(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-02
(45)【発行日】2022-05-13
(54)【発明の名称】光ファイバ伝送システムの端局装置
(51)【国際特許分類】
H04J 14/02 20060101AFI20220506BHJP
H04B 10/27 20130101ALI20220506BHJP
【FI】
H04J14/02
H04B10/27
(21)【出願番号】P 2019066463
(22)【出願日】2019-03-29
【審査請求日】2020-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】特許業務法人大塚国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【氏名又は名称】木村 秀二
(74)【代理人】
【識別番号】100130409
【氏名又は名称】下山 治
(74)【代理人】
【識別番号】100134175
【氏名又は名称】永川 行光
(74)【代理人】
【識別番号】100131886
【氏名又は名称】坂本 隆志
(74)【代理人】
【識別番号】100170667
【氏名又は名称】前田 浩次
(74)【代理人】
【識別番号】100166660
【氏名又は名称】吉田 晴人
(72)【発明者】
【氏名】高橋 英憲
(72)【発明者】
【氏名】釣谷 剛宏
【審査官】対馬 英明
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-137507(JP,A)
【文献】国際公開第2014/141685(WO,A1)
【文献】特開2012-004800(JP,A)
【文献】特開2001-230759(JP,A)
【文献】特開2019-047451(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 10/00-10/90
H04J 14/00-14/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバ伝送システムにおける端局装置であって、
それぞれ異なる通信チャネルに対応する複数の第1変換部であって、それぞれクライアント側から受信したクライアント信号のデータレートを、当該クライアント信号が搬送するトラフィック量に応じて、より低速なデータレートに変換し、変換後のクライアント信号をライン側へ出力する、前記複数の第1変換部と、
それぞれが、対応する第1変換器から出力されたクライアント信号に基づいて、当該クライアント信号のデータレートに応じた帯域幅を有する光信号を生成し、当該光信号を前記ライン側へ出力する複数のトランスポンダと、
1つ以上の第1WDM処理部であって、各第1WDM処理部が、前記複数のトランスポンダのうち接続されているトランスポンダから出力された複数の光信号の波長分割多重(WDM)を行い、多重化された光信号を光ファイバ伝送路へ出力する、前記1つ以上の第1WDM処理部と、
それぞれ異なる通信チャネルに対応する複数の第2変換部
と、
1つ以上の第2WDM処理部
であって、各第2WDM処理部が、前記光ファイバ伝送路を介して受信した光信号を、通信チャネルごとの光信号に分波して、
前記複数のトランスポンダのうちそれぞれ対応するトランスポンダへ出力
する、前記1つ以上の第2WDM処理部と、
を備え、
前記複数のトランスポンダ
のそれぞれは、前記
1つ以上の第2WDM処理部のうち接続されている第2WDM処理部から出力された光信号からクライアント信号を復元し、当該クライアント信号を、対応する第2変換部へ出力し、
前記複数の第2変換部
のそれぞれは、対応するトランスポンダから出力されたクライアント信号のデータレートを、前記クライアント側の通信用のデータレートに変換し、変換後のクライアント信号を前記クライアント側に出力
し、
前記光ファイバ伝送路は、並列の複数のファイバ経路で構成されており、
前記1つ以上の第1WDM処理部及び前記1つ以上の第2WDM処理部が、それぞれ前記複数のファイバ経路のうちの異なる1つに接続されており、前記光ファイバ伝送路への光信号の出力の方向である第1方向と、前記第1方向とは逆方向の第2方向との間で通信容量が非対称となるよう、前記1つ以上の第1WDM処理部と前記1つ以上の第2WDM処理部との総数が前記複数のファイバ経路の総数と等しく、かつ、前記1つ以上の第1WDM処理部の数と前記1つ以上の第2WDM処理部の数とが異なることを特徴とす
る端局装置。
【請求項2】
前記複数のトランスポンダは、それぞれ異なる波長の光源を用いて、それぞれ異なる波長の光信号を生成し、前記ライン側へ出力する
ことを特徴とする請求項
1に記載の端局装置。
【請求項3】
前記複数のトランスポンダのそれぞれは、前記ライン側への光信号の送信用の光源と、前記ライン側からの光信号の受信用の光源とで、異なる波長の光源を使用する
ことを特徴とする請求項1
又は2に記載の端局装置。
【請求項4】
前記複数のトランスポンダのそれぞれは、前記ライン側への光信号の送信用と前記ライン側からの光信号の受信用とに、同一の波長の光源を使用する
ことを特徴とする請求項1
又は2に記載の端局装置。
【請求項5】
前記
1つ以上の第1WDM処理部
のそれぞれは、前記複数のファイバ経路の1つに接続され、前記複数のトランスポンダ
のうち接続されているトランスポンダから複数の光信号のWDMを行い、生成された光信号を、接続されたファイバ経路へ出力する合波器を備える
ことを特徴とする請求項1から
4のいずれか1項に記載の端局装置。
【請求項6】
前記
1つ以上の第2WDM処理部
のそれぞれは、前記複数のファイバ経路の1つに接続され、接続されたファイバ経路を介して受信した光信号を、通信チャネルごとの光信号に分波して、
前記複数のトランスポンダのうちそれぞれ対応する
第2トランスポンダへ出力する分波器を備える
ことを特徴とする請求項
5に記載の端局装置。
【請求項7】
前記複数のトランスポンダをそれぞれ前記複数のファイバ経路のいずれに接続するかを、外部からの制御信号により切替可能な光クロスコネクトを
更に備える
ことを特徴とする請求項1から
6のいずれか1項に記載の端局装置。
【請求項8】
前記複数の第1変換部は、それぞれクライアント側から受信したクライアント信号を、当該クライアント信号のデータレートよりも低速の所定のデータレートの1つ以上のクライアント信号に変換して前記ライン側へ出力し、
