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特許7066809超音波プローブ及び超音波処置アッセンブリ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-02
(45)【発行日】2022-05-13
(54)【発明の名称】超音波プローブ及び超音波処置アッセンブリ
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/16 20060101AFI20220506BHJP
   A61B 17/32 20060101ALI20220506BHJP
【FI】
A61B17/16
A61B17/32 510
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020195401
(22)【出願日】2020-11-25
(62)【分割の表示】P 2019528272の分割
【原出願日】2017-07-05
(65)【公開番号】P2021035607
(43)【公開日】2021-03-04
【審査請求日】2020-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】藤崎 健
(72)【発明者】
【氏名】坂本 宜瑞
(72)【発明者】
【氏名】横山 謙
(72)【発明者】
【氏名】吉嶺 英人
【審査官】小河 了一
(56)【参考文献】
【文献】特表2001-502216(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/16
A61B 17/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手軸に沿って基端側に配設された超音波トランスデューサに発生させた超音波振動を前記長手軸に沿って基端側から先端側に向かって伝達するプローブ本体部と、
前記長手軸に沿って前記プローブ本体部の先端側に設けられた処置部であって、
前記長手軸に対して直交又は略直交する第1の切削面と、
前記第1の切削面よりも前記長手軸に沿って基端側に設けられた第2の切削面と、
前記第1の切削面から前記長手軸に沿って先端側に向かって突出する先端面を有する凸部と
を有する処置部と
を具備し、
前記凸部は、前記長手軸に沿って基端側から先端側を見るとき、内視鏡の視野において認識される指標として視認可能な位置に設けられる超音波プローブ。
【請求項2】
前記凸部の前記先端面の面積は、前記第1の切削面の面積よりも小さい、請求項1に記載の超音波プローブ。
【請求項3】
前記第1の切削面は、角を有し、
前記凸部は、前記第1の切削面の前記角に配置されている、請求項1に記載の超音波プローブ。
【請求項4】
前記第1の切削面は、前記第2の切削面との間に端面を有し、
前記凸部は、前記第1の切削面の前記端面に沿って配置されている、請求項3に記載の超音波プローブ。
【請求項5】
前記第1の切削面は、前記第2の切削面との間に端面を有し、
前記凸部は、前記処置部を、前記長手軸に沿って先端側から基端側を見たときに、前記第1の切削面の中心を通る互いに直交する2軸を規定するとき、前記2軸上に形成され、かつ、前記端面に連続する、請求項1に記載の超音波プローブ。
【請求項6】
前記処置部は、前記長手軸に沿って基端側から先端側を見るときの内視鏡の視野において認識される指標として、前記処置部の最外縁の端面に凹部を有する、請求項1に記載の超音波プローブ。
【請求項7】
請求項1に記載の超音波プローブと、
前記長手軸に沿って前記プローブ本体部の基端に接続され、電力の供給により超音波振動を発生させ、前記長手軸に沿って前記超音波プローブの基端に前記超音波振動を入力して前記超音波振動を前記処置部に伝達する超音波トランスデューサと
を有する超音波処置アッセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、超音波プローブ及び超音波処置アッセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、超音波振動が伝達されると先端で骨に孔を形成することが可能な超音波プローブが開示されている。この超音波プローブでは、先端部の形状の孔が形成される。そして、この超音波プローブで骨に孔を形成する場合、切削粉は超音波プローブの基端側に排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許出願公開第2010/121197号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば超音波プローブを用いて処置を行う場合、処置した面を極力滑らかにすることが求められている。
この発明は、処置した面を極力滑らかにすることが可能な超音波プローブ及び超音波処置アッセンブリを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明の一態様に係る超音波プローブは、長手軸に沿って基端側に配設された超音波トランスデューサに発生させた超音波振動を前記長手軸に沿って基端側から先端側に向かって伝達するプローブ本体部と、前記長手軸に沿って前記プローブ本体部の先端側に設けられた処置部であって、前記長手軸に対して直交又は略直交する第1の切削面と、前記第1の切削面よりも前記長手軸に沿って基端側に設けられた第2の切削面と、前記第1の切削面から前記長手軸に沿って先端側に向かって突出する先端面を有する凸部とを有する処置部とを有する。前記凸部は、前記長手軸に沿って基端側から先端側を見るとき、内視鏡の視野において認識される指標として視認可能な位置に設けられる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、第1及び第2実施形態に係る処置システムを示す概略図である。
図2図2は、第1実施形態に係る処置システムの超音波プローブを示し、特に、処置部及びその近傍を拡大して示す概略図である。
図3図3は、図2中の矢印III方向から見た超音波プローブの処置部の概略図である。
図4図4は、図2に示す超音波プローブの処置部の概略的な斜視図である。
図5A図5Aは、図3中の5A-5A線に沿い、図4中の仮想面α1で示す部位の概略的な断面図である。
図5B図5Bは、図3中の5B-5B線に沿い、図4中の仮想面α2で示す部位の概略的な断面図である。
図5C図5Cは、図3中の5C-5C線に沿い、図4中の仮想面α3で示す部位の概略的な断面図である。
図6A図6Aは、図3中の6A-6A線に沿い、図4中の仮想面β1で示す部位の概略的な断面図である。
図6B図6Bは、図3中の6B-6B線に沿い、図4中の仮想面β2で示す部位の概略的な断面図である。
図7図7は、図5Bに示す断面を有する処置部を有する超音波プローブを有する処置具で骨に凹孔を形成している状態を示す概略図である。
図8図8は、膝蓋骨と脛骨との間の腱から採取した移植腱を示す概略図である。
図9A図9Aは、図8に示す移植腱を前十字靭帯の再建のために、大腿骨側の前十字靭帯のフットプリント部に骨孔を形成した状態を示す概略図である。
図9B図9Bは、図8に示す移植腱の骨片が入る大きさに、図9Aに示す骨孔に平行に骨孔を形成した状態を示す概略図である。
図9C図9Cは、図8に示す移植腱を前十字靭帯の再建のために、脛骨側の前十字靭帯のフットプリント部に骨孔を形成した状態を示す概略図である。
図9D図9Dは、図8に示す移植腱の骨片が入る大きさに、図9Cに示す骨孔に平行に骨孔を形成した状態を示す概略図である。
図9E図9Eは、図9Dに示す大腿骨側の骨孔に貫通孔を形成した状態を示す概略図である。
図10図10は、第1実施形態の第1変形例に係る超音波プローブの処置部及びその近傍を示す概略的な斜視図である。
図11A図11Aは、図10に示す処置部の先端部近傍の適宜のYX平面での断面を示す一例である。
図11B図11Bは、図10に示す処置部の先端部近傍の適宜のYX平面での断面を示す、図11Aとは異なる例である。
図11C図11Cは、図10に示す処置部の先端部近傍の適宜のYX平面での断面を示す、図11A及び図11Bとは異なる例である。
図12A図12Aは、図10に示す処置部の適宜のYX平面での断面を示す一例である。
図12B図12Bは、図10に示す処置部の適宜のYX平面での断面を示す、図12Aとは異なる例である。
図12C図12Cは、図10に示す処置部の適宜のYX平面での断面を示す、図12A及び図12Bとは異なる例である。
図13A図13Aは、第1実施形態の第2変形例に係る超音波プローブの処置部及びその近傍を示す概略的な斜視図である。
図13B図13Bは、第1実施形態の第2変形例の変形例に係る超音波プローブの処置部及びその近傍を示す概略的な斜視図である。
図13C図13Cは、第1実施形態の第2変形例の更なる変形例に係る超音波プローブの処置部を示す概略的な斜視図である。
図14A図14Aは、第1実施形態の第3変形例に係る超音波プローブの処置部及びその近傍を示す概略的な斜視図である。
図14B図14Bは、図14A中の矢印14Bに示す方向から見た超音波プローブの処置部の概略図である。
図15A図15Aは、第1実施形態の第4変形例に係る超音波プローブの処置部及びその近傍を示す概略的な斜視図である。
図15B図15Bは、図15A中の矢印15Bに示す方向から見た超音波プローブの処置部の概略図である。
図16A図16Aは、第1実施形態の第4変形例の変形例に係る超音波プローブの処置部及びその近傍を示す概略的な斜視図である。
図16B図16Bは、図16A中の矢印16Bに示す方向から見た超音波プローブの処置部の概略図である。
図17A図17Aは、第1実施形態の第5変形例に係る超音波プローブの処置部及びその近傍を示す概略的な斜視図である。
図17B図17Bは、図17A中の矢印17Bに示す方向から見た超音波プローブの処置部の概略図である。
図17C図17Cは、図17Bとは異なる最外縁を有する処置部を示す概略図である。
図17D図17Dは、図17B及び図17Cとは異なる最外縁を有する処置部を示す概略図である。
図17E図17Eは、図17Bから図17Dとは異なる最外縁を有する処置部を示す概略図である。
図18A図18Aは、第2実施形態に係る超音波プローブの処置部及びその近傍を示す概略的な斜視図である。
図18B図18Bは、図18Aに示すプローブの処置部を、図1に示す配置の状態の関節鏡を用いて観察した状態を示す概略的な斜視図である。
図19A図19Aは、第2実施形態の第1変形例に係る超音波プローブの処置部及びその近傍を示す概略的な斜視図である。
図19B図19Bは、図19Aに示すプローブの処置部を、図1に示す配置の状態の関節鏡を用いて観察した状態を示す概略的な斜視図である。
図20A図20Aは、第2実施形態の第2変形例に係る超音波プローブの処置部及びその近傍を示す概略的な斜視図である。
図20B図20Bは、図20Aに示すプローブの処置部を、図1に示す配置の状態の関節鏡を用いて観察した状態を示す概略的な斜視図である。
図21A図21Aは、第2実施形態の第3変形例に係る超音波プローブの処置部及びその近傍を示す概略的な斜視図である。
図21B図21Bは、図21Aに示すプローブの処置部を、図1に示す配置の状態の関節鏡を用いて観察した状態を示す概略的な斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照しながらこの発明を実施するための形態について説明する。
(第1実施形態)
第1実施形態について、図1から図9Eを用いて説明する。
【0008】
図1に示すように、この実施形態に係る処置システム10は、超音波処置アッセンブリ12と、電源(第1コントローラ)14と、関節鏡(内視鏡)16と、コントローラ(第2コントローラ)18と、ディスプレイ20とを有する。処置システム10は、図示しない灌流装置とともに用いられることが好ましい。このため、処置システム10を用いた処置を行う際、例えば膝関節110の関節腔110a内で灌流液を充填しながら循環させることができる。そして、処置システム10の超音波処置アッセンブリ12及び関節鏡16は、灌流液を満たした関節腔110a内の処置に用いることができる。
【0009】
関節鏡16は、患者の例えば膝関節110内すなわち関節腔110a内を観察する。コントローラ18は、関節鏡16によって得られた画像を取り込み、画像処理をする。ディスプレイ20は、コントローラ18での画像処理によって生成された映像を映し出す。なお、例えば処置対象部位を直接目視観察しながら処置を行う場合などのいわゆるオープン外科においては、処置システム10における関節鏡(内視鏡)16は必ずしも必要ではない。
【0010】
超音波処置アッセンブリ12は、処置具22と、超音波トランスデューサ24とを有する。処置具22及び超音波トランスデューサ24は共通の長手軸(中心軸)L上に配設されている。特に、後述する超音波プローブ46及び振動体34は、共通の長手軸(中心軸)L上に配設されている。
【0011】
