(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-02
(45)【発行日】2022-05-13
(54)【発明の名称】法面作業車
(51)【国際特許分類】
E02F 5/00 20060101AFI20220506BHJP
【FI】
E02F5/00 Z
(21)【出願番号】P 2018118465
(22)【出願日】2018-06-22
【審査請求日】2021-06-04
(73)【特許権者】
【識別番号】390040073
【氏名又は名称】岡本 俊仁
(74)【代理人】
【識別番号】100080838
【氏名又は名称】三浦 光康
(72)【発明者】
【氏名】岡本 俊仁
【審査官】彦田 克文
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-119739(JP,A)
【文献】特開2001-153104(JP,A)
【文献】特開平9-42204(JP,A)
【文献】特開平11-217851(JP,A)
【文献】特開2002-276807(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業車本体と、該作業車本体に設けられた左右1対の走行装置と、前記作業車本体に設けられた左右1対のウインチと、前記左右1対の走行装置にそれぞれ接続された走行装置用アクチュエーターと、前記左右1対のウインチにそれぞれ接続されたウインチ用アクチュエーターと、前記走行装置用アクチュエーター及び前記ウインチ用アクチュエーターにオイルを供給する1対の油圧ポンプとで構成され、
前記一方の油圧ポンプは、前記作業車本体の左側に設けられた走行装置に接続する走行装置用アクチュエーター及び前記作業車本体の左側に設けられたウインチに接続するウインチ用アクチュエーターへオイルを供給し、前記他方の油圧ポンプは、前記作業車本体の右側に設けられた走行装置に接続する走行装置用アクチュエーター及び前記作業車本体の右側に設けられたウインチに接続するウインチ用アクチュエーターへオイルを供給する法面作業車。
【請求項2】
前記作業車本体には、作業機械が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の法面作業車。
【請求項3】
前記左右の走行装置用アクチュエーターに対してオイルを供給するオイル供給路には、流量調節手段がそれぞれ設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載の法面作業車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は法面を移動して削孔等の作業を行う法面作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、法面において、ウインチのワイヤーで牽吊されて法面等を走行し、法面において作業を行う法面作業車としては、「無限軌道、ウインチ及び作業機械を備える車体と、この車体のベース板の後部寄りの部位に取付けられたエンジンと、このエンジンの駆動によって駆動される油圧ポンプと、前記油圧ポンプからの加圧された作動油を油圧供給ホースを介して供給される油圧駆動装置と、この油圧駆動装置から加圧された作動油を前記車体の走行装置等に供給する法面作業車」が知られている。
【0003】
しかしながら、このような法面作業車は、油圧ポンプによって左右のウインチや走行装置、作業機械等をまとめて動かしているものであり、ウインチと走行装置を同じ油圧回路で制御するとともに、左右それぞれ別系統の油圧回路で制御する法面作業車は存在しなかった。
【0004】
そのため、左右の走行装置の接地している法面の状態が異なっていた場合にスムーズに法面上を移動できなかったり、ウインチや走行装置へのオイル供給等をその都度制御しなければならないという欠点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は以上のような従来の欠点に鑑み、容易に制御できるとともに法面上を効率よく移動できる法面作業車を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の法面作業車は、作業車本体と、該作業車本体に設けられた左右1対の走行装置と、前記作業車本体に設けられた左右1対のウインチと、前記左右1対の走行装置にそれぞれ接続された走行装置用アクチュエーターと、前記左右1対のウインチにそれぞれ接続されたウインチ用アクチュエーターと、前記走行装置用アクチュエーター及び前記ウインチ用アクチュエーターにオイルを供給する1対の油圧ポンプとで構成され、前記一方の油圧ポンプは、前記作業車本体の左側に設けられた走行装置に接続する走行装置用アクチュエーター及び前記作業車本体の左側に設けられたウインチに接続するウインチ用アクチュエーターへオイルを供給し、前記他