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特許7066702光学配列、マルチスポット走査顕微鏡及び顕微鏡を作動させるための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-02
(45)【発行日】2022-05-13
(54)【発明の名称】光学配列、マルチスポット走査顕微鏡及び顕微鏡を作動させるための方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 21/36 20060101AFI20220506BHJP
   G01N 21/27 20060101ALI20220506BHJP
   G02B 21/00 20060101ALI20220506BHJP
   G02B 21/06 20060101ALI20220506BHJP
【FI】
G02B21/36
G01N21/27 E
G02B21/00
G02B21/06
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2019522217
(86)(22)【出願日】2017-10-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-11-21
(86)【国際出願番号】 EP2017077245
(87)【国際公開番号】W WO2018077920
(87)【国際公開日】2018-05-03
【審査請求日】2020-10-22
(31)【優先権主張番号】102016120308.4
(32)【優先日】2016-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】506151659
【氏名又は名称】カール ツァイス マイクロスコピー ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】CARL ZEISS MICROSCOPY GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヴァルト マティアス
(72)【発明者】
【氏名】アンフート ティーモ
(72)【発明者】
【氏名】シュヴェット ダニエル
【審査官】森内 正明
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2009/0273777(US,A1)
【文献】特表2013-539079(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0253556(US,A1)
【文献】特開2012-159549(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0012927(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0169873(US,A1)
【文献】特開2007-163448(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00 - 21/01
G01N 21/17 - 21/61
G02B 21/00 - 21/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出器(24)がその内に設置可能である検出平面(26)を有し、検出光(61、62、70、324)をスペクトル分離するための分散デバイス(10)を有する、マルチスポット走査顕微鏡の検出ビーム経路のための光学配列において、
歪み光学ユニット(20)が、前記検出光を前記検出平面(26)中に誘導するために提供され、前記歪み光学ユニットが、ビーム方向に、前記分散デバイス(10)の下流に、及び前記検出平面(26)の上流に配列されていることと、
前記スペクトル分離された検出光の明視野(60)と前記歪み光学ユニット(20)との可変相対的回転のための回転デバイス(30、40)が、存在することと、
検出器(24)が、前記検出平面(26)内に配列されており、異なる照明スポットに属する光スペクトルの、前記検出器(24)上への可変撮像を可能とすることを特徴とする、光学配列。
【請求項2】
前記歪み光学ユニット(20)は、少なくとも1つの屈折及び/又は反射アナモルフィック光学ユニット、並びに/あるいは屈折及び/又は反射円柱形光学ユニット(21)を含むことを特徴とする、請求項1に記載の光学配列。
【請求項3】
前記歪み光学ユニット(20)は、固定又は可変回折光学ユニット含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の光学配列。
【請求項4】
前記検出器が、線検出器(24)であることと、
前記線検出器(24)の長手方向が、前記歪み光学ユニット(20)の軸線(22)に平行に延在することと、を特徴とする、請求項1に記載の光学配列。
【請求項5】
前記検出器は、GaAsP検出器、光電子増倍管、SPADアレイ又は高速度カメラであることを特徴とする、請求項1又は4に記載の光学配列。
【請求項6】
前記歪み光学ユニット(20)は、前記分散デバイス(10)に対して固定されていることを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の光学配列。
【請求項7】
前記歪み光学ユニット(20)は、前記回転デバイス(40)によって前記分散デバイス(10)に対して可変回転可能であることを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の光学配列。
【請求項8】
前記回転デバイスは、少なくとも1つの回転ミラーを含むことを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載の光学配列。
【請求項9】
前記回転デバイスは、少なくとも1つの回転プリズム(32)を含むことを特徴とする、請求項1~8のいずれか1項に記載の光学配列。
【請求項10】
前記回転プリズム(32)は、瞳平面(36)内に配列されていることを特徴とする、請求項9に記載の光学配列。
【請求項11】
前記回転プリズムは、アッベ・ケーニッヒプリズム又はドーブプリズム(32)であることを特徴とする、請求項9又は10に記載の光学配列。
【請求項12】
屈折及び/又は回析部品が、前記分散デバイス(10)として存在することを特徴とする、請求項1~11のいずれか1項に記載の光学配列。
