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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-02
(45)【発行日】2022-05-13
(54)【発明の名称】ティシュペーパー
(51)【国際特許分類】
   A47K 10/16 20060101AFI20220506BHJP
【FI】
A47K10/16 C
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018226102
(22)【出願日】2018-11-30
(65)【公開番号】P2020081796
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-06-01
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】特許業務法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】保井 秀太
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 穣
【審査官】神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-52142(JP,A)
【文献】特開2017-63882(JP,A)
【文献】特開2011-152408(JP,A)
【文献】特許第5912196(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 10/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
保湿ティシュペーパーであって、
紙厚が220~330μmであり、
1プライ当たりの坪量が15~18g/m2であり、
構成繊維のNBKPの割合が70質量%超であり、
薬液含有量が26~32質量%であり、
非加圧下における外面の山頂点の算術平均曲率(Spc(1))が4.0~4.8 (1/mm)であり、
外面における界面の展開面積比(Sdr)が0.020~0.030(-)である、
ことを特徴とするティシュペーパー。
【請求項2】
前記非加圧下における外面の山頂点の算術平均曲率(Spc(1))と、50gf/cm2加圧下における外面の山頂点の算術平均曲率(Spc(2))の変化量が、Δ2.2~Δ2.7(1/mm)である、
請求項1記載のティシュペーパー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ティシュペーパーに関し、特に、保湿剤を含むティシュペーパーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の保湿ティシューは、花粉症や風邪などで頻繁に洟をかむ人を主たる対象としており、繰り返し使用しても肌が赤くならない、痛くならないようなしっとり感、柔らかさと滑らかさを備える品質となるように設計されている。
【0003】
従来の保湿ティシューは、このような柔らかく表面の滑らかさを高めるために、原紙のパルプ配合割合をNBKP(針葉樹クラフトパルプ)30~40%、LBKP(広葉樹クラフトパルプ)60~70%等として、LBKPの配合割合を高くする。
【0004】
これはLBKPの繊維長がNBKPに比して細く短いため、その配合割合を相対的に高めると表層のLBKPの比率が多くなり表面が緻密で滑らかになることで保湿剤を含む薬液が表層に残り、さらに吸湿による水分増加等の薬液のしっとり感等の効果が紙層表面で発現しやすくなるからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-192435号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような従来の肌触りを重視した設計のローションティシューは、柔らかいものの紙の強度が弱く、破れやすく、滑らかではあるものの表層が密で洟等の液体が吸収されにくい場合があった。
【0007】
そこで、本発明の主たる課題は、柔らかさやしっとり感に優れる保湿ティシューでありながら、しっかり感、破れにくさといった強度と、洟の拭き取り性にも優れる保湿ティシューを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための手段は次のとおりである。
【0009】
その第一の手段は、
保湿ティシュペーパーであって、
紙厚が220~330μmであり、
1プライ当たりの坪量が15~18g/m2であり、
