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特許7066769エンドレスフィラメントからなるスパンボンド不織布
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  • 特許-エンドレスフィラメントからなるスパンボンド不織布 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-02
(45)【発行日】2022-05-13
(54)【発明の名称】エンドレスフィラメントからなるスパンボンド不織布
(51)【国際特許分類】
   D04H 3/16 20060101AFI20220506BHJP
   D04H 3/147 20120101ALI20220506BHJP
   D01F 8/06 20060101ALI20220506BHJP
【FI】
D04H3/16
D04H3/147
D01F8/06
【請求項の数】 15
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020048671
(22)【出願日】2020-03-19
(62)【分割の表示】P 2018557838の分割
【原出願日】2017-05-17
(65)【公開番号】P2020117853
(43)【公開日】2020-08-06
【審査請求日】2020-04-02
(31)【優先権主張番号】102016109115.4
(32)【優先日】2016-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】505313830
【氏名又は名称】ライフェンホイザー・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング・ウント・コンパニー・コマンデイトゲゼルシャフト・マシイネンファブリーク
(73)【特許権者】
【識別番号】516034957
【氏名又は名称】ファイバーテクス・パーソナル・ケア・アクティーゼルスカブ
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 一郎
(72)【発明者】
【氏名】ゾンマー・ゼバスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ハンセン・モルテン・リーセ
【審査官】長谷川 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-538394(JP,A)
【文献】特表2002-522653(JP,A)
【文献】特表2016-506322(JP,A)
【文献】特表2014-502315(JP,A)
【文献】特開2002-069820(JP,A)
【文献】米国特許第06225243(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01F8/00-8/18
D04H1/00-18/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性プラスチック製のエンドレスフィラメントでできたスパンボンド不織布であって、前記エンドレスフィラメントは、コア-シース構成を有する多成分フィラメントとして形成され、前記フィラメントは少なくとも一種の滑剤を含み、前記滑剤の割合は、全フィラメントを基準として250~5500ppmであり、前記滑剤は、少なくとも90重量%がコア成分中に存在し、前記スパンボンド不織布の表面は、スパンボンド不織布生成から150分間までの期間内は、フィラメント断面に関して滑剤の均一な分布を持つ、その他の点では同じ条件下に製造された比較用スパンボンド不織布よりも高い硬度を有し、及び上記スパンボンド不織布の表面は、96時間後に、前記比較用スパンボンド不織布と同じ硬度または前記比較用スパンボンド不織布の硬度から最大3%異なる硬度を有する、前記スパンボンド不織布。
【請求項2】
コア成分とシース成分との間の質量比が67:33~73:27である、請求項1に記載のスパンボンド不織布。
【請求項3】
熱可塑性プラスチック製のエンドレスフィラメントでできたスパンボンド不織布であって、前記エンドレスフィラメントが、コア-シース構成を有する多成分フィラメントとして形成され、前記フィラメントは少なくとも一種の滑剤を含み、前記滑剤の割合は、全フィラメントを基準として、250~5500ppmであり、前記シース成分中には、このシース成分中を通る滑剤の移行速度を低下させる少なくとも一種の添加物質が含まれ、前記スパンボンド不織布の表面は、スパンボンド不織布生成から150分間までの期間内は、滑剤の移行速度を低下させる添加物質を含まない他の点では同じ条件で製造された比較用スパンボンド不織布よりも高い硬度を有し、及び上記スパンボンド不織布の表面は、スパンボンド不織布生成から96時間後に、前記比較用スパンボンド不織布と同じ硬度または前記比較用スパンボンド不織布の硬度から最大3%異なる硬度を有する、前記スパンボンド不織布。
【請求項4】
滑剤がシース成分中に含まれる、請求項3に記載のスパンボンド不織布。
【請求項5】
シース成分中の滑剤の移行速度を低下させる添加物質として、少なくとも一種の成核剤及び/または少なくとも一種のフィラーが含まれる、請求項3または4に記載のスパンボンド不織布。
【請求項6】
成核剤として、「芳香族カルボン酸、芳香族カルボン酸の塩、ソルビトール誘導体、タルク、カオリン、キナクリドン、ピメリン酸塩、スベリン酸塩、ジシクロヘキシル-ナフタレンジカルボキサミド、有機ホスフェート、トリフェニル化合物、トリフェニルジチアジン」の群からの少なくとも一種の添加物質が使用される、請求項に記載のスパンボンド不織布。
【請求項7】
フィラーとして、少なくとも一種の金属塩、及び/または「二酸化チタン、タルク」の群からの少なくとも一種の物質が使用される、請求項5または6に記載のスパンボンド不織布。
【請求項8】
不織布表面でのスパンボンド不織布の硬度として、TSA測定装置(ドイツ連邦共和国ライプチヒ在のEmtec社)のTS7値、すなわち6550Hzでの音量/周波数スペクトルのピーク最大における音量を使用する、請求項1~のいずれか一つに記載のスパンボンド不織布。
【請求項9】
前記コア成分及び/または前記シース成分が、少なくとも90重量%の、「ポリオレフィン、ポリオレフィンコポリマー、ポリオレフィンとポリオレフィンコポリマーとの混合物」の群からの少なくとも一種の成分を含む、請求項1~のいずれか一つに記載のスパンボンド不織布。
【請求項10】
前記コア成分及び/または前記シース成分が、少なくとも90重量%の、「ポリプロピレン、ポリプロピレンコポリマー、ポリプロピレンとポリプロピレンコポリマーとの混合物」の群からの少なくとも一種の成分を含む、請求項1~のいずれか一つに記載のスパンボンド不織布。
【請求項11】
前記コア成分がまたは添加剤が存在する場合はそれの残部が、ホモポリオレフィンからなるか、あるいは前記コア成分が、少なくとも80重量%のホモポリオレフィンを含む、請求項1~10のいずれか一つに記載のスパンボンド不織布。
【請求項12】
前記シース成分がまたは添加剤が存在する場合はそれの残部が、ポリオレフィンコポリマーからなる、請求項1~11のいずれか一つに記載のスパンボンド不織布。
【請求項13】
上記ポリオレフィンコポリマーが、2.5~6の分子量分布またはモル質量分布(M/M)を有する、請求項12のいずれか一つに記載のスパンボンド不織布。
【請求項14】
滑剤として、少なくとも一種の脂肪酸誘導体が使用される、請求項1~13のいずれか一つに記載のスパンボンド不織布。
【請求項15】
滑剤として、少なくとも一種のステアレート及び/または少なくとも一種のエルカ酸アミド及び/または少なくとも一種のオレイン酸アミドが使用される、請求項1~14のいずれか一つに記載のスパンボンド不織布。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性プラスチックでできたエンドレスフィラメントからなるスパポンド不織布であって、前記エンドレスフィラメントが、多成分フィラメントとして、特にコア-シース構造を持つ二成分フィラメントとして構成されているスパンポンド不織布に関する。本発明によれば、前記スパンボンド不織布はエンドレスフィラメントを含む。このようなエンドレスフィラメントは、それらのほぼエンドレスの長さの故に、例えば10~60mmのかなりより短い長さを有するステープル繊維とは異なる。
