IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ バイエル・クロップサイエンス・アーゲーの特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-02
(45)【発行日】2022-05-13
(54)【発明の名称】ハロゲン化二環式化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 471/04 20060101AFI20220506BHJP
   C07D 487/04 20060101ALI20220506BHJP
【FI】
C07D471/04 107A
C07D487/04 144
C07D471/04 CSP
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2019513945
(86)(22)【出願日】2017-09-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-10-17
(86)【国際出願番号】 EP2017072363
(87)【国際公開番号】W WO2018050515
(87)【国際公開日】2018-03-22
【審査請求日】2020-09-02
(31)【優先権主張番号】16188760.9
(32)【優先日】2016-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】507203353
【氏名又は名称】バイエル・クロップサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100151448
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 孝博
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100203035
【弁理士】
【氏名又は名称】五味渕 琢也
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【弁理士】
【氏名又は名称】今藤 敏和
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100202267
【弁理士】
【氏名又は名称】森山 正浩
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】モスリン,マルク
(72)【発明者】
【氏名】フィッシャー,リュディガー
(72)【発明者】
【氏名】ヘイガー,ドミニク
(72)【発明者】
【氏名】ホフマイスター,ラウラ
(72)【発明者】
【氏名】カウシュ-ビジーズ,ニーナ
(72)【発明者】
【氏名】ヴィルケ,デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】ウィロット,マシュー
【審査官】伊佐地 公美
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/073627(WO,A1)
【文献】国際公開第2002/038569(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0331379(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0153828(US,A1)
【文献】L'HELGOUAL'CH, J.-M. et al.,Journal of Organic Chemistry,2008年,Vol. 73,pp. 177-183
【文献】SNEGAROFF, K. et al.,Chemistry - A European Journal,2009年,Vol. 15,pp. 10280-10290
【文献】FRISCHMUTH, A. et al.,Angewandte Chemie, International Edition,2014年,Vol. 53,pp. 7928-7932, SI pp. 40-41
【文献】SNEGAROFF, K. et al.,Chemistry - A European Journal ,2010年,Vol. 16,pp. 8191-8201
【文献】BRESSER, T. et al.,Journal of Organic Chemistry,2010年,Vol. 75,pp. 4686-4695
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
CAplus/REGISTRY(STN)
CASREACT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(II):
Q-Hal(II)
〔式中
Qは、構造要素
【化1】

であり、記号#は前記分子の残部に対する結合を示し、
はNまたはCRであり、
はNまたはCRであり、
はNまたはCであり、
はO、S、NまたはNRであり、
はNまたはCであり、
はNまたはCHであり、但し、Qは、下記Q2、Q3、Q5、Q6、Q8、Q9、Q10、Q11、Q12、Q13及びQ14から成る群から選択される構造要素であり、

は、水素、(C-C)アルキル、(C-C)ハロアルキル、(C-C)シアノアルキル、(C-C)ヒドロキシアルキル、(C-C)アルコキシ-(C-C)アルキル、(C-C)ハロアルコキシ-(C-C)アルキル、(C-C)アルケニル、(C-C)アルケニルオキシ-(C-C)アルキル、(C-C)ハロアルケニルオキシ-(C-C)アルキル、(C-C)ハロアルケニル、(C-C)シアノアルケニル、(C-C)アルキニル、(C-C)アルキニルオキシ-(C-C)アルキル、(C-C)ハロアルキニル、(C-C)シクロアルキル、(C-C)シクロアルキル-(C-C)シクロアルキル、(C-C)アルキル-(C-C)シクロアルキル、ハロ(C-C)シクロアルキル、(C-C)アルキルチオ-(C-C)アルキル、(C-C)アルキルスルフィニル-(C-C)アルキル、(C-C)アルキルスルホニル-(C-C)アルキルまたは(C-C)アルキルカルボニル-(C-C)アルキルであり、
は、(C-C)アルキル、(C-C)ハロアルキル、(C-C)シアノアルキル、(C-C)ヒドロキシアルキル、(C-C)アルコキシ-(C-C)アルキル、(C-C)ハロアルコキシ-(C-C)アルキル、(C-C)アルケニル、(C-C)アルケニルオキシ-(C-C)アルキル、(C-C)ハロアルケニルオキシ-(C-C)アルキル、(C-C)ハロアルケニル、(C-C)シアノアルケニル、(C-C)アルキニル、(C-C)アルキニルオキシ-(C-C)アルキル、(C-C)ハロアルキニル、(C-C)シクロアルキル、(C-C)シクロアルキル-(C-C)シクロアルキル、(C-C)アルキル-(C-C)シクロアルキル、ハロ(C-C)シクロアルキル、(C-C)アルキルチオ-(C-C)アルキル、(C-C)アルキルスルフィニル-(C-C)アルキル、(C-C)アルキルスルホニル-(C-C)アルキルまたは(C-C)アルキルカルボニル-(C-C)アルキルであり、および
Aは、水素、シアノ、ハロゲン、(C-C)アルキル、(C-C)ハロアルキル、(C-C)アルケニル、(C-C)ハロアルケニル、(C-C)アルキニル、(C-C)ハロアルキニル、(C-C)シクロアルキル、(C-C)シクロアルキル-(C-C)シクロアルキル、(C-C)アルキル-(C-C)シクロアルキル、(C-C)アルコキシ、(C-C)ハロアルコキシ、(C-C)アルコキシイミノ、(C-C)アルキルチオ、(C-C)ハロアルキルチオ、(C-C)アルキルスルフィニル、(C-C)ハロアルキルスルフィニル、(C-C)アルキルスルホニル、(C-C)ハロアルキルスルホニル、(C-C)アルキルスルホニルオキシ、(C-C)アルキルカルボニル、(C-C)ハロアルキルカルボニル、アミノカルボニル、(C-C)アルキルアミノカルボニル、ジ-(C-C)アルキルアミノカルボニル、(C-C)アルキルスルホニルアミノ、(C-C)アルキルアミノ、ジ-(C-C)アルキルアミノ、アミノスルホニル、(C-C)アルキルアミノスルホニルまたはジ-(C-C)アルキルアミノスルホニルであるか、
またはAは-O-CF-O-であり、Qおよびそれに結合している炭素原子と一緒に、5員環を形成し、ここで、Qは炭素であり、
Halはハロゲンである〕
の化合物を調製する方法であって、
第1のプロセスステップa)で、化合物Q-H(式中、Qは上記で定義の通り)を、構造(NR)-Zn-Rまたは(NR-Zn〔式中、
はハロゲンまたは-O-ピバロイルであり、
およびRは一緒に-(CH-、-(CH-または-(CHO(CH-基を形成し、これらの基のそれぞれは、1、2、3または4個のRラジカルで置換されてもよく、Rは、メチル、エチル、n-プロピルおよびi-プロピルからなる群から選択される〕
