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▶ アセンシア・ダイアベティス・ケア・ホールディングス・アーゲーの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-02
(45)【発行日】2022-05-13
(54)【発明の名称】分析物濃度決定のシステム誤差補償
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/72 20060101AFI20220506BHJP
   G01N 21/27 20060101ALI20220506BHJP
   G01N 21/78 20060101ALI20220506BHJP
   G01N 27/26 20060101ALI20220506BHJP
   G01N 27/416 20060101ALI20220506BHJP
【FI】
G01N33/72 A
G01N21/27 F
G01N21/78 C
G01N27/26 371A
G01N27/26 371B
G01N27/26 371D
G01N27/416 336C
G01N27/416 338
【請求項の数】 3
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019039413
(22)【出願日】2019-03-05
(62)【分割の表示】P 2018006329の分割
【原出願日】2014-03-11
(65)【公開番号】P2019109251
(43)【公開日】2019-07-04
【審査請求日】2019-03-05
【審判番号】
【審判請求日】2021-06-15
(31)【優先権主張番号】61/781,950
(32)【優先日】2013-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516106184
【氏名又は名称】アセンシア・ダイアベティス・ケア・ホールディングス・アーゲー
【氏名又は名称原語表記】Ascensia Diabetes Care Holdings AG
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】特許業務法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】ウー,ピン
【合議体】
【審判長】福島 浩司
【審判官】樋口 宗彦
【審判官】伊藤 幸仙
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/231105(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N33/72
G01N21/27,27/327
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料中の分析物濃度を決定するための方法であって、
試料から少なくとも2つの非補償分析物応答性出力シグナルを生成させること
前記少なくとも2つの非補償分析物応答性出力シグナルから前記試料についての疑似参照濃度値を決定すること
ここで、前記疑似参照濃度値が、
前記少なくとも2つの非補償分析物応答性出力シグナルの各々についての分析物濃度を決定すること、及び
前記少なくとも2つの非補償分析物応答性出力シグナルの前記分析物濃度を平均化すること、
により決定され
決定された前記疑似参照濃度値に応じて、前記少なくとも2つの非補償分析物応答性出力シグナルの各々についてのシステム誤差を補償するための、濃度ベースのアンカーパラメーターを決定することと、
ここで、前記濃度ベースのアンカーパラメーターが、
前記濃度ベースのアンカーパラメーター=(前記非補償分析物応答性出力シグナルから決定された分析物濃度-前記疑似参照濃度値)/前記疑似参照濃度値
に従って決定され
前記システム誤差が補償された、前記試料の最終的な分析物濃度を、
前記最終的な分析物濃度=前記非補償分析物応答性出力シグナルから決定された分析物濃度/(1+補償関係)に従って決定することと
を含み、
ここで、前記補償関係が、決定された前記濃度ベースのアンカーパラメーターを組み入れた多変量回帰により規定される、
方法。
【請求項2】
前記少なくとも2つの非補償分析物応答性出力シグナルが、第一の出力シグナルと第二の出力シグナルを含み、
前記第一の出力シグナルの前記濃度ベースのアンカーパラメーターが、第一の濃度ベースのアンカーパラメーターであり、
前記第二の出力シグナルの前記濃度ベースのアンカーパラメーターが、第二の濃度ベースのアンカーパラメーターであり、
前記第一の濃度ベースのアンカーパラメーターが、
前記第一の濃度ベースのアンカーパラメーター=(前記第一の出力シグナルから決定された分析物濃度-前記疑似参照濃度値)/前記疑似参照濃度値
である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第二の濃度ベースのアンカーパラメーターが、
前記第二の濃度ベースのアンカーパラメーター=(前記第二の出力シグナルから決定された分析物濃度-前記疑似参照濃度値)/前記疑似参照濃度値
である、請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、参照によってその全体が組み入れられる、2013年3月14日に出願された「Compensation of Analyte Concentration Determinations Through Linkage of System and Signal Errors」という表題の米国仮出願第61/781,950号の恩典を主張するものである。
【0002】
背景
バイオセンサーシステムは、血液、血清、血漿、尿、唾液、間質液又は細胞内液などの生物学的流体試料の分析を提供する。典型的には、システムは、試験センサー中に存在する試料を分析する測定装置を含む。試料は、通常、液体の形態であり、生物学的流体であることに加えて、抽出物、希釈物、濾過物又は再構成沈殿物などの生物学的流体の派生物でもあり得る。バイオセンサーシステムによって実施される分析は、生物学的流体中の、アルコール、グルコース、尿酸、ラクタート、コレステロール、ビリルビン、遊離脂肪酸、トリグリセリド、タンパク質、ケトン類、フェニルアラニン又は酵素類などの1つ以上の分析物の存在及び/又は濃度を決定する。例えば、糖尿病者は、食事及び/又は薬物治療の調整のために、バイオセンサーシステムを使用して血液中のA1c又はグルコースレベルを決定し得る。
【0003】
ヘモグロビン(Hb)を含む血液試料中で、総ヘモグロビン(THb)及び糖化ヘモグロビン(HbA1c)の存在及び/又は濃度が決定され得る。HbA1c(%-A1c)は、糖尿病患者における糖コントロールの状態を反映したものであり、試験前の3か月間の平均糖コントロールへの見解を提供する。糖尿病個体にとって、%-A1cの正確な測定は、血糖レベルの即時測定によって提供されるよりも長期間にわたって、患者が食事及び/又は薬物治療で血糖レベルをコントロールしているかを決定するのに役立つ。即時の血糖測定としては、その測定がなされる場合以外は血糖コントロールを示さない。
【0004】
バイオセンサーシステムは、1つ以上の分析物を分析するように設計され得、異なる容量の生物学的流体を使用し得る。いくつかのシステムは、一滴の血液、例えば、容量で0.25~15マイクロリットル(μL)を分析し得る。バイオセンサーシステムは、卓上式、可搬式及び同様の測定装置を使用して実行され得る。可搬式の測定装置は、携帯式であり得、試料中の1つ以上の分析物の同定及び/又は定量化を可能にし得る。可搬式測定システムの例は、ニューヨーク州タリタウンのBayer HealthCareのContour(登録商標)メーターを含み、一方で卓上式測定システムの例は、テキサス州オースティンのCH Instrumentsから入手可能なElectrochemical Workstationを含む。
【0005】
バイオセンサーシステムは、光学的及び/又は電気化学的方法を使用して生物学的流体を分析し得る。いくつかの光学システムでは、分析物濃度は、光で同定可能な種(分析物又は分析物と反応する化学指示薬から形成された反応物若しくは生成物など)と相互作用したか又はそれによって吸収された光を測定することによって決定される。他の光学システムでは、化学指示薬は、励起ビームによって照射された場合に、分析物に応答して蛍光を発するか又は発光する。光は、電流又は電位などの電気出力シグナルに変換され得、これが電気化学システムから出力シグナルへと同様に処理され得る。いずれの光学システムでも、システムは、光を測定してそれを試料の分析物濃度と相関させる。
【0006】
光吸収光学システムでは、化学指示薬は、光を吸収する反応生成物を生成する。テトラゾリウムなどの化学指示薬がジアホラーゼなどの酵素と一緒に使用され得る。テトラゾリウムは、通常、分析物のレドックス反応に応答してホルマザン(発色原)を形成する。光源からの入射入力ビームは、試料に向けられる。光源は、レーザー、光発光ダイオードなどであり得る。入射ビームは、反応生成物による吸収に関して選択された波長を有し得る。入射ビームが試料を通過する際に、反応生成物が入射ビームの一部を吸収し、従って入射ビームの強度を減衰又は低減する。入射ビームは、試料から反射されるか又は試料を通って検出器へと伝達され得る。検出器は、減衰された入射ビーム(出力シグナル)を収集及び測定する。反応生成物によって減衰された光の量は、試料中の分析物濃度の指標である。
【0007】
光生成光学システムでは、化学指示薬は、分析物のレドックス反応に応答して蛍光を発するか又は発光する。検出器は、生成された光(出力シグナル)を収集及び測定する。化学指示薬によって産生された光の量は、試料中の分析物濃度の指標であり、検出器からの電流又は電位として表される。
【0008】
反射率を使用する光学システムの例は、血液中のA1cヘモグロビンの濃度を決定する%-A1c層流システムである。これらのシステムは、イムノアッセイ化学を使用し、血液がバイオセンサーシステムの試験センサーに導入されて、そこで試薬と反応し、次いで試薬膜に沿って流れる。血液と接触すると、A1c抗体でコートされたカラービーズが放出され、血液と一緒に検出ゾーン1へと移動する。血液試料中のA1cと検出ゾーン1中に存在するA1cペプチドとの間のカラービーズについての競合のために、A1c抗体に結合していないカラービーズは、ゾーン1に捕捉され、従って、反射率の変化からA1cシグナルとして検出される。血液試料中の総ヘモグロビン(THb)もまた、他の血液処理試薬と反応し、下流へと移動して検出ゾーン2に入り、そこで異なる波長で測定される。血液試料中のA1cの濃度を決定するために、反射率シグナルは、A1c分析物濃度(%-A1c)と比例するが、血液のTHb含量に影響される。しかしながら、THbの測定では、ゾーン2における反射率は、血液試料のTHb(mg/mL)に反比例するが、血液のA1c含量に明らかに影響されない。
【0009】
電気化学システムでは、入力シグナルが試料に印加された場合に、分析物又は分析物濃度に応答する測定可能な種の酸化/還元又はレドックス反応によって生成された電気シグナルから、試料の分析物濃度が決定される。入力シグナルは、電位又は電流であり得、かつ一定、可変、又はACシグナルがDCシグナルオフセットと共に印加される場合のようなそれらの組み合わせであり得る。入力シグナルは、単一パルスとして、又は多重パルス、シークエンス若しくはサイクルで印加され得る。酵素又は類似の種が試料に加えられ、レドックス反応の間の分析物からの電子移動が増大され得る。酵素又は類似の種は、単一の分析物と反応し得、従って生成された出力シグナルの一部に対する特異性を提供する。酵素の酸化状態を維持するためにかつ/又は分析物から電極への電子移動を援助するために、レドックスメディエーターが測定可能な種として使用され得る。従って、レドックス反応の間、酵素又は類似の種は、分析物とレドックスメディエーターとの間で電子を移動させ得、一方でレドックスメディエーターは、それ自体と試験センサーの電極との間で電子を移動させる。
【0010】
電気化学バイオセンサーシステムは、通常、試験センサーの導電体と接続する電気接触を有する測定装置を含む。導電体は、例えば、固体金属、金属ペースト、導電性炭素、導電性炭素ペースト、導電性ポリマーなどの導電性材料から製造され得る。導電体は、作用電極及び対電極に接続しており、試験センサーの設計によっては、試料リザーバー中へと延伸している参照電極及び/又は他の電極にも接続し得る。また、1つ以上の導電体が試料リザーバー中へと延伸して、電極によって提供されない機能性を提供し得る。
【0011】
多くのバイオセンサーシステムでは、試験センサーは、生体の外部、内部、又は部分的に内部での使用に適合され得る。生体の外部で使用される場合、生物学的流体の試料が試験センサー中の試料リザーバー内に導入され得る。試験センサーは、分析用試料の導入の前、後又は間に測定装置中に配置され得る。生体の内部又は部分的に内部である場合、試験センサーは試料中に継続的に浸漬され得るか、又は試料が試験センサーに断続的に導入され得る。試験センサーは、一定容量の試料を部分的に隔離するリザーバーを含み得るか又は試料に曝露され得る。曝露されている場合、試験センサーは、生物学的流体と接触して配置される繊維又は他の構造物の形態をとり得る。同様に、試料は、分析のために、例えば連続モニタリングのために試験センサーの中を連続的に流れるか、又は例えば断続モニタリングのために中断され得る。
【0012】
電気化学バイオセンサーシステムの測定装置は、電気接触を介して入力シグナルを試験センサーの導電体に印加する。導電体は、電極を介して入力シグナルを試料リザーバー中に存在する試料に伝える。分析物のレドックス反応は、入力シグナルに応答して電気出力シグナルを生成させる。試験センサーからの電気出力シグナルは、電流(アンペロメトリー又はボルタンメトリーによって生成されるような)、電位(ポテンシオメトリー/ガルバノメトリーによって生成されるような)、又は蓄積電荷(クーロメトリーによって生成されるような)であり得る。測定装置は、出力シグナルを測定して試料中の1つ以上の分析物の存在及び/又は濃度と相関させる、処理能力を有し得る。
【0013】
クーロメトリーでは、試料に電位を印加して、分析物を完全に酸化又は還元する。クーロメトリーを使用するバイオセンサーシステムは、米国特許第6,120,676号に記載されている。アンペロメトリーでは、定電位(電圧)の電気シグナルが試験センサーの導電体に印加される一方、測定される出力シグナルは電流である。アンペロメトリーを使用するバイオセンサーシステムは、米国特許第5,620,579号;第5,653,863号;第6,153,069号;及び第6,413,411号に記載されている。ボルタンメトリーでは、可変電位の電気シグナルが生物学的流体の試料に印加される一方、測定される出力は電流である。ゲートアンペロメトリー及びゲートボルタンメトリーでは、それぞれ国際公開公報第2007/013915号及び国際公開公報第2007/040913号に記載されているようにパルス入力が使用される。
【0014】
一次出力シグナルは、試料の分析物濃度に応答し、分析入力シグナルから得られる。試料の分析物濃度に応答するシグナルとは実質的に無関係である出力シグナルは、温度に応答するシグナル及び干渉物質(例えば、分析物がグルコースである場合の、血液試料のヘマトクリット又はアセトアミノフェン含量など)に実質的に応答するシグナルを含む。分析物濃度に実質的に応答しない出力シグナルは、これらが、分析物若しくは分析物応答性指示薬による光の変化、分析物の電気化学レドックス反応、又は分析物応答性レドックスメディエーターの電気化学レドックス反応に応答する一次出力シグナルではないので、二次出力シグナルと称され得る。二次出力シグナルは、生物学的試料の物理的特性又は環境的特性に応答する。二次出力シグナルは、試料から又は他の供給源(試料の環境的特性の推定値を提供する熱電対など)から生じ得る。従って、二次出力シグナルは、分析入力シグナルから又は別の入力シグナルから決定され得る。
【0015】
試料から生じる場合、二次出力シグナルは、試料の分析物濃度を決定するために使用される電極から又は追加の電極から決定され得る。追加の電極は、試料の分析物濃度を決定するために使用される電極と同じ試薬組成物、異なる試薬組成物を含むか、又は試薬組成物を含み得ない。例えば、試料の1つ以上の物理的特性(全血ヘマトクリットなど)を研究するために、干渉物質と反応する試薬組成物が使用され得るか又は試薬組成物を欠く電極が使用され得る。
