(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-02
(45)【発行日】2022-05-13
(54)【発明の名称】親油性抗炎症剤を含む脂質ナノ粒子およびその使用方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/7088 20060101AFI20220506BHJP
A61K 9/107 20060101ALI20220506BHJP
A61K 9/51 20060101ALI20220506BHJP
A61K 47/18 20060101ALI20220506BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20220506BHJP
A61K 47/24 20060101ALI20220506BHJP
A61K 47/28 20060101ALI20220506BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20220506BHJP
A61K 31/58 20060101ALI20220506BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220506BHJP
【FI】
A61K31/7088
A61K9/107
A61K9/51
A61K47/18
A61K47/22
A61K47/24
A61K47/28
A61K47/34
A61K31/58
A61P43/00 105
A61P43/00 121
(21)【出願番号】P 2018558293
(86)(22)【出願日】2017-05-08
(86)【国際出願番号】 EP2017060891
(87)【国際公開番号】W WO2017194454
(87)【国際公開日】2017-11-16
【審査請求日】2020-05-07
(32)【優先日】2016-05-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-07-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-01-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】391008951
【氏名又は名称】アストラゼネカ・アクチエボラーグ
【氏名又は名称原語表記】ASTRAZENECA AKTIEBOLAG
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】レンナルト・リンドフォーシュ
(72)【発明者】
【氏名】トマス・シェルマン
【審査官】中村 浩
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-508796(JP,A)
【文献】特表2015-501844(JP,A)
【文献】特表平10-510830(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101708338(CN,A)
【文献】特表2012-530143(JP,A)
【文献】特表2012-530059(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0062841(US,A1)
【文献】特表2015-509968(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-33/44
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
A61P 1/00-43/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)少なくとも1つのイオン化可能脂質、少なくとも1つの中性脂質、少なくとも1つのステロール、および少なくとも1つのポリマーコンジュゲート脂質を含
み、
少なくとも1つのイオン化可能脂質がDLin-MC3-DMA、Merck-32、KL10、Acuitas-5およびそれらの混合物から選択され;
少なくとも1つの中性脂質がジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)であり;
少なくとも1つのステロールがコレステロールであり;そして
少なくとも1つのポリマーコンジュゲート脂質は少なくとも1つのPEG化脂質であり;
抗炎症性脂質ナノ粒子中に存在する総脂質に対して、イオン化可能脂質は40モル%~60モル%の量で存在し;中性脂質は7.5モル%~12.5モル%の量で存在し;ステロールは35モル%~45モル%の量で存在し;そしてポリマーコンジュゲート脂質は0.5モル%~5モル%の量で存在するものである、脂質相;
b)
吉草酸ロフレポニド(rofleponide valerate)(C5)、カプロン酸ロフレポニド(rofleponide caproate)(C6)、カプリル酸ロフレポニド(rofleponide caprylate)(C8)、カプリン酸ロフレポニド(rofleponide caprate)(C10)、ラウリン酸ロフレポニド(rofleponide laurate)(C12)、ミリスチン酸ロフレポニド(C14)、パルミチン酸ロフレポニド(C16)、ステアリン酸ロフレポニド(C18)、ミリスチン酸ブデソニド(C14)、パルミチン酸ブデソニド(C16)、ステアリン酸ブデソニド(C18)、ステアリン酸ブデソニド(budesonide stearate)(C18)、オレイン酸ブデソニド(C18:1)およびリノール酸ブデソニド(budesonide linoleate)(C18:2)から選択される少なくとも1つの親油性抗炎症剤;および
c)mRNA
を含む抗炎症性脂質ナノ粒子。
【請求項2】
前記少なくとも1つのイオン化可能脂質
がDLin-MC3-DMA
である、請求項1に記載の抗炎症性脂質ナノ粒子。
【請求項3】
前記少なくとも1つのポリマーコンジュゲート脂質が、DMPE-PEG2000、DPPE-PEG2000、DMG-PEG2000、DPG-PEG2000、PEG2000-c-DOMG、PEG2000-c-DOPG、およびそれらの混合物から選択される、請求項1に記載の抗炎症性脂質ナノ粒子。
【請求項4】
前記
親油性抗炎症剤が、吉草酸ロフレポニド(rofleponide valerate)(C5)、カプロン酸ロフレポニド(rofleponide caproate)(C6)、カプリル酸ロフレポニド(rofleponide caprylate)(C8)、カプリン酸ロフレポニド(rofleponide caprate)(C10)、ラウリン酸ロフレポニド(rofleponide laurate)(C12)、ミリスチン酸ロフレポニド(rofleponide myristate)(C14)、パルミチン酸ロフレポニド(C16)、またはステアリン酸ロフレポニド(rofleponide stearate)(C18)から選択される、請求項
1に記載の抗炎症性脂質ナノ粒子。
【請求項5】
前記
親油性抗炎症剤が、ミリスチン酸ブデソニド(budesonide myristate)(C14)、パルミチン酸ブデソニド(C16)、ステアリン酸ブデソニド(budesonide stearate)(C18)、オレイン酸ブデソニド(C18:1)、およびリノール酸ブデソニド(budesonide linoleate)(C18:2)から選択される、請求項
1に記載の抗炎症性脂質ナノ粒子。
【請求項6】
脂質相対核酸セグメントの重量比が、約40:1~1:1の範囲である、請求項
1に記載の抗炎症性脂質ナノ粒子。
【請求項7】
親油性抗炎症剤対核酸セグメントの重量比が、約10:1~約1:100の範囲である、請求項1に記載の抗炎症性脂質ナノ粒子。
【請求項8】
複数の請求項1に記載の抗炎症性脂質ナノ粒子を含む医薬組成物。
【請求項9】
それを必要とする被験者の細胞における少なくとも1つのペプチドまたはタンパク質の発現を対照レベルと比べて増加させるための、請求項
8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記被験者に対して、皮内に、筋肉内に、皮下に、腫瘍内に、心臓内に、気管内滴下、気管支滴下により、および/または吸入を介して投与される、請求項
8に記載の医薬組成物。
【請求項11】
少なくとも1つのペプチドまたはタンパク質の発現が、対照レベルと比べて、24時間までに約2倍増加する、請求項
8に記載の医薬組成物。
【請求項12】
少なくとも1つのペプチドまたはタンパク質の発現が、対照レベルと比べて、72時間までに約3倍増加する、請求項
8に記載の医薬組成物。
【請求項13】
非抗炎症性LNPの投与に関連する免疫応答を阻害するための、請求項
8に記載の医薬組成物。
【請求項14】
炎症促進性マーカーの発現または活性を対照レベルと比べて阻害するための、請求項
13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
IL-6、IL-8、KC、IP-10、およびMCP-1の産生が、対照レベルと比べて約80%以上の百分率分低下する、請求項
14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記医薬組成物の投与が、注射部位で浮腫を実質的に生じさせない、請求項
13に記載の医薬組成物。
【請求項17】
血漿ハプトグロビンの産生を対照レベルと比べて阻害するための、請求項
13に記載の医薬組成物。
【請求項18】
血漿ハプトグロビンの産生が、対照レベルと比べて約60%以上の百分率分抑制される、請求項