の有機亜鉛塩基と反応させて、
式(IIIa)または式(IIIb):
【化2】

〔式中、QおよびRはそれぞれ上記で与えられた定義を有する〕
の化合物を得て、この式(IIIa)または(IIIb)の化合物を、第2のプロセスステップb)で構造X-Hal〔式中、Xはハロゲンであり、Halは上記の定義を有する〕の化合物と反応させて式(II)の化合物を得ることを特徴とする、方法。
【請求項2】
Qが、下記Q2、Q3、Q5、Q6、Q8、Q9、Q10、Q11、Q12、Q13及びQ14から成る群から選択される構造要素であり、
【化3】

が、(C-C)アルキル、(C-C)ハロアルキル、(C-C)アルコキシ-(C-C)アルキル、(C-C)ハロアルコキシ-(C-C)アルキル、(C-C)アルキルチオ-(C-C)アルキル、(C-C)アルキルスルフィニル-(C-C)アルキル、(C-C)アルキルスルホニル-(C-C)アルキルまたは(C-C)アルキルカルボニル-(C-C)アルキルであり、
Aが、フッ素、塩素、臭素、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、フルオロエチル(CHCFH、CHFCH)、ジフルオロエチル(CFCH、CHCHF、CHFCFH)、トリフルオロエチル、(CHCF、CHFCHF、CFCFH)、テトラフルオロエチル(CHFCF、CFCHF)、ペンタフルオロエチル、トリフルオロメトキシ、ジフルオロクロロメトキシ、ジクロロフルオロメトキシ、トリフルオロメチルチオ、トリフルオロメチルスルフィニルまたはトリフルオロメチルスルホニルであり、
HalおよびXが同じ定義を有し、フッ素、塩素、ヨウ素または臭素であり、
ハロゲンであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
Qが、Q2、Q3、Q10、Q12及びQ14からなる群からの構造要素であり、
が、(C-C)アルキルまたは(C-C)アルコキシ-(C-C)アルキルであり、
Aが、トリフルオロメチル、フルオロエチル(CHCFH、CHFCH)、ジフルオロエチル(CFCH、CHCHF、CHFCFH)、トリフルオロエチル(CHCF、CHFCHF、CFCFH)、テトラフルオロエチル(CHFCF、CFCHF)、ペンタフルオロエチル、トリフルオロメチルチオ、トリフルオロメチルスルフィニルまたはトリフルオロメチルスルホニルであり、
HalおよびXが、同じ定義を有し、ヨウ素または臭素であり、
が、塩素であることを特徴とする、請求項1および2のいずれか1項に記載の方法。
【請求項4】
Qが、構造要素Q2、Q3、Q12、またはQ14であり、
が、メチル、エチル、n-プロピルまたはイソプロピル、特にメチルであり、
Aが、トリフルオロメチルであり、
HalおよびXが、同じ定義を有し、ヨウ素または臭素であり、
が、塩素であることを特徴とする、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
およびRが、一緒に、4個のメチル基により置換される-(CH-基を形成することを特徴とする、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記有機亜鉛塩基が、式(V):
(V) (TMP)ZnCl2-x
〔式中、xは数値1または2であり、TMPはテトラメチルピペリジンである
の化合物であることを特徴とする、請求項1~5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記有機亜鉛塩基が、アルカリ金属ハロゲン化物またはアルカリ土類金属ハロゲン化物と共に存在することを特徴とする、請求項1~6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記有機亜鉛塩基が、前記化合物Q-Hを基準にして、0.5~5当量の合計量で使用されることを特徴とする、請求項1~7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記化合物X-Halが、元素状ハロゲンであることを特徴とする、請求項1~8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記化合物X-Halが、前記化合物Q-Hを基準にして、0.5~10.0当量の合計量で使用されることを特徴とする、請求項1~9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記方法が、テトラヒドロフラン(THF)、1,4-ジオキサン、ジエチルエーテル、ジグリム、メチルtert-ブチルエーテル(MTBE)、tert-アミルメチルエーテル(TAME)、2-メチル-THF、トルエン、キシレン、メシチレン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N-メチルピロリドン(NMP)、N-エチル-2-ピロリドン(NEP)、N-ブチル-2-ピロリドン(NBP);N,N’-ジメチルプロピレン尿素(DMPU)、ハロ炭化水素、芳香族炭化水素、塩化炭化水素、テトラクロロエチレン、テトラクロロエタン、ジクロロプロパン、塩化メチレン、ジクロロブタン、クロロホルム、四塩化炭素、トリクロロエタン、トリクロロエチレン、ペンタクロロエタン、ジフルオロベンゼン、1,2-ジクロロエタン、クロロベンゼン、ブロモベンゼン、ジクロロベンゼン、1,2-ジクロロベンゼン、クロロトルエン、トリクロロベンゼン;4-メトキシベンゼン、フッ化脂肪族炭化水素、フッ化芳香族炭化水素、トリクロロトリフルオロエタン、ベンゾトリフルオリドおよび4-クロロベンゾトリフルオリド、またはこれらの溶媒の内の少なくとも2種の相互の混合物からなる群より選択される溶媒の存在下で行われることを特徴とする、請求項1~10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記溶媒が、THFまたはN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)であることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
プロセスステップa)が、0℃~80℃の温度で行われることを特徴とする請求項1~12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
プロセスステップb)が、0℃~40℃の温度で行われることを特徴とする請求項1~13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
式Q-H-1の化合物
【化4】
【請求項16】
式(II):
Q-Hal(II)
〔式中、
Qは、Q2、Q3、Q10、Q12及びQ14から成る群から選択され、

は、(C -C )アルキルまたは(C -C )アルコキシ-(C -C )アルキルであり
Aは、トリフルオロメチル、フルオロエチル(CH CFH 、CHFCH )、ジフルオロエチル(CF CH 、CH CHF 、CHFCFH )、トリフルオロエチル(CH CF 、CHFCHF 、CF CFH )、テトラフルオロエチル(CHFCF 、CF CHF )、ペンタフルオロエチル、トリフルオロメチルチオ、トリフルオロメチルスルフィニルまたはトリフルオロメチルスルホニルであり
Halはヨウ素または臭素である
の化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物Q-Hから出発して、式(IIIa)または(IIIb)
【化1】
【0002】
の中間体を経由して進める、式(II)
Q-Hal(II)
のハロゲン化二環式系の調製方法に関し、式中、式Q-H、(II)、(IIIa)および(IIIb)で示した構造要素は、下記で与えられる定義を有する。本発明はさらに、ハロゲン化二環式系およびこの種の中間体に関する。
【背景技術】
【0003】
式(II)のハロゲン化二環式系は、医薬品および農業用化学物質産業にとって、工業的に極めて重要であり、特に、例えば、殺虫剤として効果的な化合物の調製において重要な中間体である。
【0004】
文献は、式(II)の化合物は、第1ステップで、極めて反応性のリチウム塩基、例えば、リチウムジイソプロピルアミドまたはn-ブチルリチウムの存在下での金属化およびその後のハロゲン化源、例えば、ヘキサクロロエタンまたはN-ヨードスクシンイミドとの反応により調製できる(Journal of Organic Chemistry 2014,79,2203-2212およびTetrahedron Letters 2012,53,1036-1041に記載のように)。式(II)の化合物は、二環式ヒドロキシル化合物と三塩化リンとの反応により調製できることも同様に知られている(国際公開第2013/180193号に記載のように)。しかし、このようなハロゲン化二環式系に関して現在まで先行技術に記載されている化学合成法は、工業的観点からは経済的に実施可能ではなく、および/または他にも欠点がある方法を利用することが極めて多い。
