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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-02
(45)【発行日】2022-05-13
(54)【発明の名称】新規抗PD-L1抗体
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20220506BHJP
   C07K 16/30 20060101ALI20220506BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20220506BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20220506BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20220506BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20220506BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20220506BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20220506BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20220506BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20220506BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220506BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20220506BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20220506BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
C07K16/30
C07K16/28
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/08
A61K39/395 T
A61K39/395 U
A61P35/00
A61P37/04
A61P31/12
【請求項の数】 23
(21)【出願番号】P 2018526289
(86)(22)【出願日】2016-08-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2018-09-27
(86)【国際出願番号】 CN2016093560
(87)【国際公開番号】W WO2017020858
(87)【国際公開日】2017-02-09
【審査請求日】2019-07-24
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2015/086216
(32)【優先日】2015-08-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】518041870
【氏名又は名称】ウーシー バイオロジクス(シャンハイ)カンパニー リミテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】518330176
【氏名又は名称】ウーシー バイオロジクス アイルランド リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100149076
【弁理士】
【氏名又は名称】梅田 慎介
(74)【代理人】
【識別番号】100119183
【弁理士】
【氏名又は名称】松任谷 優子
(74)【代理人】
【識別番号】100173185
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 裕
(74)【代理人】
【識別番号】100162503
【弁理士】
【氏名又は名称】今野 智介
(74)【代理人】
【識別番号】100144794
【弁理士】
【氏名又は名称】大木 信人
(72)【発明者】
【氏名】ゼン,ヨン
(72)【発明者】
【氏名】リ,ジン
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ジシェン
【審査官】斉藤 貴子
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-511959(JP,A)
【文献】特表2015-500207(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N15/00-15/90
C07K16/00-19/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSISE/WPIDS(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)配列番号43、またはそれに対して少なくとも90%の配列同一性を有し、配列番号1、配列番号3および配列番号5を含む、重鎖可変領域;ならびに配列番号45、またはそれに対して少なくとも90%の配列同一性を有し、配列番号7、配列番号9および配列番号11を含む、軽鎖可変領域、
b)配列番号47、またはそれに対して少なくとも90%の配列同一性を有し、配列番号13、配列番号15および配列番号17を含む、重鎖可変領域;ならびに配列番号49、またはそれに対して少なくとも90%の配列同一性を有し、配列番号19、配列番号21および配列番号23を含む、軽鎖可変領域、
c)配列番号51、またはそれに対して少なくとも90%の配列同一性を有し、配列番号25、配列番号27および配列番号29を含む、重鎖可変領域;ならびに配列番号53、またはそれに対して少なくとも90%の配列同一性を有し、配列番号31、配列番号33および配列番号35を含む、軽鎖可変領域、あるいは
d)配列番号55、またはそれに対して少なくとも90%の配列同一性を有し、配列番号37、配列番号39および配列番号41を含む、重鎖可変領域;ならびに配列番号49、またはそれに対して少なくとも90%の配列同一性を有し、配列番号19、配列番号21および配列番号23を含む、軽鎖可変領域
を含む、ヒトPD-L1と特異的に結合し、ヒトPD-L1とその受容体との結合を遮断することが可能である、単離された抗体または抗原結合断片。
【請求項2】
プラズモン共鳴結合アッセイによって測定されるものとして、10-8M以下のKd値でヒトPD-L1と特異的に結合可能である、請求項1に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項3】
10nM以下または1nM以下のEC50でサルPD-L1と結合し、および/またはマウスPD-L1と結合しない、請求項1または2に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項4】
100nM以下のIC50で、ヒトまたはサルPD-L1の、その受容体との結合を阻害可能である、請求項1~3のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項5】
PD-L2と実質的に結合しない、請求項1~4のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項6】
ADCCまたはCDCまたはその両方を媒介しない、請求項1~5のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項7】
完全ヒトモノクローナル抗体である、請求項1~6のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項8】
完全ヒトモノクローナル抗体が、トランスジェニックラットによって生成される、請求項7に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項9】
ヒトPD-L1のその受容体との結合を遮断可能であり、それによって、以下の活性:
a)CD4T細胞におけるIL-2の生成を誘導すること、
b)CD4T細胞におけるIFNγの生成を誘導すること、
c)CD4T細胞の増殖を誘導すること、および
d)Tregの抑制機能を逆転させること
のうち少なくとも1つを提供する、請求項1~8のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項10】
ラクダ化単一ドメイン抗体、ダイアボディー、scFv、scFv二量体、BsFv、dsFv、(dsFv)2、dsFv-dsFv’、Fv断片、Fab、Fab’、F(ab’)2、dsダイアボディー、ナノボディー、ドメイン抗体または二価ドメイン抗体である、請求項1~9のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項11】
免疫グロブリン定常領域をさらに含む、請求項1~10のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項12】
コンジュゲートをさらに含む、請求項1~11のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項13】
請求項1~11のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合断片をコードする単離されたポリヌクレオチド。
【請求項14】
請求項13に記載の単離されたポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項15】
請求項14に記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項16】
請求項1~11のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合断片を発現させる方法であって、請求項15に記載の宿主細胞を、請求項13に記載のポリヌクレオチドが発現される条件下で培養することを含む、方法。
【請求項17】
請求項1~12のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合断片を含むキット。
【請求項18】
生体サンプルにおいてヒトまたはサルPD-L1の存在またはレベルを検出する方法であって、生体サンプルを、請求項1~12のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合断片に対して曝露すること、およびサンプルにおいてヒトまたはサルPD-L1の存在またはレベルを調べることを含む、方法。
【請求項19】
PD-L1アンタゴニストに対して応答する可能性が高い障害または状態を有する個体を同定するための情報を得る方法であって、請求項1~12のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合断片を用いて、個体から得られた試験生体サンプルにおいてPD-L1の存在またはレベルを調べることを含み、試験生体サンプルにおけるPD-L1の存在または上方制御されたレベルが、応答性の見込みを示す、方法。
【請求項20】
請求項1~12のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合断片および1種または複数の医薬上許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項21】
免疫応答の上方制御から恩恵を受けるであろう対象における状態を処置するために用いられる、請求項20に記載の医薬組成物。
【請求項22】
対象が、PD-L1の上方制御された発現を有する、請求項21に記載の医薬組成物。
【請求項23】
状態が、癌または慢性ウイルス感染である、請求項21または22に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示内容は、概して、新規抗PD-L1抗体に関する。
【背景技術】
【0002】
前臨床および臨床結果からのますます増大する証拠によって、免疫チェックポイントを標的化することが、癌を有する患者を処置するための最も有望なアプローチとなってきていることが示されてきた。プログラム細胞死1、免疫チェックポイントタンパク質の1種は、それによって腫瘍細胞が免疫監視を逃れた主要な免疫抵抗機序を提供する、T細胞の活性の制限において主要な役割を果たす。活性化されたT細胞で発現されたPD-1および腫瘍細胞で発現されたPD-L1の相互作用は、免疫応答を負に調節し、抗腫瘍免疫を減衰させる。腫瘍でのPD-L1の発現は、食道、膵臓およびその他の種類の癌における生存の低減と相関しており、これは、この経路を腫瘍免疫療法の新規有望標的として強調する。Bristol-Myers Squibb(BMS)、Merck、RocheおよびGlaxoSmithKline(GSK)などの製薬会社によって、PD-1経路を標的化する複数の薬剤が開発されてきた。臨床治験から得られたデータは、種々の種類の腫瘍を有する患者において耐久性のある臨床活性および安全性プロファイルの後押しの初期証拠を実証した。ニボルマブ、BMSによって開発されたPD-1薬物が、次世代分野の主役に据えられている。現在、6つの後期研究において、72人の肺癌患者のうち18%、98人の黒色腫患者のうち3分の1近く、および腎臓癌を有する33人の患者のうち27%を含む、研究された5つの癌のグループのうち3つにおいて処置が腫瘍収縮を誘発した。Merckによって開発されたランブロリズマブは、PD-1に対して作用する完全ヒトモノクローナルIgG4抗体であり、これは、皮膚癌についての印象的なIBデータが現れた後にFDAの新規ブレイクスルー指定をつかみとった。第IB相研究から得られた結果は、85人の癌患者のうち51%において他覚的な抗腫瘍反応を、患者の9%において完全な反応を示した。Rocheの実験的MPDL3280Aは、種々の腫瘍の大きさを有する140人の進行癌患者のうち29人(21%)において腫瘍を収縮させる能力を実証した。
【0003】
しかし、既存の両方は、すべて満足のいくものではない場合があり、従って、新規抗PD-L1抗体が依然として必要である。
【発明の概要】
【0004】
本開示は、新規モノクローナル抗PD-L1抗体(特に、完全ヒト抗体)、それをコードするポリヌクレオチドおよびそれを使用する方法を提供する。
【0005】
一態様では、本開示は、プラズモン共鳴結合アッセイによって測定されるものとして、10-9M以下(例えば、≦9×10-10M、≦8×10-10M、≦7×10-10M、≦6×10-10M、≦5×10-10M、≦4×10-10M、≦3×10-10M、≦2×10-10Mまたは≦10-10M以下)のKd値でヒトPD-L1と特異的に結合可能である、単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合断片を提供する。
【0006】
特定の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、10nM以下(例えば、1nM、0.9nM、0.8nM、0.7nM、0.6nM、0.5nM、0.4nM、0.3nM、0.2nM、0.1nM、0.09nM、0.08nM、0.07nM、0.06nM、0.05nM、0.04nM、0.03nM、0.02nMまたは0.01nM以下のEC50でサルPD-L1と結合する。特定の実施形態では、抗体およびその抗原結合断片は、マウスPD-L1と結合しないが、ヒトPD-L1のものと同様の結合親和性でサルPD-L1と結合する。特定の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、100nM以下(例えば、50nM、40nM、30nM、20nM、10nM、9nM、8nM、7nM、6nM、5nM、4nM、3nM、2nM、1nM、0.9nM、0.8nM、0.7nM、0.6nM、0.5nM、0.4nM、0.3nM、0.2nMまたは0.1nM以下)のIC50で、ヒトまたはサルPD-L1の、その受容体(例えば、PD-1)との結合を強力に阻害する。特定の実施形態では、EC50またはIC50は、蛍光活性化セルソーティング(FACS)解析によって測定される。
【0007】
特定の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、エフェクター機能を実質的に低減している。特定の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、ADCCまたはCDCまたはその両方を媒介しない。
【0008】
特定の実施形態では、本明細書において提供される抗体またはその抗原結合断片は、配列番号1、3、5、13、15、17、25、27、29、37、39および41からなる群から選択される重鎖CDR配列を含む。
【0009】
一態様では、本明細書において提供される抗体またはその抗原結合断片は、配列番号7、9、11、19、21、23、31、33および35からなる群から選択される軽鎖CDR配列を含む。
【0010】
特定の実施形態では、本明細書において提供される抗体またはその抗原結合断片は、配列番号1、3、5、7、9および11からなる群から選択される、または配列番号13、15、17、19、21および23からなる群から選択される、または配列番号25、27、29、31、33および35からなる群から選択される、または配列番号37、39、41、19、21および23からなる群から選択される少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つまたは6つのCDRを含む。