17に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
組織および細胞を標的にする薬学的活性成分の安全かつ有効な送達は、薬物担体の設計において最も重要である。既知の薬物担体、例えばリポソームおよび脂質ナノ粒子(LNP)は、標的化された組織および細胞への薬物の標的化された部位特異的な送達を促進することから、それらのバイオアベイラビリティを増強する。しかし、かかる担体を開発する上での主な障害は、これらの製剤の主要成分に関連した免疫原性応答である。
【0002】
ポリヌクレオチド送達に適したリポソーム担体は、標的細胞の細胞質への細胞膜を横切る送達を可能にするカチオン性脂質成分を含むことが多い。かかるカチオン性リポソームは、免疫系を活性化することが知られており、ワクチンに利用されている(非特許文献1)。それに対し、LNPは、生理学的pH7.4でゼロ正味電荷を有するように設計されることから、陽性に荷電されている粒子に関連した免疫応答が完全に除去されることはないが低減される。リポソームは、薬剤の標的組織および細胞への送達を助け得る一方で、免疫系も活性化し、急性過敏症反応をもたらし、それによりアナフィラキシーショックのリスクが増大する(非特許文献2;非特許文献3)。
【0003】
リポソームおよびLNPに関連した免疫原性応答を最小化する、例えばLNPにポリエチレングリコールシールドを付加し、単核食細胞系による認識を回避することや、修飾siRNAを利用して免疫活性化を最小化することに注力しても、それらはやはり免疫応答を誘発し、ひいては治療選択肢としてのそれらの有効性を制限する(非特許文献2)。リポソームまたはLNPの投与に先立つ抗炎症薬の同時投与についての検討もなされているが、成果は限定的である(非特許文献4;非特許文献3)。リポソーム構築物であるLNP201の投与前1時間のデキサメタゾンによる前治療により、炎症性mRNAが部分的に阻害されたが、炎症効果が除去されなかった(非特許文献3)。LNP05-SSB siRNAまたはLNP05-Apo5 siRNAに先立ち、様々な抗炎症薬で前治療されたラットにおいて、同様の結果が見出された(非特許文献4)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】Peer,D.,Advanced Drug Delivery Reviews 64:1738-1748(2012)
【文献】Kumar,V.et al.,Molecular Therapy-Nucleic Acids,3(e210):1-7(2014)
【文献】Abrams,MT et al.,Molecular Therapy,18(1):171-180(2010)
【文献】Tao,W.et al.,Molecular Therapy,19(3):567-575(2011)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
LNPの免疫刺激効果は、調合薬の安全かつ有効な送達のためのその使用を阻止し続ける。結果として、炎症応答を誘発しない治療ウインドウの増強を伴う有効なLNP送達系を開発するという需要が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書は、部分的には、少なくとも1つの親油性抗炎症剤を含む抗炎症性脂質ナノ粒子を開示する。一実施形態では、開示されるのは、脂質相および少なくとも1つの親油性抗炎症剤を含む抗炎症性脂質ナノ粒子である。別の実施形態では、開示されるのは、少なくとも1つの核酸セグメントをさらに含む抗炎症性脂質ナノ粒子である。
【0007】
別の実施形態では、開示されるのは、脂質相、少なくとも1つの親油性抗炎症剤、および薬学的に許容可能な担体、希釈剤または賦形剤を含む複数の抗炎症性脂質ナノ粒子を含む医薬組成物である。別の実施形態では、開示されるのは、脂質相、少なくとも1つの親油性抗炎症剤、および少なくとも1つの核酸セグメント、および薬学的に許容可能な担体、希釈剤または賦形剤を含む複数の抗炎症性脂質ナノ粒子を含む医薬組成物である。
【0008】
さらに開示されるのは、それを必要とする被験者に複数の抗炎症性脂質ナノ粒子を含む医薬組成物を投与するための方法である。
【0009】
別の実施形態では、開示されるのは、少なくとも1つの核酸セグメントを標的細胞に送達する方法であって、細胞を複数の抗炎症性脂質ナノ粒子および治療有効量の少なくとも1つの核酸セグメントを含む医薬組成物と接触させることを含む、方法である。
【0010】
別の実施形態では、開示されるのは、それを必要とする被験者に少なくとも1つの核酸セグメントを送達する方法であって、複数の抗炎症性脂質ナノ粒子および治療有効量の少なくとも1つの核酸セグメントを含む医薬組成物を被験者に投与することを含む、方法である。
【0011】
さらに開示されるのは、疾患または障害を患う被験者を治療する方法であって、複数の抗炎症性脂質ナノ粒子および治療有効量の少なくとも1つの核酸セグメントを含む医薬組成物を被験者に投与することを含む、方法である。
【0012】
別の実施形態では、開示されるのは、非抗炎症性LNPの投与に関連した免疫応答を阻害する方法であって、本明細書に開示される複数の抗炎症性脂質ナノ粒子を含む医薬組成物を被験者に投与することを含む、方法である。免疫応答を阻害する方法は、免疫応答の少なくとも1つのバイオマーカーまたは症状の発現または活性を阻害すること、例えば、(a)炎症促進性マーカーの発現または活性を阻害することと;(b)炎症(例えば浮腫)を低減することと;(c)炎症または免疫応答に関連した血漿ハプトグロビンの産生を低減することと、を含む。
【0013】
さらに別の実施形態では、開示されるのは、それを必要とする被験者の標的細胞におけるタンパク質またはペプチドの発現を調節するための方法であって、本明細書に開示される複数の抗炎症性脂質ナノ粒子および治療有効量の少なくとも1つの核酸セグメントを含む有効量の医薬組成物を投与することを含む、方法である。
【0014】
別の実施形態では、抗炎症性脂質ナノ粒子を調製するための方法が開示される。一実施形態では、開示されるのは、抗炎症性脂質ナノ粒子を調製するための方法であって、
A)任意選択的に少なくとも1つの核酸セグメントを含む少なくとも1つの水溶液を提供することと;
B)少なくとも1つの親油性抗炎症剤を含む少なくとも1つの有機溶液を提供することと;
C)少なくとも1つの水溶液を少なくとも1つの有機溶液と混合し、複数の脂質ナノ粒子を含有する脂質ナノ粒子溶液を生成することと、
を含む、方法である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1A】抗炎症性脂質ナノ粒子中に存在するイオン化可能脂質成分の化学構造を図示する。
【
図1B】ロフレポニドおよび代表的なロフレポニドプロドラッグの化学構造をACD Chemsketch 2014を用いて計算されたオクタノール-水log(分配係数)とともに図示する。
【
図1C】ブデソニドおよび代表的なブデソニドプロドラッグの化学構造をACD Chemsketch 2014を用いて計算されたオクタノール-水log(分配係数)とともに図示する。
【
図2A-D】(A):投与後24時間の浮腫スコアリング;(B):投与後24時間の血漿ハプトグロビン濃度;(C):投与後8および24時間の血漿サイトカイン/ケモカイン濃度;および(D)パルミチン酸ロフレポニド(R-C16)の不在下および存在下でのPBS(リン酸緩衝液、pH7.4)、DLin-MC3-DMAに基づくLNPの皮下投与後の時間に対するmRNA1タンパク質濃度、を図示する。
【
図3A-C】(A):投与後24時間の浮腫スコアリング;(B):投与後24時間の血漿ハプトグロビン濃度;(C):パルミチン酸ロフレポニド(R-C16)/mRNA1:1w/w、1:10w/w、および1:30w/wの不在下および存在下でのPBS(リン酸緩衝液、pH7.4)、DLin-MC3-DMAに基づくLNPの皮下投与後の時間に対するmRNA1タンパク質濃度、を図示する。
【
図4A-C】(A):投与後24、48および72時間の浮腫スコアリング;(B):時間に対する血漿ハプトグロビン濃度;(C):パルミチン酸ロフレポニド(R-C16)またはロフレポニドを含有するLNPの皮下投与後の時間に対するmRNA1タンパク質濃度、を図示する。
【
図5A-B】パルミチン酸ロフレポニド(R-C16、
図A)またはロフレポニド(
図B)を含有するLNPの皮下投与後の時間に対するロフレポニド血漿濃度を図示する。
【
図6A-C】(A):浮腫スコアリング;(B):投与後24時間の血漿ハプトグロビン濃度;(C):異なる脂肪酸鎖長を有するロフレポニドプロドラッグ:吉草酸ロフレポニド(C5)、ミリスチン酸ロフレポニド(rofleponide myristate)(C14)、パルミチン酸ロフレポニド(C16)、およびステアリン酸ロフレポニド(rofleponide stearate)(C18)を含有するLNPの皮下投与後の時間に対するmRNA1タンパク質濃度、を図示する。
【
図7A-C】(A):投与後24時間の浮腫スコアリング;(B)投与後24時間の血漿ハプトグロビン濃度;(C)DLin-MC3-DMAおよびMerck-32 LNP対DLin-MC3/パルミチン酸ロフレポニド(R-C16)、およびMerck-32/パルミチン酸ロフレポニド(R-C16)LNPの皮下投与後の時間に対するmRNA1タンパク質濃度、を図示する。
【
