線X2を中心とする穴であり、挿入穴32bにフレームロッド電極60の先端と碍子部材70の先端が挿入される。挿入穴32aにスパーカー電極40の先端と碍子部材50の先端が挿入され、挿入穴32bにフレームロッド電極60の先端と碍子部材70の先端が挿入されると、
図4に示す状態となる。
図4は、
図3に示す燃焼室前板30に電極を取り付けた状態を示す図である。
【0022】
図4に示す状態となった後に、パッキン90の挿入穴91を碍子部材50の基端に挿入し、パッキン90の挿入穴92を碍子部材70の基端に挿入する。さらに、押え板80の挿入穴81を碍子部材50の基端に挿入し、押え板80の挿入穴82を碍子部材70の基端に挿入する。その後、締結ボルトBを押え板80の挿入穴83とパッキン90の挿入穴93に挿入し、締結ボルトBを燃焼室前板30の締結穴31aに締結する。また、締結ボルトBを押え板80の挿入穴84に挿入し、締結ボルトBを燃焼室前板30の締結穴31bに締結する。以上により、燃焼室前板30に対して、スパーカー電極40および碍子部材50が取り付けられ、フレームロッド電極60および碍子部材70が取り付けられた状態となる。
【0023】
次に、燃焼室前板30に対して碍子部材50および碍子部材70を位置決めする構造について図面を参照して説明する。
図5は、
図3に示す燃焼室前板30のI-I矢視断面図である。
図6は、
図4に示す燃焼装置100のII-II矢視断面図である。
図7は、
図4に示す燃焼装置100のIII-III矢視断面図である。
図8は、
図4に示す燃焼装置100のIV-IV矢視断面図である。
【0024】
図3および
図5に示すように、燃焼室前板30は、平坦状に形成される取付面31と、取付面31よりも燃焼室C側に配置される底面32と、取付面31と底面32とを連結する傾斜面33とを有する。燃焼室前板30は、取付面31と底面32と傾斜面33とをプレス加工により一体に形成した部材である。
【0025】
取付面31は、押え板80が締結ボルトBを介して取り付けられる面であり、締結ボルトBが締結される締結穴31aおよび締結穴31bが形成されている。底面32には、スパーカー電極40および碍子部材50が挿入される挿入穴32aと、フレームロッド電極60および碍子部材70が挿入される挿入穴32bが形成されている。
【0026】
図3に示すように、傾斜面33は、水平方向に延びるように形成される一対の第1傾斜部33a,33bと、一対の第1傾斜部33a,33bと直交する垂直方向に延びるように形成される一対の第2傾斜部33c,33dとを有する。
図4に示すように、傾斜面33は、軸線X1に対して傾斜角度θだけ傾斜した一定の勾配の面である。ここで、傾斜角度θは、例えば、40°以上かつ50°以下の範囲の角度である。傾斜面33は、取付面31から底面32に向けて軸線Xとの距離が漸次減少するように挿入穴32aの中心に向けて傾斜している。
【0027】
なお、
図5は
図3に示す挿入穴32aの中心位置の断面を示したものであるが、
図3に示す挿入穴32bの中心位置の断面も
図5と同様である。
図5では、挿入穴32bの中心位置の断面とした場合の符号を、括弧を付して示している。
【0028】
ここで、燃焼室前板30に対してスパーカー電極40および碍子部材50を位置決めする構造について説明する。
図6に示すように、碍子部材50は、先端部51と、突出部52と、基端部53とを有する。先端部51は、軸線X1に沿って延びる略筒状に形成されて挿入穴32aに挿入される部分であり、軸線X1に対する外径がD12となっている。突出部52は、軸線X1に対する外径がD11となっている。先端部51の外径D12は挿入穴32aの内径D1よりも小さく、突出部52の外径D11は挿入穴32aの内径D1よりも大きい。
【0029】
先端部51の軸線X1に直交する面の断面形状は、挿入穴32aを微小に縮小した略D字形の形状となっている。挿入穴32aの形状と先端部51の断面形状が円形でない相似形状であるため、挿入穴32aに先端部51を挿入した状態では、碍子部材50が軸線X1回りに回転することがない。
【0030】
図4に示すように、碍子部材50の突出部52は、軸線X1に直交する形状が略四角形状である。突出部52の水平方向に延びる一対の辺52a,52bは、軸線X1を挟んで平行に延びており、燃焼室前板30の一対の第1傾斜部33a,33bと対応するように水平方向に延びる形状に形成されている。突出部52の辺52cは、燃焼室前板30の第2傾斜部33cと対応するように垂直方向に延びる形状に形成されている。
【0031】
