(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-02
(45)【発行日】2022-05-13
(54)【発明の名称】容器を充填物で充填する充填システム
(51)【国際特許分類】
B67C 3/22 20060101AFI20220506BHJP
B65B 3/06 20060101ALI20220506BHJP
【FI】
B67C3/22
B65B3/06
(21)【出願番号】P 2018563557
(86)(22)【出願日】2017-08-24
(86)【国際出願番号】 EP2017071281
(87)【国際公開番号】W WO2018037063
(87)【国際公開日】2018-03-01
【審査請求日】2020-07-31
(31)【優先権主張番号】102016115891.7
(32)【優先日】2016-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】508120916
【氏名又は名称】クロネス アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ドブリンガー ヨゼフ
(72)【発明者】
【氏名】ペシュル ステファン
(72)【発明者】
【氏名】ボック トビアス
(72)【発明者】
【氏名】ストゥベンホーファー マティアス
【審査官】種子島 貴裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-154147(JP,A)
【文献】特開2011-011775(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B67C 3/22
B65B 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器(2)を充填物(16)で充填する充填システム(1)であって、
前記容器(2)を
飲料である前記充填物(16)で充填する
充填装置(10)と、
前記充填物(16)を前記容器(2)に対して偏向する静電場(30)を有している偏向装置(3)と、
を備えている、
充填システム(1)。
【請求項2】
前記充填装置(10)は、フリージェット法で前記容器(2)を充填するように構成されており、
前記偏向装置(3)は、前記フリージェットに作用する、
請求項1に記載の充填システム(1)。
【請求項3】
充填済みの前記容器(2)を搬送する搬送装置が設けられており、
前記偏向装置(3)は、前記容器(2)に収容された前記充填物(16)に作用する、請求項1または2に記載の充填システム(1)。
【請求項4】
充填済みの前記容器(2)は、移送領域において後段の搬送装置へ移送され、
前記偏向装置(3)は、前記移送領域において前記容器(2)に収容された前記充填物(16)に作用する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の充填システム(1)。
【請求項5】
前記偏向装置(3)は、プラスチックや硬質ゴムなどの静電的に帯電された素子によって形成されている、
請求項1から4のいずれか一項に記載の充填システム(1)。
【請求項6】
前記偏向装置(3)は、コンデンサによって形成されており、好ましくはコンデンサ板によって形成されている、
請求項1から5のいずれか一項に記載の充填システム(1)。
【請求項7】
前記偏向装置(3)は、前記容器(2)を搬送する搬送装置とともに変位される、
請求項1から6のいずれか一項に記載の充填システム(1)。
【請求項8】
前記偏向装置(3)は、不動であり、前記容器(2)の搬送領域に沿って延びている、請求項1から6のいずれか一項に記載の充填システム(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器を充填物で充填する(例えばガラスやプラスチックの瓶を飲料で充填する)充填システムに関連する。
【背景技術】
【0002】
被充填容器が搬送装置により搬送される充填システムが知られている。当該搬送装置は、ロータリー機械やカルーセルの形態をとるように構成される。例えば、充填中に軸を中心として回転するロータリー充填機において被充填容器の充填がなされる構成が知られている。この場合、実際に被充填容器に充填物を充填する複数の充填エレメントが、ロータリー充填機の周囲に設けられている。
【0003】
