(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-02
(45)【発行日】2022-05-13
(54)【発明の名称】流体制御弁
(51)【国際特許分類】
F16K 1/36 20060101AFI20220506BHJP
F16K 1/34 20060101ALI20220506BHJP
F16K 1/42 20060101ALI20220506BHJP
F02M 25/08 20060101ALI20220506BHJP
【FI】
F16K1/36 E
F16K1/34 D
F16K1/42 B
F02M25/08 E
(21)【出願番号】P 2018108263
(22)【出願日】2018-06-06
【審査請求日】2020-09-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000116574
【氏名又は名称】愛三工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】特許業務法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】牧野 勝彦
(72)【発明者】
【氏名】都築 康洋
【審査官】橋本 敏行
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-226457(JP,A)
【文献】実開昭61-044073(JP,U)
【文献】特開2009-301846(JP,A)
【文献】特開2004-003541(JP,A)
【文献】特開平08-270818(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 47/00-47/06
49/00
F02M 25/00-25/14
F16K 1/00-1/54
15/00-17/168
21/00-24/06
31/06-31/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路に形成された弁座を開閉する弁部材を備えた流体制御弁であって、
前記弁座又は前記弁部材には、該弁部材の閉弁時において前記弁座と前記弁部材との間を弾性的にシールするシール部を有する円環状のシール部材が設けられており、
前記シール部材が設けられる前記弁座又は前記弁部材は、板状のリテーナ部を有しており、
前記リテーナ部は、板厚方向に貫通する貫通孔と、前記シール部材側とは反対側において前記貫通孔と連通しかつ該貫通孔の軸方向に交差する方向に張り出すように形成された係合凹部と、を有しており、
前記シール部材は、前記係合凹部内に設けられる投錨部と、前記貫通孔を貫通しかつ該シール部材のベース部と前記投錨部とを連結する連結部と、を有しており、
前記係合凹部は、前記貫通孔の開口の周方向全周に亘って形成され、
前記連結部の両端部には、周方向全周に亘って前記ベース部と前記投錨部が形成され
、
前記投錨部は、前記リテーナ部に対してのみ接触する流体制御弁。
【請求項2】
流路に形成された弁座を開閉する弁部材を備えた流体制御弁であって、
前記弁座又は前記弁部材には、該弁部材の閉弁時において前記弁座と前記弁部材との間を弾性的にシールするシール部を有する円環状のシール部材が設けられており、
前記シール部材が設けられる前記弁座又は前記弁部材は、板状のリテーナ部を有しており、
前記リテーナ部は、板厚方向に貫通する貫通孔と、前記シール部材側とは反対側において前記貫通孔と連通しかつ該貫通孔の軸方向に交差する方向に張り出すように形成された係合凹部と、を有しており、
前記シール部材は、前記係合凹部内に設けられる投錨部と、前記貫通孔を貫通しかつ該シール部材のベース部と前記投錨部とを連結する連結部と、を有しており、
前記貫通孔は、前記リテーナ部の周方向に延びる長円孔状の形状を有し、周方向の長さが径方向の長さよりも大きく形成され
、
前記投錨部は、前記リテーナ部に対してのみ接触する流体制御弁。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の流体制御弁であって、
前記投錨部は、前記連結部の軸方向に交差する方向の相反する方向に張り出している、流体制御弁。
【請求項4】
請求項1から請求項3の何れか1項に記載の流体制御弁であって、
前記連結部と前記シール部とは、該連結部の軸方向から見て少なくとも一部が重なるように配置されている、流体制御弁。
【請求項5】
請求項1から請求項4の何れか1項に記載の流体制御弁であって、
前記リテーナ部の軸線及び前記連結部の軸線を含む一平面において、前記連結部の軸線上における前記投錨部の外端部から前記ベース部の略中央部を通過して前記投錨部から最遠となる最遠端部までの経路の長さは、前記投錨部の外端部から前記シール部の先端部までの経路の長さより長い、流体制御弁。
【請求項6】
請求項1から請求項5の何れか1項に記載の流体制御弁であって、
前記リテーナ部は、前記貫通孔と並ぶ補助貫通孔、及び、前記係合凹部と並ぶ補助係合凹部を有しており、
前記シール部材は、前記補助係合凹部内に設けられる補助投錨部と、前記補助貫通孔を貫通しかつ前記ベース部と前記補助投錨部とを連結する補助連結部と、を有する、流体制御弁。
【請求項7】
請求項6に記載の流体制御弁であって、
前記連結部の軸線及び前記補助連結部の軸線を含む一平面において、前記連結部の軸線上における前記投錨部の外端部から前記ベース部の略中央部を通過して前記補助投錨部の外端部までの経路の長さは、前記投錨部の外端部から前記シール部の先端部までの経路の長さより長い、流体制御弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体制御弁に関する。特に、車両に搭載される蒸発燃料処理装置に用いられる流体制御弁に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両には、燃料タンクからエンジンまでの燃料供給経路に、蒸発燃料処理装置が備えられている。蒸発燃料処理装置には、密閉状態での燃料タンク内の圧力を適正圧力に保つためにリリーフ弁(流体制御弁)が用いられている。流体制御弁は、負圧リリーフ弁機構を備えている(特許文献1参照)。
【0003】
負圧リリーフ弁機構は、流路に形成された弁座を開閉する弁部材を備えている。弁座には、弁部材の閉弁時において弁部材との間を弾性的にシールするシール部を有する円環状のシール部材が設けられている。弁座は、板状のリテーナ部を有している。シール部材のベース部は、例えば接着材等によりリテーナ部に取り付けられていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、保持性の高い接着材は、コストが高くつくため、コストを低減できる構成が求められている。また、シール部材がリテーナ部から剥がれるおそれがあるため、シール部材の保持がより安定する構成が求められている。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、流体制御弁において、接着材等にかかるコストを低減しつつ、リテーナ部にシール部材を安定した状態で保持させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明に係る流体制御弁は次の手段をとる。
【0008】
本発明の第1の発明は、流路に形成された弁座を開閉する弁部材を備えた流体制御弁であって、前記弁座又は前記弁部材には、該弁部材の閉弁時において弁座と弁部材との間を弾性的にシールするシール部を有する円環状のシール部材が設けられており、前記シール部材が設けられる前記弁座又は前記弁部材は、板状のリテーナ部を有しており、前記リテーナ部は、板厚方向に貫通する貫通孔と、前記シール部材側とは反対側において前記貫通孔と連通しかつ該貫通孔の軸方向に交差する方向に張り出すように形成された係合凹部と、を有しており、前記シール部材は、前記係合凹部内に設けられる投錨部と、前記貫通孔を貫通しかつ該シール部材のベース部と前記投錨部とを連結する連結部と、を有する、流体制御弁である。
