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  • 特許-核酸等の分子を調査するための方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-02
(45)【発行日】2022-05-13
(54)【発明の名称】核酸等の分子を調査するための方法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6869 20180101AFI20220506BHJP
   G01N 35/08 20060101ALI20220506BHJP
   C12Q 1/00 20060101ALI20220506BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20220506BHJP
【FI】
C12Q1/6869 Z
G01N35/08 A
C12Q1/00 Z
C12N15/09 Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019570928
(86)(22)【出願日】2018-06-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-08-20
(86)【国際出願番号】 EP2018066579
(87)【国際公開番号】W WO2018234448
(87)【国際公開日】2018-12-27
【審査請求日】2021-05-28
(31)【優先権主張番号】17177204.9
(32)【優先日】2017-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】17208257.0
(32)【優先日】2017-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】521217482
【氏名又は名称】ライトキャスト ディスカバリー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】LIGHTCAST DISCOVERY LTD
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(72)【発明者】
【氏名】キャメロン アレキサンダー フレイリング
(72)【発明者】
【氏名】ペドロ クーニャ
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ヘンリー アイザック
【審査官】松原 寛子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/116757(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0160259(US,A1)
【文献】国際公開第2017/075295(WO,A1)
【文献】Optofluidic devices for droplet and cell manipulation,Technical report No.UCB/EECS-2015-119 online,2015年05月15日,2022/03/11(検索日),<http://WWW.eecs.berkeley.edu/Pubs/TechRpts/2015/EECS-2015-119.html>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/00
C12N 15/09
G01N 35/08
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体高分子を含む標的分子の調査方法であり、前記方法は、
不混和性キャリア媒体における消化媒体微小液滴の流れを、前記生体高分子に1つずつ経路接触させることによって、前記微小液滴内において前記生体高分子を前記生体高分子の構成単一モノマー単位へ漸進的に消化させるステップと、
少なくとも一部は単一モノマー単位を包含する前記微小液滴を、前記生体高分子の周りから除去するステップと、
前記微小液滴を、前記経路に沿って検出区域まで更に送達するステップと、
前記検出区域で前記微小液滴内の前記モノマー単位を同定し、前記モノマー単位から前記モノマー単位の化学構造を推測するステップと、
を含むことを特徴とする、生体高分子を含む標的分子の調査方法。
【請求項2】
前記生体高分子はタンパク質である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記検出区域は、電磁放射入射源及び光検出器を用いて放射を検出するように構成される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記電磁放射入射源は、レーザ又はLEDである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記検出区域は、前記経路の端部に検出位置が設けられた表面を含む、請求項1~4の何れか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記表面はウェルを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記微小液滴を、毛細管のアレイを含む前記検出区域に導入するステップを更に含み、
各微小液滴が前記毛細管のアレイを通じて積み重ねられ移動する、請求項1~6の何れか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記微小液滴は、圧力駆動流、エレクトロウェッティング又は光学的に媒介されるEWODの1つ又は組合せによって駆動される、請求項1~7の何れか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記経路の少なくとも一部が、光学的に媒介されるエレクトロウェッティングマイクロ
流体空間であり、前記エレクトロウェッティングマイクロ流体空間は、
第1複合壁であり、
第1透明基板、
前記第1透明基板上の、70~250nmの厚さを有する第1透明導体層、
前記第1透明導体層上の、300~1000nmの厚さを有し、400~1000n
mの波長範囲の電磁照射によって活性化される光活性層、及び
前記第1透明導体層上の、120~160nmの厚さを有する第1誘電体層
を含む第1複合壁と、
第2複合壁であり、
第2基板、
前記第2基板上の、70~250nmの厚さを有する第2透明導体層、及び
記第2透明導体層上の、25~50nmの厚さを有する第2誘電体層
を含む第2複合壁と、
によって構成され又は画定され、
前記経路は、前記第1複合壁及び前記第2複合壁を所定の間隔だけ離間して保持する1つ以上のスペーサを含むことができる、請求項1~8の何れか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本発明はとりわけ、核酸分子を調査するための方法、特に天然又は合成起源のDNA又はRNAを配列決定するための方法に関する。
【0002】
