(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-02
(45)【発行日】2022-05-13
(54)【発明の名称】糸を処理しそれを使用するための統合システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
D05B 65/06 20060101AFI20220506BHJP
【FI】
D05B65/06
(21)【出願番号】P 2018522892
(86)(22)【出願日】2016-07-20
(86)【国際出願番号】 IL2016050789
(87)【国際公開番号】W WO2017013651
(87)【国際公開日】2017-01-26
【審査請求日】2019-07-04
(32)【優先日】2015-07-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518022503
【氏名又は名称】トワイン ソリューションズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【氏名又は名称】小菅 一弘
(74)【代理人】
【識別番号】100202577
【氏名又は名称】林 浩
(72)【発明者】
【氏名】モシェ アロン
(72)【発明者】
【氏名】モシェ エレズ
(72)【発明者】
【氏名】ナヴォン アロン
(72)【発明者】
【氏名】ジルベルベルク ヨラン
【審査官】▲桑▼原 恭雄
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2003/0135931(US,A1)
【文献】特開平08-311753(JP,A)
【文献】特表2014-532121(JP,A)
【文献】特表2012-513817(JP,A)
【文献】特開平07-080175(JP,A)
【文献】特開昭62-215037(JP,A)
【文献】米国特許第06189989(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0245940(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D05B 65/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
糸を処理し、前記処理済みの糸を使用するための、統合システムであって、
a)糸またはその一部を処理するための糸処理機と、
b)前記処理済みの糸を使用するように構成された糸アプリケータと、
c)糸の一部を収集およびトリミングするための少なくとも1つの機構と、
d)(i)前記糸処理機、前記糸アプリケータ、および前記収集トリミング機構を制御し、(ii)所望の糸部分だけを使用できるように、望ましくない糸縁部分を収集するための前記収集トリミング機構を制御し、(iii)前記糸処理機による糸の処理を前記糸アプリケータの動作と調和させるように構成される、制御ユニットと、
を備える、統合システム。
【請求項2】
前記少なくとも1つの収集トリミング機構はそれぞれ、把持収集部材およびトリマを備え、前記把持収集部材は、前記糸を巻き取ることによって収集するために、クランプを有し、その軸を中心に回転することによって、前記糸を掴んで収集するように構成される、請求項1に記載の統合システム。
【請求項3】
前記少なくとも1つの収集トリミング機構はそれぞれ、2つの平行のローラを備え、そのうちの少なくとも1つがモータに連結され、前記2つのローラは、前記糸を引くために指定のフックがそれらの間を通ることができるように互いから離間でき、その後、回転すると前記糸が引かれるように前記糸を再度取り付けて保持するように設計される、請求項1に記載の統合システム。
【請求項4】
前記糸アプリケータに向かって方向付けされるときに、前記糸が処理された後に前記糸の張力を維持するように構成された少なくとも1つの張力制御機構をさらに備える、請求項1~3のいずれか一項に記載の統合システム。
【請求項5】
前記糸処理機と前記糸アプリケータとの間の糸速度の差を補償するための、前記糸処理機と前記糸アプリケータとの間に配置されるバッファリング機構をさらに備える、請求項1~
4のいずれか一項に記載の統合システム。
【請求項6】
前記糸アプリケータは、前記処理済みの糸を使用する、刺しゅう機、ステッチング機、3次元(3D)プリンタのうちの1つを備える、請求項1~
5のいずれか一項に記載の統合システム。
【請求項7】
前記糸は糸アプリケータを使用するように適合される、請求項1~
6のいずれか一項に記載の統合システム。
【請求項8】
前記糸処理機は、糸の染色、前記糸もしくはその一部への少なくとも1つの化学物質の塗布、糸の硬化、糸の加熱、糸のコーティング、糸の伸張という処理タイプのうちの少なくとも1つを実行するように構成される、請求項1~
7のいずれか一項に記載の統合システム。
【請求項9】
前記制御ユニットに糸関係の不具合を特定させ、特定された各不具合に従って修理動作を作動させるように、糸関係のパラメータを検出しそれを示すデータを前記制御ユニットに伝達するための、少なくとも1つの検出部をさらに備える、請求項1~
8のいずれか一項に記載の統合システム。
【請求項10】
前記修理動作は、予め定義された修理プロトコルを用いて実行される、請求項
9に記載の統合システム。
【請求項11】
前記制御ユニットは、特定の糸アプリケータタイプのために適合され、糸の処理を前記糸アプリケータの動作と調和させるために、糸処理計画を受信し、統合システムの制御可能な構成要素を全て制御するように構成される、請求項1~
10のいずれか一項に記載の統合システム。
【請求項12】
前記制御ユニットは、いくつかのタイプの糸アプリケータに適合可能であり、前記制御ユニットは、使用される特定の糸アプリケータのタイプの特性および定義に前記糸の処理および糸の前進を調節できるように構成される、請求項1~
10のいずれか一項に記載の統合システム。
【請求項13】
データを受信および出力するように、ユーザに前記統合システムを操作させるように適合される少なくとも1つのコントロールパネルをさらに備
える、請求項1~
12のいずれか一項に記載の統合システム。
【請求項14】
前
記コントロールパネルはさらに、使用される特定のアプリケーションシステムおよび糸処理に適合された特別なユーザインターフェースを提供するように構成される、請求項
13に記載の統合システム。
【請求項15】
糸を処理し、前記処理済みの糸を利用するための、方法であって、
i)前記糸を処理するようにそれぞれが構成された少なくとも1つの糸処理機、および前記糸を前進させるための少なくとも1つの糸前進用機構を設けるステップと、
ii)前記糸の一部を処理するための前記少なくとも1つの糸処理機を通して前記糸を方向付けるステップと、
iii)前記糸処理機から前記処理済みの糸を利用する糸アプリケータに、前記処理済みの糸を方向付けるステップと、
