(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-02
(45)【発行日】2022-05-13
(54)【発明の名称】液晶格納体
(51)【国際特許分類】
H01Q 3/44 20060101AFI20220506BHJP
H01P 1/30 20060101ALI20220506BHJP
G02F 1/13 20060101ALI20220506BHJP
【FI】
H01Q3/44
H01P1/30 Z
G02F1/13 505
(21)【出願番号】P 2019568631
(86)(22)【出願日】2018-06-12
(86)【国際出願番号】 US2018037135
(87)【国際公開番号】W WO2018231849
(87)【国際公開日】2018-12-20
【審査請求日】2021-02-04
(32)【優先日】2017-06-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516247177
【氏名又は名称】カイメタ コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100188880
【氏名又は名称】坂元 辰哉
(72)【発明者】
【氏名】リン スティーヴ ハワード
(72)【発明者】
【氏名】ヴァレル カグダス
(72)【発明者】
【氏名】チェン フェリックス
【審査官】岸田 伸太郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0261042(US,A1)
【文献】特開2006-208520(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 3/44
H01P 1/30
G02F 1/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナであって、
液晶(LC)を間に挟んだ第1及び第2の基板の一部を使用して形成された、複数の高周波(RF)を放射するアンテナ素子を有するアンテナ素子アレーと、
前記第1及び第2の基板の間であって前記複数のRFアンテナ素子のエリアの外側にあり、LC膨張により、前記複数のRFアンテナ素子を形成する前記第1及び第2の基板間のエリアからLCを集める構造体
であって、前記エリアに対して前記LCを出入りさせるようにそれぞれ膨張及び収縮する、前記基板間の構造体と、
を備えたアンテナ。
【請求項2】
前記LC膨張は環境変化によるものである、請求項1に記載のアンテナ。
【請求項3】
前記環境変化は圧力又は温度の変化を含む、請求項2に記載のアンテナ。
【請求項4】
前記構造体は、LC収縮により、前記複数のRFアンテナ素子を形成する前記第1及び第2の基板間の前記エリアにLCを供給するように動作可能である、請求項1に記載のアンテナ。
【請求項5】
前記LC圧縮は環境変化によるものである、請求項4に記載のアンテナ。
【請求項6】
前記環境変化は圧力又は温度の変化を含む、請求項5に記載のアンテナ。
【請求項7】
前記複数のRFアンテナ素子の前記エリアの外側の前記第1の基板の剛性は、前記エリア内よりも小さい、請求項1に記載のアンテナ。
【請求項8】
前記第1及び第2の基板は複数のスペーサによって離間されている、請求項1に記載のアンテナ。
【請求項9】
前記複数のRFアンテナ素子の外側の前記エリアにおける1つ以上のスペーサは、前記複数のRFアンテナ素子の前記エリア内のスペーサのバネ定数とは異なるバネ定数を有する、請求項8に記載のアンテナ。
【請求項10】
前記複数のRFアンテナ素子の外側の前記エリアについてのスペーサ密度は、前記複数のRFアンテナ素子の前記エリア内よりも小さい、請求項8に記載のアンテナ。
【請求項11】
前記複数のRFアンテナ素子の外側の前記エリア内のスペーサは、前記複数のRFアンテナ素子の前記エリア内のスペーサよりも短い、請求項8に記載のアンテナ。
【請求項12】
前記構造体は圧縮性媒体を含む、請求項1に記載のアンテナ。
【請求項13】
前記圧縮性媒体は泡を含み、前記泡は前記LCと反応しないガスである、請求項12に記載のアンテナ。
【請求項14】
前記構造体は前記複数のRF素子の前記エリア内の前記LCと定液圧接触している、請求項1に記載のアンテナ。
【請求項15】
給電波を入力するアンテナ給電部であって、前記給電波は前記給電部から同心円状に伝搬する給電部と、
複数のスロットと、
複数のパッチと、
を更に備え、
前記複数のパッチの各々は、前記複数のスロットの内の1つのスロット上に前記LCを用いて離間して配置されてパッチ/スロット対を形成し、各パッチ/スロット対は、制御パターンで指定された対に含まれるパッチに対して電圧が印加されることによって制御される、請求項1に記載のアンテナ。
【請求項16】
前記複数のアンテナ素子は、ホログラフィックビームステアリングで使用するための周波数帯域のビームを形成するように、一体的に制御されて動作可能である、請求項15に記載のアンテナ。
【請求項17】
アンテナであって、
液晶(LC)を間に挟んだ第1及び第2の基板の一部を使用して形成された、複数の高周波(RF)を放射するアンテナ素子を有するアンテナ素子アレーと、
前記第1及び第2の基板の間であって構造体に対する前記複数のRFアンテナ素子のエリアの外側にあり、環境変化によるLC膨張又は収縮により、前記複数のRFアンテナ素子のエリアからのLCに対してソース及びシンクの両方として機能する構造体
であって、前記エリアに対して前記LCを出入りさせるようにそれぞれ膨張及び収縮する、前記基板間の構造体と、
を備えたアンテナ。
【請求項18】
前記環境変化は圧力又は温度の変化を含む、請求項17に記載のアンテナ。
【請求項19】
前記複数のRFアンテナ素子の前記エリアの外側の前記第1の基板の剛性は、前記エリア内よりも小さい、請求項17に記載のアンテナ。
【請求項20】
前記第1及び第2の基板が複数のスペーサによって離間されており、前記複数のRFアンテナ素子の外側の前記エリアにおける1つ以上のスペーサは、前記複数のRFアンテナ素子の前記エリア内のスペーサのバネ定数とは異なるバネ定数を有する、請求項17に記載のアンテナ。
【請求項21】
前記第1及び第2の基板が複数のスペーサによって離間されており、前記複数のRFアンテナ素子の外側の前記エリアについてのスペーサ密度は、前記複数のRFアンテナ素子の前記エリア内よりも小さい、請求項17に記載のアンテナ。
【請求項22】
前記第1及び第2の基板が複数のスペーサによって離間されており、前記複数のRFアンテナ素子の外側の前記エリア内のスペーサは、前記複数のRFアンテナ素子の前記エリア内のスペーサよりも短い、請求項17に記載のアンテナ。
【請求項23】
前記構造体は泡を含む、請求項17に記載のアンテナ。
【請求項24】
前記泡は前記LCと反応しない気体である、請求項23に記載のアンテナ。
【請求項25】
アンテナであって、
液晶(LC)を間に挟んだ第1及び第2の基板の一部を使用して形成された、複数の高周波(RF)を放射するアンテナ素子を有するアンテナ素子アレーと、
少なくとも1つの環境変化によるLCの膨張により、前記複数のRFアンテナ素子を形成する前記第1及び第2の基板間のエリアからLCを集めるLC格納体
であって、それぞれ、前記LCを前記エリアから前記LC格納体に入らせるように膨張する、及び前記LCを前記LC格納体から前記エリアへと出させるように収縮する、LC格納体と、
を備えたアンテナ。
【請求項26】
前記LC格納体は、少なくとも1つの環境変化により生じるLC収縮により、前記複数のRFアンテナ素子を形成する前記第1及び第2の基板間の前記エリアにLCを供給するように動作可能である、請求項25に記載のアンテナ。
【請求項27】
前記構造体は前記複数のRF素子の前記エリア内の前記LCと定液圧接触している、請求項24に記載のアンテナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(優先権)
本願は、2017年6月13日に提出された「液晶格納体」という名称の、対応するシリアル番号62/519,057の仮特許出願に対する優先権を主張するものであり、その仮特許出願は参照により盛り込まれる。
【0002】
(分野)
本発明の実施形態は、液晶(LC:liquid crystals)を有する高周波(RF:radio frequency)デバイスの分野に関する。より詳しくは、本発明の実施形態は、アンテナ素子が位置するアンテナのエリアに対してLCを集め又は供給するエリアを含むメタマテリアル同調アンテナで用いるための、液晶(LC)を有する高周波(RF)デバイスに関する。
【背景技術】
【0003】
近年、表面散乱アンテナや、液晶(LC)からできたメタマテリアルアンテナ素子をデバイスの一部として使用するような高周波デバイスが開示されている。アンテナの場合、LCはアンテナ素子を同調させるためのアンテナ素子の一部として使用されている。例えば、液晶ディスプレイ(LCD:liquid crystal display)の技術分野で周知のLCD製造プロセスを使用して、LCがアンテナアレーを構成する2つのガラス基板の間に配置される。これらのガラス基板は、ギャップスペーサを用いて間隔を空けて配置され、何らかのタイプのシーラント(接着剤など)を使用してエッジがシーリングされる。
【0004】
ある温度範囲に亘る空の液晶セルの容積は、ガラス基板、ギャップスペーサ、及びエッジシールの熱膨張係数(CTE:coefficient of thermal expansion)によって制御される。ある液晶セル内の温度変化による液晶の体積変化量は、LCセル自体のキャビティ容積変化量よりも大きくなる。なぜなら、LCの体積膨張係数がLCセルの構成部品のCTEよりも遥かに大きいからである。
【0005】
温度が上昇するにつれて、LCの体積の総変化量はキャビティ容積の増加量よりも大きくなって、液晶ギャップはシールとスペーサによってもはや制御されなくなり、これにより所望よりも大きいセルギャップ、LCギャップ均一性の低下、及び影響を受ける素子の共振周波数のシフトが招来される。この不均一性は、スペーサによってもはや制御されなくなったギャップに起因するものである。LCの体積膨張によって基板をスペーサに保持するのに十分な圧力が基板にかからなくなると、ギャップは他の機械的な考慮事項によって制御される。言換すれば、体積が増加すると均一なギャップ分布は得られず、LCはスペーサによる制御を受けないで機械的平衡を達成するように移動する。これは、LCが機械的応力を最大限に軽減するような場所に溜まりうることを意味する。例えば、シール領域付近のセルギャップは、スペーサ/接着剤によって固定される。他のすべてが理想的であるとすると、高温では、セルの端部付近のセルギャップは液晶よりも低熱膨張材料である境界シール接着剤によって制御されるので、セグメント領域に亘るLCの厚さ分布は端部よりも開口の中心の方で厚くなる。
