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特許7066675炭素繊維及び/又はガラス繊維の強化材を有する複合材料をリサイクルする設備、及び該設備においてリサイクルする方法
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  • 特許-炭素繊維及び/又はガラス繊維の強化材を有する複合材料をリサイクルする設備、及び該設備においてリサイクルする方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-02
(45)【発行日】2022-05-13
(54)【発明の名称】炭素繊維及び/又はガラス繊維の強化材を有する複合材料をリサイクルする設備、及び該設備においてリサイクルする方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 11/12 20060101AFI20220506BHJP
   D01F 9/12 20060101ALN20220506BHJP
【FI】
C08J11/12 ZAB
D01F9/12
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019505291
(86)(22)【出願日】2017-04-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-05-30
(86)【国際出願番号】 ES2017070223
(87)【国際公開番号】W WO2017178681
(87)【国際公開日】2017-10-19
【審査請求日】2020-01-28
(31)【優先権主張番号】P201630474
(32)【優先日】2016-04-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】ES
(73)【特許権者】
【識別番号】518365385
【氏名又は名称】レシクラリア, エセ.エレ.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】アルバレス キンタナ, アレハンドロ
【審査官】森 健一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0039118(US,A1)
【文献】特開平11-335929(JP,A)
【文献】特開2008-000740(JP,A)
【文献】特開2009-082779(JP,A)
【文献】国際公開第2014/154703(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 11/00
B09B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素繊維及び/又はガラス繊維の強化材を有する複合材料をリサイクルするための設備(4)であって、前記強化材は、前記複合材料を形成するマトリックス内に含有されており、前記設備(4)は、第一ゾーン(1)、第二ゾーン(2)、及び第三ゾーン(3)に区分された水平型反応器(5)を備え、これら3つのゾーンは、密閉性であり、かつ独立しており、相互に一列に並んでおり、かつ先行ゾーンでプロセスが終了したときに限って、リサイクルすべき複合材料を前記先行ゾーンから次のゾーンへと通過させる各分離ゲート(6)によって相互に隔てられており、第一ゾーン(1)はさらに、複合材料を取り込むための取り込みゲート(7)と、マトリックスの分解により発生するガスのための第一のガス排出手段(8)とを備え、第二ゾーン(2)は、エアインジェクタ(10)と、マトリックス残渣と反応する空気によって発生するガスのための第二のガス排出手段(11)とを備え、第三ゾーン(3)は、強化材料のための出口ゲート(12)と、強化材料を冷却するための冷却手段とを備えることを特徴とし、
炭素繊維及び/又はガラス繊維の強化材を有する複合材料をリサイクルする方法が、
・熱分解から成る第一フェーズ、ここで複合材料は、第一ゾーン(1)に入り、この第一ゾーン(1)で複合材料は、連続的な回転運動を伴いながら、制御された雰囲気のもと、酸素の不存在下で、500~700℃に含まれる温度に加熱され、
・この第一フェーズでは、マトリックスは燃焼せずに熱分解し、マトリックスの分解によりガスの放出が生じ、この第一フェーズから生じる複合材は、強化材料と、マトリックス残渣との組み合わせであり、
マトリックス残渣ガス化から成る第二フェーズ、ここで第一ゾーン(1)で行われたプロセスが終了すると、第一フェーズから生じる複合材は、第二ゾーン(2)に入り、この第二ゾーン(2)では、第一フェーズから生じる複合材が500~700℃に含まれる温度に加熱されると同時に、空気の取り込みが行われ、