充填プロセス中に被充填物が押圧されて充填エレメントと被充填物の間に液密接続が形成されるか、フリージェットプロセスと称される方式により充填がなされるかによって、様々な充填方式が知られている。フリージェットプロセスにおいては、被充填容器と充填エレメントの間に液密シールが設けられることなく、充填物流が充填バルブからその下方に配置された被充填容器へ落下する。すなわち、フリージェットプロセスにおいて、充填物の「フリージェット」部分は、案内や保護を受けることなく被充填容器へ落下する。
【0004】
ロータリー充填機の回転により、充填プロセス中の充填物に遠心力が作用し、充填物の流れは径方向外側へ偏向される。よって、従来のロータリー充填装置においては、フリージェット充填中における回転可能速度に上限が存在する。当該上限は、充填物のフリージェット流の遠心力による偏向に特に依存する。速度が超過すると、充填プロセス中にフリージェット流が被充填容器の口部に当たることがある。この場合、フリージェット流が残らず容器の内部へ運ばれず、確実かつ完全に容器を充填物流で充填することを保証できない。また、プラントの汚染にも繋がる。
【0005】
飲料充填プラントにおいては、ロータリー充填機を通過して充填物の充填がなされてから下流側の搬送装置(移送スターホイールなど)へ容器を移送することが知られている。搬送スターホイールにおいては、充填済み容器が再び円形状の経路を搬送される。搬送装置(特に移送スターホイール)は、充填済みではあるが閉栓はされていない容器を、閉栓装置へ搬送するために設けられている。閉栓装置も同様に、ロータリー型として構成されうる。
【0006】
各移送点(ロータリー充填機から移送スターホイール、移送スターホイール同士の間、移送スターホイールからロータリー閉栓装置)においては、回転軸の不一致性により、回転による遠心力の変化が生じ、それが容器(ひいては容器内の充填物)に作用する。よって、各移送点においては、充填物に作用する力に変化が生じる。これにより、充填物にインパルスが加わり、容器内で充填物が跳ね回る動きに繋がる。この場合においても、充填済み容器を移送する各回転移送装置の回転速度に上限が設定される。充填済み容器から充填物がこぼれるのを防ぐことを要するからである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記に鑑み、本発明は、性能の向上とこぼれ出し傾向の抑制の少なくとも一方がなされた充填システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、請求項1に記載の装置により達成される。さらなる有利な構成は、従属請求項に記載の特徴により得られる。
【0009】
したがって、容器を充填物で充填する充填システムが提供される。
当該充填システムは、
前記容器を前記充填物で充填する装置と、
前記充填物を前記容器に対して偏向する静電場を有している偏向装置と、
を備えている。
【0010】
例えば遠心力によって充填物の過剰な偏向が生じることにより、当該充填物の容器からのこぼれ出しに繋がったり、充填プロセス中における充填物流の容器への不正確な衝突に繋がったりする。このような現象が生じる領域に当該充填物を当該容器に対して偏向する静電場を有している偏向装置が設けられていることにより、望ましくない偏向を相殺する偏向を、充填物あるいは充填物流に作用させることができる。
【0011】
この手法は、水分が双極子モーメントを有している事実を利用している。静電場が印加されると、負に帯電された水分子の端が当該静電場の正に帯電された端に誘引される。したがって、偏向装置による静電場の印加により充填物の偏向あるいは迂回がなされうる。
【0012】
よって、例えば充填物がフリージェット法(充填エレメントと被充填容器の間に位置する開放空間を充填物が通過する)を用いて充填される場合、静電場が印加されることにより、当該静電場により生成される誘引力で遠心力を相殺する作用が、充填物に対して生じうる。これにより、遠心力による充填物流の偏向が抑制あるいは相殺されうる(偏向方向を逆にすることもできる)。充填物に加わる力は、印加されて当該充填物に実際に作用する静電場の強さに依存する。
【0013】
