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特許7066629自己構造化界面活性剤系を含有する安定な液体洗剤組成物
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  • 特許-自己構造化界面活性剤系を含有する安定な液体洗剤組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-02
(45)【発行日】2022-05-13
(54)【発明の名称】自己構造化界面活性剤系を含有する安定な液体洗剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C11D 1/94 20060101AFI20220506BHJP
   C11D 1/22 20060101ALI20220506BHJP
   C11D 1/72 20060101ALI20220506BHJP
   C11D 1/90 20060101ALI20220506BHJP
   C11D 3/37 20060101ALI20220506BHJP
   C11D 17/08 20060101ALI20220506BHJP
【FI】
C11D1/94 ZNM
C11D1/22
C11D1/72
C11D1/90
C11D3/37
C11D17/08
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2018552071
(86)(22)【出願日】2016-04-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-04-18
(86)【国際出願番号】 CN2016078515
(87)【国際公開番号】W WO2017173591
(87)【国際公開日】2017-10-12
【審査請求日】2018-10-03
【審判番号】
【審判請求日】2020-05-01
(73)【特許権者】
【識別番号】590005058
【氏名又は名称】ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー
【氏名又は名称原語表記】THE PROCTER & GAMBLE COMPANY
【住所又は居所原語表記】One Procter & Gamble Plaza, Cincinnati, OH 45202,United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100209495
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 さおり
(72)【発明者】
【氏名】ファン、リァンジン
(72)【発明者】
【氏名】タン、ミン
(72)【発明者】
【氏名】ウェイ、カール・シンキン
(72)【発明者】
【氏名】キン、ペン
(72)【発明者】
【氏名】ヘ、ティン
【合議体】
【審判長】蔵野 雅昭
【審判官】門前 浩一
【審判官】瀬下 浩一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/087286(WO,A1)
【文献】特開2007-161805(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11D 1/00-19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体洗剤組成物であって、
a)前記液体洗剤組成物の6重量%~18重量%の、C~C22直鎖アルキルベンゼンスルホネート(LAS)、その酸形態(HLAS)、及びこれらの混合物からなる群から選択されるアニオン性界面活性剤と;
b)前記液体洗剤組成物の0.5重量%~3重量%の、式(I):
【化1】
(式中、
は、5~20個の炭素原子を含有する直鎖又は分枝鎖のアルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、又はアルカリール基であり;
Zは、アミノカルボニル、カルボニルアミノ、カルボニルオキシ、オキシカルボニルオキシ、アミノカルボニルアミノ、並びにこれらの組み合わせ及び誘導体からなる群から選択される二価部分であり;
は、1~12個の炭素原子を含有するアルキレン基であり;
は、1~10個の炭素原子を含有するアルキル又はヒドロキシアルキル基であり;
は、1~5個の炭素原子を含有するアルキレン又はヒドロキシルアルキレン基であり;
Xは、カルボキシレート、スルホネート、ホスホネート、これらの酸形態、及びこれらの組み合わせからなる群から選択され;
Yは、N又はN-Rのいずれかであり;
は、1~10個の炭素原子を含有するアルキル又はヒドロキシアルキル基である)を有する双性イオン性及び/又は両性の界面活性剤と;
c)前記液体洗剤組成物の0重量%~0.5重量%のポリエチレングリコール(PEG)と、を含み、
外部構造化剤及びアルコキシル化アルキルサルフェート(AES)を含ず、
前記液体洗剤組成物は、0.5s -1 の第1の剪断速度で測定したとき、3,500~50,000mPa・sの範囲の第1の粘度と、20s -1 の第2の剪断速度で測定したとき、2,500mPa・s以下の第2の粘度とを有し、
前記液体洗剤組成物は、5℃で48時間定置した後に相分離を有さない、液体洗剤組成物。
【請求項2】
Yは、N-Rであり;
は、8~15個の炭素原子を含有する直鎖アルキル基であり;
Zは、カルボニルアミノ基であり;
は、2~5個の炭素原子を含有するアルキレン基であり;
及びRは、独立して、1~5個の炭素原子を含有するアルキル基であり;
は、1~3個の炭素原子を含有するアルキレン又はヒドロキシルアルキレン基であり;
Xは、カルボキシレート又はスルホネート基である、請求項1に記載の液体洗剤組成物。
【請求項3】
Yは、Nであり;
は、8~15個の炭素原子を含有する直鎖アルキル基であり;
Zは、カルボニルアミノ基であり;
は、2~5個の炭素原子を含有するアルキレン基であり;
は、2~5個の炭素原子を含有するヒドロキシアルキル基であり;
は、1~3個の炭素原子を含有するアルキレン基であり;
Xは、カルボキシレート基である、請求項1に記載の液体洗剤組成物。
【請求項4】
前記アニオン性界面活性剤の前記双性イオン性及び/又は両性の界面活性剤に対する重量比が、100:1~1:1の範囲内である、請求項1~3のいずれかに記載の液体洗剤組成物。
【請求項5】
前記液体洗剤組成物の0.1重量%~10重量%の、式(II):
R-(OA)OH (II)、
(式中、Rは、8~22個の炭素原子を含有する分枝鎖アルキル基、5~19個の炭素原子を含有する直鎖又は分枝鎖アルキル基を有するアルキルフェニル基、及びこれらの混合物からなる群から選択され;OAは、アルコキシ部分であり;nは、1~5である)を有する分枝鎖非イオン性界面活性剤を更に含む、請求項1~4のいずれかに記載の液体洗剤組成物。
【請求項6】
前記液体洗剤組成物の0.1重量%~10重量%の、4~12の平均エトキシル化度を有する直鎖C~C22アルキルエトキシル化アルコールを更に含む、請求項1~5のいずれかに記載の液体洗剤組成物。
【請求項7】
前記C~C22直鎖アルキルベンゼンスルホネート(LAS)が、C10~C14直鎖アルキルベンゼンスルホネート(LAS)であり、前記双性イオン性及び/又は両性の界面活性剤が、コカミドプロピルベタイン又はラウラミドプロピルベタインである、請求項1~6のいずれかに記載の液体洗剤組成物。
【請求項8】
水溶性金属塩を更に含み、前記水溶性金属塩が、前記液体洗剤組成物の0.1重量%~10重量%の濃度で存在する、請求項1~7のいずれかに記載の液体洗剤組成物。
【請求項9】
前記液体洗剤組成物は、0.5s-1の第1の剪断速度で測定したとき、4,000~30,000mPa・sの範囲の第1の粘度と、20s-1の第2の剪断速度で測定したとき、100~1,500mPa・sの第2の粘度とを有する、請求項1~8のいずれかに記載の液体洗剤組成物。
【請求項10】
前記第1の粘度の前記第2の粘度に対する比が、3以上である、請求項1~9のいずれかに記載の液体洗剤組成物。
【請求項11】
前記液体洗剤組成物の0.01重量%~20重量%の、1つ以上の有益材料を更に含む、請求項1~10のいずれかに記載の液体洗剤組成物。
【請求項12】