【0009】
上記第1の発明によれば、シール部材が、リテーナ部の係合凹部内に設けられる投錨部と、リテーナ部の貫通孔を貫通しかつベース部と投錨部とを連結する連結部と、を有する。したがって、リテーナ部にシール部材が投錨部によって抜け止め状態で保持される。また、シール部材の取り付けに接着材等を必要としない。したがって、接着材等にかかるコストを低減しつつ、リテーナ部にシール部材を安定した状態で保持させることができる。
【0010】
本発明の第2の発明は、上述した第1の発明の流体制御弁であって、前記投錨部は、前記連結部の軸方向に交差する方向の相反する方向に張り出している、流体制御弁である。
【0011】
上記第2の発明によれば、リテーナ部に対するシール部材の投錨部による抜け止めがより確実になされる。これにより、リテーナ部に対するシール部材の保持をより安定化させることができる。
【0012】
本発明の第3の発明は、上述した第1の発明又は第2の発明の流体制御弁であって、前記連結部と前記シール部とは、該連結部の軸方向から見て少なくとも一部が重なるように配置されている、流体制御弁である。
【0013】
上記第3の発明によれば、閉弁時に作用する力によって、シール部材のシール部が径方向に位置ずれすることを抑制することができる。
【0014】
本発明の第4の発明は、上述した第1の発明から第3の発明の何れか1つの発明の流体制御弁であって、前記リテーナ部の軸線及び前記連結部の軸線を含む一平面において、前記連結部の軸線上における前記投錨部の外端部から前記ベース部の略中央部を通過して前記投錨部から最遠となる最遠端部までの経路の長さは、前記投錨部の外端部から前記シール部の先端部までの経路の長さより長い、流体制御弁である。
【0015】
上記第4の発明によれば、リテーナ部にシール部材を樹脂によりインサート成形する際に、投錨部の外端部を起点として溶融樹脂を充填することで、ベース部に対する溶融樹脂の充填が完了する前にシール部に対する溶融樹脂の充填が完了する。これにより、シール部の先端部にボイド、ウェルド等の成形不良が発生することを抑制することができる。
【0016】
本発明の第5の発明は、上述した第1の発明から第4の発明の何れか1つの発明の流体制御弁であって、前記リテーナ部は、前記貫通孔と並ぶ補助貫通孔、及び、前記係合凹部と並ぶ補助係合凹部を有しており、前記シール部材は、前記補助係合凹部内に設けられる補助投錨部と、前記補助貫通孔を貫通しかつ前記ベース部と前記補助投錨部とを連結する補助連結部と、を有する、流体制御弁である。
【0017】
上記第5の発明によれば、シール部材が、リテーナ部の補助係合凹部内に設けられる補助投錨部と、リテーナ部の補助貫通孔を貫通しかつベース部と補助投錨部とを連結する補助連結部と、を有する。したがって、リテーナ部にシール部材が補助投錨部によっても抜け止め状態で保持される。これにより、リテーナ部に対するシール部材の保持をより安定化させることができる。
【0018】
本発明の第6の発明は、上述した第5の発明の流体制御弁であって、前記連結部の軸線及び前記補助連結部の軸線を含む一平面において、前記連結部の軸線上における前記投錨部の外端部から前記ベース部の略中央部を通過して前記補助投錨部の外端部までの経路の長さは、前記投錨部の外端部から前記シール部の先端部までの経路の長さより長い、流体制御弁である。
【0019】
上記第6の発明によれば、リテーナ部にシール部材を樹脂によりインサート成形する際に、シール部材のシール部に対応する投錨部の外端部を起点として溶融樹脂を充填することで、補助投錨部に対する溶融樹脂の充填が完了する前にシール部に対する溶融樹脂の充填が完了する。これにより、シール部の先端部にボイド、ウェルド等の成形不良が発生することを抑制することができる。
【発明の効果】
【0020】
上述した本発明の流体制御弁によれば、接着材等にかかるコストを低減しつつ、リテーナ部にシール部材を安定した状態で保持させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の実施形態にかかる蒸発燃料処理装置を示す構成図である。
【
図2】蒸発燃料処理装置に適用される封鎖弁の外観を示す斜視図である。
【
図5】封鎖弁を構成する電動弁の要部を示す拡大断面図である。
【
図7】封鎖弁を構成するリリーフ弁の拡大断面図である。
【
図12】
図8のXII-XII線断面矢視図である。
【
図13】
図8のXIII-XIII線断面矢視図である。
【
図14】
図8のXIV-XIV線断面矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態の流体制御弁は、内燃機関(エンジン)を搭載する自動車等の車両に搭載される蒸発燃料処理装置にリリーフ弁として備えられている。車両は、内燃機関(エンジン)及び燃料タンクを搭載している。また、リリーフ弁は封鎖弁に備えられている。説明の都合上、蒸発燃料処理装置を説明した後、封鎖弁、リリーフ弁を説明する。
【0023】
<蒸発燃料処理装置12の構成説明>
図1は蒸発燃料処理装置12の構成を示す。蒸発燃料処理装置12は、自動車等の車両のエンジンシステム10に備えられている。エンジンシステム10は、エンジン14と、エンジン14に供給される燃料を貯留する燃料タンク15とを備えている。燃料タンク15には、インレットパイプ16が設けられている。インレットパイプ16は、その上端部の給油口から燃料を燃料タンク15内に導入するパイプであって、給油口にはタンクキャップ17が着脱可能に取付けられている。また、インレットパイプ16の上端部内と燃料タンク15内の蒸発燃料が存在する気層部とは、ブリーザパイプ18により連通されている。
【0024】
燃料タンク15内には燃料供給装置19が設けられる。燃料供給装置19は、燃料タンク15内の燃料を吸入しかつ加圧して吐出する燃料ポンプ20、燃料の液面を検出するセンタゲージ21、大気圧に対する相対圧としてのタンク内圧を検出するタンク内圧センサ22等を備えている。燃料ポンプ20により燃料タンク15内から汲み上げられた燃料は、燃料供給通路24を介してエンジン14に供給される。詳しくは、各燃焼室に対応するインジェクタ(燃料噴射弁)25を備えるデリバリパイプ26に供給された後、各インジェクタ25から吸気通路27内に噴射される。吸気通路27には、エアクリーナ28、エアフロメータ29、スロットルバルブ30等が設けられる。
【0025】
蒸発燃料処理装置12は、ベーパ通路31とパージ通路32とキャニスタ34とを備えている。ベーパ通路31の一端部(上流側端部)は、燃料タンク15内の気層部と連通されている。ベーパ通路31の他端部(下流側端部)は、キャニスタ34内と連通されている。また、パージ通路32の一端部(上流側端部)は、キャニスタ34内と連通されている。パージ通路32の他端部(下流側端部)は、吸気通路27におけるスロットルバルブ30よりも下流側通路部と連通されている。また、キャニスタ34内には、吸着材としての活性炭(不図示)が装填されている。燃料タンク15内の蒸発燃料は、ベーパ通路31を介してキャニスタ34内の吸着材(活性炭)に吸着される。
【0026】
燃料タンク15内の気層部において、ベーパ通路31の上流側端部には、ORVR弁(On Board Refueling Vapor Recovery valve)35及びフューエルカットオフバルブ (Cut Off Valve)36が設けられている。
【0027】
ベーパ通路31の途中には封鎖弁38が介装されている。すなわち、ベーパ通路31は、その途中で燃料タンク15側の通路部31aとキャニスタ34側の通路部31bとに分断され、その通路部31a,31bの相互間に封鎖弁38が配置されている。封鎖弁38は、電動弁52及びリリーフ弁54を備える。電動弁52は、電気的な制御により通路を開閉することにより、ベーパ通路31を流れる蒸発燃料を含むガス(「流体」という)の流量を調整する。電動弁52は、エンジン制御装置(以下、「ECU」という)45から出力される駆動信号により開閉制御される。また、リリーフ弁54は、電動弁52をバイパスするバイパス通路(後述する)の途中に介装されている。リリーフ弁54は、電動弁52の閉弁時における燃料タンク15内の圧力を適正圧力に保つためのものである。なお、封鎖弁38の詳細については後で説明する。