【0016】
バイオセンサーシステムの測定性能は、正確度(accuracy)及び精度(precision)の観点から定義される。正確度は、系統誤差成分とランダム誤差成分の複合効果を反映する。系統誤差、又は忠実度は、バイオセンサーシステムから決定された平均値と生物学的流体の分析物濃度についての1つ以上の許容参照値との間の差である。忠実度は、平均バイアスの観点から表現され得、より大きい平均バイアス値はより低い忠実度を表し、それによって、より小さい正確度に寄与する。精度は、平均に関する複数の分析物読み取り値の中での一致の近接度である。分析中の1つ以上の誤差は、バイオセンサーシステムによって決定される分析物濃度のバイアス及び/又は不正確度に寄与する。それ故、バイオセンサーシステムの分析誤差の減少は、正確度及び/又は精度の増加、従って測定性能の改善へと導く。
【0017】
バイアスは、「絶対バイアス」又は「バイアス率」の観点から表現され得る。絶対バイアスは、決定された濃度と参照濃度との間の差であり、mg/dLなどの測定単位で表現され得るが、一方でバイアス率は、参照濃度に対する絶対バイアス値の百分率として表現され得るか、又は試料のカットオフ濃度値若しくは参照濃度のいずれかに対する絶対バイアスの百分率として表現され得る。例えば、カットオフ濃度値が100mg/dLであるならば、100mg/dL未満のグルコース濃度については、バイアス率は、(100mg/dLに対する絶対バイアス)100として定義され;100mg/dL以上のグルコース濃度については、バイアス率は、分析物濃度の許容参照値に対する絶対バイアス100として定義される。
【0018】
血液試料中の分析物グルコースについての許容参照値は、好ましくは、オハイオ州イエロースプリングスのYSI Inc.から入手可能なYSI 2300 STAT PLUS(商標)などの基準計器を用いて得られる。他の分析物には、バイアス率を決定する他の基準計器及び方法も使用され得る。%-A1c測定については、誤差は、4~12%の治療範囲について、%-A1c参照値に対する絶対バイアス又はバイアス率のいずれかとして表現され得る。血液試料中の%-A1cについての許容参照値は、日本のTosoh Corpから入手可能なTosoh G7計器などの基準計器を用いて得られ得る。
【0019】
バイオセンサーシステムは、複数の誤差源からの誤差を含む、生物学的流体の分析の間に出力シグナルを提供し得る。これらの誤差源は総誤差に寄与し、これは、1つ以上の部分又は全体の出力シグナルが試料の分析物濃度に非応答であるか又は不適切に応答する場合のような異常な出力シグナルに反映され得る。
【0020】
出力シグナル中の総誤差は、例えば、試料の物理的特性、試料の環境側面、システムの動作条件、試験センサーのロット間の製造変動などの、1つ以上の誤差寄与因子に由来し得る。試料の物理的特性は、ヘマトクリット(赤血球)濃度、脂質及びタンパク質などの干渉物質などを含む。グルコース分析に対する干渉物質はまた、アスコルビン酸、尿酸、アセトアミノフェンなども含み得る。試料の環境側面は、温度、大気の酸素含量などを含む。システムの動作条件は、試料サイズが十分に大きくない場合の過少充填条件、試料による試験センサーの充填遅延、試料と試験センサーの1つ以上の電極との間の断続的電気接触、試験センサーが製造された後の分析物と相互作用する試薬の分解などを含む。試験センサーのロット間の製造変動は、試薬の量及び/又は活性の変化、電極面積及び/又は間隔の変化、導電体及び電極の電気伝導度の変化などを含む。試験センサーのロットは、好ましくは、ロット間の製造変動が実質的に低下又は排除される単一の製造運転で製造される。分析中に誤差を引き起こす他の寄与因子又は誤差寄与因子の組み合わせがあり得る。
【0021】
バイアス率、平均バイアス率、バイアス率標準偏差(SD)、変動係数率(%-CV)及びヘマトクリット感度は、バイオセンサーシステムの測定性能を表現するための独立した方法である。バイオセンサーシステムの測定性能を表現するために追加の方法も使用され得る。
【0022】
バイアス率は、参照分析物濃度に関連したバイオセンサーシステムの正確度を表すものであり、一方でバイアス率標準偏差は、試料の物理的特性、試料の環境側面、システムの動作条件及び試験センサー間の製造変動から生じる誤差に関して、複数の分析の正確度を反映する。従って、バイアス率標準偏差の減少は、複数の分析にわたるバイオセンサーシステムの測定性能の増加を表す。変動係数率は、100%(1セットの試料のSD)/(同じセットの試料から取得された複数の読み取り値の平均)として表現され得、複数の分析の精度を反映する。従って、バイアス率標準偏差の減少は、複数の分析にわたるバイオセンサーシステムの測定性能の増加を表す。
【0023】
単一ロット由来の試験センサーを使用して複数の分析から決定されたバイアス率についての平均が決定され、複数の分析についての「平均バイアス率」が提供され得る。ロットの一部(例えば、80~140個の試験センサー)を使用することによって、単一ロットの試験センサーについての平均バイアス率が決定され、複数の血液試料が分析され得る。
【0024】
これら又は他の供給源からの誤差を減少させることによってバイオセンサーシステムの測定性能を増加させることは、バイオセンサーシステムによって決定された分析物濃度のより多くが、例えば、血糖がモニタリングされている場合の患者によって、正確な治療のために使用され得ることを意味する。加えて、患者が試験センサーを廃棄しかつ分析を繰り返す必要性もまた減少され得る。
【0025】
バイオセンサーシステムは、電気化学システムの対電極及び作用電極などの、分析物のレドックス反応又は光ベース反応に応答する非補償出力シグナルの単一供給源を有し得る。バイオセンサーシステムはまた、試料の分析物濃度に応答性又は非応答性である非補償出力の2つ以上の供給源も有し得る。例えば、A1cバイオセンサーでは、試料の分析物濃度に応答性である1つ以上の出力シグナルがあり得るが、分析物応答性シグナルに影響を及ぼす、試料の分析物濃度に非応答性である総ヘモグロビン(THb)に応答する1つ以上の出力シグナルもまたあり得る。
【0026】
従って、とりわけ、補償を介した試料分析物濃度の正確な決定の増加を提供し得る、改善されたバイオセンサーシステムの必要性が継続中である。多くのバイオセンサーシステムは、分析に関連する誤差を補償し、従ってバイオセンサーシステムの測定性能を改善しようと試みる、1つ以上の方法を含む。補償法は、バイオセンサーシステムに不正確な分析を補償する能力を提供すること、従ってシステムから得られた濃度値の正確度及び/又は精度を増加させることによって、バイオセンサーシステムの測定性能を増加させ得る。
【0027】
しかしながら、これらの方法は、バイオセンサーシステム誤差及び出力シグナル誤差に由来する誤差によって全体が反映される分析において誤差を補償することに問題を有していた。また、所望の誤差寄与因子について記載又は補償するために選択された誤差パラメーターが分析の間に生じる誤差を十分に記載しない場合にも課題が生じ得る。そのような比較的弱い誤差パラメーターの集積は、全体の相関が比較的強くても期待されるより不安定であり得る。本発明は、システム誤差と出力シグナル誤差の両方についての補償を欠く分析物濃度決定システムの欠点の少なくともいくつかを回避又は向上させる。
【0028】
概要
1つの態様において、本発明は、試料中の分析物濃度を決定するための方法であって、試料から少なくとも1つの出力シグナルを生成させること;試料から少なくとも1つの分析物応答性出力シグナルを測定すること;少なくとも1つの分析物応答性出力シグナルから擬似参照濃度値を決定すること(ここで、擬似参照濃度値は、真の相対誤差の代わりになる);擬似参照濃度値に応答する少なくとも1つのアンカーパラメーターを決定すること(ここで、少なくとも1つのアンカーパラメーターは、システム誤差を補償する);少なくとも1つのアンカーパラメーターを補償関係に組み入れること;及び補償関係に応答する試料の最終補償された分析物濃度を決定することを含む方法を提供する。
【0029】
本発明の別の態様において、シグナルベースのアンカーパラメーターを決定するための方法であって、試料から少なくとも1つの出力シグナルを生成させること;少なくとも1つの出力シグナルから少なくとも1つの正規化された出力シグナルを決定すること;試料についての擬似参照濃度値を決定すること;少なくとも1つの参照試料分析物濃度及び正規化された参照相関に応答する少なくとも1つの対応する正規化された出力シグナルを決定すること;少なくとも1つの出力シグナルについてのシステム誤差を決定すること;並びに少なくとも1つの一次分析物応答性出力シグナルについての少なくとも1つのシグナルベースのアンカーパラメーターを決定すること(ここで、少なくとも1つのシグナルベースのアンカーパラメーターは、システム誤差を補償する)を含む方法がある。
【0030】
本発明の別の態様において、濃度ベースのアンカーパラメーターを決定するための方法であって、試料から少なくとも1つの出力シグナルを生成させること;少なくとも1つの出力シグナルから試料についての擬似参照濃度値を決定すること;少なくとも1つの出力シグナルについてのシステム誤差を決定すること;及び少なくとも2つの初期分析物濃度の各々についての少なくとも1つの濃度ベースのアンカーパラメーターを決定すること(ここで、少なくとも1つの濃度ベースのアンカーパラメーターは、システム誤差を補償する)を含む方法がある。
【0031】
本発明の別の態様において、分析物分析中のシステム誤差についての補償関係を決定するための方法であって、補償関係における潜在項として少なくとも2つのセグメント化シグナルプロセシング(SSP)パラメーター及び少なくとも1つのアンカーパラメーターを選択すること(ここで、少なくとも2つのSSPセグメント化シグナルプロセシングパラメーターは、少なくとも1つの時間ベースのシグナルプロファイルに応答性であり、そして、少なくとも1つのアンカーパラメーターは、システム誤差を補償する);数学的技法に応答する各潜在項についての第一の排除値を決定すること;第一の排除値に少なくとも1つの排除試験を適用して、補償関係から排除する少なくとも1つの潜在項を同定すること;残りの潜在項についての少なくとも1つの第二の排除値を決定すること;少なくとも1つの第二の排除値が補償関係から排除する残りの潜在項を同定しないならば、その残りの潜在項を補償関係に含めること;少なくとも1つの第二の排除値が少なくとも1つの排除試験下で補償関係から排除する残りの項を同定するならば、各残りの潜在項についての少なくとも1つの第三の排除値を決定すること;少なくとも1つの排除試験が補償関係から排除する少なくとも1つの潜在項を同定することに失敗するまで、少なくとも1つの排除試験を後続の排除値に繰り返し適用すること;並びに繰り返された少なくとも1つの排除試験が補償関係から排除する残りの潜在項を同定しない場合、その残りの潜在項を補償関係に含めることを含む方法がある。
【0032】
本発明の別の態様において、センサーインターフェースに接続された電気回路を含む分析物測定装置であって、電気回路が、シグナル生成器及び記憶媒体に接続されたプロセッサーを含み;プロセッサーが、少なくとも1つの分析物応答性出力シグナルを測定することが可能であり;プロセッサーが、少なくとも1つの分析物応答性出力シグナルから擬似参照濃度値を決定することが可能であり(ここで、擬似参照濃度値は、真の相対誤差の代わりになる);プロセッサーが、擬似参照濃度値に応答する少なくとも1つのアンカーパラメーターを決定することが可能であり(ここで、少なくとも1つのアンカーパラメーターは、システム誤差を補償する);プロセッサーが、少なくとも1つのアンカーパラメーターを補償関係に組み入れることが可能であり;そして、プロセッサーが、補償関係に応答する試料の最終補償された分析物濃度を決定することが可能である、分析物測定装置がある。
【0033】
本発明の別の態様において、基部によって形成されたリザーバーに隣接する試料インターフェースを有する試験センサー(ここで、試験センサーは、試料から少なくとも1つの出力シグナルを生成させることが可能である);及びセンサーインターフェースに接続されたプロセッサーを有する測定装置(センサーインターフェースは、試料インターフェースとの電気通信を有し、そして、プロセッサーは、記憶媒体との電気通信を有する)を含む、試料中の分析物濃度を決定するためのバイオセンサーシステムであって;プロセッサーが、少なくとも1つの分析物応答性出力シグナルを測定することが可能であり;プロセッサーが、少なくとも1つの分析物応答性出力シグナルから擬似参照濃度値を決定することが可能であり(ここで、擬似参照濃度値は、真の相対誤差の代わりになる);プロセッサーが、擬似参照濃度値に応答する少なくとも1つのアンカーパラメーターを決定することが可能であり(ここで、少なくとも1つのアンカーパラメーターは、システム誤差を補償する);プロセッサーが、少なくとも1つのアンカーパラメーターを補償関係に組み入れることが可能であり;そして、プロセッサーが、補償関係に応答する試料の最終補償された分析物濃度を決定することが可能である、バイオセンサーシステムがある。
【図面の簡単な説明】
【0034】
本発明は、以下の図面及び説明を参照してより良く理解され得る。図中の構成要素は、必ずしも縮尺通りではなく、むしろ本発明の原理を例示することに重点が置かれる。
図A】システム及び出力シグナル誤差を表すものである。
図1A】A1c分析システムについて決定された、正規化された参照相関の例を提供する。
図A-1】試料の最終補償された分析物濃度中のシステム誤差を補償するアンカーパラメーターを使用した補償法を表す。
図A-2】電気化学ゲートアンペロメトリー分析のための試験センサーに印加された入力シグナルを描写しており、ここで、6つの比較的短い励起は、可変期間の5つの緩和によって分離されている。
図A-3】図A-2の6つのアンペロメトリック励起から記録された一次出力シグナル及びHctパルスから記録された二次出力シグナルを描写する。
図A-4】A1c分析バイオセンサーシステムの4つの出力チャネルの2つから記録された出力シグナルを描写する。
図B】正規化手順を介して較正情報を決定する工場較正法を表す。
図B1】血液試料中の4つの異なるTHb濃度について分離された、%-A1c測定装置のゾーン1検出器から記録された個々のA1c反射率シグナルを示す。
図B2】正規化された較正曲線として表される、決定された正規化された参照相関を表す。
図B3】グルコース分析システムにおける第二の正規化関係の決定の例を提供する。
図C】較正情報と共に第二の外部刺激も考慮した任意の工場較正法を表す。
図C1】グルコース分析システムにおける第二の正規化された分析物応答性出力シグナルを決定する例を提供する。
図C2】グルコース分析システムにおける第二の正規化された参照相関を決定する例を提供する。
図D】アンカーパラメーターを決定するシグナルベースの方法を表す。
図E】アンカーパラメーターを決定する濃度ベースの方法を表す。
図F】補償関係を決定するためのアンカーパラメーターとSSPパラメーターの多変量回帰を介した組み合わせを表す。
図2A】擬似参照濃度としてPseudo1を使用した、(A1c_Calc-A1_Ref)/A1c_Ref(dA/A1c_Ref)と(NRmeasured-NRPseudo1)/NRPseudo1(dNR/NR_Pseudo1)との間の相関を示す。
図2B】同じデータについての相関を示すが、ここでは、擬似参照濃度としてPseudo2を使用した。
図2C】擬似参照濃度としてPseudo1を使用した、(A1c_Calc-A1_Ref)/A1c_Ref(dA/A1c_Ref)と(NRmeasured-NRPseudo1)/NRPseudo1(dNR/NR_Pseudo1)との間の相関を示す。
図2D】同じデータについての相関を示すが、ここでは、擬似参照濃度としてPseudo2を使用した。
図2E】擬似参照濃度としてPseudo1を使用した、(A1c_Calc-A1_Ref)/A1c_Ref(dA/A1c_Ref)と(NRmeasured-NRPseudo1)/NRPseudo1(dNR/NR_Pseudo1)との間の相関を示す。
図2F】同じデータについての相関を示すが、ここでは、擬似参照濃度としてPseudo2を使用した。
図3A】補償についてアンカーパラメーターを単独で使用した分析結果を提供する。
図3B】補償についてSSP及び他のパラメーターを単独で使用した分析結果を提供する。