加えて、静電場の使用(印加)により、充填済み容器がある搬送装置から別の搬送装置へ移送される際、充填済み容器が充填装置から搬送装置へ移送される際、および充填済み容器が搬送装置から閉栓装置へ移送される際の少なくとも一つにおいて、移送領域において加わる衝撃と充填物に作用する力の変化の少なくとも一方による充填物の過剰な偏向を相殺するような静電場も、上記の偏向装置によって作用させることができる。これにより、ある装置から次の装置への移送位置において容器内の充填物が跳ね出すあるいはこぼれ出す傾向が、抑制あるいは完全に排除されうる。
【0014】
したがって、静電場を伴う上記の偏向装置を設けることにより、同じ充填システムをより高速に稼動させることができる。各移送位置における充填済み容器からの充填物の跳ね出しやこぼれ出しが改善されるからである。これに加えてあるいは代えて、フリージェットによる被充填容器への充填物の充填がより正確になされるからである。全体的な跳ね出しやこぼれ出しの傾向が抑制されうるので、意図せず容器に流入しない充填物、あるいは容器から逸脱する充填物が低減あるいは撲滅され、正確な充填結果が得られる。
【0015】
偏向に静電場を用いる偏向装置が使用されることにより、衛生的な充填がなされうる。充填物を偏向させるために当該充填物への接触を伴う必要がないからである。代わりに、実際の充填物(すなわち充填物流)から離間するように配置された装置によって静電場が提供されうる。これにより、偏向装置による充填物の衛生的障害を排除できる。よって、フリージェットの効果(例えば、被充填容器の口に充填エレメントを接触させる必要性をなくすこと)を得つつ、システム性能の改善やロータリー充填機の小径化を目的とするロータリー充填機の高速回転の要求に応えることができる。
【0016】
さらに、上記の偏向装置により、被充填容器によって提供される受容空間内の好適な位置に衝突するようにフリージェットを偏向することも可能である。この点は、例えば泡立ちやすい充填物で充填が行なわれる場合に重要である。充填プロセス中における泡立ちやすさは、特に被充填容器内における充填物の衝突点に依存する。例えば、被充填容器の内壁にまず衝突するように充填物流を向けると有利でありうる。続いて、充填物流がこの位置から容器の底へスライドされる。これにより、少なくとも充填の開始時において、充填物がそのまま静かに注がれる。しかしながら、泡立ちやすさを低減するために、被充填容器の底自体に衝突点を設定することもまた有利でありうる。よって、提案に係る偏向装置によれば、静電場の印加を通じて、充填物の泡立ちやすさを低減するという上述した有利な効果に加えて、システム全体の性能を高めることもできる。泡立ちやすさが低減されると、充填プロセス全体が短縮化されうるからである。また、充填物を安静化するのに必要な時間が低減されうるからである。
【0017】
加えて、偏向装置を設けることにより、充填済み容器がある搬送装置から別の搬送装置へ移送される領域における充填物のこぼれ出しやすさを低減することができる。これにより、システムの全体的な出力性能が増大されうる。容器からの充填物のこぼれ出しや充填物流の容器への不正確な衝突が少なくとも低減され、場合によっては完全に回避されうる。よって、同じ規模のシステムであれば、全体の出力性能が高められうる。あるいは、システムの規模が小さくされうる。各搬送装置(ロータリー充填機や搬送スターホイールなど)の回転速度が増加されうるとともに、小径化が可能だからである。
【0018】
結果として、システム全体の効率が上がる。
【0019】
好ましくは、前記充填装置は、フリージェット法で前記容器を充填するように構成されており、前記偏向装置は、前記フリージェットに作用する。これにより、フリージェット法の有利な効果を得つつ、システム性能の向上やシステムの小型化に係る要求に応えることができる。
【0020】
好ましくは、充填済みの前記容器を搬送する搬送装置が設けられており、前記偏向装置は、前記容器に収容された前記充填物に作用する。これにより、生じた遠心力による充填物のこぼれ出しを回避でき、システムの性能がさらに向上されうる。
【0021】
さらに有利な構成においては、充填済みの前記容器は、移送領域において後段の搬送装置へ移送され、前記偏向装置は、前記移送領域において前記容器に収容された前記充填物に作用する。これにより、システムの性能がさらに向上されうる。充填済み容器の清浄な移送がなされうるとともに、充填物の損失が回避されうる。
【0022】
前記偏向装置がプラスチックや硬質ゴムなどの静電的に帯電された素子によって形成されている場合、充填物流と充填物の少なくとも一方の偏向をなしうる偏向装置の構成を低コストで得られる。
【0023】
