(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-02
(45)【発行日】2022-05-13
(54)【発明の名称】2つの電極からの交替する出力信号の使用による電気化学分析のための方法
(51)【国際特許分類】
G01N 27/26 20060101AFI20220506BHJP
G01N 27/416 20060101ALI20220506BHJP
G01N 27/327 20060101ALI20220506BHJP
G01N 33/66 20060101ALI20220506BHJP
【FI】
G01N27/26 371A
G01N27/416 338
G01N27/327 353Z
G01N33/66 A
G01N33/66 C
(21)【出願番号】P 2019501453
(86)(22)【出願日】2017-07-07
(86)【国際出願番号】 IB2017054133
(87)【国際公開番号】W WO2018011692
(87)【国際公開日】2018-01-18
【審査請求日】2020-07-02
(32)【優先日】2016-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-12-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516106184
【氏名又は名称】アセンシア・ダイアベティス・ケア・ホールディングス・アーゲー
【氏名又は名称原語表記】Ascensia Diabetes Care Holdings AG
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】特許業務法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】ウー,ホァン-ピン
(72)【発明者】
【氏名】ワーチャル-ウインダム,メアリー・エレン
(72)【発明者】
【氏名】ハリスン,バーン・エバレット
(72)【発明者】
【氏名】エリス,ニコル・ディー
【審査官】黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-540934(JP,A)
【文献】特表2016-510122(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0209460(US,A1)
【文献】国際公開第2014/091682(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/030346(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/26
G01N 27/416
G01N 27/327
G01N 33/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料中の検体の濃度を決定する方法であって、
試薬を有する第1電極を介する第1入力信号を、
前記検体の酸化を促進するいかなる試薬
も排除される第2電極を介する第2入力信号と組み合わせることであって、前記組み合わせることが、
少なくとも2つの励起と1つの緩和を有する前記第1入力信号を、前記第1電極を介して、前記試料へ印加することと、
少なくとも2つの励起と1つの緩和を有する前記第2入力信号を、前記第2電極を介して、前記試料へ印加することと
を包含し、
前記第1入力信号の励起が、前記第2入力信号の励起と同時ではないこと、
前記第1入力信号に対応する第1出力信号及び前記第2入力信号に対応する第2出力信号を測定すること、及び
少なくとも前記第1出力信号及び前記第2出力信号に基づいて検体の濃度を決定すること、
を包含する、
上記方法。
【請求項2】
前記第
1電極及び前記第2電極は、
共通の対向電極を共用する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1入力信号の前記少なくとも2つの励起は、前記第1電極を介して前記試料へ印加された0.25ボルトの一定電位の4つの励起を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記第2入力信号の前記少なくとも2つの励起の強度は、経時的に増加する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記第2入力信号の少なくとも2つの励起の少なくとも1つは定電位の励起であり、そして前記第2入力信号の前記少なくとも2つの励起の少なくとも1つは、線形走査、周期的な励起、又は非周期的な励起である、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記第1入力信号の前記少なくとも2つの励起は、第1のパルス幅の励起であり、前記第2入力信号の前記少なくとも2つの励起は、第2のパルス幅の励起である、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記第2出力信号、前記第1出力信号に対する前記第2出力信号、又はそれらの組み合わせに基づいて1つ以上の誤差パラメータを決定すること、
をさらに包含し、
前記検体の濃度の決定は、前記1つ以上の誤差パラメータに、少なくとも部分的に、基づく、
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記第2出力信号は、前記第2入力信号の前記少なくとも2つの励起の1つ以上の励起についての少なくとも2つの応答を含む、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
(i)前記第2入力信号の前記少なくとも2つの励起の1つ以上の励起のうちの第1の励起の少なくとも2つの応答のうちの1つの、及び
(ii)前記第2
入力信号の前記少なくとも2つの励起のうちの1つ以上の励起のうちの第2の励起の少なくとも2つの応答のうちの1つ
に基づいて、少なくとも1つの誤差パラメータを決定すること、
をさらに包含し、
前記検体の濃度の決定は、前記少なくとも1つの誤差パラメータに基づく検体濃度の相関の偏りを補償することに、少なくとも部分的に、基づく、
請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第1出力信号は、前記試料中の前記検体の濃度に対応し、前記第2出力信号は、前記試料中の前記検体の濃度に対応しない、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記第1出力信号は、前記検体の酸化還元反応に対応し、前記第2出力信号は、前記検体の酸化還元反応に対応しない、請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記検体は、グルコースであり、前記試料中のグルコース濃度を測定するための濃度範囲は、約0mg/dLから約900mg/dLまでである、請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記第1電極は、前記第1入力信号の緩和中、電気的に開状態にあり、前記第2電極は、前記第2入力信号の緩和中、電気的に開状態にある、請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記第1出力信号に基づいて、前記試料中の検体についての検体濃度の相関を決定すること、及び
前記第2出力信号、前記第1出力信号に対する前記第2出力信号、又はそれらの組み合わせに基づいて計算された1つ以上の誤差パラメータに基づいて、検体濃度の相関の偏りを補償すること、
をさらに包含し、
前記検体の濃度の決定は、前記補償された検体濃度の相関に基づく、
請求項1から請求項13のうちいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記偏りの補償は、傾きの偏差値、切片の偏差値、又はそれらの組み合わせに従って、前記検体濃度の相関を調整することを含む、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、「INTERTWINED ELECTRICAL INPUT SIGNALS(組み合わされた複数の電気信号)」と題する、2016年7月12日に出願された米国仮出願第62/361358、及び「INTERTWINED ELECTRICAL INPUT SIGNALS(組み合わされた複数の電気信号)」と題する、2016年12月5日に出願された米国仮出願第62/430232号の利益及び優先権を主張する。これらの各々は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
技術分野
本開示の態様は、試料中の検体(検査対象)の濃度を決定するための装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
バイオセンサシステムは、生体液、例えば、全血(WB)、血清、血漿、尿、唾液及び間質又は細胞内流体の分析を提供する。通常、バイオセンサシステムは、試験センサに接触する試料を分析する測定装置を有する。試料は、通常は液体の形態であり、生体液であることに加えて、生体液の誘導体、例えば、抽出液、希釈液、濾液、又は再構成沈殿物でありうる。システムによって実行される分析は、試料中の1つ以上の検体、例えば、アルコール、グルコース、尿酸(UA)、乳酸、コレステロール、ビリルビン(BRB)、遊離脂肪酸、トリグリセリド、タンパク質、ケトン、フェニルアラニン、又は酵素の存在及び/又は濃度を決定する。この分析は、生理的異常の診断及び治療に有用でありうる。例えば、糖尿病患者は、食事及び/又は投薬の調整のために、WBにおけるグルコースレベルを決定するためにバイオセンサシステムを用いうる。
【0004】
電気化学的バイオセンサシステムにおいて、検体濃度は、入力信号が試料に適用されるときに、検体の酸化/還元(酸化還元)反応によって生成された電気信号から、又は検体に対応する種、例えば測定可能な種から決定される。入力信号は、電位又は電流であり得、一定、可変、又はそれらの組み合わせでありうる。
【0005】
測定装置は、入力信号を試験センサの作用電極へ印加し、その作用電極は入力信号を試料に伝達する。測定可能な種の酸化還元反応は、入力信号に対応して電気出力信号を生成する。具体的には、グルコースの場合、グルコースは酵素によって酸化され、次いで酵素がメディエーターに電子を転送する。還元されたメディエーターは、次に、電気化学的に酸化され、出力信号を生成する試験センサの電極に移動する。測定装置は、出力信号を測定し、生体液中の1つ以上の検体の存在及び/又は濃度と相関させる処理能力を有しうる。
【0006】
クーロメトリー(電量測定法)は、生体液中の検体を定量するために用いられてきた1つの電気化学的方法である。クーロメトリーにおいては、検体の濃度は、少容積内での検体を徹底的に酸化し且つ検体濃度を表す電荷を生成するために酸化時間にわたって電流を積分することによって定量化される。このようにして、クーロメトリーは、試験センサ内の検体の総量を捕捉する。クーロメトリーの重要な側面は、電荷対時間の積分曲線の終わりの方で、電荷が時間とともに変化する速度が実質的に一定になり、定常状態を生じることである。クーロメトリー曲線の定常状態部分は、比較的平坦な電流領域を形成し、それにより対応する電流の決定を可能にする。しかし、クーロメトリー法は、真の定常状態電流が非定常状態出力から推定されない限り、定常状態に達するために検体の全体積の完全な変換を必要とする。結果的にこの方法は、推定のために、時間がかかるか又は正確さが低下しうる。テストセンサの試料量もまた、正確な結果(これは大量生産のデバイスでは困難である)を得るように制御されなければならない。
【0007】
アンペロメトリー(電流測定法)は、生体液中の検体を定量化するために使用されている別の電気化学的方法である。アンペロメトリーにおいては、電流は、一定の電位(電圧)が試験センサの作用電極と対向電極との間に印加されるときに読み出しパルスの間に測定される。測定された電流は、試料中の検体を定量化するために使用される。アンペロメトリーは、電気化学的に活性な種(従って検体)が作用電極の近くで酸化又は還元される速度を測定する。
【0008】
ボルタンメトリー(電圧測定法)は、生体液中の検体を定量化するために用いることができる別の電気化学的方法である。ボルタンメトリーは、試験センサの作用極と対向電極との間に印加される入力信号の電位が時間とともに連続的に変化するという点でアンペロメトリーとは異なる。電流は、入力信号及び/又は時間の電位の変化の関数として測定される。
【0009】
バイオセンサシステムの測定性能は、正確さ及び/又は精度に関して定義される。正確さ及び/又は精度の増加は、システムの測定性能(例えば偏りの低減)の改善をもたらす。正確さと誤差は、システムの性能を説明する際には逆である。より正確な測定は、測定に関連する誤差をより少なくすることを意味する。正確さ及び誤差は、基準検体の測定値と比較してのシステムの検体測定値の偏り(バイアスともいう)について表現することができ、偏りの値が大きいほど正確さは低いことを示す。精度は、複数の検体測定値間の平均に対する広がり又は分散の観点から表すことができる。偏りは、バイオセンサシステムから決定された1つ以上の値と生体液中の検体濃度に対する1つ以上の許容基準値との差である。このようにして、分析における1つ以上の誤差の源が、バイオセンサシステムの決定された検体濃度の偏りをもたらす。相反する考慮事項が、試料へのエネルギーの施与と検体濃度の決定との間に経過する合計時間である。より短い時間は、正確さ及び/又は精度に良くも悪くも影響を及ぼしうるが、検査時間が短すぎると正確さ及び/又は精度が損なわれうる。
【0010】
誤差は、決定された検体濃度の基準検体濃度からの「絶対的偏り」又は「百分率偏り」で表されうる。絶対的偏りは、例えばミリグラム/デシリットルの測定単位で、(ACal-ARefmg/dL)と表すことができ、一方、百分率偏りは、基準偏り値に対する絶対的偏り値の百分率(100*[ACal-ARef]/ARef)として表されうる。ここで、Aは標的の検体濃度である。誤差の表現の例は、ISO15197-2013EのISO規格に見出すことができる。この誤差は、絶対的偏りの観点から、100mg/dL未満のグルコース濃度についてのベースライン・グルコース値からのグルコース測定偏差(GCal-GRef)であるとして表され、一方また、100mg/dL以上でのグルコース濃度についてのベースライン・グルコースからのグルコース測定百分率偏り偏差(100*[GCal-GRef]/GRef)であるとして表されうる。用語「複合偏り」(偏り/%-偏りとして表される)は、100mg/dL未満のグルコース濃度の絶対的偏り及び100mg/dL以上のグルコース濃度の百分率偏りを表す。このような誤差の定義の下で、精度はさらに、測定されたグルコース測定値が、複合偏り(偏り/%-偏り)の境界内にどれほど良好にあるかとして定義される。例えば、ISO-2013Eは、データの95%以上が標準グルコース測定値の±15mg/dL/±15%の範囲内であることを要求している。精度の基礎を形成するのは、誤差境界と偏り/%-偏りである。誤差境界が狭ければ狭いほど、精度は良くなる。こうして、±12.5mg/dL/±12.5%以内に95%以上のデータを有するバイオセンサシステムは、±15mg/dL/±15%以内のデータを有するものよりもより正確であるが、一方、±10mg/dL/±10%のものは、±12.5mg/dL/±12.5%のものよりも正確であり、±5mg/dL/±5%のものは、±10mg/dL/±10%のものよりも正確である。
【0011】
関心のある検体の濃度の測定精度は、試料内の干渉種の存在によって影響を受けうる。干渉種は出力信号に寄与するが、検体の濃度とは無関係である。場合によっては、干渉種は、検体の酸化還元反応に直接影響を及ぼすことに基づいて出力信号に影響を及ぼすことがありうる。例えば、バイオセンサシステムが検体の酸化に対応して生成された還元メディエーターの濃度を決定する場合に、検体の酸化によらないで生成された何らかの還元メディエーターは、メディエーター背景のせいで、正しい場合よりも多い検体が試料中に存在することを示すバイオセンサシステムをもたらす。さらに、干渉種は検体と無関係であるが、干渉種はメディエーターを減少させうる。グルコースの場合、そのような干渉種は、キシロース又はグルコースに化学的に類似の別の種でありうる。別の場合、検体及び/又はメディエーターのものと同様の酸化還元電位を有する干渉種、及び試料に印加される入力信号の電位の干渉種は、検体及び/又はメディエーターと共に酸化及び/又は還元され得、したがって、出力信号に寄与する。検体の酸化還元反応に直接影響を与えないけれども出力信号に依然として影響を与える干渉種には、例えば、アスコルビン酸(ASA)、UA、アセトアミノフェン(AA)、ドーパミン(Dop)などが含まれる。1つ以上の干渉種の存在、及び検体濃度測定におけるこれら干渉種の寄与に責任を負う点での従来の測定システムの不能又は失敗は、目的の検体濃度の測定の不正確さに望ましくない寄与を与える。
【0012】
誤差を有する分析から得られた濃度値は、不正確でありうる。したがって、バイオセンサシステムは、分析に関連して、誤差を補正するための又は偏りを減らすための1つ以上の方法を含む。誤差を有するこれらの分析を訂正する能力は、得られた濃度値の正確さ及び/又は精度を増加させうる。誤差訂正システムは、1つ以上の誤差源、例えば測定可能な種の濃度が検体濃度と相関しない場合に生じる誤差からの影響を補償しうる。例えば、バイオセンサシステムが、検体の酸化に対応して生成された還元メディエーターの濃度を決定する場合に、検体の酸化によって生成されたものではない何等かの還元メディエーターは、メディエーター背景によって、正しいものよりもより多くの検体が試料中に存在することを示すシステムをもたらす。したがって、「メディエーター背景」は、基礎をなす検体濃度に対応しない測定可能な種に起因する、測定された検体濃度に導入された偏りである。
【0013】
測定誤差又は偏りはまた、出力信号が試料の測定可能な種の濃度に相関しない場合に生じうる。例えば、バイオセンサシステムが出力信号電流から測定可能な種の濃度を決定する場合に、測定可能な種に対応しない出力電流は、干渉電流によって、正しいものよりもより多くの検体が試料中に存在することを示すシステムをもたらす。したがって、「干渉偏り」は、下にある検体濃度に対応しない出力電流を生成する干渉に起因する、測定された検体濃度に導入される偏りである。
【0014】
これらの分析を訂正する能力は、得られた濃度値の正確さ及び/又は精度を高めうる。誤差訂正システムは、1つ以上の誤差源、例えば、試料温度、又は試料のヘマトクリットレベル(それらは、基準温度又は基準ヘマトクリット値とは異なる)を補償しうる。
【0015】
従来の誤差補償方法/システムは、様々な競合する長所及び短所のバランスをとろうと試みるが、それらは、測定の不正確さを生じやすく、且つ性能上の欠点を有している。従来のシステムは、通常、例えば、温度又はヘマトクリットのいずれかの特定のタイプの誤差を検出し応答するように指向されている。そのような方法/システムは通常、複数の誤差源を補償する能力を欠く。これらのシステムはまた一般に、特定の試料からの複数の出力信号に基づいて、誤差の補償を変更する能力を欠いている。その結果、従来のバイオセンサシステムは、所望の測定性能限界内での決定された検体濃度値を有する分析結果を提供することができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
少なくとも上記の理由から、改善された測定性能、特に、分析期間を延長することなく好ましくはそれを短縮して、生体の検体濃度の一層の正確な及び/又は精密な測定を提供しうる電気化学バイオセンサシステムに対する継続的なニーズが存在する。本開示のシステム、装置、及び方法は、従来のシステムに関する欠点の少なくとも1つを克服する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本開示の態様は、試料中の1つ以上の検体の濃度の決定に関する装置、システム、及び方法を包含している。本開示の上記装置、システム、及び方法は、上記検体の濃度を決定するために、組み合わされた複数の入力信号を上記試料に印加する。上記組み合わされた複数入力信号は、1つ以上の試薬を有する作用電極及び1つの試薬をも欠く裸電極を介して上記試料に印加される。第1入力信号は、少なくとも2つの励起と少なくとも1つの緩和を含み、そして第2入力信号は少なくとも1つの励起と少なくとも1つの緩和を含み、上記第1及び第2入力信号の上記励起は非同期であり、そして一方の上記入力信号の1つの上記励起は、他方の入力信号の少なくとも1つの励起によって互いに分離されている。
【0018】
本開示の態様は、上記試料中の上記1つ以上の検体の濃度を決定するために、上記の組み合わされた複数の入力信号に対応する1つ以上の出力信号を測定する装置、システム、及び方法を包含している。
【0019】
本開示の態様は、決定された特定のタイプの上記試料を含むことができる上記試料のタイプを決定するために、上記の組み合わされた複数の入力信号に対応する1つ以上の出力信号を測定する装置、システム、及び方法を包含する。特定の態様において、上記タイプは、対照基準(control:コントロール)及びWB試料でありうる。いくつかの態様において、1つのタイプの中で決定された上記特定のタイプは、特定の又は所定の対照基準でありうる。
【0020】
本開示の態様は、上記試料中の1つ以上の干渉種、上記試料の干渉レベル、又はそれらの組み合わせを決定するために、上記の組み合わされた複数の入力信号に対応する1つ以上の出力信号を測定する装置、システム、及び方法を包含する。特定の態様において、上記装置、システム、及び方法の機能及び/又は動作は、上記試料中の1つ以上の干渉種、上記試料の干渉レベル、又はそれらの組み合わせの決定に基づいて変化しうる。
【0021】
本開示の別の態様は、試料中の検体の濃度を決定する方法を含む。本方法は、試薬を有する第1電極を介する第1入力信号と、試薬を欠く第2電極を介する第2入力信号とを組み合わせることを含む。上記組み合わせは、少なくとも2つの励起及び1つの緩和を有する上記第1入力信号を上記第1電極を介して上記試料に印加すること、及び少なくとも2つの励起及び1つの緩和を有する上記第2入力信号を上記第2電極を介して上記試料に印加することを含み、その結果、上記第1入力信号の上記励起は上記第2入力信号の上記励起と同時ではない。本方法は、上記第1入力信号に対応する第1出力信号と、上記第2入力信号に対応する第2出力信号とを測定することをさらに含む。本方法は、少なくとも上記第1出力信号及び上記第2出力信号に基づいて上記検体の濃度を決定することを含む。
【0022】
本開示の態様はまた、試料中の検体の濃度を測定する方法を含む。本方法は、試薬を有する第1電極を介する第1入力信号を、試薬を欠く第2電極を介する第2入力信号と組み合わせることを含む。上記組み合わせは、上記第1電極を介して少なくとも2つの電圧パルスを有する上記第1入力信号を上記試料に印加することと、上記第2電極を介して少なくとも2つの電圧パルスを有する上記第2入力信号を上記試料に印加することとを含み、その結果、上記第1入力信号の少なくとも2つの電圧パルスは、上記第2入力信号の少なくとも2つの電圧パルスの少なくとも1つの電圧パルスによって分離されている。本方法はさらに、上記第1入力信号に対応する第1出力信号と、上記第2入力信号に対応する第2出力信号とを測定することを含む。本方法はさらに、少なくとも上記第1出力信号及び上記第2出力信号に基づいて上記検体の濃度を決定することを含む。
【0023】
本開示の別の態様は、試料中の検体の濃度を決定する方法を含む。本方法は、上記試料に第1入力信号を印加することを含む。上記第1入力信号は、第1の複数のデューティサイクルを含む。上記第1の複数のデューティサイクルの各デューティサイクルは、(i)第1電極と対向電極との間の励起、及び(ii)上記第1電極の緩和を含む。上記第1電極は、上記検体の酸化を促進する少なくとも1つの試薬を含む。本方法は、第2入力信号を上記試料に印加することをさらに含む。上記第2入力信号は、第2の複数のデューティサイクルを含む。上記第2の複数のデューティサイクルの各デューティサイクルは、(i)第2電極と上記対向電極との間の励起、及び(ii)上記第2電極の緩和を含み、上記第2電極は上記少なくとも1つの試薬を排除する。本方法はさらに、上記第1入力信号に対応する第1出力信号と、上記第2入力信号に対応する第2出力信号とを測定することを含む。本方法はさらに、上記第1出力信号及び上記第2出力信号に基づいて、上記試料中の上記検体の濃度を決定することを含む。本方法の態様において、少なくとも第1の複数のデューティサイクル及び第2の複数のデューティサイクルの励起は組み合っている。
【0024】