図4A】決定されたアンカーパラメーターに対してシステム誤差をプロットする。
図4B】アンカーパラメーター及び他の誤差パラメーターを含む決定された補償関係に対してシステム誤差をプロットする。
図4C】任意の補償前、温度及びヘマトクリット効果を補償するがシステム誤差を記載するアンカーパラメーターを欠く一次補償関数を用いた補償後、並びにアンカーパラメーター及び関連する交差項を含む上で決定された補償関係による補償後の、測定された出力シグナル/従来の参照相関から決定された初期分析物濃度のシステム誤差を比較する。
図5】生物学的流体の試料中の分析物濃度を決定する、バイオセンサーシステムの概略図を描写する。
【発明を実施するための形態】
【0035】
詳細な説明
分析物の分析の間に、分析を実施するために使用されるバイオセンサーシステムとバイオセンサーの測定装置によって測定された出力シグナル中の誤差の両方によって、分析中に誤差が導入され得る。バイオセンサーシステム誤差は、複数の供給源から生じ得、誤差源はバイオセンサーシステムの測定装置中に記憶される参照相関中にある。従って、試験試料の分析の間に測定装置によって測定された出力シグナルを決定された試料の分析物濃度に変換するために使用される実験室で決定された較正情報は、誤差を含む。測定装置の較正情報によって導入されたシステム誤差が分析毎に同じであり、従って測定装置が使用される前に除去することが容易であると期待されるが、これは全ての種類のシステム誤差について正しいわけではない。ある特定の分析条件下では較正情報中だけでもいくつかの誤差が現れるので、従って、これは、別の特定の分析についてシステム誤差をもたらすであろう変化なしに、較正情報から除去され得ない。従って、システム誤差が較正情報から生じる場合に、異なる特定の分析についてのシステム誤差に潜在的に悪影響を及ぼすことなく、1つの特定の分析条件についてシステム誤差を除去することは困難である。出力シグナル誤差は、試料の物理的特性、試料の環境側面、システムの動作条件及び試験センサーのロット間の製造変動などの、1つ以上の誤差寄与因子から生じる。これらの出力シグナル誤差は、較正情報によってシグナルが濃度に変換される場合に、増幅又は複雑化され得る。
【0036】
参照試料について、システム誤差は、測定装置で決定された分析物濃度から参照試料分析物濃度を減算し、参照試料分析物濃度で割ること(Acalc-Aref/Aref)による、相対誤差の決定を介して決定され得る。参照試料の参照試料分析物濃度は、基準計器を使用して、公知の試料分析物濃度を混合又は変更するなどして決定され得る。
【0037】
しかしながら、バイオセンサーシステムの測定装置を用いた試験試料の分析の間、参照試料分析物濃度は未知である。代わりに、バイオセンサーシステムは、測定装置の設計及び実行に応じて、分析を実施して試料中の分析物濃度を決定する。従って、「真の相対誤差」は、試料中の分析物の真の濃度が未知であるため、測定装置によって分析の間に決定され得ない。
【0038】
測定装置によって分析の間に決定された擬似参照濃度は、真の相対誤差の代わりとして使用され得る。分析で決定された擬似参照濃度から、アンカーパラメーターが決定され、これを使用して分析で決定された擬似参照濃度中のシステム誤差が補償され得る。本発明は、真の相対誤差の代わりとして、測定装置によって分析の間に決定される擬似参照濃度の決定を導入し、アンカーパラメーターを使用して分析で決定された擬似参照濃度中のシステム誤差を補償する。
【0039】
記載した方法、装置及びシステムは、アンカーパラメーターの使用を介して試料の最終分析物濃度を決定する場合に、システム誤差と出力シグナル誤差の両方を考慮することによって、測定性能の改善を提供し得る。システム誤差とシグナル誤差の両方は、シグナルベースのアンカーパラメーターが使用される場合に、試料の最終分析物濃度を決定するために使用される補償において、「関連付け」られ得る。システム誤差はまた、濃度ベースのアンカーパラメーターの場合にも、決定された分析物濃度に関連され得る。好ましくは、システム誤差と出力シグナル誤差の両方が、試料の最終分析物濃度を決定するために使用される補償に考慮される。出力シグナル誤差に加えてシステム誤差を考慮することはまた、出力シグナル中の誤差を十分に記載していない補償における誤差パラメーターの使用を低減させ得る。
【0040】
図Aは、システム及び出力シグナル誤差を表すものである。先に決定された従来の参照相関は、シグナル=f(Aref)として「S型」曲線によって表される。従来の参照相関は、参照試料分析物濃度(横X軸)を測定装置によって決定されるような一次出力シグナル(縦Y軸)に関連付けることによって決定される。参照試料の参照試料分析物濃度は、基準計器を使用して、公知の試料分析物濃度を混合又は変更するなどして決定され得る。
【0041】
参照試料分析物濃度と非補償出力シグナル値との間の従来の参照相関は、図表を用いて、数学的に、それらの組み合わせなどで表され得る。参照相関は、バイオセンサーシステムの測定装置の記憶媒体中に予め決定かつ記憶された、プログラム番号(PNA)テーブル、別のルックアップテーブルなどによって表され得る。このタイプの従来の参照相関は、測定装置からの一次出力シグナルを試料分析物濃度に「変換する」又は「転換する」ので、それは、変換関係と称され得る。図1Aに描写されるような正規化された参照相関はまた、正規化された一次出力シグナルを試料分析物濃度に変換するので、変換関係としても考慮され得る。正規化された較正情報は、図B及び図Cに関してさらに考察される。
【0042】
分析の間に測定された出力シグナル中に誤差が存在するならば、測定された一次出力シグナルがY軸から従来の参照相関を介して参照試料分析物濃度の横X軸へと直接転換されても、実際の試料の分析物濃度を提供しないであろう。従って、出力シグナル中の誤差は、決定された分析物濃度の正確度を低減させ、バイオセンサーシステムの測定性能を低下させるだろう。
【0043】
誤差を含むそのような出力シグナル測定は、図Aにおいて三角形によって表される。この表示中の誤差は、出力シグナル測定を増加させ、従って参照相関上の出力シグナル測定の位置をシフトさせる。従って、誤差を含むこの出力シグナルは、円ではなく、参照相関上にあるボックスに投射され、これは、実際の試料の分析物濃度を提供するだろう。従って、参照相関は、誤差を含む測定された出力シグナル値(SAct)を分析物濃度値Acalcに変換するだろう。この状況では、バイオセンサーシステムは、測定装置によって測定された出力シグナル中の誤差に起因して、ARefではなく、Acalcを試料の分析物濃度として報告するだろう。この表示中の誤差は、出力シグナル測定を増加させるが、一方で他の誤差が出力シグナル測定を減少させ得ることも、又は誤差の組み合わせが出力シグナル測定を増加若しくは減少させ得ることもある。
【0044】
出力シグナル中の誤差(シグナル変動dS(SAct-SRef))は、決定された試料の分析物濃度中の誤差(分析物濃度変動dA(ACalc-ARef))を導く。出力シグナル中の又は決定された分析物濃度中の誤差はまた、相対分析物濃度誤差(dA/ARef)へと導く、相対出力シグナル誤差(dS/SRef)としても表現され得、ここで、SRefは、誤差のない決定された試料分析物濃度を提供するであろう、測定装置からの一次出力シグナルであり、そして、ARefは、バイオセンサーシステムによって決定されたはずの実際の試料の分析物濃度である。この例において、dA及びdA/ARef項はシステム誤差を表し、一方でdS及びdS/SRef項は出力シグナル誤差を表す。関連しながらも、システム誤差とシグナル誤差は、独立的であり得、従って、組み合わされる以外に個々に又は別々に補償され得る。
【0045】
図A-1は、試料の最終補償された分析物濃度中のシステム誤差を補償するアンカーパラメーターを使用して、バイオセンサーシステムの測定装置中で実行されるような、分析法400を表す。バイオセンサーシステムは、少なくとも1つのアンカーパラメーター及び測定装置によって測定されるような出力シグナルを含む、誤差補償の方法から試料の最終分析物濃度を決定する。少なくとも1つのアンカーパラメーターは、誤差補償の方法において使用され得、ここで、変換関係が主要誤差寄与因子から生じる誤差の減少を内包し、主要誤差寄与因子からの誤差が変換関係と異なる一次補償を介して減少され、残余補償が変換関係と共に使用されるか、又は残余補償が一次補償及び変換関係と共に使用される。%-A1c分析についての主要誤差寄与因子は、温度及び総ヘモグロビンであり、一方で、グルコース分析では、主要誤差寄与因子は温度及びヘマトクリットである。主要誤差寄与因子は、異なるタイプの分析物分析については異なり得る。
【0046】
血液中の%-A1c又はグルコース濃度の決定などの分析物の分析の間、試料中の実際の%-A1c又はグルコース値は、未知である。代わりに、バイオセンサーシステムは、測定装置の設計及び実行に応じて、分析を実施して試料中の分析物濃度を決定する。従って、バイオセンサーシステムの測定性能は、補償を介して増加され得る。方法400は、光学バイオセンサーシステムと電気化学バイオセンサーシステムの両方において使用され、アンカーパラメーター補償された試料分析物濃度が決定され得る。
【0047】
分析出力シグナル測定410では、少なくとも1つの分析物応答性出力シグナル412又は好ましくは少なくとも2つの分析物応答性出力シグナル412、414が、バイオセンサーシステムの測定装置によって試験試料から測定される。少なくとも2つの分析物応答性出力シグナル412、414は、独立した分析物応答性出力シグナル、例えば、独立した入力シグナルによって別々に生成された出力シグナル、2つのゾーン1検出器の図A-4に描写される独立したシグナルなどの多重ゾーン検出器からの独立した出力シグナルなどであり得る。
【0048】
出力シグナルは、光で同定可能な種又は分析物の酸化/還元(レドックス)反応に応答して、生物学的流体の試料から生成される。バイオセンサーシステムに依存して、これらの一次出力シグナルは、外部刺激の効果を含み得るか又は含み得ない。しかしながら、1つの分析物応答性出力シグナルが測定されるならば、補償に使用され得る外部刺激に応答する少なくとも1つの二次出力シグナルもまた測定される。バイオセンサーシステムに依存して、一次出力シグナルは、少なくとも1つの分析物応答性出力シグナル412について又は少なくとも2つの分析物応答性出力シグナル412、414の各々についての初期分析物濃度を決定するために、使用され得るか又は使用され得ない。
【0049】
図A-2は、電気化学ゲートアンペロメトリー分析のための試験センサーに印加された入力シグナルを描写しており、ここで、6つの比較的短い励起は、可変期間の5つの緩和によって分離されている。作用電極及び対電極に印加された6つの励起に加えて、第二の入力シグナルが追加の電極に印加され、血液試料のヘマトクリット(HCt)濃度に応答する二次出力シグナルが生成される。実線は、実質的に一定の入力電位を記載し、一方で重なった点は、別々の電流測定に要する時間を示す。
【0050】
図A-3は、図A-2の6つのアンペロメトリック励起から記録された一次出力シグナル及びHctパルスから記録された二次出力シグナルを描写する。従って、パルス1~6は一次出力シグナルを生成し、一方でHCtパルスは二次出力シグナルを生成する。図A-3は、分析出力シグナル測定410において使用され得る、分析物(例えば、グルコース)応答性一次出力シグナル及び外部刺激(例えば、HCt)応答性二次出力シグナルの例を提供する。
【0051】
図A-4は、A1c分析バイオセンサーシステムの4つの出力チャネルの2つから記録された出力シグナルを描写する。2つのゾーン1検出器(Ch1検出器及びCh3検出器)からの独立したシグナルは、試料のA1c濃度に依存するが、試料のTHb含量にも依存する。2つのゾーン2検出器(Ch2検出器及びCh4検出器)からの独立したシグナルは、試料のA1c濃度とは独立しているが、試料のTHb濃度に依存する。図は、Chl及びCh2についての出力を示す。このタイプのA1cシステムでは、ゾーン1検出器は一次出力シグナルを提供するが、一方でゾーン2検出器は二次出力シグナルを提供する。図A-4は、分析分析物応答性出力シグナル測定410において使用され得る、分析物応答性(例えば、A1c)出力シグナル及び外部刺激(例えば、THb)応答性二次出力シグナルの例を提供する。
【0052】
分析擬似参照濃度値の決定430では、擬似参照濃度値435が決定される。擬似参照濃度値435は、試料分析物濃度の値(複数の分析について、少なくとも1つの分析物応答性出力シグナル412又は少なくとも2つの分析物応答性出力シグナル412、414のいずれかから決定されるよりも、平均して実際の試料の分析物濃度に近い)を決定することによって決定される。従って、擬似参照は、試料の分析物濃度の近似値であり、測定装置の個々の一次出力シグナルから決定された濃度よりも平均して参照濃度に近い。
【0053】
擬似参照濃度値435は、少なくとも2つの分析物応答性出力シグナル412、414の各々についての初期分析物濃度を決定し、これらの初期分析物濃度を平均化することによって決定され得る。擬似参照濃度値435はまた、少なくとも2つの分析物応答性出力シグナル412、414を平均化して平均したシグナルを提供し、次いで、平均したシグナルを平均したシグナルからの擬似参照濃度値435に変換することによっても決定され得る。初期分析物濃度は、従来の参照相関及び測定装置によって測定されたような出力シグナルを含む較正情報、正規化された参照相関及び正規化された出力シグナルを含む較正情報、又は追加補償と組み合わされたいずれかのタイプの較正情報を用いて決定され得る。従来の参照相関を含む較正情報は、図Aに関して先に考察された。正規化関係及び正規化された参照相関を含む較正情報は、図1Aに関して先に考察され、これは図B及び図Cに関してさらに考察される。
【0054】
初期分析物濃度を平均化することに加えて、補償なしで少なくとも1つの分析物応答性出力シグナル412から決定されるよりも平均してより正確な試料の分析物濃度を提供する補償法を使用することによっても、少なくとも1つの分析物応答性出力シグナル412から擬似参照濃度値435が決定され得る。この状況では、一次補償法が、好ましくは、擬似参照濃度値435を決定するために使用される。
【0055】
変換関係に内包された一次補償は、本来は代数的であり得、従って、線形又は非線形代数方程式が、決定された試料の分析物濃度と非補償出力シグナル及び誤差パラメーターとの間の関係を表現するために使用され得る。例えば、%-A1cバイオセンサーシステムでは、温度(T)及び総ヘモグロビン(THb)が主要誤差寄与因子である。血糖分析中のヘマトクリット誤差と同様に、血液試料の異なる総ヘモグロビン含量は、異なるA1cシグナルを誤ってもたらし、同じ基底A1c濃度について異なるA1c濃度が決定されることにつながり得る。従って、これらの誤差を補償する代数方程式は、A1c=a A1c+a/SA1c+a THb+a THbであり得、式中、A1cは、非補償出力値の変換及び総ヘモグロビンについての一次補償後の分析物濃度であり、SA1cは、A1cを表す温度補償された出力値(例えば、反射率又は吸着)であり、そして、THbは、THb=d+d/STHb+d/STHb +d/STHb によって算出される総ヘモグロビン値であり、式中、STHbは、試験センサーから得られた温度補正されたTHb反射率シグナルである。SA1c及びSTHbに対する温度効果は、代数関係SA1c=SA1c(T)+[b+b (T-Tref)+b (T-Tref]及びSTHb=[STHb(T)c+c (T-Tref)]/[c (T-Tref]を用いて補正され得る。代数置換によって、一次補償された分析物濃度Aは、非補償出力値の変換並びに温度及び総ヘモグロビンの主要誤差寄与因子についての一次補償を単一の代数方程式に組み入れることで算出され得る。一次補償に関するさらなる詳細はまた、2011年3月22日に出願された「Residual Compensation Including Underfill Error」という表題の米国特許公報第2011/0231105号、又は2012年9月20日に出願された「Analysis Compensation Including Segmented Signals」という表題の米国特許公報第2013/0071869号にも見いだされ得る。
【0056】
擬似参照濃度値435及び任意の関連する関係を決定する方法は、好ましくは、実験室で予め決定され、試験試料の分析の間に使用するためにバイオセンサーシステムの測定装置の記憶媒体中に記憶される。
