(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-02
(45)【発行日】2022-05-13
(54)【発明の名称】相互連結される2つの要素の接続及び線形分離のための方法及び装置
(51)【国際特許分類】
B64G 1/64 20060101AFI20220506BHJP
F42B 15/36 20060101ALI20220506BHJP
【FI】
B64G1/64
F42B15/36
(21)【出願番号】P 2019545784
(86)(22)【出願日】2018-02-26
(86)【国際出願番号】 FR2018050449
(87)【国際公開番号】W WO2018158531
(87)【国際公開日】2018-09-07
【審査請求日】2021-02-24
(32)【優先日】2017-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】517271142
【氏名又は名称】アリアネグループ・エスアーエス
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パルトネ キャロル
(72)【発明者】
【氏名】メディナ フェリペ
【審査官】姫島 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-529152(JP,A)
【文献】特表2016-529153(JP,A)
【文献】特表2017-504779(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0114793(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64G 1/64
F42B 15/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
接続手段により互いに線状に接続され、且つ確実に分離されなければならない2つの要素、すなわち第1要素(1)と第2要素(2)とを接続及び線形分離するための装置であって、前記分離が前記接続手段を昇温させることにより行われ、前記昇温が遠隔的にトリガーされ、
-前記第1要素
(1)と前記第2要素
(2)との間の前記接続手段と、
-発熱性材料(5)であって、前記接続手段の付近に配置された熱発生器と、
-前記発熱性材料(5)を遠隔的に火工トリガーするための手段と、を備えている前記装置において、
-前記発熱性材料(5)が、前記第1要素(1)と前記第2要素(2)との間に配置されている管(4)内に配置され、且つ
-前記接続手段が、前記管(4)と前記第1及び第2要素(1,2)の各々の間に配置された接着剤(3)から構成されていることを特徴とする、装置。
【請求項2】
前記接着剤(3)が、前記管(4)並びに前記第1及び第2要素(1,2)に対して断熱性の接着剤であることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記管(4)を前記第1要素(1)上に保持するためのリテーナシステム(6)を備えていることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記リテーナシステム(6)が金属製であることを特徴とする、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
宇宙船に用いられ、前記第1要素(1)が、担持する段に対応し、前記第2要素(2)が、担持される段に対応することを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記発熱性材料が、テルミットと金属間化合物との混合物であることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
接続手段により一時的に互いに線状に接続されることを意図され、且つ確実に分離されなければならない2つの要素、すなわち第1要素(1)と第2要素(2)とを接続及び線形分離するための方法であって、前記分離が前記接続手段を昇温させることにより行われ、前記昇温が遠隔的にトリガーされる方法において、
-前記第1要素(1)と前記第2要素(2)とを接着剤(3)により接続するステップと、
-電気制御接続により活性化される発熱性材料(5)、熱発生器を、前記第1要素(1)と前記第2要素(2)との間の、前記接着剤の中間に配置されている管(4)内に配置するステップと、