前記複数の第1変換部のそれぞれに対して、前記1つ以上のクライアント信号に対応する1つ以上の光信号を生成して前記ライン側へ出力する、1つ以上のトランスポンダが設けられている
ことを特徴とする請求項1から
7のいずれか1項に記載の端局装置。
【請求項9】
前記光ファイバ伝送路は、並列の複数のファイバ経路で構成され、前記複数のファイバ経路はマルチコアファイバで構成される
ことを特徴とする請求項1から
8のいずれか1項に記載の端局装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光海底ケーブルシステム等の光ファイバ伝送システムの端局装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光海底ケーブルシステム等の光ファイバ伝送システムでは、一般に、双方向の通信用に、2本の光ファイバを対(ペア)とするファイバペア(FP)単位で光ファイバ伝送路が構成される(例えば、特許文献1)。このため、一方向の通信容量と逆方向の通信容量とが同一となる。また、1ケーブル内に複数のFPを設ける構成が一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、光ファイバ伝送システムでは、それぞれの通信方向で通信トラフィック量が著しく異なることがある。この場合、一方向の通信については通信トラフィック量が光ファイバの通信容量に達したとしても、通信トラフィックが少ない逆方向の通信については、通信トラフィック量が光ファイバの通信容量に達していないことになる。それにもかかわらず、通信トラフィック需要の増加に応じて、FP単位で光ファイバ伝送路を新たに敷設すると、通信トラフィック量が少ない通信方向に対応する光ファイバが有効利用されず、敷設コストに無駄が生じる。このため、対向する方路間で通信容量を非対称にすることで、搬送される通信トラフィック量に柔軟に対応した光ファイバ伝送システムを実現することが必要とされる。
【0005】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものである。本発明は、光ファイバ伝送システムにおいて、搬送される情報トラフィックの量に応じて、光ファイバ伝送路の通信容量を方路間で非対称にするための技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様の係る端局装置は、光ファイバ伝送システムにおける端局装置であって、それぞれ異なる通信チャネルに対応する複数の第1変換部であって、それぞれクライアント側から受信したクライアント信号のデータレートを、当該クライアント信号が搬送するトラフィック量に応じて、より低速なデータレートに変換し、変換後のクライアント信号をライン側へ出力する、前記複数の第1変換部と、それぞれが、対応する第1変換器から出力されたクライアント信号に基づいて、当該クライアント信号のデータレートに応じた帯域幅を有する光信号を生成し、当該光信号を前記ライン側へ出力する複数のトランスポンダと、1つ以上の第1WDM処理部であって、各第1WDM処理部が、前記複数のトランスポンダのうち接続されているトランスポンダから出力された複数の光信号の波長分割多重(WDM)を行い、多重化された光信号を光ファイバ伝送路へ出力する、前記1つ以上の第1WDM処理部と、それぞれ異なる通信チャネルに対応する複数の第2変換部と、1つ以上の第2WDM処理部であって、各第2WDM処理部が、前記光ファイバ伝送路を介して受信した光信号を、通信チャネルごとの光信号に分波して、前記複数のトランスポンダのうちそれぞれ対応するトランスポンダへ出力する、前記1つ以上の第2WDM処理部と、を備え、前記複数のトランスポンダのそれぞれは、前記1つ以上の第2WDM処理部のうち接続されている第2WDM処理部から出力された光信号からクライアント信号を復元し、当該クライアント信号を、対応する第2変換部へ出力し、前記複数の第2変換部のそれぞれは、対応するトランスポンダから出力されたクライアント信号のデータレートを、前記クライアント側の通信用のデータレートに変換し、変換後のクライアント信号を前記クライアント側に出力し、前記光ファイバ伝送路は、並列の複数のファイバ経路で構成されており、前記1つ以上の第1WDM処理部及び前記1つ以上の第2WDM処理部が、それぞれ前記複数のファイバ経路のうちの異なる1つに接続されており、前記光ファイバ伝送路への光信号の出力の方向である第1方向と、前記第1方向とは逆方向の第2方向との間で通信容量が非対称となるよう、前記1つ以上の第1WDM処理部と前記1つ以上の第2WDM処理部との総数が前記複数のファイバ経路の総数と等しく、かつ、前記1つ以上の第1WDM処理部の数と前記1つ以上の第2WDM処理部の数とが異なることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、光ファイバ伝送システムにおいて、搬送される情報トラフィックの量に応じて、光ファイバ伝送路の通信容量を方路間で非対称にすることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図3】設備の増設時の光ファイバ伝送システムの構成例を示す図。
【
図4】ライン側光信号の波長スペクトルの例を示す図。
【
図5】ライン側光信号の波長スペクトルの例を示す図。
【
図6】光ファイバ伝送システムの構成例を示す図(実施例2)。
【
図7】光ファイバ伝送システムの構成例を示す図(実施例3)。
【
図8】光ファイバ伝送システムの構成例を示す図(実施例4)。
【
図9】トランスポンダ(TP)の構成例を示す図(実施例5)。
【
図10】ライン側光信号の波長スペクトルの例を示す図(実施例5)。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち二つ以上の特徴が任意に組み合わされてもよい。また、同一又は同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0011】
[実施例1]
まず、
図1乃至
図5を参照して、本発明の実施例1について説明する。
【0012】
<光ファイバ伝送システム>
図1は、本発明の実施例1に係る光ファイバ伝送システムの構成例を示す図である。
図1に示す光ファイバ伝送システムは、端局装置10と端局装置20とを含み、端局装置10と端局装置20は光ファイバ伝送路を介して接続されている。光ファイバ伝送路の途中に光中継器が配置されている。光ファイバ伝送路は、並列のM本のファイバ経路で構成され、
