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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-02
(45)【発行日】2022-05-13
(54)【発明の名称】開閉体駆動機構
(51)【国際特許分類】
   E05F 15/668 20150101AFI20220506BHJP
   B60J 5/04 20060101ALI20220506BHJP
   B60J 5/10 20060101ALI20220506BHJP
【FI】
E05F15/668
B60J5/04 C
B60J5/10 K
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019157208
(22)【出願日】2019-08-29
(65)【公開番号】P2021032054
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2021-06-16
(73)【特許権者】
【識別番号】390000996
【氏名又は名称】株式会社ハイレックスコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】特許業務法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上甲 篤
(72)【発明者】
【氏名】藤原 健一
【審査官】秋山 斉昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-127347(JP,A)
【文献】特開2009-138330(JP,A)
【文献】特開平5-112126(JP,A)
【文献】特開2006-307499(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0334272(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102009028249(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 15/668
B60J 5/04
B60J 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
取付対象に設けられた開口を開放する開位置と前記開口を閉止する閉位置との間を移動する開閉体と、
前記開閉体を駆動する駆動部と、
前記開閉体の移動状態を検知する検知部と、
前記検知部の出力に基づいて前記駆動部による前記開閉体の駆動を制御する制御部と、を備えた開閉体駆動機構であって、
前記制御部は、
前記検知部で検知した物理値が、予め設定した目標値となるように前記駆動を制御するフィードバック制御を行い、
前記検知部からの情報が前記フィードバック制御に応じた所定の情報と異なり、且つ、前記駆動部に与えられた制御値が所定の閾値を超える場合、前記検知部からの情報が異常と判定する、開閉体駆動機構。
【請求項2】
前記検知部で検知した前記物理値である前記開閉体の実際の移動速度が、前記開閉体の目標となる移動速度を定めた目標速度となるように前記駆動を制御するフィードバック制御を行う請求項1記載の開閉体駆動機構。
【請求項3】
前記制御値が前記駆動部に印加される電圧の大きさである、請求項1又は2記載の開閉体駆動機構。
【請求項4】
前記制御部は、前記検知部からの情報が異常であるとの判定に基づいて、前記フィードバック制御を停止させ、前記駆動部の停止、または開閉体の所定の速度に対応した電圧を前記駆動部に印加するフォロー制御を行う、請求項1~3のいずれか1項に記載の開閉体駆動機構。
【請求項5】
前記制御部は、前記駆動部に与えられた制御値が所定の閾値を超える前を含む所定の範囲において、前記検知部からの情報が前記所定の情報と異なっている場合に、前記検知部からの情報が異常と判定する、請求項1~4のいずれか1項に記載の開閉体駆動機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開閉体駆動機構に関する。
【背景技術】
【0002】
電子制御ユニットなどによってその移動を自動的に制御される開閉体、例えば自動車のドアやテールゲートの開閉の自動制御には、ドアの位置などを検知するセンサが用いられる。このようなセンサの出力に基づいて開閉体の移動を制御する制御ユニット、及び制御ユニットの制御に基づいてドアなどを現に移動させるモータなどを含む自動開閉システムが実用化されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-138330号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1のシステムでは、モータの駆動力が駆動力伝達機構の弾性変形部で吸収されているときに、開閉体を静止させた状態でセンサに異常が発生しているか否かを判定している。そのため、開閉体を静止させた状態であっても検出には、別途、弾性変形部が部品として必要となる。また、ドアの開閉動作の途中に、センサの故障などのセンサからの情報に異常が生じている場合には、開閉体が全閉位置に移動するまで、異常を検出することができない。そして、制御部が、開閉体の移動が目標速度となるように、開閉体の移動についてフィードバック制御を行っている場合には、異常な情報に基づいてフィードバック制御が行われることとなる。つまり、開閉体が全閉位置に移動するまでは、例えば過剰な速度でのドアの移動などの、不適切な制御が行われる。そのため、開閉体の開閉時には開閉体に近寄らないようにするなどの、安全に十分注意を払って使用する必要がある。