超音波トランスデューサ24は、ハウジング(振動子ケース)32と、ハウジング32の内側に配設された振動体34とを有する。振動体34は、ボルト締めランジュバン型の超音波振動子(Bolt-clamped Langevin-type Ultrasonic Transducer)34aと、後述する超音波プローブ46の基端との接続部34bとを有する。接続部34bは振動子34aの先端に形成されている。接続部34bは超音波トランスデューサ24の長手軸(中心軸)Lに沿ってハウジング32の先端側に突出していることが好適である。超音波トランスデューサ24のハウジング32の基端からは、一端が振動子34aに接続され、他端が電源14に接続されるケーブル36が延出されている。
【0012】
超音波トランスデューサ24の振動子34aに電源14からの電力が供給されると、振動子34aは、長手軸Lに沿う適宜の振幅の縦振動を発生させる。超音波トランスデューサ24は長手軸Lに沿って先端側の接続部34bの形状(ホーン形状)により、超音波振動子34aに発生させた超音波振動の振幅を適宜に拡大する。そして、超音波トランスデューサ24は、長手軸Lに沿って超音波プローブ46の基端に超音波振動を入力して超音波振動を後述する処置部54に伝達する。
【0013】
電源14にはスイッチ14aが接続されている。電源14は、スイッチ14aの操作に応じて超音波トランスデューサ24に適宜のエネルギ(電力)を供給して、超音波振動子34aに超音波振動を発生させる。スイッチ14aは、例えば押圧操作されている状態で超音波振動子34aが駆動された状態を維持し、押圧が解除されると超音波振動子34aが駆動された状態が解除される。なお、スイッチ14aは、後述するハンドル42に設けられることも好適である。
【0014】
処置具22は、ハンドル42と、シース44と、超音波プローブ46とを有する。図2に示すように、超音波プローブ46は、プローブ本体部52と、ブロック状の処置部54とを一体的に有する。なお、図2中では、処置部54及びその近傍を拡大している。処置部54は、その基端に、長手軸Lに直交するよりも緩やかな傾斜面54aを有する。傾斜面54aは、処置部54の最外縁80よりも基端側の基端部に形成されている。このため、処置部54の基端部は、長手軸Lに沿って基端側に向かうにつれて、長手軸Lに直交する断面の断面積を小さく形成する。したがって、傾斜面54aは、長手軸Lに沿って先端側から基端側に向かうにつれて小径化している。そして、傾斜面54aは、プローブ本体部52の先端と処置部54との間を滑らかに接続する。傾斜面54aの存在によって処置部54の後述する最外縁80を形成する端面82,84の長手軸Lに沿う長さを短くし、骨Bなどの切削粉を長手軸Lに沿って基端側に排出し易くしている。
【0015】
プローブ本体部52の先端部近傍には、処置部54の先端からの距離を示す目盛56が形成されている。目盛56は、関節鏡16で観察可能である。
【0016】
超音波プローブ46は例えばチタン合金材などの金属材料等、超音波振動を長手軸Lに沿って基端から先端に向かって伝達可能な素材で形成されている。超音波プローブ46は、真っ直ぐに形成されていることが好ましい。プローブ本体部52の基端には、超音波トランスデューサ24の振動体34の接続部34bに接続される接続部52aを有する。このため、プローブ本体部52の基端の接続部52aには、ハウジング32に固定された超音波トランスデューサ24の接続部34bが固定されている。したがって、プローブ46の長手軸Lに沿って基端側には、超音波トランスデューサ24が配設される。
【0017】
プローブ本体部52は、超音波トランスデューサ24に発生させた縦振動の超音波振動を長手軸Lに沿って基端側から先端側に向かって伝達する。処置部54には、超音波振動子34aに発生させた超音波振動が接続部34b及びプローブ本体部52を介して伝達される。処置部54は、長手軸Lに沿ってプローブ本体部52の先端側に設けられ、伝達された超音波振動により処置対象を切削する。処置部54は、超音波振動により処置対象である骨に孔を形成可能である。超音波振動子34aから処置部54の先端まで、真っ直ぐな長手軸L(中心軸)上にある。このため、処置部54には、縦振動が伝達される。
【0018】
プローブ46の全長は、例えば、振動子34aの共振周波数に基づく半波長の整数倍であることが好適である。プローブ46の全長は振動子34aの共振周波数に基づく半波長の整数倍に限らず、素材や振幅拡大率等により適宜に調整される。このため、プローブ46の全長は、振動子34aの共振周波数に基づく半波長の略整数倍であっても良い。振動体34及びプローブ46は、全体として、振動子34aの共振周波数及び電源14の出力における周波数で振動するように素材や長さ、径を含む形状が適宜に設定されている。
【0019】
振動体34の先端の接続部34b及び振動体34の基端は振動の腹となっている。超音波プローブ46のうち、振動体34の接続部34bに接続されている基端は振動の腹となっており、処置部54は振動の腹となっている。プローブ46のプローブ本体部52の外周面には、シース44の内周面との間に図示しないスペーサが配設されている。スペーサは、長手軸Lに沿って動かない振動の節の位置の外周に配設される。また、ハンドル42に対して、プローブ本体部52は、符号52bで示す振動の節の位置の外周で支持される。
【0020】
処置部54は、処置部54の長手軸Lに沿って先端側から基端側を見たときの投影形状(最外縁)80が図3に示す矩形状などの多角形状に形成されている。本実施形態に係る処置具22の処置部54は、長手軸Lに沿って先端側から基端側を見たとき、最外縁80が矩形状(長方形状)に形成されている。処置部54の最外縁80は、後述する骨孔(トンネル)100の外形を規定する。最外縁80は、短辺を形成する1対の端面82と、長辺を形成する1対の端面84とを有する。最外縁80は、一例として、短辺が4mmで、長辺が5mmである。なお、後述する第4変形例(図15A)で説明するように、最外縁80は正多角形であっても良い。最外縁80の形状は、1回又は複数回の処置により形成したい孔の形状に応じて、適宜に形成することができる。
【0021】
ここで、最外縁80の長辺に沿う方向(長辺方向)をX軸、短辺に沿う方向(短辺方向)をY軸とする。X軸は長手軸Lに対する第1の直交方向である。Y軸は長手軸Lに対する第2の直交方向である。第1の直交方向及び第2の直交方向は互いに直交している。なお、長手軸Lに沿う方向をZ軸とする。すなわち、プローブ46に対するXYZ座標系を上述したように規定する。
【0022】
短辺を形成する1対の端面82の中央に中心線Cxを取り、長辺を形成する1対の端面84の中央に中心線Cyを取る。中心線CxはY軸に平行である。中心線CyはX軸に平行である。本実施形態に係る処置部54は、中心線Cxに対称に形成され、かつ、中心線Cyに対称に形成されている。本実施形態では、第1の面62、第2の面64、第3の面66及び前記第4の面68は、長手軸L及び中心線Cxにより形成される仮想面(ZX平面)に対して対称に形成されている。本実施形態では、第1の面62、第2の面64、第3の面66及び前記第4の面68は、長手軸L及び中心線Cyを含む仮想面(YZ平面)に対して対称に形成されている。
そして、最外縁80は、長手軸L及び中心線Cxにより形成される仮想面(YZ平面)に対して対称に形成されていることが好ましい。最外縁80は、長手軸L及び中心線Cyにより形成される仮想面(ZX平面)に対して対称に形成されていることが好ましい。
【0023】
図3及び図4に示すように、処置部54は階段状に形成されている。処置部54は、長手軸Lに沿って基端側から先端側に向かって突出する。処置部54は、長手軸Lに沿って先端側から基端側に向かって順に、第1の面62、1対の第2の面64、2対の第3の面66、及び、2対の第4の面68を有する。これら第1の面62、1対の第2の面64、2対の第3の面66、及び、2対の第4の面68は、最外縁80を形成する部分よりも長手軸Lに沿って先端側に設けられている。処置部54は、第4の面68、第3の面66、第2の面64及び第1の面62が、長手軸Lに沿って基端側から先端側に向かうにつれて上る階段状に形成されている。第1の面62は、処置部54の先端面として形成されている。第1の面62、第2の面64、第3の面66、及び、第4の面68はそれぞれ長手軸Lに直交する平面として形成されていることが好ましい。すなわち、第1の面62、第2の面64、第3の面66、及び、第4の面68はそれぞれX軸及びY軸により形成されるXY平面に平行であることが好ましい。
なお、ここでは、第1の面62、第2の面64、第3の面66、及び、第4の面68はそれぞれXY平面に平行であるものとして説明するが、XY平面に対して例えば数度(°)の範囲など、僅かに傾斜した略平行であっても良い。すなわち、第1の面62、第2の面64、第3の面66、及び、第4の面68は長手軸Lに直交せずとも、略直交している状態にあることが許容される。
【0024】
第1の面62、第2の面64、第3の面66、及び、第4の面68は、全面が平面として形成されていることが好ましい。第1の面62は、第1の縁部(外縁)63を含む領域が平面として形成されていれば、例えば後述する中心線Cyで示す領域付近に凹部及び/又は凸部が形成されていても良い。同様に、第2の面64は、第2の縁部(外縁)65と内縁65aとを含む領域が平面として形成されていれば、後述する第1の側面72に近接する領域付近に凹部及び/又は凸部が形成されていても良い。また、第3の面66は、第3の縁部(外縁)67と内縁67aとを含む領域が平面として形成されていれば、後述する第2の側面74に近接する領域付近に凹凸が形成されていても良い。第4の面68は、第4の縁部(外縁)69と内縁69aとを含む領域が平面として形成されていれば、後述する第3の側面76に近接する領域付近に凹部及び/又は凸部が形成されていても良い。特に、第1の面62の第1の縁部(外縁)63を含む領域、第2の面64の第2の縁部(外縁)65を含む領域、第3の面66の第3の縁部(外縁)67を含む領域、第4の面68の第4の縁部(外縁)69を含む領域は、長手軸Lに直交する平面として形成されていることが好ましい。
なお、第1の面62を長手軸Lに沿って先端側から基端側を見たときの投影形状(第1の面62の外縁63の内側)は、第2の面64を長手軸Lに沿って先端側から基端側を見たときの投影形状(第2の面64の外縁65の内側)よりも小さい。このため、第1の面62の投影形状は、第2の面64の外縁65の内側にあり、第3の面66の外縁67の内側にあり、第4の面68の外縁(最外縁80)の内側にある。
【0025】
第1の面62は、X軸方向の端面82に隣接する直角二等辺三角形状の面62a,62bと、その面62a,62b間に略正方形状の面62cとを有する。第1の面62は、X軸方向に沿って、面62a、面62c、面62bが連続している。第1の面62は、Y軸方向の一端と他端との間の略中央の中心線Cy上に形成されている。略正方形状の面62cには、仮想的な長手軸(中心軸)Lが貫通する。
【0026】
1対の第2の面64は、中心線CyからY軸方向の両端側(端面84)に向かってずれたにずれた位置に形成されている。第2の面64は、第1の面62に対してY軸方向の両端側に近接する位置、かつ、第1の面62に対してZ軸方向に沿ってプローブ本体部52に近接する位置にそれぞれ形成されている。第2の面64は、それぞれ略M字状又は略W字状に形成されている。
第1の面62の外縁(第1の縁部)63と1対の第2の面64の一方との間、及び、他方との間には、それぞれ4つの略矩形状の第1の側面72が形成される。第1の側面72はそれぞれZ軸に平行である。第1の側面(段差)72は、第1の面62と第2の面64とに連続する。
【0027】
骨孔100の外形を規定する略矩形状の最外縁80のうち、短辺を形成する1対の端面82は、第1の側面72とともに、第1の面62及び第2の面64の端面として形成される。
【0028】
第3の面66は、第2の面64よりも中心線CyからY軸方向の両端側(端面84)に向かってずれた位置に形成されている。第3の面66は、第2の面64に対してY軸方向の両端側に近接する位置、かつ、第2の面64に対してZ軸方向に沿ってプローブ本体部52に近接する位置にそれぞれ形成されている。第3の面66は、それぞれ略V字状に形成されている。
一方の第2の面64の外縁(第2の縁部)65と1対の第3の面66との間には、4つの略矩形状の第2の側面74が形成される。他方の第2の面64と1対の第3の面66との間には、4つの略矩形状の第2の側面74が形成される。第2の側面74はそれぞれZ軸に平行である。
【0029】
第4の面68は、第3の面66よりも中心線CyからY軸方向の両端側(端面84)に向かってずれた位置に形成されている。第4の面68は、第3の面66に対してY軸方向の両端側に近接する位置、かつ、第3の面66に対してZ軸方向に沿ってプローブ本体部52に近接する位置にそれぞれ形成されている。第4の面68は、それぞれ略三角形状に形成されている。
なお、骨孔100の外形を規定する略矩形状の最外縁80のうち、長辺は、第3の面66及び第4の面68により形成される。
4つの第3の面66の1つと1つの第4の面68との間には、2つの略矩形状の第3の側面76が形成される。第3の側面76はそれぞれZ軸に平行である。
【0030】
このため、処置部54を長手軸Lに沿って先端側から基端側を見たとき、図3に示すように、第1の面62だけでなく、第2の面64、第3の面66及び第4の面68の全面が認識されるように露出している。
【0031】