本開示の別の態様は、試料中の検体の濃度を測定する方法を含む。本方法は、上記試料に第1入力信号を印加することを含む。上記第1入力信号は、第1の複数のデューティサイクルを含む。上記第1の複数のデューティサイクルの各デューティサイクルは、(i)第1電極と対向電極との間に印加される電圧パルスと、(ii)上記第1電極の緩和とを含む。上記第1電極は、上記検体の酸化を促進する少なくとも1つの試薬を含む。本方法は、第2入力信号を上記試料に印加することをさらに含む。上記第2入力信号は、第2の複数のデューティサイクルを含む。上記第2の複数のデューティサイクルの各デューティサイクルは、第2電極と上記対向電極との間に印加される電圧パルスを含み、上記第2電極は、上記検体の酸化を促進するいかなる試薬をも排除する。本方法はさらに、上記第1入力信号に対応する第1出力信号と、上記第2入力信号に対応する第2出力信号とを測定することを含む。本方法はさらに、上記第1出力信号及び上記第2出力信号に基づいて、上記試料中の上記検体の濃度を決定することを含む。本方法の態様は、前記第2電極と前記対向電極との間に印加された前記第2入力信号の少なくとも1つの電圧パルスによって、上記第1電極と上記対向電極との間に印加される上記第1入力信号の次の電圧パルスから分離されている上記第1電極と上記対向電極との間に印加される上記第1入力信号の各電圧パルスを含む。
【0025】
本開示の別の態様は、血糖測定装置を用いて溶液を分析する方法を含む。本方法は、上記血糖測定装置の裸電極を介して溶液に入力信号を印加することを含み、上記入力信号は、一定電圧パルス、例えば直流(DC)電圧を含む。本方法はさらに、上記電圧パルスに対応して生成される電流の極性を決定することを含む。本方法はさらに、上記電流の上記極性に、少なくとも部分的に、基づいて、上記溶液を対照基準又は血液試料として識別することを含む。
【0026】
本概念の別の態様は、試料のタイプを決定する方法を含む。本方法は、裸電極を介して上記試料に入力信号を印加することを含み、上記入力信号は、少なくとも2つの励起及び緩和を含む。本方法はさらに、上記入力信号に対応させて出力信号を測定し、そして上記出力信号に基づいて1つ以上のパラメータを決定することを含む。本方法はさらに、上記試料のタイプを決定するために、上記1つ以上のパラメータを1つ以上の閾値と比較することを含む。
【0027】
本概念の別の態様は、試料中の1つ以上の干渉種に責任を負う方法を含む。本方法は、試薬を有する第1電極を介する第1入力信号を、試薬を欠く第2電極を介する第2入力信号と組み合わせることを含む。上記組み合わせは、少なくとも2つの励起及び1つの緩和を有する上記第1入力信号を、上記第1電極を介して上記試料に印加すること、及び少なくとも2つの励起及び1つの緩和を有する上記第2入力信号を、上記第2電極を介して上記試料に印加することを包含し、その結果、上記第1入力信号の上記励起は、上記第2入力信号の上記励起と同時ではない。本方法はさらに、上記第1入力信号に対応する第1出力信号と、上記第2入力信号に対応する第2出力信号とを測定することを含む。
【0028】
本概念の別の態様は、干渉管理の方法を含む。本方法は、1、2、又はそれ以上の次元における閾値によって境界を画定するように、干渉データを通常のデータから分離するために、1つ以上の信号及び/又は1つ以上のパラメータを選別することを含む。本方法はさらに、画定された境界に基づいて、データに対して通常の計算/補償を適用するか否か、データに対して特別な計算/補償を行うか否か、又はデータを拒絶するか否かを決定することを含む。
【0029】
本概念の別の態様は、試料中の検体の濃度を決定する方法を含む。本方法は、上記検体に特化した試薬を有する第1電極の、2つ以上の励起と少なくとも1つの緩和とを有する第1入力信号を、上記第1入力信号の上記2つ以上の励起の各励起が、上記検体に特化した試薬を欠く第2電極の、1つ以上の励起と少なくとも1つの緩和とを有する第2入力信号と組み合わせることを含み、その結果、上記第2入力信号の上記1つ以上の励起と同時ではない。本方法はさらに、上記第1入力信号に対応する第1出力信号と、上記第2入力信号に対応する第2出力信号とを測定することを含む。本方法はまた、少なくとも上記第1出力信号及び上記第2出力信号に基づいて、上記検体の濃度を決定することを含む。
【0030】
本概念の別の態様は、試料中の1つ以上の干渉種に関する干渉効果を管理する方法を含む。本方法は、検体試料と接触しているバイオセンサシステムに1つ以上の入力信号を印加することを含む。本方法はさらに、1つ以上の入力信号に対応して、上記バイオセンサシステムの上記1つ以上の出力信号を測定することを含む。本方法はまた、予め設定された閾値の画定された境界に関連する、1つ以上の信号、1つ以上のパラメータ、又はそれらの組み合わせに基づいて、事前ソート分離マップ内のデータ点の位置を決定することを含む。本方法は、上記位置に基づいて、上記データ点に検体濃度の通常の計算/補償、上記データ点に検体濃度の特別の計算/補償、又は上記データ点の除外、を適用するか否かを決定することをさらに含む。
【0031】
本開示の別の態様は、試料プロファイルを提供する方法を含む。特に、本方法は、グルコースなどの検体濃度を決定すること、及び上記試料内の内在種についての1つ以上のパラメータ又は濃度を報告することを含む。内在種(人体に自然に存在する化学物質)は、尿酸、ドーパミン、コレステロール、又は%ヘマトクリットなどをWB試料の一部として含む。一定期間に渡って、この試料プロファイリングは、1つ以上の次元でデータを提供し、長期的な健康及び糖尿病の懸念に対処するためのさらなる治療的処置につながりうる。
【0032】
本開示の態様は、上述の方法を実行又は実行するように構成された1つ以上の装置及びシステムをさらに含む。いくつかの態様において、上記1つ以上の装置及び上記システムの1つ以上のコンポーネントは、上記装置及び上記1つ以上のコンポーネントに上記の方法の動作を実行させるコンピュータ可読命令を含む。
【0033】
本開示の別の態様は、図面を参照してなされる様々な実施形態の詳細な説明の観点から当業者には明らかである。図面の簡単な説明は以下でなされる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】本開示の態様による、生体液の試料中の検体濃度を決定するバイオセンサシステムの概略図である。
【
図2A】本開示の追加の態様によるバイオセンサシステムのための組み合わされた複数の入力信号の印加を示すグラフである。
【
図2B】本開示の追加の態様によるバイオセンサシステムのための組み合わされた複数の入力信号の別の印加を示すグラフである。
【
図2C】本開示の追加の態様によるバイオセンサシステムのための組み合わされた複数の入力信号の別の印加を示すグラフである。
【
図3】本開示の追加の態様によるバイオセンサシステムのための組み合わされた複数の入力信号の別の印加を示すグラフである。
【
図4】本開示の追加の態様による、バイオセンサシステムのための組み合わされた複数の入力信号の代替の印加を示すグラフである。
【
図5】本開示の追加の態様による、バイオセンサシステムのための組み合わされた複数の入力信号の代替の印加を示すグラフである。
【
図6A】本開示の追加の態様による、バイオセンサシステムのための組み合わされた複数の入力信号の代替の印加を示すグラフである。
【
図6B】本開示の追加の態様による、システムの緩和なしの、バイオセンサシステムのための組み合わされた複数の入力信号の代替の印加を示すグラフである。
【
図6C】本開示の追加の態様による、作用電極パルスの後のシステム緩和を有する、バイオセンサシステムのための組み合わされた複数の入力信号の代替の印加を示すグラフである。
【
図6D】本開示の追加の態様による、裸電極パルスの後のシステム緩和を有する、バイオセンサシステムのための組み合わされた複数の入力信号の代替の印加を示すグラフである。
【
図7】本開示の態様による、
図2Aの組み合わされた第1及び第2入力信号に対応して測定された組み合わされた第1及び第2出力信号を示すグラフである。
【
図8A】本開示の追加の態様による、バイオセンサシステムのための代替の組み合わされた第1及び第2入力信号の印加を示すグラフである。
【
図8B】本開示の追加の態様による、バイオセンサシステムのための代替の組み合わされた第1及び第2入力信号の印加を示すグラフである。
【
図8C】本開示の追加の態様による、バイオセンサシステムのための代替の組み合わされた第1及び第2入力信号の印加を示すグラフである。
【
図8D】本開示の追加の態様による、バイオセンサシステムのための代替の組み合わされた第1及び第2入力信号の印加を示すグラフである。
【
図9A】本開示の追加の態様による、
図8Aの組み合わされた第1及び第2入力信号から生じる出力信号を示すグラフである。
【
図9B】本開示の追加の態様による、
図8Bの組み合わされた第1及び第2入力信号から生じる出力信号を示すグラフである。
【
図9C】本開示の追加の態様による、
図8Cの組み合わされた第1及び第2入力信号から生じる出力信号を示すグラフである。
【
図9D】本開示の追加の態様による、
図8Dの組み合わされた第1及び第2入力信号から生じる出力信号を示すグラフである。
【
図10A】本開示の態様による、
図8Aの第1入力信号の異なるパルスに対する基準相関を示す図である。
【
図10B】本開示の態様による、
図8Bの第1入力信号の異なるパルスに対する基準相関を示す図である。
【
図10C】本開示の態様による、
図8Cの第1入力信号の異なるパルスに対する基準相関を示す図である。
【
図10D】本開示の態様による、
図8Dの第1入力信号の異なるパルスに対する基準相関を示す図である。
【
図10E】本開示の態様による、3秒の電位系列及び6.6秒の電位系列に対する相関された生信号の参照グルコース濃度との比較を示す図である。
【
図11A】本開示のさらなる態様による、全てが一定の電位にはないパルスを有するバイオセンサシステムのための組み合わされた第1及び第2入力信号の印加を示すグラフである。
【
図11B】本開示の態様による、
図11Aの組み合わされた第1及び第2入力信号に対応する組み合わされた第1及び第2出力信号をそれぞれ示すグラフである。
【
図11C】本開示の態様によるボルタモグラムの形態における
図11Aの第1入力信号の非周期的な電圧測定パルスM
3に対応して測定された電流を示すグラフである。
【
図11D】本開示の態様によるボルタモグラムの形態における
図11Bの第2入力信号の線形走査パルスG
3に対応して測定された電流を示すグラフである。
【
図12A】本開示の追加の態様による、すべてが定電位にはないパルスを有するバイオセンサシステムのための組み合わされた第1及び第2入力信号の印加を示すグラフである。
【
図12B】本開示の態様による、
図12Aの組み合わされた第1及び第2入力信号に対して応答する組み合わされた第1及び第2出力信号を示すグラフである。
【
図12C】本開示の態様による、
図12Aの第1入力信号の非周期的な電圧測定パルスM
3に対する応答について測定された電流を示すグラフである。
【
図12D】本開示の態様によるボルタモグラムの形態における
図12Aの第2入力信号の線形走査パルスG
3に対する応答について測定された電流を示すグラフである。
【
図13】本開示の態様による、組み合わされた複数の入力信号に基づいて検体の濃度を決定するための方法のフローチャートである。
【
図14A】本開示の態様による様々な対照基準に印加された
図8Dにおける、第2入力信号の第1から第3のパルスに対する応答について測定された電流を示すグラフである。
【
図14B】本開示の態様による様々なWB試料に印加された
図8Dにおける、第2入力信号の第1のパルスから第3のパルスに対する応答について測定された電流を示すグラフである。
【
図14C】本開示の態様による様々な対照基準に印加された
図8Dにおける、第3のHct入力信号に加えて第2入力信号の第3及び第4のパルスに対する応答について測定された電流を示すグラフである。
【
図14D】本開示の態様による様々なWB試料に印加された
図8Dにおける、第3のHct入力信号に加えて第2入力信号の第3及び第4のパルスに対する応答について測定された電流を示すグラフである。
【
図15】本開示の態様による、第2入力信号のパルスが試料に印加される時間の間の、第2入力信号の電流の減衰の近似を時間の関数として示すグラフである。
【
図16A】本開示の態様による、
図8Dの第1及び第2入力信号に基づくWB試料及び対照基準のためのパラメータDG4に対する電流i
G1,1を示すグラフである。
【
図16B】本開示の態様による、
図8Dの入力信号に基づくWB試料及び対照基準のためのパラメータDG4に対する電流i
G1,1を示すグラフである。
【
図16C】本開示の態様による、20、50、及び100mMの緩衝液濃度での3つのリン酸イオン対照基準についてのパラメータDG4に対する電流i
G1,1を示すグラフである。
【
図16D】本開示の態様による、20、50、及び100mMの3つの緩衝液濃度のそれぞれについて、pH6.5、7、及び7.5で、ミズーリ州セントルイスのSigma Chemical Company(シグマ化学会社)製のTrizma(商標)アセテート対照基準についてのパラメータDG4に対する電流i
G1,1を示すグラフである。 50mM、100mMである。
【
図16E】本開示の態様による、20、50、及び100mMの3つの緩衝液濃度のそれぞれについて、pH6.5、7、及び7.5でのN-(2-アセトアミド)イミノ二酢酸(ADA)対照基準についてのパラメータDG4に対する電流i
G1,1を示すグラフである。
【
図16F】本開示の態様による、20、50、及び100mMの3つの緩衝液濃度のそれぞれについて、3つのpH6.5、7、及び7.5の組み合わせでのビス-トリス対照基準についてのパラメータDG4に対する電流i
G1,1を示すグラフである。
【
図17A】本開示の態様による、
図8Bの入力信号に基づく、WB試料及び対照基準についてのパラメータDG4に対する電流i
G1,1を示すグラフである。
【
図17B】本開示の態様による、WB試料とパラメータRHG
4及びDG4に基づく対照基準との間の差異を示すグラフである。
【
図17C】本開示の態様による、2つの電流i
G4,4及びiH,4に基づく2つの対照基準の間の差異を示すグラフである。
【
図18】本開示の態様による、血中グルコース監視装置を用いて溶液を分析するための方法のフローチャートである。
【
図19】本開示の態様による、試料のタイプを決定するための方法のフローチャートである。
【
図20】本開示の態様による、42%Hctの300mg/dLグルコースのブランクWB試料に添加されたDop、AA、及びUAの裸電極で取られたボルタモグラムを示すグラフである。
【
図21A】本開示の態様による、実験室研究(Lab:lab studies)及びドナー研究(DS:donor studies)からのデータ点と比較して、干渉種の試験から得られたパラメータRG
34対RG
14の全範囲に対するパラメータRG
34対RG
14のプロット図である。
【
図21B】本開示の態様による、実験室研究Lab及びドナー研究DSからのデータ点と比較しての干渉種の試験から得られたRG
14のサブセット範囲に対するパラメータRG
34対RG
14のプロット図である。
【
図21C】本開示の態様による、Lab及びDSからのデータ点と比較した干渉種のパラメータRG
34及びRG
14の部分範囲に対するパラメータRG
34対RG
14のプロット図である。
【
図21D】本開示の態様による、Lab及びDSからのデータ点と比較した、干渉種に関するパラメータRG
34対RG
14のプロット図である。
【
図21E】本開示の態様による、ASA及びDopに対する電流i
G1,4対iG
4,4の分類及び分離を示すプロット図である。
【
図21F】本開示の態様による、AA、UA、及びヨウ化プラリドキシム(PAM)の電流i
G3,4対i
G4,4の分類及び分離を示すプロット図である。
【
図21G】本開示の態様による、PAMに対する電流i
G4,4対温度の分類及び分離を示すプロット図である。
【
図21H】本開示の態様による、ヘモグロビン(HB)に対するパラメータ(RG
43-RG
32)対i
G4,4の分類及び分離のプロット図である。
【
図22A】本開示の態様による、ASAに関する通常のアルゴリズムの補償結果と比較した特別なアルゴリズムの補償結果のプロット図である。
【
図22B】本開示の態様による、UAに関する通常のアルゴリズムの補償結果と比較した特別なアルゴリズムの補償結果のプロット図である。
【
図22C】本開示の態様による、PAMに関する通常のアルゴリズムの補償結果と比較した特別なアルゴリズムの補償結果のプロット図である。
【
図22D】本開示の態様による、HBに関する通常のアルゴリズムの補償結果と比較した特別なアルゴリズムの補償結果のプロット図である。
【
図23A】本開示の態様による、実験室研究(Lab)からのデータと比較したキシロース干渉研究データのパラメータM
6G
4対R
65のプロット図である。
【
図23B】本開示の態様による、実験室研究(Lab)からのデータと比較したキシロース干渉研究データのパラメータR
61対R
65のプロット図である。
【
図24A】本開示の態様による、ニュージャージー州パーシッパニーのAscensia Diabetes CareによるCONTOUR(商標)NEXTストリップを用いた、17、23、及び28℃でのWB試料の実験室試験から得られたデータを用いたR
65の温度効果を示すプロット図である。
【
図24B】本開示の態様による、R
65に対する温度補正後のパラメータM
6G
4対R
65_Tのプロット図である。
【
図24C】本開示の態様による、R
65_Tのヘマトクリット効果を調整した後の、パラメータM
6G
4対R
65_THのプロット図である。
【
図24D】本開示の態様による、5つの異なる実験研究からのデータを用いた、R
65の平均温度効果のプロット図である。
【
図24E】本開示の態様による、In(R
65)(左軸)及びR
65(右軸)の階段状温度係数との関係における、R
65の温度関数のプロット図である。
【
図24F】本開示の態様による、R
65_Tのヘマトクリット効果に対して調整した後の、パラメータR
61対R
65_THのプロット図である。
【
図25A】本開示の態様による、画定された境界を有する正常データ及びキシロース干渉データの選別及び分離を示すプロット図である。
【
図25B】本開示の態様による、キシロース干渉試験(XY-1)の補償結果を示すプロット図であり、ベースライン・グルコース濃度は、この図の左から右へ80及び300mg/dLである。
【
図25C】本開示の態様による、キシロース干渉試験(XY-2)の補償結果を示すプロット図であり、ベースライン・グルコース濃度は、この図の左から右へ50、110、180mg/dLである。
【
図26】本開示の態様による、試料内の1つ以上の干渉種の影響を考慮した、検体の濃度を決定する方法のフローチャート図である。
【
図27A】本開示の態様による、WB%-Hctの予測及び%-Hct偏りに関する予測の精度を示したプロット図である。
【
図27B】本開示の態様による、WBにおける添加された尿酸に対するパラメータRG
34及び電流i
G3,4の応答を示すプロット図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本開示は様々な変更及び別の形態が可能であり、そしていくつかの代表的な実施形態が、図面において例として示されているが、それらは本明細書において詳細に記載されるであろう。しかし本開示は、図示され記載された特定の形態に限定されるものではないことを理解されたい。むしろ本出願は、添付の請求項によってさらに規定されるように本開示の精神及び範囲内に入るすべての変更、均等物、及び代替物を包含する。
【0036】
本開示は、多くの異なる形態で実施可能であり、図面として示され且つ本発明及び概念の実施例において詳細に説明されるが、本開示は、本発明及び概念の原理の例示と考えられるべきであり、開示された実施例の広範な態様を図示の例に限定する意図はないことを理解されたい。この詳細な説明の目的のために、用語において単数形は複数形を含み、(特に断らない限り)逆もまた同様である。用語「及び」と「又は」は、論理積及び論理和である。「すべての」という用語は「任意のかつすべての」を意味する。「任意の」という用語は「任意のかつすべての」を意味する。用語「含む」は、「限界なしに含む」を意味する。本詳細な説明および添付の図面の目的について、コンマで区切られた数字又はハイフンで区切られた数字(但しそれ以外は同一)を含む以下に定義され且つ全体を通して使用される用語は、同一のものを指し、そのような表記は交換可能である。例えば、以下でさらに論じられ且つ図示されるように、iG1,1とiG1-1は意味が同一である。
【0037】
裸電極又は第2電極は、本明細書に記載され用いられるように、試薬を全く加えていない電極、又は1つ以上の不活性物質を有する電極でありうる。裸電極は、標的検体のための試薬を有するものとして至るところに記載される作用電極又は第1電極とは対照的に、標的検体用ではない添加された試薬も含みうる。
【0038】
緩和は、本明細書に記載され使用されるように、関心のある電極が励起のための入力信号を欠くこと(例えば開放回路の場合)を意味しうる。緩和はまた、バイオセンサシステムが、全体として、すべての電極に対して入力信号を欠くことを意味しうる。組み合わせの間、一方の電極は緩和状態にあり、他方の電極は励起状態にあり、その逆もありうる。しかし、バイオセンサシステムは、両方の電極(又は2つ以上の電極の場合はすべての電極)が緩和状態になるまでは、緩和状態になりえない。標的検体用に添加された試薬を有する作用電極の場合、以下に詳細に説明するように、その特定の電極に対する緩和は、測定可能な種が、外部作用(例えば電気化学的反応)なしに酵素活性化化学反応から生成されるインキュベーション時間である。標的検体用に添加された試薬を欠く作用電極の場合、以下に詳細に説明するように、電極の緩和時間は、電極への信号の入力中に、すべての電気化学的活性種(酸化可能及び還元可能)が空乏層への拡散によって補充されたときである。
【0039】
図1は、本開示の態様による、生体液の試料中の検体濃度を決定するバイオセンサシステム100の概略図を示す。バイオセンサシステム100は、卓上装置、携帯型装置、又は手持ち式装置などを含む測定装置102及び試験センサ104(それらは任意の分析機器に実装されうる)を含む。測定装置102及び試験センサ104は、電気化学的センサシステムなどを実装するように適応されうる。バイオセンサシステム100は、試料の検体濃度を決定するために、パラメータ、例えば試料に印加される組み合わされた複数の入力信号に対応して生成される1つ以上の誤差パラメータに基づいて、1つ以上の相関を調整する。以下により詳細に説明するように、組み合わされた複数の入力信号に基づく調整された相関は、試料の検体濃度を決定する際に、精度又は速度又はその両方について、バイオセンサシステム100の測定性能を改善する。
【0040】
バイオセンサシステム100は、グルコース、UA、乳酸塩、コレステロール、BRBなどのうちの1つ以上を含む試料内の1つ以上の様々な検体の濃度を決定するために利用されうる。特定の構成が示されているが、バイオセンサシステム100は、本開示の精神及び範囲から逸脱しない限り、追加の構成要素を有する構成を含む別の構成を有しうる。
【0041】
試験センサ104は、容器108を形成する基部106と、開口部112を有するチャネル110とを有する。容器108及びチャネル110は、通気口付きの蓋によって覆うことができる。あるいは、容器は、スペーサ及び通気口付きの蓋で覆うことができる。容器108は、部分的に閉じた容積を画定する。容器108は、液体試料の保持を助ける組成物、例えば、水膨潤性ポリマー又は多孔性ポリマーマトリックス、を含みうる。試験センサ104は、本開示の精神及び範囲から逸脱しない限り別の構成を有しうる。試験センサ104は、WBの単一の液滴(例えば1~15マイクロリットル(μL)の体積)を分析するように構成されうる。使用時には、分析のための液体を開口部112に導入することによって、分析のための液体試料が容器108に移される。液体試料は、チャネル110を通って流れ、前から含まれていた空気を追い出して容器108を充填する。
【0042】
試験センサ104は、少なくとも3つの電極、すなわち作用電極114、対向電極(対極、カウンター電極ともいう)116、及び裸電極118を含む。しかし、いくつかの態様において、試験センサ104は、異なる数の電極、例えば、2つ以上の作用電極114、2つ以上の対向電極116、及び/又は2つ以上の裸電極118を含む4以上の電極、を含みうる。例として且つ限定的にではなく、試験センサ104は、2つの対向電極116を含むことができ、これら2つの対向電極116は、作用電極114及び裸電極118とは別個に対になっている。
【0043】
作用電極114は、1つ以上の試薬、例えば1つ以上の酵素、結合剤、メディエーター、及び種などを含みうる。1つ以上の試薬は、分析中に検体から電子と反応して電子を移動させ、したがって試料中の検体の酸化還元反応を促進する。次いで、測定装置102は、試験センサ104を通過する電流及び/又は電圧として電子を測定及び記録し、電流及び/又は電圧を試料の検体濃度の測定値に変換することができる。
【0044】
試薬に含まれる酵素又は類似の種は、酸化還元反応中に第1の種から第2の種への電子移動を促進する。この酵素又は類似の種は、検体と反応して、生成された出力信号の一部分に特異性を提供しうる。メディエーターが、酵素の酸化状態を維持するために使用されうる。このようにして、酵素及びメディエーターを有する作用電極114の場合、作用電極114は、検体が電気化学的反応を受ける場所である。対向電極116は、反対の電気化学反応が起こる場所であり、作用電極114と対向電極116との間に電流を流す。したがって、作用電極114で酸化が起こると、対向電極116で還元が起こる。