・この第二フェーズに導入される空気は、マトリックス残渣と反応し、該反応によってガスの放出が生じ、この第二フェーズから生じる材料は、強化材料であり、及び
・第二ゾーン(2)で行われたプロセスが終了したときの、第三フェーズ、該第三フェーズは、強化材料が、第三ゾーン(3)に入ることから成り、この第三ゾーン(3)では、冷却手段による強化材料の冷却が行われること、
を含む、設備(4)。
【請求項2】
第一ゾーン(1)から第二ゾーン(2)へと、第一フェーズから生じる複合材を通過させるための駆動機構を備えることを特徴とする、請求項1に記載の、炭素繊維及び/又はガラス繊維の強化材を有する複合材料をリサイクルするための設備(4)。
【請求項3】
第二ゾーン(2)から第三ゾーン(3)へと、第二フェーズから生じる材料を通過させるための駆動機構を備えることを特徴とする、請求項1又は2に記載の、炭素繊維及び/又はガラス繊維の強化材を有する複合材料をリサイクルするための設備(4)。
【請求項4】
第三ゾーン(3)の冷却手段が、水の通過により冷却されるコイル(13)によって形成されていることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の、炭素繊維及び/又はガラス繊維の強化材を有する複合材料をリサイクルするための設備(4)。
【請求項5】
水平型反応器(5)が、少なくともその内部表面に、アルミニウム製のシェル(16)を有することを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載の、炭素繊維及び/又はガラス繊維の強化材を有する複合材料をリサイクルするための設備(4)。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の設備(4)によって、炭素繊維及び/又はガラス繊維の強化材を有する複合材料をリサイクルする方法であって、
・熱分解から成る第一フェーズ、ここで複合材料は、第一ゾーン(1)に入り、この第一ゾーン(1)で複合材料は、連続的な回転運動を伴いながら、制御された雰囲気のもと、酸素の不存在下で、500~700℃に含まれる温度に加熱され、
・この第一フェーズでは、マトリックスは燃焼せずに熱分解し、マトリックスの分解によりガスの放出が生じ、この第一フェーズから生じる複合材は、強化材料と、マトリックス残渣との組み合わせであり、
マトリックス残渣ガス化から成る第二フェーズ、ここで第一ゾーン(1)で行われたプロセスが終了すると、第一フェーズから生じる複合材は、第二ゾーン(2)に入り、この第二ゾーン(2)では、第一フェーズから生じる複合材が500~700℃に含まれる温度に加熱されると同時に、空気の取り込みが行われ、
・この第二フェーズに導入される空気は、マトリックス残渣と反応し、該反応によってガスの放出が生じ、この第二フェーズから生じる材料は、強化材料であり、及び
・第二ゾーン(2)で行われたプロセスが終了したときの、第三フェーズ、該第三フェーズは、強化材料が、第三ゾーン(3)に入ることから成り、この第三ゾーン(3)では、冷却手段による強化材料の冷却が行われること
を含むことを特徴とする、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、材料リサイクルの技術分野に関し、特に炭素繊維及び/又はガラス繊維の強化材(この強化材は、複合材料を形成するマトリックスとともに、マトリックス内に含有されている)を有する複合材料リサイクルに関する。
【背景技術】
【0002】
複合材料とは、2種以上の成分から構成される材料であり、この複合材の特性は、これらの構成成分が単独で存在する材料の特性に比べて、優れている。
【0003】
複合材料は、2つの相によって形成され、1つはマトリックスと呼ばれる連続相、もう1つは強化材と呼ばれる分散相である。強化材によって、複合材料に機械的な特性がもたらされ、その一方でマトリックスは、耐熱性及び環境に対する耐性をもたらす。マトリックス強化材は、界面によって隔てられている。
【0004】
複合材料の市場は、毎年成長し続けており、日常生活でますます増加する材料に加えて、その寿命を終えると、残留物も増える。
【0005】
構成成分のリサイクルに際して最大の品質を得るために、元の形態にできるだけ近い形態で材料を回収することが必要である。よって、長繊維複合材料に由来する繊維の場合、ほぼ同じ長さで、かつマトリックスに由来する残渣が完全に無い状態で繊維を回収する必要があり、こうしてこの繊維は利用可能になる。
【0006】