記液体洗剤組成物は、20℃で48時間定置した後に相分離を有さない、請求項1~11のいずれかに記載の液体洗剤組成物。
【請求項13】
処理を必要とする表面を処理する方法であって、前記表面を請求項1~12のいずれかに記載の液体洗剤組成物と接触させる工程を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自己構造化界面活性剤系を含有する安定な液体洗剤組成物に関する。任意の外部構造化剤を最小限の量しか又は更には全く使用せずに、このような液体洗剤組成物は、高剪断下で安定性を維持しながら良好な剪断減粘特性を示す。
【背景技術】
【0002】
構造化された強力液体(heavy duty liquid、HDL)洗剤組成物は、ますます注目を集めている。第1に、構造化されたHDL洗剤組成物は、典型的には、室温及び周囲気圧下において、構造化されていない組成物よりも高い粘度を有する。このような高粘度が、一部の消費者には、より多くの洗浄性界面活性剤を含有している、より濃縮されている、又はより優れた品質であると知覚される。したがって、消費者をより大いに喜ばせるために構造化HDL組成物を提供することが望ましい。更に、このような構造化されたHDLは、香料、シリコーン流体、雲母、又は二酸化チタン粒子などの水不混和性材料又は水不溶性粒子を懸濁させることができる。このような水不混和性材料又は水不溶性粒子は、HDL洗剤組成物に種々の機能、感覚、又は審美的な利点を付与することができる。しかし、このような材料及び粒子は、輸送中又は長期保存中に組成物が熱、圧力、又は撹拌に曝されたとき、HDL洗剤組成物から相分離又は沈殿しやすい。相分離しているか又は視認できる沈殿物を含有するHDL洗剤組成物は、汚い、期限切れ、又は品質不良であると消費者に知覚される。したがって、水不混和性材料又は水不溶性粒子を懸濁させることができるが、輸送中又は長期保存中に相分離又は沈殿することのない構造化されたHDL洗剤組成物を提供することが望ましい。
【0003】
構造化相の形成を支援し、水不混和性又は水不溶性の成分を懸濁させるために、HDL洗剤組成物において外部構造化剤を使用することが報告されている。1つのこのような外部構造化剤は、硬化ヒマシ油(hydrogenated castor oil、HCO)であり、これは、糸状の結晶構造を有する。しかし、HDL洗剤組成物にHCOを組み込めるようにするには別個の予混合ユニットが必要になることが多く、その結果、追加の設備投資及び製造コストが生じる。更に、製造プロセス中に高剪断条件下で配管を介してHDL洗剤組成物を汲み出す必要があるので、このような液体洗剤組成物は、高剪断時に安定な(すなわち、相分離しない)状態を保つことが望ましい。しかし、HCOを含有するHDL組成物は高剪断に対して非常に感受性が高い場合が多い、例えば、製造配管内部で高剪断に曝されたときに相分離する場合があり、これによって、製造プロセスの設計に課題が生じる。HCOなどの外部構造化剤を含有するHDL製品の別の問題点は、これらHDL製品が、通常、HCOの相分離に起因して不均質な外観を有することであり、これは、消費者による製品の視覚認知に悪影響を与え得、また、製品が比較的低品質であるというシグナルを消費者に与え得る。
【0004】
これにより、高剪断条件下で相分離し得る外部構造化剤を最小限しか又は全く含まない安定な構造化されたHDL洗剤組成物が必要とされている。好ましくは、このようなHDL洗剤組成物は、外部構造化剤を組み込むための別個の予混合ユニットを必要とせず、単純なバッチ混合プロセスによって容易に作製することができる。
【0005】
国際公開第2014/113559号には、自己構造化相を形成するための内部構造化剤として機能し得る界面活性剤系をその5重量%~20重量%含む液体洗剤組成物が開示されている。この参照文献によって開示されている液体洗剤組成物は、20℃における注入粘度が2500mPa・s~6000mPa・sであり、かつ中剪断粘度の高剪断粘度に対する比が2~1であることを特徴とする。国際公開第2014/113559号によれば、このような液体洗剤組成物は、異なる剪断速度において比較的一貫した粘度を有すること、例えば、剪断速度が0.01s-1から10s-1まで増大したときに、粘度減少が半分を超えてはならないことが重要である。言い換えれば、国際公開第2014/113559号によって開示されている液体洗剤組成物は、剪断減粘特性をほとんど又は全く有しない、すなわち、高剪断速度に曝されたときに視認できるほど「減粘」し得ない(すなわち、粘度が著しく減少することはない)。
【0006】
しかし、構造化されたHDL洗剤組成物は、良好な剪断減粘特性を有することも望ましい。一方では、HDL洗剤組成物は、上記の水不混和性材料又は水不溶性粒子を有効に懸濁させるために、低剪断速度で、例えば、静止状態に又は緩徐注入条件下に置かれたときに十分に高い粘度を有しなければならない。他方では、著しい高剪断速度に曝されたとき、例えば、高圧下で製造配管を通して汲み出されたとき、HDL洗剤組成物の粘度が劇的に減少することが有益である。このようにして、現在ははるかに低粘度であるのでより大きく「減粘」する液体洗剤組成物は、最小限のエネルギー消費で、製造中に配管を通して容易に流動することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際公開第2014/113559号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、より低剪断速度では高粘度であり、より高剪断速度では著しく粘度が減少することを特徴とする、良好な剪断減粘特性を有する改善された液体洗剤組成物を提供することも必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、外部構造化剤をなにも使用せずに、自己構造化界面活性剤系を有する液体洗剤組成物を提供する。本発明の自己構造化界面活性剤系は、液体洗剤組成物中の水不混和性材料又は水不溶性粒子を懸濁させるためにラメラ構造又はひも状ミセルを形成することができる。更に、このような自己構造化界面活性剤系を含有する液体洗剤組成物は、高剪断下で相安定性であり、また、良好な剪断減粘特性を示す。
【0010】
本発明は、一態様では、液体洗剤組成物、好ましくはHDL洗剤組成物であって、
a)液体洗剤組成物の約5重量%~約50重量%の、C~C22直鎖アルキルベンゼンスルホネート(linear alkyl benzene sulfonates、LAS)、その酸形態(HLAS)、及びこれらの混合物からなる群から選択されるアニオン性界面活性剤と;
b)液体洗剤組成物の約0.5重量%~約5重量%の、式(I):
【0011】
【化1】
(式中、Rは、約5~約30個の炭素原子を含有する直鎖又は分枝鎖のアルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、又はアルカリール基であり;
Zは、アミノカルボニル、カルボニルアミノ、カルボニルオキシ、オキシカルボニルオキシ、アミノカルボニルアミノ、並びにこれらの組み合わせ及び誘導体からなる群から選択される二価部分であり;
は、1~12個の炭素原子を含有するアルキレン基であり;
は、1~10個の炭素原子を含有するアルキル又はヒドロキシアルキル基であり;
は、1~5個の炭素原子を含有するアルキレン又はヒドロキシアルキレン基であり;
Xは、カルボキシレート、スルホネート、ホスホネート、これらの酸形態、及びこれらの組み合わせからなる群から選択され;
Yは、N又はN-Rのいずれかであり;
は、1~10個の炭素原子を含有するアルキル又はヒドロキシアルキル基である)を有する双性イオン性及び/又は両性の界面活性剤とを含有する液体洗剤組成物に関する。
【0012】
上記の液体洗剤組成物は、低濃度、例えば液体洗剤組成物の0重量%~約1.5重量%のポリエチレングリコール(polyethylene glycol、PEG)を含有し得る。好ましくは、液体洗剤組成物は、PEGを実質的に含まない。より好ましくは、液体洗剤組成物は、PEGを本質的に含まない。
【0013】
