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特許7066780マクロファージおよび他のマンノース結合C型レクチン受容体高発現細胞を標的化するための化合物および組成物、ならびにそれらを使用して治療するおよび診断する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-02
(45)【発行日】2022-05-13
(54)【発明の名称】マクロファージおよび他のマンノース結合C型レクチン受容体高発現細胞を標的化するための化合物および組成物、ならびにそれらを使用して治療するおよび診断する方法
(51)【国際特許分類】
   C08B 37/02 20060101AFI20220506BHJP
   A61K 47/61 20170101ALI20220506BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20220506BHJP
   A61P 31/06 20060101ALN20220506BHJP
   A61P 31/18 20060101ALN20220506BHJP
   A61P 33/02 20060101ALN20220506BHJP
   A61P 35/00 20060101ALN20220506BHJP
   A61P 35/02 20060101ALN20220506BHJP
   A61P 29/00 20060101ALN20220506BHJP
   A61P 19/02 20060101ALN20220506BHJP
   A61P 37/06 20060101ALN20220506BHJP
   A61P 1/04 20060101ALN20220506BHJP
   A61K 45/00 20060101ALN20220506BHJP
【FI】
C08B37/02
A61K47/61
A61K47/36
A61P31/06
A61P31/18
A61P33/02
A61P35/00
A61P35/02
A61P29/00 101
A61P19/02
A61P37/06
A61P1/04
A61P29/00
A61K45/00
【請求項の数】 13
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020107176
(22)【出願日】2020-06-22
(62)【分割の表示】P 2017523194の分割
【原出願日】2015-07-17
(65)【公開番号】P2020189977
(43)【公開日】2020-11-26
【審査請求日】2020-07-20
(31)【優先権主張番号】62/027,193
(32)【優先日】2014-07-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/025,991
(32)【優先日】2014-07-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/027,220
(32)【優先日】2014-07-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/027,733
(32)【優先日】2014-07-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/106,194
(32)【優先日】2015-01-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/187,132
(32)【優先日】2015-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/187,064
(32)【優先日】2015-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516046846
【氏名又は名称】オハイオ ステート イノベーション ファウンデーション
(73)【特許権者】
【識別番号】594012483
【氏名又は名称】ナビディア、バイオファーマスーティカルズ、インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】NAVIDEA BIOPHARMACEUTICALS, INC.
(73)【特許権者】
【識別番号】517018374
【氏名又は名称】シュレシンガー、ラリー
(73)【特許権者】
【識別番号】517018385
【氏名又は名称】バチェルダー、エリック
(73)【特許権者】
【識別番号】517018396
【氏名又は名称】コープ、フレッド
(73)【特許権者】
【識別番号】517018400
【氏名又は名称】ジャージョア、ウェール・エヌ.
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(72)【発明者】
【氏名】シュレシンガー、ラリー
(72)【発明者】
【氏名】バチェルダー、エリック
(72)【発明者】
【氏名】コープ、フレッド
(72)【発明者】
【氏名】ジャージョア、ウェール・エヌ.
【審査官】松澤 優子
(56)【参考文献】
【文献】特表2002-544243(JP,A)
【文献】Journal of Controlled Release,1996年,Vol.38,p.141-150
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08B
A61K
A61P
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(II)の化合物であって、
【化1】

式中、
各Xは、独立して、H、L1-AまたはL2-Rであり、
各L1およびL2は、独立して、リンカーであり、
各Aは、独立して、治療剤もしくは検出標識またはHであり
各Rは、独立して、CD206標的化部分またはHであり前記CD206標的化部分はマンノース、フコースまたはn-アセチルグルコサミンから選択され、
nは、ゼロより大きい整数であり、
ここで、
(i)少なくとも1つのXはL 1-Aであって、ここでAはオキソ含有治療剤であり、L 1 とAはL 1 のヒドラジン(-NH-NH 2 )基とオキソ含有治療剤のオキソ基との間で形成されたヒドラゾン結合によって結合しており、L 1 はさらに-(CH 2 p S(CH 2 q NH-を含み、ここで-(CH 2 p -が式(II)に示されたデキストラン骨格に結合しており、pおよびqは0から5の整数であり、かつ
(ii)少なくとも1つのXはL2-Rであり、ここでRは前記CD206標的化部分である、
化合物。
【請求項2】
少なくとも1つのRが、マンノースである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
治療剤または検出標識である少なくとも1つのAが、化学治療剤、抗生物質、免疫学的アジュバント、結核を治療するために有用な化合物、ステロイド、ヌクレオチド、ペプチド、タンパク質、マイクロRNA、siRNA、抗ウイルス薬、抗原、または金属から選択される、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
治療剤である少なくとも1つのAが、結核を治療するために有用な化合物である、請求項1~3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
治療剤または検出標識である少なくとも1つのAが、ドキソルビシン、イソニアジド、ガドリニウム、ガリウム、銀または銀抗生物質である、請求項1~4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
前記リンカーは独立してO、SおよびNからなる群から選択される最大3個のヘテロ原子によって任意に中断されていてもよいC2~12炭化水素鎖である、請求項1~5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
少なくとも1つのL2が、-(CH2pS(CH2qNH-を含み、ここで-(CH 2 p -が式(II)に示されたデキストラン骨格に結合しており、pおよびqは独立して0から5の整数である、請求項1~6のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項8】
少なくとも1つのL1-Aが、キレート剤を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項9】
式(II)の化合物は、オキソ含有治療剤と下記式4の化合物とのコンジュゲートであり、
【化3】

上記式4中のRはマンノースである、
請求項1に記載の化合物。
【請求項10】
式(II)の化合物は、オキソ含有治療剤と下記式7の化合物とのコンジュゲートであり、
【化4】

上記式7中のRはマンノースでありR’はHまたはCHである、
請求項1に記載の化合物。
【請求項11】
請求項1~8および10のいずれかに記載の化合物を合成する方法であって、
a.少なくとも1つのCD206標的化部分が結合されたデキストラン含有部分を、ラクトンと反応させて、オキソ末端化された化合物を形成し、ここで、前記ラクトンは、-(CH 2 p S(CH 2 q NH 2 のアミノ基と反応し、-(CH 2 p -が式(II)に示されたデキストラン骨格に結合していること
b.前記オキソ末端化された化合物をNと反応させてヒドラジン末端化された化合物を形成すること;および
c.前記ヒドラジン末端化された化合物をオキソ含有治療剤と反応させること
を含む方法。
【請求項12】
請求項1~9のいずれかに記載の化合物を合成する方法であって、
a.少なくとも1つのCD206標的化部分が結合されたデキストラン含有部分を、N-ヒドロキシコハク酸イミド活性化リンカーと反応させて、カルバゼート末端化された化合物を形成し、ここで、前記N-ヒドロキシコハク酸イミド活性化リンカーは、-(CH 2 p S(CH 2 q NH 2 のアミノ基と反応し、-(CH 2 p -が式(II)に示されたデキストラン骨格に結合していること
b.前記カルバゼート末端化された化合物をトリフルオロ酢酸と反応させてヒドラジン末端化された化合物を形成すること;および
c.前記ヒドラジン末端化された化合物をオキソ含有治療剤と反応させること
を含む方法。
【請求項13】
前記オキソ含有治療剤はドキソルビシンである、請求項11または12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2014年7月17日に出願された同時係属中の米国特許出願第62/025,991号、2014年7月21日に出願された米国特許出願第62/027,193号、2014年7月21日に出願された米国特許出願第62/027,220号、2014年7月22日に出願された米国特許出願第62/027,773号、2015年1月21日に出願された米国特許出願シリアル番号第62/106,194号、2015年6月30日に出願された米国特許出願第62/187,064号、および2015年6月30日に出願された米国特許出願第62/187,132号の優先権を主張するものであり、これらの内容全体は、参照によりここに組み込まれる。
【0002】
カラー図面に関する言明
本特許または出願ファイルは、カラーで作成された少なくとも1つの図面を含有する。カラー図面を伴う本特許または特許出願公開の写しは、要求および必要な料金の支払いの際に、事務局により提供される。
【0003】
チルマノセプトは、デキストランベースの薬物送達ビヒクルである。チルマノセプトは、診療所において、センチネルリンパ節マッピングを実施するために使用されてきた。チルマノセプトは、分子サイズが小さく(7ナノメートル)、複数のマンノース単位を担持する。このマンノース成分は、マクロファージ、樹状細胞および他の細胞の表面上に高濃度で見出される、CD206およびCD209等のマンノース結合C型レクチン受容体タンパク質に対して高親和性を有する。これらのマンノース受容体と緊密に結合することにより、チルマノセプトは、数分以内にリンパ組織中に蓄積し、腫瘍流入領域リンパ節に局在する。
【発明の概要】
【0004】
一側面において、1以上のCD206標的化部分およびそれに結合している1以上の治療剤を有するデキストラン骨格を含む化合物が提供される。
【0005】
別の側面において、1以上のマンノース結合C型レクチン受容体標的化部分およびそれに結合している1以上の治療剤を有するデキストラン骨格を含む化合物が提供される。
【0006】
別の側面において、疾患を診断するおよび治療する方法であって、必要とする対象に、有効量のここで記述されている通りの化合物を投与すること、および対象の所定の位置において検出標識を検出することを含み、疾患が、AIDS、HIV感染およびリーシュマニア症から選択される、方法が提供される。
【0007】
別の側面において、疾患を治療する方法であって、必要とする対象に、有効量のここで記述されている通りの化合物を投与することを含み、疾患が、AIDS、HIV感染およびリーシュマニア症から選択される、方法が提供される。
【0008】
別の側面において、疾患を治療する方法であって、必要とする対象に、有効量のここで記述されている通りの化合物を投与することを含み、疾患が、自己免疫疾患、炎症性疾患またはがんである、方法が提供される。
【0009】
別の側面において、腫瘍関連マクロファージを標的化する方法であって、必要とする対象に、有効量のここで記述されている通りの化合物を投与することを含む、方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1A図1Aは、マクロファージとのチルマノセプト結合を示す。
図1B図1Bは、マクロファージとのチルマノセプト結合を示す。
図1C図1Cは、マクロファージとのチルマノセプト結合を示す。
図2図2A~2Dは、CD206MRの発現を示す代表的な共焦点画像(倍率:160倍)(図2A)、マクロファージによるチルマノセプト結合(図2B)、および共焦点と位相コントラスト画像の両方におけるMRとチルマノセプトとの間の共局在化(図2Cおよび2D)を示す。
図3図3は、マクロファージによるチルマノセプトの結合および内部移行を示す。
図4図4は、正常およびOA組織におけるマクロファージ浸潤およびCD206滞留の程度が、RA組織におけるものよりも著しく低いことを示す。
図5図5は、関節炎の膝および肘における特異的な蛍光を示す。
図6図6は、免疫介在性関節炎を持つマウス(上)および対照マウス(下)の肘および足のインビボ蛍光を示す。
図7図7は、エクスビボ蛍光データを示す。
図8図8は、対照マウスおよび免疫介在性関節炎を持つマウスの膝のエクスビボ蛍光を示す。
図9図9A~9Gは、Til-INHがマクロファージ内部で活性であったことを示す。
図10図10A~10Bは、アフリカKS組織のCD206/HHV8/CD68 IF染色および共焦点画像を示す(CD68-黄色;CD206-緑色;DAPI-青色)。
図11A図11Aは、チルマノセプト-CY3-DOXおよびチルマノセプト-Cy3を用いるKS生検組織培養の共焦点画像を示す。
図11B図11Bは、チルマノセプト-CY3-DOXおよびチルマノセプト-Cy3を用いるKS生検組織培養の共焦点画像を示す。
図11C図11Cは、チルマノセプト-CY3-DOXおよびチルマノセプト-Cy3を用いるKS生検組織培養の共焦点画像を示す。
図11D図11Dは、チルマノセプト-CY3-DOXおよびチルマノセプト-Cy3を用いるKS生検組織培養の共焦点画像を示す。
図12図12は、チルマノセプト取り込みは、用量および時間依存性であることを示す。
図13図13は、左脚の前面像を示す。
図14図14は、脳画像を示す。
図15図15A~15Bは、チルマノセプト-Cy3およびチルマノセプト-Cy3-doxの、CD206発現マクロファージとの結合を示す。
図16図16A~16Bは、CD206結合マクロファージに対するCy-3チルマノセプト-dox効果を示す。
図17図17は、チルマノセプト-doxが、アポトーシス機序を介してCD206発現マクロファージを死滅させることを示す。アネキシンレベル増大は、チルマノセプト-Dox濃度依存性である。ドキソルビシン(Docorubicin)単独では毒性を示さ(shoes)ない。
図18図18は、終夜のKS器官培養取り込みを示す。
図19図19は、チルマノセプト-doxによる処置後のCD163+マクロファージの損失を示す。
図20図20は、チルマノセプト-doxが、KS器官培養において終夜アポトーシス(apotosis)を誘発させることを示す。
図21図21は、チルマノセプト-doxが、KS器官培養においてKS HHV8+紡錘細胞のアポトーシスを誘発させることを示す。
図22図22は、チルマノセプト-doxが、KS器官培養において終夜アポトーシスを誘発させることを示す。
図23図23は、HIV感染マクロファージ培養における抗HIV活性を示す。
図24図24は、チルマノセプトが、標的KSをコンジュゲートさせることを示す。
図25図25A~25Dは、チルマノセプトの、DC-SIGNとの結合を示す。(A)DCおよびマクロファージによるDC-SIGNおよびMRの発現ならびにSLN組織におけるそれらの共局在化。代表的な共焦点画像は、細胞(青色、DAPIによる核染色)、DC-SIGN(赤色)およびMR(緑色)陽性細胞の総数を示す。DCのサブセットは、DC-SIGNとMRの両方をそれらの共局在化の証拠として発現する(黄色;矢印は2つの例を示す)。(B)チルマノセプトの、SLN組織におけるDC-SIGN発現細胞との結合。代表的な共焦点画像は、チルマノセプト(黄色)の、DC-SIGN陽性細胞(赤色)のいくつかとの結合および共局在化を示す。(C)、(D)チルマノセプトの、DC-SIGNをトランスフェクトしたヒト株との結合。(C)におけるグラフは、マンナンが存在するおよび存在しないチルマノセプト結合のレベルを示す2つの独立した実験の代表(respresentative)である。(D)は、(C)における阻害結果から算出した場合の、MR-またはDC-SIGN-発現(epxressing)細胞のマンナン前処置によるチルマノセプト結合の阻害のパーセンテージを示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の任意の態様を詳細に説明する前に、本発明は、その応用において、下記の記述で説明されているまたは下記の図面において例証されている、構築の詳細および構成要素の配置に限定されないことを理解されたい。本発明は、他の態様が可能であり、種々の手法で、実施または行うことが可能である。
【0012】