【0005】
そこで本発明は、センサについての異常を容易に判定することが可能な開閉体駆動機構の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の開閉体駆動機構は、取付対象に設けられた開口を開放する開位置と前記開口を閉止する閉位置との間を移動する開閉体と、前記開閉体を駆動する駆動部と、前記開閉体の移動状態を検知する検知部と、前記検知部の出力に基づいて前記駆動部による前記開閉体の駆動を制御する制御部と、を備えた開閉体駆動機構であって、前記検知部で検知した物理値が、予め設定した目標値となるように前記駆動を制御するフィードバック制御を行い、前記検知部からの情報が前記フィードバック制御に応じた所定の情報と異なり、且つ、前記駆動部に与えられた制御値が所定の閾値を超える場合、前記検知部からの情報が異常と判定する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の開閉体駆動機構によれば、センサについての異常を容易に判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態の開閉体駆動機構の構成を示すブロック図である。
図2A】本発明の一実施形態の開閉体駆動機構を備えた自動車をバックドアが閉位置にある状態で示す図である。
図2B】本発明の一実施形態の開閉体駆動機構を備えた自動車をバックドアが開位置にある状態で示す図である。
図3】本発明の一実施形態の開閉体駆動機構による制御及び異常判定の一例を示す図である。
図4】本発明の一実施形態の開閉体駆動機構による異常判定時の制御の他の例を示す図である。
図5】本発明の一実施形態の開閉体駆動機構による異常判定手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態の開閉体駆動機構を説明する。なお、以下に示す実施形態はあくまで一例であり、本発明の開閉体駆動機構は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0010】
[開閉体駆動機構の全体構成]
図1は、一実施形態の開閉体駆動機構の構成を、開閉体駆動機構を用いて開閉される開口と共に示すブロック図である。また、図2A及び図2Bは、開閉体駆動機構をバックドアの駆動機構として備えた自動車の後部を示している。図2Aは、バックドアが閉位置にある状態を示しており、図2Bは、バックドアが開位置にある状態を示している。図2A及び図2Bには、自動車のバックドアへの開閉体駆動機構の適用例が示されているが、後述するように、開閉体駆動機構の用途は、バックドアの駆動機構に限定されない。
【0011】
図1に示されるように、本実施形態の開閉体駆動機構1は、開閉体2と、開閉体2を駆動する駆動部3と、開閉体2の移動状態を検知する検知部4と、検知部4の出力に基づいて駆動部3による開閉体2の駆動を制御する制御部5と、を備えている。開閉体2は、開閉体2が移動可能な状態で取付対象に取り付けられる。開閉体2は、開閉体2に設けられた開口OPを開放する開位置Poと開口OPを閉止する閉位置Pcとの間を移動する。
【0012】
[開閉体]
開閉体2は、開口OPにおける開位置と閉位置との間を移動することによって、開口OPの開状態と閉状態とを切り替える。開閉体2は、本実施形態では、自動車のバックドアである。開閉体2は、自動車のバックドア以外のドアや窓、住居などに備えられた、ドア(開き戸)、引き戸、シャッタ、又は窓の開閉用の建具若しくは窓ガラスなどであってもよい。開閉体2の取付対象は、本実施形態では、車両後部の開口縁部である。開閉体2が取り付けられる取付対象は、開閉体2を移動可能に取り付けることができ、開閉体2によって開閉される開口OPを有するものであれば特に限定されない。例えば、開閉体2の取付対象は、自動車などの移動体又は建造物の窓枠部若しくはドア枠部であってもよく、開口OPは、自動車などの移動体又は建造物の窓枠若しくはドア枠に囲まれた領域での空間であってもよい。開口OPは、略矩形、円形又は楕円形などの任意の形状を有し得る。
【0013】
開閉体2は、開位置と閉位置との間を移動することができれば、具体的な構造、材料、及び形状について特に限定されない。なお、開閉体2の「開状態」及び「閉状態」とは、開口OPを完全に開放している状態や完全に閉鎖している状態に限られず、開閉体2の目的に応じて、目的を達成できるか開放状態や閉鎖状態を意味する。例えば、開閉体2が、開口を介した内部から外部への物体の移動を抑制することを目的とする場合には、開閉体2と取付対象との間に隙間がある状態であっても、物体が開口から外部へ移動しなければ「閉状態」となる場合がある。同様に、「開位置」および「閉位置」は、開閉体2の目的に応じた状態とすることができる位置であれば、開閉体2が開口を完全に開状態とする位置や完全に閉状態とする位置でなくてもよい。
【0014】
[駆動部]