図8A-C】(A):異なる用量のmRNA1で比較する、投与後24時間の浮腫スコアリング;(B)投与後24時間の血漿ハプトグロビン濃度;(C)異なる用量のmRNA1で比較する、DLin-MC3-DMAおよびMerck-32(ミリスチン酸ロフレポニド、R-C14を伴う)LNPの皮下投与後の時間に対するmRNA1タンパク質濃度、を図示する。
【
図9A-C】(A):異なる用量のmRNA1で比較する、投与後24時間の浮腫スコアリング;(B)投与後24時間の血漿ハプトグロビン濃度;(C)異なる用量のmRNA1で比較する、DLin-MC3-DMA、KL10(R-C14の不在下/存在下)およびAcuitas-5(R-C14の不在下/存在下)LNPの皮下投与後の時間に対するmRNA1タンパク質濃度、を図示する。
【
図10A-G】(A):浮腫スコアリング;(B):投与後24時間の血漿ハプトグロビン濃度;(C):投与後7および24時間の血漿IL-6濃度;(D):投与後7および24時間の血漿KC濃度;(E)投与後7および24時間の血漿IP-10濃度;(F):投与後7および24時間の血漿MCP-1濃度;(G)異なる脂肪酸鎖長を有するブデソニドプロドラッグ:ミリスチン酸ブデソニド(budesonide myristate)(C14)、パルミチン酸ブデソニド(C16)またはオレイン酸ブデソニド(C18:1)を含有するLNPの皮下投与後の時間に対するmRNA1タンパク質濃度、を図示する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
抗炎症性脂質ナノ粒子
本開示によると、抗炎症性脂質ナノ粒子は、エタノール中の脂質含有溶液と核酸セグメントを含有する水溶液とのマイクロ流体混合により生成される高電子密度のナノ構造コアを有する。本明細書に開示される抗炎症性脂質ナノ粒子が50体積%を超える連続的な水性領域を有しないことから、単層リポソームなどの通常のリポソームが除かれることは理解されるべきである。
【0017】
一態様では、抗炎症性脂質ナノ粒子は、脂質相および少なくとも1つの親油性抗炎症剤を含む。脂質ナノ粒子は、少なくとも1つの核酸セグメントをさらに含んでもよい。
【0018】
本開示の一態様は、直径が約200nm以下、例えば約100nm以下、または例えば約75nm以下の平均粒子径を有する抗炎症性脂質ナノ粒子に関する。本開示の少なくとも1つの実施形態では、抗炎症性脂質ナノ粒子は、約50nm~約75nm、例えば約60nm~約65nmの範囲、例えば約64nmの平均粒子径を有する。
【0019】
特定の実施形態では、抗炎症性脂質ナノ粒子は、約80%以上、例えば約90%超、例えば約95%~100%の範囲、例えば約99%の核酸セグメントの封入効率(%EE)を有する。本明細書で用いられるとき、用語「封入効率」は、洗剤、例えばトリトンX100を用いる脂質ナノ粒子の溶解により測定される、医薬組成物中の総核酸セグメント含量に対する抗炎症性脂質ナノ粒子中の封入核酸セグメントの比を指す(例えば、Leung et al.(2012)上記を参照)。
【0020】
脂質相
本明細書に開示される抗炎症性脂質ナノ粒子の脂質相は、ナノ粒子の正味電荷が約0である限り、通常のナノ粒子技術において用いられる任意の材料、例えば、イオン化可能脂質、中性脂質、ステロール、およびポリマーコンジュゲート脂質から構築されてもよい。
【0021】
イオン化可能脂質の非限定例として、例えば生理学的pHで正電荷を有する脂質、例えば、1,2-ジリノレイロキシ-3-ジメチルアミノプロパン(DLin-DMA)、ジリノレイルメチル-4-ジメチルアミノブチラート(DLin-MC3-DMA(例えば、米国特許第8,158,601号明細書を参照)、2-ジリノレイル-4-ジメチルアミノエチル-[1,3]-ジオキソラン(DLin-KC2-DMA)、Merck-32(例えば、国際公開第2012/018754号パンフレットを参照)、Acuitas-5(例えば、国際公開第2015/199952号パンフレットを参照)、KL-10(例えば、米国特許出願公開第2012/0295832号明細書を参照)、C12-200(例えば、Love,KT et al.,PNAS,107:1864(2009)を参照)などが挙げられる。イオン化可能脂質は、抗炎症性脂質ナノ粒子中に存在する総脂質に対して、約5%~約90%、例えば約10%~約80%、例えば約25%~約75%、例えば約40%~約60%の範囲、例えば約50%のモルパーセント量で存在してもよい。
【0022】
中性脂質は、生理学的pHで0正味電荷を有する。中性脂質の非限定例として、生理学的pHで非荷電形態または中性双性イオン形態で存在する脂質、例えば、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)などが挙げられる。中性脂質は、抗炎症性脂質ナノ粒子中に存在する総脂質に対して、約1%~約50%、例えば約5%~約20%、例えば7.5%~約12.5%の範囲、例えば約10%のモルパーセント量で存在してもよい。
【0023】
ステロールの非限定例として、コレステロールなどが挙げられる。ステロールは、抗炎症性脂質ナノ粒子中に存在する総脂質に対して、約10%~約90%、例えば約20%~約50%、例えば約35%~45%の範囲、例えば約38.5%のモルパーセント量で存在してもよい。
【0024】
ポリマーコンジュゲート脂質は、脂質部分およびポリマー部分を含み、例えばPEG化脂質は、脂質部分およびポリエチレングリコール部分の双方を含む。非限定例として、ジミリストイルホスファチジルエタノールアミン-ポリ(エチレングリコール)2000(DMPE-PEG2000)、DPPE-PEG2000、DMG-PEG2000、DPG-PEG2000、PEG2000-c-DOMG、PEG2000-c-DOPGなどが挙げられる。使用可能なポリ(エチレングリコール)の分子量は、約500~約10,000Da、または約1,000~約5,000Daの範囲であってもよい。
【0025】
ポリマーコンジュゲート脂質は、抗炎症性脂質ナノ粒子中に存在する総脂質に対して、約0%~約20%、例えば約0.5%~約5%、例えば約1%~約2%の範囲、例えば、約1.5%のモルパーセント量で存在してもよい。
【0026】
本開示の少なくとも1つの実施形態では、抗炎症性脂質ナノ粒子は、複数の脂質成分を組み合わせることにより調製されてもよい。例えば、抗炎症性脂質ナノ粒子は、イオン化可能脂質、ステロール、中性脂質、およびポリマーコンジュゲート脂質を、存在する総脂質に対する50:40-XPEG脂質:10:XPEG脂質のモル比で組み合わせることにより調製されてもよい。例えば、抗炎症性脂質ナノ粒子は、イオン化可能脂質、ステロール、中性脂質、およびポリマーコンジュゲート脂質を、50:37:10:3(モル/モル)のモル比、または例えば50:38.5:10:1.5(モル/モル)のモル比、または例えば50:39.5:10:0.5(モル/モル)、または50:39.75:10:0.25(モル/モル)で組み合わせることにより調製されてもよい。
【0027】
別の実施形態では、脂質ナノ粒子は、イオン化可能脂質(DLin-DMA、DLin-KC2-DMA、DLin-MC3-DMA、Merck-32、KL10、またはAcuitas-5など)、ステロール(コレステロールなど)、中性脂質(DSPCなど)、およびポリマーコンジュゲート脂質(DMPE-PEG2000など)を、存在する総脂質に対する約50:38.5:10:1.5(モル/モル)のモル比で用いて調製されてもよい。さらに別の非限定例が、イオン化可能脂質(DLin-DMA、DLin-KC2-DMA、DLin-MC3-DMA、Merck-32、KL10、またはAcuitas-5など)、ステロール(コレステロールなど)、中性脂質(DSPCなど)、およびポリマーコンジュゲート脂質(DMPE-PEG2000など)を、存在する総脂質に対する約47.7:36.8:12.5:3(モル/モル)のモル比で含む抗炎症性脂質ナノ粒子である。別の非限定例が、イオン化可能脂質(DLin-DMA、DLin-KC2-DMA、DLin-MC3-DMA、Merck-32、KL10、またはAcuitas-5など)、ステロール(コレステロールなど)、中性脂質(DSPCなど)、およびポリマーコンジュゲート脂質(DMPE-PEG2000など)を、存在する総脂質に対する約52.4:40.4:6.4:0.8(モル/モル)のモル比で含む抗炎症性脂質ナノ粒子である。別の実施形態では、非限定例が、イオン化可能脂質(DLin-DMA、DLin-KC2-DMA、DLin-MC3-DMA、Merck-32、KL10、またはAcuitas-5など)、ステロール(コレステロールなど)、中性脂質(DSPCなど)、およびポリマーコンジュゲート脂質(DMPE-PEG2000など)を、存在する総脂質に対する約53.5:41.2:4.6:0.7(モル/モル)のモル比で含む抗炎症性脂質ナノ粒子である。別の非限定例が、イオン化可能脂質(C12-200など)、ステロール(コレステロールなど)、中性脂質(DSPCなど)、およびポリマーコンジュゲート脂質(DMPE-PEG2000など)を、存在する総脂質に対する約30:50:19:1(モル/モル)のモル比で含む抗炎症性脂質ナノ粒子である。
【0028】
抗炎症性脂質ナノ粒子を含むイオン化可能脂質、中性脂質、ステロール、および/またはポリマーコンジュゲート脂質の選択、ならびにかかる脂質の互いに対する相対モル比は、選択される脂質の特徴、意図される標的細胞の性質や、送達されるべき例えばmRNAなどの核酸の特徴により決定されてもよい。例えば、特定の実施形態では、抗炎症性脂質ナノ粒子中のイオン化可能脂質のモルパーセントは、存在する総脂質に対して約10%超、約20%超、約30%超、約40%超、約50%超、約60%超、または約70%超であってもよい。抗炎症性脂質ナノ粒子中の中性脂質のモルパーセントは、存在する総脂質に対して約5%超、約10%超、約20%超、約30%超、または約40%超であってもよい。抗炎症性脂質ナノ粒子中のステロールのモルパーセントは、存在する総脂質に対して約10%超、約20%超、約30%超、または約40%超であってもよい。抗炎症性脂質ナノ粒子中のポリマーコンジュゲート脂質のモルパーセントは、存在する総脂質に対して約0.25%超、例えば約1%超、約1.5%超、約2%超、約5%超、または約10%超であってもよい。