iv)望ましくない(1つまたは複数の)糸部分の縁部を収集およびトリミングするステップと、
を含む、方法。
【請求項16】
前記糸処理機の動作およびそれを通るそこからの前記糸の前進を前記糸アプリケータの動作と調和させるステップをさらに含み、前記ステップは、前記糸処理機および糸アプリケータが働く限り連続して実行できる、請求項
15に記載の方法。
【請求項17】
前記糸処理機から前記糸アプリケータまでの前進経路全体にわたって前記処理済みの糸の張力を維持するように、前記処理済みの糸の張力を制御するステップをさらに含む、請求項
15に記載の方法。
【請求項18】
1つまたは複数の不具合修理プロトコルを用いることによって糸関係の不具合を特定し前記検出された不具合を修理するために、前記処理済みの糸の通る部分の糸関係の特性を検出するステップをさらに含む、請求項
15~
17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
糸を処理し、それを用いて縫製するための、統合システムであって、
i)糸またはその一部を処理するための糸処理機と、
ii)前記処理済みの糸を用いてステッチを作るためのステッチング機と、
iii)前記糸の一部を収集およびトリミングするための少なくとも1つの機構と、
iv)任意選択のバッファリング機構と、
v)前記糸処理機、前記ステッチング機、および前記収集トリミング機構を制御し、前記糸の処理を前記ステッチング機の動作と調和させるように構成される、制御ユニットと、
を備え、
前記制御ユニットはさらに、所望の糸部分だけを使用できるように、望ましくない糸縁部分を収集するための前記収集トリミング機構を制御するように構成される、統合システム。
【請求項20】
前記ステッチング機はミシン、刺しゅう機、キルティング機のうちの1つである、請求項
19に記載の統合システム。
【請求項21】
糸を処理し、それを用いて刺しゅうするための、統合システムであって、
i)糸またはその一部を処理するための糸処理機と、
ii)前記処理済みの糸を使用して刺しゅうするための刺しゅう機と、
iii)糸の一部を収集およびトリミングするための少なくとも1つの機構と、
iv)任意選択のバッファリング機構と、
v)前記糸処理機、前記刺しゅう機、および前記収集トリミング機構を制御し、前記糸の処理を前記刺しゅう機の動作と調和させるように構成される、制御ユニットと、
を備え、
前記制御ユニットはさらに、所望の糸部分だけを使用できるように、望ましくない糸縁部分を収集するための前記収集トリミング機構を制御するように構成される、統合システム。
【請求項22】
各処理済みの糸部分に関して前記ステッチング機によって実行されて残されるステッチ数を検出し、各それぞれの処理済みの糸部分に関して最後のステッチが施される後に収集、把持、およびトリミングする機構を制御するための、そして全ステッチングプロセスのための機構をさらに備える、請求項
19に記載の統合システム。
【請求項23】
前記制御ユニットはさらに、処理計画からのデータに従って重複する処理済みの糸部分を補償するための再縫製プロセスを制御するように適合される、請求項
19~
22のいずれか一項に記載の統合システム。
【請求項24】
前記制御ユニットはさらに、ステッチング機に関する設計部分にしたがって各それぞれの処理済みの糸部分に関して必要なステッチ数を推定し、前記処理される各糸部分の長さを計算するように適合される、請求項
19~
23のいずれか一項に記載の統合システム。
【請求項25】
前記ステッチング機は、前記処理済みの糸で縫製するために単一の針を使用する、請求項
19~
24のいずれか一項に記載の統合システム。
【請求項26】
前記糸処理機は
、染色計画に従って糸の各部分を様々な色に染色するための染色機である、請求項
19~
25のいずれか一項に記載の統合システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、ステッチングまたはフィラメント糸を使用する3次元(3D)プリンタなど別の糸アプリケータのために、糸を処理しその処理済みの糸を使用すると共に、糸を前進させるための装置、機器、システム、および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
縫製もしくは刺しゅうするかまたは3Dプリントするために1つまたは複数の糸を使用するステッチング機および3Dプリンタなどの糸アプリケータは、通常、1つまたは複数の糸スプールを利用するためにそれらを指定のスプールホルダに配置することを必要とし、各スプールからの各糸の前進は、特に所望の糸をそのスプールから引くことによって行われる。例えば1つまたは複数の縫製針を使用するミシン、刺しゅう、キルティング、または他などのステッチング機の場合、各針は、縫製するためのその垂直の変位によって糸を引く仕事を実行しており、その結果、布帛を穿刺しそれを糸で縫製するために針が下向きに変位すると、縫製の糸もそれぞれの糸スプールから引かれる。
【0003】
図1(従来技術)は、例えば、複数の糸通しユニットを有する当技術分野で知られた工業用刺しゅう機90の一部を示す。各ユニットは、特定の色の糸が通される針91およびホルダ部材92を有し、ホルダ部材92はその中に、ホルダ部材92の下に配置されそれによって保持される布帛を縫製するために針91が貫通できるようにする開口部を有し、その下に位置するボートシャトルまたは回転フックボビン(図示せず)が当技術分野で知られた実際の本縫いを生成するために使用される。刺しゅう機は、糸を把持し糸の張力を維持するための、軸を中心に垂直に移動可能なクランプ装置93も含む。クランプ装置93は、面ファスナストリップ(例えば、Velcro(登録商標)ストリップ)など、糸を締め付けるかまたは把持するための機構を含む。固定された糸収集部材94が、糸を引っ掛けてそれをクランプ装置93まで引くために、クランプ装置93から延びることができる。
【0004】
図2(従来技術)は、ボビン82が主糸41を把持し、前記主糸の把持した部片からループを形成し、それぞれの本縫いを形成するためにそれを別の第2の糸42と絡み合わせる間に、主糸41がその針穴を通されるステッチング機の針91に布帛21および22を貫通させることによって本縫いを生成するための、回転フックボビン82の動作を示す。
【0005】
複数色の刺しゅうパターンを作るためには、刺しゅう機は、それぞれが異なる針を割り当てられる、複数の主糸スプールを使用するか、または使用する糸スプールを人間のオペレータが交換する必要がある単一の針を使用する。
【0006】
糸染色機など、糸処理用の機械およびシステムは、多くの場合に、糸のスプールを生産する別々の工場であっても別々に使用され、各スプールは、テキスタイル産業および作業所への大量流通のために異なる色のトーンの糸を含む。
【0007】
様々な目的でミシンの糸を引くためのいくつかの解決策がある。
【0008】