方の油圧ポンプは、前記作業車本体の右側に設けられた走行装置に接続する走行装置用アクチュエーター及び前記作業車本体の右側に設けられたウインチに接続するウインチ用アクチュエーターへオイルを供給することを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の法面作業車の前記作業車本体には、作業機械が設けられていることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の法面作業車の前記左右の走行装置用アクチュエーターに対してオイルを供給するオイル供給路には、流量調節手段がそれぞれ設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
以上の説明から明らかなように、本発明にあっては次に列挙する効果が得られる。
(1)請求項1に記載の発明においては、一側のウインチと走行装置に同一の油圧ポンプからオイルを供給するので、ウインチと走行装置に供給されるオイル供給量が自動的に調節され、安定して法面上を移動することができる。
したがって、ウインチや走行装置へのオイル供給等についての制御をほとんど行う必要がなく、容易に運転することができる。
(2)作業車本体の左側に位置するウインチ及び走行装置は一方の油圧ポンプにより作動し、作業車本体の右側に位置するウインチ及び走行装置は他方の油圧ポンプにより作動するため、法面の状態が左右異なっていても、左右の走行装置とウインチには1対の油圧ポンプからそれぞれ適切に油圧が供給され、安定して法面上を移動することができる。
(3)請求項2に記載の発明においては、(1)~(2)と同様な効果が得られるとともに、法面において重機を用いて種々の作業を行うことができる。
(4)請求項3に記載の発明においても前記(1)~(3)と同様な効果が得られるとともに、走行装置用アクチュエーターへオイルを供給するオイル供給路に流量調節手段を備えているので、主にウインチ用アクチュエーターへオイルを供給することができる。
【0011】
したがって、走行装置が空転するような急斜面を移動する場合に、走行装置へのオイル供給を絞りウインチを主として駆動させて移動することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1乃至
図5は本発明の第1の実施形態を示す説明図である。
図6及び
図7は本発明の第2の実施形態示す説明図である。
図8及び
図9は本発明の第3の実施形態示す説明図である。
図10及び
図11は本発明の第4の実施形態示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面に示す本発明を実施するための形態により、本発明を詳細に説明する。なお、左右方向とは
図2(平面視)における左右方向であり、前後方向とは
図1における左右方向、上下方向とは
図1における上下方向をいう。
【0014】
図1乃至
図5に示す本発明を実施するための第1の形態において、1は法面2で作業可能な法面作業車で、該法面作業車1は走行可能な作業車本体3と、該作業車本体3に設けられた作業機械4とで構成されている。
【0015】
具体的には、
図1及び
図2に示すように、作業車本体3と、該作業車本体3の底部の左右部位にそれぞれ設けられた走行装置5と、前記作業車本体4の左右にそれぞれ設けられたウインチ6と、前記走行装置5にそれぞれ接続された走行装置用アクチュエーター7と、前記ウインチ6にそれぞれ接続されたウインチ用アクチュエーター8と、前記走行装置用アクチュエーター7及び前記ウインチ用アクチュエーター8にオイルを供給する1対の油圧ポンプ9と、作業車本体3の後部付近に設けられた前記油圧ポンプ9を作動させるためのエンジン10と、作業車本体3に設けられた作業機械4とで構成されている。
【0016】
作業車本体3の後方側の左右部位には、1対のウインチ6が設けられている。このウインチ6にはそれぞれワイヤー11が備えられており、このワイヤー12を法面2の上部の主アンカー12に固定してウインチ6を巻き上げることにより、急角度の法面2であっても走行することができるものである。
【0017】
このウインチ6は、それぞれウインチ用アクチュエーター8により駆動する。具体的には、作業車本体3の左側に位置するウインチ6は、左側の油圧ポンプ9に接続されたウインチ用アクチュエーター8により駆動し、作業車本体3の右側に位置するウインチ6は、右側の油圧ポンプ9に接続されたウインチ用アクチュエーター8により駆動する。
【0018】
作業機械4は、作業車本体3の上部に設けられており、本実施形態では、作業車本体3の前方の上部に突出するように形成された支持台13に一端部が枢支ピン14を介して、他端部が上下方向に回動可能に取付けられたベース板15と、このベース板15上に取付けられた作業台16と、この作業台16の前端部に取付けられた駆動アーム17と、この駆動アーム17の先端部に着脱可能に取付けられた作業アタッチメントとしてのバケット18とを備えており、法面2上でいわゆる油圧ショベルと同様の作業を行うことができる。