【0028】
パージ通路32の途中にはパージ弁40が介装されている。パージ弁40は、ECU45により算出されたパージ流量に応じた開弁量で開閉制御いわゆるパージ制御される。また、パージ弁40は、例えば、ステッピングモータを備えかつバルブ体のストロークを制御することで開弁量を調整可能である。なお、パージ弁40は、本実施形態では電磁弁であり、電磁ソレノイドを備え、非通電状態では閉弁し、通電によって開弁する。
【0029】
キャニスタ34には大気通路42が配設されている。大気通路42の他端部は大気に開放されている。また、大気通路42の途中にはエアフィルタ43が介装されている。
【0030】
ECU45には、タンク内圧センサ22、封鎖弁38の電動弁52、パージ弁40の他、リッドスイッチ46、リッドオープナー47、表示装置49等が接続されている。リッドオープナー47には、給油口を覆うリッド48を手動で開閉するリッド手動開閉装置(不図示)が連結されている。リッドスイッチ46は、ECU45に対してリッド48のロックを解除するための信号を出力する。また、リッドオープナー47は、リッド48のロック機構で、ECU45からロックを解除するための信号が供給された場合、又は、リッド手動開閉装置に開動作が施された場合に、リッド48のロックを解除する。
【0031】
(蒸発燃料処理装置12の動作説明)
次に、蒸発燃料処理装置12の基本的動作について説明する。通常時においては、封鎖弁38のリリーフ弁54は閉弁状態にある。
【0032】
<蒸発燃料処理装置12の動作説明―駐車中―>
(1)先ず、[車両の駐車中]について説明する。車両の駐車中は、封鎖弁38の電動弁52が閉弁状態に維持される。したがって、燃料タンク15の蒸発燃料がキャニスタ34内に流入されることがない。また、キャニスタ34内の空気が燃料タンク15内に流入されることもない。このとき、パージ弁40が閉弁状態に維持される。なお、車両の駐車中等の電動弁52の閉弁時において、燃料タンク15内の圧力は、封鎖弁38のリリーフ弁54(後述する)によって適正圧力に保たれるようになっている。
【0033】
<蒸発燃料処理装置12の動作説明―走行中―>
(2)次に、[車両の走行中]について説明する。車両の走行中において、ECU45は、所定のパージ条件が成立する場合に、キャニスタ34に吸着されている蒸発燃料をパージさせる制御を実行する。この制御では、パージ弁40が開閉制御される。パージ弁40が開弁されると、エンジン14の吸気負圧がパージ通路32を介してキャニスタ34内に作用する。その結果、キャニスタ34内の蒸発燃料が、大気通路42から吸入される空気とともに吸気通路27にパージされることによりエンジン14で燃焼される。また、ECU45は、蒸発燃料のパージ中に限り、封鎖弁38の電動弁52を開弁状態とする。これにより、燃料タンク15のタンク内圧が大気圧近傍値に維持される。
【0034】
<蒸発燃料処理装置12の動作説明―給油中―>
(3)次に、[給油中]について説明する。車両の停車中において、リッドスイッチ46が操作されると、ECU45が封鎖弁38の電動弁52を開弁状態とする。この際、燃料タンク15のタンク内圧が大気圧より高圧であれば、封鎖弁38の電動弁52が開弁すると同時に、燃料タンク15内の蒸発燃料が、ベーパ通路31を通ってキャニスタ34内の吸着材に吸着される。これにより、蒸発燃料が大気に放出されることが防止される。これにともない、燃料タンク15のタンク内圧は大気圧近傍値に低下する。また、燃料タンク15のタンク内圧が大気圧近傍値にまで低下すると、ECU45は、リッド48のロックを解除する信号をリッドオープナー47に出力する。その信号を受けたリッドオープナー47がリッド48のロックを解除することにより、リッド48の開動作が可能となる。そして、リッド48が開けられ、タンクキャップ17が開けられた状態で、燃料タンク15への給油が開始される。また、ECU45は、給油の終了(具体的にはリッド48が閉じられる)まで、封鎖弁38の電動弁52を開弁状態に維持する。このため、給油の際に、燃料タンク15内の蒸発燃料がベーパ通路31を通ってキャニスタ34内の吸着材に吸着される。
【0035】
<封鎖弁38の説明>
次に、封鎖弁38の説明をする。
図2は封鎖弁38を形成する弁ケーシング56の外観斜視図を示す。
図3及び
図4は封鎖弁38の全体構成を示す断面図であり、
図3は
図2のIII―III線矢視断面の縦断面図、
図4は
図3のIV-IV線矢視断面の横断面図である。封鎖弁38は、
図3及び
図4に示すように、弁ケーシング56に形成される電動弁52と、リリーフ弁54とから構成される。なお、封鎖弁38を図示する各図に示す方向表示は、封鎖弁38は、通常、車両の床下に設置されるものであるから、車両の前後左右上下方向に対応して各方向を定めるが、封鎖弁38の配置方向を特定するものではない。
【0036】
<弁ケーシング56の説明>
図2は封鎖弁38を形成する弁ケーシング56の外観を示す。弁ケーシング56は樹脂製であり、弁ケーシング56の内部には、
図3及び
図4に示すように、封鎖弁38を構成する電動弁52とリリーフ弁54とが収容されている。そのため、弁ケーシング56には、電動弁52を構成するための第1収容筒部60と、リリーフ弁54を構成するための第2収容筒部61とを有する。また、弁ケーシング56には第1管部57と第2管部58とを備えている。第1管部57と第2管部58は、弁ケーシング56においてベーパ通路31(
図1参照)の一部を成すメイン通路74を形成している。
【0037】
弁ケーシング56においてメイン通路74を形成する第1管部57と第2管部58は、中空円管状に形成されており、第1管部57は前後方向に配設され、第2管部58は左右方向に配設されている。
【0038】
更に、弁ケーシング56には、メイン通路74をバイパスする流路としてバイパス通路90が形成されている(
図3参照)。このバイパス通路90中にリリーフ弁54が配置されている。そして、
図3に示すように、リリーフ弁54と電動弁52とが連通通路84により連通されてバイパス通路90が形成されている。
【0039】
更に、弁ケーシング56には、封鎖弁38を車両の床下面に装着するための取付部63を有している。取付部63は、
図2及び
図3に示すように、電動弁52を形成する第1収容筒部60の上方部に一体的に形成されており、
図4に示すように、第1収容筒部60の左右両側位置で車両床面に取付けられるようになっている。その取付位置は、前後方向にオフセットされた位置とされている。
【0040】
図3及び
図4に示すように、電動弁52を形成する第1収容筒部60は、第1管部57の前端部から前方(同、左方)へ向かって段階的に径を大きくする段付円筒状に形成されている。第1管部57と第1収容筒部60とは同心状に形成されている。第1収容筒部60の後端部内に弁室65が形成されている。これを第1弁室65とする。第2管部58は、第1収容筒部60の第1弁室65から右方(
図4において下方)へ延びる中空円管状に形成されている。
【0041】
図3に示すように、第2収容筒部61は、第1管部57の前端部の上側に有底円筒状に形成されている。
図4の図示状態から分かるように、第2収容筒部61は、第1管部57の外径の約2倍の外径を有している。そして、第2収容筒部61の軸中心は第1管部57の軸中心線上の位置とされている。すなわち、第2収容筒部61は第1管部57の直上位置に設置されている。第2収容筒部61内には弁室67が形成されている(
図3参照)。この弁室67を第2弁室とする。
【0042】
図4に示すように、第1管部57と第2管部58とは、同一管径又は略同一管径で形成されている。両管部57,58内は、第1弁室65を介して相互に連通されている。第1管部57の第1弁室65側の開口部は、弁口71とされている。この弁口71を第1弁口とする。第1弁口71は、第1管部57の内径よりも少し小さい内径で形成されている。第1弁口71の口縁部が弁座72とされている。第1管部57内は、第1弁口71の軸方向と同方向に沿って延びる第1通路部75とされている。第2管部58内は、第1弁口71の第1通路部75側(後側)とは反対側すなわち前側(