特許文献1は、回転可能なシャフトがフック形状の引張ロッドに連結された、ミシン用の糸引き装置を教示する。フックは、糸キャリアと針との間に位置する。
【0009】
特許文献2は、各サイクルの開始時および終了時に動作するように適合された糸引張装置が、糸が引かれる間に一時的に糸に対して締め付け作用を及ぼすことを教示する。引き手段は、直径に沿って対向する、糸ガイドを構成する1対のスロット付きピンと、中心に位置する1対の糸締付けジョーとを担持する、回転ディスクを備え、その構成は、サイクルの終了時に、モータ制御スイッチの作動レバーの動きが、リンク、レバー、摺動可能なロッド、およびそれに固定されたアームによってディスクに伝達されるようになっており、そうすることで、糸は部材間の直線の経路から逸脱し、同時にジョーが閉じてそれらの間に糸を締め付ける。
【0010】
特許文献3は、駆動手段を介して動作可能な、糸を引き出すためにミシンの針の背後に位置する送出ローラを教示する。クランプが、ローラとは異なる位置に位置し、いくつかの針がいくつかの糸を同時に縫製させるように糸を方向付け互いから離すために糸を締め付けるように設計される。(1つまたは複数の)糸を引くことは、ローラを回転させることによって行われる。
【0011】
特許文献4は、細いラインのナットと、駆動装置によって動作可能な細いラインの装置との間に位置する、ミシンのための糸引き機器を教示する。
【0012】
特許文献5は、キャリアからの糸を編む動作の終了時にフルファッション編機上で編まれる糸のうちの糸キャリアと布帛との間で延びる部分を、針の列からずれた点まで自動的に引くための装置を教示する。糸引き具は、糸を引いて針からずらすために糸を掴むように、糸キャリアと針との間に位置するフックを有する。
【0013】
特許文献6は、垂直軸ループ受取り機のドライブシャフトと同心の回転可能に装着されたシャフト上に糸引張ディスクを有するミシン用の可変引張機構を教示する。ディスクは、様々な制御信号に応答するサーボモータの動作に従って固定位置と制御可能な位置との間で振動されるときに、糸に係合し糸をボビンから引っ張る糸捕捉縁部を有するように形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】中国実用新案出願第201901758号
【文献】英国特許第754618号
【文献】米国特許第4,461,229号
【文献】韓国公開特許第1020080093845号
【文献】米国特許第2,844,016号
【文献】米国特許第4,380,961号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、糸を処理し、その処理済みの糸を使用するための、統合システムであって、糸またはその一部を処理するための糸処理機と、処理済みの糸を使用するように構成された糸アプリケータと、糸の一部を収集およびトリミングするための少なくとも1つの機構と、少なくとも1つの制御ユニットであって、各ユニットは、少なくとも糸処理機、糸アプリケータ、収集トリミング機構を制御すると共に糸の処理を糸アプリケータの動作と調和させるように構成される、少なくとも1つの制御ユニットとを備え、少なくとも1つの制御ユニットはさらに、望ましい、例えば処理済みの糸部分だけを使用可能にするために、望ましくない、例えば、未処理の糸の縁部分を収集するように、収集トリミング機構を制御するように構成される、統合システムを提供する。
【0016】
用語「望ましくない(undesired)」とは、糸のうちの最終製品に必要のない、すなわち、前記糸アプリケータによって使用されない任意の部分を意味することに留意されたい。それに応じて、こうした望ましくない糸部分は、未処理の糸、不適当に処理された糸、または正確に処理した糸の余分な部分の場合がある。
【0017】
一部の実施形態によれば、収集トリミング機構はそれぞれ、収集部材およびトリマを備え、収集部材は、糸を巻き取ることによって収集するために、モータによって軸の周りを回転可能なクランプを有することによって糸を掴んで収集するように構成される。
【0018】
一定の実施形態では、収集部材は2つの平行ローラを1組備え、一方はモータに連結され(すなわち駆動ローラ)、他方は連結されない(すなわち従動ローラ)。ローラのうちの一方は、2つのローラの係合および係合解除を可能にするようにアクチュエータに連結されている。特定の実施形態では、収集部材はさらに、糸を掴んでそれを前記2つのローラ間に配置するためのフック機構を備える。糸が2つのローラ間に配置されると、モータが動作すると、糸を引くことができるようにローラを他方のローラと係合するように、アクチュエータがそれに連結されたローラを作動させる。
【0019】
特定の実施形態では、収集トリミング機構は2つの平行のローラを備え、その少なくとも1つはモータに連結され、2つのローラは、糸を引くために指定のフックがそれらの間を通ることができるように互いから離間でき、その後、回転すると糸が引かれるように糸を再度取り付けて保持するように設計される。さらに別の特定の実施形態では、従動ローラは直線のスロットに連結され、そのため、自由に回転することも、2つの位置間で移動して開閉することも可能になる。開位置では、2つのローラは互いに離間し、コントローラからの命令に応じて、フックが2つのローラ間を通って糸を保持する。フックが元の位置に戻った後は、糸は2つのローラ間に配置され、ローラは閉位置に移動する。この閉位置では、2つのローラは、互いに対して押圧されて糸をしっかりと保持し、モータが回転し始め、そうすることで、望ましくない糸セグメントの端部に達するまで糸が引かれる。望ましくない糸セグメントの端部に達すると、糸はトリミングされ、次の段階への準備が整う。
【0020】
統合システムは、任意選択で、糸アプリケータに向かって方向付けされるときに糸が処理された後に糸の張力を維持するように構成された少なくとも1つの張力制御機構をさらに備える。張力制御機構は、固定部材に枢動可能なように連結された少なくとも1つのおもり部材を備えることができ、少なくとも1つのおもり部材は、糸の張力が低下すると、そのせいでおもりが重力によって降下して、最小閾値を超えるように糸の張力を維持するために、糸経路を延びる糸を引くように、糸がおもり部材によって保持されるように配置される。
【0021】
本明細書で用いる用語「張力制御機構(tension control mechanism)」は、前記糸処理機から糸/処理済みの糸を受け取る糸アプリケータの連続的で滑らかな動作に適切な/好適な糸の張力を維持するための任意の好適な機構を指す。こうした張力制御機構の非限定的な一例がダンサ制御と呼ばれる。こうしたダンサ制御システム/ユニットは、異なる割合で加速または減速できる、プロセスのうちの2つの従動セクション(すなわち、糸処理機および糸アプリケータ)の間に位置するときに、ダンサが、過剰な材料を吸収もしくは吸収するか、または格納された材料を手放してより安定した動作張力レベルをもたらすように、材料の蓄積または格納を行うことができる。別のダンサ機構は、従来の重力動作式の「スイングアーム」タイプのダンサであり、最大の格納は、ダンサが可能性のある最も高い位置から可能性のある最も低い位置まで落ちるのに必要な糸の長さに等しい。ダンサシステムによって加えられる力は、それが配置されたゾーンに張力を生じさせ、例えば、調節可能なおもり、釣合いおもり、または空気圧的に制御されるアクチュエータを用いることによって、ダンサが糸の張力を直接的に制御することを可能にする。電気的に制御される気圧装置を使用することもできる。