【0005】
欠点は、特に高度に置換された二環式系の場合の低化学収率、極低温での金属化(-80℃)による性能、および概して困難なハロゲン化の位置選択性および化学選択性である。さらに、臭素原子またはさらに特に、ヨウ素原子のこのような二環式ヒドロキシル化合物中への導入は概して問題があり、または今日まで可能とはなっていない。したがって、少しでも可能な場合、調製は極めて高価になり、工業規模の商業プロセスには適さない。さらに、対応する化合物はほとんど市販されていない。このことは、特に、7-メチル-7H-イミダゾ[4,5-c]ピリダジン、3-メチル-3H-イミダゾ[4,5-c]ピリジンおよび3-メチル-3H-イミダゾ[4,5-b]ピリジンに対し当てはまる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2013/180193号
【非特許文献】
【0007】
【文献】Journal of Organic Chemistry 2014,79,2203-2212
【文献】Tetrahedron Letters 2012,53,1036-1041
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記で概略を述べた欠点に関しては、簡略化した工業的におよび経済的に実施可能なハロゲン化二環式系、特に、式(II)のハロゲン化二環式系の調製方法に関し、差し迫った必要性がある。この方法で得られるハロゲン化二環式系は、良好な収率、高純度を有し、経済的に得られるのが好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
意外にも、式(II)のハロゲン化二環式系は、好都合にも、有機亜鉛塩基を用いた方法で調製できることが明らかになった。
【0010】
したがって、本発明は、式(II)
Q-Hal(II)、
の化合物を調製する方法を提供し、式(立体配置1)中
Qは、構造要素
【化2】
【0011】
であり、記号#は分子の残部に対する結合を示し、
はNまたはCRであり、
はNまたはCRであり、
はNまたはCであり、
はO、S、NまたはNRであり、
はNまたはCであり、
はNまたはCHであり、
は、水素、(C-C)アルキル、(C-C)ハロアルキル、(C-C)シアノアルキル、(C-C)ヒドロキシアルキル、(C-C)アルコキシ-(C-C)アルキル、(C-C)ハロアルコキシ-(C-C)アルキル、(C-C)アルケニル、(C-C)アルケニルオキシ-(C-C)アルキル、(C-C)ハロアルケニルオキシ-(C-C)アルキル、(C-C)ハロアルケニル、(C-C)シアノアルケニル、(C-C)アルキニル、(C-C)アルキニルオキシ-(C-C)アルキル、(C-C)ハロアルキニル、(C-C)シクロアルキル、(C-C)シクロアルキル-(C-C)シクロアルキル、(C-C)アルキル-(C-C)シクロアルキル、ハロ(C-C)シクロアルキル、(C-C)アルキルチオ-(C-C)アルキル、(C-C)アルキルスルフィニル-(C-C)アルキル、(C-C)アルキルスルホニル-(C-C)アルキルまたは(C-C)アルキルカルボニル-(C-C)アルキルであり、
は、(C-C)アルキル、(C-C)ハロアルキル、(C-C)シアノアルキル、(C-C)ヒドロキシアルキル、(C-C)アルコキシ-(C-C)アルキル、(C-C)ハロアルコキシ-(C-C)アルキル、(C-C)アルケニル、(C-C)アルケニルオキシ-(C-C)アルキル、(C-C)ハロアルケニルオキシ-(C-C)アルキル、(C-C)ハロアルケニル、(C-C)シアノアルケニル、(C-C)アルキニル、(C-C)アルキニルオキシ-(C-C)アルキル、(C-C)ハロアルキニル、(C-C)シクロアルキル、(C-C)シクロアルキル-(C-C)シクロアルキル、(C-C)アルキル-(C-C)シクロアルキル、ハロ(C-C)シクロアルキル、(C-C)アルキルチオ-(C-C)アルキル、(C-C)アルキルスルフィニル-(C-C)アルキル、(C-C)アルキルスルホニル-(C-C)アルキルまたは(C-C)アルキルカルボニル-(C-C)アルキルであり、および
Aは、水素、シアノ、ハロゲン、(C-C)アルキル、(C-C)ハロアルキル、(C-C)アルケニル、(C-C)ハロアルケニル、(C-C)アルキニル、(C-C)ハロアルキニル、(C-C)シクロアルキル、(C-C)シクロアルキル-(C-C)シクロアルキル、(C-C)アルキル-(C-C)シクロアルキル、(C-C)アルコキシ、(C-C)ハロアルコキシ、(C-C)アルコキシイミノ、(C-C)アルキルチオ、(C-C)ハロアルキルチオ、(C-C)アルキルスルフィニル、(C-C)ハロアルキルスルフィニル、(C-C)アルキルスルホニル、(C-C)ハロアルキルスルホニル、(C-C)アルキルスルホニルオキシ、(C-C)アルキルカルボニル、(C-C)ハロアルキルカルボニル、アミノカルボニル、(C-C)アルキルアミノカルボニル、ジ-(C-C)アルキルアミノカルボニル、(C-C)アルキルスルホニルアミノ、(C-C)アルキルアミノ、ジ-(C-C)アルキルアミノ、アミノスルホニル、(C-C)アルキルアミノスルホニルまたはジ-(C-C)アルキルアミノスルホニル、
またはAは-O-CF-O-であり、Qおよびそれに結合している炭素原子と一緒に、5員環を形成し、Qは炭素であり、および
Halはハロゲンであり、
第1のプロセスステップa)で、化合物Q-H(式中、Qは上記で定義の通り)を、構造(NR)-Zn-Rまたは(NR-Zn(式中、
はハロゲンまたは-O-ピバロイルであり、
およびRは一緒に-(CH-、-(CH-または-(CHO(CH-基を形成し、これらの基のそれぞれは、1、2、3または4個のRラジカルで置換されてもよく、Rは、メチル、エチル、n-プロピルおよびi-プロピルからなる群から選択される)の有機亜鉛塩基と反応させて、式(IIIa)または式(IIIb)
【化3】
【0012】
(式中、QおよびRはそれぞれ上記で与えられた定義を有する)の化合物を得て、この式(IIIa)または(IIIb)の化合物を、第2のプロセスステップb)で構造X-Halの化合物(Xはハロゲンであり、Halは上記の定義を有する)と反応させて式(II)の化合物を得ることを特徴とする。
【0013】
化合物X-Halは、XおよびHalの定義から明らかなように、ハロゲン間化合物であり、好ましくは、元素状ハロゲンである。
【0014】
好ましくは、Q、Q、Q、Q、QおよびQは、全体で5個以下の窒素原子であり、さらに好ましくは、全体で4個以下の窒素原子である。
【0015】
好ましいおよび特に好ましい、本発明の方法の式Q-H、(II)、(IIIa)および(IIIb)のQ、X、HalおよびRラジカルの定義は以下で、有機亜鉛塩基のさらにその下方の具体的説明と一緒に明らかにされ、したがって、その塩基の好ましい立体配置もその時点で明記される。
【0016】
(立体配置2)
Qは、Q1~Q15
【化4】
【0017】
からなる群からの構造要素であるのが好ましい。
【0018】
は、好ましくは、(C-C)アルキル、(C-C)ハロアルキル、(C-C)アルコキシ-(C-C)アルキル、(C-C)ハロアルコキシ-(C-C)アルキル、(C-C)アルキルチオ-(C-C)アルキル、(C-C)アルキルスルフィニル-(C-C)アルキル、(C-C)アルキルスルホニル-(C-C)アルキルまたは(C-C)アルキルカルボニル-(C-C)アルキルであり、
Aは、好ましくは、フッ素、塩素、臭素、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、フルオロエチル(CHCFH、CHFCH)、ジフルオロエチル(CFCH、CHCHF、CHFCFH)、トリフルオロエチル、(CHCF、CHFCHF、CFCFH)、テトラフルオロエチル(CHFCF、CFCHF)、ペンタフルオロエチル、トリフルオロメトキシ、ジフルオロクロロメトキシ、ジクロロフルオロメトキシ、トリフルオロメチルチオ、トリフルオロメチルスルフィニルまたはトリフルオロメチルスルホニルであり、
HalおよびXは、同じ定義を有し、好ましくは、フッ素、塩素、ヨウ素または臭素であり、
は、好ましくはハロゲン、特に塩素、臭素またはヨウ素であり、
(立体配置3)
Qはより好ましくは、Q2、Q3、Q10、Q12、Q14またはQ15からなる群からの構造要素であり、
は、より好ましくは(C-C)アルキルまたは(C-C)アルコキシ-(C-C)アルキルであり、
Aはより好ましくは、トリフルオロメチル、フルオロエチル(CHCFH、CHFCH)、ジフルオロエチル(CFCH、CHCHF、CHFCFH)、トリフルオロエチル、(CHCF、CHFCHF、CFCFH)、テトラフルオロエチル(CHFCF、CFCHF)、ペンタフルオロエチル、トリフルオロメチルチオ、トリフルオロメチルスルフィニルまたはトリフルオロメチルスルホニルであり、