【0011】
特定の実施形態では、本明細書において提供される抗体またはその抗原結合断片は、
a)配列番号1、配列番号3および/または配列番号5を含む重鎖可変領域、
b)配列番号13、配列番号15および/または配列番号17を含む重鎖可変領域、
c)配列番号25、配列番号27および/または配列番号29を含む重鎖可変領域、ならびに
d)配列番号37、配列番号39および/または配列番号41を含む重鎖可変領域
からなる群から選択される重鎖可変領域を含む。
【0012】
特定の実施形態では、本明細書において提供される抗体またはその抗原結合断片は、
a)配列番号7、配列番号9および/または配列番号11を含む軽鎖可変領域、
b)配列番号19、配列番号21および/または配列番号23を含む軽鎖可変領域、ならびに
c)配列番号31、配列番号33および/または配列番号35を含む軽鎖可変領域
からなる群から選択される軽鎖可変領域を含む。
【0013】
特定の実施形態では、本明細書において提供される抗体またはその抗原結合断片は、
a)配列番号1、配列番号3および/または配列番号5を含む重鎖可変領域ならびに配列番号7、配列番号9および/または配列番号11を含む軽鎖可変領域、
b)配列番号13、配列番号15および/もしくは配列番号17を含む重鎖可変領域ならびに配列番号19、配列番号21および/もしくは配列番号23を含む軽鎖可変領域、
c)配列番号25、配列番号27および/もしくは配列番号29を含む重鎖可変領域ならびに配列番号31、配列番号33および/もしくは配列番号35を含む軽鎖可変領域、または
d)配列番号37、配列番号39および/または配列番号41を含む重鎖可変領域ならびに配列番号19、配列番号21および/もしくは配列番号23を含む軽鎖可変領域
を含む。
【0014】
特定の実施形態では、本明細書において提供される抗体またはその抗原結合断片は、配列番号43、配列番号47、配列番号51および配列番号55からなる群から選択される重鎖可変領域を含む。
【0015】
特定の実施形態では、本明細書において提供される抗体またはその抗原結合断片は、配列番号45、配列番号49および配列番号53からなる群から選択される軽鎖可変領域を含む。
【0016】
特定の実施形態では、本明細書において提供される抗体またはその抗原結合断片は、
a)配列番号43を含む重鎖可変領域および配列番号45を含む軽鎖可変領域、
b)配列番号47を含む重鎖可変領域および配列番号49を含む軽鎖可変領域、
c)配列番号51を含む重鎖可変領域および配列番号53を含む軽鎖可変領域、または
d)配列番号55を含む重鎖可変領域および配列番号49を含む軽鎖可変領域
を含む。
【0017】
特定の実施形態では、本明細書において提供される抗体は、例えば、1.4.1、1.14.4、1.20.15および1.46.11を含む。
【0018】
特定の実施形態では、本明細書において提供される抗体またはその抗原結合断片は、抗体1.4.1、1.14.4、1.20.15および1.46.11と同一エピトープについて競合する。特定の実施形態では、本明細書において提供される抗体またはその抗原結合断片は、PD-L1の以下のアミノ酸残基:E58、E60、D61、K62、N63およびR113のうち少なくとも1個を含むエピトープと結合する。
【0019】
特定の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、ヒトPD-L1の、その受容体との結合を遮断可能であり、それによって、以下の活性のうち少なくとも1種を提供する:
a)CD4+T細胞におけるIL-2の生成を誘導すること、
b)CD4+T細胞におけるIFNγの生成を誘導すること、
c)CD4+T細胞の増殖を誘導すること、および
d)Tregの抑制機能を逆転させること。
【0020】
特定の実施形態では、本明細書において提供される抗体は、モノクローナル抗体、完全ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、組換え抗体、二重特異性抗体、標識された抗体、二価抗体または抗イディオタイプ抗体である。
【0021】
特定の実施形態では、本明細書において提供されるその抗原結合断片は、ラクダ化された〔camelized〕〕単一ドメイン抗体、ダイアボディー、scFv、scFv二量体、BsFv、dsFv、(dsFv)2、dsFv-dsFv’、Fv断片、Fab、Fab’、F(ab’)2、dsダイアボディー、ナノボディー、ドメイン抗体または二価ドメイン抗体である。
【0022】
特定の実施形態では、本明細書において提供される抗体またはその抗原結合断片は、免疫グロブリン定常領域をさらに含む。
【0023】
特定の実施形態では、本明細書において提供される抗体またはその抗原結合断片は、コンジュゲートをさらに含む。
【0024】
特定の実施形態では、コンジュゲートは、検出可能な標識、薬物動態修飾部分または精製部分であり得る。
【0025】
別の態様では、本開示は、本明細書において提供される抗体またはその抗原結合断片をコードする単離されたポリヌクレオチドを提供する。特定の実施形態では、本明細書において提供される抗体または抗原結合断片のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドが提供される。特定のその他の実施形態では、これらのポリヌクレオチドを含むベクターが提供され、特定のその他の実施形態では、これらのベクターを含む宿主細胞が提供される。特定の実施形態では、ポリヌクレオチドによってコードされる本明細書において提供される抗体または抗原結合断片が、ベクターから発現される条件下で、これらの宿主細胞を培養することによって、本明細書において提供される抗体または抗原結合断片のうち1種以上を発現させるための方法が提供される。特定の実施形態では、本明細書において提供されるポリヌクレオチドは、ベクター中でSV40プロモーターなどのプロモーターと作動可能に結合される。特定の実施形態では、本明細書において提供されるベクターを含む宿主細胞は、チャイニーズハムスター卵巣細胞または293F細胞である。
【0026】
別の態様では、本開示内容は、抗体またはその抗原結合断片を含むキットを提供する。
【0027】
別の態様では、1.4.1、1.14.4、1.20.15および1.46.11などの本明細書において提供されるPD-L1抗体は、動物において良好な耐容性および高いin vivo抗腫瘍活性を有する。特定の実施形態では、本明細書において提供されるPD-L1抗体が投与された腫瘍細胞を有する動物は、同様のベースライン腫瘍量を有するがビヒクルのみが投与された対照動物と比較して、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%または少なくとも95%までの腫瘍量の低減を有する。
【0028】
別の態様では、本開示内容は、生体サンプルにおいてPD-L1(例えば、ヒトまたはサル)の存在またはレベルを検出する方法であって、生体サンプルを、本明細書において提供される抗体またはその抗原結合断片に対して曝露することおよびサンプルにおいてPD-L1の存在またはレベルを調べることを含む方法を提供する。
【0029】
別の態様では、本開示内容は、PD-L1アンタゴニストに対して応答する可能性が高い障害または状態を有する個体を同定する方法であって、本明細書において提供される抗体またはその抗原結合断片を用いて、個体から得られた試験生体サンプルにおいてPD-L1(例えば、ヒトまたはサル)の存在またはレベルを調べることを含み、試験生体サンプルにおけるPD-L1の存在または上方制御されたレベルが、応答性の見込みを示す方法を提供する。特定の実施形態では、方法は、PD-L1アンタゴニストに対して応答する可能性が高い障害または状態を有すると同定されている個体に、有効量の、本明細書において提供される抗体またはその抗原結合断片を投与することをさらに含む。
【0030】
本開示は、PD-L1アンタゴニストで処置された対象における、治療的応答または疾患の進行をモニタリングする方法であって、本明細書において提供される抗PD-L1抗体またはその抗原結合断片を用いて、個体から得られた試験生体サンプルにおいてPD-L1(例えば、ヒトまたはサル)の存在またはレベルを調べることを含む方法をさらに提供する。
【0031】
別の態様では、本開示は、本明細書において提供される抗体またはその抗原結合断片および1種または複数の医薬上許容される担体を含む医薬組成物を提供する。これらの実施形態のうち特定のものでは、医薬担体は、例えば、希釈剤、抗酸化剤、アジュバント、賦形剤または非毒性補助物質であり得る。
【0032】
別の態様では、本開示は、免疫応答の上方制御から恩恵を受けるであろう対象における状態を処置する方法であって、対象に、有効量の、本明細書において提供される抗体またはその抗原結合断片を投与することを含む方法を提供する。特定の実施形態では、対象は、PD-L1の上方制御された発現を有する。
【0033】
免疫応答の上方制御から恩恵を受けるであろう状態を処置するための医薬の製造における、本明細書において提供される抗体またはその抗原結合断片の使用。特定の実施形態では、状態は、癌または慢性ウイルス感染である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1図1は、FACS解析によって測定されるような、完全ヒトPD-L1抗体の、CHO細胞を発現するPD-1との結合を示す図である。
図2図2は、FACS解析によって測定されるような、完全ヒトPD-L1抗体が、PD-1の、PD-L1がトランスフェクトされたCHO細胞との結合を遮断したことを示す。
図3図3は、FACS解析によって測定されるような、完全ヒトPD-L1抗体が、PD-L1と特異的に結合したが、PD-L2とは結合しなかったことを示す。
図4図4は、完全ヒトPD-L1抗体が、ヒトおよびカニクイザルPD-L1と結合したことを示す。
図5図5は、表面プラズモン共鳴によって決定されるような、2.26E-10~4.78E-10mol/Lの範囲の、PD-L1抗体の、ヒトPD-L1に対する結合親和性の完全動態学を示す図である。
図6図6は、特異的T細胞応答におけるIFNγ生成に対する完全ヒト抗PD-L1抗体の効果を示す図である。
図7図7は、完全ヒト抗PD-L1抗体が、特異的T細胞増殖を増強したことを示す図である。
図8図8は、完全ヒトPD-L1抗体が、混合リンパ球反応(MLR)におけるIFNγ生成を増強したことを示す。
図9図9は、MLRにおけるIL-2生成に対する完全ヒト抗PD-L1抗体の効果を示す図である。
図10図10は、抗PD-L1抗体が、MLRにおいてT細胞増殖を促進したことを示す図である。
図11図11は、抗PD-L1抗体が、Tregの抑制機能を逆転させたことを示す図である。
図12図12は、抗PD-L1抗体が、活性化されたT細胞に対するADCCを欠いたことを示す図である。
図13図13は、抗PD-L1抗体が、活性化されたT細胞に対するCDCを欠いていたことを示す図である。
図14図14Aおよび14Bは、抗PD-L1抗体の、ヒト/マウスPD-1との交差反応性を示す図である。2μg/mlの、1.14.4抗体を、96ウェルプレートで一晩コーティングし、(図14A)hPD-L1-Hisタンパク質および(図14B)mPD-L1-Hisタンパク質とともにインキュベートし、検出のためにHRP抗His抗体を添加した。
図15図15は、hPD-L1構造上にマッピングされたホットスポット残基を示す図である。抗体1.14.4の結合部位。データは、表3から得た。像上の色は、エピトープ間の相違を区別するのに役立つ。
図16図16は、hPD-L1抗体1.14.4の良好なin vivo耐容性を示す図である。抗体1.14.4の3種の用量(3mg/kg、10mg/kgおよび30mg/kg)を、ヒト化B-hPD-1マウスに複数回腹膜内注射によって投与した。実験の間に、体重の有意な変化は観察されなかった。
図17図17は、hPD-L1抗体1.14.4の腫瘍細胞成長に対する有意なin vivo阻害を示す図である。抗体投与の19日後、抗体1.14.4の3種の用量(3mg/kg、10mg/kgおよび30mg/kg)すべてが、>40%の腫瘍成長阻害(TGI)によって示される有意な抗腫瘍効果を示した。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本開示の以下の説明は、単に、本開示の種々の実施形態を例示するよう意図される。そのようなものとして、論じられる特定の改変は、本開示の範囲に対する制限と解釈されてはならない。本開示の範囲から逸脱することなく、種々の等価物、変法および改変が行われ得ることは当業者には明らかであろう、また、このような同等な実施形態は、本明細書に含まれるべきであるということは理解される。刊行物、特許および特許出願を含む本明細書において引用されたすべての参考文献は、参照によりその全文で本明細書に組み込まれる。
【0036】
―定義―
用語「抗体」は、本明細書において、特異的抗原と結合する任意の免疫グロブリン、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体または二重特異性(二価)抗体を含む。天然の無傷の抗体は、2つの重鎖および2つの軽鎖を含む。各重鎖は、可変領域ならびに第1、第2および第3の定常領域からなり、各軽鎖は、可変領域および定常領域からなる。哺乳動物重鎖は、α、δ、ε、γおよびμとして分類され、哺乳動物軽鎖は、λまたはκとして分類される。抗体は、「Y」型を有し、Yのステムは、ジスルフィド結合を介して一緒に結合している2つの重鎖の第2および第3の定常領域からなる。Yの各アームは、単一軽鎖の可変および定常領域と結合している単一重鎖の可変領域および第1の定常領域を含む。軽鎖および重鎖の可変領域は、抗原結合に関与している。両鎖中の可変領域は、一般に、相補性決定領域(CDR)(LCDR1、LCDR2およびLCDR3を含む軽(L)鎖CDR、HCDR1、HCDR2、HCDR3を含む重(H)鎖CDR)と呼ばれる3つの高度可変ループを含有する。本明細書において開示される抗体および抗原結合断片のCDR境界は、Kabat、ChothiaまたはAl-Lazikaniの慣習(Al-Lazikani,B.、Chothia,C.、Lesk,A.M.、J.Mol.Biol.、第273巻(4号)、927頁(1997);Chothia,C.ら、J Mol Biol.12月5日;第186巻(3号):651~63頁(1985年);Chothia,C.およびLesk,A.M.、J.Mol.Biol.、第196巻、901頁(1987年);Chothia,C.ら、Nature.12月21~28日;第342巻(6252号):877~83頁(1989年);Kabat E.A.ら、National Institutes of Health、Bethesda、Md.(1991年))によって定義または同定され得る。3つのCDRは、CDRよりもより高度に保存され、超可変ループを支持するスキャフォールドを形成するフレームワーク領域(FR)として知られる、両端に位置するストレッチの間に挿入されている。重鎖および軽鎖の定常領域は、抗原結合に関与しないが、種々のエフェクター機能を示す。抗体は、その重鎖の定常領域のアミノ酸配列に基づいてクラスに割り当てられる。抗体の5種の主要なクラスまたはアイソタイプとして、IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgMがあり、これらは、α、δ、ε、γおよびμ重鎖それぞれの存在を特徴とする。主要な抗体クラスのうちいくつかは、IgG1(γ1重鎖)、IgG2(γ2重鎖)、IgG3(γ3重鎖)、IgG4(γ4重鎖)、IgA1(α1重鎖)またはIgA2(α2重鎖)などのサブクラスに分割される。
【0037】
用語「抗原結合断片」とは、本明細書において、1つまたは複数のCDRを含む、抗体の一部から形成される抗体断片、または抗原と結合するが無傷の天然抗体構造を含まない任意のその他の抗体断片を指す。抗原結合断片の例として、制限するものではないが、ダイアボディー、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv断片、ジスルフィド安定化Fv断片(dsFv)、(dsFv)2、二重特異性dsFv(dsFv-dsFv’)、ジスルフィド安定化ダイアボディー(dsダイアボディー)、一本鎖抗体分子(scFv)、scFv二量体(二価ダイアボディー)、多重特異性抗体、ラクダ化単一ドメイン抗体、ナノボディー、ドメイン抗体および二価ドメイン抗体が挙げられる。抗原結合断片は、親抗体が結合する同一抗原と結合可能である。特定の実施形態では、抗原結合断片は、1種または複数の異なるヒト抗体に由来するフレームワーク領域にグラフトされた特定のヒト抗体に由来する1つまたは複数のCDRを含み得る。
【0038】
抗体に関して「Fab」とは、ジスルフィド結合によって単一重鎖の可変領域および第1の定常領域と結合している単一軽鎖(可変および定常領域の両方)からなる抗体の部分を指す。
【0039】
「Fab’」とは、ヒンジ領域の部分を含むFab断片を指す。
【0040】
「F(ab’)2」とは、Fab’の二量体を指す。
【0041】
抗体に関して「Fc」とは、ジスルフィド結合を介して第2の重鎖の第2および第3の定常領域と結合している、第1の重鎖の第2および第3の定常領域からなる抗体の部分を指す。抗体のFc部分は、ADCCおよびCDCなどの種々のエフェクター機能に関与するが、抗原結合における機能に関与しない。
【0042】
抗体に関して「Fv」とは、完全抗原結合部位を有するための抗体の最小断片を指す。Fv断片は、単一重鎖の可変領域と結合している単一軽鎖の可変領域からなる。
【0043】