【0022】
一定の実施形態では、本発明の統合システムはさらに、糸処理機と糸アプリケータとの間の糸速度を補償するための、前記糸処理機と前記糸アプリケータとの間に配置されるバッファリング機構を備える。
【0023】
糸処理機を刺しゅう機、ミシン、またはキルティング機などの糸アプリケータに連結するときは、糸速度の違いを補償する必要がある。そうするために、バッファ機構をそれらの間に導入することができる。バッファ機構は、糸アプリケータの速度が糸処理機の速度よりも低いときは処理済みの糸を収集することによって、利用量(例えば、縫製、縫合、刺しゅうなど)が糸処理速度よりも高いときは過剰な糸を糸アプリケータに供給することによって機能する。
【0024】
一部の実施形態によれば、バッファ機構は、上述のようなダンサ張力制御システムを使用することによって実現され、その場合、前記バッファ機構および前記張力制御システムは同じユニット/システムを構成する。他の場合、例えば、大量の糸または非常に長い糸を収集する必要があるときは、異なる方法を行う必要がある。
【0025】
それに応じて、一定の実施形態では、上記のバッファリング機構は、システムに沿った、すなわち糸処理機と糸アプリケータとの間の糸の経路を延長または短縮するために、画定されたスロット内を移動できるハイストローク要素を備える。
【0026】
他の実施形態によれば、バッファリング機構は、過剰な処理済みの糸を収集し、その後、前記収集した糸を必要に応じて前方に供給する、巻取りシステムを備える。
【0027】
一部の実施形態によれば、糸アプリケータは、ステッチング機、3次元(3D)プリンタのうちの1つを備える。
【0028】
一部の実施形態によれば、糸は糸アプリケータを使用するように適合される。
【0029】
一部の実施形態によれば、糸処理機は、糸の染色、糸またはその一部への少なくとも1つの化学物質の塗布、糸の硬化、糸の加熱、糸のコーティング、糸の伸張という処理タイプのうちの少なくとも1つを実行するように構成される。
【0030】
一部の実施形態によれば、統合システムはさらに、制御ユニットに糸関係の不具合を特定させ、特定された各不具合に従って修理動作を実行するように、糸関係のパラメータを検出し、それを示すデータを制御ユニットに伝達するための、少なくとも1つの検出部を備える。任意選択で、修理動作は、修理プロトコルを用いて実行される。
【0031】
一部の実施形態によれば、少なくとも1つの制御ユニットは、特定の糸アプリケータタイプのために適合され、糸の処理を糸アプリケータの動作と調和させるために、糸処理計画を受信し、統合システムの制御可能な構成要素全てを制御するように構成される。
【0032】
一部の実施形態によれば、少なくとも1つの制御ユニットは、いくつかのタイプの糸アプリケータに適合可能であり、少なくとも1つの制御ユニットは、使用される特定の糸アプリケータのタイプの特性および定義に糸の処理および糸の前進を調節できるように構成される。
【0033】
一部の実施形態によれば、統合システムはさらに、少なくとも1つの制御ユニットに動作可能なように関連付けられた少なくとも1つのコントロールパネルを備え、コントロールパネルは、データを受信および出力するように、ユーザに統合システムを操作させ、適合可能な定義を入力させるように、入力データに従って統合システムの構成要素を動作および制御するように、ユーザに関する情報を出力するように適合される。任意選択で、制御ユニットおよびコントロールパネルはさらに、使用される特定の各アプリケーションシステムおよび糸処理に適合されたユーザインターフェースを提供するように構成される。
【0034】
本発明はさらに、糸を処理し、処理済みの糸を利用するための、方法であって、糸を処理するようにそれぞれが構成された少なくとも1つの糸処理機、および糸を前進させるための少なくとも1つの糸前進用機構を設けるステップと、糸の一部を処理するための少なくとも1つの糸処理機を通して糸を方向付けるステップと、望ましくない糸部分の縁部を収集およびトリミングするステップと、糸処理機の動作およびそれを通るそこからの糸の前進を糸アプリケータの動作と調和させながら、糸処理機から処理済みの糸を利用する糸アプリケータに、処理済みの糸を方向付けるステップとを含む方法を提供する。
【0035】
一部の実施形態によれば、本方法はさらに、糸処理機から糸アプリケータまでの前進経路全体にわたって処理済みの糸の張力を維持するように、処理済みの糸の張力を制御するステップを含む。
【0036】
一部の実施形態によれば、本方法はさらに、1つまたは複数の不具合修理プロトコルを用いることによって糸関係の不具合を特定し検出された不具合を修理するために、処理済みの糸の通る部分の糸関係の特性を検出するステップを含む。こうした修理プロトコルの非限定的な例は、(i)糸が断裂するときに、糸アプリケータおよび糸処理機ならびに/または統合システム全体を停止することと、(ii)糸処理機の処理を調節しながら、不適切な処理済みの糸収集およびトリミングすることと、(iii)機能不全が起きるときに、アラームを鳴らすことおよび/またはオペレータへのメッセージを感知することと、(iv)必要に従って張力制御ユニットを稼働させること/稼働停止させることなどである。
【0037】
本発明はさらに、糸を処理し、それを用いて縫製するための、統合システムであって、糸またはその一部を処理するための糸処理機と、処理済みの糸を用いてステッチを作るためのステッチング機と、糸の一部を収集およびトリミングするための少なくとも1つの機構と、任意選択のバッファリング機構と、少なくとも1つの制御ユニットであって、制御ユニットはそれぞれ、少なくとも糸処理機、糸アプリケータ、収集トリミング機構を制御し、糸の処理をステッチング機の動作を調和させるように構成される、制御ユニットとを備え、少なくとも1つの制御ユニットはさらに、所望の、例えば処理済みの糸部分だけを使用できるように、望ましくない、例えば、未処理の、糸縁部分を収集するための収集トリミング機構を制御するように構成される、統合システムを提供する。
【0038】
一定の実施形態では、本発明のシステムはさらに、例えば刺しゅうされた布帛の色の特定を可能にする、視覚システムを備える。前記色の特定に基づいて、システムは、刺しゅうされた布帛に、処理済みの糸の色を合わせることができる。他の実施形態では、前記視覚システムは、糸処理の結果を確認する品質制御システムの一部を構成する。視覚システムは、処理の質を制御するために必要に応じてカメラ、IRカメラ、分光光度計、または他の任意の視覚センサを備え、LED、レーザ、または他の任意の光源などの適切な照明器具で支援することもできる。