【0029】
本開示によると、抗炎症性脂質ナノ粒子は、イオン化可能脂質、中性脂質、ステロール、および/またはポリマーコンジュゲート脂質の各々を所望される任意の有用な配向性で含んでもよい。例えば、ナノ粒子のコアは、イオン化可能脂質およびステロールを含んでもよく、結果として、中性脂質および/またはポリマーコンジュゲート脂質を含む1つ以上の層がコアを包囲してもよい。例えば、一実施形態によると、抗炎症性脂質ナノ粒子のコアは、任意の特定の厚みの中性脂質単層(例えばDSPC)に覆われ、任意の特定の厚みの外側のポリマーコンジュゲート脂質単層にさらに覆われた、イオン化可能脂質(例えばDLin-MC3-DMA)、およびステロール(例えばコレステロール)を任意の特定比で含むコアを含んでもよい。かかる例では、親油性抗炎症剤および核酸セグメントは、意図される標的細胞の性質や、送達されるべき例えばmRNAなどの核酸の特徴に応じて、コアまたはそれに続く層のいずれか1つの中に組み込まれてもよい。コアおよび外層は、典型的には当該技術分野で公知の脂質ナノ粒子中に組み込まれる他の成分をさらに含んでもよい。
【0030】
さらに、抗炎症性脂質ナノ粒子を含むイオン化可能脂質、中性脂質、ステロール、および/またはポリマーコンジュゲート脂質のモルパーセントは、総脂質ナノ粒子の特定の物理パラメータ、例えば脂質の1つ以上の表面積を提供するように選択されてもよい。例えば、抗炎症性脂質ナノ粒子を含むイオン化可能脂質、中性脂質、ステロール、および/またはポリマーコンジュゲート脂質のモルパーセントは、中性脂質、例えばDSPCあたりの表面積が得られるように選択されてもよい。非限定例として、イオン化可能脂質、中性脂質、ステロール、および/またはポリマーコンジュゲート脂質のモルパーセントは、約1.0nm2~約2.0nm2、例えば約1.2nm2のDSPCあたりの表面積が得られるように決定されてもよい。
【0031】
親油性抗炎症剤
本開示によると、抗炎症性脂質ナノ粒子は、治療有効量の少なくとも1つの親油性抗炎症剤をさらに含む。
【0032】
用語「炎症」および「炎症性」は、免疫系の上方制御を含む生物学的応答を指し、それは炎症または免疫応答に関するタンパク質活性(例えば、ケモカインおよびサイトカインなどの炎症促進性マーカー、血漿ハプトグロビンの産生)の増強および炎症の症状(例えば、疼痛、熱、発赤および/または浮腫)を含んでもよい。一部の実施形態では、炎症は急性である。一部の実施形態では、炎症は慢性である。
【0033】
用語「抗炎症剤」は、例えば、炎症または免疫応答に関する酵素またはタンパク質活性の低減または阻害(例えば、炎症促進性マーカーの阻害または血漿ハプトグロビンの産生における低下)により;炎症または免疫応答の1つ以上の症状(例えば、疼痛、発赤、熱または浮腫)の寛解により;または炎症性プロセスもしくは免疫応答の緩徐化もしくは遅延により、炎症(急性または慢性のいずれか)を低減するかまたは免疫応答を下方制御するように、被験者における生物学的または医学的応答を誘発する薬剤を含む。
【0034】
用語「親油性抗炎症剤」は、約5.0以上のlogP値を示す抗炎症剤を指す。用語「logP」は、分配係数P(Pは、有機相中の化合物の濃度の、水相中の同じ化合物の濃度に対する相対比である)の対数の底が10の関数の定量を指す。抗炎症剤の親油性は、抗炎症剤の親水性部分を親油性部分に変換することにより、例えば、カルボキシル基、アミノ基、ヒドロキシル基、または他の親水性基を、アルキルおよびアルキルエステル、酸エステル、アリールおよびアリールエステル、ヘテロアリールエステル、アミド基、または他の親油性基に変換することによって得てもよい。本明細書中の親油性抗炎症剤は、約5以上のlogP値を示す。親油性抗炎症剤は、上記の通り、抗炎症剤を修飾し、親油性を高めることによって、そのlogP値を増加させるように合成されてもよい。抗炎症剤は、親薬剤分子上に存在する任意の親水性基の1つ以上のエステル化またはアルキル化などの公知の技術を通じて調製されてもよい(例えば、Waring,MJ,Expert Opin.Drug Discov.,5(3):235-248(2010)を参照。
【0035】
少なくとも1つの親油性抗炎症剤に先行する用語「治療有効量」は、非抗炎症性LNPの投与に関連した炎症応答のバイオマーカーまたは症状のいずれかまたはすべてを阻害および/または寛解する抗炎症剤の量を指す。
【0036】
用語「非抗炎症性LNP」は、抗炎症剤を含まない脂質ナノ粒子を指す。
【0037】
公知の抗炎症剤は、限定はされないが、コルチコステロイド(例えば、ロフレポニド、ブデソニドなど)、およびサイトカイン阻害剤(例えば、JAK1、JAK2、JAK3、TRL1-9、NF-κb、IRAK-1、IRAK-2、IRAK-4、IRF-3、TBK-1、TRAF-3、p38、IKKεなど)などを含む。
【0038】
本開示の少なくとも1つの実施形態では、親油性抗炎症剤は、ロフレポニドプロドラッグである。ロフレポニドプロドラッグの例として、限定はされないが、吉草酸ロフレポニド(rofleponide valerate)(C5)、カプロン酸ロフレポニド(rofleponide caproate)(C6)、カプリル酸ロフレポニド(rofleponide caprylate)(C8)、カプリン酸ロフレポニド(rofleponide caprate)(C10)、ラウリン酸ロフレポニド(rofleponide laurate)(C12)、ミリスチン酸ロフレポニド(C14)、パルミチン酸ロフレポニド(C16)、またはステアリン酸ロフレポニド(C18)が挙げられる。
【0039】
別の実施形態では、親油性抗炎症剤は、ブデソニドプロドラッグである。非限定例として、ミリスチン酸ブデソニド(C14)、パルミチン酸ブデソニド(C16)、ステアリン酸ブデソニド(budesonide stearate)(C18)、オレイン酸ブデソニド(C18:1)、およびリノール酸ブデソニド(budesonide linoleate)(C18:2)が挙げられる。
【0040】
親油性抗炎症剤は、抗炎症性脂質ナノ粒子の総重量に対して約0.001重量%~約50重量%の範囲の量で存在してもよい。一部の実施形態では、親油性抗炎症剤は、抗炎症性脂質ナノ粒子の総重量に対して約0.5重量%~約20重量%、例えば約1重量%~約10重量%、例えば約8重量%の範囲の量で存在してもよい。
【0041】
核酸セグメント
本開示によると、抗炎症性脂質ナノ粒子は、抗炎症性脂質ナノ粒子の表面上で会合され得る、かつ/または同じ抗炎症性脂質ナノ粒子内部に封入され得る核酸セグメントを治療有効量でさらに含んでもよい。
【0042】
用語「核酸セグメント」は、アンチセンスオリゴヌクレオチド、DNA、mRNA、siRNA、Cas9-ガイドRNA複合体、またはそれらの組み合わせから選択される任意の1つ以上の核酸セグメントを意味するように理解される。本明細書中の核酸セグメントは、野生型または修飾型であってもよい。少なくとも1つの実施形態では、抗炎症性脂質ナノ粒子は、複数の異なる核酸セグメントを含んでもよい。さらに別の実施形態では、野生型または修飾型の核酸セグメントの少なくとも1つは、目的のポリペプチドをコードする。
【0043】
少なくとも1つの核酸セグメントに先行する用語「治療有効量」は、標的組織および/または細胞型におけるタンパク質の発現を調節するのに十分な核酸の量を指す。一部の実施形態では、少なくとも1つの核酸セグメントの治療有効量は、少なくとも1つの核酸セグメントによって発現されるタンパク質に関連した疾患または障害を治療するのに十分な量である。
【0044】
少なくとも1つの実施形態では、総脂質相の核酸セグメントに対する重量比は、約40:1~約1:1の範囲、例えば約10:1である。これは、核酸単量体に対するイオン化可能脂質のおよそのモル比が約3:1であることに対応する。さらに別の例では、核酸セグメントに対する総脂質相の重量比は、約30:1~約1:1の範囲、例えば約17:1であり、これは、核酸単量体に対するイオン化可能脂質のおよそのモル比が約6:1であることに対応する。しかし、核酸単量体に対する脂質相および/または脂質相成分の相対モル比は、意図される標的細胞の性質および核酸セグメントの特性により判定されてもよく、それ故、上で同定された実施形態の範囲内に限定されない。
【0045】
別の実施形態では、抗炎症性脂質ナノ粒子は、親油性抗炎症剤および核酸セグメントを、重量比が約10:1(親油性抗炎症剤対核酸セグメント)~約1:100の範囲で含む。さらに別の実施形態では、脂質ナノ粒子中に存在する総脂質に対する核酸セグメントの重量比は、約2:1~約1:50、例えば約1:1~約1:10の範囲である。
【0046】
組成物
本開示の医薬組成物は、本明細書に開示される抗炎症性脂質ナノ粒子、治療有効量の少なくとも1つの抗炎症剤および治療有効量の少なくとも1つの核酸セグメント、および/または1つ以上の薬学的に許容可能な賦形剤、担体もしくは希釈剤を含む。本明細書で用いられるとき、用語「薬学的に許容可能な賦形剤、担体または希釈剤」は、合理的なリスク/ベネフィット比に見合う、過剰な毒性、刺激作用、アレルギー反応、または他の課題もしくは合併症を伴わない、健全な医学的判断の範囲内での、ヒトおよび動物の組織との接触における使用に適した化合物、材料、組成物、および/または剤形を含む。特定の実施形態では、医薬組成物は、少なくとも1つの組織標的化剤、例えばDSPE-PEG3400-CRPPRまたはDSPE-CRPPRなどのペプチドコンジュゲートをさらに含んでもよい。