複合材料をリサイクルするためのほとんどの操作では、短繊維が回収される。なぜならばそのプロセスは、サイズの減少、及び断片化技術に基づいているからである。回収された短繊維は、短繊維複合材料を製造するためにしか、使用できない。
【0007】
今日、複合材料をリサイクルするために最も一般的に使用される2つの方法は、ベース材料のほとんどの特性が失われてしまう機械的なリサイクルと、エネルギーの回収のみが可能な焼却である。
【0008】
参考特許文献としては、欧州特許出願第0750944号、及び米国特許出願第2016039118号を、従来技術の例として挙げることができる。
【0009】
参考特許文献の欧州特許出願第0750944号は、材料をリサイクルするためのプロセスにおいて材料の粒径を、約40μmという小さな平均直径まで減少させるための超高エネルギー衝撃システムを開示しており、このシステムは、前記材料を約-40~約-450°Fの範囲内の温度に冷却するための冷却部、冷却された材料の粒径を減少させるための粉砕部(この粉砕部は、約600~約1500フィート/秒の範囲にある先端速度で稼働するロータを備えるものである)、及び前記粉砕部内で気体雰囲気を調整するための雰囲気調整部を含む。
【0010】
この場合、材料を粉砕するためのシステムは、粉砕前に材料のガラス転移温度未満の温度に事前に冷却されることが、記載されている。切削の間、材料はほぼ同じサイズの粒子に粉砕される。これによって材料は、完全に微粒子へと粉砕され得る。
【0011】
よってこの装置は、粉砕された材料を後に分離可能にするものではない。さらに、非常に低い冷却温度が必要なことによって、プロセスにおいて高いコストが発生する。
【0012】
その一方で、米国特許出願第2016039118号は、複合材料から炭素繊維を回収するための熱分解プラントを開示している。この熱分解プラントは、稼働の間に連続的に稼働する、材料を連続的に熱分解するための細長い熱分解炉と、加工すべき材料を熱分解炉へと、熱分解炉の一方の端部で導入するための搬入部と、熱分解炉から回収された炭素繊維材料を、もう一方の端部で排出するための搬出部と、熱分解炉で製造された熱分解ガスのためのガス排出デバイスと、熱分解炉でガスの少なくとも個々の構成成分を制御するためのコントロールデバイスと、を備える。
【0013】
この熱分解炉は、少なくとも以下の構成要素を有する間接加熱式回転管炉である:
・材料を収容するためのスペースを形成するとともに、搬入部及び搬出部に接続されている、細長い回転管、この回転管は、その長さの少なくとも一部にわたって加熱分解の間に形成される熱分解ガスを排出するための出口開口部を有する円筒形壁面に設けられており、及び
・外部から遮断されており、かつ少なくとも部分的に回転管を取り囲むハウジングであって、該ハウジングは、搬入部のための開口部、及びまた任意選択的に搬出部のための開口部を有し、かつ熱分解ガスのための排出ラインを有するものである。
【0014】
異なって、又は多様に制御可能なガス温度を有する複数の部分は、回転管の長さに沿ってハウジング内に設けられている。ここで回転管における出口開口部は、最も高いガス温度を有する部分に、少なくとも設けられている。熱分解炉は様々な部分、つまり少なくとも1つの加熱ゾーン、第一の熱分解ゾーン、第二の熱分解ゾーン、及び冷却ゾーンを有する。
【0015】
熱分解炉におけるガスの組成及び温度は、回転管の様々な部分で、多様に、つまり、第一の熱分解ゾーンにおける酸素の規定割合及び規定温度によって、また第二の熱分解ゾーンにおける酸素の規定割合及び規定温度によって、制御することができる。
【0016】
この場合、熱分解法において実際に酸素が使用されるため、雰囲気及び内部温度を包括的に制御することが、燃焼発生を防止するために必要となる。
【0017】
また、この熱分解法では、材料の搬入、材料の加熱、ガスの排出、繊維の分離、及びマトリックスの分解、及び繊維の搬出は、炉内にある1つの同じチャンバ内で連続的に行われるため、リサイクルすべき生成物は、チャンバの一方の端部を通じて入り、生じる生成物はもう一方の端部を通じて出る。このチャンバはさらに、連続的に回転する。
【0018】
このため、材料は常に、複合材料である当初から、繊維及び樹脂に分解される最後まで回転にさらされるので、最終的な生成物の品質は比較的低い。
【0019】
さらに、全てのプロセスが連続的に行われるため、全ての材料が全工程を通じてチャンバ内に保たれるとともに、その構成要素が多かれ少なかれ分離する材料間の明確な分離が行われないので、こうして得られる生成物自体は、制御された雰囲気条件から移行したゾーンでは混じり合ってしまい、より効率的な工程効率が妨げられる。
【発明の詳細な説明】
【0020】