駆動部3は、開閉体2を開位置と閉位置との間で移動させる。駆動部3によってもたらされる開閉体2の移動は、開閉体2の所定の部位が直線又は曲線を描く移動をするものでもよく、開閉体2が回転してもよい。駆動部3は、開閉体2を移動するために駆動する。例えば、駆動部3は、所定の信号に基づいて駆動するモータを含む駆動装置を用いることができる。駆動部3は、開閉体2を開位置と閉位置との間で移動させることができれば、駆動方式について特に限定されない。
【0015】
[検知部]
検知部4は、開閉体2の移動状態を検知する。検知部4は、検知した開閉体2の移動状態に関する検知結果を制御部5に出力する。検知部4は、直接的に開閉体2の移動状態を検知してもよく、間接的に開閉体2の移動状態を検知してもよい。すなわち、検知部4は、開閉体2自体の移動を検知するものであってもよいし、駆動部3の動作(例えば、駆動部3の構成部材の動作)を介して開閉体2の移動状態を検知してもよい。
【0016】
検知部4は、開閉体2の移動状態を検知するため、所定の時刻における位置や速度などの移動に関する情報を検知する。検知部4は、得られた検知結果(例えば開閉体2の速度)から、移動状態を示す他の要素(例えば開閉体2の現在位置)を導出してもよいし、直接的な検知結果を制御部5に出力してもよい。制御部5において、検知部4から得られた検知結果(例えば開閉体2の速度)に基づいて、移動状態を示す他の要素(例えば開閉体2の位置)が導出されてもよい。
【0017】
検知部4の検知方式は、開閉体2の移動状態を検知できるものであれば特に限定されない。検知部4は、電気的、磁気的、又は光学的などの如何なる検知方式を用いて検知するものでもよい。検知部4は、任意の検知方式による変位センサ、速度センサ、回転数カウンタなどによって構成されてもよい。
【0018】
[制御部]
制御部5は、検知部4の出力に基づいて、駆動部3による開閉体2の移動を制御する。制御部5は、開閉体2の移動を制御し得るものであれば、その構成要素について特に限定されない。
【0019】
本実施形態では、制御部5は、開閉体2の目標となる移動速度を定めた目標移動速度と検知部4からの情報に基づいて得られた開閉体2の実際の移動速度とを比較して、開閉体2の駆動を制御するフィードバック制御Fを行う。「目標移動速度」は、位置に応じて設定された開閉体2の移動する速度とすることができる。
【0020】
制御部5は、フィードバック制御Fにおいて、検知部4から得られる情報、例えば、開閉体2の位置についての情報に基づいて、開閉体2の移動速度を決定する。目標移動速度は、開閉体2の位置に対応させて予め定められ、制御部5は、検知部4から得られた開閉体2の現在位置に対応する記憶内容を参照することによって、現に得られた検知部4からの情報に基づく目標移動速度を決定することができる。制御部5は、位置と目標速度との関係を規定した目標移動速度スケジュールに基づいて、検知部4から得られた情報を用いて実行することによって、現に得られた検知部4からの情報に基づく目標移動速度を決定してもよい。
【0021】
制御部5は、検知部4からの情報に基づいて決定した目標移動速度と、検知部4から得られる開閉体2の実際の移動速度とを比較して、開閉体2の実際の移動速度が、検知部4からの情報に基づいて決定した目標移動速度となるようにフィードバック制御Fを行う。
【0022】
フィードバック制御Fは、開閉体2の目標移動速度と実際の移動速度との偏差に比例して駆動部3に与える制御値を変化させる比例動作と、この偏差の積分に比例して制御値を変化させる積分動作とを組み合わせたPI制御が行われてもよい。制御部5によるフィードバック制御Fを通じて、検知部4からの情報に基づいて決定した目標移動速度で開閉体2を移動させるのに適した制御値が駆動部3に与えられる。フィードバック制御Fは、PI制御に限定されず、例えば、前述した比例動作だけを行うP制御であってもよく、PI制御にさらに微分動作を加えたPID制御であってもよく、これら以外の制御であってもよい。フィードバック制御Fによって、開閉体2の移動速度が、検知部4からの情報に基づいて決定した目標移動速度へと制御される。なお、本実施形態においては、開閉体2の目標移動速度と検知部4から得られる開閉体2の実際の移動速度とを比較して制御を行っているが、電流値等の、開閉体2の移動状態あるいは駆動状態を表すことが可能であって、測定可能な物理量を用いて制御を行ってもよい。この制御に用いることができる制御値としては、物理量を含めて、物理的な特性を示す物理値として把握することができる。
また開閉体2の移動状態あるいは駆動状態を測定する部位は検知部4のみにとらわれず、別の部位にあっても複数であってもよい。例えば、制御部5で開閉体2を駆動する電流値を測定し、この物理量でフィードバック制御を行う。これにより駆動により期待される開閉体2の移動量が検知部4から得られず、且つ、フィードバック制御値が所定の閾値以下あるいは以上の際に異常と判定する。なお、この異常の判定に用いられる閾値はフィードバック制御の目的に応じて適宜設定され、駆動部3に与えられたフィードバック制御値との大小関係で所定の異なる値が得られた場合に、駆動部3に与えられた制御値が所定の閾値を超える場合とすることができる。
異常判定の制御については、移動量のみでの判定を行う方式では正常動作で誤検出が発生しないように判定時間を十分にとる必要があるが、このようにフィードバック制御値を加味することでその判定時間を短縮あるいは不要とし、容易に異常状態の判定を可能とする。