図4において左側)で、第1通路部75の軸方向(前後方向)と異なる方向すなわち右方(
図4において下方)に沿って延びる第2通路部76とされている。第1通路部75と第2通路部76とにより、エルボ状のメイン通路74が形成されている。
【0043】
図3に示すように、リリーフ弁54の第2弁室67を形成する第2収容筒部61の下端部には、内径を小さくする段付部78が同心状に形成されている。段付部78内の中空部が、第2収容筒部61内の第2弁室67に連通する弁口80とされている。この弁口80を第2弁口とする。第2弁口80は、第1管部57と第2収容筒部61との間の重複する壁部を貫通することにより第1通路部75に連通されている。段付部78の第2弁室67側の端面(上端面)には、金属製の円環板状のバルブシート82が同心状に配置されている。バルブシート82は段付部78に埋設されて配設されている。
【0044】
<バイパス通路90の説明>
図4に示す第1管部57及び第2管部58により形成されるメイン通路74には、
図3に示すように、このメイン通路74をバイパスするバイパス通路90が形成される。バイパス通路90は、第1通路部75を分岐して配置されるリリーフ弁54の第2弁口80、第2弁室67を経由し、電動弁52の第1弁室65に連通通路84を経由して接続されて形成される。本実施形態で連通通路84とは、バイパス通路90中におけるリリーフ弁54の第2弁室67と電動弁52の第1弁室65を接続する通路を指称している。なお、これによりバイパス通路90はメイン通路74の経路にある電動弁52の第1弁口71をバイパスして形成される。バイパス通路90はメイン通路74にある電動弁52が閉弁状態にあり、メイン通路74が遮断状態にある際の燃料タンク内の異常な正圧や負圧の圧力状態を、このバイパス通路90に設けられたリリーフ弁54の制御により逃がして調整する通路である。なお、バイパス通路90は本発明でいう「流路」に相当する。
【0045】
<電動弁52の構成説明>
次に、電動弁52の構成を説明する。
図5は電動弁52の拡大断面図であり、
図6は分解斜視図である。
図5に示すように、電動弁52は、弁ケーシング56の第1収容筒部60内に収容されている。電動弁52は、電動モータ92とバルブガイド94とバルブ体96とバルブスプリング98とを備えている。なお、
図5は電動弁52の開弁状態を示している。
【0046】
電動弁52の電動モータ92は、本実施形態ではステッピングモータである。電動モータ92は、その軸方向を前後方向として第1収容筒部60内に設置されている。電動モータ92は、正逆回転可能な出力軸93を有している。出力軸93は、後方へ指向されており、第1収容筒部60の第1弁室65内に同心状に配置されている。出力軸93の外周面には雄ネジ部100が形成されている。
【0047】
図6に示すように、バルブガイド94は、円筒状の筒壁部102と、筒壁部102の前端開口部を閉鎖する端壁部103とを有している。筒壁部102の前端部には、外径を大きくする張出部104が段付き円筒状に形成されている。端壁部103の中央部には、円筒状の筒軸部105が同心状に形成されている。筒軸部105の前端開口部は閉鎖されている。
図5に示すように、筒軸部105の内周面には雌ネジ部106が形成されている。
【0048】
バルブガイド94は、第1弁室65内に対して軸方向すなわち前後方向に移動可能に配置されている。バルブガイド94は、第1弁室65の周壁部(第1収容筒部60)に対して、回り止め手段(不図示)により軸回り方向に回り止めされている。バルブガイド94の張出部104は、第1弁室65の内壁面に対して所定の隙間を隔てて嵌合されている。筒軸部105の雌ネジ部106は、電動モータ92の出力軸93の雄ネジ部100にネジ合わされている。したがって、出力軸93の正逆回転に基いて、バルブガイド94が軸方向(前後方向)に移動される。なお、出力軸93の雄ネジ部100とバルブ体96の雌ネジ部106とにより送りネジ機構110が構成されている。
【0049】
弁ケーシング56の弁座72とバルブガイド94の張出部104との間には、コイルバネからなる補助バネ112が介装されている。補助バネ112は、筒壁部102に嵌合されている。補助バネ112は、バルブガイド94を常に前方へ付勢することにより、送りネジ機構110のバックラッシュを抑制する。筒壁部102の後端面は、弁座72に対して当接可能に対向されている。
【0050】
図6に示すように、バルブ体96は、円筒状の筒状部114と、筒状部114の後端開口部を閉鎖する弁板部115とを有している。弁板部115には、樹脂製のゴム状弾性材からなる円環状のシール部材117が装着されている(
図5参照)。このシール部材117を第1シール部材とする。
【0051】
図5に示すように、バルブ体96は、バルブガイド94内に同心状にかつ前後方向に移動可能に配置されている。第1シール部材117は、弁座72に対して当接可能に対向されている。バルブガイド94とバルブ体96との間には、両部材94,96を軸方向(前後方向)に所定範囲内で移動可能に連結する連結手段120が設けられている。
図6に示すように、連結手段120は、周方向に等間隔で複数組(例えば4組)配置されている。連結手段120は、バルブ体96の筒状部114に設けられた係合突起122と、バルブガイド94の筒壁部102に設けられた係合溝124とにより構成されている。
【0052】
図6に示すように、係合突起122は、バルブ体96の筒状部114の外周面の前端部から半径方向外方に向けて突出されている。バルブガイド94の筒壁部102の内周面には、略U字状の溝形成壁126が突出状に形成されている。溝形成壁126により、筒壁部102内に開口しかつ前後方向に延びる係合溝124が形成されている。溝形成壁126の一方の側壁部は端壁部103に接続されている。溝形成壁126の他方の側壁部と端壁部103との間には、開口部127が形成されている。係合突起122は、溝形成壁126の開口部127から係合溝124内に係合されている。これにより、バルブガイド94にバルブ体96が周方向に回り止めされた状態で、軸方向(前後方向)に所定の移動量をもって移動可能に連結されている。
【0053】
図5及び
図6に示すように、バルブスプリング98はコイルバネからなる。バルブスプリング98は、バルブガイド94の端壁部103とバルブ体96の弁板部115との間に同心状に介装されている。バルブスプリング98は、バルブガイド94に対してバルブ体96を常に後方すなわち閉方向へ付勢している。
【0054】
<リリーフ弁54の構成説明>
次に、リリーフ弁54の説明をする。
図7はリリーフ弁54の拡大断面図を示す。リリーフ弁54は正圧リリーフ弁機構130と負圧リリーフ弁機構132とを備える。
図7の図示状態は当該両リリーフ弁機構130,132共、閉弁状態を示している。
図7に示すように、リリーフ弁54は、弁ケーシング56の第2収容筒部61に配置されている。なお、負圧リリーフ弁機構132を備えるリリーフ弁54は本発明でいう「流体制御弁」に相当する。
【0055】
リリーフ弁54は、正圧リリーフ弁機構130及び負圧リリーフ弁機構132を同心状に有している。正圧リリーフ弁機構130の弁部材134、及び、負圧リリーフ弁機構132の弁部材136は、第2収容筒部61の第2弁室67内に同心状にかつ上下動可能に配置されている。なお、以後は、正圧リリーフ弁機構130の弁部材134は第1弁部材とし、負圧リリーフ弁機構132の弁部材136を第2弁部材とする。
【0056】
第1弁部材134は、円環板状の弁板138と、内外二重筒状をなす内筒部139及び外筒部140と同心状に有している。
【0057】
弁板138の外周部は、第2収容筒部61のバルブシート82に対応する弁部141とされている。これを第1弁部141とする。第1弁部141は、バルブシート82から上方に離座するときは第2弁口80を開き、その状態からバルブシート82に着座することにより第2弁口80を閉じる。
【0058】