【0006】
温度が低下すると、LCの体積はLCセルキャビティ容積よりも小さくなり、LCセルの内圧が低下する。そして、大気圧によってガラスがセルスペーサに押し付けられ、スペーサの弾性率が、スペーサにかかる上昇圧がスペーサを圧縮できる程度であれば、セルギャップが減少する。体積差が十分に大きい場合には、LCの体積がLCに溶解した残留ガスによって置換された場所が生じることがある。この状態の直接的な結果として、開口の所々に、LCの誘電体がアンテナ素子の性能に影響を与える残留ガスで置換された空所が発生する場合がある。セルが十分に温まると、これらの空所が消えるのに時間がかかる場合がある(空所に十分なガスがある場合、空所を無くすためにはガスを再溶解する必要がある場合がある。)。さらに、空所が形成された場所では、配向欠陥が生じる場合がある。
【0007】
低温の場合と同様の問題は、高い標高で生じるような、低気圧下でも生じ得る。この場合、基板にかかる(基板をスペーサに保持する)圧力は減少する。不均一性及び空所が生じる場合がある。
【0008】
このように、周囲の温度及び圧力の変化に伴うLCセルギャップの変化及びLCセルギャップの不均一性の増加は、正しく機能するRFアンテナ素子を形成する上で問題である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
アンテナアレーの2つの領域間で液晶(LC)を交換する装置及びそれを使用する方法を開示する。一実施形態によれば、アンテナ装置は、液晶(LC)を間に挟んだ第1及び第2の基板の一部を使用して形成された、複数の高周波(RF)を放射するアンテナ素子を有するアンテナ素子アレーと、前記第1及び第2の基板の間であって前記複数のRFアンテナ素子のエリアの外側にあり、LC膨張により、前記複数のRFアンテナ素子を形成する前記第1及び第2の基板間のエリアからLCを集める構造体と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本発明は、以下の詳細な説明及び本発明の様々な実施形態に関する添付の図面からより良く理解できるが、これらは本発明を特定の実施形態に限定するものとして解釈されてはならず、説明と理解のためだけのものである。
【
図1】
図1Aから
図1Cは、温度による異なる状態におけるアンテナ開口の一部を示す。
【
図2A】
図2Aは、熱膨張中に、アンテナ素子を形成する基板間のギャップの制御を示す。
【
図2B】
図2Bは、熱収縮中にギャップを制御するように構成されたアンテナ素子を形成する基板を示す。
【
図3】
図3は、アンテナアレーセグメントの一実施形態における、あり得る格納体の配置を示す。
【
図4】
図4は、不活性ガス泡がセグメントの上部コーナーに位置するように、LCが下部から供給されているアンテナアレーセグメントを示す。
【
図5A】
図5Aから
図5Cは、異なる段階の泡があるアンテナ開口セグメントの一実施形態の一部の側面図である。
図5Aは、そのうちの1つである。
【
図5B】
図5Aから
図5Cは、異なる段階の泡があるアンテナ開口セグメントの一実施形態の一部の側面図である。
図5Bは、そのうちの1つである。
【
図5C】
図5Aから
図5Cは、異なる段階の泡があるアンテナ開口セグメントの一実施形態の一部の側面図である。
図5Cは、そのうちの1つである。
【
図6】
図6は、円筒状給電ホログラフィック放射状開口アンテナの一実施形態の概略図である。
【
図7】
図7は、グランドプレーンと再構成可能な共振器層とを含むアンテナ素子の1列の斜視図である。
【
図8A】
図8Aは、同調可能な共振器/スロットの一実施形態を示す。
【
図8B】
図8Bは、物理的なアンテナ開口の一実施形態の断面図である。
【
図9A】
図9Aは、スロットアレーを作製するための異なる複数層に係る一実施形態を示す。
【
図9B】
図9Bは、スロットアレーを作製するための異なる複数層に係る一実施形態を示す。
【
図9C】
図9Cは、スロットアレーを作製するための異なる複数層に係る一実施形態を示す。
【
図9D】
図9Dは、スロットアレーを作製するための異なる複数層に係る一実施形態を示す。
【
図10】
図10は、円筒状給電アンテナ構造の一実施形態の側面図である。
【
図11】
図11は、発信波を伴うアンテナシステムの別の実施形態を示す。
【
図12】
図12は、アンテナ素子に関するマトリックス駆動回路の配置に係る一実施形態を示す。
【
図14】
図14は、同時の送受路を有する通信システムに係る一実施形態のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
液晶(LC)を含むアンテナが開示される。一実施形態では、そのアンテナは、アンテナ内で高周波(RF)を放射するアンテナ素子が位置するエリアからLCを集めるとともに、そのエリアに対してLCを供給するLC格納体を含む。LC格納体は、RFを放射するアンテナ素子が配置されたエリアから膨張によりLCを集める。一実施形態では、LCは、RFアンテナ素子を備えた一対の基板の間に存する。一実施形態では、LCは、少なくとも1つの環境変化(例えば、温度変化、圧力変化など)によりLC格納体内に膨張する(すなわち、LC膨張が生じる)。LC格納体を用いることにより、アンテナ開口における温度分布効果及び圧力分布効果によるLCギャップの変動と空所の形成を、抑制し、潜在的に最小化するのに役立つ。換言すれば、LC格納体は、アンテナの動作温度範囲で誘電体の厚さの変動を抑制し、潜在的に最小化する方法を提供して、アンテナの性能を向上させる。
【0012】
図1Aから
図1Cは、アンテナ開口の一部側面図である。アンテナ開口はギャップの分だけ離間したパッチとアイリスのペアを有する2つの基板を含み、ギャップ内にはLCがある。これらの基板はギャップスペーサによって離間されている。
【0013】
図1Aを参照し、パッチガラス基板101はアイリスガラス基板102より上にある。アイリス金属(層)103がアイリスガラス基板102に接しており、アイリス111がガラス基板102の上方のアイリス金属103の無い領域に位置する。スペーサ108(例えば、フォトスペーサ)が、パッチガラス基板101とアイリスガラス基板102との間でアイリス金属103に接して配置されている。
【0014】
接着剤110は、アイリスガラス基板102上のアイリス金属103を、パッチガラス基板101上のパッチ金属106に関連付け、LCを収容するための境界シールとして機能する。なお、接着剤をアンテナ素子アレーの至る所で使用してパッチガラス基板101とアイリスガラス基板102を複数の位置で取り付けつつ、アンテナ開口の縁部を密封してもよい。
【0015】
LC105は接着剤110と1つのスペーサ108との間にある一方、LC107は2つのスペーサ108間でパッチ106の下にある。
【0016】
図1Bは、温度変化が正の場合の、
図1Aのアンテナ開口の部分図である。温度が上昇すると、基板間のLCは膨張する。境界シール(接着剤110など)付近の端部では、基板間のLCギャップの変化は小さい。また、スペーサ108の近くのギャップはより広くなり、これによって基板101及び102がスペーサ108と接触しなくなる。パッチ・アイリスの重なり部分におけるLCギャップもより広くなり、これによってRF素子の共振周波数がシフトする。しかしながら、LCの体積膨張が大きくなると、LCギャップが不均一に増加する。
【0017】
低温の場合、セルの開口部のキャビティは、LCの体積よりも遥かにゆっくりと減少する。
図1Cは、温度変化が負の場合の、
図1Aのアンテナ開口の部分を示す。この場合、スペーサ108付近のLCギャップはスペーサ108間のLCギャップよりも狭く、これにより基板(例えばガラス基板101)がスペーサ108の上に張られたようになる。これもまた、RF素子での共振周波数に帰結しうる。
【0018】
温度及び/又は圧力の正及び負の変化に関連する問題を回避するため、LC格納体が開口に含まれる。一実施形態では、格納体の性質は、LC体積がキャビティ体積よりも大きい場合に、格納体がLCセルキャビティの「良好エリア」から過剰なLC体積を吸収するようなものである。一実施形態では、この良好エリアは、
図3においてRFアクティブ領域として定義された開口のエリアである。すなわち、アンテナアレーの1つのセグメントには、複数のRFアンテナ素子が位置する複数のエリアと、RFアンテナ素子がないその他の複数のエリアがあり、RFアンテナ素子が配置されていない領域がLC格納体に使用される。逆に、LCの体積がキャビティの容積よりも小さい場合には、格納体はLCセルのキャビティの良好エリアにLCを供給する。そのためには、各条件において、(良好エリアの外側に位置する)格納体が、高温のときに余分なLCを吸収し、低温のときに余分なLCを供給する必要がある。
【0019】
一実施形態において、格納体が有効であるためには、キャビティの開口良好エリアにおけるLCギャップが制御される。温度が高い場合、LCの体積膨張は基板を押し広げる傾向があり、これによりギャップが制御されずに不均一に増加する。
【0020】
スペーサを用いてギャップを制御するためには、2つの基板はそれらのスペーサ上で一緒に保持される。これは、キャビティ内で又はキャビティ外でなされる。より具体的には、一実施形態では、LCセルは、セルの外側とセルの内側との間の圧力差を利用して形成される。これは、圧力下でセルギャップを形成して、スペーサとスペーサ間のギャップとを圧縮して、シールを作製して、そして外圧を解放することによって、キャビティ内のLCの体積を、外圧がかかっていない場合にキャビティが有するところよりも少し小さくさせることによってもたらされる。セルの外側とセルの内側との間に生じる圧力差により、基板がスペーサ上に保持される。あるいは、複数の基板を接着して一体とすることでセルギャップを形成することができる。これは、RF素子間の利用可能なスペースを用いて、素子間で接着剤からなるドットを用いて行うことができる。これは、このような構造に利用できるスペースがないLCDとは異なる。この場合の利点は、接着剤が基板を一体に保持するため、LC膨張中に、基板が押し広げられるよりも速く格納体に流れ込まないLCによってギャップが変化する可能性が低くなるということである。開口のスペーサは、基板を接着剤で固定するときにギャップを制御するために使用される。一実施形態では、接着剤は、組立てプロセスの前に、基板の一方又は両方に塗布される。組立て中、2つの基板は、接着剤が基板を保持しながら硬化する間、内部スペーサと接触した状態で保持される。これにより、LCの体積膨張がキャビティの体積膨張を超える場合に、2つの基板が開口の良好エリアで一体に保持されたままであることが確実になる。良好エリアの外側では基板を保持するための接着剤は必要でない。開口領域のギャップを埋めるのに必要な量を超えるLCは、基板を押し広げる代わりに、良好エリアの外側のLC格納体に流れ込む。