炭素繊維及び/又はガラス繊維の強化材を有する複合材料をリサイクルするための設備であって、前記強化材が、ここに記載するように複合材料を形成するものとともにマトリックス中に含有されている設備は、第一ゾーン、第二ゾーン、及び第三ゾーンに区分された水平型反応器を備え、これらのゾーンは密閉性であり、かつ独立しており、相互に一列に配置されており、かつ先行ゾーンでプロセスが終了したときに限って、リサイクルすべき複合材料を先行ゾーンから次のゾーンへと通過させるゲートにより、相互に分離されている。
【0021】
第一ゾーンはさらに、複合材料を取り込むための取り込みゲートと、複合材料を回転させるための回転機構と、マトリックスの分解により発生するガスのための第一のガス排出手段とを備える。第二ゾーンは、エアインジェクタと、マトリックス残渣と反応する空気によって発生するガスのための第二のガス排出手段とを備え、第三ゾーンは、強化材料のための出口ゲートと、強化材料を冷却するための冷却手段とを備える。
【0022】
好ましい実施態様によれば、リサイクルのための設備は、第一ゾーンから第二ゾーンへと、生成する複合材の収容容器を通過させるための駆動機構を備える。
【0023】
好ましい実施態様によれば、この設備は、第二ゾーンから第三ゾーンへと、生成する材料の収容容器を通過させるための駆動機構を備える。
【0024】
好ましい実施態様によれば、第三ゾーンの冷却手段は、水の通過により冷却されるコイルによって形成されている。
【0025】
別の態様に従う好ましい実施態様によれば、水平型反応器は、少なくともその内部表面に、アルミニウム製のシェルを有する。
【0026】
一方で本明細書は、先に規定した設備によって、炭素繊維及び/又はガラス繊維の強化材を有する複合材をリサイクルするための方法を開示する。
【0027】
この方法は、以下で特定する一連のフェーズを含む。
【0028】
第一フェーズは熱分解から成り、ここで複合材料は、水平型反応器から独立した密閉性の第一ゾーンに入り、この第一ゾーンで複合材料は、連続的な回転運動を伴いながら、制御された雰囲気のもと、酸素の不存在下で、500~700℃に含まれる温度に加熱される。
【0029】
この第一フェーズでは、マトリックスは燃焼せずに、熱分解する。この第一フェーズから生じる複合材は、強化材料と、マトリックス残渣との組み合わせである。また、マトリックスの分解により、ガスが放出される。
【0030】
このフェーズを行うために、第一ゾーンのゲート、すなわち複合材料を取り込むための取り込みゲート、及び第一ゾーンを第二ゾーンから分離する分離ゲートを閉鎖し、材料は、第二フェーズに行く前に、熱分解によって処理される。
【0031】
複合材料のポリマーマトリックスは、あらゆる種類の樹脂又はさらにはポリマーによって形成されていてよく、「樹脂」又は「ポリマー」という用語には、ポリエステル、ビニルエステル、エポキシ、ビスフェノール、又はメラミンが含まれる。
【0032】
強化剤又は強化材は、ガラス繊維及び/又は炭素繊維から成っていてよい。
【0033】
複合材料は、自身の何らかの特性を改善若しくは強化するため、又は形成プロセスにおいて補助するために、その他の成分を少ない割合で含有することができ、その例は例えば、促進剤、着色剤、流動化剤、触媒、微小球、フォーム、離型剤、金属成分、又は抗紫外線成分である。
【0034】
よって、熱分解から得られる副生成物は、熱によるマトリックスのクラッキングから生じる濃縮可能な液体であり、そのため入ってくる生成物に応じて、フェノール、脂肪族化合物、芳香族化合物などを得ることができる。このフェーズで得られる気体は大部分が炭化水素であり、凝縮できない。
【0035】
この第二フェーズは、第一フェーズから生じる材料の気化から成り、ここでは第一ゾーンで行われたプロセスが終了すると、こうして生じた材料は、水平型反応器から独立している密閉性の第二ゾーンに入り、この第二ゾーンでは、材料を固定された位置に保ちながら、生成する材料が500~700℃に含まれる温度に加熱されると同時に、空気の取り込みが行われる。
【0036】
よって、第二フェーズのプロセスは、第一フェーズのプロセスが終了したときに始まり、第一フェーズから生じた材料は、第二ゾーンへと通過することが分かる。この場合、この第二ゾーンのゲート、すなわち第二ゾーンを第一ゾーン及び第三ゾーンから分離するための各分離ゲートは、同様に閉鎖され、すると第二フェーズが、これらの条件下で始まる。
【0037】
この第二フェーズに導入される空気は、マトリックス残渣と反応し、この反応によってガスの放出が生じ、この第二フェーズから生じる材料は、強化材料である。
【0038】
最後に、第三フェーズは、第二ゾーンで行われたプロセスが終了するとすぐに始まり、強化材料は、水平型反応器から独立している密閉性の第三ゾーンに入る。冷却手段による強化材料の冷却は、この第三ゾーンで行われる。