数ある中でも、本発明は、デキストランベースの担体を使用して、マクロファージ、およびマンノース結合C型レクチン受容体(CD206およびCD209等)を発現させる他の細胞(樹状細胞およびカポジ肉腫紡錘等)を標的化するための、化合物および組成物を対象とする。本発明は、そのような化合物および組成物を作製する方法も提供する。本発明は、デキストランベース部分を含む化合物を使用する、診断方法および治療の方法も提供する。
【0013】
いくつかの態様において、本発明は、合成巨大分子(例えば、約2~30kDa)を使用する、マンノース結合C型レクチン高発現細胞によって媒介される疾患の診断および/または治療のための、化合物、組成物および方法を提供する。マンノース結合C型レクチン受容体の例は、CD206およびCD209を含む。マンノース結合C型レクチン受容体は、マクロファージおよび他の細胞(例えば、カポジ肉腫紡錘細胞、樹状細胞およびリンパ内皮細胞)において見られる。これらの疾患は、マクロファージまたは他のマンノース結合C型レクチン受容体高発現細胞の数が増大している、および/または、そのような細胞が異常に局在している(例えば、腫瘍、罹患関節等において)もの等、マクロファージまたは他のマンノース結合C型レクチン受容体高発現細胞が関与しているまたは動員されている任意の状態を含む。そのような疾患は、免疫疾患、自己免疫疾患、炎症性疾患および感染性疾患を含む。
【0014】
定義
ここで使用される場合、有機化合物を含む化合物についての命名は、一般名、命名のための、IUPAC、IUBMBまたはCAS推奨を使用して付与され得る。1以上の立体化学的特徴が存在する場合、立体化学についてのカーン・インゴルド・プレローグ順位則を用いて、立体化学優先順位、E/Z仕様等を指定することができる。当業者は、名称が付与されていれば、命名規則を使用する化合物構造の体系的換算(systemic reduction)によって、またはCHEMDRAW(商標)(Perkin Elmer Corporation、U.S.A.)等の市販のソフトウェアによってのいずれかで、化合物の構造を容易に確認することができる。
【0015】
明細書および添付の請求項において使用される場合、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈上明らかに他の意味に解すべき場合を除き、複数の指示対象を含む。故に、例えば、「官能基」、「アルキル」または「残基」への言及は、2つ以上のそのような「官能基」、「アルキル」または「残基」等の混合物を含む。
【0016】
ここで、範囲は、「約」1つの特定の値から、かつ/または、「約」別の特定の値までとして表現され得る。そのような範囲が表現される場合、さらなる側面は、該1つの特定の値から、かつ/または、他方の特定の値までを含む。同様に、値が近似として表現される場合、先行詞「約」の使用により、該特定の値がさらなる側面を形成することが理解されるであろう。範囲のそれぞれの終点は、他の終点に関してならびに他方の終点とは無関係に有意であることが、さらに理解されるであろう。ここで開示されている若干数の値があること、および各値はここでその値自体に加えて「約」その特定の値としても開示されていることも理解される。例えば、値「10」が開示されていれば、「約10」も開示されている。2つの特定のユニット間の各ユニットも開示されていることも理解される。例えば、10および15が開示されていれば、11、12、13および14も開示されている。
【0017】
明細書および結びの請求項における、組成物中の特定の要素または成分の重量部への言
及は、重量部が表現している組成物または物品中の要素または成分と任意の他の要素また
は成分との間の重量関係を表す。故に、2重量部の成分Xおよび5重量部の成分Yを含有
する化合物において、XおよびYは、2:5の重量比で存在し、追加の成分が化合物に含
有されるか否かにかかわらず、そのような比で存在する。
【0018】
成分の重量パーセント(重量%)は、具体的に矛盾する記載がない限り、該成分が含まれる製剤または組成物の総重量に基づく。
【0019】
ここで使用される場合、用語「任意選択の」または「任意に」は、その後に記述されている事象または状況が発生してもしなくてもよいこと、ならびに、該記述が、前記事象または状況が発生する場合およびそれが発生しない場合を含むことを意味する。
【0020】
ここで使用される場合、用語「対象」は、哺乳動物、魚類、鳥類、爬虫類または両生類等の脊椎動物であり得る。故に、ここで開示されている方法の対象は、ヒト、非ヒト霊長類、ウマ、ブタ、ウサギ、イヌ、ヒツジ、ヤギ、ウシ、ネコ、モルモットまたはげっ歯類であり得る。該用語は、特定の年齢または性別を表さない。故に、成人および新生児対象、ならびに胎児が、男女を問わず、網羅されるように意図されている。一側面において、対象は哺乳動物である。患者は、疾患または障害に罹患している対象を指す。用語「患者」は、ヒトおよび獣医対象を含む。
【0021】
ここで使用される場合、用語「治療」は、疾患、病態または障害を、治癒させる、寛解させる、安定させるまたは予防することを意図した、患者の医療管理を指す。この用語は、積極的治療、すなわち、疾患、病態または障害の改善に具体的に向けた治療を含み、原因治療、すなわち、関連疾患、病態または障害の原因の除去に向けた治療も含む。加えて、この用語は、緩和的治療、すなわち、疾患、病態または障害の治癒よりもむしろ症状の軽減のために設計された治療;予防的治療、すなわち、関連疾患、病態または障害の発病を、最小化するまたは部分的にもしくは完全に阻害することを対象とする治療;ならびに補助的治療、すなわち、関連疾患、病態または障害の改善に向けた別の特異的療法を補うために用いられる治療を含む。種々の側面において、該用語は、哺乳動物(例えば、ヒト)を含む対象の任意の治療を網羅し、(i)疾患にかかりやすいが未だそれを有すると診断されていない対象において、疾患が発生するのを予防すること;(ii)疾患を阻害すること、すなわち、その発病を停止させること;または(iii)疾患を軽減させること、すなわち、疾患の退行を引き起こすことを含む。一側面において、対象は、霊長類等の哺乳動物であり、さらなる側面において、対象はヒトである。用語「対象」は、飼い慣らされた動物(例えば、ネコ、イヌ等)、家畜(例えば、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ等)、および実験動物(例えば、マウス、ウサギ、ラット、モルモット、ショウジョウバエ等)も含む。
【0022】
ここで使用される場合、用語「予防する」または「予防すること」は、とりわけ事前行動によって、何かが起こるのを、妨げる、回避する、未然に防ぐ、未然に食い止める、阻止するまたは邪魔することを指す。低減させる、阻害するまたは予防するがここで使用される場合、具体的に指定がない限り、他の2つの語の使用も明示的に開示されていることが理解される。
【0023】
ここで使用される場合、用語「診断される」は、当業者、例えば医師によって、身体検査に供されたこと、および、ここで開示されている、化合物、組成物または方法によって、診断または治療することができる状態を有すると分かったことを意味する。
【0024】
ここで使用される場合、語句「障害の治療の必要性があると同定される」等は、障害の治療の必要性に基づく対象の選択を指す。例えば、対象を、当業者による早期診断に基づき、障害の治療の必要性を有すると同定し、その後、障害の治療に供することができる。同定は、一側面において、診断を行う人物とは異なる人物によって実施できることが企図されている。さらなる側面において、同定は、その後に投与を実施する人によって実施できることも企図されている。
【0025】
ここで使用される場合、用語「投与すること」および「投与」は、対象に医薬調製物を提供する任意の方法を指す。そのような方法は、当業者に周知であり、経口投与、経皮投与、吸入による投与、経鼻投与、局所投与、膣内投与、眼内投与、耳内投与、脳内投与、経直腸投与、舌下投与、皮内投与、口腔投与、ならびに、静脈内投与、動脈内投与、筋肉内投与および皮下投与等の注射用を含む非経口投与を含むがこれらに限定されない。投与は、連続的であっても間欠的であってもよい。種々の側面において、調製物を、治療的に投与する;すなわち、現存する疾患または状態を治療するために投与することができる。さらなる種々の側面において、調製物を、予防的に投与する;すなわち、疾患または状態の予防のために投与することができる。
【0026】
用語「接触させること」は、ここで使用される場合、直接的に;すなわち、標的自体と相互作用することによって、または間接的に;すなわち標的の活性が依存している、別の分子、補因子、因子もしくはタンパク質と相互作用することによってのいずれかで、化合物が標的の活性に影響を及ぼすことができるような様式で、開示されている化合物および細胞、標的受容体(例えば、CD206またはCD209等のマンノース結合C型レクチン受容体)または他の生物学的実体を一緒にすることを指す。
【0027】
ここで使用される場合、用語「有効量」および「有効な量」は、望ましい結果を実現するためにまたは望ましくない状態に対して効果を有するために十分な量を指す。例えば、「治療有効量」は、望ましい治療結果を実現するためにまたは望ましくない症状に対して効果を有するために十分であるが、概して、許容できない有害な副作用を引き起こすために不十分な量を指す。任意の特定の患者のための具体的な治療有効用量レベルは、治療されている障害および該障害の重症度;用いられている具体的な組成物;患者の、年齢、体重、全体的な健康、性別および食生活;投与時期;投与経路;用いられている具体的な化合物の排泄率;治療の持続期間;用いられている具体的な化合物と合わせてまたは同時発生的に使用される薬物ならびに医療技術分野において周知の類似要因を含む、多様な要因によって決まることになる。例えば、化合物の用量を、望ましい治療効果を実現するために必要とされるよりも低いレベルで開始すること、および望ましい効果が実現されるまで投薬量を徐々に増大させることは、十分に当技術分野の範囲内である。望ましい場合、投与の目的のために、有効1日用量を複数回用量に分割することができる。結果として、単回用量組成物は、1日用量を構成するような量またはその約数を含有することができる。投薬量は、任意の禁忌の事象においては、個々の医師によって調整することができる。投薬量は、変動し得、1日に1以上の用量投与で、1から数日間にわたって投与され得る。指針は、所与のクラスの医薬品に適切な投薬量についての文献において見ることができる。さらなる種々の側面において、調製物を、「予防有効量」;すなわち、疾患または状態の予防に有効な量で投与することができる。
【0028】
用語「薬学的に許容される」は、生物学的にも別様にも望ましくないものでない、すなわち、許容できないレベルの望ましくない生物学的効果を引き起こすことも、有害な様式で相互作用することもない、材料について記述している。
【0029】
ここで使用される場合、用語「薬学的に許容される担体」は、滅菌水性もしくは非水性溶液、分散液、懸濁液またはエマルション、および使用直前に滅菌注射溶液または分散液に再構成するための滅菌粉末を指す。好適な水性および非水性担体、希釈剤、溶媒またはビヒクルの例は、水、エタノール、ポリオール(グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等)、カルボキシメチルセルロースおよびそれらの好適な混合物、植物油(オリーブ油等)ならびにオレイン酸エチル等の注射用有機エステルを含む。適正な流動性は、例えば、レシチン等のコーティング材料の使用によって、分散液の場合には必要とされる粒径の維持によって、および界面活性剤の使用によって、維持することができる。これらの組成物は、保存剤、湿潤剤、乳化剤および分散剤等のアジュバントを含有することもできる。微生物の作用の予防は、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸等の種々の抗菌および抗真菌剤の包含によって確実にすることができる。糖、塩化ナトリウム等の等張剤を含むことが望ましい場合もある。注射用医薬形態の持続的吸収は、吸収を遅延させる、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチン等の作用物質の包含によってもたらされ得る。注射用デポー形態は、ポリラクチド-ポリグリコリド、ポリ(オルトエステル)およびポリ(無水物)等の生分解性ポリマー中に薬物のマイクロカプセル化マトリックスを形成することによって作製される。薬物とポリマーとの比および用いられる特定のポリマーの性質に応じて、薬物放出の速度を制御することができる。デポー注射用製剤は、薬物を、生体組織と適合性のリポソームまたはマイクロエマルション中に封入することによっても調製される。注射用製剤は、例えば、細菌保持フィルターを通す濾過によって、あるいは、滅菌剤を、使用直前に、滅菌水または他の滅菌注射用媒体に溶解するまたは分散させることができる滅菌固体組成物の形態で組み込むことによって、滅菌することができる。好適な不活性担体は、ラクトース等の糖を含むことができる。望ましくは、活性成分の粒子の少なくとも95重量%が、0.01から10マイクロメートルの範囲内の有効な粒径を有する。
【0030】
「アルキル」は、直鎖および分枝鎖基を含む飽和脂肪族炭化水素を指す。「アルキル」は、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル等の基によって例示されていてもよい。アルキル基は、置換されていても非置換であってもよい。1つを超える置換基が存在していてもよい。置換基は、それら自体が置換されていてもよい。置換されている場合、置換基は、好ましくは、C1~C4アルキル、アリール、ヘテロアリール、アミノ、イミノ、シアノ、ハロゲン、アルコキシまたはヒドロキシルであるがこれらに限定されない。「C1~C4アルキル」は、1から4個の炭素原子を含有するアルキル基を指す。
【0031】
「アルケニル」は、直鎖および分枝鎖基を含む不飽和脂肪族炭化水素部分を指す。アルケニル部分は、少なくとも1つのアルケンを含有しなくてはならない。「アルケニル」は、エテニル、n-プロペニル、イソプロペニル、n-ブテニル等の基によって例示されていてもよい。アルケニル基は、置換されていても非置換であってもよい。1つを超える置換基が存在していてもよい。置換されている場合、置換基は、好ましくは、アルキル、ハロゲンまたはアルコキシである。置換基は、それら自体が置換されていてもよい。置換基を、アルケン自体の上におよび隣接するメンバー原子またはアルケニル部分の上にも置くことができる。「C2~C4アルケニル」は、2から4個の炭素原子を含有するアルケニル基を指す。
【0032】
「アルキニル」は、直鎖および分枝鎖基を含む不飽和脂肪族炭化水素部分を指す。アルキニル部分は、少なくとも1つのアルキンを含有しなくてはならない。「アルキニル」は、エチニル、プロピニル、n-ブチニル等の基によって例示されていてもよい。アルキニル基は、置換されていても非置換であってもよい。1つを超える置換基が存在していてもよい。置換されている場合、置換基は、好ましくは、アルキル、アミノ、シアノ、ハロゲン、アルコキシルまたはヒドロキシルである。置換基は、それら自体が置換されていてもよい。置換基は、アルキン自体の上ではなく、アルキニル部分の隣接するメンバー原子の上にある。「C2~C4アルキニル」は、2から4個の炭素原子を含有するアルキニル基を指す。
【0033】
「アシル」または「カルボニル」は、基-C(O)Rを指し、ここで、Rは、アルキル;アルケニル;アルキニル、アリール、ヘテロアリール、炭素環式、ヘテロ炭素環式;C1~C4アルキルアリールまたはC1~C4アルキルヘテロアリールである。C1~C4アルキルカルボニルは、カルボニル部分に、1~4個の炭素原子のアルキル鎖が先行する基を指す。
【0034】
「アルコキシ」は、基-O-Rを指し、ここで、Rは、アシル、アルキルアルケニル、アルキルアルキニル、アリール、炭素環式;ヘテロ炭素環式;ヘテロアリール、C1~C4アルキルアリールまたはC1~C4アルキルヘテロアリールである。
【0035】
「アミノ」は、基-NR’R’を指し、ここで、各R’は、独立して、水素、アミノ、ヒドロキシル、アルコキシル、アルキル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、C1~C4アルキルアリールまたはC1~C4アルキルヘテロアリールである。2つのR’基は、それら自体が結合して環を形成していてもよい。R’基は、それら自体がさらに置換されていてもよく、その場合、グアニジニルとしても公知の基が、用語「アミノ」のもとで具体的に企図されている。
【0036】
「アリール」は、芳香族炭素環式基を指す。「アリール」は、フェニルによって例示されていてもよい。アリール基は、置換されていても非置換であってもよい。1つを超える置換基が存在していてもよい。置換基は、それら自体が置換されていてもよい。置換されている場合、置換基は、好ましくは、ヘテロアリール、アシル、カルボキシル、カルボニルアミノ、ニトロ、アミノ、シアノ、ハロゲンまたはヒドロキシルであるが、これらに限定されない。
【0037】
「カルボキシル」は、基-C(=O)O-C1~C4アルキルを指す。
【0038】
「カルボニル」は、基-C(O)Rを指し、ここで、各Rは、独立して、水素、アルキル、アリール、シクロアルキル;ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、C1~C4アルキルアリールまたはC1~C4アルキルヘテロアリールである。
【0039】
「カルボニルアミノ」は、基-C(O)NR’R’を指し、ここで、各R’は、独立して、水素、アルキル、アリール、シクロアルキル;ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、C1~C4アルキルアリールまたはC1~C4アルキルヘテロアリールである。2つのR’基は、それら自体が結合して環を形成していてもよい。
【0040】
「C1~C4アルキルアリール」は、アリール置換基がアルキル基を介して結合しているようなアリール置換基を有するC1~C4アルキル基を指す。「C1~C4アルキルアリール」は、ベンジルによって例示されていてもよい。
【0041】
「C1~C4アルキルヘテロアリール」は、ヘテロアリール置換基がアルキル基を介して結合しているようなヘテロアリール置換基を有するC1~C4アルキル基を指す。
【0042】
「炭素環式基」または「シクロアルキル」は、一価飽和または不飽和炭化水素環を意味する。炭素環式基は、単環式であるか、あるいは、縮合、スピロまたは架橋二環式環系である。単環式炭素環式基は、3から10個の炭素原子、好ましくは4から7個の炭素原子、より好ましくは5から6個の炭素原子を環中に含有する。二環式炭素環式基は、8から12個の炭素原子、好ましくは9から10個の炭素原子を環中に含有する。炭素環式基は、置換されていても非置換であってもよい。1つを超える置換基が存在していてもよい。置換基は、それら自体が置換されていてもよい。好ましい炭素環式基は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘキセニルおよびシクロヘプチルを含む。より好ましい炭素環式基は、シクロプロピルおよびシクロブチルを含む。最も好ましい炭素環式基は、シクロプロピルである。炭素環式基は、芳香族ではない。