出願人の先の出願を示す特許文献1-5において、出願人は単一ヌクレオチドの秩序だった流れ、好ましくは単一ヌクレオシド三リン酸の流れを生成するための、ポリヌクレオチド分析物の漸進的消化を含む新しい配列決定方法を記載しており、その各々を、微小液滴流中の対応する微小液滴中に1つずつ捕捉できる。その後、それぞれの微小液滴を化学的及び/又は酵素的に操作して、微小液滴が最初に含有していた特定の一ヌクレオチドを明らかにすることができる。1つの実施形態において、これらの化学的及び/又は酵素的操作は、1つ以上の多成分オリゴヌクレオチドプローブ型の使用を含む方法を含み、その各々は、分析物が構成される単一ヌクレオチド型の1つを選択的に捕捉することができるように適合される。典型的にはそのようなプローブタイプの各々において、複数オリゴヌクレオチド成分のうちの1つは特性フルオロフォアを含み、プローブの未使用状態ではこれらのフルオロフォアの蛍光を発する能力が近くに位置するクエンチャーの存在によって、または自己消光によって消えたままである。使用において、プローブがその対応する単一ヌクレオチドを捕捉したとき、プローブは、その後のエキソヌクレアーゼ分解又はヌクレオチド鎖切断に感受的にされ、それによって、フルオロフォアをクエンチャー及び/又は互いから遊離させ、フルオロフォアが自由に蛍光を発することを可能にする。この手段により、それぞれの液滴に存在する元の一ヌクレオチドの性質を、分光手段により間接的に推測することができる。
【0003】
この方法を使用する配列決定装置を設計する際に、例えば、数千の微小液滴を蛍光の有無について分析される他の内容物及び/又はそれらの内容物と合体され得る位置に確実に送達され得ることを確実にするために、数千の微小液滴を操作することが必要となり得る。
【0004】
これを行う1つの考えられる方法は、エレクトロウェッティング力によって微小液滴を推進することができる基材上の経路を確立することである。このように比較的大きな液滴を操作するための装置は当該分野において以前に説明されている。例えば、特許文献6-8を参照のこと。典型的には、当該装置は液滴を、例えば、不混和性キャリア流体の存在下で、カートリッジ又はチューブの2つの対向する壁によって画定されるマイクロ流体空間を通って移動させることによって達成される。カートリッジ又はチューブの壁に埋め込まれているのは、誘電体層で覆われている電極であり、誘電体層の各々は層のエレクトロウェッティング電界特性を変更するために、間隔をおいて迅速にスイッチを入れたり切ったりすることができるように、ACバイアス回路に接続されている。このことは、所与の経路に沿って液滴を操縦するために使用することができる局所的な指向性毛管力を生じさせる。
【0005】
光学的に媒介されるエレクトロウェッティングに基づくこのアプローチの変形例は例えば、引用文献9-11に教示されている。特に、これらの3つの特許出願のうちの第1のものは、第1及び第2の壁によって画定されるマイクロ流体キャビティを含み、第1の壁が複合体設計であり、基板、光導電及び絶縁(誘電体)層から構成される、各種マイクロ流体デバイスを開示する。光導電層と絶縁層との間には互いに電気的に絶縁され、光活性層に結合された導電性セルの配列が配置され、その機能は絶縁層上に対応する個別の液滴受信位置を生成することである。これらの箇所では、液滴の表面張力特性をエレクトロウェッティング力の手段によって変更することができる。次に、光導電層に当たる光によって導電性セルのスイッチを入れたり切ったりすることができる。この手法は、その有用性が電極の配置によってある程度依然として制限されているが、切替えがはるかに容易かつ迅速になるという長所を有する。さらに、液滴を移動させることができる速度、及び実際の液滴経路を変化させることができる程度には制限がある。
【0006】
この後者のアプローチの二重壁の実施形態は、非特許文献1に開示されている。ここでは、誘電体層上に堆積されたテフロン(登録商標)AFの表面を横切る光学的に媒介されるエレクトロウェッティングを用いて、100~500μmの大きさの比較的大きな液滴の操作を可能にするセルについて説明する。パターン化されていない電気的にバイアスされたアモルファスシリコン上の光パターンは、概略的な形態で記載されている。しかしながら、表される機構では、誘電体層は薄く(100nm)、光活性層を支持する壁上にのみ配置されている。
【0007】
非特許文献2は、疎水性マイクロチャネル中の親水性パッチ上の液滴の電極支援トラップおよび放出を教示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】国際公開第2014/053853号パンフレット
【文献】国際公開第2014/053854号パンフレット
【文献】国際公開第2014/167323号パンフレット
【文献】国際公開第2014/167324号パンフレット
【文献】国際公開第2014/111723号パンフレット
【文献】米国特許第6,565,727号明細書
【文献】米国特許出願公開第2013/0233425号明細書
【文献】米国特許出願公開第2015/0027889号明細書
【文献】米国特許出願公開第2003/0224528号明細書
【文献】米国特許出願公開第2015/0298125号明細書
【文献】米国特許出願公開第2016/0158748号明細書
【非特許文献】
【0009】
【文献】University of California at Berkeley thesis UCB/EECS-2015-119 by Pei
【文献】Microfluid Nanofluid (2016) 20: 123
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
出願人らが最近出願した欧州特許出願、出願番号17180391.9号において、出願人らは、現在、高速で信頼性のある単一ヌクレオチド検出方法の要件に従って、数千の微小液滴を同時に操作することができる核酸分子調査装置を説明した。これは、コンピュータソフトウェアのアプリケーションによって容易に再構成可能であるという利点を有し、例えば、ユーザが最適な精度、スループット、又は特定のエピジェネティック修飾を検出するために容易に適応することを可能にすることによって、非常に汎用性がある。本発明者らはまた、対応する調査方法を開発し、その構成は最初の分析物消化ステップが粒子担持分析物を、不混和性キャリア媒体中の上流(別個の位置、例えば消化が起こるチップの上流を含むが、これに限定されない)で生成された消化媒体を含有する水性微小液滴の流れの成分と直接相互作用させることによって実施されることである。この手段により、消化ステップを「粒子上」および「液滴内」で行うことができ、それにより、この消化ステップの精度および信頼性を有意に増大させる。
【0011】
その最も広い範囲で、この方法が広く適用可能であることを認識して、本発明の第1の態様によれば、(a)微小液滴及び固形担体を結合させる条件下で、微小液滴を固形担体に接触させるステップと、(b)反応媒体を、標的分子と反応させるステップと、(c)その後、反応媒体に、固形担体から分離させ、キャリア流体で微小液滴を再び作る力を加えるステップと、を含む、不混和性キャリア媒体の反応媒体の微小液滴を、固形担体に拘束される標的分子とともに、化学的変換をもたらすために操作する方法が提供される。
【0012】
この方法の1つのバージョンでは、固形担体上の所与の箇所に固定化された標的分子の化学変換を実施するための方法が提供され、この方法は、粒子を含み、(a)各々が化学変換を生じさせることができる媒体からなる微小液滴の流れを生成するステップと、(b)化学変換が生じ得る条件下で、所与の箇所で、所与の期間にわたって、各微小液滴を標的分子と順番に接触させるステップと、(c)所与の期間の終わりに、所与の箇所から微小液滴を除去するステップとを含む。