好ましくは、本発明の液体洗剤組成物は、約3,500~約50,000mPa・sの低剪断粘度及び約2,500mPa・s以下(例えば、約50~約2,500mPa・s)の高剪断粘度を有する。本明細書で使用するとき、用語「低剪断粘度」とは、0.5s-1の剪断速度で測定された粘度を指し、用語「高剪断粘度」とは、20s-1の剪断速度で測定された粘度を指す。粘度は、2度/直径40mmのステンレス鋼製コーンプレート及びギャップサイズ49μmのAR-G2レオメータを使用することによって、20℃で容易に測定することができる。好ましくは、低剪断粘度の高剪断粘度に対する比が約3以上(例えば、約3~100)であり、より好ましくは約5~約50、最も好ましくは約10~約30の範囲である。
【0014】
本発明は、別の態様では、処理を必要とする表面、好ましくは布地を処理する方法であって、表面を上記液体洗剤組成物と接触させる工程を含む方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態にかかる液体洗剤組成物のクライオTEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の種々の実施形態の特徴及び利点は、本発明の幅広い表現を与えるように意図される特定の実施形態の例を含む以下の記述から明らかになるであろう。様々な修正がこの記述及び本発明の実施から当業者には明白であろう。本発明の範囲は、開示される特定の形態に限定されることは意図せず、本発明は、「特許請求の範囲」によって定義される本発明の趣旨及び範囲内の全ての変形、等価物、及び代替物を網羅する。
【0017】
本明細書で使用するとき、「the」、「a」、及び「an」を含む冠詞は、「特許請求の範囲」又は明細書で使用するとき、特許請求又は記載されているもののうちの1つ以上を意味すると理解される。
【0018】
本明細書で使用するとき、用語「含む(comprise、comprising)」、「包含する(include、including)」、「含有する(contain、containing)」は、非限定的である、すなわち、最終結果に影響を及ぼすことのない他の工程及び他の成分を加えることができることを意味する。上記用語は、「からなる(consisting of)」という用語を包含する。
【0019】
本明細書で使用するとき、用語「~を実質的に含まない(substantially free of、substantially free from)」は、組成物中に、かかる組成物の総重量の0.5%以下、好ましくは0.2%以下及びより好ましくは0.1%以下の指示物質が存在することを指す。
【0020】
本明細書で使用するとき、用語「~を本質的に含まない(essentially free of)」は、指示物質が組成物に意図的に添加されたものでなく、又は好ましくは分析によって検出可能な濃度で存在しないことを意味する。それは、指示材料が意図的に添加されたその他の材料の1つの、不純物としてのみ存在する、組成物を包含することを意味する。
【0021】
本明細書で使用するとき、用語「液体」とは、25℃及び20s-1の剪断速度において約1~約2000mPa・sの粘度を有する液体を有する流体を指す。いくつかの実施形態では、液体の粘度は、25℃、20s-1の剪断速度において約200~約1000mPa・sの範囲であってよい。いくつかの実施形態では、液体の粘度は、25℃、20s-1の剪断速度において約200~約500mPa・sの範囲であってよい。粘度は、ブルックフィールド粘度計、2番スピンドルを使用して、60RPM/sで測定される。
【0022】
本明細書で使用するとき、「水不混和性」材料とは、水と混合して均質な混合物を形成することができない材料、多くの場合液体を指す。
【0023】
本明細書で使用するとき、「水不溶性」材料とは、20℃及び大気圧下で測定したとき、脱イオン水1リットルあたり約1グラム(g/L)未満の溶解度を有する材料、多くの場合固体を指す。
【0024】
本明細書で使用するとき、全ての濃度及び比は、別途記載のない限り重量に基づくものである。本明細書における全ての温度は、特に断らない限り、摂氏(℃)を単位とする。本明細書における全ての条件は、特に具体的に定めのない限り、20℃及び大気圧下である。特別の定めのない限り、ポリマーの分子量は全て、数平均分子量による。
【0025】
「外部構造化剤」は、本明細書で使用するとき、典型的には液体又はゲル又はペーストなどの流体の粘度を増大させることによって、レオロジーを変化させる主な機能を有する材料である。従来技術で使用される外部構造化剤は、それ自体がかつ単独で、任意の顕著な布地洗浄又は布地ケアの効果を提供する。したがって、外部構造化剤は、同様にマトリックスレオロジーを変化させることができるが、様々な主目的のために液体製品に組み込まれている「内部」構造化剤とは異なる。例えば、内部構造化剤は、主に洗浄成分として作用させるために液体洗剤組成物に添加されているが、同時にこのような組成物のレオロジー特性を変化させることもできる界面活性剤であり得る。場合によっては、このような界面活性剤又は界面活性剤系は、ひも状ミセル又は棒状ミセル、球状ミセル、分散ラメラ、及び膨張ラメラ相などの内部構造化相を作製することができるので、「自己構造化する」又は「自己構造化された」界面活性剤系と呼ばれる。
【0026】
本発明の界面活性剤系が、液体洗剤組成物に組み込まれたとき、内部構造化剤として機能してラメラ構造又はひも状ミセル構造を形成することができ、これらが、次いで、液体洗剤組成物を増粘させ、水不混和性材料又は水不溶性粒子を懸濁させるのを支援することは驚くべき予想外の知見であった。本発明の液体洗剤組成物は、更に、改善された剪断減粘特性を示すので、製造プロセス中に圧力下で配管を通して容易に流動し得る又は汲み出され得る。更に、本発明の液体洗剤組成物は、セルロース、多糖類、硬化ヒマシ油(HCO)などの外部構造化剤をほとんど又は全く含有しないので、任意の別個の予混合ユニットを必要とせず、必要なラメラ構造を形成するのに単純なバッチ製造プロセスで十分であることが有利である。
【0027】
粘度
本発明の液体洗剤組成物は、0.5s-1の剪断速度で測定される約3,500~約50,000mPa・sの低剪断粘度及び20s-1の剪断速度で測定される約2,500mPa・s以下(例えば、約50~約2,500mPa・s)の高剪断粘度を有する。粘度は、2度/直径40mmのステンレス鋼製コーンプレート及びギャップサイズ49μmのAR-G2レオメータ(TA Instruments)を使用して20℃で測定される。
【0028】
本発明の液体洗剤組成物は、上記の低剪断及び高剪断粘度を有することが重要であるので、水不混和性材料又は水不溶性粒子を懸濁させるために安定化構造を形成することができるだけでなく、上記の加工要件を満たすために良好な剪断減粘特性を示す。具体的には、本発明の液体洗剤組成物の低剪断粘度は、約3,500mPa・s超である必要がある。低剪断粘度が約3,500mPa・s未満である場合、液体洗剤組成物が、静止状態に又は低剪断注入条件下に置かれたとき、薄すぎて水不混和性材料又は水不溶性粒子を懸濁させることができないことを意味する。一方、本発明の液体洗剤組成物の高剪断粘度は約2,500mPa・s以下である必要があるが、その理由は、高剪断粘度が約2,500mPa・s超である場合、液体洗剤組成物が濃すぎて製造プロセス中に圧力下で管路を通して汲み出すことができないためである。
【0029】
好ましくは、本発明の液体洗剤組成物は、約4,000~約30,000mPa・s、より好ましくは約5,000~約20,000mPa・sの低剪断粘度及び約100~約1,500mPa・s、より好ましくは約100~約1,000mPa・sの高剪断粘度を有する。
【0030】
好ましくは、液体洗剤組成物は、低剪断粘度の高剪断粘度に対する比が約3以上、例えば、約3~100であり、好ましくは約5~約50、より好ましくは約10~約25である。
【0031】
界面活性剤
本発明の液体洗剤組成物の自己構造化界面活性剤系は、アニオン性界面活性剤及び双性イオン性/両性界面活性剤を含有する。界面活性剤系は、所望により、分枝鎖非イオン性界面活性剤及び/又は直鎖非イオン性界面活性剤を含有し得る。好ましくは、界面活性剤系は、液体洗剤組成物の総重量の約10%~約90%、より好ましくは約15%~約50%の範囲の量で存在し得る。
【0032】