【0043】
「ハロゲン」は、フルオロ、クロロ、ブロモまたはヨード部分を指す。好ましくは、ハロゲンは、フルオロ、クロロまたはブロモである。
【0044】
「ヘテロアリール」または「ヘテロ芳香族」は、1以上のヘテロ原子を炭素環式環中に有する単環式または二環式芳香族炭素環式ラジカルを指す。ヘテロアリールは、置換されていても非置換であってもよい。1つを超える置換基が存在していてもよい。置換されている場合、置換基は、それら自体が置換されていてもよい。好ましいが非限定的な置換基は、アリール、C1~C4アルキルアリール、アミノ、ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、ニトロ、カルボキシル、カルボニルアミノまたはC1~C4アルキルである。好ましいヘテロ芳香族基は、テトラゾリル、トリアゾリル、チエニル、チアゾリル、プリニル、ピリミジル、ピリジルおよびフラニルを含む。より好ましいヘテロ芳香族基は、ベンゾチオフラニル;チエニル、フラニル、テトラゾリル、トリアゾリルおよびピリジルを含む。
【0045】
「ヘテロ原子」は、ヘテロ環式基もしくはヘテロ芳香族基の環または混成基(heterogeneous group)の鎖中の、炭素以外の原子を意味する。好ましくは、ヘテロ原子は、窒素、硫黄および酸素原子からなる群から選択される。1つを超えるヘテロ原子を含有する基は、異なるヘテロ原子を含有していてもよい。
【0046】
「ヘテロ炭素環式基」または「ヘテロシクロアルキル」または「ヘテロ環式」は、少なくとも1個のヘテロ原子を含有する一価飽和または不飽和炭化水素環を意味する。ヘテロ炭素環式基は、単環式であるか、あるいは、縮合、スピロまたは架橋二環式環系である。単環式ヘテロ炭素環式基は、3から10個の炭素原子、好ましくは4から7個の炭素原子、より好ましくは5から6個の炭素原子を環中に含有する。二環式ヘテロ炭素環式基は、8から12個の炭素原子、好ましくは9から10個の炭素原子を環中に含有する。ヘテロ炭素環式基は、置換されていても非置換であってもよい。1つを超える置換基が存在していてもよい。置換基は、それら自体が置換されていてもよい。好ましいヘテロ炭素環式基は、エポキシ、テトラヒドロフラニル、アザシクロペンチル、アザシクロヘキシル、ピペリジルおよびホモピペリジルを含む。より好ましいヘテロ炭素環式基は、ピペリジルおよびホモピペリジルを含む。最も好ましいヘテロ炭素環式基は、ピペリジルである。ヘテロ炭素環式基は、芳香族ではない。
【0047】
「ヒドロキシ」または「ヒドロキシル」は、-OHからなる化学的実体を意味する。アルコールは、ヒドロキシ基を含有する。ヒドロキシ基は、フリーであっても保護されていてもよい。ヒドロキシの代替名は、ヒドロキシルである。
【0048】
「メンバー原子」は、炭素、窒素、酸素または硫黄原子を意味する。メンバー原子は、それらの通常の原子価まで置換されていてもよい。置換が特定されていなければ、原子価に必要とされる置換基は、水素である。
【0049】
「環」は、環状であるメンバー原子の収集物を意味する。環は、炭素環式、芳香族、またはヘテロ環式もしくはヘテロ芳香族であってもよく、置換されていても非置換であってもよく、飽和であっても不飽和であってもよい。1つを超える置換基が存在していてもよい。主鎖との環接合部は、縮合であってもスピロ環式であってもよい。環は、単環式であっても二環式であってもよい。環は、少なくとも3個のメンバー原子および最大でも10個のメンバー原子を含有する。単環式環は、3から7個のメンバー原子を含有していてもよく、二環式環は、8から12個のメンバー原子を含有していてもよい。二環式環は、それら自体が縮合またはスピロ環式であってもよい。
【0050】
「チオアルキル」は、基-S-アルキルを指す。
【0051】
「チルマノセプト」は、LYMPHOSEEK(登録商標)診断剤の非放射性標識前駆体を指す。チルマノセプトは、マンノシルアミノデキストラン(mannosylaminodextran)である。これは、複数のアミノ末端リーシュ(--O(CH23S(CH22NH2)がコアグルコース要素と結合しているデキストラン骨格を有する。加えて、マンノース部分は、若干数のリーシュのアミノ基とコンジュゲートしており、キレート剤ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)は、マンノースを含有しない他のリーシュのアミノ基とコンジュゲートしていてもよい。チルマノセプトは、概して、デキストラン骨格を有し、ここで、複数のグルコース残基は、アミノ末端リーシュ:
【0052】
【化1】
【0053】
を含み、マンノース部分は、アミジンリンカー:
【0054】
【化2】
【0055】
を介してリーシュのアミノ基とコンジュゲートしており、キレート剤ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)は、アミドリンカー:
【0056】
【化3】
【0057】
を介してリーシュのアミノ基とコンジュゲートしている。
【0058】
米国においてLYMPHOSEEK(登録商標)についての承認された処方情報に記述されている通り、チルマノセプトは、化学名デキストラン3-[(2-アミノエチル)チオ]プロピル17-カルボキシ-10,13,16-トリス(カルボキシメチル)-8-オキソ-4-チア-7,10,13,16-テトラアザヘプタデカ-1-イル3-[[2-[[1-イミノ-2-(D-マンノピラノシルチオ)エチル]アミノ]エチル]チオ]プロピルエーテル錯体を有し、チルマノセプトTc99mは、下記の分子式:
【0059】
【化4】
【0060】
を有し、3~8のコンジュゲートしたDTPA分子(b);12~20のコンジュゲートしたマンノース分子(c);および0~17のアミン側鎖(a)を遊離したまま含有する。チルマノセプトは、下記の一般構造:
【0061】
【化5】
【0062】
を有する。グルコース部分のいくつかは、結合したアミノ末端リーシュを有していなくてもよい。
【0063】
「スルホニル」は、-S(O)2R’基を指し、ここで、R’は、アルコキシ、アルキル、アリール、炭素環式、ヘテロ炭素環式;ヘテロアリール、C1~C4アルキルアリールまたはC1~C4アルキルヘテロアリールである。
【0064】
「スルホニルアミノ」は、-S(O)2NR’R’基を指し、ここで、各R’は、独立して、アルキル、アリール、ヘテロアリール、C1~C4アルキルアリールまたはC1~C4アルキルヘテロアリールである。
【0065】
ここで記述されている化合物は、1以上の二重結合を含有することができ、故に、潜在的に、シス/トランス(E/Z)異性体および他の配座異性体を生じさせることができる。矛盾する記載がない限り、本発明は、すべてのそのような可能な異性体およびそのような異性体の混合物を含む。
【0066】
矛盾する記載がない限り、実線としてのみ示されており、楔または破線としてではない化学結合を持つ式は、各可能な異性体、例えば、各エナンチオマーおよびジアステレオマー、ならびにラセミまたはスケールミック混合物等の異性体の混合物を企図している。ここで記述されている化合物は、1以上の不斉中心を含有することができ、故に、潜在的に、ジアステレオマーおよび光学異性体を生じさせることができる。矛盾する記載がない限り、本発明は、すべてのそのような可能なジアステレオマーおよびそれらのラセミ混合物、それらの実質的に純粋な分割エナンチオマー、すべての可能な幾何異性体、ならびに薬学的に許容されるその塩を含む。立体異性体の混合物および単離された具体的な立体異性体も含まれる。そのような化合物を調製するために、あるいは、当業者に公知のラセミ化またはエピマー化手順を使用する際に使用される合成手順の過程中、そのような手順の生成物は、立体異性体の混合物であり得る。
【0067】
多くの有機化合物は、平面偏光面を回転させる能力を有する光学活性形態で存在する。光学活性化合物について記述する際に、接頭辞DおよびLまたはRおよびSを使用して、そのキラル中心周囲の分子の絶対配置を表す。接頭辞dおよびlまたは(+)および(-)は、化合物による平面偏光の回転の記号を指定するために用いられ、(-)が付いたものは化合物が左旋性であることを意味する。(+)またはdの接頭辞が付いた化合物は、右旋性である。所与の化学構造について、立体異性体と呼ばれるこれらの化合物は、互いに重ね合わせることができない鏡像であることを除き、同一である。具体的な立体異性体を、エナンチオマーと称することもでき、そのような異性体の混合物は、多くの場合、エナンチオマー混合物と呼ばれる。エナンチオマーの50:50混合物を、ラセミ混合物と称する。ここで記述されている化合物の多くは、1以上のキラル中心を有することができ、したがって、異なるエナンチオマー形態で存在することができる。望ましい場合、キラル炭素は、アスタリスク(*)を付けて指定されていてもよい。キラル炭素との結合が、開示されている式において直線として示されている場合、キラル炭素の(R)と(S)配置の両方、ならびに、それ故、そのエナンチオマーと混合物の両方が、式に内包されることが理解される。当技術分野において使用されるように、キラル炭素の周囲の絶対配置を指定することが望ましい場合、キラル炭素との結合の一方を楔(平面上の原子との結合)として示すことができ、他方を短い平行線の連続または楔(平面下の原子との結合)として示すことができる。カーン・インゴルド(Inglod)・プレローグシステムを使用して、(R)または(S)配置をキラル炭素に割り当てることができる。
【0068】
ここで記述されている化合物は、原子を、それらの天然同位体存在度と非天然存在度の両方で含む。開示されている化合物は、1以上の原子が、自然界において典型的に見られる原子質量または質量数とは異なる原子質量または質量数を有する原子によって置きかえられているという事実を除き、記述されているものと同一の同位体標識または同位体置換化合物であり得る。本発明の化合物に組み込むことができる同位体の例は、それぞれ、2H、3H、13C、14C、15N、18O、17O、35S、18Fおよび36Cl等、水素、炭素、窒素、酸素、硫黄、フッ素および塩素の同位体を含む。化合物はそのプロドラッグをさらに含み、前述の同位体および/または他の原子の他の同位体を含有する、前記化合物のまたは前記プロドラッグの薬学的に許容される塩は、本発明の範囲内である。本発明のある特定の同位体標識化合物、例えば、3Hおよび14C等の放射活性同位体を組み込んだものは、薬物および/または基質組織分布アッセイにおいて有用である。トリチウム化、すなわち3H、および炭素-14、すなわち14C同位体は、それらの調製の容易さおよび検出性により、特に好ましい。さらに、重水素、すなわち2H等のより重い同位体による置換は、より優れた代謝安定性から生じるある特定の治療上の利点、例えば、インビボ半減期の増大または必要投薬量の低減を生じさせることができ、それ故、いくつかの状況において好ましい場合がある。本発明の同位体標識化合物およびそのプロドラッグは、概して、非同位体標識試薬を容易に入手可能な同位体標識試薬で代用することにより、以下の手順を行うことによって調製できる。
【0069】
化学物質は、多形形態または改変と称される異なる秩序状態で存在する固体を形成することが公知である。多形物質の異なる改変は、それらの物理的特性が著しく異なり得る。本発明による化合物は、異なる多形形態で存在することができ、特定の改変は準安定であることが可能である。矛盾する記載がない限り、本発明は、すべてのそのような可能な多形形態を含む。
【0070】
ここで開示されているある特定の材料、化合物、組成物および成分は、市販のものを入手するか、または当業者に概して公知である技術を使用して容易に合成することができる。例えば、開示されている化合物および組成物を調製する際に使用される出発材料および試薬は、Aldrich Chemical Co.(Milwaukee、Wis.)、Acros Organics(Morris Plains、N.J.)、Fisher Scientific(Pittsburgh、Pa.)またはSigma(St.Louis、Mo.)等の商業的供給業者から入手可能であるか、あるいは、Fieser and Fieser’s Reagents for Organic Synthesis、第1~17巻(John Wiley and Sons、1991);Rodd’s Chemistry of Carbon Compounds、第1~5巻および補足巻(Elsevier Science Publishers、1989);Organic Reactions、第1~40巻(John Wiley and Sons、1991);March’s Advanced Organic Chemistry(John Wiley and Sons、第4版);ならびにLarock’s Comprehensive Organic Transformations(VCH Publishers Inc.、1989)等の参考文献で説明されている手順に準拠し、当業者に公知の方法によって調製されるかのいずれかである。
【0071】
別段の明示的な記載がない限り、ここで説明されている任意の方法が、その工程を特定の順序で実施する必要があるとして解釈されることを何ら意図するものではない。したがって、方法クレームが、その工程が後に続く順序を実際に列挙していない、または、工程が特定の順序に限定されることが請求項にも明細書にも具体的に記載されていない場合、決して順序が推論されることを何ら意図するものではない。このことは、工程または動作フローの配置に関する論理の問題;文法構成または句読点に由来する明白な意味;および本明細書において記述されている態様の数または種類を含む、任意の可能な非明示的な解釈の基礎に適用できる。
【0072】
本発明の組成物を調製するために使用される成分およびここで開示されている方法内で使用される組成物自体が開示される。これらおよび他の材料はここで開示されており、これらの材料の、組合せ、サブセット、相互作用、群等が開示されている場合、これらの化合物の各種々の個々のおよび集合的組合せならびに順列の具体的な参照を明確に開示することはできないが、それぞれが具体的に企図され、ここで記述されていることが理解される。例えば、特定の化合物が開示され、論じられ、該化合物を含む若干数の分子に対してすることができる改変の数について論じられているならば、具体的に企図されているのは、具体的に矛盾する指定がない限り可能な、化合物および改変のありとあらゆる組合せおよび順列である。故に、分子A、BおよびCのクラスが開示されており、かつ、分子D、EおよびFのクラスならびに組合せ分子の例A-Dが開示されていれば、それぞれ個々には列挙されていなくても、それぞれが個々にかつ集合的に企図されている意味組合せであり、A-E、A-F、B-D、B-E、B-F、C-D、C-EおよびC-Fは、開示されているとみなされる。同様に、これらの任意のサブセットおよび組合せも開示されている。故に、例えば、A-E、B-FおよびC-Eのサブグループは、開示されているとみなされるであろう。この概念は、本発明の組成物を作製するおよび使用する方法における工程を含むがこれらに限定されない本出願のすべての側面に当てはまる。故に、実施できる多様な追加工程があるならば、これらの追加工程のそれぞれは、本発明の方法の任意の特定の態様または態様の組合せを用いて実施できることが理解される。
【0073】
ここで開示されている組成物は、ある特定の機能を有することが理解される。ここで開示されているのは、開示されている機能を実施するためのある特定の構造的要件であり、開示されている構造に関係する同じ機能を実施することができる多様な構造があること、および、これらの構造は、典型的には、同じ結果を実現するであろうことが理解される。
【0074】
化合物
本発明は、コンジュゲートされたマンノース結合Cレクチン型受容体標的化部分(例えば、マンノース)を有するポリマー性(例えば、炭水化物)骨格を含む担体構築物を用いて、1以上の活性な薬学的成分を送達する。そのような構築物の例は、マンノシルアミノデキストラン(MAD)を含み、これは、骨格のグルコース残基とコンジュゲートしたマンノース分子を有し、骨格のグルコース残基とコンジュゲートした活性な薬学的成分を有する、デキストラン骨格を含む。チルマノセプトは、MADの具体例である。DTPAがコンジュゲートしていないチルマノセプトであるチルマノセプト誘導体は、MADのさらなる例である。
【0075】
いくつかの態様において、本発明は、1以上のマンノース結合C型レクチン受容体標的化部分およびそれに結合している1以上の治療剤を有するデキストランベース部分または骨格を含む化合物を提供する。デキストランベース部分は、概して、米国特許第6,409,990号(‘990特許)において記述されているものと同様のデキストラン骨格を含み、これは、参照によりここに組み込まれる。故に、骨格は、α-1,6グリコシド結合によって主に結合している複数のグルコース部分(すなわち、残基)を含む。α-1,4および/またはα-1,3結合等の他の結合が存在していてもよい。いくつかの態様において、すべての骨格部分が置換されているとは限らない。いくつかの態様において、マンノース結合C型レクチン受容体標的化部分は、デキストラン骨格のグルコース残基の約10%乃至約50%、またはグルコース残基の約20%乃至約45%、またはグルコース残基の約25%乃至約40%と結合している。いくつかの態様において、デキストランベース部分は、約50~100kDである。デキストランベース部分は、少なくとも約50kD、少なくとも約60kD、少なくとも約70kD、少なくとも約80kD、または少なくとも約90kDであってもよい。デキストランベース部分は、約100kD未満、約90kD未満、約80kD未満、約70kD未満、または約60kD未満であってもよい。あるいは、いくつかの態様において、デキストラン骨格は、約1乃至約50kDaのMWを有し、一方、他の態様において、デキストラン骨格は、約5乃至約25kDaのMWを有する。さらに他の態様において、デキストラン骨格は、約10kDa等、約8乃至約15kDaのMWを有する。一方、他の態様において、デキストラン骨格は、約2kDa等、約1乃至約5kDaのMWを有する。
【0076】