【背景技術】
【0002】
冒頭に述べたタイプのスパンボンド不織布は、プラクチスでは様々な実施形態で知られている。このようなスパンボンド不織布では、通常は、高い強度または高い引張強さが望ましい。多くの用途のためには、スパンボンド不織布は、更に、滑らかで柔軟な手触りを有するべきである。一方のスパンポンド不織布の柔軟な手触り、及び他方のスパンポンド不織布の高い強度または引張強さは、それらを組み合わせて十分に達成することはできないことが多い。中でも、柔軟な手触りは、高い生産性または工場生産性と同時に実現することができない。
【0003】
ポリプロピレンでできたスパンボンド不織布はかなり以前から知られており、そして対応するプラントでの良好な操業性能を特徴とする。特に、生じる汚染物が比較的少ない。しかし、これらのスパンボンド不織布は特に柔軟ではなく、そして(例えばより微細な繊維による)柔軟さの向上のための可能性は制限されており、そしてしばしば経済的ではない。スパンボンド不織布の柔軟さを高めるための滑剤の使用は可能であるが、フィラメントの比較的高い曲げ強度を変えず、そのため、十分に柔軟なスパンボンド不織布を与えることができない。このような滑剤の使用は、この滑剤が、スパンボンドプロセス中に、フィラメント溶融物からまたは初めは熱いフィラメントから外に拡散しそしてプラントを汚染して、最終的には生産性を下げるという欠点を持つ。
【0004】
柔軟さを向上するために、ポリプロピレン混合物、例えばホモポリプロピレンと、ポリプロピレンベースのコポリマー、例えば「ランダムCoPP」との混合物が導入された。これらの混合物は、曲げ柔軟性のフィラメントを与えるが、一般的にむしろざらざらした手触りを特色とし、そのため、追加的な滑剤の使用が必要となる。これらの柔軟なポリプロピレン混合物は強度が低下している点が不利である。更に、上記の汚染物の問題がこの場合も同様に存在する。コア-シース構造を持つ特定の二成分フィラメントを使用した場合には、許容可能な柔軟さと十分な強度との妥協点を達成することができる。例えば、コア中のホモ-ポリプロピレンは強度を向上し、そしてシース中の柔軟なポリプロピレン-混合物、またはポリプロピレン-コポリマーの使用は、フィラメントまたはスパンボンド不織布の柔軟さを高める。しかし、問題のフィラメント表面もまた、比較的ざらざらしている。これは滑剤の使用を必要なものとし、しかしこれはこの場合も、汚染物に関した上記の問題を一緒に招いてしまう。
【0005】
スパンボンド不織布の生成のための現代のプラントの高速な製造速度では、いわゆるジャンボロールワインダーとスリッターリワインダーとからなる組み合わせを用いて作業される。なぜならば、このような高速の製造速度では、もはや直接は巻き取ることができないからである。スパンボンド不織布の製造と、一方ではそれに伴うジャンボロールの形成との間及び他方ではスリッターリワインダー工程の時点との間には、そのジャンボロールは一次的に保管され、その際、その期間は数時間におよび得る。この時間中に、使用した滑剤がフィラメントの表面に移行することがあり、そうしてこのフィラメントまたはスパンボンド不織布は滑りやすくなり、そのためリワインド挙動が悪化する。それ故、一方では有利な最終特性が保証された状態で維持され、他方ではプラントの汚染が可能な限り少なくなり、更には、製造速度、巻回性及びプロセス安全性が最適な状態に維持されるかまたは最適化され得るように、滑剤を使用した時のフィラメントまたはスパンボンド不織布を調節したいという要望がある。
【0006】
エンドレスフィラメントからのスパンボンド不織布の製造では、軟化性添加剤または滑剤をフィラメントの熱可塑性プラスチック中に混入することは原則的に既に知られている。この際、いわば、フィラメント中への滑剤の均一な導入が行われる。しかし、これらの既知の処置は、フィラメントからのスパンボンド不織布の生成の間に添加剤が蒸発し得、そしてプラントを汚染するかまたはプラントの特に通気部品中に沈積するという欠点を有する。これらの負の効果は当然望ましくない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【文献】“Schlosser U.,Bahners T.,Schollmeyer E.,Gutmann J.:Griffbeurteilung von Textilien mittels Schallanalyse,Melliand Textilberichte 1/2012,43-45
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
これに対して、本発明は、滑らかで柔軟な手触りだけでなく、十分な強度も特色とし、かつ簡単にかつ効率よく製造でき、及び中でも柔軟化添加剤の蒸発または滑剤の蒸発を大幅に減少することができる、冒頭に述べたタイプのスパンボンド不織布を提供するとう技術的課題に基づくものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の技術的課題を解決するために、本発明は、第一の実施形態(A)では、熱可塑性プラスチックでできたエンドレスフィラメントからなるスパンボンド不織布であって、この際、前記エンドレスフィラメントは、コア-シース構成を持つ多成分フィラメント、特に二成分フィラメントとして構成され、前記フィラメントは少なくとも一種の滑剤を含み、前記滑剤は、排他的にまたは少なくとも90重量%、好ましくは少なくとも95重量%の割合でコア成分中に存在し、及びコア成分とシース成分との間の質量比は40:60~90:10、好ましくは60:40~85:15、特に65:35~80:20、特に好ましくは65:35~75:25である、スパンボンド不織布を教示するものである。滑剤の割合は、全フィラメントを基準にして、250~5500ppm、好ましくは500~5000ppm、特に700~3000ppm、特に好ましくは700~2500ppmに相当する。第一の実施形態Aの特に好ましい実施態様において、コア成分とシース成分との間の質量比は第一の実施形態では67:33~73:27、好ましくは70:30または約70:30である。
【0010】
上記の技術的課題の解決のために、本発明は更に、第一の実施形態(B)によれば、熱可塑性プラスチックでできたエンドレスフィラメントからなるスパンボンド不織布であって、前記エンドレスフィラメントが、コア-シース構成を持つ多成分フィラメントとして、特に二成分フィラメントとして構成されており、前記フィラメントは少なくとも一種の滑剤を含み、前記滑剤の割合が、全フィラメントを基準として250~5500ppm、好ましくは500~5000ppm、特に700~3000ppm、非常に好ましくは700~2500ppmであり、前記滑剤は、排他的にまたは少なくとも90重量%、好ましくは少なくとも95重量%の割合でコア成分中に存在し、及び前記スパンボンド不織布の表面は、スパンボンド不織布生成から150分間までの期間で、フィラメントの横断面に関して滑剤の均一な分布を持つ他の点では同じ条件下に製造された比較用スパンボンド不織布の表面よりも硬質となり、特に3%超、とりわけ3.2%、好ましくは少なくとも3.3%、特に少なくとも3.5%、より硬質となり、及び前記スパンボンド不織布の表面は、96時間後に、比較用スパンボンド不織布と同じ硬度もしくは柔軟度またはほぼ同じ硬度もしくは柔軟度を有し、及びこの際、前記硬度は、とりわけ最大で3%、好ましくは最大で2.9%、特に最大で2.8%異なっている、スパンボンド不織布を教示するものである。とりわけ、第一の実施形態Bの枠内において、コア成分とシース成分との間の質量比は40:60~90:10、有利には60:40~85:15、特に65:35~80:20、好ましくは65:35~75:25、非常に好ましくは67:33~73:27である。
【0011】
ここで及び以下において、請求項1及び2両方の教示は、本発明の第一の実施形態と称し、そして請求項1による教示は第一の実施形態Aと、請求項2による教示は第一の実施形態Bと称する。以下に一般的に第一の実施形態に言及する場合には、これは第一の実施形態Aも、第一の実施形態Bも意味する。
【0012】
第一の実施形態の非常に推奨される実施態様では、シース成分は、滑剤不含にまたは実質的に滑剤不含に形成される。第一の実施形態では、シースは、コア中に存在する滑剤に対していわば移行阻止手段として働き得る。