【請求項13】
プリズム及び/又は回析格子(14)が、前記分散デバイスとして存在することを特徴とする、請求項1~12のいずれか1項に記載の光学配列。
【請求項14】
円柱形光学ユニット(20)は、単一の円柱形レンズ(21)によって形成されていることを特徴とする、請求項1~13のいずれか1項に記載の光学配列。
【請求項15】
撮像目盛を、前記検出器(24)の寸法に、適合させるための第1及び第2レンズ(27、29)を有する望遠鏡光学ユニットが存在し、前記歪み光学ユニット(20)及び前記回転プリズム(32)は、前記望遠鏡の第1及び第2レンズ(27、29)の間に配列されていることを特徴とする、請求項1~14のいずれか1項に記載の光学配列。
【請求項16】
撮像目盛を、前記検出器(24)の寸法に、適合させるためのズーム光学ユニットが存在することを特徴とする、請求項1~15のいずれか1項に記載の光学配列。
【請求項17】
前記歪み光学ユニット(20)前記明視野との間の可変相対的回転の軸線は、前記歪み光学ユニット(20)の軸線に対して垂直方向に向いていることを特徴とする、請求項1~16のいずれか1項に記載の光学配列。
【請求項18】
マルチスポット走査顕微鏡であって、
顕微鏡光学ユニット(310)を含み、
照明ビーム経路を含み、
検出ビーム経路(324)を含み、
励起光(322)を前記照明ビーム経路内に提供するための光源(320)を含み、
スキャナを含み、
請求項1~18のいずれか1項に記載の光学配列(100)を前記検出ビーム経路(324)内に含み、
前記光学配列(100)の検出平面(26)内に設置された検出器(24)であって、前記光学配列(100)の前記検出器平面(26)が、試料平面(312)に光学的に共役である、検出器(24)、を含み、
前記光学配列(100)回転デバイス(30)及び光源(320)を動作させるための、並びに前記検出器(24)によって提供された測定データ(332)を処理するための制御ユニット(330)を含む、マルチスポット走査顕微鏡。
【請求項19】
前記回転デバイス(30、40)は、照明スポットの数に基づいて歪み光学ユニット(20)に対する明視野(60)の回転位置を設定するために用いられる、請求項18に記載の顕微鏡を作動させるための方法。
【請求項20】
前記光学配列(100、200、400)は、前記回転デバイス(30、40)の位置に基づいて、1つの照明スポットのスペクトル(65)、2つの照明スポットのスペクトル(65、67)、又は4つの照明スポットのスペクトル(65、66、67、68)を前記検出器上に撮像するために用いられることを特徴とする、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
第1側面において、本発明は、請求項1の前文に従う、光学配列、特にマルチスポット走査顕微鏡の検出ビーム経路のための光学配列に関する。更に、本発明は、マルチスポット走査顕微鏡及び顕微鏡を作動させるための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マルチスポット走査顕微鏡の検出ビーム経路のための一般的な光学配列は、検出器をその内に設置可能である検出平面と、検出光をスペクトル分離するための分散デバイスと、を有する。そのような配列は、スペクトル分解マルチスポット走査顕微鏡において公知である。
【0003】
レーザ走査顕微鏡のいくつかの適用において、試料によって放出された光を、スペクトル分解方式で検出することができる。これに関する先行技術は、広範囲にわたる。例えば、特許文献1は、照明された試料位置によって後方に反射された光のスペクトル分解検出を可能にするシステムを記載する。特許文献2は、この原理を説明し、それが、また、レーザ走査顕微鏡に用いられる。スペクトル分解検出に必要である分散は、この場合、プリズム又は格子を用いて生成されてもよい。
【0004】
更なる変形において、スペクトル線が、例えば、ミラーを用いてスペクトル線平面内で選択され、次いで、エアリスキャン検出器として知られているものの上に誘導される。更に、後方に反射されないスペクトル色成分(ミラーがビーム経路から全体的に取り外される場合、スペクトル全体であってもよい)を捕える目的がここに存在する。現在、ラインセンサだけが複数の画素を有する高感度センサとして共焦点顕微鏡法に適しているので、その目的は、可能な限り高性能な態様で試料からの情報を上記ラインセンサ上に撮像することである。励起光が調査されるべき試料上の又はその内の複数の焦点領域上に又はその内に入射するというマルチスポット励起に起因して、情報は、試料上の又はその内の複数の異なる位置から来ている。情報は、典型的には、この説明において、単にスポットとも呼ばれる焦点が、座標方向に直列に、及び、それに垂直である軸線内に配列され、焦点とそれぞれ関連するスペクトルが、空間方向に扇形に広げられるようなタイプのものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】独国特許出願公開第102014116782号明細書
【文献】独国特許出願公開第19842288号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
検出器の特に可変の利用ができる、光学配列、マルチスポット走査顕微鏡及び顕微鏡を作動させるための方法を提供することが、本発明の目的であると考えられてもよい。この目的は、請求項1の特徴を有する光学配列、請求項19の特徴を有するマルチスポット走査顕微鏡、及び、請求項20の特徴を有する顕微鏡を作動させる方法によって達成される。
【0007】
上記タイプの光学配列が本発明に従って開発された結果、検出光を検出平面中に誘導するために、ビーム方向に、分散デバイスの下流に、及び検出平面の上流に配列されている歪み光学ユニットが存在し、スペクトル分離検出光の明視野と歪み光学ユニットとの相対的回転のための回転デバイスが存在する。
【0008】
本発明に従うマルチスポット走査顕微鏡は、部品として、顕微鏡光学ユニットと、照明ビーム経路と、検出ビーム経路と、スキャナと、照明ビーム経路内に励起光を提供するための光源と、検出ビーム経路内の本発明に従う光学配列と、本発明に従う光学配列の検出平面内に設置される検出器、特に線検出器と、を含み、光学配列の検出器平面は、試料平面及び、光学配列、特に光学配列の回転デバイス、及び光源を動作させるため、及び検出器によって提供される測定データを少なくとも前もって処理するための制御ユニットに光学的に共役である。