一例として、より小さいMWデキストラン骨格を有する担体分子は、分子が血液脳関門を横断することが望ましい場合、または、滞留時間の低減が望ましい場合(すなわち、CD206またはCD209等のマンノース結合C型レクチン受容体との結合の持続期間が低減される)に、適切となる場合がある。より大きいMWデキストラン骨格を有する担体分子は、滞留時間の増大が望ましい場合(すなわち、CD206またはCD209等のマンノース結合C-レクチン受容体との結合の持続期間が増大される)に、適切となる場合がある。さらに他の態様において、より効率的な受容体基質がデキストラン骨格と結合している場合(例えば、後述する通りの分枝マンノース部分)、より小さいMWデキストラン骨格(例えば、約1から約5kDa)を有する担体分子を用いてもよい。より効率的な受容体基質は、CD206またはCD209等のマンノース結合C型レクチン受容体と、より長い持続期間にわたって、かつ/またはより有効に結合することになり、故に、より小さいデキストラン骨格の使用を可能にする。
【0077】
いくつかの態様において、マンノース結合C型レクチン受容体標的化部分は、マンノース、フコースおよびn-アセチルグルコサミンから選択されるがこれらに限定されない。いくつかの態様において、標的化部分は、デキストラン骨格のグルコース残基の約10%乃至約50%、またはグルコース残基の約20%乃至約45%、またはグルコース残基の約25%乃至約40%と結合している。(ここで参照されるMW、ならびに、デキストラン骨格と結合している、受容体基質、リーシュおよび診断/治療部分のコンジュゲーションの数および程度は、担体分子の所与の分量の平均量を指し、これは、合成技術がいくらかの変動をもたらすからであることに留意すべきである。)
いくつかの態様において、1以上のマンノース結合C型レクチン受容体標的化部分および1以上の治療剤(または薬物)および/または検出標識は、リンカーを介してデキストランベース部分と結合している。リンカーは、骨格部分の約50%から約100%、または約70%から約90%で結合していてもよい。リンカーは、同じであっても異なっていてもよい。いくつかの態様において、リンカーは、アミノ末端リンカーである。いくつかの態様において、リンカーは、-O(CH23S(CH22NH-を含んでいてもよい。いくつかの態様において、リンカーは、炭素、酸素、硫黄、窒素およびリンから選択される1から20個のメンバー原子の鎖であってもよい。リンカーは、直鎖であっても分枝であってもよい。リンカーは、ハロ基、ペルフルオロアルキル基、ペルフルオロアルコキシ基、C1~4アルキル等のアルキル基、C1~4アルケニル等のアルケニル基、C1~4アルキニル等のアルキニル基、ヒドロキシ基、オキソ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アルコキシ基、ニトロ基、アジドアルキル基、アリールまたはヘテロアリール基、アリールオキシまたはヘテロアリールオキシ基、アラルキルまたはヘテロアラルキル基、アラルコキシまたはヘテロアラルコキシ基、HO-(C=O)-基、ヘテロサイクリック(heterocylic)基、シクロアルキル基、アミノ基、アルキル-およびジアルキルアミノ基、カルバモイル基、アルキルカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、アルコキシカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、ジアルキルアミノカルボニル基、アリールカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、-NH-NH2;=N-H;=N-アルキル;-SH;-S-アルキル;-NH-C(O)-;-NH-C(=N)-等を含むがこれらに限定されない、1以上の置換基で、置換されていてもよい。他の好適なリンカーは、当業者に公知であろう。
【0078】
いくつかの態様において、1以上の治療剤は、生分解性リンカーを介して結合している。いくつかの態様において、生分解性リンカーは、ヒドラゾン等の酸感受性部分を含む。酸感受性リンカーの使用は、薬物を細胞に輸送させ、細胞の実質的に内側で薬物の放出を可能にする。ある特定の態様において、リンカーは、リーシュと結合している生分解性部分を含む。
【0079】
当業者に公知のまたはその後に発見された種々の他のリーシュを、--O(CH2)3(CH22NH2の代わりに(またはそれに加えて)使用してもよい。これらは、例えば、アルキレンジアミン(H2N-(CH2r-NH2)、ここで、rは、2から12である;アミノアルコール(HO-(CH2r-NH2)、ここで、rは、2から12である;アミノチオール(HS-(CH2r-NH2)、ここで、rは、2から12である;任意にカルボキシ保護されていてもよいアミノ酸;エチレンおよびポリエチレングリコール(H-(O-CH2-CH2n-OH、ここで、nは、1~4である)等の二官能性リーシュ基を含む。好適な二官能性ジアミンは、エチレンジアミン、1,3-プロパンジアミン、1,4-ブタンジアミン、スペルミジン、2,4-ジアミノ酪酸、リジン、3,3’-ジアミノジプロピルアミン、ジアミノプロピオン酸、N-(2-アミノエチル)-1,3-プロパンジアミン、2-(4-アミノフェニル)エチルアミン、および類似化合物を含む。1以上のアミノ酸を、β-アラニン、γ-アミノ酪酸もしくはシステイン等の二官能性リーシュ分子として、またはジ-もしくはトリ-アラニン等のオリゴペプチドとして、用いてもよい。
【0080】
他の二官能性リーシュは、
-NH-(CH2r-NH-(ここで、rは、2~5である)、
-O-(CH2r-NH-(ここで、rは、2~5である)、
-NH-CH2-C(O)-、
-O-CH2-CH2-O-CH2-CH2-O-、
-NH-NH-C(O)-CH2-、
-NH-C(CH32C(O)-、
-S-(CH2r-C(O)-(ここで、rは、1~5である)、
-S-(CH2r-NH-(ここで、rは、2~5である)、
-S-(CH2r-O-(ここで、rは、1~5である)、
-S-(CH2)-CH(NH2)-C(O)-、
-S-(CH2)-CH(COOH)-NH-、
-O-CH2-CH(OH)-CH2-S-CH(CO2H)-NH-、
-O-CH2-CH(OH)-CH2-S-CH(NH2)-C(O)-、
-O-CH2-CH(OH)-CH2-S-CH2-CH2-NH-、
-S-CH2-C(O)-NH-CH2-CH2-NH-、および
-NH-O-C(O)-CH2-CH2-O-P(O2H)-
を含む。
【0081】
治療剤は、マクロファージ媒介性疾患の治療に有用であることが公知の任意の化合物であってもよい。治療剤は、ドキソルビシン等の化学治療剤;抗生物質(例えば、テトラサイクリン、ストレプトマイシンおよびイソニアジド)、抗ウイルス薬、抗真菌薬および駆虫薬等の抗感染症剤;免疫学的アジュバント;ステロイド;DNA、RNA、RNAi、siRNA、CpGまたはポリ(I:C)等のヌクレオチド;ペプチド;タンパク質;あるいは、銀、ガリウムまたはガドリニウム等の金属を含むがこれらに限定されない。
【0082】
ある特定の態様において、治療剤は、抗生物質;抗結核抗生物質(イソニアジド、ストレプタマイシン(streptamycin)またはエタンブトール等);抗ウイルスもしくは抗レトロウイルス薬、例えば逆転写の阻害剤(ジドブジン(zidovudin)等)またはプロテアーゼ阻害剤(インジナビル等);リーシュマニア症に対して効果を持つ薬物(アンチモン酸メグルミン等)を含むまたはそれらからなる群から選択される、抗菌薬である。ある特定の態様において、治療剤は、アモキシシリン、アンピシリン、テトラサイクリン、アミノグリコシド(例えば、ストレプトマイシン)、マクロライド(例えば、エリスロマイシンおよびその類縁体)、クロラムフェニコール、イベルメクチン、リファマイシンおよびポリペプチド抗生物質(例えば、ポリミキシン、バシトラシン)およびツヴィッターマイシン等の抗菌活性物である。ある特定の態様において、治療剤は、イソニアジド、ドキソルビシン、ストレプトマイシンおよびテトラサイクリンから選択される。
【0083】
いくつかの態様において、治療剤は、周囲のマクロファージ環境において、マクロファージおよび組織を死滅させる能力を有する高エネルギー殺傷同位体(high energy killing isotope)を含む。好適な放射性同位体は、210/212/213/214Bi、131/140Ba、11/14C、51Cr、67/68Ga、153Gd、99mTc、88/90/91Y、123/124/125/131I、111/115mIn、18F、105RRh、153Sm、67Cu、166Ho、177Lu、186Reおよび188Re、32/33P、46/47Sc、72/75Se、35S、182Ta、123m/127/129/132Te、65Znならびに89/95Zrを含む。
【0084】
他の態様において、治療剤は、Bi、Ba、Mg、Ni、Au、Ag、V、Co、Pt、W、Ti、Al、Si、Os、Sn、Br、Mn、Mo、Li、Sb、F、Cr、Ga、Gd、I、Rh、Cu、Fe、P、Se、S、ZnおよびZrからなる群から選択されるがこれらに限定されない、非放射性種を含む。
【0085】
またさらなる態様において、治療剤は、細胞増殖阻害剤、アルキル化剤、代謝拮抗物質、抗増殖剤、チューブリン結合剤、ホルモンおよびホルモンアンタゴニスト、アントラサイクリン系薬物、ビンカ薬、マイトマイシン、ブレオマイシン、細胞毒性ヌクレオシド、プテリジン薬、ジイネン(diynenes)、ポドフィロトキシン、毒性酵素、ならびに放射線増感薬からなる群から選択される。より具体的な例として、治療剤は、メクロレタミン、トリエチレンホスホラミド、シクロホスファミド、イホスファミド、クロラムブシル、ブスルファン、メルファラン、トリアジクオン、ニトロソ尿素化合物、アドリアマイシン、カルミノマイシン、ダウノルビシン(ダウノマイシン)、ドキソルビシン、イソニアジド、インドメタシン、ガリウム(III)、68ガリウム(III)、アミノプテリン、メトトレキサート、メトプテリン、ミトラマイシン、ストレプトニグリン、ジクロロメトトレキセート、マイトマイシンC、アクチノマイシン-D、ポルフィロマイシン、5-フルオロウラシル、フロクシウリジン、フトラフル、6-メルカプトプリン、シタラビン、シトシンアラビノシド、ポドフィロトキシン、エトポシド、リン酸エトポシド、メルファラン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ロイロシジン、ビンデシン、ロイロシン、タキソール、タキサン、サイトカラシンB、グラミシジンD、臭化エチジウム、エメチン、テノポシド、コルヒチン、ジヒドロキシアントラシンジオン、ミトキサントロン、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、ピューロマイシン、リシンサブユニットA、アブリン、ジフテリア(diptheria)毒素、ボツリヌス菌、シアンギノシン(cyanginosins)、サキシトキシン、志賀毒素、破傷風、テトロドトキシン、トリコテセン、ベルルクロゲン(verrucologen)、コルチコステロイド、プロゲスチン、エストロゲン、抗エストロゲン、アンドロゲン、アロマターゼ阻害剤、カリケアマイシン、エスペラミシンおよびジネミシンからなる群から選択される。
【0086】
治療剤がホルモンまたはホルモンアンタゴニストである態様において、治療剤は、プレドニゾン、ヒドロキシプロゲステロン、メドロキシプロゲステロン(medroprogesterone)、ジエチルスチルベストロール、タモキシフェン、テストステロンおよびアミノグルテチミド(aminogluthetimide)からなる群から選択されていてもよい。
【0087】
治療剤がプロドラッグである態様において、治療剤は、より活性な細胞毒性のない薬物に変換することができる、ホスフェート含有プロドラッグ、チオホスフェート含有プロドラッグ、スルフェート含有プロドラッグ、ペプチド含有プロドラッグ、(-ラクタム含有プロドラッグ、任意に置換されていてもよいフェノキシアセトアミド含有プロドラッグ、任意に置換されていてもよいフェニルアセトアミド含有プロドラッグ、5-フルオロシトシン(fluorocytosinem)および5-フルオロウリジンプロドラッグからなる群から選択されてもよい。
【0088】
いくつかの態様において、結合される少なくとも1つのマンノース結合C型レクチン受容体標的化部分を有するデキストランベース部分は、式(I)の化合物:
【0089】
【化6】
【0090】
[式中、*は、治療剤が結合している点を示す]である。ある特定の態様において、治療剤は、リンカーを介して結合している。
【0091】
他の態様において、本発明の化合物は、式(II)の化合物:
【0092】
【化7】
【0093】
[式中、
各Xは、独立して、H、L1-AまたはL2-Rであり、
各L1およびL2は、独立して、リンカーであり、
各Aは、独立して、治療剤または検出標識またはHを含み、
各Rは、独立して、マンノース結合C型レクチン受容体標的化部分またはHを含み、
nは、ゼロより大きい整数であり、
ここで、少なくとも1つのRはマンノース結合C型レクチン受容体標的化部分を含み、少なくとも1つのAは治療剤を含む]
である。
【0094】
ある特定の態様において、L1は、上述した通りのリンカーである。ある特定の態様において、L2は、上述した通りのリンカーである。ある特定の態様において、マンノース結合C型レクチン受容体標的化部分は、CD206またはCD209標的化部分である。
【0095】
合成 本発明の化合物は、文献において公知である、実験の項で例示されている、または当業者に明らかである、他の標準的な操作に加えて、開示されているスキームに示されている通りの反応を用いることによって、調製することができる。下記の例は、本発明がより完全に理解されるように提供されるものであり、例証的なものにすぎず、限定として解釈されるべきではない。明確にするために、ここで開示されている定義下で複数の置換基が可能な場合、より少ない置換基を有する例を示すことができる。
【0096】
各開示されている方法は、追加の、工程、操作および/または成分をさらに含むことができることが企図されている。任意の1以上の、工程、操作および/または成分を本発明から任意に省略することができることも企図されている。開示されている方法を使用して、開示されている化合物を提供することができることが理解される。開示されている方法の生成物を、開示されている、組成物、キットおよび使用において用いることができることも理解される。
【0097】
本発明の化合物は、当業者に公知である任意の数の手法によって合成されてもよい。例えば、リンカー2は、カルバジン酸tert-ブチルによってコハク酸無水物環を開くことによって合成することができる。得られたカルボン酸を、EDCカップリング試薬を使用して、対応するN-ヒドロキシコハク酸イミド(NHS)エステルに変換する。次いで、アミド結合を形成することによって、チルマノセプトをリンカー2で官能化する。次いで、Boc保護基を希釈酸性条件(典型的にはDMSO中30~40%トリフルオロ酢酸)下で除去して、4を取得することができる。デキストラン骨格中に存在するグリコシド結合のいかなる不要な開裂も回避するために、希釈酸性条件が必要である。得られた官能化されたチルマノセプトは、サイズ排除濾過によって精製することができる。
【0098】
【化8】
【0099】
スキーム1:チルマノセプトの改変のための合成経路A
あるいは、本発明による化合物は、スキーム2に従って合成されてもよい。チルマノセプトの遊離第一級アミン基を、過剰のラクトンと、無水条件下で反応させることができる。未反応のラクトンを減圧下で除去して、改変チルマノセプト6を取得することができる。対応するヒドラジン誘導体7は、シアノ水素化ホウ素ナトリウムまたはトリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウムを還元剤として使用する還元的アミノ化反応によって、調製することができる。
【0100】
【化9】
【0101】
スキーム2:チルマノセプトの改変のための合成経路B
オキソ含有治療剤の、チルマノセプト誘導体4または7とのコンジュゲーションは、スキーム3に示されている通りであってよい。チルマノセプト誘導体4または7は、無水酸性条件または水性酸性条件下でのヒドラゾン結合の形成によって、ドキソルビシンとコンジュゲートさせることができる。コンジュゲートしていない治療剤を除去して(例えば、サイズ排除クロマトグラフィーまたは透析によって)、純粋なコンジュゲートチルマノセプトを取得することができる。
【0102】
【化10】
【0103】
スキーム3:ドキソルビシンの、チルマノセプト誘導体とのコンジュゲーション
アミン含有治療剤を、スキーム4に従って、チルマノセプト等のデキストラン含有化合物とコンジュゲートさせてもよい。第一級アミンとラクトンとの間の塩基性反応を、スキーム4に示す。
【0104】
【化11】
【0105】
スキーム5
当業者であれば、本発明の化合物を合成するための他の手法を認識するであろう。
【0106】
医薬組成物
一側面において、本発明は、開示されている化合物と、開示されている方法の生成物とを含む、医薬組成物に関する。すなわち、有効量の少なくとも1つの開示されている化合物、開示されている方法の少なくとも1つの生成物、または薬学的に許容されるその塩、溶媒和物、水和物もしくは多形体と、薬学的に許容される担体とを含む、医薬組成物が提供され得る。一側面において、本発明は、薬学的に許容される担体と、有効量の、少なくとも1つの開示されている化合物;または薬学的に許容されるその塩、水和物、溶媒和物もしくは多形体とを含む、医薬組成物に関する。
【0107】
さらなる側面において、有効量は、治療有効量である。またさらなる側面において、有効量は、予防有効量である。またさらなる側面において、医薬組成物は、開示されている作製方法の生成物である化合物を含む。
【0108】
さらなる側面において、医薬組成物は、開示されている化合物を含む。またさらなる側面において、医薬組成物は、開示されている作製方法の生成物を含む。
【0109】
一側面において、医薬組成物は、哺乳動物を治療するために使用される。またさらなる側面において、哺乳動物はヒトである。さらなる側面において、哺乳動物は、投与する工程の前に、障害の治療が必要と診断されたものである。さらなる側面において、哺乳動物は、障害の治療を必要とすると同定されたものである。
【0110】
ある特定の側面において、開示されている医薬組成物は、活性成分としての開示されている化合物(薬学的に許容されるその塩を含む)、薬学的に許容される担体、および、任意に、他の治療成分またはアジュバントを含む。本発明の組成物は、経口、経直腸、局所および非経口(皮下、筋肉内、皮内および静脈内を含む)投与に好適なものを含むが、任意の所与の事例において最も好適な経路は、特定の宿主、ならびに活性成分が投与されている状態の性質および重症度によって決まることになる。医薬組成物は、単位剤形で好都合に提示でき、薬学分野の当業者に周知の方法のいずれかによって調製できる。
【0111】