図5Aから図5Cには、図3及び図4中の中心線Cxに平行で中心線Cyに直交し、すなわちYZ平面に平行な面の断面を示す。図6A及び図6Bには、図3及び図4中の中心線Cxに直交し中心線Cyに平行で、すなわちZX平面に平行な面の断面を示す。
【0032】
第1の面62の第1の縁部63と第1の側面72との間のエッジはできるだけ鋭利な直角に形成されていることが好ましい。この場合、第1の面62の外形状の凹孔100を形成し易い。第2の面64の第2の縁部65と第2の側面74との間のエッジはできるだけ鋭利な直角に形成されていることが好ましい。この場合、第2の面64の外形状の凹孔100を形成し易い。同様に、第3の面66の第3の縁部67と第3の側面76との間のエッジ、及び、第4の面68の第4の縁部69と最外縁80との間のエッジは、できるだけ鋭利な直角に形成されていることが好ましい。これらの場合、第3の面66の外形状の凹孔100を形成し易く、第4の面68の外形状の凹孔100を形成し易い。
【0033】
骨孔100の外形を規定する略矩形状の最外縁80のうち、長辺を形成する1対の端面84は、第2の側面74及び第3の側面76とともに、第3の面66及び第4の面68の端面として形成される。第3の面66と処置部54の最外縁80との間のエッジはできるだけ鋭利な直角に形成されていることが好ましい。この場合、第3の面66の外形状の凹孔100又は貫通孔(トンネル)を形成し易い。第4の面68と処置部54の最外縁80との間のエッジはできるだけ鋭利な直角に形成されていることが好ましい。この場合、第4の面68の外形状の凹孔100又は貫通孔を形成し易い。
【0034】
本実施形態に係る処置部54の第1の面62の面積S1は、2つの第2の面64のそれぞれの面積S2よりも大きい。各第2の面64の面積S2は、4つの第3の面66のそれぞれの面積S3よりも大きい。各第3の面66の面積S3は、4つの第4の面68のそれぞれの面積S4よりも大きい。
【0035】
図5Aには、Y軸及びZ軸により形成されるYZ平面に平行で、中心線Cxを通る第1仮想面α1(図3中の5A-5A線)に沿う断面を示す。第1仮想面α1は、長手軸L(Z軸)及び長手軸Lに直交する第1の直交方向(Y軸)を含む領域として規定される。
図5Bには、第2仮想面α2(図3中の5B-5B線)に沿う断面を示す。第2仮想面α2は、第1仮想面α1に平行で、中心線CxからX軸方向の端面82に向かってずれた位置にある。
図5Cには、第3仮想面α3(図3中の5C-5C線)に沿う断面を示す。第3仮想面α3は、第1仮想面α1及び第2仮想面α2に平行で、第2仮想面α2からX軸方向の端面82に向かってずれた位置にある。
【0036】
図5Aから図5Cに示す例では、先端の第1の面62は、長手軸Lに直交する第1の直交方向(Y軸方向)に第1の幅(寸法)W1を有する。第1の面62から第1の側面72を介して1段だけ基端側にある1対の第2の面64は、中心線Cyから長辺の端面84に向かって、第2の幅(寸法)W2を有する。第2の面64から1段だけ基端側にある2対の第3の面66は、第2の面64から長辺の端面84に向かって、第3の幅(寸法)W3を有する。第3の面66から1段だけ基端側にある第4の面68は、第3の面66から長辺の端面84に向かって、第4の幅(寸法)W4を有する。
【0037】
以下、第1の面62での幅W1と、第2の面64での幅W2について対比する。
図5Aに示す例では、第1の面62の第1の幅W1(Wα1)は、第2の面64の1対の第2の幅W2のそれぞれよりも大きい。図5A中に示す第1の幅W1は、第1の面62のY軸方向に沿う最大幅となる。
図5Bに示す例では、第1の面62の第1の幅W1(Wα2)は、第2の面64の1対の第2の幅W2のそれぞれと等しい。
図5Cに示す例では、第1の面62の第1の幅W1(Wα3)は、第2の面64の1対の第2の幅W2のそれぞれよりも小さい。図5C中に示す第1の幅W1は、第1の面62のY軸方向に沿う最小幅となる。
このように、本実施形態では、処置部54の第1の面62におけるY軸方向の幅W1は、X軸方向の位置によって変化する。
【0038】
図6Aには、Z軸及びX軸により形成されるZX平面に平行で、中心線Cxを通る第1仮想面β1(図3中の6A-6A線)に沿う断面を示す。第1仮想面β1は、長手軸L(Z軸)及び長手軸Lに直交する第2の直交方向(X軸)を含む領域として規定される。
図6Bには、第2仮想面β2(図3中の6B-6B線)に沿う断面を示す。第2仮想面β2は、第1仮想面β1に平行で、中心線CyからY軸方向の端面84に向かってずれた位置にある。
【0039】
なお、本実施形態では、図3中に示す第2の面64の内縁65aと外縁65との間の幅Wb及び第3の面66の内縁67aと外縁67との間の幅Wcのうち、一部は同一に形成されていることが好ましい。このため、X軸方向の適宜の位置での第2の面64及び第3の面66のY軸方向の幅W2,W3は、同一となる。
【0040】
次に、本実施形態に係る処置システム10の作用について説明する。
【0041】
関節は、軟骨と、皮質骨及び海綿骨とを有する。本実施形態に係る超音波処置具22は、軟骨及び骨(皮質骨及び海綿骨)の処置に用いることができる。ここでは、骨Bに骨孔100を形成する場合を例にして説明する。なお、膝関節110内の前十字靭帯を再建する手術を行う際の一連の処置について、簡単に後述する。
【0042】
プローブ46にシース44及びハンドル42を取り付けて、超音波処置具22を形成する。プローブ46の処置部54は、シース44の先端から長手軸Lに沿って先端側に突出している。超音波処置具22に超音波トランスデューサ24が取り付けられて超音波処置アッセンブリ12が形成される。このとき、超音波プローブ46の基端の接続部52aと超音波トランスデューサ24の振動体34の接続部34bとを接続する。
【0043】
術者は、関節鏡16を、超音波処置アッセンブリ12の後述する超音波プローブ46の処置部54に対して、図1に示すような位置関係に配置する。処置部54は、長手軸Lに沿って基端側から先端側を見るときの関節鏡(内視鏡)16の視野内に配置される。すなわち、関節鏡16を用いて得られ、ディスプレイ20に表示される像により、超音波プローブ46の処置部54を後方から観察する。術者は、骨Bのうち、凹孔100を形成したい部分の状態をディスプレイ20上で観察するとともに、その凹孔100を形成したい部分に処置具22の処置部54の先端(第1の面62)を接触させる。術者は、凹孔100を形成したい方向(所望の骨孔の方向)と、処置具22の長手軸Lとを一致させる。このため、第1の面62は、処置対象としての骨Bに形成される所望の骨孔の方向に直交又は略直交した状態で骨孔の形成位置に押し当てられる。なお、骨孔100の形成にあたっては、関節腔110a内に灌流液を灌流させた状態で行われる。
【0044】
本実施形態に係る処置具22の処置部54は、処置部54の長手軸Lに沿って先端側から基端側を見たときの投影形状(最外縁)80が円形ではないため、長手軸Lの軸回りに回転させると、形成される孔の外形が異なる。このため、処置部54には、向きがあると言える。したがって、術者は、関節鏡16による像を確認しながら、プローブ46を長手軸Lの軸回りに回転させ、形成したい骨孔100の形状を決める。
【0045】
この状態で、術者はスイッチ14aを操作する。スイッチ14aが押圧操作されると、電源14から超音波プローブ46の基端に固定された振動体34の超音波振動子34aにエネルギが供給され、超音波振動子34aに超音波振動が発生する。このため、振動体34を介して超音波プローブ46に超音波振動が伝達される。この超音波振動は、超音波プローブ46の基端から先端側に向かって伝達される。例えば、処置部54の第1の面62又はその近傍が振動の腹となっている。ここでは、第1の面62に振動の腹が形成される例について説明するが、第2の面64、第3の面66、第4の面68のいずれの位置に振動の腹が形成されても良い。
【0046】
処置部54の第1の面62は、振動子34aの共振周波数に基づく速度(例えば数m/sから数千m/s)で長手軸Lに沿って適宜の振幅で変位している。このため、振動が伝達されている状態で長手軸Lに沿って先端側に向かって処置具22を移動させて処置部54を骨Bに押し当てると、超音波振動の作用により、骨Bのうち、処置部54が接触している部分が破砕されていく。したがって、長手軸L(中心軸C)に沿って先端側に向かって処置具22すなわちプローブ46を移動させるのに応じて、骨Bには、超音波プローブ46の処置部54の長手軸L(所望の骨孔の方向)に沿って凹孔100が形成されていく。このため、第1の面62に超音波振動が伝達されると、超音波プローブ46は、凹孔(骨孔)100を長手軸L(所望の方向)に向けて形成可能である。
【0047】
骨Bが軟骨下にある場合、長手軸Lに沿って先端側に向かって超音波プローブ46の処置部54を軟骨に押し当てると、超音波振動の作用により、軟骨のうち、処置部54が接触している部分が切除され、軟骨に凹孔が形成される。
【0048】
術者はスイッチ14aを押圧操作した状態を維持し、すなわち、超音波振動子34aを振動させた状態を維持して、プローブ46の処置部54を長手軸Lに沿って前方側(Z軸に沿う方向)に移動させる。骨Bには、開口縁100aが第1の面62の外縁63の大きさ及び形状の凹孔100が形成される。すなわち、第1の面62では、深さ方向(Z軸方向)に第1の面62の形状を写し取るように均一的に超音波振動による切削が行われる。このときの凹孔100の開口縁100aは、処置部54の最外縁80よりも小さい。なお、第1の面62の外縁63は、処置部54の最外縁80の短辺を形成する1対の端面82の一部を形成する。
【0049】
このとき、骨Bに凹孔(骨孔)100を形成する切削機序の一例は、長手軸Lに沿って超音波振動が伝達されている処置具22の処置部54の第1の面62による骨Bへのハンマリング効果であると考えられる。ハンマリング効果により骨Bのうち、先端面である第1の面62に当接される位置が破砕されて長手軸Lに沿って切削されていく。
【0050】
骨Bの切削粉(debris)は、第1の面62からXY平面に沿って第1の面62の外縁63に向かって移動していく。このとき、切削粉は、第1の面62と骨Bのうちの第1の面62に対向する部位との間で更に細かく破砕されながら、XY平面に沿って第1の面62の外縁63に向かって移動していく。このように、細かく破砕された切削粉は、第1の面62の外縁63から第1の側面(第1の段差)72と骨Bとの間の隙間を通して、第2の面64に向かって排出される。このとき、第2の面64は骨Bに接触していないため、骨Bの切削粉は、骨Bと第2の面64との間を通して、処置部54の基端側に排出される。また、骨Bの切削粉は、第1の面62から端面82と骨Bとの間の隙間を通して処置部54の基端側に排出される。
【0051】
そして、本実施形態に係る処置部54は、最外縁80の面積Sの先端面で骨Bを破砕して切削を進めるよりも、小さい面積S1の第1の面62により、骨Bを破砕して切削を進める。このため、骨Bを破砕するエネルギを第1の面62に、より集中させることができる。したがって、最外縁80の形状の凹孔を直接形成するよりも、最外縁80の形状よりも小さい第1の面62の形状の凹孔100は形成され易い。また、第1の面62で骨Bを切削する場合、処置部54の最外縁80の面積Sの先端面で骨Bを切削する場合に比べて、深さ方向にプローブ46を等距離移動させる場合の切削体積を小さくする。このため、はじめから最外縁80の面積Sの先端面で骨Bを切削する場合に比べて、プローブ46の処置部54で同一深さに凹孔100を形成する場合の切削速度を、向上させることができる。
【0052】
超音波振動が伝達された第1の面62で凹孔100を深くしていくと、第1の面62よりも長手軸Lに沿って基端側の位置の第2の面64が骨Bに当てられる。そして、ハンマリング効果により、骨Bのうち、第1の面62に当接される位置、及び、第2の面64に当接される位置が破砕されて長手軸Lに沿って切削されていく。
【0053】
骨Bの切削粉(debris)は、第1の面62からXY平面に沿って移動して、第1の面62の外縁63から第1の側面(第1の段差)72と骨Bとの間の隙間を通して、第2の面64に向かって排出される。同様に、第2の面64からXY平面に沿って移動して、第2の面64の外縁65から第2の側面(第2の段差)74と骨Bとの間の隙間を通して、第3の面66に向かって排出される。このとき、第3の面66は骨Bに接触していないため、骨Bの切削粉は、骨Bと第3の面66との間を通して、処置部54の基端側に排出される。また、骨Bの切削粉は、第1の面62及び第2の面64から端面82と骨Bとの間の隙間を通して処置部54の基端側に排出される。
【0054】
ここで、X軸方向について、第2の面64の外縁65は、処置部54の最外縁80の短辺を形成する1対の端面82の一部である。このため、X軸方向については、第2の面64の外縁65で形成した開口縁100aの大きさは、第1の面62の外縁63で形成した開口縁100aと同じで、変化しない。
【0055】
Y軸方向について、第2の面64は、第1の面62の中心線Cyから最外縁80の長辺を形成する端面84に向かってずれた位置にある。このため、第2の面64の外縁65で形成される開口縁100aは、第1の面62の外縁63で形成した開口縁100aに比べてY軸方向に大きくなる。
【0056】