図1ではM=4(FB1,FB2,FB3,FB4)の例を示している。本実施例では、光ファイバ伝送システムとして光海底ケーブルシステムを想定しており、端局装置10は、西側の陸上設備に相当し、端局装置20は、東側の陸上設備に相当する。また、光ファイバ伝送路の一部は、西側の陸上設備と東側の陸上との間の海底に敷設される。
【0013】
西側の端局装置10には、N個の上位通信機器(CE)30(30-1~N)が接続され、東側の端局装置20には、N個の上位CE40(40-1~N)が接続される。対応する上位CE間(例えば、西側の上位CE30-1と東側の上位CE40-1との間)で情報トラフィックの送受信が行われる。
図1ではN=2の例を示しており、端局装置10,20にそれぞれ2個の上位CEが接続されている。
【0014】
本実施例では、西側の各上位CE30から送出される情報トラフィックと、東側の各上位CE40から送出される情報トラフィックとで、トラヒック量が非対称であるケースを想定する。一例として、西側の上位CE30から送出される情報トラフィックの量は、10GbE(ギガビット・イーサネット(登録商標))の伝送容量でサポート可能であり、東側の上位CE40から送出される情報トラフィックの量は、100GbEの伝送容量でサポート可能である場合を例に、本実施例の光伝送システムについて説明する。
【0015】
端局装置10は、N個の上位CE30(30-1~N)からそれぞれ送信されるクライアント信号を処理するN個のデータレート変換部(DRC)11(11-1~N)、N個の上位CE30(30-1~N)によって受信されるクライアント信号を処理するN個のDRC12(12-1~N)、対応するDRC11及びDRC12が接続されるN個のトランスポンダ(TP)13(13-1~N)、及び1つ以上の合波器14、及び1つ以上の分波器15で構成される。
【0016】
各ファイバ経路(FB)の方路に応じて、合波器14又は分波器15が用意され、各FBに対して接続される。このため、合波器14の総数と分波器15の総数との和はMとなる。
図1の例では、端局装置10から端局装置20の方向(西から東の方向、以下では「WE方向」と称する。)の方路が予め設定されたFB1,FB3に対して合波器14が接続され、端局装置20から端局装置10の方向(東から西の方向、以下では「EW方向」と称する。)の方路が予め設定されたFB2,FB4に対して分波器15が接続されている。
【0017】
端局装置20は、端局装置10と同様の構成を有する。即ち、端局装置20は、N個の上位CE40(40-1~N)からそれぞれ送信されるクライアント信号を処理するN個のDRC21(21-1~N)、N個の上位CE40(40-1~N)によって受信されるクライアント信号を処理するN個のDRC22(22-1~N)、対応するDRC21及びDRC22が接続されるN個のトランスポンダ23(23-1~N)、及び1つ以上の合波器24、及び1つ以上の分波器25で構成される。
【0018】
端局装置10と同様、各FBの方路に応じて、合波器24又は分波器25が用意され、各FBに対して接続される。このため、合波器24の総数と分波器25の総数との和はMとなる。
図1の例では、端局装置10から端局装置20の方向(WE方向)の方路が予め設定されたFB1,FB3に対して分波器25が接続され、端局装置20から端局装置10の方向(EW方向)の方路が予め設定されたFB2,FB4に対して合波器24が接続されている。
【0019】
トランスポンダ13,23は、クライアント側で受信したクライアント信号を、ライン側で送信する光信号(ライン側光信号)のペイロードとして当該光信号に搭載し、当該光信号をライン側へ送出する。また、トランスポンダ13,23は、ライン側で受信した光信号のペイロードに搭載されたクライアント信号を復元し、当該クライアント信号をクライアント側へ送出する。
【0020】
本実施例では、トランスポンダ13,23は、ライン側で送受信される光信号の帯域幅を可変にすることが可能なトランスポンダであり、波長分割多重(WDM)チャネルごとに、ライン側の光信号の送受信を行うように構成される。また、トランスポンダ13,23は、クライアント側で受信される光信号のデータレートに合わせて、ライン側で送信する光信号の帯域幅を可変にすることが可能である。
【0021】
図2は、トランスポンダ13,23の構成例を示すブロック図である。トランスポンダ13は、信号処理部(DSP)131、光変調器132、第1光源133、コヒーレント干渉系134、光電気信号変換器(O/E変換器)135、及び第2光源136を備える。
図2に示すように、トランスポンダ13,23は同様の構成を有する。以下では主にトランスポンダ13について説明するが、トランスポンダ23も同様である。なお、トランスポンダ13,23による光信号の「送信」とは、ライン側における、対向する端局装置への光信号の送信を指し、トランスポンダ13,23による光信号の「受信」とは、ライン側における、対向する端局装置からの光信号の受信を指すものとする。
【0022】
送信側の第1光源133は、送信光信号のキャリア波長となる光を出力する光源である。受信側の第2光源136は、コヒーレント干渉系134に入力されるローカル光(LO)を出力する光源である。なお、トランスポンダ13における送信側の第1光源133の波長をλWEとし、対向するトランスポンダ23における送信側の第1光源233の波長をλEWとする。
【0023】
トランスポンダの受信方式には、直接受信方式とコヒーレント受信方式とがある。本実施例のトランスポンダ13,23では、コヒーレント受信方式を採用している。受信側の第2光源133,233は、対向するトランスポンダにおける送信側の波長とほぼ一致する波長の光を出力するように構成される。即ち、トランスポンダ13における受信側の第2光源136の波長はλEW、対向するトランスポンダ23における受信側の第2光源236の波長はλWEとなる。理想的には、送信側の波長と受信側の波長とが一致することが理想的ではあるが、波長のずれが生じたとしても、そのずれはDSP131,231で補償可能である。
【0024】
なお、直接受信方式を採用したトランスポンダには、コヒーレント干渉系及びそれに対応する光源は必要なく、受信した信号光をO/E変換することで直接、電気信号に変換する構成が採用されるが、その説明については本明細書では省略する。
【0025】
<情報トラフィックの伝送(WE方向)>
次に、端局装置10から端局装置20の方向(WE方向)の情報トラフィックの伝送を例に、端局装置10,20の構成及び動作について詳しく説明する。
【0026】