図6に示すように、押え板80は、突出部52の一対の辺52a,52bが第1傾斜部33a,33bとそれぞれ接触してスパーカー電極40が燃焼室前板30に対して垂直方向に位置決めされた状態を保持するように燃焼室前板30に取り付けられる。ここで、押え板80は、突出部52との間にパッキン90を挟んだ状態で燃焼室前板30に取り付けられる。そのため、パッキン90は、挿入穴32aと挿入穴32aに挿入される碍子部材50の先端部51との隙間を封止する。
【0032】
また、
図8に示すように、押え板80は、突出部52の辺52cが第2傾斜部33cと接触してスパーカー電極40が燃焼室前板30に対して水平方向に位置決めされた状態を保持するように燃焼室前板30に取り付けられる。
【0033】
次に、燃焼室前板30に対してフレームロッド電極60および碍子部材70を位置決めする構造について説明する。
図7に示すように、碍子部材70は、先端部71と、突出部72と、基端部73とを有する。先端部71は、軸線X2に沿って延びる略筒状に形成されて挿入穴32bに挿入される部分であり、軸線X2に対する外径がD22となっている。突出部72は、軸線X2に対する外径がD21となっている。先端部71の外径D22は挿入穴32bの内径D2よりも小さく、突出部72の外径D21は挿入穴32bの内径D2よりも大きい。
【0034】
図4に示すように、碍子部材70の突出部72は、軸線X2に直交する形状が略四角形状であり、突出部72の水平方向に延びる一対の辺72a,72bは、軸線X2を挟んで平行に延びており、燃焼室前板30の一対の第1傾斜部33a,33bと対応するように水平方向に延びる形状に形成されている。突出部72の辺72cは、燃焼室前板30の第2傾斜部33dと対応するように垂直方向に延びる形状に形成されている。
【0035】
図7に示すように、押え板80は、突出部72の一対の辺72a,72bが第1傾斜部33a,33bとそれぞれ接触してフレームロッド電極60が燃焼室前板30に対して位置決めされた状態を保持するように燃焼室前板30に取り付けられる。ここで、押え板80は、突出部72との間にパッキン90を挟んだ状態で燃焼室前板30に取り付けられる。そのため、パッキン90は、挿入穴32bと挿入穴32bに挿入される碍子部材70の先端部71との隙間を封止する。
【0036】
また、
図8に示すように、押え板80は、突出部72の辺72cが第2傾斜部33dと接触してフレームロッド電極60が燃焼室前板30に対して水平方向に位置決めされた状態を保持するように燃焼室前板30に取り付けられる。
【0037】
次に、
図9および
図10を参照して、燃焼室前板30に対して碍子部材50および碍子部材70を位置決めする際の傾斜面33と碍子部材50,70との接触について説明する。
図9は、
図6に示す燃焼装置100の部分拡大図であり、燃焼室前板30に対して碍子部材50が位置決めされた状態を示す。
図10は、燃焼室前板30に碍子部材50を取り付ける際の状態を示す部分拡大図であり、押え板80を燃焼室前板30に取り付けることにより
図9に示す状態となる。
【0038】
なお、
図9および
図10においては、
図6に示す押え板80およびパッキン90の図示を省略している。また、
図9および
図10は碍子部材50を示したものであるが、碍子部材70も
図9および
図10と同様である。
図9および
図10では、碍子部材70とした場合の符号を、括弧を付して示している。また、以下での説明においても、碍子部材70とした場合の説明は括弧を付して示す。
【0039】
図9に示すように、燃焼室前板30に対して碍子部材50(碍子部材70)が位置決めされた状態においては、突出部52(突出部72)の辺52a(辺72a)と第1傾斜部33aとが接触点P1(接触点P3)で接触し、突出部52(突出部72)の辺52b(辺72b)と第1傾斜部33bとが接触点P2(接触点P4)で接触する。
図9に示す位置決めされた状態においては、碍子部材50(碍子部材70)の先端部51(先端部71)と燃焼室前板30の挿入穴32a(挿入穴32b)は接触しない状態に保持される。碍子部材50(碍子部材70)は、軸線X1(軸線X2)を挟んで配置されるため、碍子部材50(碍子部材70)が垂直方向に移動しないように位置決めされる。
【0040】
燃焼室前板30に対して碍子部材50(碍子部材70)が位置決めされていない状態においては、例えば
図10に示すように、突出部52(突出部72)の辺52b(辺72b)と第1傾斜部33bとが接触する一方で、突出部52(突出部72)の辺52a(辺72a)と第1傾斜部33aとが接触しない状態となる。ここで、押え板80を燃焼室前板30に取り付ける作業を行ってパッキン90を介して突出部52(突出部72)を燃焼室C側へ押し付けると、碍子部材50(碍子部材70)が延びる軸線X1(軸線X2)が水平方向に一致する方向の力が作用する。