構成繊維のNBKPの割合が70質量%超であり、
非加圧下における外面の山頂点の算術平均曲率(Spc(1))が4.0~4.8 (1/mm)であり、
外面における界面の展開面積比(Sdr)が0.020~0.030(-)である、
ことを特徴とするティシュペーパーである。
【0010】
第二の手段は、
前記非加圧下における外面の山頂点の算術平均曲率(Spc(1))と、50gf/cm2加圧下における外面の山頂点の算術平均曲率(Spc(2))の変化量が、Δ2.2~Δ2.7(1/mm)である、
【0011】
上記第一の手段に係るティシュペーパーである。
【発明の効果】
【0012】
以上の本発明によれば、柔らかさやしっとり感に優れる保湿ティシューでありながら、しっかり感、破れにくさといった強度と、洟の拭き取り性にも優れる保湿ティシューが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施例に係る評価結果をグラフ化したものである。
図2】本発明に係る山頂点の算術平均曲率及び界面の展開面積比の測定方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を説明する。
【0015】
本実施形態に係るティシュペーパーは、保湿ティシュペーパーであり、そのプライ数は限定されないが、特に3プライ又は4プライであるのが望ましい。つまり基紙三枚又は四枚が積層一体化されて一組となっているものであるのがよい。このティシュペーパーを構成する繊維は、パルプ繊維が98質量%以上、好適には100質量%がパルプ繊維である。パルプ繊維は、NBKP(針葉樹クラフトパルプ)とLBKP(広葉樹クラフトパルプ)とであるのが望ましい。特に、構成繊維が、NBKPとLBKPのみから構成されているのがよい。
【0016】
本発明に係るティシュペーパーは、特に構成繊維のNBKPの割合が70質量%超である。好ましくは、70質量%超~100質量%以下がNBKPである。LBKPに比して、NBKPは繊維が太く繊維長が長い。このためNBKPを多く含む場合には、表面が粗くなり滑らかさ感が低下しやすくなるが、強度は出やすくしっかり感を高めやすい。また、繊維同士の絡みが良好で紙層が疎となる傾向がある。
【0017】
本発明に係るNBKPは、北欧産又は北米産の杉、ヒノキ、スプルース等、針葉樹の中でも繊維粗度の低いしなやかな繊維を持つものに由来するものが好ましい。具体的には、繊維粗度11.0mg/100m~20.0mg/100mの針葉樹クラフトパルプであるのがよい。NBKPのなかでもこの範囲のものは、しなやかさを確保しやすい。一方で、NBKPとともに含ませるLBKPは、ユーカリなど植林で得られる伐採年数10年ほどの揃った原料に由来するものが望ましい。特に、繊維粗度が7.0~13.0mg/100mの広葉樹クラフトパルプであるとのがよい。表面が滑らかとなる。
【0018】
本発明に係るティシュペーパーは、保湿ティシュー、ローションティシュー、薬液付与タイプのティシューなどとも称される、保湿剤が付与されているティシュペーパーである。保湿剤を含むことでNBKPの割合が高いことによる表面の粗さが感じ難くなる。
【0019】
本発明に係る保湿剤は、吸湿性によって紙中に水分を取り込み水分率を上昇させる作用を有するポリオールを主成分とする。したがって、本実施形態に係るティシュペーパーはポリオールを含む。ポリオールは、2個以上のヒドロキシ基-OHをもった脂肪族化合物であり、吸湿性による水分率向上の効果を奏するものである。吸湿性を有する糖類も含まれる。本実施形態に係るポリオールとして好適なものは、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、ソルビトール、グルコース、キシリトール、マルトース、マルチトール、マンニトール、トレハロース、アラビノース、ガラクトース、キシロース、キシロビオース、キシロオリゴ糖、ショ糖、ラムノースであり、これらが混合されたものでもよい。特に好適なポリオールは、グリセリン、ジグリセリン及びこれらの混合物である。
【0020】