【0045】
以下の表1は、特定の検体と共に用いられる酵素及びメディエーターの非限定的な組み合わせを与える。ここで、MLBは、3-(2'、5'-フェニルイミノ)-3H-フェノチアジンジスルホン酸である。
【表1】
【0046】
試薬に含まれる結合剤は、様々なタイプ及び分子量のポリマー、例えば、カルボキシルメチルセルロース(CMC)、HEC(ヒドロキシエチルセルロース)及び/又はポリエチレンオキシド(PEO)、を含みうる。試薬を一緒に結合することに加えて、結合剤は、赤血球を濾過するのを助け、作用電極114(例えば血液グルコースモニタリング装置の場合)の表面を被覆することを防げるか又は抑止する。
【0047】
対照的に、裸電極118は、バイオセンサシステムの焦点である検体の酸化還元反応を促進する1つ以上の試薬が排除される。従って、「裸」と記載されるが、裸電極118は、作用電極114に含まれる検体の酸化還元反応を促進するところの同一の1つ以上の試薬を含まないだけである。裸電極118は、関心のある検体以外に、試料中の他の種の酸化還元反応を促進する試薬を含みうる。代わりに、裸電極118は、その上又はその中にいかなる試薬も欠く単なる裸導体でありうる。
【0048】
裸電極118は、作用電極114上の1つ以上の試薬の効果が、裸電極118の電気的応答に影響を与えないか又は影響を最小限にするように、作用電極114の上流に配置しうる。代わりに、いくつかの態様において、作用電極114及び裸電極118は、実質的に化学的分離を伴う別個の容器108内に設置されうる。したがって、バイオセンサシステム100の濃度測定の焦点である検体は、1つ以上の試薬を有する作用電極114に基づいて作用電極114に印加された電流又は電圧に対応する。検体は、1つ以上の試薬を欠く裸電極118に基づいて裸電極118に印加された電流又は電圧に対して応答しないか、又は最小限にしか応答しない。
【0049】
電極114~118は、実質的に同一平面内又は複数の平面内にあってもよい。電極114~118は、容器108を形成する基部106の表面上に配置されうる。電極114~118は、容器108内に延在、又は突出しうる。
【0050】
試験センサ104は、作用電極114、対向電極116、及び裸電極118に接続された導体を有する試料インターフェース120を含む。出力信号(例えば、第1出力信号、又は作用出力信号)は、作用電極114および対向電極116へ接続された複数の導体の一方又は両方から測定されうる。別の出力信号(例えば、第2出力信号、裸出力信号)は、対向電極116と裸電極118の一方又は両方から測定されうる。
【0051】
測定装置102は、センサインターフェース124及びディスプレイ126に接続された電気回路122を含む。電気回路122は、信号発生器130に接続されたプロセッサ128、オプションの温度センサ132、及び記憶媒体134を含む。ディスプレイ126は、アナログでもデジタルでもよい。ディスプレイ126は、LCD(液晶ディスプレイ)、LED(発光デバイス)、OLED(有機発光デバイス)、真空蛍光、電気泳動ディスプレイ(ED)、又は数値を示すように適合された他のディスプレイを含みうる。別の電子ディスプレイが使用されうる。ディスプレイ126は、プロセッサ128と電気的に通信する。ディスプレイ126は、例えばプロセッサ128と無線通信しているときのように、測定装置102とは分離されうる。代わりに、ディスプレイ126は、例えば測定装置102が遠隔計算装置及び薬剤投与ポンプなどと電気通信するときのように、測定装置102から取り外すことができる。
【0052】
信号発生器130は、プロセッサ128に対応してセンサインターフェース124に1つ以上の電気入力信号を提供する。電気入力信号は、電気入力信号を生体液の試料へ印加するために、センサインターフェース124によって試料インターフェース120に送信されうる。電気入力信号は、以下にさらに説明されるように、電位又は電流であってもよく、一定、可変、又はそれらの組み合わせであってもよい。電気入力信号は、単一パルスとして、又は複数のパルス、系列、又はサイクルにおいて印加されうる。以下で詳細に説明されるように、電気入力信号は、好ましくは複数の組み合わされたパルスとして印加される。信号発生器130はまた、センサインターフェース124からの1つ以上の出力信号を発生器記録器として記録しうる。
【0053】
オプションの温度センサ132は、試験センサ104のリ容器108内の装置及び試料を含むバイオセンサシステムの温度を決定する。試料の温度は、出力信号から測定され計算されうるか、又は周囲温度若しくはバイオセンサシステム100を実装する装置の温度の測定値と同一又は類似していると仮定されうる。温度は、サーミスタ、温度計、又は他の温度感知デバイスを用いて測定されうる。別の技術が試料温度の決定のために用いられうる。
【0054】
記憶媒体134は、磁気メモリ、光メモリ、半導体メモリ、又は別の電子記憶装置等でありうる。記憶媒体134は、固定記憶装置、リムーバブル記憶装置(例えばメモリカード)、又は遠隔アクセスされるものなどでありうる。
【0055】
電子プロセッサ128は、コンピュータ可読ソフトウェアコード及び記憶媒体134に記憶されたデータを用いて検体分析及びデータ処理を実装している。プロセッサ128は、センサインターフェース124での試験センサ104の存在に対応して検体分析を、ユーザ入力等に対応して試験センサ104への試料の印加を開始しうる。プロセッサ128は、電気入力信号をセンサインターフェース124へ供給するように信号発生器130に指示する。プロセッサ128は、センサインターフェース124からの出力信号を受ける。出力信号の少なくともいくつかは、試料に印加された入力信号に対応して生成される。他の出力信号が、試料の温度などの別の特性に基づいて生成されうる。出力信号に対応して、プロセッサ128は、検体濃度を決定するために1つ以上の相関関係を調整する。
【0056】
より具体的には、本明細書に開示された何れかのシステム又は方法(バイオセンサシステム100を含む)は、出力信号から抽出及び/又は生成された1つ以上の誤差パラメータ、1つ以上の予測関数、及び1つ以上のインデックス関数(1つ以上の複合インデックス関数を含む)などに基づいて、1つ以上の検体濃度の相関を調整することによって試料内の検体の濃度を決定しうる。例えばこれらは、「Slope-Based Compensation Including Secondary Output Signals(二次出力信号を含む傾きに基づく補償)」と題された2011年5月27日に出願された米国特許第9164076号;「Method for Determining Analyte Concentration Based on Complex Index Functions(複合インデックス関数に基づいて検体濃度を決定するための方法)」と題された2011年6月6日に出願された米国特許第8744776号;「Biosensor System With Signal Adjustment(信号調整を有するバイオセンサシステム)」と題された2009年12月8日に出願された国際出願第PCT/US2009/067150号;及び「Slope-Based Compensation(傾きに基づく補償)」と題された2008年12月6日に出願された国際出願第PCT/US2008/085768号;に開示されている。
【0057】
上記3つの参考文献で論じられたように、検体濃度と出力信号との相関における%-偏りは、1つ以上の誤差パラメータから得られた1つ以上の傾きの偏差によって表わされうる。出力信号の部分を含む誤差は、出力信号の仮定の傾きと基準の相関の傾きとの間の偏差に反映される。1つ以上の誤差パラメータからこの傾きの偏差を反映する1つ以上の値を決定することによって、分析の測定性能は向上させうる。予測関数、インデックス関数、及び/又は複合インデックス関数は、分析における1つ以上の誤差による、検体濃度と出力信号との間の相関における%-偏りに対応する。
【0058】
予測関数は、検体濃度分析における標的検体濃度を決定するために、1つ以上の誤差源からの誤差を補償するために補正値を生成する。そのような誤差は、決定された検体濃度の偏りをもたらす可能性がある。1つ以上の予測関数が用いられうる。全傾きの偏差と完全に相関する予測関数は、検体濃度の最終的な総合誤差補償を提供する。そのような仮想的で完全に相関された予測関数は、全傾きの偏差、ひいては測定された検体濃度の偏りの正確な原因を知ることなく、分析におけるすべての誤差を補償するために用いられうる。予測関数は、少なくとも1つのインデックス関数を含み、そして1つ以上のインデックス関数は複合でありうる。
【0059】
インデックス関数は、少なくとも1つの誤差パラメータに対応する。インデックス関数は、誤差パラメータと相関する計算された数であり、偏りについてのこの誤差パラメータの影響を表している。インデックス関数は、基準傾きからの偏差と誤差パラメータとの間の関係を表す回帰方程式又は他の方程式として実験的に決定されうる。このようにして、インデックス関数は、傾きの偏差への誤差パラメータの影響を表す。複雑なインデックス関数は、重み付け係数によって修正された項目の組み合わせを含む。複雑なインデックス関数に含まれた項目は、1つ以上の除外試験で選択されうる。
【0060】
誤差パラメータは、出力信号における1つ以上の誤差源からの誤差に対応する。誤差パラメータは、検体の分析からの値(例えば、1つ以上の出力信号、出力信号の1つ以上の部分)、又は出力信号とは独立の別の信号(例えば熱電対電流又は電圧)からの値でありうる。このようにして、誤差パラメータは、出力信号から直接的又は間接的に抽出しうる。任意の誤差パラメータが、インデックス関数を構成する1の項目又は複数の項目を構成するために用いられうる。
【0061】
傾きの偏差は、出力信号の変化の統計的効果を低減するために、出力信号の変動の差異を改善するために、出力信号の測定を標準化するために、これらの組み合わせなどのために、正規化されうる。傾きの偏差は正規化されうるので、インデックス関数はまた、多変数回帰から生成されるような誤差パラメータの関数としての正規化された傾きの偏差で表現されうる。正規化において、傾きの偏差、インデックス関数、又は他のパラメータは、出力信号の変化の統計的効果を低減するために、出力信号の変動の差異を改善するために、出力信号の測定を標準化するために、これらの組み合わせなどのために、1の変数によって調整(乗算、除算などで)される。予測又はインデックス関数と傾きの偏差との相関が大きいほど、解析における誤差を補正する機能は向上する。
【0062】
インデックス関数が重み係数によって修正された項の組合せを含むとき、インデックス関数は複合である。組み合わせは、好ましくは線形の組み合わせであり、しかし、項に対する重み係数を提供する別の組み合わせ方法が、用いられうる。各項は、1つ以上の誤差パラメータを含みうる。
【0063】
バイオセンサシステムを介して組み合わされた複数の入力信号を試験ストリップに印加することは、標的検体濃度に関する情報、及びまた試料タイプ、試料プロファイル、及び/又は、試料環境(潜在的な干渉種、内在種、及びそれらの標的検体との相互作用を含む)に関する標的検体に関する情報、を提供する。
【0064】
図2A~
図2Cは、本開示の態様による、電気化学バイオセンサシステム(例えば、
図1のシステム100)についての例示的な組み合わされた複数の入力信号を示す図である。より具体的には、
図2Aは、ラベルM、G、及びHctによって表される3つの入力信号を示す。
図1のバイオセンサシステム100に関して説明したように、第1入力信号Mは、作用電極114と対向電極116との間に印加される一定の電位(電圧)の電気パルス(又は単にパルス)を含む。しかし、第1入力信号は、本明細書に記載されたような作用電極と対向電極を有する如何なるバイオセンサシステムへも印加されうる。いくつかの態様において、第1入力信号は、作用電極114を介して試料へ印加される信号に基づいて、作用入力信号として記載されうる。
【0065】
図示されたように、第1入力信号Mは6つのパルスを含み、これらのパルスは、M1、M2、M3、M4、M5、及びM6のように、グラフの左から右に現れる順序で参照される。パルスM1は0.5ボルト(V)の電位を有し、パルスM2は0、35ボルトの電位を有し、そして残りのパルスM3~M6は0.25ボルトの電位を有する。第1入力信号Mのパルスが作用電極114を介して1つ以上の試薬へ印加されるので、第1入力信号Mのパルスは、メディエーター又は別の測定可能な種を介して直接的又は間接的に、試料中の検体を探索する。
【0066】
第2入力信号Gはまた、定電位のパルスを含む。しかし、
図1のバイオセンサシステム100に関して記載されたように、第2入力信号Gのパルスは、裸電極118と対向電極116と間に印加される。しかし、第2入力信号は、本明細書で記載されたような裸電極及び対向電極を有するどのようなバイオセンサシステムにも印加することができる。いくつかの態様において、第2入力信号が裸電極118を介して印加されるので、第2入力信号は裸の入力信号として記載されうる。
【0067】
図示されたように、第2入力信号Gは、4つのパルスを含み、それらは、グラフ上で左から右へ現れる順番に、G1、G2、G3、及びG4のように呼ばれる。パルスG1は0.25Vの電位を有し、パルスG2は0.35Vの電位を有し、パルスG3は0.5Vの電位を有し、パルスG4は1.0Vの電位を有する。裸電極118は、試料中の標的検体に反応する1つ以上の試薬が排除されるので、裸電極118を介して印加された第2入力信号Gのパルスは、試料中の作用電極114によって標的とされた標的検体をプローブしない。代わりに、裸電極118を介して印加された第2入力信号Gのパルスは、電気化学的検出窓を横切って試料中の別の種をプローブし、以下でさらに詳細に説明するように、試料中の潜在的な干渉種を含む。こうして、裸電極118に基づく測定は、様々な電位で他の酸化可能な種について大抵は敏感であるが、第1入力信号Mと作用電極114とによって分析される標的検体については敏感ではない。裸電極118を介して印加された第2入力信号への応答の結果として得られた測定値は、検体濃度に関連していないにもかかわらず、作用電極114における酵素反応への寄与として誤って測定されうる。従って、第2入力信号Gに基づく分析及び誤差パラメータは、単独で、又は第1入力信号Mに基づく分析及び誤差パラメータと組み合わせた、以前には電気化学検出窓全体を考慮に入れることができなかった検体濃度の決定の補償を可能にする。
【0068】
第3入力信号Hctは、WB試料の場合に、試料のヘマトクリットレベルを決定するための単一のパルスである。
図1のバイオセンサシステム100に関して記載されたように、第3入力信号Hctの単一パルスは、裸電極118と対向電極116及び作用電極114の組み合わせとの間に印加された2.5Vの一定電圧である。あるいは、第3入力信号Hctの単一パルスは代わりに、作用電極114を開いた状態で、裸電極118と対向電極116との間に印加されうる。3つの別個の入力信号として記載されているが、第2入力信号及び第3入力信号は、代わりに単一の入力信号、例えばパルスG
1~G
4及びヘマトクリットレベルを決定するためのパルスHctを含む第2入力信号、として考えられうる。
【0069】
図示されるように、第1及び第2入力信号のパルスは同時ではない(例えば、第1及び第2信号が同時に最大に励起されないか、又は第1入力信号の最大電圧は、第2入力信号のいかなる最大電圧とも重ならない)。さらに、第1入力信号の各パルスは、第1入力信号の次のパルスによって、第2入力信号の1パルス分だけ分離される。同時ではない第1及び第2入力信号のパルス及び第1入力信号のパルスを分離する第2入力信号のパルスに基づいて、第1及び第2入力信号のパルスは組み合わされているとして記載される。
【0070】
電圧パルスを印加しない場合、作用電極114及び裸電極118は開回路状態にありうる。したがって、第1入力信号のパルスの間、裸電極118は開回路状態にあり、第2入力信号のパルスの間、作用電極114は開回路状態にありうる。
【0071】
図示されたように、第1及び第2入力信号の各パルスの後に、電気緩和、又は単に緩和が続く。具体的には、第1入力信号の各パルスには、緩和、例えば第1入力信号に対する入力電位のない状態(又は開回路)が直ちに続き、そして第2入力信号の各パルスには、緩和、例えば第2入力信号に対してはゼロ電位(又は開回路)が直ちに続く。同一入力信号の複数のパルス間の間隔は、その特定の信号の緩和とみなされうる。すべての入力信号のパルスの間の間隔(即ちパルスがない場合)は、システム100の緩和とみなされうる。こうして、第1入力信号のパルスの後から第1入力信号の次のパルスまで、第1入力信号の緩和が存在する。
図2Aに示されるように、第1入力信号のパルスの後から第2入力信号の次のパルスまで、システムの緩和が存在する。第1又は第2入力信号内の緩和を伴うパルスの組み合わせは、デューティサイクルでありうる。したがって、第1及び第2入力信号は、緩和を伴うパルスの複数のデューティサイクルを含みうる。
【0072】
緩和中に作用電極114又は裸電極118が開状態にあるか、又は作用電極114及び/又は裸電極118の間にゼロ電位が印加されると記載されるが、作用電極114及び裸電極118の緩和は、電極114及び118が開状態にあることを必要としない。いくつかの態様において、作用電極114及び裸電極118を通過する電流は、閉状態における電流の少なくとも半分であり、依然として緩和期間にあると考えられうる。あるいは、作用電極又は裸電極は、電極に印加される電位が場合によっては標的検体又は種の酸化還元電位よりも低いときに、緩和の期間又は状態にあると考えられうる。あるいは、作用電極又は裸電極は、電流が励起最大値での電流の少なくとも半分又は励起最大値での電流の流れに対して少なくとも1桁に減少したときに、緩和の期間又は状態にあると考えられうる。
【0073】
各パルス及び各緩和は、それぞれパルス幅及び緩和幅とも呼ばれる幅を有する。パルスと緩和との一対は、デューティサイクルを定義する。各デューティサイクルについて、パルス幅と緩和幅とは、デューティサイクル幅又はデューティサイクル周期である。第1入力信号のパルスのパルス幅は、すべて同じ幅を有することもでき、すべて異なる幅を有することもでき、又は同じ幅と異なる幅の組み合わせを有することもできる。同様に、第1入力信号の緩和のための緩和幅は、すべて同じ幅を有することもでき、すべて異なる幅を有することもでき、又は同じ幅と異なる幅の組み合わせを有することもできる。第1入力信号のデューティサイクルのパルス幅及び緩和幅は、同じ幅であってもよいし、異なる幅であってもよい。加えて、第1入力信号のデューティサイクル幅又は周期は、同じ幅でも異なる幅でもよい。
【0074】
同様に、第2入力信号のパルスのパルス幅は、すべて同じ幅を有することもありえ、すべて異なる幅を有することもありえ、又は同じ幅と異なる幅の組み合わせを有することもありうる。同様に、第2入力信号の緩和のための緩和幅は、すべて同じ幅を有することもありえ、すべて異なる幅を有することもありえ、又は同じ幅と異なる幅の組み合わせを有することもありうる。第2入力信号のデューティサイクルのパルス幅及び緩和幅は、同じ幅であってもよいし、異なる幅であってもよい。さらに、第2入力信号のデューティサイクルの幅又は周期は、同じ幅でも異なる幅でもよい。再び、いくつかの態様によれば、第1及び第2入力信号への最大電気エネルギーの印加は、同時ではなく起きる。強調されることは、本開示による電極に印加される電気エネルギーが、必ずしも特定の形状、振幅、又は持続時間に限定されないことである。
【0075】
図2Aに示された第1入力信号について、パルスM
1及びM
2のパルス幅は0.2秒であり、パルスM
3、M
4、M
5、M
6のパルス幅は0.25秒である。第2入力信号については、パルスG
1、G
2、G
3、及びG
4のパルス幅は0.2秒である。第1入力信号の緩和幅は、それぞれパルスM
1~M
5の後、0.2秒、0.35秒、0.35秒、0.35秒、及び0.35秒である。第2入力信号の緩和幅は、それぞれパルスG
1~G
4の後、0.4秒、0.4秒、0.4秒、及び0.35秒である。ヘマトクリットパルスのパルス幅は0.2秒である。
【0076】
図2Aに示されたグラフは、本開示の態様による組み合わされた第1及び第2入力信号の一例である。より一般的なケースにおいては、第1及び第2入力信号は、組み合わされた第1及び第2入力信号を依然として含む一方で、より少ないパルスを有しうる。
【0077】
図2Bは、本開示の態様による電気化学バイオセンサシステム(例えば
図1のシステム100)のための代替の例示的な組み合わされた複数の入力信号を示すグラフを示す。より具体的には、
図2Bは、ラベルWE1及びWE2によって表される2つの入力信号を示す。ここで本明細書において記載されるように、WEIは第1入力信号を指し、WE2は第2入力信号を指す。したがって、
図1のバイオセンサシステム100について記載されたように、第2入力信号WE2は、裸電極118対向電極116との間に印加された定電位(電圧)の1つのパルスを含む。第1入力信号WE1のパルスは、左から右へ0.5Vと0.35Vの電位を有し、 第2入力信号WE2のパルスは0.15Vの電位を有する。
【0078】
第2入力信号WE2のパルスは、第1入力信号WE1の2つのパルスを分離し、作用電極114は、少なくとも第2入力信号WE2のパルスの間中、緩和状態にあるので、第1及び第2入力信号WE1及びWE2は、本明細書で記載されるように組み合わされている。このようにして、
図2Bに示されたグラフは、組み合わされた第1及び第2入力信号の最も広い印加の1つと考えられうる。
【0079】
図2Cは、本開示の態様による電気化学バイオセンサシステム(例えば
図1のシステム100)のためのさらに別の例示的な組み合わされた複数の入力信号を示すグラフを示す。より具体的には
図2Cは、本明細書で記載されるようにラベルWE1及びWE2によって表される2つの入力信号を示す。ここで、WE1は第1入力信号を指し、WE2は第2入力信号を指す。したがって、
図1のバイオセンサシステム100に関して記載されたように、第1入力信号WE1は、作用電極114と対向電極116との間に印加された2つの定電位(電圧)パルスを含む。
図1のバイオセンサシステム100に関して記載されたように、第2入力信号WE2は、裸電極118と対向電極116との間に印加される2つの定電位(電圧)パルスを含む。第2入力信号WE2のパルスは、左から右へ0.15Vと0.25Vの電位を有する。第2の入力信号WE2のパルスは、左から右へ0.35Vおよび0.25Vの電位を有する。
【0080】
再び、第2入力信号WE2の少なくとも第2パルスが第1入力信号WE1の2つのパルスを分離し、且つ作用電極114が少なくとも第2入力の第2パルスの間、緩和状態にあるので、第1及び第2入力信号WE1及びWE2のパルスは、本明細書で記載されるように組み合っている。
図2Cに示されたグラフは、組み合わされた第1及び第2入力信号の別の用途と見なしうる。
【0081】
図2A~
図2Cは、試料中の標的検体濃度を決定するために試料に印加されうる組み合わされた第1及び第2入力信号のいくつかの例を示す。
図2A~
図2Cに示された第1及び/又は第2入力信号の1つ以上の特性は、本開示の精神及び範囲から逸脱しない限度で変更可能である。
【0082】
いくつかの態様において、第1及び/又は第2入力信号のパルスの総数は、
図2A~2Cに示されたパルスの数とは変化しうる。
図2Aと比較すると、第1入力信号は、6つより多い又は少ないパルスを有しうる。いくつかの態様において、第1入力信号は、2つのパルス(
図2B及び
図2Cに示すように)、3つのパルス、4つのパルス、5つのパルス、7つのパルス、8つのパルス、9つのパルス、またはそれ以上を有しうる。同様に、
図2Aと比較すると、第2入力信号は、4つより多いか又は少ないパルスを有しうる。いくつかの態様において、第2入力信号は、1パルス(
図2Bに示されるように、第1入力信号の緩和の間)、2つのパルス(
図2Cに示されるように、第1入力信号の緩和の間少なくとも1つのパルスを有する)、3つのパルス、4つのパルス、5つのパルス、6つのパルス、7つのパルス、8つのパルス、9つのパルス、またはそれ以上のパルスを有しうる。
【0083】
図3は、本開示の追加の態様による電気化学バイオセンサシステム(例えば
図1のシステム100)のための組み合わされた複数の入力信号の代替の印加を示すグラフである。
図3は、ラベルM、G、及びHctによって表される3つの入力信号を含む。
図2Aにおけると同様に、
図3の第1入力信号Mは、作用電極114と対向電極116との間に印加される定電位のパルスを含み、そして
図3の第2入力信号Gはまた、
図1のシステム100に関して、裸電極118と対向電極116との間に印加される定電圧のパルスも含む。
図3の第1入力信号Mは9個のパルスを含み、それらは図の左から右に順番にM
1、M
2、M
3、M
4、M
5、M
6、M
7、M
8、M
9と表わされる。第1入力信号Mのパルスの電位は、例えば、第1及び第2のパルスについてはそれぞれ0.5V及び0.35Vであり、残りのパルスについては0.25Vでありうる。第2入力信号Gは、8個のパルスを含み、それらは、グラフ上で左から右に順番にG
1、G
2、G
3、G
4、G
5、G
6、G
7、及びG