【0039】
一部の実施形態によれば、統合システムはさらに、各処理済みの糸部分に関してステッチング機によって実行されて残されるステッチ数を検出し、それぞれの処理済みの糸部分に関して最後のステッチが施される後に収集、把持、およびトリミングする機構を制御するための機構を備える。特定の実施形態では、前記機構は前記視覚システムであるかまたはその一部である。
【0040】
特定の実施形態によれば、ステッチング機は、ミシン、刺しゅう機、キルティング機のうちの1つである。
【0041】
一部の実施形態によれば、制御ユニットはさらに、処理計画からのデータに従って重複する処理済みの糸部分を補償するための再縫製プロセスを制御するように適合される。
【0042】
一部の実施形態によれば、制御ユニットはさらに、ステッチング機に関する各設計部分に必要なステッチ数を推定し、推定された数に従って処理される各糸部分の長さを計算するように適合される。
【0043】
一部の実施形態によれば、制御ユニットはさらに、検出されたステッチ数に従って既に縫製した長さを計算すること、およびリアルタイムに反復することで残りのステッチを分割して糸を推定することによって、必要な残りの糸部分の長さを推定するように適合される。
【0044】
一部の実施形態によれば、ステッチング機は、処理済みの糸を縫製するための単一の針を使用する。
【0045】
一部の実施形態によれば、統合システムはさらに、糸処理機とステッチング機との間を前進させる間に糸の張力を維持するための、糸処理機とステッチング機との間に位置する張力制御機構を備える。張力制御機構は、任意選択で、処理済みの糸が通る少なくとも1つのおもり部材を備え、おもり部材は、アクセスする糸の長さに従ってそれ自体を変位させるように適合される。
【0046】
一部の実施形態によれば、糸処理機は、制御ユニットが、染色機を制御するための各糸部分の正確な染料の混合を示す染色計画を受信するように設定されるように、染色計画に従って異なる色に糸の一部を染色するための染色機である。
【0047】
一部の実施形態によれば、機構はさらに、糸を把持するために糸をクランプに運ぶための、クランプから延在可能なホルダを備える。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【
図1】従来技術の工業用刺しゅう機の一部を概略的に示す。
【
図3】本発明の一部の実施形態による、張力制御機構を含む、糸処理および糸利用ならびに後続の糸前進を統合したシステムを示す。
【
図4】本発明の一部の実施形態による、例えば糸を染色することによって糸を処理し、処理済みの糸を利用するための、統合システムを示し、そのシステムは、未処理の糸部分を縫製前に収集するためのコレクタを含む。
【
図5】本発明の一部の実施形態による、張力制御機構および縫製前の機構が一体化された、糸を処理し処理済みの糸を利用するための統合システムの図を示す。
【
図6A】ローラが係合解除された(7A)糸収集機構を示す図である。
【
図6B】ローラが係合された(7B)糸収集機構を示す図である。
【
図7】本発明の一部の実施形態による、糸の処理、前進、および糸アプリケータとの調和のためのプロセスを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
様々な実施形態の以下の詳細な説明では添付の図面が参照され、それらの図面は実施形態の一部を形成し、本発明を実現できる特定の実施形態が例示によって示されている。本発明の範囲から逸脱することなしに、他の実施形態を利用でき、構造的変更を行うことができることが理解される。
【0050】
本発明は、糸またはその一部を処理すると共にその処理済みの糸を使用するための、例えば、糸がシステムの処理機によって処理され方向付けられ、リアルタイムで処理済みの糸を利用する糸アプリケータに方向付けられるように、組み合わせた方式で、それらを用いて縫製または3次元(3D)プリントするための、統合システムおよびその使用方法を提供する。統合システムは、入力処理計画に従って糸の一部を処理するための糸処理機と、少なくとも処理済みの糸を糸処理機から、処理済みの糸を利用する糸アプリケータに方向付けるための1つまたは複数の糸方向付け張力制御機構と、処理済みの糸を使用する糸アプリケータおよび1つまたは複数の制御ユニットを備え、各制御ユニットは、少なくとも糸処理機、糸方向付け機構を制御し、糸の前進および処理を糸アプリケータの動作と調和させるように構成される。任意選択で、同じ中央制御ユニットが、処理機および糸アプリケータ、ならびにそれらを調和させると共に処理済みの糸をアプリケータに方向付けるように設計された装置など、統合システムの全ての装置の動作および調和を制御する。統合システムは、処理機によって実際に処理された糸部分を利用するアプリケータの動作を開始するために、糸アプリケータにおいて未処理の糸の縁部分を収集するための装置または機構も1つまたは複数含む。
【0051】
本発明の統合システムは、処理動作と糸アプリケータの動作との間のリアルタイムの調和を可能にし、さらに、任意選択で、統合システムの動作中に行われるユーザ入力などの事象または糸断裂事象などにリアルタイムで応答するように構成される。このように、糸の各部分は、例えば、これら2つの動作を分ける必要なく同じ時間フレームでそれを用いて縫製または3Dプリントするために、処理および使用することができる。本発明はまた、やはり使用される処理機のタイプに応じて、システム要件に従って各糸部分を異なるようにリアルタイムで処理することも可能にする。
【0052】
本明細書で用いる用語「糸(thread)」は、フィラメント、繊維、ワイヤ、ケーブル、ロープ、可撓性チューブ、ヤーン、またはそれらを互いに織った群など、当技術分野で知られた任意の糸のタイプを指す。糸は、テキスタイル繊維、例えば、綿および/またはポリエステルの糸、ナイロン、ポリエチレン、ポリ乳酸ベースのフィラメントなどのポリマーもしくはシリコンのフィラメント材料、合金などの金属製のケーブルもしくはワイヤ材料、プラスチック繊維などのロープ材料など、当技術分野で知られた任意の糸材料から作製することができる。
【0053】
本明細書で用いる用語「ステッチング機(stitching machine)」は、ミシン、キルティング機、刺しゅう機、編機、織機など、糸のステッチを生成するように構成された任意の自動機械を指す。
【0054】
糸処理機は、糸もしくはその一部をコーティング、化学処理、染色、硬化、加熱するか、糸もしくはその一部を伸張するか、または染色、コーティング、硬化などの処理タイプの組み合わせなどのための、1つまたは複数の処理材料および/または装置を使用して糸またはその一部を処理するように構成された、当技術分野で知られた任意の機械でよい。