このようにして、処置部54で、第2の面64の外縁65の形状の開口縁100aを有する凹孔100が形成される。すなわち、プローブ46の処置部54を長手軸Lに沿って前方側に移動させると、骨Bには、処置部54の最外縁80よりも小さいが、開口縁100aが第2の面64の外縁65の形状と同じ形状の、凹孔100が形成される。第2の面64では、深さ方向(Z軸方向)に第2の面64の形状を写し取るように均一的に超音波振動による切削が行われる。このときの凹孔100の開口縁100aの内側の面積は、第1の面62のみで形成した凹孔100の開口縁100aの内側の面積に比べて大きくなる。このときの凹孔100は、第1の面62と第2の面64との間に長手軸Lに平行な第1の側面(第1の段差)72を有するため、段付き穴として形成される。
また、第1の面62及び第2の面64の両方で骨Bを切削する場合、処置部54の最外縁80の面積Sの先端面で骨Bを切削する場合に比べて、深さ方向にプローブ46を等距離移動させる場合の切削体積を小さくする。このため、はじめから最外縁80の面積Sの先端面で骨Bを切削する場合に比べて、プローブ46の処置部54で同一深さに凹孔100を形成する場合の切削速度を、向上させることができる。
【0057】
そして、第1の面62及び第2の面64で凹孔100を深くしながら、第3の面66を骨Bに当てて、第3の面66の外縁67の形状の開口縁100aを有する凹孔100を形成する。すなわち、プローブ46の処置部54を長手軸Lに沿って前方側に移動させると、骨Bには、処置部54の最外縁80よりも小さいが、開口縁100aが第3の面66の外縁67の形状と同じ形状の、凹孔100が形成される。第3の面66では、深さ方向(Z軸方向)に第3の面66の形状を写し取るように均一的に超音波振動による切削が行われる。このときの凹孔100の開口縁100aの内側の面積は、第2の面64で形成した凹孔100の開口縁100aの内側の面積に比べて大きくなる。
Y軸方向について、第3の面66の外縁67で形成した開口縁100aは、第2の面64の外縁65で形成した開口縁100aに比べてY軸方向に大きくなる。第3の面66の外縁は、処置部54の最外縁80の長辺(端面84)の一部と一致している。骨Bの切削粉は、第1の面62、第1の側面72、第2の面64、第2の側面74、第3の面66及び第3の側面(第3の段差)76を通して、第4の面68に排出される。すなわち、第3の面66により形成される切削粉は、第1の面62及び第2の面64により形成された切削粉とともに、第4の面68に向かって排出される。また、骨Bの切削粉の一部は、第3の側面76を通して最外縁80の端面84に排出される。
X軸方向について、第3の面66の外縁は、処置部54の最外縁80の短辺(端面82)と同じである。このため、X軸方向については、第2の面64の外縁65で形成した開口縁100aの大きさは、第1の面62の外縁63で形成した開口縁100aと同じである。また、骨Bの切削粉は、第1の面62及び第2の面64から端面82に排出される。
【0058】
そして、第1の面62、第2の面64及び第3の面66で凹孔100を深くしながら、第4の面68を骨Bに当てて、第4の面68の外縁の形状の開口縁100aを有する凹孔100(図7参照)を形成する。すなわち、プローブ46の処置部54を長手軸Lに沿って前方側に移動させると、骨Bには、開口縁100aが第4の面68を含む処置部54の最外縁80の形状と同じ形状の、凹孔100が形成される。第4の面68では、深さ方向(Z軸方向)に第4の面68及び処置部54の最外縁80の形状を写し取るように均一的に超音波振動による切削が行われる。このときの凹孔100の開口縁100aの内側の面積は、第3の面66で形成した凹孔100の開口縁100aの内側の面積に比べて大きくなる。凹孔100は、開口縁100aに対して適宜の深さに形成される。
Y軸方向について、第4の面68の外縁で形成した開口縁100aは、第3の面66の外縁で形成した開口縁100aに比べてY軸方向に大きくなる。また、このときの開口縁100aは、処置部54の最外縁80の長辺(端面84)と同じ形状である。骨Bの切削粉は、処置部54の最外縁80の端面82,84に排出される。すなわち、第4の面68により形成される切削粉は、第1の面62、第2の面64及び第3の面66により形成された切削粉とともに、端面84に向かって排出される。
【0059】
したがって、図7に示すように、骨Bには、処置部54の最外縁80と同じ形状の開口縁100aを有する凹孔100が形成される。
【0060】
関節鏡16による像では、プローブ本体部52の先端部の目盛56が観察できる。術者は、関節鏡16による像の目盛56を判断して、凹孔100の深さを推測する。所望の深さの凹孔100が形成されたとき、スイッチ14aの押圧を解除する。プローブ46に対する超音波振動の伝達が解除される。
【0061】
なお、必要な深さの凹孔100が形成されていない場合であっても、切削粉などにより、処置部54の観察が阻害される場合は、一旦、スイッチ14aの押圧を解除し、処置部54への超音波振動の伝達を停止する。処置部54が再度観察可能になってから、再度、スイッチ14aを押圧して、超音波振動を処置部54に伝達する。
【0062】
このように、第1の面62、第2の面64、第3の面66及び第4の面68で順に開口縁100aの面積を大きくしていく場合、各面(例えば第1の面62)に伝達される超音波振動による作用により生じる切削粉は、処置部54の最外縁80の面積Sと同じ面積の先端面で骨Bを切削する場合に比べて少なくなる。また、第1の面62と第2の面64との間には、長手軸L(Z軸方向)に沿ってズレ(第1の段差)があるため、第1の面62及び第2の面64で同時に骨Bを切削しても、切削粉の排出タイミングは、第1の側面72の長手軸Lに沿った長さ分だけズレが生じる。また、例えば第1の面62で切削された切削粉は、長手軸Lに沿って処置部54の基端側に向かって移動するため、第2の面64でさらに細かく破砕され、第3の面66でさらに細かく破砕され、第4の面68でさらに細かく破砕され得る。同様に、例えば第2の面64で切削された切削粉は、第3の面66でさらに細かく破砕され、第4の面68でさらに細かく破砕され得る。このため、第1の側面72と骨Bとの間、第2の側面74と骨Bとの間等に、切削粉が挟まって処置部54と骨Bとの間に摩擦が生じるのを極力防止している。さらに、本実施形態による処置部54で骨孔100を形成する場合、大面積により一面が押し固められるのを防止している。したがって、第1の面62、第2の面64、第3の面66及び第4の面68での切削粉の排出がそれぞれスムーズに行われ、所望の深さの凹孔100を形成する速度を、処置部54の最外縁80の面積Sの先端面で骨Bを切削する場合に比べて上昇させることができる。
【0063】
そして、第1の面62に伝達された超音波振動による作用によって生じた切削粉は、上述したように、第2の面64に伝達された超音波振動による作用によって破砕され、第3の面66に伝達された超音波振動による作用によって破砕され、第4の面68に伝達された超音波振動による作用によって破砕される。このため、第1の面62の縁部63により形成される骨孔100の仕上げ面よりも、第2の面64の縁部65により形成される骨孔100の仕上げ面の方が滑らかになり得る。同様に、第2の面64の縁部65により形成される骨孔100の仕上げ面よりも、第3の面66の縁部67により形成される骨孔100の仕上げ面の方が滑らかになり得る。第3の面66の縁部67により形成される骨孔100の仕上げ面よりも第4の面68の縁部69により形成される骨孔100の仕上げ面の方が滑らかになり得る。したがって、本実施形態に係る階段状の処置部54を用いることで、中心線CyからY軸方向に離れるほど、骨孔100を形成したときの仕上げ面は滑らかになり得る。
【0064】
さらに、図5Aから図5Cを参照して、処置部54の第1の面62、第2の面64のY軸方向に沿う断面での、幅Wの違いに基づく切削性能を比較する。ここでは、第1の面62と、1対の第2の面64のうちの一方との関係を説明する。
【0065】
ここで、プローブ46に超音波振動が伝達されているとき、処置部54の先端(第1の面62)又はその近傍は、振動の腹位置となっている。そして、処置部54の先端(第1の面62)及びその近傍で超音波振動の伝達による振幅が長手軸Lに沿って最も大きくなっている。第1の面62から第4の面68までの長手軸Lに沿う長さは、数ミリメートルである。第1の面62から第4の面68が形成された部位は、振動の節から長手軸Lに沿って先端側に離間している。なお、処置部54の先端から1つ目の振動の節位置は、第1の面62から数センチメートル程度離れた位置にあり、例えば処置部54の傾斜面54aよりも基端側の位置にある。第1の面62が振動の腹位置である場合、第1の面62で長手軸Lに沿う方向の振動(縦振動)の最も大きな振幅が得られる。このとき、第4の面68での縦振動の振幅は、実質的に腹位置と同レベルである。このため、超音波振動が伝達された状態で、第4の面68の単位面積当たりの骨Bの切削性能は、第1の面62に比べて、殆ど変化せず、実質的に同レベルとなる。すなわち、第4の面68よりも長手軸Lに沿って先端側にある第2の面64、第3の面66での単位面積当たりの骨Bの切削性能も、第1の面62に対して殆ど変化せず、実質的に同レベルとなる。
【0066】
処置部54の図4中の面α1での図5Aに示す断面では、第1の面62のY軸方向の幅W1は、第2の面64のY軸方向の幅W2に比べて大きい。第1の面62及び第2の面でのX軸方向の微小な幅が単位幅であると仮定する。このとき、単位幅と第1の面62の幅W1とによる領域による単位時間あたりの骨Bの切削量(切削粉の量)と、単位幅と第2の面64の幅W2とによる領域による単位時間あたりの骨Bの切削量(切削粉の量)との相違は、幅W1,W2の大きさに依存する。ここでは、第1の面62のY軸方向の幅W1の方が、第2の面64のY軸方向の幅W2よりも大きい。そして、第1の面62によって進む凹孔100の深さと、第2の面64によって進む凹孔100の深さとは、第1の面62と第2の面64との位置関係が変化しないため、同一である。このため、超音波振動が伝達された状態で長手軸Lに沿って処置部54を前進させて凹孔100を深くする場合、第2の面64で骨Bを切削する量は、第1の面62で骨Bを切削する量よりも少ない。したがって、超音波振動が伝達された状態で、第2の面64の作用により切削粉を発生させる量は、第1の面62から切削粉を発生させる量よりも少ない。このとき、長手軸Lに沿って第1の面62と第2の面64とで同じエネルギが供給されているものと仮定すると、小さい領域(第2の面64)の方が大きい領域(第1の面62)よりも切削性能を発揮し易い。したがって、処置部54の図5Aに示す断面では、第1の面62で骨孔100の面(側面)を形成するよりも、第2の面64で骨孔100の面(側面)を形成する方が、切削面の仕上げ面が滑らかになる。
【0067】
処置部54の図4中の面α3での図5Cに示す断面では、第1の面62のY軸方向の幅W1は、第2の面64のY軸方向の幅W2に比べて小さい。第2の面64のY軸方向の幅W2及び第3の面66のY軸方向の幅W3は、同一である。第4の面68のY軸方向の幅W4は、幅W1,W2,W3に比べて小さい。なお、先端が尖っているなど、骨Bとの接触面積が小さい(幅W1が小さい)ほど、骨Bに対して凹孔100が形成され始めるまでの時間を短縮できることは当業者に容易に理解される。したがって、処置の初期に、面積S1の小さな領域(第1の幅W1を有する位置)で処置すると、軸ズレを生じ難くした状態で、より早期に深さ方向に処置部54を移動させて凹孔100を形成し始めることができる。したがって、幅W1が小さい部分を有する処置部54を用いて骨孔100を形成する場合、所望の位置に対する、処置部54の位置ズレが生じ難くなる。骨Bのような硬組織に凹孔100を形成する処置を行おうとする場合、はじめは骨Bと処置部54との間の引っ掛かりがないため滑りやすい。しかしながら、図5Cに示す断面のように、第1の面(先端面)62に幅が小さい部位を形成することで、早期に凹孔100を形成し始めることができる。凹孔100は、処置部54の第1の面62の形状に形成されるため、骨Bと処置部54との間の位置関係が維持され易い。
【0068】
処置部54の図4中の面α2での図5Bに示す断面では、第1の面62のY軸方向の幅W1は、第2の面64のY軸方向の幅W2と同じである。このとき、骨孔100を形成する場合の処置部54の位置ズレを防止しつつ、より早期に、凹孔100を形成し始めることができるとともに、凹孔100の形成を進めていく際の第1の面62及び第2の面64は、切削面の仕上げ面を略均質にすることができる。すなわち、図5Bに示す断面では、図5Aに示す断面における作用と、図5Cに示す断面における作用とのバランスを取って、より早期に凹孔100を形成し、かつ、切削面の仕上げ面を均一化している。
【0069】
図5Aから図5Cを用いて説明したように、Y軸方向に沿い、X軸方向に非常に狭い範囲について考察すると、本実施形態に係る処置部54は、幅W1が小さい部分(図5C参照)を有するため、超音波振動を伝達させた処置部54の第1の面62に骨Bを当接させると、より早期に、凹孔100が形成され始める。このため、第1の面62のうち、幅W1が小さい部分(図5C参照)だけでなく、幅W1が小さい部分に連続して形成されている幅W1が大きい部分(図5A及び図5B参照)でも、第1の面62の形状の凹孔100がより早期に形成され始める。したがって、骨Bの所望の位置から凹孔100を形成する位置がずれ難い。そして、第1の面62の面積S1は、円形でなく、適宜の大きさであるため、長手軸Lの周方向に処置部54が回転するのを抑制でき、長手軸Lに沿って真っ直ぐに凹孔100が形成されていく。