好ましくは、本発明の液体洗剤組成物中に存在するアニオン性界面活性剤と双性イオン性及び/又は両性の界面活性剤との重量比は、約100:1~約1:1であり得る。好ましくは、アニオン性界面活性剤の双性イオン性及び/又は両性の界面活性剤に対する重量比は、約40:1~約2:1、より好ましくは約25:1~約4:1の範囲内であり得る。例えば、アニオン性界面活性剤の双性イオン性及び/又は両性の界面活性剤に対する重量比は、約35:1、約20:1、約15:1、約10:1、約8:1、約5:1、約4.5:1、約4:1、約3.5:1、約3:1、約2.5:1、約2:1、又は1.5:1である。
【0033】
アニオン性界面活性剤
アニオン性界面活性剤は、本発明で使用されるとき、C~C22直鎖アルキルベンゼンスルホネート(LAS)、その酸形態(HLAS)、及びこれらの混合物からなる群から選択され得る。典型的には、LAS界面活性剤は、市販されている直鎖アルキルベンゼンをスルホン化することによって容易に得ることができる。本発明で使用することができる例示的なC~C22 LASとしては、C~C22直鎖アルキルベンゼンスルホン酸のアルカリ金属、アルカリ土類金属、又はアンモニウムの塩、好ましくは、C10~C14直鎖アルキルベンゼンスルホン酸のナトリウム、カリウム、マグネシウム及び/又はアンモニウムの塩が挙げられる。一実施形態では、液体洗剤組成物は、C10~C14 LAS界面活性剤のナトリウム若しくはカリウムの塩、又はその酸形態を含有する。
【0034】
LAS界面活性剤は、液体洗剤組成物の約5重量%~約50重量%の範囲の濃度で存在し得る。存在するLAS界面活性剤濃度が低すぎる場合、所望の構造相を形成することができないと同時に洗浄効果も満足のいくものではなく、存在する界面活性剤濃度が高すぎる場合、液体洗剤組成物の粘度が非常に高い程度まで増大し、その結果、注入されたときに流動が困難になる。例えば、LAS界面活性剤は、液体洗剤組成物の約5重量%~約30重量%の範囲で存在し得る。好ましくは、LAS界面活性剤は、液体洗剤組成物の約6重量%~約20重量%の範囲で存在し得る。
【0035】
欧州特許第2412792号には、2重量%のCAPBと組み合わせて2重量%のLASを含有する食器洗浄液体洗剤組成物が開示されている。欧州特許第2412792号では存在するLAS濃度が低すぎるので、構造化相が形成されない場合があり、液体洗剤組成物の粘度が低すぎて有益材料がなにも懸濁しない場合がある。
【0036】
双性イオン性及び/又は両性の界面活性剤
双性イオン性及び/又は両性の界面活性剤は、限定するものではないが、脂肪族の二級又は三級のアミン誘導体であり得、少なくとも1個の水溶性アニオン性基(例えば、カルボキシレート、スルホネート、サルフェート、ホスフェート、又はホスホネート)を含有し得る。
【0037】
本発明の液体洗剤組成物は、式(I):
【0038】
【化2】
(式中、Rは、5~30個の炭素原子を含有する直鎖又は分枝鎖のアルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、又はアルカリール基であり;
Zは、アミノカルボニル、カルボニルアミノ、カルボニルオキシ、オキシカルボニルオキシ、アミノカルボニルアミノ、並びにこれらの組み合わせ及び誘導体からなる群から選択される二価部分であり;
は、1~12個の炭素原子を含有するアルキレン基であり;
は、1~10個の炭素原子を含有するアルキル又はヒドロキシアルキル基であり;
は、1~5個の炭素原子を含有するアルキレン又はヒドロキシルアルキレン基であり;
Xは、カルボキシレート、スルホネート、ホスホネート、これらの酸形態、及びこれらの組み合わせからなる群から選択され;
Yは、N又はN-Rのいずれかであり;
は、1~10個の炭素原子を含有するアルキル又はヒドロキシアルキル基である)を有する双性イオン性及び/又は両性の界面活性剤とを含有する液体洗剤組成物に関する。
【0039】
好ましくは、本発明の液体洗剤組成物は、式(III):
【0040】
【化3】
(式中、R、Z、R、R、R、R、及びXは、式(I)と同じ意味である)を有する双性イオン性界面活性剤を含有する。
【0041】
いくつかの実施形態では、本発明において使用される双性イオン性界面活性剤は、式(III)を有するベタイン又はスルタイン(スルホベタイン)であり、式中、Zはカルボニルアミノ基であり;Xは、カルボキシレート若しくはスルホネート、又はこれらの酸形態であり;Rは、5~25個の炭素原子を含有する直鎖又は分枝鎖アルキル基であり;Rは、1~12個の炭素原子を含有するアルキレン基であり;R及びRは、独立して、1~10個の炭素原子を含有するアルキル又はヒドロキシアルキル基であり;Rは、1~5個の炭素原子を含有するアルキレン又はヒドロキシルアルキレン基である。
【0042】
より好ましい実施形態では、本発明において使用される双性イオン性界面活性剤は、式(IV):
【0043】
【化4】
(式中、Rは、8~22個の炭素原子を含有する直鎖アルキル基であり;Rは、2~5個の炭素原子を含有するアルキレン基、好ましくはエチレン又はプロピレン基であり;R及びRは、独立して、1~5個の炭素原子を含有するアルキル基、好ましくはメチル又はエチル基であり;Rは、1~3個の炭素原子を含有するアルキレン基、好ましくはメチレン又はエチレン基である)を有するベタインである。
【0044】
別の実施形態では、本発明で使用される双性イオン性界面活性剤は、式(V):
【0045】
【化5】
(式中、Rは、8~22個の炭素原子を含有する直鎖アルキル基であり;Rは、2~5個の炭素原子を含有するアルキレン基、好ましくはエチレン又はプロピレン基であり;R及びRは、独立して、1~5個の炭素原子を含有するアルキル基、好ましくはメチル又はエチル基であり;Rは、1~3個の炭素原子を含有するアルキレン又はヒドロキシルアルキレン基、好ましくはメチレン、エチレン、又はヒドロキシルプロピレン(CHCHOHCH)基である)を有するスルタインである。
【0046】
好適な双性イオン性界面活性剤の例は、アーモンドアミドプロピルベタイン、アプリコットアミドプロピルベタイン、アボカドアミドプロピルベタイン、ババスアミドプロピルベタイン、ベヘンアミドプロピルベタイン、キャノールアミドプロピルベタイン、カプリル/カプラミドプロピルベタイン、ココアミドプロピルベタイン、ココ/オレアミドプロピルベタイン、ココ/ヒマワリアミドプロピルベタイン、クプアスアミドプロピルベタイン、イソステアラミドプロピルベタイン、ラウラミドプロピルベタイン、メドウフォームアミドプロピルベタイン、ミルクアミドプロピルベタイン、ミンクアミドプロピルベタイン、ミリスタミドプロピルベタイン、オーツアミドプロピルベタイン、オレアミドプロピルベタイン、オリーブアミドプロピルベタイン、パームアミドプロピルベタイン、パルミタミドプロピルベタイン、パーム核アミドプロピルベタイン、リシノールアミドプロピルベタイン、セサミドプロピルベタイン、シアバターアミドプロピルベタイン、ダイズアミドプロピルベタイン、ステアラミドプロピルベタイン、タローアミドプロピルベタイン、ウンデシレンアミドプロピルベタイン、コムギ胚芽アミドプロピルベタイン、コカミドプロピルヒドロキシスルタイン(CAPHS)、ラウラミドプロピルヒドロキシスルタイン(LAPHS)、オレアミドプロピルヒドロキシスルタイン(OAPHS)、タローアミドプロピルヒドロキシスルタイン(TAPHS)からなる群から選択されるベタイン及びスルタインである。
【0047】
好ましくは、本発明において使用される双性イオン性界面活性剤は、コココアミドプロピルベタイン、ラウラミドプロピルベタイン、オレアミドプロピルベタイン、タローアミドプロピルベタイン、及びコカミドプロピルヒドロキシスルタリンからなる群から選択される。
【0048】
より好ましくは、双性イオン性界面活性剤は、ココアミドプロピルベタイン又はラウラミドプロピルベタインである。
【0049】
別の態様では、本発明の液体洗剤組成物は、式(VI):
【0050】
【化6】
(式中、R、Z、R、R、R、及びXは、式(I)で定義されたものと同じである)を有する両性界面活性剤を含有し得る。
【0051】
いくつかの実施形態では、Zはカルボニルアミノ基であり、Xはカルボキシレート若しくはスルホネート、又はこれらの酸形態である。
【0052】
好ましい実施形態では、Zはカルボニルアミノ基であり、Rは、8~22個の炭素原子を含有する直鎖アルキル基であり;Rは、2~5個の炭素原子を含有するアルキレン基、好ましくはエチレン又はプロピレン基であり;Rは、2~5個の炭素原子を含有するヒドロキシアルキル基、好ましくはヒドロキシエチル基であり;Rは、1~3個の炭素原子を含有するアルキレン基、好ましくはメチレン又はエチレン基であり;Xは、カルボキシレート基である。