「一本鎖Fv抗体」または「scFv」とは、互いに直接またはペプチドリンカー配列を介して接続している軽鎖可変領域および重鎖可変領域からなる遺伝子操作された抗体を指す(Huston JSら Proc Natl Acad Sci USA、第85巻:5879頁(1988年))。
【0044】
「一本鎖Fv-Fc抗体」または「scFv-Fc」とは、抗体のFc領域と接続しているscFvからなる遺伝子操作された抗体を指す。
【0045】
「ラクダ化単一ドメイン抗体」、「重鎖抗体」または「HCAb」とは、2つのVHドメインを含有し、軽鎖を含有しない抗体を指す(Riechmann L.およびMuyldermans S.、J Immunol Methods.12月10日;第231巻(1-2号):25~38頁(1999年);Muyldermans S.、J Biotechnol. Jun;第74巻(4号):277~302頁(2001年);WO94/04678;WO94/25591;米国特許第6,005,079号)。重鎖抗体は、元々、ラクダ科〔Camelidae〕(ラクダ、ヒトコブラクダおよびラマ)に由来していた。ラクダ化抗体は、軽鎖を欠くが、信頼のおける抗原結合レパートリーを有する(Hamers-Casterman C.ら、Nature.6月3日;第363巻(6428号):446~8頁(1993年);Nguyen VK.ら「Heavy-chain antibodies in Camelidae; a case of evolutionary innovation」、Immunogenetics.4月;第54巻(1号):39~47頁(2002年);Nguyen VK.らImmunology.5月;第109巻(1号):93~101頁(2003年))。重鎖抗体の可変ドメイン(VHHドメイン)は、適応免疫応答によって生じた最小の既知抗原結合単位に相当する(Koch-Nolte F.ら、FASEB J.11月;第21巻(13号):3490~8頁. Epub 2007年6月15日(2007年))。
【0046】
「ナノボディー」とは、重鎖抗体に由来するVHHドメインおよび2つの定常ドメイン、CH2およびCH3からなる抗体断片を指す。
【0047】
「ダイアボディー」は、2つの抗原結合部位を有する小さい抗体断片を含み、この断片は、同一ポリペプチド鎖中でVLドメインと接続しているVHドメイン(VH-VLまたはVH-VL)を含む(例えば、Holliger P.ら、Proc Natl Acad Sci U S A.7月15日;第90巻(14号):6444~8頁(1993年);EP404097;WO93/11161を参照のこと)。同一鎖上の2つのドメイン間で対合を可能にするには短すぎるリンカーを使用することによって、ドメインが、別の鎖の相補的ドメインと対を形成するようにされ、それによって、2つの抗原結合部位を作製する。抗原結合部位は、異なる抗原(またはエピトープ)の同一のものを標的とし得る。
【0048】
「ドメイン抗体」とは、重鎖の可変領域または軽鎖の可変領域のみを含有する抗体断片を指す。特定の例では、2つまたはそれ以上のVHドメインは、ペプチドリンカーと共有結合によって結合されて、二価または多価ドメイン抗体を作製する。二価ドメイン抗体の2つのVHドメインは、同一または異なる抗原を標的とし得る。
【0049】
特定の実施形態では、「(dsFv)2」は、3つのペプチド鎖:ペプチドリンカーによって連結され、2つのVL部分とジスルフィド橋によって結合されている2つのVH部分を含む。
【0050】
特定の実施形態では、「二重特異性dsダイアボディー」は、VH1およびVL1の間のジスルフィド橋を介してVL1-VH2(同様にペプチドリンカーによって連結された)と結合しているVH1-VL2(ペプチドリンカーによって連結された)を含む。
【0051】
特定の実施形態では、「二重特異性dsFv」またはdsFv-dsFv’」は、3つのペプチド鎖:重鎖がペプチドリンカー(例えば、長い可動性リンカー)によって連結され、ジスルフィド橋を介してそれぞれ、VL1およびVL2部分と結合しており、各ジスルフィド対形成された重鎖および軽鎖が異なる抗原特異性を有する、VH1-VH2部分を含む。
【0052】
特定の実施形態では、「scFv二量体」は、別のVH-VL部分と二量体化されたVH-VL(ペプチドリンカーによって連結された)を含み、その結果、一方の部分のVHのものが、もう一方の部分のVLと協調し、同一抗原(またはエピトープ)または異なる抗原(またはエピトープ)を標的化し得る2つの結合部位を形成する、二価ダイアボディーまたは二価ScFv(BsFv)である。その他の実施形態では、「scFv二量体」は、VL1-VH2(同様にペプチドリンカーによって連結された)と会合しているVH1-VL2(ペプチドリンカーによって連結された)を含み、その結果、VH1およびVL1が協調し、VH2およびVL2が協調し、各協調対が異なる抗原特異性を有する二重特異性ダイアボディーである。
【0053】
抗体または抗原結合断片に関して用語「完全ヒト」とは、本明細書において、抗体または抗原結合断片が、ヒトもしくはヒト免疫細胞によって生成された、またはヒト抗体レパートリーもしくはその他のヒト抗体をコードする配列を利用するトランスジェニック非ヒト動物などの非ヒト供給源に由来する抗体のものに対応するアミノ酸配列(単数または複数)を有する、またはからなることを意味する。特定の実施形態では、完全ヒト抗体は、非ヒト抗体に由来するアミノ酸残基(特に、抗原結合残基)を含まない。
【0054】
抗体または抗原結合断片に関して用語「ヒト化」とは、本明細書において、抗体または抗原結合断片が、非ヒト動物に由来するCDR、ヒトに由来するFR領域、適用可能な場合には、ヒトに由来する定常領域を含むことを意味する。ヒト化抗体または抗原結合断片は、特定の実施形態では、ヒトにおいて低減された免疫原性を有するので、ヒト治療薬として有用である。いくつかの実施形態では、非ヒト動物は、哺乳動物、例えば、マウス、ラット、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、モルモットまたはハムスターである。いくつかの実施形態では、ヒト化抗体または抗原結合断片は、非ヒトであるCDR配列を除く実質的にすべてのヒト配列から構成される。いくつかの実施形態では、ヒトに由来するFR領域は、それが由来するヒト抗体と同一のアミノ酸配列を含み得る、またはいくつかのアミノ酸変更、例えば、例えば、10、9、8、7、6、5、4、3、2または1つ以下のアミノ酸の変更を含み得る。いくつかの実施形態では、このようなアミノ酸の変更は、重鎖FR領域中にのみ、軽鎖FR領域中にのみまたは両方の鎖中に存在し得る。いくつかの好ましい実施形態では、ヒト化抗体は、ヒトFR1-3およびヒトJHおよびJκを含む。
【0055】
用語「キメラ」とは、本明細書において、ある種に由来する重鎖および/または軽鎖の一部ならびに別の種に由来する重鎖および/または軽鎖の残りを有する抗体または抗原結合断片を意味する。例示的例では、キメラ抗体は、ヒトに由来する定常領域およびマウスなどに由来する非ヒト種に由来する可変領域を含み得る。
【0056】
「PD-L1」とは、本明細書において、プログラム細胞死リガンド1(PD-L1、例えば、Freemanら(2000) J.Exp.Med.第192巻:1027頁を参照のこと)を指す。ヒトPD-L1の代表的なアミノ酸配列は、NCBI受託番号NP_054862.1のもとで開示されており、ヒトPD-L1をコードする代表的な核酸配列は、NCBI受託番号:NM_014143.3のもとで示されている。PD-L1は、胎盤、脾臓、リンパ節、胸腺、心臓、胎児肝臓において発現され、また、多数の腫瘍または癌細胞で見られる。PD-L1は、活性化されたT細胞、B細胞および骨髄細胞で発現されるその受容体PD-1またはB7-1と結合する。PD-L1およびその受容体との結合は、シグナル伝達を誘導して、サイトカイン産生およびT細胞増殖TCR媒介性活性化を抑制する。したがって、PD-L1は、妊娠、自己免疫疾患、組織同種移植などの特定の事象の際に免疫系の抑制において主要な役割を果たし、腫瘍または癌細胞が免疫学的チェックポイントを回避し、免疫応答を逃れることを可能にすると考えられる。
【0057】
「抗PD-L1抗体」とは、本明細書において、PD-L1(例えば、ヒトまたはサルPD-L1)と、診断的および/または治療的使用のために提供するのに十分である親和性で特異的に結合可能である抗体を指す。
【0058】
用語「特異的結合」または「特異的に結合する」とは、本明細書において、例えば、抗体および抗原の間などの2つの分子間の非ランダム結合反応を指す。特定の実施形態では、本明細書において提供される抗体または抗原結合断片は、ヒトおよび/またはサルPD-L1と、≦10-6M(例えば、≦5×10-7M、≦2×10-7M、≦10-7M、≦5×10-8M、≦2×10-8M、≦10-8M、≦5×10-9M、≦2×10-9M、≦10-9M、約10-10M、10-10M~10-9M、10-10M~10-8.5Mまたは10-10M~10-8M)の結合親和性(KD)で特異的に結合する。KDとは、本明細書において、結合速度に対する解離速度の割合(koff/kon)を指し、表面プラズモン共鳴法を使用して、例えば、Biacoreなどの機器を使用して決定され得る。
【0059】
「結合を遮断する」または「同一エピトープについて競合する」能力とは、本明細書において、抗体または抗原結合断片の、2つの分子(例えば、ヒトPD-L1および抗PD-L1抗体)の間の結合相互作用を、任意の検出可能な程度に阻害する能力を指す。特定の実施形態では、2つの分子間の結合を遮断する抗体または抗原結合断片は、2つの分子間の結合相互作用を少なくとも50%阻害する。特定の実施形態では、この阻害は、60%超、70%超、80%超または90%超であり得る。
【0060】
用語「エピトープ」は、本明細書において、抗体が結合する、抗原上の原子またはアミノ酸の特定の群を指す。2種の抗体は、抗原について競合結合を示す場合には、抗原内の同一エピトープと結合し得る。例えば、もしも、本明細書において開示されるような抗体または抗原結合断片が1.4.1、1.14.4、1.20.15および1.46.11などの例示的抗体のヒトPD-L1との結合を遮断するならば、そのとき、抗体または抗原結合断片は、例示的抗体と同一のエピトープと結合すると考えられ得る。
【0061】
エピトープ内の特定のアミノ酸残基は、例えば、アラニンスキャニング変異誘発によって変異され得、タンパク質結合を低減する、または防ぐ変異が同定される。「アラニンスキャニング変異誘発」は、エピトープの、それと結合する別の化合物またはタンパク質との相互作用に影響を及ぼすタンパク質の特定の残基または領域を同定するために実施され得る方法である。タンパク質内の標的残基の残基または基が、中性または負に帯電したアミノ酸(最も好ましくは、アラニンもしくはポリアラニンまたは保存的アミノ酸置換)によって置換される。タンパク質の結合を閾値よりも低減する、またはその他の変異よりも最大程度にタンパク質の結合を低減する、それをコードするアミノ酸残基またはコドンの任意の変異は、タンパク質によって結合されるエピトープ内である可能性が高い。本開示の特定の実施形態では、PD-L1抗体にとって重大であるエピトープは、E58、E60、D61、K62、N63およびR113のアミノ酸残基のうち少なくとも1つを含む。
【0062】
「1.4.1」とは、本明細書において、配列番号43の重鎖可変領域、配列番号45の軽鎖可変領域およびIgG4アイソタイプのヒト定常領域を有する完全ヒトモノクローナル抗体を指す。
【0063】
「1.14.4」とは、本明細書において、配列番号47の重鎖可変領域、配列番号49の軽鎖可変領域およびIgG4アイソタイプのヒト定常領域を有する完全ヒトモノクローナル抗体を指す。
【0064】
「1.20.15」とは、本明細書において、配列番号51の重鎖可変領域、配列番号53の軽鎖可変領域およびIgG4アイソタイプのヒト定常領域を有する完全ヒトモノクローナル抗体を指す。
【0065】
「1.46.11」とは、本明細書において、配列番号55の重鎖可変領域、配列番号49の軽鎖可変領域およびIgG4アイソタイプのヒト定常領域を有する完全ヒトモノクローナル抗体を指す。
【0066】
「保存的置換」とは、アミノ酸配列に関して、アミノ酸残基を、同様の生理化学的特性を有する側鎖を有する異なるアミノ酸残基と置換することを指す。例えば、保存的置換は、疎水性側鎖を有するアミノ酸残基(例えば、Met、Ala、Val、LeuおよびIle)の間で、中性親水性側鎖を有する残基(例えば、Cys、Ser、Thr、AsnおよびGln)の間で、酸性側鎖を有する残基(例えば、Asp、Glu)の間で、塩基性側鎖を有するアミノ酸(例えば、His、LysおよびArg)の間で、または芳香族側鎖を有する残基(例えば、Trp、TyrおよびPhe)の間で行われ得る。当技術分野で公知であるように、保存的置換は、通常、タンパク質のコンホメーション構造において重大な変化を引き起こさず、従って、タンパク質の生物活性を保持し得る。
【0067】
アミノ酸配列(または核酸配列)に関して「配列同一性パーセント(%)」は、最大数の同一アミノ酸(または核酸)を達成するように、配列をアラインし、必要に応じて、ギャップを導入した後の、参照配列中のアミノ酸(または核酸)残基と同一である、候補配列中のアミノ酸(または核酸)残基のパーセンテージとして定義される。アミノ酸残基の保存的置換は、同一残基と考えられる場合も考えられない場合もある。アミノ酸(または核酸)配列同一性パーセントを決定するためのアラインメントは、例えば、BLASTN、BLASTp(U.S. National Center for Biotechnology Information(NCBI)のウェブサイトで入手可能、Altschul S.F.ら、J.Mol.Biol.、第215巻:403~410頁(1990年);Stephen F.ら、Nucleic Acids Res.、第25巻:3389~3402頁(1997年)も参照のこと)、ClustalW2(European Bioinformatics Instituteのウェブサイトで入手可能、Higgins D.G.ら、Methods in Enzymology、第266巻:383~402頁(1996年);Larkin M.A.ら、Bioinformatics(Oxford、England)、第23巻(21号):2947~8頁(2007年)も参照のこと)およびALIGNまたはMegalign(DNASTAR)ソフトウェアなどの公的に入手可能なツールを使用して達成され得る。当業者は、ツールによって提供されるデフォルトパラメータを使用してもよく、またはアラインメントにとって必要に応じて、例えば、適したアルゴリズムを選択することなどによって、パラメータをカスタマイズしてもよい。
【0068】
「T細胞」は、本明細書において、CD4+T細胞、CD8+T細胞、Tヘルパー1型T細胞、Tヘルパー2型T細胞、Tヘルパー17型T細胞および阻害性T細胞を含む。
【0069】
「エフェクター機能」とは、本明細書において、抗体のFc領域の、C1複合体およびFc受容体などのそのエフェクターとの結合に起因する生物学的活性を指す。例示的エフェクター機能は、抗体およびC1複合体上のC1qの相互作用によって誘導される補体依存性細胞毒性(CDC)、抗体のFc領域の、エフェクター細胞上のFc受容体との結合によって誘導される抗体依存性細胞媒介性細胞毒性(ADCC)、および食作用を含む。
【0070】
「癌」または「癌性状態」とは、本明細書において、新生物性または悪性細胞成長、増殖または転移によって媒介される任意の医学的状態を指し、固形癌および白血病などの非固形癌の両方を含む。「腫瘍」とは、本明細書において、新生物性および/または悪性細胞の固体塊を指す。
【0071】
状態を「処置すること」または「処置」とは、本明細書において、状態を予防することまたは軽減すること、状態の発症または発生の速度を減速すること、状態の発生のリスクを低減すること、状態と関連する症状の発生を予防することまたは遅延すること、状態と関連する症状を低減することまたは終了させること、状態の完全なまたは部分的な退縮をもたらすこと、状態を治癒させることまたはそれらのいくつかの組合せを含む。癌に関して、「処置すること」または「処置」は、新生物性または悪性細胞成長、増殖または転移を阻害または減速すること、新生物性または悪性細胞成長、増殖または転移の発生を予防することまたは遅延することまたはそれらのいくつかの組合せを指し得る。腫瘍に関して、「処置すること」または「処置」は、腫瘍のすべてまたは一部を根絶すること、腫瘍成長および転移を阻害することまたは減速すること、腫瘍の発生を予防することまたは遅延することまたはそれらのいくつかの組合せを含む。
【0072】
「単離された」物質は、天然状態から人の手によって変更されている。「単離された」組成物または物質が天然に生じる場合には、元の環境から変化されている、または取り出されている、または両方である。例えば、生存する動物中に天然に存在するポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、「単離されて」いないが、同一ポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、実質的に純粋な状態で存在するようにその天然状態の共存する材料から十分に分離されている場合には「単離されている」。特定の実施形態では、抗体および抗原結合断片は、電気泳動法(SDS-PAGE、等電点電気泳動、キャピラリー電気泳動など)またはクロマトグラフィー法(イオン交換クロマトグラフィーまたは逆相HPLCなど)によって決定されるような、少なくとも90%、93%、95%、96%、97%、98%、99%の純度を有する。
【0073】