本実施形態に係る保湿剤中における主成分以外の他の成分としては、アロエエキス、延命草エキス、オトギリソウエキス、オオムギエキス、オレンジエキス、海藻エキス、カミツレエキス、キューカンバエキス、コンフリーエキス、ゴボウエキス、シイタケエキス、ジオウエキス、シソエキス、セージエキス、デュークエキス、冬虫夏草エキス、ドクダミエキス、ハタケシメジエキス、ビワエキス、ブドウ葉エキス、フユボダイジュエキス、プルーンエキス、ヘチマエキス、ボタンピエキス、マイカイエキス、モモノハエキス、ユリエキス、リンゴエキス、アーモンド油、オリーブ油、ゴマ油、サフラワー油、大豆油、椿油、ヒマシ油、ホホバ油、ミンク油、ヤシ油、ミツロウ、ヒアルロン酸、プラセンターエキス、ラムノース、キシロビオース、キシロオリゴ糖、チューベローズポリサッカライド、トリサッカライド、溶性コラーゲン、グリチルリチン、コンドロイチン硫酸、スクワラン、セラミド類似化合物、尿素、ビタミンCリン酸エステルカルシウム塩、ビタミンE、ピロリドンカルボン酸ナトリウム、ヒノキチオール、流動パラフィン及びワセリン等が挙げられる。これらは一種又はそれ以上に含まれていてもよい。これらのうち、アロエエキス、延命草エキス、オトギリソウエキス、コンフリーエキス、シソエキス、セージエキス、セラミド類似化合物、ドクダミエキス、ハタケシメジエキス、ビワエキス、フユボダイジュエキス、ボタンピエキス、ヒマシ油、ホホバ油、ヒアルロン酸、プラセンターエキス、可溶性コラーゲン、コンドロイチン硫酸、スクワラン、尿素がより好ましい。
【0021】
本実施形態に係るティシュペーパー中におけるポリオール含有量は、26.0質量%以上~30.0質量%以下である。ポリオールの含有量は、例として、ガスクロマトグラフィー水素炎イオン化検出器による定量により測定される値から求める。調湿したティシュペーパーを基準の検体として、ソックスレー抽出器によるアセトン抽出を行ない、抽出した溶媒を乾燥させ、これをガスクロマトグラフィー水素炎イオン化検出器にかける。JIS P 8111(1998)の条件下で調湿したティシュペーパー中に含まれるグリセリン等のポリオール合計質量の比率をポリオールの含有量の質量%とする。本発明におけるこのポリオール含有量は、従来のポリオール含有量に比して極めて高い。発明に係るティシュペーパーでは、NBKPの割合を70質量%超と高く、繊維が疎であるためポリオール含有量を高めることができ、またそれゆえに、NBKPによる表面の粗さが感じ難くなる。
【0022】
原紙に対してポリオールを含有させるには、ポリオールを主成分とするいわゆる水系保湿薬液を、グラビア方式、フレキソ方式、スプレー方式により付与すればよい。製造過程における付与位置も公知の技術による。
【0023】
本発明にかかるティシュペーパーは、上記のとおり保湿剤としてポリオール等を含むことで、特に水分率が13質量%以上とされる。この水分率は、保湿ティシューの中でも極めて高い水分率である。高い水分率によって「しっとり感」が感じられやすくなる。なお、ここでの水分率は、JIS P 8111(1998)の条件下で試料を調湿した後、JIS P 8127(1998)に基づいて測定した値である。具体的には、JIS P 8111の標準状態下において調湿したティシュペーパーを検体として、65℃20%環境下でそのティシュペーパーを一定質量となるまで乾燥させ、調湿したティシュペーパーの質量に対するティシュペーパー中の水分量の比率を次式のようにして求める。
【0024】
(ティシュペーパーの水分率%)=((調湿したティシュペーパーの質量g)-(乾燥したティシュペーパーの質量g))/(調湿したティシュペーパーの質量g))
【0025】
本実施形態に係るティシュペーパーにおける保湿剤は、薬液として外添により原紙に付与するのがよい。原紙に対する薬液の外添の方法は、スプレー塗布、印刷塗布、ロール転写などの公知の技術によって行なうことができる。なお、薬液中には、乳化剤、防腐剤、消泡剤等の公知の助剤を含ませることができる。
【0026】
本発明に係るティシュペーパーは、1プライ当たりの坪量が15g/m2以上18g/m2以下である。この坪量は、汎用品や低価格品と称される汎用的なティシュペーパーよりもやや高い坪量であり、この坪量の範囲とすることで、他の構成と相まって、柔らかさ及び滑らかさと丈夫さに優れたものとすることができる。また、本実施形態に係るティシュペーパーは、紙厚が220~330μmである。この紙厚は、ティシュペーパーとしては非常に厚みがあるものであり、従来このような厚みとすると硬さを感じやすくなるとされているは、本発明はNBKPの配合割合及びポリオール含有量、さらに後述の特異な表面特性と相まって柔らかさ及び滑らかさと丈夫さに優れたものとすることができる。
【0027】
本実施形態に係るティシュペーパーは、坪量がやや高く紙厚が非常に厚いためポリオール等による水分率向上による「しっとり感」が効果的に高められる。
【0028】