【0053】
好ましくは、両性界面活性剤は、ココアンホ酢酸ナトリウム又はその酸形態である。
【0054】
双性イオン性及び/又は両性の界面活性剤は、液体洗剤組成物の約0.5重量%~約5重量%の範囲で液体洗剤組成物中に存在し得る。例えば、双性イオン性及び/又は両性の界面活性剤は、液体洗剤組成物の約0.8重量%~約3重量%で存在する。
【0055】
液体洗剤組成物中に存在する特定の濃度の双性イオン性及び/又は両性の界面活性剤は、液体洗剤組成物に水不混和性材料又は水不溶性粒子を懸濁させるのを支援するために自己構造化相を構築するために重要である。一方では、存在する双性イオン性及び/又は両性の界面活性剤の濃度が低すぎる、例えば約0.5重量%未満である場合、所望の構造を形成することができないので、液体洗剤組成物が任意の水不混和性材料又は水不溶性粒子を懸濁させることができない。他方では、双性イオン性及び/又は両性の界面活性剤の濃度が高すぎる、例えば約5重量%以上である場合、液体洗剤組成物の高剪断粘度が非常に高いレベルに増大し、それによって、製造中に配管を通して製品を汲み出すことが困難になる。
【0056】
国際公開第2012/082096号には、液体洗剤組成物の10重量%の濃度でLAS及びCAPBを含有する液体洗剤組成物が開示されている。高濃度(例えば、5重量%以上)のCAPBを含有する液体洗剤組成物が高すぎる剪断粘度を有し、これによって、HDLを製造するための加工が困難になることが証明されている。
【0057】
追加の界面活性剤
上記界面活性剤に加えて、本発明の洗浄組成物はまた、1つ以上の追加の界面活性剤を、このような追加の界面活性剤が上記界面活性剤の官能基に干渉しない限り含有し得る。
【0058】
アルコキシル化アルキル硫酸塩(alkoxylated alkyl sulfate、AES)を除く他のアニオン性界面活性剤を、本発明の液体洗剤組成物において用いることができる。理論に束縛されるものではないが、AES、特に直鎖AESは、構造化相を破壊するか又はその形成に悪影響を与えると思われる。したがって、AESは、存在する場合、液体洗剤組成物の5重量%未満でなければならない。好ましくは、本発明の液体洗剤組成物は、AESを実質的に含まない、好ましくは本質的に含まない。例えば、本発明の液体洗剤組成物は、トリデセスサルフェートを実質的に含まない。
【0059】
このような追加の界面活性剤は、他のアニオン性界面活性剤(上記LAS界面活性剤とは異なる)、双性イオン性界面活性剤及び/又は両性界面活性剤(上記双性イオン性界面活性剤及び/又は両性界面活性剤とは異なる)、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、並びにこれらの混合物から選択され得る。このような追加の界面活性剤は、本発明の液体洗剤組成物の約0.1重量%~約15重量%、好ましくは約0.5重量%~約10重量%、より好ましくは約1重量%~約5重量%の範囲の合計量で液体洗剤組成物中に存在し得る。
【0060】
分枝鎖非イオン性界面活性剤
本発明の界面活性剤系は、分枝鎖非イオン性界面活性剤を更に含有し得る。本明細書で使用される分枝鎖非イオン性界面活性剤は、式(II):
R-(OA)OH (II)、
(式中、Rは、8~22個の炭素原子を含有する分岐鎖アルキル基、アルキル基が5~19個の炭素原子を含有する直鎖又は分岐鎖アルキルフェニル基からなる群から選択され;OAは、アルコキシ部分、好ましくは、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるアルコキシ部分であり;nは、重量平均アルコキシル化度を意味し、nは、約1~約5である)を有する分枝鎖アルキルアルコキシル化アルコールであり得る。特定の態様では、アルキルアルコキシル化アルコールは、約1~約5、又は約1~約3の平均エトキシル化度を有するC8~18アルキルエトキシル化アルコールである。
【0061】
分枝鎖非イオン性界面活性剤は、液体洗剤組成物の約0.1重量%~約10重量%の範囲内で存在し得、例えば、分枝鎖非イオン性界面活性剤は、液体洗剤組成物の約0.5重量%~約5重量%の範囲内で存在する。
【0062】
アニオン性界面活性剤と双性イオン性/両性界面活性剤との合計の、分枝鎖非イオン性界面活性剤に対する重量比は、約500:1~約1:2、好ましくは約100:1~約2:1、より好ましくは約50:1~約5:1、更により好ましくは約25:1~約8:1の範囲であり得る。
【0063】
本発明において存在する分枝鎖非イオン性界面活性剤は、液体洗剤組成物の粘度を変化させるのを支援する粘度調整剤として機能することができる。分枝鎖非イオン性界面活性剤を添加することにより、高くなりすぎた液体洗剤組成物の粘度を減少させることができることが証明されている。
【0064】
直鎖非イオン性界面活性剤
本発明の界面活性剤系はまた、直鎖アルキルアルコキシル化アルコールも含有し得る。いくつかの実施態様では、使用される直鎖アルキルアルコキシル化アルコールは、約4~約12、好ましくは約6~約10の重量平均アルコキシル化度を有する直鎖C~C22アルキルアルコキシル化アルコールを含む。具体例では、直鎖非イオン性界面活性剤は、約4~約12、好ましくは約6~約10の平均エトキシル化度を有する直鎖C~C22アルキルエトキシル化アルコールである。例えば、直鎖非イオン性界面活性剤は、約6~約10の平均エトキシル化度を有する直鎖C10~C16アルキルエトキシル化アルコールである。
【0065】
所望により、直鎖非イオン性界面活性剤は、本発明の液体洗剤組成物の総重量の約0重量%~約15重量%、好ましくは約0.1重量%~約10重量%、より好ましくは約1重量%~約5重量%の範囲の量で存在する。
【0066】
水溶性金属塩
液体洗剤組成物は、水溶性金属塩を更に含有し得る。水溶性金属塩は、液体洗剤組成物中に存在するとき、液体洗剤組成物の約0.1重量%~約10重量%、好ましくは約0.2重量%~約4重量%、より好ましくは約0.5重量%~約2重量%の濃度で存在する。水溶性金属塩は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム及びこれらの混合物から選択されるカチオンと塩化物、炭酸塩、重炭酸塩、硫酸塩、リン酸塩、酢酸塩、硝酸塩、及びこれらの混合物から選択されるアニオンを含有し得る。塩化カリウム及び塩化ナトリウムが特に有用である。
【0067】
本発明の液体洗剤組成物中の水溶性金属塩は、粘度調整剤として作用する。粘度調整剤は、所望の粘度を達成するために組成物の粘度を調整することができる物質である。液体洗剤組成物中に界面活性剤系が存在すると、所望よりも低い又は高い粘度の製品ができる場合がある。粘度調整剤を使用することによって、粘度を増大又は減少させることができる。理論に束縛されるものではないが、塩化ナトリウム又は塩化カリウムはイオン性強度調整剤のように作用し、それを通してラメラ相からひも状ミセルへの移行が促進され、界面活性剤充填密度が調整され(より高く又は低く)、その結果、安定性を維持すると同時に構造化相の存在が維持される。
【0068】
外部構造化剤
好ましくは、液体洗剤組成物は、硬化ヒマシ油(HCO)を実質的に含まない。より好ましくは、液体洗剤組成物は、非高分子ヒドロキシル含有物質などの結晶質の外部構造化剤、ミクロフィブリル化セルロース、並びにポリアクリレート、多糖類、多糖類誘導体、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される高分子構造化剤などの非結晶質外部構造化剤を実質的に含まない。
【0069】