【0023】
本実施形態では、制御部5は、検知部4からの情報がフィードバック制御Fに応じた所定の情報と異なり、且つ、駆動部3に与えられた制御値が所定の閾値を超える場合、検知部4からの情報が異常であると判定する。すなわち、検知部4から得られている情報、及び、フィードバック制御Fを通じて得られるべき所定の情報、並びに、フィードバック制御Fにおいて駆動部3に与えられた制御値、及び制御値に関する所定の閾値を用いて、検知部4の情報の異常の有無が判定される。
【0024】
フィードバック制御Fにおける制御部5への入力情報及び制御部5からの出力値に基づいて、検知部4からの情報の異常を判定することができる。本実施形態では、開閉体2が移動中であっても検知部4からの情報の異常の有無を判定することができる。制御部5は、実際の移動速度が現在位置での目標移動速度に到達していなかったり、目標移動速度を越えている場合には、開閉体2が目標移動速度となるように実際の移動速度がされるように駆動部3の駆動を変更する。
【0025】
「所定の閾値」は、制御部5が検知部4からの情報が異常かどうかを判断するために、開閉体の種類や用途などに応じて設定される。
所定の閾値は、制御部5から与えられた制御量によって駆動部3が駆動することによる開閉体の移動が、検知部4からの情報として検知される値と、想定される検知部4の異常な状態での値との差として、設定することができる。例えば、開閉体2が所定の速度で移動するための電圧が制御部5から駆動部3に与えられているにも関わらず、実際に得られた検知部4からの情報値が、制御部5が駆動部3に与えた制御量により得られるはずの検知部4からの情報値と、誤差を越えて所定以上に離れていたら、検知部4が異常である可能性が高い。そのため、検知部4の異常と判断できる値を所定の閾値として設定することができる。
検知部4からの情報がフィードバック制御Fに応じた所定の情報と異なる場合には、制御部5は、駆動部3に対して必要以上に制御量を与えて駆動部3の駆動量を変更させようとする。このような場合に、制御部5が駆動部3に与えた制御量により得られるはずの情報値が検知部4から得られなかった場合には、制御部5は駆動部3の駆動量を変更させようと制御するために、開閉体2が異常な駆動を生じ、周囲の観者に対して不安を与えることとなる。
なお、上述の制御部5により駆動部3に与えられた制御量は、代用の数値(制御値)として設定することもできる。
上記例での制御量は電圧であるが、例えばPWM制御(Pulse Width Modulation)にてデューティを制御することで容易に、制御値を電圧の大きさとして駆動することができる。
【0026】
駆動部3に与えられる制御値の種類は、駆動部3の動作形式などに応じて選択される、特定の物理量に関する値である。制御値は、電気的、光学的又は機械的な物理量であってよい。例えば、制御値としては、電圧、電流、周波数、光度、及び、圧力などが例示されるが、制御値の種類は、駆動部3を制御し得るものであれば、特に限定されない。
【0027】
図2A及び図2Bに示されるように、本実施形態の開閉体駆動機構1は、自動車のバックドアの駆動機構として用いられ得る。図2A及び図2Bの例において、開閉体駆動機構1の開閉体2は、自動車Cのバックドアである。自動車Cの車体Bが開閉体2の取付対象であり、車体Bに設けられた開口であってバックドア2によって開閉される開口部が開口OPである。
【0028】
図2A及び図2Bの例において、開閉体2(バックドア)の上辺部は、開口OPの上縁部側にヒンジである軸部ARを介して回動可能に取り付けられている。開閉体2は、軸部ARを中心に旋回して下辺部側が上下動することにより、開口OPを開状態または閉状態とする。
【0029】
図2A及び図2Bの例において、駆動部3は、伸縮駆動することによって開閉体2を開位置Poと閉位置Pcとの間で移動させる。図2A及び図2Bの例では、開閉体2及び開口OPにおける車幅方向の縁部のそれぞれに駆動部3が1つずつ設けられ、合計2つの駆動部3が設けられている。本実施形態に係る駆動部3は、一つの開口OPに対して複数設けられてもよい。駆動部3のそれぞれが動作することによって開閉体2が開口OPに対して相対的に動かされ、開口OPの開状態と閉状態とが切り換えられる。
【0030】
駆動部3は、一端部において、車体Bにおける開口OPの外周部に接続され、他端部において開閉体2に接続されている。駆動部3は、一端部側として車体Bに接続される本体部31と、他端部として開閉体2に接続される進退部32とを有する。本体部31は筒状の形態を有し、進退部32は、本体部31における他端部側から出没し得るように本体部31に設けられている。
【0031】
具体的には、駆動部3は、本体部31内に、モータ(図示せず)、スピンドル(図示せず)、及び付勢部材(図示せず)を備え、スピンドル外周に設けられたナット(図示せず)に進退部が接続している。モータは駆動することによって本体部31に対して進退部32を長手方向に移動させて駆動部3を伸縮させる。駆動部3の駆動源として機能するモータは、直流モータ及び交流モータのいずれでもよいが、図2A及び図2Bの例のように開閉体駆動機構1が自動車に用いられる場合は、自動車の直流電源を利用し得る直流モータの利用が好ましい。
【0032】