内筒部139及び外筒部140は、弁板138上に立設されている。弁板138には、内筒部139の内周側において板厚方向に貫通する複数(
図8では2個を示す)の連通孔143が形成されている。第1弁部141の外周縁部の下面には、複数のストッパ片145が周方向に等間隔で形成されている。ストッパ片145は、第1弁部材134の閉弁時においてバルブシート82に当接する。これにより、第1弁部材134の閉弁位置が規定される。弁板138の内周部が負圧リリーフ弁機構132の弁座147とされている。すなわち、弁座147は弁板138を有する。
【0059】
第2収容筒部61の上端開口部には、キャップ150及び抜け止め部材152が配置されている。キャップ150は、樹脂製で、円板状に形成されている。キャップ150は、第2収容筒部61の上端開口部を嵌合により閉鎖している。抜け止め部材152は、樹脂製で、円環状に形成されている。抜け止め部材152は、第2収容筒部61の上端部に溶着等により接合されている。抜け止め部材152は、キャップ150の外周部に係合されている。これにより、キャップ150が抜け止め部材152により抜け止めされている。
【0060】
第1弁部材134の弁板138とキャップ150との対向面間には、第1コイルバネ154が同心状に配置されている。第1コイルバネ154は、第1弁部材134を下方すなわち閉弁方向に付勢している。第1コイルバネ154は、第1弁部材134の外筒部140内に嵌合されている。
【0061】
第2弁部材136は、円板状の弁板156と、丸軸状の軸部157とを有している。第2弁部材136は、軸部157が第1弁部材134の内筒部139内にその下方から嵌合されている。弁板156は、第1弁部材134の弁座147から下方に離座するときは連通孔143を開き、その状態から弁座147に着座することにより連通孔143を閉じる。軸部157の先端部(上端部)には、円環板状のバネ受け部材159が取付けられている。バネ受け部材159は、第2弁部材136の開弁時において第1弁部材134の内筒部139に当接する。これにより、第2弁部材136の最大開弁量が規定される。第2弁部材136は本発明でいう「弁部材」に相当する。
【0062】
第1弁部材134の弁板138とバネ受け部材159との対向面間には、第2コイルバネ161が同心状に配置されている。第2コイルバネ161内に、第1弁部材134の内筒部139が配置されている。第2コイルバネ161は、第2弁部材136を上方すなわち閉弁方向に付勢している。第2コイルバネ161と第1コイルバネ154とは、内外二重環状に配置されている。第2コイルバネ161のコイル径、コイル長及びコイル線径は、第1コイルバネ154のコイル径、コイル長及びコイル線径よりも小さく設定されている。したがって、第2コイルバネ161の付勢力は、第1コイルバネ154の付勢力に比べて小さい。
【0063】
図7に示すように、第1弁部材134の弁板138の第2弁口80側(下側)には、樹脂製のゴム状弾性材からなる円環状のシール部材163が保持されている。このシール部材163を第2シール部材163とする。第2シール部材163は本発明でいう「シール部材」に相当する。第1弁部材134と第2シール部材163とによって、弁体160が構成される。第2シール部材163は、弁板138に沿った略円板状のベース部166を有している。また、第2シール部材163は、ベース部166から第2弁口80側(下側)に内外二重環状に突出する内側シール部164と外側シール部165を有している。弁板138は本発明でいう「リテーナ部」に相当する。
【0064】
内側シール部164は、第2弁部材136の弁板156に対向して配置されている。第2弁部材136の閉弁時には、第2弁部材136が第2コイルバネ161の付勢力によって上方へ付勢される。これにより、弁板156が内側シール部164に弾性的に接触すなわち密着し、第2弁室67と第2弁口80との間が遮断される。第2弁部材136の弁板156が密着する第1弁部材134の弁座147は本発明でいう「弁座」に相当する。また、内側シール部164は本発明でいう「シール部」に相当する。
【0065】
一方、外側シール部165は、弁ケーシング56のバルブシート82に対向して配置されている。第1弁部材134の閉弁時には、第1弁部材134が第1コイルバネ154の付勢力によって下方へ付勢される。これにより、外側シール部165がバルブシート82に弾性的に接触すなわち密着し、第2弁室67と第2弁口80との間が遮断される。
【0066】
<正圧リリーフ弁機構130>
次に、正圧リリーフ弁機構130(
図7参照)について説明する。正圧リリーフ弁機構130は第1コイルバネ154によって正圧側の開弁圧が設定されている。これにより、第2弁口80側(燃料タンク側)の圧力が正圧側の開弁圧以上になると、第1弁部材134が第1コイルバネ154の付勢に抗して上昇する。これにより、正圧リリーフ弁機構130が開弁される。このとき、外側シール部165は、バルブシート82から離れ、自由状態となる。
【0067】
<負圧リリーフ弁機構132>
次に、負圧リリーフ弁機構132(
図7参照)について説明する。負圧リリーフ弁機構132は第2コイルバネ161によって負圧側の開弁圧が設定されている。これにより、第2弁口80側の圧力(燃料タンク側)の圧力が負圧側の開弁圧以下になると、第2弁部材136が第2コイルバネ161の付勢に抗して下降する。これにより、負圧リリーフ弁機構132が開弁される。このとき、内側シール部164は、第2弁部材136の弁板156から相対的に離れ、自由状態となる。
【0068】
<封鎖弁38とメイン通路74等との配置>
前述した封鎖弁38は、車両(不図示)に搭載される蒸発燃料処理装置12(
図1参照)におけるベーパ通路31に介装される。すなわち、
図3及び
図4に示すように、弁ケーシング56の第1管部57にベーパ通路31の燃料タンク15側の通路部31aが接続されるとともに、第2管部58にベーパ通路31のキャニスタ34側の通路部31bが接続される。これにより、ベーパ通路31の両通路部31a,31bが弁ケーシング56のメイン通路74を介して相互に連通されている。このため、メイン通路74は、ベーパ通路31の一部を構成している。また、
図3に示すように、弁ケーシング56の取付部63は、車両の床下側の固定側部材167に対してボルト等の締結により固定される。これにより、リリーフ弁54(
図3参照)の軸線が天地方向に向くように、封鎖弁38が車両に搭載される。そして、リリーフ弁54の第2弁口80は、車両搭載状態で、メイン通路74に対して天側に配置されている。すなわち、
図3に示されるように、第2弁口80は第1管部57により形成されるメイン通路74より上方位置に設定される。
【0069】
<電動弁52の動作>
次に、封鎖弁38における電動弁52の動作について説明する。電動弁52の動作は、リリーフ弁54の正圧リリーフ弁機構130及び負圧リリーフ弁機構132が閉弁状態(
図3参照)において行われる。
【0070】
<電動弁52の開弁状態>
先ず、電動弁52の開弁状態について説明する。
図5に示すように、電動弁52の開弁状態においては、バルブガイド94及びバルブ体96(第1シール部材117を含む)が第1収容筒部60の弁座72から前方(
図5において上方)に離れている。また、バルブガイド94に対してバルブ体96がバルブスプリング98の弾性により後方(
図5において下方)へ付勢されており、
図6に示すバルブガイド94の係合溝124の溝底部(溝形成壁126の前端部)にバルブ体96の係合突起122が当接されている。このため、バルブガイド94とバルブ体96とが連結手段120を介して連結されている。
【0071】
また、ECU45(
図1参照)による電動モータ92の駆動制御に基いて、送りネジ機構110を介してバルブガイド94が軸方向にストローク制御される。これにより、バルブガイド94とともにバルブ体96が前後方向(
図5において上下方向)に移動されることにより、バルブ体96の開弁量(リフト量)が調整される。また、開弁状態において、電動モータ92の通電をオフ(OFF)にしても、電動モータ92のディテントトルク、送りネジ機構110のリード角等によって開弁状態を保持することができる。