【0013】
好適には、これらの方法が、反応媒体の成分が枯渇した固形担体の近傍から改質された微小液滴を運び去るステップをさらに含む。好ましくは、加えられる力が、固形担体の位置を含む経路上の様々な点または区域に加えられるエレクトロウェッティング力である。このエレクトロウェッティング力を、電気的または光学的に発生させることができる。
【0014】
一実施形態において、使用される反応媒体は核酸分析物を変換するためのものであり、標的分子はポリヌクレオチドであり、例えば、プライマー/テンプレートとして一本鎖ポリヌクレオチドを使用する核酸(例えば、RNA又はDNA)の合成である。このような実施形態では、固形担体に適用される微小液滴が、ヌクレオチドモノマーの供給源、少なくとも1つのポリメラーゼ、および当該技術分野で通常必要とされる他の成分を含むであろう。
【0015】
別の実施形態において、この方法は、核酸(例えば、RNA又はDNA)又はタンパク質のような生体高分子の分子構造を調査するために有用である。例えば、本発明の第2の態様によれば、
不混和性キャリア媒体における消化媒体の微小液滴の流れを、経路で1つずつ生体高分子に接触させることによって、生体高分子を微小液滴内で生体高分子の構成モノマー単位へ漸進的に消化させるステップと、
少なくとも一部は単一モノマー単位を包含する微小液滴を、生体高分子の周りから除去するステップと、
微小液滴を、経路に沿って検出区域まで更に送達するステップと、
検出区域で微小液滴のモノマー単位を同定し、モノマー単位からそれらの化学構造を推測するステップと、
を含むことを特徴とする、生体高分子を含む標的分子を調査するための方法が提供される。
【0016】
第1及び第2の態様の一実施形態では、標的分子/生体高分子は核酸分析物であり、消化媒体はポリヌクレオチドを形質転換することができるものである。例えば、それは、ポリメラーゼ、及び好ましくはポリリン酸アニオンまたはその類似体である補因子を含み得る。最も好ましくは、ポリリン酸がヌクレオチド三リン酸の生成をもたらすピロリン酸である。別の実施形態では、消化媒体が、分析物をヌクレオチド一リン酸に消化するエキソヌクレアーゼを含む。次いで、これらのヌクレオチド一リン酸は、キナーゼの作用によって、それらの対応するヌクレオチド三リン酸に変換され得る。次いで、ヌクレオチド一リン酸又はヌクレオチド三リン酸の同定は例えば、核酸塩基選択的オリゴヌクレオチド捕捉プローブの手段によって、蛍光標識の適用によって、又は例えば表面若しくはプラズモン現象によって増強された核酸塩基の特性ラマン散乱を検出することによって直接的に、それぞれに関連する核酸塩基を同定することを含む。一実施形態では、そのような同定ステップが入射電磁放射源(レーザ又はLEDなど)と、核酸塩基から生じる放射を検出するための光検出器とを使用する検出区域の使用を適切に含む。
【0017】
別の実施形態では、以下でより詳細に説明するように、本発明の第2の態様の方法は、結果として生じるヌクレオチドを、ポリメラーゼの存在下で蛍光プローブからなるオリゴヌクレオチド捕捉システムと反応させ、フルオロフォアを検出可能な状態で放出し、蛍光プローブは、不使用状態で蛍光を発さず核酸分析物に特徴的なヌクレオチドの種類の少なくとも1つに対して選択的であり、結果として生じ、各微小液滴で放出されるフルオロフォアに由来する蛍光は、第1電磁放射入射源及び光検出器を用いて検出されることを特徴とする。適切には、このようなフルオロフォアの放出は、エキソヌクレアーゼ及び/又はエンドヌクレアーゼ並びに任意にリガーゼの作用の結果であり、そのような作用が、検出される前記ヌクレオチドの捕捉によって触媒される。一実施形態では、オリゴヌクレオチド捕捉システムが微小液滴合体によって、または直接注入によって、分析物消化部位の下流に導入される。このような場合、消化媒体は、オリゴヌクレオチド捕捉システムとの反応の前にピロホスファターゼで処理されることが好ましい。
【0018】
これらの実施形態の好ましい一バージョンにおいて、生体高分子は核酸であり、モノマーは漸進的ピロリン分解によって生成されるヌクレオシド三リン酸であり、同定ステップは未使用状態では非蛍光性であり、所定の核酸塩基に対して選択的である、使用されたオリゴヌクレオチドプローブのエキソ核分解(exonucleolysis)によって生成される蛍光の検出を含む。したがって、本発明の第3の態様によれば、
水性加ピロリン酸分解媒体の微小液滴の流れを、経路において分析物に接触させることによって、分析物を漸進的に分析物の構成単一ヌクレオシド三リン酸にするステップと、
キャリア媒体の、少なくとも一部は単一ヌクレオシド三リン酸の1つを包含する微小液滴を、分析物の周りから除去するステップと、
微小液滴を経路に沿って更に送達するステップと、
経路に沿い又は加ピロリン酸分解の上流である1つ以上の位置を、各微小液滴検出要素に導入するステップと、
各微小液滴における、当該1つ以上の位置の下流である地点で放出されるフルオロフェアに由来する蛍光を検出するステップと、
を含む核酸分析物の調査方法であり、
各微小液滴検出要素は、
(a)不使用状態では蛍光を発しない蛍光プローブを含むオリゴヌクレオチド捕捉システムと、
(b)ポリメラーゼと、
(c)任意に、リガーゼと、
(d)蛍光状態において、使用される捕捉システムからフルオロフェアを放出できるエキソヌクレアーゼ及び/又はエンドヌクレアーゼと、
からなり、
加ピロリン酸分解は第1電磁照射入射源及び光検出器を使用する、調査方法が提供される。
【0019】
本発明のこれら第2又は第3の態様の方法は、二本鎖ポリヌクレオチド分析物を配列決定するのに特に適しており、二本鎖ポリヌクレオチド分析物は原則的に無制限であり得るヌクレオチド鎖長を有し、例えば、ゲノム断片中に見出される何百万ものヌクレオチド塩基類対まで有することができる。したがって、一実施形態では分析物が少なくとも50、好ましくは少なくとも150ヌクレオチド塩基類対長あり、適切には500を超え、1000を超え、場合によっては5000超のヌクレオチド塩基類対の長さである。一実施形態では分析物が天然起源のDNA(例えば、植物、動物、細菌またはウィルスに由来する遺伝物質)であるが、本方法は部分的若しくは完全な合成DNA、又は実際には天然では一般に遭遇しないヌクレオチド塩基類からなるヌクレオチド、すなわち、アデニン、チミン、グアニン、シトシン及びウラシル以外の核酸塩基を有するヌクレオチドから完全に若しくは部分的に構成される他の核酸の配列決定に等しく適用可能である。このような核酸塩基の例には、そのような核酸塩基の例には、4-アセチルシチジン、5-(カルボキシヒドロキシルメチル)ウリジン、2-O-メチルシチジン、5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオウリジン、5-カルボキシメチルアミノ-メチルウリジン、ジヒドロウリジン、2-O-メチルプソイドウリジン、2-O-メチルグアノシン、イノシン、N6-イソペンチルアデノシン、1-メチルアデノシン、1-メチルプソイドウリジン、1-メチルグアノシン、1-メチルイノシン、2,2-ジメチルグアノシン、2-メチルアデノシン、2-メチルグアノシン、3-メチルシチジン、5-メチルシチジン、N6-メチルアデノシン、7-メチルグアノシン、5-メチルアミノメチルウリジン、5-メトキシアミノメチル-2-チオウリジン、5-メトキシウリジン、5-メトキシカルボニルメチル-2-チオウリジン、5-メトキシカルボニルメチルウリジン、2-メチルチオ-N6-イソペンテニルアデノシン、ウリジン-5-オキシ酢酸-メチルエステル、ウリジン-5 -オキシ酢酸、ウィブトキソシン、ウィブトシン、プソイドウリジン、クエオシン、2-チオシチジン、5-メチル-2-チオウリジン、2-チオウリジン、4-チオウリジン、5-メチルウリジン、2-O-メチル-5-メチルウリジンおよび2-O-メチルウリジンを含む。分析物がRNAである場合、同様の考察が適用される。