【0013】
上記技術的課題を解消するために、本発明は、更に、第二の実施形態(A)によれば、熱可塑性プラスチックでできたエンドレスフィラメントからなるスパンボンド不織布であって、前記エンドレスフィラメントが、コア-シェル構成を持つ多成分フィラメント、特に二成分フィラメントとして構成され、この際、前記フィラメントは少なくとも一種の滑剤を含み、滑剤の割合は、全フィラメントを基準にして250~5500ppm、とりわけ500~5000ppm、好ましくは700~3000ppm、特に好ましくは700~2500ppmであり、及び前記シース成分中には、更に、シース成分中での滑剤の移行速度を低下させる少なくとも一種の添加物質が含まれている、スパンボンド不織布を教示するものである。
【0014】
更に、上記の技術的課題の解決のために、本発明は、第二の実施形態(B)によれば、熱可塑性プラスチックでできたエンドレスフィラメントからなるスパンボンド不織布であって、前記エンドレスフィラメントは、コア-シース構成を持つ多成分フィラメントとして、特に二成分フィラメントとして構成されており、前記フィラメントは少なくとも一種の滑剤を含み、前記滑剤の割合が、全フィラメントを基準として250~5500ppm、とりわけ500~5000ppm、好ましくは700~3000ppm、非常に好ましくは700~2500ppmであり、前記滑剤は、好ましくはシース成分中に存在し、前記シース成分中での滑剤の移行速度を低下させる少なくとも一種の添加物質がシース成分中に含まれており、前記スパンボンド不織布の表面は、スパンボンド不織布生成から150分間までの期間で、滑剤の移行速度を低下させる添加物質を含まない、他の点では同じ条件下に製造された比較用スパンボンド不織布の表面よりも硬質であり、特に3%超、とりわけ少なくとも3.2%、好ましくは少なくとも3.3%、就中少なくとも3.5%、より硬質であり、及び前記スパンボンド不織布の表面は、スパンボンド不織布生成から96時間後に、前記比較用スパンボンド不織布と同じ硬度もしくは柔軟度またはほぼ同じ硬度もしくは柔軟度を有し、及びこの際、前記柔軟度は、好ましくは最大で3%、とりわけ最大で2.9%、就中最大で2.8%異なっている、スパンボンド不織布を教示するものである。第一の実施形態B及び第二の実施形態Bの枠内において、該スパンボンド不織布の表面が、スパンボンド不織布生成から150分後までの期間で、比較用スパンボンド不織布の表面よりも3%等超、より硬質であるということは、特に、スパンボンド不織布生成から最初の150分間内に、この公差限界が超えられる少なくとも一つの時点があることを意味する。原料の選択に応じて並びに滑剤及び滑剤の割合に応じて、これは、公差限界が超えられるまで例えば120分間の期間であることができる。しかし、他の条件では、15分後には既に公差限界が超えられ得るか、または公差限界の超過は、全期間にわたってまたは本質的に全期間にわたって起こる。この際、例えば、シース原料に依存する及び/またはフィラメントのシース割合に依存する移行速度が重要である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
ここで選択される150分間までの期間は、一方では以下に記載する使用される測定機器に適合され、それ故、その他の点では、ジャンボロールを巻き戻しできるようになる典型的な時間も考慮される。スパンボンドの間の直接の硬度測定は、この選択された方法を用いては可能ではない。このような測定が約15分間続き、それ故、連続的に進行できないことも本発明の枠内である。しかし、上記の期間は、あまり長すぎないように選択することもでき、それによって、なおも製造中の決定支援として役立ち得る。全体として、上記期間は紡糸挙動(プラントの清浄さ)及び巻回挙動に関しての決定を可能とする。
【0016】
独立形式請求項4及び5による解決策は、以下に、本発明の第二の実施形態と称し、ここで、請求項4による教示は第二の実施形態Aと称し、そして請求項5による教示は第二の実施形態Bと称する。第二の実施形態に一般的に言及するときは、請求項4による教示も、請求項5による教示も意図される。有利には、第二の実施形態(A及びB)の枠内において、コア成分とシース成分との間の質量比は40:60~90:10、とりわけ60:40~85:15、特に65:35~80:20、好ましくは65:35~75:25、非常に好ましくは67:33~73:27である。
【0017】
不織布表面のスパンボンド不織布の硬度(特に請求項2及び5を参照)は、TSA測定装置(ドイツ連邦共和国、ライプチヒ在のEmtec社)を用いて、約6550Hzでの音量/周波数スペクトルのピーク最大における音量として決定されることは本発明の枠内である。このTSA測定装置は、製品特性を「TS7」値として出力する。このTS7値は、不織布の柔軟さと関係する。粗い/ざらざらしたフィラメントからなるスパンボンド不織布は、比較的滑らか/柔軟なフィラメントからなる匹敵するスパンボンド不織布と比べると、より高いTS7値を有する。本発明では、硬度または音量の測定は、スパンボンド不織布生成から150分間までの期間で、スパンボンド不織布の表面について行われる。この際、スパンボンド生成という表現は、堆積場上にまたは堆積スクリーンベルト上にそれらを紡糸した後のフィラメントの堆積を意味する。すなわち、上記測定は、堆積場上にまたは堆積スクリーンベルト上にフィラメントを堆積してから150分間までの期間で行われる。上記測定が、不織布(特に堆積場または堆積スクリーンベルト上の不織布)に対して行われる全ての予固定化及び/または固定化措置の後に行われることは本発明の枠内である。この際、これは、特に、彫刻ロールを備えたカレンダを用いた固定化でもある。すなわち、硬度の測定はこの固定化の後に行われるが、但し、堆積場または堆積スクリーンベルト上にフィラメントを堆積してから150分間までの期間内に行われることが条件である。有利には、硬度の測定は、スパンボンド不織布をロールに巻回する前またはスパンボンド不織布をロールに巻回した後に行われるが、この測定が、フィラメントを堆積してから150分間までの期間中に行われることが常に条件となる。
【0018】
ドイツ連邦共和国ライプチヒ在のEmtec社の慣用の測定装置TSA(ティッシュー・ソフトネス・アナライザー(Tissue Softness Analyzer))を用いて硬度を測定することは本発明の枠内である。この際、以下の標準方法を行うことが好ましい。
- 分析すべき不織布の試験片を固定して取り付ける、
- 八つのプレートを装備した標準ロータを不織布表面上まで下げる。不織布試料上に対するロータの力が100mNの時に、ロータは2/秒の速度で回転する。
- この回転によって、不織布試料またはロータが振動/ノイズを起こすようになり、そしてマイクロフォンがこの応答を記録する。測定されたノイズは、フーリエ変換を用いて、サンプリング周波数スペクトルに変換する。
- 約6550Hz辺りの範囲中の局所的な音量最大の音量が、測定装置から「TS7」として出力される。
【0019】
このサンプリング周波数スペクトルは、不織布表面の全体の構造に依存し、そして音量の振幅は、中でも、不織布構造の高さや、不織布表面またはフィラメント表面の硬度にも依存する。この場合、表面トポロジーなどの特性は1000Hz以下の範囲で、柔軟さは6550Hz辺りの範囲で明らかとなる。TS7値は、本発明の枠内(特に請求項2及び5の枠内)での硬度の特徴的な測定値として使用される。すなわち、硬度の違いに関して本明細書に記載の百分率のデータはこの値に関するものである。合目的的には、比較用不織布の音量または硬度を100%と設定し、そして本発明によるスパンボンド不織布の音量または硬度に関してそれからの相違を百分率で決定する。硬度または柔軟度についてのこのような測定方法の説明は、その他の点は、“Schlosser U.,Bahners T.,Schollmeyer E.,Gutmann J.:Griffbeurteilung von Textilien mittels Schallanalyse,Melliand Textilberichte 1/2012,43-45(非特許文献1)”に記載されている。
【0020】