8のように表示される。第2入力信号Gのパルスの電位は、例えば左から右へ順番に0.25V、0.35V、0.45V、0.55V、0.65V、0.75V、0.85V、及び0.95Vでありる。第2入力信号のパルスの各々は、その電位変化が約286mV/秒であり、約2.45秒以内に0.25Vから始まり0.95Vで終了するように、0.15Vのパルス幅を有しうる。最後に、
図3のヘマトクリット単一パルスHctが存在する。
【0084】
第2入力信号の1つのパルスのみが第1入力信号の2つの隣接するパルスを分離するように示されているが、いくつかの態様において、第2入力信号は、第1入力信号の隣接するパルスの間に、複数のパルスを有しうる。例えば、第1入力信号の各パルスを分離することは、第2入力信号の2つのパルス、3つのパルス、4つのパルス、5つのパルス、又はそれ以上のパルスでありうる。さらに、第1入力信号の各パルスの後に、第2入力信号の同じ数のパルス、第2入力信号の異なる数のパルス、又は第2入力信号の同じ数のパルスと異なる数のパルスとの組み合わせが存在しうる。
【0085】
第2入力信号の複数のパルスが第1入力信号の2つの隣接するパルスを分離する場合に、第2入力信号の複数のパルスは、例えば第1入力信号の2つの隣接するパルスを分離する入力信号のNパルスは、第2入力信号のN-1個の緩和を含むように、第2入力信号の緩和によってそれぞれ分離される。複数のパルスと、第1入力信号の2つのパルス間の第2入力信号の少なくとも1つの緩和とは、第2入力信号の単一のデューティサイクルと見なすことができ、またパルスと緩和の各対は、第2入力信号の複数のデューティサイクルが第1入力信号の2つのパルスを分離しうるように、単一のデューティサイクルと見なしうる。
【0086】
図2Aの入力信号は、試料へ約3.2秒の間印加される。第1及び/又は第2入力信号のパルスが、
図2Aよりも多くある場合、第1及び第2入力信号は、
図3に示されるように同じ時間量、又は異なる時間量にわたって試料に印加されうる。いくつかの態様において、第1及び/又は第2入力信号に関するより多くのパルスが、
図2A及び
図3に示された時間量よりも短い時間内に又はより長い時間内に印加されうる。同様に、第1及び/又は第2入力信号のパルス数が
図2Aよりも少ない場合には、第1及び第2入力信号は、同じ時間量又は異なる時間量にわたって試料に印加されうる。いくつかの態様において、第1及び/又は第2入力信号のより少ないパルス数が、
図2A及び
図3に示された時間量よりも短い時間内又はより長い時間内に印加されうる。組み合わされた第1及び第2入力信号に基づいて、第1及び第2入力信号の印加時間の合計は、一方で依然同じか又はより高い正確さと精度を維持しつつ、従来のバイオセンサシステムと比較して低減されうる。
【0087】
図3に関して上で少し説明したように、いくつかの態様において、第1及び/又は第2入力信号のパルスの電位は、
図2Aに示されるパルスの電位から変化しうる。第1入力信号の各パルスは、第1入力信号の1つ以上の他のパルスと異なるか又は同じ強度若しくは振幅でありうる。同様に、第2入力信号の各パルスは、第2入力信号の1つ以上の他のパルスと異なるか又は同じ強度若しくは振幅でありうる。第1入力信号の電位は、1つ以上の試薬と組み合わせて、検体の酸化還元電位をサンプリングするように構成されている。したがって、1例としてWB試料中のグルコース濃度を検出するために、第1入力信号の電位は、センサ内の対向電極(例えば、メディエータの酸化還元電位)に対して主に約0.25Vでありうる。このセンサは、サンプリングのためにシステムを準備するためのより高い又はより低い電位での1つ以上の初期パルスを伴う。
【0088】
第2入力信号は、標的検体又は関連する測定可能な種以外の試料内の種の酸化還元電位の範囲をサンプリングするために使用されうる。したがって、第2入力信号の電位は、試料中の他の種の酸化還元電位の意図された及び/又は予想される範囲に基づいて変化しうる。例えば、パルスの電位は、粒状度のレベルの変化に伴い0.01Vから2.5Vまで変動しうる。
【0089】
1例として、
図4は、本開示の追加の態様による電気化学バイオセンサシステム(例えば、
図1のシステム100)のための組み合わされた複数の入力信号の代替の印加を示すグラフである。
図4は、ラベルM、G、及びHctによって表される3つの入力信号を含む。前と同様に、第1入力信号Mは、
図1のシステム100に関して、作用電極114と対向電極116との間に印加される定電位のパルスを含み、第2入力信号Gはまた、裸電極118と対向電極116との間に印加される。第1入力信号は、
図2Aの第1入力信号と同一である。しかし、
図4の第2入力信号の各パルスは、同じ電位を有する。最後にヘマトクリット信号パルスHctが存在する。
【0090】
いくつかの態様において、第1及び第2入力信号が試料に印加される時間の長さは、短くされるか又は長くされうる。時間の長さは、1つ以上の第1及び第2入力信号の1つ以上のパルスのパルス幅及び/又は緩和幅を変化させることによって、短縮又は延長されうる。1例として、第1及び第2入力信号の緩和の幅は、第1及び第2入力信号を試料へ印加するのに必要な全体の時間を短縮するために、短くされうる。時間の長さは、第1及び/又は第2入力信号のパルス数を変化させることによって代替的又は追加的に短縮又は延長されうる。
【0091】
1例として、
図5は、本開示の追加の態様による電気化学バイオセンサシステム(例えば、
図1のシステム100)のための組み合わされた複数の入力信号の代替の印加を示すグラフである。
図5は、ラベルM、G、及びHctによって表される3つの入力信号を含み、前と同様に、第1入力信号Mは、
図1のシステム100に関連して作用電極114と対向電極116との間に印加される定電位のパルスを含む。第1及び第2入力信号は、
図2Aの第1及び第2入力信号と同一である。しかし、第1及び第2入力信号は、より短い時間にわたって試料に印加される。
図2Aの3.2秒とは対照的に、
図5の第1及び第2入力信号は、Hctパルスを含めて2.2秒以内で印加される。
【0092】
第1及び第2入力信号の組み合わせに基づいて、組み合わされた複数の入力信号を試料に印加するのに必要な時間量は、組み合わされた複数の入力信号が含まれない従来のバイオセンサシステムと比較して低減されうる。しかし、時間の短縮は、正確さ及び/又は精度の相応の低下を受けることはない。むしろ、組み合わされた第2入力信号に応して測定及び/又は収集された情報は、単独で又は第1入力信号に応して測定及び/又は収集された情報と組み合わせて、同様の又は改善さえされた正確さ及び精度を有するより速い分析時間を可能にする。
【0093】
図6Aは、本開示の追加の態様による電気化学バイオセンサシステム(例えば、
図1のシステム100)のための組み合わされた複数の入力信号の代替の印加を示すグラフである。
図6Aは、ラベルM、G、及びHctによって表される3つの入力信号を含む。
図2Aと同様に、第1入力信号Mは、
図1のシステム100に関連して作用電極114と対向電極116との間に印加される定電位のパルスを含み、第2入力信号Gはまた、裸電極118と対向電極116との間に印加される定電位のパルスを含む。
【0094】
図示されているように、第1入力信号Mは、6つのパルスを含み、それらはグラフ上で左から右に順番に現れ、M1、M2、M3、M4、M5、及びM6と本明細書において呼ばれる。パルスM1は0.5Vの電位を有し、パルスM2は0.35Vの電位を有し、そして残りのパルスM3~M6は0.25Vの電位を有する。第1入力信号Mのパルスが1つ以上の試薬を有する作用電極114を介して印加されるので、第1入力信号Mのパルスは、メディエーター又は他の測定可能な種を介して直接又は間接的に、試料中の標的検体をプローブする。
【0095】
図示されているように、第2入力信号Gは5つのパルスを含み、これらのパルスは、グラフ上で左から右に順番に現れ、G1、G2、G3、G4、及びG5と本明細書において呼ばれる。パルスG1は0.25V、パルスG2は0.35V、パルスG3は0.5V、パルスG4は0.75V、そしてパルスG5は1.0Vの電位である。裸電極118は試料内の標的検体に対応する1つ以上の試薬が排除されるので、裸電極118を介して印加される第2入力信号Gのパルスは、試料中の作用電極114によって標的とされる標的検体をプローブしない。代わりに、裸電極118を介して印加される第2入力信号Gのパルスは、電気化学的検出窓を横断して、以下でより詳細に記載されるように試料中の電位干渉種を含む試料中の他の種をプローブする。
【0096】
第3入力信号Hctは、WB試料の場合に試料のヘマトクリットレベルを決定するための単一のパルスである。
図1のバイオセンサシステム100に関して記載されたように、第3入力信号Hctの単一パルスは、裸電極118と、対向電極116及び作用電極114の組み合わせとの間に印加される2.5Vの一定電圧である。あるいは第3入力信号Hctの単一パルスは、代わりに、作用電極114を開いた状態で、裸電極118と対向電極116との間に印加されうる。3つの別の入力信号として記載されたが、代わりに、第2入力信号及び第3入力信号は、単一の入力信号、例えばパルスG
1~G
5とヘマトクリットレベルを決定するためのパルスHctとを含む第2入力信号、と考えることができる。
【0097】
第1入力信号中の作用電極114の各パルスの後から、作用電極114の緩和が、第1入力信号の作用電極114の次のパルスまで存在する。同様に、第2入力信号中の裸電極118の各パルスの後に、裸電極118の緩和が存在する。図示されたように、作用電極114及び裸電極118の各パルスの後に、システム100の緩和が、作用電極の最後のパルスM6まで存在する。作用電極114(第1入力信号)と裸電極118(第2入力信号)の両方の緩和の部分が重なるために、システム100の緩和は示される。すなわち、作用電極114のパルスと裸電極118のパルスとの間の各間隙が、システム100の緩和である。
【0098】
図6Aに示された組み合わされた複数の入力信号がシステム100の緩和を含むので、組み合わされた複数の入力信号の周期又はデューティサイクルが、作用電極114のパルスの開始で始まり且つ作用電極114の次のパルスの開始で終了することと定義される場合、システム100の緩和を含む。各期間又はデューティサイクルは、2つのシステム緩和を含む。しかし本開示の別の態様は、システムの緩和を必要としない組み合わされた複数の入力信号を含む。
【0099】
図6Bは、本開示の追加の態様による電気化学バイオセンサシステム(例えば、
図1のシステム100)のための組み合わされた複数の入力信号の代替の印加を示すグラフであり、ここではシステム100の緩和がない。作用電極114の各パルスの後及び裸電極118の各パルスの後にシステム緩和がないように、裸電極118のパルスのパルス幅が伸長されていることを除いては、組み合わされた複数の入力信号は、
図6Aに示す信号と同一である。しかし、
図6Bの組み合わされた複数の入力信号は、作用電極114の各パルスの後の且つ作用電極114の次のパルスまでの作用電極114の緩和、並びに裸電極118の各パルスの後の且つ裸電極118の次のパルスまでの裸電極118の緩和を、依然として含む。
【0100】
裸電極118のパルスのパルス幅を、システムの緩和を起こさせないように伸長しうるけれども、代わりに、作用電極114のパルスのパルス幅を伸長することができ、又は作用電極114及び裸電極118の両方のパルスのパルス幅を、システムの緩和を起こさせないように伸長しうる。
【0101】
ここでも、
図6Aに示された組み合わされた複数の入力信号は、作用電極114のパルスの開始で始まり、作用電極114の次のパルスの開始で終了することと定義された組み合わされた複数の入力信号の各周期又はデューティサイクルに対するシステム100の2つの緩和を含む。いくつかの態様において、組み合わされた複数の入力信号は、各周期又はデューティサイクルに対してシステム100の単一の緩和を含みうる。
【0102】
図6Cは、本開示の追加の態様による電気化学バイオセンサシステム(例えば、
図1のシステム100)のための組み合わされた複数の入力信号の代替の印加を示すグラフであり、ここでは、各期間又はデューティサイクルについて唯一のシステム緩和が存在する。裸電極118のパルスと作用電極114の次のパルスとの間にシステム緩和がないように、ベア電極118のパルスが作用電極114の次のパルスの直前に生じるようにシフトされる点を除いて、組み合わされた複数の入力信号は、
図6Aに示された信号と同一である。しかし、作用電極114の前のパルスと、作用電極114の隣接するパルスを分離する裸電極118の次のパルスとの間に、システム緩和が存在する。
図6Cの組み合わされた複数の入力信号は、作用電極114の各パルスの後の且つ作用電極114の次のパルスまでの作用電極114の緩和、並びに裸電極118の各パルスの後の且つ裸電極118の次のパルスまでの裸電極118の緩和を依然として含む。
【0103】
作用電極114のパルスの直後に発生する代わりに、システムの緩和は、裸電極118のパルスの後に生じうる。
図6Dは、本開示の追加の態様による電気化学バイオセンサシステム(例えば、
図1のシステム100)のための組み合わされた複数の入力信号の代替の印加を示すグラフであり、ここでは、各期間又はデューティサイクルについて唯一のシステム緩和が存在する。作用電極114のパルスと裸電極118の次のパルスとの間にシステム緩和が存在しないように、裸電極118のパルスが裸電極118のパルスの直後に発生するようにシフトされることを除いて、組み合わされた複数の入力信号は、
図6Cに示された信号と同一である。しかし、裸の電極118の前のパルスと、裸の電極118の隣接するパルスを分離する作用電極114の次のパルスとの間にシステム緩和が存在する。
図6Dの組み合わされた複数の入力信号は、作用電極114の各パルスの後の且つ作用電極114の次のパルスまでの作用電極114の緩和、並びに裸電極118の各パルスの後の且つ裸電極118の次のパルスまでの裸電極118の緩和を依然として含む。
【0104】
図2Aに戻って示すように、電気的測定は、第1及び第2入力信号、又は第1及び第2入力信号の一部分に応じて行われる。試料の測定値は、測定装置102によって測定された1つ以上の出力信号を構成する。具体的には、第1入力信号に対応して、第1出力信号又は作用出力信号が測定される。第2入力信号に対応して、第2出力信号又は裸の出力信号が測定される。組み合わされた第1及び第2入力信号に基づいて、得られる第1及び第2出力信号もまた組み合わされている。
【0105】
図7は、本開示の態様による、
図2Aの組み合わされた第1及び第2入力信号に対応して測定された組み合わされた第1及び第2出力信号を示すグラフである。第1及び第2入力信号が、それぞれの電極対の間に印加された一定電圧であることに基づいて、第1及び第2入力信号に対応する試料の出力電流のアンペロメトリック測定値を表す。
【0106】
任意の数の電流の測定値又は値は、第1及び第2入力信号のパルスの各々に対応して測定されうる。説明の便宜上かつ
図7に示されたように、以下に記載された電流の特定の数が、第1及び第2の入力信号のパルスに対応して測定された。
【0107】
第1出力信号に関して、4つの出力電流が第1の2つのMパルスΜ1とM2に対応して測定され、そして5つの出力電流が最後の4つのMパルスM3~M6に対応して測定された。これらの出力電流は、スキームiMN,Lに従って表示される。ここで、iは電流を表し、Mは電流が第1入力信号に対応することを表し、Nは入力信号のパルス数を表し、そしてLは電流又はその特定のパルス数に対する測定数を表す。このようにして、例えば、iM1,1は、第1入力信号の第1パルスに対する第1電流を表し、iM6,5は、第1入力信号の第6パルスに対する第5電流を表す。
【0108】
第2出力信号に関して、4つの電流が、最初の4つのGパルスG1~G4に対応して測定された。これらの電流は、スキームiGN,Lに従って表示される。ここで、iは電流を表し、Gは、電流が第2入力信号に対応することを表し、Nは入力信号のパルス数を表し、Lは電流又はその特定のパルス数に対する測定値を表す。このようにして例えば、iG2,2は、第2入力信号の第2パルスの第2電流を表し、iG3,4は、第2入力信号の第3のパルスの第4の電流を表す。
【0109】
第2入力信号(又は第3入力信号)のヘマトクリット部分に関して、4つの電流値が1つのパルスHctに対応して測定された。これらの電流は、スキームiHct,Lに従って指定され、ここで、iは電流を表し、Hctは電流がヘマトクリット値に関連することを表し、Lはヘマトクリットパルスの電流又は測定番号を表す。
【0110】
裸電極118は、濃度を測定しようとする標的検体の酸化又は還元を促進する試薬を有していないので、電流の測定値は、
図7に示されるように、第2入力信号に対応して比較的一定であった。代わりに、電流の測定値は、検体の酸化に無関係な試料中の種の大部分を示していた。さらに、第2入力信号に対して変化する電位で電圧パルスを試料に印加することにより、様々な電位で酸化可能な種をサンプリングした。こうして、第2入力信号中の裸電極118の電圧パルスは、第1入力信号中の作用電極114によって感知された検体標的よりもWB試料中の試料の異なる検体標的を感知し、又は変化する電位パルスを介してWB環境プロファイルをプローブする。個体の異なる血液型の微妙な差異は、依然として存在し得て、パルス電位の異なる組合せ、例えば異なる第2入力信号パルスの内の終了電流の比、での電流の応答を通して表現されうる。
【0111】
第2出力信号からの情報は、同じか又はより短い試験時間で、従来のバイオセンサシステムよりも高められた精度を提供する。例えば、第2出力信号(それ単独で及び第1出力信号からの情報との組み合わせでの両方)に基づいて生成された誤差パラメータは、作用電極114によって酸化された干渉種(但し検体の濃度とは無関係である)に責任を負う誤差補償のために第1出力信号に基づいて生成された誤差パラメータを補完する。裸電極118と対向電極116との間に印加された第2入力信号なしで、第1入力信号中に作用電極114によって酸化された干渉種は、従来のバイオセンサシステムにおいて検体の酸化から隔離又は分離されえない。
【0112】
さらに、試料に第1入力信号と組み合わされた第2入力信号を印加することは、検体濃度決定に適用される電気化学的技術における従来のアプローチとは反対である。従来のアプローチは、作用電極の要求される電位を他の種の影響を受けないレベルに変更することによって、標的検体、メディエーター、又は関連する測定可能な種以外の試料中の他の種の効果を区別しようと前もって試みた。このようにして、従来のアプローチに従って、電気化学的検出ウインドウにまたがる電位で裸電極を用いて試料にパルスをかけることは、標的検体、メディエーター、又は関連する測定可能な種の酸化還元電位がこれらの追加の電位とは別の電位である場合に、標的検体の濃度の決定に比較的に僅かの影響を及ぼすか又は全く影響を及ぼさない。この効果のない様子は、
図7における第2出力信号によって示されるように、第2入力信号の変化するパルスに対する試料の比較的一定の応答によってさらに証明される。しかし、本明細書で論じる理由のために、単独での及び/又は第1出力信号と組み合わせた第2出力信号の実行された分析は、特に短い分析期間について標的検体のより正確な及び/又は精度の高い決定を可能にする有用な情報を実際に明らかにする。以下でさらに論じるように、組み合わされた第1及び第2入力信号に基づいて許容されるより短い分析時間はまた、試料中のより大きな直線性を可能にし、従来のバイオセンサシステムの上限、例えばグルコースバイオセンサーシステムの場合600mg/dLを超える、をはるかに超えうる濃度の決定を可能にする。
【0113】
上述されたように、第1及び第2出力信号の電流の測定値に基づいて、誤差パラメータが生成されうる。誤差パラメータは、標的検体の濃度を測定する際の誤差を、標的検体の実際の濃度から逸脱する既知の因子(例えば、試料中の干渉種)と相関させる。誤差パラメータは、対応するバイオセンサシステムがどのように構成されているかに依存する様々な種類のパラメータであり得、異なる誤差源からの誤差を生成する。例えば、いくつかの態様において、第2出力信号の1つ以上の電流は、誤差パラメータでありうる。加えて又は代わりに、誤差パラメータは、第1出力信号の、第2出力信号の、及び/又は第2出力信号に対する第1出力信号の、電流の比に基づいて生成されうる。第1又は第2出力信号に基づく誤差パラメータは、パルス内比又はパルス間比に基づきうる。
【0114】
パルス内比は、同じパルスに対応する電流の測定値に基づく比である。例えば、第1出力信号の電流の測定値に基づくパルス内比は、スキームR
N=i
MN,nth/i
MN,1stに従って指定される。ここで、R
Nは、第1出力信号のパルスNに対するパルス内比を表し、nthはパルスNに対する最後の電流を表し、lstはパルスNに対する最初の電流を表す。
図7戻って参照すると、1例として、第1出力信号は、第1出力信号の6つのパルスに対して、R
1=i
M1,4/i
M1,1、R
2=i
M2,4/i
M2,1、R
3=i
M3,5/i
M3,1、R
4=i
M4,5/i
M4,1、R
5=i
M5,5/i
M5,1、およびR
6=i
M6,5/i
M6,1である6つのパルス内比を含む。
【0115】
第2出力信号の電流の測定値に基づくパルス内比は、スキームRG
N=i
GN,nth/i
GN,1stに従って指定される。ここで、RG
Nは、第2出力信号のパルスNに対するパルス内パルス比を表し、残りの変数は、第1出力信号のパルス内比について上に列挙されたものと同様の値を表す。再び
図7を参照すると、第2出力信号は、第2出力信号の4つのパルスに対して、RG
1=i
G1,4/i
G1,1、RG
2=i
G2,4/i
G2,1、RG
3=i
G3,4/i
G3,1、及びRG
4=i
G4,4/i
G4,1の4つのパルス内比を含む。
【0116】
パルス間比は、同じ信号であるが信号内の異なるパルスに対応する電流の測定値に基づく比率である。例えば、第1出力信号の電流の測定値に基づくパルス間比は、スキームR
NO=i
MN,nth/i
MO,nthに従って指定される。ここで、R
NOは、第1のパルスのパルスOに対するパルスNのパルス間比を表す。そして、nthはパルスNとパルスOの両方に対する最後の電流である。
図7に示すように、第1出力信号は、
【数1】
のパルス間比を含む。別のパルス間比のタイプは、パルスの最初の電流と別のパルスの最後の電流との比、及びパルスの最後の電流と別のパルスの最初の電流との比などを含みうる。これらのパルス間比のタイプの例は、R’
21=i
M2,1/i
M1,4、及びR”
21=i
M2,4/i
M1,1である。
【0117】
第2出力信号の電流の測定値に基づくパルス間比は、スキームRG
NO=i
GN,nth/i
GO,nthに従って指定される。ここで、RG
NOは、第2出力信号のパルスOに対するパルスNのパルス間比を表し、そして残りの変数は、第1出力信号のパルス内比について上に挙げた値を表す。
図7を参照して、第2出力信号は、
【数2】
のパルス間比を含む。
【0118】
第1及び第2出力信号に基づく比は、組み合わされたパルス比と見なされる。 第1出力信号と第2出力信号との電流の測定値に基づく組み合わされたパルス比は、スキームM
NG
O=i
MN,nth/i
GN,nthに従って指定される。ここで、M
Nは第1出力信号のパルスN、G
Nは第2出力信号のパルスのパルスOであり、そして、nthはパルスN又はOについて最後の電流の測定値を表す。このようにして、例えば、組み合わされたパルスは、
【数3】
を含むことになる。
【0119】
第2出力信号に対するパルス内比及びパルス間比、並びに第1及び第2出力信号に対する組み合わされたパルスの比のうちの1つ以上は、検体の濃度をより正確かつ精度よく測定するように出力信号と検体の濃度との間の相関を調整する補償方程式に使用することができる。第2出力信号又は第1及び第2出力信号に基づいて計算された様々な比は、第1出力信号単独からの誤差パラメータによって責任を負わされない誤差に責任を負う1つ以上の補償方程式を生成するために多変数回帰に入力されうる。
【0120】
図2A及び
図7は、第1及び第2入力信号及び対応する第1及び第2出力信号の企図された多くのプロットの内の1つのみを示す。第1及び第2入力信号及び結果として得られる第1及び第2出力信号の特性は、上記されたいずれかの変化に従って変化させうる。第1及び第2入力信号及び対応する第1及び第2出力信号の追加の例は、以下に示され説明される。
【0121】
具体的には、
図8A~8Dは、本開示の追加の態様による電気化学バイオセンサシステム(例えば、
図1のシステム100)のための組み合わされた第1及び第2入力信号の様々な配置を示すグラフである。
図8A~
図8Dはすべて、ラベルM、G、及びHctによって表される3つの入力信号を示している。第1入力信号Mは、作用電極114と対向電極116との間に印加される定電位のパルスを含み、第2入力信号Gは、裸電極118と対向電極116との間の定電位のパルスを含み、そして第3入力信号は単一のヘマトクリットパルスである。
【0122】
図8Aにおいて、第1入力信号Mは6個のパルスを有し、第2入力信号Gは4個のパルスを有し、第3入力信号は単一のHctパルスを有する。
図8Aの組み合わされた複数の入力信号は、3秒以内印加される。
図8Bにおいて、第1入力信号Mは6個のパルスを有し、第2入力信号Gは4個のパルスを有し、そして第3入力信号は単一のHctパルスを有する。
図8Bの組み合わされた複数の入力信号は、3.2秒以内印加される。