【0070】
上述したように、第1の面62と骨Bとの間の切削仕上げ、及び、第2の面64と骨Bとの間の切削仕上げは、単位時間あたりの切削粉の排出量に依存し得る。本実施形態では、第1の面62において、X軸方向に沿って、幅W1の大きさが変化している。実際には、切削された骨Bの切削粉は第1の面62の振動の影響を受け、ランダムな方向に向かうと考えられる。このため、仕上げ面はX軸方向に沿った位置に応じて大きく変化するものではなく、略均一に形成される。したがって、ミクロ的に見ると、Y軸方向に沿って幅W1の方が幅W2よりも大きい部位では、第1の面62と骨Bとの間の切削仕上げは、第2の面64と骨Bとの間の切削仕上げよりも粗くなる。しかしながら、本実施形態に係る処置部54では、幅WがX軸方向に沿って変化しているため、マクロ的に見ると、Y軸方向に沿って幅W1の方が幅W2よりも大きい部位でも、第1の面62と骨Bとの間の切削仕上げは、第2の面64と骨Bとの間の切削仕上げに対して、粗くなり難い。
【0071】
骨Bを切削する場合、処置部54の最外縁80の断面積Sの先端面で骨Bを切削する場合に比べて、第1の面62の面積S1が小さいため、凹孔100の深さ方向にプローブ46を等距離移動させる場合に骨Bの切削体積を小さくすることができる。このため、はじめから最外縁80の面積Sの先端面で骨Bを切削する場合に比べて、プローブ46の処置部54で同一深さに凹孔100を形成する場合の切削速度を、向上させることができる。
処置時間を短くするために、通常、できるだけ回数を少なくして、大面積の骨孔の形成を行いたいと考えられている。しかしながら、より大面積の骨孔を形成可能なプローブを使いたいという考え方と、骨孔の仕上げ面を滑らかにすることとはトレードオフの関係にある。本実施形態に係るプローブ46は、処置部54を階段状に形成してより大きな面積の骨孔を形成すること、及び、最外縁80を形成する部分よりも先端側の第4の面68(、第3の面66、又は、第2の面64)のY軸方向の寸法を、第1の面62の寸法よりも小さい寸法に形成して骨孔の仕上げ面を滑らかにすること、を両立させている。
【0072】
次に、図8に示す、両端に骨片232a,232bが付着している膝蓋腱232を移植腱230として使用する例について説明する。
一方の骨片232aは膝蓋骨(図示せず)の一部である。膝蓋骨側の骨片232aは略三角柱状である。他方の骨片232bは脛骨114の一部である。脛骨114側の骨片232bは直方体状である。そして、骨片232a,232bの外形はそれぞれ例えば10mm×5mm程度である。具体的には、移植腱の長手軸に直交する断面の外形は略矩形状又は矩形に近い略楕円状などに形成される。このような移植腱をBTB腱と称する。
【0073】
一例として、図9Aから図9Eに概略的に示すように、インサイドアウト法を用いて、大腿骨112及び脛骨114に凹孔(骨孔)100,101,102,103を形成する場合の手技について簡単に説明する。ここで、本実施形態に係る処置部54の最外縁80の外形は、短辺が4mmで、長辺が5mmである。このため、大腿骨112に複数の凹孔100,101を並設し、脛骨114に複数の凹孔102,103を並設する。凹孔100,101を並設したとき、開口縁100a,101aを、例えば10mm×5mm程度の矩形状にする。同様に、凹孔102,103を並設したとき、開口縁102a,103aを、例えば10mm×5mm程度の矩形状にする。骨片232a,232bの大きさによっては、例えば5回など、複数回の処置により連続した凹孔を形成しても良い。移植腱230をスクリューで固定する場合、スクリューを入れる隙間を考慮して、凹孔を形成しても良い。
【0074】
移植腱230は損傷した前十字靭帯が付着している部分と同じ部分に配置されることが好ましい。したがって、骨孔100は、前十字靭帯が付着していた部位と同じ部位に形成する。損傷した前十字靭帯が付着している部分を図示しない処置ユニットを用いて郭清し、前十字靭帯が付着していたフットプリント部116,118を明確にする。このとき、適宜の超音波処置具、アブレーダ、高周波処置具など(いずれも図示せず)を用いることができる。
【0075】
骨孔100のうち、移植腱230の骨片232a,232bが挿入される位置は、移植腱230の外形に即した大きさ及び形状であることが好適である。このため、移植腱230を採取したときに、移植腱230の大きさ(外形)を測定しておく。
【0076】
そして、フットプリント部116,118に対して、骨孔100,101,102,103を形成する位置をマーキングするなどして確定する。図示しないが、フットプリント部116は、大腿骨112の顆間窩の外側壁後部にある。また、フットプリント部118は、脛骨114の前顆間区の内側にある。
【0077】
適宜のポータルから超音波処置具22の処置部54を膝関節110の関節腔110a内に挿入する。また、関節鏡16の先端を関節腔110a内に挿入する。このとき、処置部54と関節鏡16とは、図1に示すような位置関係にある。そして、関節鏡16で関節腔110a内を確認しながら、処置部54の先端(第1の面62)を大腿骨112のフットプリント部116に当接させる。
【0078】
そして、図9Aに示すように、大腿骨112のフットプリント部116に、第1の骨孔(ここでは凹孔)100を形成する。図9Bに示すように、大腿骨112のフットプリント部116に、第1の骨孔100に隣接する第2の骨孔101を形成する。このとき、第1の骨孔100の開口縁100a及び第2の骨孔101の開口縁101aにより、1つの略矩形状の開口縁を形成する。このとき、凹孔100,101の形成速度を向上させるとともに、凹孔100,101の仕上げ面を極力滑らかにする。
【0079】
同様に、図9Cに示すように、脛骨114のフットプリント部118に、第3の骨孔(ここでは凹孔)102を形成する。図9Dに示すように、脛骨114のフットプリント部118に、第3の骨孔102に隣接する第4の骨孔103を形成する。このとき、第3の骨孔102の開口縁102a及び第4の骨孔103の開口縁103aにより、1つの略矩形状の開口縁を形成する。このとき、凹孔102,103の形成速度を向上させるとともに、凹孔102,103の仕上げ面を極力滑らかにする。
【0080】
図9Eに示すように、大腿骨112に、例えばドリル等を用いて貫通孔101bを形成する。
移植腱230の向きを考慮して、移植腱230を大腿骨112側の骨孔100,101に配置するとともに、脛骨114側の骨孔102,103に配置する。大腿骨112と移植腱230との固定、及び、脛骨114と移植腱230との固定は、従来から知られている方法を適宜に利用すればよい。
このとき、骨孔100,101の内周面が滑らかであると、粗い状態よりも骨片232aを配置し易くなる。また、骨孔102,103の内周面が滑らかであると、粗い状態よりも骨片232bを配置し易くなる。本実施形態では、骨孔100,101,102,103の内周面を極力滑らかに形成することができるため、骨孔100,101,102,103に移植腱230の骨片232a,232bを入れ易く、処置効率が向上する。
【0081】
大腿骨112側の骨孔100,101及び脛骨114側の骨孔102,103を、移植腱230の形状に合わせて形成することで、移植腱230と骨孔100,101との間に形成される隙間、及び、移植腱230と骨孔102,103との間に形成される隙間を極力小さくすることができる。そして、移植腱230と骨との間の隙間が小さいため、骨として再生されるべき体積を少なくし移植腱230の靭帯化を進み易くすることができる。
【0082】
また、骨孔100,101,102,103を本実施形態で説明した処置部54を有する超音波プローブ46を用いて形成することにより、ダイレータで孔を押し広げることをしていない。したがって、例えば骨密度が低い患者に対しても、骨折を抑制できるため、移植腱230を用いた手技を行い易くすることができる。
【0083】
また、関節腔110a内には、切除した前十字靭帯等、浮遊軟組織が存在し得る。適宜の処置具が長手軸Lの軸回りに回転する場合、浮遊軟組織が処置具に巻き付くおそれがある。本実施形態に係る処置具22のプローブ46は、長手軸Lに沿って僅かな範囲で移動するだけであるため、浮遊軟組織がプローブ46に巻き付くなど、処置の邪魔になることを防止することができる。
【0084】
ここでは、骨孔として、凹孔100,101,102,103を形成する例について説明したが、上述した処置部54を有する超音波プローブ46を用いて貫通孔を形成しても良い。また、凹孔100,101,102,103を形成した後、ドリル等を用いて、大腿骨112及び脛骨114にそれぞれ貫通孔を形成しても良い。
【0085】
また、ここでは、BTB腱を例にして説明したが、例えば貫通孔の骨孔を形成するのであれば、STG腱を移植腱の一部として用いても良い。STG腱の外形は、腱を折り返しているため、円形断面ではなく、例えば略楕円に近い矩形状となることが多い。この場合も、移植腱の外形に合わせて、超音波処置具22を用いて、骨孔100,101,102,103を形成する。
【0086】
以上説明したように、本実施形態によれば、例えば骨に孔を形成する場合に孔の形成速度を向上させ、及び/又は、孔の仕上げ面を極力滑らかにするなど、処置効率を向上させることが可能な超音波プローブ46及び超音波処置アッセンブリ12を提供することができる。
【0087】
(第1実施形態の第1変形例)
上述した実施形態の処置部54は、X軸方向に沿って幅W1,W2が変化する例について説明した。図10に示す処置部54は第1の面62を頂上とする階段状に形成されている。具体的には、処置部54は、第4の面68、第3の面66、第2の面64及び第1の面62が、長手軸Lに沿って基端側から先端側に向かうにつれて上る階段状に形成されている。第1の面62、1対の第2の面64、1対の第3の面66、及び、1対の第4の面68の形状はそれぞれ矩形状である。そして、この変形例のプローブ46の処置部54は、X軸方向に沿って幅W1,W2がそれぞれ一定で、変化しない場合を示す。同様に、この変形例のプローブ46の処置部54は、X軸方向に沿って幅W3,W4がそれぞれ同一で、変化しない。第1の面62の幅W1は、第2の面64の幅W2よりも大きい。処置部54は、第4の面68、第3の面66、第2の面64及び第1の面62が、長手軸Lに沿って基端側から先端側に向かうにつれて上る階段状に形成されている。処置部54を長手軸Lに沿って先端側から基端側を見たときの最外縁80の投影形状は、矩形状である。第4の面68は、最外縁80を形成する部分よりも長手軸Lに沿って先端側に隣接している。
【0088】
図11Aに示す断面を有する処置部54の例では、第1の側面72、第2の側面74及び第3の側面76が長手軸Lに平行である。第1の側面(段差)72は、第1の面62と第2の面64とに連続する。第2の側面(段差)74は、第2の面64と第3の面66とに連続する。第3の側面(段差)76は、第3の面66と第4の面68とに連続する。このため、処置部54を長手軸Lに沿って先端側から基端側を見たとき、第1の面62だけでなく、第2の面64、第3の面66及び第4の面68が、全面的に認識可能であり、露出している。例えば、第2の面64のうち、内縁65aが第1の面62により隠されない。同様に、第3の面66の内縁67aは第2の面64により隠されず、第4の面68の内縁69aは第3の面66により隠されない。したがって、第1の面62、1対の第2の面64、1対の第3の面66及び1対の第4の面68は、凹孔100を形成する際、骨Bに対してそれぞれ各面62,64,66,68の全面で接触する。
なお、第1の面62を長手軸Lに沿って先端側から基端側を見たときの投影形状(第1の面62の外縁63の内側)は、第2の面64を長手軸Lに沿って先端側から基端側を見たときの投影形状(第2の面64の外縁65の内側)よりも小さい。このため、第1の面62の投影形状は、第2の面64の外縁65の内側にあり、第3の面66の外縁67の内側にあり、第4の面68の外縁(最外縁80)の内側にある。これは、図11Bから図12Cに示す処置部54においても同様である。
【0089】
図11Bに示す断面を有する処置部54の例では、第1の側面72、第2の側面74及び第3の側面76が長手軸Lに傾斜している。第1の面62の第1の縁部63と、第2の面64との間には、長手軸Lに対して傾斜する面(第1の側面72)を有する。第1の面62から第2の面64に向かう第1の側面72は、第2の面64に向かうにつれて長手軸Lに近づく。第2の面64から第3の面66に向かう第2の側面74は、第3の面66に向かうにつれて長手軸Lに近づく。第3の面66から第4の面68に向かう第3の側面76は、第4の面68に向かうにつれて長手軸Lに近づく。また、第2の面64のうち、内縁65aからY軸方向に距離D1の領域は、凹孔100を形成する際に骨Bに接触し難い。この領域は、切削粉を排出する領域として用いられる。同様に、第3の面66の内側の内縁67aからY軸方向に距離D2の領域は、凹孔100を形成する際に骨Bに接触し難い。この領域は、切削粉を排出する領域として用いられる。第4の面68の内側の内縁69aからY軸方向に距離D3の領域は、凹孔100を形成する際に骨Bに接触し難い。この領域は、切削粉を排出する領域として用いられる。このため、凹孔100を形成する際の骨Bとの接触面積は、第1の面62で最も大きくなる。1対の第2の面64、1対の第3の面66及び1対の第4の面68と骨Bとの接触面積は、第1の面62との接触面積よりも小さくなる。