【0055】
一部の実施形態によれば、処理機は、供給する処理材料の量、供給する期間、硬化する期間、および(強度などの)特性など、糸処理関係のパラメータを制御するように設計された入力動作計画に基づいて、糸を処理するように構成される。処理機は、例えば、染色機によって読取りおよび実装される入力染色計画を用いて糸の一部を異なる色のトーンに染色するための糸染色機、それに加えてまたはその代わりに糸を(例えば、絶縁材料、導電性材料、または他の任意のコーティング材料によって)コーティングしかつ/またはそれを化学処理する機械である。
【0056】
一部の実施形態によれば、統合システムは、少なくとも糸処理機、および処理済みの糸を糸処理機から離されるときにリアルタイムで利用する糸アプリケータと、データを受信し、統合システムの全ての装置、システム、および機械をそれらの間で調和するように、任意選択でさらに、糸の断裂など、システムに起こる事象にリアルタイムで応答するかまたはリアルタイムのユーザ入力から到着するコマンドに応答して制御するように構成された制御ユニットとを備える。
【0057】
任意選択で、統合システムは、ユーザからの入力を受信し、エラーメッセージ、ユーザマニュアル、システム動作情報などのデータを出力するための、1つまたは複数の通信ユニットと関連付けられるコントロールパネルを備える。
【0058】
統合システムの糸処理機(本明細書では短縮して「処理機」とも呼ばれる)は、化学物質、染料、コーティング材料など1つまたは複数の処理材料を塗布するように、かつ/または、ヒータもしくは硬化装置などの処理装置を使用することによって糸を処理するように構成された、任意の機械でよい。
【0059】
処理材料を塗布するか、糸に吸収させるか、または糸をコーティングするために、処理機は、1つまたは複数のインジェクタおよび処理材料カートリッジを備える、1つまたは複数の射出機構または噴霧機構を含むことができる。インジェクタおよび処理材料カートリッジは、受信した入力データに従って糸および/またはその一部の処理を可能にするための、1つまたは複数のモータまたはドライブおよび1つまたは複数の動力源を使用する電動システムを介して自動的に制御および動作される。
【0060】
一部の実施形態によれば、処理機は、例えば各糸部分を異なる混合の染料で染色することによって各糸部分を異なるように処理するように、さらに、例えばステッチング機または3Dプリンタなどによって、使用することになる複数色の糸を生成するようにも構成される。
【0061】
一部の実施形態によれば、システムは、糸の張力の変化に機械的に応答できる方式で、処理機と糸アプリケータとの間の糸の張力を維持するための1つまたは複数の張力制御機構も含む。例えば、張力制御機構は、糸の張力変化および環境パラメータに応答しておもりが変位可能になるように、処理済みの糸がやはり貫通できるような方式で糸に連結されたおもり部材を含む。
【0062】
一部の実施形態では、統合システムは、処理機から糸アプリケータに向かって糸を押すかもしくは引くための、またはステッチング機アプリケータの場合は(1つまたは複数の)針の後ろで糸を引くための、1つまたは複数の糸前進用機構も含む。
【0063】
ここで、本発明の一部の実施形態による、糸処理機110および糸アプリケータ130を含む統合システム100を概略的に示す
図3を参照する。糸処理機110は、例えば糸の一部を染色、硬化、および/またはコーティングすることによって、糸またはその一部を処理するように構成されている。糸処理機110は単一の糸スプール111を使用し、そこでは、その糸10が、ローラ112など1つまたは複数のローラを介して、その上もしくは下を通る糸の一部の上もしくは中に射出材料を塗布するための射出材料のためのインジェクタセットなどの1つもしくは複数の処理装置(図示せず)、および/または、ヒータ、(1つもしくは複数の)硬化装置などの他の処理装置を通して、糸アプリケータ130に向かって方向付けられる。インジェクタセットはそれぞれ、インジェクタと、処理材料を内部に収容する異なるカートリッジとを含むことができる。
【0064】
その後、処理済みの糸10は、糸処理機110から糸アプリケータ130まで、1つまたは複数の張力制御機構を有する張力制御ユニット120を通して方向付けられる。張力制御ユニット120はそれぞれ、おもり部材121および124などのおもり部材を備え、おもり部材はそれぞれ、張力制御ユニット120の保持プラットフォーム125に、ヒンジ121aおよび124aなどの固定部材を介して枢動可能なように連結される。おもり部材121/124はそれぞれ、糸10がその上を通ることができる円形のトラックとして構成され、そこでは、おもり部材121/124は、張力が低下すると、対抗する張力を重力が越えるので、おもり部材121/124がヒンジコネクタ121a/124aを中心とした回転によって自動的かつ機械的に垂直に変位されるように、処理済みの糸10の張力の変化に応答する。張力制御ユニット120は、処理済みの糸10をおもり部材121および124との間で方向付けるための、ローラ122および123など1つまたは複数のローラを含むこともできる。
【0065】
一部の実施形態によれば、糸の張力を測定するために、さらに任意選択でおもり部材121および124の変位を電気的に制御するために、ポテンショメータまたは他のセンサを使用することができる。
【0066】
一部の実施形態によれば、
図3に示すように、別の糸前進用機構140を、それによって糸10を方向付けるために使用することができる。糸アプリケータ130は、保持プラットフォーム135およびスプーリングドライブシャフト131を有するように非常に概略的に示されており、スプーリングドライブシャフト131は、処理済みの糸10をその上に巻き取るために、モータを介してそれを回転するように動作することができる。しかし、任意の糸アプリケータは、処理済みの糸10を、例えばそれを用いて縫製または3Dプリントするなど任意の方式で使用するために使用することができる。
【0067】
本発明による統合システム100の制御ユニット(図示せず)は、糸の各部分が処理される方法を示す機械可読な処理計画データを受信するように構成することができる。制御ユニットは、2以上のタイプの糸処理機および糸アプリケータを動作させ、その動作を調和させるように適合可能にすることもできる。制御ユニットはさらに、糸アプリケータ130の動作に従って糸の処理を制御するように構成することができる。一部の実施形態では、制御ユニットは、糸アプリケータ130に関係するリアルタイム事象、および糸の断裂などの統合システム100のセンサによって得られるデータまたはシステム100の動作中にユーザによって入力された動作コマンドに応答して、糸処理機110の動作を適合させることもできる。
【0068】