【0047】
医薬組成物は、非経口投与に適した形態であってもよい。本明細書に開示される抗炎症性脂質ナノ粒子を含む組成物は、インビボ投与においては、治療的適用に応じて、それを必要とする被験者に、静脈内に、皮内に、筋肉内に、皮下に、舌下に、腫瘍内に、心臓内に、気管内滴下、気管支滴下、および/または吸入により、投与されてもよい。
【0048】
医薬組成物は、滅菌注射用水性または懸濁液の形態であってもよく、それは公知の方法に従って配合されてもよい。滅菌注射用製剤はまた、非毒性の非経口的に許容できる緩衝液中の滅菌注射用懸濁液であってもよい。他の実施形態では、医薬組成物は、凍結乾燥されて、乾燥粉末の形態を生じてもよく、ここで乾燥粉末は、投与のため、必要に応じて後に再構成され得る。乾燥粉末組成物は、増量剤、例えばスクロースまたはトレハロースをさらに含んでもよい。
【0049】
医薬液体組成物は、不活性気体の使用により霧化され得る。霧化された懸濁液は、霧化装置から直接的に吸い込まれてもよい、または霧化装置は、フェイステントマスク、または間欠的陽圧呼吸装置に取り付けられ得る。さらに、固体剤形はまた、乾燥粉末吸入器を用いた吸入を介して投与されてもよい。懸濁液または乾燥粉末医薬組成物は、医薬組成物を適切な様式で送達する装置から経口的または経鼻的に投与され得る。
【0050】
単一剤形を作製するための1つ以上の賦形剤と組み合わされる核酸セグメントの量は、治療される被験者および特定の投与経路に応じて異なることが必要となる。投与経路および投与計画に関するさらなる情報については、読者は、Chapter 25.3 in Volume 5 of Comprehensive Medicinal Chemistry(Corwin Hansch;Chairman of Editorial Board)、Pergamon Press 1990を参照のこと。
【0051】
さらに本明細書に提供されるのは、本明細書に開示される、治療有効量の少なくとも1つの抗炎症剤および治療有効量の少なくとも1つの核酸セグメントを含む医薬組成物を含む医薬キットである。かかるキットは、薬学的に許容可能なアジュバント、希釈剤または担体を含む容器、および当業者にとって容易に理解できる追加的容器などの様々な通常の医薬キット成分をさらに含んでもよい。投与されるべき成分の量、投与のためのガイドライン、および/または成分を混合するためのガイドラインをインサートまたはラベルのいずれかとして示す使用説明書もまた、キットに含めることができる。
【0052】
方法
一実施形態では、本開示は、複数の抗炎症性脂質ナノ粒子を含む医薬組成物をそれを必要とする被験者に投与するための方法を提供する。
【0053】
用語「被験者」は、温血哺乳類、例えば、霊長類、雌ウシ、ブタ、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウサギ、ラット、およびマウスを含む。一部の実施形態では、被験者は、霊長類、例えばヒトである。一部の実施形態では、被験者は、治療を必要とする(例えば、被験者は、治療から生物学的または医学的に恩恵を得ることになる)。
【0054】
本明細書に開示される抗炎症性脂質ナノ粒子はさらに、例えば核酸セグメント、例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチド、DNA、mRNA、siRNA、Cas9-ガイドRNA複合体の標的細胞および組織への選択的送達のためのプラットフォームとして役立ててもよい。したがって、一実施形態は、少なくとも1つの核酸セグメントを細胞に送達する方法であって、細胞を、インビトロまたはインビボで、複数の抗炎症性脂質ナノ粒子および治療有効量の少なくとも1つの核酸セグメントを含む医薬組成物と接触させることを含む、方法である。一部の実施形態では、核酸セグメントは、ポリペプチドの発現を、例えば発現を増強または低減することにより、またはその発現を上方制御または下方制御することにより調節する。
【0055】
別の実施形態は、治療有効量の少なくとも1つの核酸セグメントをそれを必要とする被験者に送達するための方法であって、複数の抗炎症性脂質ナノ粒子および治療有効量の少なくとも1つの核酸セグメントを含む医薬組成物を被験者に投与することを含む、方法を提供する。
【0056】
複数の抗炎症性脂質ナノ粒子および本明細書に開示される少なくとも1つの核酸セグメントを含む医薬組成物は、被験者におけるポリペプチドの過小発現、被験者におけるポリペプチドの過剰発現、および/または被験者におけるポリペプチドの不在/存在によって特徴づけられる多種多様な障害および疾患を治療するために用いられてもよい。したがって、開示されるのは、疾患または障害を患う被験者を治療する方法であって、複数の抗炎症性脂質ナノ粒子および治療有効量の少なくとも1つの核酸セグメントを含む医薬組成物を被験者に投与することを含む、方法である。
【0057】
さらに開示されるのは、非抗炎症性LNPの投与に関連した免疫応答を阻害する方法であって、治療有効量の少なくとも1つの親油性抗炎症剤を含む複数の抗炎症性脂質ナノ粒子を含む医薬組成物をそれを必要とする被験者に投与することを含む、方法である。例えば、本開示に従う抗炎症性脂質ナノ粒子は、免疫応答の少なくとも1つのバイオマーカーまたは症状の発現または活性を阻害および/または寛解し得る。少なくとも1つの実施形態では、本明細書に開示される方法は、(浮腫スコアリングによる判定として)注射部位での炎症を低減および/または阻害し、血漿ハプトグロビンの産生を低減および/または阻害し、また炎症促進性マーカー(例えば、サイトカイン、ケモカイン)の量を低減および/または阻害する。したがって、本開示は、炎症促進性マーカーの発現または活性を阻害し、炎症(例えば浮腫)を低減し、かつ血漿ハプトグロビンの産生を低減するための方法であって、治療有効量の少なくとも1つの親油性抗炎症剤および治療有効量の少なくとも1つの核酸セグメントを含む複数の抗炎症性脂質ナノ粒子を含む医薬組成物を投与することを含む、方法を含む。
【0058】
少なくとも1つの実施形態では、浮腫の低減または阻害が認められる。別の実施形態では、血漿ハプトグロビンレベルにおける低減または阻害が認められる。さらに別の実施形態では、血漿炎症性マーカーの低減または阻害が認められる。開示される方法のいずれか1つでは、封入される核酸セグメントの標的活性が阻害されない。例えば、細胞におけるタンパク質発現を増加させるための方法であって、治療有効量の少なくとも1つの抗炎症剤および治療有効量の少なくとも1つの核酸セグメントを含む、本明細書に開示される複数の抗炎症性脂質ナノ粒子を含む医薬組成物を投与することを含む、方法が開示される。
【0059】
炎症促進性マーカーの非限定例として、サイトカインおよびケモカイン、例えば、IL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-8、IL-9、IP-10、IL-12(p40)、IL-12(p70)、IL-13、IL-15、IL-16、IL-17、エオタキシン、FGF-ベーシック、G-CSF、GM-CSF、LIF、MIG、MIP-1、MIP-2、MCP-1、INF-γ、INFα2、RANTES、TNFα、およびIL-1βが挙げられる。例えば、本明細書に開示される方法は、浮腫を低減および/もしくは阻害し、また血漿ハプトグロビンの産生を低減および/もしくは阻害し、かつ/または非抗炎症性LNPの投与に関連した炎症促進性マーカーの産生を、対照レベルを超える百分率にかけて低減および/もしくは阻害する。
【0060】
本明細書で用いられるとき、用語「低減および/または阻害する」は、対照レベルと比べて、約10、20、30、40、50、60、70、80、90パーセント以上の変化(陽性または陰性)を指す。本明細書で用いられるとき、用語「対照レベル」は、未処理の試料もしくは被験者、または開示される親油性抗炎症剤を伴わずに脂質ナノ粒子で処理された試料もしくは被験者を示す。例として、対照レベルは、親油性抗炎症剤の不在下、対照試料中での発現または活性のレベルである。
【0061】
例えば、複数の抗炎症性脂質ナノ粒子を含む医薬組成物をそれを必要とする被験者に投与することを含む、本明細書に開示される方法は、IL-6、IL-8、KC、IP-10、およびMCP-1の産生を約80%以上の百分率にかけて、例えば約85%以上、低減および/または阻害する。
【0062】
さらに本明細書に開示されるのは、非抗炎症性LNPの投与に関連した注射部位で浮腫を阻害するための方法であって、複数の抗炎症性脂質ナノ粒子を含む医薬組成物をそれを必要とする被験者に投与することを含む、方法である。例えば、本明細書に開示される方法は、注射部位で実質的に浮腫をもたらさない。本明細書で用いられるとき、用語「実質的に存在しない浮腫」は、肉眼にとって明白な目に見える腫脹および/または発赤が存在しないことを意味するように理解される。
【0063】