【0021】
このように、正の温度変化の場合には格納体は(LC膨張による)過剰なLCが移動する場所を提供し、負の温度変化の場合には格納体はキャビティの開口部分に対してLCを供給するが、これは空所が形成されるのを防ぐのに役立つ。
【0022】
一実施形態では、格納体は、セル内の圧力の小さな変化に応答して、格納体の容積が容易にサイズを拡大及び縮小できるように設計されている。高温の場合においては、(開口領域のLCギャップがLC体積に対してゆっくりと増加するため)LCの体積がキャビティの総容積を超えると、格納体はセル内で圧力を劇的に増加させることなく過剰分を吸収する。他方の場合においては、温度が低下すると、セル内の圧力が劇的に低下しないように格納体がLCを開口に供給する。(LCは流体であるため、相対的に固定されたキャビティ内の圧縮又は膨張に起因する圧力変化は大きくなる場合がる)。
【0023】
この目的を達成することができる幾つかのアプローチがある。これらには、良好エリアの外側のエリアに格納体構造を構築すること、及びこの格納体構造に泡を含めることが含まれる。
【0024】
<開口良好エリアの外側のエリアに格納体構造を構築>
一実施形態において、格納体構造は、格納体を構築するのに使用できる以下の特徴の内の1つ以上を有する。なお、格納体の必要な容積及び格納体を配置するのに利用可能なエリアもまた設計上の考慮事項であるが、アンテナアレーの残りの設計に基づいて当業者が決定してよいことに留意されたい。
【0025】
一実施形態において、開口良好エリアの外側の1つ以上のガラス基板(例えば、アイリス、パッチ、又は両方)は、厚さが薄くなっている。換言すると、格納体領域の1つ又は複数のガラス(1つ又は複数の基板)が選択的に薄くされる。一実施形態では、ガラスは半分まで薄くされる。例えば、ガラス基板が700ミクロンの厚さである場合、開口良好エリアの外側のガラス基板の厚さは350ミクロンまで削減される。これにより、ガラス基板は、膨張/収縮による内圧の変化に応じて、内側又は外側に曲がり易くなる。なお、1つ以上の基板を半分まで薄くする必要は無く、薄くする量は他の値であってもよい。
【0026】
一実施形態において、スペーサの位置、サイズ、ヤング率(弾性率)、及びばね定数は、LC格納体の動作に影響を与える。スペーサは、フォトスペーサ(例えば、ポリマースペーサ)であってもよい。
【0027】
例えば、格納体領域のスペーサは、アンテナ素子の良好エリアよりも(開口良好エリアのスペーサと比較して)、低いばね定数を有するように変更され、これらの領域のアンテナ素子キャビティは圧力変化に応じて容積を簡単に変更できるようになる。 一実施形態では、アンテナ素子領域のばね定数は約108N/mであり、良好エリアの外側のエリアのばね定数は約105~106N/mである。なお、これらは単なる例であり、ばね定数は、格納体の幾何学的要素、基板の材料定数、スペーサの材料定数などを含むが、これらに限定されない複数の要因に依存する場合がある。
【0028】
別の実施形態では、格納体領域においてスペーサ密度が低減される。あらゆる密度の減少により性能が向上するが、一実施形態では、格納体領域において密度が75%低下される。なお、他の実施形態では、これらの数は、スペーサに使用される材料、スペーサのサイズなどによって変化する。
【0029】
更に別の実施形態では、スペーサは格納体領域で短くされる。この短くする量は、そうすることによる体積に与える影響に基づく。スペーサを短くすることによってより多くの体積が生成されると、より良くなる。このような考慮は、2つの基板(及びそれらに接して構築された構造)が触れないようにする必要性によってバランスが図られる。一実施形態では、スペーサの高さは80%削減される。なお、他の削減量であってもよい。例えば、一実施形態では、格納体スペーサは、アイリス金属層を含まない領域に形成される。より具体的には、一実施形態では、アイリス金属層の厚さは2umである。この場合、RFアクティブエリアの外側では、この金属の必要性は導波路に関する考慮事項(例えば、RFが漏れ出る穴はあり得ない)によって左右されるが、セルギャップはおおよそ2.7umである。アイリス金属がこれらのエリアの格納体領域から除去されると、これらのエリアで利用可能な体積はおそらく2um分の厚さだけ増加する。
【0030】
更に別の実施形態では、中間逆圧レベルを使用して、格納体領域内のLCセルを密封する。これは密封プロセスの一部である。密封プロセスでは、セル内にLCがあり、境界シールに開口部がある。一実施形態では、LCは真空充填により配置される。 但し、これは要件ではなく、他の周知の手法を用いて配置されてもよい。セルを加圧して、セルからLCを除去する。このように、LC格納体内のLCの量は、加圧プロセスによって制御される。このように、逆加圧密封プロセスは、セグメントの選択された領域に対して圧力を印加するメカニズムを用いる。
【0031】
一実施形態では、RFアンテナ素子を含むアンテナセグメントは、充填後に、格納体が完全に満杯でなく且つ完全に空でない中間体積状態になるように充填されて密封される。中間の体積では、格納体はLCを受け取り、供給することができる。複数のアンテナセグメントが組み合わされてアンテナアレー全体が形成される。アンテナセグメントの詳細については、“Aperture Segmentation of a Cylindrical Feed Antenna”と題する米国特許番号9,887,455を参照されたい。
【0032】
図2Aは、熱膨張中に、アンテナ素子を形成する基板間のギャップを制御する方法を示す。
図2Aを参照すると、接着剤ドット202は、複数のフォトスペーサ201の間に配置され、パッチガラス基板231とアイリス基板232を一体に保持する。これにより、過剰なLC220がLC格納体210に流入することが可能になり、LC格納体210は温度変化がゼロよりも大きい場合に基板間のそのエリアで膨張を受ける。一実施形態では、接着剤ドット202は、粘性液体紫外線(UV)接着剤を含む。一実施形態では、LC格納体210が位置する基板間のギャップは、そのエリアにおける基板間の接着剤の不足及びその位置での基板の薄化に起因する。
【0033】
図2Bは、アンテナ素子を一体に形成する基板を保持する複数のフォトスペーサ201間に形成され、熱収縮中にギャップを制御する接着ドット202を示す。この場合、LC格納体210は、温度変化がゼロ未満のときにLC220を供給する。一実施形態では、LC格納体210が位置する基板間のギャップは、LC格納体の領域において基板間にフォトスペーサが無いことと、その位置での基板の薄化によるものである。これもまた、LC格納体210のエリア内の基板の動きがLC格納体210のエリア内で短いフォトスペーサの高さに制限されるように、LC格納体210のエリア内に短いフォトスペーサを有することによって達成できる。フォトスペーサ201の間に形成された接着ドット202を使用することにより、熱収縮時、温度変化がゼロ未満である場合に、テントを張ったようになること及び生じ得る空所形成が防止される。
【0034】
このように、LC格納体210を含む基板のエリアは、開閉するバネのようなダイヤフラムとして作用し、これによってLCをLC格納体210に出入りさせる。このようにして、2つの基板は熱膨張中に押し離されない。
【0035】
図3は、あるアンテナアレーセグメントの一実施形態における潜在的な格納体の配置を示している。
図3を参照すると、セグメント化されたRFアンテナ開口のセグメントは、RFアクティブ領域境界303によって境界付けられたRFアクティブ領域302を含む。RF良好エリア302は、アンテナ素子(例えば、以下でより詳細に説明する表面散乱メタマテリアルアンテナ素子)が配置される場所である。一実施形態では、RFアクティブ領域302の外側のセグメントの領域301は、格納体が配置される場所である。一実施形態では、セグメント内のRF格納体のサイズを制限するために、及び/又はLCが流れる場所を制限するために境界が含まれる。一実施形態では、LC格納体は、良好エリア内のLCと定液圧で接触している。
【0036】
なお、温度及び/又は圧力の変化に基づいてLCがセグメント内の複数の位置へと膨張し又は複数の位置から流れ込めるように、開口のセグメント内に複数のLC格納体が存在してもよい。
【0037】
<選択的な泡技術>
一実施形態において、気泡がLC格納体に含まれる。気泡(ガス泡)は、(LC、ガラス、金属などのような非圧縮性のものとは対照的に)LCセル内において圧縮性を有するエリアであるという点において、空所エリアを表す。言い換えれば、LC格納体は圧縮性媒体を含む。圧縮性は、LCが存在せず且つその領域に気泡が存在することに一部起因する。一実施形態では、そのガスは大気圧よりも低い圧力にある。なお、空所内の圧力が高いほど、十分なサイズの格納体を作成するのにより多くの容量が必要となる。
【0038】
上述したように、LC格納体は、良好エリア内のLCと定液圧で接触している。 つまり、格納体空間とアンテナのアクティブ領域にあるLCとの間には、連続的な又は一定の液体の若しくは流体の接触がある。
【0039】
一実施形態では、その気泡は、LCと相互作用しない不活性ガスである。例えば、窒素又はアルゴンを使用可能である。不活性ガスの泡の体積は、遥かに小さい圧力変化に応じて体積が膨張及び収縮することができる。その泡を形成する位置を制御し、その泡が所望の位置に留まるようにすることにより、その泡が存在するLC格納体へのLCの出入りが一定の温度範囲にわたって制御され、これによってその泡の体積の一部がLCのための格納体として機能する。
【0040】