図8Cにおいて、第1入力信号Mは6個のパルスを有し、第2入力信号Gは5個のパルスを有し、第3入力信号は単一のHctパルスを有する。
図8Cの組み合わされた複数の入力信号は、3.3秒以内印加される。
図8Dにおいて、第1入力信号Mは5個のパルスを有し、第2入力信号Gは4個のパルスを有し、第3入力信号は単一のHctパルスを有する。
図8Dの組み合わされた複数の入力信号は、3.2秒以内印加される。
【0123】
第1入力信号は一般に、第1及び第2のパルス(左から右へ)について0.5V及び0.35Vの電位を含み、0.25Vの後続のパルスが後に続く。第2入力信号は、一般に0.25V、0.35V、0.5V、及び1.0Vのパルス(左から右へ)を含む。第3入力信号の終了パルスは、約2.5Vである。
【0124】
図9A~
図9Dは、本開示の追加の態様による
図8A~
図8Dの組み合わされた第1及び第2入力信号並びに第3入力信号から生じた出力信号を示すグラフである。
図8A~
図8Dを参照する。具体的には、
図9A~9Dは
図8A~
図8Dの入力信号からの第1、第2及び第3出力信号をそれぞれ示しており、室温で43%Hctでの59mg/dLのグルコースを有するWB試料に印加された場合である。第1入力信号に対応する第1出力信号はMによって表され、第2入力信号に対応する第2出力信号はGによって表され、第3入力信号に対応する第3出力信号はHctによって表される。しかし、
図8Cの第2入力信号の0.15Vでの第1のパルスに対応する、
図9Cの第2出力信号Gの負電流に対しては、0.25V以上での第1及び第2入力信号のパルスに対応する電流の測定値は、すべて正であった。これはWB試料の電気化学的環境を示している。
【0125】
図10A~10Dは、それぞれ、本開示の態様による、
図8A~
図8Dの第1入力信号の異なるパルスに対する基準の相関を示す。
図10A及び10Bに示されるように、ここでは、第1入力信号は6つのパルスを含み、1.7秒という短い期間内の最後の3つのパルスは実質的に同一の線形応答を示す。
図10Cにおける1.3秒という短い期間内の最後の4つのパルスは、実質的に同一の直線応答を示す。最後に、
図10Dは、5つの内の最後の2つのパルスからの応答が、最後の2つのパルスよりも低い前のパルスからの応答と同一であることを示している。これらの相関は、2.0秒未満の分析時間が実現可能であることを示している。
【0126】
図10Eは、3秒及び6.6秒の電位系列についての、生の信号の相関とベースライン・グルコース濃度との比較を示している。3秒及び6.6秒の電位系列の両者は、第1電極に6つの主パルスを有し、その終点はそれぞれ3秒及び6.6秒であった。
図10Eから分かるように、6.6秒の相関からの生信号は、700mg/dLでレベル低下が始まり、より高いグルコース濃度でレベルの低下が続くが、3秒の相関からの生信号は900mg/dLまで線形であり、より高いグルコース濃度でだけ僅かに低下する。
【0127】
図10A~10Eの相関のプロットは、2.0秒以下の時間から取られた信号が濃度とともに直線的であり検体濃度を示すために使用できることを示している。G信号のより良い使用のために、3つ以上のパルスを有するさらにコンパクトなパルス列が、実装されうる。そうでなければ、
図8A~
図8Dの現在の列の場合には、G信号は、約3秒で終了する時間を有する、信号を指示する先行するM個のいずれかと組み合わせて使用される。
【0128】
同様の又は改善された正確さ及び精度で実現しうる2.0秒未満の分析時間により、より高い線形性が達成されうる。より高い線形性で、検体のより高い濃度が、検体の濃度を決定するのに用いられる試薬の、より短時間にわたり生じる消費量に基づいて決定されうる。このようにして、より多くの試薬が、より高い濃度を決定するために残る。グルコースの場合に、本開示のバイオセンサシステム、特に組み合わされた第1及び第2入力信号を実装するバイオセンサシステムに基づいて、900、1000、1100、又は1200mg/dLと同じグルコースレベルが決定されうる。
【0129】
バイオセンサに関する従来の知恵は、通常の操作(グルコースの範囲、温度、及びヘマトクリット範囲など)の下での化学反応及び電気化学反応を支援するために過剰な試薬容量を有することである。分析時間が著しく短くなると、例えば50%減少すると、試薬の過剰容量は、より高い検体濃度での化学反応をサポートするために利用可能である。さらに、従来の知恵は、バイオセンサ分析過程を終了させるための化学的及び/又は電気化学的反応を安定した状態に到達させることである。試薬配合物は、血糖モニター装置及び医療装置システムのためのバイオセンシングプロセスにおいて重要な役割を果たし続けている一方で、複雑な誤差補償方法/アルゴリズムと結合された最近の信号励起/生成における進歩は、反応が完了するのを待つのではなく、バイオセンサがこれまでよりはるかに短い時間でシステムの信号のサンプリングを行うことを可能にする。本発明はさらに、誤差補償を増大させるために第2電極から信号を生成する方法を開示し、より正確な検体濃度を同等以上の精度で求めることを可能にする。
【0130】
上記の第1及び第2入力信号の全ては、作用電極114及び対向電極116を介して、又は裸電極118及び対向電極116を介して、試料に印加された一定電位の励起若しくはパルスを含む。これらの励起又はパルスは、アンペロメトリック(電流測定の)励起又はパルスとして記載される。しかし、第1及び/又は第2入力信号の励起若しくはパルスは、定電位の、例えばボルタンメトリック(電圧測定の)励起若しくはパルス以外のパルスであってもよい。いくつかの態様において、第1及び/又は第2入力信号の1つ以上のパルスは、代わりに、線形スキャン(走査)パルス、周期的な電圧測定パルス、非周期的な電圧測定パルスなどでありうる。
【0131】
「周期的な」パルス若しくは励起は、線形順方向走査及び線形逆方向走査を組み合わせた電圧測定の励起を指し、走査範囲はレドックス対の酸化及び還元ピークを含む。例えば、電位を-0.5Vから+0.5Vへ、そして-0.5Vへと周期的に変化させることは、グルコースバイオセンサ系で使用されるフェリシアン化物/フェロシアン化物レドックス対の周期的な走査の一例であり、酸化ピーク及び還元ピークの両方が走査範囲に含まれる。順方向走査と逆方向走査の両方は、電位の一連の増分変化によって近似されうる。このようにして、周期的な変化を近似する電位の変化を印加することは、周期的な走査とみなしうる。
【0132】
「非周期的な」パルス若しくは励起は、別の電流ピークよりも順方向又は逆方向電流ピークの1つを越えて含む電圧測定の励起の1態様を指す。例えば、順方向及び逆方向の線形走査を含む走査は、非周期的なスキャンの1例であり、順方向走査は、逆方向走査が停止する電圧とは異なる電圧で開始され、例えば-0.5Vから+0.5Vまで上がり、そして+0.25Vまで戻る。別の例では、非周期的なスキャンは、レドックス対の正式電位Eo'から最大で+20、+10、又は+5mV離れたところでスキャンが開始されるとき、実質的に同じ電圧で開始及び終了することができる。別の態様において、非周期的な走査若しくはパルスは、レドックス対の酸化出力電流ピーク及び還元出力電流ピークを実質的に排除する順方向及び逆方向の線形走査を含む電圧測定の励起を指す。例えば、励起は、レドックス対の拡散制限条件(DLC:diffusion limited condition)領域内で開始、逆転、終了することができ、その結果、対の酸化及び還元出力電流ピークを排除しうる。順方向走査と逆方向走査の両方は、電圧の一連の漸増変化によって近似することができる。したがって、非周期的な変化を近似する電位の変化を印加することは、非周期的な走査とみなすことができる。
【0133】
図11Aは、本開示の追加の態様による、電気化学バイオセンサシステム(例えば、
図1のシステム100)のための、電流測定及び電圧測定のパルスを伴う、組み合わされた複数の入力信号を示すグラフである。より具体的には、
図11Aは、ラベルM及びGによって表される2つの入力信号を示す。第1入力信号Mは、1つのパルスが非周期的な電圧測定パルスである以外は、
図1のシステム100に関する作用電極114及び対向電極116の間に印加された定電位のパルスを含む。合計で、第1入力信号Mは6つのパルスを含み、これらのパルスはグラフ上で左から右に現れる順序で、M
1、M
2、M
3、M
4、M
5、及びM
6と呼ばれる。図示されたように、パルスM
1は0.5Vの電位を有し、パルスM
2は0.35Vの電位を有し、パルスM
4~M
6は0.25Vの電位を有する。パルスM
3は、0.25Vで始まり、約0.55Vまで直線的に増加し、約0.25Vまで直線的に降下する、2.4V/秒の走査速度を有する非サイクリックボルタンメトリーパルスである。
【0134】
第2入力信号Gは、1つのパルスが線形走査パルスであることを除いて、また一定電圧のパルスを含むが、パルスは裸電極118と対向電極116との間に印加される。第2入力信号Gは、合計で5つのパルスG1、G2、G3、G4、及びG5を含む。図示されているように、パルスG1は0.25Vの電位を有し、パルスG2は0.35Vの電位を有し、パルスG4は0.5Vの電位を有し、パルスG5は1.0Vの電位を有する。パルスG3は、約0.15Vで始まり約0.65Vまで直線的に増加する、約2V/秒の走査速度を有する線形走査パルスである。
【0135】
図11Bは、本開示の態様による
図11Aの組み合わされた第1及び第2入力信号に対応する組み合わされた第1及び第2出力信号を示すグラフである。グラフは、20%Hct及び室温での300mg/dLのグルコースのWB試料に印加された第1及び第2入力信号への応答状態である。第1及び第2入力信号の各パルスに対応する各トレースは、1つ以上の出力電流、例えば、1つの電流、2つの電流、3つの電流、4つの電流、5つの電流、6つの電流、7つの電流、8つの電流、9つの電流、10の電流などでありうる。
【0136】
図11Cは、本開示の態様によるボルタモグラムとしてプロットされた、第1入力信号の非周期的な電圧測定パルスM
3に対応する出力電流を示すグラフである。
図11Cに示されたデータの取得に用いられた電子サンプリング速度は、毎秒40データ点である。図示されているように、作用電極114と対向電極116との間に印加された電圧が、0.25Vから0.55Vの間で変化し、そして0.25Vに戻るときに、10の電流が測定された。
【0137】
図11Dは、本開示の態様によるボルタモグラムとしてプロットされた、第2入力信号の線形走査パルスG
3に対応する電流を示すグラフである。
図11Cに示されたデータの取得に用いられた電子サンプリング速度は、毎秒40データ点である。図示されているように、裸電極118と対向電極116との間に印加される電圧が、0.15Vと0.65Vとの間で直線的に走査されるにつれて、10個の電流が測定された。
【0138】
図12Aは、本開示の追加の態様による電気化学バイオセンサシステム(例えば、
図1のシステム100)のための電流測定及び電圧測定のパルスを有する、組み合わされた複数の入力信号を示す別のグラフである。より具体的には、
図12Aは、ラベルM及びGによって表される2つの入力信号を示す。第1入力信号Mは、
図11Aの第1入力信号Mと同一である。第2入力信号Gは、線形走査パルスG
3が約-0.05Vで始まり約-0.95Vで終了する3.0V/秒の走査速度を有する点を除いて、
図11Aの第2入力信号Gと同一である。
【0139】
図12Bは、本開示の態様による、
図12Aの組み合わされた第1及び第2入力信号に対応する組み合わされた第1及び第2出力信号を示すグラフである。
図12Aに示されている。このグラフは、42%Hct及び室温でグルコース500mg/dLのWB試料に印加された第1及び第2入力信号への応答状態である。第1及び第2入力信号の各パルスに対応する各トレースは、1つ以上の出力電流、例えば、1つの電流、2つの電流、3つの電流、4つの電流、5つの電流、6つの電流、7つの電流、8つの電流、9つの電流、10の電流などでありうる。
【0140】
図12Cは、本開示の態様によるボルタモグラムの形態における、
図12Aの第1入力信号の非周期的な電圧測定パルスM
3に対応する電流を示すグラフである。
図12Aに示されたデータの取得に用いられるデータサンプリング速度は、毎秒500データ点であった。このデータサンプリングレートによれば、より多くのデータポイントが同じ時間に取得され、ほぼ連続した出力電流トレースを提供される。しかし、トレースは、実線であり、
図12Aの第1入力信号のパルスM
3の電圧が作用電極114と対向電極116との間に0.25V~0.55Vの間で印加され、0.25Vに戻されるにつれて、パルスM
3に対応して任意の数の電流が取られうることを示している。
【0141】
図12Dは、本開示の態様によるボルタモグラムの形態の
図12Aの第2入力信号の線形走査パルスG
3に対応する電流を示すグラフである。
図12Cと同様に、
図12Dに示されたデータの取得に用いられるデータサンプリング速度は、毎秒500データ点であった。このデータサンプリング速度によれば、より多くのデータ点が同じ時間に取得され、ほぼ連続した出力電流トレースを提供する。しかし、トレースは、実線であり、
図12Aの第2入力信号のパルスG
3の電圧が裸電極118と対向電極116との間に印加され、-0.05Vと-0.95Vとの間で直線的に走査されるにつれて、パルスG
3に対応して任意の数の電流が取られうることを示している。
【0142】
第1及び第2の組み合わされた出力信号に基づいて、上述の1つ以上の誤差パラメータは生成され(例えば、計算、コンピュータ計算などにより)、そして試料中の検体の濃度を決定するための誤差補償方程式で用いられうる。第2出力信号に基づく誤差パラメータは、標的検体の他に試料中の種に対応するが、従来の方法よりもより正確で、精度があり、迅速な、検体濃度の決定を可能にする、試料の電気化学的窓に関する追加の情報を提供する。さらに、検体、メディエーター、又は検体に関連する他の測定可能な種に関連する酸化還元電位よりも低い又は高い酸化還元電位を探索する第2入力信号にもかかわらず、対応する第2出力信号は、検体濃度決定に役立つ情報を依然として提供する。
【0143】
図13は、本開示の態様による、組み合わされた複数の入力信号に基づいて検体の濃度を決定するための方法1300のフローチャートである。方法1300は、バイオセンサシステム(例えば、上述したバイオセンサシステム100)によって実行されうる。特定の態様において、方法1300を実行するバイオセンサシステムは、血液試料(例えばWB試料)中のグルコース濃度を決定するための装置であってよく、そして分析の焦点である標的検体はグルコースでありうる。
【0144】
ステップ1302において、第1及び第2の組み合わされた複数の入力信号が、上記の概念に従って試料に印加される。第1入力信号は、試薬を有する第1電極を介して試料に印加され、第2入力信号は、試薬を欠く第2電極を介して試料に印加される。いくつかの態様において、第2電極は、標的検体の酸化を促進する如何なる試薬をも欠いている。しかし、いくつかの態様においては、第2電極は、検体の酸化を促進しないが試料中の他の種の酸化を促進することができる1つ以上の試薬を含みうる。試料中の検体としてグルコースの場合、第1電極の試薬は酸化還元酵素を含みうる。具体的には、試薬は、グルコースオキシダーゼ酵素、グルコースデヒドロゲナーゼ酵素、又はそれらの組み合わせでありうる。試料は、グルコースを含むWB試料であってもよい。代わりに、試料はWB試料の派生物であってもよい。
【0145】
組み合わされた第1及び第2入力信号の印加は、少なくとも2つの励起若しくはパルス及び第1電極の少なくとも1つの緩和を有する第1入力信号を第1電極を介して試料に印加すること、及び、少なくとも1つの励起若しくはパルス及び第2電極の少なくとも1つの緩和を有する第2入力信号を第2の電極を介して試料に印加することを含む。第1入力信号の少なくとも2つの励起(若しくはパルス)は、上述のような任意のタイプの励起、例えば、定電圧パルス、線形走査パルス、周期的な電圧測定パルス、非周期的な電圧測定パルスなど、及び/又はそれらの組み合わせでありうる。第2入力信号の少なくとも1の励起は、上述のような任意のタイプの励起、例えば、定電圧パルス、線形走査パルス、周期的な電圧測定パルス、非周期的な電圧測定パルスなど、及び/又はそれらの組み合わせでありうる。第1及び第2入力信号は、第1入力信号の励起が第2入力信号の励起によって互いに同時ではなくかつ互いに分離されるように組み合わされて印加される。第1及び第2電極は、それぞれの電極の緩和中は電気的に開状態でありうる。代わりに、特定の電極の緩和中に、開状態でないように、そうでなければ、試料の励起の間、第1又は第2電極の他方に影響を及ぼさないか又は決定的には影響を及ぼさないように、最小電位が第1又は第2電極に印加されうる。
【0146】
第1入力信号及び第2入力信号のそれぞれの少なくとも2つの励起及び少なくとも1つの励起として説明されたように、いくつかの態様において、第1入力信号及び第2入力信号は、より多くの励起を有しうる。例えば、第1入力信号は、試料内の検体の濃度の決定の間、試料に印加される3、4、5、6、7、8、9、10又はそれ以上の励起若しくはパルスを有しうる。同様に、第2入力信号は、試料内の検体の濃度の決定の間、試料に印加される2、3、4、5、6、7、8、9、10又はそれ以上の励起若しくはパルスを有することができ、励起の数は、第1入力信号の励起の数と同じであっても異なっていてもよい。
【0147】
第1入力信号の全ての励起は、同じ強度又は振幅、例えば、同じ電圧又は電圧範囲のものでありうる。いくつかの態様において、第1入力信号の全ての励起は、分析のために試料を調製する初期の励起数の後では、同じ強度でありうる。例えば、第1入力信号の第1励起は一定の0.5Vの励起であり、第1入力信号の第2励起は一定の0.35Vの励起であり、第1入力信号の残りの励起は一定の0.25Vの励起でありうる。しかし、励起は、上述したように、様々な別の励起のタイプ及び強度でありうる。
【0148】
第2入力信号の全ての励起は、同じ強度の、増加する強度の、減少する強度の、又は減少し増加する強度のものでありうる。1例として、第2入力信号の第1の励起は、一定の0.25Vの励起、又は検体検出のための後の作用電極パルスのパルス電圧に等しい電圧でありうる。第2入力信号の第2の励起は、一定の0.35Vの励起、又は第1のパルスよりも50~200mV程度高い電圧でありうる。第2入力信号の第3の励起は、一定の0.5Vの励起、又は第1のパルスよりも200~400mV程度高い電圧でありうる。第2入力信号の第4の励起は、一定の1.0Vの励起、又は第1のパルスよりも500~1000mV程度高い電圧、又は1000~1800mVのような第1のパルスからさらに遠く離れた電圧であってもよい。上記の電圧に従って、第2電極パルスは、試料及び試料プロファイリング中の干渉種及び/又は内在種の存在のために酸化還元電位窓の近視野及び遠視野を探索する。これらの干渉種及び/又は内在種は、作用電極パルスの出力信号に直接的又は間接的な影響を有しうる。裸電極パルスの出力信号は、誤差パラメータ及び誤差検出によって誤差補償を増大させる。しかし、励起は、上述したように、様々な励起の別のタイプ及び強度でありうる。
【0149】
第1及び第2入力信号の励起若しくはパルスの幅又は持続時間は、同一入力信号内の他の励起及び別の入力信号内の他の励起の両方に対して、一定であっても変化してもよい。さらに、いくつかの態様において、第1入力信号の2つの隣接する励起の間に、第2入力信号の2つ以上の励起が生じうる。
【0150】
いくつかの態様において、追加の又は第3入力信号が、別個の入力信号として又は第2入力信号の一部分として、試料に印加されうる。追加の入力信号は、WBヘマトクリットレベルを感知するための添加された試薬を有しない第2電極への大振幅の励起パルスでありうる。さらに、第1及び第2入力信号の他の特性は、上述のように変化しうる。
【0151】
ステップ1304で、第1入力信号に対応する第1出力信号と第2入力信号に対応する第2出力信号とが、異なる時刻に、又はそれぞれの第1及び第2入力信号が印加されるときに測定される。第1及び第2出力信号は、それぞれ第1及び第2入力信号に対する応答である。第1及び第2出力信号は、それぞれ第1及び第2入力信号の励起に対応する電流の測定値を含む。特に、第1出力信号は、第1入力信号が1つ以上の試薬を有する試料に印加されるところの第1電極に基づいて、試料中の検体の濃度に直接応答する。したがって、第1出力信号は、検体の酸化還元反応に直接的又は間接的に(例えば、検体濃度に関連するメディエーター又は他のタイプの測定可能な種を介して)応答する。対照的に、第2出力信号は、第1電極及び第1入力信号によって標的とされる試料中の同じ検体の濃度に対応せず、第2入力信号が試料(第1電極若しくは作用電極の1つ以上の試薬を有しない)に印加されるところの第2電極若しくは裸電極に基づいて、応答する。
【0152】
第1及び第2入力信号の各励起に対して、第1及び第2出力信号を生成する際に、1つ以上の電流が測定されうる。例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10又はそれ以上の出力電流が、第1及び第2入力信号のそれぞれの励起に対応して測定されうる。測定された出力電流の数は、第1及び第2入力信号の各励起に対して同じであっても異なっていてもよい。
【0153】
ヘマトクリットに関する第3入力信号への応答において、1つ以上の電流が測定されうる。これらの電流は、第3出力信号又は第2出力信号の一部分と考えることができる。
【0154】
ステップ1306で、検体の濃度が、少なくとも第1出力信号及び第2出力信号に基づいて決定される。第1及び第2出力信号は、検体の濃度を決定するために、基準の相関及び誤差パラメータ(誤差の相関及び/又は誤差の検出に関連する)に関連する標的検体濃度に関して分析される。1つ以上の誤差パラメータが、第1出力信号、第2出力信号、第1出力信号と比較された第2出力信号、又はそれらの組み合わせに基づいて生成される。誤差パラメータは、第1出力信号の、第2出力信号の、又は第2出力信号と比較された第1出力信号の電流の比を包含しうる。1つ以上の誤差パラメータは、第1若しくは第2出力信号の単一パルスに関連する電流に基づくパルス内比率、第1若しくは第2出力信号の2つの異なるパルスに関連する電流に基づくパルス間比率、又は2つのパルス(1つのパルスは第1出力信号からのものであり、1つのパルスは第2出力信号からのものである)に関連する電流に基づく組み合わせ比率を含みうる。
【0155】
いくつかの態様において、1つ以上の誤差パラメータは、ヘマトクリットレベルに関する第3出力信号に対応して測定される電流に基づきうる。これらの誤差パラメータは、ヘマトクリットレベルについての追加の出力信号からの電流単独、又は第1及び/又は第2出力信号からの1つ以上の電流の組み合わせを含む比率に基づきうる。
【0156】
試料中の検体の濃度を決定するためのいくつかの態様において、試薬を有する第1電極からの第1出力信号による検体に対する基準の相関が、確立されうる。ΔS値は、バイオセンサシステムのメモリに記憶され且つ工場較正及び補償機能の回帰の結果として生成される1つ以上の所定の補償関数から決定されうる。第1及び/又は第2出力信号から計算された誤差パラメータは、所定の補償関数に入力することができる。誤差パラメータは、傾きの偏差ΔS値、又はそれらの組み合わせを介して基準の相関を調整することによって、1つ以上の誤差要因から生じるバイオセンサシステム誤差を補償することによって正確な検体濃度を決定することに寄与する。組み合わされた第1及び第2入力信号が含まれない従来のバイオセンサシステムと比較して、第2出力信号、第1出力信号に対する第2出力信号(例えば組み合わされた誤差パラメータの場合)、又はそれらの組み合わせに対して生成された誤差パラメータを有することに基づいて、本開示による利点は達成されうる。
【0157】
第2電極からの出力信号は、補償方程式に入力される追加の誤差パラメータを提供する。これらの誤差パラメータは、個々の種に特異的でなくてもよいが、WB試料からの検体決定過程中に存在しうる干渉種の種類を分類的に表すことができる。WB試料は、異なるレベルの干渉種を有する異なるエンドユーザによって変動するので、検体のための標的試薬を有する第1電極単独では、標的検体とは独立した干渉情報を提供することができない。したがって、干渉種と関連する誤差は、第1電極出力信号によって対処することができず、添加された試薬を欠く又は標的検体に対する試薬を欠く第2電極が干渉情報を提供するであろう。第2出力信号を有する第2電極の別の利点の中で、いくつかの利点には、従来のバイオセンサシステムと同じか又はより改善さえされた精度で、より短い分析時間を含まれる。例えばいくつかの態様において、利点は、ここで記載されたような組み合わされた第1及び第2入力信号が含まれない従来のバイオセンサシステムと比較して、精度で5%、10%、20%、30%、又は40%の改善を伴う約3.5秒の分析時間を含む。いくつかの態様において、利点は、ここで記載されたような組み合わされた第1及び第2入力信号が含まれない従来のバイオセンサシステムと比較して、精度で5%、10%、20%、30%、又は40%の改善を伴う約3.2秒の分析時間を含む。いくつかの態様において、利点は、ここで記載されたような組み合わされた第1及び第2入力信号が含まれない従来のバイオセンサシステムと比較して、精度で5%、10%、20%、30%、又は40%の改善を伴う約3.0秒の分析時間を含む。いくつかの態様において、利点は、ここで記載されたような組み合わされた第1及び第2入力信号が含まれない従来のバイオセンサシステムと比較して、精度で5%、10%、20%、30%、又は40%の改善を伴う約2.2秒の分析時間を含む。いくつかの態様において、利点は、同じか又はより短い分析時間で、例えば3.5秒、3.2秒、3.0秒、2.8秒、2.6秒、2.4秒、2.2秒、又はそれ以下で、決定された検体濃度の%-偏りが±10%、±5%、±4%、±3%、±2%、±1%、又はそれより良好な検体濃度の%-偏りを含む。