【0020】
本発明の第3の態様の好ましい実施形態を考えると、第1ステップ及び経路内の加ピロリン酸分解区域において、分析物は3-5’方向に漸進的にピロリン酸化されて、単一ヌクレオシド三リン酸の流れを生成し、その順序は、分析物の配列の順序に対応する。加ピロリン酸分解そのものは、ポリメラーゼのような酵素を含む水性加ピロリン酸分解媒体を包含する微小液滴の流れの存在下、20~90℃の温度で行われる。一実施形態では、この媒体は緩衝化され、加ピロリン酸分解反応を維持するのに必要な他の成分(ポリメラーゼ、ピロリン酸アニオン、マグネシウムカチオンなど)も含み得る。別の実施形態では、媒体が、以下にさらに特定されるヌクレオチド検出成分の1つ以上をさらに含む。さらに別の実施形態では、これらの成分のいくつかまたは全てを、本方法の実施において、例えば、微小液滴噴射器を使用する直接注入によって、又は微小液滴の、関連材料を含有する二次微小液滴との合体によって、種々の点の別のところに導入することができる。好適には、使用される微小液滴が鉱油またはシリコーンオイルなどの不混和性キャリア媒体中に懸濁される。
【0021】
望ましいことに、本発明の方法は、加ピロリン酸分解の速度ができるだけ速く、かつ、1つの実施形態において、この速度は1秒当たり1単位ヌクレオシド三リン酸から50単位ヌクレオシド三リン酸までの範囲内にあるように、運用される。ポリヌクレオチドの漸進的分解に適用される加ピロリン酸分解反応についてのさらなる情報は、例えばJ. Biol. Chem. 244 (1969) pp. 3019-3028.に見出すことができる。
【0022】
一実施形態では、分析物消化が流れ中の各微小液滴を、分析物が予め付着している粒子と順番に接触させることによって実施される。適切には、このような粒子が化学的または物理的手段によって分析物が結合される1つ以上の分析物反応性部位を含むように予め修飾されている。一実施形態では、粒子がビード、例えば、グラス、シリカ, アルミナ、金属又は非分解性高分子などの不活性物質から作製されたマイクロビードである、ビードを含む。別の実施形態では、粒子が磁気的に操作されることを可能にする常磁性物質のコアを有する。別の実施形態では、粒子が最初の微小液滴に含まれ、従来の又は光学的に媒介されるエレクトロウェッティングの手段によってその消化箇所に操作されてもよい。さらに別の実施形態では、粒子が磁気、エレクトロウェッティング、吸引、物理的収縮を含む1つ以上の手段によって、又は例えば、経路がマイクロ流体チャンネル若しくはチューブである場合のように、経路の壁に一時的に化学的若しくは物理的に結合することができる、その上に取り付けられた二次付着基によって、消化が行われる所与の位置に保持されてもよい。
【0023】
これらの二次付着基及び分析物反応部位を作り出すことができる多くの方法がある。例えば、これらの二次付着基については、金属蒸着法又はプラズマ堆積等の公知の手法を用いて、まず粒子を金属で部分的に被覆することにより作製することができる。その後、金属表面を化学的に修飾して、経路のある箇所に配置される相補的な第2の部分に可逆的に結合することができる1つ以上の第1の部分を導入することができる。一実施形態では、第1および第2の部分のこれらの対がそれらの間に生成される結合が環境温度または環境温度付近で可逆的に作製され、破壊され得るように選択される。この手段により、粒子を消化箇所に付着させることができ、分析物を消化でき、その後、ビードを当該箇所から容易に分離させることができ、当該箇所は次に別の新しいビードを受け取ることができる。1つの実施形態では、これらの第1および第2の部分の対が、例えば補完的なビオチン部分を有するアビジン又はストレプトアビジン部分を使用することにより、消化の条件下で安定したタンパク質複合体の形成につながりうる。別の実施形態では、これらの対が、例えば、ポリヒスチジン/キレート化金属イオン対(低pH又はイミダゾール若しくは強金属キレート化剤の存在下で破壊された結合);ボロン酸/適切な炭水化物一対(低pHで破壊された結合)又はマレイミド/セレノール対(メタ-クロロペルオキシ安息香酸を使用して破壊された結合)におけるような、不安定な化学結合を作り出すことができる。これらの場合には、ビード上を通る微小液滴のpH又は組成物を変化させることによって、続いて粒子を分離することができる。
【0024】
1つの好ましい実施形態において、上記の部分の対は、複数のヒスチジン残留分(好ましくは6より大きい)及び例えばコバルト、銅又はニッケルのような遷移金属のニトロトリアセテート(NTA)又はイミノジアセテート(IDA)塩類誘導体から選択されるキレート化剤部分からなるポリヒスチジン部分を含む。これらの第1および第2の部分はそれぞれ、粒子及び経路箇所上に、どちらかの方向の周りに展開され得ることが理解される。
【0025】
同様に、分析物反応部位を作り出すことができる多くの方法がある。したがって、別の実施形態では、粒子のコーティングされていない表面を、例えば、シリカ、アルミナ又はガラスビード、エポキシシラン、アミノヒドロカルビルシラン又はメルカプトシランのような官能化剤で下塗りして、分析物を付着させることができる化学反応部位を生成することができる。その後、これらの反応部位を末端プライマー反応性基、例えば一実施形態では、アミン、スクシニル又はチオール基を含むように対応して修飾された分析物の誘導体で処理することができる。別の実施形態において、化学的付着は、アダプターオリゴヌクレオチドへのライゲーションを介して、または上記のタンパク質複合体の型を介して起こり得る。
【0026】
さらに別の実施形態では、そのようにプライミングされた粒子が1つの分析物反応部位のみを有する領域を含み、その結果、分析物の1つの分子のみが付着され得る。これは分析物が小さなポリヌクレオチド断片である場合に重要となることがあり、さもなければ、複数の分子が調製中に付着する傾向があり、これは望ましくないからである。立体効果がこのような結果を妨げるように働くので、ポリヌクレオチド断片が大きい場合、それはあまり問題ではない。適切には、粒子が0.5~5ミクロン(μm)の範囲の最大直径を有するであろう。
【0027】
好ましい一実施形態では、粒子が磁気コアを有する球状ビーズであり、例えば、Dynabeads(登録商標)の名称で販売されているビーズである。
【0028】
分析物付近の表面壁の濡れ性を変えるために、湿潤させるのが困難であるか、又は湿潤させるには小さすぎる(疎水性ビード上又は非常に小さなビード上に固定化される分析物など)ように標的分析物が固定化される方法のいくつかの実施形態では有利である。このような濡れ性の変更は、PEGシランによるコーティングのような化学表面コーティングを用いて達成することができる。別の実施形態では、前述のエレクトロウェッティングメカニズムのうちの1つを使用して、濡れ性に対する一時的な変更を誘発することができる。表面濡れ性を変更することによって、この濡れ性処理を受ける表面積をユーザが正確に規定することができるので、方法の信頼性を改善することが可能である。したがって、前方への液滴輸送によって表面から脱湿潤される流体の正確な体積、及び表面に湿潤された後に残され得る残りの流体の体積を制御することがより容易になる。これは、粗い表面を有する孤立したビーズのような、表面積があまり限定されていない標的で達成することが困難である、標的分析物と液滴との間に高度に再現性のある体積交換を与えるという利点を有する。