なお、本発明における坪量とは、JIS P 8124(1998)に基づいて測定した値を意味し、紙厚は、試験片をJIS P 8111(1998)の条件下で十分に調湿した後、同条件下でダイヤルシックネスゲージ(厚み測定器)「PEACOCK G型」(尾崎製作所製)を用いて測定した値を意味する。この紙厚測定の具体的手順は、プランジャーと測定台の間にゴミ、チリ等がないことを確認してプランジャーを測定台の上におろし、前記ダイヤルシックネスゲージのメモリを移動させてゼロ点を合わせ、次いで、プランジャーを上げて試料を試験台の上におき、プランジャーをゆっくりと下ろしそのときのゲージを読み取る。このとき、プランジャーをのせるだけとする。プランジャーの端子は金属製で直径10mmの円形の平面が紙平面に対し垂直に当たるようにし、この紙厚測定時の荷重は、約70gfである。測定を10回行って得られる平均値とする。
【0029】
本発明に係るティシュペーパーは、非加圧下における外面の山頂点の算術平均曲率(Spc(1))が4.0~4.8 (1/mm)である。非加圧下とは測定を生成の状態で行うことである(界面の展開面積比(Sdr)においても同様)。山頂点の算術平均曲率は、定義領域中における山頂点の主曲率の算術平均を表したものである。数値が小さいほど他の物体と接触する点が丸みを帯びていることを示し、数値が大きいほど他の物体と接触する点が尖っていることと示す。なお、ポップアップ式の束から得られた試料では、その測定面は折りの山側がある面とする(界面の展開面積比(Sdr)においても同様)。非加圧下における外面の山頂点の算術平均曲率(Spc(1))が4.0~4.8 (1/mm)であると、表面が滑らかに感じつつ、拭き取り性に優れる。
【0030】
本発明に係るティシュペーパーは、外面における界面の展開面積比(Sdr)が0.020~0.030(-)である。界面の展開面積比(Sdr)は、定義領域の展開面積(表面積)が、定義領域の面積に対してどれだけ増大しているかを表す。界面の展開面積比(Sdr)が0.020~0.030(-)であると、ティシュペーパーで肌を触るときの平面方向への柔軟性が確保され、柔らかさが感じられやすくなる。
【0031】
本発明に係るティシュペーパーは、上述の非加圧下における外面の山頂点の算術平均曲率(Spc(1))と、50gf/cm2加圧下における外面の山頂点の算術平均曲率(Spc(2))との変化量が、Δ2.2~Δ2.7(1/mm)であるのが望ましい。50gf/cm2加圧下は、概ね洟かみをした際に、肌に押し当てられる際の圧力に相当する。この変化量は、加圧下において、他の物体(人の肌)に接触する点の丸みが潰れる度合いであり、本発明に係る範囲であると、適度な先端の潰れによって、肌触りのよさと洟かみでの洟の拭き取り性が良好となる。
【0032】
本発明に係る「山頂点の算術平均曲率(Spc(1))」、「界面の展開面積比(Sdr)」及び「50gf/cm2加圧下の山頂点の算術平均曲率(Spc(2))」は、「ワンショット3D形状測定機 VR-3200(株式会社キーエンス社製)」(以下、「3Dマクロスコープ」ともいう)及びその相当機(非接触三次元測定器)を用いて測定した値をいう。「3Dマイクロスコープ」は、投光部より照射された構造化照明光により、モノクロC-MOSカメラに写し出された対象物の縞投影画像から形状を測定することができ、特に、得られた縞投影画像を使って、任意の部分の高さ、長さ、角度、体積などを計測することができる。「3Dマイクロスコープ」により得られた画像の観察・測定・画像解析には、ソフトウェア「VR-H2A」及びその相当ソフトウェアを使用することができる。なお、測定条件は、視野面積24mm×18mm、倍率12倍の条件とする。
【0033】
非加圧下の山頂点の算術平均曲率(Spc(1))及び界面の展開面積比(Sdr)の具体的な測定手順は次のようにして行う。
【0034】
測定台に、MD方向50mm×CD方向50mm程度の大きさとした試験片となるプライのままのティシュペーパーを、測定機を正面にして奥行方向がMD方向となるようにして生成りの状態で載置する。なお、測定に用いる試験片は、折り目のない製品の平坦な部
【0035】
とする。試験片の測定台上におけるセットは、エンボスや皺がないところが視野範囲の中央となるようにする。これは、測定領域にエンボスや皺がないようにするためである。このセットは、目視又はソフトウェアを介してモニター上に映し出される視野範囲を参考にする。
【0036】
次にソフトウェア(「VR-H2A」)を用いて、試験片表面のプロファイルを取り込む。このとき、メイン画像(テクスチャ)、メイン画像(高さ)、3D画像の3つの画像が得られる。次に、前記ソフトウェアにより「表面粗さ」を測定する。このとき、図2に示されるような「高さ」画像(高さ方向に色分けされた色調の濃淡で表される画像)を表示させるのが望ましい。なお、図2では、「高さ」画像はグレースケールで表されているが、実際に得られる「高さ」画像は高さ方向に色分けされた色調の濃淡で表される画像となる。