HalおよびXは、同じ定義を有し、より好ましくは、ヨウ素または臭素であり、
は、より好ましくは、塩素であり
(立体配置4)
Qは、最も好ましくは構造要素Q2、Q3、Q12またはQ14であり、
は、最も好ましくは、メチル、エチル、n-プロピルまたはイソプロピル、特にメチルであり、
Aは、最も好ましくは、トリフルオロメチルであり、
HalおよびXは、同じ定義を有し、最も好ましくは、ヨウ素または臭素であり、
は最も好ましくは塩素である。
【0019】
上記のラジカルの定義および説明は、最終生成物および中間体の両方に、また、対応する出発材料に該当する。これらのラジカルの定義は、必要に応じ相互に組み合わせることができ、すなわち、好ましいそれぞれの範囲の間の組み合わせを含む。
【0020】
本発明では、好ましいとして上記された定義の組み合わせが存在する化合物が好ましい。
【0021】
本発明では、より好ましいとして上記された定義の組み合わせが存在する化合物が特に好ましい。
【0022】
本発明では、最も好ましいとして上記された定義の組み合わせが存在する化合物がさらに特に好ましい。
【0023】
本発明のさらに好ましい実施形態では、QはQ1でありおよびR、A、Hal、XおよびRは、立体配置1で与えられた定義または立体配置2で与えられた定義または立体配置3で与えられた定義または立体配置4で与えられた定義を有する(立体配置5)。
【0024】
本発明のさらに好ましい実施形態では、QはQ2でありおよびR、A、Hal、XおよびRは、立体配置1で与えられた定義または立体配置2で与えられた定義または立体配置3で与えられた定義または立体配置4で与えられた定義を有する(立体配置6)。
【0025】
本発明のさらに好ましい実施形態では、QはQ3でありおよびR、A、Hal、XおよびRは、立体配置1で与えられた定義または立体配置2で与えられた定義または立体配置3で与えられた定義または立体配置4で与えられた定義を有する(立体配置7)。
【0026】
本発明のさらに好ましい実施形態では、QはQ4でありおよびR、A、Hal、XおよびRは、立体配置1で与えられた定義または立体配置2で与えられた定義または立体配置3で与えられた定義または立体配置4で与えられた定義を有する(立体配置8)。
【0027】
本発明のさらに好ましい実施形態では、QはQ5でありおよびR、A、Hal、XおよびRは、立体配置1で与えられた定義または立体配置2で与えられた定義または立体配置3で与えられた定義または立体配置4で与えられた定義を有する(立体配置9)。
【0028】
本発明のさらに好ましい実施形態では、QはQ6でありおよびR、A、Hal、XおよびRは、立体配置1で与えられた定義または立体配置2で与えられた定義または立体配置3で与えられた定義または立体配置4で与えられた定義を有する(立体配置10)。
【0029】
本発明のさらに好ましい実施形態では、QはQ7でありおよびR、A、Hal、XおよびRは、立体配置1で与えられた定義または立体配置2で与えられた定義または立体配置3で与えられた定義または立体配置4で与えられた定義を有する(立体配置11)。
【0030】
本発明のさらに好ましい実施形態では、QはQ8でありおよびR、A、Hal、XおよびRは、立体配置1で与えられた定義または立体配置2で与えられた定義または立体配置3で与えられた定義または立体配置4で与えられた定義を有する(立体配置12)。
【0031】
本発明のさらに好ましい実施形態では、QはQ9でありおよびR、A、Hal、XおよびRは、立体配置1で与えられた定義または立体配置2で与えられた定義または立体配置3で与えられた定義または立体配置4で与えられた定義を有する(立体配置13)。
【0032】
本発明のさらに好ましい実施形態では、QはQ10でありおよびR、A、Hal、XおよびRは、立体配置1で与えられた定義または立体配置2で与えられた定義または立体配置3で与えられた定義または立体配置4で与えられた定義を有する(立体配置14)。
【0033】
本発明のさらに好ましい実施形態では、QはQ11でありおよびR、A、Hal、XおよびRは、立体配置1で与えられた定義または立体配置2で与えられた定義または立体配置3で与えられた定義または立体配置4で与えられた定義を有する(立体配置15)。
【0034】
本発明のさらに好ましい実施形態では、QはQ12でありおよびR、A、Hal、XおよびRは、立体配置1で与えられた定義または立体配置2で与えられた定義または立体配置3で与えられた定義または立体配置4で与えられた定義を有する(立体配置16)。
【0035】
本発明のさらに好ましい実施形態では、QはQ13でありおよびR、A、Hal、XおよびRは、立体配置1で与えられた定義または立体配置2で与えられた定義または立体配置3で与えられた定義または立体配置4で与えられた定義を有する(立体配置17)。
【0036】
本発明のさらに好ましい実施形態では、QはQ14でありおよびR、A、Hal、XおよびRは、立体配置1で与えられた定義または立体配置2で与えられた定義または立体配置3で与えられた定義または立体配置4で与えられた定義を有する(立体配置18)。
【0037】
本発明のさらに好ましい実施形態では、QはQ15でありおよびR、A、Hal、XおよびRは、立体配置1で与えられた定義または立体配置2で与えられた定義または立体配置3で与えられた定義または立体配置4で与えられた定義を有する(立体配置19)。
【0038】
好都合にも、式(II)のハロゲン化二環式系は、本発明による方法により良好な収率と高純度で調製できる。本発明による方法の大きな利点は、その位置選択性および基本的に-80℃に比べて明確により高い温度での実施適性の結果として行うことができる比較的穏やかな反応条件である。加えて、明確により高い温度でハロゲンを導入できる潜在能力は、非常に魅力的であり、本発明による方法は、このような高い温度であっても、既存の位置選択性を損なうことなくオルト位置を活性化するトリフルオロメチルまたはその他の電子吸引基などの官能基を許容する。さらに、官能基の亜鉛試薬に対する非常に良好な耐性のために、亜鉛塩基は極めて魅力的である。したがって、全体的に見て、短時間かつ極めて良好な収率で、式(II)の化合物の調製が可能である。
【0039】
本発明による方法は、次のスキーム(I)により説明できる:
スキーム(I)
【化5】
【0040】
このスキームでは、Q、X、HalおよびRならびに、それぞれ存在する任意のさらなる構造要素は、それぞれの定義の範囲内で、上記の定義を有する。括弧内に示す化合物は、中間体(式IIIaまたは式IIIb)で、これは、化合物X-Halとさらに反応して、式(II)の化合物を与える。したがって、本発明による方法は、2つのプロセスステップa)およびb)に分割でき、ステップa)は、化合物Q-Hのそれぞれの中間体への変換であり、ステップb)は、中間体の式(II)の化合物へのさらなる変換である。
【0041】
一般的定義
本発明においては、用語のハロゲン(Hal)は、特に断らなければ、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素からなる群より選択される元素を包含する。
【0042】
本発明との関係では、用語の「ハロゲン化物」は、ハロゲンと周期表の他の族の元素との間の化合物を表し、これは、化学結合の性質に応じて、ハロゲン化物塩(関与する元素間の電気陰性度の大きな差異に起因するアニオンおよびカチオンからなり、静電相互作用により一緒に保持されるイオン性化合物(塩))または共有結合ハロゲン化物(電気陰性度の差異が前述のイオン性化合物ほど大きくない場合の共有結合化合物)を生成できる。本発明では、ハロゲン化物塩が特に好ましい。
【0043】
本発明との関係においては、用語の「ピバロイル」は、実験式(CHCCOHを有するピバリン酸(X)の脱プロトン化ラジカルを表す。
【化6】
【0044】
これに対応して、「O-ピバロイル」は、ピバロイルラジカルの結合が酸性基の脱プロトン化酸素原子を介するものである。
【0045】
別に異なる定義がなされない限り、本発明においては、用語の「アルキル」は、それ単独で、またはハロアルキルなどの別の用語と組み合わせて、1~12個の炭素原子を有し、分枝または非分枝であってよい飽和脂肪族炭化水素基のラジカルを意味する。C-C12アルキルラジカルの例は、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert-ペンチル、1-メチルブチル、2-メチルブチル、1-エチルプロピル、1,2-ジメチルプロピル、ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、n-デシル、n-ウンデシルおよびn-ドデシルである。これらのアルキルラジカルの内で、特に好ましいのは、C-Cアルキルラジカルである。特に好ましいのは、C-Cアルキルラジカルである。