【0009】
本発明に従う顕微鏡を作動させるための本発明に従う方法において、回転デバイスが、照明スポットの数に基づいて、歪み光学ユニットに対する明視野の回転位置を設定するために用いられる。
【0010】
本発明に従う光学配列、本発明に従う顕微鏡及び本発明に従う方法の有用な変形の有利な開発が、以下の説明において、特に従属請求項及び図に関して説明される。
【0011】
この説明の文脈における用語の光学配列とは、一緒に特定の光学機能を実行する光学式及び機械式部品のグループを指すものである。光学式及び機械式部品は、1つのアセンブリとして形成されてもよいか、又は共通のハウジング内に収容されてもよい。
【0012】
用語の検出ビーム経路とは、検査される試料から検出デバイス、例えばカメラまで、試料によって後方に反射された光が移動する距離を意味すると理解される。このことは、具体的には、また、ミラー、レンズ、プリズム及び格子等の個々のビーム誘導及びビーム操作部品を指す。
【0013】
用語のマルチスポット走査顕微鏡とは、調査されるべき試料が焦点スポット又は単にスポットとも呼ばれる複数の焦点によって同時に走査される顕微鏡を指す。
【0014】
この説明の文脈における用語の検出平面とは、カメラチップ等の検出器がその内に配列されている平面を指す。検出平面は、典型的には、試料平面に光学的に共役である平面内、すなわち中間画像平面内にある。
【0015】
用語の分散デバイスとは、それによって光のビームのスペクトル空間分離が可能である部品を指す。スペクトル空間分離、又は等価語では、この説明の文脈における分散分離とは、特に、ビームの異なるスペクトル成分が、異なる空間方向に誘導されて、この意味において分離される状況を指す。この場合、決定された、ゼロになることがない波長間隔及び空間方向間隔で、1つの空間方向への1つの波長の連続撮像が、達成される。そのことは、互いに近接している波長が、また互いに近接している空間方向に誘導されることを意味する。互いに更に離れている波長は、それに対応して、互いに更に離れている空間方向に誘導される。
【0016】
本発明のための用語の歪み光学ユニットとは、例えば球面レンズによって提供されるような、回転対称の光学ユニットから外れている光学ユニットを意味すると理解される。
【0017】
原理的には、対応する相対的回転に基づいて、測定されるべき空間又はスペクトル自由度が例えば1つのセンサ線上にあるように、画像視野を歪ませる任意の光学ユニットが、歪み光学ユニットとして用いられてもよい。この技術的効果は、例えば、歪み光学ユニットが少なくとも1つの屈曲及び/又は反射アナモルフィック光学ユニットを含む場合に、達成されてもよい。
【0018】
歪み光学ユニットが円柱形光学ユニットである、本発明の実施形態変形が、特に好ましい。例えば、1つ又は複数の円柱形ミラーが、円柱形光学ユニットのために用いられてもよい。特定の長所を伴って、円柱形レンズが追加的に又は代替的に用いられてもよい。
【0019】
しかし、原理的には、位相マスク等の固定屈折光学ユニット、及び/又は調節可能屈折光学ユニット、例えば光空間変調器(SLM)が、また、明視野上に必要な位相機能を付与するための歪み光学ユニットとして用いられてもよい。
【0020】
用語の円柱形光学ユニットとは、異なる空間方向に異なる集束特性を有する光学部品又は複数の光学部品を意味する。特に、用語の円柱形光学ユニットとは、当該光学ユニット内では、いかなる集束も、1つの座標方向に、特に特定の軸線に沿って生じることがない光学ユニットを指し、その軸線は、この円柱形光学ユニットの軸線とも呼ばれる。
【0021】
ビーム経路内での部品の相対的配列を説明するために、ビーム方向における上流及び下流という用語が用いられる。例えば、このことは、検出ビーム経路について、第1部品の下流にある第2部品が第2部品の上流にある第1部品よりも検出器により近接してあることを意味する。
【0022】
用語の明視野は、本発明に対して重要である。それは、電磁放射線の強度の形状的空間分布を指す。例えば、白色光ビームが、複数のバーから構成されている回析格子を通過した後に、格子バーの延在方向に垂直である平面内で延在するスペクトル的に拡大された明視野が形成される。
【0023】
本発明の文脈における回転デバイスは、明視野を空間内の別の部品に対して回転させることを可能にする技術手段を意味すると理解される。
【0024】
相対的回転は、この場合、相対的回転位置だけが重要であることを意味し、そのことは、最初に及び原則として、互いに対してある関係に置かれた2つの成分のうちのどちらが環境に対して能動的に回転させられることができ、どの成分が、環境に対して静止しているかが未だ定まっていないことを意味する。
【0025】
本説明の文脈における用語の顕微鏡光学ユニットとは、顕微鏡のビーム経路内に、特に顕微鏡対物レンズ内に典型的に存在する全ての光学部品を意味すると理解される。
【0026】
光源から試料まで励起光によってとられるビーム経路は、照明ビーム経路と呼ばれる。光源から試料までの励起光を操作、誘導及び成形する光学部品は、一緒に同じく照明ビーム経路と呼ばれる。
【0027】
用語の光、特に照明光、励起光及び検出光は、顕微鏡法において典型的に用いられるか又は典型的に見られる波長範囲内の電磁放射線を意味すると理解される。特に赤外線、可視又は紫外線スペクトル範囲にあってもよい照明光は、光源としてレーザによって典型的に提供される。本発明に従う顕微鏡は、好ましくはレーザ走査顕微鏡である。
【0028】
蛍光顕微鏡検査法が本質的な顕微鏡法技術であるので、光は、また、励起光と呼ばれ、その理由は、上記光が、典型的には、試料を調製する色素の蛍光を励起するからである。
【0029】
本発明に従う顕微鏡において使用されるスキャナは、ガルバノメトリックスキャナ等の、原理的に公知の部品である。
【0030】
マルチスポット走査顕微鏡法に対して、マルチレンズアレイが多用され、それは、複数の照明スポット、特に変更可能な数の照明スポットを提供する機能がある。
【0031】
試料が置かれてそれが検出器上に明確に撮像される平面は、概して試料平面と呼ばれる。そのことは、検出器が、この試料平面に光学的に共役である平面内に、又は、言い換えると中間画像平面にあることを意味する。
【0032】
本発明に従う顕微鏡のための及び本発明に従う光学配列のための制御ユニットとして、電子部品、特に、PC又はマイクロコントローラ等の原則として公知であるプログラム可能なものが用いられてもよい。