【0037】
次いで、計測パラメータとして少なくとも最大高さ(Sz)、山頂点の算術平均曲率(Spc)及び界面の展開面積比(Sdr)を設定して測定を行う。測定範囲の大きさは、3.000mm×3.000mmとする。前記ソフトウェアであれば、「領域の追加」で「数値指定」を選択することで測定範囲を設定することができる。
【0038】
測定個所は、得られた画像のほぼ中央部となるようにする(例えば、図2中の領域1)。ほぼ中央とは、画像中央から10.0mm×10.0mmの範囲であれば十分である。この個所とするのは、エンボスや皺のある部分を含まないように試験片をセットしていること、縁部よりも補正がなく精度が高いこと、さらに、高さ画像を確認したうえでの測定個所の意図的な選択を排除するためである。
【0039】
測定された、最大高さ(Sz)、山頂点の算術平均曲率(Spc)及び界面の展開面積比(Sdr)の値を確認し、最大高さ(Sz)が0.3mmを超えている場合には、その値を破棄し、他の試験片で再度測定する。なお、測定条件は、ガウシアンフィルターで、形状補正、ローパスフィルター及びハイパスフィルターは無しとし、縁部の補正は有とする。画像の前処理は行わない。
【0040】
この平面粗さ測定を、試験片を変えて計5回行い、その5回の平均値を測定サンプルの山頂点の算術平均曲率(Spc(1))、界面の展開面積比(Sdr)の測定値とする。なお、算術平均曲率(Spc(1))と界面の展開面積比(Sdr)とは同時に測定してもよいが、測定する試験片を変えてもよい。
【0041】
次に、50gf/cm2加圧下の山頂点の算術平均曲率(Spc(2))の測定手順を説明する。50gf/cm2加圧下の山頂点の算術平均曲率(Spc(2))の測定手順は、測定領域内に均一に50gf/cm2の力が加わった状態で、非加圧加と同様の手順で山頂点の算術平均曲率の測定を行う。50gf/cm2加圧下の状態とする手法は限定はされないが、下記のようにするのが望ましい。
【0042】
まず、測定台上に30mm×30mm×3mm厚の表面平坦な板を載置する。板は、測定台上に30mm×30mmの範囲で水平かつ平坦な部分を形成できるものであればよい。例えば、アクリル板、アクリル製の下敷き等を使用することができる。表面の平滑性についても市販のアクリル製の下敷き程度で十分である。
【0043】
次いで、そのアクリル板上に試験片を載置する。この試験片は、非加圧下の山頂点の算術平均曲率(Spc(1))を測定した試験片が望ましい。少なくとも同じティシュペーパーから採取する。試験片の大きさ及び測定器に対する向きは、非加圧下の山頂点の算術平均曲率(Spc(1))を測定と同様である。
【0044】
50gf/cm2加圧下は、アクリル板上に載置した試験片の上にさらに、100mm×60mm×3mm厚の透明なアクリル板(21g)を静かに載せる。試験片上のアクリル板のさらに上に、100mm×60mm×4mm厚さのステンレス製の枠(中抜き70mm×40mm)(133g)を載せる。さらに、ステンレス製の枠の左右前後均等になるように合計450gの錘を置く。このときに、試料の中央部(30mm×30mm)にかかる圧力が50gf/cm2となる。試料上に載せるアクリル板としては、アクリルサンデー株式会社製のアクリルサンデー板3mm厚(透明)及びこれと同等品を使用するのが望ましい。
【0045】
このように試料のセットが完了した後、非加圧下の算術平均曲率(Spc(1))と同様の測定を行い、異なる5つの試験片の測定の平均値を、加圧下における外面の山頂点の算術平均曲率(Spc(2))とする。なお、アクリル板と空気の屈折率の差による測定値の差異は、アクリル板の厚さが3mmと薄いため、測定値への影響は少ないとして無視する。なお、試料に50gf/cm2の圧を加える方法は、上記の方法によるのが望ましいが、上述のとおりこの方法と同等に測定面に50gf/cm2の圧を加えたうえで、「3Dマイクロスコープ」により測定可能な方法であればよい。
【0046】
他方で、本発明に係るティシュペーパーは、高いNBKPの配合比率、極めて高いポリオール含有量とともに、上記の非加圧下における外面の山頂点の算術平均曲率(Spc(1))、及び非加圧下における外面の山頂点の算術平均曲率(Spc(1))と、50gf/cm2加圧下における外面の山頂点の算術平均曲率(Spc(2))の変化量であることにより、柔らかさやしっとり感に優れる保湿ティシューでありながら、しっかり感、破れにくさといった強度と、洟の拭き取り性に優れるようになる。
【0047】