【0046】
本発明では、別に異なる定義がなされない限り、用語の「アルケニル」は、それ単独で、あるいは、別の用語と組み合わせて、直鎖または分岐C-C12アルケニルラジカルを意味すると理解され、これは、少なくとも1つの二重結合を有する、例えば、ビニル、アリル、1-プロペニル、イソプロペニル、1-ブテニル、2-ブテニル、3-ブテニル、1,3-ブタジエニル、1-ペンテニル、2-ペンテニル、3-ペンテニル、4-ペンテニル、1,3-ペンタジエニル、1-ヘキセニル、2-ヘキセニル、3-ヘキセニル、4-ヘキセニル、5-ヘキセニルおよび1,4-ヘキサジエニルである。これらの内で、好ましいのは、C-Cアルケニルラジカルであり、特に好ましいのは、C-Cアルケニルラジカルである。
【0047】
本発明では、別に異なる定義がなされない限り、用語の「アルキニル」は、それ単独で、あるいは、別の用語と組み合わせて、直鎖または分岐C-C12アルキニルラジカルを意味すると理解され、これは、少なくとも1つの三重結合を有する、例えば、エチニル、1-プロピニルおよびプロパルギルである。これらの内で、好ましいのは、C-Cアルキニルラジカルであり、特に好ましいのは、C-Cアルキニルラジカルである。アルキニルラジカルは、鎖中に少なくとも1つの二重結合をさらに含む場合がある。
【0048】
本発明では、別に異なる定義がなされない限り、用語の「シクロアルキル」は、それ単独で、あるいは、別の用語と組み合わせて、C-Cシクロアルキルラジカル、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルおよびシクロオクチルを意味すると理解される。これらの内で、好ましいのは、C-Cシクロアルキルラジカルである。
【0049】
用語の「アルコキシ」は、それ単独で、あるいは、例えば、ハロアルコキシなどのように別の用語と組み合わせて、このケースでは、O-アルキルラジカルを意味すると理解され、用語の「アルキル」は上記で定義の通りである。
【0050】
ハロゲン置換ラジカル、例えば、ハロアルキルは、可能な置換基の最大数まで、モノまたはポリハロゲン化される。ポリハロゲン化の場合、ハロゲン原子は、同じでもまたは異なってもよい。別に定義がなされない限り、ここでいうハロゲンは、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素、特にフッ素、塩素または臭素である。1つまたは複数のハロゲン原子(-Hal)で置換されたアルキル基は、例えば、トリフルオロメチル(CF)、ジフルオロメチル(CHF)、CFCH、ClCHまたはCFCClから選択される。
【0051】
特に断りのない限り、任意に置換されていてもよいラジカルは、モノまたはポリ置換されてもよく、ポリ置換の場合の置換基は、同じでもまたは異なってもよい。
【0052】
本発明による方法の反応物質としての化合物Q-Hの合成は、原理的には、当業者に既知である。例えば、Q=Q1、Q2、Q3、Q14またはQ15を有する化合物Q-Hは、好ましくは酸性条件下で、例えば、国際公開第2014/100065号または国際公開第2015/017610号に記載のように、対応するピリジンジアミン誘導体を閉環させてそれぞれのアゾール化合物を生じさせることにより得ることができる。代わりの合成法も同様に可能であるが、より複雑であり、結果として、広範な視点からは、経済的に不利である。
【0053】
第1のプロセスステップ(ステップa))での化合物Q-Hの式(IIIa)または(IIIb)の化合物への変換は、構造(NR)-Zn-Rまたは(NR-Znの有機亜鉛塩基の存在下で行われ、式(立体配置B-1)中、
は上記で定義の通り(立体配置1)であり(したがって、ハロゲンまたは-O-ピバロイルである)、
およびRは一緒に-(CH-、(CH-または-(CHO(CH-基を形成し、これらの基のそれぞれは、1、2、3または4個のRラジカルで置換されてもよく、
は、メチル、エチル、n-プロピルおよびi-プロピルからなる群から選択される。
【0054】
(立体配置B-2)
は上記で好ましいとして定義の通り(立体配置2)であり(したがって、ハロゲンは特に塩素、臭素またはヨウ素である)、
およびRは一緒に-(CH-基を形成し、これらの基のそれぞれは、1、2、3または4個のRラジカルで置換されてもよく、
は、メチルおよびエチルからなる群から選択されるのが好ましい。
【0055】
(立体配置B-3)
は上記でより好ましい(立体配置3)としてまたは最も好ましい(立体配置4)として定義の通りであり(したがって、ハロゲンは塩素である)、
およびRは一緒に、4個のメチル基で置換された-(CH-基を形成するのが特に好ましい。
【0056】
上記のラジカルの定義は、必要に応じ相互に組み合わせることができ、すなわち、好ましいそれぞれの範囲の間の組み合わせを含む。
【0057】
本発明によるさらに特に好ましい塩基の立体配置では、構造要素(NR)は、式(IV)のテトラメチルピペリジン(TMP)である。
【化7】
【0058】
本発明による最も好ましい有機亜鉛塩基は、したがって、亜鉛、特にハロゲン化亜鉛の形態の亜鉛、最も好ましくは、塩化亜鉛の形態の亜鉛がTMPに結合することを特徴とするこの種の塩基は、式(V)の下記の構造(立体配置B-4)
(V) (TMP)ZnCl2-x
を有し、
式中、xは数値1または2である。これらの中で、さらに好ましいのは、式(VI):
【化8】
【0059】
のx=1の塩基(立体配置B-5)である。
【0060】
本発明によるプロセスのさらなる好ましい実施形態では、有機亜鉛塩基は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属ハロゲン化物と共に存在する。これは、式(V)および(VI)の塩基に特に当てはまる。特に好ましいこの種のアルカリ金属またはアルカリ土類金属ハロゲン化物は、塩化リチウムおよび塩化マグネシウム、特に好ましいのは、塩化リチウムである。したがって、本発明によりさらに特に好ましい有機亜鉛塩基は、TMPZnCl・LiClまたは(TMP)Zn・2LiCl(立体配置B-6)である。最も好ましいのは、TMPZnCl・LiCl(VII;立体配置B-7)である。
【化9】
【0061】
本発明による式Q-H、(II)および(IIIa)または(IIIb)の化合物の塩基との特定の組み合わせは、下表1に挙げられており、これらは本発明による方法に用いることができる。いくつかの立体配置では、構造要素Rは、本発明による塩基中に、および式(IIIa)の化合物中の両方に存在するために、最も狭い定義がそれぞれのケースのRに適用される。
【表1】



【0062】
好ましくは、本発明による方法で、有機亜鉛塩基は、化合物Q-Hを基準にして、0.5~5当量、好ましくは0.8~2当量、さらに好ましくは、1~1.5当量、およびより好ましくは、1.0~1.2当量の合計量で使用される。これに関しては、本発明による方法の1つの利点は、有機金属塩基が実質上化学量論量で使用できるという点である。
【0063】
構造要素(NR)が、使用される有機亜鉛塩基中に1度または2度存在するかどうかに応じて、式(IIIa)または式(IIIb)の中間体化合物がプロセスステップa)で形成される。
【0064】
第2のプロセスステップ(ステップb))での、式(IIIa)または式(IIIb)の化合物の式(II)の化合物への変換は、化合物X-Halの存在下で行われ、式中、XおよびHalはそれぞれ上記の定義を有する。
【0065】
XおよびHalの両方はハロゲンなので、化合物はハロゲン間化合物である。XおよびHalは、同じハロゲンである必要はない。例えば、Xはヨウ素または臭素であってよく、Halは塩素、臭素またはヨウ素であってよい。しかしながら、好ましくは、化合物は元素状ハロゲン、特にF、Cl、BrまたはIである。特に好ましいのは、IまたはBrであり、さらに特に好ましいのはIである。
【0066】
好ましくは、本発明による方法で、X-Hal化合物は、化合物Q-Hを基準にして、0.5~10.0当量、好ましくは0.8~5当量、さらに好ましくは、1~2.5当量、およびより好ましくは、1.0~2.0当量の合計量で使用される。
【0067】