【0029】
本方法の第1ステップの特徴は、標的ビードがその表面上を駆動される際に、不混和性キャリア媒体中に懸濁された微小液滴が標的ビードを一時的に湿潤および脱湿潤させる、分析物の消化が液滴化水性媒体中で行われることである。この手段により、ヌクレオチド三リン酸分子が分析物鎖から放出されるとき、ヌクレオチド三リン酸分子はカプセル化され、次いで、微小液滴が粒子から脱湿潤するか又は部分的に脱湿潤する場合、下流に除去される。一実施形態では、粒子が微小液滴と一時的に接触しているときに、消化が行われる。さらに別の実施形態では、湿潤/脱湿潤の速度が、平均して、放出されるヌクレオチドよりも多くの微小液滴が粒子上を通過するように調整される。別の実施形態では、粒子の体積が微小液滴の体積よりも小さく、例えば、当該体積の75%未満、又は好ましくは50%未満である。さらに別の実施形態では、微小液滴がその上を通過する際に、粒子が水性シェルを保持することができる。この場合、シェル体積対微小液滴体積の比は、可能な限り小さいことが好ましい。例えば、微小液滴体積の50%が粒子上に残る場合、このことは、ヌクレオチドが微小液滴と共に運び去られる50%の可能性を与え、そしてヌクレオチドが残る50%の可能性を与える。
【0030】
この微小液滴湿潤/脱湿潤方法論は、分析物に対して実施される漸進的化学変換が消化以外、例えばDNAの合成又はナノ粒子の合成である場合、配列決定以外の応用を有することが理解される。このような変換の可能性は、一実施形態では複数の微小液滴タイプを、例えば触媒、プライマー、または他の反応物を担持する粒子と段階的に相互作用させることによって、さらに増大させることができる。したがって、本発明の別の態様によれば、(a)それぞれ化学的変換を起こす媒体からなる微小液滴の流れを生成するステップと、(b)前記化学的変換を起こすことができる条件下で、各微小液滴を次々に、所与の箇所で、所与の期間、標的分子と接触させるステップと、(c)前記所与の期間の最後に、前記微小液滴を前記所与の箇所から除去するステップと、を含むことを特徴とする、所与の箇所に固定される標的分子の化学的変換を実施する一般的な方法が提供される。好適には、微小液滴が本明細書に記載されるタイプの不混和性キャリア中に懸濁され、所与の箇所は上記のような粒子である。
【0031】
所与の微小液滴が複数の単一ヌクレオチド分子を含むリスクを回避するために、生成された各充填微小液滴が平均で1~20、好ましくは2~10個の空白部によって分離されるように、粒子をわたる微小液滴の流れ及び消化を同期させることが好ましい。好適には、微小液滴が500pL(ピコリットル)未満、好ましくは65pL未満、より好ましくは4pL未満、さらにより好ましくは2pL未満の有限体積を有する。最も好ましくは、それらの全ての体積が4fL(フェムトリットル)~4pLの範囲である。一実施形態では、粒子をわたる微小液滴流速が1~1000微小液滴/秒、好ましくは50~500微小液滴/秒である。
【0032】
微小液滴が粒子から及び分析物の周囲から除去された後、微小液滴は規則正しい流れを生成し、そのいくつかは、ここで、分析物のヌクレオチド構成を含む。次いで、この微小液滴の流れは、例えば、マイクロ流体チャンネル又はチューブなどのマイクロ流体空間を含み得る経路に沿ってさらに輸送される。適切には、この輸送が加圧駆動流を使用してもよく、又は、例えば従来の「エレクトロウェッティングオン誘電体」(eWOD)構成、若しくは好ましくはエレクトロウェッティング力が光学効果によって生成される構成の手段によって、エレクトロウェッティング力を使用してもよい。好ましい一実施形態では、経路は、第1及び第2の基板、第1及び第2の導体層、光活性層、並びに第1及び第2の誘電体層からなる第1及び第2複合壁から構成されるか、又はそれによって画定される光学的に媒介される、エレクトロウェッティングマイクロ流体空間である。別の実施形態では、この区域が、空洞でありマイクロ流体空間を収容するチップ又は扁平状カートリッジを含む。さらに別の実施形態では、少なくとも第1基板及び第1導体層が透明であり、第2電磁波照射源(例えば、多重レーザービーム又はLEDダイオード)からの光が光活性層に直接当たることを可能にする。別の実施形態では、第2の基板、第2の導体層、及び第2の誘電体層は同じ目的を達成できるように透明である。さらに別の実施形態では、これらの層はすべて透明であり、両側から照明を行うことができる。
【0033】
適切には、第1及び第2の基板が、機械的に強い材料、例えば、ガラス、金属、半導体又はエンジニアリングプラスティックから作られる。一実施形態では、基板がある程度の柔軟性を有することができる。さらに別の実施形態では、第1及び第2の基板が100~1000μmの厚さを有する。
【0034】
第1及び第2の導体層は、第1及び第2の基板の一方の表面に位置し、典型的には非常に薄く、それぞれ70~250nm、好ましくは70~150nmの厚さを有する。一実施形態では、これらの層のうちの少なくとも1つは酸化インジウムスズ(ITO)などの透明導電材、銀などの導電性金属の非常に薄いフィルム、又はPEDOTなどの導電性高分子から作製される。当該層は、連続シートとして、又はワイヤなどの一連の別個の構造として形成することができる。あるいは、導体層が、電磁波がメッシュの隙間の間に向けられる導電材のメッシュであってもよい。
【0035】
光活性層は、好適には、第2電磁放射線源による刺激に応答して、局所的な電荷領域を生成することができる半導体材料から構成される。例としては、300~1000nmの範囲の厚さのアモルファスシリコンが挙げられる。一実施形態では、光活性層が可視光の適用によって活性化される。
【0036】
第1の壁の場合には光活性層は、任意に第2の壁の場合には導電層は、非常に薄く典型的には120~160nmの範囲の誘電体層で被覆される。この層の誘電特性は、107V/m超の高誘電強度及び3超の誘電率を含むことが好ましい。一実施形態では、誘電体層が、高純度アルミナ又はシリカ、ハフニア又は薄い非導電性高分子膜から選択される。
【0037】
この構成の別のバージョンでは、少なくとも第1の誘電体層、好ましくは両層が防汚層でコーティングされて、各種エレクトロウェッティング箇所で所望の微小液滴/キャリア流体/表面接触角度を確立するのを助け、さらに、微小液滴が経路に沿って移動するときに、微小液滴の中身が表面に付着し、減少することを防止する。第2の壁が第2の誘電体層を含まない場合、第2の防汚層は、第2の導体層上に直接的に適用されてもよい。最適な性能のためには、防汚層が、25℃で大気-液体-表面3点インタフェースとして測定した場合、50~70°の範囲にある接触角度の確立を助けるべきである。キャリア媒体の選択に依存して、水性エマルションで満たされた類似する経路における微小液滴の同じ接触角度はより高く、100°を超える高さになるであろう。一実施形態では、これらの層が50nm未満の厚さを有し、典型的には単分子層である。別の実施形態では、これらの層が、アルコキシシリル等の親水性基で置換されたメタクリル酸メチル又はその誘導体などのアクリル酸塩エステルの重合体から構成される。好ましくは、防汚層の一方又は両方が最適な性能を保証するために疎水性である。