【0033】
マルチスポット走査顕微鏡法において、試料が走査される照明スポットの数及び走査のための具体的な経路行路が、変更可能に選択されてもよい。典型的な変形において、最大4つの照明スポットが用いられ、これらの照明スポットは、例えば、直接連続する方式で試料を走査する。その代替として、様々な照明スポットがそれぞれ、異なる試料領域を、試料全体の所望の領域が完全に走査されるように走査してもよい。
【0034】
本発明の本質的コンセプトは、少なくとも1つの空間拡大スペクトルであるが典型的には複数の拡大スペクトルを有する明視野を、歪み光学ユニットに対して最初に適切に回転させるデバイスを提供するというコンセプトと、続いて歪み光学ユニットを用いて一方向にだけ明視野を集束させるというコンセプトと、であると考えてもよい。この方法において、回転角度を仮定することが適切に選択され、空間スペクトル情報が取得されてもよく、利用可能な検出器が最もうまく利用されてもよい。
【0035】
本発明に従う光学配列の及び本発明に従う顕微鏡の1つの重要な長所は、検出ビーム経路をマルチスポット走査顕微鏡の異なる作動モードに設定することが、比較的簡単な光学手段によって可能であるという事実であると考えてもよい。スペクトル分解走査顕微鏡法のための好適な作動モードとは、例えば、1つの照明スポットによって、2つの照明スポットによって、及び4つの照明スポットによって走査することである。非スペクトル分解走査顕微鏡法については、それにおいて試料が同時に比較的多くの照明スポットによって走査される作動モードが、また関心の対象である。本発明に従う光学配列において、わずかな光学部品だけが用いられるので、光損失が小さく、わずかな設置スペースしか必要とされない。
【0036】
原理的には、検出平面内に更なる光学部品、例えば光誘導部品を設置して検出されるべき検出光を検出器まで誘導することが可能である。本発明に従う光学配列の特に有利な変形においては、しかし、検出器は、検出平面内に配列される。
【0037】
この検出器は、例えば、原理的に公知である二次元区画化検出器であってもよい。そのような検出器は、例えば、エアリスキャン顕微鏡法において用いられる。しかし、線検出器は、本発明に従う光学配列において特に有利であってもよく、特に線検出器の長手方向が、歪み光学ユニットの軸線に平行に方向付けられる。そのような配置の場合、スペクトルを線検出器上に撮像することが可能であり、当該スペクトルは、例えば、歪み光学ユニットを用いて相互に連続する態様で4つの異なる照明スポットから試料によって後方に伝送された検出光の部分である。
【0038】
本発明に従う光学配列の特に好ましい変形において、検出器は、GaAsP検出器、光電子増倍管、SPADアレイ又は高速カメラである。
【0039】
独国特許出願公開第102014107606号においては、二次元検出マトリクスが用いられ、一つの方向に、異なる空間チャネルの測定が実行されながら、別の方向に、それぞれの空間チャネルについてのスペクトルが確立される。スペクトルは、[0073]に、及び独国特許出願公開第102014107606号の図5の両矢印によって示すように、分散要素(プリズム)を回転させることによって回転させられる。しかし、独国特許出願公開第102014107606号の明視野は、本発明の例示的実施形態におけるように、明視野の光軸を具備し、センサ表面に対して実質的に法線方向である軸線の周りをセンサに対して回転させられない。むしろ、独国特許出願公開第102014107606号は、二次元センサマトリックスへのスペクトルの平行移動を記載し、当該平行移動は、分散プリズムの回転によって生じさせられる。しかし、本出願の中心要素は、まさに例えばアナモルフィック歪み光学ユニットのものであって、線形状センサに対してフレーム上に固定して配列されているセンサ配列に対する明視野の相対的回転が、異なる測定目的に対する1次元、いわばベクトルセンサの有効な利用を可能にするという事実である。単純な場合、これは、画像視野回転プリズム(ドーブプリズム又はアッベ・ケーニッヒプリズム)によって達成される。そのような要素は、独国特許出願公開第102014107606号には説明されていない。
【0040】
独国特許出願公開第102014107606号においては、二次元マトリックスセンサが用いられ、当該センサにおいてスポットのスペクトルが、それぞれの場合に同時に測定されてもよい。
【0041】
本発明の目的は、例えば、1次元センサ、例えば1列の検出器要素を用いて、スペクトル又は空間分解方式のいずれかで、その結果として照明スポット毎にスペクトル的に統合されるように測定を実行し得ることである。
【0042】
原理的には、光学配列において明視野が歪み光学ユニットに対して回転させられることが本発明の実現にとって重要である。この回転は、歪み光学ユニットが、回転デバイスによって分散デバイスに対して回転可能であるという本発明の1つの改良において実現されてもよい。しかし、歪み光学ユニットが検出器に対して一定の相対的位置を有することがまた重要であるので、検出平面内に設置された検出器は、歪み光学ユニットによって共回転させられなければならない。この場合、回転デバイスは、実質的に機械式回転デバイスであって、これが、分散デバイスに対して存在してもよい歪み光学ユニット及び検出器を回転させる。明視野は、例えば、分散デバイスに対してこのように空間内で不変のままである。
【0043】
本発明の特に好ましい変形において、歪み光学ユニットは、分散デバイスに対して固定されている。つまり、具体的には、分散デバイスと歪み光学ユニットとの間に、照明スポットを回転させるための光学回転デバイスが存在することを意味している。この変形の機械的複雑度は、比較的低い。
【0044】
検出器を有する歪み光学ユニット及び明視野の両方が回転させられる変形が、また考えられ得る。重要なことは、単に明視野と歪み光学ユニットとの間の望ましい相対的回転位置が達成されるということである。
【0045】
明視野の空間操作は、例えば回転式ミラーを用いて達成されてもよい。本発明に従う光学配列の有利な変形において、回転デバイスは、そのため、少なくとも1つの回転式ミラーを含んでもよい。
【0046】
本発明に従う光学配列の特に好ましい代替の場合、回転デバイスは、少なくとも1つの回転プリズムを含む。回転プリズムは、特に手際よく効果的に明視野の回転を可能にするために用いられる。
【0047】