なお、処置部54を長手軸Lに沿って先端側から基端側を見たとき、第1の面62だけでなく、第2の面64の一部、第3の面66の一部及び第4の面68の一部も、認識可能であり、露出している。第2の面64は、第1の面62に一部(内側)が隠されているが、第2の面64の一部は、第1の面62に対して露出している。第3の面66は、第2の面64に一部(内側)が隠されているが、第3の面66の一部は、第2の面64に対して露出している。第4の面68は、第3の面66に一部(内側)が隠されているが、第4の面68の一部は、第3の面66に対して露出している。
【0090】
図11B中の第2の面64の内側の内縁65aから距離D1の領域は、凹孔100を形成する際に骨Bに接触し難い。この領域は、切削粉を排出する領域として用いられる。同様に、第3の面66の内側の内縁67aから距離D2の領域は、凹孔100を形成する際に骨Bに接触し難い。この領域は、切削粉を排出する領域として用いられる。第4の面68の内側の内縁69aから距離D3の領域は、凹孔100を形成する際に骨Bに接触し難い。この領域は、切削粉を排出する領域として用いられる。
第2の面64のうち、骨(処置対象)Bを切削するのに寄与する部位は、第1の面62よりも小さい面積に形成されている。同様に、第3の面66のうち、骨(処置対象)Bを切削するのに寄与する部位は、第1の面62よりも小さい面積に形成されている。また、第4の面68のうち、骨(処置対象)Bを切削するのに寄与する部位は、第1の面62よりも小さい面積に形成されている。図11B中の処置部54は、第3の面66のうち、骨(処置対象)Bを切削するのに寄与する部位は、第2の面64よりも小さい面積に形成されている。第4の面68のうち、骨(処置対象)Bを切削するのに寄与する部位は、第3の面66よりも小さい面積に形成されている。
この場合、超音波振動を伝達させながら、長手軸Lに沿って処置部54を移動させたとき、第1の側面72と第2の面64との境界付近が骨Bに接触しない。このため、第1の側面72と第2の面64との境界付近では、骨Bとの摩擦が生じず、灌流液に触れている。したがって、超音波プローブ46を用いた骨孔100の加工時に必要な力量を最小にできる。また、超音波プローブ46を用いた処置時に、骨Bから受ける抗力を低減できる。また、第1の側面72と第2の面64との境界付近は、切削粉の排出路として用いられる。このため、凹孔100を形成する速度を上昇させることができる。
【0091】
さらに、処置部54のY軸方向に沿う幅(端面84間の幅)は、図11Aに示す例の幅Daよりも、図11Bに示す例の幅Dbが小さくなる。このため、図11A及び図11Bに示す例について、第1の面62から第4の面68の面積S1,S2,S3,S4がそれぞれ同一である場合、処置部54の端面84間の大きさは、図11Bに示す例で、図11Aに示す例よりも小さくなり得る。
図11Bに示す、長手軸に対して直交するY軸方向(第1の直交方向)に沿う断面における単位時間あたりの骨Bの切削量(切削粉の量)は、各面62,64,66,68のうち、骨Bを切削するのに寄与する部位の幅(寸法)に依存する。ここでは、第1の面62は、全面が骨Bを切削するのに寄与する部位として用いられる。第2の面64では、骨Bを切削するのに寄与する部位は、幅W2から幅D2を引いた寸法に依存する。第3の面66では、骨Bを切削するのに寄与する部位は、幅W3から幅D3を引いた寸法に依存する。第4の面68では、骨Bを切削するのに寄与する部位は、幅W4から幅D4を引いた寸法に依存する。
そして、第2の面64のうち、骨Bを切削するのに寄与する部位は、長手軸Lに対して直交するY軸方向(第1の直交方向)に沿って第1の面62よりも小さい寸法に形成されている。第3の面66のうち、骨Bを切削するのに寄与する部位は、第2の面64の処置対象を切削するのに寄与する部位よりも小さい寸法に形成されている。第4の面68のうち、骨Bを切削するのに寄与する部位は、第3の面66の骨Bを切削するのに寄与する部位よりも小さい寸法に形成されている。このため、図11Bに示す処置部54は、長手軸Lに沿って先端側から基端側に向かうにつれて、骨Bを切削するのに寄与する部位の寸法を小さくしている。
ここで、第1の面62によって進む凹孔100の深さと、第2の面64によって進む凹孔100の深さとは、第1の面62と第2の面64との位置関係が変化しないため、同一である。同様に、第1の面62によって進む凹孔100の深さは、第3の面66及び第4の面68がそれぞれ進む凹孔100の深さに一致する。このため、超音波振動が伝達された状態で長手軸Lに沿って処置部54を前進させて凹孔100を深くする場合、第2の面64で骨Bを切削する量は、第1の面62で骨Bを切削する量よりも少ない。したがって、超音波振動が伝達された状態で、第2の面64の作用により切削粉を発生させる量は、第1の面62から切削粉を発生させる量よりも少ない。このとき、長手軸Lに沿って第1の面62と第2の面64とで同じエネルギが供給されているものと仮定すると、小さい寸法の領域(第2の面64の一部)の方が大きい寸法の領域(第1の面62)よりも微細な加工を行える。したがって、図11Bに示す処置部54は、第1の面62の外縁63で骨孔100の面(側面)を形成するよりも、第2の面64の外縁65で骨孔100の面(側面)を形成する方が、切削面の仕上げが滑らかになる。
これは、最外縁80を形成する面(第4の面)68とその一段上の面(第3の面)66との関係においても同様である。すなわち、第4の面68の骨Bを切削するのに寄与する部位を、第3の面66の骨Bを切削するのに寄与する部位よりも小さくすることで、最外縁80と同じ大きさの開口縁100aを形成する際の凹孔100の壁面をより滑らかにすることができる。
したがって、長手軸L(Z軸方向)に沿って先端側から基端側に向かい、かつY軸方向に沿う各面62,64,66,68の骨Bを切削するのに寄与する部位の面積を、徐々に小さくしている。このため、図11Bに示す例の処置部54は、長手軸Lから最外縁80に近づく面62,64,66,68の縁部63,65,67,80ほど、骨Bを切削して開口縁100aを形成する際の凹孔100の壁面を滑らかにすることができる。
【0092】
なお、図11B中には、幅D1は幅D2よりも小さく、幅D2は幅D3よりも小さく描いている。幅D1,D2,D3の大きさは、適宜に設定可能である。幅D1,D2,D3を同一にしても良い。そして、例えば、第3の面66のうち、骨Bを切削するのに寄与する部位よりも、第4の面68のうち、骨Bを切削するのに寄与する部位を小さくしていれば、例えば第2の面64のうち、骨Bを切削するのに寄与する部位を、第3の面66のうち、骨Bを切削するのに寄与する部位を小さくしても良い。
【0093】
図11Cに示す断面を有する処置部54の例では、第1の側面72、第2の側面74及び第3の側面76が長手軸Lに傾斜している。すなわち、第1の面62の第1の縁部63と、第2の面64との間には、長手軸Lに対して傾斜する面(第1の側面72)を有する。第1の面62から第2の面64に向かう第1の側面72は、第2の面64に向かうにつれて長手軸Lから遠ざかる。第2の面64から第3の面66に向かう第2の側面74は、第3の面66に向かうにつれて長手軸Lから遠ざかる。第3の面66から第4の面68に向かう第3の側面76は、第4の面68に向かうにつれて長手軸Lから遠ざかる。このため、処置部54を長手軸Lに沿って先端側から基端側を見たとき、第1の面62だけでなく、第2の面64、第3の面66及び第4の面68も、認識可能であり、露出している。
【0094】
このため、第1の側面72、第2の側面74及び第3の側面76が、凹孔100を形成する際に、骨Bの切削面として機能する。特に、第1の側面72、第2の側面74及び第3の側面76のうち、長手軸Lに沿う方向の振動成分が、骨Bを切削するのに寄与する。第1の側面72、第2の側面74及び第3の側面76は、図11A及び図11Bに示す例よりも、加工が容易で、応力集中を防止することができる。そして、図11Cに示す処置部54は、同一の最外縁80を有する状態に形成される場合であっても、肉部が多い(処置部54が形成される際に加工により除去される量が少ない)ため、図11A及び図11Bに示す処置部54よりも耐久性を向上させることができる。
【0095】
図11C中の第1の面62の外側の外縁63から第2の面64の内側の内縁65aまでのY軸方向の距離をD1とする。第2の面64の外側の外縁65から第3の面66の内側の内縁67aまでのY軸方向の距離をD2とする。第3の面66の外側の外縁67から第4の面68の内側の内縁69aまでのY軸方向の距離をD3とする。
【0096】
より大きな面積の開口縁100aを有する凹孔100を、長手軸Lに沿ってできるだけ短い距離の移動により形成したい場合があり得る。各面62,64,66,68の面積S1,S2,S3,S4を同一にしておきたい場合、各側面72,74,76が平行である図11Aに示す場合、又は、図11Bに示す場合は、Y軸方向への面(平面)の数(段数)を多くする必要がある。
【0097】
上述したように、プローブ46に超音波振動が伝達されたとき、処置部54では、長手軸Lに沿って例えば第1の面62に振動の腹位置がある。このとき、第nの面(nは2以上の自然数)では、第1の面62よりも長手軸Lに沿って基端側の位置にあり、振動の腹位置から外れている。このため、原理的には、第nの面での長手軸Lに沿う方向の振幅は、第1の面62での長手軸Lに沿う方向の振幅よりも小さくなる。したがって、第1の面62での切削能力に対して、第nの面での切削能力は低下し得る。したがって、段数(nの値)を多くし過ぎると、第1の面62と第nの面との間で、切削能力に差が生じるおそれがある。
この変形例では、第1の側面72は、第1の面62の外縁63から第2の面64の内縁65aに向かう平面として形成されている。そして、第2の面64の内縁65aは、第1の面62の外縁63よりも長手軸Lに対して離間している。ここでは、長手軸Lに沿って先端側から基端側を見たとき、第1の面62の外縁63と、第2の面64の内縁65aとの間の第1の側面72が認識される。
【0098】
第1の面62の中央(長手軸L)の位置から、第4の面68の端面84との間の距離Dcは、図11Aに示す例の距離Daよりも大きく、図11Bに示す例の距離Dbよりも大きい。各面62,64,66,68が同一面積の場合であっても、最外縁80の面積Sを大きくすることができる。このため、この変形例の図11Cに示す例に係る処置部54を有するプローブ46を用いる場合、長手軸Lに沿う方向の長さを調整する必要がなく、長手軸Lに沿う1回の操作でより大きな開口縁100aを有する凹孔100を形成することができる。
【0099】
なお、図11Cに示す例に係る処置部54は、プローブ46に対する超音波振動の伝達により、第1の側面72も、長手軸Lに沿って振動する。このため、第1の側面72でも、骨Bを切削することができる。
第1の側面72、第2の側面74及び第3の側面76は、傾斜角度が異なっている。第1の側面72よりも、第2の側面74の方が、長手軸Lに沿う方向に近く、第2の側面74よりも第3の側面76の方が、長手軸Lに沿う方向に近い。
図11Cに示す処置部54による、長手軸に対して直交するY軸方向(第1の直交方向)に沿う断面における単位時間あたりの骨Bの切削量(切削粉の量)は、各面62,64,66,68に加えて、第1の側面72、第2の側面74及び第3の側面76のY軸方向の幅(寸法)に依存する。ここでは、第1の面62から第4の面68は、全面が骨Bを切削するのに寄与する部位として用いられる。第1の側面72では、第1の面62のY軸方向の縁部(外縁)63と第2の面64のY軸方向の内側縁部65aとの間の寸法D1に依存する。第2の側面74では、第2の面64の縁部(外縁)65と第3の面66の内側縁部67aとの間の寸法D2に依存する。第3の側面76では、第3の面66の縁部(外縁)67と第4の面68の内側縁部69aとの間の寸法D3に依存する。
そして、例えば、第1の面62の幅W1に第1の側面72の距離D1を加えた寸法は、第2の面64の幅W2(=W1)に第2の側面74の距離D2を加えた寸法よりも大きい。第2の面64の幅W2に第2の側面74の距離D2を加えた寸法は、第3の面66の幅W3(=W2)に第3の側面76の距離D3を加えた寸法よりも大きい。第3の面66の幅W3に第3の側面76の距離D3を加えた寸法は、第4の面68の幅W4(=W3)よりも大きい。このため、図11Cに示す処置部54は、特に側面72,74,76のY軸方向成分の寸法を徐々に小さくすることにより、長手軸Lに沿って先端側から基端側に向かうにつれて、骨Bを切削するのに寄与する部位の寸法を小さくしている。