用語「ベクター」とは、本明細書において、タンパク質をコードするポリヌクレオチドが、そのタンパク質の発現を引き起こすように作動可能に挿入され得る媒体を指す。ベクターは、宿主細胞内に運ぶ遺伝要素の発現を引き起こすように、宿主細胞を形質転換、形質導入またはトランスフェクトするために使用され得る。ベクターの例として、プラスミド、ファージミド、コスミド、酵母人工染色体(YAC)、細菌人工染色体(BAC)またはP1由来人工染色体(PAC)などの人工染色体、λファージまたはM13ファージなどのバクテリオファージおよび動物ウイルスが挙げられる。ベクターとして使用される動物ウイルスのカテゴリーとして、レトロウイルス(レンチウイルスを含む)、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス(例えば、単純ヘルペスウイルス)、ポックスウイルス、バキュロウイルス、パピローマウイルスおよびパポーバウイルス(例えば、SV40)が挙げられる。ベクターは、プロモーター配列、転写開始配列、エンハンサー配列、選択可能要素およびリポーター遺伝子を含む、発現を制御するための種々の要素を含有し得る。さらに、ベクターは、複製起点を含有し得る。ベクターはまた、限定されるものではないが、ウイルス粒子、リポソームまたはタンパク質コーティングを含む、細胞へのその侵入を補助するための材料を含み得る。
【0074】
語句「宿主細胞」とは、本明細書において、外因性ポリヌクレオチドおよび/またはベクターが導入されている細胞を指す。
【0075】
「PD-L1と関連する、またはそれと関係する疾患」とは、本明細書において、PD-L1(例えば、ヒトPD-L1)の発現または活性の増大または減少によって引き起こされる、それによって増悪される、またはそうでなければそれと関連付けられる任意の状態を指す。
【0076】
用語「治療上有効な量」または「有効投与量」とは、本明細書において、ヒトPD-L1と関連する疾患または状態を処置するのに有効な薬物の投与量または濃度を指す。例えば、癌を処置するための本明細書において開示される抗体または抗原結合断片の使用に関して、治療上有効な量は、腫瘍のすべてまたは一部を根絶、腫瘍成長を阻害または減速、癌性状態を媒介する細胞の成長または増殖を阻害、腫瘍細胞転移を阻害、腫瘍または癌性状態と関連する任意の症状またはマーカーを回復、腫瘍または癌性状態の発生を予防または遅延可能な抗体または抗原結合断片の投与量または濃度またはそのいくつかの組合せである。
【0077】
用語「医薬上許容される」は、指定された担体、ビヒクル、希釈剤、賦形剤(単数または複数)および/または塩が、一般に、製剤を含むその他の成分と化学的におよび/または物理的に適合しており、そのレシピエントと生理学的に適合していることを示す。
【0078】
―抗PD-L1抗体―
一態様では、本開示は、抗PD-L1抗体およびその抗原結合断片を提供する。CD279とも呼ばれるPD-1は、活性化されたT細胞によって発現される重要な免疫チェックポイント受容体としても知られており、免疫抑制を媒介する。PD-1リガンド1(PD-L1)は、種々の腫瘍細胞、間質細胞または両方で発現される40kDaの膜貫通タンパク質であり、PD-1と結合する。PD-1およびPD-L1間の相互作用の阻害は、T細胞反応を増強し、したがって、抗癌活性を媒介し得る。
【0079】
特定の実施形態では、本開示は、例示的完全ヒトモノクローナル抗体1.4.1、1.14.4、1.20.15および1.46.11を提供し、そのCDR配列は、以下の表1に示されており、重鎖または軽鎖可変領域配列も以下に示されている。
【0080】
【表1-1】
【表1-2】
【0081】
1.4.1-VH(30511):重鎖CDR1~3:それぞれ、配列番号1、3、5は、アミノ酸配列であり、配列番号2、4、6は、核酸配列である:を有する(アミノ酸について配列番号43および核酸について配列番号44):
Vセグメント:IGHV4-39*01
Dセグメント:IGHD1-26*01
Jセグメント:IGHJ4*02
【化1】
【0082】
1.4.1-VL(30027):軽鎖CDR1~3:それぞれ、配列番号7、9、11は、アミノ酸配列であり、配列番号8、10、12は、核酸配列である:を有する(アミノ酸について配列番号45および核酸について配列番号46):
Vセグメント:IGLV3-1*01
Jセグメント:IGLJ2*01
【化2】
【0083】
1.14.4-VH(29812):重鎖CDR1~3:それぞれ、配列番号13、15、17は、アミノ酸配列であり、配列番号14、16、18は、核酸配列である:を有する(アミノ酸について配列番号47および核酸について配列番号48):
Vセグメント:IGHV3-23*01
Dセグメント:IGHD5-5*01
Jセグメント:IGHJ4*02
【化3】
【0084】
1.14.4-VLおよび1.46.11-VL(29841):軽鎖CDR1~3:それぞれ、配列番号19、21、23は、アミノ酸配列であり、配列番号20、22、24は、核酸配列である:を有する(アミノ酸について配列番号49および核酸について配列番号50):
Vセグメント:IGLV3-21*02
Jセグメント:IGLJ2*01
【化4】
【0085】
1.20.15-VH(30712):重鎖CDR1~3:それぞれ、配列番号25、27、29は、アミノ酸配列であり、配列番号26、28、30は、核酸配列である:を有する(アミノ酸について配列番号51および核酸について配列番号52):
Vセグメント:IGHV4-39*01
Dセグメント:決定されていない
Jセグメント:IGHJ4*02
【化5】
【0086】
1.20.15-VL(29907):軽鎖CDR1~3:それぞれ、配列番号31、33、35は、アミノ酸配列であり、配列番号32、34、36は、核酸配列である:を有する(アミノ酸について配列番号53および核酸について配列番号54):
Vセグメント:IGLV3-1*01
Jセグメント:IGLJ2*01
【化6】
【0087】
1.46.11-VH(30626):重鎖CDR1~3:それぞれ、配列番号37、39、41は、アミノ酸配列であり、配列番号38、40、42は、核酸配列である:を有する(アミノ酸について配列番号55および核酸について配列番号56):
Vセグメント:IGHV3-23*01
Dセグメント:IGHD5-5*01
Jセグメント:IGHJ4*02
【化7】
【0088】
1.46.11-VL(29841):軽鎖CDR1~3:それぞれ、配列番号19、21、23は、アミノ酸配列であり、配列番号20、22、24は、核酸配列である:を有する(アミノ酸について配列番号49および核酸について配列番号50):
Vセグメント:IGLV3-21*02
Jセグメント:IGLJ2*01
【化8】
【0089】
いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体およびその抗原結合断片は、配列番号1、3、5、13、15、17、25、27、29、37、39および41からなる群から選択される重鎖CDR配列を含む。いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体およびその抗原結合断片は、配列番号7、9、11、19、21、23、31、33および35からなる群から選択される軽鎖CDR配列を含む。
【0090】
いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体およびその抗原結合断片は、配列番号1、配列番号3および/または配列番号5を含む重鎖可変領域、配列番号13、配列番号15、および/または配列番号17を含む重鎖可変領域、配列番号25、配列番号27および/または配列番号29を含む重鎖可変領域、ならびに配列番号37、配列番号39および/または配列番号41を含む重鎖可変領域からなる群から選択される重鎖可変領域を含む。
【0091】
いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体およびその抗原結合断片は、配列番号7、配列番号9および/または配列番号11を含む軽鎖可変領域、配列番号19、配列番号21および/または配列番号23を含む軽鎖可変領域、ならびに配列番号31、配列番号33および/または配列番号35を含む軽鎖可変領域からなる群から選択される軽鎖可変領域を含む。
【0092】
いくつかの実施形態では、a)配列番号1、配列番号3および/もしくは配列番号5を含む重鎖可変領域ならびに配列番号7、配列番号9および/もしくは配列番号11を含む軽鎖可変領域、b)配列番号13、配列番号15および/もしくは配列番号17を含む重鎖可変領域ならびに配列番号19、配列番号21および/もしくは配列番号23を含む軽鎖可変領域、c)配列番号25、配列番号27および/もしくは配列番号29を含む重鎖可変領域ならびに配列番号31、配列番号33および/もしくは配列番号35を含む軽鎖可変領域、またはd)配列番号37、配列番号39および/または配列番号41を含む重鎖可変領域ならびに配列番号19、配列番号21および/もしくは配列番号23を含む軽鎖可変領域を含む抗PD-L1抗体およびその抗原結合断片。
【0093】
当業者ならば、表1に提供されるCDR配列は、ヒトPD-L1との結合親和性の改善などの生物活性の改善を提供するように、アミノ酸の1つまたは複数の置換を含有するように修飾され得るということを理解するであろう。例えば、抗体変異体(FabまたはscFv変異体など)のライブラリーが作製され、ファージディスプレイ技術を用いて発現され、次いで、ヒトPD-L1との結合親和性についてスクリーニングされ得る。別の例については、抗体の、ヒトPD-L1との結合をコンピュータ上でシミュレートし、結合面を形成する抗体上のアミノ酸残基を同定するためにコンピュータソフトウェアが使用され得る。このような残基は、結合親和性の低下を防ぐために置換において避けられるか、またはより強力な結合を提供するために置換のために標的とされるかのいずれかであり得る。特定の実施形態では、CDR配列中の置換(単数または複数)のうち少なくとも1つ(またはすべて)は、保存的置換である。
【0094】
特定の実施形態では、抗体およびその抗原結合断片は、表1に列挙されるもの(単数または複数)に対して、少なくとも80%(例えば、少なくとも85%、88%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%)の配列同一性を有する、1つまたは複数のCDR配列を含み、その一方で、対応するCDR配列が、表1に列挙されるもの(単数または複数)に対して100%の配列同一性にある場合を除いて、ヒトPD-L1に対して、実質的に同一の配列を有するその親抗体と同様またはさらにより高いレベルの結合親和性を保持する。
【0095】
特定の実施形態では、抗PD-L1抗体およびその抗原結合断片は、完全ヒトである。完全ヒト抗体は、ヒト化抗体を用いる場合にしばしば観察されるような、ヒトにおける免疫原性および/または結合親和性の低減の問題を有さない。
【0096】
いくつかの実施形態では、完全ヒト抗PD-L1抗体およびその抗原結合断片は、配列番号43、配列番号47、配列番号51、配列番号55および少なくとも80%(例えば、少なくとも85%、88%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%)の配列同一性を有するその相同配列からなる群から選択される重鎖可変領域、ならびに/または配列番号45、配列番号49、配列番号53および少なくとも80%(例えば、少なくとも85%、88%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%)の配列同一性を有するその相同配列からなる群から選択される軽鎖可変領域を含む。これらの完全ヒト抗体は、ヒトPD-L1に対する結合親和性を、好ましくは、例示的抗体1.4.1、1.14.4、1.20.15および1.46.11のうち1種と同様のレベルで保持する。
【0097】
いくつかの実施形態では、完全ヒト抗PD-L1抗体およびその抗原結合断片は、a)配列番号43を含む重鎖可変領域および配列番号45を含む軽鎖可変領域、b) 配列番号47を含む重鎖可変領域および配列番号49を含む軽鎖可変領域、c)配列番号51を含む重鎖可変領域および配列番号53を含む軽鎖可変領域、またはd)配列番号55を含む重鎖可変領域および配列番号49を含む軽鎖可変領域を含む。
【0098】
また、同一エピトープについて、本明細書において提供される抗PD-L1抗体およびその抗原結合断片と競合する、抗体および抗原結合断片も本明細書において考慮される。特定の実施形態では、抗体は、1.4.1、1.14.4、1.20.15および1.46.11の、ヒトまたはサルPD-L1との結合を、例えば、10-6M未満、10-7M未満、10-7.5M未満、10-8M未満、10-8.5M未満、10-9M未満または10-10M未満のIC50値(すなわち、50%阻害濃度)で遮断する。IC50値は、ELISAアッセイ、放射性リガンド競合結合アッセイおよびFACS解析などの競合アッセイに基づいて決定される。
【0099】
いくつかの実施形態では、本明細書において提供される抗PD-L1抗体およびその抗原結合断片は、プラズモン共鳴結合アッセイによって測定されるものとして、≦10-6M(例えば、≦5×10-7M、≦2×10-7M、≦10-7M、≦5×10-8M、≦2×10-8M、≦10-8M、≦5×10-9M、≦2×10-9M、≦10-9M、約10-10M、10-10M~10-8.5Mまたは10-10M~10-8M)の結合親和性(Kd)でヒトPD-L1と特異的に結合可能である。結合親和性は、抗原および抗原結合分子間の結合が平衡に達する場合に、結合速度に対する解離速度の割合(koff/kon)として算出されるKd値によって表され得る。抗原結合親和性(例えば、KD)は、例えば、Biacoreなどの機器を使用するプラズモン共鳴結合アッセイを含む当技術分野で公知の適した方法を使用して適宜決定され得る(例えば、Murphy,M.ら、Current protocols in protein science、第19章、19.14単元、2006年を参照のこと)。
【0100】
特定の実施形態では、本明細書において提供される抗体およびその断片は、ヒトPD-L1と、0.1nM~100nM(例えば、0.1nM~50nM、0.1nM~30nM、0.1nM~20nM、0.1nM~10nMまたは0.1nM~1nMのEC50(すなわち、50%結合濃度)で結合する。抗体のヒトPD-L1との結合は、当技術分野で公知の方法、例えば、ELISAなどのサンドイッチアッセイ、ウエスタンブロット、FACSまたはその他の結合アッセイによって測定され得る。例示的例では、試験抗体(すなわち、第1の抗体)は、固定化されたヒトPD-L1またはヒトPD-L1を発現する細胞と結合することが可能にされ、結合していない抗体を洗浄除去した後に、結合している第1の抗体と結合でき、その検出を可能にする標識された二次抗体が導入される。検出は、固定化されたPD-L1が使用される場合にはマイクロプレートリーダーを用いて、またはヒトPD-L1を発現する細胞が使用される場合にはFACS解析を使用することによって実施され得る。特定の実施形態では、本明細書において提供される抗体およびその断片は、ヒトPD-L1と、FACS解析によって測定されるような1nM~10nMの、または1nM~5nMのEC50(すなわち、50%有効濃度)で結合する。
【0101】
特定の実施形態では、本明細書において提供される抗体およびその断片は、ヒトPD-L1の、その受容体との結合を、競合アッセイにおいて測定されるような0.2nM~100nM(例えば、0.2nM~50nM、0.2nM~30nM、0.2nM~20nM、0.2nM~10nMまたは1nM~10nM)のIC50で阻害する。
【0102】
特定の実施形態では、本明細書において提供される抗体およびその断片は、ヒトPD-L1のその受容体との結合を遮断し、それによって、例えば、活性化されたT細胞(CD4+T細胞およびCD8+T細胞など)からのサイトカイン産生を誘導すること、活性化されたT細胞(CD4+T細胞およびCD8+T細胞など)の増殖を誘導すること、およびTregの抑制機能を逆転させることを含む生物活性を提供する。例示的サイトカインとして、IL-2およびIFNγが挙げられる。用語「IL-2」とは、インターロイキン2、白血球〔white blood cell〕(例えば、白血球細胞〔leukocyte〕)の活性を調節する免疫系におけるサイトカインシグナル伝達分子の1種を指す。用語「インターフェロンγ(IFNγ)」は、ナチュラルキラー(NK)、NKT細胞、CD4+およびCD8+T細胞によって産生されるサイトカインであり、マクロファージの重要なアクチベーターおよび主要組織適合複合体(MHC)分子発現のインデューサーである。サイトカイン産生は、当技術分野で公知の方法を使用して、例えば、ELISAによって調べられ得る。[3H]チミジン組込みアッセイを含む方法はまた、T細胞の増殖を検出するために使用され得る。
【0103】
抗PD-L1抗体およびその抗原結合断片は、ヒトPD-L1に対して特異的である。特定の実施形態では、抗体およびその抗原結合断片は、PD-L2(例えば、ヒトPD-L2)と結合しない。例えば、PD-L2との結合親和性は、ヒトPD-L1とのものの15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%または1%未満である。
【0104】
特定の実施形態では、抗体およびその抗原結合断片は、サルPD-L1と、ELISAによって測定されるような100nM以下、例えば、10nM、9nM、8nM、7nM、6nM、5nM、4nM、3nM、2nM、1nM、0.9nM、0.8nM、0.7nM、0.6nM、0.5nM、0.4nM、0.3nM、0.2nM、0.1nM、0.09nM、0.08nM、0.07nM、0.06nM、0.05nM、0.04nM、0.03nM、0.02nMもしくは0.01nM以下のEC50で結合する。特定の実施形態では、抗体およびその抗原結合断片は、サルPD-L1と、約1nM~10nMのEC50で結合する。