上位CE30から送出されたクライアント信号は、対応するDRC11に入力される。DRC11は、クライアント側から入力されるクライアント信号のデータレートを変換可能である。DRC11は、入力されるクライアント信号が搬送するトラフィック量に応じて、当該クライアント信号のデータレートをより低速なデータレートに変換し、変換後のクライアント信号をライン側に出力する。
【0027】
本実施例では、上位CE30,40からそれぞれ送出されるクライアント信号は、いずれも100GbEの光信号である。ただし、西側の上位CE30から送出される情報トラフィックのトラフィック量は、10GbEの伝送容量でサポート可能である。この場合、トランスポンダ13で生成される光信号の帯域幅を、100GbEに対応する帯域幅から、10GbEに対応する帯域幅に削減することが可能である。そこで、DRC11は、クライアント信号のデータレートを、100GbEに対応するデータレートから、より低速なデータレートである、10GbEに対応するデータレートに変換し、変換後のクライアント信号をトランスポンダ13へ出力する。
【0028】
このように、複数のDRC11は、それぞれ異なる通信チャネルに対応する複数の第1変換部の一例であり、それぞれクライアント側から受信したクライアント信号のデータレートを、当該クライアント信号が搬送するトラフィック量に応じて、より低速なデータレートに変換し、変換後のクライアント信号をライン側へ出力する。
【0029】
DRC11から出力されたクライアント信号は、トランスポンダ13に入力される。トランスポンダ13に入力されたクライアント信号は、まず、光信号から電気信号に変換され、更にアナログ・ディジタル(A/D)変換によりディジタル信号に変換されてDSP131に入力される。
【0030】
DSP131は、入力されたディジタル信号から、ライン側光信号のベースバンド信号を生成する。例えば、ライン側光信号の変調方式が偏波多重QPSK(DP-QPSK)であれば、DSP131は、クライアント信号を2偏波及びQPSKシンボルにマッピングし、必要に応じて時間軸又は周波数軸のフィルタにより波形整形を行う。DSP131は、このようにして得られたディジタル信号を、ディジタル・アナログ(D/A)変換によりアナログ電気信号に変換して出力する。
【0031】
ここで重要な点は、DSP131は、クライアント信号のデータレートに応じて、当該クライアント信号を伝送可能なシンボルレートのシンボルを生成する点である。本例のように、クライアント信号のデータレートが10GbEに対応するデータレートであれば、当該データレートの信号を搬送するのに十分なペイロード容量を有する変調方式が用いられればよい。例えば、エラー訂正等のオーバーヘッド分24%程度を考慮し、シンボルレートが3.2Gbaudの偏波多重QPSK信号(即ち、ライン側のビットレートが12.8Gbps)を用いれば、10GbEの名目上のビットレート(10.3125Gbps)の信号をペイロードで搬送可能である。この場合、理論上は3.2GHzの帯域幅にまで、ライン側光信号の帯域制限が可能である。このため、例えば、5GHz以内の帯域幅を有するライン側光信号を生成した場合、ライン側光信号を、6.25GHzの間隔でWDMチャネルとして配置可能である。
【0032】
DSP131は、生成したベースバンド信号(電気信号)を光変調器132へ出力する。光変調器132には、DSP131から出力されたベースバンド信号と、第1光源133から出力された、波長λWEの光とが入力される。光変調器132は、第1光源133からの光をベースバンド信号で変調することで、ライン側光信号を生成する。
【0033】
本実施例では、トランスポンダ13-1の送信側は、FB1に対応する合波器14に接続され、トランスポンダ13-1の受信側は、FB2に対応する分波器15に接続されている。また、トランスポンダ13-2の送信側は、FB1に対応する合波器14に接続され、トランスポンダ13-2の受信側は、FB4に対応する分波器15に接続されている。
【0034】
各トランスポンダ13の送信側の光源(第1光源133)の波長λWEは、それぞれ異なるWDMチャネルに対応する波長に設定されている。トランスポンダ13-1,13-2からそれぞれ出力されたライン側光信号は、FB1に対応する合波器14に入力される。これにより、合波器14は、それぞれ異なるトランスポンダ13から出力されたライン側光信号を、対応するWDMチャネルの信号として多重化(合波)する。合波器14は、このようにして生成した光信号(WDM信号)を、接続されたファイバ経路(FB1)へ出力する。FB1へ出力された光信号は、光中継器を介して中継伝送され、東側の端局装置20に到達する。
【0035】
本実施例では、トランスポンダ13-1,13-2から出力されるライン側光信号を多重化し、FB1を用いて伝送することで、上位CE30-1,30-2から送信される情報トラフィックをFB1でまとめて伝送している。これにより、FB3を未使用の状態にしている。
【0036】
このように、本実施例では、トランスポンダ13-1,13-2は、それぞれが、対応するDRC11から出力されたクライアント信号に基づいて、当該クライアント信号のデータレートに応じた帯域幅を有する光信号を生成し、当該光信号をライン側へ出力する複数のトランスポンダの一例である。また、合波器14は、複数のトランスポンダ13,23から出力された複数の光信号のWDMを行い、多重化された光信号を光ファイバ伝送路へ出力するWDM処理部の一例である。
【0037】
東側の端局装置20では、FB1に接続された分波器25に光信号(WDM信号)が到達すると、分波器25は、当該信号を、WDMチャネルごとの光信号に分波して、各光信号を対応するトランスポンダ23-1,23-2へ出力する。このように、分波器25は、光ファイバ伝送路を介して受信した光信号を、通信チャネルごとの光信号に分波して、それぞれ対応するトランスポンダ13,23へ出力するWDM処理部の一例である。
【0038】
各トランスポンダ23は、入力された光信号を、コヒーレント干渉系134により、第2光源236から出力されたLOと干渉させた後、O/E変換器235に入力する。O/E変換器235は、入力された光信号を電気信号に変換してDSP231へ出力する。DSP231は、入力された電気信号に対して、受信のための位相雑音補償、分散補償、偏波分離、及びエラー訂正を行い、得られた信号のペイロードに搭載されているクライアント信号を復元する。トランスポンダ23は、DSP231によって復元されたクライアント信号を電気信号から光信号に変換してクライアント側へ出力する。トランスポンダ23から出力されたクライアント信号は、対応するDRC22へ入力される。このように、トランスポンダ23-1,23-2は、WDM処理部(合波器25)から出力された光信号からクライアント信号を復元し、当該クライアント信号を、対応するDRC22へ出力する複数のトランスポンダの一例である。