ここで、第1の面62によって進む凹孔100の深さと、第2の面64によって進む凹孔100の深さとは、第1の面62と第2の面64との位置関係が変化しないため、同一である。同様に、第1の面62によって進む凹孔100の深さは、第3の面66及び第4の面68がそれぞれ進む凹孔100の深さに一致する。このため、超音波振動が伝達された状態で長手軸Lに沿って処置部54を前進させて凹孔100を深くする場合、第2の面64及び第2の側面74で骨Bを切削する量は、第1の面62及び第1の側面72で骨Bを切削する量よりも少ない。したがって、超音波振動が伝達された状態で、第2の面64及び第2の側面74の作用により切削粉を発生させる量は、第1の面62及び第1の側面72から切削粉を発生させる量よりも少ない。このとき、長手軸Lに沿って第1の面62及び第1の側面72と第2の面64及び第2の側面74との両方に同じエネルギが供給されているものと仮定すると、小さい寸法の領域(第2の面64及び第2の側面74)の方が大きい寸法の領域(第1の面62及び第1の側面72)よりも微細な加工を行える。したがって、図11Cに示す処置部54は、第1の面62の外縁63及び第1の側面72で骨孔100の面(側面)を形成するよりも、第2の面64の外縁65及び第2の側面74で骨孔100の面(側面)を形成する方が、切削面の仕上げが滑らかになる。同様に、第2の面64の外縁65及び第2の側面74で骨孔100の面(側面)を形成するよりも、第3の面66の外縁67及び第3の側面76で骨孔100の面(側面)を形成する方が、切削面の仕上げが滑らかになる。また、同様に、第3の面66の外縁67及び第3の側面76で骨孔100の面(側面)を形成するよりも、第4の面66の外縁(最外縁80)で骨孔100の面(側面)を形成する方が、切削面の仕上げが滑らかになる。
したがって、長手軸L(Z軸方向)に沿って先端側から基端側に向かい、かつY軸方向に沿う各面62,64,66,68及び各側面72,74,76のY軸方向成分を、徐々に小さくしている。このため、図11Cに示す例の処置部54は、長手軸Lから最外縁80に近づくほど、骨Bを切削して開口縁100aを形成する際の凹孔100の壁面を滑らかにすることができる。
【0100】
したがって、図11Aから図11Cに示すように、処置部54の側面72,74,…の向きを調整することで、端面84間の幅が適宜に調整される。このため、例えば、幅Da,Db,Dcの処置部54を有するプローブ46がラインナップされる。したがって、長手軸Lに沿う1回の操作で形成したい骨孔100の開口縁100aの大きさに合わせて、プローブ46がラインナップから選択される。特に、図11B及び図11Cに示すように、長手軸LからY軸方向に離れるにつれて、各段において、骨Bの切削に寄与する部位を少なくする処置部54とすることで、骨Bを切削して開口縁100aを形成する際の凹孔100の壁面を、最終的な開口縁100aから遠い位置よりも、開口縁100aに近い位置でより滑らかにすることができる。
【0101】
図12Bに示す断面を有する処置部54の例では、第1の面62と第2の面64との間の第1の高さH1の方が、第2の面64と第3の面66との間の第2の高さH2よりも大きい場合を示す。このため、第1の面62と第2の面64との間の第1の段差(第1の側面72)の長手軸Lに沿う第1の高さH1は、第2の面64と第3の面66との間の第2の段差(第2の側面74)の長手軸Lに沿う第2の高さH2よりも高い。
この場合、図1に示す関節鏡16と処置部54との位置関係によるが、プローブ46の処置部54に対して、図1に示す配置の後方からの関節鏡16による観察によって、処置部54の先端が観察され易くなる。このように、処置部54の先端が関節鏡16を通して観察される場合、第1の面62で凹孔100を作成する際に、処置部54の第1の面62の位置及び向きを安定させ易い。
【0102】
図12Cに示す断面を有する処置部54の例では、第1の面62と第2の面64との間の第1の高さH1の方が、第2の面64と第3の面66との間の第2の高さH2よりも小さい場合を示す。このため、第1の面62と第2の面64との間の第1の段差の長手軸Lに沿う第1の高さH1は、第2の面64と第3の面66との間の第2の段差の長手軸Lに沿う第2の高さH2よりも低い。
このように、高さH1が高さH2に比べて小さくても、第1の面62で適宜の凹孔100を形成することができる。第2の面64に対する第1の面62の長手軸Lに沿う突出高さH1が小さいため、処置部54の耐久性を高くすることができる。
【0103】
図12Aに示す断面を有する処置部54の例では、第1の面62と第2の面64との間の第1の高さH1と、第2の面64と第3の面66との間の第2の高さH2とが同一である場合を示す。このため、第1の面62と第2の面64との間の第1の段差の長手軸Lに沿う第1の高さH1は、第2の面64と第3の面66との間の第2の段差の長手軸Lに沿う第2の高さH2に一致する。
この場合、突出高さH1,H2を同一にすることで、高さH1が高さH2よりも大きい場合に比べて、処置部54の構造の強度を高く維持することができる。すなわち、図12Aに示す構造の処置部54は、例えば骨Bからの反力等が付加されても、耐久性を高く維持することができる。また、この場合、関節鏡16との位置関係によっては、処置部54の先端、すなわち第1の面62の先端が関節鏡16を通して観察可能となる。このように、処置部54の先端が関節鏡16を通して観察される場合、第1の面62で凹孔100を作成する際に、処置部54の第1の面62の位置及び向きを安定させ易い。
【0104】
図12Aから図12Cに示す処置部54の構造は、関節鏡16を用いた処置部54の先端の視認性を重視するか、処置部54の構造の安定性を重視するかにより、適宜に選択される。したがって、例えば、高さH1を調整した処置部54を有するプローブ46がラインナップされる。したがって、関節鏡16を用いて第1の面62を適切な向き及び位置に配置することを重要視する場合、高さH1が大きな処置部54を有するプローブ46がラインナップから選択される。関節鏡16を用いて第1の面62を適切な向き及び位置に配置することよりも、処置部54のふらつき等を防止したり、処置部54の構造の安定性を重要視する場合、高さH1が小さな処置部54を有するプローブ46がラインナップから選択される。
【0105】
そして、処置部54は、図12Aから図12Cに示すように高さH1,H2を適宜に調整し、かつ、図11Aから図11Cに示すように、側面72,74,…を長手軸Lに平行にするか否かを適宜に選択して、形成され得る。
【0106】
(第1実施形態の第2変形例)
図13Aに示すように、第1の面62は、X軸方向に沿って複数に分割されている。この場合、第1の面62の面積S1を小さく形成することができる。例えば、Y軸方向に沿って、第1の面62の幅(寸法)を、第2の面64の幅(寸法)に対して小さくすることができる。このため、第1の面62でより早期に凹孔100を形成し始めることができる。また、X軸方向の端面82に沿って、第1の側面72が形成されている。このため、図1に示す配置の関節鏡16で、処置部54の向きを確認し易い。このため、端面82に沿う第1の側面72は、関節鏡16を通して骨Bに対する処置部54の向きを認識するのに用いられる。
なお、第1の面62を長手軸Lに沿って先端側から基端側を見たときの投影形状(第1の面62の外縁63の内側)は、第2の面64を長手軸Lに沿って先端側から基端側を見たときの投影形状(第2の面64の外縁65の内側)よりも小さい。このため、第1の面62の投影形状は、第2の面64の外縁65の内側にあり、第3の面66の外縁67の内側にあり、第4の面68の外縁(最外縁80)の内側にある。これは、図13Bから図17Eに示す処置部54においても同様である。
【0107】
なお、図13Aに示す例では、第1の面62と第2の面64との間の第1の側面72の高さは例えば1mmである。第1の面62はそれぞれ例えば1mm×1mmに形成されている。また、図13Aに示す処置部54の例では、第1の面62から第4の面68を有する4段に形成されている。
【0108】
図13Bに示す例の処置部54は、図13Aに示す例に対して、Y軸方向に面の数を多くし、段数を多くしている。第1の面62と第2の面64との間の第1の側面72の高さは例えば0.5mmである。第1の面62はそれぞれ例えば0.5mm×0.5mmに形成されている。また、図13Bに示す処置部54の例では、第1の面62から第6の面71を有する6段に形成されている。図13Bに示す例の場合、第2の側面74から第5の側面79の高さもそれぞれ例えば0.5mmに形成されている。このように、第1の側面72から第5の側面79の高さを調整することで、図13Aに示す例に対して、第1の面62と第2の面64との間、第2の面64と第3の面66との間等の長手軸Lに沿う高さ方向の距離を大きくしない。したがって、図13Aに示す例だけでなく、図13Bに示す例においても、各面62,64,66,…における長手軸Lに沿う方向の振幅の差が発生するのを抑制することができる。
【0109】
なお、図13A及び図13Bに示す例では、X軸方向にのみ、第1の面62が並設される例について説明した。図13Cに示すように、X軸方向だけでなく、Y軸方向に、第1の面62が並設されることも好適である。図13C中、先端面が第1の面62として形成される。第2の面64には、第1の側面72が長手軸Lに対して先端側に突出している。最外縁80は略矩形状に形成されている。第3の面66は、端面82,84の間の角部にそれぞれ形成されている。処置部54がこのように形成されていることも好適である。
【0110】
(第1実施形態の第3変形例)
上述した例では、処置部54がY軸方向に沿って複数の面(平面)62,64,66,68を有するなど、Y軸方向に沿って面(平面)が階段状に形成されている例について説明した。
【0111】
ここでは、図14A及び図14Bに示すように、処置部54は、Y軸方向だけでなく、X軸方向に沿って階段状に複数の面(平面)62,64,66,68が形成されている。Y軸方向の第2の面64及びX軸方向の第2の面64は同一の面(XY平面上)で連続し、環状に形成されている。同様に、Y軸方向の第3の面66及びX軸方向の第3の面66は同一の面(XY平面上)で連続し、環状に形成されている。すなわち、処置部54は、略ピラミッド状などの階段状に形成されていることも好適である。
【0112】
この場合も、上述した実施形態で説明したのと同様に、はじめから最外縁80の面積Sの先端面で骨Bを切削する場合に比べて、プローブ46の処置部54で所望の深さの凹孔100を形成する場合の切削速度を、向上させることができる。
第2の面62のY軸方向成分の寸法Dy2は、第3の面66のY軸方向成分の寸法Dy3よりも大きい。第3の面66のY軸方向成分Dy3は、第4の面68のY軸方向成分Dy4よりも大きい。第2の面62のX軸方向成分の寸法Dx2は、第3の面66のX軸方向成分の寸法Dx3よりも大きい。第3の面66のX軸方向成分Dx3は、第4の面68のX軸方向成分Dx4よりも大きい。そして、長手軸LからY軸方向に離れるにつれて、各段において、骨Bの切削に寄与する部位を少なくする処置部54とすることで、骨Bを切削して開口縁100aを形成する際の凹孔100の壁面を、最終的な開口縁100aから遠い位置よりも、開口縁100aに近い位置でより滑らかにすることができる。
なお、ここでは、第1の面62のY軸方向成分の寸法は、寸法Dy2よりも小さい。このため、長手軸Lから遠い、最外縁80に近い面66,68に向かう位置において寸法Dy3よりも寸法Dy4が小さいという状態が形成されていれば良い。同様に、長手軸Lから遠い、最外縁80に近い面66,68に向かう位置において寸法Dx3よりも寸法Dx4が小さいという状態が形成されていれば良い。この状態においても、開口縁100aを形成する際の凹孔100の壁面を、より滑らかにすることができる。
【0113】
第1実施形態では、第1の面62が最外縁80の端面82に連続している例について説明した。この変形例の処置部54の第1の面62は、最外縁80の端面82に連続していない。このため、第1の面62の面積S1は、第1実施形態で説明した処置部54の第1の面62の面積S1に比べて小さくすることが容易である。そして、第1の面62で凹孔100を形成し始める際の速度を、第1実施形態で説明した場合よりも早くすることができる。このため、骨Bに対して、より早期に処置部54の第1の面62で第1の面62を写し取った凹孔100を形成することができる。
【0114】
(第1実施形態の第4変形例)
図15Aから図16Bに示すように、処置部54の先端部は、第1の面62、第1の側面72及び第2の面64のみ有することも好適である。第2の面64の外縁は、処置部54の最外縁80として形成されている。
【0115】
図15A及び図15Bに示す処置部54では、第1の面62の面積S1は、第2の面64の面積S2に比べて小さい。最外縁80は、長方形に限ることはなく、正方形であっても良い。すなわち、最外縁80は、正多角形であっても良い。第1の面62の面積S1は、第2の面64の面積S2よりも小さいため、凹孔100を形成し始めるのが容易である。このため、第1の面62で、骨Bにより早期に凹孔100を形成することができる。そして、第2の面64の外縁65の形状を、凹孔100の開口縁100aの形状として写し取ることができる。
このため、処置部54のうち、長手軸Lに沿う面(処置面)の数(段数)は、4つ、6つに限ることはなく、2つであっても良い。
【0116】