化合物Q-Hの式(IIIa)または式(IIIb)の化合物への本発明の変換、および式(II)の化合物へのさらなる変換は、好ましくは、いずれの場合にも、有機溶媒の存在下で実施される。原理的に有用な溶媒には、用いられる反応条件下で不活性で、変換される化合物が十分な溶解度を有する全ての有機溶媒が含まれる。好適な溶媒には、特に、テトラヒドロフラン(THF)、1,4-ジオキサン、ジエチルエーテル、ジグリム、メチルtert-ブチルエーテル(MTBE)、tert-アミルメチルエーテル(TAME)、2-メチル-THF、トルエン、キシレン、メシチレン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N-メチルピロリドン(NMP)、N-エチル-2-ピロリドン(NEP)、N-ブチル-2-ピロリドン(NBP);N,N’-ジメチルプロピレン尿素(DMPU)、ハロ炭化水素および芳香族炭化水素、特に、テトラクロロエチレン、テトラクロロエタン、ジクロロプロパン、塩化メチレン、ジクロロブタン、クロロホルム、四塩化炭素、トリクロロエタン、トリクロロエチレン、ペンタクロロエタンなどの塩化炭化水素、ジフルオロベンゼン、1,2-ジクロロエタン、クロロベンゼン、ブロモベンゼン、ジクロロベンゼン、特に、1,2-ジクロロベンゼン、クロロトルエン、トリクロロベンゼン;4-メトキシベンゼン、トリクロロトリフルオロエタン、ベンゾトリフルオリドおよび4-クロロベンゾトリフルオリドなどのフッ化脂肪族および芳香族炭化水素が挙げられる。溶媒混合物、好ましくは、テトラヒドロフラン(THF)、1,4-ジオキサン、ジエチルエーテル、ジグリム、メチルtert-ブチルエーテル(MTBE)、tert-アミルメチルエーテル(TAME)、2-メチル-THF、トルエン、キシレン、メシチレン、ジメチルホルムアミド(DMF)などの上述の溶媒の混合物の使用も可能である。
【0068】
好ましい溶媒は、THF、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、1,4-ジオキサン、ジグリム、メチルtert-ブチルエーテル(MTBE)、tert-アミルメチルエーテル(TAME)、2-メチル-THF、トルエンおよび4-メトキシベンゼンである。
【0069】
特に好ましい溶媒は、THFおよびN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、さらに特に好ましいのは、THFである。
【0070】
溶媒は、脱気(酸素不含)してもよい。
【0071】
プロセスステップa)およびb)の両方に対し同じ溶媒を使用するのが好ましい。異なる溶媒がプロセスステップa)およびb)に対して使用される本発明の別の構成も同様に可能であるが、しかし、この場合にも溶媒が上述の溶媒から同様に選択され、好ましい、より好ましい、および最も好ましいとして指定されたそれぞれの溶媒がそれぞれのプロセスステップa)またはb)に適用可能である。
【0072】
プロセスステップa)での変換は通常、0℃~80℃で行われ、10℃~70℃、15℃~60℃、20℃~50℃、20℃~40℃の順にさらに好ましくなり、最も好ましくは、20℃~35℃、例えば、25℃の温度で行われる。
【0073】
プロセスステップb)での変換は通常、0℃~40℃で行われ、0℃~35℃、0℃~30℃の順にさらに好ましくなり、最も好ましくは、0℃~25℃、例えば、25℃の温度で行われる。元素状臭素(XおよびHalがそれぞれ臭素である)を用いた反応が0℃で行われ、元素状ヨウ素(XおよびHalがそれぞれヨウ素である)を用いた反応が25℃の温度で行われる場合が特に有利である。
【0074】
反応は通常、標準的圧力で行われるが、高いまたは低い圧力で行うこともできる。
【0075】
例えば、飽和塩化アンモニウムまたはチオ硫酸ナトリウム溶液の存在下での水性の後処理および/またはその後のクロマトグラフィーにより、目的の式(II)の化合物が単離できるこのような方法は、当業者には既知であり、また、有機溶媒または溶媒混合液からの結晶化も含む。
【0076】
本発明による方法の特に好ましい実施形態の2つの例は、次のスキーム(IIa)および(IIb)に関連して説明できる:
スキームIIa:
【化10】
【0077】
スキームIIb:
【化11】
【0078】
スキームIIaおよびスキームIIbは、プロセスステップb)の反応が元素状ヨウ素で行われる(IIa)、または元素状臭素(IIb)で行われる、という点で異なるだけである。両方のスキームでは、いずれの場合にも、Aは、上記の定義を有する。括弧内に示す化合物は、対応する式IIIaの中間体で、さらに生成物:式(II)の化合物に変換される。両方の反応は、溶媒としてのTHF中で行われる。「当量(equiv)」は、用いられるTMPZnCl・LiClまたは化合物X-Hal、すなわち、ここでは、元素状ヨウ素または元素状臭素の等価量を意味する。
【0079】
本発明は、次の化合物から選択される構造Q-Hの化合物をさらに提供する:
【化12】
【0080】
本発明は、次の化合物から選択される式(IIIa)の化合物をさらに提供する:
【化13】
【0081】
本発明は、式(II)の化合物
Q-Hal(II)、
をさらに提供し、式(立体配置Q-Hal-1-1)中
Qは、構造要素
【化14】
【0082】
であり、記号#は分子の残部に対する結合を示し、
はNまたはCRであり、
はNまたはCRであり、
はNまたはCであり、
はO、S、NまたはNRであり、
はNまたはCであり、
はNまたはCHであり、
は、水素、(C-C)アルキル、(C-C)ハロアルキル、(C-C)シアノアルキル、(C-C)ヒドロキシアルキル、(C-C)アルコキシ-(C-C)アルキル、(C-C)ハロアルコキシ-(C-C)アルキル、(C-C)アルケニル、(C-C)アルケニルオキシ-(C-C)アルキル、(C-C)ハロアルケニルオキシ-(C-C)アルキル、(C-C)ハロアルケニル、(C-C)シアノアルケニル、(C-C)アルキニル、(C-C)アルキニルオキシ-(C-C)アルキル、(C-C)ハロアルキニル、(C-C)シクロアルキル、(C-C)シクロアルキル-(C-C)シクロアルキル、(C-C)アルキル-(C-C)シクロアルキル、ハロ(C-C)シクロアルキル、(C-C)アルキルチオ-(C-C)アルキル、(C-C)アルキルスルフィニル-(C-C)アルキル、(C-C)アルキルスルホニル-(C-C)アルキルまたは(C-C)アルキルカルボニル-(C-C)アルキルであり、
は、(C-C)アルキル、(C-C)ハロアルキル、(C-C)シアノアルキル、(C-C)ヒドロキシアルキル、(C-C)アルコキシ-(C-C)アルキル、(C-C)ハロアルコキシ-(C-C)アルキル、(C-C)アルケニル、(C-C)アルケニルオキシ-(C-C)アルキル、(C-C)ハロアルケニルオキシ-(C-C)アルキル、(C-C)ハロアルケニル、(C-C)シアノアルケニル、(C-C)アルキニル、(C-C)アルキニルオキシ-(C-C)アルキル、(C-C)ハロアルキニル、(C-C)シクロアルキル、(C-C)シクロアルキル-(C-C)シクロアルキル、(C-C)アルキル-(C-C)シクロアルキル、ハロ(C-C)シクロアルキル、(C-C)アルキルチオ-(C-C)アルキル、(C-C)アルキルスルフィニル-(C-C)アルキル、(C-C)アルキルスルホニル-(C-C)アルキルまたは(C-C)アルキルカルボニル-(C-C)アルキルであり、
Aは、水素、シアノ、ハロゲン、(C-C)アルキル、(C-C)ハロアルキル、(C-C)アルケニル、(C-C)ハロアルケニル、(C-C)アルキニル、(C-C)ハロアルキニル、(C-C)シクロアルキル、(C-C)シクロアルキル-(C-C)シクロアルキル、(C-C)アルキル-(C-C)シクロアルキル、(C-C)アルコキシ、(C-C)ハロアルコキシ、(C-C)アルコキシイミノ、(C-C)アルキルチオ、(C-C)ハロアルキルチオ、(C-C)アルキルスルフィニル、(C-C)ハロアルキルスルフィニル、(C-C)アルキルスルホニル、(C-C)ハロアルキルスルホニル、(C-C)アルキルスルホニルオキシ、(C-C)アルキルカルボニル、(C-C)ハロアルキルカルボニル、アミノカルボニル、(C-C)アルキルアミノカルボニル、ジ-(C-C)アルキルアミノカルボニル、(C-C)アルキルスルホニルアミノ、(C-C)アルキルアミノ、ジ-(C-C)アルキルアミノ、アミノスルホニル、(C-C)アルキルアミノスルホニルまたはジ-(C-C)アルキルアミノスルホニルであるか、
またはAは-O-CF-O-であり、Qおよびそれに結合している炭素原子と一緒に、5員環を形成し、Qは炭素であり、
Halはハロゲンである。
【0083】
好ましくは、Q、Q、Q、Q、QおよびQは、全体で5個以下の窒素原子であり、さらに好ましくは、全体で4個以下の窒素原子である。
【0084】
別の立体配置(立体配置Q-Hal-1-2)では、上述の式(II)に含まれるラジカルの定義は、次の通りである:
Qは、構造要素
【化15】
【0085】
であり、記号#は分子の残部に対する結合を示し、
はNまたはCRであり、
はNまたはCRであり、
はNまたはCであり、
はO、S、NまたはNRであり、
はNまたはCであり、
はNまたはCHであり、