回転プリズムは、原理的には、歪み光学ユニットと分散デバイスとの間の、本発明に従う光学配列内のビーム経路のいずれかの所望の位置に設置されてもよい。しかし、特定の選択によって、回転プリズムは、瞳平面内で、特に、接続された顕微鏡のビーム経路に対して、ビーム経路の最も狭まった収縮の位置に配列されてもよい。その結果、比較的小さい回転プリズムが用いられてもよいという長所がある。これらは、より大きい回転プリズムよりも費用効果が優れているだけでなくて、より小さい設置スペースしか必要としない。
【0048】
具体的な選択によって、本発明に従う光学配列の回転プリズムが、アッベ・ケーニッヒプリズム又はドーブプリズムであってもよい。
【0049】
本発明に従う光学配列の特に好ましい変形において、歪み光学ユニット、例えば円柱形光学ユニットと明視野との間の相対的回転の軸線は、歪み光学ユニットの軸線に対して横方向に、特に垂直方向に向いている。
【0050】
明視野と歪み光学ユニット、特にセンサとの間の相対的回転の回転軸は、好ましくは、明視野の光軸を含む。具体的な選択によって、相対的回転の回転軸は、センサ表面に対して横方向、特に垂直方向又は法線方向である。
【0051】
本発明に従う光学配列の分散デバイスについて、検出光内に含有されたスペクトル成分の望ましい空間分離又は拡大が達成されることが重要である。典型的には、本発明に従う光学配列において、屈折及び/又は回析部品が、分散デバイスとして存在する。
【0052】
例えば、プリズムは、屈折部品として存在してもよく、及び/又は回折格子が回析部品として存在してもよい。
【0053】
歪み光学ユニットに関して、望ましい集束特性が、座標方向において得られることにより、線検出器がその横方向に、すなわち線の延在方向に垂直に可能な限り最適であるように照明され、加えて、線の方向に集束が達成されないか又は弱い集束だけが達成されることが機能上重要である。歪み光学ユニットが単一の円柱形レンズによって形成されている、本発明に従う光学配列の変形が、特に好ましい。1つだけの円柱形レンズを用いることにより、伝送損失が最小に維持されてもよい。
【0054】
顕微鏡光学ユニットから出る検出光の明視野の空間寸法は、顕微鏡光学ユニットのビーム経路内に存在する光学部品によって決定される。これらは、利用可能な検出器又は使用される検出器と必ずしも整合する必要があるわけではない。これらの考察の下で、第1及び第2レンズを有する望遠鏡光学ユニットが、特に、使用される検出器の寸法に撮像目盛を適合させるために存在する、本発明に従う光学配列の変形が、有利である。この場合、歪み光学ユニット及び回転デバイス、特に回転プリズムが、望遠鏡の第1と第2レンズの間に配列されることが有用であることがある。そのような望遠鏡部分の別の長所は、更なる設置スペース及び更なる瞳平面が提供されることにより、回転プリズムの設置を例えばより簡単にすることである。
【0055】
代替として、ズーム光学ユニットが、また、撮像目盛を、特に用いられている検出器の寸法に適合させるために提供されてもよい。この変形は、例えば、ビーム経路を異なる形状寸法を有する異なる検出器に適応させることを可能する。
【0056】
本発明に従う方法の特に有利な変形において、光学配列が、回転デバイスの設置に基づいて、1つの照明スポットのスペクトル、2つの照明スポットのスペクトル又は4つの照明スポットのスペクトルを検出器上に撮像するために用いられてもよい。単一の照明スポットのスペクトルが、検出器上に撮像される変形は、その方法に従って、単一スポットスキャナとして知られているものに対応し、また、ここで説明される本発明に従う方法によって特定の例として実現され得る。
【0057】
しかし、原理的には、それぞれ異なる照明スポットから生じる光ビームを、光スペクトルの延在方向がラインセンサの延在方向に垂直であるように線検出器上に撮像することがまた可能である。1つの改良では、検出器を有する歪み光学ユニットが、分散デバイスに対して固定されており、明視野の非回転状態において、照明スポットのスペクトルが線検出器上に撮像されてもよく、90°だけの明視野の回転がそのために必要である。そのような設置の場合、スペクトル分解が完全に失われるが、特に多くの照明スポットの照明光が、それぞれの場合にペクトル統合方式で、同時に測定されてもよい。
【0058】
結果として、本発明は、ラインセンサにおいて入手可能な情報についての融通性のある配列を可能にする光学ユニットを提供する。同時に、光学複雑度が、非常に低く維持されてもよい。高透過率が保証されてもよく、技術的費用が全体として低い。
【0059】
上記の目的が、このようにして歪み光学ユニット及び回転プリズムの適切な使用によって達成される。歪み光学ユニットが、1つの軸線(図6図9のx軸)内に光を集束させるために用いられ、一方、それに垂直である別の軸線(図6図9のy軸)内の光は、影響を受けない。更に、必要な撮像目盛が、回転対称の撮像光学ユニットによってラインセンサ上に実現されてもよい。代替として、円柱形レンズ及びラインセンサが、また、一緒に回転させられてもよいけれども、典型的には冷却されるラインセンサが比較的大きいので、これは技術的に比較的複雑である。
【0060】
円柱形レンズが空間内に固定される場合、センサの直線タイプの照明が、回転プリズムの回転角度から独立して、特に円柱形レンズ軸線の向きに固定される。回転プリズムの効果により、スペクトル線平面の視野が、それが歪み光学ユニット、特に円柱形光学ユニットを用いてラインセンサ上に集束される前に、望ましい向きに回転させられるように撮像されてもよい。このために、ラインセンサのなんらかの望ましい使用が、原理的に可能である場合がある。センサは、したがって、タスクに基づいて可変的に利用可能である。この場合、集束とは、回折限界の範囲内での光学撮像という意味での集束というよりむしろ、検出器表面、すなわち検出器線上への光エネルギの集中又は誘導を基本的に意味する。
【0061】
原理的には、面走査検出器が、また、用いられてもよい。その場合、本発明に従う光学配列は、必要な検出器面を1ラインに低減するために用いられてもよく、残りの検出器面が、別の検出タスク、例えば同時に実行される別の顕微鏡法技術に用いられてもよい。
【0062】