一実施形態では、充填プロセスの際に泡を形成するときに、泡の組成及び位置が制御される。充填プロセスの際に不活性ガスを導入した場合、脱気後で充填前に、LCが充填開口部を密封すると、セル内のバックグラウンドガス(不活性ガス)が閉じ込められる。一実施形態では、セルの容積、LC内の不活性ガスの溶解度、及び充填前の充填チャンバ内の不活性ガスの分圧は、充填が完了した後に残る泡のサイズを制御する。泡が真空として形成される場合、一実施形態では、残留ガスの組成はそれほど重要ではない。さらに、複数のRFアンテナ素子を有し、一体的にアレーを形成する複数のアンテナセグメントが垂直方向に向けられ、接着ラインが適切に成形されている場合、泡の最終的な位置は最高点となる。
【0041】
一実施形態では、泡は特定の場所に配置されてそこへ留まる。一実施形態では、これは、ある場所に泡を強制的に形成することによって達成される。(他のすべての位置に対する)この位置では、泡は、すべての条件に対して系のエネルギー状態が可能な限り最も低い。一実施形態では、この状態はいくつかのステップを踏むことにより生成される。泡の場所を、泡の表面積がかなり減少される、即ち非常に最小化される場所とすることが可能である。状態エネルギーを下げる別の方法は、この場所の基板表面の表面エネルギーを下げることで、LCがこのエリアの基板を濡らしたくなくなるようにすることである。したがって、気泡が他の場所に移動し又は他の場所で改善するためには、LCをこの低表面エネルギー領域に押し込むことによってその泡をその場所から移動させ、LCがすでに占めている領域でその泡を改善させるエネルギー障壁と予算が克服されなければならない。最後に、泡がアンテナの通常の位置内で重力的に局所的に最高点にある場合、1つ又は複数の泡の移動に対する障壁を生成することも可能である。
【0042】
図4は、不活性ガス泡402が、最終的にセグメント401の上部の隅に位置するように、底部からLCが供給されるアンテナアレーセグメント401を示す。選択的に、(泡402が存在する)最も遠い位置が最後に充填されるように、アンテナアレーセグメント401を充填することもできる。なお、気泡402を特定の位置に強制するために、セグメント401がより水平な位置にある間に充填される場合にはセグメント401を傾けることが可能である。セグメントに関する詳細については、“Aperture Segmentation of a Cylindrical Feed Antenna”と題する米国特許番号9,887,455を参照されたい。
【0043】
図5A~
図5Cは、温度による3つの異なる状態における泡を示す。
図5Bを参照すると、泡402は、室温で一定のサイズである。
図5Aに示されているように、温度変化がゼロ未満の場合には、LC格納体内のLC体積の変化がゼロ未満となるようにLCは泡402から流れ出る。
図5Cに示されているように、温度の変化がゼロよりも大きい場合には、LC格納体内のLC体積の変化がゼロよりも大きくなるようにLCは泡402の方へ流れる。
【0044】
一実施形態では、アイリス金属によって形成されたキャビティ内に小さな泡が形成される。この場合、空所はアイリス内で安定化される。RFアクティブエリア外の格納体については、安定化された空所を有するRFチョーク特性とは関係のないアイリス層の多数の小さな特徴が、格納体を形成する別の方法である。
【0045】
<アンテナの形態の例>
上述のLC格納体は、フラットパネルアンテナを含むがこれに限定されない、多くのアンテナの形態で使用することができる。そのようなフラットパネルアンテナの形態が開示される。フラットパネルアンテナは、アンテナ開口に、複数のアンテナ素子を備えた1つ以上のアレーを含む。一実施形態では、アンテナ素子は液晶セルを備える。一実施形態では、フラットパネルアンテナは、行及び列に配置されていない各アンテナ素子を一意にアドレス指定して駆動する行列駆動回路を含む円筒状給電アンテナである。一実施形態では、複数の素子が複数の円環状に配置される。
【0046】
一実施形態では、複数のアンテナ素子を備えた1つ以上のアレーを有するアンテナ開口は、一体に結合された複数のセグメントから構成される。一体に結合されると、複数のセグメントを組み合わせたものは、複数のアンテナ素子の閉じられた同心の環を形成する。一実施形態では、同心環はアンテナ給電部に関して同心である。
【0047】
<アンテナシステムの例>
一実施形態では、フラットパネルアンテナは、メタマテリアルアンテナシステムの一部である。通信衛星地球局用のメタマテリアルアンテナシステムの実施形態について説明する。一実施形態では、アンテナシステムは、民間商業衛星通信用のKaバンド周波数又はKuバンド周波数のいずれかを使用して動作する移動プラットフォーム(例えば、航空、海事、陸上など)で動作する衛星地球局(ES:Earth Station)の構成部又はサブシステムである。なお、アンテナシステムの実施形態は、移動プラットフォーム上にない地球局(例えば、固定された又は輸送可能な地球局)でも使用可能である。
【0048】
一実施形態では、アンテナシステムは、表面散乱メタマテリアル技術を使用して、別個のアンテナを介して送受信ビームを形成して走査する。一実施形態では、アンテナシステムは、(フェーズドアレイアンテナのような)デジタル信号処理を使用してビームを電気的に形成及び走査するアンテナシステムとは対照的に、アナログシステムである。
【0049】
一実施形態では、アンテナシステムは、次の3つの機能的サブシステムから構成される。(1)円筒状の波による給電アーキテクチャからなる導波構造、(2)アンテナ素子の一部である波散乱メタマテリアルの単位セルのアレー、及び(3)ホログラフィック原理を使用してメタマテリアル散乱素子から同調可能な放射場(ビーム)の形成を指示する制御構造。
【0050】
<アンテナ素子>
図6は、円筒状給電ホログラフィック放射開口アンテナの一実施形態の概略図を示す。
図6を参照すると、アンテナ開口は、円筒状給電アンテナの入力給電部602の周りに同心円状に配置された複数のアンテナ素子603の1つ以上のアレー601を有する。一実施形態では、アンテナ素子603は、RFエネルギーを放射する高周波(RF)共振器である。一実施形態では、アンテナ素子603は、アンテナ開口の表面全体に交互に配置され、分散されたRxアイリス(受信アイリス)及びTxアイリス(送信アイリス)の両方を含む。そのようなアンテナ素子の例について、以下で詳細に説明する。なお、本明細書で説明されるRF共振器は、円筒状給電部を含まないアンテナで使用可能である。
【0051】
一実施形態において、アンテナは同軸給電部を含み、この同軸給電部は入力給電部602を介して円筒状の波による給電(円筒状波給電)を提供するために用いられる。一実施形態において、この円筒状波給電アーキテクチャでは中心点からアンテナに給電がなされ、その給電点から円筒状外側に広がる励振が用いられる。すなわち、円筒状に給電されたアンテナは、外向きの同心円状の給電波を生成する。尤も、円筒状給電部を取り囲む円筒状給電アンテナの形状は、円形、正方形又は任意の形状とすることができる。別の実施形態において、円筒状に給電されるアンテナは内向きに進行する給電波を生成する。このような場合には、給電波は円形の構造から最も自然に生成される。
【0052】
一実施形態では、アンテナ素子603は複数のアイリスを備える。そして、
図6の開口アンテナは、複数のアイリスを照射するための円筒状給電波からの同調可能な液晶(LC)材料を介した励振を用いることによって、整形されたメインビームを生成するために使用される。一実施形態では、所望の走査角で水平又は垂直に偏波した電界を放射するようにアンテナを励振することができる。
【0053】
一実施形態では、複数のアンテナ素子は一群のパッチアンテナを含む。この一群のパッチアンテナは、複数の散乱メタマテリアル素子からなるアレーを備える。一実施形態では、アンテナシステム内の各散乱素子は、下部導体と、誘電体基板と、エッチング又はディポジションにより相補型電気的誘導性・容量性共振器(「相補型電気LC」又は「CELC」:complementary electric inductive-capacitive resonator)が埋め込まれた上部導体と、からなる単位セルの一部である。当業者によって理解されるように、CELCとの文脈におけるLCは、液晶とは対照的に、インダクタンス-キャパシタンスを意味する。
【0054】
一実施形態では、液晶(LC)は、散乱素子の周囲のギャップに配置される。このLCは、上述の直接駆動形態により駆動される。一実施形態では、液晶は各単位セルに封入されて、スロットに関連する下部導体を、パッチに関連する上部導体から分離する。液晶は、液晶を構成する分子の配向の関数である誘電率を有し、分子の配向(従って誘電率)は液晶のバイアス電圧を調整することで制御できる。この特性を利用することにより、一実施形態では、液晶は、導波された波からCELCへのエネルギーの伝達のためのオン/オフスイッチを統合する。スイッチを入れると、CELCは電気的に小さなダイポールアンテナのような電磁波を放射する。なお、本明細書の教示は、エネルギー伝達に関して2値的な方式で動作する液晶を有することに限定されるものでない。
【0055】
一実施形態では、このアンテナシステムの給電幾何により、アンテナ素子を波による給電における波のベクトルに対して45度(45°)の角度で配置することが可能となる。なお、他の配置を用いてもよい(例えば、40°の角度)。素子をこのように配置することにより、素子によって受信され又は送信/放射される自由空間波の制御が可能となる。一実施形態では、アンテナ素子は、アンテナの動作周波数の自由空間波長よりも短い素子間間隔で配置される。例えば、波長辺り4つの散乱素子がある場合、30GHzの送信アンテナにおける素子は約2.5mm(すなわち、30GHzの10mmの自由空間波長の1/4)となる。
【0056】
一実施形態では、複数の素子に係る2つの組は、同じ同調状態に制御される場合には、互いに垂直であり、且つ同時に等しい振幅の励振を有する。それらを供給波の励振に対して+/-45度で回転させることにより、両方の所望の特徴が同時に実現される。1つの組を0度、他の組を90度回転させると、垂直の目標は達成されるが、等振幅励振の目標は達成されない。なお、単一構造において複数のアンテナ素子からなるアレーを2つの側面から給電する場合、アイソレーションを実現するために0度と90度としてもよい。
【0057】