本発明によるスパンボンド不織布の製造の枠内では、フィラメントは、堆積場に、特に堆積スクリーンベルト上に堆積する。硬度の測定を、堆積場または堆積スクリーンベルトから移動したスパンボンド不織布の表面について行うことは本発明の枠内である。不織布ウェブまたはスパンボンド不織布を、彫刻ロールを備えたカレンダを用いて固定する場合は、硬度の測定は、有利には、彫刻ロールの方を向いているスパンボンド不織布表面について行われ、好ましくはこの表面は、堆積場または堆積スクリーンベルトとは反対側のスパンボンド不織布表面である。一方では本発明によるスパンボンド不織布が、そして他方では比較用不織布が、同じ条件下に製造され、特に同じプラントまたはスパンボンドプラントで製造され、そして同じ堆積場または同じ堆積スクリーンベルト上に堆積することは本発明の枠内である。更に、一方ではスパンボンド不織布が及び他方では比較用不織布が、同じ様に固定され、特に同じカレンダなどを用いて固定されること、並びに一方ではスパンボンド不織布の及び他方では比較用不織布のフィラメントが同じ繊度(Titer)を有することは本発明の範囲内である。
【0021】
全ての実施形態(第一及び第二の実施形態)について、以下の条件が該当する:
コア成分中に及び/またはシース成分中に、(好ましくはそれぞれ相溶性の)原料混合物を使用することができる。コア-シース構成とは、本発明の枠内では、シース成分が、コア成分を完全にまたは実質的に完全に取り囲んでいることを意味する。該スパンポンド不織布のエンドレスフィラメントは、本発明の全ての実施形態において、好ましくは1.0~2.5デニールの繊度、特に好ましくは1.2~2.2デニールの繊度を有する。
【0022】
コア-シース構成が、偏心的なコア-シース構成であり得ることは、本発明の枠内、特に実施形態Bの枠内の範囲である。この時、好ましくは、原料またはプラスチック成分の適当な選択によって、螺旋状に巻縮したフィラメントが生じる。
【0023】
第一及び第二実施形態の枠内において、コア成分及び/またはシース成分は、少なくとも90重量%、とりわけ少なくとも95重量%、好ましくは少なくとも96重量%の、「ポリオレフィン、ポリオレフィンコポリマー、ポリオレフィンとポリオレフィンコポリマーとの混合物」の群からの少なくとも一種の成分を含むことが推奨される。この際、コア成分及び/またはシース成分は、少なくとも90重量%、とりわけ少なくとも95重量%、好ましくは少なくとも96重量%の「ポリプロピレン、ポリプロピレンコポリマー、ポリプロピレンとポリプロピレンコポリマーとの混合物」の群からの少なくとも一種の成分を含むことが特に好ましい。有利には、コア成分及び/またはシース成分は、本質的にポリオレフィンからなる、及び/または本質的にポリオレフィン-コポリマーからなる、及び/または本質的にポリオレフィンとポリオレフィン-コポリマーとの混合物からなる。第一及び第二実施形態の非常に推奨される実施態様によれば、コア成分及び/またはシース成分は、本質的にポリプロピレンからなる、及び/または本質的にポリプロピレン-コポリマーからなる、及び/または本質的にポリプロピレンとポリプロピレン-コポリマーとの混合物からなる。上記の実施態様における「本質的に」という限定は、コア成分中及び/またはシース成分中に、添加剤、特に滑剤、場合により及び滑剤の移行速度を低下させる添加物質が含まれる状況を考慮したものである。好ましくは、添加剤(滑剤、場合により滑剤の移行速度を低下させる添加物質、並びに場合により存在する他の添加剤、例えば着色添加剤)の割合は、全フィラメントを基準にして、最大10重量%、有利には最大8重量%、好ましくは最大6重量%、非常に好ましくは最大5重量%である。本発明の枠内で使用されるポリプロピレン-コポリマーは、その他の点では一つの有利な態様によればエチレン-プロピレンコポリマーとして設計される。推奨されるのは、使用されるエチレン-プロピレンコポリマーが、1~6%、好ましくは2~6%のエチレン含有率を有することである。好ましく使用されるポリプロピレンコポリマーは、19~70g/分、特に20~70g/分、とりわけ25~50g/分のメルトフローレート(MFI)を有することが推奨される。上記ポリプロピレンコポリマーが、2.5~6、好ましくは3~5.5、非常に好ましくは3.5~5の分子量分布またはモル質量分布(M/M)を有することが有効であることが判明している。
【0024】
本発明の第一及び第二の実施形態の推奨される実施態様の一つは、コア成分が、本質的にホモポリオレフィンからなり、特に本質的にホモポリプロピレンからなることを特徴とする。コア成分が、少なくとも80重量%、とりわけ少なくとも85重量%、好ましくは少なくとも90重量%、特に好ましくは少なくとも95重量%のホモポリオレフィン、特にホモポリプロピレンを含むことが有効であることが判明している。第一及び第二の実施形態の推奨される実施形態の一つは、更に、シース成分が本質的にポリオレフィンコポリマーからなり、特に本質的にポリプロピレンコポリマーからなり、及び/または本質的に、ポリオレフィンもしくはホモポリオレフィンとポリオレフィンコポリマーとの混合物からなり、特に本質的に、ポリプロピレンもしくはホモポリプロピレンとポリプロピレンコポリマーとの混合物からなることを特徴とする。
【0025】
本発明の第一の実施形態でも、第二の実施形態でも、好ましくは、以下に特定する物質が滑剤として使用される。有利には、滑剤としては、少なくとも一種の脂肪酸誘導体、好ましくは「脂肪酸エステル、脂肪酸アルコール、脂肪酸アミド」の群からの少なくとも一種の物質が使用される。本発明の推奨される実施態様の一つは、少なくとも一種のステアレート、特にグリセリンモノステアレート、及び/または脂肪酸アミド、例えばエルカ酸アミド及び/またはオレイン酸アミドを滑剤として使用することを特徴とする。例えば、ジステアリルエチレンジアミドの使用も可能である。滑剤マスターバッチとして、実証された実施態様の一つでは、Constab社のエルカ酸アミド製品SL05068PPが使用される。
【0026】
以下に記載の実施態様は、特に第一の実施形態AまたはBに該当する:
本発明の第一の実施形態の実施態様の一つは、本発明によるスパンボンド不織布のエンドレス繊維のコア成分、シース成分の両方とも、ホモポリオレフィン、好ましくはホモポリプロピレンからなるかまたは本質的にこれらからなることを特徴とする。第一の実施形態のこれらの実施態様では、コア成分とシース成分との間の質量比は、有利には40:60~90:10、好ましくは67:33~75:25である。第一の実施形態では、前記少なくとも一種の滑剤はコア成分のみと混合されるか、または前記滑剤は、少なくとも95重量%、好ましくは少なくとも98重量%がコア成分中に存在するようにすることが推奨される。これらの実施態様においては、全エンドレスフィラメント中に、滑剤が250~5000ppm、好ましくは1000~5000ppmの割合または平均割合で存在することが推奨される。コア-シース構成を持つフィラメントのより高いシース割合は、コアからの滑剤の移行をより効果的に妨げ、他方で、最終効果のためには、潤滑剤の割合は常に更に高める必要がある。この場合、例えば使用した押出機によってまたはリサイクル材料のコアへの再利用によって、コア割合の下限が与えられる。
【0027】
本発明の第一の実施形態の更に別の実施態様の一つは、コア成分が、ホモポリオレフィンから、特にホモポリプロピレンからなるかまたは本質的にこれらからなること、及びシース成分が、ホモポリオレフィン、特にホモポリプロピレンと、ポリオレフィンコポリマー、特にポリプロピレンコポリマーとの混合物からなるかまたはこれらから本質的になることを特徴とする。この場合、有利な設計の一つでは、コア成分中のホモポリオレフィン、特にホモポリプロピレンは、シース成分中のホモポリオレフィンまたはホモポリプロピレンと同一である。好ましくは、シース成分中のホモポリオレフィン、特にホモポリプロピレンの割合は、(シース成分を基準にして)40~90重量%、とりわけ70~90重量%、好ましくは75~85重量%である。有利には、シース成分中のポリオレフィンコポリマーまたはポリプロピレンコポリマーの割合は、(シース成分を基準にして)50~10重量%、とりわけ30~10重量%、好ましくは25~15重量%である。この際使用されるポリオレフィンコポリマー、特にポリプロピレンコポリマーは、5~30g/10分、とりわけ5~25g/10分のメルトフローレート(MFI)を有することが推奨される。このメルトフローレート(MFI)は、本発明の枠内ではISO1133に従い測定され、詳しくはポリプロピレン及びポリプロピレンコポリマーについては230℃及び2.16kgで測定される。上記ポリオレフィンコポリマーまたはポリプロピレンコポリマーは、とりわけ2~20%、好ましくは4~20%のエチレン含有率を有する。これらの実施態様の上記ポリオレフィンコポリマーまたはポリプロピレンコポリマーは、好ましくは、炭素原子に関して2~6%の範囲の平均C2含有率を特徴とする。とりわけ、ポリプロピレンコポリマーとしては、Exxon Vistamaxx 3588及び/またはExxon Vistamaxx 6202、または類似の特性を持つポリプロピレンが使用される。上記ポリプロピレンコポリマーは、上記のデータに応じて、シース成分のためにホモポリオレフィンまたはホモポリプロピレンと混合される。ホモポリプロピレンについての好ましいデータは、更に以下に記載する。