一部の実施形態によれば、統合システム100は、モータ(図示せず)およびそれを動作させるための動力源(図示せず)を使用する。糸処理機110を通る糸の前進は、例えば糸処理機110の後ろに位置する糸を前進させるために引っ張るように調和させた1つまたは複数のドライブシャフトなど、糸アプリケータ130または糸処理機110の1つまたは複数の前進機構を有することによって実現することができる。別の構成で、すなわち、ステッチング機のアプリケータの場合は、針が変位すると、やはり糸処理機110の元のスプールから糸が前進する。
【0069】
一部の実施形態によれば、糸処理機110の処理装置および糸アプリケータ130装置など、統合システム100の電子的に制御される装置はいずれも、単一のモータ、動力源、および制御ユニットを介して動作可能であり、単一の糸前進用機構を共有することもできる。
【0070】
一部の実施形態によれば、少なくとも糸処理機110および張力制御ユニット120は、少なくともそれらの一部を保持する支持機器101によって支持される。
【0071】
ここで、本発明の一部の実施形態による、糸を処理、方向付け、および利用するための統合システム200を概略的に示す
図4を参照する。この構成では、統合システム200は、糸処理機210と、処理機210から到着する処理済みの糸を利用する糸アプリケータとしての刺しゅう機またはミシンなどの単一針ステッチング機230とを備える。この場合、糸20は、その一部の処理のために糸処理機210を通して方向付けられ、処理済みの糸20は、張力制御ユニット220などの1つまたは複数の張力制御機構を介して、統合システム200のステッチング機230に方向付けられる。
【0072】
図4に示すように、ステッチング機230は、処理済みの糸20が縫製に利用するために通される針穴232を有する単一の針231と、糸通しされた針231が縫製のためにそこを通って垂直に変位できるようにする開口部234を有するフット233とを含む。
【0073】
統合システム200は、例えば糸を把持するためのVelcro取付けストリップをその上に有することによって、部材93のための
図1に示すクランプに設計が似ている2つのクランプ241aおよび241bを有する、新たな把持収集部材240も含む。把持収集部材240は糸の針231の後ろに配置される。把持収集部材240は、この場合、静止しておらず、モータ(図示せず)を介して動作可能であり、糸を引いて収集するために軸「x」を中心に回転可能である。
【0074】
把持収集部材240から延在可能な、
図1に示すフック状部材94と同様に設計されたホルダ部材242が、糸20を把持して、把持収集部材240の2つのクランプ241aと241bとの間に配置するように構成されている。そうするために、ホルダ部材242は、同じモータまたは異なるモータ(図示せず)によって変位可能であり、制御ユニット250によって制御可能である。
【0075】
一部の実施形態によれば、把持収集部材240は、適正に処理された糸部分だけを用いて縫製を開始できるように、未処理の糸の縁部分を縫製前に収集するように設計されている。これら未処理の縁部の糸部分は、把持収集部材240によって収集され、各動作セクションの開始時にボビン領域(図示せず)に位置するステッチング機のトリマによってトリミングされる。収集およびトリミングのプロセスは、不具合のある糸部分を収集およびトリミングするためのシステム200の動作の間に(すなわちその途中で)開始することもできる。
【0076】
図4に示すように、統合システム200は、処理計画などの入力データおよびステッチング機の動作データを受信および処理し、収集部材240の動作を制御することによる糸の収集およびトリミングなど、ステッチング機230および糸処理機210ならびにシステム200の他の全ての装置を動作させるための、単一の制御ユニット250を備えることができる。システム200の装置および機械は、予め定義されたアルゴリズムならびに動作ルールおよびコマンドに基づいて受信データに従って調和した方式で、こうした制御ユニット250によって動作される。制御ユニット250は、システム200を制御するための動作コマンドをその動作中に入力する(例えば、その動作中にシステムの動作を終了できるようにする)ために、ユーザが処理機210およびステッチング機230のそれぞれのための動作のセットアップデータをそれぞれ入力できるようにする複合コントロールパネルなどの1つまたは複数のコントロールパネルと動作可能なように関連付けることもできる。
【0077】
一部の実施形態によれば、統合システム200は、例えば糸の断裂(例えば針231の後ろ)を特定するために、糸の張力を感知するためのポテンショメータ202などの1つもしくは複数のセンサ、または、処理済みの糸20の処理関係の不具合を検出するための光学検出部を含む。不具合(例えば、針231の後ろの糸の断裂または処理関係の不具合)の検出の場合、制御ユニット250は、短い期間、処理および糸の方向付けの動作を終了させ、収集部材240を用いて不具合のある糸部分を収集し、ステッチング機230のトリマを用いて不具合のある収集済みの糸部分をトリミングすることができる。
【0078】
他の実施形態によれば、糸アプリケータは3Dプリンタであり、処理機は、3Dプリントのための原料として使用されるように適合されたフィラメント糸を処理する。
【0079】
一部の実施形態によれば、統合システムによって使用される1つまたは複数のセンサは、処理関係のパラメータを感知し、感知したパラメータのデータを制御ユニット250に送信するように適合されており、その結果、制御ユニットは、処理関係の不具合または糸の断裂などの糸関係の不具合を検出し、任意選択で、例えば不具合事象プロトコルを用いることによって、検出された不具合に従ってシステム動作を適合させることが可能になる。
【0080】
一部の実施形態では、上記で言及したように、処理機は、複数色のトーンに糸を染色できる染色機であり、その結果、各糸部分は、その上に異なる部分および染料を射出することによって異なる色の混合で染色することができる。その場合、本発明の統合システムは、着色の不具合を検出するための、その1つまたは複数のセンサを使用し、その場合、不具合事象プロトコルは、適正な着色を含まない糸部分のトリミングおよび収集、またはステッチング機を通った布帛が適位置に残されて不具合のある領域を縫製できるオーバーステッチングを含むことができる。
【0081】
本発明の一部の実施形態によれば、他のセンサを、例えば刺しゅうステッチング機に関して行われるステッチ数を計数または推定するために使用することができる。制御ユニットは、入力着色計画ならびに行おうとする残りのステッチの計算した数に従って、糸の一部がそれぞれの色のトーンに染色されるようにプログラムするために、その推定を使用する。
【0082】
したがって、統合システムは、例えば、不具合のある糸部分を収集およびトリミングし、任意選択で、既に縫製した不具合のある領域などを再縫製することによって、機械間の調和を最適化すると共に機械の動作時間および原料を削減することを可能にする、不具合の検出および軽減の動作プロトコルのための機構を有する。