各単位セルからの放射電力の量は、コントローラを使用してパッチに電圧(LCチャネルの両端の電位)を印加することによって制御される。各パッチへのトレースを用いて、パッチアンテナに電圧を供給する。この電圧は、個々の素子の静電容量を、従ってその共振周波数を同調又は離調するために使用され、ビームフォーミングが実現される。必要な電圧は、使用されている液晶混合物によって異なる。液晶混合物の電圧チューニング特性は、主に、液晶が電圧の影響を受け始めるしきい値電圧と、超過により電圧の増加が液晶の主要なチューニングを引き起こさなくなる飽和電圧とによって記述される。これらの2つの特性パラメータは、異なる液晶混合物に対して変化しうる。
【0058】
一実施形態では、上述のように、各セルに対する個別の接続を有すること(直接駆動)なく各セルをすべての他のセルとは別に駆動するため、マトリックス駆動を用いてパッチに電圧が印加される。素子の密度が高いので、マトリックス駆動は各セルを個別にアドレスする効率的な方法である。
【0059】
一実施形態では、アンテナシステムの制御構造は2つの主要な構成要素を有する:アンテナシステムのためのアンテナアレーコントローラは、駆動電子機器を含み、波散乱構造の下に存する一方で、マトリックス駆動スイッチングアレイが放射を妨害しないような方法でRF放射アレー全体内に分散している。一実施形態では、アンテナシステムの駆動電子機器は、各散乱素子のためのバイアス電圧を、その素子へのACバイアス信号の振幅又はデューティサイクルを調整することによって調整する商用テレビ機器で使用される市販のLCD制御装置を含む。
【0060】
一実施形態では、アンテナアレーコントローラは、ソフトウェアを実行するマイクロプロセッサも含む。コントロール機構にセンサ(例えば、GPS受信機、3軸コンパス、3軸加速度計、3軸ジャイロ、3軸磁力計など)を組み込み、位置と向きの情報をプロセッサに提供することもできる。位置と方向の情報は、地球局の他のシステムによってプロセッサに提供されてもよく、及び/又はアンテナシステムの一部でなくてもよい。
【0061】
より具体的には、アンテナアレーコントローラは、どの素子をオフにし、どの素子を動作周波数においてどのような位相及び振幅レベルでオンにするかを制御する。これらの素子は、周波数動作に対して電圧印加により選択的に離調される。
【0062】
送信を行うため、コントローラは、変調、即ち制御パターンを生成するため、電圧信号のアレーをRFパッチに対して供給する。この制御パターンにより、複数の素子が複数の異なる状態になる。一実施形態では、方形波とは対照的な正弦波制御パターン(すなわち、正弦波グレーシェード変調パターン)に更に近似する様々なレベルに様々な素子がオン/オフされる、多状態制御が用いられる。一実施形態では、幾つかの素子が放射して幾つかの素子が放射しないことに代え、幾つかの素子が他の素子よりも強く放射する。特定の電圧レベルを印加して液晶の誘電率を様々な量に調整し、これによって素子を可変的に離調させて一部の素子に他の素子よりも多く放射させることにより、可変的放射が達成される。
【0063】
メタマテリアル素子アレーによる集束ビームの生成は、建設的及び破壊的干渉の現象によって説明することができる。各電磁波は自由空間で出会ったときに同相であれば足し合わされ(建設的干渉)、自由空間で出会ったときに逆相であれば波は互いに相殺する(破壊的干渉)。連続する各スロットが誘導波の励起点から異なる距離に位置するようにスロットアンテナのスロットが配置されている場合、その素子からの散乱波は前のスロットの散乱波とは異なる位相を有する。スロットの間隔が誘導波長の1/4である場合、各スロットは前のスロットから4分の1の位相遅延で波を散乱させる。
【0064】
このアレーを使用して生成可能な建設的及び破壊的干渉のパターンの数を増やすことができ、ホログラフィの原理を用いて、アンテナアレーのボアサイトからプラス又はマイナス90度(90°)の任意の方向に理論的にビームを向けることができるようになる。このように、どのメタマテリアル単位セルをオン又はオフに制御する(つまり、どのセルをオンにし、どのセルをオフにするかのパターンを変更する)ことにより、建設的及び破壊的干渉の異なるパターンを生成でき、アンテナはメインビームの方向を変更することができる。単位セルをオン及びオフにするのに必要な時間は、ある場所から別の場所にビームを切り替えることができる速度を決定する。
【0065】
一実施形態では、アンテナシステムは、アップリンクアンテナ用の1つのステアリング可能なビームと、ダウンリンクアンテナ用の1つのステアリング可能なビームを生成する。一実施形態では、アンテナシステムは、メタマテリアル技術を使用して、衛星からのビームを受信して信号をデコードするとともに、衛星に向けられた送信ビームを形成する。一実施形態では、本アンテナシステムは、(フェーズドアレイアンテナなどの)デジタル信号処理を使用してビームを電気的に形成及びステアリングするアンテナシステムとは対照的に、アナログのシステムである。一実施形態では、アンテナシステムは、特に従来の衛星パラボラアンテナ受信機と比較した場合に、平面的で比較的薄型の「表面型」アンテナと考えることができる。
【0066】
図7は、グランドプレーンと再構成可能共振器層とを含む1行のアンテナ素子の斜視図を示す。再構成可能共振器層1230は、同調可能スロット1210のアレーを含む。同調可能スロット1210のアレーは、アンテナを所望の方向に向けるように構成することができる。同調可能な各スロットは、液晶の両端の電圧を変えることにより同調/調整できる。
【0067】
制御モジュール1280は、再構成可能共振器層1230に結合されて、
図8Aの液晶の両端の電圧を変化させることにより同調可能スロット1210のアレーを変調する。制御モジュール1280は、FPGA(Field Programmable Gate Array)、マイクロプロセッサ、コントローラ、システムオンチップ(SoC)、又は他の処理ロジックを含み得る。一実施形態では、制御モジュール1280は、同調可能スロット1210のアレーを駆動する論理回路(例えば、マルチプレクサ)を含む。一実施形態では、制御モジュール1280は、同調可能スロット1210のアレー上で駆動されるホログラフィック回折パターンの諸元を含むデータを受信する。ホログラフィック回折パターンは、ホログラフィック回折パターンがダウンリンクビーム(及びアンテナシステムが送信を実行する場合はアップリンクビーム)を通信に適切な方向にステアリングするように、アンテナと衛星間の空間的関係に応じて生成することができる。各図には描かれていないが、制御モジュール1280に類似した制御モジュールにより、本開示の図に記載されている同調可能スロットの各アレーを駆動してもよい。
【0068】
RF参照ビームがRFホログラフィック回折パターンと出会った時に所望のRFビームを生成できる類似の技術を使用して、高周波(「RF」)ホログラフィも可能である。衛星通信の場合、参照ビームは、給電波1205(いくつかの実施形態では約20GHz)などの給電波の形態をしている。(送信又は受信のいずれかの目的で)給電波を放射ビームに変換するため、所望のRFビーム(目的ビーム)と給電波(参照ビーム)の間で干渉パターンが計算される。干渉パターンが同調可能スロットのアレー1210上で回折パターンとして駆動されることにより、給電波が(所望の形状と方向を有する)所望のRFビームに「ステアリング」される。換言すると、ホログラフィック回折パターンに出会う給電波は、通信システムの設計要件に従って形成される目的ビームを「再構成」する。ホログラフィック回折パターンには各素子の励起が含まれており、導波路内の波動方程式をwin、出力波の波動方程式をwoutとして、whologram=win
*woutにより計算できる。
【0069】
図8Aは、同調可能共振器/スロット1210の一実施形態を示す。同調可能スロット1210は、アイリス/スロット1212と、放射パッチ1211と、アイリス1212とパッチ1211の間に配置された液晶1213とを含む。一実施形態では、放射パッチ1211は、アイリス1212と同じ場所に配置される。
【0070】
図8Bは、物理的なアンテナ開口の一実施形態の断面図を示す。アンテナ開口は、グランドプレーン1245と、再構成可能な共振器層1230に含まれるアイリス層1233内の金属層1236とを含む。一実施形態では、
図8Bのアンテナ開口は、
図8Aの同調可能共振器/スロット1210を複数含む。アイリス/スロット1212は、金属層1236の開口部によって画定される。
図8Aの給電波1205などの給電波は、衛星通信チャネルと互換性のあるマイクロ波周波数を有し得る。給電波は、グランドプレーン1245と共振器層1230の間を伝播する。
【0071】
再構成可能共振器層1230は、ガスケット層1232及びパッチ層1231も含む。ガスケット層1232は、パッチ層1231とアイリス層1233の間に配置される。なお、一実施形態では、ガスケット層1232をスペーサで置き換えることができる。層1233は、金属層1236として銅層を含むプリント回路基板(「PCB」)である。一実施形態では、アイリス層1233はガラスである。アイリス層1233は、他の種類の基板であってもよい。
【0072】
銅層に開口部をエッチングしてスロット1212を形成することができる。一実施形態では、アイリス層1233は、導電性結合層によって
図8Bの他の構造(例えば導波路)に導電的に結合される。なお、一実施形態では、アイリス層は導電性結合層によって導電的に結合されておらず、代わりに非導電性結合層と接続されている。
【0073】
パッチ層1231は、放射パッチ1211として金属を含むPCBであってもよい。一実施形態では、ガスケット層1232は、金属層1236とパッチ1211の間の寸法を画定する機械的な離間を提供するスペーサ1239を含む。一実施形態では、スペーサは75ミクロンであるが、他のサイズ(3~200mmなど)を使用することもできる。上述のように、一実施形態では、
図8Bのアンテナ開口は、
図8Aのパッチ1211、液晶1213、及びアイリス1212を含む同調可能共振器/スロット1210などの複数の同調可能共振器/スロットを含む。液晶用チャンバ1213は、スペーサ1239、アイリス層1233及び金属層1236によって画される。チャンバが液晶で満たされると、パッチ層1231をスペーサ1239上に積層して、共振器層1230内に液晶を密封することができる。
【0074】