好適な検出器は、また、高速度カメラ、SPAD及び/又は光電子増倍管、例えば多重チャンネル平板であってもよい。それに対応して構成された顕微鏡の照明は、原理的に、異なる態様で達成されてもよい。最初に、全ての励起スポットが、同一のスペクトル成分を有してもよい。それらのマルチスポットによって走査される試料において、この場合の全ての放出チャネルは、試料のそれぞれ照明された位置に本来的に依存する同様のスペクトル情報を具備する。更に、励起スポットのスペクトル成分が変化する可能性もあり、そのことが有利である場合がある。この場合、まさにこの照明スポットによる、例えば色素の定められたスペクトル放出が、標的化方式で達成されてもよい。次に、個々の線のスペクトル成分が、異なる場合がある(図4を参照)。スペクトル放出分布が、例えば、独国特許出願公開第102016119730.0号に記載されているように、ことによるとミラー及びスポットによって影響を受ける場合がある。
【0063】
本発明の更なる特性及び長所が、付属の概略図に関して以下で説明されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
図1】本発明に従う光学配列についての第1の例示的実施形態を示す。
図2】本発明に従う光学配列についての第2の例示的実施形態を示す。
図3】本発明に従うマルチスポット走査顕微鏡についての例示的実施形態を示す。
図4】スペクトル分解マルチスポット走査顕微鏡法における検出視野の特性を説明するための線図である。
図5】スペクトル分解マルチスポット走査顕微鏡の場合におけるラインセンサ上の光学情報のあり得る分布を示す。
図6】本発明に従う光学配列の第1回転位置にあるラインセンサ上への焦点と関連するスペクトルの撮像を説明するための線図である。
図7】本発明に従う光学配列の第2回転位置にあるラインセンサ上への2つの焦点のスペクトルの撮像を説明するための線図である。
図8】本発明に従う光学配列の第3回転位置にあるラインセンサ上への4つの焦点のスペクトルの撮像を説明するための線図である。
図9】本発明に従う光学配列の第4回転位置にある非スペクトル分解検出のためのラインセンサ上への4つの焦点の検出光の撮像を説明するための線図である。
図10】第1回転位置にある本発明に従う光学配列の第3の例示的実施形態を示す。
図11】第2回転位置にある図10の例示的実施形態を示す。
図12】第1回転位置にある本発明に従う光学配列の第4の例示的実施形態を示す。
図13】第2回転位置にある第4の例示的実施形態を示す。
図14】第3回転位置にある第4の例示的実施形態を示す。
図15】第4回転位置にある第4の例示的実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0065】
本発明に従う光学配列100の第1の例示的実施形態が、図1に関して説明されることになる。同一の部分及び部品、並びに均等な効果を有する部分及び部品には、概して図面においては同じ参照符号が付与される。
【0066】
図1に示す、本発明に従う光学配列100は、本質的部分として、分散デバイス10と、作動部50を有する回転デバイス30と、歪み光学ユニット20と、検出平面26と、を含む。示している例において、歪み光学ユニットは、円柱形光学ユニット20である。座標系12が、空間方向を説明するように機能できる。円柱形光学ユニット20の軸線22及び検出平面26内に配列された線検出器24が、y方向に延在する。x軸は、yz平面に垂直である。
【0067】
光ビーム61が、図1に概略的に示す状況において、分散デバイス10に入射し、当該分散デバイスは、例えば、回折格子であってもよい。上記光ビーム61は、試料(図1に図示せず)内の照明スポットから生じ、当該試料は顕微鏡(同様に図示せず)内にある。光ビーム61は、概略的に図1に示すように、分散デバイス10によってy方向にスペクトル65中に拡大される。更なる照明スポットの、存在してもよい任意のスペクトルが、別のx位置、すなわち、紙面に対してスペクトル65の前方又は後方にある。異なる照明スポットと関連しているスペクトルは、したがって、x方向に見て互いの上方にあるか、又は互いの後方にある。
【0068】
分散デバイス10が単純格子である場合、図1の格子バーは、x方向に、紙面に垂直に延在するであろう。拡大スペクトル、具体的にはスペクトル65は、明視野60を形成し、当該明視野は、回転デバイス30に入射する。回転デバイス30は、例えば、機械式及び電子式手段によって回転させられ、制御ユニット50によって認識される回転プリズムであってもよい。回転又は捻転された明視野63は、回転デバイス30を出て、円柱形光学ユニット20に到達する。方位角回転方向が、この場合、回転矢印51によって示されている。回転軸自体は、z軸に平行である。
【0069】
円柱形光学ユニット20は、入射明視野63をx方向に、すなわち図1の紙面に垂直で、y方向及びz方向に垂直に集束させる(座標系12を参照)。対照的に、円柱形光学ユニット20に起因した集束は、y方向には生じず、その理由は、その軸線22がy方向に延在するからである。このように集束させられた明視野64は、線検出器24に入射する。したがって、回転デバイス30を用いて、円柱形光学ユニット20に対する明視野63の相対回転位置を変えることが可能である。このことは、異なる照明スポットに属する光スペクトルの、全く同一の線検出器24上への可変撮像を可能にする。これに関する更なる詳細が、図4図15に関して説明されることになる。
【0070】
図2は、本発明に従う光学配列200の更なる例示的実施形態を示し、当該実施形態において、円柱形光学ユニット20に入射する明視野63の可変回転位置が、回転デバイス40によって分散デバイス10に対して線検出器24と共に回転させられる円柱形光学ユニット20によって、達成される。この変形におけるような明視野60は、空間的には操作されない、すなわち、分散デバイス10を出る明視野60は、原則として円柱形光学ユニット20に入射する明視野63と同一である。円柱形光学ユニット20の方位角回転方向は、矢印52によって図2に概略的に示されている。回転軸の方向は、ここでもz軸に平行である。回転デバイス40は、制御ユニット50によって作動させられ、図2の変形では、実質的に機械式のものであり、その理由は、この場合に重要であることが、回転位置に関して、円柱形光学ユニット20及び検出器24を分散デバイス10に対して位置決めすることであるからである。
【0071】