【0105】
特定の実施形態では、抗体およびその抗原結合断片は、マウスPD-L1と結合しないが、サルPD-L1と、ヒトPD-L1のものと同様の結合親和性で結合する。例えば、例示的抗体1.4.1、1.14.4、1.20.15および1.46.11の、マウスPD-L1との結合は、ELISAまたはFACS解析などの従来の結合アッセイでは検出可能でないが、これらの抗体のサルPD-L1との結合は、ELISAまたはFACSによって測定されるような、ヒトPD-L1のものと同様の親和性またはEC50値である。
【0106】
いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体およびその抗原結合断片は、エフェクター機能が低減している、または枯渇している。いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体およびその抗原結合断片は、エフェクター機能が低減している、または枯渇しているIgG4アイソタイプの定常領域を有する。ADCCおよびCDCなどのエフェクター機能は、PD-L1を発現する細胞に対する細胞毒性につながり得る。正常細胞を含む多数の細胞は、PD-L1を発現し得る。それらの正常細胞に対する可能性のある不要な毒性を避けるために、本明細書において提供される抗体および抗原結合断片の特定の実施形態は、エフェクター機能が低減している、さらには枯渇している場合がある。種々のアッセイ、例えば、Fc受容体結合アッセイ、C1q結合アッセイおよび細胞溶解アッセイが、ADCCまたはCDC活性を評価すると知られており、当業者によって容易に選択され得る。理論に捉われようとは思わないが、ADCCまたはCDCなどのエフェクター機能が低減している、または枯渇している抗体は、PD-L1発現細胞、例えば、それらの正常細胞に対して細胞毒性を引き起こさない、または最小の細胞毒性しか引き起こさず、したがって、不要な副作用からそれらを救うが、その一方で、PD-L1を発現する腫瘍細胞は抗PD-L1抗体によって結合され、したがって、免疫チェックポイントから逃れることはできず、ゆえに、免疫系によって認識され、排除され得ると考えられる。
【0107】
特定の実施形態では、本明細書において提供される抗PD-L1抗体およびその抗原結合断片は、副作用が低減されている。例えば、本明細書において提供される抗体およびその抗原結合断片は、完全ヒトIgG配列を有し得、したがって免疫原性がヒト化抗体よりも低減されている。別の例については、本明細書において提供される抗体およびその抗原結合断片は、ADCCおよびCDCを排除するためにIgG4形式であり得る。
【0108】
特定の実施形態では、本明細書において提供される抗PD-L1抗体およびその抗原結合断片は、腫瘍細胞、精製腫瘍抗原および免疫刺激性サイトカインをコードする遺伝子を用いてトランスフェクトされた細胞、腫瘍ワクチンなどの免疫原と組み合わせて使用され得るという点で有利である。さらに、抗PD-L1抗体およびその抗原結合断片は、標準化学および放射線療法、標的ベースの小分子療法を含み、その他の免疫チェックポイントモジュレーター療法が現れる併用療法に含まれ得る。特定の実施形態では、抗体およびその抗原結合断片は、抗体-薬物コンジュゲート、二重特異性または多価抗体の基礎として使用され得る。
【0109】
本明細書において提供される抗PD-L1抗体またはその抗原結合断片は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、完全ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、組換え抗体、二重特異性抗体、標識された抗体、二価抗体または抗イディオタイプ抗体であり得る。組換え抗体は、動物においてではなく組換え法を使用してin vitroで調製される抗体である。二重特異性または二価抗体は、2種の異なるモノクローナル抗体の断片を有し、2種の異なる抗原を結合し得る人工抗体である。「二価」である抗体またはその抗原結合断片は、2つの抗原結合部位を含む。2つの抗原結合部位は、同一抗原と結合する場合も、またはそれらは、異なる抗原と各々結合する場合もあり、その場合には、抗体または抗原結合断片は、「二重特異性」と特性決定される。
【0110】
いくつかの実施形態では、本明細書において提供される抗PD-L1抗体またはその抗原結合断片は、完全ヒト抗体である。特定の実施形態では、完全ヒト抗体は、組換え法を使用して調製される。例えば、マウスなどのトランスジェニック動物は、ヒト免疫グロブリン遺伝子の導入遺伝子または導入染色体〔transchromosome〕を運び、従って、ヒトPD-L1などの適当な抗原を用いた免疫処置後に完全ヒト抗体を産生可能であるように作製され得る。完全ヒト抗体は、このようなトランスジェニック動物から単離され得る、あるいは、トランスジェニック動物の脾臓細胞を、不死細胞株と融合して、完全ヒト抗体を分泌するハイブリドーマ細胞を作製することによるハイブリドーマ技術によって作製され得る。例示的トランスジェニック動物として、制限するものではないが、ラット免疫グロブリン遺伝子のその内因性発現が不活性化されており、同時に、機能的組換えヒト免疫グロブリン遺伝子座を含有するように遺伝子操作されているOmniRat;マウス免疫グロブリン遺伝子のその内因性発現が不活性化されており、同時に、J-遺伝子座欠失およびC-κ変異を有する組換えヒト免疫グロブリン遺伝子座を含有するように遺伝子操作されているOmniMouse;ラット免疫グロブリン遺伝子のその内因性発現が不活性化されており、同時に、単一の共通の再編成されたVkJk軽鎖および機能的重鎖を有する組換えヒト免疫グロブリン遺伝子座を含有するように遺伝子操作されているトランスジェニックラットであるOmniFlicが挙げられる。詳細な情報は、Osborn M.ら、Journal of Immunology、2013年、第190巻:1481~90頁;Ma B.ら、Journal of Immunological Methods 第400~401巻(2013年)78~86頁;Geurts A.ら、Science、2009年、第325巻:433頁;米国特許第8,907,157号;EP特許第2152880B1号;EP特許第2336329B1号でさらに見い出すことができ、そのすべては、参照によりその全文が本明細書に組み込まれる。その他の適したトランスジェニック動物、例えば、HuMabマウス(詳細については、Lonberg、N.らNature第368巻(6474号):856 859頁(1994年)を参照のこと)、Xenoマウス(MendezらNat Genet.、1997年、第15巻:146~156頁)、TransChromoマウス(IshidaらCloning Stem Cells、2002年、第4巻:91~102頁)およびVelocImmuneマウス(MurphyらProc Natl Acad Sci USA、2014年、第111巻:5153~5158頁)、Kymouse(LeeらNat Biotechnol、2014年、第32巻:356~363頁)およびトランスジェニックウサギ(FlisikowskaらPLoS One、2011年、第6巻:e21045)も使用され得る。
【0111】
いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体およびその抗原結合断片は、ラクダ化単一ドメイン抗体、ダイアボディー、scFv、scFv二量体、BsFv、dsFv、(dsFv)2、dsFv-dsFv’、Fv断片、Fab、Fab’、F(ab’)2、dsダイアボディー、ナノボディー、ドメイン抗体または二価ドメイン抗体である。
【0112】
いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体およびその抗原結合断片は、免疫グロブリン定常領域をさらに含む。いくつかの実施形態では、免疫グロブリン定常領域は、重鎖および/または軽鎖定常領域を含む。重鎖定常領域は、CH1、CH1-CH2またはCH1-CH3領域を含む。いくつかの実施形態では、定常領域は、所望の特性を付与するように1つまたは複数の修飾をさらに含み得る。例えば、定常領域は、1種もしくは複数のエフェクター機能を低減もしくは枯渇させるように、FcRn受容体結合を改善するように、または1つまたは複数のシステイン残基を導入するように修飾され得る。
【0113】
いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体およびその抗原結合断片は、コンジュゲートをさらに含む。種々のコンジュゲートは、本明細書において提供される抗体または抗原結合断片と連結され得るということは考慮される(例えば、「Conjugate Vaccines」、Contributions to Microbiology and Immunology、J. M. CruseおよびR. E. Lewis、Jr.(編)、Carger Press、New York、(1989年)を参照のこと)。これらのコンジュゲートは、その他の方法の中でも、共有結合、親和性結合、インターカレーション、配位結合、複合体形成、会合、ブレンドまたは付加によって抗体または抗原結合断片と連結され得る。特定の実施形態では、本明細書において開示される抗体および抗原結合断片は、エピトープ結合部分の外側に、1つまたは複数のコンジュゲートとの結合に利用され得る特異的部位を含有するように遺伝子操作され得る。例えば、このような部位は、コンジュゲートとの共有結合を促進するために、例えば、システインまたはヒスチジン残基などの1つまたは複数の反応性アミノ酸残基を含み得る。特定の実施形態では、抗体は、コンジュゲートと間接的に、または別のコンジュゲートを介して連結され得る。例えば、抗体または抗原結合断片は、ビオチンとコンジュゲートされ、次いで、アビジンとコンジュゲートされている第2のコンジュゲートと間接的にコンジュゲートされ得る。コンジュゲートは、検出可能な標識、薬物動態修飾部分、精製部分または細胞傷害性部分であり得る。検出可能な標識の例として、蛍光標識(例えば、フルオレセイン、ローダミン、ダンシル、フィコエリトリンまたはテキサスレッド)、酵素基質標識(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、ルシフェラーゼ、グルコアミラーゼ、リゾチーム、糖類オキシダーゼまたはβ-D-ガラクトシダーゼ)、放射性同位元素(例えば、123I、124I、125I、131I、35S、3H、111In、112In、14C、64Cu、67Cu、86Y、88Y、90Y、177Lu、211At、186Re、188Re、153Sm、212Biおよび32P、その他のランタニド、発光標識)、発色団部分、ジゴキシゲニン、ビオチン/アビジン、DNA分子または検出用金を挙げることができる。特定の実施形態では、コンジュゲートは、抗体の半減期を増大するのに役立つPEGなどの薬物動態修飾部分であり得る。その他の適したポリマーとして、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンなど、エチレングリコール/プロピレングリコールのコポリマーなどが挙げられる。特定の実施形態では、コンジュゲートは、磁性ビーズなどの精製部分であり得る。「細胞傷害性部分」は、細胞にとって有害である、または細胞に損傷を与え得る、または死滅させ得る任意の薬剤であり得る。細胞傷害性部分の例として、制限するものではないが、タキソール、サイトカラシンB、グラミシジンD、臭化エチジウム、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラセンジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1-デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、ピューロマイシンおよびその類似体、代謝拮抗物質(例えば、メトトレキサート、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、シタラビン、5-フルオロウラシルデカルバジン)、アルキル化剤(例えば、メクロレタミン、チオエパクロラムブシル、メルファラン、カルムスチン(BSNU)およびロムスチン(CCNU)、シクロホスファミド、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、マイトマイシンCおよびシスジクロロジアミン白金(II)(DDP)シスプラチン)、アントラサイクリン(例えば、ダウノルビシン(以前は、ダウノマイシン)およびドキソルビシン)、抗生物質(例えば、ダクチノマイシン(以前は、アクチノマイシン)、ブレオマイシン、ミトラマイシンおよびアントラマイシン(AMC))および抗有糸分裂剤(例えば、ビンクリスチンおよびビンブラスチン)が挙げられる。
【0114】
―ポリヌクレオチドおよび組換え法―
本開示は、抗PD-L1抗体およびその抗原結合断片をコードする単離されたポリヌクレオチドを提供する。特定の実施形態では、単離されたポリヌクレオチドは、表1に提供されるCDR配列をコードする、表1に示されるような1種または複数のヌクレオチド配列を含む。
【0115】
いくつかの実施形態では、単離されたポリヌクレオチドは、重鎖可変領域をコードし、配列番号44、配列番号48、配列番号52、配列番号56および少なくとも80%(例えば、少なくとも85%、88%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%)の配列同一性を有するその相同配列からなる群から選択される配列を含む。いくつかの実施形態では、単離されたポリヌクレオチドは、軽鎖可変領域をコードし、配列番号46、配列番号50、配列番号54および少なくとも80%(例えば、少なくとも85%、88%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%)の配列同一性を有するその相同配列からなる群から選択される配列を含む。特定の実施形態では、同一性パーセンテージは、遺伝暗号縮重に起因し、コードされるタンパク質配列は、変更されないままである。
【0116】
抗PD-L1抗体およびその抗原結合断片(例えば、表1中の配列を含む)をコードする単離されたポリヌクレオチドは、当技術分野で公知の組換え技術を使用してさらなるクローニング(DNAの増幅)のために、または発現のためにベクター中に挿入され得る。別の実施形態では、抗体は、当技術分野で公知の相同組換えによって生成され得る。モノクローナル抗体をコードするDNAは、従来の手順を使用して(例えば、抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子と特異的に結合可能であるオリゴヌクレオチドプローブを使用することによって)容易に単離され、配列決定される。多数のベクターが入手可能である。ベクター成分は、一般に、限定されるものではないが、以下のうち1種または複数を含む:シグナル配列、複製起点、1種または複数のマーカー遺伝子、エンハンサーエレメント、プロモーター(例えば、SV40、CMV、EF-1α)および転写終結配列。
【0117】
いくつかの実施形態では、ベクター系として、哺乳動物、細菌、酵母系などが挙げられ、限定されるものではないが、pALTER、pBAD、pcDNA、pCal、pL、pET、pGEMEX、pGEX、pCI、pCMV、pEGFP、pEGFT、pSV2、pFUSE、pVITRO,pVIVO、pMAL、pMONO、pSELECT、pUNO、pDUO、Psg5L、pBABE、pWPXL、pBI、p15TV-L、pPro18、pTD、pRS420、pLexA、pACT2.2など、ならびにその他の実験室および市販のベクターなどのプラスミドを含む。適したベクターとして、プラスミドまたはウイルスベクター(例えば、複製欠損レトロウイルス、アデノウイルスおよびアデノ随伴ウイルス)を挙げることができる。
【0118】
抗体または抗原結合断片をコードするポリヌクレオチド配列を含むベクターは、クローニングまたは遺伝子発現のために宿主細胞に導入され得る。クローニングに適した、本明細書におけるベクター中でDNAを発現する宿主細胞は、上記の原核生物、酵母または高等真核生物細胞である。この目的に適した原核生物として、グラム陰性またはグラム陽性生物などの真正細菌、例えば、エシェリキア属〔Escherichia〕、例えば、大腸菌〔E.coli〕、エンテロバクター属〔Enterobacter〕、エルウィニア属〔Erwinia〕、クレブシエラ属〔Klebsiella〕、プロテウス属〔Proteus〕、サルモネラ属〔Salmonella〕、例えば、サルモネラ・チフィリウム〔Salmonella typhimurium〕、セラチア属〔Serratia〕、例えば、セラチア・マルセッセンス〔Serratia marcescans〕および赤痢菌属〔Shigella〕ならびにB.スブチリス〔subtilis〕およびB.リケニフォルミス〔licheniformis〕などのバチルス属〔Bacilli〕、P.エルジノーサ〔aeruginosa〕などのシュードモナス属〔Pseudomonas〕およびストレプトマイセス属〔Streptomyces〕などの腸内細菌科〔Enterobacteriaceae〕が挙げられる。
【0119】