【0057】
分析アンカーパラメーター値の決定440では、1つ以上のアンカーパラメーターが、擬似参照濃度値435及び分析物応答性出力シグナル又は初期分析物濃度情報を使用して決定される。好ましくは、アンカーパラメーターは、試験試料から測定された少なくとも2つの分析物応答性出力シグナル412、414の各々について決定される。
【0058】
少なくとも2つの分析物応答性出力シグナル412、414が擬似参照濃度値435を決定するために使用される場合、測定装置は、好ましくは、図B及び図Cに関してさらに考察されるように、正規化関係及び正規化された参照相関を含む較正情報を含む。この場合、第一のアンカーパラメーター442を決定するための一般的な関係は、第一のシグナルアンカーパラメーター=(NROSV1-NRpseudo)/NRpseudoとして表され得、式中、NROSV1は、第一の分析物応答性出力シグナル及び正規化関係から決定された第一の正規化された出力シグナル値であり、そして、NRpseudoは、正規化された参照相関を用いて擬似参照濃度値435から決定された擬似参照シグナルである。同様に、第二のアンカーパラメーター444を決定するための一般的な関係は、第二のシグナルアンカーパラメーター=(NROSV2-NRpseudo)/NRpseudoとして表され得、式中、NROSV2は、第二の分析物応答性出力シグナル及び正規化関係から決定された第二の正規化された出力シグナル値であり、そして、NRpseudoは、正規化された参照相関を用いて擬似参照濃度値435から決定された擬似参照シグナル値である。アンカーパラメーターを決定するこのシグナルベースの方法は、図Dに関してさらに考察される。
【0059】
少なくとも2つの分析物応答性出力シグナル412、414から決定された初期分析物濃度が擬似参照濃度値435を決定する際に使用される場合、測定装置は、図Aに関して先に考察したような従来の参照相関を含む較正情報、又は図B及び図Cに関してさらに考察されるような正規化関係及び正規化された参照相関(例えば、図1A)を含む較正情報を含み得る。この場合、第一のアンカーパラメーター444を決定するための一般的な関係は、第一の濃度アンカーパラメーター=(第一の出力シグナル412から決定された初期分析物濃度-擬似参照濃度値435)/擬似参照濃度値435として表され得る。同様に、第二のアンカーパラメーター446を決定するための一般的な関係は、第二の濃度アンカーパラメーター=(二次出力シグナル414から決定された初期分析物濃度-擬似参照濃度値435)/擬似参照濃度値435として表され得る。アンカーパラメーターを決定するこの濃度ベースの方法は、図Eに関してさらに考察される。好ましくは、決定された擬似参照濃度値は、初期に決定された分析物濃度値よりも実際の試料の分析物濃度に近い。
【0060】
少なくとも1つの分析物応答性出力シグナル412が使用され、補償をして擬似参照濃度値435が決定される場合、アンカーパラメーターは、濃度アンカーパラメーター=(補償なしで第一の出力シグナル412から決定された初期分析物濃度-補償を用いて決定された擬似参照濃度値435)/補償を用いて決定された擬似参照濃度値435の一般的な関係を介して決定され得る。用語「補償なしで」及び「補償を用いて」が使用される中で、「補償なし」は、擬似参照濃度値435を決定するために使用される補償でない限りは、その補償を含み得る。
【0061】
分析補償決定450では、決定されたアンカーパラメーターの1つ以上が補償関係452に組み入れられ、分析についての補償が決定される。補償関係452は、システム誤差についての補償を提供する。
【0062】
システム誤差は、残余誤差補償法を使用して補償され得る。残余誤差は、一般に、残余誤差=観察された総誤差-一次関数補正された誤差によって表現され得る。測定された出力値中の総誤差の中で、一次補償は、誤差の少なくとも40%、好ましくは少なくとも50%を除去する。従って、試料の補償された最終分析物濃度では、一次補償は、総誤差の40%~75%、より好ましくは50%~85%を除去する。アンカーパラメーターによって提供された誤差補償は単独で使用され得るが、好ましくは、アンカーパラメーターは、SSP及び他の誤差パラメーターと組み合わせて使用される。
【0063】
補償関係452が多変量回帰又は類似の数学的技法から決定される場合、補償関係452は、アンカーパラメーターによって記載されたシステム誤差以外の誤差を補償し得、そして、残余補償と共に一次補償を組み入れ得る。これらの技法では、システム誤差を表すアンカーパラメーターは、セグメント化シグナルプロセシング(SSP)パラメーター、交差項及び比率パラメーターなどの他の誤差パラメーターと組み合わされて、補償関係452が決定される。多変量回帰を使用した補償関係452の決定は、図Fに関してさらに考察される。アンカーパラメーターはまた、決定された分析物濃度を他の方法で補償するのに有用であり得る。
【0064】
分析最終分析物濃度の決定460では、試料の最終補償された分析物濃度は、少なくとも1つのアンカーパラメーター及び少なくとも1つの分析物応答性出力シグナル412又は少なくとも2つの分析物応答性出力シグナル412、414を使用して、補償関係452から決定される。試料の最終補償された分析物濃度を決定するために使用され得る一般式は、補償された最終分析物濃度=アンカーパラメーター補償なしで決定された初期分析物濃度(Acalc)/(1+RE)として表現され得、式中、REは、補償関係452である。多変量回帰が使用されて補償関係452が決定される場合、試料の最終補償された分析物濃度は、加重係数によって修飾された項の線形の組み合わせから決定され、ここで、その項の少なくとも1つは、アンカーパラメーターを含む。アンカーパラメーターそれ自体及び/又はアンカーパラメーターの関連する交差項が使用され得る。
【0065】
少なくとも2つの分析物応答性出力シグナル412、414が使用されて、試料の補償された最終分析物濃度が決定される場合、いずれかの出力シグナルから決定された補償された分析物濃度が最終分析物濃度として報告され得る。しかしながら、好ましくは、試料の補償された最終分析物濃度は、各シグナルについて決定された補償された分析物濃度を平均化することによって決定される。
【0066】
470では、試料の補償された最終分析物濃度が、表示され、今後の参照のために記憶され、かつ/又は追加の算出のために使用され得る。
【0067】
図Bは、正規化手順を介して較正情報を決定する工場較正法100を表す。工場較正法100は、好ましくは、バイオセンサーシステムの測定装置の工場較正の間に実施される。
【0068】
分析物応答性出力シグナル測定110では、分析物応答性出力シグナルが参照試料から測定され、ここで、分析物応答性出力シグナルは、分析物応答性出力シグナル中に組み入れられる、物理的特性、環境側面及び/又は製造変動誤差から生じる外部刺激によって影響される。少なくとも2つの分析物応答性出力シグナルが測定される。好ましくは、少なくとも4つ、より好ましくは少なくとも6つの分析物応答性出力シグナルが参照試料から測定される。参照試料を分析するために、光学的及び/又は電気化学的方法が使用され得る。
【0069】
外部刺激定量化130では、1つ以上の外部刺激応答性出力シグナルが、参照試料又は参照試料の試料環境及び少なくとも2つの定量化された外部刺激値132を提供するために定量化された外部刺激から測定される。刺激応答性出力シグナルは、分析物応答性出力シグナルと同時に又は異なる時間で測定され得る。好ましくは、刺激応答性出力シグナルは、分析物応答性出力シグナルと同時に測定される。
【0070】
外部刺激は、光学検出器又は電極が特定の電圧及び/又はアンペア数を出力する場合などに、直接定量化され得る。外部刺激は、例えば、サーミスタがセルシウス温度として報告される特定の電圧及び/又はアンペア数を提供する場合などに、間接的に定量化され得る。外部刺激シグナルはまた、例えば、試料のHct濃度がHct電極から測定された特定の電圧及び/又はアンペア数から決定される場合などに、間接的に定量化され得る。外部刺激は、直接又は間接的に定量化された外部刺激値が濃度に変換される場合などに、直接又は間接的に定量化され、次いで、定量化された外部刺激値132を提供するように修飾され得る。定量化された外部刺激値132は、複数の値(同じターゲット温度で記録された複数の温度読み取り値など)を平均化することによって決定され得る。外部刺激は、他の技法を介しても定量化され得る。
【0071】
正規化関係の決定140では、正規化関係142が、単一の選択された分析物濃度における分析物応答性出力シグナル及び定量化された外部刺激値132から回帰法を使用して決定される。図B1は、単一の分析物濃度がA1c分析システムにおいて選択され、これを使用して、THbについての定量化された外部刺激シグナルに応答する、単一の選択された分析物濃度における合成された外部刺激応答性出力シグナルが決定される方法の例を提供する。
【0072】
図B1は、血液試料中の4つの異なるTHb濃度について分離された、測定装置のゾーン1検出器から記録された個々のA1c反射率シグナルを示す。これは、単一の試料分析物濃度が選択されることを可能にし、それによって一次出力シグナルから合成された外部刺激応答性出力シグナル値が決定され得る。この例において、線形回帰線が、一般的な関係(RA1c=Slope%-A1c+Int、式中、RA1cは、測定装置からの出力シグナルであり、Slope及びIntは、それぞれ、各THb試料濃度における線形回帰線の傾斜及び切片であり、そして、%-A1cは、試料分析物濃度である)を使用して、4つのTHb試料濃度の各々で決定された。他の回帰法も使用され得る。
【0073】
85mg/mLTHb及び230mg/mLTHbにおいて決定された回帰方程式が図に示されているが、127及び175mg/mLTHbにおける回帰方程式もまた決定された。この例において、9%-A1cの単一の選択された試料分析物濃度が選択され、一次出力シグナルから合成された外部刺激応答性出力シグナル値が決定された。従って、この例において、9%の参照試料分析物濃度は、85mg/mLTHbの回帰線から85mg/mLTHb試料について、約0.36のA1cの合成された外部刺激応答性出力シグナル値を、そして、230mg/mLTHbの回帰線から230mg/mLTHb試料について、約0.44A1cの合成された外部刺激応答性出力シグナル値を提供した。
【0074】
合成された外部刺激応答性出力シグナル値は、回帰線を決定して、選択された参照試料分析物濃度から一次出力シグナル値を「逆決定する」以外の方法で決定され得る。例えば、合成された外部刺激応答性出力シグナル値は、4つのTHbレベルの全てについての1つの参照試料%-A1c濃度における測定された一次出力シグナル値から選択され得る。同時に測定された単一のTHb反射率シグナルをA1c反射率シグナルとペアにして、A1c及びTHbデータの4つのペアを形成し、THb反射率に対するA1c反射率のプロットを構成して、これはまた、正規化関係へと導くだろう。
【0075】
従って、合成された外部刺激応答性出力シグナルは、単一の選択された試料分析物濃度で決定された。合成された外部刺激応答性出力シグナルは、一次と外部刺激の両方を含む、測定装置からの組み合された出力シグナルから抽出された外部刺激応答性出力シグナルであると考えられ得る。同様に、正規化関係142は、外部刺激についての参照相関であると考えられ得る。
【0076】
正規化関係142を決定するために、線形又は非線形(例えば、多項式)回帰法が使用され得る。線形又は非線形回帰法は、MINITAB(登録商標)バージョン14又はバージョン16統計パッケージ(MINTAB, INC., State College, PA)、Microsoft Excel、又は回帰法を提供する他の統計分析パッケージにおいて利用可能なものを含む。好ましくは、多項式回帰が正規化関係142を決定するために使用される。例えば、MS Excelバージョン2010では、線形回帰を実施するためにTrendline Layout Chart Toolを介してアクセス可能なLinear Trendline Optionが選択され得るが、一方で非線形多項式回帰を実施するためにPolynomial Trendline Optionが選択され得る。正規化関係142を決定するために他の回帰法も使用され得る。正規化関係142は、好ましくは、較正情報の一部として測定装置中に記憶される。
【0077】
線形回帰が使用される場合、正規化関係142は、Y=mX+b(式中、mは、傾斜であり、そして、bは、回帰線の切片である)の形式であるだろう。非線形回帰が使用される場合、正規化関係142は、Y=b +b X+b(式中、b、b及びbは、多項式の係数である)などの形式であるだろう。線形回帰方程式又は多項式回帰方程式の両方において、Yは、単一の選択された分析物濃度における外部刺激に応答する算出された合成された外部刺激応答性出力シグナルであり、そして、Xは、定量化された外部刺激シグナル/値である。Xの値(定量化された外部刺激シグナル値)が関係(線形方程式又は多項式方程式)のいずれか1つに挿入される場合、正規化値(NV)を表す出力値Yは、正規化関係から生成される。
【0078】
第二の外部刺激が、分析物応答性出力シグナルに悪影響を及ぼしかつ較正情報によって対応されるならば、正規化関係の決定140が第二の外部刺激について繰り返される。
【0079】
正規化値の決定150では、定量化された外部刺激値132を正規化関係142に入力し、正規化値152を求めることによって、正規化値152が正規化関係142から決定される。
【0080】
正規化された出力シグナルの決定160では、分析物応答性出力シグナルが正規化値152で割られ、正規化された分析物応答性出力シグナル162が提供される。これは、好ましくは、分析物応答性出力シグナルに対する外部刺激の効果を減少させる。
【0081】
正規化された参照相関の決定170では、正規化された参照相関172は、回帰法によって、正規化された分析物応答性出力シグナル162と参照試料分析物濃度との間で決定される。MINITAB(登録商標)バージョン14又はバージョン16統計パッケージ(MINTAB, INC., State College, PA)、Microsoft Excel、又は回帰法を提供する別の統計分析パッケージにおいて利用可能なものなどの、線形又は非線形(例えば、多項式)回帰法が使用され得る。好ましくは、多項式回帰が正規化された参照相関172を決定するために使用される。例えば、MS Excelバージョン2010では、線形分析を実施するためにTrendline Layout Chart Toolを介してアクセス可能なLinear Trendline Optionが選択され得、一方で非線形多項式分析を実施するためにPolynomial Trendline Optionが選択され得る。正規化された参照相関172を決定するために他の回帰法も使用され得る。図1Aは、A1c分析システムについて決定されるような、正規化された参照相関172の例を提供する。図B2は、正規化された較正曲線として表現される、決定された正規化された参照相関172を表す。
【0082】
線形回帰が使用される場合、正規化された参照相関172は、Y=mX+b(式中、mは、傾斜であり、そして、bは、回帰線の切片である)の形式であるだろう。多項式回帰などの非線形回帰が使用される場合、正規化された参照相関172は、Y=b +b X+b(式中、b、b及びbは、多項式の係数である)などの形式であり得る。正規化された参照相関172は、好ましくは、後で試料の分析の間に使用するために、較正情報の一部として測定装置中に記憶される。測定装置において、Yは、分析の間に決定された正規化された分析物応答性出力シグナル値であり、そして、Xは、正規化された参照相関172から決定されるような試料の分析物濃度である。さらに以下で考察されるように、線形の正規化された参照相関について、X値(試料分析物濃度)は、Y値(正規化された出力シグナルの値)を方程式に入力する場合に求められ得る。二次多項式の形式の正規化された参照相関について、正規化された参照相関172は、X=c +c Y+c(式中、c、c及びcは、式についての係数である)として、正規化された較正曲線の形式で表され得る。この関係への正規化された出力シグナルの入力は、分析物濃度を生成するだろう。
【0083】