図3は、本発明に従う顕微鏡300を概略的に示す。上記顕微鏡は、本質的部分として、顕微鏡光学ユニット310と、光源ユニット320と、そこに設置される、観察されるべき試料314を伴う試料平面312と、本発明に従う光学配列100と、最後に、制御ユニット330と、を含む。光源ユニット320によって放出される励起光322は、具体的にはスキャナ及び顕微鏡対物レンズ(図3に図示せず)を含む顕微鏡光学ユニット310中へと進み、そして、矢印316によって概略的に示されるように、例えば、試料314上に複数の照明スポットに集束させられる。例えば、4つの照明スポットが、試料314にわたって同時に走査される。照明スポットによって照明された試料の部分が、光318を後方に伝送し、当該光は、顕微鏡光学ユニット310によって誘導される。明視野324の形式の顕微鏡光学ユニット310を出る検出光が、本発明に従う光学配列100に入り、ここで、検出平面26内に設置された線検出器24によって、図1と関連して上記したように検出されてもよい。本発明に従う光学配列100は、制御ユニット330によって作動させられてもよく、当該制御ユニットは、概略的に示す作動可能接続334によって光学配列100に接続されている。検出器24によって提供される測定データ332は、少なくとも暫定的に制御ユニット330によって評価されてもよく、当該制御ユニットは、例えばPC又はそれに相当する計算装置であってもよい。制御ユニット330は、光源ユニット320を作動させるように追加的に機能させてもよい。
【0072】
マルチスポット走査顕微鏡法での明視野60の基本特性は、検出光が本発明に従う光学配列の分散デバイス10を通過した後に現れるので、図4と関連して説明されることになる。ここで、合計4つのスペクトル65、66、67、68が、座標系において概略的に示され、当該スペクトルは、それぞれ、試料上の異なる照明スポットから生じる。図4の水平座標軸は、図1及び図2のy軸に対応する。全ての照明スポットが全く同じにスペクトル的に励起されるとき、スペクトル65、66、67、68は、照明スポットのそれぞれの位置における試料組成にありのままに基づいて、比較的同様に見えることになる。しかし、異なる照明スポットの励起が、既に原則としてスペクトル的に異なっていてもよい。その場合、スペクトル65、66、67、68は、また、個々に明確な相違を示してもよい。図4の水平軸方向のスペクトル65、66、67、68の範囲及び図4の垂直軸方向のこれらのスペクトルの距離が、顕微鏡光学ユニット310及び分散デバイス10によって、並びに場合によってはビーム経路内に存在する更なる部品によって決定される。
【0073】
マルチスポット走査顕微鏡法の基本的タスクは、可能な限り有効にスペクトル65、66、67、68を検出することである。この目的に対して、特にGaAsP検出器が利用可能であり、当該検出器は、線検出器の形式においてのみ実質的に利用可能である。そのため、これらのスペクトルを全く同一の線検出器上に撮像することが対象である。図5は、このことが完遂され得る方法についての複数の変形を示す。図5a)は、線検出器24上への単一のスペクトル65の撮像を示す。図5b)は、線検出器24上への2つのスペクトル65、66の撮像を示し、図5c)は、線検出器24上への相互に隣接する態様での全4つのスペクトル65、66、67、68の撮像を示す。図5d)は、特別な場合を示す。この場合、スペクトル65、66、67、68は、それぞれ90°だけ回転させられて、全て線検出器24上に誘導されている。約90°だけの回転に起因して、及び図5d)内の線検出器24が水平方向にだけ空間分解し、それに垂直である方向には空間分解しないので、スペクトル分解は、図5d)に示す状況において失われている。このことは、例えば、目的が、より多くの照明スポットから後方に伝送された光を、スペクトル的に統合された態様でそれぞれ検出することである場合に、非常に望ましいことがある。
【0074】
図5a~図5d)の状況が、図6図9及び図12図15と関連して再び以下で考察される。
【0075】
図6図9は、それぞれ回転させられた明視野63を示し、当該明視野は続いて、円柱形光学ユニット20及び場合によっては更なる光学部品を用いて、線検出器24上に撮像される。円柱形光学ユニット20及び存在するいずれかの更なる光学部品の効果が、右を指す矢印25によって図6図9に概略的に示されている。
【0076】
最初に、図6は、明視野60の異なるスペクトルが、x方向に縦に並んで位置し、y方向に延在することを示し、図6は、その内、スペクトル67だけを示す。図6に示す状況において、本発明に従う光学配列が、照明スポットの単一のスペクトル67を線検出器24上に撮像するために用いられる。
【0077】
それと比較して、図5b)に対応する、図7に示す状況においては、2つのスペクトル65、67は、相互に隣接する態様で線検出器24上に撮像されている。このことは、図1と関連して上記されたように、分散デバイス10を出る明視野60に対して回転させられた明視野63によって達成される。明視野60が回転させられなければならない回転角度が、明視野60のスペクトル65、67の距離及びy方向の明視野の範囲によって具体的に決定される。この角度が過度に小さく選択される場合、検出器24は、最適には利用されないことになる。それが過度に大きく選択される場合、検出器24上のスペクトル65と67とは重なる。
【0078】
図5c)に対応する状況が、図8に示されている。この場合、スペクトル65、66、67、68は、それらが互いに隣接するように、線検出器24上に同時に撮像される。図7と比較すると、明視野は、この場合、より小さい角度だけ回転させられる必要があり、その理由は、y方向に同じ範囲のスペクトルを有する、2つのスペクトルの間の距離が、半分の大きさしかないからであることがわかる。
【0079】
最後に、図9は、図5d)に対応する状況を示し、当該状況において、明視野63が、回転デバイス30に入射する明視野60に対して90°だけ回転デバイス30によって回転させられている(図1を参照)。全てのスペクトル65、66、67、68からの光が、この場合、線検出器24上に撮像されているけれども、スペクトル分解は失われている。この作動モードは、多数の照明スポットの検出光が同時に測定され得る場合、望ましいことがある。
【0080】