原核生物に加えて、糸状菌または酵母などの真核細胞微生物は、抗PD-L1抗体をコードするベクターの適したクローニングまたは発現宿主である。サッカロミセス・セレビシエ〔Saccharomyces cerevisiae〕または一般的なパン酵母は、下等真核細胞宿主微生物の中で最もよく使用されている。しかし、シゾサッカロミセス・ポンベ〔Schizosaccharomyces pombe〕;例えば、K.ラクチス〔lactis〕、K.フラギリス〔fragilis〕(ATCC12,424)、K.ブルガリクス〔bulgaricus〕(ATCC16,045)、K.ウィッカーアミー〔wickeramii〕(ATCC24,178)、K.ワルチー〔waltii〕(ATCC56,500)、K.ドロソフィラルム〔drosophilarum〕(ATCC36,906)、K.サーモトレランス〔thermotolerans〕およびK.マーキシアヌス〔marxianus〕などのクリベロミセス属〔Kluyveromyces〕宿主;ヤロウイア属〔yarrowia〕(EP402,226);ピキア・パストリス〔Pichia pastoris〕(EP183,070);カンジダ属〔Candida〕;トリコデルマ・リーゼイ〔Trichoderma reesia〕(EP244,234);アカパンカビ〔Neurospora crassa〕;シュワニオミセス・オクシデンタリス〔Schwanniomyces occidentalis〕などのシュワニオミセス属〔Schwanniomyces〕;および例えば、アカパンカビ属〔Neurospora〕、アオカビ属〔Penicillium〕、トリポクラジウム属〔Tolypocladium〕ならびにA.ニデュランス〔A.nidulans〕およびクロコウジカビ〔A.niger〕などのアスペルギルス属〔Aspergillus〕宿主などの糸状菌などの、いくつかのその他の属、種および株が一般に入手可能であり、本明細書において有用である。
【0120】
本明細書において提供されるグリコシル化抗体または抗原断片の発現に適した宿主細胞は、多細胞生物に由来する。脊椎動物細胞における例として、植物および昆虫細胞が挙げられる。多数のバキュロウイルス株および変異体ならびにヨトウガ〔Spodoptera frugiperda〕(イモムシ)、ネッタイシマカ〔Aedes aegypti〕(蚊)、ヒトスジシマカ〔Aedes albopictus〕(蚊)、キイロショウジョウバエ〔Drosophila melanogaster〕(ショウジョウバエ〔fruiffly〕)およびカイコ〔Bombyx mori〕などの宿主に由来する対応する許容昆虫宿主細胞が同定されている。トランスフェクションのための種々のウイルス株、例えば、オートグラファ・カリフォルニカ〔Autographa californica〕NPVのL-1変異体およびカイコ〔Bombyx mori〕NPVのBm-5株が公的に入手可能であり、このようなウイルスは、本明細書において、本発明に従って、特に、ヨトウガ〔Spodoptera frugiperda〕細胞のトランスフェクションのためにウイルスとして使用され得る。ワタ、トウモロコシ、ジャガイモ、ダイズ、ペチュニア、トマトおよびタバコの植物細胞培養物も宿主として使用され得る。
【0121】
しかし、関心は、脊椎動物細胞において最大であり、培養(組織培養)での脊椎動物細胞の増殖は、日常的な手順となった。有用な哺乳動物宿主細胞株の例として、SV40によって形質転換されたサル腎臓CV1株(COS-7、ATCC CRL1651);ヒト胚性腎臓株(293または懸濁培養における成長のためにサブクローニングされた293細胞、Grahamら、J. Gen Virol.第36巻:59頁(1977));ベビーハムスター腎臓細胞(BHK、ATCC CCL10);チャイニーズハムスター卵巣細胞/-DHFR(CHO、Urlaubら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 第77巻:4216頁(1980年));マウスセルトリ細胞(TM4、Mather、Biol. Reprod.第23巻:243~251頁(1980年));サル腎臓細胞(CV1 ATCC CCL70);アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO-76、ATCC CRL-1587);ヒト子宮頸癌細胞(HELA、ATCC CCL 2);イヌ腎臓細胞(MDCK、ATCC CCL 34);バッファローラット肝臓細胞(BRL 3A、ATCC CRL1442);ヒト肺細胞(W138、ATCC CCL75);ヒト肝臓細胞(Hep G2、HB 8065);マウス乳房腫瘍(MMT 060562、ATCC CCL51);TRI細胞(Matherら、Annals N.Y. Acad. Sci.第383巻:44~68頁(1982年));MRC5細胞;FS4細胞;およびヒト肝細胞腫株(Hep G2)がある。いくつかの好ましい実施形態では、宿主細胞は、293F細胞である。
【0122】
宿主細胞は、抗PD-L1抗体生成のために上記の発現またはクローニングベクターを用いて形質転換され、プロモーターを誘導し、形質転換体を選択するか、または所望の配列をコードする遺伝子を増幅するために必要に応じて修飾された従来の栄養培地で培養される。
【0123】
本明細書において提供される抗体または抗原結合断片を生成するために使用される宿主細胞は、種々の培地で培養され得る。HamのF10(Sigma)、最小必須培地(MEM)、(Sigma)、RPMI-1640(Sigma)および「ダルベッコ改変イーグル培地」(DMEM)、Sigma)などの市販の培地は、宿主細胞を培養するのに適している。さらに、Hamら、Meth.Enz.第58巻:44頁(1979年)、Barnesら.、Anal.Biochem.第102巻:255頁(1980年)、米国特許第4,767,704号;同4,657,866号;同4,927,762号;同4,560,655号;または同5,122,469号;WO90/03430;WO87/00195;または再発行米国特許第30,985号に記載される培地のいずれも、宿主細胞のための培養培地として使用され得る。これらの培地のいずれも、必要に応じて、ホルモンおよび/またはその他の増殖因子(インスリン、トランスフェリンまたは上皮成長因子など)、塩(塩化ナトリウム、カルシウム、マグネシウムおよびリン酸など)、バッファー(HEPESなど)、ヌクレオチド(アデノシンおよびチミジンなど)、抗生物質(GENTAMYCIN(商標)薬など)、微量元素(マイクロモーラー範囲の最終濃度で通常存在する無機化合物として定義される)およびグルコースまたは同等のエネルギー供給源を用いて補給され得る。任意のその他の必要な栄養補助剤もまた、当業者に公知であろう適当な濃度で含まれ得る。温度、pHなどといった培養状態は、発現のために選択された宿主細胞とともにこれまでに使用されたものであり、当業者には明らかとなろう。
【0124】
組換え技術を使用する場合には、抗体は、細胞膜周辺腔において細胞内で生成され得る、または培地中に直接分泌され得る。抗体が細胞内で生成される場合には、第1のステップとして、微粒子状細片、宿主細胞または溶解した断片のいずれかが例えば、遠心分離または限外濾過によって除去される。Carterら、Bio/Technology第10巻:163~167頁(1992年)には、大腸菌(E.coli)の細胞膜周辺腔に分泌される抗体を単離するための手順が記載されている。手短には、細胞ペーストが、酢酸ナトリウム(pH3.5)、EDTAおよびフェニルメチルスルホニルフルオリド(PMSF)の存在下で約30分かけて解凍される。細胞細片は、遠心分離によって除去され得る。抗体が培地中に分泌される場合には、このような発現系から得られた上清は、一般に、市販のタンパク質濃縮フィルター、例えば、AmiconまたはMillipore Pellicon限外濾過ユニットを使用してまず濃縮される。タンパク質分解を阻害するために、PMSFなどのプロテアーゼ阻害剤が前記のステップのいずれにも含まれ得、外来性の混入物質の成長を防ぐために、抗生物質が含まれ得る。
【0125】
細胞から調製される抗体は、例えば、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、DEAE-セルロースイオン交換クロマトグラフィー、硫酸アンモニウム沈殿、塩析およびアフィニティークロマトグラフィーを使用して精製され得、アフィニティークロマトグラフィーが好ましい精製技術である。親和性リガンドとしてのプロテインAの適合性は、抗体中に存在する任意の免疫グロブリンFcドメインの種およびアイソタイプに応じて変わる。プロテインAは、ヒトγ1、γ2またはγ4重鎖をベースとする抗体を精製するために使用され得る(Lindmarkら、J.Immunol.Meth.第62巻:1~13頁(1983年))。プロテインGは、すべてのマウスアイソタイプに対して、およびヒトγ3に対して推奨される(Gussら、EMBO J.第5巻:1567 1575(1986年))。親和性リガンドが付着されるマトリックスは、最も多くはアガロースであるが、その他のマトリックスが利用可能である。コントロールドポアガラスまたはポリ(スチレンジビニル)ベンゼンなどの機械的に安定なマトリックスは、アガロースを用いて達成され得るものよりも迅速な流速およびより短い処理時間を可能にする。抗体がCH3ドメインを含む場合には、精製にはBakerbond ABX.TM.樹脂(J.T. Baker、Phillipsburg、N.J.)が有用である。イオン交換カラムでの分画、エタノール沈殿、逆相HPLC、シリカでのクロマトグラフィー、ヘパリンSEPHAROSE(商標)でのクロマトグラフィー 陰イオンまたは陽イオン交換樹脂(ポリアスパラギン酸カラムなど)でのクロマトグラフィー、等電点電気泳動、SDS-PAGEおよび硫酸アンモニウム沈殿などのタンパク質精製のためのその他の技術も、回収されるべき抗体に応じて利用可能である。
【0126】
任意の予備的精製ステップ(単数または複数)後に、対象の抗体および混入物質を含む混合物は、約2.5~4.5の間のpHの溶出バッファーを使用する、好ましくは、低塩濃度(例えば、約0~0.25Mの塩)で実施される低pH疎水性相互作用クロマトグラフィーに付され得る。
【0127】
―キット―
本開示は、抗PD-L1抗体またはその抗原結合断片を含むキットを提供する。いくつかの実施形態では、キットは、生体サンプルにおいてPD-L1の存在またはレベルを検出するために有用である。生体サンプルは、細胞または組織を含み得る。
【0128】
いくつかの実施形態では、キットは、検出可能な標識とコンジュゲートしている抗PD-L1抗体またはその抗原結合断片を含む。特定のその他の実施形態では、キットは、未標識抗PD-L1抗体または抗原結合断片を含み、未標識抗PD-L1抗体と結合可能である二次標識抗体をさらに含む。キットは、使用の説明のおよびキット中の成分の各々を分離するパッケージをさらに含み得る。
【0129】
特定の実施形態では、抗PD-L1抗体またはその抗原結合断片は、ELISAなどのサンドイッチアッセイにおいて、またはイムノグラフィー〔immunographic〕アッセイにおいて有用な基質またはデバイスと関連している。有用な基質またはデバイスは例えば、マイクロタイタープレートおよび試験ストリップであり得る。
【0130】
―医薬組成物および治療方法―
本開示は、抗PD-L1抗体またはその抗原結合断片および1種または複数の医薬上許容される担体を含む医薬組成物をさらに提供する。
【0131】
本明細書において開示される医薬組成物において使用するための医薬上許容される担体として、例えば、医薬上許容される液体、ゲルまたは固体担体、水性ビヒクル、非水性ビヒクル、抗菌剤、等張化剤、バッファー、抗酸化剤、麻酔剤、懸濁剤/分配剤〔dispending agents〕、封鎖剤またはキレート化剤、希釈剤、アジュバント、賦形剤または非毒性補助物質、当技術分野で公知のその他の成分またはそれらの種々の組合せを挙げることができる。
【0132】
適した成分として、例えば、抗酸化剤、増量剤、結合剤、崩壊剤、バッファー、保存料、滑沢剤、香味料、増粘剤、着色剤、乳化剤または糖およびシクロデキストリンなどの安定化剤を挙げることができる。適した抗酸化剤として、例えば、メチオニン、アスコルビン酸、EDTA、チオ硫酸ナトリウム、白金、カタラーゼ、クエン酸、システイン、チオグリセロール、チオグリコール酸、チオソルビトール、ブチル化ヒドロキシアニソール〔butylated hydroxanisol〕、ブチル化ヒドロキシトルエンおよび/または没食子酸プロピルを挙げることができる。本明細書において開示されるように、本明細書において提供されるような抗体または抗原結合断片およびコンジュゲートを含む組成物中に、メチオニンなどの1種または複数の抗酸化剤を含めることによって、抗体または抗原結合断片の酸化が減少される。酸化の低減は、結合親和性の喪失を防ぐまたは低減し、それによって、抗体安定性を改善し、有効期間を最大化する。したがって、特定の実施形態では、本明細書において開示されるような1種または複数の抗体または抗原結合断片およびメチオニンなどの1種または複数の抗酸化剤を含む組成物が提供される。抗体または抗原結合断片を、メチオニンなどの1種または複数の抗酸化剤と混合することによって、酸化を防ぐための、有効期間を延長するための、および/または本明細書において提供されるような抗体もしくは抗原結合断片の有効性を改善するための方法がさらに提供される。
【0133】
さらに例示するために、医薬上許容される担体として、例えば、塩化ナトリウム注射、リンゲル注射、等張性デキストロース注射、滅菌水注射またはデキストロースおよび乳酸リンゲル注射などの水性ビヒクル、植物起源の硬化油、綿実油、トウモロコシオイル、ゴマ油またはピーナッツオイルなどの非水性ビヒクル、静菌性または静真菌性濃度の抗菌剤、塩化ナトリウムまたはデキストロースなどの等張性剤、リン酸またはクエン酸バッファーなどのバッファー、重硫酸ナトリウムなどの抗酸化剤、塩酸プロカインなどの局所麻酔、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはポリビニルピロリドンなどの懸濁剤および分散剤、ポリソルベート80(TWEEN-80)などの乳化剤、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)またはEGTA(エチレングリコール四酢酸)などの封鎖剤またはキレート化剤、エチルアルコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、水酸化ナトリウム、塩酸、クエン酸または乳酸を挙げることができる。担体として利用される抗菌剤は、複数回用量容器中の医薬組成物に添加され得、これとして、フェノールまたはクレゾール、水銀剤、ベンジルアルコール、クロロブタノール、メチルおよびプロピルp-ヒドロキシ安息香酸エステル、チメロサール、塩化ベンズアルコニウムおよび塩化ベンゼトニウムが挙げられる。適した賦形剤として、例えば、水、生理食塩水、デキストロース、グリセロールまたはエタノールを挙げることができる。適した非毒性補助物質として、例えば、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝剤、安定化剤、溶解促進剤、または酢酸ナトリウム、モノラウリン酸ソルビタン、オレイン酸トリエタノールアミンもしくはシクロデキストリンなどの薬剤を挙げることができる。
【0134】
医薬組成物は、液体溶液、懸濁液、エマルジョン、丸剤、カプセル剤、錠剤、持続放出製剤または散剤であり得る。経口製剤はとして、医薬等級のマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなどといった標準担体を挙げることができる。
【0135】
実施形態では、医薬組成物は、注射用組成物に製剤化される。注射用医薬組成物は、例えば、液体溶液、懸濁液、エマルジョンまたは液体溶液、懸濁液またはエマルジョンを作製するのに適した固体形態などの任意の従来の形態で調製され得る。注射のための調製物として、注射用に準備された滅菌および/または非発熱性溶液、皮下錠剤を含む、使用直前に溶媒と組み合わされるべく準備された凍結乾燥散剤などの滅菌乾燥可溶性製剤、注射用に準備された滅菌懸濁液、使用直前にビヒクルと組み合わされるべく準備された滅菌乾燥不溶性製剤、ならびに滅菌および/または非発熱性エマルジョンを挙げることができる。
【0136】
特定の実施形態では、単位用量非経口調製物は、アンプル、バイアルまたはニードルを備えたシリンジ中にパッケージングされる。非経口投与用のすべての調製物は、当技術分野で公知であり、実施されるように滅菌および非発熱性でなくてはならない。
【0137】
特定の実施形態では、滅菌、凍結乾燥散剤は、適した溶媒中に本明細書において開示されるような抗体または抗原結合断片を溶解することによって調製される。溶媒は、散剤または散剤から調製された再構成された溶液の安定性またはその他の薬理学的成分を改善する賦形剤を含有し得る。使用され得る賦形剤として、それだけには限らないが、水、デキストロース、ソルビトール〔sorbital〕、フルクトース、コーンシロップ、キシリトール、グリセリン、グルコース、スクロースまたはその他の適した薬剤が挙げられる。溶媒は、クエン酸、リン酸ナトリウムまたはリン酸カリウムなどのバッファーまたは、一実施形態ではおよそ中性のpHの、当業者に公知のその他のこのようなバッファーを含有し得る。当業者に公知の溶液のその後の滅菌濾過と、それに続く標準状態下での凍結乾燥によって、望ましい製剤が提供される。一実施形態では、得られた溶液は、凍結乾燥のためにバイアル中に配分される。各バイアルは、抗PD-L1抗体またはその抗原結合断片またはその組成物の単一投与量または複数回投与量を含有し得る。バイアルに用量または用量のセットに必要なものを上回る少量(例えば、約10%)を過剰充填することは、正確なサンプル引き出しおよび正確な投薬を促進するために許容される。凍結乾燥散剤は、約4℃~室温などの適当な状態下で保存され得る。
【0138】
注射水を用いる凍結乾燥散剤の再構成は、非経口投与において使用するための製剤を提供する。一実施形態では、再構成のために滅菌および/または非発熱性水またはその他の液体の適した担体が、凍結乾燥散剤に付加される。正確な量は、与えられている選択された療法に応じて変わり、経験的に決定され得る。