【0041】
ここで、突出部52(突出部72)の辺52b(辺72b)の第1傾斜部33bと接触する部分が曲率半径R1(曲率半径R2)の曲面形状となっている。また、突出部52(突出部72)の表面には、例えば、表面平滑性が高い釉薬が施されている。突出部52(突出部72)の辺52b(辺72b)の第1傾斜部33bと接触する部分に生じる摩擦力が小さいため、押え板80を燃焼室前板30に取り付ける作業を行うことにより、突出部52(突出部72)の辺52b(辺72b)の第1傾斜部33bと接触する位置が
図9に示す接触点P2(接触点P4)に漸次近づいて最終的に
図9に示す状態となる。
【0042】
次に、バーナユニット10の燃焼バーナ11に対する電極(スパーカー電極40およびフレームロッド電極60)の配置について説明する。
図11は、燃焼装置100の電極取付部分を示す平面図である。
図12は、燃焼装置100の電極取付部分を示す背面図である。
【0043】
図11に示すように、水平方向に延びる軸線Y方向におけるスパーカー電極40の先端部41の位置はY1となり、フレームロッド電極60の先端部61の位置はY2となる。スパーカー電極40が燃焼バーナ11に対して適切な火花放電を行うためには、位置Y1を燃焼バーナ11に対して軸線Y方向の適切な位置に配置する必要がある。また、フレームロッド電極60を燃焼バーナ11が発生する炎の中の適切な位置に配置するためには、位置Y2を燃焼バーナ11に対して軸線Y方向の適切な位置に配置する必要がある。
【0044】
本実施形態では、押え板80により、碍子部材50の突出部52の辺52a,52b,52cおよび碍子部材70の突出部72の辺72a,72b,72cが、燃焼室前板30の傾斜面33に接触した状態が保持される。そのため、スパーカー電極40の先端部41の位置Y1と、フレームロッド電極60の先端部61の位置Y2の双方は、燃焼バーナ11に対して軸線Y方向の適切な位置に配置される。
【0045】
図12に示すように、鉛直方向に延びる軸線Z方向におけるスパーカー電極40の先端部41の位置はZ1となり、フレームロッド電極60の先端部61の位置はZ2となる。スパーカー電極40が燃焼バーナ11に対して適切な火花放電を行うためには、位置Z1を燃焼バーナ11の炎口の位置Z0に対して軸線Z方向の適切な位置に配置する必要がある。また、フレームロッド電極60を燃焼バーナ11が発生する炎の中の適切な位置に配置するためには、位置Z2を燃焼バーナ11の炎口の位置Z0に対して軸線Z方向の適切な位置に配置する必要がある。
【0046】
本実施形態では、押え板80により、碍子部材50の突出部52の辺52a,52b,52cおよび碍子部材70の突出部72の辺72a,72b,72cが、燃焼室前板30の傾斜面33に接触した状態が保持される。そのため、スパーカー電極40の先端部41の位置Z1と、フレームロッド電極60の先端部61の位置Z2の双方は、燃焼バーナ11の炎口の位置Z0に対して軸線Z方向の適切な位置に配置される。
【0047】
以上説明した本実施形態の燃焼装置100が奏する作用および効果について説明する。
本実施形態の燃焼装置100によれば、燃焼室前板30の底面32に形成された挿入穴32aにスパーカー電極40および碍子部材50が挿入され、押え板80が燃焼室前板30の取付面31に取り付けられる。碍子部材50の突出部52は、挿入穴32aの内径D1よりも大きい。また、突出部52は、燃焼室前板30の傾斜面33と対応するように、辺52a,52bが水平方向に延び、辺52cが鉛直方向に延びる形状に形成されている。そのため、突出部52は、挿入穴32aを通過せず、傾斜面33の一対の第1傾斜部33a,33bと第2傾斜部33cに突き当てられた状態となる。
【0048】
突出部52は、押え板80によって、平行に延びる一対の辺52a,52bが平行に延びる一対の第1傾斜部33a,33bの2点に接触した状態となる。そのため、碍子部材50の鉛直方向への移動が規制され、スパーカー電極40が鉛直方向に位置決めされた状態となる。また、突出部52は、押え板80によって第2傾斜部33cに接触した状態となる。ここで、突出部52は、燃焼室前板30の底面32には接触していない。そのため、碍子部材50の水平方向かつ第2傾斜部33cへ向かう方向の移動が規制され、スパーカー電極40が水平方向に位置決めされた状態となる。
【0049】