図Cは、較正情報と共に第二の外部刺激も考慮した任意の工場較正法102を表す。従って、図B及び図Cは、バイオセンサーシステムの測定装置についての較正情報を決定する場合に組み合され得る。分析物応答性出力シグナルに悪影響を及ぼす第二の外部刺激(第一の外部刺激が温度である場合の試料のヘマトクリット濃度など)が考慮されるならば、少なくとも2つの第二の定量化された外部刺激値134が外部刺激定量化130に従って決定され得る。
【0084】
次いで、第二の正規化関係147が正規化関係の決定140に従って決定され得るが、ここで、第二の正規化関係147は、単一の選択された試料分析物濃度における、正規化された分析物応答性出力シグナル162と第二の定量化された外部刺激との間で決定される。第二の正規化関係147は、好ましくは、較正情報の一部として測定装置中に記憶される。図B3は、グルコース分析システムにおける第二の正規化関係147の決定の例を提供する。
【0085】
第二の外部刺激の場合、第二の正規化値の決定155が実施される。第二の正規化値157は、第二の正規化関係147から、第二の定量化された外部刺激値134を第二の正規化関係147に入力して、第二の正規化値157を求めることによって決定される。
【0086】
第二の外部刺激の場合、第二の正規化された出力シグナルの決定165が実施される。第二の正規化された分析物応答性出力シグナル167は、正規化された分析物応答性出力シグナル162を第二の正規化値157で割ることによって決定される。これは、正規化された分析物応答性出力シグナル162が正規化された参照相関172によって変換された場合に測定装置から得られるであろう分析物濃度と比較して、第二の正規化された分析物応答性出力シグナル167を試料の参照試料分析物濃度により応答性にすると考えられ得る。図C1は、グルコース分析システムにおける第二の正規化された分析物応答性出力シグナル167を決定する例を提供する。
【0087】
第二の外部刺激の場合、第二の正規化された参照相関の決定175が実施される。第二の正規化された参照相関177は、先に記載したように、回帰法によって、第二の正規化された分析物応答性出力シグナル167と参照試料分析物濃度の間で決定される。図C2は、グルコース分析システムにおける第二の正規化された参照相関177を決定する例を提供する。
【0088】
第二の正規化された参照相関177は、好ましくは、較正情報の一部として測定装置中に記憶される。この場合、正規化された参照相関172は、測定装置中に記憶される必要なく、好ましくは分析の間に使用されない。同様に、3つ以上の外部刺激が較正情報によって考慮され得、ここで、各外部刺激は、個々の正規化関係によって表される組み合された外部刺激について作製された単一の正規化された参照相関に加えて、測定装置中に記憶された個々の正規化関係によっても表される。
【0089】
図Dは、アンカーパラメーターを決定するシグナルベースの方法600を表す。アンカーパラメーターは、工場較正情報が測定装置からの所望の出力シグナル又は所望の正規化された出力シグナルに対して作成される場合に決定される。アンカーパラメーターはまた、補償のために測定装置による分析の間にも決定される。測定装置は、シグナルベースのアンカーパラメーターが出力シグナルから決定されるため、正規化較正情報を含む。好ましくは、正規化された較正情報は、測定装置によって測定された出力シグナルを正規化するために使用される少なくとも1つの正規化関係、及び正規化された出力シグナル値から試料の分析物濃度を決定するための少なくとも1つの正規化された参照相関を含む。
【0090】
605では、図Bに関して先に考察したように、少なくとも1つの正規化された出力シグナル(NRact)が正規化関係を使用して決定される。1つ以上の出力シグナルは、光学及び/又は電気化学分析を使用して試料によって生成される。各正規化された出力シグナル(NRact)は、正規化関係を用いて出力シグナルを変換することによって決定される。従って、これは、先に記載したようにかつ分析の間に、実験室で実施され、補償関係452が決定される。
【0091】
610では、同じ試料から決定された少なくとも2つの初期分析物濃度を平均化することによって、擬似参照濃度値635が試料について決定される。同じ試料から決定された少なくとも2つの初期分析物濃度は、少なくとも2つの分析物応答性出力シグナル412、414から決定され得る。「同じ試料から決定された少なくとも2つの初期分析物濃度を平均化すること」はまた、少なくとも2つの分析物応答性出力シグナル412、414を最初に平均化して、次いで、平均化した出力シグナルから擬似参照を決定することも含み得る。少なくとも2つの初期分析物濃度を決定するために他の出力シグナルも使用され得る。少なくとも2つの初期分析物濃度は、少なくとも2つの分析物応答性出力シグナル412、414の各々について同じ方法で決定され得るか、又は少なくとも2つの分析物応答性出力シグナル412、414の各々について決定された初期分析物濃度は、異なる方法で決定され得る。
【0092】
測定装置及び従来の参照相関、正規化された出力シグナル及び正規化された参照相関、又は別の方法によって測定された、出力シグナルが使用され、擬似参照濃度が決定され得る。補償を使用して又は使用することなく初期分析物濃度を決定し、これが平均化され、擬似参照が提供され得る。
【0093】
615では、利用可能な参照試料分析物濃度(横X軸)から参照試料分析物濃度を選択し、正規化された参照相関を介して対応する正規化された出力シグナル値(縦Y軸)を決定することによって、「対応する正規化された出力シグナル」(NRref)が決定される。これは、図Bに関して合成された出力シグナルを決定するために先に使用された「プロセス」と類似するが、参照試料分析物濃度を正規化された出力シグナル値に変換するために回帰線が使用される代わりに、正規化された参照相関が使用されている。このプロセスは、グラフに照らして記載されているが、実際には参照相関及び選択された参照試料分析物濃度のみが使用され得る。このプロセスは、所望の参照試料分析物濃度について実験室で実施される。
【0094】
620では、システム誤差が、参照試料分析物濃度における少なくとも2つの初期分析物濃度の根底にある、各出力シグナル値又は出力シグナル値群について決定される。システム誤差は、測定装置で決定された初期分析物濃度から参照試料分析物濃度を減算し、次いで、参照試料分析物濃度で割ることによって、少なくとも2つの初期分析物濃度の各々について決定され得る。参照試料分析物濃度がシステム誤差を決定するために使用されるので、これは、相対誤差の尺度になる。この手順は、実験室で試験された参照試料分析物濃度の各々についてのシステム誤差値を提供し得る。
【0095】
次いで、参照試料分析物濃度から生じるシステム誤差値は、好ましくは、多変量回帰から確立された補償関係452を決定するためのターゲットシステム誤差値として使用される。補償関係452は、好ましくは、試料の分析で使用するために測定装置の記憶媒体中に記憶される。
【0096】
630では、少なくとも1つのシグナルベースのアンカーパラメーターが、1つ以上の一次分析物応答性出力シグナルについて決定される。シグナルベースのアンカーパラメーターは、正規化された出力シグナル(NRmeasured)から擬似参照シグナル(NRpseudo)を減算し、NRpseudoで割ること、従って、シグナルアンカーパラメーター=(NRmeasured-NRpseudo)/NRpseudoによって決定される。NRpseudoは、この場合、擬似参照濃度が利用可能な参照試料分析物濃度(横X軸)から選択され、それを使用して、正規化された参照相関を介して対応する正規化された出力シグナル値(縦Y軸)が決定される以外は、「対応する正規化された出力シグナル」と同様に決定される。このプロセスは、グラフに照らして記載されているが、実際には参照相関及び選択された参照試料分析物濃度のみが使用され得る。このプロセスは、さらに記載されるように、補償関係452を決定するために実験室で実施される。このプロセスはまた、少なくとも1つのアンカーパラメーターが補償関係452で使用されるので、擬似参照濃度値635を使用して測定装置中で実施される。
【0097】
図Eは、440において先に取り組んだような、アンカーパラメーターを決定する濃度ベースの方法700を表す。アンカーパラメーターは、測定装置によって分析の間に決定される。測定装置は、正規化された較正情報を含み得るが、濃度ベースのアンカーパラメーターが出力シグナルからではなく初期に決定された試料分析物濃度から決定されるのでその必要はない。
【0098】
710では、方法600について先に記載したように、同じ試料から決定された少なくとも2つの初期分析物濃度を平均化することによって、試料についての擬似参照濃度値735が決定され得る。1つ以上の出力シグナルは、光学及び/又は電気化学分析を使用して試料によって生成される。少なくとも2つの初期分析物濃度は、試料からの1つ以上の出力シグナルから決定される。従って、同じ試料から決定された少なくとも2つの初期分析物濃度は、少なくとも2つの分析物応答性出力シグナル412、414から決定され得る。「同じ試料から決定された少なくとも2つの初期分析物濃度を平均化すること」はまた、少なくとも2つの分析物応答性出力シグナル412、414を最初に平均化し、次いで、平均化した出力シグナルから擬似参照を決定することも含み得る。少なくとも2つの初期分析物濃度を決定するために他の出力シグナルも使用され得る。少なくとも2つの初期分析物濃度は、少なくとも2つの分析物応答性出力シグナル412、414の各々について同じ方法で決定され得るか、又は少なくとも2つの分析物応答性出力シグナル412、414の各々について決定された初期分析物濃度は、異なる方法で決定され得る。
【0099】
測定装置及び従来の参照相関、正規化された出力シグナル及び正規化された参照相関、又は別の方法によって測定された、出力シグナルが使用され、擬似参照濃度が決定され得る。補償を使用して又は使用することなく初期分析物濃度を決定し、これが平均化され、擬似参照が提供され得る。
【0100】
しかしながら、710では、2つの初期分析物濃度が決定されない場合に、擬似参照濃度値がまた決定され、これを使用して、平均してより正確な試料の分析物濃度値が決定され得る。この実行では、正規化された較正情報又は一次補償が使用され、擬似参照濃度値735が決定され得る。
【0101】
720では、システム誤差は、参照試料分析物濃度における少なくとも2つの初期分析物濃度の根底にある、各出力シグナル値又は出力シグナル値群について決定される。システム誤差は、測定装置で決定された初期分析物濃度から参照試料分析物濃度を減算し、次いで、参照試料分析物濃度で割ることによって、少なくとも2つの初期分析物濃度の各々について決定された。参照試料分析物濃度がシステム誤差を決定するために使用されるので、これは、相対誤差の尺度になる。この手順は、実験室で試験された参照試料分析物濃度の各々についてのシステム誤差値を提供し得る。
【0102】
次いで、参照試料分析物濃度から生じるシステム誤差値は、好ましくは、多変量回帰から確立された補償関係452を決定するためのターゲットシステム誤差値として使用される。補償関係452は、好ましくは、試料の分析で使用するために測定装置の記憶媒体中に記憶される。
【0103】
730では、測定装置で決定された初期分析物濃度から擬似参照濃度を減算し、次いで、擬似参照濃度で割ることによって、少なくとも2つの初期分析物濃度の各々について、測定装置中で濃度ベースのアンカーパラメーターが決定される。これは、測定装置によって分析の間に決定された初期分析物濃度の各々についてのアンカーパラメーターを提供する。次いで、これらのアンカーパラメーターの1つ以上が、試料の最終分析物濃度を提供するために使用されるような、先に決定された補償関係452に対して提供される。
【0104】
この場合、第一のアンカーパラメーター444を決定するための一般的な関係は、第一の濃度アンカーパラメーター=(第一の出力シグナル412から決定された初期分析物濃度-擬似参照濃度値435)/擬似参照濃度値435として表され得る。同様に、第二のアンカーパラメーター446を決定するための一般的な関係は、第二の濃度アンカーパラメーター=(二次出力シグナル414から決定された初期分析物濃度-擬似参照濃度値435)/擬似参照濃度値435として表され得る。
【0105】
図Fは、システム誤差と分析物濃度との間の補償関係を決定するためのアンカーパラメーターとセグメント化シグナルプロセシング(SSP)パラメーターの多変量回帰を介した組み合わせを表す。補償関係は、バイオセンサーシステムの測定装置の記憶媒体中に記憶される。
【0106】
852では、補償関係の補償関係中への潜在的包含のための項として、複数のSSPパラメーター及び1つ以上のアンカーパラメーターが選択される。SSPパラメーター及び1つ以上のアンカーパラメーターに加えて、交差項、測定された出力シグナル及び定量化された外部刺激などの他の誤差パラメーターもまた関数に含まれ得る。SSPパラメーターと同様に、他の誤差パラメーターは、光で同定可能な種に応答する一次出力シグナルから又は生物学的流体の試料中の分析物のレドックス反応から得られ得る。誤差パラメーターはまた、熱電対又はHct電極からなどの、一次出力シグナルとは無関係の二次出力シグナルから得られ得る。アンカーパラメーターがシグナル誤差の代わりにシステム誤差を記載するので、アンカーパラメーターはこれらのタイプの誤差パラメーターとは異なる。補償関係の項は、試料中の分析物の非補償濃度を表す値などを含む、SSP及びアンカーパラメーター以外の値を含み得る。
【0107】
好ましくは、一次補償は、分析物応答性出力シグナルからの中間シグナルなどの分析物の分析に由来する誤差パラメーター、又は熱電対、追加の電極などの分析物応答性出力シグナルに無関係な供給源に由来する誤差パラメーターを使用して決定された指数関数によって提供される。誤差パラメーターは、出力シグナルに影響を及ぼす1つ以上の誤差寄与因子に応答し得る。従って、誤差パラメーターは、分析の出力シグナルから直接又は間接的に抽出され得、かつ/又は分析出力シグナルから独立して得られ得る。これらの又は他の分析出力シグナル又は二次出力シグナルから他の誤差パラメーターも決定され得る。2008年12月6日に出願された「Slope-Based Compensation」という表題の国際公報第WO2009/108239号に記載されるものなどの、任意の誤差パラメーターが指数関数を構成する1つ以上の項を形成するために使用され得る。
【0108】
指数関数は、少なくとも1つの誤差パラメーターに応答性である。指数関数は、総分析誤差を誤差パラメーター(ヘマトクリット又は温度など)に相関させ、かつこの誤差パラメーターのバイアスに対する影響を表す、算出数を生成し得る。指数関数は、参照傾斜からの決定された分析物濃度の偏差を誤差パラメーターに関連させる、回帰又は他の方程式として実験的に決定され得る。従って、指数関数は、傾斜偏差、正規化された傾斜偏差、又は分析中の総誤差から生じるバイアス率に対する、誤差パラメーターの影響を表す。
【0109】
指数関数は、これらが項加重係数によって修飾された項の組み合わせを含む場合に、複素関数である。複素指数関数は、少なくとも2つの項を有し、その各々は項加重係数によって修飾される。その組み合わせは、好ましくは線形の組み合わせであるが、項に対する加重係数を提供する他の組み合わせ方法も使用され得る。例えば、複素指数関数は、以下のような加重係数を有する項の線形の組み合わせを有し得る:f(複素指数)=a1+(a2)(R3/2)+(a3)(R4/3)+(a4)(R5/4)+(a5)(R3/2)(G)+(a6)(R4/3)(G)+(a7)(R3/2)(Temp)+(a8)(R4/3)(Temp)+(a9)(Temp)+(a10)(G)+...、式中、a1は、一定であるが加重係数ではなく、a2~a10は、独立した、項加重係数であり、Gは、補償なしで決定された試料の分析物濃度であり、そして、Tempは、温度である。項加重係数(a2~a10)の各々に続いて、その関連する項--(R3/2)、(R4/3)、(R5/4)、(R3/2)(G)、(R4/3)(G)、(R3/2)(Temp)、(R4/3)(Temp)、(Temp)及び(G)が続く。加重係数を有する項の非線形及び他の組み合わせを含む、他の複素指数関数も使用され得る。
【0110】
複素指数関数中の各項は、1つ以上の誤差パラメーターを含み得る。項は、1つ以上の排除試験で選択され得る。より好ましくは、一次関数は、2011年6月6日に出願された「Complex Index Functions」という表題の米国特許公報第2011/0297554号に記載されるものなどの、複素指数関数である。他の一次補償法も使用され得る。