ここで、上記の非加圧下における外面の山頂点の算術平均曲率(Spc(1))、界面の展開面積比(Sdr)及び非加圧下における外面の山頂点の算術平均曲率(Spc(1))と50gf/cm2加圧下における外面の山頂点の算術平均曲率(Spc(2))との変化量とするには、上述のように高いNBKPの配合比率、極めて高いポリオール含有量とともに、原紙抄紙時におけるクレープ率を26~30%とするとよい。このクレープ率は従来の保湿ティシューの原紙抄紙時におけるクレープ率が22%以下程度であることからすると、非常に高いクレープ率である。
【0048】
なお、本発明に係るティシュペーパーにおいては、公知の柔軟剤、湿潤紙力剤、乾燥紙力材を用いることができ適宜に紙力を調整することができる。また、本実施形態に係るティシュペーパーは、ポリオール含油量が高く水分率も極めて高いことからカートン箱とも称される紙製の収納箱に収めたポップアップ式のティシュペーパー製品に適さず、樹脂製の包装フィルムを用いたフィルム包装ティシューとするに適する。
【実施例
【0049】
次いで、本実施形態に係る保湿ティシュペーパー(実施例1~実施例7)と、その比較例となる保湿タイプのティシュペーパー(比較例1~3)、さらに保湿ティシューの従来例1~4における物性値及び官能評価の結果を下記表1に示す。また、図1に実施例1~6、従来例、比較例における官能評価の結果をグラフ化したものを示す。なお、実施例7は、4プライの例である。
【0050】
表中のソフトネス及びMMDは下記のようにして測定した。
【0051】
〔ソフトネス〕
JIS L 1096 E法に準じたハンドルオメータ法に基づいて測定した。但し、試験片は100mm×100mmの大きさとし、クリアランスは5mmとした。1プライで縦方向、横方向の各々5回ずつ測定し、その全10回の平均値を、cN/100mmを単位として表した(小数点2桁表示)。
【0052】
〔MMD〕
摩擦子の接触面を所定方向に20g/cmの張力が付与された測定試料の表面に対して25gの接触圧で接触させながら、張力が付与された方向と略同じ方向に速度0.1cm/sで2cm移動させ、このときの、摩擦係数を、摩擦感テスター KES-SE(カトーテック株式会社製)を用いて測定する。その摩擦係数を摩擦距離(移動距離=2cm)で除した値がMMDである。摩擦子は、直径0.5mmのピアノ線Pを20本隣接させてなり、長さ及び幅がともに10mmとなるように形成された接触面を有するものとする。接触面には、先端が20本のピアノ線P(曲率半径0.25mm)で形成された単位膨出部が形成されているものとする。
【0053】
〔官能評価〕
3プライの従来市販の保湿ティシューである比較例4を基準試料とし、この基準試料に対して各例に係る試料を7段階で評価して。評価項目は、ティシュペーパーを自由に触ったうえで、「丈夫さ(しっかり感)」、「しっとり感(保湿性)」、「ふきとり感」、「柔らかさ」、「滑らかさ」とした。被験者の数は、20人として、評価はその平均値とした。
【0054】
【表1】
【0055】
表中及び図1の官能評価の結果に示されるように、本発明に係る実施例1~実施例7は、「丈夫さ(しっかり感)」、「しっとり感(保湿性)」、「ふきとり感」、「柔らかさ」、「滑らかさ」の全ての評価において、基準試料を上回る結果となった。対して、比較例については、いずれかの評価が基準試料より劣る結果となった。
【0056】
実施例と比較例の物性値を対比すると、本発明の実施例は、人の肌等の他の物体に接触する点の丸みを表す「非加圧下における外面の山頂点の算術平均曲率(Spc(1))」の値が、4.0~4.8(1/mm)の範囲にあり、この値は比較例1、2、4~7に比べて大きい。これは、薬液塗布した製品の状態でも表面が粗い状態となっていることを示す。このような表面性でありながら、高い薬液含有量によって、繊維が柔らかとなり、柔らかさや滑らかさといった肌ざわりの評価が高まっていると推測される。さらに、実施例は、外面における界面の展開面積比(Sdr)が0.020~0.030(-)である。この範囲あることで、肌を触るときの平面方向への表面の柔軟性が適度となり、柔らかさやふきとり感、滑らかさにおいて高い評価となったと推測される。また。実施例は、非加圧下における外面の山頂点の算術平均曲率(Spc(1))と、50gf/cm2加圧下における外面の山頂点の算術平均曲率(Spc(2))の変化量が大きい。これは、肌に押し当てた際に、山頂点が潰れやすくなっていることを意味する。したがって、拭き取り時に肌にしっかりと追従して拭き取り感やしっかり感に優れる評価となったと推測される。このように、本発明のティシュペーパーは、柔らかさやしっとり感に優れる保湿ティシューでありながら、しっかり感、破れにくさといった強度と、洟の拭き取り性にも優れるものである。
図1
図2