【0039】
この第三フェーズで行われるプロセスの間に、第三ゾーンのゲート、すなわち第二ゾーン及び強化材料のための出口ゲートから第三ゾーンを分離する分離ゲートは、閉鎖したままに保つ。
【0040】
ここに提案する炭素繊維及び/又はガラス繊維の強化材を有する複合材料をリサイクルするための設備によって、従来技術に対して著しい改善が達成される。
【0041】
以上が、密閉性で独立した、本設備の3つのゾーンの結果である。本リサイクル方法は、3つの異なる連続したフェーズで行われ、ここでこれらのフェーズはそれぞれ、先行フェーズが終了したときに始まる。これにより、リサイクル可能な成分の効果的な分離、及びガスの利用が達成される。
【0042】
出発材料に応じて、ガラス繊維又は炭素繊維が、破壊及び粉砕されることなく、生成物として得られる。
【0043】
こうして得られる生成物の品質は非常に高い。それは一方では、分解すべき材料全般における作業温度を均一化するために、熱分解フェーズにおいて複合材料を連続的に回転させるという事実の結果であり、他方では第二フェーズにおいて材料を、第一フェーズの結果として残留し得る残渣を除去するプロセスにかけるという事実の結果であり、これらの事実によって、最終的な生成物の品質が向上する。
【0044】
本設備の第一ゾーンにおいて酸素が存在しない制御された雰囲気の結果として、実際に単純に燃焼させることなく、非常に高い温度による複合材料の熱分解が可能になる。
【0045】
このようにして、リサイクルのための単純で非常に効率的な設備、及びこの設備でリサイクルするための単純で非常に効率的な方法が得られる。
【0046】
本発明の特徴のよりよい理解に役立つように、好ましい実施態様に従って、本説明の一体的な部分として一連の図面を添付するが、以下は単に説明的な描写に過ぎず、本発明の特徴を制限するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1】本発明の好ましい実施態様について、炭素繊維及び/又はガラス繊維の強化材を有する複合材料をリサイクルするための設備に関する長手方向断面の概略図を示す。
図2】本発明の好ましい実施態様について、炭素繊維及び/又はガラス繊維の強化材を有する複合材料をリサイクルするための設備に関するA-A’の断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0048】
これらの図面から、本発明の好ましい実施態様において、炭素繊維及び/又はガラス繊維の強化材(この強化材は、ここで提案されるように複合材料を形成するものとともにマトリックス中に含有されている)を有する複合材料をリサイクルするための設備4がどのようなものであるかが分かり、この設備は、第一ゾーン1、第二ゾーン2、及び第三ゾーン3に区分された水平型反応器5を備え、これらのゾーンは密閉性であり、かつ独立しており、相互に一列に配置されており、かつ先行ゾーンでプロセスが終了したときに限って、リサイクルすべき複合材料を先行ゾーンから次のゾーンへと通過させる各分離ゲート6により、相互に分離されている。
【0049】
本発明のこの好ましい実施態様では、複合材料がポリマーマトリックス、例えばポリエステルによって形成されていること、及び強化材が炭素繊維から成ることを、我々は想定している。
【0050】
図1に示したように、第一ゾーン1は、複合材料を取り込むための取り込みゲート7、及びマトリックスの分解により生じるガスのための第一のガス排出手段8を備える。
【0051】
図2から分かるように、この第一ゾーン1はさらに、分解すべき材料全体にわたって均一な温度を達成するために、複合材料を回転させるための回転機構9を備える。
【0052】
図1に示したように、第二ゾーン2は、エアインジェクタ10と、マトリックス残渣と反応する空気により生じるガスのための第二のガス排出手段11とを備える。
【0053】
本発明のこの好ましい実施態様において、空気は、空気の流れを制御するための流量調整部18により、空気取り込み部17を通じてインジェクタに達する。この場合におけるインジェクタは、ディフューザを有する。
【0054】
図1ではまた、第三ゾーン3が、強化材料のための出口ゲート12と、強化材料を冷却するための冷却手段とを備えることが分かる。つまり炭素繊維は、当初複合材料の一部であった。
【0055】
本発明のこの好ましい実施形態において、図1に示したような冷却手段は、冷却水取り込み部14を通じて導入された水の通過により冷却されるコイル13によって形成されており、この水は、コイル13を通って強化材料を冷却した後、冷却水出口15を通じて出る。
【0056】