更により好ましくは、液体洗剤組成物は、任意の外部構造化剤を実質的に含まない。好ましい実施形態では、液体洗剤組成物は、任意の外部構造化剤を本質的に含まない。外部構造化剤は、ミクロフィブリル化セルロース、一般的に結晶質であることを特徴とする非高分子ヒドロキシル含有物質、ヒドロキシル含有脂肪酸、脂肪族エステル及び脂肪族ワックス、例えば、ヒマシ油及びヒマシ油誘導体を含み得る。これは、ポリカルボキシレート、ポリアクリレート、疎水変性エトキシル化ウレタン、アルカリ可溶性エマルション、疎水変性アルカリ可溶性エマルション、疎水変性非イオン性ポリオール、架橋ポリビニルピロリドン、多糖類、及び多糖類誘導体型などの天然由来及び/又は合成高分子構造化剤も含む。通常は構造化剤として使用される多糖類誘導体は、ポリマーゴム材料類を含む。かかるゴムとしては、ペクチン、アルギン酸塩、アラビノガラクタン(アラビアゴム)、カラギーナン、ジェランガム、キサンタンガム、及びグアーガムが挙げられる。外部構造化剤の他の種類としては、構造化粘土、アミドゲル化剤、並びにミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、及びイソステアリン酸イソプロピルなどの脂肪エステルが挙げられる。
【0070】
溶媒
本発明の液体洗剤組成物は、好ましくは、1つ以上の有機溶媒を含み、これは、液体洗剤組成物の総重量の約0.01重量%~約20重量%、好ましくは約0.1重量%~約10重量%の範囲の量で存在し得る。
【0071】
本発明の有機溶媒としては、限定するものではないが、メタノール、エタノール、及び/又はプロパノール、及び/又は1-エトキシペンタノールなどのC~Cアルカノール;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンタンジオールなどのC~Cジオール;C~Cアルキレングリコール;C~Cアルキレングリコールモノ低級アルキルエーテル;グリコールジアルキルエーテル;グリセロールなどのC~Cトリオール;約200~約1000、好ましくは約350~約450の重量平均分子量を有するポリエチレングリコールなどの、約2000未満の重量平均分子量を有するポリエチレングリコール;並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0072】
好ましくは、本発明の液体洗剤組成物は、ポリエチレングリコール(PEG)を実質的に含まない。あるいは、液体洗剤組成物は、約2重量%未満の量、より好ましくは約1.5重量%以下の量でポリエチレングリコールを含有する。
【0073】
PEGが多すぎると構造化ラメラ構造又はひも状ミセルを破壊し、相分離を引き起こすので、液体洗剤組成物中にPEGが全く又はほとんど存在しないことが好ましい。2重量%以上のPEGを含有する液体洗剤組成物では相分離が生じることが見出された。
【0074】
中国特許第101993786号には、実施例において15%のドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、2%のCAPB、及び2.5重量%の濃度のPEG-400を含む液体洗剤組成物が開示されている。2重量%以上の高濃度のPEGは、以下の実施例で示されるように、構造を破壊し、相分離を引き起こす。
【0075】
液体洗剤組成物は、好ましくは、担体としての上記有機溶媒と組み合わせて水を含有する。いくつかの実施形態では、水は、本発明の液体洗剤組成物中に、約20重量%~約90重量%、好ましくは約25重量%~85重量%、より好ましくは約30重量%~約80重量%の範囲の量で存在する。
【0076】
懸濁される材料
液体洗剤組成物は、懸濁される1つ以上の有益材料を更に含有し得る。有益材料は、液体洗剤組成物の総重量の約0.01%~約20%の範囲の量で存在する。いくつかの実施形態では、有益材料は、水不混和性材料又は水不溶性粒子である。好ましくは、水不混和性材料又は水不溶性粒子は、香料、増白剤、染料、シリコーン消泡剤粒子、着色剤粒子、二酸化チタン及び雲母などのパールエッセンス剤、並びにこれらの混合物からなる群から選択される。
【0077】
いくつかの実施形態では、有益材料は、封入された形態で存在し得る。好適な封入物は、典型的には、コアと、コアを封入するシェルとを含む。
【0078】
シェル材料は、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、酢酸セルロース、ポリ(ビニル-アルコール-コ-酢酸ビニル)、アクリル酸-エチレン-酢酸ビニルコポリマー、及びこれらの混合物からなる群から選択される材料を含み得る。
【0079】
コアは、香料、増白剤、染料、酵素、抗菌剤、シリコーン流体、漂白活性剤、漂白促進剤、予成形過酸、金属触媒、過酸化ジアシル、過酸化水素源、抗菌剤、及びこれらの混合物からなる群から選択される有益材料を含み得る。カプセルの好ましい一態様では、コアは香料を含み得る。したがって、このような封入物は、香料マイクロカプセルである。封入物の別の好ましい態様では、コアは酵素を含み得、ここで得られる封入物は、酵素マイクロカプセルである。
【0080】
懸濁される有益材料は、約0.5μm~約200μm、好ましくは約1μm~約150μmの範囲のD50平均粒径を有し得る。いくつかの実施形態では、有益材料は、約1μm~約150μm、好ましくは約10μm~約100μmのD50平均粒径を有するパールエッセンス剤であり得る。他の実施形態では、有益材料は、約1μm~約100μm、好ましくは約5μm~約70μm、より好ましくは約10μm~約50μmのD50平均粒径を有するマイクロカプセルであり得る。本明細書で使用するとき、用語D50平均粒径は、粒子の50重量%がその値を上回る粒径を有し、50%が下回る値を意味する。
【0081】
補助成分
上記の成分に加えて、本発明の液体洗剤組成物は、1つ以上の補助成分を含有し得る。好適な補助成分としては、ビルダー、キレート剤、移染防止剤、分散剤、酵素安定剤、触媒材料、漂白活性化剤、過酸化水素、ポリマー分散剤、粘土汚れ除去/再付着防止剤、抑泡剤、光漂白剤、構造伸縮性付与剤、布地柔軟剤、担体、向水性物質、加工助剤、溶媒、色調剤、抗菌剤、及び/又は顔料が挙げられるが、これらに限定されない。洗濯液体洗剤組成物中におけるこれら補助剤成分の正確な性質及びその濃度は、組成物の物理的形状、及び組成物が使用される洗浄操作の性質に依存する。
【0082】
本発明の一実施形態では、液体洗剤組成物は、約0.1重量%~約10重量%のクエン酸及び/又はホウ砂を含有する。例えば、クエン酸は、約0.1重量%~約5重量%の範囲の量で提供され得、ホウ砂は、約0.1重量%~約5重量%の範囲の量で提供され得る。
【0083】
液体洗剤組成物
本明細書で使用するとき、「洗剤組成物」又は「洗浄組成物」という句は、汚れた素材を洗浄するよう設計された組成物及び配合物を含む。そのような組成物は、洗濯洗剤組成物、布地柔軟化組成物、布地強化組成物、布地消臭組成物、予洗い用洗剤(laundry prewash)、洗濯前処理剤、洗濯補助剤、スプレー製品、ドライクリーニング剤又は組成物、洗濯すすぎ添加剤、洗浄添加剤、すすぎ後布地処理剤、アイロン助剤、食器洗い組成物、硬質面洗浄組成物、単位用量配合剤、遅延送達配合剤、多孔性基材又は不織布シート上又は中に含有される洗剤、及び本明細書の教示を考慮すると当業者に明らかであり得る他の好適な形態を含むが、これらに限定されない。このような組成物は、洗浄前処理剤、洗浄後処理剤として使用してもよいし、あるいは、洗浄プロセスのすすぎ又は洗浄サイクル中に加えてもよい。洗浄組成物は、液体、粉末、単相又は多相の単位用量又はパウチの形態(例えば、例えばポリビニルアルコール(PVA)又はそのコポリマーなどの水溶性ポリマーによって形成される単一区画又は多区画の水溶性パウチ中に含有される液体洗剤組成物)、錠剤、ゲル、ペースト、バー、又はフレークから選択される形態を有し得る。本発明の好ましい実施態様では、本発明の洗剤組成物は、布地又は食器の手洗い又は機械洗浄のいずれかのために指定された液体洗濯又は食器洗剤組成物である。
【0084】
双性イオン性/両性界面活性剤とアニオン性界面活性剤との組み合わせは、双性イオン性/両性界面活性剤又はアニオン性界面活性剤のみを含有する同様の液体洗剤組成物に比べて著しく高い低剪断粘度を有する液体洗剤組成物を提供する。理論に束縛されるものではないが、構造化相は、LASアニオン性界面活性剤とベタイン又はスルタイン補助界面活性剤との相互作用によって形成されると考えられる。これらが構造化相を形成すると、粘度が急激に増大する。このような増大した粘度は、水不混和材料又は水不溶性粒子を、HDL組成物などの液体洗剤組成物中に懸濁させるのを支援する。
【0085】
好ましい実施形態では、本発明の液体洗剤組成物は、a)液体洗剤組成物の約6重量%~約20重量%のC10~C14直鎖アルキルベンゼンスルホネート(LAS)又はその酸形態と、b)液体洗剤組成物の約0.5重量%~約3重量%のコカミドプロピルベタイン(CAPB)又はラウラミドプロピルベタインとを含有する。