【0072】
そして、上述した電動弁52の開弁状態では、弁ケーシング56内に形成されるメイン通路74は連通状態にある。すなわち、
図4に示す燃料タンク15側のベーパ通路31の通路部31aに接続される第1管部57のメイン通路74と、キャニスタ34側のベーパ通路31の通路部31bに接続される第2管部58のメイン通路74とは連通状態にある。
【0073】
<電動弁52の閉弁作動時>
次に、電動弁52の閉弁作動時について説明する。電動弁52の開弁状態(
図5の状態)において、電動モータ92が閉弁作動されると、出力軸93が閉弁方向に回転される。これにより、送りネジ機構110を介してバルブガイド94及びバルブ体96は後方へ移動していく。すると、バルブ体96(詳しくは第1シール部材117)が弁座72に着座して、バルブ体96の後方への移動が規制される。続いて、バルブガイド94がさらに後方へ移動していく。これにともない、
図6に示すバルブ体96の係合突起122に対してバルブガイド94の係合溝124の溝底部(溝形成壁126の前端部)が前方へ移動していく。このため、連結手段120によるバルブガイド94とバルブ体96との連結が解除される。
【0074】
そして、バルブガイド94の筒壁部102が弁ケーシング56の弁座72に近接又は当接したときに、ECU45により電動モータ92の閉弁作動が停止される。この状態が閉弁状態である。なお、バルブガイド94の筒壁部102が弁ケーシング56の弁座72に当接してから、電動モータ92を所定量開弁作動させることにより、バルブガイド94を弁座72に近接させた状態としてもよい。
【0075】
<電動弁52の閉弁状態>
次に、電動弁52の閉弁状態について説明する。電動弁52の閉弁状態では、バルブ体96がバルブスプリング98の付勢力によって弁ケーシング56の弁座72に着座した状態に弾性的に保持される。また、バルブ体96と弁座72との間は第1シール部材117によって弾性的にシールされる。また、閉弁状態において、電動モータ92の通電をオフ(OFF)にしても、電動モータ92のディテントトルク、送りネジ機構110のリード角等によって閉弁状態を保持することができる。
【0076】
<電動弁52の開弁作動時>
次に、電動弁52の開弁作動時について説明する。電動弁52の閉弁状態において、電動モータ92が開弁作動されると、出力軸93が開弁方向に回転される。これにより、送りネジ機構110を介してバルブガイド94が前方(開方向)へ移動されていく。これにともない、バルブガイド94の係合溝124がバルブ体96の係合突起122に沿って上方へ移動していく。これにともない、バルブスプリング98及び補助バネ112がその弾性復元力により伸長する。そして、係合溝124の溝底部(溝形成壁126の前端部)がバルブ体96の係合突起122に当接する。これにより、バルブガイド94とバルブ体96との相対移動が規制される。このため、バルブガイド94とバルブ体96とが連結手段120を介して連結される。続いて、バルブガイド94及びバルブ体96がさらに上昇されていく。これにともない、補助バネ112がその弾性復元力により伸長する。これにより、バルブ体96(詳しくは第1シール部材117)が弁ケーシング56の弁座72から離座することにより、開弁状態となる(
図5の状態)。
【0077】
<リリーフ弁54の動作>
次に、封鎖弁38におけるリリーフ弁54の動作について説明する。リリーフ弁54における正圧リリーフ弁機構130の開弁動作、及び負圧リリーフ弁機構132の開弁動作は、いずれも電動弁52の閉弁状態において行われる。
【0078】
<正圧リリーフ弁機構130の開弁動作>
正圧リリーフ弁機構130の開弁動作は、燃料タンク15に正圧リリーフ弁機構130の開弁圧以上の正圧が生じた場合に行われる。すなわち、開弁圧以上の正圧が生じると前述したように第1弁部材134が上動して、正圧リリーフ弁機構130が開弁し、第2弁口80と第2弁室67が連通する。これにより、バイパス通路90が連通状態となり、メイン通路74における電動弁52の第1弁口71が閉弁状態にあり、メイン通路74が遮断された状態にあっても、バイパス通路90を介して連通状態となる。このバイパス通路90の連通により、燃料タンク15側からの流体は、第1通路部75からバイパス通路90を通り、第2通路部76からキャニスタ34側へと流れる。これにより、燃料タンク15内の圧力を低下させることができる。
【0079】
<負圧リリーフ弁機構132の開弁動作>
負圧リリーフ弁機構132の開弁動作は、燃料タンク15に負圧リリーフ弁機構132の開弁圧以下の負圧が生じた場合に行われる。すなわち、開弁圧以下の負圧が生じると前述したように第2弁部材136が下降して開弁して、負圧リリーフ弁機構132が開弁し、第2弁口80と第2弁室67が連通する。これにより、正圧リリーフ弁機構130の開弁の場合と同様に、バイパス通路90が連通状態となり、メイン通路74が遮断された状態にあっても、バイパス通路90を介して連通状態となる。このバイパス通路90の連通により、燃料タンク15側からの流体は、第1通路部75からバイパス通路90を通り、第2通路部76からキャニスタ34側へと流れる。これにより、燃料タンク15内の圧力を上昇させることができる。
【0080】
<本実施形態の特徴構成>
本実施形態が特徴とする構成は、弁体160において第1弁部材134が第2シール部材163を保持する構成である(
図7参照)。
図8はリリーフ弁の弁体の上面図、
図9は同じく下面図、
図10は第1弁部材の上面図、
図11は同じく下面図、
図12は
図8のXII-XII線矢視断面図、
図13は
図8のXIII-XIII線矢視断面図、
図14は
図8のXIV-XIV線矢視断面図、
図15は弁体の要部を示す断面図である。
【0081】
図12に示すように、第1弁部材134は、弁板138を板厚方向に貫通する内側貫通孔171と外側貫通孔173とを有する。内側貫通孔171は、弁板138の径方向において内筒部139と外筒部140との間に配置されている。外側貫通孔173は、弁板138の径方向において外筒部140の外側に配置されている。
【0082】
図10に示すように、内側貫通孔171は、弁板138の周方向に略等間隔で複数設けられている(
図11参照)。例えば、8個の内側貫通孔171が周方向の八等分位置に配置されている。内側貫通孔171は、弁板138の周方向に延びる長円孔状に形成されている。内側貫通孔171は本発明でいう「貫通孔」に相当する。
【0083】
弁板138の上面部には、全ての内側貫通孔171の上面開口部と連通する内側係合凹部172が同心状に形成されている。これにより、内側係合凹部172は、内側貫通孔171の長手方向の相反する方向に張り出している(
図13参照)。内側係合凹部172には、内側貫通孔171の上面開口部を含むものとする。内側係合凹部172は、円環状をなす扁平な四角溝状に形成されている。内側係合凹部172は本発明でいう「係合凹部」に相当する。
【0084】
図12に示すように、内側係合凹部172の径方向の溝幅は、内側貫通孔171の短手方向の孔幅よりも大きく設定されている。すなわち、内側係合凹部172の径方向の両端部は、内側貫通孔171の短手方向の相反する方向に張り出している。
【0085】
図11に示すように、外側貫通孔173は、弁板138の周方向に略等間隔で複数設けられている。例えば、8個の外側貫通孔173が周方向の八等分位置に配置されている。外側貫通孔173は、弁板138の周方向に延びる長四角孔状に形成されている。各外側貫通孔173は各内側貫通孔171と並んでいる。外側貫通孔173は本発明でいう「補助貫通孔」に相当する。
【0086】
図10に示すように、弁板138の上面部には、全ての外側貫通孔173の上面開口部と連通する外側係合凹部174が同心状に形成されている。これにより、外側係合凹部174は、外側貫通孔173の長手方向の相反する方向に張り出している(
図14参照)。外側係合凹部174には、外側貫通孔173の上面開口部を含むものとする。外側係合凹部174は、円環状をなす扁平な四角溝状に形成されている。外側係合凹部174は内側係合凹部172と並んでいる。外側係合凹部174は本発明でいう「補助係合凹部」に相当する。