【0111】
SSPパラメーターは、A1c反射率プロファイル又は電流プロファイルなどの、時間ベースのシグナルプロファイルから算出される。簡潔に述べると、先の連続出力シグナルの終点から決定された分析物濃度中の分析誤差及びそこから得られたバイアスは、先の連続出力シグナルのセグメント化シグナルプロセシング(SSP)によって低減され得る。連続出力シグナルをセグメントに分割し、そのセグメントの1つ以上をSSPパラメーターに変換することによって、SSP関数が決定され得る。加えて、ゲートアンペロメトリー又はボルタンメトリーに基づくものなどの摂動されたシステムにおいてさえも、セグメント化シグナル補償は、ゲート入力シグナルから生じる摂動に依存しない補償を実行し得る。
【0112】
交差項は、個々の誤差パラメーターを掛け合わせることによって形成される。例えば、非補償の初期の試料分析物濃度値及び温度値。比率パラメーターは、個々の誤差パラメーターを割ることによって形成される。例えば、非補償の初期の試料分析物濃度値及び温度値。分析の間に異なる時間で一次出力シグナルから得られる中間電流もまた、比率パラメーターを形成するために割られ得る。交差項に関する追加の詳細については、2012年9月20日に出願された「Analysis Compensation Including Segmented Signals」という表題の米国特許公報第2013/0071869号に見いだされ得る。比率パラメーターに関する追加の詳細については、2011年3月22日に出願された「Residual Compensation Including Underfill Error」という表題の米国特許公報第2011/0231105号に見いだされ得る。
【0113】
854では、1つ以上の数学的技法が、各々選択された項又は潜在項についての第一の排除値を決定するために使用される。数学的技法は、回帰法、好ましくは多変量回帰などを含み得る。排除値は、p値などであり得る。数学的技法はまた、加重係数、定数、及び選択された項に関連する他の値を提供し得る。多変量回帰は、ある値に対する複数の項の効果を評価し、各項がその値に影響する程度に対応した情報を提供し得る、統計回帰法の一種である。従って、多変量回帰は、各項の寄与に対応する加重係数とその値に対して最も統計的に有意な寄与を提供する項に対応するp値の両方を提供し得る。
【0114】
MINITABバージョン14又は16ソフトウェアは、多変量回帰を実施するために選択されたMulti-Variant Regression of Linear Combinations of Multiple Variables optionと共に使用され得る。項に対する加重係数を決定するために、他の統計分析又は回帰オプションも使用され得る。多変量回帰に関する追加の詳細については、2012年9月20日に出願された「Analysis Compensation Including Segmented Signals」という表題の米国特許公報第2013/0071869号、及び2011年3月22日に出願された「Residual Compensation Including Underfill Error」という表題の米国特許公報第2011/0231105号に見いだされ得る。
【0115】
856では、1つ以上の排除試験が排除値に適用され、補償関係から排除する1つ以上の項が同定される。少なくとも1つの項が試験下で排除される。好ましくは、関数について所望の項が得られるまで、1つ以上の排除試験を使用して、補償関係から統計的に有意でない潜在項を除去する。857では、1つ以上の数学的技法が、残りの項についての第二の排除値を同定するために繰り返される。858では、第二の排除値が1つ以上の排除試験下で補償関係から排除するための残りの項を同定しないのであれば、残りの項は補償関係に含まれる。859では、第二の排除値が1つ以上の排除試験下で補償関係から排除する残りの項を同定するのであれば、残りの項についての第三の排除値を同定するために857の1つ以上の数学的技法が繰り返され得る。これらの残りの項は、858と同様に補償関係に含まれ得るか、又は859と同様に排除試験が排除する1つ以上の項の同定に失敗するまで、プロセスが反復して繰り返され得る。補償関係についての項及び加重係数を決定するための排除試験の使用に関する追加情報については、2011年3月22日に出願された「Residual Compensation Including Underfill Error」という表題の米国特許公報第2011/0231105号に見いだされ得る。
【0116】
血液の%-A1c分析
チャネル1(Ch1)及びチャネル3(Ch3)に関して複数の参照試料についての分析物濃度が測定装置を用いて決定され、2つの初期の%-A1c分析物濃度が提供された。従って、各試料について、Ch1初期分析物濃度(A1_Calc)及びCh3初期分析物濃度(A3_Calc)が決定された。次いで、第一の擬似参照濃度(Pseudo1)は、Ch1及びCh3出力シグナルを平均化し、次に、平均化した出力シグナルから各参照試料の擬似参照濃度を決定することによって決定された。第二の擬似参照濃度(Pseudo2)は、2つの初期の%-A1c分析物濃度を平均化することによって決定された。従って、擬似参照濃度を決定する2つの方法が例示のために記載されている。先に記載したように、擬似参照濃度は他の方法でも決定され得る。
【0117】
試料の参照分析物濃度に対するこれらの2つの技法の比較は、図2A図2Fに表される。図2A図2C及び図2Eにおいて、擬似参照濃度(A1c_Pseudo1)は、参照試料の公知の%-A1c濃度(A1c_Ref)に重なる。図2B図2D及び図2Fにおいて、平均化した出力シグナルから決定された擬似参照分析物濃度(A1c_Pseudo2)は、参照試料の公知の%-A1c濃度(A1c_Ref)に重なる。
【0118】
図2A図2C及び図2Eのプロットは、擬似参照濃度としてPseudo1を使用して、(A1c_Calc-A1c_Ref)/A1c_Ref(dA/A1c_Ref)と(NRmeasured-NRPseudo1)/NRPseudo1(dNR/NR_Pseudo1)と間の相関を示す。プロットは、測定された反射率シグナル(一次出力シグナル、参照試料分析物濃度、正規化された一次出力シグナル及びPseudo1-参照濃度から決定された。図2B図2D及び図2Fのプロットは、同じデータについての相関を示すが、ここでは、擬似参照濃度としてPseudo2が使用された。横X軸上に使用されるようなdNR/NR_eqn関係は、正規化された出力シグナル中の誤差を表す式である。
【0119】
参照試料分析物濃度(A1c_Ref)を使用するdA/A1c_Refの相関について、R相関は、1に近づき、従って、システム誤差と相対誤差との間の完璧に近い相関を示し、一方でA1c_Pseudo1及びA1c_Pseudo2のR相関は変化する。擬似参照相関を使用することによって得られたR相関中のこの差異に関わらず、擬似参照濃度から決定されたアンカーパラメーターについてのR相関は、分析中のシステム誤差を表すのに非常に強い。
【0120】
アンカーパラメーター及び残余誤差補償
先に考察したように、アンカーパラメーターは、残余誤差補償を実施するために使用され得る。残余誤差補償は、誤差がランダムになるまで分析中の総誤差を実質的に補償し得る。ランダム誤差とは、いかなる誤差寄与因子にも起因しないこと及び統計的に有意であると考慮されるレベルで一次関数又は残余関数によって記載されないことである。
【0121】
例えば、%-A1c分析システムでは、以下のように、初期に決定された%-A1c試料分析物濃度が残余誤差補償を用いて補償され、初期試料分析物濃度が提供され、次いで、これを平均化して試料の最終分析物濃度が提供される:
【0122】
A1_初期(チャネル1)=%-A1_初期/(1+RE1)(式中、RE1は、チャネル1についての残余誤差関数である);A3_初期(チャネル3)=A3_初期/(1+RE3)(式中、RE3は、チャネル3についての残余誤差関数である);%-A1c_最終=A1_初期及びA3_初期の平均。
【0123】
実施例1:シグナルベースのアンカーパラメーター単独を用いた残余誤差補償
%-A1c分析システムでは、ゾーン1チャネル1及び3についての線形回帰の出力が以下の表1に示され、ここで、D-NA1_9は、Ch1検出器についてのA1c相対誤差(A1c_Calc-A1c_Ref)/A1c_Refを示し、そして、D-NA3_9は、Ch3検出器についてのA1c相対誤差(A1c_Calc-A1c_Ref)/A1c_Refを示す(9%の単一の選択されたA1c濃度における正規化された出力シグナルから決定されるような)。同様に、D-(NR1)は、チャネル1についてのアンカーパラメーターdNR1/NRapprxを示し、そして、D-(NR3)は、チャネル3についてのアンカーパラメーターdNR3/NRapprxを示す。アンカーパラメーター関係(RE1=Slope(DNR1/NRapprx)+Int)による補償及び2つのA1c値の平均化は、最終標準偏差(SD)4.29を与え、これは元々のSD値4.23とほぼ等価であった。回帰出力の「定数」列上の値は、加重係数ではないが、Y=b+mXの形式の線形回帰についての定数である。
【0124】
【表1】
【0125】
実施例2:濃度ベースのアンカーパラメーター単独を用いた残余誤差補償
%-A1c分析は、2つの初期分析物濃度の平均から決定された擬似参照濃度から決定されたアンカーパラメーターを使用した残余補償で実施された。2つの初期分析物濃度を提供するために使用される%-A1c濃度決定は、2つの入力パラメーター:A1c応答性一次出力シグナル(反射率)及びTHb応答性二次出力シグナルから決定された血液試料のTHb濃度の関数に基づいていた。一次補償が使用され、一次出力シグナルから2つの初期分析物濃度が決定された。この方法は、擬似参照濃度を決定する前に2つの出力シグナルを平均化した。
【0126】
【表2】
【0127】
上の表2では、Al及びA3は、%-A1cバイオセンサーシステムのCh1及びCh3からそれぞれ決定された%-A1c濃度である。Aavgは、複数の分析のために2つのチャネル(Ch1及びCh3)の各々から決定された初期に決定された%A1c試料濃度の平均化された濃度である。Apre-avgは、試料の濃度が決定される前に測定されたA1c出力シグナルが事前平均化された場合の%-A1c試料分析物濃度である。
【0128】
バイオセンサーシステムの2つのチャネルのいずれかからの標準偏差(SD)値は、いずれの擬似参照濃度決定法の平均値の標準偏差(SD)値よりも大きい。従って、平均分析物濃度値は、いずれか個々のチャネルから決定された濃度よりも、試料の公知の参照試料分析物濃度をより正確に反映する。従って、%-A1c Avg又は%-A1c Pre-Avgは、アンカーパラメーターを算出するための擬似参照として使用され得る。
【0129】
システム誤差及びアンカーパラメーターは、この例において、以下のように定義され得る:
【0130】
各チャネルについてのシステム誤差:dA1/A1cRef=(A1-A1cRef)/A1cRef;dA3/A1cRef=(A3-A1cRef)/A1cRef(式中A1及びA3は、一次補償で各チャネルについて決定された初期分析物濃度であり、そして、A1cRefは、試料の公知の参照試料分析物濃度である)。A1cは、分析物であり、そして、試料は、血液であった。この分析は、実験室で、Tosoh G7基準計器で決定されるように、公知の参照試料分析物濃度を有する複数の試料について実施された。
【0131】
各チャネルについてのアンカーパラメーター:dA1/A1cAvg=(A1-A1cAvg)/A1cAvg;dA3/A1cAvg=(A3-A1cAvg)/A1cAvg(式中、A1cAvgは、同じ試験試料について各チャネルから決定された%-A1c試料分析物濃度の平均である)。アンカーパラメーターはまた、A1cAvgとA1cPre-Avgを交換することによっても決定され得る。先に考察したように、擬似参照濃度が、初期分析物濃度よりも、複数の分析について(従って、平均で)試料分析物濃度のより正確な表示を提供する限り、擬似参照濃度は任意の方法で決定され得る。
【0132】
この例において、システム誤差は、一般に、以下のように、濃度アンカーパラメーターの関数としてシステム誤差(dA/A1cRef又はdA3/A1cRef)を記述することによって、各チャネルについて表現され得る:DAr1=dA1/A1cRef=f(Ch1についてのDA1=アンカーパラメーター(dA1/A1cAvg));DAr3=dA3/A1cRef=f(Ch3についてのDA3=アンカーパラメーター(dA3/A1cAvg))。これらの式は、実験室で、Tosoh G7基準計器で決定されるように、公知の参照試料分析物濃度を有する複数の試料について決定された。
【0133】
濃度アンカーパラメーター単独に基づく試験試料の分析のために測定装置で使用するための補償関係を提供するこの方法の例は、以下の通りである。表3A及び表3Cは、補償についてアンカーパラメーターを単独で使用した分析結果を提供し、一方で表3B及び表3Dは、補償についてSSP及び他のパラメーターを単独で使用した分析結果を提供する。線形回帰出力の「定数」列上の値は、加重係数ではないが、Y=b+mXの形式の線形回帰についての定数である。多変量回帰出力の「定数」列上の値は、加重係数ではないが、多変量回帰式についての定数である。
【0134】
【表3】
【0135】
【表4】
【0136】
【表5】
【0137】
【表6】
【0138】
表3Aにおいて決定されたCh1アンカーパラメーターは、決定された分析物濃度中の誤差28.7%を記載することができたが、一方でアンカーパラメーターなしのSSP及び他のパラメーターは、表3Bにおいて誤差29.2%を記載することができた。表3Cにおいて決定されたCh3アンカーパラメーターは、決定された分析物濃度中の誤差36%を記載することができたが、一方でアンカーパラメーターなしのSSP及び他のパラメーターは、表3Dにおいて誤差18.9%を記載することができた。従って、アンカーパラメーター単独は、Ch1についてのSSP及び他のパラメーター補償と同等であり得るが、Ch3を補償するのに優れていることが示された。チャネル間のこの変動性は、特定の分析の間のシステム誤差を補償する能力がいかにバイオセンサーシステムの測定性能の有意な増加を提供し得るかを示す。
【0139】
実施例3A:シグナルベースのアンカーパラメーター及び他のパラメーターを含む補償関係
アンカーパラメーターは、補償関係を提供するためにセグメント化シグナル(SSP)及び他のパラメーターと組み合わせて使用され得る。残余誤差関数を決定するためにアンカーパラメーターを多変量回帰に加えることは、システム誤差と補償関係との間の相関を増加させ、バイオセンサーシステムの%-A1c測定性能を改善し得る。アンカーパラメーター(NRmeasured-NRpseudo)/NRpseudoがA1cシステム誤差と相対的に強い相関(約0.3~0.6のR相関値)を提供したので、SSPパラメーターなどの他の項を補償関係に加えることは、アンカーパラメーター又はSSPパラメーターのいずれかが単独で使用された場合よりも、分析中のシステム誤差を記載する補償関係の能力を改善することが見いだされた。
【0140】
図3A及び図3Bにおける相関プロットは、残余補償についての補償関係においてアンカーパラメーターが単独で使用された相関(図3A)と残余補償についての補償関係においてアンカーパラメーターが他のタイプのパラメーター(SSPパラメーター、交差項及び比率パラメーターを含む)と組み合わせて使用された相関(図3B)を比較する。多変量回帰を使用して、補償関係に組み入れるためのパラメーターを組み合せ、選択し、加重した。ゾーン1のCh1検出器について、R相関値は、アンカーパラメーター単独の場合の0.272からアンカー及び他のパラメーター残余関数の場合の0.4963に増加した。ゾーン1のCh3検出器について、R相関値は、アンカーパラメーター単独の場合の0.412からアンカー及び他のパラメーター残余関数の場合の0.5374に増加した。従って、バイオセンサーシステムの測定性能の増加は、補償関係を決定するためにアンカーパラメーターが他のパラメーターと組み合わされて使用された場合に観察された。バイオセンサーシステムについての測定性能のさらなる改善は、アンカーパラメーターを含む補償関係を用いて決定された2つのチャネル%-A1c初期分析物濃度の平均化から得られ得る。