【0019】
走行装置5は、本実施形態では、無限軌道5が用いられており、これらの無限軌道5も前記油圧ポンプ9に接続された走行装置用アクチュエーター7により駆動する。具体的には、作業車本体3の左側に位置する走行装置5は、左側(一方)の油圧ポンプ9に接続された走行装置用アクチュエーター7により駆動し、作業車本体3の右側に位置する走行装置5は、右側(他方)の油圧ポンプ9に接続された走行装置用アクチュエーター7により駆動する。
【0020】
なお、この油圧ポンプ9を作動させるためのエンジン10は、作業車本体3に回転可能に設けられている。このようにエンジン10を設けることにより、法面2を移動する場合であっても、エンジン10は重力によって常時略水平状態を維持することができ、エンジン10の焼付き等を防止することができる。
【0021】
すなわち、本実施形態の油圧回路19は、
図3に示すように、左側の油圧ポンプ9が作業車本体3の左側に設けられた走行装置5に接続された走行装置用アクチュエーター7及び前記作業車本体3の左側に設けられたウインチ6に接続されたウインチ用アクチュエーター8へオイルを供給するように構成するとともに、前記右側の油圧ポンプ9が前記作業車本体3の右側に設けられた走行装置5に接続された走行装置用アクチュエーター7及び前記作業車本体3の右側に設けられたウインチ6に接続されたウインチ用アクチュエーター8へオイルを供給するように構成している。
【0022】
このように左右の油圧ポンプ9を左右の走行装置用アクチュエーター7及びウインチ用アクチュエーター8へそれぞれ接続することにより、走行装置用アクチュエーター7とウインチ用アクチュエーター8へ流れるオイルが自動的に同調する。
【0023】
「同調する」とは具体的には、走行装置用アクチュエーター7とウインチ用アクチュエーター8へ1の油圧ポンプ9からオイルを供給することにより、油圧ポンプ9から圧送されたオイルは、流れやすい方へと流れ、比較して負荷が大きいアクチュエーターへはオイルの供給が少なくなり、負荷の小さいアクチュエーター側へのオイルの供給量が多くなるように調節されることをいう。
【0024】
例えば、法面2の下部に法面作業車1が位置し、ワイヤー11がたるんでいる状態では、ウインチ6には荷重がかかっていないため、ウインチ用アクチュエーター8へオイルが流れる負荷が弱く、一方、走行装置5は地面と接地し法面作業車1の重量がかかっているので、走行装置5を作動させるための走行装置用アクチュエーター7には負荷が強くなる。そうすると、走行装置用アクチュエーター7へはオイルがほとんど流れず、ウインチ用アクチュエーター8へオイルが供給され、ワイヤー11にテンションがかかるまで優先的にウインチ6が作動する。
【0025】
ウインチ6にも荷重が加わると、ウインチ用アクチュエーター8側の負荷も強くなり、ウインチ用アクチュエーター8へ供給されるオイルが減少するとともに、走行装置用アクチュエーター7へオイルが提供される。
そうすると、ウインチ6及び走行装置5の両方が作動し、効率よく法面2を移動することができる。
【0026】
また、本発明では、左右のウインチ6及び走行装置5をそれぞれ別の油圧ポンプ9に接続しているため、法面作業車1の左右で法面2の状態が異なっていても、左右の走行装置用アクチュエーター7とウインチ用アクチュエーター8へのオイル供給量を、それぞれ自動的にオイル供給量が調節され、スムーズに法面2を移動することができる。
【0027】
ところで、本実施形態では、少なくとも油圧ポンプと走行装置用アクチュエーターを接続する流路に絞りやバルブ等の流量調節手段20を設けている。
【0028】
このような流量調節手段20を用いることにより、法面2が急角度から垂直に近いような角度になった場合に、法面作業車1の重量が走行装置5にかからず、そのほとんどがワイヤー11にかかり、走行装置5が空転してしまうが、このような場合に走行装置5へのオイル供給を流量調節手段20によって絞りウインチ6を駆動させて移動することができる。
【0029】
なお、走行装置5及びウインチ6以外の油圧機器、例えば作業機械4を作動させる油圧ポンプについては、別途設けることが望ましい。
【0030】
法面2で作業を行なう場合、法面作業車1を法面の下部に位置させ、左右のウインチ6のワイヤー11の先端部を法面上部の主アンカー12に固定する。このとき、
図4に示すように、ワイヤー11を平面視において逆ハの字状になるように固定することが望ましい。主アンカー12にワイヤー11を固定したら、油圧ポンプ9を作動させ、ウインチ6を巻き上げるとともに、走行装置5を作動させて法面作業車1を前進させる。
【0031】
ところで、本実施形態では、作業車本体3の前方側の左右部位に設けられたワイヤーフェアリーダー21を介してワイヤー11を主アンカー12に固定している。