また、本実施形態の燃焼装置100によれば、燃焼室前板30の底面32に形成された挿入穴32bにフレームロッド電極60および碍子部材70が挿入され、押え板80が燃焼室前板30の取付面31に取り付けられる。碍子部材70の突出部72は、挿入穴32bの内径D2よりも大きい。また、突出部72は、燃焼室前板30の傾斜面33と対応するように、辺72a,72bが水平方向に延び、辺72cが鉛直方向に延びる形状に形成されている。そのため、突出部72は、挿入穴32bを通過せず、傾斜面33の一対の第1傾斜部33a,33bと第2傾斜部33dに突き当てられた状態となる。
【0050】
突出部72は、押え板80によって、平行の延びる一対の辺72a,72bが平行に延びる一対の第1傾斜部33a,33bの2点に接触した状態となる。そのため、碍子部材70の鉛直方向への移動が規制され、フレームロッド電極60が鉛直方向に位置決めされた状態となる。また、突出部72は、押え板80によって第2傾斜部33dに接触した状態となる。ここで、突出部72は、燃焼室前板30の底面32には接触していない。そのため、碍子部材70の水平方向かつ第2傾斜部33dへ向かう方向の移動が規制され、フレームロッド電極60が水平方向に位置決めされた状態となる。
【0051】
また、本実施形態の燃焼装置100によれば、燃焼室前板30の挿入穴32aと碍子部材50の先端部51との隙間および燃焼室前板30の挿入穴32bと碍子部材70の先端部71との隙間がパッキン90により封止されるため、燃焼室Cから外部への燃焼ガスの漏れを確実に防止することができる。
【0052】
〔他の実施形態〕
以上の説明において、突出部52は軸線X1に直交する断面形状が略四角形状であり、傾斜面33は水平方向に平行に延びる一対の第1傾斜部33a,33bと鉛直方向に平行に延びる一対の第2傾斜部33c,33dを有するものとしたが、他の態様であってもよい。
例えば、突出部52の軸線X1に直交する断面形状が略円形状であり、傾斜面33の軸線X1に直交する断面形状が略円形状となるようにしてもよい。この場合、押え板80は、突出部52が軸線X1周りの周方向の全周に渡って傾斜面33に接触した状態を保持するように燃焼室前板30に取り付けられる。
【0053】
同様に、以上の説明において、突出部72は軸線X2に直交する断面形状が略四角形状であり、傾斜面33は水平方向に平行に延びる一対の第1傾斜部33a,33bと鉛直方向に平行に延びる一対の第2傾斜部33c,33dを有するものとしたが、他の態様であってもよい。
例えば、突出部72の軸線X2に直交する断面形状が略円形状であり、傾斜面33の軸線X2に直交する断面形状が略円形状となるようにしてもよい。この場合、傾斜面33の形状は、取付面31から底面32に向けて軸線X1に対する内径が漸次小さくなる略円錐形状となる。また、押え板80は、突出部72が軸線X2周りの周方向の全周に渡って傾斜面33に接触した状態を保持するように燃焼室前板30に取り付けられる。
【0054】
以上のように、他の実施形態として、突出部52,72と傾斜面33が2点以上の複数点で接触した状態となるように、突出部52,72と傾斜面33の形状を適宜に変更することが可能である。この場合、押え板80は、突出部52,72が傾斜面33の2点以上の複数点で接触した状態を保持するように燃焼室前板30に取り付けられる。
【0055】
以上、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は、上記実施形態に限定されず、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で種々の変更を行うことができる。上記実施形態の構成は、その一部を省略したり、上記とは異なるように任意に組み合わせたりすることができる。
【符号の説明】
【0056】
10・・・バーナユニット、 11・・・燃焼バーナ、 20・・・バーナケース、 30・・・燃焼室前板(板状部材)、 31・・・取付面、 31a,31b・・・締結穴、 32・・・底面、 32a,32b・・・挿入穴、 33・・・傾斜面、33a,33b・・・第1傾斜部、 33c,33d・・・第2傾斜部、 40・・・スパーカー電極、 41・・・先端部、 50・・・碍子部材、 51・・・先端部、 52・・・突出部、 52a,52b,52c・・・辺、 53・・・基端部、 60・・・フレームロッド電極、 61・・・先端部、 70・・・碍子部材、 71・・・先端部、 72・・・突出部、 72a,72b,72c・・・辺、 73・・・基端部、 80・・・押え板(取付部材)、 81~84・・・挿入穴、 90・・・パッキン(封止部材)、 91~93・・・挿入穴