は、水素、(C-C)アルキル、(C-C)ハロアルキル、(C-C)シアノアルキル、(C-C)ヒドロキシアルキル、(C-C)アルコキシ-(C-C)アルキル、(C-C)ハロアルコキシ-(C-C)アルキル、(C-C)アルケニル、(C-C)アルケニルオキシ-(C-C)アルキル、(C-C)ハロアルケニルオキシ-(C-C)アルキル、(C-C)ハロアルケニル、(C-C)シアノアルケニル、(C-C)アルキニル、(C-C)アルキニルオキシ-(C-C)アルキル、(C-C)ハロアルキニル、(C-C)シクロアルキル、(C-C)シクロアルキル-(C-C)シクロアルキル、(C-C)アルキル-(C-C)シクロアルキル、ハロ(C-C)シクロアルキル、(C-C)アルキルチオ-(C-C)アルキル、(C-C)アルキルスルフィニル-(C-C)アルキル、(C-C)アルキルスルホニル-(C-C)アルキルまたは(C-C)アルキルカルボニル-(C-C)アルキルであり、
は、(C-C)アルキル、(C-C)ハロアルキル、(C-C)シアノアルキル、(C-C)ヒドロキシアルキル、(C-C)アルコキシ-(C-C)アルキル、(C-C)ハロアルコキシ-(C-C)アルキル、(C-C)アルケニル、(C-C)アルケニルオキシ-(C-C)アルキル、(C-C)ハロアルケニルオキシ-(C-C)アルキル、(C-C)ハロアルケニル、(C-C)シアノアルケニル、(C-C)アルキニル、(C-C)アルキニルオキシ-(C-C)アルキル、(C-C)ハロアルキニル、(C-C)シクロアルキル-(C-C)シクロアルキル、(C-C)アルキル-(C-C)シクロアルキル、ハロ(C-C)シクロアルキル、(C-C)アルキルチオ-(C-C)アルキル、(C-C)アルキルスルフィニル-(C-C)アルキル、(C-C)アルキルスルホニル-(C-C)アルキルまたは(C-C)アルキルカルボニル-(C-C)アルキルであり、
Aは、水素、シアノ、ハロゲン、(C-C)アルキル、(C-C)ハロアルキル、(C-C)アルケニル、(C-C)ハロアルケニル、(C-C)アルキニル、(C-C)ハロアルキニル、(C-C)シクロアルキル、(C-C)シクロアルキル-(C-C)シクロアルキル、(C-C)アルキル-(C-C)シクロアルキル、(C-C)アルコキシ、(C-C)ハロアルコキシ、(C-C)アルコキシイミノ、(C-C)アルキルチオ、(C-C)ハロアルキルチオ、(C-C)アルキルスルフィニル、(C-C)ハロアルキルスルフィニル、(C-C)アルキルスルホニル、(C-C)ハロアルキルスルホニル、(C-C)アルキルスルホニルオキシ、(C-C)アルキルカルボニル、(C-C)ハロアルキルカルボニル、アミノカルボニル、(C-C)アルキルアミノカルボニル、ジ-(C-C)アルキルアミノカルボニル、(C-C)アルキルスルホニルアミノ、(C-C)アルキルアミノ、ジ-(C-C)アルキルアミノ、アミノスルホニル、(C-C)アルキルアミノスルホニルまたはジ-(C-C)アルキルアミノスルホニルであるか、
またはAは-O-CF-O-であり、Qおよびそれに結合している炭素原子と一緒に、5員環を形成し、Qは炭素であり、
Halはフッ素、ヨウ素または臭素、特にヨウ素または臭素である。
【0086】
上記立体配置Q-Hal-1-1およびQ-Hal-1-2中に含まれる式(II)の化合物のラジカルの好ましい(立体配置Q-Hal-2-1およびQ-Hal-2-2)、特に好ましい(立体配置Q-Hal-3-1)およびさらに特に好ましい(立体配置Q-Hal-4-1)定義は、以降で説明される。
【0087】
(立体配置Q-Hal-2-1)
Qは好ましくはQ1~Q15からなる群由来の構造要素であり、
は、好ましくは、(C-C)アルキル、(C-C)ハロアルキル、(C-C)アルコキシ-(C-C)アルキル、(C-C)ハロアルコキシ-(C-C)アルキル、(C-C)アルキルチオ-(C-C)アルキル、(C-C)アルキルスルフィニル-(C-C)アルキル、(C-C)アルキルスルホニル-(C-C)アルキルまたは(C-C)アルキルカルボニル-(C-C)アルキルであり、
Aは、好ましくは、フッ素、塩素、臭素、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、フルオロエチル(CHCFH、CHFCH)、ジフルオロエチル(CFCH、CHCHF、CHFCFH)、トリフルオロエチル、(CHCF、CHFCHF、CFCFH)、テトラフルオロエチル(CHFCF、CFCHF)、ペンタフルオロエチル、トリフルオロメトキシ、ジフルオロクロロメトキシ、ジクロロフルオロメトキシ、トリフルオロメチルチオ、トリフルオロメチルスルフィニルまたはトリフルオロメチルスルホニルであり、および
Halは好ましくは、フッ素、塩素、ヨウ素または臭素である。
【0088】
(立体配置Q-Hal-2-2)
Qは好ましくはQ1~Q15からなる群由来の構造要素であり、
は、好ましくは、(C-C)アルキル、(C-C)ハロアルキル、(C-C)アルコキシ-(C-C)アルキル、(C-C)ハロアルコキシ-(C-C)アルキル、(C-C)アルキルチオ-(C-C)アルキル、(C-C)アルキルスルフィニル-(C-C)アルキル、(C-C)アルキルスルホニル-(C-C)アルキルまたは(C-C)アルキルカルボニル-(C-C)アルキルであり、
Aは、好ましくは、フッ素、塩素、臭素、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、フルオロエチル(CHCFH、CHFCH)、ジフルオロエチル(CFCH、CHCHF、CHFCFH)、トリフルオロエチル、(CHCF、CHFCHF、CFCFH)、テトラフルオロエチル(CHFCF、CFCHF)、ペンタフルオロエチル、トリフルオロメトキシ、ジフルオロクロロメトキシ、ジクロロフルオロメトキシ、トリフルオロメチルチオ、トリフルオロメチルスルフィニルまたはトリフルオロメチルスルホニルであり、および
Halは好ましくは、フッ素、ヨウ素または臭素、特にヨウ素または臭素である。
【0089】
(立体配置Q-Hal-3-1)
Qはより好ましくは、Q2、Q3、Q10、Q12、Q14またはQ15からなる群からの構造要素であり、
は、より好ましくは(C-C)アルキルまたは(C-C)アルコキシ-(C-C)アルキルであり、
Aはより好ましくは、トリフルオロメチル、フルオロエチル(CHCFH、CHFCH)、ジフルオロエチル(CFCH、CHCHF、CHFCFH)、トリフルオロエチル、(CHCF、CHFCHF、CFCFH)、テトラフルオロエチル(CHFCF、CFCHF)、ペンタフルオロエチル、トリフルオロメチルチオ、トリフルオロメチルスルフィニルまたはトリフルオロメチルスルホニルであり、および
Halは、より好ましくはヨウ素または臭素である。
【0090】
(立体配置Q-Hal-4-1)
Qは、最も好ましくは構造要素Q2、Q3、Q12またはQ14であり、
は、最も好ましくは、メチル、エチル、n-プロピルまたはイソプロピル、特にメチルであり、
Aは、最も好ましくは、トリフルオロメチルであり、および
Halは最も好ましくは、ヨウ素または臭素である。
【0091】
上記のラジカルの定義は、必要に応じ相互に組み合わせることができ、すなわち、好ましいそれぞれの範囲の間の組み合わせを含む。
【0092】
本発明では、好ましいとして上記された定義の組み合わせが存在する化合物が好ましい。
【0093】
本発明では、より好ましいとして上記された定義の組み合わせが存在する化合物が特に好ましい。
【0094】
本発明では、最も好ましいとして上記された定義の組み合わせが存在する化合物がさらに特に好ましい。
【0095】
このような特に好ましい化合物の例は:
II-1:
【化16】
【0096】
式中、Y=IまたはBr
II-2:
【化17】
【0097】
式中、Y=IまたはBr
II-3:
【化18】
【0098】
式中、Y=IまたはBr
II-4:
【化19】
【0099】
式中、Y=IまたはBr、
である。
【0100】
本発明は、以下の実施例により詳細に説明されるが、この実施例は、本発明を限定するように解釈されるべきではない。
【0101】
実施例1
3-メチル-6-(トリフルオロメチル)-3H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン(反応物質)の合成
ギ酸(4ml、106mmol)に溶解したN3-メチル-6-(トリフルオロメチル)ピリジン-3,4-ジアミン(500mg、2.6mmol)をマイクロ波を用いて150℃で1時間加熱した。塩化アンモニウム飽和水溶液の添加による通例の後処理後、反応混合物を酢酸エチルで抽出し、合わせた有機相をNaSO上で乾燥し、膜ポンプによる真空中で濃縮した。カラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/シクロヘキサン)による精製後、3-メチル-6-(トリフルオロメチル)-3H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン(480mg、91%収率)を白色固体として得た。HPLC-MS:logP=1.09;質量(m/z+1):202.0;1HNMR(D6-DMSO):δ 9.14(s,1H),8.61(s,1H),8.19(s,1H),4.02(s,3H).