パッチ層1231とアイリス層1233の間の電圧を変調して、パッチとスロット(例えば、同調可能共振器/スロット1210)の間のギャップ内の液晶を同調することができる。液晶1213の両端の電圧を調整すると、スロット(例えば、同調可能共振器/スロット1210)の静電容量が変化する。したがって、スロット(例えば、同調可能共振器/スロット1210)のリアクタンスは、静電容量を変更することによって変えることができる。スロット1210の共振周波数も、等式f=1/(2π√LC)に従って変化する。ここで、fはスロット1210の共振周波数、LとCはそれぞれスロット1210のインダクタンスとキャパシタンスである。スロット1210の共振周波数は、導波路を通って伝播する給電波1205から放射されるエネルギーに影響を与える。一例として、給電波1205が20GHzである場合、スロット1210の共振周波数を(キャパシタンスを変えることにより)17GHzに調整して、スロット1210が給電波1205からのエネルギーと実質的に結合しないようにすることができる。あるいは、スロット1210の共振周波数を20GHzに調整して、スロット1210が給電波1205からのエネルギーと結合し、そのエネルギーを自由空間に放射するようにしてもよい。ここでの例は2値的であるが(完全放射又は無放射)、一定の範囲に亘って多値化された電圧変化を使用すれば、リアクタンス、従ってスロット210の共振周波数の完全なグレイスケール制御も可能である。したがって、詳細なホログラフィック回折パターンが同調可能スロットのアレーによって形成されるように、各スロット1210から放射されるエネルギーを細かく制御することができる。
【0075】
一実施形態では、一行内の同調可能スロットは、λ/5だけ互いに離間している。他の間隔であってもよい。一実施形態では、ある行の各同調可能スロットは、隣接する行の最も近い同調可能スロットからλ/2だけ離間しており、したがって、異なる行において共通して配向された同調可能スロットはλ/4だけ離間されているが、他の間隔も可能である(例えば、λ/5、λ/6.3)。別の実施形態では、ある行の各同調可能スロットは、隣接する行の最も近い同調可能スロットからλ/3だけ離間されている。
【0076】
実施形態では、2014年11月21日に出願された“Dynamic Polarization and Coupling Control from a Steerable Cylindrically Fed Holographic Antenna”と題する米国特許出願第14/550,178号及び2015年1月30日に出願された“Ridged Waveguide Feed Structures for Reconfigurable Antenna”と題された米国特許出願第14/610,502号に記載されているような再構成可能メタマテリアル技術が用いられる。
【0077】
図9A~
図9Dは、スロットが刻まれたアレーを形成するための異なる層に係る一実施形態を示す。アンテナアレーは、
図6に示した環の例のように、環状に配置されたアンテナ素子を含む。なお、この例では、アンテナアレーには2種類の周波数帯域に使用される2種類のアンテナ素子がある。
【0078】
図9Aは、スロットに対応する位置を有する第1のアイリス基板層の一部を示す。
図9Aを参照すると、複数の円はアイリス基板の底面側にある金属部における開口したエリア/スロットであり、素子の給電(給電波)への結合を制御するためのものである。なお、この層は、任意の層であり、すべての設計で使用されるわけではない。
図9Bは、スロットを含む第2のアイリスボード層の一部を示している。
図9Cは、第2のアイリスボード層の一部の上のパッチを示している。
図9Dは、スロットが刻まれたアレーの一部の上面図を示している。
【0079】
図10は、円筒状給電アンテナ構造の一実施形態の側面図を示している。アンテナは、2重層給電構造(即ち、2層の給電構造)を使用して、内向きに進行する波を生成する。一実施形態では、アンテナは円形の外形を含むが、これは必須でない。すなわち、非円形の内向きの進行構造を使用することができる。一実施形態において、
図10のアンテナ構造は、例えば、2014年11月21日に出願された、“Dynamic Polarization and Coupling Control from a Steerable Cylindrically Fed Holographic Antenna”と題する米国公開番号2015/0236412に記載されるような同軸給電部を含む。
【0080】
図10を参照すると、同軸ピン1601を使用してアンテナの下段に電界が励起される。一実施形態では、同軸ピン1601は、容易に入手可能な50Ω同軸ピンである。同軸ピン1601は、導電性のグランドプレーン1602である、アンテナ構造の底部に結合(例えば、ボルト締め)される。
【0081】
導電性グランドプレーン1602から離間して、内部導体である介挿導体1603が存する。一実施形態では、導電性グランドプレーン1602と介挿導体1603は互いに平行である。一実施形態では、グランドプレーン1602と介挿導体1603の間の距離は0.1~0.15インチである。別の実施形態では、この距離はλ/ 2であってもよい。λは動作周波数での進行波の波長である。
【0082】
グランドプレーン1602は、スペーサ1604を介して介挿導体1603から離間されている。一実施形態では、スペーサ1604は、発泡体又は空気状のスペーサである。一実施形態では、スペーサ1604は、プラスチック製のスペーサである。
【0083】
介挿導体1603の上部には、誘電体層1605がある。一実施形態では、誘電体層1605はプラスチックである。誘電体層1605の目的は、進行波を自由空間速度に対して遅くすることである。一実施形態では、誘電体層1605は、進行波を自由空間に対して30%遅くする。一実施形態では、ビームフォーミングに適した屈折率の範囲は1.2~1.8であり、自由空間は定義により1に等しい屈折率を有する。他の誘電体スペーサ材料、例えばプラスチックなどは、この効果を達成するために使用される。所望の波の減速効果が得られる限り、プラスチック以外の他の材料を使用することもできる。選択的に、分布構造を有する材料、例えば機械加工又はリソグラフィで形成することができる周期的サブ波長金属構造などを誘電体1605として使用してもよい。
【0084】
RFアレー1606は、誘電体1605の上にある。一実施形態では、介挿導体1603とRFアレー1606の間の距離は、0.1~0.15インチである。別の実施形態では、この距離は、λeff/2であってもよい。ここで、λeffは、設計上の周波数における媒体内での有効波長である。
【0085】
アンテナは側面1607及び1608を含む。側面1607及び1608は、同軸ピン1601から給電された進行波が介挿導体1603(スペーサ層)の下の領域から介挿導体1603の上のエリア(誘電体層)に反射により伝搬されるように、角度付けられている。一実施形態では、側面1607及び1608の角度は45°の角度である。別の実施形態では、側面1607及び1608を連続した半径で置換して反射を達成することができる。
図10は45度の角度を持つ側面を示しているが、下層の給電から高層の給電への信号伝送を実現する他の角度を使用することもできる。つまり、一般に、下側の給電における有効波長が上側の給電における有効波長と異なる場合、理想的な45°の角度からのいくらかの乖離を利用して、下側から上側の給電段への伝送を支援できる。例えば、別の実施形態では、45°の角度は単一の段差に置き換えられる。アンテナの一方の端の複数の段差は、誘電体層、介挿導体、及びスペーサ層の周囲を回る。同一の2つの段差が、これらの層のもう一方の端に存する。
【0086】
動作時には、給電波が同軸ピン1601から供給されると、その波はグランドプレーン1602と介挿導体1603の間の領域で同軸ピン1601から同心円状に外向きに進む。同心円状の外向きの波は、側面1607及び1608によって反射され、介挿導体1603とRFアレー1606の間の領域を内側に進む。円形の周囲の縁からの反射により、波は同相のままである(すなわち、同相反射である。)。 進行波は、誘電体層1605によって減速される。この時点で、進行波は、所望の散乱を得るためにRFアレー1606内の素子と相互作用及び励起を始める。
【0087】
進行波を終端させるため、アンテナの幾何学的中心において終端1609がアンテナに含まれている。一実施形態において、終端1609はピン終端(例えば、50Ωピン)を含む。別の実施形態では、終端1609は、その未使用エネルギーがアンテナの給電構造を介して反射するのを防止するため、未使用エネルギーを終端させるRF吸収体を備える。これらは、RFアレー1606の上部で使用できる。
【0088】
図11は、外に向かう波を伴うアンテナシステムの別の実施形態を示している。
図11を参照すると、2つのグランドプレーン1610及び1611が、これらのグランドプレーンの間に誘電体層1612(例えば、プラスチック層など)を備えた状態で、互いに実質的に平行となっている。RF吸収体1619(例えば、抵抗器)が、2つのグランドプレーン1610及び1611を結合して一体とする。同軸ピン1615(例えば、50Ω)がアンテナに給電する。RFアレー1616は、誘電体層1612とグランドプレーン1611の上にある。
【0089】
動作時には、給電波が同軸ピン1615を介して供給され、外側に同心円状に進んでRFアレー1616の素子と相互作用する。
【0090】
図10及び
図11の両方のアンテナにおける円筒状の給電は、アンテナのサービス角を改善する。プラス又はマイナス45度の方位角(±45°Az)及びプラス又はマイナス25度の仰角(±25°El)に代えて、一実施形態では、本アンテナシステムはボアサイトから全方向に75度(75°)のサービス角を有する。多くの個別の放射器で構成されるビームフォーミングアンテナと同様に、全体的なアンテナゲインは、角度に依存する構成素子のゲインに依存する。一般的な放射素子を使用する場合、ビームがボアサイトから遠ざかると、アンテナ全体のゲインは通常減少する。ボアサイトから75度外れると、約6dBの大幅なゲイン低下が予想される。
【0091】
円筒状給電を有するアンテナの実施形態は、1つ以上の課題を解決する。これらには、集合的な分配ネットワークで給電されるアンテナと比較して給電構造が劇的に簡素化することにより、必要なアンテナ数とアンテナ給電量の総量を削減すること;(単純なバイナリ制御まで拡張する)粗い制御で高いビーム性能を維持することにより、製造誤差及び制御誤差に対する感度を低下させること;円筒状に配向された給電波は遠方界で空間的に多様なサイドローブとなるため、直線状の給電と比較してより有利なサイドローブパターンを与えること;並びに、偏波器を必要とせずに、左旋円偏波、右旋円偏波、及び直線偏波を可能にするなど、偏波を動的にすること、が含まれる。