これに加えてあるいは代えて、前記偏向装置は、コンデンサ(好ましくはコンデンサ板)によって形成されうる。すなわち、静電場は、コンデンサ板の間に生成される。コンデンサを用いる構成は、印加される電圧を通じて静電場の強度が規制されうる点において有利である。このようにして生成された静電場により得られる充填物の空間的偏向は、充填物の特性(粘度、水分含有量など)や対応するシステムの設定(充填機カルーセル、搬送スターホイール、閉栓機の回転数など)に適合したものとされうる。生成される静電場の強度が規制されることにより、得られる偏向の規制もなされうる。これにより、異なる出力レベル、製品、容器形状に柔軟に適合可能なシステムが得られる。
【0024】
前記偏向装置は、前記容器を搬送する搬送装置とともに変位されることが好ましい。例えば、偏向装置は、適当な回転搬送装置とともに変位されうる。偏向装置は、例えば容器受けや充填エレメントの領域に配置され、これらとともに変位されうる。しかしながら、そのような構成の場合、各容器ホルダが偏向装置を備えることを要する。
【0025】
これに加えてあるいは代えて、前記偏向装置は、不動であり、かつ偏向が必要とされる前記容器の搬送領域に沿って延びていてもよい。当該搬送領域は、例えば、フリージェット法による容器への充填物の充填が実際に行なわれるロータリー充填機の搬送領域でありうる。当該領域は、必ずしも全周にわたって設けられることを要しない。充填は、所定の処理区間で行なわれることが一般的なためである。
【0026】
前記偏向装置は、ある搬送装置から別の搬送装置への容器の移送がなされる領域にも設けられうる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
本発明のさらなる好適な実施形態と態様は、以下に列挙する図面と以降の記載を通じてより詳細に説明される。
【0028】
【
図1】安静時において容器が充填されるフリージェット充填プロセスを模式的に示している。
【
図2】従来技術に係るロータリー型充填機により低速で行なわれるフリージェット充填プロセスを模式的に示している。
【
図3】従来技術に係るロータリー型充填機により高速で行なわれるフリージェット充填プロセスを模式的に示している。
【
図4】提案に係る偏向装置が設けられたロータリー型充填機により高速で行なわれるフリージェット充填プロセスを模式的に示している。
【
図5】充填物が充填され、安静状態にある容器を模式的に示している。
【
図6】充填物が充填され、従来技術に係る高速のロータリー搬送装置内にある容器を模式的に示している。
【
図7】充填物が充填され、従来技術に係るロータリー型搬送装置から後段のロータリー型搬送装置へ移送される容器を模式的に示している。
【
図8】充填物が充填され、提案に係る偏向装置が設けられたロータリー型搬送装置から後段のロータリー型搬送装置へ移送される容器を模式的に示している。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図面の補助を得つつ、好適な実施形態の例が以下に記載される。各図においては、同一または同様の要素、あるいは同一の効果を奏する要素は、同一の参照符号により指示される。これらの要素について繰り返しとなる説明の一部は、冗長性を避けるために省略される。
【0030】
図1は、充填システム1の断面を模式的に示している。充填システム1は、充填エレメント10を備えたロータリー型の充填装置を有している。充填エレメント10は、充填物出口12を有している。充填物は、充填エレメント10から流出する。すなわち、充填物は、充填エレメント10の充填物出口12から出て、充填物流14として被充填容器2へ流れる。被充填容器2は、首部20を有している。首部20は、容器口22を区画している。充填物流14は、被充填容器2の容器口22を通って被充填容器2の内部へ流入する。被充填容器2が完全に空であれば、充填物流14は、被充填容器2の底26における衝突点24に衝突する。
【0031】
図1に示される実施形態例に係る充填システム1は、ロータリー充填機の周辺に配置された複数の充填エレメント10を有していることが一般的である。複数の充填エレメント10が巡回されると、それらの下方に配置された複数の容器2もともに移動し、充填物による充填を受ける。
【0032】