さらに開示されるのは、非抗炎症性LNPの投与に関連した血漿ハプトグロビンの産生を阻害するための方法であって、複数の抗炎症性脂質ナノ粒子を含む医薬組成物をそれを必要とする被験者に投与することを含む、方法である。少なくとも1つの実施形態によると、複数の抗炎症性脂質ナノ粒子を含む医薬組成物をそれを必要とする被験者に投与することを含む、本明細書における方法は、血漿ハプトグロビンの産生を約60%以上の百分率にかけて、例えば約80%以上、阻害する。別の実施形態では、本明細書における方法は、複数の抗炎症性脂質ナノ粒子を含む医薬組成物をそれを必要とする被験者に投与することを含む一方で、正常な血漿ハプトグロビンレベルを維持する。本明細書で用いられるとき、用語「正常な血漿ハプトグロビンレベル」は、3200ng/mL~65000ng/mLの範囲内の血漿ハプトグロビンレベルを含む。
【0064】
さらに開示されるのは、細胞におけるタンパク質の発現を増加させるための方法であって、本明細書に開示される複数の抗炎症性脂質ナノ粒子を含む医薬組成物をそれを必要とする被験者に投与することを含む、方法である。少なくとも1つの実施形態では、タンパク質の発現は、約2時間から最大で24時間にわたり増加してもよい。別の実施形態では、タンパク質の発現は、約3時間から最大で72時間にわたり増加してもよい。
【実施例】
【0065】
本開示の態様は、本開示の脂質ナノ粒子および組成物の調製ならびに本開示の脂質ナノ粒子を用いるための方法について詳述する以下の非限定例を参照することにより、さらに規定され得る。材料および方法の双方に対する多くの修飾が、本開示の範囲から逸脱することなく実施され得ることは当業者に明らかになるであろう。
【0066】
mRNAを含有するLNPの調製
クエン酸塩緩衝液中のmRNA1の溶液は、MilliQ水に溶解したmRNA1、100mMクエン酸塩緩衝液(pH3)およびMilliQ水を混合することによって調製し、50mMクエン酸塩の溶液を得た。エタノール(99.5%)中の脂質溶液は、4つの異なる脂質成分:イオン化可能脂質(DLin-MC3-DMA、Merck-32、KL10またはAcuitas-5);コレステロール(Sigma-Aldrich);DSPC(ジステアロイルホスファチジルコリン、Avanti Polar Lipids Inc);およびDMPE-PEG2000(ジミリストイルホスファチジルエタノールアミン-ポリ(エチレングリコール)2000、NOF Corporation)を用いて調製した。イオン化可能脂質の化学構造を
図1Aに示す。すべての実験における脂質の総濃度は12.5mMであった。親油性抗炎症剤プロドラッグを含有する脂質ナノ粒子は、プロドラッグを脂質エタノール溶液に添加することにより調製した。ロフレポニドの化学構造、ならびに脂肪酸鎖の長さに基づいてR-C5、R-C14.R-C16およびR-C18のように略される異なるプロドラッグを
図1Bに示す。ブデソニドの化学構造、ならびに脂肪酸鎖の長さに基づいてB-C14、B-C16およびB-C18:1のように略される異なるプロドラッグを
図1Cに示す。
【0067】
mRNAおよび脂質溶液は、NanoAssemblr(Precision Nanosystems,Vancouver,BC,Canada)のマイクロ流体混合システムで、水溶液:EtOH=3:1の混合比および12mL/分の一定流速で混合した。混合時、イオン化可能脂質上の窒素原子とmRNA鎖上のリン原子との間の比は3.1に相当した。
【0068】
調製したLNP懸濁液の最初の0.2~0.35mLおよび最終の0.05~0.1mLを廃棄した一方で、体積の残りを試料画分として収集した。試料の試料画分25μLは、10mMリン酸緩衝液975μL(pH7.4)に注射し、Malvern ZetaSizer(ZetaSizer Nano ZS,Malvern Instruments Inc.,Westborough,MA,USA)での強度平均粒子径(「透析前粒子径」)および多分散指数(PDI)を測定するために用いた。残存試料体積分を、Slide-a-lyzer G2透析カセット(10000MWCO,ThermoFischer Scientific Inc.)に直ちに移し、PBS(pH7.4)に対して4℃で一晩透析した。PBS緩衝液の体積は、試料画分体積の500~1000倍であった。次に、試料画分を収集し、この体積から25μLを10mMリン酸緩衝液975μL(pH7.4)に注射し、粒子径(透析後粒子径)およびPDIを再度測定した。
【0069】
最終のmRNA濃度および封入効率百分率(%EE)を、LNPを破壊するためのトリトンX100を用いて、Quant-it Ribogreen Assay Kit(ThermoFischer Scientific Inc.)により測定した。
【0070】
インビボマウス実験
マウス5匹(雌、約12週齢、Crl:Cd1(ICR)、Charles River)の異なる群に、PBS(陰性対照)または脂質ナノ粒子中に配合したmRNA1を投与した。投与前、マウスをイソフルラン5%で軽く麻酔し、注射領域を剪毛した。次に、配合物を異なるマウス群の嚢内領域内に皮下注射した(5ml/kgまたは0.3mgのmRNA/kg)。投与後の血液試料を収集し、血漿を遠心分離により調製した。血漿の一定分量をクライオチューブ(0.5mlのU形状のポリプロピレンクライオチューブ(cap Ref#72.730のSarstedt Microtube)内に移し、ハプトグロビン、サイトカイン/ケモカインおよびmRNA1タンパク質濃度の定量化まで凍結貯蔵した。一部の試験では、血漿試料中の親油性抗炎症剤についても定量化を実施した。投与後24時間、炎症応答の臨床徴候は、注射領域にわたり指で緩やかに押して浮腫を測定することによって評価し、異なるマウスにおいて浮腫があるかまたは浮腫がないかを外観検査により判断した。群(各群はマウス5匹を有する)あたりの浮腫の可視的徴候を呈するマウスの数を合計し、0~5の浮腫スコアを得た。
【0071】
血漿中のハプトグロビンの定量化
ハプトグロビンの血漿濃度は、EMD MilliporeのMILLIPLEX(登録商標)MAP Mouse Acute Phase panel2キット(Merck KGaA,Darmstadt,Germany)により測定した。試料は、まずアッセイ緩衝液で1:20000に希釈し、次に標準およびQCと一緒に96ウェルプレート内に配置した。次に、ビーズを含有する溶液を添加した。ビーズは磁気マイクロスフェアであり、それらの各々は特異抗体でコーティングした。混合物を4℃で一晩インキュベートし、次に反応混合物をストレプトアビジン-PEコンジュゲートとともにインキュベートし、各マイクロスフェアの表面上で反応を完了させた。プレートは、アナライザーのLuminex(登録商標)100で読み取った。各個別のマイクロスフェアを同定し、そのバイオアッセイの結果を蛍光レポーターシグナルに基づいて定量化した。濃度は、5パラメータロジスティック曲線フィッティング法を用いる中央値蛍光強度(MFI)データを用いて評価した。
【0072】
血漿中のサイトカイン/ケモカインの定量化
マウスサイトカイン/ケモカインの血漿濃度は、サイトカイン;IL-6、KC、MCP-1およびIP-10の同時定量化のため、EMD MilliporeのMILLIPLEX(登録商標)MAP Mouse Cytokine磁気ビーズキット(Merck KGaA,Darmstadt,Germany)により測定した。試料は、まずアッセイ緩衝液で1:2に希釈し、次に標準およびQCと一緒に96ウェルプレート内に配置した。ビーズを含有する溶液を添加した。ビーズは磁気マイクロスフェアであり、それらの各々は特異抗体でコーティングした。混合物を4℃で一晩インキュベートし、次に反応混合物をストレプトアビジン-PEコンジュゲートとともにインキュベートし、各マイクロスフェアの表面上で反応を完了させた。プレートは、アナライザーのLuminex(登録商標)100で読み取った。各個別のマイクロスフェアを同定し、そのバイオアッセイの結果を蛍光レポーターシグナルに基づいて定量化した。濃度は、5パラメータロジスティック曲線フィッティング法を用いる中央値蛍光強度(MFI)データを用いて評価した。
【0073】
血漿中のmRNA1タンパク質の定量化
mRNA1タンパク質は、Milliplex Human Liver Protein磁気ビーズ[Merck Millipore,Darmstadt,Germany]を用いて単一分析物として測定した。アッセイは、Bioplex Multiplex Suspension Array System,Luminex 100TM]およびBioplex Manager 6.1ソフトウェアのカーブフィッティングソフトウェア[Bio-Rad Laboratories,Hercules,CA]を用いて実施した。簡潔に述べると、アッセイは、検量線の低領域側を延長するための追加的な較正点を伴う、製造業者の使用説明書に基づく改良されたプロトコルに従って実施した。試料データは、検量線から逆算した(5PLカーブフィッティング)。
【0074】
血漿中の親油性抗炎症剤の定量化
血漿中の親油性抗炎症剤の濃度は、タンパク質沈殿とその後の質量分析検出を伴う液体クロマトグラフィーにより測定した。血漿試料50μLを、体積マーカーとして10ナノモル/Lの5,5-ジエチル-1,3-ジフェニル-2-イミノバルビツール酸を含有するアセトニトリル中の0.2%ギ酸180μLで沈殿させた。3分間のボルテックスおよび遠心分離(4000rpm、4℃、20分)の後、上清を採取し、分析した。上清の分析は、短い逆相HPLCカラムで、迅速な勾配溶出ならびにエレクトロスプレーイオン化および多重反応モニタリング(MRM)獲得を伴う三重四重極装置を用いたMS/MS検出とともに実施した。
【0075】
実施例1:パルミチン酸ロフレポニド/mRNA(1:1 w/w)を含有するLNP