【0092】
<波散乱素子のアレー>
図10のRFアレー1606及び
図11のRFアレー1616は、放射器として作用する一群のパッチアンテナ(即ち、散乱体)を含む波散乱サブシステムを含む。この一群のパッチアンテナは、散乱メタマテリアル素子の配列を備える。
【0093】
一実施形態では、アンテナシステム内の各散乱素子は、下部導体、誘電体基板、及び上部導体からなる単位セルの一部であり、上部導体には相補型電気的誘導性・容量性共振器(「相補型電気LC」又は「CELC」)がエッチング又はディポジションにより埋め込まれている。
【0094】
一実施形態において、液晶(LC)は、散乱素子の周りのギャップに注入される。 液晶は各単位セルにおいてカプセル化されており、スロットに関係する下部導体を、そのパッチに関係する上部導体から分離する。液晶には液晶を構成する分子の配向の関数である誘電率があり、分子の配向(従って誘電率)は液晶のバイアス電圧を調整することにより制御できる。この特性を利用し、液晶は、導波された波からCELCへのエネルギー伝送用のオン/オフスイッチとして機能する。スイッチを入れると、CELCは電気的に小さなダイポールアンテナのように電磁波を放射する。
【0095】
LCの厚さを制御すると、ビーム切り替え速度が増加する。下部導体と上部導体の間のギャップ(液晶の厚さ)を50パーセント(50%)減らすと、速度が4倍になる。別の実施形態において、液晶の厚さは、約14ミリ秒(14ms)のビーム切り替え速度をもたらす。一実施形態では、LCを当技術分野で周知の方法でドープして、7ミリ秒(7ms)の要件を満たすようにすることができる。
【0096】
CELC素子は、CELC素子の面に対して平行で、CELCギャップ・コンプリメントに対して垂直に印加される磁界に応答する。メタマテリアル散乱単位セルの液晶に電圧が印加されると、導波された波の磁場成分がCELCを励磁し、CELCが導波された波と同じ周波数の電磁波を生成する。
【0097】
単一のCELCによって生成された電磁波の位相は、導波された波のベクトル上のCELCの位置によって選択することができる。各セルは、CELCに対して平行な導波された波と同位相の波を生成する。CELCは波長よりも小さいため、出力波はCELCの下を通過する際の導波された波の位相と同相である。
【0098】
一実施形態では、このアンテナシステムの円筒状給電幾何形状により、CELC素子を、波による給電における波のベクトルに対して45度(45°)の角度で配置することが可能になる。素子をこのように配置することにより、素子から生成され又は素子によって受信される自由空間波の偏波を制御できる。一実施形態では、CELCは、アンテナの動作周波数の自由空間波長よりも短い素子間間隔で配置される。例えば、波長ごとに4つの散乱素子がある場合、30GHz送信アンテナの素子は約2.5mm(つまり、30GHzの10mmの自由空間波長の1/4)となる。
【0099】
一実施形態では、CELCは、あるスロットと、このスロット上に共に存するパッチと、これら2つの間の液晶とを備えたパッチアンテナで実装される。この点に関し、メタマテリアルアンテナはスロットが刻まれた(散乱)導波管のように機能する。 スロットのある導波路では、出力波の位相は、導波された波に対するスロットの位置に依存する。
【0100】
<セルの配置>
一実施形態では、アンテナ素子は、体系的なマトリックス駆動回路を許容するような方法で円筒状給電アンテナ開口に配置される。セルの配置には、マトリックス駆動用のトランジスタの配置が含まれる。
図12は、アンテナ素子に関するマトリックス駆動回路の配置の一実施形態を示している。
図12を参照すると、行コントローラ1701はトランジスタ1711及び1712に、それぞれ行選択信号Row1及びRow2を介して結合され、列コントローラ1702は列選択信号Column1を介してトランジスタ1711及び1712に結合される。トランジスタ1711はパッチへの接続1731を介してアンテナ素子1721にも結合され、トランジスタ1712は、パッチへの接続1732を介してアンテナ素子1722に結合される。
【0101】
非規則的なグリッドに配置された単位セルを備えた円筒状給電アンテナ上でマトリックス駆動回路を実現するための初期アプローチでは、2つのステップが実行される。最初のステップでは、複数のセルを複数の同心環上に配置し、これらのセルの各々を当該セルの傍に配置され、各セルを個別に駆動するスイッチとして機能するトランジスタに接続する。2番目のステップでは、すべてのトランジスタを接続するため、マトリックス駆動の手法が必要とする一意のアドレスを用いてマトリックス駆動回路を構築する。マトリックス駆動回路は(LCDと同様の)行と列のトレースにより構築されるが、複数のセルが複数の環上に配置されるので、各トランジスタに一意のアドレスを割り当てる体系的な方法はない。このマッピングの問題により、すべてのトランジスタをカバーするのに非常に複雑な回路が必要となり、ルーティングを達成するための物理トレースの数が大幅に増加する。セルの密度が高いため、それらのトレースはカップリング効果によりアンテナのRF性能を妨害する。また、トレースの複雑さと高集積密度のため、市販のレイアウトツールではトレースのルーティングを実行できない。
【0102】
一実施形態では、マトリックス駆動回路は、セルとトランジスタが配置される前に予め定義される。これにより、それぞれに一意のアドレスを有するすべてのセルを駆動するのに必要なトレースの数を最小とすることができる。この方針により、駆動回路の複雑さが軽減され、ルーティングが簡素化され、アンテナのRF性能が向上する。
【0103】
より具体的には、一手法では、第1のステップにおいて、複数のセルは、各セルの一意のアドレスを記述する行と列で構成される規則的な長方形グリッドに配置される。第2のステップにおいて、それらのセルをグループ化し、第1のステップで定義したアドレスと行及び列への接続とを維持しながら同心円に変形する。この変形の目標は、複数のセルを複数の環に配置するだけでなく、セル間の距離と環間の距離を開口全体に亘って一定にすることである。この目的を達成するために、セルをグループ化する方法がいくつかある。
【0104】
一実施形態では、TFTパッケージを使用して、マトリックス駆動における配置及び一意のアドレス指定を可能とする。
図13は、TFTパッケージの一実施形態を示す。
図13を参照すると、入力ポートと出力ポートを備えた、TFT及び保持キャパシタ1803が示されている。トレース1801に接続された2つの入力ポートとトレース1802に接続された2つの出力ポートがあり、これらの行と列を使用して複数のTFTが接続される。一実施形態では、行トレースと列トレースは90°の角度で交差して、行トレースと列トレースの間の結合を低減し、潜在的に最小化する。一実施形態では、行トレースと列トレースは異なる層にある。
【0105】
<全二重通信システムの例>
別の実施形態では、組み合わされたアンテナ開口は、全二重通信システムで使用される。
図14は、同時の送信パス及び受信パスを有する通信システムの別の実施形態のブロック図である。1つの送信経路と1つの受信経路のみが示されているが、通信システムは複数の送信経路及び/又は複数の受信経路を含んでもよい。
【0106】
図14を参照すると、アンテナ1401は、上述のように異なる周波数で同時に送信及び受信するように独立して動作可能な2つの空間的にインタリーブされたアンテナアレーを含む。一実施形態では、アンテナ1401はダイプレクサ1445に結合される。結合は、1つ以上の給電ネットワークによるものであってもよい。一実施形態において、放射状給電アンテナの場合、ダイプレクサ1445は2つの信号を組み合わせ、アンテナ1401とダイプレクサ1445の間の接続は両周波数を搬送できる単一の広帯域給電ネットワークである。
【0107】
ダイプレクサ1445は低ノイズブロックダウンコンバータ(LNB:low noise block down converter)1427に結合され、これは、当技術分野で周知の方法により、ノイズフィルタリング機能とダウンコンバージョン及び増幅の機能とを実行する。一実施形態では、LNB1427は屋外ユニット(ODU:out-door unit)内にある。別の実施形態では、LNB1427はアンテナ装置に統合される。LNB1427はモデム1460に結合されており、これはコンピューティングシステム1440(例えば、コンピュータシステム、モデムなど)に結合されている。
【0108】
モデム1460はアナログ/デジタル変換器(ADC:analog-to-digital converter)1422を含み、これはLNB1427に結合されており、ダイプレクサ1445からの受信信号出力をデジタル形式に変換する。デジタル形式に変換されると、信号は復調器1423で復調され、デコーダ1424で復号化されて、受信波の符号化データが取得される。次に、復号化されたデータはコントローラ1425に送られ、コントローラ1425それをコンピューティングシステム1440に送る。
【0109】
モデム1460は、コンピューティングシステム1440からの送信されるデータを符号化するエンコーダ1430も含む。符号化されたデータは、変調器1431によって変調され、その後、デジタル/アナログ変換器(DAC:digital-to-analog converter)1432によってアナログに変換される。次に、BUC(アップコンバート及びハイパス増幅器)1433によってフィルタリングされ、ダイプレクサ1445の1つのポートに提供される。一実施形態では、BUC1433は屋外ユニット(ODU)内にある。
【0110】
当技術分野で周知の方法で動作するダイプレクサ1445は、送信信号をアンテナ1401に送信のために提供する。
【0111】
コントローラ1450は、単一の組み合わされた物理的開口上に複数のアンテナ素子からなる2つのアレーを含んだアンテナ1401を制御する。
【0112】
通信システムは、上述の結合器/アービタを含むように変形しうる。そのような場合、結合器/アービタは、モデムの後段であって、BUC及びLNBの前段に位置する。
【0113】
なお、
図14に示される全二重通信システムは、インターネット通信、車両通信(ソフトウェア更新を含む)などを含んだ多くの用途を有する(これらに限定されない。)。
【0114】
ここに記載されるように、多くの実施形態の例がある。