本発明に従う光学配列400の第3の実施形態変形が、図10及び図11に関して説明される。それは、分散デバイス10として反射回折格子14を具備する。入射検出光70が、上記回折格子14によって、紙面(yz平面)においてスペクトル分離される。このように取得された明視野60が、回転式ドーブプリズム32の入口側面33に入射し、当該ドーブプリズムは、図10からの変形において回転デバイス30を実現する。ドーブプリズム32の反射面34での反射後に、回転させられた明視野63は、出口側面35でドーブプリズム32を出る。ドーブプリズム32を出る明視野63が入来する明視野60と比べてそれだけ回転させられる角度は、この場合、図10の紙面内で水平に位置する軸線の周りでのドーブプリズム32の回転位置に依存する。ドーブプリズム32の回転軸は、z方向に平行である。明視野63が明視野60と比べて回転させられる回転角度は、この場合、反射面34での明視野の反射に起因して、不変のドーブプリズム32を明視野60が通過する位置に対してドーブプリズム32が回転させられた角度の2倍の大きさである。図10に示す状況において、ドーブプリズム32は、この中立位置にある、すなわち、図10の明視野63は、ドーブプリズム32に入射する明視野60と比べて回転させられていない。
【0081】
対照的に、図11に示す状況において、ドーブプリズム32は、z方向に平行である回転軸の周りに回転させられている。回転軸は、水平の点線31によって図11に示されている。明視野63は、それぞれの場合に円柱形光学ユニット20に入射し、当該円柱形光学ユニットは、図10及び11に示す変形における単一の円柱形レンズ21である。円柱形レンズ21の集束は、この場合、紙面に垂直な方向、すなわちx方向に達成され、一方、明らかに、円柱形光学ユニット20による集束は紙面内には生じない。円柱形光学ユニット20を出る光は、続いて線検出器(図10及び図11に図示せず)が配列されてもよい検出平面26中に回転対称の二重レンズ27を用いて撮像される。線検出器は、それが円柱形光学ユニット20及び二重レンズ27から構成される光学配列の焦線内にあるように、検出平面内に設置されなければならない。図10に示す状況は、図5a)及び図6の状況、すなわち、単一のスペクトル65が線検出器上に撮像される状況に対応する。図10の更なるスペクトルは、紙面の前方又は後方にある。二次元的に拡張され分解する検出器を用いることが、また、原則として可能であろう。しかし、そのような検出器は、現在、望ましい速度特性を伴って利用可能ではないので、本発明の使用は有益である場合がある。図11に示す状況において、図5b)及び図7と比較すると、2つのスペクトル65、67は、明視野60に対する明視野63の回転に起因して、同じ平面(図11の紙面)内で同時に検出平面26中にそれらが互いに隣接するように撮像される。
【0082】
本発明に従う光学配列500の更なる変形が、異なる作動設定にある図12図15に関連して説明されることになる。本発明に従う光学配列500は、図10及び図11に示す例示的実施形態の光学配列400との類似点を示す。分散デバイスは、図12図15には示されていない。図12図15において、望遠鏡部分が、回転対称の二重レンズ27、29によって形成されている。ドーブプリズム32は、この場合、最も密着したビーム収縮の位置にそれぞれにおいて設置される。この位置は、顕微鏡のビーム経路(図12図15に示さず)に関して、瞳平面36内に位置している。図12図15の左側のそれぞれの場合において、中間画像平面38から来る明視野60は、本発明に従う光学配列500に入る。第1照明スポットから生じるスペクトル65が、この場合、紙面(yz平面)内にある。更なる照明スポットから生じる更なるスペクトル66、67、68が、紙面の後方にある(すなわち、x方向に位置がずれている、座標系12を参照)。
【0083】
明視野60は、二重レンズ29を経由してドーブプリズム32に到達する。明視野60は、z軸に平行である回転軸の周りをドーブプリズム32によって回転させられ(図12図15の座標系12を参照)、そして、回転させられた明視野63は、ドーブプリズム32から出る。図12において、ドーブプリズム32は、回転角度が0°であるように、すなわち明視野60がまったく回転させられていないように設置されている。図13図15に示す状況において、ドーブプリズム32は、異なる角度だけそれぞれ回転させられ、当該角度は、それぞれの場合に、入射する明視野60と比べて明視野63の異なる回転をもたらす。円柱形光学ユニット20の効果に起因して、2つのスペクトル65、67が、図7と同様に、図13の線検出器24上に連続して撮像されている。図14において、図8と同様に、全4つのスペクトル65、66、67、68が、線検出器24上に連続して撮像されている。最後に、図15において、図9のように、全4つのスペクトルからの光が線検出器24に到達する結果、明視野60が、ドーブプリズム32によって90°だけ回転させられているけれども、当該明視野は、それによって、90°だけの回転に起因して、スペクトル的に統合された態様で検出される。
【符号の説明】
【0084】
10 分散デバイス、12 座標系、14 回折格子、20 歪み光学ユニット,円柱形光学ユニット、21 円柱形レンズ、22 歪み光学ユニット20の軸線、24 線検出器、25 矢印、26 検出平面、27 二重レンズ、29 二重レンズ,二重レンズ27によって望遠鏡を形成する、30 回転デバイス、32 ドーブプリズム、33 ドーブプリズム32の入口側面、34 ドーブプリズム32の反射面、35 ドーブプリズム32の出口側面、36 瞳平面、38 検出平面26に光学的に共役である中間画像平面、40 回転デバイス、50 回転デバイスのための制御ユニット、51 回転方向、52 回転方向、60 明視野、61 第1照明スポットから後方に伝送される検出光、63 歪み光学ユニット20での光入射、64 歪み光学ユニット20から検出平面26まで伝播する光、65 第1照明スポットから後方に伝送される検出光のスペクトル、66 第2照明スポットから後方に伝送される検出光のスペクトル、67 第3照明スポットから後方に伝送される検出光のスペクトル、68 第4照明スポットから後方に伝送される検出光のスペクトル、70 本発明に従う光学配列400まで誘導される検出光、100 本発明に従う光学配列、200 本発明に従う光学配列、300 本発明に従うマルチスポット走査顕微鏡、310 顕微鏡光学ユニット、312 試料平面、316 試料314での励起光入射、318 試料314によって放出された検出光、320 光源モジュール、322 励起光、324 検出ビーム経路,本発明に従う光学配列100に導かれる検出光、330 制御ユニット、332 検出器24によって提供された測定データ,光学配列100から制御ユニット330までの接続線、334 制御ユニット330から本発明に従う光学配列100までの動作線、400 本発明に従う光学配列。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15