【0141】
以下のように、多変量回帰を使用して、%-A1cバイオセンサーシステムのCh1及びCh3についてシグナルベースのアンカーパラメーター(及び関連する交差項)によって提供されるシステム誤差補償を含む補償関係を決定した:
【0142】
【数1】
【0143】
【数2】
【0144】
両方の補償関係について、C4MVなどの項は、測定された反射率であり;MR1は、A1c反射率プロファイルについて測定された最小A1c反射率であり;Mt1は、MR1に達するのに必要とされる分析時間であり;D1-3などの項は、SSPパラメーターであり;DNR1は、Ch1についてのアンカーパラメーターであり、そして、DNR3は、Ch3についてのアンカーパラメーターであり;そして、D1-2/1及びD1-2/1aなどの項は、Ch1からのSSP比率パラメーターであり、ここで、D1-2/1は、D1-2/D1-1であり、そして、D1-2/1aは、D1-2/D1-1の継時的追跡である。図A-4は、Ch1(一次出力シグナル)及びCh2(二次出力シグナル)についてのSSPパラメーターに対応する反射率シグナルの部分を表す。定数は、Ch1方程式について-0.7729であり、Ch3方程式について-0.7167である。各項に対する加重係数も示される。定数、加重係数及び項は、異なる分析では異なるだろう。排除プロセスを介して決定されるような方程式中の項から、測定装置の両方のチャネルが「同じ」であると考慮する一方で、先に考察したように、補償関係は、各チャネルについて異なる。
【0145】
Multi-Variant Regression of Linear Combinations of Multiple Variables optionを使用してMINITABバージョン16ソフトウェアを用いて実施されるような多変量回帰からの回帰出力は、表4の通りである。回帰出力の「定数」列上の値は、加重係数ではないが、多変量回帰式についての定数である。
【0146】
【表7】
【0147】
【表8】
【0148】
以下の表5Aは、測定された出力シグナル並びに血液試料中の温度及びTHb濃度を補償するための一次補償を使用した従来の分析法からの結果と共に、%-A1c分析バイオセンサーシステムの測定装置で決定されるような、5つのロットのA1c試験センサーについての補償結果をまとめる。この従来の分析法は、ゾーン1検出器(Ch1及びCh3)からのA1c反射率シグナルを平均化し、ゾーン3検出器(Ch2及びCh4)からのTHb反射率シグナルを平均化し、試料のTHb濃度を決定し、そして、平均化されたA1c反射率及び決定されたTHb値を含む2つのパラメーター関数を使用して、血液試料の%-A1c濃度を決定する。
【0149】
【表9】
【0150】
%-A1c測定について、分析された40個の血液試料の中から37個の決定された分析物濃度は、好ましくは、基準計器で試料について決定された%-A1c濃度から±7%以内である。従って、好ましくは、測定装置によって決定された分析物濃度92.5%は、基準計器で決定された濃度の±7%以内である。最良の結果は、補償関係においてアンカーパラメーターと他のパラメーターを組み合わせた方法から得られ、これは、とりわけA1c%-バイアスの標準偏差(SD)値に反映される。アンカー+SSP及び他のパラメーター補償関係は、一次補償又はアンカーパラメーター補償単独のいずれかと比較して、SDのおよそ11%(4.21-3.75/4.21100)の低下を提供した。従って、SSP及び他のパラメーターと組み合わせたアンカーパラメーターは、とりわけ複数の分析が考慮される場合に、バイオセンサーシステムに対して測定性能の実質的な増加を提供した。
【0151】
実施例3B:シグナルベースのアンカーパラメーター、他のパラメーター及び外部刺激アンカーパラメーターを含む補償関係
外部刺激がバイオセンサーシステムの一次出力シグナルに影響し、かつ外部刺激に応答する二次出力シグナルが測定されるならば、アンカーパラメーターがまた、外部刺激について決定され、かつ多変量回帰を介した補償関係の決定に含まれ得る。従って、外部刺激シグナルベースのアンカーパラメーターは、外部刺激の測定装置による定量化の周囲のシステム誤差を記載すると考えられ得る。
【0152】
同じ基本的方法400は、アンカーパラメーターが分析物ではなく外部刺激について決定される以外は、図A-1に関して先に記載した通りであった。この例において、アンカーパラメーターは、%-A1cバイオセンサーシステム中のTHbから生じる外部刺激について決定された。アンカーパラメーターは、バイオセンサーシステムに依存して他の外部刺激についても決定され得る。
【0153】
%-A1cバイオセンサーシステムでは、Ch2及びCh4は、THb応答性二次出力シグナルを提供する。従って、THbアンカーパラメーターは、一般式:dR2/RTHb_Pseudo=(R2-RTHb_Pseudo)/RTHb_Pseudo-1(式中、R2は、THbに応答する測定装置のCh2から決定された二次出力シグナルであり、そして、RTHbPseudo=b THbPseudo +b THbPseudo+b)を介して決定された。従って、RTHb_Pseudoは、Ch2及びCh4の各々から決定された初期THb濃度を平均化するか、又はCh2及びCh4からの二次出力シグナルを平均化して、濃度を決定することによって決定された。従って、測定装置のいずれかのチャネルから得られ得るものよりも、平均でより良好なTHb濃度が決定された。このプロセスは、試料の初期分析物濃度を決定することに相当するが、この場合はTHb外部刺激について使用された。この関係は、外部刺激THbについてのアンカーパラメーターを決定するため、分析の間に使用するために測定装置の記憶媒体中に記憶されるだろう。
【0154】
THbPseud濃度は、初期外部刺激(THb)試料濃度を平均化することによって決定された。そのような方法は、例えば、610及び710に関して分析物に照らして先に考察された。ここで、分析物応答性一次出力シグナルの代わりに、外部刺激第二出力シグナルが使用され、平均化された外部刺激擬似参照濃度が決定された。
【0155】
この例において使用された外部刺激THbについての変換関係は、非線形の多項式回帰を使用して決定された。線形又は非線形(例えば、多項式)回帰法が、外部刺激についての変換関係を決定するために使用され得るが、二次多項式が一般に好ましい。線形又は非線形回帰法は、MINITAB(登録商標)バージョン14又はバージョン16統計パッケージ(MINTAB, INC., State College, PA)、Microsoft Excel、又は回帰法を提供する他の統計分析パッケージにおいて利用可能なものを含む。好ましくは、多項式回帰が外部刺激変換関係を決定するために使用される。例えば、MS Excelバージョン2010では、線形回帰を実施するためにTrendline Layout Chart Toolを介して利用可能なLinear Trendline Option accessibleが選択され得るが、一方で非線形多項式回帰を実施するためにPolynomial Trendline Optionが選択され得る。外部刺激変換関係を決定するために他の回帰法も使用され得る。外部刺激変換関係は、好ましくは、較正情報の一部として測定装置中に記憶される。
【0156】
線形回帰が使用される場合、外部刺激変換関係は、Y=mX+b(式中、mは、傾斜であり、そして、bは、回帰線の切片である)の形式であろう。非線形回帰が使用される場合、先に示したように、外部刺激変換関係は、Y=b +b X+b(式中、b、b及びbは、多項式の係数である)などの形式であろう。線形又は多項式回帰方程式の両方では、Yは、算出された外部刺激応答性出力シグナルであり、そして、Xは、外部刺激擬似参照濃度である。Xの値(外部刺激擬似参照濃度値)が関係(線形又は多項式方程式)のいずれか1つに挿入される場合、算出された外部刺激応答性出力シグナルである出力値Yが外部刺激変換関係から生成され、これを使用して外部刺激についてのアンカーパラメーターが決定され得る。
【0157】
以下のように、多変量回帰を使用して、%-A1cバイオセンサーシステムの分析物(Ch1及びCh3)とTHb(Ch2及びCh4)の両方についてのシグナルベースのアンカーパラメーター(及び関連する交差項)、SSPパラメーター及び他のパラメーターによって提供されるシステム誤差補償を含む補償関係を決定した:
【0158】
【数3】
【0159】
【数4】
【0160】
これらの補償関係は、THb(RTHb_Pseudo)についてのシグナルベースのアンカーパラメーターとしてのD-C2項及びCh3から決定された初期A1c濃度としてのA3項の包含を示す。以下の表5Bに示すように、A1cとTHbの両方についてのシグナルベースのアンカーパラメーターを含めることは、Ch1/Ch2(A1)及びCh4/Ch4(A3)についての補償関係の実質的な増加を提供し、SSP及び他のパラメーター単独と比較して誤差を記載した。
【0161】
【表10】
【0162】
実施例4:濃度ベースのアンカーパラメーター及び他のパラメーターを含む補償関係
この例において、実施例2において使用された同じ分析データ及びアンカーパラメーターが使用された。しかしながら、多変量回帰はまた、SSP及び他のパラメーターを含んでいた。擬似参照は、各チャネルについての初期分析物濃度を平均化することによって決定された。
【0163】
この例において、システム誤差は、一般に、以下のように、SSP及び他のパラメーターと組み合わせた濃度アンカーパラメーターの関数としてシステム誤差(dA/A1cRef又はdA3/A1cRef)を記述することによって各チャネルについて表され得る:DAr1=dA1/A1cRef=f(Ch1についてのDA1=アンカーパラメーター(dA1/A1cAvg)、SSPパラメーター、及び他の誤差パラメーター);DAr3=dA3/A1cRef=f(Ch3についてのDA3=アンカーパラメーター(dA3/A1cAvg)、SSPパラメーター、及び他の誤差パラメーター)。これらの式は、実験室で、Tosoh G7基準計器で決定されるように、公知の参照試料分析物濃度を有する複数の試料について決定された。
【0164】
SSP及び他のパラメーターと組み合わせた濃度ベースのアンカーパラメーターに基づく補償関係を提供するためのこの方法の例は、以下の通りである。表6A及び表6Bは、アンカーパラメーターなしのCh1及びCh3についてのSSP及び他のパラメーターから得られた多変量回帰結果を示す。表6C及び表6Dは、Ch1及びCh3についてのSSP及び他のパラメーターと共にアンカーパラメーター及びその交差項を含むことによって得られた多変量回帰結果を示す。回帰出力の「定数」列上の値は、加重係数ではないが、多変量回帰式についての定数である。
【0165】
【表11】
【0166】
【表12】
【0167】
【表13】
【0168】
【表14】
【0169】
例から明らかなように、%-A1c分析バイオセンサーシステムの測定性能の実質的な改善は、システム誤差が補償関係におけるアンカーパラメーター及びその交差項によって記載された場合に観察された。Ch1(DAr1)について、SSP及び他のパラメーターは、23.8%のR(adj)を提供したが、一方でアンカーパラメーター及び交差項が加えられた場合に、41.8%のR(adj)が提供された。これは、アンカーパラメーター及びその関連交差項を含む補償関係の能力のおよそ75%(41.8-23.8/23.8100)の増加であると考えられ、Ch1分析からの誤差を記載し、従って除去し得る。改善は、Ch3について依然としてより大きかった。従って、アンカーパラメーター及び関連する交差項を用いたシステム誤差に対応する補償関係を含むバイオセンサーシステムの測定性能は、有意に改善されるだろう。
【0170】
血液のグルコース分析
2つのチャネル、従って同じ試験試料について実施された2つの独立した分析を有する先に記載された%-Ac分析バイオセンサーシステムとは異なり、記載されたグルコース分析システムにおいて、単一の作用電極及び対電極を使用して単一分析が実施された。2つの独立した分析を実施するグルコースバイオセンサーシステムも使用され得るが、この実施例は、システム誤差を補償するための、アンカーパラメーターを含む補償関係のバイオセンサーシステムに対する多様な適用可能性を示す。
【0171】
システム誤差は、この実施例において、測定装置によって試料から測定された出力シグナル及び従来の参照相関から決定された試料の分析物濃度から試料の参照分析物濃度を減算し、次いで、参照分析物濃度で割ることによって決定された。これは、一般に、dG/GRef=(Gcalc-GRef)/GRefとして表現され得る。グルコースは分析物であり、そして、試料は血液であった。この分析は、実験室で、YSI基準計器で決定されるように、公知の参照試料分析物濃度を有する複数の試料について実施された。
【0172】
擬似参照濃度は、正規化された較正情報、従って正規化された出力シグナル及び正規化された参照相関から決定された分析物試料濃度を使用するか、又は温度及びヘマトクリット効果について補償された一次補償を介するかのいずれかによって決定された。温度及びヘマトクリット効果がグルコース分析において最も重要な外部刺激であるので、決定された分析物濃度に対するそれらの効果は、正規化された較正情報(温度に対応し、Hctにも対応し得る)又は一次補償のいずれかを介して実質的に低減された。この方法で、測定された出力シグナル及び従来の参照相関から初期分析物濃度が決定された場合よりも、平均して参照試料分析物濃度をより正確に記載する擬似参照濃度が決定された。
【0173】
アンカーパラメーターは、初期分析物濃度(測定された一次出力シグナル/従来の参照相関)から擬似参照濃度を減算し、擬似参照濃度で割ることによって決定された。これは、一般に、dG/GPseudo=(Gcalc-GPseudo)/GPseudoとして表現され得る。
【0174】
先に記載された%-A1c分析バイオセンサーシステムとは異なり、血液試料の1つの分析だけがグルコースバイオセンサーシステムによって実施されるため、残余補償についてアンカーパラメーターが単独で使用されたならば、決定された擬似参照分析物濃度と比較して改善がほとんど又は全く観察されないだろう。従って、この例において、アンカーパラメーターは、他のパラメーターと組み合わせて使用され、多変量回帰を使用して補償関係が決定される。
【0175】
図4Aは、決定されたアンカーパラメーターに対してシステム誤差をプロットし、かつ優れた相関を示しており、実際に、試験された試料について93.6%のR相関を提供する。従って、システム誤差を記載するアンカーパラメーターの能力が確立された。図4Bは、アンカーパラメーター及び他の誤差パラメーターを含む決定された補償関係に対してシステム誤差をプロットし、これはシステム誤差を記載する補償関係の増加された能力を示し、96.5%のR相関を提供する。同時に、回帰の標準偏差は、0.0456から0.0339に低減され、このことは改善を示す。従って、分析の間のシステム誤差を補償する、従ってバイオセンサーシステムの測定性能を改善するアンカーパラメーターを含む補償関係の能力が確立された。
【0176】
以下のように、多変量回帰を使用して、グルコースバイオセンサーシステムの単一の「チャネル」についてのアンカーパラメーター(及び関連する交差項)によって提供されたシステム誤差補償を含む補償関係を決定した:
【0177】
【数5】
【0178】
式中、T=温度;R32=R3/2、図A-3に表されるようなパルス3とパルス2の最終電流の比(i3,4/i2,2);R43=R4/3、パルス4とパルス3の最終電流の比(i4,4/i3,4);R54=R5/4、パルス5とパルス4の最終電流の比(i5,4/i4,4);R53=R5/3、パルス5とパルス3の最終電流の比(i5,4/i3,4);R65=R6/5、パルス6とパルス5の最終電流の比(i6,4/i5,4);R64=R6/4、パルス6とパルス4の最終電流の比(i6,4/i4,4);H32G=i7,4(Hct電極電流)R32G初期;H53G=i7,4 R53*Gcalc;DGp=アンカーパラメーター(dG/Gpseudo);DGT=DGpT;DGH=DGp7,4;及びDGR32=DGp*R32。
【0179】
Multi-Variant Regression of Linear Combinations of Multiple Variables optionを使用してMINITABバージョン16ソフトウェアで実施されるような多変量回帰からの回帰出力は、表7の通りである。多変数式についての定数は、2.01433として決定された。