実施例2
2-ヨード-3-メチル-6-(トリフルオロメチル)-3H-イミダゾ[4,5-c]ピリジンの合成:
THF中(1ml)に溶解した3-メチル-6-(トリフルオロメチル)-3H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン(201mg、1.0mmol)に、TMPZnCl・LiCl(THF中の1.31Mの0.82ml、1.1mmol)をアルゴン下、25℃で加え;この反応溶液を10分間撹拌した。その後、ヨウ素(508mg、2mlのTHF中の2.0mmol)を25℃で加え、この溶液をさらに20分間撹拌した。飽和塩化アンモニウムおよびチオ硫酸ナトリウムの添加による通例の後処理後、反応混合物を酢酸エチルで抽出し、合わせた有機相をNaSO上で乾燥し、膜ポンプによる真空中で濃縮した。
【0102】
カラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/シクロヘキサン)による精製後、2-ヨード-3-メチル-6-(トリフルオロメチル)-3H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン(301mg、93%)を黄色固体として得た。HPLC-MS:logP=1.77;質量(m/z+1):327.9;1HNMR(D6-DMSO):δ 9.13(s,1H),8.12(s,1H),3.94(s,3H).
実施例3
2-ブロモ-3-メチル-6-(トリフルオロメチル)-3H-イミダゾ[4,5-c]ピリジンの合成:
THF中(0.8ml)に溶解した3-メチル-6-(トリフルオロメチル)-3H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン(201mg、1.0mmol)に、TMPZnCl・LiCl(THF中の1.35Mの0.82ml、1.1mmol)をアルゴン下、25℃で加え;この反応溶液を10分間撹拌した。その後、臭素(224mg、1.4mmol)を0℃で加え、この溶液をさらに20分間撹拌した。飽和塩化アンモニウムおよびチオ硫酸ナトリウムの添加による通例の後処理後、反応混合物を酢酸エチルで抽出し、合わせた有機相をNaSO上で乾燥し、膜ポンプによる真空中で濃縮した。カラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/シクロヘキサン)による精製後、2-ブロモ-3-メチル-6-(トリフルオロメチル)-3H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン(269mg、96%)を黄色固体として得た。HPLC-MS:logP=1.71;質量(m/z+1):281.0;1HNMR(D6-DMSO):δ 9.15(s,1H),8.17(s,1H),3.96(s,3H).
実施例4
7-メチル-3-(トリフルオロメチル)-7H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン(反応物質)の合成
ギ酸(5ml、132mmol)に溶解したN3-メチル-6-(トリフルオロメチル)ピリダジン-3,4-ジアミン(1.0g、5.2mmol)をマイクロ波を用いて150℃で1時間加熱した。塩化アンモニウム飽和水溶液の添加による通例の後処理後、反応混合物を酢酸エチルで抽出し、合わせた有機相をNaSO上で乾燥し、膜ポンプによる真空中で濃縮した。カラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/シクロヘキサン)による精製後、7-メチル-3-(トリフルオロメチル)-7H-イミダゾ[4,5-c]ピリダジン(758mg、73%収率)を白色固体として得た。HPLC-MS:logP=0.91;質量(m/z+1):203.1;1HNMR(D6-DMSO):δ 8.92(s,1H),8.62(s,1H),4.08(s,3H).
実施例5
6-ヨード-7-メチル-3-(トリフルオロメチル)-7H-イミダゾ[4,5-c]ピリダジンの合成:
THF中(0.8ml)に溶解した7-メチル-3-(トリフルオロメチル)-7H-イミダゾ[4,5-c]ピリダジン(203mg、1.0mmol)に、TMPZnCl・LiCl(THF中の1.35Mの0.82ml、1.1mmol)をアルゴン下、25℃で加え;この反応溶液を10分間撹拌した。その後、ヨウ素(4mlのTHF中の508mg)を25℃で加え、この溶液をさらに20分間撹拌した。飽和塩化アンモニウムおよびチオ硫酸ナトリウムの添加による通例の後処理後、反応混合物を酢酸エチルで抽出し、合わせた有機相をNaSO上で乾燥し、膜ポンプによる真空中で濃縮した。
【0103】
カラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/シクロヘキサン)による精製後、6-ヨード-7-メチル-3-(トリフルオロメチル)-7H-イミダゾ[4,5-c]ピリダジン(230mg、70%)を黄色固体として得た。HPLC-MS:logP=1.66;質量(m/z+1):329.0;1HNMR(D6-DMSO):δ 8.53(s,1H),3.99(s,3H).
実施例6
3-メチル-6-(トリフルオロメチル)-3H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン(反応物質)の合成:
ギ酸(4ml、106mmol)に溶解したN2-メチル-5-(トリフルオロメチル)ピリジン-2,3-ジアミン(500mg、2.61mmol)をマイクロ波を用いて150℃で1時間加熱した。塩化アンモニウム飽和水溶液の添加による通例の後処理後、反応混合物を酢酸エチルで抽出し、合わせた有機相をNaSO上で乾燥し、膜ポンプによる真空中で濃縮した。カラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/シクロヘキサン)による精製後、3-メチル-6-(トリフルオロメチル)-3H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン(385mg、74%収率)を白色固体として得た。HPLC-MS:logP=1.44;質量(m/z+1):202.1;1HNMR(D6-DMSO):δ 8.77(s,1H),8.67(s,1H),8.52(s,1H),3.90(s,3H).
実施例7
2-ヨード-3-メチル-6-(トリフルオロメチル)-3H-イミダゾ[4,5-b]ピリジンの合成:
THF中(0.4ml)に溶解した3-メチル-6-(トリフルオロメチル)-3H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン(100mg、0.49mmol)に、TMPZnCl・LiCl(THF中の1.35Mの0.41ml、0.54mmol)をアルゴン下、25℃で加え;この反応溶液を10分間撹拌した。その後、ヨウ素(1mlのTHF中の252mg)を25℃で加え、この溶液をさらに20分間撹拌した。飽和塩化アンモニウムおよびチオ硫酸ナトリウムの添加による通例の後処理後、反応混合物を酢酸エチルで抽出し、合わせた有機相をNaSO上で乾燥し、膜ポンプによる真空中で濃縮した。
【0104】
カラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/シクロヘキサン)による精製後、2-ヨード-3-メチル-6-(トリフルオロメチル)-3H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン(111mg、69%)を黄色固体として得た。HPLC-MS:logP=2.29;質量(m/z+1):328.0;1HNMR(D6-DMSO):δ 8.71(s,1H),8.47(s,1H),3.82(s,3H).