ここで使用される場合、用語「薬学的に許容される塩」は、薬学的に許容される非毒性塩基または酸から調製された塩を指す。本発明の化合物が酸性である場合、その対応する塩は、無機塩基および有機塩基を含む、薬学的に許容される非毒性塩基から好都合に調製することができる。そのような無機塩基に由来する塩は、アルミニウム、アンモニウム、カルシウム、銅(第二および第一)、第二鉄、第一鉄、リチウム、マグネシウム、マンガン(第二および第一)、カリウム、ナトリウム、亜鉛等の塩を含む。特に好ましいのは、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、カリウムおよびナトリウムの塩である。薬学的に許容される有機非毒性塩基に由来する塩は、第一級、第二級および第三級アミン、ならびに、環状アミンならびに自然発生および合成された置換アミン等の置換アミンの塩を含む。塩を形成することができる他の薬学的に許容される有機非毒性塩基は、例えば、アルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、Ν,Ν’-ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2-ジエチルアミノエタノール、2-ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N-エチルモルホリン、N-エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソプロピルアミン、リジン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トロメタミン等の、イオン交換樹脂を含む。
【0112】
ここで使用される場合、用語「薬学的に許容される非毒性酸」は、無機酸、有機酸、およびそれらから調製された塩、例えば、酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、カンファースルホン酸、クエン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルコン酸、グルタミン酸、臭化水素酸、塩酸、イセチオン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、ムチン酸、硝酸、パモン酸、パントテン酸、リン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸、p-トルエンスルホン酸等を含む。好ましいのは、クエン酸、臭化水素酸、塩酸、マレイン酸、リン酸、硫酸および酒石酸である。
【0113】
実際には、本発明の化合物または本発明の薬学的に許容されるその塩を、緊密混合物中の活性成分として、医薬担体と、従来の医薬配合技術に従って組み合わせることができる。担体は、投与に望ましい調製物の形態、例えば、経口または非経口(静脈内を含む)に応じて、多種多様な形態をとることができる。故に、本発明の医薬組成物は、それぞれが所定量の活性成分を含有する、カプセル剤、カシェ剤または錠剤等の経口投与に好適な不連続単位として、提示することができる。さらに、組成物は、粉末として、凍結乾燥粉末として、顆粒として、溶液として、水性液体中懸濁液として、非水性液体として、水中油型エマルションとして、または油中水型液体エマルションとして、提示することができる。上記で列挙した一般的な剤形に加えて、本発明の化合物および/または薬学的に許容されるその塩は、制御放出手段および/または送達デバイスによって投与することもできる。組成物は、薬学の方法のいずれかによって調製することができる。概して、そのような方法は、活性成分を、1以上の必要成分を構成する担体と会合させる工程を含む。概して、組成物は、活性成分を、液体担体もしくは微粉化した固体担体または両方と、均一かつ密接に混合することによって調製される。次いで、生成物を、望ましい提示物に好都合に成形することができる。
【0114】
故に、本発明の医薬組成物は、薬学的に許容される担体および本発明の化合物または該化合物の薬学的に許容される塩を含むことができる。本発明の化合物または薬学的に許容されるその塩を、1以上の他の治療活性化合物と組み合わせて、医薬組成物に含むこともできる。
【0115】
用いられる医薬担体は、例えば、固体、液体または気体であり得る。固体担体の例は、ラクトース、白土、スクロース、タルク、ゼラチン、寒天、ペクチン、アカシア、ステアリン酸マグネシウムおよびステアリン酸を含む。液体担体の例は、糖シロップ、ピーナッツ油、オリーブ油および水である。気体担体の例は、二酸化炭素および窒素を含む。
【0116】
経口剤形のための組成物を調製する際に、任意の好都合な医薬媒質を用いることができる。例えば、水、グリコール、油、アルコール、香味剤、保存剤、着色剤等を使用して、懸濁液、エリキシル剤および液剤等の経口液体調製物を形成することができ;一方、デンプン、糖、微結晶性セルロース、希釈剤、造粒剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤等の担体を使用して、散剤、カプセル剤および錠剤等の経口固体調製物を形成することができる。それらの投与の容易さにより、錠剤およびカプセル剤は好ましい経口投薬量単位であり、それにより、固体医薬担体が用いられる。任意に、錠剤を、標準的な水性または非水性技術によってコーティングすることができる。
【0117】
本発明の組成物を含有する錠剤は、任意に1以上の副成分またはアジュバントとともに、圧縮または成型によって調製することができる。圧縮錠剤は、好適な機械内で、結合剤、滑沢剤、不活性希釈剤、表面活性または分散剤と任意に混合された、粉末または顆粒等の自由に流れる形態の活性成分を圧縮することによって調製することができる。成型錠剤は、好適な機械内で、不活性液体希釈剤で湿潤させた粉末状化合物の混合物を成型することによって作製できる。
【0118】
本発明の医薬組成物は、活性成分としての本発明の化合物(または薬学的に許容されるその塩)、薬学的に許容される担体、および任意に1以上の追加の治療剤またはアジュバントを含む。本発明の組成物は、経口、経直腸、局所、および非経口(皮下、筋肉内および静脈内を含む)投与に好適な組成物を含むが、任意の所与の事例において最も好適な経路は、特定の宿主、ならびに活性成分が投与されている状態の性質および重症度によって決まることになる。医薬組成物は、単位剤形で好都合に提示でき、薬学分野の当業者に周知の方法のいずれかによって調製できる。
【0119】
非経口投与に好適な本発明の医薬組成物は、水中の活性化合物の溶液または懸濁液として調製することができる。好適な界面活性剤、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース等を含むことができる。分散液は、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、およびそれらの油中混合物中で調製することもできる。さらに、微生物の有害な成長を予防するために、保存剤を含むことができる。
【0120】
注射使用に好適な本発明の医薬組成物は、滅菌水溶液または分散液を含む。さらに、組成物は、そのような滅菌注射溶液または分散液の即時調製のための滅菌粉末の形態であってよい。いずれの事例においても、最終注射形態は滅菌されていなくてはならず、容易に注射し得るように有効に流動性でなくてはならない。医薬組成物は、製造および貯蔵の条件下で安定でなくてはならず、故に、好ましくは、細菌および真菌等の微生物の汚染作用に対して保存されているべきである。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコールおよび液体ポリエチレングリコール)、植物油、およびそれらの好適な混合物を含有する、溶媒または分散媒であってよい。
【0121】
本発明の医薬組成物は、例えば、エアゾール剤、クリーム剤、軟膏剤、ローション剤、散布剤、洗口液、うがい薬等、局所使用に好適な形態であってよい。さらに、組成物は、経皮デバイスにおける使用に好適な形態であってよい。これらの製剤は、本発明の化合物または薬学的に許容されるその塩を利用し、従来の処理方法によって調製することができる。例として、クリーム剤または軟膏剤は、親水性材料および水を、約5重量%から約10重量%の化合物と一緒に混合して、望ましい稠度を有するクリーム剤または軟膏剤を生成することによって調製される。
【0122】
本発明の医薬組成物は、経直腸投与に好適な形態であってよく、ここで、担体は固体である。混合物が単位用量坐剤を形成することが好ましい。好適な担体は、ココアバターおよび当技術分野で一般に使用される他の材料を含む。坐剤は、最初に組成物を軟質化したまたは融解した担体と混合し、続いて、鋳型内で冷やし成形することによって、好都合に形成することができる。
【0123】
前述の担体成分に加えて、上述した医薬製剤は、適宜、希釈剤、緩衝剤、香味剤、結合剤、表面活性剤、増粘剤、滑沢剤、保存剤(酸化防止剤を含む)等の1以上の追加の担体成分を含むことができる。さらに、製剤を、意図されているレシピエントの血液と等張にするために、他のアジュバントを含むことができる。本発明の化合物および/または薬学的に許容されるその塩を含有する組成物は、粉末または液体濃縮物形態で調製することもできる。
【0124】
しかしながら、任意の特定の患者のための具体的な用量レベルは、多様な要因によって決まることが理解される。そのような要因は、患者の、年齢、体重、全体的な健康、性別および食生活を含む。他の要因は、投与の時間および経路、排泄率、薬物の組合せ、ならびに療法を受けている特定の疾患の種類および重症度を含む。
【0125】
診断方法
診断方法は、開示されている化合物を使用する、疾患または状態のインビボ検出について開示されている。
【0126】
ある特定の態様において、開示されている化合物は、治療剤に加えて、検出標識を含む。ここで使用される場合、用語「検出可能な標識または部分」は、(1)担体分子との結合が可能であり、(2)ヒトまたは他の哺乳類対象に対して非毒性であり、かつ(3)直接的にまたは間接的に検出可能なシグナル、特に、測定することができるだけでなく、その強度が検出可能な部分の量と関係している(例えば、比例している)シグナルを提供する、原子、同位体または化学構造を意味する。シグナルは、分光、電気、光学、磁気、聴覚、無線シグナルまたは触診検出手段を含む任意の好適な手段によって検出されてもよい。
【0127】
検出標識は、蛍光分子(別名蛍光色素およびフルオロフォア)、化学発光試薬(例えば、ルミノール)、生物発光試薬(例えば、ルシフェリンおよび緑色蛍光タンパク質(GFP))、金属(例えば、金ナノ粒子)および放射活性同位体(放射性同位体)を含むがこれらに限定されない。好適な検出標識は、イメージング方法の選択に基づいて選択することができる。例えば、検出標識は、光学イメージングについては近赤外蛍光色素、MRIイメージングについてはガドリニウムキレート、PETもしくはSPECTイメージングについては放射性核種、またはCTイメージングについては金ナノ粒子であってよい。
【0128】
検出標識は、例えば、放射性核種、放射線造影剤、常磁性イオン、金属、蛍光標識、化学発光標識、超音波造影剤、光活性剤、またはそれらの組合せから選択することができる。検出可能な標識の非限定的な例は、110In、111In、117Lu、18F、52Fe、62Cu、64Cu、67Cu、67Ga、68Ga、86Y、90Y、89Zr、94mTc、94Tc、99mTc、120I、123I、124I、125I、131I、154-158Gd、32P、11C、13N、15O、186Re、188Re、51Mn、52mMn、55Co、72As、75Br、76Br、82mRb、83Sr、117mSn等の放射性核種、または他のガンマ-、ベータ-もしくは陽電子放射体を含む。有用な常磁性イオンは、クロム(III)、マンガン(II)、鉄(III)、鉄(II)、コバルト(II)、ニッケル(II)、銅(II)、ネオジム(III)、サマリウム(III)、イッテルビウム(III)、ガドリニウム(III)、バナジウム(II)、テルビウム(III)、ジスプロシウム(III)、ホルミウム(III)またはエルビウム(III)を含んでいてもよい。金属造影剤は、ランタン(III)、金(III)、鉛(II)またはビスマス(III)を含んでいてもよい。超音波造影剤は、ガス充填リポソーム等のリポソームを含んでいてもよい。
【0129】
他の好適な標識は、例えば、蛍光標識(フルオレセイン、イソチオシアネート、ローダミン、フィコエリトリン、フィコシアニン、アロフィコシアニン、o-フタルアルデヒド(o-phthaldehyde)、ならびにEuまたはランタニド系列由来の他の金属等のフルオレスカミンおよび蛍光金属等)、近赤外色素、量子ドット、リン光標識、化学発光標識または生物発光標識(管腔、イソルミノール、セロマチックアクリジニウムエステル、イミダゾール、アクリジニウム塩、シュウ酸エステル、ジオキセタンまたはGFPおよびその類似体等)、放射性同位体、インビボ、インビトロまたはインサイチュー診断およびイメージングにおける使用に特に適した、金属、金属キレートもしくは金属カチオンまたは他の金属もしくは金属カチオン、ならびに発色団および酵素(リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、ブドウ球菌(staphylococcal)ヌクレアーゼ、デルタ-V-ステロイドイソメラーゼ、酵母アルコールデヒドロゲナーゼ、アルファ-グリセロリン酸デヒドロゲナーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、ビオチンアビジンペルオキシダーゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、アスパラギナーゼ、グルコースオキシダーゼ、ベータ-ガラクトシダーゼ、リボヌクレアーゼ、ウレアーゼ、カタラーゼ、グルコース-VI-リン酸デヒドロゲナーゼ、グルコアミラーゼおよびアセチルコリンエステラーゼ等)を含む。他の好適な標識は、NMRまたはESR分光法を使用して検出することができる部分を含む。そのような標識分子は、例えば、具体的な標識の選択に応じて、インビトロ、インビボまたはインサイチューアッセイ(ELISA、RIA、EIAおよび他の「サンドイッチアッセイ」等、それ自体が公知のイムノアッセイを含む)ならびにインビボ診断およびイメージング目的に使用されてもよい。別の改変は、例えば、上記で言及した金属または金属カチオンの1つをキレート化するための、キレート基の導入を伴っていてもよい。好適なキレート基は、例えば、限定されないが、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)またはエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を含む。また別の改変は、ビオチン-(ストレプト)アビジン結合対等の具体的な結合対の一部である官能基の導入を含んでいてもよい。そのような官能基を使用して、開示されている化合物を、結合対の残り半分と結合している、タンパク質、ポリペプチドまたは化学化合物と、すなわち、結合対の形成を介して、結合してもよい。例えば、そのようなコンジュゲートした分子を、例えば、検出可能なシグナル生成剤がアビジンまたはストレプトアビジンとコンジュゲートされている診断システムにおいて、レポーターとして使用してもよい。
【0130】
光学イメージング
開示されている化合物は、光学イメージングに有用である、検出可能な標識を含むことができる。若干数のアプローチを光学イメージングに使用することができる。種々の方法は、造影剤の供給源として、蛍光、バイオルミネッセンス、吸収または反射に依存している。フルオロフォアは、特異的な波長のエネルギーを吸収し、異なる(しかし同じく特異的な)波長でエネルギーを再放出する、化合物または部分である。ある特定の態様において、検出可能な標識は、近赤外(NIR)フルオロフォアである。好適なNIRフルオロフォアは、VivoTag-S(登録商標)680および750、Kodak X-SIGHT DyesおよびConjugates、DyLight 750および800 Fluors、Cy 5.5および7 Fluors、Alexa Fluor 680および750 Dyes、ならびにIRDye 680および800CW Fluorsを含むがこれらに限定されない。ある特定の態様において、光安定性および明るい発光を持つ量子ドットを、光学イメージングで使用することもできる。
【0131】
核医学イメージング
開示されている化合物は、核医学イメージングに有用な検出可能な標識(例えば、放射性核種)を含むことができる。核医学イメージングは、体内における放射性同位体の使用および検出を伴う。核医学イメージング技術は、シンチグラフィー、単光子放出コンピュータ断層撮影(SPECT)および陽電子放出断層撮影(PET)を含む。これらの技術において、放射性同位体からの放射線を、ガンマカメラによって捕捉して、二次元画像(シンチグラフィー)または三次元画像(SPECTおよびPET)を形成することができる。
【0132】
開示されている化合物に組み込むまたは直接的に結合することができる放射性同位体は、トリチウム、11C、13N、14C、15O、18Fl、62Cu、64Cu、67Cu、68Ga、76Br、82Rb、90Y、99mTc、111In、123I、124I、125I、131I、153Sm、201T1、186Re、188Re、117mSnおよび212Biを含むがこれらに限定されない。ある特定の態様において、放射性同位体は、ハロゲン化により、開示されている化合物と結合している。PETスキャンにおいて使用される放射性核種は、典型的には、短い半減期を持つ同位体である。典型的な同位体は、11C、13N、15O、18F、64Cu、62Cu、124I、76Br、82Rbおよび68Gaを含み、18Fが最も臨床的に利用されている。
【0133】
放射性同位体からのガンマ放射線は、ガンマ粒子検出デバイスを使用して検出することができる。いくつかの態様において、ガンマ粒子検出デバイスは、Gamma Finder(登録商標)デバイス(SenoRx、Irvine Calif.)である。いくつかの態様において、ガンマ粒子検出デバイスは、neoprobe(登録商標)GDSガンマ検出デバイス(Dublin、Ohio)である。
【0134】