進退部32は、前述した付勢部材によって駆動部3の一端部側から他端部側に向けて付勢されている。前述したナットは、前述したスピンドルと螺合させて進退部32内に固定されている。スピンドルは本体部31内に備えられており、モータの回転によってモータの駆動軸周りに回転する。駆動部3には、さらに、スピンドルの回転による進退部32の供廻りを規制すべく回転規制部材(図示せず)が備えられている。回転規制部材は、例えば軸方向に延びる溝を内壁に有する筒状体である。回転規制部材によってスピンドルとナットとの供廻りが規制されるため、モータの駆動に伴ってスピンドルが回転すると、進退部32がスピンドルの軸方向に沿って移動する。進退部32は、モータの正回転及び逆回転の一方において本体部31から進出し、他方において本体部31内へと退行する。その結果、駆動部3が伸長又は収縮する。スピンドルを回転させるモータは制御部5に接続され、制御部5によって駆動部3の伸縮が制御される。
【0033】
駆動部3は、駆動部3の伸縮に応じて接続方向を変更し得る接続機構(例えばボールジョイントなど)を介して開閉体2及び車体Bそれぞれに接続されている。駆動部3が伸縮することにより、開閉体2が旋回移動すると共に、閉位置Pc(例えば開口OPを完全に閉止させる位置)と開位置Po(例えば開口OPを最も大きく開放させる位置)との間で開口OPに対して相対移動する。駆動体3の進退部32を移動させるモータが1回転すると、進退部32は、例えばスピンドルに刻まれたネジ山の1ピッチの長さだけ移動する。従って、駆動部3に備えられるモータの回転速度及び回転回数は、開閉体2の移動速度及び移動距離にそれぞれ対応する。
【0034】
なお、車体Bの開口OPの周囲には、開口OPの縁に沿ってシール部材B1が備えられている。シール部材B1は、開閉体2が閉位置Pcに位置するときに開閉体2と車体Bとの間に位置する。シール部材B1は、例えば、ゴム等の弾性部材であり、閉位置Pcに位置する開閉体2によって車体Bへと押圧される。そのため、図2Aに示されるように、シール部材B1は、開閉体2が閉位置Pcに位置する場合、開閉体2によって圧縮され、開口OPにおける密閉性を向上させる。
【0035】
図2A及び図2Bの例において、検知部4は、駆動部3の本体部31に備えられている。検知部4は、駆動部3の本体部31に備えられたモータの駆動軸の回転と共に移動するように備えられた磁石と、磁石によって生じる磁界を検知するホール素子とを含んでいる。例えば、モータの駆動軸又は駆動軸と共に回転する部材に磁石が配置される。ホール素子は、モータの駆動に伴って駆動軸の周囲を周回する磁石と所定の回転角において対向し得る位置に配置される。ホール素子は、駆動軸の周囲に、例えば筒状の本体部31の内壁などに配置され、磁石の移動に伴ってパルス信号を出力する。
【0036】
ホール素子は一つだけ配置されてもよく、二つ、又は三つ以上の複数のホール素子が配置されてもよい。複数のホール素子が配置される場合、各ホール素子が、モータの駆動に伴ってパルス信号を出力する。例えば二つのホール素子を、モータの駆動軸に直交する平面において駆動軸に関して非対称な位置に配置することによって、駆動軸の回転方向、すなわち開閉体2の移動方向を検知することができる。例えば二つのホール素子は、互いに90°位相のずれたパルス信号を出力するように配置される。
【0037】
検知部4を構成するホール素子は、モータの駆動軸の1秒当たりの回転数と等しい周波数を有するパルス信号を出力する。すなわち、ホール素子の出力は、開閉体2の移動速度に関する情報を含んでいる。ホール素子の出力信号は制御部5に送られる。制御部5は、ホール素子からの情報によって開閉体2の移動速度を得ることができる。
【0038】
さらに、制御部5は、モータが駆動される時間、すなわち駆動部3が駆動される時間のカウントに基づく演算によって、開閉体の移動距離を得ることができる。すなわち、開閉体2の移動前のパルスカウント値に対する移動後のパルスカウント値から、移動距離を算出することができ、さらに移動距離を移動に要した時間で除することで移動速度を算出することができる。なお、駆動部3の駆動時間のカウント、及び開閉体2の位置の算出は、検知部4によって行われてもよく、算出結果が制御部5に送られてもよい。
【0039】
図2A及び図2Bの例において、制御部5は、車体Bの任意の位置に配置される。制御部5は、例えば、駆動部3及び検知部4との間の信号の伝送において遅延が生じ難いように、自動車Cの後部に配置されてもよい。さらに、制御部5は駆動部3の近傍に配置されてもよい。制御部5は、自動車Cに備えられる各機能を制御する電子制御ユニットに組み込まれてもよく、駆動部3を構成する本体部31又は進退部32の内部において構成されていてもよい。
【0040】
制御部5は、モータによって開閉体2を駆動する駆動部3に、制御値として電圧を与えてもよい。制御値としての電圧は、直流電圧であっても交流電圧(例えば実効値若しくは最大値)であってもよい。また、制御値として与えられる電圧は、駆動部3のモータがPWM(Pulse Width Modulation)によって制御される場合、駆動部3に入力される電圧パルスの平均電圧であってもよい。
【0041】
[開閉体駆動機構における制御]
図3を参照して、本実施形態の開閉体駆動機構1における開閉体2の制御、及び、検知部4からの情報の異常判定について、さらに詳しく説明する。図3は、図2A及び図2Bの例の開閉体駆動機構1による制御の一例をタイミングチャートの形式で示している。
【0042】