【0038】
第1及び第2の誘電体層、したがって第1及び第2の壁は、深さが50μm未満、好ましくは10μm未満であり、その中に微小液滴が含まれるマイクロ流体空間からなる経路を適切に画定する。一実施形態では、微小液滴が微小液滴空間に含まれる前に、微小液滴は、微小液滴空間の1つの寸法よりも10%を超える、適切には20%を超える固有直径を有する。この手段によって、微小液滴は、経路内で圧縮を受け、微小液滴の圧縮されていない自然状態の表面ポテンシャルエネルギーより高い表面ポテンシャルエネルギーの追加により、特定の操作のための向上したエレクトロウェッティング性能をもたらす。
【0039】
別の実施形態では、経路が、第1及び第2の壁を所定の間隔まで離して保持するための1つ又は複数のスペーサを含み得る。スペーサに対する選択肢には、光パターニングによって生成されたレジスト層等の中間層から生み出されたビード又はピラー又は隆起部等が含まれる。様々なスペーサ幾何学的形状を使用して、ピラーの線によって画定される、細いチャネル、先細りのチャネル、又は部分的に囲まれたチャネル等の空間を画定することもできる。注意深いデザインによって、これらの構造を使用して、微小液滴の変形を助け、続いて微小液滴の分割を行い、変形した微小液滴に対して操作を実施することができる。
【0040】
第1の壁と第2の壁との間の距離は、微小液滴の変形のレベルに影響を及ぼし、微小液滴の運動を妨げる表面抵抗を付加または除去する。第1の壁と第2の壁との間の間隔が装置を横切って変化するように装置を構造化することによって、異なる微小液滴操作のために輪郭が調整される、少なくとも1つの可変寸法の経路を有することが可能である。
【0041】
第1及び第2の壁は導体層に取り付けられたAC電源を使用してバイアスされ、これらの間に、適切には10~50ボルトの交流電位差を提供する。
【0042】
本発明のシーケンシング装置は、400~1000nmの範囲の波長及び光励起可能層のバンドギャップよりも高いエネルギを有する第2電磁放射源をさらに含む。好適には、光活性層が、採用される放射線の入射強度が0.01~0.2 Wcm-2であるエレクトロウェッティング箇所で、活性化されるであろう。電磁放射源は、一実施形態では高度に減衰され、別の実施形態では画素化される光活性層上に対応する光励起領域を生成するように同様に画素化される。この手段によって、第1の誘電体層上の画素化される対応エレクトロウェッティング箇所が誘起される。米国特許出願公開第2003/0224528号明細書に教示された設計とは対照的に、これらの画素化エレクトロウェッティング点は、導電性セルが存在しないので、第1の壁の対応する永久構造とは関連しない。その結果、本発明の装置では照度がない場合、第1の誘電体層の表面上の全ての点は、エレクトロウェッティング箇所になる傾向が等しい。これは、装置を非常に柔軟にし、エレクトロウェッティング経路を高度にプログラム可能にする。この特性を、従来技術で教示された永久構造のタイプと区別するために、我々は我々の装置で生成されたエレクトロウェッティング箇所を「一過的」として特性付けることを選択し、我々の出願の特許請求の範囲は、それに応じて解釈されるべきである。
【0043】
ここで教示される最適化された経路デザインは、得られる複合体積層体が高誘電強度及び高誘電率を有するより厚い中間層(酸化アルミニウム又はハフニアなど)の性能と組み合わされた、コーティングされた単層(又は非常に薄い機能層)からの防汚及び接触角修正特性を有するという点で、特に好都合である。得られる積層構造は、10μm未満、例えば2~8、2~6、2~5又は2~4μmの径を有するような、非常に小さな体積の微小液滴の操作に非常に適している。1つの好ましい実施形態において、これらの範囲は10fL~1pLの範囲の体積を有する微小液滴を生じさせる。これらの極めて小さな微小液滴では、液滴寸法が誘電体積層の厚さに近づき始め、したがって、液滴を横切る場勾配(エレクトロウェッティング誘起運動の必要条件)がより厚い誘電体に関して低減されるので、光活性層の上に最小厚さの全非導電性積層を有することの性能上の利点は極めて好都合である。
【0044】
第2電磁放射源が画素化される場合、電磁放射源は、例えばLEDからの光によって照明される反射スクリーン又はデジタルマイクロミラーデバイス(DMD)を使用して直接的又は間接的に適切に供給される。これは、一過的エレクトロウェッティング箇所の非常に複雑なパターンが迅速に生成され、第1の誘電体層において破壊されることを可能にし、それによって、厳密に制御されたエレクトロウェッティング力を使用して、エレクトロウェッティング経路に沿って微小液滴が正確に操縦されることを可能にする。これは、複数のエレクトロウェッティング経路に沿って数千のこのような微小液滴を同時に操作することを目的とする場合に特に有利である。このようなエレクトロウェッティング経路は、第1の誘電体層上の仮想的エレクトロウェッティング箇所の連続体から構成されると考えることができる。
【0045】
光活性層への第2電磁放射線源の衝突点は、従来の円形を含む任意の好都合な形状とすることができる。一実施形態では、これらの点の形態が対応する画素化の形態によって決定され、別の形態では、経路の微小液滴の形態に完全に又は部分的に対応する。1つの好ましい実施形態では、衝突点したがってエレクトロウェッティング箇所は三日月形であってもよく、経路における微小液滴の意図された移動方向に配向されてもよい。別の実施形態では、第2の壁はまた、第2の誘電体層上に、同じ電磁波源又は本明細書に記載される種類の第2の源のいずれかを手段することによって、さらなる一過性エレクトロウェッティング箇所を誘導することを可能にする光活性層を含む。好適には、エレクトロウェッティング箇所自体が第1の壁に付着する微小液滴表面よりも小さく、液滴と表面誘電体との間に形成される接点線を横切る最大場強度勾配を与える。第2の光活性層を追加することにより、ウェットエッジを経路の上面から下面に移行させることが可能になり、各微小液滴に代替または追加のエレクトロウェッティング力を目標に適用することが可能になる。
【0046】
一実施形態では、光活性層上の第2電磁波放射の衝突点を操作するための手段が、第1の誘電体層及び任意選択で第2の誘電体層上に、複数の同時に流れる例えば並列の、第1のエレクトロウェッティング経路を生成するように適合又はプログラムされる。別の実施形態では、第1及び任意選択で第2の誘電体層上に、第1のエレクトロウェッティング経路と交差する複数の第3のエレクトロウェッティング経路も生成して、異なる経路に沿って移動し異なった主要微小液滴及び副次的微小液滴を合流させることができる少なくとも1つの微小液滴合流箇所を生成するように適合又はプログラムされる。第1及び第3のエレクトロウェッティング経路は互いに直角に、又は正面を含む任意の角度で交差してもよい。この実施形態は、検出成分(下記参照)を、液滴合流によって、経路中の微小液滴中に送達することが所望される場合に特に有用である。多数の第1、第2、および第3のエレクトロウェッティング経路が使用されるさらに別の実施形態では、衝突点を操作するための手段がマイクロプロセッサによって適切に制御され、マイクロプロセッサは、それに沿って微小液滴が通過する経路を生成するだけでなく、互いに対する各微小液滴の動きを同期させる。