陽電子放出断層撮影は、体内における機能プロセスの三次元画像または写真を生成する、核医学イメージング技術である。PETイメージングに使用されるいくつかの作用物質は、組織代謝または何らかの他の具体的な分子活性についての情報を提供する。検出可能な作用物質として使用することができる、一般に使用される作用物質または潜在的な作用物質は、64Cuジアセチル-ビス(N4-メチルチオセミカルバゾン)、18F-フルオロデオキシグルコース(FDG)、18F-フッ化物、3’-デオキシ-3’-[18F]フルオロチミジン(FLT)、18F-フルオロミソニダゾール、ガリウム、テクネチウム-99mおよびタリウムを含むがこれらに限定されない。放射線不透過性診断剤は、化合物、バリウム化合物、ガリウム化合物およびタリウム化合物から選択されてもよい。フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、フィコエリトリン、フィコシアニン、アロフィコシアニン、o-フタルアルデヒド(o-phthaldehyde)およびフルオレスカミンを含むがこれらに限定されない、多種多様な蛍光標識が当技術分野において公知である。有用な化学発光標識は、ルミノール、イソルミノール、芳香族アクリジニウムエステル、イミダゾール、アクリジニウム塩またはシュウ酸エステルを含んでいてもよい。
【0135】
若干数の三価金属放射性核種は、放射性同位体イメージング(例えば、インジウム-111(111In)ガリウム-67/68(67/68Ga)およびイットリウム-86(86Y))に、または標的化された放射性核種療法(例えば、90Yおよびルテチウム-177(177Lu))に好適な物理的特性を有する。ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)および/または1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-四酢酸(DOTA;CAS60239-18-1)を使用することができる(ChoeおよびLee、2007、Current Pharmaceutical Design、13:17~31;Liら、2007、J.Nuclear Medicine、「64Cu-Labeled Tetrameric and Octameric RGD Peptides for Small-Animal PET of Tumor avb3 Integrin Expression」、48:1162~1171;Nahrendorfら、2009、JACC Cardiovasc.Imaging、2:10:1213~1222;Liら、2009、Mol.Cancer Ther.、8:5:1239~1249;Yimら、2010、J.Med.Chem.、53:3944~3953;Dijkgraafら、2010、Eur.J.Nucl.Med.Mol.Imaging、21 Sep.2010オンライン公開;米国特許仮出願シリアル番号第10/792,582号;Dransfieldら、米国特許公開第US2010/0261875号;米国特許第7,666,979号を参照)。言及されている金属のうち、DOTA錯体は、DTPA錯体よりも熱力学的にかつ動力学的に安定である(Sosabowskiら、Nature Protocols 1、-972~976(2006)およびLeon-Rodriguezら、Bioconjugate chemistry、Jan.3,2008;19(2):391~402を参照)。
【0136】
磁気共鳴イメージング
開示されている化合物は、磁気共鳴イメージングを介して検出することができる。MRIは、非常に高い空間分解能を有するという利点を有し、形態学イメージングおよび機能的イメージングが非常に得意である。MRIは、概して、10-3mol/Lから10-5mol/L前後の感受性を有する。MR感受性を増大させるための改善は、磁界強度、光学的ポンピングまたは動的核分極を増大させることによる過分極を含む。感受性を増大させる化学交換に基づく多様なシグナル増幅スキームもある。
【0137】
キレート剤
いくつかの態様において、キレート剤を、開示されている化合物に結合するかまたは組み込んでもよく、放射性核種等の治療または診断剤をキレート化するために使用してもよい。例示的なキレート剤は、DTPA(Mx-DTPA等)、DOTA、TETA、NETAまたはNOTAを含むがこれらに限定されない。
【0138】
有用なキレート剤は、DTPA、DO3A、DOTA、EDTA、TETA、EHPG、HBED、NOTA、DOTMA、TETMA、PDTA、TTHA、LICAM、HYNICおよびMECAMを含むがこれら限定されない。本発明の別のイメージング剤であるTc99をキレート化するために、HYNICが特に有用である。
【0139】
インビボでがんを検出する
転移し、したがって、体の別の器官または組織に広がったもの等のがん細胞を、インビボイメージングデバイスを使用して検出するために、開示されている化合物を分子イメージングと組み合わせて使用することができる。したがって、開示されている化合物を含有する医薬組成物を対象に投与すること、および、次いで、イメージングデバイスを使用して、開示されている化合物の生体内分布を検出することを伴う、対象においてがん細胞を検出するための非侵襲的方法が提供される。いくつかの態様において、医薬組成物は、実質に注射される。他の態様において、医薬組成物は、循環中に注射される。
【0140】
開示されている化合物を、がん細胞の術中検出に使用することもできる。例えば、開示されている化合物を、がん患者におけるリンパ排液パターンを追跡するための術中リンパマッピング(ILM)に使用して、潜在的な腫瘍排液およびリンパ組織に広がったがんを評価することができる。これらの態様において、開示されている化合物は腫瘍に注射され、リンパ系を介するそれらの動きは、分子イメージングデバイスを使用して追跡される。別の例として、開示されている化合物を、がん細胞の存在について、例えば、腫瘍境界および腫瘍近位の組織の術中評価に使用することができる。これは、例えば、腫瘍を有効に切除する際および腫瘍の近位のがんの広がりを検出する際に、有用でありうる。
【0141】
がん細胞を検出するための開示されているイメージングの方法を、ここでは非侵襲的と称する。非侵襲的が意味するのは、開示されている化合物を、対象の体の外側から検出できることである。概して、これが意味するのは、シグナル検出デバイスが対象の体の外側に位置づけられていることである。しかしながら、開示されている化合物を、対象の体の内側からまたは対象の胃腸管の内側からまたは対象の呼吸器系の内側から検出することもできること、および、そのようなイメージングの方法も具体的に企図されていることが理解される。例えば、術中検出のために、シグナル検出デバイスを、対象の体の外側または内側のいずれかに位置付けることができる。このことから、イメージングの非侵襲的方法を、手術等の侵襲的手順とともに、それと同時に、またはそれと組み合わせて使用することができることを理解すべきである。
【0142】
いくつかの態様において、方法を使用して、対象におけるがんを診断する、または対象の特定の器官におけるがんを検出することができる。この方法の特に有用な側面は、リンパ節等の二次組織もしくは器官内、または腫瘍境界もしくはその付近において、転移性がん細胞を捜索する能力である。したがって、開示されている方法を、乳がん等のがんを有するまたは有する疑いがある患者において、リンパ節の状態を評価するために使用することができる。これは、組織または器官の生検を行う、例えば、リンパ節を除去する、必要性を回避する。いくつかの態様において、方法は、患者に、開示されている化合物を投与すること、および化合物がリンパ節の細胞と結合されたか否かを検出することを伴う。これらの態様のいくつかにおいて、リンパ節は、腋窩リンパ節(ALN)であってよい。他の態様において、リンパ節は、センチネルリンパ節であってよい。さらなる態様において、腋窩とセンチネルリンパ節の両方を、作用物質の、リンパ節の細胞との結合について評価することができる。
【0143】
方法を、他の治療または診断方法とともに使用することもできる。例えば、方法を、例えば「術中指導」または「画像誘導手術」とここで称される、がん除去を誘導するための手術中に使用することもできる。特定の態様において、方法を、患者のリンパ節におけるがん細胞を除去するまたは破壊するための治療的処置に使用することができる。例えば、開示されている化合物を患者に投与することができ、癌性組織の位置(例えば、リンパ節)を、画像誘導手術を使用して決定し、除去することができる。別の好ましい態様において、方法を、腫瘍切除後の顕微鏡的断端陽性を予防するための治療的処置に使用することができる。例えば、開示されている化合物を患者に投与することができ、腫瘍周囲のがん細胞の位置を決定することができ、画像誘導手術を使用して、完全な腫瘍除去をすることができる。これらの態様において、医師は、開示されている化合物を患者に投与し、イメージングデバイスを使用して、がん細胞を検出し、組織の切除を誘導し、がんのすべてが除去されることを確実にする。加えて、イメージングデバイスを手術後に使用して、いずれかのがんが残っているまたは再発しているかどうかを決定することができる。
【0144】
いくつかの態様において、開示されている化合物を、治療化合物と結合させることができる。治療化合物または部分は、がん細胞を直接的に死滅させるもしくは阻害するもの(例えば、シスプラチン)であってよく、またはがん細胞を間接的に死滅させるもしくは阻害するもの(例えば、光源を使用して加熱された場合にがん細胞を死滅させるまたは破壊する金ナノ粒子)であってよい。治療化合物または部分が、がん細胞を間接的に死滅させるもしくは阻害するものであれば、方法は、該化合物または部分の抗がん活性を「活性化する」または別様に実行するために適切な行動をとる工程をさらに含む。特定の態様において、作用物質と結合している治療化合物または部分は、金ナノ粒子であってよく、患者への投与および作用物質のがん細胞との結合の後、金ナノ粒子を、例えばレーザー光を使用して加熱して、付近のがん細胞を死滅させるまたは破壊する(光熱アブレーション)。例えば、いくつかの態様において、方法は、開示されている化合物を使用して、対象からがんを検出し切除するための画像誘導手術、続いて、残りのがん細胞を死滅させるための、治療化合物と結合している、同じまたは異なる開示されている化合物の使用を伴う。
【0145】
開示されている方法のがんは、無秩序な成長を経ている対象における任意の細胞であってよい。がんは、転移が可能な任意のがん細胞であってよい。例えば、がんは、肉腫、リンパ腫、白血病、癌腫、芽細胞腫または胚細胞腫瘍であってよい。検出するために、開示されている組成物が使用されるがんの、代表的であるが非限定的なリストは、リンパ腫、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、菌状息肉腫、ホジキン病、骨髄性白血病、膀胱がん、脳腫瘍、神経系がん、頭頸部がん、頭頸部の扁平上皮細胞癌、腎臓がん、小細胞肺がんおよび非小細胞肺がん等の肺がん(lung cancer)、神経芽細胞腫/膠芽細胞腫、卵巣がん、膵臓がん、前立腺がん、皮膚がん、肝臓がん、黒色腫、口、喉、喉頭および肺の扁平上皮細胞癌、結腸がん、子宮頸がん、子宮頸癌、乳がん、上皮がん、腎臓がん、泌尿生殖器のがん、肺がん(pulmonary cancer)、食道癌、頭頸部癌、大腸がん、造血がん;精巣がん;結腸直腸がん、前立腺がん、ならびに膵臓がんを含む。
【0146】
がんは、乳がんであってよい。腺管を起源とする乳がんは、腺管癌として公知であり、腺管に乳を供給する小葉を起源とするものは、小葉癌として公知である。乳がん転移の一般的な部位は、骨、肝臓、肺および脳を含む。
【0147】
がんは、非小細胞肺癌(NSCLC)であってよい。NSCLCは、小細胞肺癌(SCLC)以外のあらゆる種類の上皮肺がんである。最も一般的な種類のNSCLCは、扁平上皮細胞癌、大細胞癌および腺癌であるが、出現する頻度が低いいくつかの他の種類があり、すべての種類が、異常な組織学的変種において、混合細胞型組合せとして出現することができる。
【0148】
イメージングおよび同定に基づく行動
開示されている方法は、イメージング、測定、検出、比較、分析、アッセイ、スクリーニング等に基づく、対象、疾患、状態、状況等の、決定、同定、指示、相関関係、診断、予後等(集合的に「同定」と称することができるもの)を含む。例えば、開示されているイメージング方法は、がん細胞、転移がん細胞、腫瘍境界を越えたがん細胞等を有する、患者、器官、組織等の同定を可能にする。そのような同定は、多くの理由で有用である。例えば、特に、そのような同定は、行われる特定の同定に基づき、またはそれらに関係して、具体的な行動をとらせる。例えば、特定の対象における特定の疾患または状態の診断(および他の対象におけるその疾患または状態の診断の欠如)は、診断に基づき、治療、行動、挙動等から利益を得るであろう対象を同定するという非常に有用な効果を有する。例えば、同定された対象における特定の疾患または状態の治療は、そのような同定を行わない(または同定に関係のない)すべての対象の治療とは著しく異なる。治療を必要としているまたは治療により利益を得ることができる対象は治療を受けるであろうし、治療を必要としていないまたは治療により利益を得ないであろう対象は治療を受けないであろう。
【0149】
したがって、開示されている同定の後、それに基づいて特定の行動をとることを含む方法も、ここで開示される。例えば、同定の記録を(物理的な-例えば、紙、電子、または他の-形態等で)作成することを含む方法が開示される。故に、例えば、開示されている方法に基づいて同定の記録を作成することは、イメージング、測定、検出、比較、分析、アッセイ、スクリーニング等を単に実施することとは物理的におよび明白に異なる。そのような記録は、同定を、例えば、他者(同定に基づいて、対象を、治療する、モニターする、経過観察する、助言する等ができる人)に伝えることができる有形の形式に整えさせ;後の使用または見直しのために保持させ;異なるイメージング、測定、検出、比較、分析、アッセイ、スクリーニング等に基づいて、対象のセット、治療有効性、同定の正確さを評価するためのデータとして使用させるという点で、特に実質的かつ有意である。例えば、同定の記録のそのような使用は、例えば、同定の記録を行った個体もしくは実体と、同じ個体もしくは実体によって、異なる個体もしくは実体によって、または同じ個体もしくは実体と異なる個体もしくは実体との組合せによって行うことができる。記録を作成する開示されている方法を、ここで開示されている任意の1以上の他の方法と、特に、開示されている同定の方法の任意の1以上の工程と組み合わせることができる。
【0150】
別の例として、1以上の他の同定に基づいて、1以上のさらなる同定を行うことを含む方法が開示される。例えば、特定の、治療、モニタリング、経過観察、助言等を、他の同定に基づいて、同定することができる。例えば、高レベルの特定の構成要素または特徴を持つ疾患または状態を有する対象の同定を、該高レベルの構成要素または特徴に基づくまたはそれを対象とする療法で治療できるまたはすべき対象として、さらに同定することができる。そのようなさらなる同定の記録を(例えば上述した通りに)作成することができ、任意の好適な手法で使用することができる。そのようなさらなる同定は、例えば、他の同定、そのような他の同定の記録または組合せに直接的に基づくものであってよい。そのようなさらなる同定は、例えば、他の同定を行った個体もしくは実体と、同じ個体もしくは実体によって、異なる個体もしくは実体によって、または同じ個体もしくは実体と異なる個体もしくは実体との組合せによって、行うことができる。さらなる同定を行う開示されている方法を、ここで開示されている任意の1以上の他の方法と、特に、開示されている同定の方法の任意の1以上の工程と組み合わせることができる。
【0151】
別の例として、開示されている方法のいずれかにおいて同定された対象を、治療すること、モニターすること、経過観察すること、助言すること等を含む方法が開示される。開示されている方法のいずれかから同定の記録が行われた対象を、治療すること、モニターすること、経過観察すること、助言すること等を含む方法も開示される。例えば、特定の、治療、モニタリング、経過観察、助言等を、同定に基づいて、かつ/または同定の記録に基づいて、使用することができる。例えば、高レベルの特定の構成要素または特徴を持つ疾患または状態を有すると同定された対象(および/またはそのような同定の記録が行われた対象)を、該高レベルの構成要素または特徴に基づくまたはそれを対象とする療法で治療することができる。そのような治療、モニタリング、経過観察、助言等は、例えば、同定、そのような同定の記録、または組合せに直接的に基づくものであってよい。そのような治療、モニタリング、経過観察、助言等は、例えば、同定および/もしくは同定の記録を行った個体もしくは実体と、同じ個体もしくは実体によって、異なる個体もしくは実体によって、または同じ個体もしくは実体と異なる個体もしくは実体との組合せによって、実施することができる。治療する、モニターする、経過観察する、助言する等の開示されている方法を、ここで開示されている任意の1以上の他の方法と、特に、開示されている同定の方法の任意の1以上の工程と組み合わせることができる。
【0152】
治療の方法
開示されている化合物を使用して、疾患または障害を治療するまたは予防する方法が提供される。開示されている化合物は、マンノース結合C型レクチン受容体高発現細胞を標的化するために使用することができる。開示されている化合物は、細胞内病原体(結核菌(M tuberculosis)、野兎病菌(F. tularensis)、腸チフス菌(S. typhi))の治療のためのマクロファージの標的化に使用することができる。開示されている化合物を使用して、例えば、がんを治療するために使用される腫瘍関連マクロファージを標的化することができる。
【0153】