脂質溶液を調製するのに用いられる脂質のモル組成は、DLin-MC3-DMA:DSPC:コレステロール:DMPE-PEG2000=50:10:38.5:1.5(モル/モル)である。さらに、溶液はまた、パルミチン酸ロフレポニド(R-C16)を、透析前LNP溶液中のR-C16の総濃度=0.25mMをもたらす量で含有した。LNP中の4つの脂質およびR-C16の最終モル組成を下の表1に記載する。
【0076】
mRNA1溶液の一定分量1.05mLと脂質およびR-C16溶液0.35mLとを、上記のプロセスに従って混合した。さらに、R-C16およびDMPE-PEG2000(「R-C16対照」)のみを含有する非晶質R-C16ナノ粒子を、上記と同じ混合条件下で調製した。LNPについて記述されたプロトコルを用いての調製の直後、粒子径を測定し、その後、これらの粒子を同様に透析した。測定した透析前および透析後の粒子径および%EEを下の表1aに示す。
【0077】
【0078】
LNP中に組み込まれたパルミチン酸ロフレポニド(R-C16)の量を測定するため、試料900μLを500000gで60分間超遠心し、下層画分300μLおよび元の試料(遠心分離していない)を、シグナルがPDA-CAD検出器を用いて検出されるHPLCを用いて、DLin-MC3-DMAおよびR-C16の含量について分析した。CADシグナルは、DLin-MC3-DMAのために用い、R-C16については、235nmでのUV吸光度最大値を用い、濃度を外部検量線を用いて測定した。2成分間で分析した比を、元の試料における比と比較した。さらに、LNP試料からの異なる画分中のR-C16の濃度を、R-C16およびDMPE-PEG2000(「R-C16対照」)のみのナノ粒子を含有する試料中のR-C16の濃度と比較した。「R-C16対照」試料の分析によると、超遠心分離後、パルミチン酸ロフレポニドが、R-C16を含有するLNP試料と異なり、底部相に完全に局在することが示された。これは、完全に非水溶性であるパルミチン酸ロフレポニドが、混合物中に分離した薬剤粒子を形成しないばかりか、LNP中に組み込まれることを示す。
【0079】
R-C16 LNPに対するHPLCの結果を表1bに示す。DLin-MC3-DMAとR-C16との間の比は、全画分において類似し、元の試料中で見られる場合に密接に関連し、これはLNP中へのパルミチン酸ロフレポニド(R-C16)の組み込みを示す。
【0080】
【0081】
実施例2:非抗炎症性LNP対パルミチン酸ロフレポニド/mRNA(1:1 w/w)LNP
脂質溶液を調製するのに用いられる脂質のモル組成は、DLin-MC3-DMA:DSPC:コレステロール:DMPE-PEG2000=50:10:38.5:1.5であった。さらに、試料S4については、溶液はまた、パルミチン酸ロフレポニド(R-C16)を、透析前LNP溶液中でR-C16の総濃度=0.25mMをもたらす量で含有した。LNP中の4つの脂質およびR-C16の最終モル組成を下の表2に記載する。mRNA1溶液1.05mLと脂質およびR-C16溶液0.35mLとを、一般的説明に従って混合した。測定した透析前および透析後の粒子径を、%EEとともに、下の表2に提示する。
【0082】
【0083】
リン酸緩衝液(PBS)ならびに試料S3およびS4を、上記のように、0.3mgのmRNA/kgの用量で異なるマウス群(N=5)に皮下投与した。浮腫スコアリング、血漿ハプトグロビン、血漿サイトカイン/ケモカインおよび血漿mRNA1タンパク質濃度について得られた結果を
図2A~Dに示す。サイトカイン/ケモカインにおけるデータは、8および24時間後の双方で示す。結果は、本開示に従うLNPを用いることにより、免疫応答のバイオマーカーまたは症状、例えば(浮腫スコアリングとして測定された)炎症、血漿中のハプトグロビンおよびサイトカイン/ケモカインが有意に低下することを示す。さらに、本開示に従うLNPは、タンパク質発現の増加をもたらす。
【0084】
実施例3:非抗炎症性LNP対パルミチン酸ロフレポニド/mRNA(1:1、1:10および1:30 w/w)LNP
脂質溶液を調製するのに用いる脂質のモル組成は、DLin-MC3-DMA:DSPC:コレステロール:DMPE-PEG2000=50:10:38.5:1.5であった。さらに、試料S5、S6およびS7については、溶液はまた、パルミチン酸ロフレポニド(R-C16)を、透析前LNP溶液中でR-C16の総濃度=0.25mM(S5)、0.025mM(S6)または8.3μM(S7)をもたらす量で含有した。LNP中の4つの脂質およびR-C16の最終モル組成を下の表3に記載する。mRNA1溶液1.29mLと脂質およびR-C16溶液0.43mLとを、上記に従って混合した。測定した透析前および透析後の粒子径を、%EEとともに、下の表3に提示する。
【0085】
【0086】
リン酸緩衝液(PBS)および試料S5~S8を、上記のように、0.3mgのmRNA/kgの用量で異なるマウス群(N=5)に皮下投与した。浮腫スコアリング、血漿ハプトグロビン、および血漿タンパク質濃度について得られた結果を
図3A~Cに示す。結果は、(すべての比での)R-C16 LNPを用いることにより、浮腫スコアリングとして測定された炎症およびハプトグロビンが有意に低下することを示す。さらに、(すべての比での)R-C16 LNPは、非抗炎症性DLin-MC3-DMA LNPに対するタンパク質発現の増加をもたらす。
【0087】
実施例4:パルミチン酸ロフレポニド対ロフレポニドLNP
脂質溶液を調製するのに用いる脂質のモル組成は、DLin-MC3-DMA:DSPC:コレステロール:DMPE-PEG2000=50:10:38.5:1.5であった。さらに、試料S9については、溶液はまた、パルミチン酸ロフレポニド(R-C16)を、透析前LNP溶液中でR-C16の総濃度=0.25mMをもたらす量で含有した。この試料においては、mRNA1溶液1.05mLと脂質およびR-C16溶液0.35mLとを、上記に従って混合した。試料S10は、21mMロフレポニドのエタノール溶液16μLをDLin-MC3-DMA:DSPC:コレステロール:DMPE-PEG2000 LNPに添加することにより調製し、透析ステップ後、所望される組成物を得て、その後の2日間平衡化した。LNP中の4つの脂質およびR-C16またはロフレポニドの最終モル組成を下の表4に記載する。測定した透析前および透析後の粒子径を、%EEとともに、下の表4に提示する(サイズ測定においては、pH7.4のPBSを用いた)。
【0088】
【0089】
リン酸緩衝液(PBS)試料S9およびS10を、上記のように、0.3mgのmRNA/kgの用量で2つのマウス群(N=15)に皮下投与した。浮腫スコアリング、血漿ハプトグロビン、および血漿タンパク質濃度について得られた結果を
図4A~Cに示す。結果は、本開示に従うR-C16 LNPを用いることにより、ロフレポニドを同じモル用量で含有するLNPに対して、浮腫スコアリングとして測定された炎症およびハプトグロビンが有意に低下することを示す。さらに、R-C16 LNPは、ロフレポニドを含有するLNPに対してタンパク質発現タンパク質の増加および延長をもたらす。
【0090】
実施例5:プロドラッグのパルミチン酸ロフレポニドのロフレポニドへの変換
試料S9およびS10(上記参照)を、上記のように、0.3mgのmRNA/kgの用量でマウス(N=16)に皮下投与した。ロフレポニド血漿濃度対時間について得られた結果を
図5に示す。結果は、パルミチン酸ロフレポニドLNPのマウスへの皮下投与後の、パルミチン酸ロフレポニドのロフレポニドへの変換を示す。さらに、結果はまた、ロフレポニドLNPが、パルミチン酸ロフレポニドLNPの使用時に対して有意により高い初期血漿濃度をもたらすことを明示する。これは、パルミチン酸ロフレポニドを含むLNPの投与の場合、相当量のロフレポニドが投与部位から血漿中に漏れる場合のロフレポニド母化合物を有するLNPの場合と比べて、ロフレポニドのかなりの部分が血漿ではなく細胞内に位置することを示す。したがって、本開示に従うLNPは、治療ウインドウの全体的増加をもたらし、需要のある被験者に投与されるべき用量の有意な減少を可能にする。
【0091】
実施例6:吉草酸ロフレポニド、ミリスチン酸ロフレポニド、パルミチン酸ロフレポニドまたはステアリン酸ロフレポニドを有するLNP
脂質溶液を調製するのに用いられる脂質のモル組成は、DLin-MC3-DMA:DSPC:コレステロール:DMPE-PEG2000=50:10:38.5:1.5であった。さらに溶液はまた、吉草酸ロフレポニド(R-C5、試料S12)、ミリスチン酸ロフレポニド(R-C14、試料S13)、パルミチン酸ロフレポニド(R-C16、試料S14)またはステアリン酸ロフレポニド(R-C18、試料S15)を、透析前LNP溶液中でR-CXの総濃度=0.25mM(X=鎖内の炭素の数)をもたらす量で含有した。LNP中の4つの脂質およびR-CXの最終モル組成を下の表6に示す。mRNA1溶液2.475mLと脂質およびR-CX溶液0.825mLとを、一般的説明に従って混合した。測定した透析前および透析後の粒子径を、%EEとともに、下の表6に提示する(サイズ測定においては、pH7.4のPBSを用いた)。
【0092】
【0093】
リン酸緩衝液(PBS)および試料S11~S15を、上記のように、0.3mgのmRNA/kgの用量で異なるマウス群(N=5)に皮下投与した。浮腫スコアリング、血漿ハプトグロビン、および血漿タンパク質濃度について得られた結果を
図6A~Cに示す。結果は、本開示に従うR-C14、R-C16またはR-C18 LNPを用いることにより、非抗炎症性LNPに対して、浮腫スコアリングとして測定された炎症およびハプトグロビンが有意に低下するが、吉草酸ロフレポニド(R-C5)を用いても炎症が有意に影響されなかったことを示す。さらに、R-C14、R-C16またはR-C18 LNPは、非抗炎症性LNPに対してタンパク質発現の増加および延長をもたらすが、R-C5 LNPは、有意に増加した総タンパク質の発現をもたらさなかった(0~24時間)。