【0158】
以下の表2は、G-項(又は第2の作用電極に基づいて生成された項)を有する補償方程式、及びG-項を欠く補償方程式による特定のドナー研究に関する例示的な結果を示す。回帰に入力されるG項を有する場合と有しない場合の2つの例示的な複合関数方程式が、以下に示される(ベースライン・グルコース、温度、及びヘマトクリットレベルの変化を有する実験室データから導かれる)。これら2つの補償関数は生のドナー研究データに適用された。補償は、Gcomp=(1-Intcal)/(Scal*(1+ΔS/S))の形をとる。偏り/%-偏り値は、YSI<100mg/dLについては(Gcomp-YSI)により、そしてYSI>100mg/dLについては100%*(Gcomp-YSI)/YSIにより計算された。さらに、補償は、予測関数(複合インデックス関数)ΔS/S=f(Rx,....)により基準の相関の傾きを調整することにより達成される。これは、多変数回帰の結果として予測関数からの計算された正規化傾きの偏差ΔS/Sである。平均値及び標準偏差(SD:standard deviation)値は、6つのロットからの自己試験の内部ドナー試験における600データ点(各サンプルの二重データ)の合計から計算された。
【0159】
表2から、補償結果について、補償関数においてG-項を有するSD値は、約0.2SD単位よりも小さいか、又は、システム誤差が、補償関数に入力されるG-項なしの場合よりも多くの電力により低減されることが分かりうる。これは、±5%の精度(G-項については±5%以内に68.6%に対してG-項なしについては±5%以内に60.5%)に対して10%を超える改善をもたらす。±10%レベルの精度に対しては、G-項を用いた補正関数に対するG-項のある場合の方が、2パーセントの改善がある(G-項のある場合について±10%以内で95.4%、G-項のない場合について±10%以内で、93.4%)。これらの結果は、連続駆動におけるGパルス信号の重要性を強調し、BGMシステムに対する精度を向上させる。
【表2】
G-項の有る補償複合インデックス関数のための例示的な方程式は、
【数4】
であり、そして
G-項のない補償複合関数のための例示的な方程式は、
【数5】
であった。
ここで、G=G
raw=(I-Int)/Scalであり、ここで、Iは電流であり、Intは計算では省略されている。Scalはシステム較正傾きであり、Hは2.5VのHctパルスからの終了電流である。G、T、及びHは、それぞれ生グルコース値、温度、及びヘマトクリット信号を表す。しかし、上記の式は、G-項が存在する場合とG-項が存在しない場合とを比較するための補償複合関数の単なる例示であり、本開示はこれらの2つの特定の式に限定されることを意図しない。
【0160】
試料中の検体の濃度を計算する際の補償式を調整するための誤差パラメータを提供することに加えて、第2入力信号は、単独で又は第1入力信号と組み合わされて、バイオセンサシステム、例えばバイオセンサシステム100、のための別の機能及び/又は情報を提供しうる。追加の機能は、大部分のグルコースの測定が適用されるWB試料の試料タイプを識別すること、又は他の試料タイプを区別することを含みうる。特に、バイオセンサシステムと共に使用される対照基準溶液の自動検出は非常に重要である。別の追加機能には、標的検体、試料プロファイリング、又はそれらの組み合わせとは無関係な試料中の検出窓内の酸化可能な種の測定及び/又は識別が含まれうる。
【0161】
確立されたバイオセンサシステム、例えば、Ascensia Diabetes Care社(ニュージャージー州パーシッパニー)によるCONTOUR(商標)NEXT、における対照基準溶液は、システム機能の即時検証を提供することによって重要である。過去20年間で、医療用の革新的な溶液は、WB試料に対する対照基準の自動認識がデータ処理及び分析(例えばデータ平均化)のための医療機器システムの不可欠な部分となったところまで進んでいる。
【0162】
さらに、インスリンポンプに接続している血糖モニター(BGM:blood glucose monitor)システムにおいて、対照基準の測定値は、WBグルコース測定値として扱われないように(それはそうでなければポンプにより治療上の決定に影響を与える)、確実に識別されなければならない。自動検出のさらに別の例において、エンドユーザが誤って異なる対照基準溶液を使用した場合に、あるシステムに属する対照基準溶液を別のシステムの対照基準溶液に対して検出する必要がある。
【0163】
対照基準溶液に対処する過去の方法は、いくつかの酸化可能な種を、バイオセンサのメディエーターの酸化のための電位よりも高い電位で対照基準中に含むことであった。加えられた種は対照基準マーカと呼ばれる。1つの電位は検体濃度決定のための低電位であり、もう1つは添加されたマーカを検出するための高電位である2つの電位の方法を用いて、これら2つの電位での電流からの指標値が、試料のタイプ、即ち対照基準とWB試料とを区別するために1つ以上の閾値と比較される。しかし、この方法論には限界があり、その1つは対照基準マーカを追加する必要があることである。本開示の概念に基づいて、試料の種類を区別するために、特に第2入力信号のパルス又は励起に基づいてWB試料と対照基準を区別するために、複数のパラメータを使用することができる。
【0164】
WB試料と対照基準とを区別するための基礎となりうる1つのパラメータは、第1のパルスが裸電極118と対向電極116の間で0.25Vである場合の、第2入力信号の第1の(励起)パルスに対する応答における第1の出力電流(即ち、iG1,1)である。WB試料(例えば、低濃度から高濃度の範囲のグルコース、5~45℃の範囲の温度、及び0~70%の範囲のヘマトクリット値)に対する電流iG1,1は、0.25Vでの第2入力信号パルスに対して応答して正である。対照基準的に、第2入力信号パルスに対する応答における対照基準用の電流iG1,1は、一般に負である。したがって、ゼロに近い閾値は、区別のために使用され得、また電流iG1,1の極性切り替えは、対照基準とWB試料とを区別するために使用されうる。
【0165】
図14Aは、本開示の態様による、様々な対照基準に印加された
図8Dの第2入力信号の第1から第3のパルスに対して応答する電流の測定値を示すグラフである。種々の対照基準は、低い(グルコース約45mg/dLを示す)、正常の(約110mg/dLグルコースを示す)、又は高い(約300mg/dLを示す)グルコースレベルを有し、そして対照基準の3つの異なるロット(ロットA、B、又はCによって指示された)からのものである。
図14Bは、本開示の態様による、様々なWB試料に印加された
図8Dの第2入力信号の第1パルスから第3パルスに対応して測定された電流を示すグラフである。種々のWB試料は、15%、43%、又は65%の様々なヘマトクリットレベル、及び50、90、250、又は500mg/dLの様々なグルコース濃度を有する。
【0166】
図14Aに示されたように、第2入力信号の第1のパルス、具体的には、裸電極118と対向電極116との間に印加された0.25V、に対応して測定された電流は負である。対照的に、
図14Bに示されたように、様々なWB試料に印加された同じパルスに対する応答において測定された電流は正である。第2入力信号の0.25Vの第1のパルスに対する応答における対照基準についての結果として生じる負の電流と、同じパルスに対する応答におけるWB試料についての結果として生じる正の電流とに基づいて、ゼロに近い閾値又は測定された電流の極性スイッチは、試料が対照基準であるかWB試料であるかを示しうる。
図14Cは、本開示の態様による、
図14Aの対照基準へ印加された
図8Dの第3のHct入力信号に加えて、第2入力信号の第3及び第4のパルスに対応する電流の測定値を示すグラフである。
図14Dは、本開示の態様による、
図14Bの様々なWB試料に印加された
図8Dの第3のHct入力信号に加えて第2入力信号の第3及び第4のパルスに対応する電流の測定値を示すグラフである。
【0167】
0.2Vより低い電位で、WB試料からの電流iG1,1値もまた負になる。0.3Vで、対照基準のiG1,1値は正にまで上昇しうる。対照基準のpHは6.5~7.0の範囲で負の値を示す。はるかに高いpH値(例えば7.5以上)で、対照基準のiG1,1値は正になる。負のiG1,1電流は、対照基準が0.25Vの還元電位でわずかに平衡状態にあり、一方WB試料は0.25Vのわずかの酸化電位で平衡にされることを示している。この挙動は、対照基準からWB試料への極性切り替えを示しているように見えるが、この挙動はゼロ付近の閾値電流以上のことを示している。試料の種類を分離するこの閾値は、操作条件に依存して変わりうる。他の閾値電流値が、他の因子、例えば、操作電位、対照基準pH、及び緩衝液濃度に依存して可能でありうる。例えば、0.25Vでの動作電位は、対向電極でのMLBメディエーターのレドックス電位に関連している。フェリシアン化物がMLBよりも約150~200mV高いレドックス電位を有するメディエーターである場合、動作電位は閾値をほぼゼロに維持するために約0.05~0.1Vである必要がある。
【0168】
試料が対照基準であるか生体試料であるかを示す電流の極性に加えて又はその代わりに、第2入力信号の1つ以上のパルスに対応する電流の減衰特性を、単独で又は第1入力信号は、対照基準と生物学的試料とを区別するために使用されうる。
【0169】
図15は、ビス-トリス(bis-tris)に基づくWB試料及び対照基準溶液における1.0Vでの第2の入力パルスからの減衰の比較を示す。WB試料においては急峻な減衰があり、ビス-トリス緩衝液に基づく対照基準溶液においては浅い減衰があることが観察された。いくつかの態様によれば、減衰特性は、式(1)において以下のように定義されるパラメータDG4によって表すことができる。
DG4=i
G4-first/i
G4-ending-1 (1)
他の類似のパラメータ、例えばRG4(=i
G4,nth/i
G4,1st)は、対照基準とWB試料との間の類似の比較結果を用いて減衰特性を表すために用いられうる。
【0170】
バイオセンサシステムと共に使用される単一の正しい対照基準を選択するためにバイオセンサシステムのユーザに依存するのではなく、システム100は、複数の異なる対照基準を区別し、それに応じて動作することができる。ユーザが特定のバイオセンサシステムにとって好ましくない対照基準を誤って使用するというシナリオの下では、システムは、対照基準が好ましい対照基準ではないと判断し、その機能及び/又は動作を、検出された特定の対照基準のタイプに基づいて適切に修正することができる。いくつかの態様において、バイオセンサシステムは、バイオセンサシステムが別の定数を有するように実装されている場合に、別の較正定数に基づく対照基準測定値を提供することができる。あるいは、バイオセンサシステムは、使用されている対照基準が好ましい対照基準ではないことを示し、好ましい対照基準を使用するようにユーザへ指示を提供する。
【0171】
上記によれば、3つ以上の試料のタイプの間の、例えば2つ以上の所定のタイプの対照基準の間の、差別化が可能である。微分指数を計算するための電流を生成するために高電圧での添加された対照基準マーカの直接酸化に依存する従来の方法とは異なり、添加された対照基準マーカ有するか又は有しない対照基準中の作用電極の動作電位に等しいか又はそれに近い電位で測定された第2入力信号のパルスからの電流が、使用されうる。以下は、第2出力信号からの情報(単独で、又は第1入力信号からの情報と組み合わせて)がどのようにして異なる対照基準間を区別するのに用いられることができるのかの追加の例である。
【0172】
図8Dに示されたパルス系列は、0.25Vでの第2電極入力パルスに対する対照基準の応答を試験するための5つの異なる緩衝系に基づく対照基準に印加された。5つの緩衝系は、pH6.5で100mMのリン酸イオン、pH7で20mMのTrizm(商標)アセテート、pH7で20mMのADA、pH6.7で2mMのHEPES、及びpH6.5でのビス-トリスであった。結果は、
図16Aに、i
G1,1対DG4のプロットととして示されている。
【0173】
具体的には、
図16Aは、本開示の態様による、
図8Dの入力信号に基づく、WB試料及び対照基準のための、電流の測定値対パラメータDG4のグラフである。示されたように270のWB試料について、結果の電流i
G1,1の98.9%が正又は0であったが、5つの対照基準の電流i
G1,1のすべてがWB試料のいずれの値よりも負であった。WB試料の化学反応は複雑であるが、支配的に正のi
G1,1電流を与えた。対照的に、対照基準は、それらの製剤に関して一貫しており、一貫して陰性の電流を与えた。従って、5つの緩衝系は、対向電極でのセンサメディエーター酸化還元電位に対して0.25Vでのわずかに負の電流を与えた。5つの緩衝系のDG4値は、0.2~3.5まで変化したが、i
G1,1電流はすべて負であった。従って、WB試料の特徴的な挙動はわずかに酸化的な電流であり、且つ対照基準の特徴的な挙動は、WB試料を水溶液(ここで2つ以上の水溶液がWBと反対の挙動を示した)から区別されるための境界を形成する僅かな還元電流である。従って、i
G1,1の電流対パラメータDG4の比較、又はi
G1,1の電流をそれ自体との比較は、WB試料と対照基準とを区別することができる。閾値は、対照基準溶液をWB試料から分離するようにわずかに負に設定されうる。
【0174】
境界がほぼゼロであることが生じるという事実は、バイオセンサシステムの構築及び処方(例えば、作用電極114のための特定の試薬)及び裸電極と対向電極との間の0.25Vでの動作電位の条件下で、WB試料のわずかな酸化部分及び対照基準のわずかな還元部分を反映している。この特性の違いは、原則として、ゼロ付近の閾値に対する電流iG1,1の極性切り替えを表し、第2入力信号の0.25Vパルスに対する応答における第2出力信号の第1の電流に基づいてWB試料と対照基準とを区別を提供する。0.2V以下で、WB試料電流iG1,1は負にシフトさせられた。0.3Vで、対照基準の電流iG1,1は正にシフトさせられた。異なる試薬、例えば異なるメディエータ(例えば、フェリシアン化物)を有するバイオセンサシステムでは、分割境界又は極性の切り替えは、別のメディエーターの電位シフトのために、裸電極と対電極との間の別の動作電位で起こりうる。
【0175】
図16Bはさらに、pH6.5での20、50、及び100mMの3つの異なる緩衝液濃度を有するリン酸塩ベースの対照基準溶液からのi
G1,1電流を示した。DG4値は緩衝液の濃度によって変化したが、i
G1,1電流は、いずれも閾値の点線よりも低く、WBi
G1,1電流の値から対照基準溶液の値を分離した。
【0176】
インジケータの1つとしてのi
G1,1電流に加えて、裸電極パルスの終了電流もまた、WB試料から対照基準を区別するために用いられうる。これは、
図16Cのi
G2,nth対DG4のプロットに示されている。ここで、WB試料データ点は、プロットの右上領域にクラスタリングされている。すなわち、WB試料のデータ点は、1(“mV”)以上の領域及びパラメータDG4の2つ以上の領域にクラスタリングされる。ビス-トリスの対照基準に対して、WB試料及び対照基準は、DG4のインジケータに基づいて、そしてより少ない程度でHEPES対照基準システムに基づいて良好に区別されうる。これは、垂直境界及び水平境界に基づく閾値によってシステム内に容易に実装されうる。
【0177】
図16Dは、本開示の態様による、3つのpH6.5、7、及び7.5、及び3つの緩衝液濃度20、50、及び100mMの組み合わせでのTrizma(商標)アセテート緩衝液ベースの対照基準試料についての電流i
G1,1対パラメータDG4を示すグラフである。具体的には
図16Dは、Trizma(商標)アセテート対照基準についての電流i
G1,1に対する緩衝液濃度及びpHの複合効果を示す。より低いpHがより負の電流i
G1,1を与える傾向があり、それにより負の極性を増強する。電流i
G1,1とパラメータDG4の組み合わせは、またWB試料と対照基準を区別するためにADA緩衝システムに適用される。
【0178】
図16Eは、本開示の態様による、3つのpH6.5、7、及び7.5の及び3つの緩衝液濃度20、50、及び100mMの組み合わせにおけるADA対照基準についての電流i
G1,1対パラメータDG4を示すグラフである。電流i
G1,1とDG4との組み合わせは、WB試料及び対照基準を区別するためにADA対照基準にも適用される。
【0179】
図16Fは、本開示の態様による、3つのpH6.5、7、及び7.5と、3つの緩衝剤濃度20、50、及び100mMとの組み合わせにおけるビス-トリス対照基準についての電流i
G1,1対パラメータDG4を示すグラフである。i
G1,1電流は、対照基準溶液のより高いpH値で境界を横切る傾向があったが、対照基準をWB試料と区別するためにDG4軸に広いマージンがあった。
図16Fにおいて、ビス-トリス対照基準のpHは、電流i
G1,1極性に有意に影響し、pH7又はそれよりわずかに上では、電流i
G1,1のいくつかが0より上になった。pHの8.15では、電流i
G1,1のすべてが正だった。しかし、WB試料とビス-トリス対照基準との間の差異は、
図16Fの広いマージンによって示されたように、パラメータDG4によって主として決定される。この傾向は、ビス-トリス濃度(例えば、20、50、及び100mMビス-トリス)とは無関係である。
【0180】
異なるパラメータは、異なる緩衝液に基づく対照基準により適している可能性がある。第2出力信号から計算することができる他のパラメータは、上で定義されたRG31、RG32、RG41、RG42、及びRG43を含む。最適対照基準処方(例えば、pH及び/又は緩衝液濃度)及び第2入力信号パルスにおける動作電位の選択は、1つの対照基準システムのために特定のパラメータを高めうる。いくつかの態様によれば、WB試料及び対照基準を区別するための2つ以上の指標が存在しうる。
【0181】
図16A~16Fの破線及び/又は点線は、バイオセンサシステム内にプログラムされた閾値を表すことができ、その閾値は、対照基準と非対照基準との間での試料及び/又は異なる対照基準間での試料を区別するために、電流及び/又は電流に基づいたパラメータとの比較において用いられうる。
【0182】
試料タイプが対照基準であると決定された後、それはさらに別の1つの特定のタイプの対照基準としてさらに区別されうる。
図8Bの入力信号は、2つの対照基準に加えて、ラボWB試料及びドナーWB試料を含む様々な試料に印加された。ラボWB試料は、5、10、15、23、33、40、及び45℃での、0、20、42、55、及び70%Hct値の、60、330、及び550 mg/dLのグルコース濃度に及ぶ3000種類の試料を含む。ドナーWB試料は、グルコース濃度及びHct値の範囲をカバーする3652の異なる試料を含む。第1の対照基準にはニュージャージー州パーシッパニーのAscensia Diabetes Care社のCONTOUR(商標)CLASSICグルコースメーターの溶液が含まれていた。第2の対照基準にはニュージャージー州パーシッパニーのAscensia Diabetes Care社のCONTOUR(商標)NEXTグルコースメーターの溶液が含まれていた。
【0183】
図17Aは、ニュージャージー州パーシッパニーのAscensia Diabetes Care社のCONTOUR(商標)CLASSIC及びCONTOUR(商標)NEXT対照基準溶液についてのDG4(i
G4-first/i
G4-ending-1)に対するi
G1,1のプロット、及び併せて、実験室研究(温度、グルコース濃度、及びヘマトクリット値を変えた)及びドナー研究からのWB試料データを示している。DG4指標は、WBデータ点から対照基準データ点を分離するために幅広いマージンを提供した。図示されているように、実験室のWB試料では、100%の電流i
G1,1は正又は0であった。ドナーWB試料では、電流i
G1,1の99.86%が正又は0であった。したがって、WB試料は、対照的に、電流i
G1,1の85%以上の電流は、対照基準に対して負であった。
【0184】
図17Aにおいて、WB試料と対照基準とを分離するための主要パラメータは、パラメータDG4であった。対照基準とWB試料とに関するデータ間のパラメータDG4軸には広いマージンがあった。オプションで、RHG
4パラメータ(i
H-ending/i
G4-ending)を使用することもできる。
【0185】
より良好な分離は、
図17Bに示されるように、DG4に対するRHG
4の別の双方向プロットで提供することができる。対照基準データ点は、プロットの左下隅に2つの境界線で明確に区切られて示されている。パラメータRHG
4については、RHG
4とWB試料の%Hctとの間に逆相関があった。したがって、分離マージンは、70%で最も高いヘマトクリットレベルと対照基準との間であった。
【0186】
パラメータRHG4及びDG4に基づいてWB試料と対照基準を区別した後、同じパラメータ又は1つ以上の追加のパラメータに基づいて追加の比較を行うことができる。追加の比較は、複数の異なる対照基準を区別しうる。
【0187】
例えば、一旦、試料タイプが対照基準であると決定されると、対照基準は、
図17Cに示されるように、2つの例示的なCONTOUR(商標)CLASSIC及びCONTOUR(商標)NEXTに適用された、複数の異なる対照基準からさらに分離することができる。i
G4,4対i
H,4電流(2.5Vヘマトクリットパルスの終了電流に対する1.0VのG4パルスの終了電流)の双方向プロットは、左下隅にCONTOUR(商標)NEXT対照基準をもたらす。
図17Cに示された比較は、
図17Bに示された比較に対応し、又はそれに続いて起こりうる。例えば、
図17Bの比較に基づいて試料が対照基準であると判定した後、
図17Cに示されるように、バイオセンサシステムは、特定のタイプの対照基準を決定するために、
図17Cに示されるような比較を行いうる。
【0188】
図17A~17Cの破線及び/又は点線は、バイオセンサシステムにプログラムされた閾値を表し、これは、対照基準と非対照基準との間で試料を区別及び/又は異なる対照基準間の区別をするために、電流及び/又は電流に基づいたパラメータの比較において用いられる。
【0189】
上述のパラメータに基づいて、バイオセンサシステムは、例えば対照基準とWB試料との間、及び複数の異なる特定の対照基準の間での試料を区別するためのパラメータを決定しうる。試料を対照基準又はWB試料として、又は複数の異なる特定の対照基準間の特定の対照基準として区別することに基づいて、バイオセンサシステムは、その決定された試料タイプによってその機能及び/又は動作を変更しうる。
【0190】
図18は、本開示の態様による、血中グルコース監視装置を用いて溶液を分析するための方法1800のフローチャートである。方法1800は、バイオセンサシステム(例えば、上述されたバイオセンサシステム100)により実行されうる。具体的には、方法1800を実行するバイオセンサシステムは、血液試料(例えばWB試料)中のグルコース濃度を決定するための装置でありうる。
【0191】
ステップ1802で、入力信号が、血糖モニター装置の裸電極を介して溶液に加えられる。裸電極は、本明細書に記載されたような何等かの裸電極(例えば、バイオセンサシステム100の裸電極118)である。入力信号は、少なくとも1つの定電圧パルスを含む。いくつかの態様において、定電圧パルスは、0.25Vの電位である。試料は、血液試料(例えば、WB試料)でありうる。
【0192】
入力信号が1つの定電圧パルスを含みうるが、いくつかの態様において、入力信号はさらに複数の電圧パルスを含みうる。複数の電圧パルスは、裸電極と対向電極との間に印加されうる。複数の電圧パルスの中には、前段落で説明した定電圧パルスがある。
【0193】
ステップ1804で、0.25Vの電圧に対応して生成された出力電流に関して電流閾値との間で比較が行われる。測定された出力電流は、ステップ1802で印加された定電圧パルスに対応する電流である。
【0194】
いくつかの態様において、0.25Vの電圧パルスに対応して生成される出力電流の極性が決定される。出力電流の極性は、ステップ1802で印加された定電圧パルスに基づいて生成された試料の出力電流を測定することにより決定される。次に、出力電流の極性は、例えば正又は負の電流であると決定される。この態様において、閾値は、極性、すなわち極性が正であるか負であるかに関係しうる。いくつかの態様において、極性は、定電圧パルスに対応して測定される初期電流である。したがって、定電圧パルスに対応して複数の電流が測定される場合、ステップ1804で、第1又は初期電流の極性が決定される。定電圧パルスは、0.25Vである。
【0195】