【0039】
DRC22は、ライン側から入力されるクライアント信号のデータレートを変換可能である。具体的には、DRC22は、ライン側から入力されるクライアント信号のデータレートを、必要に応じて、上位CE40が送受信する光信号のデータレートに変換する。本実施例では、上位CE30,40は、100GbEの光信号を送受信する。このため、DRC22は、クライアント信号のデータレートを、10GbEに対応するデータレートから、100GbEに対応するデータレートに変換する。更にDRC22は、変換後のクライアント信号を、接続された上位CE40へ出力する。このように、DRC22は、対応するトランスポンダ13,23から出力されたクライアント信号のデータレートを、クライアント側の通信用のデータレートに変換し、変換後のクライアント信号をクライアント側に出力する。即ち、端局装置20のDRC22は、対向する端局装置10のDRC11によるデータレートの変換に対する逆変換を行うように構成される。
【0040】
上位CE40は、接続された端局装置20から出力されたクライアント信号を受信する。これにより、上位CE40は、対応する上位CE30から送出された、端局装置10から端局装置20の方向(WE方向)の情報トラフィックを受信する。
【0041】
<情報トラフィックの伝送(EW方向)>
一方、端局装置20から端局装置10の方向(EW方向)の情報トラフィックの伝送についても、上述したWE方向の情報トラフィックの伝送と同様に実行される。ただし、
図1の例において、東から西への伝送における、上述した西から東への伝送との相違点は以下のとおりである。
【0042】
上述のように、本実施例では、東側の上位CE40から送出される情報トラフィックの量は、西側の上位CE30から送出される情報トラフィックの量よりも多く、100GbEの伝送容量でサポート可能なトラフィック量である。端局装置20のDRC21にクライアント側から入力されるクライアント信号のデータレートは、100GbEに対応するデータレートである。本実施例では、DRC21は、入力されたクライアント信号のデータレートを変換せずに、当該クライアント信号をライン側に(トランスポンダ23に)出力する。
【0043】
トランスポンダ23は、入力されたクライアント信号に基づいて、DSP231によってライン側光信号のベースバンド信号を生成する。本例では、クライアント信号が100GbEに対応するデータレートである。この場合、シンボルレートが32Gbaudの偏波多重QPSK信号(即ち、ライン側のビットレートが128Gbps)を用いれば、100GbEの名目上のビットレート(103.125Gbps)の信号をペイロードで搬送可能である。また、理論上は32GHzの帯域幅にまで、ライン側光信号の帯域制限が可能である。このため、例えば、50GHz以内の帯域幅を有するライン側光信号を生成した場合、ライン側光信号を、50GHzの間隔でWDMチャネルとして配置可能である。
【0044】
このとき、トランスポンダ23における送信側の第1光源233の波長λEWを、対応するトランスポンダ13における送信側の第1光源133の波長λWEと異なる波長とすることが可能である。これは、FB1を介してWE方向に伝送されるWDM信号と、FB2,FB4を介してEW方向に伝送されるWDM信号とでは、WDMチャネルの間隔が異なるためである。
【0045】
本実施例では、トランスポンダ23-1の送信側は、FB2に対応する合波器24に接続され、トランスポンダ23-1の受信側は、FB1に対応する分波器25に接続されている。また、トランスポンダ23-2の送信側は、FB4に対応する合波器24に接続され、トランスポンダ23-2の受信側は、FB1に対応する分波器25に接続されている。
【0046】
トランスポンダ23-1から出力されたライン側光信号は、FB2に対応する合波器14に入力され、対応するWDMチャネルの信号として多重化(合波)される。合波器14は、生成した光信号(WDM信号)を、接続されたファイバ経路(FB2)へ出力する。FB2へ出力された光信号は、光中継器を介して中継伝送され、西側の端局装置10に到達する。
【0047】
同様に、トランスポンダ23-2から出力されたライン側光信号は、FB4に対応する合波器14に入力され、対応するWDMチャネルの信号として多重化(合波)される。合波器14は、生成した光信号(WDM信号)を、接続されたファイバ経路(FB4)へ出力する。FB4へ出力された光信号は、光中継器を介して中継伝送され、西側の端局装置10に到達する。
【0048】
西側の端局装置10では、FB2又はFB4に接続された分波器15に光信号(WDM信号)が到達すると、分波器15は、当該信号を、各WDMチャネルの光信号に分波して、対応するトランスポンダ13へ出力する。各トランスポンダ13は、トランスポンダ23と同様、入力されたライン側光信号のペイロードに搭載されたクライアント信号を復元し、当該クライアント信号をクライアント側へ出力する。このクライアント信号は、対応するDRC12へ入力される。
【0049】
DRC12においては、トランスポンダ13から出力されるクライアント信号のデータレートと、クライアント側のデータレートとが、いずれも100GbEに対応するデータレートで同一である。このため、DRC22は、入力されたクライアント信号のデータレートを変換せずに、当該クライアント信号をクライアント側に(対応する上位CE30に)出力する。
【0050】
このようにして、上位CE30は、対応する上位CE40から送出された、端局装置20から端局装置10の方向(EW方向)の情報トラフィックを受信する。
【0051】
<情報トラフィックの増加に対応した構成例>
上述の
図1及び
図2の構成例では、FB3は、西側の端局装置10のいずれのトランスポンダ13とも接続されておらず、かつ、東側の端局装置20のいずれのトランスポンダ23とも接続されていない。即ち、FB3は未使用の状態となっている。以下では、上位CE30と上位CE40との間で伝送される情報トラフィックが増加した場合に、FB3の方路を反転させて(即ち、WE方向からEW方向に変更して)、情報トラフィックの伝送を可能にする例について説明する。
【0052】