【0086】
所望により、本発明の液体洗剤組成物は、低濃度、例えば液体洗剤組成物の0重量%~約1.5重量%のPEGを含有する。好ましくは、液体洗剤組成物は、PEGを実質的に含まない。より好ましくは、液体洗剤組成物は、PEGを本質的に含まない。
【0087】
所望により、本発明の液体洗剤組成物は、液体洗剤組成物の約0.1重量%~約10重量%、好ましくは約0.5重量%~約5重量%の、約1~約5、好ましくは約1~約3の平均エトキシル化度を有する分枝鎖C~C22アルキルエトキシル化アルコールを更に含有する。
【0088】
所望により、本発明の液体洗剤組成物は、液体洗剤組成物の約0.1重量%~約10重量%、好ましくは約1重量%~約5重量%の、約4~約12、好ましくは約6~約10の平均エトキシル化度を有する直鎖C~C22アルキルエトキシル化アルコールを更に含有する。
【0089】
所望により、本発明の液体洗剤組成物は、液体洗剤組成物の約0.1重量%~約10重量%、好ましくは約0.2重量%~約4重量%、より好ましくは約0.5重量%~約2重量%の塩化ナトリウムを更に含有する。
【0090】
本発明の液体洗剤組成物は、好ましくは約3~約14、より好ましくは約5~約11、更により好ましくは約6~約9の範囲のpH値を特徴とする。
【0091】
好ましくは、液体洗剤組成物は、均質な液体製品として提供される。液体洗剤組成物は、安定であり得る、すなわち、5℃及び大気圧下に少なくとも48時間定置したときに視認できる相分離を有しない、好ましくは、25℃及び大気圧下に少なくとも48時間定置したときに視認できる相分離を有しない、より好ましくは、40℃及び大気圧下に少なくとも48時間定置したときに視認できる相分離を有しない。
【0092】
本発明の液体洗剤組成物を作製する方法
上記成分を本発明の液体洗剤組成物中に組み込むことは、任意の適切な方法で行うことができ、一般に任意の混合又は添加の順序を含み得る。
【0093】
例えば、製造業者から受け取ったままの原料のうちの1つ以上を、最終組成物の他の成分のうちの2つ以上の予形成混合物に直接導入することができる。これは、配合プロセスの最後の最後を含む、最終組成物の調製プロセスにおける任意の時点で行ってよい。
【0094】
別の例では、原料のうちの1つ以上を乳化剤、分散剤、又は懸濁化剤と予混合して、エマルション、ラテックス、分散液、懸濁液などを形成してもよく、次いで、これを最終組成物の他の成分と混合する。これらの成分は、任意の順序で、最終組成物の調製プロセスの任意の時点で加えることができる。
【0095】
使用方法
本発明は、汚れた素材を洗浄する方法を含む。当業者には理解されるように、本発明の洗剤組成物は、洗濯前処理用途、洗濯洗浄用途、及びホームケア用途における使用に適している。
【0096】
そのような方法は、洗剤組成物をそのままの形態で、又は洗浄液中で希釈して、汚れた素材の少なくとも一部分と接触させ、次いで任意に汚れた素材をすすぐ工程を含むが、これに限定されない。所望によるすすぎ工程の前に、汚れた素材に対して洗浄工程を行ってもよい。
【0097】
洗濯前処理用途での使用について、本方法は、本明細書に記載の洗剤組成物を汚れた布地と接触させることを含み得る。前処理に続いて、汚れた布地を洗濯機で洗濯してもよいし、ないしは別の方法ですすいでもよい。
【0098】
試験方法
試験1:粘度試験
本発明の液体洗剤組成物の粘度は、2度/直径40mmのステンレス鋼製コーンプレート及びギャップサイズ49μmのTA Instruments Ltdによって製造されているAR-G2レオメータを使用して20℃で測定される。この手順は、10s-1で10秒間の予剪断と、0.1s-1から1200s-1への漸増剪断速度におけるサンプルの流動勾配剪断(flow ramp shearing)とからなる。サンプルの低剪断粘度及び高剪断粘度は、それぞれ、0.5s-1及び20-1で記録されたデータを指す。結果は、mPa・sの単位で報告される。
【0099】
試験2:クライオTEM試験
中国科学院生物物理研究所(Institute of Biophysics, Chinese Academy of Sciences)における以下の手順に従って、クライオTEM技術を介して液体洗剤組成物を分析する:カーボンフィルムが負に帯電するように30秒間プラズマクレンザーで洗浄された、レース状のカーボンフィルムでコーティングされたCu TEMグリッド上に、マイクロピペットを用いて2μLの水性サンプル溶液をロードする。Vitrobot(FEI)機器を用いて濾紙で表面を拭うことによってグリッド表面上の過剰な流体を除去して、TEM用の水性薄膜を作製する。拭い力は6であり、拭い時間は6秒間であり、合計3回拭う。次いで、グリッド上の水膜をガラス質にし、水の結晶化を回避するために、クライオプランジシステムにおいて-175℃の雰囲気下でより大きな液体窒素容器内に位置する小さな容器内に含まれている液体エタン中にグリッドを沈める。クエンチされたサンプルグリッドを、クライオプランジシステムのクライオグリッドボックスに移す。サンプルを収容したグリッドボックスを、液体窒素が充填されているGatanクライオトランスファーシステムに移し、そして、クライオトランスファーシステム内に配置され、-160℃未満に冷却されているクライオTEMステージにロードする。サンプルをTEM(FEI Tecnai 20)にロードし、-160℃未満で画像を観察する。液体窒素を使用しTEMにおいて-180℃に冷却されたより冷たいフィンガー(much colder finger)は、TEM分析中に高真空下で冷たい試料表面上の任意の可能性のある汚染を低減するために存在する。TEMカラムの底部に取り付けられたGatan CCDカメラ及びDigital Micrographソフトウェアを使用してデジタル画像を撮影する。
【0100】
試験3:相安定性試験
大気圧下、それぞれ5℃、25℃、及び40℃で少なくとも48時間以下、キャップで密閉された500mLのプラスチックジャー内に組成物300mLを入れることによって、液体洗剤組成物の相安定性を評価する。上記期間内に(i)組成物が2つ以上の層へと分離しない場合、又は(ii)組成物が複数の層に分離するが、組成物の少なくとも90重量%、好ましくは95重量%を含む主要層が存在する場合、この組成物は相分離に対して安定である。
【実施例
【0101】
以下の実施例は、本発明の範囲内である実施形態を記載し、実証する。これらの実施例は、例示目的のためにのみ提供され、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなくそれらの多くの変更が可能であることから、本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0102】
実施例1:液体洗剤組成物
混合容器に水を添加することによって液体洗剤組成物の試験サンプルを調製する。次いで、連続的に混合しながら、(以下の表に列挙された成分に従って)以下の成分の一部又は全てを添加する:クエン酸溶液(水中50%)、NaOH溶液(水中50%)、1,2-プロパンジオール、ホウ砂プレミックス、C12~C14エトキシル化(EO7)アルコール、コカミドプロピルベタイン(CAPB)、分枝鎖エトキシル化(EO3)トリデシルアルコール(TDA-3)、C10~C14 LAS、ポリエチレングリコール(PEG)、及び塩化ナトリウム(水中10%)。第1のサンプルは、LASのみを含有し、CAPBを含まない比較例Aである。第2のサンプルは、CAPBと組み合わせてLASを含有する本発明の実施例1である。組成物のpH値は約7.6±0.4である。均質になるまで混合を継続する。
【0103】
これら組成物を調製した後、その0.5s-1の剪断速度における低剪断粘度(low shear viscosity、「LS」)及び20s-1の剪断速度における高剪断粘度(high shear viscosity、「HS」)を、上記試験1に開示されている方法を利用して測定する。低剪断粘度の高剪断粘度に対する比(「LS/HS」)を計算し、結果を以下の表1にまとめる。
【0104】
【表1】
CAPB:コカミドプロピルベタイン
**LAS:C10~C14直鎖アルキルベンゼンスルホネート
【0105】