ステップ1806で、溶液は、閾値との比較に、少なくとも部分的に、基づいて、対照基準又は血液試料として識別される。例えば、閾値以下の場合、溶液は対照基準として識別される。閾値を超える場合、溶液はWB試料として識別される。しかし、WB試料を表す以下のような関係は、逆であってもよい。極性に関する閾値の場合、極性が負であれば、溶液は対照基準として識別される。極性が正である場合、溶液は、血液試料(例えばWB試料)として識別される。
【0196】
対照基準又はWB試料であるとの試料の決定に対応して、バイオセンサシステムは、追加の機能性及び/又は動作を開始するために必要とされるところのバイオセンサシステムへのさらなるユーザ入力なしに、追加の機能及び/又は動作を自動的に実行しうる。そのような追加の機能及び/又は動作は、例えば、バイオセンサシステムが、試料が対照基準であるとの決定に対応して正確に機能しているかどうかを決定する1つ以上の動作を実行すること及び/又はランさせることを含みうる。このような動作は、例えば、対照基準中の種の濃度を決定すること、及びバイオセンサシステムが設定公差内で動作しているかどうかを決定するためにその濃度を対照基準用の予め設定された標準濃度と比較すること、を含みうる。このような追加の機能及び/又は動作は、例えば、試料がWB試料であると決定したことに対応して、試料中の検体(例えば、グルコース)の濃度を決定する1つ以上の動作を実行すること及び/又はランさせることを含みうる。従って、試料を対照基準又はWB試料として決定するバイオセンサシステムの能力は、ユーザの介入なしに追加の機能及び/又は動作の自動開始を可能にし、このことは、バイオセンサシステムの使用を簡単化し、及び/又は誤り(例えば、バイオセンサシステムの使用の際の人為的な誤り)の潜在的可能性を低下させうる。
【0197】
入力信号が複数の電圧パルスを含む態様に対しては、溶液は、溶液を対照基準として特定することに応じて又はその後に、複数の電圧パルスに、少なくとも部分的に、基づいて、複数の所定の対照基準の中の所定の対照基準として識別されうる。
【0198】
この溶液は、パルスの電位と試料とに依存して、入力信号の初期電圧パルス及び最終電圧パルス(又は2つの中間のパルス)に、少なくとも部分的に、基づいて、複数の所定の対照基準のうちの1つの所定の対照基準として識別されうる。電圧パルスの1つ又は第1は、裸電極と対向電極との間に印加された0.25Vの電位であり、そして、別の1つ又は最終の電圧パルスは、裸電極と対向電極との間に印加された1.0Vの電位でありうる。
【0199】
いくつかの態様において、第1の複数の電流が、初期又は1つの電圧パルスに対応して測定され、第2の複数の電流が、最終又は別の電圧パルスに対応して測定される。次に、溶液は、第1の複数の電流の初期電流と第2の複数の電流の最終電流に基づいて所定の対照基準として特定される。あるいは、対照基準又は血液試料としての溶液の識別は、初期電圧パルスに対応する第1の複数の電流の初期電流、第1の電圧パルスに対応する第2の複数の電流の初期電流、及び第1の電圧パルスに対応して第2の複数の電流の最終電流に、少なくとも部分的に、基づきうる。いくつかの態様において、対照基準または血液試料としての溶液の識別は、初期電圧パルスに対応した第1の複数の電流の初期電流と比較して、(i)最終電圧パルスに対応した第2の複数の電流のうちの初期電流と、(ii)最終電圧パルスに対応した第2の複数の電流の最終電流との比に、少なくとも部分的に、基づいている。
【0200】
図19は、本開示の態様による、試料のタイプを決定するための方法1900のフローチャートである。方法1900は、バイオセンサシステム(例えば、上述されたバイオセンサシステム100)により実行されうる。具体的には、方法1900を実行するバイオセンサシステムは、血液試料(例えば、WB試料)中のグルコース濃度を決定するための装置でありうる。
【0201】
ステップ1902で、入力信号が、裸電極を介して試料に印加される。裸電極は、裸電極118に関して上述されたように構成されている。入力信号は、裸電極と対向電極との間に印加されうる。対向電極は、対向電極116に関して上述されたように構成されている。入力信号は、少なくとも2つの励起と1つの緩和とを有する。
【0202】
1の入力信号が試料に印加されるとして記載されているが、いくつかの態様においては、別の入力信号が上記入力信号と組み合わされて試料に印加されうる。組み合わせは上記の通りである。具体的には、組み合わせは、試薬を有する第1電極を介して別の入力信号を試料に印加することを含み、別の入力信号は少なくとも2つの励起と1つの緩和とを有し、別の入力信号の少なくとも2つの励起は、上記入力信号の少なくとも2つの励起と同時ではない。
【0203】
ステップ1904で、ステップ1902の入力信号に対応する出力信号が測定される。出力信号は、上述されたように(例えば測定デバイス102によって)測定されうる。上述された出力信号と同様に、出力信号は、入力信号の少なくとも2つの励起に対応して測定された電流を含む。いくつかの態様において、電流は少なくとも2つの電流を含む。これら少なくとも2つの電流は、入力信号の少なくとも2つのパルス又は励起のうちの1つに対応しうる。あるいは、これら少なくとも2つの電流の各1つは、入力信号の少なくとも2つのパルス若しくは励起の別のパルス若しくは励起に対応しうる。3つ以上の励起若しくはパルス及び/又は3つ以上の電流の場合に、同一の複数の励起に対応して測定された多数の電流と別の複数の励起に対応して測定された多数の電流との組み合わせが、存在しうる。
【0204】
ステップ1906で、1つ以上のパラメータが出力信号に基づいて決定される。上記1つ以上のパラメータは、電流の測定値に基づいて決定されうる。上記1つ以上のパラメータは、パルス内比、パルス間比、又はそれらの組み合わせに基づいて決定されうる。あるいは、上記1つ以上のパラメータは、電流、又は電流と比の組み合わせでありうる。上記1つ以上のパラメータは、試料のタイプ、いくつかの態様においては同じ試料のサブタイプ又は所定のタイプ、を区別しうるパラメータに基づいて選択される。
【0205】
ステップ1908で、1つ以上のパラメータが1つ以上の閾値と比較されて、試料のタイプが決定される。いくつかの態様においては、試料のタイプは2つのタイプの中から決定される。2つのタイプは、対照基準及び生物学的試料でありうる。対照基準は、方法1900を実行するバイオセンサシステムが適切に機能しているか、又はバイオセンサシステムを較正するためか、あるいはその両方かを決定するためのものであってもよい。生物学的試料は、様々な生物学的試料、例えば、WB、血清、血漿、尿、唾液、間質液、又は細胞内液のうちの1つ以上を含む生物学的液体でありうる。
【0206】
いくつかの態様において、2つのタイプのうちの1つは、複数のサブタイプを含みうる。例えば、対照基準は、所定の対照基準又は特定のタイプの対照基準を含む様々なサブタイプを有しうる。試料は対照基準であるという決定に対応して、1つ以上のパラメータを1つ以上の追加の閾値と比較する追加のステップが、対照基準のサブタイプ、即ち具体的には所定の対照基準、を決定するために生紀しうる。
【0207】
いくつかの態様において、試料のタイプ、具体的には所定の対照基準を決定した後、方法1900は、所定の対照基準の表示を、少なくとも部分的に、引き起こすことを含みうる。そのような表示は、特定の対照基準タイプをバイオセンサシステムのディスプレイ上に表示することを含みうる。
【0208】
代替又は追加として、試料のタイプ、具体的には所定の対照基準を決定した後、プロセス1900を実行するバイオセンサシステムの動作は、決定された所定の対照基準に基づいて変更されうる。例えば、異なる方程式又は方程式の組がバイオセンサシステムの動作及び/又は較正が正しいかどうかを決定するために用いられた場合、用いられた特定の方程式は、動作及び/又は較正の検証のために使用される特定の所定の対照基準に依存しうる。バイオセンサシステムによって分析される所定の対照基準を決定すると、バイオセンサシステムは、決定された所定の対照基準に従って使用する適切な方程式を選択することができる。したがって、方法1900を実行するように構成されたバイオセンサシステムのユーザは、バイオセンサシステムで多数の異なる対照基準の1つを使用することができる。バイオセンサシステムは、方法1900の実行に対応して、使用されている特定の対照基準を識別し、その機能及び/又は動作を適切に変更しうる。こうしてユーザは、バイオセンサシステムについて正しい対照基準を選択することに頼らない。反対に、バイオセンサシステムは、方法1900によって複数の異なる対照基準を受け入れることができ、そのことがバイオセンサシステムの使用を単純化し、及び/又は潜在的な誤差を低減しうる。
【0209】
追加又は代替として、対照基準と生物学的試料を区別するため、又は複数の異なる対照基準を区別するために、第2出力信号の分析は、単独で又は第1出力信号の分析と組み合わせて、バイオセンサシステム内の別の機能及び/又は動作を可能にする。そのような追加の分析、及び関連する機能及び/又は動作は、生物学的試料内の1以上の干渉種からの干渉効果の管理を提供しうる。
【0210】
干渉は、バイオセンサシステム、特に生物学的試料(例えばWB)に用いられるバイオセンサシステムによる試料の検体決定において、共通の課題である。干渉の様式は、(a)酵素活性化反応を伴わずに標的検体と同時に作用電極で酸化された種、及び(b)干渉物基質に対する非特異性のために酵素によって酸化された種,を含みうる。酸化可能な干渉種は、ASA及びDop、並びに程度は低いがUA及びAAを含む。酵素感受性干渉種は、キシロースをFAD-GDH酵素と共に含みうる。干渉の様式はまた、ヘマトクリットを示すために用いられた信号に影響を与える種を含みうる。干渉の余り明白でない様式はまた、微妙で否定的な仕方で電極の活性に影響を与える種を含みうる。
【0211】
干渉種は、内的種及び外的種に分けることができ、内的種は生物学的系又は人体に天然に存在するもの、例えばDop及びUAであり、外的種は個体によって取り込まれたもの、例えばASA、AA、及びキシロースである。標的検体に対する試薬を有する作用電極のみが電位を加えることによって励起されるようなバイオセンサシステムにおいて、干渉種の存在は、作用電極において検出されない。さらに、補助電極が単一の固定電位を提供するようなバイオセンサシステムにおいて、干渉種の存在はまた、補助電極において検出されない。
【0212】
干渉管理の目標は、干渉種からの影響を除去/最小化することである。実際に、干渉種は、バイオセンサシステムによる生物学的試料中の検体の分析中に遭遇しうる。そのような状況において、干渉種の影響は、検体濃度を決定するために使用されるバイオセンサシステムの出力信号の一部分として測定されうる。干渉種によるそのような干渉は、検出されないまま、検体の決定された濃度に影響を及ぼす可能性がある。従来のアプローチは、作用電極上に新しい試薬を導入することによって干渉物質の影響を緩和しようと試みみる。新しい試薬、例えば新しいメディエーターは、バイオセンサシステムの動作電位を低下させる可能性があり、それは次に生物学的試料における大抵の干渉種の影響を低下させる。
【0213】
干渉管理は、干渉信号及び/又は干渉効果を検出/認識するためのパラメータを計算するために用いられるところの信号を検出するバイオセンサシステムを提供する。具体的には、干渉管理の方法は、1つ以上の信号及び/又は干渉効果に関連する1つ以上のパラメータをソートすることを含み、その結果、干渉データ及び正常データは、閾値を有する所定の境界によって分離される。より具体的には、開示された方法は、相互に組み合わされた複数の入力信号をバイオセンサシステムに印加すること、及び入力信号に対応する信号を測定することを含む。得られた出力データはソートされ得、1つ以上の信号及び/又は1つ以上のパラメータは、通常のデータと干渉データとの間の境界を規定するように構成/定式化されうる。正常データと干渉データが分離されると、適切な措置が個々のケースの結果を管理するように講じられうる。例えば、個々のデータ点が正常データ領域内に識別される場合、閾値を有する分離マップによって規定されるように、検体濃度の通常の計算/補償が実行されうる。しかし、個々のデータ点が、無の/低い干渉と中程度の干渉との間の重なる可能性が高い領域内に識別される場合、特別な検体濃度の計算/補償が実行されうる。最後に、個々のデータ点が高干渉の領域内に識別される場合、このデータポイントは、分離マップに基づいて検出された高干渉信号/パラメータの故に除外されうる。
【0214】
グルコース濃度を測定するバイオセンサシステムの場合に、生物学的試料中の干渉種は、異なる方法でグルコース濃度測定を妨害する可能性がある。作用電極において直接酸化可能である干渉種が存在しうる。このような干渉種は、例えば、ASA及びDop(又はカテコールアミン)を含む。これらの種が酸化可能であるかどうかにかかわらず、試薬に敏感であり且つ追加の電子を生成する干渉種が存在しうる。そのような干渉種は、例えばグルコースの酵素FAD-GDHに対するキシロースを含む。この干渉種は、大きな偏りを作りうる。FAD-GDH酵素からキシロースの影響を排除又は減少させるには、キシロース不感受性酵素が必要であり、これは、既存のバイオセンサシステム(既存のバイオセンサシステムのアルゴリズムを含む)との後方互換性がないこと、及び/又は、すべての干渉種に対しては化学的に可能ではないことによって費用が問題になりうる。
【0215】
他の干渉種は、必ずしも作用電極出力信号に正に寄与するとは限らないが、電極表面での電気化学反応、例えば作用電極のためのAA及びUAに依然として影響を及ぼす可能性がある。他の干渉種は、試料のマトクリットレベル(例えば、誤ったヘマトクリット信号で補償することによりグルコース濃度の誤った決定を導く可能性があるWB試料中のコレステロール及び遊離ヘモグロビン)を表すヘマトクリットパルスの出力信号に影響を及ぼしうる。
【0216】
干渉信号の影響は、作用電極における検体及び/又は試薬の効果と組み合わされるため、作用電極の出力信号からの影響を排除又は低減する方法はない。しかし、作用電極からのパルスと組み合わされた、異なる電位で脈動する裸電極を有する組み合わされたゲート入力信号に対して、結果として得られる測定電流を使用して、補償目的のための干渉種の影響を識別することができる。さらに、そのような干渉種のそのような検出は、キシロース非感受性酵素のような干渉種非感受性酵素に頼ることなく可能であり、新しいセンサを開発するコストを低減する可能性が高い。
【0217】
異なるパルスで異なる電位に置かれた裸電極で、得られる第2出力信号は、試料内の異なる干渉種の異なる挙動に関する信号を含む。第2出力信号又は第2出力信号から生成される1つ以上のパラメータは、単独で、及び/又は第1出力信号と組み合わされ、又は第1出力信号からの1つ以上のパラメータと組み合わされて、異なる挙動に基づいて干渉種の存在を検出するために分析されうる。
【0218】
例えば、作用電極(例えば、作用電極114)によって印加される第1入力信号の動作電位に等しい電位から開始して、裸電極(例えば、裸電極118)と対向電極(例えば、対向電極116)との間に第2入力信号として印加されたパルスは、同じ動作電位の第1入力信号に対応して検出される何れかの種をまず検出する。次に、第2入力信号パルスは、第1入力信号の動作電位では何らの検出可能な信号を示しえないが、第1入力信号に対応する第1出力信号への別の正及び/又は負の効果を依然として有する別の干渉種に対して、近距離および遠距離電位場を探索するために徐々に高い電位に進む。
【0219】
酸化可能な干渉効果を低減するための1つの方法として比較的低いレドックス電位を有するメディエーターの場合に、この戦略の1例は、MLBメディエーターの使用であり、このMLBメディエーターにおいては、レドックス電位が従来のフェリシアン化メディエーターのそれよりも約200mV低い。メディエーターとしてMLBを使用した結果、AA及びUAによる作用電極からの出力信号に対する正の誤った影響は、ほとんど回避される。以下の表3~表7は、WB試料中のいくつかの干渉種からの出力信号に対する典型的な効果を示す。
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
【表8】
【0220】
比較の目的のために、グルコース300mg/dLのブランクWB試料、並びにこれに別途13mg/dLのDop、10mg/dLのAA、及び10mg/dLのUAをそれぞれ添加したもののそれぞれのボルタモグラムが、重ね合わされて
図20に示されている。基準として、グルコース測定のための試薬を有する主作用電極は、0.25Vで動作され、これは
図20の垂直線の0.25Vによって表されている。0.35V及び0.5Vでの他の2つの動作電位も、垂直線におけるこれら2つの位置によって表されている。試薬の添加のない第2作用電極は標的検体グルコースを酸化することができないので、ブランクボルタモグラムは第2電極で非常に低い電流を示す。300mg/dLのグルコースのブランクWB試料に13mg/dLのDopを添加すると、0.25Vでの第2電極の出力電流は大幅に増加する。一方、AA及びUAの場合、各々の種の10mg/dLの添加レベルで、ボルタモグラムの0.25Vでの電流の変化は事実上ない。電流の増加は、高電位(例えば0.35V及び0.5V)の場合のみである。このように、Dop及びASA(ここには示されていない)は、第1作用電極の出力電流に正に寄与する酸化可能な種である(表3)。
図20に示すように、AA及びUAは、0.25Vでは酸化可能ではなく、おそらく、第1作用電極の出力電流に殆ど又は全く影響を及ぼさない。
【0221】
表3を参照すると、この表の例は、酸化可能な干渉化学種(Dop及びASA)による正の効果を示す。グルコース中の誤差(%-偏り)は、結果として現在の誤差と同等であると予想される。典型的には、干渉の影響は、低グルコース濃度(約80~120mg/dL)でより顕著である。高グルコース濃度(約300mg/dL)では、ASA及びDopの場合の両方で見られるように、干渉効果はあまり重要でないか又は有意性がない。幸い、人体におけるDopの自然量は、試験された濃度(最も低い4mg/dLの添加に対してMTC/URV=0.04mg/dL)よりもはるかに低い。MTCは潜在的な干渉化学種の最大治療濃度であり、一方URVはその種の上限基準値であることに留意されたい。ドーパミンのMTC=0.04mg/dLの結果として、例えDopが低グルコース濃度で比較的大きな正の%-偏りを与える潜在能力を有するとしても、Dopの干渉から臨床的意義はないはずである。他方、外的物質としてのASAは、食物と共に(例えばオレンジジュースを飲むことで)取り込まれ、瞬時濃度はかなり高くなりうる。Dop及び/又はASAのように振る舞う別の潜在的干渉種は、出力電流に同様の影響を及ぼすはずである。
【0222】
表4は、標的検体(例えば、0.25V)に関する試薬を有する第1電極と同等の電位で酸化されないように見えるところの干渉種(AA及びUA)からの効果の例を提示する。AA及びUAのボルタモグラムは0.25Vでほとんど活性を示さないが、AA及びUAを添加した干渉試験は、AAに対してわずかに負の効果を示し、80mg/dLのグルコースレベルでUAに対する中程度の負の効果を示す。これらの微妙な負の影響は、個々の干渉種(
図20のAA及びUA)の単純なボルタンメトリー挙動によって予測することはできず、そして、これらの酸化を単純に回避するのに頼るのではなく、より良い方法がAA及びUAの検出のために必要である。
【0223】
表5は、添加されたBRB及びPAMの効果の例を提示する。追加されたBRBからの影響はないが、添加されたPAMは、iM6,5電流にわずかな負の影響を及ぼす。添加されたPAMを有するグルコースセンサーの挙動は、UAを有する場合と同様であり、そしてPAMの微妙な効果を考慮する必要がある。
【0224】
表6は、2組のキシロース干渉試験を提示する。キシロースからの正の偏りは、グルコースデヒドロゲナーゼ酵素(FAD-GDH)のキシロースに対する感受性によるものである。キシロースからの正の誤差は、低グルコース濃度で顕著であるが、高グルコース濃度では減少する。キシロースの使用は、主に胃腸吸収不良検査であり、これは最近減少している。にもかかわらず、これに遭遇した場合には、キシロース干渉効果は相当に大きくなりうる。
【0225】
表7は、HB干渉研究に関する試験結果を提示する。主電極(iM6,5電流)に及ぼす影響は、低グルコースではないものから高グルコースで僅かに負のもの範囲であるけが、主要な効果がヘマトクリット信号iH,4に示される。ブランク試料が42%Hctである場合、12g/dLの高添加HBレベルでのブランク試料に対するiH,4電流の26%の負の偏りは、55%のヘマトクリットレベルを表し、ひいては、iH,4電流に基づいて過補償になる。
【0226】
表8は、コレステロール干渉の研究に関する試験結果を提示する。主電極電流(iM6,5)に対するコレステロールの最高添加レベルの影響は、ベースライン・グルコース80及び300mg/dLの両方で中程度の~10%であるが、標的検体電極の出力電流に対するコレステロールの中程度の添加(150~250mg/dL)の影響は、負の傾向があるが無視できるほど小さい。しかし、ベースライン・グルコース80及び300mg/dLの両方へのコレステロールの添加が増加するにつれて、Hct信号(電流iH-4)に中程度から高い負の影響がある。Hct信号のこれらの変化は、補償方程式への入力を介して標的検体の誤った決定を引き起こすのに十分である。
【0227】
第1作用電極の出力電流に対する個々の種の微妙な影響が与えられる場合に、第2作用電極からの電流を比例的に第1作用電極の出力電流のための補償アルゴリズムに入力することによって簡単な減法的な補償を行うことは、効果的ではない可能性がある。系統的に、様々な干渉種の干渉効果を管理することは、干渉検出に関連する1つ以上の信号及び/又は1つ以上のパラメータに関してデータをソートすることによって達成されうる。以下は、関連するパラメータの観点からの正常データと干渉データのソートと分離の例である。多かれ少なかれ酸化的な性質を有する干渉種は、裸電極のパルス比、例えば、RG
14(それぞれ0.25V及び1.0Vでのi
G1,4/i
G4,4)、RG
24(それぞれ0.35V及び1.0Vでのi
G2,4/i
G4,4)、及びRG
34(それぞれ0.5V及び1.0Vでのi
G3,4/i
G4,4)によって分類的に特徴付けられうる。これらのパラメータは、干渉試験の結果として
図21A及び
図21Bにその全範囲がプロットされている。WB試料中の1.0Vでの電気化学パルスが比較的一定の電流を提供するので、1.0Vの電流に対する0.25V、0.35V及び0.5Vでの電流の比を取ることは、すべての酸化可能な種に対して異なる電位での干渉効果を正規化する。様々な種の干渉効果を示す1つの方法は、RG
14に対するRG
34、及びRG
14に対するRG
24をプロットすることである。これらのプロットは、Dop、ASA、AA、UA、BRB、及びXYの干渉種に対して、ラボ研究及びドナー研究からのデータと共に、
図21A及び21Bに示される。
【0228】
図21A及び
図21Bから、干渉種が存在しないか又は低いラボ研究及びドナー研究からのデータ点(正常データ)は、実質的にRG
14が約0~0.035及びRG
34が約0~0.25内の左下コーナーに位置することが判る。異なる種のより詳細な分布は、
図21C及び更に拡大されたx軸とy軸を有する
図21Dに示されうる。非電気化学的に酸化可能な種であるBRB及びキシロースについては、これらもこの領域内にある。しかし、0.25V(又は第1作用電極の同じ動作電位)での、及びその前後での電気化学的に活性な種、例えば、Dop、及びより少ない程度であるがASについては、データは、RG
14軸に沿って延在する水平方向に沿って表されている。一方、0.25Vでは電気化学的に活性が低いがより高い電位ではより活性が高い種(例えば、AA及びUA)については、データは、RG
34軸に沿って延在する垂直方向に沿って表される。この特性はさらに、
図21BにおいてRG
14に対するRG
34のプロットとして示される。正常データと干渉データとの間の分離の閾値は、バイオセンサシステムメモリ記憶装置に記憶される。一度、データセットが測定されると、関連するパラメータが計算され閾値と比較される。干渉種は、正確な干渉種の識別が必要でないように、これらの閾値を参照することによって分類的に検出される。Dop、ASA、UA、及びAA以外の種は、それらの関連パラメータが、RG
14に対するRG
34又はRG
14に対するRG
24の領域(例えば
図21C及び
図21D内の領域)の規定された範囲に入る限り検出されうる。関連パラメータと事前設定された閾値との比較に基づいて、バイオセンサシステムは、通常の補償アルゴリズムに基づいてグルコース測定値を計算し報告すること、、エンドユーザに警告を提供すること、干渉効果に対して補償すること、試験結果を却下すること、又はそれらの組み合わせに関して決定を下しように管理されうる。
【0229】
同様に重要なことは、測定された信号に関して正常データから干渉データをソートし及び分離することであり、これは。
図21E~21Hの例のプロットで示されている。すべての図において、「ラボ」は、5~45℃の温度、0~70%のヘマトクリット、及び離散値レベルでの50~600mg/dLのグルコースでの実験室の試験から取得されたデータを表す。「ドナー」は、周囲の室温(20~24℃)でのランダムグルコース濃度及びヘマトクリット値を用いた内部ドナー研究からのデータを表す。個々の干渉試験結果は、表1~8に示されている。
図21Eは、電流G
14及び電流G