一例として、WE方向のトラフィック量及びEW方向のトラフィック量がそれぞれ3倍増加したケース(即ち、WE方向のトラフィック量が2×10GbEに対応するトラフィック量から6×10GbEに対応するトラフィック量に増加し、EW方向のトラフィック量が、2×100GbEに対応するトラフィック量から6×100GbEに対応するトラフィック量に増加したケース)を想定する。
【0053】
図3は、情報トラフィックの増加に対応した、光ファイバ伝送システムの構成例を示す図である。
図3の例では、FB3の方路を、WE方向からEW方向に反転させている。この方路の反転は、光中継器の方路の設定を変更することにより実現される。これにより、FB3は、東側の上位CE40から西側の上位CE30への情報トラフィックの伝送に使用可能になり、即ち、FB1がWE方向の伝送用、FB2~4がEW方向の伝送用に使用可能になる。
【0054】
また、1ファイバ当たりの伝送可能帯域幅を、(100GbEに対応するトラフィック量の搬送用の)32Gbaudの偏波多重QPSK信号で構成されるライン側光信号を2チャンネル分、伝送可能な帯域幅である、2×50GHz=100GHzとする。この場合、100GHzの帯域幅では、(10GbEに対応するトラフィック量の搬送用の)3.2Gbaudの偏波多重QPSK信号で構成されるライン側光信号については16チャネル分、伝送可能である。
【0055】
図3の例では、
図1の例と比較して、西側及び東側において上位CEの数が2から6に増加している。即ち、10GbEに対応するトラフィック量の情報トラフィックを送出する上位CE30の数が2から6に増加し、100GbEに対応するトラフィック量の情報トラフィックを送出する上位CE40の数が、2から6に増加している。
【0056】
WE方向の情報トラフィックの伝送については、上位CE30-1~6に対応するトランスポンダ13-1~6から出力されるライン側光信号を、FB1に接続された合波器14に入力する。また、トランスポンダ13-1~6のそれぞれの第1光源133の波長λ
WEを、6.25GHz間隔で異ならせる。これにより、
図3に示すように、トランスポンダ13-1~6から出力される、6チャネルのライン側光信号が、合波器14によって多重化されてWDM信号が生成される。生成されたWDM信号は、FB1を介して東側の端局装置20へ伝送される。
【0057】
一方、EW方向の情報トラフィックの伝送については、上位CE40-1,2に対応するトランスポンダ13-1,2から出力されるライン側光信号を、FB2に接続された合波器24に入力し、上位CE40-3,4に対応するトランスポンダ13-3,4から出力されるライン側光信号を、FB3に接続された合波器24に入力し、上位CE40-5,46に対応するトランスポンダ13-5,6から出力されるライン側光信号を、FB4に接続された合波器24に入力する。また、トランスポンダ23-1~6のそれぞれの第1光源233の波長λ
EWを、50GHz間隔で異ならせる。これにより、
図3に示すように、トランスポンダ23-1~6から出力される、6チャネルのライン側光信号が、3つの合波器24によって2チャネルずつ多重化されてWDM信号が生成される。生成された各WDM信号は、FB2~4のそれぞれを介して西側の端局装置10へ伝送される。
【0058】
このようにして、伝送される情報トラフィックの量に応じて、WE方向とWE方向との間で(即ち、方路間)で伝送容量(通信容量)が非対称になるように、光ファイバ伝送システムを構成することが可能になる。
【0059】
<波長スペクトルの例>
図4は、本実施例の光ファイバ伝送システムにおいてファイバ経路を伝送される光信号の波長スペクトルの例を示す図である。
図4では、
図3と同様、1ファイバ当たりの伝送可能帯域幅を100GHzとし、即ち、100GbEに対応するトラフィック量の搬送用のライン側光信号を2チャネル分、10GbEに対応するトラフィック量の搬送用のライン側光信号を16チャネル分、伝送可能である例を示している。また、上述の例と同様、各上位CE30から送出されるWE方向の情報トラフィックは、10GbEに対応するトラフィック量を有し、各上位CE40から送出されるEW方向の情報トラフィックは、100GbEに対応するトラフィック量を有している。
【0060】
図4(A)は、FB1,FB3をWE方向の伝送、FB2,FB4をEW方向の伝送に使用し、本実施例のようにDRC11,21によるデータレートの変換及びトランスポンダ13,23によるライン側光信号の帯域幅の変更を行わない場合の、ファイバごとの波長スペクトルの例を示している。この場合、ファイバごとに、100GbEに対応する帯域幅の光信号が2チャネルずつ伝送されている。
【0061】
図4(B)は、
図4(A)の例において、WE方向のライン側光信号の帯域幅を、100GbEに対応する帯域幅から、搬送されるトラフィック量に合わせて10GbEに対応する帯域幅に制限した場合の波長スペクトルを示している。これは、本実施例のDRC11,21及びトランスポンダ13,23によって行われる、ライン側光信号の帯域制限に相当する。このようにして、ライン側光信号のペイロードの容量が、搬送されるトラフィック量に合わせて削減される。
【0062】
図4(C)は、
図4(B)の例において、WE方向のライン側光信号のキャリア波長を変更して合波器14によるWDMを行った場合の波長スペクトルの例を示している。これは、
図1乃至
図3を用いて上述したように、それぞれ異なるトランスポンダ13によって生成されるライン側光信号を、6.25GHzの間隔でWDMチャネルとして配置することに相当する。このようにして、WE方向のライン側光信号が、FB1で伝送されるWDM信号に集約されている。その結果、FB3が使用されていない状態(空き状態)になっている。
【0063】
図5(A)は、
図4(C)の例において、FB3の方路を、WE方向からEW方向に反転させた場合の波長スペクトルの例を示している。この方路反転により、FB3は、WE方向の情報トラフィックの伝送に使用可能になる。
【0064】
図5(B)は、
図5(A)の例において、WE方向及びEW方向のそれぞれについて情報トラフィックの増加に応じて2チャネル分の光信号の伝送用の設備を増設(上位CE、DRC、及びトランスポンダを増設)した場合の波長スペクトルの例を示している。本実施例の光ファイバ伝送システムでは、
図5(B)に示すように、2チャネル分のWE方向のライン側光信号を、FB1で伝送されるWDM信号に多重化でき、2チャネル分のEW方向のライン側光信号を、空き状態となっていたFB3を用いて伝送できるようになる。