【0047】
上述したように、本発明のある実施形態では、方法は、経路に沿う少なくとも1つの箇所に、ヌクレオチド検出成分を導入するステップも含み、当該ヌクレオチド検出成分は、(a)以下及び/又は出願人らの先の特許出願で特定される蛍光プローブの種類(すなわち均等の機能を有するプローブ)を含むオリゴヌクレオチド捕捉システムと、(b)ポリメラーゼと、(c)任意に、リガーゼと、(d)蛍光状態において、使用される捕捉システムからフルオロフェアを放出できるエキソヌクレアーゼ及び/又はエンドヌクレアーゼと、からなる。一実施形態では、これらの成分のいくつか又は全ては、経路に沿った箇所又はその上流(上記参照)で、例えば元の微小液滴媒体中に存在することによって、一緒に又は段階的に微小液滴中に導入される。これらの検出成分の導入は、1つ以上の箇所で、例えば、微小液滴噴射器を使用する直接注入によって、又は関連材料を含有する二次微小液滴との微小液滴の合体によって、達成され得る。1つの好ましい実施形態において、ピロリン酸は、分析物の下流及び検出成分の第1の導入点の上流で、微小液滴に導入される。
【0048】
出願人らの先の特許によれば、種々の捕捉システムを使用することができる。例えば、一実施形態では、捕捉システムは、(a)検出不可能な状態の特性フルオロフォアで標識された第1の一本鎖オリゴヌクレオチドと、(b)第1のオリゴヌクレオチド上の相補的領域にハイブリダイズすることができる第2及び第3の一本鎖オリゴヌクレオチドと、を含むシステムから選択される。
【0049】
別の実施形態では、捕捉システムは、(a)制限エンドヌクレアーゼニッキング部位を含む第1の一本鎖オリゴヌクレオチド、単一ヌクレオシド三リン酸を捕捉するための単一ヌクレオチド捕捉部位、及びフルオロフォアを消光させるように、それぞれ少なくとも1つのフルオロフォア及び少なくとも1つの消光剤を有するニッキング部位のいずれかの側に並置されたオリゴヌクレオチド領域と、(b)捕捉部位のいずれかの側の第1のオリゴヌクレオチド上の相補的領域にハイブリダイズすることができる第2及び第3の一本鎖オリゴヌクレオチドと、を含むシステムから選択される。
【0050】
別の実施形態では、捕捉システムは、(a)エキソヌクレアーゼ遮断部位、遮断部位の5'側に位置し単一ヌクレオシド三リン酸を捕捉するための単一ヌクレオチド捕捉部位を含む制限エンドヌクレアーゼ認識部位、及びフルオロフォアを消光させるように配置された認識部位の5'側に位置する少なくとも1つのフルオロフォア領域を含む、第1の一本鎖オリゴヌクレオチドと、(b)第1のオリゴヌクレオチドからそれぞれ分離し、捕捉部位の3'及び5'側に隣接する、第1のオリゴヌクレオチド上の相補的領域にハイブリダイズすることができる、第2及び任意選択で第3の一本鎖オリゴヌクレオチド、を含むシステムから選択され、又は、(a)エキソヌクレアーゼ遮断部位、遮断部位の3'側に位置し単一ヌクレオシド三リン酸を捕捉するための単一ヌクレオチド捕捉部位を含む制限エンドヌクレアーゼ認識部位、及びフルオロフォアを消光させるように配置された認識部位の3'側に位置する少なくとも1つのフルオロフォア領域を含む、第1の一本鎖オリゴヌクレオチドと、(b)第1のオリゴヌクレオチドからそれぞれ分離し、捕捉部位の3'及び5'側に隣接する、第1のオリゴヌクレオチド上の相補的領域にハイブリダイズすることができる、第2及び任意選択で第3の一本鎖オリゴヌクレオチド、を含むシステムから選択される。
【0051】
別の実施形態では、捕捉システムは、(i)(a)二本鎖領域及び一本鎖領域を含む第1のオリゴヌクレオチドと、(b)核酸塩基配列が第1のオリゴヌクレオチドの一本鎖領域の核酸塩基配列と少なくとも部分的に相補的である第2の一本鎖オリゴヌクレオチドと、を含む2つの成分を包含するシステムから選択され、又は、(ii)末端が2つの異なる二本鎖オリゴヌクレオチド領域に付着している一本鎖ヌクレオチド領域を含む単一のオリゴヌクレオチドを包含するシステムから選択され、オリゴヌクレオチド捕捉システムが検出不能な状態でフルオロフォアによって標識されている。
【0052】
さらに別の実施形態では、捕捉システムは、一本鎖ヌクレオチド領域を含むシステムから選択され、その端部は二本鎖オリゴヌクレオチド領域に付着し、ここで、オリゴヌクレオチド領域の少なくとも1つは検出不能な状態のフルオロフォアを含む。
【0053】
検出成分の導入後、好ましくは蛍光シグナルが発生するインキュベーション期間後、微小液滴は、第1の電磁放射線の入射源および光検出器を含む検出システムを用いて下流で調べられる。いくつかの実施形態では、第1および第2の電磁放射源は同じであってもよいことが理解されるであろう。この手段によって、使用されたオリゴヌクレオチド捕捉システムがエキソヌクレアーゼ分解及び/又はエンドヌクレアーゼ分解を受けるときに放出される蛍光フルオロフォアが検出され、各微小液滴に含まれるヌクレオシド三リン酸の性質が決定される。一実施形態では、この検出が、微小液滴が圧力駆動流、従来のエレクトロウェッティング、又は光学的に媒介されるEWODのうちの1つまたは組合せによって最終的に駆動される経路の端部に検出位置が設けられた表面を含む、検出ゾーンで行われる。このような表面は、これらの最終目的地位置を作り出すために、ウェルなどの構造でプロファイルされてもよい。別の実施形態では、検出ステップが、出口点に位置する検出位置で蛍光検出システムによって問い合わせられる前に、各微小液滴が積み重ねられ、移動する、毛細管のアレイを含む検出ゾーンに微小液滴を導入することを含む。
【0054】
一実施形態では、検出システムは、各々の微小液滴の含有物を調べるための、例えば1つ以上のレーザー又はLEDのような第1の電磁波放射の1つ以上の源と、使用されている特定の捕捉システムで使用される種々の蛍光体の特徴的な蛍光波長又は波長エンべロープに同調された1つ以上の光検出器又は均等の装置とから構成される。その後、光検出器によって検出される任意の放出蛍光は、分析物の配列のデータ特性を明らかにするために、既知のアルゴリズムを使用してコンピュータで処理および分析することができる電気信号を生じる。
【0055】
本発明の好ましい第3の態様の1つの実施形態では、不混和性キャリア媒体中の水性微小液滴流中の、加ピロリン酸分解酵素を包含する各微小液滴を、分析物が付着している粒子と次々に接触させ、それによって、酵素に、分析物からヌクレオシド三リン酸分子を微小液滴の少なくとも一部に放出させた後、それらを粒子の周囲から除去するステップを特徴とする、核酸分析物を加ピロリン酸分解する方法が提供される。
【0056】
別の実施形態では、本方法は、オリゴヌクレオチド捕捉システムが、(a)検出不可能な状態の特性フルオロフォアで標識された第1の一本鎖オリゴヌクレオチドと、(b)第1のオリゴヌクレオチド上の相補的領域にハイブリダイズすることができる第2及び第3の一本鎖オリゴヌクレオチドと、を含むことを特徴とする。
【0057】
別の実施形態では、本方法は、オリゴヌクレオチド捕捉システムが、(a)制限エンドヌクレアーゼニッキング部位を含む第1の一本鎖オリゴヌクレオチド、単一ヌクレオシド三リン酸を捕捉するための単一ヌクレオチド捕捉部位、及びフルオロフォアを消光させるように、それぞれ少なくとも1つのフルオロフォア及び少なくとも1つの消光剤を有するニッキング部位のいずれかの側に並置されたオリゴヌクレオチド領域と、(b)捕捉部位のいずれかの側の第1のオリゴヌクレオチド上の相補的領域にハイブリダイズすることができる第2及び第3の一本鎖オリゴヌクレオチドと、を含むことを特徴とする。