本実施形態例においては、複数の充填エレメント10は、フリージェット充填用とされている。したがって、被充填容器2は、充填エレメント10に対して押し付けられることはない。代わりに、これらの間には開放空間が存在する。充填エレメント10の充填物出口12から出た充填物流14は、被充填容器2の容器口22に入る前に、当該開放空間を通過する。すなわち、充填物流14の少なくとも一箇所は、充填エレメント10と容器2のいずれにも直接的に包囲されていない。充填物は、当該開放空間をそのまま自由に落下する。
【0033】
図1に示される安静状態においては、充填物流14は、被充填容器2の中程を通って落下し、衝突点24において底26の中央に衝突する。
【0034】
図2は
図1と同じ構成であるが、被充填容器2と充填エレメント10がロータリー充填機の軸を中心とする回転方向への変位に曝されている場合が示されている。ここで生じている遠心力によって充填物流14が外方へ偏向されていることがわかる。よって、充填物流14は、被充填容器2の底26の中央に衝突することはなく、衝突点24は、外方へ移動する。図示の実施形態例においては、充填物流14は、ちょうど被充填容器2の底26と円筒壁の間の角部に衝突している。これにより、泡が形成されやすくなる。ロータリー充填機の回転速度が緩やかであっても、泡の形成されやすさは強まる。結果として、充填プロセス全体の速度を増すことができない。これに加えてあるいは代えて、充填プロセスは、充填の実際の終了への到達に係る制限に曝される。
【0035】
図3は、
図1および
図2に示された装置であるが、ロータリー充填機が高速で回転しており、遠心力によって充填物流14の一部が被充填容器2の首部20に当たる程度まで偏向されている状態が示されている。これにより、容器口22を通過して容器2に入らない充填物流14が存在する。すなわち、
図3は、遠心力によって充填物流14に偏向が生じる結果として、充填物流14の跳ねやこぼれが見られる状況を示している。被充填容器2に導入される充填物の量が正確に測れないので、充填結果は不十分なものとなる。また、容器の外に流れ落ちた充填物によってプラントや容器が汚れる。さらに、被充填容器2に入らなかった充填物は廃棄を要するので、無駄が生じる。
【0036】
図4は、本明細書において提案される充填システム1を示している。充填システム1は、ロータリー充填機上に配置された充填エレメント10を有している。この充填エレメント10もまた、充填物流14によって容器2に充填物を充填するように構成されている。少なくとも充填物流14が自由落下する領域(すなわち、少なくとも充填物流14が充填エレメント10の充填物出口12から脱する点から当該充填物流14が被充填容器2の容器口22に進入する点までの領域)に、偏向装置3が設けられている。しかしながら、偏向装置3は、充填物流14の別の領域に設けられてもよく、充填物流14の全体に作用するように設けられてもよい。
【0037】
偏向装置3は、静電場30を提供する。静電場30は、充填物流14に作用してこれを
図4に示される偏向面3に向かって偏向させる。
【0038】
図4に示される装置、すなわち充填エレメント10が、被充填容器2とともにロータリー充填機の軸を中心として回転すると、充填物流14に作用する遠心力が、偏向装置3を設けることによって相殺されうる。したがって、
図3に示されるような充填物流14の強い偏向が、偏向装置3を設けることによって低減あるいは完全に解消されうる。充填物(すなわち充填物流14)に偏向装置3(すなわち静電場30)によって印加される力は、遠心力と逆向きに作用し、結果として充填物流14に作用する力が低減もしくは相殺される。
【0039】
これにより、
図3に示される状態と比較して衝突点24が被充填容器2の底26の側へ移動する。よって、偏向装置3を設けることにより、容器口22を通じて充填物流14全体を被充填容器2へ進入させることができるだけでなく、被充填容器2の底26に対する衝突点24を、泡立ちやすさを有利に低減できる箇所へ導くことができる。
【0040】
よって、
図3に示されるように充填物流14を外方へ変位させることなく(充填物の損失、被充填容器2の不正確な充填、およびプラントの汚染を引き起こすことなく)、ロータリー充填機の回転速度を上げ、システム1を高速で稼動させることができる。
【0041】
これにより、プラントの全体的な能力も向上されうる。
【0042】
図示された実施形態例においては、偏向装置3は、コンデンサ板の形態とされている。コンデンサ板は、遠心力による偏向に逆らって充填物流14を引き寄せうるように帯電されている。
【0043】