【0087】
図12に示すように、外側係合凹部174は、外側貫通孔173の上面開口部のうちの外側半部と連通している。すなわち、外側貫通孔173の上面開口部のうちの内側半部は、外側貫通孔173の内周側の孔縁部176により塞がれている(
図10及び
図11参照)。
【0088】
図12に示すように、第2シール部材163は、ベース部166から第1弁部材134の各内側貫通孔171内へ嵌入する内側嵌合部181を有している。また、第2シール部材163は、ベース部166から第1弁部材134の各外側貫通孔173内へ嵌入する外側嵌合部183を有している。各内側嵌合部181及び各外側嵌合部183は、ベース部166において、内側シール部164及び外側シール部165が設けられる側(下側)とは反対側(上側)に設けられている。内側嵌合部181は、弁体160の周方向に略等間隔で8個設けられている。外側嵌合部183は、弁体160の周方向に略等間隔で8個設けられている。外側嵌合部183は本発明でいう「補助連結部」に相当する。
【0089】
第2シール部材163は、内側嵌合部181の先端部(上端部)において内側係合凹部172と係合する内側投錨部182を有している。内側投錨部182は、内側係合凹部172の径方向の溝幅と略同一幅を有する円環状に形成されている(
図8参照)。内側投錨部182は本発明でいう「投錨部」に相当する。
【0090】
図12及び
図13に示すように、内側投錨部182は、内側嵌合部181の軸方向に交差する方向の相反する方向すなわち内側嵌合部181の軸方向(上下方向)に対して弁体160の径方向及び周方向に相反する方向にそれぞれ張り出す錨形状に形成されている。内側投錨部182は、内側嵌合部181を介してベース部166と連結されている。これにより、ベース部166の内周部が弁板138に抜け止め状態で保持される。内側嵌合部181は本発明でいう「連結部」に相当する。
【0091】
図12に示すように、第2シール部材163は、外側嵌合部183の先端部(上端部)において外側係合凹部174と係合する外側投錨部184を有している。外側投錨部184は、外側係合凹部174の径方向の溝幅と略同一幅を有する円環状に形成されている(
図8参照)。外側投錨部184は本発明でいう「補助投錨部」に相当する。
【0092】
図14に示すように、外側投錨部184は、外側嵌合部183の軸方向に交差する方向の相反する方向すなわち外側嵌合部183の軸方向(上下方向)に対して弁体160の周方向に相反する方向にそれぞれ張り出す錨形状に形成されている。外側投錨部184は、外側嵌合部183を介してベース部166と連結されている。これにより、ベース部166の外周部が弁板138に抜け止め状態で保持される。なお、外側嵌合部183は本明細書でいう「補助連結部」に相当する。
【0093】
第2シール部材163が第1弁部材134に保持された状態において、ベース部166の上面は弁板138の下面と気密に接触している。また、内側嵌合部181は内側貫通孔171に対して気密に接触している。また、内側投錨部182は内側係合凹部172に対して気密に接触している。また、外側嵌合部183は外側貫通孔173に対して気密に接触している。また、外側投錨部184は外側係合凹部174に対して気密に接触している。これにより、弁体160の閉弁時(
図7参照)において、第1弁部材134と第2シール部材163との間の隙間から、流体が上流側から下流側へあるいは下流側から上流側へ漏れることを抑制することができる。
【0094】
図15は、
図12における第2シール部材の周辺部の拡大図である。また、
図12及び
図15の断面は、第1弁部材134の弁板138の軸線、内側嵌合部181の軸線、及び、外側嵌合部183の軸線を含む一平面に相当する。
図15において、内側嵌合部181と内側シール部164とは、内側嵌合部181の軸方向から見て少なくとも一部が重なるように配置されている。すなわち、内側嵌合部181の軸方向における内側シール部164の投影領域(
図15中、点線領域R1参照)は、内側嵌合部181に対して少なくとも一部が重なる。
【0095】
また、外側嵌合部183と外側シール部165とは、外側嵌合部183の軸方向から見て少なくとも一部が重なるように配置されている。すなわち、外側嵌合部183の軸方向における外側シール部165の投影領域(
図15中、点線領域R2参照)は、外側嵌合部183に倒して少なくとも一部が重なる。
【0096】
また、第2シール部材163は、第1弁部材134に樹脂によりインサート成形されている。本実施形態において、第2シール部材163のインサート成形に際し、溶融樹脂は、図示しない金型において、内側投錨部182の上面に対応する射出ゲートから第2シール部材163に対応するキャビティ内に射出される。
【0097】
図15において、内側投錨部182の上面において、内側嵌合部181の軸線上の交点を内側投錨部182の外端部182aとする。外端部182aは、内側投錨部182の上面における径方向(幅方向)の中点でもある。また、外側投錨部184の上面における径方向(幅方向)の中点を外側投錨部184の外端部184aとする。
【0098】
弁板138の軸方向(上下方向)において、ベース部166の中間位置166aから内側投錨部182の外端部182aまでの距離を距離Aとする。また、ベース部166の中間位置166aから内側シール部164の先端部(下端部)164aまでの距離を距離Bとする。また、ベース部166の中間位置166aから外側投錨部184の外端部184aまでの距離を距離Cとする。また、ベース部166の中間位置166aから外側シール部165の先端部(下端部)165aまでの距離を距離Dとする。本実施形態において、距離Aは、距離Bより長く、かつ距離Dよりも長く設定されている。また、距離Cは、距離Aと同等に設定されている。
【0099】
したがって、内側投錨部182の外端部182aからベース部166の中央部を通過して外側投錨部184の外端部184aに到達するまでの第1経路(
図15中、矢印Y1参照)の長さは、内側投錨部182の外端部182aから内側シール部164の先端部164aに到達するまでの第2経路(
図15中、矢印Y2参照)の長さより長くなっている。また、第1経路(
図15中、矢印Y1参照)の長さは、内側投錨部182の外端部182aからベース部166の中央部を通過して外側シール部165の先端部165aに到達するまでの第3経路(
図15中、矢印Y3参照)の長さより長くなっている。
【0100】
ベース部166の中間位置166aにおける外端部を最遠端部166bとする。本実施形態において、内側投錨部182の外端部182aからベース部166の中央部を通過して最遠端部166bに到達するまでの第4経路(
図15中、矢印Y4参照)の長さは、第2経路(
図15中、矢印Y2参照)の長さより長くなっている。
【0101】
本実施形態において、第2シール部材163は、インサート成形によって第1弁部材134に一体化されている。そのインサート成形に際し、溶融樹脂は、図示しない金型の射出ゲートから第2シール部材163に対応するキャビティ内に射出される。このとき、溶融樹脂は、内側投錨部182の外端部182aを起点として射出される。溶融樹脂は、内側投錨部182から内側嵌合部181を通りベース部166に流れた後、内側シール部164、外側シール部165及び外側嵌合部183へ分岐する。このため、内側シール部164においては先端部164aが溶融樹脂の流れの終点となる。また、外側シール部165においては先端部165aが溶融樹脂の流れの終点となる。また、ベース部166においては最遠端部166bが溶融樹脂の流れの終点となる。また、外側投錨部184においては外端部184aが溶融樹脂の流れの終点となる。
【0102】
第2シール部材163のインサート成形にかかる内側投錨部182の外端部182aを起点とした溶融樹脂の流れにおいて、ベース部166に対する溶融樹脂の充填が完了する前に内側シール部164に対する溶融樹脂の充填が完了する。また、外側投錨部184に対する溶融樹脂の充填が完了する前に外側シール部165に対する溶融樹脂の充填が完了する。