44に関して、実験室及びドナー研究データからのASA及びDopデータのソート及び分離を表す。G
1パルスが主パルスM
3、M
4、M
5、M
6と同じ電位である0.25Vで動作させられるので、直線y=0.04*x(ここで、yはi
G1,4であり、yはi
G4,4である)によって画定された分離限界を超える正の信号は、これらの2つの種からの検体濃度の正常な計算/補償に関して耐え難い干渉レベルを意味する。同様に、
図21Fは、電流G
34及び電流G
44に関する実験室研究及びドナー研究のデータからのAA、UA、及PAMデータのソート及び分離を表示する。G
3パルスは、主電極の0.25Vでの動作電位での近傍距離を探索するように0.5Vの電位で動作するので、分離限界を超える正の信号は、直線y=0.22*x(ここで、yはi
G3,4であり、xはi
G4,4である)を画定した分離限界を超える正の信号は、これらの種からの検体濃度の正常な計算/補償に関して耐え難い干渉レベルを意味する。さらに、
図21Gは、温度に対する電流i
G4,4に関して、実験室研究及びドナー研究のデータからのPAMデータのソート及び分離を示す。高電流i
G4,4は、この干渉種の独自の識別法を提供する。最後に、
図21Hは、電流i
G4,4に対するパラメータRG
43-RG
32に関する実験室研究及びドナー研究のデータからのHBデータのソートと分離を示している。これは、パラメータと測定信号を組み合わせることによるソートと分離の独自の例である。すべての例において、干渉信号の高レベルを強調する特別なアルゴリズムが、通常の計算/補償アルゴリズムの代わりに、計算/補償に用いられている。
【0230】
実験室研究及びドナー研究からの、並びに干渉種からの正常試料のデータ分布に基づいて、干渉の検出、補償、及び除去の戦略は以下のように決定された。(A)RG
14値がRG
14_limit1(例えば0.035)より下に、且つRG
34値がRG
34_limit1(例えば0.3)より下の場合に、原信号と変換関数からの出力結果とに対する通常の補償は、1次の及び残余の補償により提供されるように実行される。(B)RG
14値がRG
14_limit1(0.035)とRG
14_limit2(例えば0.08)との間にあり、且つRG
34値がRG
34_limit1(0.3)とRG34_limit2(例えば0.6)との間にある場合に、特別な補償は、第1作用電極の出力信号に対する影響を除去するために、これらのパラメータ及び別の関連するパラメータからの有意な入力を備える。(C)RG
14値がRG
14_limit2の外にあるか、又はRG
34値がRG
34_limit2の範囲外にある場合に、データ点の除外が発生しうる。これらの3つの領域は
図21Aに示されている。
【0231】
図22A~
図22Dを参照すると、これらの図は、本開示の態様による、様々な異なる干渉種のための通常のアルゴリズムによる補償結果と比較した特別なアルゴリズムによる補償結果の例を提示している。具体的には、
図22Aは、特別なアルゴリズムの補償結果を、ASAに対する通常のアルゴリズムの補償結果と比較して示す。
図22Bは、特別なアルゴリズムの補償結果を、UAに対する通常のアルゴリズムの補償結果と比較して示す。
図22Cは、特別のアルゴリズムの補償結果を、PAMに対する通常のアルゴリズムの補償結果と比較して示す。
図22Dは、特別のアルゴリズムの補償結果を、HBの通常のアルゴリズムの補償結果と比較して示す。
図22A~
図22Dにおけるx軸は、2つの基準線、即ち、80mg/dL(x軸上の中心からデータ点まで)と300mg/dL(x軸上の中心点のデータ点)であるグルコース濃度のそれぞれに対して、それぞれASA、UA、PAM、及びHBの添加された濃度(ASA、UA、及びPAMについてmg/dL、そしてHBについてはg/dLで表す)を表している。ここで、繰り返されたx軸の値は、干渉種(例えば、ASA、UA、PAM、及びHB)の同じ濃度に対する多数のデータ点を表している。正常な補償結果については、添加された高い干渉レベル(例えば、80mg/dLの基準線グルコースへの8及び12mg/dLのASAの添加、25及び40mg/dLの添加UA、102及び205mg/dLの添加PAM、及び12g/dLの添加ヘモグロビン)で、大きな偏りが示されうる。ASA及びUAに対する干渉管理は、
図21Cに示されたソート及び分離における境界値に依存しうる。一方、PAM及びHBについての干渉管理は、
図21Cに示すように、それぞれ
図21F及び21Gに示されたソート及び分離の境界値に依存しうる。
【0232】
しかし、キシロースを検出するには、直接の電気化学的酸化からの信号は、添加試薬を有していない第2電極から得ることは容易でなく、ひいては従来法基づいては不可能でないにしても、キシロース干渉効果を検出し且つ分離することは困難になる。キシロースに感受性のない酵素を使用することが、キシロース効果を回避する唯一の選択肢であった。しかし、本開示の概念によって、組み合わされた複数の入力信号からの出力信号を処理することにより、或る範囲のキシロースが検出される得、そしてキシロースで汚染されたグルコース測定値が或る基準に基づいて除外されうることが示される。
【0233】
図23A及び23Bは、本開示の態様による、室温(RT)での高度に偏ったレベルでのキシロースの検出が、第1、第2出力信号、及び/又はこの両方の組み合わせの出力信号を処理することから得られる情報で、どのように可能かを示すグラフである。
図23A及び23Bのグラフにおいて、パラメータM
6G
4及びR
61(上で規定されたように)は、実験室研究からのデータ、及び80又は300mg/dLの基準線グルコースでのキシロース干渉研究についてのパラメータR65(同じく上で規定されたように)に対してプロットされている。これらのパラメータは、第2出力信号に関連する第1出力信号に基づいている。
【0234】
図23Aは、通常の実験室研究(43~600mg/dLの範囲のグルコースと20~60%niの範囲の%‐Hctとを有する、新鮮な静脈試料及び22±2℃の室温で試験された変化した静脈試料)からのデータ、並びに室温及び42%‐Hctでの2つのキシロース干渉研究(キシロース研究1:80及び300mg/dLの基準線グルコースのWB試料に0、50、100、及び200mg/dLのキシロースを添加したもの;キシロース研究2:50、110、及び180mg/dLの基準線グルコースのWB試料に0、50、100、及び200mg/dLのキシロースを添加したもの)からのデータについての、R
65に対するM6G4(M6G4=i
M6,5/i
G4,4)のプロットを示している。
図23Bは、同じ研究からのデータについてのR
65に対するR
61のプロットを示す。
【0235】
図23A及び
図23Bから、パラメータR
65に対するパラメータM
6G
4及びR
61の両者は、正常なグルコースのデータからキシロースを検出及び分離するための非常に顕著なパターンを提供することが判る。いかなる理論にも拘束されることを望むことなく、これら2つのプロットは、キシロース検出に関して2つの異なるキシロースWB挙動に光を当てる。第1に、短時間での及びより後期での、グルコースとキシロースとに対する酵素反応にいくらかの速度差が存在しうる。これは、R
61とR
65のパルス間比によって捕捉され、そしてR
61対R
65にプロットされ、最後のパルスに対するパルス1及びパルス5のパルス間比は、初期での及びより後期でのこの速度差の微妙な記録を提供しうる。第2に、キシロースの種々の電位パルスでの裸電極パルス電流に対する微妙な効果があるが、1.0Vではより大きな程度の効果がある。この微妙な効果は、通常のWB試料に対する出力信号の減衰として表される。結果的に、パルスG
4に対するパルスM
6の比は、M
6G
4対R
65のプロットにおける通常のWB試料データよりも上昇する。
【0236】
図23A及び23Bによれば、両方のプロットはキシロースの検出のために提供しうる。しかし、
図23Bは、Gパルス信号を用いずに、主電極(標的検体、例えばグルコースに対する試薬を有する電極)のみからの測定信号を用いてキシロースを検出する1例を示す。この検出方法は、一般的なゲート電流の測定法を用いて実施することができ、これは参照により本明細書に組み込まれる。
【0237】
キシロースについての干渉データから正常データを選別し分離することは、R
65値の温度補正によりR
65値を調整することにより、さらに改善されうる。
図24A~
図24Cは、温度効果の補正の前後並びに温度及びヘマトクリットの影響の補正後のM
6G
4対R
65プロットを示す。具体的には、
図24Aは、温度補正前のM
6G
4対R
65の関係を示している。
図24Bは、温度補正後のM
6G
4対R
65の関係を示す。
図24Cは、温度補正とヘマトクリット補正後のM
6G
4対R
65の関係を示す。同様に、
図24D~
図24Fは、温度効果の補正の前後並びに温度及びヘマトクリットの影響の補正後のR61対R65のプロットを示す。具体的には、
図24Dは、温度補正前のR61対R65の関係を示す。
図24Eは、温度補正後のR
61対R
65の関係を示す。
図24Fは、温度補正とヘマトクリット補正後のR
61対R
65の関係を示す。R
65に対する温度効果の補正は、多くの方法で行うことができる。そのような補正方法の1つは、式(2)である。
R65_T=R65*exp(TempCo*(25℃-T)) (2)
ここで、25℃は温度の基準点であり、R
65は補正されていない値であり、R
65_Tは温度補正値であり、TempCoは%-変化/℃での温度係数であり、温度の関数である。既存のR
65データに基づいて、R
65の温度係数は次のように設定される。T<12℃の場合にTempCo=-.0075であり、12℃<T<19℃の場合にTempCo=-.006であり、19℃<T<26℃の場合にTempCo=-0.0045であり、26℃<T<33℃の場合にTempCo=-0.0015であり、33℃以上でTempCo=0である。次の関係により、R
65に対する小さなヘマトクリット効果がある:R
65_T=-0.00001*i
H-4+1.0324、ここで、R
65_Tは温度補正されたR
65値であり、i
H-4はHctパルスの終了電流である。i
H-4値に基づくR
65_Tに対するヘマトクリット効果は、R
65_T対i
H-4の関係に基づいてR
65分布をさらに調整するように補正しる。M
6G
4及びR
61対R
65_THとの関係(温度及びヘマトクリット補正後の)は、それぞれ
図24G及び24Fに示されている。
【0238】
キシロース干渉の管理のために、
図25Aは、正常データとキシロース干渉によって引き起こされた干渉データとの間の選別及び分離のプロットを示す。3つのデータ領域が、
図25Aに示され、以下のもの:(A)正常な計算/補償、ここで、ユーザデータ(ドナー研究自己試験データ)及び17、23、及び28℃で試験された実験室データが支配的である(B)実験室/ドナーの研究データの間の重複データ及び低キシロース濃度データ、及び(C)高キシロース濃度データ;を含む。低キシロース濃度の領域Bは、キシロース干渉が起こりうるため、実質的に重要であり得る(MTC-60mg/dLキシロース)。この領域には、特別な補正アルゴリズムが、データポイントのM
6G
4とR
65_Tの値に基づいて適用されうる。より高いキシロース濃度は起こりにくく、より容易に検出され除外される。分割境界の1例は、x=0.9689の垂直線、y=0.1の水平線、及びこれら垂直線及び水平線と交差する線y=-30.714*x+31.793によって確定されるような領域AとBとの間の第1境界によって、及び同様に、x=0.99の垂直線、y=1.0の水平線、及びこれら垂直線及び水平線と交差する線y=-30.714*x+32.543によって画定されるような領域BとCとの間の第2の境界によって表わされうる。別の境界の画定は、正常及びキシロース干渉のデータのデータ集団に応じて可能でありうる。同様の分割及び境界の定義は、正常及びキシロース干渉のデータの分離のためにR
61対R
65_THの領域に、又は組み合わせたR
61及びM
6G
4対R
65_THの領域などに適用されうる。領域Bにおけるデータの補償式は、以下の文献:「Slope-Based Compensation Including Secondary Output Signals(二次出力信号を含む傾きベースの補償)」と題する2011年5月27日に出願された米国特許第9,164,076号、「Method for Determining Analyte Concentration Based on Complex Index Functions(複合インデックス関数に基づく検体濃度を決定する方法)」と題する2011年6月6日出願の米国特許第8,744,776号、「Biosensor System With Signal Adjustment(信号調整を有するバイオセンサシステム)」と題する2009年12月8日出願の国際特許出願PCT/US2009/067150、及び、2008年12月6日に出願され出願番号PCT/US2008/085768の「Slope-Based Compensation(傾きベース補償)」と題されたもの(誤差パラメータ、例えばパルス間比、パルス内比等を用いる)に開示されているようなルーチンの多変数回帰の方法論に従う。これらはここで引用されることで本明細書に組み込まれる。
【0239】
図25Bは、キシロース干渉研究XY-1についての補償結果を示す。このデータセットにおいて、80mg/dLのベースライン・グルコースを有する100及び200mg/dLのキシロースのデータ点及びベースライン・グルコース300mg/dLを有する200mg/dLのキシロースのデータ点は、アルゴリズム回帰に含まれない。x軸の数字は、各ベースライン・グルコース濃度、すなわちグルコース濃度80mg/dL(x軸上の中心のデータ点)及び300mg/dL(x軸上の中心の右のデータ点)に対するmg/dLでの追加のキシロース濃度を表示している。ここで、反復されるx軸の値は、同じ濃度の複数のデータ点を表す。プロットから、通常のアルゴリズム(キシロース効果に責任を負わない)による補償結果が、予想通りに実質的な正の偏りを与えたことが分かる。特別なアルゴリズムによる50mg/dLキシロースの結果は、80及び300mg/dLベースライン・グルコースについて±15%以内の結果をもたらした。80mg/dLのベースライン・グルコース(訓練中でない)についての100mg/dLキシロースのデータ点からの大きな偏り(~80%)は、~20%に実質的に低下したが、これは依然としてより高いM
6G
4値のせいで除外又は部分的除外を受けうる。200mg/dLのキシロースのデータ点については、それらは
図25Aのソーティング及び分離マップに基づいて除外される可能性が非常に高い。
【0240】
図25Cは、偏りの低減と同様の結果を有するキシロース効果を減少させる特別なアルゴリズムによる補償結果を示す。この研究は、3つのベースライン・グルコース濃度:50、110、180mg/dLをベースライン・グルコースのそれぞれに、0、50、及び200mg/dLのキシロースを添加した。正常及び特別の補償からのデータは、50,110及び180mg/dLのベースライン・グルコースの順で提示される。50mg/dLのキシロースでの正の偏りは、ベースライン・グルコースと同じレベルに低下するが、一方200mg/dLのキシロースでのはるかに高い偏りは実質的に減少する。200mg/dLのキシロースでのはるかに高い偏りも、本開示で概説した方法及びプロセスに従って検出され、除外される可能性が非常に高い。x軸の数字は、各ベースライン・グルコース濃度に対するmg/dLでの追加キシロース濃度、すなわち50mg/dLのグルコース濃度(左側のデータ点の第1のグループ化)、110mg/dL(中央のデータの第2のグループ化)、および180mg/dL(右側のデータ点の第3のグループ)を表す。ここで、繰り返されるx軸値は、同じキシロース濃度についての複数のデータ点を表す。
【0241】
図26は、本開示の態様による、試料内の1つ以上の干渉種の影響を考慮するプロセス2600のフローチャートである。プロセス2600は、バイオセンサシステム(例えば上述のバイオセンサシステム100)によって実行されうる。具体的には、プロセス2600を実行するバイオセンサシステムは、血液試料、例えばWB試料の中のグルコース濃度を決定するための装置でありうる。
【0242】
ステップ2602で、第1入力信号(例えば、作用入力信号)及び第2入力信号(例えば、裸入力信号)が、上述の方法に従って試料に印加される。具体的には、作用入力信号及び裸入力単一信号は、上述したように、同時ではなくかつ組み合わされた関係において印加される。
【0243】
ステップ2604では、組み合わされた作用信号及び裸入力信号に対応して、作用出力信号及び裸出力信号が測定される。第1出力信号及び第2出力信号の測定は、例えば、作業装置及び裸出力信号に対応する電流を記録する測定装置によって、上述のように生じる。
【0244】
ステップ2606では、裸出力信号、作用出力信号に対する裸出力信号、又はそれらの組み合わせに基づいて、1つ以上のパラメータが計算される。計算される1つ以上のパラメータは、試料中の1つ以上の干渉種に起因する作用出力信号に関連する。したがって、1つ以上のパラメータを分析して、検体の濃度の決定における干渉のレベルを決定することができる。計算され得る1つ以上のパラメータは、他の誤差パラメータ、例えば、M6G4、R65、及びR61に加えて、上述されたような例えば、RG14、RG24、及びRG34である。
【0245】
ステップ2608では、1つ以上の干渉種による干渉のレベルを決定するために、1つ以上のパラメータは、1つ以上の対応するパラメータの閾値と比較される。例えば、RG14、RG24、及びRG34のパラメータは、検体濃度の決定に及ぼす影響にパラメータと関連付ける予め設定された閾値と比較されることができ、それらは既知の干渉種及びそれらの関連濃度に帰せられる。いくつかの態様において、各パラメータは単一の閾値と比較されうる。単一の閾値は、干渉種が検体濃度の決定に及ぼす影響が無いか又は最小限の影響と、干渉種が検体濃度の決定に及ぼすいくらかの影響又は最小限を超える影響との間の違いを区別しうる。代りの態様において、各パラメータは、2つ以上の閾値と比較されうる。例えば、各パラメータは2つの閾値と比較されうる(ステップ2310)。第1の閾値は、干渉種の正常レベルと干渉種の高レベルとを区別することができ、第2の閾値は、干渉種の高レベルと干渉種の誤差レベルとを区別することができる。誤差レベルは、バイオセンサシステムの誤り状態、又は検体の濃度の決定において責任を負えない干渉化学種の誤りレベルに対応しうる。プロセス2600に関して図示され記載された状況は、パラメータに関する少なくとも2つの閾値が存在する状況に対応している。
【0246】
パラメータが第1閾値を満たすこと(例えばパラメータが干渉種の予め設定された限度内にあること)を決定した後で、バイオセンサシステムは、ステップ2610の下で、通常の条件下で検体の濃度を決定することができる。通常の状態下でのそのような決定は、例えば、検体濃度を決定するための相関及び/又は補償方程式の使用、又は上記のような別の方法を用いることを含みうる。これは、検体の濃度決定に及ぼす1つ以上の干渉種に責任を負わないか又は最小限の効果にのみ責任を負う。
【0247】
パラメータが第1閾値を満たさないが第2閾値を満たすこと(例えば、パラメータが干渉種の予め設定された限界を上回るが誤差状態よりも下であること)を決定した後、バイオセンサシステムは、ステップ2612の下で、高められた条件又は中間の条件下で検体の濃度の決定を実行しうる。高められた又は中間の状態の下でのそのような決定は、例えば、検体濃度を決定するための相関及び/又は補償方程式又は上記のような別の方法の使用を含むことができ、検体の濃度決定への1つ以上の干渉種の影響に責任を負う。
【0248】
パラメータが第1及び第2閾値を満足しない(例えばパラメータが誤差状態閾値を上回っている)ことを決定した後、バイオセンサシステムは、ステップ2614の下に進みうる。ステップ2614に従い、バイオセンサシステムは、警告をユーザへ提供する。警告は、視覚的、聴覚的、及び/又は触覚的な警告であって、検体の濃度決定が、誤りレベル閾値以上で1つ以上の干渉種の存在に基づいて、実行可能ではなく及び/又は信頼できないことを示すものでありうる。いくつかの態様において、状態を引き起こしている1つ以上の干渉種が特定しうる。
【0249】
上記の開示によれば、組み合わされた第1入力信号及び第2入力信号は、検体の濃度を決定する際に、従来の試料の探索に対して利点を提供する。いくつかの利点に基づいて、組み合わされた第1及び第2入力信号並びに関連する分析方法は、(1)対照基準の検出及び識別の改善、(2)干渉種に関する改善された情報、(3)作用電極上の干渉種に関連する誤差を検出するための改善された情報、(4)化学試薬を用いずに作用電極及び裸電極からの誤差補償のための改善された情報、(5)より高い正確さ及び精度を達成しながら検定における精度及び速度を改善すること(例えば3秒以下の検定時間)を可能にする。
【0250】
全血試料プロファイリングは、本開示の別の主題である。干渉種は、より良い精度及び干渉のない分析を追求する際に厄介な場合がある。逆に、干渉種(特に内在種)が検出されうる場合に、グルコースを決定することと、種(例えば%-ヘマトクリット、尿酸、及びコレステロール)についての1つ以上のパラメータ又は決定された濃度における1つ以上の内在種を報告することの組み合わせは、人の健康のための追加情報を提供する。このようにして、WBプロファイリングの機能を有するグルコースを監視するためのバイオセンサシステムは、糖尿病治療管理を向上させるであろう。具体的には、バイオセンサシステムは、それらの決定された濃度又はそれらの反映されたパラメータに関してWBグルコース測定値とともにWBプロファイルを記憶しうる。
【0251】
%-Hctの検出及び決定は、Hctパルスからの電流を用いて実行されうる。第2入力信号を加えることにより、WB試料の%-Hctの決定は、実質的に高められうる。
図27Aは、WB試料についての、予測された%Hctと%-Hctでの対応する偏りとのプロットを示す。これらWB試料の%-Hct値は、増加する%-Hctの順番でプロットされ28~60の範囲にわたっている。基準%-Hct値及び予測された%-Hct値は、左側のy軸に示され、一方、基準%-Hct値からの予測された%-Hctの偏りは、右側のy軸に示されている。このプロットから、予測された%-Hctが、基準%-Hct値とよく一致している、即ち、±3%-Hct(絶対%-Hct偏り=%H
pred-%Hct
Ref)以内である92%を超えるデータ点で、且つ±5%-Hct以内である99%を超えるデータ点て、よく一致することが分かる。一定期間にわたるグルコース値及び%-Hct値を有する人のWBの簡単なプロファイリングは、%-Hct値が時間をかけて大きく変化しない特定のユーザに対して認識されたパターンを提供する。%-Hct値の突然の変化が生ずることは、異なるユーザがバイオセンサシステムを使用している可能性があること、又はこの特定の試験に関連して実質的な誤差が存在する可能性があることを意味しうる。
【0252】
内在種、例えば、%-Hct、UA、及びCHの決定された濃度、又はそれらの代表的なパラメータの1つ以上を、決定されたグルコース値と共に報告することは、ユーザに関するWB試料のプロファイルを提供することである。このプロファイリングは、ユーザの長期的なWBプロファイルを提供することができ、漸時的な変化又は時間の経過に伴うその欠如を反映して、糖尿病の治療/管理に利益をもたらす。尿酸は、人体がアミノ酸を含む食品を分解するときに、血液中に通常見られる廃棄物である。高レベルの尿酸は痛風と関連しており、これは関節、特に足及び親指での腫れを引き起こす関節炎の一形態である。尿酸値は性別によって異なりうる。Clinical Reference Laboratory(CRL)によると、女性の正常値は、2.5~7.5mg/dLであり、男性では4.0~8.5mg/dLである。ただし、これらの値は、検査を行っている実験室に応じて変化しうる。最近の研究は、UAが糖尿病の発症と関連する可能性を示している。American Diabetes Association(米国糖尿病協会)によると、研究は、UAレベルとメタボリック症候群、インスリン抵抗性(身体がインスリンに反応できず使用も不可能)に関連する症状の組み合わせとの強力な関連を示しており、心臓病及び糖尿病を患う機会を増大させる。前糖尿病患者及び高齢者の研究は、高UAレベルが糖尿病を発症する可能性を高めることを示唆している。したがって、WB試料中の決定されたグルコース濃度及びUAの濃度又はUAに関連するパラメータの報告は、糖尿病管理の一部分として人の漸進的プロファイルを提供するであろう。
図27Bに示されたものは、WB試料における添加UAに対する応答である。この図から、パラメータRG
34及び電流i
G3,4の両方が、血液試料中のUAの存在を示すのに用いられうることが判る。
【0253】
本発明の様々な実施形態について説明したが、本発明の範囲内で別の実施形態及び実装が可能であることは、当業者には明らかであろう。
【0254】
これらの実施形態の各々及びその明らかな変形形態は、特許請求の範囲に記載されている特許請求された発明の精神及び範囲内に含まれるものと考えられる。さらに、本発明の概念は、先行する要素及び態様の任意の及びすべての組合せ並びに部分的な組み合わせを明白に含む。