ここでの組成物および方法が使用されていてもよいマクロファージ関連および他のマンノース結合C型レクチン受容体高発現細胞関連疾患は、後天性免疫不全症候群(AIDS)、急性播種性脳脊髄炎(ADEM)、アジソン病、無ガンマグロブリン血症、アレルギー性疾患、円形脱毛症、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症、強直性脊椎炎、抗リン脂質症候群、抗シンセターゼ症候群、動脈プラーク障害、喘息、アテローム性動脈硬化症、アトピー性アレルギー、アトピー性皮膚炎、自己免疫性再生不良性貧血、自己免疫性心筋症、自己免疫性腸症、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性肝炎、自己免疫性甲状腺機能低下症、自己免疫性内耳疾患、自己免疫性リンパ増殖性症候群、自己免疫性末梢神経障害、自己免疫性膵炎、自己免疫性多内分泌症候群、自己免疫性プロゲステロン皮膚炎、自己免疫性血小板減少性紫斑病、自己免疫性じんましん、自己免疫性ブドウ膜炎、バロー病/バロー同心円性硬化症、ベーチェット病、バージャー病、ビッカースタッフ型脳幹脳炎、ブラウ症候群、水疱性類天疱瘡、キャッスルマン病、セリアック病、シャーガス病、慢性炎症性脱髄性多発神経障害、慢性再発性多巣性骨髄炎、慢性閉塞性肺疾患、慢性静脈うっ血性潰瘍、チャーグ・ストラウス症候群、瘢痕性類天疱瘡、コーガン症候群、寒冷凝集素症、補体成分2欠乏症、接触性皮膚炎、頭蓋動脈炎、クレスト症候群、クローン病、クッシング症候群、皮膚白血球破砕性血管炎、ドゴー病、ダーカム病、ヘルペス状皮膚炎、皮膚筋炎、I型真性糖尿病、II型真性糖尿病、びまん性皮膚全身性硬化症、ドレスラー症候群、薬物誘発性ループス、円板状エリテマトーデス、湿疹、肺気腫、子宮内膜症、腱付着部炎関連関節炎、好酸球性筋膜炎、好酸球性胃腸炎、好酸球性肺炎、後天性表皮水疱症、結節性紅斑、胎児赤芽球症、本態性混合型クリオグロブリン血症、エヴァンズ症候群、進行性骨化性線維異形成症、線維化性肺胞炎(または特発性肺線維症)、胃炎、胃腸疱瘡、ゴーシェ病、糸球体腎炎、グッドパスチャー症候群、グレーブス病、ギラン・バレー症候群(GBS)、橋本脳症、橋本甲状腺炎、心臓疾患、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病、妊娠性疱疹(別名妊娠性類天疱瘡)、化膿性汗腺炎、HIV感染、ヒューズ・ストービン症候群、低ガンマグロブリン血症、感染性疾患(細菌感染性疾患を含む)、特発性炎症性脱髄疾患、特発性肺線維症、特発性血小板減少性紫斑病、IgA腎症、封入体筋炎、炎症性関節炎、炎症性腸疾患、炎症性認知症、間質性膀胱炎、間質性肺炎、若年性特発性関節炎(別名若年性関節リウマチ)、川崎病、ランバート・イートン筋無力症候群、白血球破砕性血管炎、扁平苔癬、硬化性苔癬、線状IgA病(LAD)、ルポイド肝炎(別名自己免疫性肝炎)、エリテマトーデス、リンパ腫様肉芽腫、マジード症候群、がん(例えば、肉腫、カポジ肉腫、リンパ腫、白血病、癌腫および黒色腫)を含む悪性腫瘍、メニエール病、顕微鏡的多発血管炎、ミラー・フィッシャー症候群、混合性結合組織病、斑状強皮症、ムッハ・ハーベルマン病(別名急性痘瘡状苔癬状粃糠疹)、多発性硬化症、重症筋無力症、筋炎、ナルコレプシー、視神経脊髄炎(別名デビック病)、神経性筋緊張病、眼部(occular)瘢痕性類天疱瘡、オプソクローヌス・ミオクローヌス症候群、オード甲状腺炎、回帰性リウマチ、PANDAS(小児自己免疫性溶連菌感染関連性神経精神障害)、傍腫瘍性小脳変性症、パーキンソン障害、発作性夜間血色素尿症(PNH)、パリー・ロンバーグ症候群、パーソネージ・ターナー症候群、扁平部炎、尋常性天疱瘡、末梢動脈性疾患、悪性貧血、静脈周囲脳脊髄炎、POEMS症候群、結節性多発動脈炎、リウマチ性多発筋痛症(polymyalgia rheumatic)、多発性筋炎、原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎、進行性炎症性神経障害、乾癬、乾癬性関節炎、壊疽性膿皮症、赤血球糸無形成症、ラスムッセン脳炎、レイノー現象、再発性多発性軟骨炎、ライター症候群、再狭窄、むずむず脚症候群、後腹膜線維症、関節リウマチ、リウマチ熱、サルコイドーシス、統合失調症、シュミット症候群、シュニッツラー症候群、強膜炎、強皮症、敗血症、血清病、シェーグレン症候群、脊椎関節症、スティル病(成人発症)、スティッフパーソン症候群、脳卒中、亜急性細菌性心内膜炎(SBE)、スザック症候群、スイート症候群、シデナム舞踏病、交感性眼炎、全身性エリテマトーデス、高安動脈炎、側頭動脈炎(別名「巨細胞性動脈炎」)、血小板減少症、トロサ・ハント症候群、移植(例えば、心臓/肺移植)拒絶反応、横断性脊髄炎、結核、潰瘍性大腸炎、未分化結合織疾患、未分化脊椎関節症、じんましん様血管炎、血管炎、白斑、およびウェゲナー肉芽腫症を含むがこれらに限定されない。
【0154】
‘990特許において記述されているチルマノセプトおよび他の関連担体分子、ならびにデキストラン骨格に基づく他の担体分子は、哺乳動物に投与された場合、または、マンノース結合C型レクチン受容体高発現細胞とエクスビボで接触した場合、マクロファージおよびある特定の他の細胞(例えば、樹状細胞およびカポジ肉腫紡錘細胞)の表面において見られるCD206およびCD209等のマンノース受容体タンパク質と結合する。CD206およびCD209は、マクロファージおよびある特定の他の種類の細胞の表面において見られる、C型レクチン結合タンパク質である。例えばマクロファージの表面において見られるCD206およびCD209等のマンノース結合C型レクチン受容体が、哺乳類患者におけるチルマノセプト結合のためのゲートウェイであるという所見は、チルマノセプト担体分子(および関連担体分子)を、マクロファージ関連疾患ならびにCD206およびCD209高発現細胞等のマンノース結合C型レクチン受容体によって媒介される他の疾患の診断および/または治療において使用するための、多様な治療的におよび診断的に有効な分子種を調製するための基礎として使用することができることを意味する。
【0155】
開示されている化合物は、細胞毒性剤、抗血管新生剤、アポトーシス促進剤、抗生物質、ホルモン、ホルモンアンタゴニスト、ケモカイン、薬物、プロドラッグ、毒素、酵素、または他の作用物質を含むがこれらに限定されない、治療剤を含むことができる。開示されている化合物は、化学治療剤、抗生物質、免疫学的アジュバント、結核を治療するために有用な化合物、ステロイド、ヌクレオチド、ペプチド、またはタンパク質を含むことができる。
【0156】
ある特定の態様において、化合物は、抗生物質;抗結核抗生物質(イソニアジド、エタンブトール等);抗レトロウイルス薬、例えば、逆転写の阻害剤(ジドブジン等)またはプロテアーゼ阻害剤(インジナビル等);リーシュマニア症に対して効果を持つ薬物(アンチモン酸メグルミン等)、またはそれらの任意の組合せを含むまたはそれらからなる群から選択される抗菌薬を含む。ある特定の態様において、化合物は、アモキシシリン、アンピシリン、テトラサイクリン、アミノグリコシド(例えば、ストレプトマイシン)、マクロライド(例えば、エリスロマイシンおよびその類縁体)、クロラムフェニコール、イベルメクチン、リファマイシンおよびポリペプチド抗生物質(例えば、ポリミキシン、バシトラシン)ならびにツヴィッターマイシン等の、抗菌活性物を含む。ある特定の態様において、化合物は、イソニアジド、ドキソルビシン、ストレプトマイシンおよびテトラサイクリン、またはそれらの任意の組合せから選択される、活性物を含む。開示されている化合物を使用して、例えば、結核、ブドウ球菌(Staphylococcus)、連鎖球菌(Streptococcus)、酵母、セラチア(Serratia)、大腸菌(E. coli)、および緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)感染を治療することができる。
【0157】
ある特定の態様において、開示されている化合物は、有利に、微生物によって引き起こされる状態または障害、例えば、結核、AIDS、HIV感染およびリーシュマニア症、またはそれらの任意の組合せを含むまたはそれらからなる群から選択される状態または障害の治療において有効性を有する。
【0158】
ある特定の態様において、開示されている化合物は、がんの治療または予防のための化学治療剤を含む。がんは、転移が可能な任意のがん細胞であってよい。例えば、がんは、肉腫、リンパ腫、白血病、癌腫、芽細胞腫または胚細胞腫瘍であってよい。開示されている組成物を使用して治療するまたは予防することができるがんの代表的であるが非限定的なリストは、リンパ腫、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、菌状息肉腫、ホジキン病、骨髄性白血病、膀胱がん、脳腫瘍、神経系がん、頭頸部がん、頭頸部の扁平上皮細胞癌、腎臓がん、小細胞肺がんおよび非小細胞肺がん等の肺がん(lung cancer)、神経芽細胞腫/膠芽細胞腫、卵巣がん、膵臓がん、前立腺がん、皮膚がん、肝臓がん、黒色腫、口、喉、喉頭および肺の扁平上皮細胞癌、結腸がん、子宮頸がん、子宮頸癌、乳がん、上皮がん、腎臓がん、泌尿生殖器のがん、肺がん(pulmonary cancer)、食道癌、頭頸部癌、大腸がん、造血がん;精巣がん;結腸直腸がん、前立腺がん、ならびに膵臓がんを含む。
【0159】
ある特定の態様において、開示されている化合物は、関節リウマチ、ループス(SLE)または血管炎等の自己免疫疾患を治療するために有効である。ある特定の態様において、開示されている化合物は、クローン病、炎症性腸疾患または膠原血管病等の炎症性疾患を治療するために有効である。
【0160】
当業者であれば、開示されている化合物を使用して、種々の種類の分子および化合物(例えば、治療剤、検出標識、およびそれらの組合せ)を細胞または組織に送達できることが分かるであろう。
【0161】
投与
開示されている化合物は、任意の好適な方法によって投与することができる。開示されている化合物は、開示されている化合物が標的組織(例えば、ここにがん細胞が位置づけられていてもよい)に到達するように、実質中または循環中に非経口的に投与することができる。開示されている化合物は、腫瘍塊中に直接的にまたはそれに隣接して投与することができる。開示されている化合物は、静脈内に投与することができる。さらに他の態様において、開示されている化合物は、腹腔内に、筋肉内に、皮下に、洞内または経皮的に投与することができる。
【0162】
化合物の非経口投与は、使用される場合、概して、注射によって特徴付けられる。注射用物質は、従来の形態で、液体溶液または懸濁液のいずれかとして、注射前の液体中懸濁液の溶液に好適な固体形態で、またはエマルションとして、調製することができる。非経口投与のための修正されたアプローチは、一定の投薬量が維持されるような緩徐放出または持続放出系の使用を伴う。
【実施例
【0163】
[実施例]
例1
ヒトマクロファージとのチルマノセプト-Cy3結合
リンパ球またはマクロファージからなる、ある分量のPBMCを、5日間培養して、血中単球をマクロファージ(ヒト単球由来のマクロファージまたは「MDM」)に分化させ、次いで、非標識(コールド)チルマノセプトを用いてまたは用いずに前処置した。次に、細胞を、種々の濃度(1.25、2.5、5.0、10および20μg/mL)のCy3標識チルマノセプト(Cy3-チルマノセプト)とともにインキュベートした。PBMC細胞集団とのチルマノセプト結合を、マクロファージおよびリンパ球について別個にゲーティングすることによるフローサイトメトリーによって分析した。得られたデータは、チルマノセプトが、図1Aに示されている通り、用量依存様式でマクロファージ集団と特異的に結合していることを示していた。図1Aは、PBMCの蛍光活性化細胞分類(「FACS」)分析を、マクロファージおよびリンパ球に焦点を合わせて示している。コールドチルマノセプト(100倍過剰)で前処置したマクロファージについて、Cy3-チルマノセプトの結合は、図1Bに示されている通り、最高濃度であってもほぼ解除されていた(非標識チルマノセプトの存在下でのマクロファージとのチルマノセプト-Cy3結合の阻害を示すFACS分析**P<0.005)。
【0164】
これらの所見を裏付けるために、MDMを単層培養において同様の手法で処置し、蛍光共焦点顕微鏡実験を実施した。Cy3-チルマノセプトの、マクロファージとの結合は、容易に明らかとなり、この結合は、図1Cに示されている通り、コールドチルマノセプトで前処置したマクロファージについてはほぼ解除されていた。示されているデータは、それぞれ2連にて実施した2つの独立した実験の代表であり、結果は、チルマノセプトの、マクロファージとの受容体媒介結合と一致していた。図1C中の左上下画像は、共焦点顕微鏡の代表画像(倍率:120倍)を示し、これは、フルオロフォアのないチルマノセプトの非存在下または存在下での、チルマノセプト-Cy3の、マクロファージとの結合(左上)および結合の阻害(左下)をそれぞれ示す。灰色の領域はマクロファージ核を示し、白色部分はチルマノセプト-Cy3を示す。図1C中の右上下画像は、(各DIC画像の左に)隣接する蛍光画像の個々の細胞構造を示すDIC画像である。「DIC」は、微分干渉コントラスト法(位相コントラスト顕微鏡法)である。
【0165】
例2
ヒトマクロファージにおけるチルマノセプトのCD206マンノース受容体との共局在化
MDM単層を、Cy3-チルマノセプトとともに10分間にわたってインキュベートし、パラホルムアルデヒドで固定し、抗MR一次抗体とともにインキュベートし、Alexa Fluor 488コンジュゲート二次抗体で染色した。次いで、単層を共焦点顕微鏡によって分析した。図2は、CD206MRの発現を示す代表的な共焦点画像(倍率:160倍)(図2A)、マクロファージによるチルマノセプト結合(図2B)、および共焦点と位相コントラスト画像の両方におけるMRとチルマノセプトとの間の共局在化(図2Cおよび2D)を例証するものである。示されている結果は、3つの独立した実験の代表である。
【0166】
例3
チルマノセプトの、結核に感染させたマクロファージとの結合。
【0167】
TB肉芽腫の構成要素を構成する単層培養中のヒト単球由来のマクロファージを、マクロファージ(GFP=緑色蛍光タンパク質)によって内部移行されたGFP発現結核菌(M. tuberculosis)に感染させた。次いで、感染細胞を、シアニン(Cy3)色素で標識したチルマノセプトに暴露し、共焦点顕微鏡によって分析した。故に、図3は、Cy3-チルマノセプトが、マクロファージと結合し、それによって内部移行されていることを実証する。
【0168】
例4
関節リウマチを持つ対象の滑液におけるチルマノセプトの局在化。
【0169】
組織を、チルマノセプト-Cy3、DAPI核蛍光体および抗CD206シアニングリーンで探査した。組織および体液をマイクロ蛍光によってイメージングし、正常な冷凍保存組織(normal frozen archival tissue)および変形性関節症(OA)患者から得た滑膜組織と比較した。MP局在化および蛍光の程度を、デジタル画像解析によって比較した。結果は、RAを持つ対象からの滑膜組織および体液が、高レベルのCD206を発現させる大規模なマクロファージ集団を含有することを示していた。加えて、これらのMPは、Cy3-チルマノセプトをCD206上に強く局在化させる。加えて、正常およびOA組織におけるマクロファージ浸潤およびCD206滞留の程度は、図4に見られる通り、RA組織におけるものよりも有意に低い。故に、本発明の担体分子は、フルオロフォア等の検出可能な部分が設けられている場合、滑液からRAを(インビボまたはエクスビボのいずれかで)診断するだけでなく、RAをOAから識別することもできる。
【0170】
例5
Cy3-チルマノセプトを使用する、マウスの軟骨の抗体誘発性関節炎におけるマクロファージのイメージング
関節炎を、マウスにおいて、5モノクローナル抗体抗軟骨カクテルの注射、続いて、3日後の大腸菌(E. coli)リポ多糖の注射によって、誘発させた。マウスは、7~11日で、足、手関節、足根、肘および膝において、関節炎の証拠となる、様々な程度の関節の腫脹および発赤を発病した。7または8日目にマウスをインビボでイメージングし、9または11日目にマウスを安楽死させた。安楽死後、四肢を切断し、皮膚を除去し、試料を再イメージングし(落射蛍光イメージング)、放射線写真を撮り(Faxitron MX20)、次いで、脱灰し、包埋し、H&Eで染色した。
【0171】
落射蛍光イメージングのために、マウスにCy3-チルマノセプトを静脈内注射し、落射蛍光イメージングは、IVIS Lumina II機械(Caliper Life Sciences、Hopkinton、MA)を使用し、インビボおよびエクスビボにて1~2時間で行った。Living Imageソフトウェアを使用して、可視光および蛍光画像を可視化し、関心領域(「ROI」)およびバックグラウンド蛍光の減算を使用して光子の数を定量化した。安楽死後、四肢を切断し、皮膚を除去し(指を除く)、再イメージングした。特異的な蛍光は、図5に見られる通り、関節炎の膝および肘において検出された。図6は、免疫介在性関節炎を持つマウス(上)および対照マウス(下)の肘および足のインビボ蛍光を示す。関節炎を持つマウスは、肘におけるCy3-チルマノセプトにより、対照マウスと比較して増大した蛍光を有していた。皮膚からのバックグラウンド蛍光があり、これは足において顕著であった。図7は、エクスビボ蛍光データを示し、図8は、対照マウスおよび免疫介在性関節炎を持つマウスの膝のエクスビボ蛍光を示す。処置マウス(下の画像)においては両膝が関節炎を有していたが、右側の膝は、より重度に罹患しており、Cy3-チルマノセプト標識化により、より大きい蛍光を有していた。
【0172】
例6
コンジュゲートしたチルマノセプト-リンカーの合成
【0173】
【化12】
【0174】
リンカーLの合成:ジクロロメタン(80mL)中のコハク酸無水物(2g、20mmol)溶液に、ジクロロメタン(20mL)に溶解したカルバジン酸tert-ブチル(2.6g、20mmol)を、30分間かけて添加した。次いで、DMAP(0.020g、0.16mmol)を添加し、得られた反応混合物を、窒素下で終夜攪拌した。反応混合物を減圧下で濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(MeOH/CH2Cl2)後に、純粋なリンカーLが取得された。
【0175】
リンカーの、チルマノセプトとのコンジュゲーション:DMSO(3mL)中のL(0.050g、0.21mmol)の溶液に、N-ヒドロキシコハク酸イミド(0.052、0.45mmol)、続いて、ヒューニッヒ塩基(0.1mL、0.57mmol)、次いで、EDC(0.025g、0.13mmol)を添加した。得られた反応混合物を48時間にわたって攪拌した。この時間の後、1mLのDMSOに溶解したチルマノセプト(0.010g)を添加し、得られた反応混合物を24時間にわたって攪拌した。反応混合物を20mLの脱イオン水にゆっくり添加することによって、反応混合物をクエンチした。改変ポリマーを、脱イオン水に対する透析によって、コンジュゲートしていない小分子から精製した。終夜凍結乾燥後に、純粋なポリマー3が淡黄色粉末(13mg)として収集された。
【0176】
例7
DOXの、改変チルマノセプトとのコンジュゲーション
【0177】
【化13】
【0178】
リンカーコンジュゲートポリマー3を、DMSO(1mL)に溶解し、続いて、TFA(0.3mL)を添加した。得られた反応混合物を3時間にわたって攪拌して、中間体4を生成した。次いで、TFAを減圧下で2時間にわたって除去し、Dox.HCl(0.008g)、続いて、TFA(10μl)を添加した。得られた反応混合物を72時間にわたって攪拌し、次いで、残留TFAを減圧下で2時間にわたって除去した。反応混合物を、20mLの飽和NaHCO3溶液にゆっくり添加した。3kDカットオフのセントリコンフィルターを使用して、コンジュゲートしていないDoxからDoxコンジュゲートポリマーを精製した。
【0179】
例8