【0058】
別の実施形態では、本方法は、オリゴヌクレオチド捕捉システムが、(a)エキソヌクレアーゼ遮断部位、遮断部位の5'側に位置し単一ヌクレオシド三リン酸を捕捉するための単一ヌクレオチド捕捉部位を含む制限エンドヌクレアーゼ認識部位、及びフルオロフォアを消光させるように配置された認識部位の5'側に位置する少なくとも1つのフルオロフォア領域を含む、第1の一本鎖オリゴヌクレオチドと、(b)第1のオリゴヌクレオチドからそれぞれ分離し、捕捉部位の3'及び5'側に隣接する、第1のオリゴヌクレオチド上の相補的領域にハイブリダイズすることができる、第2及び任意選択で第3の一本鎖オリゴヌクレオチド、を含み、又は、(a)エキソヌクレアーゼ遮断部位、遮断部位の3'側に位置し単一ヌクレオシド三リン酸を捕捉するための単一ヌクレオチド捕捉部位を含む制限エンドヌクレアーゼ認識部位、及びフルオロフォアを消光させるように配置された認識部位の3'側に位置する少なくとも1つのフルオロフォア領域を含む、第1の一本鎖オリゴヌクレオチドと、(b)第1のオリゴヌクレオチドからそれぞれ分離し、捕捉部位の3'及び5'側に隣接する、第1のオリゴヌクレオチド上の相補的領域にハイブリダイズすることができる、第2及び任意選択で第3の一本鎖オリゴヌクレオチド、を含むことを特徴とする。
【0059】
さらに別の実施形態では、本方法は、オリゴヌクレオチド捕捉システムが、(i)(a)二本鎖領域及び一本鎖領域を含む第1のオリゴヌクレオチドと、(b)核酸塩基配列が第1のオリゴヌクレオチドの一本鎖領域の核酸塩基配列と少なくとも部分的に相補的である第2の一本鎖オリゴヌクレオチドと、を含む2つの成分を包含し、又は、(ii)末端が2つの異なる二本鎖オリゴヌクレオチド領域に付着している一本鎖ヌクレオチド領域を含む単一のオリゴヌクレオチドを包含し、オリゴヌクレオチド捕捉システムが検出不能な状態でフルオロフォアによって標識されていることを特徴とする。
【0060】
さらに別の実施形態では、本方法は、オリゴヌクレオチド捕捉システムが、一本鎖ヌクレオチド領域を含み、その端部は二本鎖オリゴヌクレオチド領域に付着し、ここで、オリゴヌクレオチド領域の少なくとも1つは検出不能な状態のフルオロフォアを含むことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0061】
図1】マイクロ流体チップの平面図である。
図2】種々の微小液滴がどのように操作されるかを示す微小液滴操作区域の部分断面図である。
図3】典型的な微小液滴の上面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0062】
次に、DNA分析物を配列決定するのに適した本発明の方法を、本発明の好ましい第3態様に従って、以下の図および関連する説明によって説明する。
【0063】
図1はマイクロ流体チップの平面図を示し、当該マイクロ流体チップは透明プラスチック製の単一チップに一体化された微小液滴調製区域1と微小液滴操作区域3とを含む。1は、入口4、5、および6に取り付けられた流体7、8、及び9を包含する領域を含み、入口4、5、および6は、それぞれ、加ピロリン酸分解流、無機ピロホスファターゼ流、及び出願人らの以前の出願の1つに従ってヌクレオシド三リン酸を同定するために必要とされる種々の検出化学物質および酵素の流れをチップに導入する。次いで、これらの流れは、それぞれオリフィス7a、8a及び9aに送達され、そこから種々の微小液滴7b、8b及び9bが生成される(例えば、液滴ディスペンシングヘッドを使用して、またはより大きな中間液滴から切断することによって)。10は、常磁性ポリマー複合体マイクロビーズ11を含むリザーバであり、常磁性ポリマー複合体マイクロビーズ11の一部又は全部に配列決定されるべきポリヌクレオチド分析物の単一分子が付着される。11の各々は、微小液滴でエレクトロウェッティング経路12に沿って位置7cに輸送され、そこで磁気によって保持され、7bの流れと接触される。この箇所において、11に付着した分析物は、各7bが11から離脱した後、それが空であるか、または1つのヌクレオシド三リン酸分子のみを含むような速度で、漸進的に加ピロリン酸分解される。離脱後、微小液滴8b及び9bとともに7bは、図2に示された機構によって、30~40℃の温度で、様々な光学的に媒介されるエレクトロウェッティング経路(ここでは正方形状エレクトロウェッティング箇所25によって定められる)に沿って操作される3に移動させられる。このプロセスでは、7b及び8bが第1合流点12で合流して中間微小液滴13を生成させ、その後、第2合流点14で9bと合流して、60~75℃の温度で維持されるインキュベート領域16を通って前方に移動する複数の最終微小液滴15の流れを生成し、内容物をインキュベートし、必要な化学反応および酵素反応を起こさせる。その後、15は、検出ゾーン2内の最終位置に輸送され、そこで、LED源からの光及び光検出器を用いて検出される各微小液滴によって放出される任意の蛍光で問い合わせられる。光検出器の出力は、既知の配列決定アルゴリズムを用いて分析することができる分析物の配列に対応するデータストリームである。
【0064】
図2は、種々の微小液滴がどのように操作されるかを示す3の部分断面図を表す。3は、各々が厚さ130nmの導電性酸化インジウムスズ(ITO)18a及び18b の透明層で被覆された厚さ500μmの頂部及び底部ガラスプレート又は透明プラスチックプレート(17a及び17b)を含む。18a及び18b の各々はAC源19に接続され、18b上の酸化インジウムスズ層は接地されている。18bは厚さ800nmのアモルファスシリコン層20で被覆されている。18a及び20は、それぞれ、高純度アルミナ又はハフニア21a及び21b の厚さ160nmの層でコーティングされ、これらは次に、ポリ(3-(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート)22単層でコーティングされて、これら表面を疎水性にする。21a及び21bはスペーサー(図示せず)を使用して3μm離間され、その結果、微小液滴はこの空間に導入されたときにある程度の圧縮を受ける。発光ダイオード光源23によって照明された反射性の画素化されたスクリーンの画像は、一般に17bの下に配置され、0.01Wcm2の水準の可視光(波長660又は830nm)がそれぞれのダイオード24から放射され、17b及び18bを通る多数の上方向の矢印の方向に伝播することによって20に衝突させられる。種々の衝突点において、光励起された電荷領域26が20内に生成され、これは、対応するエレクトロウェッティング箇所25において、21b内に変更された液体-固体接触角度を誘起する。これらの変更された特性は、微小液滴をある点25から別の点へと推進するために必要な毛管力を提供する。23は、あらかじめプログラムされたアルゴリズムを用いて、26のアレイのどれが任意の時点で照明されるかを決定するマイクロプロセッサ(図示せず)によって制御される。この手段により、種々の微小液滴を、図1に示す種々の経路に沿って同期した方法で移動させることができる。
【0065】
図3は、接触の程度を画定する点線輪郭7’を有するとともに、21b上の位置25に位置する典型的な微小液滴(ここでは7b)の上面図を示す。この例では、26が7bの移動方向に三日月形状である。
図1
図2
図3