【0065】
以上説明したように、本実施例の端局装置10,20において、複数のDRC11,21は、それぞれクライアント側から受信したクライアント信号のデータレートを、当該クライアント信号が搬送するトラフィック量に応じて、より低速なデータレートに変換し、変換後のクライアント信号をライン側へ出力する。複数のトランスポンダ13,23は、それぞれが、対応する第1変換器から出力されたクライアント信号に基づいて、当該クライアント信号のデータレートに応じた帯域幅を有する光信号を生成し、当該光信号をライン側へ出力する。WDM処理部を構成する合波器14,24は、複数のトランスポンダ13,23から出力された複数の光信号のWDMを行い、多重化された光信号を光ファイバ伝送路へ出力する。
【0066】
また、端局装置10,20におけるライン側からの光信号の受信については、分波器15,25を構成するWDM処理部は、光ファイバ伝送路を介して受信した光信号を、通信チャネルごとの光信号に分波して、それぞれ対応するトランスポンダ13,23へ出力する。複数のトランスポンダ13,23は、WDM処理部(合波器15,25)から出力された光信号からクライアント信号を復元し、当該クライアント信号を、対応するDRC12,22へ出力する。複数のDRC12,22は、対応するトランスポンダ13,23から出力されたクライアント信号のデータレートを、クライアント側の通信用のデータレートに変換し、変換後のクライアント信号をクライアント側に出力する。
【0067】
本実施例によれば、搬送される情報トラフィックの量に応じて、ライン側光信号の帯域制限及びキャリア波長の変更を行うことができる。これにより、光ファイバ伝送路の通信容量を方路間で非対称にする(異ならせる)ことが可能になる。その結果、光海底ケーブル内に必要となる光ファイバの本数を削減できる。また、新たな光海底ケーブルを敷設して光ファイバの本数を増やさなくとも、搬送されるトラフィック量に応じて伝送用の設備を増設することが可能になり、伝送されるトラフィック量の増加に柔軟に対応した光ファイバ伝送システムを実現できる。
【0068】
[実施例2]
実施例2では、実施例1の光ファイバ伝送システムに光クロスコネクト装置を導入する例について説明する。以下では、主に実施例1との相違する点について説明し、実施例1と共通する点については説明を省略する。
【0069】
図6は、実施例2に係る光ファイバ伝送システムの構成例を示す図である。実施例1では、各トランスポンダ13,23の送信側(ライン側)の出力は、合波器14,24に接続され、各トランスポンダ13,23の受信側(ライン側)の入力は、分波器15,25に接続される。この場合、上述のように、伝送用の設備を増設する際に、トランスポンダ13,23のライン側の出力と合波器14,24との接続、及びトランスポンダ13,23のライン側の入力と分波器15,25との接続を、手作業で変更する必要が生じる。
【0070】
本実施例では、上述のトランスポンダ13,23と合波器14,24又は分波器15,25との接続を、手作業ではなく光クロスコネクト装置を用いてできるようにする。具体的には、
図6に示すように、端局装置10において、N個のトランスポンダ13と、合波器14及び分波器15との間に光クロスコネクト装置50を設ける。これにより、外部から光クロスコネクト装置50へ入力される制御信号により、トランスポンダ13と合波器14又は分波器15との接続を設定可能にする。光クロスコネクト装置50は、複数のトランスポンダ13,23をそれぞれ複数のファイバ経路(FB1~FB4)のいずれに接続するかを、外部からの制御信号により切替可能である。なお、光クロスコネクト装置50の規模は、例えば、1ファイバ当たりのWDMが可能な最大のチャネル数に応じて定められてもよい。また、端局装置20にも、端局装置10と同様に光クロスコネクト装置60を設けてもよい。
【0071】
本実施例によれば、トランスポンダ13,23のライン側の出力と合波器14,24との接続、及びトランスポンダ13,23のライン側の入力と分波器15,25との接続を、光クロスコネクト装置50,60へ与える制御信号により容易に設定できる。これにより、各トランスポンダ13,23から送信されるライン側光信号の伝送用のファイバ経路を容易に設定できるとともに、ファイバ経路を介して伝送されるライン側光信号を受信するトランザクション13,23を、容易に設定できるようになる。
【0072】
[実施例3]
実施例3では、端局装置において、クライアント信号を、より低速のデータレートを有する1つ以上のクライアント信号に変換し、当該1つ以上のクライアント信号に対応する1つ以上のライン側光信号を波長多重して伝送する例について説明する。以下では、主に実施例1との相違する点について説明し、実施例1と共通する点については説明を省略する。
【0073】
図7は、実施例3に係る光ファイバ伝送システムの構成例を示す図である。本実施例では、実施例1と同様、西側の上位CE30から送出される情報トラフィックの量は、10GbEの伝送容量でサポート可能であり、東側の上位CE40から送出される情報トラフィックの量は、100GbEの伝送容量でサポート可能であるものとする。以下では、主に端局装置10について説明するが端局装置20も同様である。
【0074】
本実施例では、端局装置10の各DRC11は、クライアント側から入力されるクライアント信号が搬送するトラフィック量に応じて、当該クライアント信号を、それぞれ所定の(低速の)データレートを有する1つ以上のクライアント信号に変換して出力する。
図7の例では、この所定のデータレートを、10GbEに対応するデータレートとしている。
【0075】
端局装置10は、上位CE30ごとに、DRC11によって生成されるクライアント信号の最大数に等しい数のトランスポンダ13を備える。
図7の例では、上位CE30,40から送出されるWE方向又はEW方向のトラフィックの最大量は、100GbEに対応するトラフィック量であるとする。この場合、各DRC11によって生成されるクライアント信号の最大数は10となる。このため、端局装置10は、上位CE30ごとに、10台のトランスポンダ13を備える。また、本例では、1ファイバ当たり、10GbEに対応するライン側光信号を20チャネル分、WDMにより多重化して伝送可能としている。
【0076】