-前記接着剤(3)の迅速な昇温を生じさせるために、及び、前記第1及び第2要素(1,2)の分離を得るために、前記発熱性材料(5)を火工トリガーするステップと、を含むことを特徴とする、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、事前に堅固に接続されている第1の要素と第2の要素とを可能な限り円滑に線形分離させることに関する。好ましくは、本発明は、ミサイル、宇宙探査機、さらには航空機の段状物体(すなわち、段状物とペイロードと)を、ペイロードが投下される場合に互いに分離させるためのスペースランチャに適用される。この分離の目的は、ペイロードが搭載された組立体の重量を低減すること、すなわち、ペイロードの投下である。これらの適用は、破損し易い物体、例えば衛星を、これらの物体の接続部が多大な機械的負荷(例えばランチャによる推進中の)を受けた状態で分離しなければならないことにより特徴付けられる。
【背景技術】
【0002】
図1A及び
図1Bは、ランチャの2つの要素1と2との前記分離の原理を示す。第1要素1は、好ましくはn段目の要素、好ましくは第1のエンジン段である。第2要素は、n+1段目の要素であり、第2のエンジン要素、すなわち、ペイロード(実際の搭載物)、例えば衛星である。従って、ランチャの軸における線形分離は、第2要素のベース部を劣化させずに行われなければならず、その場合、第1要素1を、前記2つの要素(要素1と要素2)の接続位置における要素1の表面を劣化させずに回収することが望ましい。
【0003】
現状技術において、接続‐分離システムは、主に、以下の4つのタイプである。すなわち、
1)構造物をボルト締め及びリベット締めにより接続し、そして、局所溶融により火工切断する。これらのシステムは、その動作時にデブリ物質を放出させる。これに加えて、切断により構造物に大きな衝撃が生じ、この衝撃が、ランチャのペイロードを損傷させ得る。
【0004】
特許文献1が、このような方法の実施例を示している。
【0005】
2)構造物をリベット締めにより接続し、そして、火工要素の変形による破断により火工切断する。この方法は最も採用されており、デブリは発生させないが、非常に大きい衝撃を生じる。
【0006】
3)火工ボルト締めにより接続し、そして、ナットを破断又は分裂させる。このタイプの方法は、上記2つの方法よりも、生じる衝撃がかなり少ないが、1つの要素から他の要素に力を伝達するために複数のボルトを必要とし、従って、含まれる装置の個数により、故障の危険性が高い。
【0007】
4)ストラップによる接続、及び、火工ボルトによるこれらの接続の断裂。このタイプの方法では、2つの要素間において高い応力の伝達ができず、また、ランチャの直径が大き過ぎて対応できない。またこの場合、応力の解放時に重大な衝撃を構造物にもたらす。
【0008】
さらに、
図2A、2B及び
図2Cに示されているように、接続要素13が内壁14に切断リング20を含む装置及び方法が知られている。前記切断リングは主に本体21から構成され、本体21はリング状で、その外径側にて開放されている。本体21には、発熱性材料22、すなわち、テルミットなどの発熱体が充填されている。用語「テルミット」は、詳細にはナノテルミットも含む。
【0009】
図2Bを参照すると、火工物質から成る材料22が発火すると急激な昇温を生じ、この昇温は、前記材料22に面して配置された接続要素13の一部が溶融するまで続く。接続要素13の前記部分をその融点まで加熱すると、前記接続要素13が2つの部分に分離される。これらの2つの部分が、
図2Cに、上側部分13Aと下側部分13Bとして示されている。切断リング20は、その縁部20Aの1つにより、接続要素13の壁14に予め取り付けられていた。従って、接続要素13の2つの部分である下側部分13Bと上側部分13Aとが分離した後、切断リング20は、2つの部分の一方(この場合は、接続要素13の下側部分13B)に固定されたままである。実際、航空機ランチャでの使用において、切断リング20は、下側の段(航空機の飛行を続行せずに地上に落下する)に固定されたままになるように選択される。これにより、飛行を続行する構造物が必要以上に長時間昇温することを防止できる。
【0010】
一般的に、前記技術の現況において、前記接続‐分離方法から派生するシステムは多くの場合、分離後にランチャの外形上にアスペリティ(凸凹)が残る特徴を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、上記の欠点を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的のために、本発明の第1の主な目的は、接続手段により互いに線状に接続され、且つ確実に分離されなければならない2つの要素、すなわち第1要素と第2要素とを接続及び線形分離するための装置であって、前記分離が前記接続手段を昇温させることにより行われ、前記昇温が遠隔的にトリガーされ、