本発明のこの好ましい実施態様において、リサイクルのための設備4は、第一ゾーン1から第二ゾーン2へと、生じる複合材を通過させるための駆動機構(図示せず)を備え、また第二ゾーン2から第三ゾーン3へと、生じる複合材を通過させるための別の駆動機構(図示せず)を備える。
【0057】
本発明のこの好ましい実施態様の水平型反応器5は、少なくともその内側表面に、アルミニウム製のシェル16を備える。
【0058】
本明細書はさらに、先に規定した設備4によって、炭素繊維の強化材を有する、この場合にはポリエステルによって形成された複合材料をリサイクルするための方法を提案する。この方法は、第一フェーズ、第二フェーズ、及び第三フェーズを含む。
【0059】
第一フェーズは、リサイクルのための設備4の水平型反応器5の第一ゾーン1で行われ、この第一フェーズを始めるために、複合材料は第一ゾーン1に入り、そのゲート6、7は、その直後に配置された第二ゾーン2から独立した密閉性のゾーンになるように、閉鎖される。
【0060】
第一フェーズでは、複合材料について熱分解を行い、材料における温度が均一化することを確実にするために連続的な回転を伴いながら、酸素の不存在下、制御された雰囲気で500~700℃に含まれる温度に、複合材料を加熱する。
【0061】
これにより、ポリエステルで形成されたマトリックスは、燃焼せずに、熱分解する。この第一フェーズから生じる複合材は、強化材料の組み合わせ(この場合は、炭素繊維とマトリックス残渣)であり、この残渣は、濃縮可能な液体と、マトリックスの分解により生じる凝縮できないガスである。これらのガスは、第一のガス排出手段8によって押し出される。
【0062】
この熱分解プロセスが終了したら、第一ゾーン1と第二ゾーン2との間にある分離ゲート6を開け、生じる材料が第二ゾーン2に行き、ここで、第二ゾーン2が密閉性であるとともに、第一ゾーン1及び第三ゾーン3(これらのゾーンはそれぞれ順に、第二ゾーンの前、及びその後に配置されている)から独立するように、この分離ゲート6が再度閉鎖されるとすぐに、本方法の第二フェーズが始まる。
【0063】
この第二フェーズは、エアインジェクタ10を通じて第二ゾーン2における空気取り込み部によって、第一フェーズから生じる材料を気化させることから成る。この空気取り込みは、得られる複合材が、500~700℃に含まれる温度に加熱されるのと同時に行う。この第二フェーズにおいて材料は、回転しない位置に固定されて保たれるように、固定支持体19に配置されている。
【0064】
導入される空気はマトリックス残渣と反応し、この反応によってガスの放出が生じ、この第二フェーズから生じる材料は、強化材料、特に炭素繊維である。
【0065】
このフェーズが終了したらすぐに、第二ゾーン2及び第三ゾーン3の間にある分離ゲート6を開け、こうして得られる強化材料は、第三ゾーン3に行く。この分離ゲート6は、再度閉鎖される。出口ゲート12も閉鎖されたままに保たれるので、第三ゾーン3は、密閉性で独立したゾーンとなり、その後、本方法の第三フェーズを始めることができる。
【0066】
第三フェーズは、強化材料、すなわち得られた炭素繊維を、冷却手段により冷却することから成る。冷却したらすぐに、炭素繊維は第三ゾーン3から、出口ゲート12を通じて出て、プロセスは終了する。
【0067】
説明した実施態様は、本発明の一例に過ぎない。よって、ここで使用する詳細、用語、及び具体的なフレーズは、限定的なものとみなされるべきではなく、むしろ特許請求の範囲の根拠として、また包括的な説明をもたらす代表的な根拠として、また本発明を実施するために、当業者に充分な情報をもたらす代表的な根拠としてのみ、理解されるべきである。
【0068】
ここに提案する炭素繊維及び/又はガラス繊維の強化材を有する複合材料をリサイクルするための設備及び方法によって、従来技術に対して著しい改善が達成される。
【0069】
よって、3つのフェーズを独立して行うことを可能にするこの設備によって、1つの同じチャンバで連続的に行われるためフェーズが混じり合ってしまう場合に比べて、より高品質の強化繊維が可能になる。同時に、この設備により、マトリックスの分解から生じるガスを再利用することができる。さらに、当初有していた性質と同じ性質の繊維が得られる。すなわち、繊維は切断又は切削されることがないため、多くの用途で再利用できる。
【0070】
3つのフェーズを行うことは、第一フェーズで行われる材料の回転の結果として、また第二フェーズで材料を固定位置に保つ結果として、得られる材料のより高い品質にも貢献する。
【0071】
このようにして、非常に効率的なリサイクル設備及びリサイクル方法が得られ、再利用可能な高品質な強化材料及びガスが、低コストで、非常に単純な設備で得られる。
図1
図2