本実施例の端局装置10において、各DRC11は、クライアント側から入力されるクライアント信号を、10GbEに対応するデータレートを有する、最大で10個のクライアント信号に変換する。即ち、本例では、端局装置10の各DRC11は、最大1個のクライアント信号を生成して、対応するトランスポンダ13へ出力するのに対して、端局装置20の各DRC21は、最大10個のクライアント信号を生成して、対応するトランスポンダ23へ出力することになる。
【0077】
各DRC11に接続された10台のトランスポンダ13の送信側の光源(第1光源133)の波長λ
WEは、それぞれ異なるWDMチャネルに対応する波長に設定されている。各トランスポンダ13から出力された、それぞれ異なる波長のライン側光信号は、接続された合波器14によって、対応するWDMチャネルの信号として多重化される。これにより、
図7に示すようにWDM信号が生成され、接続されたファイバ経路(FB1)を介して対向する端局装置20へ送信される。
【0078】
端局装置20では、10台のトランスポンダ23によってそれぞれ生成された、1つ以上のクライアント信号が、順にDRC23に入力される。DRC23は、順に入力された1つ以上のクライアント信号から、送信側の上位CE30による送信順序が保たれるように、100GbEに対応するデータレートを有するクライアント信号を再構成し、接続された上位CE40へ送信する。これにより、上位CE40は、対応する上位CE30から送出された、WE方向の情報トラフィックを受信する。なお、EW方向の情報トラフィックの伝送についても同様に実現される。
【0079】
本実施例によれば、光ファイバ伝送システムにおいて実施例1と同様の効果を得ることが可能である。
【0080】
[実施例4]
実施例4では、光ファイバ伝送システムの端局装置間に冗長経路を設ける例について説明する。以下では、主に実施例1との相違する点について説明し、実施例1と共通する点については説明を省略する。
【0081】
実施例1の
図3に示すように、伝送容量の少ない方路(
図3ではEW方向)の伝送に使用されるファイバ経路(
図3ではFB1)には、多数の上位CE30からの情報トラフィックが集約される。このため、光中継器の故障等に起因してFB1が使用不可能になると、多数の上位CE間の通信がその影響を受ける。そこで、本実施例では、
図8に示すように冗長経路を設ける。なお、
図8では、説明の簡略化のため、WE方向の冗長経路については省略し、WE方向の冗長経路についてのみ示している。
【0082】
図8の例では、端局装置10において、トランスポンダ13-1~6の送信側の出力に対して、それぞれ光スイッチを設けている。なお、光スイッチの代わりに光スプリッタを使用することも可能である。これにより、トランスポンダ13-1~6から、実施例1と同様にFB1に対応する合波器14に出力されるライン側光信号を、FB5に対応する合波器14にも出力する。これにより、FB5が、FB1に対する冗長経路として使用される。なお、端局装置20も同様の構成を有する。
【0083】
本実施例によれば、多数のライン側光信号が集約されたファイバ経路に不具合が生じた場合でも、上位CE間の通信を継続することが可能となる。
【0084】
[実施例5]
実施例5では、端局装置のトランスポンダに使用される送信用の光源の波長と受信用の光源とを同一の波長にする例について説明する。以下では、主に実施例1との相違する点について説明し、実施例1と共通する点については説明を省略する。
【0085】
第1実施例では、
図2に示すように、トランスポンダ13,23に、送信用の第1光源133,233とは別に受信用の第2光源136,236を設けている。これに対し、本実施例では、
図9に示すように、送信用と受信用とで共通の光源140,240を設ける。本実施例のトランスポンダ13では、光源140から出力された光を分岐器141で分岐して、送信側の光変調器132及び受信側のコヒーレント干渉系134に導く。これにより、変調及び復調にほぼ同じ波長(周波数)の光が使用される。なお、トランスポンダ23も同様である。
【0086】
図10は、
図3(実施例1)の構成において各トランスポンダの送信用及び受信用の光源を共通化した場合の、ファイバごとの波長スペクトルの例を示す図である。本実施例では、WE方向において、N個のトランスポンダ13-1~Nから出力されるN個のライン側光信号のうち、帯域がオーバラップする光信号が異なる光ファイバ伝送路を介して送信されるようにする。また、EW方向において、N個のトランスポンダ23-1~Nから出力されるN個のライン側光信号のうち、帯域がオーバラップする光信号が異なる光ファイバ伝送路を介して送信されるようにする。
【0087】
図10の例は、トランスポンダ13-1~6の送信及び受信に使用される光源140の波長をλ
1~λ
6としている。具体的には、トラフィック量が多い方向(EW方向)のチャネル間隔をΔλ
EWとし、トラフィック量が多い方向(EW方向)のファイバ数をKとする。この場合に、トラフィック量が少ない方向(WE方向)のチャネル間隔を(Δλ
WE/K)と設定し、トラフィック量が多い方向(EW方向)の、あるファイバ(
図10ではFB2)の伝送帯域の端から光信号を配置する。更に、トラフィック量が少ない方向(WE方向)についても、使用されるFB1の伝送帯域の同一波長に光信号を配置する。その後、トランスポンダ13で使用される波長を(Δλ
WE/K)ずつシフトしながら、各ファイバに光信号を配置していく。
【0088】
このような手順により、6個のトランスポンダ13-1~6(23-1~6)から出力される6個のライン側光信号のうち、帯域がオーバラップする光信号を、異なる光ファイバ伝送路を介して送信することが可能になる。これにより、端局装置20,30のトランスポンダ13,23に使用される送信用の光源の波長と受信用の光源とを同一の波長にすることが可能になる。
【0089】
[実施例6]
実施例6では、上述の各実施例の光ファイバ伝送システムに対して、マルチコアファイバを適用する。上述の各実施例において、光ファイバ伝送路に用いられる光ファイバを、光信号が通過するコアを複数有するマルチコアファイバで構成してもよい。この場合、上述の各実施例における、並列のM本の光ファイバは、コア数Mのマルチコアファイバに相当する。即ち、並列のM本のファイバ経路は、マルチコアファイバで構成される。
【0090】
発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0091】
10,20:端局装置
30,40:上位通信機器(上位CE)
11,12,21,22:データレート変換部(DRC)
13,23:トランスポンダ
14,24:合波器
15,25:分波器