【0180】
【表15】
【0181】
図4Cは、任意の補償前、温度及びヘマトクリット効果を補償するがシステム誤差を記載するアンカーパラメーターを欠く一次補償関数を用いた補償後、並びにアンカーパラメーター及び関連する交差項を含む上で決定された補償関係による補償後の、測定された出力シグナル/従来の参照相関から決定された初期分析物濃度のシステム誤差を比較する。アンカーパラメーターを含む補償関係によって提供された測定性能の増加は、各分析についてのSD値において最も顕著である。アンカーパラメーターを含む補償関係で実施された異なる分析間のSD(SD=0.0398)は、一次補償単独のSD(SD=0.0648)よりおよそ38%低く(0.0648-0.0398/0.0648100)、測定された/従来の参照相関で決定された分析物濃度のSD(0.18)よりおよそ78%低い(0.18-0.0398/0.18100)。従って、正確度及び測定性能の実質的な改善は、バイオセンサー誤差についてのシステム誤差を記載するアンカーパラメーターを含む補償関係を介して提供される。
【0182】
図5は、生物学的流体の試料中の分析物濃度を決定する、バイオセンサーシステム500の概略図を描写する。バイオセンサーシステム500は、測定装置502及び試験センサー504を含む。測定装置502は、卓上式装置、可搬式又は携帯式装置などを含む分析機器で実行され得る。好ましくは、測定装置502は、携帯式装置で実行される。測定装置502及び試験センサー504は、電気化学センサーシステム、光学センサーシステム、それらの組み合わせなどを実行するように適合され得る。
【0183】
バイオセンサーシステム500は、従来の較正情報又は先に記載された正規化技法に従って作成された較正情報及び測定装置502中に記憶されたアンカーパラメーター補償情報を使用して、試料の分析物濃度を決定する。較正方法100と102の一方又は両方からの較正情報が、測定装置502中に記憶され得る。分析法400は、バイオセンサーシステム500による実行のために測定装置中に記憶され得る。
【0184】
補償がバイオセンサーシステム500によって実行される場合、アンカーパラメーター補償情報は、試料の分析物濃度の決定におけるバイオセンサーシステム500の測定性能を改善し得る。バイオセンサーシステム500は、グルコース、A1c、尿酸、ラクタート、コレステロール、ビリルビンなどの分析物濃度を含む、分析物濃度を決定するために利用され得る。特定の構成が示されているが、バイオセンサーシステム500は、追加の成分を有する構成を含む、他の構成も有し得る。
【0185】
試験センサー504は、リザーバー508及び開口部512を備えたチャネル510を形成する基部506を有する。リザーバー508及びチャネル510は、通気口を備えた蓋によって被覆され得る。リザーバー508は、部分的に密閉された容積を規定する。リザーバー508は、水膨潤性ポリマー又は多孔質ポリマーマトリックスなどの、液体試料の保持に役立つ組成物を含有し得る。試薬は、リザーバー508及び/又はチャネル510中に置かれ得る。試薬は、1つ以上の酵素、結合剤、メディエーター及び類似種を含み得る。試薬は、光学システム用の化学指示薬を含み得る。試験センサー504は、リザーバー508に隣接する試料インターフェース514を有する。試験センサー504は、他の構成も有し得る。
【0186】
光学センサーシステムでは、試料インターフェース514は、試料を見るための光学ポータル又は間隙(aperture)を有する。光学ポータルは、本質的に透明な材料によって被覆され得る。試料インターフェース514は、リザーバー508の反対側に光学ポータルを有し得る。
【0187】
電気化学システムでは、試料インターフェース514は、作用電極532及び対電極534に接続された導電体を有し、そこから分析出力シグナルが測定され得る。試料インターフェース514はまた、1つ以上の追加の電極536に接続された導電体を含み得、そこから二次出力シグナルが測定され得る。電極は、実質的に同じ面又は2つ以上の面にあり得る。電極は、リザーバー508を形成する基部506の表面上に配置され得る。電極は、リザーバー508中へ延伸又は突出し得る。誘電層が導電体及び/又は電極を部分的に被覆し得る。試料インターフェース514は、他の電極及び導電体も有し得る。
【0188】
測定装置502は、センサーインターフェース518及び任意のディスプレイ520に接続された電気回路516を含む。電気回路516は、シグナル生成器524、任意の温度センサー526及び記憶媒体528に接続されたプロセッサー522を含む。
【0189】
シグナル生成器524は、プロセッサー522に応答してセンサーインターフェース518に電気入力シグナルを提供することが可能である。光学システムでは、電気入力シグナルが、センサーインターフェース518中の検出器及び光源を作動又は制御するために使用され得る。電気化学システムでは、電気入力シグナルが、センサーインターフェース518によって試料インターフェース514へ伝達され、電気入力シグナルが生物学的流体の試料に印加され得る。電気入力シグナルは、電位又は電流であり得、かつ一定、可変、又はACシグナルがDCシグナルオフセットと共に印加される場合のようなそれらの組み合わせであり得る。電気入力シグナルは、連側的に、又は複数の励起、シークエンス若しくはサイクルとして印加され得る。シグナル生成器524はまた、生成器-記録計としてセンサーインターフェースからの出力シグナルを記録することが可能であり得る。
【0190】
任意の温度センサー526は、測定装置502の周囲温度を決定することが可能である。試料の温度は、測定装置502の周囲温度から推定されるか、出力シグナルから算出されるか、又は測定装置502の周囲温度と同じ若しくは類似すると推定され得る。温度は、サーミスタ、温度計又は他の温度感知装置を使用して測定され得る。試料温度を決定するために他の技術も使用され得る。
【0191】
記憶媒体528は、磁気、光学、又は半導体メモリー、別の記憶装置などであり得る。記憶媒体528は、固定式メモリー装置、遠隔アクセスされる可動式メモリー装置、例えばメモリーカードなどであり得る。
【0192】
プロセッサー522は、記憶媒体528中に記憶されたコンピューターで読み取り可能なソフトウェアコード並びに較正情報及びアンカーパラメーター補償情報を使用して、分析物分析法を実行することが可能である。プロセッサー522は、センサーインターフェース518における試験センサー504の存在に応答して、試験センサー504への試料の適用で、ユーザー入力に応答などして分析物分析を開始し得る。プロセッサー522は、センサーインターフェース518に電気入力シグナルを提供するようにシグナル生成器524に指示することが可能である。プロセッサー522は、温度センサー526から試料温度を受け取ることが可能である。プロセッサー522は、センサーインターフェース518から出力シグナルを受け取ることが可能である。
【0193】
電気化学システムでは、試料中の分析物の反応に応答して、作用電極及び対電極532、534から分析物応答性一次出力シグナルが生成される。また、二次出力シグナルも追加の電極536から生成され得る。光学システムでは、センサーインターフェース518の1つ以上の検出器は、一次及び任意の二次出力シグナルを受け取る。出力シグナルは、光学システム、電気化学システムなどを使用して生成され得る。プロセッサー522は、記憶媒体528中に記憶された較正情報及びアンカーパラメーター補償情報を使用して、出力シグナルから分析物濃度を決定することが可能である。分析物分析の結果は、ディスプレイ520、遠隔受信機(示さず)に出力され得、かつ/又は記憶媒体528中に記憶され得る。
【0194】
参照試料分析物濃度と測定装置502からの出力シグナルとを関連付ける較正情報並びにアンカーパラメーター補償情報は、図表を用いて、数学的に、それらの組み合わせなどで表され得る。較正情報及びアンカーパラメーター補償情報は、好ましくは、記憶媒体528中に記憶されるプログラム番号(PNA)テーブル、別のルックアップテーブルなどによって表され得る、相関方程式として表される。
【0195】
較正及びアンカーパラメーター補償を含む分析物分析の実行に関する指令はまた、記憶媒体528中に記憶されたコンピューターで読み取り可能なソフトウェアコードによって提供され得る。コードは、記載された機能性を記載又は制御する、オブジェクトコード又は任意の他のコードであり得る。分析物分析からのデータは、プロセッサー522中の減衰率、K定数、比率、関数などの決定を含む、1つ以上のデータ処理に供され得る。
【0196】
電気化学システムでは、センサーインターフェース518は、試験センサー504の試料インターフェース514中の導電体と接続又は電気的に通信する接点を有する。センサーインターフェース518は、シグナル生成器524からの電気入力シグナルを、接点を通って、試料インターフェース514中のコネクターに伝えることが可能である。センサーインターフェース518はまた、試料からの出力シグナルを、接点を通って、プロセッサー522及び/又はシグナル生成器524に伝えることが可能である。
【0197】
光吸収及び光生成光学システムでは、センサーインターフェース518は、光を収集及び測定する検出器を含む。検出器は、試料インターフェース514中の光学ポータルを通って試験センサー504から光を受け取る。光吸収光学システムでは、センサーインターフェース518はまた、レーザー、光発光ダイオードなどの光源を含む。入射ビームは、反応生成物による吸収に関して選択された波長を有し得る。センサーインターフェース518は、光源からの入射ビームが試料インターフェース514中の光学ポータルを通過するように指示する。検出器は、試料から反射された光を受け取るように、光学ポータルに対して45°などの角度に位置付けられ得る。検出器は、試料を通って伝えられた光を受け取るように、光源から試料の反対側にある光学ポータルに隣接して位置付けられ得る。検出器は、反射及び/又は伝達された光を受け取るように、別の位置に位置付けられ得る。
【0198】
任意のディスプレイ520は、アナログ又はデジタルであり得る。ディスプレイ520は、LCD、LED、OLED、真空蛍光ディスプレイ(VFD)、又は数値読み取りを示すように適合された他のディスプレイを含み得る。他のディスプレイ技術も使用され得る。ディスプレイ520は、プロセッサー522と電気的に通信する。ディスプレイ520は、プロセッサー522と無線通信している場合などに、測定装置502から分離され得る。代替的に、ディスプレイ520は、測定装置502が遠隔計算装置、薬物投与ポンプなどと電気的に通信している場合などに、測定装置502から取り外され得る。
【0199】
使用において、分析用の液体試料は、開口部512に液体を導入することによって、リザーバー508中に移される。液体試料は、チャネル510を通って流れ、先に含有されていた空気を追い出しながらリザーバー508を満たす。液体試料は、チャネル510及び/又はリザーバー508中に置かれた試薬と化学的に反応する。
【0200】
試験センサー502は、試料インターフェース514がセンサーインターフェース518と電気及び/又は光学的に通信するように、測定装置502と関連して配置される。電気通信は、センサーインターフェース518中の接点と試料インターフェース514中の導電体との間の入力及び/又は出力シグナルの移動を含む。光学的通信は、試料インターフェース514中の光学ポータルとセンサーインターフェース518中の検出器との間の光の移動を含む。光学的通信はまた、試料インターフェース514中の光学ポータルとセンサーインターフェース518中の光源との間の光の移動を含む。
【0201】
プロセッサー522は、入力シグナルを試験センサー504のセンサーインターフェース518に提供するようにシグナル生成器524に指示することが可能である。光学システムでは、センサーインターフェース518は、入力シグナルに応答して検出器及び光源を作動させることが可能である。電気化学システムでは、センサーインターフェース518は、試料インターフェース514を通して入力シグナルを試料に提供することが可能である。試験センサー504は、入力シグナルに応答して1つ以上の出力シグナルを生成させることが可能である。プロセッサー522は、先に考察したように、試料中の分析物のレドックス反応に応答して生成された出力シグナルを受け取ることが可能である。
【0202】
プロセッサー522は、分析法及び記憶媒体528中に記憶された較正情報を使用して出力シグナルを変換して、試料の初期分析物濃度を決定することが可能である。次いで、プロセッサー522は、この初期分析物濃度を報告し得る。プロセッサー522は、アンカーパラメーター補償を実行して、試料の最終分析物濃度を決定することが可能である。また、2つ以上の補償及び/又は他の関数もプロセッサー522によって実行され得る。
【0203】
本出願の明細書及び特許請求の範囲の明確かつより一貫した理解を提供するために、以下の定義が提供される。
【0204】
「平均」又は「平均化された」又は「平均化する」は、平均の可変部を形成する2つ以上の可変部の組み合わせを含む。可変部は、数値、代数又は科学方程式などであり得る。例えば、平均化することは、可変部を加えて、その合計を可変部の数で割ることによって実施され得る;例えば、方程式AVG=(a+b+c)/3(式中、AVGは、平均の可変部であり、そして、a、b及びcは、可変部である)。別の例では、平均化することは、平均係数によって各可変部を修飾し、次いで、修飾された可変部を加えて、加重平均を形成することを含む;例えば、方程式WAVG=0.2a+0.4b+0.4c(式中、WAVGは、加重平均であり、0.2、0.4及び0.4は、平均係数であり、そして、a、b及びcは、可変部である)。平均係数は、0~1の間の数値であり;そして加える場合、1又は実質的に1の合計を提供するだろう。他の平均化法も使用され得る。
【0205】
「加重係数」は、関係に対して各項の寄与を分配する。加重係数は、0及び1を除いた0~1の間の数値であるが、そして加える場合、1又は実質的に1の合計を提供するだろう。加重係数は、関係に対する項の寄与を分配しない限り1であり得ず、そして、加重係数は、関係から項の排除をもたらす限り0であり得ない。従って、加重係数は、各項が関係に対して異なる分配を有することを可能にする。項加重係数の2つ以上が同じであり得るか、又は同様に関数に対してそれらのそれぞれの項の寄与を分配し得る。しかしながら、少なくとも2つの加重係数は、異なるか又は関係に対してそれらのそれぞれの項の寄与を異なって分配する。このように、項加重係数は、全体の関数に関する1つの項の別の項に対する効果を可能にするように選択され、従って、複素指数関数が使用された場合の項に相互作用からの誤差を低減又は排除し得る。項加重係数は、全ての項に対する代数配置によって適用され得る単一の値又は定数ではない。項に対する加重係数は、複数の分析物濃度、異なるヘマトクリットレベル、異なる総ヘモグロビンレベル、異なる温度などの組み合わせから収集されたデータの統計プロセシングなどの数学的技法を介して決定され得る。項に対する加重係数は、異なる統計プロセシング法を含む他の数学的技法を介しても決定され得る。好ましくは、1つ以上の排除試験を含む多変量回帰法が項に対する加重係数を決定するために使用される。
【0206】
「複素指数関数」は、加重係数によって修飾された項を有する指数関数である。複素指数関数は、好ましくは、数学的な意味で「複素関数」ではなく、従って、虚数(負の1の平方根を持つ数)の使用を必要又は伴わない。しかしながら、複素指数関数は、1つ以上の虚数を含み得るが、いかなる虚数を有することも限定又は制限されない。
【0207】
「測定可能な種」は、バイオセンサーシステムが試料中のその存在及び/又は濃度を決定するように設計された種に対応し、関心対象の分析物又は試料中のその濃度が関心対象の分析物の濃度に応答するメディエーターであり得る。
【0208】
本発明の様々な実施態様が記載されているが、他の実施態様及び実行が本発明の範囲内で可能であることが当業者にとって明らかであろう。
図A
図1A
図A-1】
図A-2】
図A-3】
図A-4】
図B
図B1
図B2
図B3
図C
図C1
図C2
図D
図E
図F
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図5