図3の例において、最上段のチャートは、開閉体駆動機構1に入力される指示Inを概念的に示しており、開閉体2を開状態にすることを指示する開指令In1、及び、開閉体2を閉状態にすることを指示する閉指令In2が示されている。開指令In1及び閉指令In2は、例えば、自動車Cの使用者が開閉体2(バックドア)の操作スイッチを操作することによって入力される。図3の例において、時点T1及び時点T3において開指令In1が入力され、時点T2において閉指令In2が入力されている。
【0043】
図3において、上から2段目のチャート及び3段目のチャートは、検知部4からの情報によってそれぞれ得られる開閉体2の位置PS及び移動速度RSをそれぞれ示している。検知部4が正常に動作している場合は、チャートPS及びチャートRSは、それぞれ、開閉体2の実際の位置及び移動速度と略同じ位置及び移動速度を示している。図3において最下段のチャートには、制御部5から駆動部3に与えられる制御値CVを示している。図3の例において制御値CVとして、電圧が駆動部3に与えられる。
【0044】
図3の例において、開閉体2は時点T1まで閉位置Pcにおいて停止しており、正常に動作している検知部4から得られる開閉体2の位置PS及び移動速度RSも、閉位置Pc及び速度ゼロをそれぞれ示している。制御部5は、制御値CVとして、開閉体2を移動させない制御値である電圧Voを駆動部3に与えている。
【0045】
時点T1で開指令In1が入力されると、制御部5は、開閉体2を開位置Poへと移動させるべく制御値CVをVoから増加させる。すなわち、制御部5は、フィードバック制御を通じて、開閉体2の位置に応じた目標移動速度を決定し、目標移動速度と、検知部4からの情報によって得られた開閉体2の移動速度とを比較して、駆動部3に与える制御値CVを決定する。制御部5は、決定した制御値CVを駆動部3に与える。なお、図3には示されていないが、制御部5から駆動部3へは、開閉体2の移動方向に関する指示も制御値CVに組み込んで、又は、制御値CVと別に与えられる。駆動部3は制御値CVに応じた速度で開閉体2を開位置Poに向けて移動させる。
【0046】
制御部5は、開閉体2の位置に応じて制御値CVを増加させることによって開閉体2の移動速度を増加させた後、一定速度(速度R1)で開閉体2を移動させる。開閉体2の位置が開位置Poに近付くと、制御部5は制御値CVを減少させ、それにより開閉体2の移動速度RSが低下する。時点T11において開閉体2は開位置Poにおいて停止し、開閉体2の移動速度はゼロとなり、制御部5は制御値CVとして電圧Voを駆動部3に与える。
【0047】
時点T2で閉指令In2が入力されると、制御部5は、開閉体2を閉位置Pcへと移動させるべく制御値CVを電圧Voから増加させる。すなわち、制御部5は、フィードバック制御の実行を通じて、駆動部3に与える制御値CVを決定し、決定した制御値CVを駆動部3に与え、駆動部3は制御値CVに応じた速度で開閉体2を閉位置Pcに向けて移動させる。
【0048】
制御部5は、開閉体2の位置に応じて制御値CVを増加させることによって開閉体2の移動速度を増加させた後、一定速度(速度R1)で開閉体2を移動させる。なお、図3に示される開閉体2の移動速度RSは、移動速度RSの絶対値である。開閉体2の位置が閉位置Pcに近付くと、制御部5は制御値CVを減少させ、それにより開閉体2の移動速度RSが低下する。開閉体2は、時点T21で閉位置Pcにおいて略停止する。
【0049】
開閉体2が閉位置Pcにおいてラッチされると、開閉体2の移動速度はゼロとなり、制御部5は、制御値CVとして電圧Voを駆動部3に与える。
【0050】
このように、制御部5によるフィードバック制御によって、開閉体駆動機構1に入力される開指令又は閉指令に応じて、目標移動速度へと速度を制御しながら開閉体2を移動させることができる。ここで、例えば検知部4に故障が生じたり、検知部4と制御部5とを接続する配線に断線が生じたりした場合は、検知部4から、実際の開閉体2の移動速度及び現在位置に関する情報が得られないことになる。本実施形態の開閉体駆動機構1によれば、前述したように、検知部4からの情報がフィードバック制御に応じた所定の情報と異なり、且つ、駆動部3に与えられた制御値CVが所定の閾値を超える場合、制御部5は、検知部4からの情報が異常であると判定する。従って、検知部4に関して異常が生じていることを容易に判定することができる。図3を引き続き参照して、本実施形態における、検知部4からの情報に関する異常の判定について、さらに説明する。
【0051】
図3に示される各チャートは、時点T21における開閉体2の停止後、時点T3までの間に、検知部4に異常が生じた場合を示す。すなわち、時点T3における開指令In1の入力に応じて、目標移動速度となるように、フィードバック制御を用いて、T1~T11のときの制御と同様に、駆動部3に与えられる制御値CVを与える。検知部4に異常が生じた場合には、検知部4からの情報によってそれぞれ得られる開閉体2の位置PS及び移動速度RSには、変化が生じない。そのため、制御部5は、開閉体2が目標移動速度で移動していないものと認識し、フィードバック制御を通じて開閉体2の速度を高めるべく制御値CVを増加させる。このように制御部5によってフィードバック制御が行われる一方で、制御部5は、検知部4からの情報が、フィードバック制御に応じて得られるべき開閉体2の速度などに関する情報と異なっていることを認識する。