イソニアジドの、改変チルマノセプトとのコンジュゲーション
【0180】
【化14】
【0181】
チルマノセプト(10mg)を、無水DMSO(2mL)に溶解し、続いて、アンゲリカラクトン(20mg)を添加した。得られた反応混合物を、窒素下で3時間にわたって攪拌した。次いで、未反応のアンゲリカラクトンを減圧下で除去した。このようにして取得した改変チルマノセプト5を、2mLのDMSOに再度溶解した。この溶液に、イソニアジド(10mg)およびトリフルオロ酢酸(trifluroacetic acid)(30μl)を添加した。得られた反応混合物を37℃で48時間にわたって攪拌した。次いで、反応混合物を20mLの飽和NaHCO3溶液に添加することによって、反応物をクエンチした。未反応のイソニアジドを、セントリコン(3KDカットオフ)濾過によって除去した。イソニアジドコンジュゲートチルマノセプトをフリーズドライし、白色粉末として収集した。
【0182】
例9
イソニアジド単独と比較したチルマノセプト-イソニアジドの、ヒトマクロファージにおける結核菌(M.tb)に対する抗菌活性
12日齢のヒト単球由来のマクロファージ(MDM)を、ルシフェラーゼ発現結核菌(M. tuberculosis)H37Rv株(M.tb-Lux)に、1:2のMOIで2時間にわたって感染させて、MDMによる細菌取り込みを可能にした。細胞外細菌を洗い流した後、感染した単層を、異なる濃度のINHまたはTil-INH(2.0μΜから0.0156μΜ、薬物等価)とともに、低血清含有培地中、最大72時間にわたってインキュベートした。異なる時点(24、48および72時間)において、単層を溶解し、細胞内生菌の数に対応するRLUにおけるルミネッセンスについて読み取った。
【0183】
Til-INHは、マクロファージの内側で活性であった(図9を参照)。Til-INHがINH単独よりも強力であるとは判明せず、結核菌(M.tb)に対して0.0312μΜ濃度の低さでその活性を維持していた。しかしながら、Til-INHは、0.5μΜ濃度に匹敵する抗TB活性を示した。
【0184】
例10
カポジ肉腫病変細胞はCD206を発現させる
カポジ肉腫(KS)は、少なくとも下記の理由で、デキストラン-CD206標的化担体技術を評価するための有用なモデル腫瘍系となり得る:
・ KS腫瘍細胞および腫瘍関連マクロファージ(TAM)は、CD206を発現させる;
・ KSは、皮膚、節および内臓部位に関係し、デキストラン-CD206標的化担体の使用は、全身腫瘍組織量の評価を初めて可能にするであろう;
・ KS皮膚腫瘍は、組織アクセシビリティおよび治療応答の迅速な評価をインビトロおよびインビボで可能にする;
・ KSは、12~30%の抗レトロウイルス療法(ART)耐性を持つ最も一般的なHIV関連腫瘍であり;HIV陰性KSは稀なART耐性である;
・ ドキシル(リポソーマルドキソルビシン)は、KSに対して約50%しか臨床的に有効でない。作用機序は公知でなく;リポソームは、KS細胞および周囲の細胞(マクロファージ)によって薬物を破壊することができるリソソームに貪食される;ならびに
・ Cy3およびドキソルビシンをコンジュゲートしたチルマノセプト構築物は、a)定量的全身腫瘍組織量評価;ならびにb)取り込みの定量的組織評価ならびにc)インビトロおよびインビボでの療法に対する腫瘍応答の評価を可能にする。
【0185】
KS病変細胞の免疫表現型分析は、腫瘍関連マクロファージ(TAM)とKS細胞の両方の96%超が、ここで記述されている担体分子で具体的に標的化してKS病変を定義するまたはKSの標的治療を提供することができるマクロファージマーカーCD206を発現させることを確認した。66症例のAIDS KSおよび対照を含有する組織顕微鏡アレイ(TMA)を、AIDS and Cancer Specimen Resource(ACSR)から入手した。MO抗原をIHC研究によって同定し、結果をKSHV LANA+細胞の割合に標準化した(KS腫瘍特異的なマーカー)。TMAを、HHV8/KSHV潜伏抗原(LANA)、ならびにマクロファージマーカーMAC387(M1)、CD163(M2)、CD68(パンマクロファージ)およびCD206(マクロファージマンノース受容体、M2)の存在について染色して、KSの症例におけるこれらの抗原の分布率(prevalence)について試験した。TMAには、皮膚および内臓の病変が含まれる。66症例のKSの免疫組織化学分析の結果を、表1に示す。
【0186】
【表1】
【0187】
表1は、マクロファージ抗原を発現しているKS症例の、TAMおよびHHV8/KSHV LANA+腫瘍細胞に対する割合をまとめたものである。免疫組織化学分析は、マクロファージ抗原が、KS腫瘍関連細胞内で高度に会合していることを示す。KS病変内のCD68マクロファージ抗原染色の頻度は、広範囲にわたるTAM侵入を伴う腫瘍であるKSと高度に一致していた。また、限られた数の症例において報告されている通り、この広範囲にわたる分析は、KS紡錘細胞が、CD206を含むマクロファージ抗原も共発現させたことを確認した。
【0188】
KS組織中のほとんどのTAMがM2特異的抗CD163抗体で同定されたのに対し、M1抗MAC387抗体は細胞のより小さいサブセットを同定した。CD68抗体も、腫瘍の90%超において、多数のTAMを同定した。KS腫瘍紡錘細胞は概してマクロファージ抗原を発現させたが、KS腫瘍細胞(LANA+)とTAMの両方について最もよく見られる抗原は、CD206分子であった。MO抗原およびCD206の発現は、腫瘍組織内のLANAのレベルに関して、KSのすべての組織形態(プラーク、経口、内臓)全体にわたって類似していた。アフリカ人由来のKS組織の予備的研究は、同様の結果を示した。LANA+KS腫瘍細胞のほとんどは、CD206を共発現させた。CD68+組織マクロファージは、アフリカKS組織においてCD206抗原とも関連していた。結果は、TAMとKS腫瘍細胞の両方がCD206マクロファージマンノース受容体を発現させることを確認した(Ucciniら、AJP March 1997、150:929 938)。
【0189】
例11
カポジ肉腫細胞はCD206を発現させる
CD206/HHV8 IF染色およびアフリカKS組織の共焦点画像は、アフリカで処理された、KSを持つアフリカ人患者由来である、組織におけるHHV8潜伏抗原およびCD206の共発現を示した。CD68+組織マクロファージは、アフリカKS組織においてCD206抗原とも関連していた。画像の例については、図10を参照されたい。
【0190】
例12
カポジ肉腫細胞およびチルマノセプト
新たなKS生検組織培養からの免疫蛍光染色および共焦点顕微鏡は、(1)CD206+マクロファージと共局在化したチルマノセプト取り込み;(2)HHV8+KS腫瘍細胞によるチルマノセプト取り込み;および(3)CD68+組織マクロファージに関連するチルマノセプト取り込みを示した。図11を参照されたい。
【0191】
例13
カポジ肉腫細胞
チルマノセプトとコンジュゲートしたドキソルビシン(チルマノセプト-dox)は、実質的に例7で記述されている通りに調製した。
【0192】
CD206標的化アッセイは、インビトロの単球由来のCD206+マクロファージ(MO)とエクスビボの新たなカポジ肉腫(KS)腫瘍組織(AIDS and Cancer Specimen Resource[ACSR]によって提供されたもの)の両方を使用して行った。細胞および腫瘍標的との、化学治療剤(CTA)が結合している/していないチルマノセプト-Cy3(チルマノセプト-Cy3-CTAまたはチルマノセプト-Cy3)相互作用を、フローサイトメトリーおよび免疫組織化学によって追跡して、Cy3-チルマノセプト取り込みならびにKS腫瘍細胞およびTAMへの薬物の送達のための標的化能力を評価した。
【0193】
結果:インビトロ研究は、チルマノセプト-Cy3およびチルマノセプト-Cy3-CTAのCD206+MO取り込みが、時間および用量依存性であることを示した。新たなKS器官培養の共焦点顕微鏡評価は、KS腫瘍細胞とCD206+TAMの両方へのチルマノセプトの取り込みを確認した(図12~24を参照)。(図中において、チルマノセプトは時にマノセプトと称され;-チルマノセプト-Cy3はCy3-マノセプトと称され;チルマノセプト-Cy3とコンジュゲートしたドキソルビシンはマノセプトCy3-doxと称され;チルマノセプト-doxはマノセプト-doxまたはMAN-CTAと称されることに留意されたい。)
チルマノセプト-Cy3-Doxは、CD206結合マクロファージの約85%を死滅させ、約24時間後にCD206結合マクロファージの約15%を死滅させたチルマノセプト-Cy3とは対照的である(図16を参照)。図18は、KS細胞へのチルマノセプト-Cy3およびチルマノセプト-Cy3-Doxの取り込みを示す。
【0194】
チルマノセプト-Cy3-CTAへの暴露後のアポトーシス誘発は、MO上および腫瘍組織中におけるアネキシン-V発現増大によって確認した(図20を参照)。これを、CD206MOの損失によっておよびHHV8+紡錘細胞の損失によって終夜カップリングさせた(図16図21および図22を参照)。CTA単独に暴露した細胞に対しては効果が少なかった(図17を参照)。
【0195】
結論:MOおよびKS腫瘍組織のインビトロとエクスビボ研究の両方からの結果は、KS関連細胞への薬物の腫瘍特異的送達のために、チルマノセプト、CD206局在化剤が果たす役割を立証するものである。このアプローチは、HHV8とHIV保有宿主の両方の部位に対してインビボで有効であってもよい。
【0196】
例14
CD209はリンパ節組織微小環境においてチルマノセプトの結合に寄与する
免疫化学手順:
スライドガラス上のホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)リンパ節組織切片は、オハイオ州立大学外科部門によるフェーズ3臨床試験の準備を介して提供された[ClinicalTrials.gov登録番号NCT00911326]。組織切片を最初にキシレンで脱パラフィンし、続いて、段階的アルコール(100%、95%)で再水和させた。熱誘発エピトープ賦活化手順は、組織スライドを、クエン酸緩衝液(pH6.0)中、95℃で10分間にわたって加熱することによって行った(31)。各組織切片をPBS緩衝液で再水和させ、室温で3時間にわたってブロックし(PBS中5%脱脂粉乳+0.01%アジ化ナトリウム)、次いで、特異的一次抗体とともに、メーカー推奨の希釈液を使用し、加湿チャンバー内、4℃で終夜インキュベートした。PBSで広範囲にわたる洗浄の後、切片を、AF488をコンジュゲートした抗マウスおよびAF549をコンジュゲートした抗ウサギ二次抗体(二重染色法)により1時間にわたって室温で対比染色した。切片を再度広範囲にわたって洗浄し、核DNA染色DAPIにより10分間にわたって室温で染色した。室温で洗浄し乾燥させた後、スライドをFlow View 1000レーザー走査型共焦点顕微鏡(Olympus)によって調査した。共焦点画像の無作為に選択された群のMFIを、ピクセル強度測定(NIH Image J program)を使用して定量化した。
【0197】
樹状細胞(DC)はリンパ節においてマクロファージと共存しており、DCによって発現されるDC-SIGN(CD209)は別のマンナン結合受容体(37、38)であるため、がん患者由来のリンパ節を調査して、処理したFFPEリンパ節を抗MR抗体(AF488)および抗DC-SIGN抗体(AF549)で染色した後、共焦点顕微鏡により、それらがDCをマクロファージとともに含有しているか否かを決定した。結果は、がん患者由来のリンパ節が、マクロファージおよびDCを表す、MR-とDC-SIGN陽性細胞の両方を含有することを示す。
【0198】
次に、リンパ節領域においてDCがチルマノセプトを結合させることができるか否かを決定した。FFPEリンパ節組織切片を、抗原賦活化手順(上記の免疫組織化学方法を参照)、続いて、AF488標識チルマノセプトを伴うインキュベーションおよび抗DC-SIGN抗体による染色に供した。チルマノセプト(緑色)は、組織切片におけるDC-SIGN陽性細胞(赤色)の集団と、塊状に結合することが分かった(図25)。
【0199】
DC-SIGNとのチルマノセプト結合を検証するために、HEK293細胞にDC-SIGN発現構築物(または陽性対照としてMR発現構築物)をトランスフェクトし、細胞をAF488標識チルマノセプトとともにインキュベートした。フローサイトメトリー分析は、DC-SIGN発現細胞(DCSIGN-HEK293)がチルマノセプトを結合させることを示した。この細胞株におけるDC-SIGNとMRの両方によるチルマノセプト結合は、マンナンによって阻害可能であるが、DCSIGN-HEK293細胞についての阻害のレベルは、MR-HEK293細胞に対するものより低かった(29%対46%)。
【0200】
本開示は以下の実施形態を含む。
[1]
1以上のCD206標的化部分を有するデキストラン骨格と、それに結合している1以上の治療剤とを含む、化合物。
[2]
前記化合物が、式(II)の化合物:
【化15】

[式中、
各Xは、独立して、H、L 1 -AまたはL 2 -Rであり、
各L 1 およびL 2 は、独立して、リンカーであり、
各Aは、独立して、治療剤または検出標識またはHを含み、
各Rは、独立して、CD206標的化部分またはHを含み、
nは、ゼロより大きい整数であり、
少なくとも1つのRはCD206標的化部分を含み、少なくとも1つのAは治療剤を含む]
である、[1]に記載の化合物。
[3]
1以上のマンノース結合C型レクチン受容体標的化部分を有するデキストラン骨格と、それに結合している1以上の治療剤とを含む、化合物。
[4]
前記化合物が、式(II)の化合物:
【化16】

[式中、
各Xは、独立して、H、L 1 -AまたはL 2 -Rであり、
各L 1 およびL 2 は、独立して、リンカーであり、
各Aは、独立して、治療剤または検出標識またはHを含み、
各Rは、独立して、マンノース結合C型レクチン受容体標的化部分またはHを含み、
nは、ゼロより大きい整数であり、
少なくとも1つのRはマンノース結合C型レクチン受容体標的化部分を含み、少なくとも1つのAは治療剤を含む]
である、[3]に記載の化合物。
[5]
少なくとも1つのRが、マンノース、フコースおよびn-アセチルグルコサミンからなる群から選択される、[1]から[4]の何れか一項に記載の化合物。
[6]
少なくとも1つのAが、化学治療剤、抗生物質、免疫学的アジュバント、ステロイド、ヌクレオチド、抗原、ペプチド、タンパク質、マイクロRNA、siRNAおよび抗ウイルス薬からなる群から選択される、[1]から[5]の何れか一項に記載の化合物。
[7]
少なくとも1つのAが、ドキソルビシンからなる群から選択される、[1]から[6]の何れか一項に記載の化合物。
[8]
少なくとも1つのAが、金属である、[1]から[7]の何れか一項に記載の化合物。
[9]
少なくとも1つのAが、ガドリニウム、ガリウム、銀および銀抗生物質からなる群から選択される、[1]から[8]の何れか一項に記載の化合物。
[10]
少なくとも1つのL 1 が、O、SおよびNからなる群から選択される最大3個のヘテロ原子によって任意に中断されていてもよいC 2~12 炭化水素鎖である、[1]から[9]の何れか一項に記載の化合物。
[11]
少なくとも1つのL 1 が、-(CH 2 p S(CH 2 q NH-を含み、pおよびqは0から5の整数である、[1]から[10]の何れか一項に記載の化合物。
[12]
少なくとも1つのL 2 が、O、SおよびNからなる群から選択される最大3個のヘテロ原子によって任意に中断されていてもよいC 2~12 炭化水素鎖である、[1]から[11]の何れか一項に記載の化合物。
[13]
少なくとも1つのL 2 が、-(CH 2 p S(CH 2 q NH-を含み、pおよびqは独立して0から5の整数である、[1]から[12]の何れか一項に記載の化合物。
[14]
疾患を診断するおよび治療する方法であって、必要とする対象に、有効量の[1]から[13]の何れか一項に記載の化合物を投与すること、および前記対象の所定の位置において前記検出標識を検出することを含み、前記疾患が、AIDS、HIV感染およびリーシュマニア症から選択される、方法。
[15]
疾患を治療する方法であって、必要とする対象に、有効量の[1]から[13]の何れか一項に記載の化合物を投与することを含み、前記疾患が、AIDS、HIV感染およびリーシュマニア症から選択される、方法。
[16]
疾患を治療する方法であって、必要とする対象に、有効量の[1]から[13]の何れか一項に記載の化合物を投与することを含み、前記疾患が、自己免疫疾患、炎症性疾患またはがんである、方法。
[17]
腫瘍関連マクロファージを標的化する方法であって、必要とする対象に、有効量の[1]から[13]の何れか一項に記載の化合物を投与することを含む、方法。
[18]
前記化合物が、少なくとも1つの治療剤および少なくとも1つの検出標識を含有する、[14]から[17]の何れか一項に記載の方法。
[19]
リンカーが、前記1以上のCD206標的化部分、1以上のマンノース結合C型レクチン受容体標的化部分、1以上の治療剤および/または前記1以上の検出標識を結合させるために使用される、[14]から[18]の何れか一項に記載の方法。
[20]
少なくとも1つのL 1 が、分解可能なリンカーを含む、[14]から[19]の何れか一項に記載の方法。
[21]
少なくとも1つのL 1 が、加水分解性リンカーを含む、[14]から[20]の何れか一項に記載の方法。
[22]
少なくとも1つのL 1 が、酸感受性リンカーを含む、[14]から[21]の何れか一項に記載の方法。
[23]
前記疾患が、関節リウマチである、[16]および[18]から[22]の何れか一項に記載の方法。
[24]
前記疾患が、がんである、[16]および[18]から[22]の何れか一項に記載の方法。
[25]
前記がんが、肉腫、リンパ腫、白血病、癌腫、芽細胞腫、黒色腫または胚細胞腫瘍である、[24]に記載の方法。
[26]
前記がんが、カポジ肉腫である、[25]に記載の方法。
[27]
少なくとも1つのAが検出標識であり、前記検出標識がフルオロフォアである、[14]から[26]の何れか一項に記載の方法。
[28]
少なくとも1つのL 1 -Aが、キレート剤を含む、[14]から[27]の何れか一項に記載の方法。
本発明を詳細にその特定の態様を参照して記述してきたが、本発明の趣旨および範囲を逸脱することなく、種々の変更および修正が為され得ることが、当業者には明らかであろう。
図1A
図1B
図1C
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図11C
図11D
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25