-前記第1要素と前記第2要素との間の前記接続手段と、
-発熱性材料、前記接続手段の付近に配置された、すなわち、前記接続手段の昇温を可能にするように配置された熱発生器と、
-前記発熱性材料を遠隔的に火工トリガーするための手段と、を備えている前記装置である。
【0014】
本発明によれば、前記装置において、
-前記発熱性材料は、前記第1要素と前記第2要素との間に配置されている管内に配置され、
-前記接続手段は、前記管と前記第1要素及び前記第2要素との間に配置された接着剤から構成されている。
【0015】
前記装置の主要な実施形態において、前記接着剤は、前記管並びに前記第1要素及び前記第2要素に対して断熱性の接着剤である。
【0016】
前記装置の特定の実施形態において、前記管を前記第1要素上に保持するためのリテーナシステムが設けられている。
【0017】
好ましくは、前記リテーナシステムは金属製である。
【0018】
前記装置の主要な用途において、前記第1要素は、宇宙船により担持される前記第2要素のキャリア段(担持する段)である。
【0019】
本発明の好ましい実施形態において、前記発熱性材料は、テルミットと金属間化合物との混合物である。
【0020】
本発明の別の主な目的は、接続手段により一時的に互いに線状に接続されることを意図され、且つ確実に分離されなければならない2つの要素、すなわち第1要素と第2要素とを接続及び線形分離するための方法であり、前記分離は、前記接続手段を全体的に迅速に、且つ部分的に昇温させることにより行われ、前記昇温は遠隔的にトリガーされる。
【0021】
本発明によれば、前記方法は、
-前記第1要素と前記第2要素とを接着剤により接続するステップと、
-電気制御接続により活性化される発熱性材料、すなわち熱発生器を、前記第1要素と前記第2要素との間の、前記接着剤の中間に配置されている管内に配置するステップと、
-前記接着剤の迅速な昇温を生じさせるために、及び、前記第1要素と前記第2要素との分離を得るために、前記発熱性材料を火工トリガーするステップと、を含む。
【0022】
本発明及びその技術的な特徴は、複数の添付図面と共に非限定的な例として提示される以下の説明を読むことにより、より良好に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1A】航空機ランチャの2つの要素の分離を示す図である。
【
図1B】航空機ランチャの2つの要素の分離を示す図である。
【
図3】航空機ランチャに適用される本発明による装置の配置を示す図である。
【
図4A】本発明による装置及びその動作を示す図である。
【
図4B】本発明による装置及びその動作を示す図である。
【
図4C】本発明による装置及びその動作を示す図である。
【
図5A】本発明による装置及びその動作の優先的な実施に関する図である。
【
図5B】本発明による装置及びその動作の優先的な実施に関する図である。
【
図5C】本発明による装置及びその動作の優先的な実施に関する図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図3は航空機ランチャを示しており、ランチャは、プロペラを備えた第1のキャリア段1を有する。キャリア段1は、その上部より上に、軌道に投入される部分、すなわち、上側の段を搭載している。拡大図を示すボックスに、航空機ランチャの前記2つの要素の間の接続部が配置されている様子が示されている。
【0025】
図4Aは、第1要素1と第2要素2とが、接続手段を象徴的に矩形で示した部分により分離されている状態の断面を概略的に示す。前記接続手段は、発熱性材料5を収容している管を含む。好ましくは、前記発熱性材料は、テルミットと1以上の金属材料との混合物、すなわち、金属間組成物である。
【0026】
テルミットは、ナノテルミットであってもよい。
【0027】
管4が、特に第1要素1及び第2要素2に接触して配置された上部及び下部において、接着剤3により取り囲まれている。従って、接着剤3は、前記第1要素1と前記第2要素2との間の接合及び保持を提供し、この接合は密閉的である。
【0028】
接着剤3は、例えば、RESCOLL社により開発されたINDARプロセスにより得られる接着剤であり、又は、EA9395タイプの接着剤でもよい。
【0029】