【0028】
本発明によるスパンボンド不織布の製造の間は、使用した熱可塑性プラスチックに関して、リサイクル材料を再利用して作業される。この際、有利には、特に本発明の第一の実施形態では、リサイクル材料流は、排他的にまたは主として、コア成分のために使用される。この時、滑剤が負荷された戻されたリサイクル材料は、コア成分のみに戻して、シース成分が滑剤不含であるかまたは本質的に滑剤不含の状態に維持されることが保証される。この時、リサイクル材料流中にコポリマーを含むリサイクル材料再利用の場合には、このコポリマーもコア成分中に移行される。それにもかかわらず、シースは滑剤不含にまたは本質的に滑剤不含の状態に維持される。
【0029】
本発明の第一の実施形態では、前記の少なくとも一種の滑剤は、排他的にまたは大部分がコア成分中に存在する。以下には、本発明の第二の実施形態をより詳しく説明する。本発明の第二の実施形態Aの実施態様の一つは、滑剤がシース成分中に存在し、及び本発明の一設計では、シース成分のみに含まれることを特徴とする。しかし、原則的に、本発明の第二の実施形態Aでは、滑剤は、コア成分中にもまたはコア成分中のみにも存在できる。第二の実施態様Bによれば、滑剤は好ましくはシース成分中に存在する。この際、一つの設計によれば、滑剤はシース成分中にのみ含まれていることができる。しかし、原則的に、該第二の実施形態Bでは、滑剤はコア成分中にも存在することができる。
【0030】
本発明の第二の実施形態では、コア成分は、ホモポリオレフィンから、特にホモポリプロピレンからなることができるかまたはこれらから本質的になることができる。他の実施態様の一つでは、この第二の実施形態ではコア成分は、少なくとも75重量%、とりわけ少なくとも80重量%、好ましくは少なくとも85重量%、特に好ましくは少なくとも90重量%のホモポリオレフィン、特にホモポリプロピレンを含む。
【0031】
本発明の第二実施形態の推奨される実施態様の一つは、シース成分がまたは滑剤含有シース成分が、ポリオレフィンコポリマー、特にポリプロピレンコポリマーからなるかまたは本質的にこれらからなることを特徴とする。この際、シース成分中には滑剤が含まれ得ることまたは含まれていること、及び(追加的に)滑剤の移行速度を低下させる添加物質が含まれていることを考慮すべきである。第二の実施形態では、好ましくは、20~70g/10分、とりわけ25~50g/10分のメルトフローレート(MFI)を有するポリオレフィンコポリマーまたはポリプロピレンコポリマーがシース成分に選択される。有利には、エチレン含有率が1~6%、好ましくは2~6%のエチレン-プロピレンコポリマーが使用される。該シース成分に選択されるポリオレフィンコポリマーまたはポリプロピレンコポリマーが、狭いモル質量分布を特徴とし、及びとりわけ、2.5~6、好ましくは3~5.5、非常に好ましくは3.5~5の分子量分布またはモル質量分布(M/M)を特徴とするものとすることが推奨される。分子量分布M/Mは、本発明の枠内では、ゲル透過クロマトグラフィ(GPC)に、詳しくは、ISO16014-1:2003、ISO16014-2:2003、ISO16014-4:2003及びASTM D6474-12に従う。生核剤を含むかまたは他のやり方で高い結晶化速度のために改変されたランダム-ポリプロピレンコポリマー、例えばBorealis RJ377MOまたはBasell Moplen RP24Rを使用することが推奨される。この最後に挙げたランダム-ポリプロピレン-コポリマーは、例えば、30g/10分のメルトフローレート及び120℃のビカット温度(ISO306/A50,10N)を有する。
【0032】
本発明の第二の実施形態の枠内では、エンドレスフィラメントのシース成分中には、滑剤の移行速度を低下させる少なくとも一種の添加物質が使用される。この添加物質は、少なくとも一種の成核剤及び/または少なくとも一種のフィラーである。本発明の特に好ましい実施形態よれば、少なくとも一種の成核剤が使用される。有利には、該成核剤は、全フィラメントを基準にして500~2500ppmの割合でフィラメント中に含まれる。この際、「芳香族カルボン酸、芳香族カルボン酸の塩、ソルビトール誘導体、タルク、カオリン、キナクリドン、ピメリン酸塩、スベリン酸塩、ジシクロヘキシル-ナフタレンジカルボキサミド、有機ホスフェート、トリフェニル化合物、トリフェニルジチアジン」の群からの成核剤を使用することが特に有効であることが判明した。成核剤としては、ソルビトール類、例えばジベンジル-ソルビトール(DBS)または1,3:2,4-ビス-(p-メチルベンジリデン)ソルビトール(MDBS)または1,3:2,4-ビス(3,4-ジメチルベンジリデン)ソルビトール(DMDBS)を使用することができる。好ましい成核剤の一つは、芳香族カルボン酸の塩、特に安息香酸のアルカリ金属塩、例えば安息香酸ナトリウムである。
【0033】
シース成分の核形成、特に少なくとも一種の成核剤を用いたシース成分のポリオレフィンコポリマーまたはポリプロピレンコポリマーの核形成によって、シース中の滑剤の移行速度が低下し、それによって、上記の技術的課題の解決に関連して、シース成分中での滑剤の問題のない使用が可能になる。シース成分中での少なくとも一種のフィラーも、滑剤の移行速度を低下させ得る。この際、フィラーとしては、好ましくは少なくとも一種の金属塩、特に好ましくは「二酸化チタン、炭酸カルシウム、タルク」の群からの少なくとも一種の物質が使用される。
【0034】
本発明の第二の実施形態の枠内では、シース成分のためのポリプロピレンコポリマーとしては、有利には、狭いモル質量分布を有するランダム-ポリプロピレンコポリマーを使用できる。この場合、射出成形の部門で既知でありそしてしばしば帯電防止剤及び成核剤を含むポリプロピレンコポリマーも特に考慮される。このような帯電防止剤(例えば、グリセリンモノステアレートなどの脂肪酸エステルや、エトキシル化脂肪アミンもしくはアルキルアミンも)は、多くの場合に滑剤として既に十分であり得、そして本願特許請求の範囲に規定の滑剤量内に含まれるであろう。コポリマーからの既に存在する割合が十分でない場合には、任意選択的に、コア成分及び/またはシース成分中に追加的な滑剤を計量添加できる。シース成分のコポリマーは、ホモポリプロピレンと混合できる。この混合物の粘度が、ホモポリプロピレンの粘度よりも小さいことは本発明の枠内である。以下の説明もまた、本発明の第一の実施形態にも、第二の実施形態にも関連することである。本発明の第一の実施形態または第二の実施形態においてホモポリプロピレンが使用される場合には、これは好ましくは以下の特性を持つホモポリプロピレンである。メルトフローレート(MFI)は、有利には17~37g/10分、好ましくは19~35g/10分である。該ホモポリプロピレンが、3.6~5.2の範囲、特に3.8~5の範囲の狭いモル質量分布を有することが推奨される。モル質量分布の測定は、既に先に記載した通りであった。本発明の好ましい実施形態によれば、ホモポリプロピレンとしては、以下の製品の少なくとも一つが使用される: Borealis社のHF420FB(MFI19)、HG455FB(MFI25)、HG475FB(MFI25)、Basell社のMoplen HP561R(MFI25)及びExxon社の3155 PP(MFI35)。
【0035】
第一の実施形態でも第二の実施形態においても、就中特に推奨される本発明の実施形態によれば、コア成分にも、シース成分にも、ホモポリプロピレン及び/またはポリプロピレンコポリマー、特にエチレン-プロピレンコポリマー及び/またはこれらの混合物が使用される。前記PP材料が、本発明の枠内で就中特に有効であることが判明した。