【0115】
例1は、アンテナであって、液晶(LC)を間に挟んだ第1及び第2の基板の一部を使用して形成された、複数の高周波(RF)を放射するアンテナ素子を有するアンテナ素子アレーと、前記第1及び第2の基板の間であって前記複数のRFアンテナ素子のエリアの外側にあり、LC膨張により、前記複数のRFアンテナ素子を形成する前記第1及び第2の基板間のエリアからLCを集める構造体と、を備えたアンテナである。
【0116】
例2は、例1のアンテナであって、前記LC膨張は環境の変化によるものであることを追加的に含んでもよい。
【0117】
例3は、例2のアンテナであって、前記環境変化は圧力又は温度の変化を含むことを追加的に含んでもよい。
【0118】
例4は、例1のアンテナであって、前記構造体は、LC収縮により、前記複数のRFアンテナ素子を形成する前記第1及び第2の基板間の前記エリアにLCを供給するように動作可能であることを追加的に含んでもよい。
【0119】
例5は、例4のアンテナであって、前記LC圧縮は環境変化によるものであることを追加的に含んでもよい。
【0120】
例6は、例5のアンテナであって、前記環境変化は圧力又は温度の変化を含むことを追加的に含んでもよい。
【0121】
例7は、例1のアンテナであって、前記複数のRFアンテナ素子の前記エリアの外側の前記第1の基板の剛性は、前記エリア内よりも小さいことを追加的に含んでもよい。
【0122】
例8は、例1のアンテナであって、前記第1及び第2の基板は複数のスペーサによって離間されていることを追加的に含んでもよい。
【0123】
例9は、例1のアンテナであって、前記複数のRFアンテナ素子の外側の前記エリアにおける1つ以上のスペーサは、前記複数のRFアンテナ素子の前記エリア内のスペーサのバネ定数とは異なるバネ定数を有することを追加的に含んでもよい。
【0124】
例10は、例8のアンテナであって、前記複数のRFアンテナ素子の外側の前記エリアについてのスペーサ密度は、前記複数のRFアンテナ素子の前記エリア内よりも小さいことを追加的に含んでもよい。
【0125】
例11は、例8のアンテナであって、前記複数のRFアンテナ素子の外側の前記エリア内のスペーサは、前記複数のRFアンテナ素子の前記エリア内のスペーサよりも短いことを追加的に含んでもよい。
【0126】
例12は、例1のアンテナであって、前記構造体は圧縮性媒体を含むことを追加的に含んでもよい。
【0127】
例13は、例12のアンテナであって、前記泡は前記LCと反応しないガスであることを追加的に含んでもよい。
【0128】
例14は、例1のアンテナであって、前記構造体は前記複数のRF素子の前記エリア内の前記LCと定液圧接触していることを追加的に含んでもよい。
【0129】
例15は、例1のアンテナであって、給電波を入力するアンテナ給電部であって、前記給電波は前記給電部から同心円状に伝搬する給電部と、複数のスロットと、複数のパッチと、を更に備え、前記複数のパッチの各々は、前記複数のスロットの内の1つのスロット上に前記LCを用いて離間して配置されてパッチ/スロット対を形成し、各パッチ/スロット対は、制御パターンで指定された対に含まれるパッチに対して電圧が印加されることによって制御される、ことを追加的に含んでもよい。
【0130】
例16は、例15のアンテナであって、前記複数のアンテナ素子は、ホログラフィックビームステアリングで使用するための周波数帯域のビームを形成するように、一体的に制御されて動作可能である、ことを追加的に含んでもよい。
【0131】
例17は、アンテナであって、液晶(LC)を間に挟んだ第1及び第2の基板の一部を使用して形成された、複数の高周波(RF)を放射するアンテナ素子を有するアンテナ素子アレーと、前記第1及び第2の基板の間であって構造体に対する前記複数のRFアンテナ素子のエリアの外側にあり、環境の変化によるLC膨張又は収縮により、前記複数のRFアンテナ素子のエリアからのLCに対してソース及びシンクの両方として機能する構造体と、を備えたアンテナである。
【0132】
例18は、例17のアンテナであって、前記環境変化は圧力又は温度の変化を含むことを追加的に含んでもよい。
【0133】
例19は、例17のアンテナであって、前記複数のRFアンテナ素子の前記エリアの外側の前記第1の基板の剛性は、前記エリア内よりも小さい、ことを追加的に含んでもよい。
【0134】
例20は、例17のアンテナであって、前記第1及び第2の基板が複数のスペーサによって離間されており、前記複数のRFアンテナ素子の外側の前記エリアにおける1つ以上のスペーサは、前記複数のRFアンテナ素子の前記エリア内のスペーサのバネ定数とは異なるバネ定数を有する、ことを追加的に含んでもよい。
【0135】
例21は、例17のアンテナであって、前記第1及び第2の基板が複数のスペーサによって離間されており、前記複数のRFアンテナ素子の外側の前記エリアについてのスペーサ密度は、前記複数のRFアンテナ素子の前記エリア内よりも小さい、ことを追加的に含んでもよい。
【0136】
例22は、例17のアンテナであって、前記第1及び第2の基板が複数のスペーサによって離間されており、前記複数のRFアンテナ素子の外側の前記エリア内のスペーサは、前記複数のRFアンテナ素子の前記エリア内のスペーサよりも短い、ことを追加的に含んでもよい。
【0137】
例23は、例17のアンテナであって、前記構造体は泡を含むことを追加的に含んでもよい。
【0138】
例24は、例23のアンテナであって、前記泡は前記LCと反応しない気体であることを追加的に含んでもよい。
【0139】
例25は、アンテナであって、液晶(LC)を間に挟んだ第1及び第2の基板の一部を使用して形成された、複数の高周波(RF)を放射するアンテナ素子を有するアンテナ素子アレーと、少なくとも1つの環境変化によるLCの膨張により、前記複数のRFアンテナ素子を形成する前記第1及び第2の基板間のエリアからLCを集めるLC格納体と、を備えたアンテナである。
【0140】
例26は、例25のアンテナであって、前記LC格納体は、少なくとも1つの環境変化により生じるLC収縮により、前記複数のRFアンテナ素子を形成する前記第1及び第2の基板間の前記エリアにLCを供給するように動作可能である、ことを追加的に含んでもよい。
【0141】
例27は、例25のアンテナであって、前記構造体は前記複数のRF素子の前記エリア内の前記LCと定液圧接触していることを追加的に含んでもよい。
【0142】
上記の詳細な説明のいくつかの部分は、コンピュータメモリ内のデータビットに対する操作に係るアルゴリズム及び記号表現の観点から記載されている。これらのアルゴリズムの説明と表現は、データ処理分野の当業者が自身の仕事の内容を他の当業者に最も効果的に伝えるために使用する手段である。アルゴリズムとは、ここでは、また一般的にも、所望の結果につながる自己矛盾のない一連のステップであると考えられている。そのステップは、物理量を物理的に操作することを必要とする。常にではないが、通常、これらの量は、保存、転送、結合、比較、その他の操作が可能な電気信号又は磁気信号の形式を取る。主に一般的な使用上の理由から、これらの信号を、ビット、値、要素、シンボル、文字、用語、数字などと呼ぶと便利な場合がある。
【0143】
しかしながら、これらの及び類似の用語のすべては、適切な物理量に関連付けられるべきであり、これらの量に適用される便利なラベルにすぎないという点に留意すべきである。特段の記載がない限り、以下の議論から明らかなように、説明全体を通して、「処理する(processing)」又は「計算する(computing)」又は「算出する(calculating)」又は「判定する(determining)」又は「表示する(displaying)」などの用語を利用する議論は、コンピュータシステム又は類似の電子計算装置のレジスタ及びメモリ内の物理的(電子)量として表されるデータを操作又は変換して、そのコンピュータシステムのメモリ若しくはレジスタ内の又は他のかかる情報の保存、送信、若しくは表示装置内の物理量として同様に表される他のデータにするコンピュータシステムの行為及び過程を意味する。
【0144】
本発明は、本明細書で記載された動作を実行するための装置にも関する。 この装置は、必要な目的のために特別に構築されてもよく、あるいはコンピュータに格納されたコンピュータプログラムによって選択的に起動され又は再構成された汎用コンピュータであってもよい。そのようなコンピュータプログラムは、コンピュータシステムのバスに接続された、フロッピーディスク、光ディスク、CD-ROM、及び光磁気ディスクを含む任意の種類のディスク、読み取り専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、EPROM、EEPROM、磁気カード若しくは光カード、又は電子命令を保存するのに適した任意の種類の媒体などの、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に格納されてよい。
【0145】
本明細書に提示されるアルゴリズム及び表示は、特定のコンピュータ又は他の装置に本質的に関連するものではない。本明細書の教示に従って、様々な汎用システムをプログラムと共に使用してもよく、あるいはより専用的な装置を構築して必要な方法ステップを実行するようにすることが便利であることが明らかとなる場合もある。これらの様々なシステムに必要な構造は、以下の記載から明らかとなる。さらに、本発明は、特定のプログラミング言語との関係で記載するものでない。本明細書で説明する本発明の教示を実施するために、さまざまなプログラミング言語を使用できることが理解されよう。
【0146】
マシン読み取り可能な媒体には、マシン(例えば、コンピュータ)によって可読な形式で情報を格納又は送信するための任意のメカニズムが含まれる。例えば、マシン読み取り可能な媒体には、読み取り専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、磁気ディスク記憶媒体、光学記憶媒体、フラッシュメモリデバイス等が含まれる。
【0147】
以上の説明を読まれた当業者にとっては本発明の多くの変形例及び変更例が疑いなく明らかとなるが、例示として示され、説明された具体的な実施形態のいずれも、限定するものと捉えられることは全く意図されていないことが理解されるべきである。したがって、様々な実施形態の詳細への言及は特許請求の範囲を限定することを意図しておらず、特許請求の範囲それ自体に本発明にとって不可欠であると考えられる特徴のみが記載されている。