【0083】
ここで、本発明の他の実施形態による統合システム300の図を示す
図5を参照する。このシステム300は、糸処理機310と、おもり部材321を有する張力制御ユニット320と、ステッチング機330と、2つの回転可能な収集部材341および342と、糸の断裂を検出する(検出部360)、残りのステッチ数を計数する(エンコーダ検出部350)、処理関係の不具合を検出する(光学センサまたは検出部370)ための検出部350、360および370とを含む。糸30は、処理を受けるために糸処理機310を通して方向付けられ、その後、処理済みの糸30は、張力制御ユニット320ならびにエンコーダ350および糸張力(断裂)検出部360を介してステッチング機330まで前進する。
【0084】
ステッチング機330は、変位される針331が縫製プロセスのために貫通できるように、開口部333を有するフット332を有するステッチング機230に似ている。中央制御ユニット380が、システムの全ての構成要素310、320、330、341、342、350、360および370と通信し、それらの動作を制御する。
【0085】
ここで、本発明による糸収集機構の別の実施形態を示す
図6Aおよび
図6Bを参照する。この構成では、糸収集機構は2つのローラ、従動ローラ261および駆動262を備え、それらローラは、それらの間に糸を保持し、捩じって曲がるときにその糸を引く。アクチュエータ260が、ローラの一方を他方から離すように、例えば、従動ローラ261を駆動ローラ262から離すようにシフトさせ、そうすることで、フック242が2つのローラ間を通って、糸を掴み、それを2つのローラで引くことが可能になる。前記フック242は、2つのローラ間を通り、糸に近づいてそれを掴み、2つのローラ間で糸を引く間に戻るように作動する。フック242が戻ると、その後アクチュエータ260は、ローラを他方のローラに対して、例えば、従動ローラ261を駆動ローラ262に対して戻し、そうすることで、2つのローラ間に糸を保持することが可能になる。アクチュエータ260は2つのローラのうちのいずれか一方または両方を移動するように構成することもできることに留意されたい。2つのローラが適位置で糸を保持している後方で、駆動ローラ262は作動して曲がって、糸が引き戻されて、例えば特定の収集トレイ263に収集される。
【0086】
ここで、本発明の一部の実施形態による、糸アプリケータによって使用するために糸を処理しそれを前進させるプロセスを概略的に示すフローチャートである
図7を参照する。
【0087】
プロセスは、(i)糸を処理するように構成された少なくとも1つの糸処理機、および処理済みの糸を使用するための少なくとも1つの糸アプリケータを設けること51と、(ii)糸またはその一部を処理するための糸処理機を通るように糸を方向付けること52と、(iii)未処理の糸部分の縁部53または処理済みの糸のうちの望ましくない/不具合のある部分を収集およびトリミングすることと、(iv)糸処理機の動作と糸アプリケータの動作とを調和させながら、糸処理機から処理済みの糸を利用する糸アプリケータに糸を方向付けること54とを含む。
【0088】
プロセスは、以下のステップのうちの1つまたは複数を含むこともできる:(a)処理済みの糸の張力を糸処理機から糸アプリケータまでの経路全体にわたって維持するように、処理済みの糸の張力を制御するステップ55と、(b)不具合のある糸部分およびそのパラメータを特定するために、糸アプリケータに向かって前進されるときに処理済みの糸の通る部分の処理関係の特性を感知するステップ56~57と、システムの制御ユニットに格納された1つまたは複数の不具合軽減プロトコルを用いることによって、検出された不具合を軽減または修理するステップ58。
【0089】
本発明の精神および範囲から逸脱することなく、多くの変形および変更を当業者によって行うことができる。したがって、例示した実施形態は単なる一例として記載してきたことと、以下の発明およびその様々な実施形態によって、かつ/または以下の特許請求の範囲によって定義されるように本発明を限定するものと解釈すべきではないことを理解しなければならない。例えば、以下で請求項の要素がある組み合わせで記載されていても、本発明が、こうした組み合わせで最初に主張していなくても開示されるより少ない要素、より多くの要素、または異なる要素の他の組み合わせを含むことを特に理解しなければならない。特許請求される組み合わせで2つの要素が組み合わせられるという教示が、2つの要素が互いに組み合わせられず、単独で使用できるかまたは他の組み合わせで組み合わせできる、特許請求する組み合わせも可能にするものとさらに理解すべきである。本発明の開示される任意の要素を削除することが本発明の範囲内にあるものとして明示的に企図される。
【0090】
本発明及びその様々な実施形態を説明するために本明細書で用いる用語は、一般に定義される意味だけでなく、本明細書の特別な定義によって、一般に定義される意味の範囲を越える構造、材料、または作用を含むことを理解すべきである。したがって、本明細書の文脈で要素が2以上の意味を含むものと理解できる場合、請求項におけるその使用は、本明細書および用語そのものによって裏づけられる全ての可能な意味を総称するものと理解しなければならない。
【0091】
したがって、以下の特許請求の範囲の用語および要素の定義は、字義通りに記載された要素の組み合わせだけでなく、実質的に同じ結果を得るために実質的に同じように実質的に同じ機能を実行する等価な構造、材料、または作用を全て含むように本明細書において定義される。したがって、その意味では、以下の請求項の要素のいずれか1つの代わりに2以上の要素の等価な置換を行うことができるか、または請求項において2以上の要素を単一の要素で置換できることが企図される。要素は一定の組み合わせで作用するものとして上記に記載し、さらに最初に主張したかもしれないが、特許請求する組み合わせの1つまたは複数の要素は、場合によっては、その組み合わせから削除でき、特許請求する組み合わせは、下位組み合わせまたは下位組み合わせの変形形態を対象にできることが明示的に理解されよう。
【0092】
現在知られているかまたは後に考案される、当業者から見て微細な、特許請求する主題の変更は、同等に特許請求の範囲内にあることが明白に企図される。したがって、現在または後に当業者に知られる明らかな代替形態が、定義される要素の範囲内にあるものと定義される。
【0093】
このように、特許請求の範囲は、上記で具体的に例示および説明したもの、概念的に等価なもの、明らかに置き換えできるもの、さらに、本発明の本質的な考えを本質的に組み込むものを含むものと理解すべきである。
【0094】
本発明を詳細に説明してきたが、それでも、本発明の教示から逸脱しない変更形態および修正形態が当業者には明らかであろう。こうした変更形態および修正形態は、本発明の範囲および添付の特許請求の範囲内に入ると考えられる。