図4Bを参照すると、所与の瞬間に、発熱性材料がトリガー手段により火工的に発火される。このトリガー手段は、第1要素1と第2要素2との接続部に対して遠隔的に配置されており、発熱材料5に電気接続を用いて作用する。発熱性材料の少なくとも一部の非常に迅速な昇温が生じ、従って、接着剤を溶融させるのに十分な温度に急速に到達する。当然、管4は融点を有さねばならず、この融点は、前記トリガー中の管4の完全性及び温度上昇を保証するための融点であり、尚且つ、接着剤をその炭化まで昇温させることを可能にし、従って接着剤の、第1要素1と第2要素2との接続作用を無効にする。こうして、前記第1要素と第2要素とは分離される。
【0030】
図4Cは、前記分離を示し、第1要素1は接続手段の残りの部分(すなわち、具体的には管4)を保持している。従って、第2要素2は第1要素1から分離されている。従って、航空機の2つの段、特には、第1要素1から成る第1のキャリア段と、宇宙に向かって上昇し続けなければならない、第2要素2から成る第2の段との分離が行われ得ることが理解されよう。
【0031】
前記機構において、全体的な力が、接着された接続部及び金属管4を介して伝達され、従って、これらの部品は、この伝達に応じた寸法につくられる。
図4A、
図4B及び
図4Cにおいて、第1要素1と第2要素2とが、航空機の2つの段の間に中間リング(すなわち、前記2つの段の間の中間接続部から成る)を形成し得ることに留意されたい。
【0032】
発明の好ましい実施形態において、接続手段の第1要素1に、特には管4に、リテーナシステムが、火工トリガーの後に提供される。
【0033】
図5A、5B及び
図5Cの軸方向断面の半図を参照すると、本発明の特定の実施形態は以下の通りである。
【0034】
第1要素1及び第2要素2が拡大端を有する。前記第1要素及び第2要素における一端面に接着剤3が配置され、接着剤3は、発熱性材料5で充填された管4を、完全に又は少なくとも部分的に取り囲んでいる。
【0035】
図5Bに示されているように、発熱性材料5の発火により、接着剤3の昇温及び融解又は炭化が生じる。
【0036】
リテーナシステム6は、第1要素1に取り付けられ、且つ、少なくとも管4を取り囲んでいる。
【0037】
好ましくは、リテーナシステム6は、接着剤3を通過させるためのアパーチャを含む。
【0038】
図5Cに示されているように、火工トリガーの後、第1要素1と第2要素2とが分離される。リテーナシステム6は、依然として、第1要素1により保持されている管4を取り囲んでいる。前記リテーナシステムを、第1要素1及び第2要素2と同様に環状の管4の全周を取り囲む金属フィルムから構成することが提案される。前記リテーナシステム6は、発熱性材料により放出される熱に耐えるために、高い融点を有さなければならない。リテーナシステム6の融点及び管4の融点は、具体的には、接着剤3の融点よりも高い。
【0039】
前記接着剤に関し、テルミットの選択は、使用される接着剤、及び、管を構成するために使用される材料の特徴に応じて行われ得る。
【0040】
或いは、リテーナシステム6は、接着剤3と接触している管の部分の間にそれぞれ配置された管4の側方領域に直接取り付けられてもよい。
【0041】
すなわち、本発明は、接続手段により互いに線状に接続された第1要素1と第2要素2とを含む組立体に関し、この組立体は、前記接続手段と、発熱性材料と、当該発熱性材料を遠隔操作で火工トリガーするための手段とを含み、
-発熱性材料5は管4内に配置され、管4は、第1要素1と第2要素2との間に配置され、
-接続手段は、管4と、第1要素1及び第2要素2の各々との間に配置された接着剤3から構成されている。
【0042】
従って、本発明による第1要素と第2要素との一時的接続のための方法は、
-発熱性材料を、当該発熱性材料を遠隔操作で火工トリガーするための手段を備えた管内に配置するステップと、
-管と第1要素との間に、及び、管と第2要素との間に、接着剤を挿入して、当該接着剤により第1要素及び第2要素の各々が管に取り付けられるようにするステップと、から成る。
【0043】
上述の一時的接続の方法により事前に接続された(従って、上述のタイプの組立体を形成していた)第1要素と第2要素を分離させる方法は、発熱性材料5を火工トリガーするステップから成り、このステップは、発熱性材料5の昇温が接着剤3の昇温を、前記接着剤3の融解又は炭化のために、そしてそれにより、第1要素1と第2要素2との相互分離を生じさせるように行われる。
【0044】
本発明による装置及び方法は、軍事分野だけでなく民間分野でも使用され得る。本発明が、機器、特に第2要素の耐久性に不可欠な、火工衝撃レベルの低減、或いは排除も可能であることに留意されたい。
【0045】
第1要素と第2要素との間に金属接続手段を使用しないことにより、火工トリガー後の溶融又は非溶融金属デブリの生成を防止できる。