【0036】
第一の実施形態でも第二の実施形態においても、本発明によるスパンボンド不織布はスパンボンド法を用いて製造されることは本発明の枠内である。この際、先ず、コア-シース構成を持つ多成分フィラメントまたは二成分フィラメントを、少なくとも一つの紡糸口金を用いてエンドレスフィラメントとして紡糸し、次いでこれらのエンドレスフィラメントを少なくとも一つの冷却装置中で冷却し、そしてそうしてから、これらのエンドレスフィラメントは、フィラメントの延伸のための延伸装置を通過する。延伸されたフィラメントは、堆積場、特に堆積スクリーンベルト上にスパンボンド不織布として堆積される。
【0037】
これに関連して、本発明の特に推奨される実施形態の一つは、前記冷却装置と前記延伸装置との連結機械を閉鎖系連結機械として構成し、この際、冷却装置中への冷却用空気の供給は除いて、該閉鎖系連結機械中への他の空気供給は行われないことを特徴とする。この閉鎖系の設計は、本発明の枠内において、本発明によるスパンボンド不織布の製造において特に有効であることが判明した。
【0038】
有利には、延伸装置と堆積場または堆積スクリーンベルトとの間には、少なくとも一つのディフューザーが配置される。延伸装置から排出されるエンドレスフィラメントは、前記ディフューザー中に通して案内し、そして堆積場または堆積スクリーンベルト上に堆積する。本発明の推奨される実施態様の一つは、前記延伸装置と前記堆積場との間に、少なくとも二つのディフューザー、好ましくは二つのディフューザーがフィラメントの流れ方向で連続して配置されることを特徴とする。有利には、両ディフューザーの間には、周囲空気の導入のために少なくとも一つの二次吸気導入ギャップが存在する。少なくとも一つのディフューザーまたは少なくとも二つのディフューザー及び二次空気導入ギャップを備えた該実施形態は、同様に、本発明によるスパンボンド不織布の製造に関して特に有効であることが判明した。
【0039】
フィラメントを堆積してスパンボンド不織布とした後、このスパンボンド不織布を固定し、好ましい実施形態では予備固定し、次いで最終固定する。スパンボンド不織布の予備固定または固定は、有利には少なくとも一つのカレンダを用いて行われる。この際、好ましくは、二つの互いに相互作用するカレンダロールが使用される。推奨される実施形態の一つによれば、これらのカレンダロールのうちの一つは加熱されるように設計される。該カレンダの彫刻面は、有利には8~20%、例えば12%である。本発明の枠内において、一方では本発明によるスパンボンド不織布でも他方では比較用不織布においても柔軟度が確認される場合には、両不織布においてスパンボンド不織布の同じ予備固定及び固定が行われる。
【0040】
本発明は、本発明によるスパンボンド不織布が最適な滑らかで柔軟な手触りを有し、それにもかかわらず、高い強度を有するという知見に基づくものである。その結果、良好な引っ張り強度を有する柔軟なスパンボンド不織布が生じる。これは、中でも、本発明によるスパンボンド不織布のエンドレスフィラメントのコア成分及び/またはシース成分のためのポリプロピレンまたはポリプロピレンコポリマーの好ましい使用に該当する。更に、既知の解決策と比べて、フィラメントからの滑剤の蒸発を効果的に減少させることができ、そしてそれによって、プラント中への望ましくない堆積が避けられることが重要である。それ故、既知の手段と比べてプラントの清潔さを高めることができ、それによって、プラントの効率及び利用性も高めることができる。特に、プラントの運転時間を長めることができる。この点において、本発明は、フィラメント中への滑剤の不均一な導入が、本発明の技術的課題の解決に効果的に貢献するという知見にも基づいている。以下の実施例で更に証明されるように、プラクチスから知られる手段と比較すると、本発明によるスパンボンド不織布の生成及び特に該スパンボンド不織布の固定化では、より少ないエネルギー消費量、特により低いカレンダ温度において、不織布の同等の強度を達成することができる。本発明に従い達成されるスパンボンド不織布の高い強度に基づいて、エンドレスフィラメントの製造において、特に他の原料の組み合わせ、例えばPP/PEと比べて材料を節約することもできる。更に、本発明によるスパンボンド不織布の製造では、製造プロセスへの成分の簡単なリサイクルを行うことができる。使用した原料の相溶性に基づいて、リサイクル材料を高い割合で問題なく再使用することができる。また、それによって、例えばPP/PEの組み合わせに対して、相当なコスト上の利点が生じる。その結果、比較的に低いコストで実現できる柔軟で滑らかでかつ引っ張り強度の強いスパンボンド不織布が生じる。
【実施例
【0041】
本発明を、以下の実施例に基づいてより詳しく説明する。
【0042】
以下では、コア-シース構成を持つ二成分フィラメントからなるスパンボンド不織布を、上記のスパンボンド法に従い製造した。この際、両成分(コア及びシース)のための材料としては、ホモポリプロピレン及びポリプロピレンコポリマーを使用した。堆積スクリーンベルト上に堆積したスパンボンド不織布は、全ての実施例において、彫刻U5714A(12%彫刻面、丸い彫刻先端、25Fig/cm)を有するカレンダを用いて固定した。全ての実施例のフィラメントの繊度は約1.6~1.8デニールであった。全てのサンプルは、紡糸装置中で同じまたは類似の処理量で製造した。
【0043】
比較例:
単成分フィラメントをホモポリプロピレン(Borealis社、MFI25のHG455FB)を製造した。カレンダ加工を、カレンダロールの表面温度を約148℃として行った。製造されたスパンボンド不織布は良好な強度を有していたが、以下の実施例と比べると満足な柔軟な手触りを持っていなかった。
【0044】
実施例1:
二成分フィラメントでできたスパンボンド不織布を本発明の第一の実施形態に従い製造した。この際、コア成分も、シース成分も、軟質の追加ポリプロピレンとして出光社の「L-MODU X901S」を8%含むホモポリプロピレン(Borealis社のMFI25のHG455FB)から構成した。コア成分とシース成分との間の質量比は70:30であった。コア中にのみ、エルカ酸アミドをベースとするConstab社の滑剤SL05068PPを含ませた。滑剤の含有率は、全フィラメントに対して2000ppmであった。このスパンボンド不織布を、カレンダロールの表面温度を約142℃としてカレンダ加工した。このエンドレスフィラメントから生成したスパンボンド不織布は、一日間の堆積時間の後に滑らかに柔軟な手触りを有していた。
【0045】
実施例2:
この実施例のスパンボンド不織布も、本発明の第一の実施形態に従い生成した。このスパンボンド不織布の二成分フィラメントは、コア成分中にも、シース成分中にも、軟質の追加コポリプロピレン(Exxon社のVistamaxx VM6202)10重量%を含むホモポリプロピレン(Basell社のMFI25のMoplen HP561R)を含んでいた。コア成分とシース成分との間の質量比はこの場合も70:30であった。滑剤としては、この場合も、エルカ酸アミドをベースとするConstab社のSL05068PPを使用した。この滑剤はコア中にのみ含まれ、そして滑剤の含有率は全フィラメントを基準にして2500ppmであった。このスパンボンド不織布のカレンダ加工は、カレンダロールの表面温度を132℃として行った。生成されたフィラメントの手触りは、最初はざらざらしたものと等級づけせざるを得なかったが、一日間の堆積時間の後に滑らかで柔軟な手触りが現れた。これは、滑剤の遅延された移行を示す。
【0046】
実施例3:
このスパンボンド不織布は、本発明の第二の実施形態に従い生成した。二成分フィラメントは、コア中にはホモポリプロピレン(Borealis社のHG475FB)を、シース中にはポリプロピレンコポリマー(Basell社のMFI30のMoplen RP248R)を含んでいた。コア成分とシース成分との間の質量比は70:30であった。シースのポリプロピレンコポリマー中には、成核剤及び帯電防止剤が含まれる。このスパンボンド不織布のカレンダ加工は、カレンダロールの表面温度を121℃として行った。製造されたスパンボンド不織布の手触りは、最初はざらざらしたものと等級づけせざるを得なかったが、一日間の堆積時間の後に滑らかで柔軟な手触りが現れた。この場合も、これは、滑剤またはここでは帯電防止剤の遅延された移行を示す。
【0047】
実施例4:
スパンボンド不織布は、本発明の第二の実施形態に従い生成した。この二成分フィラメントのコア成分は、ホモポリプロピレン(Borealis社のMFI25のHG475FW)から構成され、そしてシース成分は、ポリプロピレンコポリマー(Basell社のMFI30のMoplen RP248R)から構成された。コア成分とシース成分との間の質量比は50:50であった。ポリプロピレンコポリマー中には、成核剤及び帯電防止剤が含まれていた。固定化は、121℃の表面温度を有するカレンダロールを用いて行った。製造されたスパンボンド不織布の手触りは、最初はざらざらしたものと等級づけされ、そして一日間の堆積時間の後に滑らかで柔軟な手触りが現れた。この場合も、これは、滑剤として使用されたステアレートの遅延された移行を示す。実施例3と比べて、ホモポリプロピレンと比べてより多い割合のポリプロピレンコポリマーに起因する不織布の低下した強度(以下の表参照)が生じる。
【0048】
実施例5:
このスパンボンド不織布の二成分フィラメントは、コア中にホモポリプロピレン(Borealis社のMFI25のHG475FB)を、シース中にポリプロピレンコポリマーを含んでいた。コア成分とシース成分との間の質量比は70:30であった。使用されたポリプロピレンコポリマーは上記コポリマーMoplen RP248Rと同等であるが、成核剤、帯電防止剤のいずれも含んでいない。スパンボンド不織布の固定化は、121℃の表面温度を有するカレンダロールを用いて行った。三日間の堆積時間の後でも、このように製造されたスパンボンド不織布は、実施例3の滑らかで柔軟な手触りを達成しなかった。これは、ポリプロピレンコポリマーの使用だけでは十分ではなく、そして本発明の特性の実現のためには移行性滑剤が必要であることを示している。
【0049】
以下の表には、上記の例について、スパンボンド不織布の坪量をg/mで、並びに機械方向(MD)での及び機械方向に対して横方向(CD)での強度を詳しくはN/5cmで提示する。この際、強度は、EDANA ERT20.2-89に従い、100mmのクランプ長さ及び200mm/分の引き裂き速度で測定した。ここで、比較例Vを実施例1~5と比較する。
【0050】
【表1】
【0051】
強調されることは、実施例3~5のスパンボンド不織布は、比較例Vと比べると明らかにより低いカレンダ温度で固定されたということである。それにもかかわらず、同等の強度が観察でき、そのため実施例3~5のスパンボンド不織布の製造ではエネルギー消費量を削減することができた。比較的低いカレンダ温度は、柔らかい手触りを援助し、それ故、追加的に計量添加するべき滑剤を減少させることを可能にする。
【0052】
実施例6:
この実施例は、硬度の相違にまたは記載した硬度測定に関連する相違に関する。本発明によるスパンボンド不織布S1及び比較用不織布V1について、ドイツ連邦共和国ライプチヒ在のEmtec社製の慣用の測定装置TSA(ティッシュー・ソフトネス・アナライザー)を用いて硬度を測定した。測定方法は既に先に説明した。測定ヘッドを、100mNの力で不織布表面上に押し圧した。ここでは、堆積スクリーンベルトとは反対側のスパンボンド不織布表面を測定した。測定ヘッドに八つの回転するまたは回転可能な測定シートを装備し、そして回転数は測定の間に2/秒に達した。前記測定装置を用いて、本発明によるスパンボンド不織布及び比較用不織布について、それぞれ音量/周波数スペクトルを記録し、そしてそれぞれの場合に、6550Hzでのピーク最大の音量(TS7値)を決定した。それぞれ5回の個別の測定を平均化した。これらの両スパンボンド不織布は、同じスパンボンド装置で製造し、同じやり方で予備固定または固定し(すなわち、同じ条件のカレンダ固定で)、そして両スパンボンド不織布は、1.8デニールの同じ繊度を持つフィラメントを含んだ。両スパンボンド不織布のフィラメント間の相違点は、各々のフィラメントに紡糸される前の紡糸プレートから出る際のポリマー溶融物中への滑剤の分配にある。本発明によるスパンボンド不織布S1では、フィラメントは、ホモポリプロピレンとポリプロピレンコポリマーとの均一な混合物から成っていた。該二成分フィラメントのための原料は、上記の実施例2と同様にして選択し、滑剤の割合は、全フィラメントを基準にして2000ppmであり、そして表面割合19%のカレンダ彫刻「U2888」を使用した。コアの割合は50%であった(コア成分とシース成分との間の質量比が50:50)。該二成分フィラメントのコア成分には、応じて4000ppmの滑剤を計量添加した。比較用不織布V1としては、同じ成分からなるフィラメントを使用したスパンボンド不織布を使用し、但しこの際、滑剤は、2000ppmの量でフィラメント断面にわたって均一に分配させた。両不織布S1及びV1について、音量値(TS7値)を求めた、詳しくはフィラメントを堆積スクリーンベルト上に堆積してからの三つの時点、すなわち15分間、2時間及び96時間後に求めた。本発明によるスパンボンド不織布S1及び比較用不織布V1の音量値は以下の表から明らかである:
【0053】
【表2】
【0054】
唯一の図面では、測定時点に依存した6550Hzでのピーク最大の音量値TS7(dBVrms)をプロットしている。左端には、フィラメントを堆積してから15分後に求めたTS7値を、その隣の右側には、フィラメントを堆積してから2時間後に決定したTS7値を示す。応じて、右端には、フィラメントを堆積してから4日後または96時間後に求めたTS7値を示す。実線は本発明のスパンボンド不織布S1のTS7値を特徴付けるものであり、波線は比較用不織布V1のTS7値を示す。ここで、本発明によるスパンボンド不織布S1は、比較用不織布V1と比べて、最初は(15分間後及び2時間後)明らかにより高い音量値を有し、それ故、より低い柔軟度またはより高い硬度を有することが分かる。それ故、本発明によるスパンボンド不織布S1のフィラメントでは、滑剤が本質的によりゆっくりとフィラメント表面に移動または移行するという結果になる。これに対し、比較用不織布では、比較的迅速な移行が起こり、そのため比較的時期尚早の高い柔軟度または低い硬度が既に達成される。両スパンボンド不織布の場合の15分間と2時間との間の曲線の上昇は、フィラメントを硬くする、ポリプロピレン混合物の第一の後結晶化によって説明される。曲線のこの形は、この原料の組み合わせにとって典型的なものと見なし得るだろう。予期された通り、滑剤の移行及び後結晶化の両方とも同時に柔軟さに影響を及ぼす。移行速度は、各々の結晶化度にも依存して変化し得るため、ここでは、普遍妥当の曲線の形はなく、これは原料特異的である。96時間後には、一方では本発明によるスパンボンド不織布S1及び他方では比較用不織布V1の音量値、それ故柔軟度または硬度は一致するかまたは殆ど一致する。本発明によるスパンボンド不織布におけるフィラメント表面への滑剤の遅延された移行は、フィラメントの生成の間に、フィラメントからの滑剤のガス放出が本質的に少なくなり、それ故、応じてプラント部品の汚染もより少なくなるという利点を有する。同時に、巻回挙動も有利に影響される。その他の点では、表中の百分率データからは、本発明によるスパンボンド不織布の音量値は、フィラメントを堆積してから最初の150分間内で、比較用不織布V1の音量値よりも3%超高くなり、応じて、本発明によるスパンボンド不織布S1の硬度は、比較用不織布V1の硬度よりも3%超高くなることが分かる。また、進行する後結晶化には依存せずに、完成したスパンボンド不織布がより柔軟になり、これは、滑剤の効果及び意義を証明するものであることも明らかである。
【0055】
実施例7:
実施例6と同じプラント及び固定化を用いて、原料の組み合わせを実施例5に相応して選択したが、但し滑剤を用いた。コア中には、ホモポリプロピレンであるMoplen HP561Rを使用し、シースには実施例5からのMFR30のランダム-CoPPを使用した。70:30のコア-シース比を調節し、そして実施例6と同じカレンダ温度を用いて加工した。本発明によるスパンボンド不織布S2では、2900ppmの滑剤をコア中のみに計量添加した。比較用不織布V2では、それぞれ2000ppmの滑剤をコア中にもシース中にも計量添加した。この場合も、実施例6と類似のTS7値の関係が再び生じ、しかしこの際、ここで使用されたシース原料は、それの異なる基本柔軟さ及び結晶化速度もしくは移行速度の故に、異なる時間的経過を与える。このTS7の差は、ここでは特に2時間後に生じる。
【0056】
【表3】