【0052】
制御部5は、駆動部3に与えた制御値CVが所定の閾値Vthを超えると(時点T31)、検知部4からの情報が異常であると判定する。制御部5が異常と判断するための制御値は、本実施例においては電圧値であるが、電圧積算値などの制御量としての値であってもよく、駆動部3の駆動状態を示すことが可能な値を用いることができる。制御部5は、検知部4からの情報が異常であると判定した場合には、フォロー制御として異常に対する安全を確保するための処理を行うことができる。異常に対する安全を確保するための処理は、開閉体駆動機構の用途や目的により適宜設定され、異常を通知するためのアラームを鳴らす処理であっても、開閉体の移動を停止させる処理であってもよく、安全な移動へと移行する処理を行ってもよい。図3の例では、制御部5は、検知部4からの情報が異常であると判定すると、フィードバック制御を停止させ、駆動部3を停止させる。具体的には、制御部5は、例えば、制御値CVとして電圧Voを駆動部3に与えることによって駆動部3を停止させることによって、開閉体2の移動を停止させる。このように、検知部4からの情報が異常と判定されるので、開閉体2を高速で移動させかねない不適切な制御値が駆動部3に与えられることを未然に防ぐことができる。なお、制御部5は、所定の閾値Vthとの比較のために自ら制御値CVをモニタしてもいいが、制御値CVをモニタする電圧検知器、又はパルスカウンタなどの検知器が制御部5の外部に備えられてもよい。
【0053】
所定の閾値は、制御部5の制御対象に応じて適宜設定されるが、例えば、開閉体2の移動を異常と感じる速度を生じる駆動が行われる電圧値とすることができる。
【0054】
所定の閾値は、検知部4に関して異常が生じていない場合における制御値CVの最大値以上の値でなくてもよい。例えば、図3の例において、駆動部3に与えられた制御値CVに関する所定の閾値は、フィードバック制御を通じて駆動部3に与えられる制御値CVの最大値未満である。閾値が制御値CVの最大値未満であるために、観者が危険を感じることのない速度で開閉体2が移動している状態で、検知部4の異常を判定することができる。制御部5は、閾値が制御値CVの最大値未満である閾値で検知部4の異常を判定した場合に、フィードバック制御Fを停止して、そのまま定速で移動させることもできる。
【0055】
図3に示される例では、制御部5は、検知部4からの情報が異常であるとの判定に基づいて、フィードバック制御を停止すると共に、開閉体2を停止させる。しかし、制御部5は、検知部4からの情報が異常であるとの判定に基づいて、開閉体2の所定の速度に対応した電圧を駆動部3に印加するフォロー制御を行ってもよい。フォロー制御において、開閉体2は、所定の速度で閉位置Pc又は開位置Poに向かって移動する。フォロー制御は、例えば所定の時間だけ行われる。所定の速度及び所定の時間は、例えば制御部5内の記憶装置に記憶され、フォロー制御時に読み出される。
【0056】
図4を参照して、開閉体駆動機構1によるフォロー制御をさらに説明する。図4には、開閉体駆動機構1に入力される指示Inと共に、制御部5から駆動部3に与えられる制御値CV、実際の開閉体2の移動速度RR、及び、実際の開閉体2の位置PRそれぞれの一例のタイミングチャートが示されている。図3の例と同様に、制御値CVとして、電圧が駆動部3に与えられる。図4の例では、フォロー制御によって開閉体2が閉位置Pcに向かって移動する。なお図4は、検知部4からの情報が得られない事態が生じているものとして描かれている。従って、図4において示されている開閉体2の実際の移動速度RR及び実際の位置PRに応じた情報は、制御部5では得られていない。
【0057】
図4の例において、時点T5までの期間では、開閉体2は開位置Poにおいて停止している。時点T5において開指令In1が入力されると、制御部5は、フィードバック制御を通じて、駆動部3に与える制御値CVを決定し、制御値CVを電圧Voから増加させる。図4に示されるように、制御値CVの増加に伴って、開閉体2は、移動速度RRを増加させながら開位置Poから閉位置Pcへと移動するが、この開閉体2の移動に応じた情報は制御部5には入力されない。検知部4からの情報がフィードバック制御に応じた所定の情報と異なっているため、制御部5は、時点T51で制御値CVが所定の閾値Vthを超えると、検知部4からの情報が異常と判定する。
【0058】
図4に示されるように、制御部5は、検知部4からの情報が異常であるとの判定に基づいてフォロー制御を行う。すなわち、制御部5は、時点T51から、制御値CVとして電圧V2を駆動部3に印加する。電圧V2は、開閉体2の所定の速度R2に対応した電圧である。電圧V2は、例えば、駆動部3が開閉体2を速度R2で移動させるのに適した電圧である。速度R2としては、例えば、開閉体駆動機構1の使用者が速度R2で移動する開閉体2に接触しても害のない速度が設定される。例えば速度R2は、5mm/秒以上、10mm/秒以下の速度である。
【0059】
制御値CVとして電圧V2が駆動部3に印加されることによって、開閉体2は、速度R2まで移動速度RRを低下させ、略一定の速度R2で閉位置Pcへと移動する。時点T52において開閉体2が閉位置Pcに達すると開閉体2は閉位置Pcで停止する。
【0060】