作業位置に法面作業車1が到着したら、作業機械4により法面上で作業を行う。
【0032】
[発明を実施するための異なる形態]
次に、
図6乃至
図11に示す本発明を実施するための異なる形態につき説明する。なお、これらの本発明を実施するための異なる形態の説明に当って、前記本発明を実施するための第1の形態と同一構成部分には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0033】
図6及び
図7に示す本発明を実施するための第2の形態において、前記本発明を実施するための第1の形態と主に異なる点は、流量調節手段を備えない油圧回路19Aにした点で、このような法面作業車1Aにしても、前記本発明を実施するための第1の形態と同様な作用効果が得られる。
【0034】
図8及び
図9に示す本発明を実施するための第3の形態において、前記本発明を実施するための第1の形態と主に異なる点は、作業機械4Aとして削孔装置4Aを設けた点で、このような法面作業車1Bにしても、前記本発明を実施するための第1の形態と同様な作用効果が得られる。
【0035】
この削孔装置4Aは、公知のものを用いることができる。
例えば、削孔装置4Aは、作業車本体3に左右方向に回動可能に設けられたアーム22と、該アーム22に上下方向に回動可能に設けられたガイドシェル取付部23と、該ガイドシェル取付部23に固定されたガイドシェル24と、該ガイドシェル24に前後方向に移動可能に設けられた削孔装置本体25とで構成される。
【0036】
図10及び
図11に示す本発明を実施するための第3の形態において、前記本発明を実施するための第1の形態と主に異なる点は、作業機械を備えず、作業車本体3の上部に周囲に手摺を備える作業台16Aのみを設け、作業機械を備えないように構成した点で、このような法面作業車1Cにしても、前記本発明を実施するための第1の形態と同様な作用効果が得られる。
【0037】
本実施形態の法面作業車1Cは、作業台16Aに作業者が乗り、法面上で作業を行う場合等に用いられる。
【0038】
なお、本発明の実施形態において、走行装置として無限軌道を用いるものについて説明したが、例えば、油圧アクチュエーターで駆動するタイヤ等を走行装置として用いてもよい。
【0039】
また、作業機械として、いわゆるバックホーや削孔装置を備えるものについて説明したが、例えばクレーン、杭打機、ブレーカー等のいわゆる重機を用いてもよい。
【0040】
ところで、本発明の実施形態においては、作業車本体の左右部位に走行装置及びウインチを作動させる油圧ポンプを配置し、左側の油圧ポンプによって左側の走行装置及びウインチを作動させ、右側の油圧ポンプによって右側の走行装置及びウインチを作動させていたが、左側の油圧ポンプによって右側の走行装置及びウインチを作動させ、右側の油圧ポンプによって左側の走行装置及びウインチを作動させてもよく、油圧ポンプを配置する位置も適宜変更できるものである。
【0041】
以上の通りであるから、本発明の法面作業車は、作業車本体と、該作業車本体に設けられた左右1対の走行装置と、前記作業車本体に設けられた左右1対のウインチと、前記左右1対の走行装置にそれぞれ接続された走行装置用アクチュエーターと、前記左右1対のウインチにそれぞれ接続されたウインチ用アクチュエーターと、前記走行装置用アクチュエーター及び前記ウインチ用アクチュエーターにオイルを供給する左右1対の油圧ポンプとで構成され、前記一方の油圧ポンプは、前記作業車本体の左側に設けられた走行装置に接続する走行装置用アクチュエーター及び前記作業車本体の左側に設けられたウインチに接続するウインチ用アクチュエーターへオイルを供給し、前記他方の油圧ポンプは、前記作業車本体の右側に設けられた走行装置に接続する走行装置用アクチュエーター及び前記作業車本体の右側に設けられたウインチに接続するウインチ用アクチュエーターへオイルを供給することを特徴とする。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明はウインチのワイヤーで牽吊されて法面等の傾斜地で各種の作業を行なう場合に使用される法面作業車を製造する産業で利用される。
【符号の説明】
【0043】
1、1A、1B、1C:法面作業車、
2:法面、 3:作業車本体、
4、4A:作業機械、 5:走行装置、
6:ウインチ、 7:走行装置用アクチュエーター、
8:ウインチ用アクチュエーター、 9:油圧ポンプ、
10:エンジン、 11:ワイヤー、
12:主アンカー、 13:支持台、
14:枢支ピン、 15:ベース板、
16、16A:作業台、 17:駆動アーム、
18:バケット、 19、19A:油圧回路、
20:流量調節手段、 21:ワイヤーフェアリーダー、
22:アーム、 23:ガイドシェル取付部、
24:ガイドシェル、 25:削孔装置本体。