【0094】
実施例7:パルミチン酸ロフレポニドの存在下および不在下でのMerck-32を有するLNP
2つの試料を調製し(S16およびS17)、両試料において、脂質溶液を調製するのに用いる脂質のモル組成は、Merck-32:DSPC:コレステロール:DMPE-PEG2000=50:10:38.5:1.5であった。さらに、S16に対して用いた溶液はまた、パルミチン酸ロフレポニド(R-C16)を、透析前LNP溶液中でR-C16の総濃度=0.14mMをもたらす量で含有した。LNP中の4つの脂質およびR-C16の最終モル組成を下の表7に記載する。S16については、mRNA1溶液2.925mLと脂質およびR-C16溶液0.975mLとを上記に従って混合し、またS17については、mRNA1溶液0.75mLと脂質およびR-C16溶液0.25mLとを上記に従って混合した。S16およびS17双方において、イオン化可能脂質(Merck-32)とmRNAヌクレオチドのモル比は6.0であった。測定した透析前および透析後の粒子径を、%EEとともに、下の表7に提示する(サイズ測定においては、pH7.4のPBSを用いた)。
【0095】
【0096】
リン酸緩衝液(PBS)、DLin-MC3-DMAを含有する試料S11およびS14(表6参照)ならびにMerck-32を含有する試料S16~S17を、上記のように、0.3mgのmRNA/kgの用量で異なるマウス群(N=5)に皮下投与した。浮腫スコアリング、血漿ハプトグロビン、および血漿タンパク質濃度について得られた結果を
図7A~Cに示す。結果は、DLin-MC3-DMAまたはMerck-32に基づくLNP双方においてパルミチン酸ロフレポニドを用いることにより、浮腫スコアリングとして測定された炎症およびハプトグロビンが有意に低下することを示す。さらに、DLin-MC3-DMAまたはMerck-32に基づくLNP双方におけるパルミチン酸ロフレポニドの存在は、mRNA1タンパク質発現の増加をもたらす。
【0097】
実施例8:より高いmRNA用量でミリスチン酸ロフレポニドを有し(ミリスチン酸ロフレポニド/mRNA比が1:1および0.3:1 w/wの時)、Merck-32を有するLNP
3つの試料を調製したが(S18~S20)、脂質溶液を調製するのに用いる脂質のモル組成を下の表8に記載する。試料S19およびS20については、脂質混合物は、MC3、DSPC、コレステロールおよびPEG脂質、およびミリスチン酸ロフレポニド(R-C14)を、透析前LNP溶液中でR-C14の総濃度=0.083mM(S19)または0.25mM(SC20)をもたらす量で含んだ。すべての試料は、上の一般的説明に従って混合した。試料S18については、mRNA1溶液の体積は2.13mLであり、脂質溶液の体積は0.71mLであった。試料S19については、mRNA1溶液の体積は3.12mLであり、脂質およびR-C14溶液の体積は1.04mLであった。試料S20は、2つのバッチと同一のバッチからなった(各バッチにおいて、mRNA1溶液の体積は3.21mLであり、脂質およびR-C14溶液の体積は1.07mLであった)。両試料S19およびS20は、Amicon Ultra-15遠心分離フィルターを用いて濃縮し、インビボ投与にとって所望される濃度にした。濃縮ステップ前に、試料S20を構成する2つのバッチを一緒に混合させた。測定した透析前および透析後の粒子径を、%EEとともに、下の表8に提示する(サイズ測定においては、pH7.4のPBSを用いた)。
【0098】
【0099】
リン酸緩衝液(PBS)、DLin-MC3-DMAを含有する試料S18ならびにMerck-32およびミリスチン酸ロフレポニドを含有する試料S20を、上記のように、0.3mgのmRNA/kgの用量で異なるマウス群(N=5)に皮下投与した。さらに、試料S19~S20はまた、1mg/kgのより高いmRNA用量でマウス群(N=5)に皮下投与した。浮腫スコアリング、血漿ハプトグロビン、および血漿mRNA1タンパク質濃度について得られた結果を
図8A~Cに示す。結果は、Merck-32に基づくLNP中にミリスチン酸ロフレポニドをR-C14/mRNA比が1:1で用いることにより、0.3および1mg/kg双方で、浮腫スコアリングとして測定された炎症が低下することを示す。さらに、タンパク質発現が、0.3および1mg/kg用量を比較するとき、(時間間隔0~24時間にわたり)概ね用量比例的な増加を示す。
【0100】
実施例9:ミリスチン酸ロフレポニドの存在下および不在下でのKL10およびAcuitas-5を有するLNP(ミリスチン酸ロフレポニド/mRNA比が1:1 w/w)
脂質溶液を調製するのに用いる脂質のモル組成を下の表9に記載する。試料S23およびS25については、脂質混合物は、イオン化可能脂質、DSPC、コレステロールおよびPEG脂質に加えて、ミリスチン酸ロフレポニド(R-C14)を、透析前LNP溶液中でのR-C14の総濃度=0.28mM(S23)または0.17mM(S25)をもたらす量で含有した。すべての試料は、試料S22およびS23においてN:P=3であり、かつ試料S24およびS25においてN:P=4.9である以外では、一般的説明に従って混合した。試料S21については、mRNA1溶液の体積は2.16mLであり、脂質溶液の体積は0.72mLであった。試料S22およびS23については、mRNA1タンパク質溶液の体積は1.41mLであり、脂質およびR-C14溶液の体積は0.47mLであり、また試料S24およびS25については、mRNA1タンパク質溶液の体積は1.77mLであり、脂質およびR-C14溶液の体積は0.59mLであった。測定した透析前および透析後の粒子径を、%EEとともに、下の表8に提示する(サイズ測定においては、pH7.4のPBSを用いた)。
【0101】
【0102】
リン酸緩衝液(PBS)、DLin-MC3-DMAを含有する試料S21、ミリスチン酸ロフレポニド(R-C14)の不在下および存在下でAcuitas-5を含有する試料S22~23、ならびにミリスチン酸ロフレポニド(R-C14)の不在下および存在下でKL10を含有する試料S24~25を、上記のように、0.3mgのmRNA/kgの用量で異なるマウス群(N=5)に皮下投与した。浮腫スコアリング、血漿ハプトグロビンおよび血漿mRNA1タンパク質濃度について得られた結果を
図9A~Cに示す。結果は、Acuitas-5およびKL10に基づくLNP双方においてミリスチン酸ロフレポニドを用いることにより、浮腫スコアリングとして測定された炎症および血漿ハプトグロビンが、(0.3mg/kg時の)DLin-MC3-DMAに基づくLNPと比べて低下することを示す。さらに、(時間間隔0~24時間にわたる)mRNA1タンパク質発現が、ミリスチン酸ロフレポニドがLNP中に組み込まれるとき、増加する。
【0103】
実施例10:Merck-32単独を有するLNPおよびミリスチン酸ロフレポニド、ミリスチン酸ブデソニド、パルミチン酸ブデソニドまたはオレイン酸ブデソニドを有するLNP
脂質溶液を調製するのに用いる脂質のモル組成は、L608:DSPC:コレステロール:DMPE-PEG2000=50:10:38.5:1.5(試料S26)であった。試料S27はまた、ミリスチン酸ロフレポニド(R-C14)を含有し、試料S29、S30、およびS31については、溶液はまた、ミリスチン酸ブデソニド(B-C14)、パルミチン酸ブデソニド(B-C16)およびオレイン酸ブデソニド(B-C18:1)の各々を、透析前LNP溶液中でR-C14、B-C14、B-C16およびB-C18:1の総濃度=0.154mMをもたらす量で含有した。LNP中の4つの脂質およびR-C14、B-C14、B-C16またはB-C18:1の最終モル組成を下の表10に記載する。mRNA1タンパク質溶液の一定分量3.36mLと脂質およびR-C14、B-C14、B-C16またはB-C18:1溶液1.12mLとを、上記の「mRNAを含有するLNPの調製」セクションの下の上記の一般的説明に従って混合した。すべての試料は、Amicon Ultra-4遠心分離フィルターを用いて濃縮し、次に配合物が0.2mg/mLより有意に高い推定上のmRNA濃度を有するまで、3000rpmおよび8℃で回転した。残存する配合物の塊を収集し、遠心分離フィルターを少ない一定分量のPBS緩衝液で洗浄し、主な試料画分に添加し、約0.2mg/mLの推定上のmRNA濃度を得た。その後、粒子径を再び測定した。測定した透析前および濃縮後の粒子径を、%EEとともに、下の表10に提示する。
【0104】
【0105】
試料S26~S31を、上記のように、0.3mgのmRNA/kgの用量で異なるマウス群(N=5)に皮下投与した。浮腫スコアリング、血漿ハプトグロビン、血漿サイトカイン/ケモカインおよび血漿mRNA1濃度について得られた結果を
図10A~Gに示す。結果は、ミリスチン酸ロフレポニド(R-C14)、パルミチン酸ブデソニド(B-C16)またはオレイン酸ブデソニド(B-C18:1)LNPが、通常のLNP(試料S26)に対して、浮腫スコアリングとして測定された炎症、ハプトグロビンならびにサイトカインIL-6およびKCを有意に低減することを示す。さらに、炎症は、ミリスチン酸ブデソニド(B-C14)を用いる場合と同程度に影響されなかった。さらに、R-C14、B-C16またはB-C18:1 LNPは、通常のLNP(試料S26)に対して、mRNA1発現の増加および延長をもたらした。