一方、制御部5は、検知部4から開閉体2の移動に関する情報が得られないので、開閉体2の実際の位置PRに依存せずに、フォロー制御、すなわち、制御値CVとしての電圧V2の駆動部3への印加を継続し得る。そして、図4の例のように、所定の時間TMだけフォロー制御を行い、フォロー制御終了後、開閉体2を停止させる電圧Voを制御値CVとして駆動部3に与えてもよい。
【0061】
所定の時間TMは任意の長さの時間に設定され得るが、例えば所定の時間TMは、所定の速度R2で移動する開閉体2における開位置Poから閉位置Pcまでの所要時間であってもよい。所定の時間TMをそのように設定することによって、フォロー制御開始時における開閉体2の位置によらず、フォロー制御において略確実に開閉体2を閉位置Pcまで移動させることができる。
【0062】
図4はフォロー制御において開閉体2を閉位置Pcへと移動させる例であるが、制御部5は、開閉体2を開位置Poへと移動させるようにフォロー制御を行ってもよい。また、制御部5は、検知部4からの情報に関する異常判定時にどのような制御を行うかを、フィードバック制御中に検知部4から得られた情報に基づいて決定してもよい。
【0063】
例えば、制御部5は、検知部4からの情報がフィードバック制御に応じた情報と異なる前に検知部4から最後に得られた情報に基づく開閉体2の位置(以下「最後の位置」とも称する)に基づいて、異常判定時の制御を決定してもよい。例えば最後の位置が閉位置Pc又は開位置Poである場合、異常判定時に開閉体2を停止させてもよい。また、制御部5は、最後の位置が閉位置Pcと開位置Poとの間の位置であって閉位置Pc側の位置である場合、開閉体2を閉位置Pcに移動させるフォロー制御を異常判定時に行ってもよい。また、制御部5は、最後の位置が閉位置Pcと開位置Poとの間の位置であって開位置Po側の位置である場合、開閉体2を開位置Poに移動させるフォロー制御を異常判定時に行ってもよい。
【0064】
[検知部からの情報に関する異常判定手順]
本実施形態の開閉体駆動機構1による、検知部4からの情報に関する異常判定の手順を図5を参照して説明する。図5は、開閉体駆動機構1による異常判定手順の一例を示すフローチャートである。図5図3を参照して説明した制御に対応する。
【0065】
図5に示される例において、制御部5は、フィードバック制御の開始後、検知部4からの情報に基づいて決定した制御値を駆動部3に入力する(ステップS11)。制御部5は、検知部4から得られた開閉体2の位置などに関する情報が、フィードバック制御に応じた所定の情報、すなわち、制御部5が駆動部3に与えた制御値に応じて検知部4から得られるべき情報と異なっているかどうかを判定する(ステップS12)。ステップS12の判断が否定的(N)である場合、制御部5による制御はステップS11に戻され、フィードバック制御が継続される。ステップS12の判断が肯定的(Y)である場合、ステップS13にて、駆動部3に与えられた制御値が所定の閾値を超えるか否かが判断される。ステップS13での判断が否定的(N)である場合、制御部5の制御はステップS11に戻され、フィードバック制御が継続される。ステップS13での判断が肯定的(Y)である場合、検知部4の情報が異常と判定される。
【0066】
なお、図5の例において、ステップS12及びステップS13が実行される順序は、図5に示される順序と逆であってもよい。また、ステップS12及びステップS13の判断を複数回行ってもよい。例えば、ステップS13での肯定的判断の後、さらにステップS12の判断をステップS14(図5では図示せず)として行ってもよい。そしてステップS14の判断が肯定的である場合、検知部4からの情報が異常と判定してもよい。ステップS12及びステップS13の判断のいずれか又は両方を複数回実行することによって、偶発的事象などによる誤判定を少なくできることがある。
【0067】
なお、ステップS11における駆動部3への制御値の入力は、フィードバック制御を通じて実行され得るステップである。従って、ステップS12及び/又はステップS13での判断が否定的な場合、制御部5の制御は、必ずしもステップS11に戻されなくてもよく、ステップS12に戻されてもよい。
【0068】
図5示される手順は、検知部4からの情報に関する異常判定の手順の例示に過ぎない。本実施形態では、検知部4からの情報がフィードバック制御に応じた所定の情報と異なっているか否か、及び、駆動部3に与えられた制御値が所定の閾値を超えるか否かが適切に判断される限り、検知部4からの情報に関する異常の判定は如何なる手順で行われてもよい。
【符号の説明】
【0069】
1 開閉体駆動機構
2 開閉体
3 駆動部
31 本体部
32 進退部
4 検知部
5 制御部
AR 軸部
B 車体
B1 シール部材
C 自動車
CV 制御値
F フィードバック制御
In 開閉体駆動機構に入力される指示
In1 開指令
In2 閉指令
OP 開口
Pc 閉位置
Po 開位置
PS 検知部からの情報による開閉体の位置
PR 開閉体の実際の位置
RS 検知部からの情報による開閉体の移動速度
RR 開閉体の実際の移動速度
R1 開閉体の移動速度
R2 開閉体の所定の移動速度
RSV 移動速度の変化
Vo 開閉体を移動させない制御値としての電圧
Vth 所定の閾値
V2 所定の速度に対応した電圧
TM 所定の時間
T1~T52 時点
S11~S25 ステップ
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5