【0057】
この場合もまた、貯蔵されたスパンボンド不織布は、新たに製造されたスパンボンド不織布よりも柔軟である(TS7値がより低い)。
【0058】
以下の表では、本発明によるスパンボンド不織布Sと比較用不織布V(実施例6及び7)とのTS7の関係、並びに製造後の強度値及びスパンボンド不織布の坪量も、15分間後、2時間後及び96時間後について示されている。強度及び坪量は、先に説明した方法に従い決定した。この際、強度測定には、200mm/分間の引き裂き速度を使用した。
【0059】
【表4】
【0060】
これは、実施例6に対する実施例7の強度の点での利点を示す。これは、二成分技術の利点並びに可能性を示す。
本願は、特許請求の範囲に記載の発明に係るものであるが、本願の開示は以下も包含する:
1. 熱可塑性プラスチック製のエンドレスフィラメントでできたスパンボンド不織布であって、前記エンドレスフィラメントが、コア-シース構成を有する多成分フィラメント、特に二成分フィラメントとして形成され、前記フィラメントは、少なくとも一種の滑剤を含み、前記滑剤は、排他的にまたは少なくとも90重量%が、好ましくは少なくとも95重量%がコア成分中に存在し、前記コア成分とシース成分との間の質量比は50:50~90:10、とりわけ60:40~85:15、好ましくは65:35~80:20、特に好ましくは65:35~75:25であり、及び前記滑剤の割合は、全フィラメントを基準にして、250~5500ppm、とりわけ500~5000ppm、好ましくは700~3000ppm、特に好ましくは700~2500ppmである、前記スパンボンド不織布。
2. 熱可塑性プラスチック製のエンドレスフィラメントでできたスパンボンド不織布であって、前記エンドレスフィラメントは、コア-シース構成を有する多成分フィラメント、特に二成分フィラメントとして形成され、前記フィラメントは少なくとも一種の滑剤を含み、前記滑剤の割合は、全フィラメントを基準として250~5500ppm、とりわけ500~5000ppm、好ましくは700~3000ppm、非常に好ましくは700~2500ppmであり、前記滑剤は、少なくとも90重量%が、とりわけ少なくとも95重量%がコア成分中に存在し、前記スパンボンド不織布の表面は、スパンボンド不織布生成から150分間までの期間内は、その他の点で同じ条件下に製造されたフィラメント断面に関して滑剤の均一な分布を持つ比較用スパンボンド不織布よりも、より高い硬度、特に3%超高い硬度を有し、及び上記スパンボンド不織布の表面は、96時間後に、前記比較用スパンボンド不織布と同じ硬度またはほぼ同じ硬度を有し、この時、前記硬度は、好ましくは最大3%異なっている、前記スパンボンド不織布。
3. コア成分とシース成分との間の質量比が67:33~73:27、好ましくは70:30または約70:30である、上記1または2に記載のスパンボンド不織布。
4. 熱可塑性プラスチック製のエンドレスフィラメントでできたスパンボンド不織布であって、前記エンドレスフィラメントは、コア-シース構成を有する多成分フィラメント、特に二成分フィラメントとして形成され、前記フィラメントは少なくとも一種の滑剤を含み、前記滑剤の割合は、全フィラメントを基準にして250~5500ppm、とりわけ1000~5000ppm、好ましくは700~3000ppm、特に好ましくは500~2500ppmであり、及び前記シース成分中には更に、前記シース成分を通る滑剤の移行速度を低下させる少なくとも一種の添加物質が含まれる、前記スパンボンド不織布。
5. 熱可塑性プラスチック製のエンドレスフィラメントでできたスパンボンド不織布であって、前記エンドレスフィラメントが、コア-シース構成を有する多成分フィラメント、特に二成分フィラメントとして形成され、前記フィラメントは少なくとも一種の滑剤を含み、前記滑剤の割合は、全フィラメントを基準として、250~5500ppm、とりわけ500~5000ppm、好ましくは700~3000ppm、非常に好ましくは700~2500ppmであり、前記滑剤はとりわけ前記シース成分中に存在し、前記シース成分中には、このシース成分中を通る滑剤の移行速度を低下させる少なくとも一種の添加物質が含まれ、前記スパンボンド不織布の表面は、スパンボンド不織布生成から150分間までの期間内は、滑剤の移行速度を低下させる添加物質を含まない他の点では同じ条件で製造された比較用スパンボンド不織布よりも高い硬度、特に3%超高い硬度を有し、及び上記スパンボンド不織布の表面は、スパンボンド不織布生成から96時間後に、前記比較用スパンボンド不織布と同じ硬度またはほぼ同じ硬度を有し、この時、柔軟度は好ましくは最大で3%異なっている、前記スパンボンド不織布。
6. 不織布表面でのスパンボンド不織布の硬度として、TSA測定装置(ドイツ連邦共和国ライプチヒ在のEmtec社)のTS7値、すなわち約6550Hzでの音量/周波数スペクトルのピーク最大における音量を使用する、上記2、3または5に記載のスパンボンド不織布。
7. 前記コア成分及び/または前記シース成分が、少なくとも90重量%、とりわけ少なくとも95重量%、好ましくは少なくとも96重量%の、「ポリオレフィン、ポリオレフィンコポリマー、ポリオレフィンとポリオレフィンコポリマーとの混合物」の群からの少なくとも一種の成分を含む、上記1~6のいずれか一つに記載のスパンボンド不織布。
8. 前記コア成分及び/または前記シース成分が、少なくとも90重量%、とりわけ少なくとも95重量%、好ましくは少なくとも96重量%の、「ポリプロピレン、ポリプロピレンコポリマー、ポリプロピレンとポリプロピレンコポリマーとの混合物」の群からの少なくとも一種の成分を含む、上記1~7のいずれか一つに記載のスパンボンド不織布。
9. 前記コア成分が、ホモポリオレフィンから、特にホモポリプロピレンからなるかまたは本質的になるか、あるいは前記コア成分が、少なくとも80重量%、とりわけ少なくとも85重量%、好ましくは少なくとも90重量%、特に好ましくは少なくとも95重量%のホモポリオレフィン、特にホモポリプロピレンを含む、上記1~8のいずれか一つに記載のスパンボンド不織布。
10. 前記シース成分が、ポリオレフィンコポリマーから、特にポリプロピレンコポリマーから及び/またはポリオレフィンとポリオレフィンコポリマーとの混合物から、特にポリプロピレンとポリプロピレンコポリマーとの混合物からなるかまたは本質的になる、上記1~9のいずれか一つに記載のスパンボンド不織布。
11. 上記ポリオレフィンコポリマー、特にポリプロピレンコポリマーが、2.5~6、好ましくは3~5.5、非常に好ましくは3.5~5の分子量分布またはモル質量分布(M /M )を有する、上記1~10のいずれか一つに記載のスパンボンド不織布。
12. 滑剤として、少なくとも一種の脂肪酸誘導体、好ましくは「脂肪酸エステル、脂肪酸アルコール、脂肪酸アミド」の群からの少なくとも一種の物質が使用される、上記1~11のいずれか一つに記載のスパンボンド不織布。
13. 滑剤として、少なくとも一種のステアレート及び/または少なくとも一種のエルカ酸アミド及び/または少なくとも一種のオレイン酸アミドが使用される、上記1~12のいずれか一つに記載のスパンボンド不織布。
14. 滑剤がシース成分中に含まれ、及び実施形態の一つではシース成分中にのみ含まれる、上記4~14のいずれか一つに記載のスパンボンド不織布。
15. シース成分中の滑剤の移行速度を低下させる添加物質として、少なくとも一種の成核剤及び/または少なくとも一種のフィラー、とりわけ少なくとも一種の成核剤が含まれる、上記4~13のいずれか一つに記載のスパンボンド不織布。
16. 滑剤の移行速度を低下させる添加物質として及び特に成核剤として、「芳香族カルボン酸、芳香族カルボン酸の塩、ソルビトール誘導体、タルク、カオリン、キナクリドン、ピメリン酸塩、スベリン酸塩、ジシクロヘキシル-ナフタレンジカルボキサミド、有機ホスフェート、トリフェニル化合物、トリフェニルジチアジン」の群からの少なくとも一種の添加物質が使用される、上記4~15のいずれか一つに記載のスパンボンド不織布。
17. フィラーとして、少なくとも一種の金属塩、及び/または「二酸化チタン、炭酸カルシウム、タルク」の群からの少なくとも一種の物質が使用される、上記15または16に記載のスパンボンド不織布。
【図面の簡単な説明】
【0061】
図1】測定時点に依存した6550Hzでのピーク最大の音量値TS7(dBV2rms)のプロット。
図1