【0139】
本明細書において提供されるような抗体または抗原結合断片の治療上有効な量を、それを必要とする対象に投与し、それによって、PD-L1と関係する関連する状態または障害を処置または予防することを含む治療方法もまた提供される。別の態様では、本明細書において提供されるような抗体または抗原結合断片の治療上有効な量を、それを必要とする対象に投与することを含む、免疫応答の上方制御から恩恵を受ける対象における状態を処置するための方法が提供される。
【0140】
本明細書において提供されるような抗体または抗原結合断片の治療上有効な量は、例えば、体重、年齢および過去の病歴、現在の薬物適用、対象の健康の状態および交差反応の可能性、アレルギー、感受性および有害な副作用、ならびに投与経路および腫瘍発達の程度などの当技術分野で公知の種々の因子に応じて変わる。投与量は、これらおよびその他の状況または必要条件によって示されるように、当業者(例えば、医師または獣医師)によって比例的に低減または増大され得る。
【0141】
特定の実施形態では、本明細書において提供されるような抗体または抗原結合断片は、約0.01mg/kg~約100mg/kg(例えば、約0.01mg/kg、約0.5mg/kg、約1mg/kg、約2mg/kg、約5mg/kg、約10mg/kg、約15mg/kg、約20mg/kg、約25mg/kg、約30mg/kg、約35mg/kg、約40mg/kg、約45mg/kg、約50mg/kg、約55mg/kg、約60mg/kg、約65mg/kg、約70mg/kg、約75mg/kg、約80mg/kg、約85mg/kg、約90mg/kg、約95mg/kgまたは約100mg/kg)の治療上有効な投与量で投与され得る。これらの実施形態のうち特定のものでは、抗体または抗原結合断片は、約50mg/kg以下の投与量で投与され、これらの実施形態のうち特定のものでは、投与量は、10mg/kg以下、5mg/kg以下、1mg/kg以下、0.5mg/kg以下または0.1mg/kg以下である。特定の実施形態では、投薬量は、治療過程にわたって変化し得る。例えば、特定の実施形態では、初期投薬量は、その後の投薬量よりも高い場合がある。特定の実施形態では、投薬量は、対象の反応に応じて治療過程にわたって変わり得る。
【0142】
投与計画は、最適な望ましい応答(例えば、治療的応答)を提供するように調整され得る。例えば、単回用量が投与され得、または数回の分割用量が経時的に投与され得る。
【0143】
本明細書において開示される抗体および抗原結合断片は、例えば、非経口(例えば、皮下、腹腔内、静脈内注入を含む静脈内、筋肉内または皮内注射)または非経口ではない(例えば、経口、鼻腔内、眼球内、舌下、直腸内または局所)経路などの当技術分野で公知の任意の経路によって投与され得る。
【0144】
PD-L1と関連する状態および障害は、免疫関係疾患または障害であり得る。特定の実施形態では、PD-L1関連状態および障害として、腫瘍および癌、例えば、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、腎細胞癌、結腸直腸癌、卵巣癌、乳癌、膵臓癌、胃癌腫、膀胱癌、食道癌、中皮腫、黒色腫、頭頸部癌、甲状腺癌、肉腫、前立腺癌、神経膠芽腫、子宮頸癌、胸腺癌腫、白血病、リンパ腫、骨髄腫、菌状息肉腫〔mycoses fungoids〕、メルケル細胞癌および古典的なホジキンリンパ腫(CHL)などのその他の血液悪性腫瘍、原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫、T細胞/組織球豊富型B細胞リンパ腫、EBV陽性および陰性PTLDならびにEBV関連びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、形質芽球性リンパ腫、節外性NK/T細胞リンパ腫、上咽頭癌腫およびHHV8関連原発性滲出リンパ腫、ホジキンリンパ腫、原発性CNSリンパ腫などの中枢神経系(CNS)の新生物、脊髄軸腫瘍、脳幹神経膠腫が挙げられる。特定の実施形態では、腫瘍および癌は、転移性、特に、PD-L1を発現する転移性腫瘍である。特定の実施形態では、PD-L1関連状態および障害として、全身性エリテマトーデス(SLE)、乾癬、全身性強皮症、自己免疫糖尿病などといった自己免疫疾患が挙げられる。特定の実施形態では、PD-L1関連状態および障害として、慢性ウイルス感染、例えば、B型肝炎、C型肝炎、ヘルペスウイルス、エプスタイン-バーウイルス、HIV、サイトメガロウイルス、1型単純ヘルペスウイルス、2型単純ヘルペスウイルス、ヒトパピローマウイルス、アデノウイルス、カポジウエスト〔Kaposi West〕肉腫関連ヘルペスウイルス伝染病、シンリングウイルス〔thin ring virus〕(トルクテノウイルス)、JCウイルスまたはBKウイルスのウイルス感染などの感染性疾患が挙げられる。
【0145】
―使用方法―
本開示は、抗PD-L1抗体またはその抗原結合断片を使用する方法をさらに提供する。
【0146】
いくつかの実施形態では、本開示は、抗PD-L1抗体またはその抗原結合断片の治療上有効な量を投与することを含む、個体においてPD-L1と関係する関連する状態または障害を処理する方法を提供する。特定の実施形態では、個体はPD-L1アンタゴニストに対して応答する可能性が高い障害または状態を有すると同定されている。
【0147】
対象の生体サンプル上のPD-L1の存在またはレベルは、生体サンプルが由来する個体が、PD-L1アンタゴニストに対して応答できる可能性が高いか否かを示し得る。個体から得られた試験生体サンプル中のPD-L1の存在またはレベルを調べるために種々の方法が使用され得る。例えば、試験生体サンプルは、発現されたPD-L1タンパク質と結合し、それを検出する抗PD-L1抗体またはその抗原結合断片に対して曝露され得る。あるいは、PD-L1はまた、qPCR、逆転写酵素PCR、マイクロアレイ、SAGE、FISHなどといった方法を使用して核酸発現レベルで検出され得る。いくつかの実施形態では、試験サンプルは、癌細胞または組織または腫瘍浸潤免疫細胞に由来する。特定の実施形態では、試験生体サンプル中のPD-L1の存在または上方制御されたレベルは、応答性の見込みを示す。用語「上方制御された」とは、本明細書において、本明細書において提供される抗体または抗原結合断片を使用して検出されるような試験サンプル中のPD-L1のタンパク質レベルの、同一抗体を使用して検出されるような参照サンプル中のPD-L1タンパク質レベルと比較した10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%以上またはそれを超える全体的な増大を指す。参照サンプルは、健常もしくは非疾患の個体、または試験サンプルが得られている同一個体から得られた健常もしくは非疾患のサンプルから得られた対照サンプルであり得る。例えば、参照サンプルは、試験サンプル(例えば、腫瘍)に隣接する、またはその近隣の非疾患サンプルであり得る。
【0148】
本明細書において開示される抗体または抗原結合断片は、単独で、または1種もしくは複数のさらなる治療手段または薬剤と組み合わせて投与され得る。例えば、本明細書において開示される抗体または抗原結合断片は、化学療法、放射線療法、癌の治療のための手術(例えば、腫瘍摘出)、1種または複数の制吐剤または化学療法に起因する合併症のその他の処置、または癌もしくはPD-L1によって媒介される任意の医学的障害の処置において使用するための任意のその他の治療薬と組み合わせて投与され得る。これらの実施形態のうち特定のものでは、1種または複数のさらなる治療薬と組み合わせて投与される本明細書において開示されるような抗体または抗原結合断片は、1種または複数のさらなる治療薬と同時に投与され得、これらの実施形態のうち特定のものでは、抗体または抗原結合断片およびさらなる治療薬(単数または複数)は、同一医薬組成物の一部として投与され得る。しかし、別の治療薬と「組み合わせて」投与される抗体または抗原結合断片は、薬剤と同時に、または薬剤と同一組成物中で投与されなくてもよい。別の薬剤に先立って、またはその後に投与される抗体または抗原結合断片は、抗体または抗原結合断片および第2の薬剤が、異なる経路によって投与される場合でさえ、その語句が本明細書において使用される場合、その薬剤と「組み合わせて」投与されると考えられる。可能であれば、本明細書において開示される抗体または抗原結合断片と組み合わせて投与されるさらなる治療薬は、さらなる治療薬の英文添付文書に列挙されるスケジュールに従って、またはPhysicians’ Desk Reference 2003年(Physicians’ Desk Reference、第57版; Medical Economics Company; ISBN: 1563634457; 第57版(2002年11月))もしくは当技術分野で周知のプロトコールに従って投与される。
【0149】
特定の実施形態では、治療薬は、癌に対する免疫応答を誘導またはブーストし得る。例えば、腫瘍ワクチンは、特定の腫瘍または癌に対する免疫応答を誘導するために使用され得る。サイトカイン療法はまた、免疫系に対する腫瘍抗原提示を増強するために使用され得る。サイトカイン療法の例として、制限するものではないが、インターフェロン-α、-βおよび-γなどのインターフェロン、マクロファージ-CSF、顆粒球マクロファージCSFおよび顆粒球CSFなどのコロニー刺激因子、IL-1、IL-1α、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11およびIL-12のようなインターロイキン、TNF-αおよびTNF-βなどの腫瘍壊死因子が挙げられる。免疫抑制標的を不活性化する薬剤、例えば、TGF-β阻害剤、IL-10阻害剤およびFasリガンド阻害剤もまた使用され得る。薬剤の別の群として、腫瘍または癌細胞に対する免疫応答性を活性化するもの、例えば、T細胞活性化を増強するもの(例えば、CTLA-4、ICOSおよびOX-40などのT細胞共刺激分子のアゴニスト)ならびに樹状細胞機能および抗原提示を増強するものが挙げられる。
【0150】
本開示は、PD-L1アンタゴニストを用いて処置された対象における、治療的応答または疾患進行をモニタリングする方法であって、抗PD-L1抗体またはその抗原結合断片を用いて個体から得た試験生体サンプル中のPD-L1の存在またはレベルを調べることを含む方法をさらに提供する。特定の実施形態では、方法は、試験生体サンプル中のPD-L1レベルを、同一個体からこれまでに得られた比較可能なサンプル中のPD-L1レベルと比較することをさらに含み、試験生体サンプル中のPD-L1レベルの低減または増大の減速もしくは増大の停止は、正の治療的応答または制御された疾患進行を示す。比較可能なサンプルは、試験サンプルと同一の種類のサンプルであり得るが、処置の前に、または処置の早期段階の間に同一個体から得られている。
【0151】
以下の実施例は、特許請求された本発明をより良好に例示するために提供され、本発明の範囲を制限すると解釈されてはならない。以下に記載されるすべての特定の組成物、材料および方法は、全体で、または一部で本発明の範囲内に入る。これらの特定の組成物、材料および方法は、本発明を制限するものではなく、単に、本発明の範囲内に入る特定の実施形態を例示するものである。当業者は、発明の能力を行使することなく、本発明の範囲から逸脱することなく、同等の組成物、材料および方法を開発し得る。本発明の範囲内にとどまりながら本明細書に記載される手順において多数の変法を行うことができるということは理解されよう。このような変法が本発明の範囲内に含まれることは本発明者らの意図である。
【実施例
【0152】
[実施例1]抗体ハイブリドーマ作製
1.1 免疫処置:雌のOMTラット(Open Monoclonal Technology、Inc.、米国、パロアルトから入手、8~10週齢)を、足蹠注射による、10μgのTiterMax中のヒトPD-L1 ECDタンパク質を用いて抗原刺激し、次いで、融合の準備が整うまで、3日毎に足蹠注射によるリン酸アルミニウムゲルアジュバント中のPD-L1 ECDタンパク質を用いてブーストした。抗PD-L1抗体血清力価を2週間毎にELISAまたはFACSによって調べた。
【0153】
1.2 細胞融合:融合の3日前に、腹膜内注射によって、10μgのPBS中のヒトPD-L1 ECDタンパク質を用いて動物に最後の追加免疫を施した。融合の当日に、リンパ節を採取し、調製して、単細胞懸濁液を得た。得られたリンパ球を、骨髄腫細胞(P3)と適切な割合で混合した。細胞混合物を洗浄し、ECF溶液に2.0×106個細胞/mLで再懸濁した。融合はBTX 2000電気機器を使用することによって実施した。
【0154】
1.3 ハイブリドーマ上清の一次および二次スクリーニング:37℃で7~14日間培養した後、Mirrorball解析を使用することによってハイブリドーマ上清の一部を調べた。手短には、ハイブリドーマ上清を、1XPBSで5倍希釈した。PD-L1を発現するCHO-K1細胞を、二次蛍光色素標識された抗体およびDraQ5と混合した。384ウェルプレートの各ウェル中に、20μLの細胞混合物および20μLの希釈したハイブリドーマ上清サンプルを添加し、Mirrorball(登録商標)高感受性マイクロプレート血球計算器での解析の準備が整うまで、暗所、室温で少なくとも2時間インキュベートした。PD-L1を発現するCHO-K1細胞を使用するFACSによって正のヒットを確認した。ハイブリドーマ上清サンプルを用いて細胞を染色し、続いて、FITCがコンジュゲートしているヤギ抗マウスIgG Fcを用いる二次抗体染色をした。対応する親細胞株を陰性対照として使用した。BD Biosciences FACSCanto IIおよびFlowJoバージョンソフトウェアを使用することによって染色された細胞を解析した。
【0155】
1.4 サブクローン:PD-L1を発現する細胞との正の結合が確認されたハイブリドーマ細胞株をサブクローニングのために使用した。手短には、各ハイブリドーマ細胞株について、細胞をカウントし、希釈して、クローニング培地中、200μLあたり5または1個の細胞を得た。200μL/ウェルを96ウェルプレート中にプレーティングする。以下の解析の準備が整うまでプレートを37℃、5% CO2でインキュベートした。
【0156】
1.5 アイソタイプ試験:ELISAプレートを、50μL/ウェルのヤギ抗ラットIgG1、IgG2a、IgG2b、IgG3、IgAおよびIgM抗体を、それぞれ、1μg/mLで用いてコーティングした。ブロッキング後、各ウェルに50μLのハイブリドーマ上清サンプルを添加し、室温で2時間インキュベートした。ヤギ抗ラットκ軽鎖HRPを、検出抗体として使用した。TMB基質を10分間使用して呈色反応を発色させ、2M HClによって停止した。次いで、プレートを、ELISAマイクロプレートリーダーで450nmで読み取った。
【0157】
1.6 細胞ベースの結合アッセイ:完全ヒト抗体の標的との結合活性を調べるために、ヒトPD-L1を発現するCHO-K1細胞または成熟樹状細胞(mDC)を、完全ヒト抗体を用いて染色し、続いて、FITCがコンジュゲートしているヤギ抗ヒトIgG Fcを用いる二次抗体染色をした。対応する親細胞株を陰性対照として使用した。BD Biosciences FACSCanto IIおよびFlowJoバージョンソフトウェアを使用することによって染色された細胞を解析した。
【0158】
全長ヒトPD-L1を用いてトランスフェクトされたCHO細胞を、ラットハイブリドーマから得たヒトPD-L1に対する抗体を用いて染色し、FITCがコンジュゲートしているヤギ抗ラットIgG Fcを用いる二次抗体染色を続け、FACSによって解析した。図1に示されるように、抗体1.4.1、1.14.4、1.20.15および1.46.11は、CHO細胞上に発現されたPD-L1と、約1nMのEC50値で特異的に結合した。
【0159】
[実施例2]Fc部分の変更および精製
次いで、293F細胞培養上清中の抗体を、プロテインAアフィニティークロマトグラフィーを使用することによって精製した。
【0160】
[実施例3]完全ヒト抗体特性決定
3.1 FACSによる競合アッセイ:完全ヒト抗体が、PD-L1のPD-1との結合を遮断できるか否かを調べるために、ヒトPD-L1を発現するCHO-K1細胞を、種々の濃度の完全ヒト抗体とともに4℃で1時間インキュベートした。結合していない抗体を洗浄除去し、次いで、細胞に、マウスFcタグが付けられたヒトPD-1を添加した。FITCがコンジュゲートしているヤギ抗マウスIgGを使用することによって、ヒトPD-1のPD-L1を発現する細胞との結合を検出し、続いて、BD Biosciences FACSCanto IIおよびFlowJoバージョンソフトウェアを使用する解析をした。
【0161】
ヒトPD-L1を発現するCHO細胞を、種々の濃度の完全ヒト抗体(1.4.1、1.14.4、1.20.15および1.46.11)とともにインキュベートした。次いで、細胞に、マウスFcタグが付けられたヒトPD-1を添加した。FITCがコンジュゲートしているヤギ抗マウスIgGを使用することによって、ヒトPD-1のPD-L1を発現する細胞との結合を検出し、続いて、FACS解析をした。図2に示されるように、すべての試験された完全ヒトPD-L1抗体が、トランスフェクトされたCHO細胞上に発現されたPD-L1とのPD-1結合を遮断し、1.14.4、1.20.15および1.46.11は、約10nMのIC50値を示した。
【0162】