水不混和性材料又は水不溶性粒子を懸濁させるために、液体洗剤組成物の低剪断粘度は、例えば3,500mPa・s~50,000mPa・sなど、十分に高くなければならない。LAS及びCAPBの両方を含有する本発明の実施例1の低剪断粘度は32,300mPa・sであり、水不混和性材料又は水不溶性粒子を懸濁させるのに十分な程度高いことが結果から分かる。対照的に、CAPBを含まずLASを含有する比較例Aの低剪断粘度はわずか929mPa・sであり、これは低すぎて水不混和性材料又は水不溶性粒子をなにも懸濁させることができない。更に、比較例Aと比較して、本発明の実施例1の低剪断粘度の高剪断粘度に対する比は十分に増大し、所望の剪断減粘特性を示す。
【0106】
図1は、上記試験2に記載の方法に従って測定された、本発明の実施例1の液体洗剤組成物のクライオTEM写真を示す。ラメラとひも状ミセルの混合物を含有する構造化相が構造中に存在することが図1から分かる。この構造化相は、水不混和性材料又は水不溶性粒子を懸濁させるのに有効である。
【0107】
実施例2:HEPMC又は雲母の懸濁についての相安定性試験
実施例2は、上記試験3に記載の試験方法に従って、高効率香料マイクロカプセル(high efficiency perfume microcapsule、HEPMC)又は雲母を、それによって懸濁される有益剤として添加したときの本発明の実施例2及び3の相安定性を比較例B及びCと比較する。本発明の実施例2及び3は、LAS及びCAPBの両方を含有し、一方、比較例B及びCは、LASのみを含有する(CAPBを含まない)。HEPMCを本発明の実施例2及び比較例Bに添加し、一方、雲母を本発明の実施例3及び比較例Cに添加する。実施例の成分及び試験結果を以下の表2に提供する。
【0108】
【表2】
【0109】
相安定性の結果は、LAS及びCAPBの両方を含有する本発明の液体洗剤組成物は、48時間にわたって5℃、25℃、又は40℃などの様々な温度で相安定性を維持しながら、HEPMC又は雲母を懸濁させることができるが、一方、LASのみを含有する比較液体洗剤組成物は懸濁させることができないことを示す。
【0110】
実施例3:粘度に対するCAPB濃度の影響を示す比較試験
上記方法に従って液体洗濯洗剤組成物の5つの試験サンプルを調製する。これらは、(1)表3に列挙される様々な量のCAPBと組み合わせてLASを含有する本発明の実施例4~7、及び(3)本発明の範囲外である、より多量のCAPBを含有する比較例D、を含む。これらの低剪断粘度及び高剪断粘度、並びにこれらの比を測定し、その結果を以下の表3に示す。
【0111】
【表3】
【0112】
CAPBの濃度が増大したとき、サンプルの低剪断粘度及び高剪断粘度が増大することが表3から分かる。この結果は、液体洗剤組成物の0.5重量%から3重量%までの範囲の濃度のCAPBを含有する本発明の実施例が、水不混和性及び水不溶性有益材料を懸濁させるのに好適な約3,500mPa・s~約50,000mPa・sの所望の低剪断粘度、並びに製造加工に好適な約2,500mPa・s以下の所望の高剪断粘度を呈したことを示す。逆に、高すぎる濃度、すなわち、5%のCAPBを含有する比較例Dは、製造要件の境界線である2534mPa・sの高剪断粘度を有する。このような値を上回る粘度を有する液体組成物は、HDLを製造するための加工が困難になる。
【0113】
実施例4:粘度に対するPEG濃度の影響を示す比較試験
比較的少量のPEG-400(すなわち、0.5%及び1.5%)を含むことを除いて本発明の実施例1に従って本発明の実施例8及び9を調製したが、これは本発明の範囲内である。比較的多量のPEG-400(すなわち、2%)を含むことを除いて本発明の実施例1に従って比較例Eを調製したが、これは本発明の範囲外である。実施例の成分、測定されたその低剪断粘度及び高剪断粘度、並びにこれらの比を以下の表4にする。
【0114】
【表4】
***直ちに相分離し、粘度を測定することができない。
【0115】
表4の結果によって示されるように、0.5重量%のPEGを含有する本発明の実施例8及び1.5重量%のPEGを含有する本発明の実施例9は、所望の低剪断粘度及び高剪断粘度を有する。本発明の実施例8及び9の剪断特性を本発明の実施例1(PEGを含有しない)と比較すると、PEGの濃度が0から0.5%、次いで、1.5重量%に増大したときに本発明の組成物の低剪断粘度及び高剪断粘度が減少すると思われる。比較例EのようにPEGの量が2重量%まで増大したとき、均質な構造化相を形成することができず、直ちに相分離が生じる。これは、液体洗剤組成物中の過剰なPEGが構造化相の形成を混乱させたり、干渉したりすることを示す。したがって、本発明の組成物からPEGを除くことが好ましく、存在するとしても、PEGの濃度は液体洗剤組成物の約1.5重量%未満でなければならない。
【0116】
実施例5:粘度に対するTDA-3の影響を示す比較試験
表5は、本発明の実施例1を、TDA-3を含むことを除いて本発明の実施例1と同じ組成を有する新規の本発明の実施例10と比較する。実施例の成分、測定されたその低剪断粘度及び高剪断粘度、並びにこれらの比を以下の表5にする。
【0117】
【表5】
****TDA-3:分枝鎖エトキシル化(EO3)トリデシルアルコール
【0118】
TDA-3を更に含有する本発明の実施例10の低剪断粘度及び高剪断粘度は、いずれも本発明の実施例1よりも低い、すなわち、TDA-3の添加が液体洗剤組成物の低剪断粘度及び高剪断粘度を減少させることが分かる。これは、TDA-3が液体洗剤組成物中で粘度調整剤として機能して、低剪断粘度及び高剪断粘度が最適化された安定な構造相を提供し得ることを示す。
【0119】
実施例6:粘度に対するNaClの影響を示す比較試験
表6は、本発明の実施例1を、塩化ナトリウムを添加したことを除いて本発明の実施例1と同じ組成を有する新規の本発明の実施例11と比較する。実施例の成分、測定されたその低剪断粘度及び高剪断粘度、並びにこれらの比を以下の表6にする。
【0120】
【表6】
【0121】
NaClを更に含有する本発明の実施例11の低剪断粘度及び高剪断粘度は、いずれも本発明の実施例1のものよりも低い、すなわち、NaClの添加が液体洗剤組成物の低剪断粘度及び高剪断粘度を減少させることが分かる。これは、塩化ナトリウムが液体洗剤組成物中で粘度調整剤として機能して、低剪断粘度及び高剪断粘度が最適化された安定な構造相を提供し得ることを示す。
【0122】
実施例7:強力液体(HDL)洗濯洗剤組成物の処方
上に指定したような例示的なHDL洗剤組成物の組成内訳を以下のとおり提供する。
【0123】
【表7】
【0124】
実施例8:食器洗浄液体洗剤組成物の処方
上に指定したような例示的な食器洗浄洗剤組成物の組成内訳を以下のとおり提供する。
【0125】
【表8】
【0126】
本明細書に開示した寸法及び値は、列挙された正確な数値に厳密に限定されるものと理解されるべきではない。むしろ、特に指定されない限り、そのような各寸法は、列挙された値とその値の周辺の機能的に同等の範囲の両方を意味することが意図されている。例えば、「40mm」として開示される寸法は、「約40mm」を意味するものとする。
【0127】
相互参照される又は関連する全ての特許又は特許出願、及び本願が優先権又はその利益を主張する任意の特許出願又は特許を含む、本願に引用される全ての文書は、除外又は限定することを明言しない限りにおいて、参照によりその全容が本願に援用される。いかなる文献の引用をも、本明細書中で開示又は特許請求されている任意の発明に関する先行技術であるとは認められず、あるいは上記の引用は、単独で又は他の任意の参考文献(単数又は複数)と組み合わせて、そのような任意の発明を教示、示唆又は開示するとは認められない。更に、本文書における用語の任意の意味又は定義が、参照により組み込まれた文書内の同じ用語の意味又は定義と矛盾する場合、本文書におけるその用語に割り当てられた意味又は定義が適用されるものとする。
【0128】
本発明の特定の実施形態を例示及び説明してきたが、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく他の様々な変更及び修正を行うことができる点は当業者には明白であろう。したがって、本発明の範囲内に含まれるそのような全ての変更及び修正は、添付の特許請求の範囲にて網羅することを意図したものである。
図1