図示された実施形態例においては、偏向装置3は、不動に配置されており、ロータリー充填機とともに回転しない。他方、偏向装置3は、充填物による被充填容器のフリージェット充填が実際に行なわれる領域にのみ設けられている。具体的には、偏向装置3は、容器2がロータリー充填機に受容されている領域、または充填済み容器が次の搬送装置へ移送される前に充填物の安置がなされる領域には設けられない。
【0044】
偏向装置3は、コンデンサの形態で設けられることが好ましい。この場合、充填物に作用する静電場が、コンデンサに印加される電圧を通じて調節されうる。よって、偏向装置3によりなされる偏向もまた、機械の速度(具体的には、回転速度、および回転により生じる遠心力)に応じて調節されうる。これにより、衝突点24を最適位置に近づけたり維持したりすることが随時可能であり、容器内で充填物が安静化するまでの時間を短縮できる。
【0045】
偏向装置3は、静電的に帯電された素子(静電的に帯電された板など)によっても実現されうる。静電的に帯電された素子は、プラスチックや硬質ゴム材料の形態で提供されうる。このような構成は、素子を帯電するための独立した電圧源が不要である点において有利である。例えば、不動の静電的に帯電された素子の静電的帯電は、ロータリー装置に配置された帯電素子を通過させることによって維持できる。これにより、偏向装置3の静電的帯電は、充填動作中を通じて持続する。
【0046】
図5から
図8は、充填物16による充填が既になされている充填済み容器2を示している。このような容器2の状態は、例えばロータリー充填機による充填プロセスの完了時において得られる。充填済み容器2において、充填物16は、充填物表面高さ18に達している。容器口22は、開放されたままである。すなわち、容器2は、充填済みではあるが閉栓はなされていない。
【0047】
例えば
図5に示されるように、充填済み容器2が安静状態にある場合、充填物表面高さ18は、ほぼ水平である。
【0048】
図6は、回転している搬送装置内の容器を示している。この場合、充填済み容器2は、搬送カルーセル、搬送スターホイールなどの周部に保持され、当該カルーセルの軸を中心として回転する。したがって、充填物表面18は、遠心力の作用により外方へ押され、メニスカスを形成する。
【0049】
ある回転搬送装置から後段の別回転搬送装置へ充填済み容器2が移送されると、
図6に示されるそれまで偏っていた充填物表面18は、逆方向へ偏った充填物表面19を形成する。この逆方向への偏りは、充填済み容器2内の充填物16に作用する遠心力が急激に変化することによって生じる。当該変化は、ある搬送装置から次の搬送装置への移送中に回転軸が急激に変化することによって生じる。
【0050】
すなわち、ある搬送装置から次の搬送装置への充填済み容器2の移送は、充填物表面18に、
図7において符号18で示される位置から符号19で示される位置への強い偏りを引き起こす。移送の速度と充填物に作用する力の変化の急激さによっては、充填物が容器口22を越えて跳ね出しうる。充填物に作用する力が変化して別の力と重なり合うと、このような跳ね出しが起こりうる。
【0051】
図8は、本提案に係る偏向装置3を再度示している。偏向装置3により、前述した遠心力の作用が相殺されうる。図示された実施形態例においては、カルーセルの軸を中心とする充填済み容器2の回転によって例えば
図6に示されるようにそれまで偏っていた充填物表面18は、偏向装置3の作用の影響を受けて符号19で示されるように平準化される。したがって、充填済み容器が後段の搬送装置へ移送されるとき、跳ね挙動が抑制される。別の偏向装置を後段の搬送装置における逆側に設けることにより、跳ね挙動の発生がさらに抑制あるいはほぼ撲滅されうる。
【0052】
静電場30を提供する偏向装置3を使用する結果、高速回転時におけるフリージェットの衝突あるいは照準の不具合と、ある回転搬送装置から後段の回転搬送装置への移送中における充填物の跳ね出しの双方が、抑制または解消されうる。
【0053】
発明の範囲から逸脱することなく可能な限りにおいて、各実施形態例について記載された各特徴は、組合せと交換の少なくとも一方が可能である。
【符号の説明】
【0054】
1:容器を充填物で充填するための充填システム、10:充填エレメント、12:充填物出口、14:充填物流、16:充填物、18:充填物表面、19:逆方向への偏り、2:容器、20:首部、22:容器口、24:衝突点、26:底、3:偏向装置、30:静電場