3.2 表面プラズモン共鳴(SPR)による親和性試験:ProteOn XPR36(Bio-Rad)を使用するSPRアッセイによって、PD-L1に対する親和性および結合動態学について抗体を特性決定した。プロテインAタンパク質(Sigma)を、アミンカップリングによってGLMセンサーチップ(Bio-Rad)に固定化した。精製された抗体をセンサーチップ上に流し、プロテインAによって捕獲させた。チップを90°回転し、ベースラインが安定となるまでランニングバッファー(1XPBS/0.01% Tween20、Bio-Rad)で洗浄した。240秒の結合相と、それに続く600秒の解離の間、流速100μL/分で、抗体フローセルに対して5種の濃度のヒトPD-L1およびランニングバッファーを流した。各実施後に、pH1.7のH3PO4を用いてチップを再生した。結合および解離曲線を、ProteOnソフトウェアを使用して1:1 Langmiur結合モデルにフィッティングした。
【0163】
図5に示されるように、組換えヒトPD-L1に対する完全ヒトPD-L1抗体の親和性は、表面プラズモン共鳴によって測定されるものとして、4.78E-10~2.26E-10mol/Lであった。
【0164】
3.3 FACSによる親和性試験:ヒトPD-L1を発現するCHO-K1細胞を使用するFACS解析によって、細胞表面PD-L1に対する抗体結合親和性を実施した。試験された抗体は、洗浄バッファー(1XPBS/1%BSA)で段階希釈された2種のうちの1種であり、細胞とともに4℃で1時間インキュベートした。二次抗体ヤギ抗ヒトIgG Fc FITC(Jackson Immunoresearch Lab)を添加し、暗所、4℃で1時間インキュベートした。次いで、細胞を1回洗浄し、1XPBS/1%BSAに再懸濁し、フローサイトメトリー(BD)によって解析した。定量的ビーズQuantumTM MESFキット(Bangs Laboratories、Inc.)に基づいて、蛍光強度が結合している分子/細胞に変換される。Graphpad Prism5を使用してKDを算出した。
【0165】
3.4 in vitro機能アッセイ:サイトカイン生成および細胞増殖を含むT細胞応答性の調節における完全ヒト抗体の能力を評価するために、以下の3種のアッセイを実施した。
【0166】
3.4.1 同種異系MLR:ヒト単球濃縮キットを製造業者の使用説明書に従って使用して、健常ドナーから単球を単離した。細胞を5~7日間培養して、樹状細胞(DC)に分化させた。使用の18~24時間前に、細胞培養物に1μg/mlのLPSを添加して、DCの成熟を誘導した。
【0167】
ヒトCD4+T細胞濃縮キットを製造業者のプロトコールに従って使用して、CD4+T細胞を単離し、次いで、完全ヒト抗体または対照Abの存在下または不在下で成熟または未熟同種異系DCを用いて刺激した。培養上清中のIL-2およびIFNγのレベルを、ELISAによって、それぞれ3日目および5日目に測定した。[3H]チミジン組込みによってCD4+T細胞の増殖を評価した。
【0168】
図9に示されるように、すべての試験された完全ヒトPD-L1抗体(1.4.1、1.14.4、1.20.15および1.46.11)が、IL-2分泌を用量的に増大した。図8に示されるように、すべての試験された完全ヒトPD-L1抗体(1.4.1、1.14.4、1.20.15および1.46.11)は、IFNγ分泌を用量的に増大した。図10に示されるように、すべての試験された完全ヒトPD-L1抗体(1.4.1、1.14.4、1.20.15および1.46.11)は、濃度依存性T細胞増殖を増強した。
【0169】
3.4.2 自己Ag特異的免疫応答:同一ドナーからPBMCおよび単球を単離した。CMV pp65ペプチドおよび低用量のIL2(20U/ml)の存在下でPBMCを培養した。その間に、単球を、先に記載されたように培養することによってDCを作製した。5日後、DCにpp65ペプチドをパルスし、次いで、完全ヒト抗体または対照Abの存在下または不在下でCD4+T細胞に添加した。それぞれ、3日目および5日目にELISAによって培養上清中のIL-2およびIFNγのレベルを測定した。[3H]チミジン組込みによってCMVpp65特異的CD4+T細胞の増殖を評価した。
【0170】
図6に示されるように、特異的T細胞応答におけるIFNγ生成は、完全ヒトPD-L1抗体(1.4.1、1.14.4、1.20.15および1.46.11)によって増強された。図7は、完全ヒトPD-L1抗体が、CMV pp65ペプチドが付加された自己DCで刺激された、濃度依存性CMV+-CD4+T細胞増殖を増強したことを示す。
【0171】
3.4.3 Treg抑制アッセイ:制御性T細胞(Treg)は、重要な免疫モジュレーターであり、自己寛容の維持において重要な役割を果たす。CD4+CD25+ Tregは、複数の癌を有する患者においてTreg数の増大が見られたので腫瘍と関連しており、より悪い予後と関連している。本発明者らは、Tregの阻害機能に対する抗ヒトPD-L1完全ヒト抗体の効果を直接評価するために、完全ヒト抗体または対照Abの存在下または不在下でTregの機能を比較した。手短には、MACSによって、CD4+CD25+ TregおよびCD4+CD25T細胞を分離した。CD4+CD25+ TregおよびCD4+CD25T細胞(Treg:Teff 1:1比)を、種々の濃度の完全ヒト抗体または対照Abの存在下または不在下で同種異系のmDCと同時培養した。抗体なしまたはアイソタイプ抗体のいずれかを陰性対照として使用した。サイトカイン生成およびT細胞増殖を、これまでに記載したように測定した。
【0172】
図11に示されるように、PD-L1抗体1.20.15は、Tregの抑制機能を抑制し、応答するT細胞増殖およびIFNγ分泌を回復させた。
【0173】
3.5 抗体依存性細胞媒介性細胞傷害性(ADCC)および補体依存性細胞傷害性(CDC)アッセイ:ヒトPD-L1は、種々の細胞種で、健常および腫瘍細胞の両方で発現されるので、健常PD-L1+細胞に対する望まれない毒性を最小化するために、選択された抗PD-L1完全ヒト抗体を、ADCCおよびCDC機能を有さないと確認した。
【0174】
3.5.1 ADCC:標的細胞(mDC)および種々の濃度の完全ヒト抗体を、96ウェルプレート中で30分間プレインキュベートし、次いで、IL-2によって活性化されたPBMC(エフェクター)を50:1のエフェクター/標的比で添加した。プレートを5% CO2インキュベーター中で37℃で6時間インキュベートした。細胞傷害性検出キット(Roche)によって標的細胞溶解を調べた。Molecular Devices SpectraMax M5eプレートリーダーによって光学濃度を測定した。対照hAb(IgG1)および対照hAb(IgG4)を、それぞれ、陽性および陰性対照として使用した。
【0175】
ナチュラルキラー(NK)細胞の供給源として、IL-2によって活性化されたPBMCを、および標的細胞として高レベルの細胞表面PD-L1を発現するmDCを使用したとき、完全ヒトPD-L1抗体(1.4.1、1.14.4、1.20.15および1.46.11)は、ADCCを媒介しなかった(図12)。
【0176】
3.5.2 CDC:96ウェルプレート中で、標的細胞(mDC)、希釈されたヒト血清補体(Quidel-A112)および種々の濃度の完全ヒト抗体を混合した。プレートを、5% CO2インキュベーター中で37℃で4時間インキュベートした。CellTiter glo(Promega-G7573)によって標的細胞溶解を調べた。リツキサン(Roche)およびヒトBリンパ腫細胞株Raji(CD20陽性)を陽性対照として使用した。図13に示されるように、完全ヒトPD-L1抗体は、CDCを媒介しなかった。
【0177】
3.6 FACSによる結合試験:完全ヒト抗体が、ベンチマーク抗体と同一のエピトープビン中にあるか否かを調べるために、ヒトPD-L1を発現するCHO-K1細胞を、種々の濃度の完全ヒト抗体とともに4℃で1時間インキュベートした。結合していない抗体を洗浄除去し、次いで、細胞にビオチンタグが付けられた対照Abを添加した。PEがコンジュゲートしているストレプトアビジンを使用することによって、ビオチンタグが付けられた対照Abの、PD-L1発現細胞との結合を検出し、続いて、BD Biosciences FACSCanto IIおよびFlowJoバージョンソフトウェアを使用する解析をした。
【0178】
結合試験の結果は、完全ヒトPD-L1抗体(すなわち、1.4.1、1.14.4、1.20.15および1.46.11)によって結合されるヒトPD-L1上のエピトープは、既存のPD-L1抗体(すなわち、ベンチマーク抗体)とは異なることを示した。
【0179】
3.7 種間結合アッセイ:AbのカニクイザルおよびマウスPD-L1に対する交差反応性を、ELISAによって測定した。ヒト、サルおよびマウスPD-L1を、それぞれELISAプレート上にコーティングした。ブロッキング後、プレート中に完全ヒト抗体を添加し、室温で少なくとも2時間インキュベートした。ヤギ抗ヒトIgG Fc-HRPを使用することによって、抗体の、コーティングされた抗原との結合を検出した。TMB基質を使用して呈色反応を発色させ、2M HClによって停止した。ELISAプレートを、Molecular Device M5eマイクロプレートリーダーを使用して450nmで解析した。
【0180】
図4に示されるように、ELISA実験の結果は、試験された完全ヒトPD-L1は、カニクイザルPD-L1と用量依存的に結合したことを実証した。しかし、試験された抗体(1.4.1、1.14.4、1.20.15および1.46.11)の中にマウスPD-L1と結合するものはなかった。
【0181】
3.8 FACSによるファミリー間結合アッセイ:完全ヒト抗体のファミリー間結合活性を調べるために、PD-L2を発現する細胞株を完全ヒト抗体を用いて染色し、続いて、FITCがコンジュゲートしているヤギ抗ヒトIgG Fcを用いる二次抗体染色をした。PD-L1を発現する細胞を、陽性対照として使用した。対応する親細胞株を陰性対照として使用した。BD Biosciences FACSCanto IIおよびFlowJoバージョンソフトウェアを使用することによって染色された細胞を解析した。
【0182】
PD-L1またはPD-L2を用いてトランスフェクトされたCHO細胞を、完全ヒトPD-L1抗体を用いて染色し、FACSによって解析した。図3に示されるように、完全ヒトPD-L1抗体は、PD-L1と特異的に結合したが、PD-1リガンドファミリーのPD-L2とは結合しなかった。
【0183】
[実施例4]完全ヒト抗体のエピトープマッピング
本明細書において提供される本発明の抗体1.14.4のエピトープを調べるために、1.14.4を使用してhPD-1でアラニンスキャニング実験および抗体結合に対する効果評価を実施した。
【0184】
hPD-L1でのアラニンスキャニング実験を実施し、抗体結合に対するその効果を評価した。hPD-L1上のアラニン残基を、グリシンコドンに変異させ、すべてのその他の残基をアラニンコドンに変異させた。hPD-L1細胞外ドメイン(ECD)の各残基について、2つの連続PCRステップを使用して点アミノ酸置換を行った。ヒトPD-L1のECDおよびC末端HisタグをコードするpcDNA3.3-hPD-L1_ECD.Hisプラスミドを鋳型として使用し、変異原性プライマーのセットを、QuikChange lightning多重部位特異的変異誘発キット(Agilent technologies、カリフォルニア州、パロアルト)を使用する第1のステップPCRに使用した。Dpn Iエンドヌクレアーゼを使用して、変異体鎖合成反応後に親鋳型を消化した。第2ステップPCRでは、CMVプロモーター、PD-L1の細胞外ドメイン(ECD)、Hisタグおよび単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(TK)ポリアデニル化から構成される直線DNA発現カセットを増幅し、HEK293F細胞(Life Technologies、Gaithersburg、MD)において一時的に発現させた。
【0185】
ELISA結合アッセイのプレート中にモノクローナル抗体1.14.4をコーティングした。定量化されたPD-L1変異体またはヒト/マウスPD-L1_ECD.Hisタンパク質(Sino Biological、China)を含有する上清と相互作用させた後、HRPがコンジュゲートしている抗His抗体(1:5000;Rockland Immunochemicals、ペンシルバニア州、ポッツタウン)を検出抗体として添加した。対照変異体の平均に従って吸光度を正規化した。結合変化倍数に対するさらなるカットオフ(<0.55)を設定した後、最終決定エピトープ残基を同定した。
【0186】
抗体1.14.4の、ヒトおよびマウスPD-L1の両方に対する結合活性を実施した(図14)。本発明らのリード1.14.4は、ヒトPD-L1(図14A)と結合するとわかったが、マウスPD-L1とは結合しなかった(図14B)。
【0187】
抗体結合に対する131PD-L1点変異の効果を表2に示す。hPD-L1結晶構造(PDBコード3BIKおよび4ZQK)上のすべてのこれらの残基の位置を調べることによって、いくつかのアミノ酸(例えば、Gly159、Tyr160、Pro161)は、任意の抗体と直接接触する可能性が低いことが示された。観察された結合の低減は、おそらくは、アラニン置換後のhPD-L1構造の不安定性または崩壊にさえ起因していた。結合変化倍数にさらなるカットオフ(<0.55)を設定した後に、最終決定エピトープ残基を表3に列挙した。それらは、1.14.4に対する6つの位置である。
【0188】
したがって、表3中のすべてのデータを、hPD-L1の結晶構造上にマッピングして、良好な可視化および比較を行った(図15)。
【0189】
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【0190】
【表3】
【0191】
図15に示されるように、hPD-L1結合に預かるホットスポット残基は、C鎖、CC’ループおよびF鎖中にすべて集まっていた(図15)。hPD-1/hPD-L1複合体結晶構造(PDBコード4ZQK、4Å)上の残基の位置を調べることによって、これらの残基はA、C、FおよびG鎖上に主に位置していることが明らかになった。1.14.4のエピトープは、hPD-1およびhPD-L1相互作用部位と直接重複しているC鎖上の残基によって主に寄与され、これは、hPD-L1結合およびhPD-1遮断の観点で機序を示す。
【0192】
[実施例5]腫瘍成長に対する完全ヒト抗体hPD-L1のin vivo阻害
腫瘍成長に対するhPD-L1抗体の阻害を評価するために、5×105個細胞/0.1mLのMC38-B7H1腫瘍細胞を、42匹の雄B-hPD-1ヒト化マウスの前側右肋骨の皮下に播種した。腫瘍の大きさが、約100mm3に達した時点で、マウスを群にし(5群、群あたり7匹)、以下のとおりに薬剤を投与した:群1:ビヒクル、群2:対照抗体BMK6(WO2011066389A1における詳細な記載を参照のこと)、群3:1.14.4、3mg/kg、群4:1.14.4、10mg/kgおよび群5:1.14.4、30mg/kg。すべての群に、2日に1回、6回の連続投与を用い、腹膜内注射によって投与した。動物を、投与の終了後さらに2週間連続的に観察した。腫瘍量および体重を、週に2回測定し、マウス体重の変化および投与期間の間の関係ならびに腫瘍量の変化および投与期間の間の関係を記録した。実験の最後に、治療群対ビヒクル群における腫瘍量の割合(T/C)および腫瘍成長阻害(TGI)を算出し、統計的に解析した。Graphpad Prism 5を用いてT検定を実施し、腫瘍量を統計的に解析した。P<0.05は、有意差を有すると考えた。
【0193】
腫瘍容量を、ノギスを使用して、長い直径および短い直径について週に2回測定し、容量を算出するための式は、腫瘍量=0.5×長い直径×短い直径2である。腫瘍成長速度を、測定結果:T/C(%)=治療群の腫瘍量/陰性対照群の腫瘍量×100%に基づいて算出した。腫瘍成長阻害TGI(%)=[1-(Ti-T0)/(Vi-V0)]×100(式中、Tiは、i日目の治療群の平均腫瘍量であり、T0は、0日目の治療群の平均腫瘍量であり、Viは、i日目の対照群の平均腫瘍量であり、V0は、0日目の対照群の平均腫瘍量である)。
【0194】
【表4】
【0195】
実験の間、各群中の動物の体重は有意な低減を示さず(表4および図16)、試験薬剤が良好な耐容性を有することを示す。投与の19日後(すなわち、腫瘍細胞播種の25日後)、ビヒクル群における腫瘍量は、2359mm3に達し、ビヒクル群と比較し、高、中および低用量の抗体1.14.4の群における腫瘍量は、有意な低減を示した(平均腫瘍量は、それぞれ949mm3、1416mm3および1115mm3であった)。3種の用量すべての抗体が、それぞれTGI62.8%、42.0%および55.4%までを示す有意な抗腫瘍効果を示した(表4および図17)。対照抗体BMK6はまた、有意な抗腫瘍効果を示した(平均腫瘍量は、1241mm3であり、TGIは49.7%である)。したがって、結果は、抗体1.14.4は、有意な抗腫瘍効果を示し、高、中および低用量のすべての群について阻害は、40%を上回っていることを示した。
【0196】
本開示は、特定の実施形態(その一部は好ましい実施形態である)に関して特に示され、記載されているが、本明細書において開示されるような本開示の趣旨および範囲から逸脱することなく、形態および詳細の種々の変法が行われ得るということは当業者によって理解されなくてはならない。
図1
図2
図3
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図5
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【配列表】
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