【0103】
第2シール部材163のインサート成形において溶融樹脂の流れの最終点に相当する箇所は、溶融樹脂の充填不良によるボイドの発生や、溶融樹脂の合流によるウェルドの発生が起きやすくなる。換言すれば、溶融樹脂の流れの最終点よりも上流側に相当する箇所では、ボイドやウェルド等の成形不良の発生が抑制される。内側シール部164及び外側シール部165は、気密性を要するため、ボイドやウェルド等の成形不良が発生しないことが好ましい。本実施形態では、外側投錨部184の外端部184aが溶融樹脂の流れの最終点となるため、内側シール部164及び外側シール部165におけるボイドやウェルド等の成形不良の発生が抑制される。したがって、内側シール部164及び外側シール部165のシール性を向上することができる。
【0104】
<本実施形態の特徴構成による効果>
上述した本実施形態の特徴構成によれば、第2シール部材163が、第1弁部材134の弁板138の内側係合凹部172内に設けられる内側投錨部182と、弁板138の内側貫通孔171を貫通しかつベース部166と内側投錨部182とを連結する内側嵌合部181と、を有する。したがって、第1弁部材134の弁板138に第2シール部材163が内側投錨部182によって抜け止め状態で保持される。また、第2シール部材163の取り付けに接着材等を必要としない。したがって、接着材等にかかるコストを低減しつつ、第1弁部材134の弁板138に第2シール部材163を安定した状態で保持させることができる。
【0105】
また、内側投錨部182は、内側嵌合部181の軸方向に交差する方向の相反する方向に張り出している。したがって、第1弁部材134の弁板138に対する第2シール部材163の内側投錨部182による抜け止めがより確実になされる。これにより、第1弁部材134の弁板138に対する第2シール部材163の保持をより安定化させることができる。
【0106】
また、内側嵌合部181と内側シール部164とは、内側嵌合部181の軸方向から見て一部が重なるように配置されている。したがって、閉弁時に作用する力によって、内側シール部164が径方向に位置ずれすることを抑制することができる。ひいては、内側シール部164の開弁特性のばらつきを抑制し、負圧リリーフ弁機構132の流量特性を維持することができる。
【0107】
また、外側嵌合部183と外側シール部165とは、外側嵌合部183の軸方向から見て一部が重なるように配置されている。したがって、閉弁時に作用する力によって、外側シール部165が径方向に位置ずれすることを抑制することができる。ひいては、外側シール部165の開弁特性のばらつきを抑制し、正圧リリーフ弁機構130の流量特性を維持することができる。
【0108】
また、第1弁部材134の弁板138の軸線及び内側嵌合部181の軸線を含む一平面において、内側投錨部182の外端部182aからベース部166の略中央部を通過して最遠端部166bまでの第4経路(
図15中、矢印Y4参照)の長さは、内側投錨部182の外端部182aから内側シール部164の先端部164aまでの第2経路(
図15中、矢印Y2参照)の長さより長い。したがって、第1弁部材134の弁板138に第2シール部材163を樹脂によりインサート成形する際に、内側投錨部182の外端部182aを起点として溶融樹脂を充填することで、ベース部166に対する溶融樹脂の充填が完了する前に内側シール部164に対する溶融樹脂の充填が完了する。これにより、内側シール部164の先端部164aにボイド、ウェルド等の成形不良が発生することを抑制することができる。
【0109】
また、第2シール部材163が、第1弁部材134の弁板138の外側係合凹部174内に設けられる外側投錨部184と、第1弁部材134の弁板138の外側貫通孔173を貫通しかつベース部166と外側投錨部184とを連結する外側嵌合部183と、を有する。したがって、第1弁部材134の弁板138に第2シール部材163が外側投錨部184によっても抜け止め状態で保持される。これにより、第1弁部材134の弁板138に対する第2シール部材163の保持をより安定化させることができる。
【0110】
また、内側嵌合部181の軸線及び外側嵌合部183の軸線を含む一平面において、内側嵌合部181の軸線上における内側投錨部182の外端部182aからベース部166の略中央部を通過して外側投錨部184の外端部184aまでの第1経路(
図15中、矢印Y1参照)の長さは、内側投錨部182の外端部182aから内側シール部164の先端部164aまでの第2経路(
図15中、矢印Y2参照)の長さより長い。したがって、第1弁部材134の弁板138に第2シール部材163を樹脂によりインサート成形する際に、第2シール部材163の内側シール部164に対応する内側投錨部182の外端部182aを起点として溶融樹脂を充填することで、外側投錨部184に対する溶融樹脂の充填が完了する前に内側シール部164に対する溶融樹脂の充填が完了する。これにより、内側シール部164の先端部164aにボイド、ウェルド等の成形不良が発生することを抑制することができる。
【0111】
<実施形態の変形例>
以上、本発明を特定の実施形態について説明したが、本発明はその他各種の形態でも実施可能なものである。
【0112】
例えば、本発明は、リリーフ弁54の負圧リリーフ弁機構132に限らず、正圧リリーフ弁機構130、電動弁52、あるいは、その他の流体制御弁に適用してもよい。
【0113】
また、第2シール部材163の外側嵌合部183及び外側投錨部184は省略してもよい。これにともない、第1弁部材134の外側貫通孔173及び外側係合凹部174を省略してもよい。
【0114】
また、第2シール部材163の外側シール部材165は省略してもよい。
【0115】
また、内側嵌合部181にかかる内側貫通孔171、及び、外側嵌合部183にかかる外側貫通孔173の個数、配置、形状等については適宜変更することができる。好ましくは、内側貫通孔171及び外側貫通孔173は、それぞれ3個以上設けるとよい。
【0116】
また、内側投錨部182の形状は、第1弁部材134の弁板138に対して抜け止めされる構成であればよい。例えば、内側投錨部182は、弁板138の径方向の少なくとも一方又は周方向の少なくとも一方に張り出す形状を有していればよい。また、内側投錨部182は、周方向に断続的に複数形成される構成としてもよい。
【0117】
また、外側投錨部184の形状は、第1弁部材134の弁板138に対して抜け止めされる構成であればよい。例えば、外側投錨部184は、弁板138の径方向の少なくとも一方又は周方向の少なくとも一方に張り出す形状を有していればよい。また、外側投錨部184は、周方向に断続的に複数形成される構成としてもよい。
【0118】
また、第2シール部材163を第1弁部材134にインサート成形したが、第1弁部材134と別体で形成された第2シール部材を第1弁部材134に弾性を利用した係合によって取り付ける構成としてもよい。
【0119】
また、第2シール部材163をインサート成形する際の溶融樹脂の射出の起点(ゲート)は、内側シール部164の先端部164a及び外側シール部165の先端部165aが溶融樹脂の流れの最終点となることを避ける構成であればよい。例えば、外側投錨部184の外端部184aを溶融樹脂の射出の起点(ゲート)とし、内側投錨部182の外端部182aを溶融樹脂の流れの最終点としてもよい。
【符号の説明】
【0120】
54…リリーフ弁(流体制御弁)
90…バイパス通路(流路)
134…第1弁部材
136…第2弁部材(弁部材)
138…弁板(リテーナ部)
147…弁座
160…弁体
163…第2シール部材(シール部材)
164…内側シール部(シール部)
164a…先端部
166…ベース部
166b…最遠端部
171…内側貫通孔(貫通孔)
172…内側係合凹部(係合凹部)
173…外側貫通孔(補助貫通孔)
174…外側係合凹部(補助係合凹部)
181…内側嵌合部(連結部)
182…内側投錨部(投錨部)
182a…外端部
183…外側嵌合部(補助連結部)
184…外側投錨部(補助投錨部)
184a…外端部