図16A及び図16Bに示す処置部54では、第1の面62の面積S1は、第2の面64の面積S2に比べて大きい。図15A及び図15Bに示す例よりも、第1の面62での深さ方向への切削速度は劣ることが考えられるが、同一深さの大きな面積の凹孔100を形成することができる。第2の面64の外縁65の形状を、凹孔100の開口縁100aの形状として写し取ることができる。また、第2の面64の面積S2を小さくしているため、第2の面64の外縁65、すなわち、最外縁80での仕上げ面を、極力滑らかにすることができる。
【0117】
(第1実施形態の第5変形例)
図17A及び図17Bに示す処置部54は、第1の面(平面)62と、第2の面(平面)64と、第3の面(平面)66とを有する。ここでの処置部54は、上述した変形例を含む実施形態とは異なり、3つの平面62,64,66を有する。
【0118】
図17A及び図17Bに示す処置部54は、第1の面62が円形状に形成され、第2の面64が円環状に形成されている。第1の面62の面積S1は、第2の面64の面積S2と同一又は略同一である。第3の面66は、略矩形状に形成されている。第3の面66の面積S3は、第2の面64の面積S2よりも大きい。そして、第3の面66の外縁67の形状を、凹孔100の開口縁100aの形状として写し取ることができる。処置部54がこのように形成されていても、関節鏡16を通して観察される像に基づいて、術者がプローブ46の長手軸Lの軸回りの向きを調整することで、所望の凹孔100を形成することができる。
【0119】
処置部54のうち、長手軸Lに沿う面(処置面)の数(段数)は、4つ、6つ又は2つに限ることはなく、3つであっても良い。
【0120】
図17Cに示す処置部54は、端面82,84間の角部を、図17Bに示す鋭利な状態に対して、適宜の半径の1/4円として形成している。一方、第3の面66と最外縁80との間のエッジは、できるだけ鋭利な直角に形成されていることが好ましい。
図17Cに示す処置部における、長手軸に対して直交するY軸方向(第1の直交方向)に沿う断面における単位時間あたりの骨Bの切削量(切削粉の量)は、各面62,64,66のうち、骨Bを切削するのに寄与する部位の幅(寸法)に依存する。図17Cに示すように、第1の面62のY軸方向成分の寸法Dy1は、第2の面64のY軸方向成分の寸法Dy2よりも大きい。第2の面64のY軸方向成分の寸法Dy2は、第3の面66のY軸方向成分の寸法Dy3よりも大きい。
そして、Y軸方向成分について、第2の面64のうち、骨Bを切削するのに寄与する部位は、長手軸Lに対して直交するY軸方向(第1の直交方向)に沿って第1の面62よりも小さい寸法に形成されている。第3の面66のうち、骨Bを切削するのに寄与する部位は、第2の面64の処置対象を切削するのに寄与する部位よりも小さい寸法に形成されている。このため、処置部54は、長手軸Lに沿って先端側から基端側に向かうにつれて、Y軸方向成分については、骨Bを切削するのに寄与する部位の寸法を小さくしている。
したがって、上述したのと同様に、処置部54は、Y軸方向成分について、第1の面62の外縁63で骨孔100の面(側面)を形成するよりも、第2の面64の外縁65で骨孔100の面(側面)を形成する方が、切削面の仕上げが滑らかになる。処置部54は、第2の面64の外縁65で骨孔100の面(側面)を形成するよりも、第3の面66の外縁67で骨孔100の面(側面)を形成する方が、切削面の仕上げが滑らかになる。すなわち、図17Cに示す例の処置部54は、長手軸Lに沿って先端側から基端側に向かい、かつ、長手軸Lに対してY軸方向に離れた面(第3の面66)ほど、骨Bを切削するのに寄与する部位を少なくしている。このため、特に、骨Bを切削して開口縁100aを形成する際の凹孔100の壁面をより滑らかにすることができる。
【0121】
図17Dに示す処置部54では、長手軸Lに沿って先端側から基端側を見たとき、処置部54の最外縁80は、概略的には、2つの長辺と2つの半円とで形成される陸上競技場のトラック形状などの環状に形成されている。図17Eに示す処置部54では、処置部54の最外縁80が略楕円状に形成されている。
図17D及び図17Eに示す例の処置部54は、長手軸Lに沿って先端側から基端側に向かい、かつ、長手軸Lに対してY軸方向に離れた面(第3の面66)ほど、骨Bを切削するのに寄与する部位を少なくしている。このため、特に、骨Bを切削して開口縁100aを形成する際の凹孔100の壁面をより滑らかにすることができる。
【0122】
処置部54の最外縁80は、四角形に限らず、五角形、六角形など、適宜の形状又はそれに近い形状に形成される。
【0123】
超音波処置具22の処置部54の最外縁(投影形状)80は、多角形形状、略多角形形状、楕円形状、若しくは略楕円形状など、適宜の形状に形成される。このため、図9Aから図9Eで示したように、移植腱230の外形に合わせて処置部54で適宜に凹孔100,101,102,103を形成すると、凹孔100,101,102,103と移植腱230との間の空間量を極力小さくし、かつ、大腿骨112及び脛骨114の切削量を少なくすることができる。
【0124】
(第2実施形態)
第2実施形態について、図18A及び図18Bを用いて説明する。この実施形態は各変形例を含む第1実施形態の変形例であって、第1実施形態で説明した部材と同一の部材又は同一の機能を有する部材には極力同一の符号を付し、詳しい説明を省略する。
【0125】
本実施形態は、図10に示す処置部54の変形例である。本実施形態では、図18Aに示すように、第1の面62に、骨Bの所望の位置に凹孔100を形成する直前の、凹孔100の形成予定位置と第1の面62の向きとの位置関係を認識させる指標90を有する例について説明する。
なお、第1の面62を長手軸Lに沿って先端側から基端側を見たときの投影形状(第1の面62の外縁63の内側)は、第2の面64を長手軸Lに沿って先端側から基端側を見たときの投影形状(第2の面64の外縁65の内側)よりも小さい。このため、第1の面62の投影形状は、第2の面64の外縁65の内側にあり、第3の面66の外縁67の内側にあり、第4の面68の外縁(最外縁80)の内側にある。これは、図19Aから図21Bに示す処置部54においても同様である。
【0126】
本実施形態に係る処置部54は、第1の面62、第1の側面72、第2の面64、第2の側面74、第3の面66、第3の側面76、第4の面68及び第4の側面78とを有する。第1の面62、第2の面64、第3の面66及び第4の面68は、それぞれ長方形に形成されている。このため、処置部54は、階段状に形成されている。なお、第1の面62、第2の面64、第3の面66及び第4の面68はX軸方向に沿って延びている。第1の面62、第2の面64、第3の面66及び第4の面68のY軸方向の幅は、X軸方向の幅に比べて小さい。第1の面62の面積S1は、第2の面64の面積S2よりも大きい。第2の面64の面積S2と第3の面66の面積S3は同じである。第3の面66の面積S3と第4の面68の面積S4は同じである。
なお、ここでは、後述する凸部92により、凸部92の先端が先端面となり、第1の面62が先端から2番目の面となる。
【0127】
処置部54は、長手軸Lに沿って基端側から先端側を見るときの関節鏡(内視鏡)16の視野内で認識される指標90を有する。指標90として、第1の面62には凸部92が形成されている。凸部92は、矩形状の第1の面62から長手軸Lに沿って先端側に向かって突出している。凸部92は、本実施形態では、4つの角にそれぞれ形成されている。凸部92の長手軸Lに沿う突出長は、第1の面62と第2の面64との間の高さと同程度(図12A参照)でも良く、凸部92の突出長が第1の面62と第2の面64との間の高さに対して高くても低くても良い。
【0128】
指標90は、第4の面68に形成され第3の側面76に沿う凹部94を有する。図示しないが、凹部94は、1対の端面84の一方にのみ形成されていても良く、両方に形成されていても良い。
【0129】
関節鏡16及び処置具22の処置部54を図1に示す状態に配置すると、処置部54は図18Bに示すように、関節鏡16により認識される。そして、指標90の凸部92及び凹部94の両方又は片方が認識される。
【0130】
このとき、術者は、骨Bに対する超音波プローブ46の処置部54の長手軸Lの軸回りの向きを容易に認識することができる。凸部92が中心線Cy上に形成されているため、骨孔100の中央と中心線Cyとの位置関係を認識させ易い。このため、骨Bに対する処置部54を所望の位置に配置した状態で、超音波振動を用いて凹孔100を形成することができる。
【0131】
また、凹孔100を形成する処置により切削粉が排出され続けているとき、処置部54の先端側ほど、切削粉が邪魔になり、処置部54の先端側を認識するのが難しくなっていくことがある。凹部94が最外縁80に形成されていることで、凹孔100を形成する処置により切削粉が排出され続けている場合であっても、骨Bに対する処置部54の向きが認識され易い。
【0132】
各凸部92の先端面の面積S0は、第1の面62の面積S1よりも小さい。凸部92は第1の面62の4つの角から長手軸Lに沿って前方側に延出されている。本実施形態のように、処置部54の第1の面62と骨Bとの接触面積を適宜に小さくし、かつ、4つの凸部92で凹孔100を形成することで、所望の位置に所望の向きに骨Bに初期孔を形成させ易い。このため、4つの凸部92で、第1の面62に先駆けて、第1の面62の外縁63の形状の凹孔100が容易に形成される。凸部92によって4つの凹孔が形成されることで、処置部54が長手軸Lに対して回転方向の位置ズレを生じ難くした状態で、より早期に深さ方向に処置部54を移動させて凹孔100を形成し始めることができる。したがって、例えば4つなどの複数の凸部92で凹孔100を形成すると、凸部92に続いて、第1の面62で骨Bを切削し、所望の位置に所望の向きに凹孔100を形成していくことができる。
【0133】
そして、第1の面62、第2の面64、第3の面66の順に骨Bを切削し始めることで、凹孔100の開口縁100aを所望の形状に広げることができる。
【0134】
また、図11Aから図11Cを用いて説明したように、面62,64,66,…、及び、側面72,74,…を形成することで、長手軸Lに沿う1回の操作で形成したい骨孔100の大きさ等に合わせて処置部54の大きさを設定することができる。このため、処置部54の大きさの設定によっては、凸部92の視認性を向上させることができる。
また、図12Aから図12Cに示すのと同様に、第1の面62から突出する凸部92の突出量は、適宜に設定される。このため、凸部92の突出量の設定によっては、凸部92の視認性を向上させることができる。
なお、本実施形態における処置部54では、第1の面62から第4の面68、及び、第1の側面72から第4の側面78が、例えば図11Aから図12Cに示す形状に形成されることが好適であることはもちろんである。
【0135】
(第2実施形態の第1変形例)
本変形例は、図13Cに示す処置部54の変形例である。本変形例では、図19Aに示すように、凸部92は、中心線Cx,Cy上に形成され、かつ、端面82,84に連続している。第3の面66は、第2の面64に対する凹部94として、端面82,84の間の角部にそれぞれ形成されている。すなわち、凹部94は、最外縁80の端面82,84にまたがって形成されている。
【0136】
関節鏡16及び処置具22の処置部54を図1に示す状態に配置すると、処置部54は図19Bに示すように、関節鏡16により認識される。そして、指標90の凸部92及び凹部94の両方又は片方が認識される。
【0137】
このとき、術者は、骨Bに対する超音波プローブ46の処置部54の長手軸Lの軸回りの向きを容易に認識することができる。凸部92が中心線Cx,Cy上に形成され、かつ、端面82,84に連続しているため、骨孔100の中央と中心線Cx,Cyとの位置関係を認識させ易い。このため、骨Bに対する処置部54を所望の位置に配置した状態で、超音波振動を用いて凹孔100を形成することができる。
【0138】
凹部94が最外縁80に形成されていることで、形成するのを予定している骨Bの孔の位置及び処置部54の向きが認識され易い。
【0139】
長手軸Lに沿って先端側から基端側を見たとき、凸部92のうち、長手軸Lに対して直交するY軸方向(第1の直交方向)に沿う幅(寸法)が、第1の面62のうち、Y軸方向に沿う幅(寸法)よりも小さい。同様に、X軸方向(第2の直交方向)に沿う幅(寸法)が、第1の面62のうち、X軸方向に沿う幅(寸法)よりも小さい。各凸部92の先端面の面積S0は、第1の面62の面積S1よりも小さい。凸部92はCx,Cy上に形成されている。凸部92によって4つの凹孔がより早期に形成される。このため、処置部54が長手軸Lに対して回転方向の位置ズレを生じ難くした状態で、より早期に長手軸Lに沿って深さ方向に処置部54を移動させて凹孔100を形成し始めることができる。したがって、例えば4つなどの複数の凸部92で凹孔100を形成すると、凸部92に続いて、第1の面62で骨Bを切削し、所望の位置に所望の向きに凹孔100を形成していくことができる。
【0140】
(第2実施形態の第2変形例)
図20Aに示すように、第1の面62の4つの角に凸部92を有するとともに、最外縁80の端面82,84間の中心線Cx,Cy上に凹部94が形成されている。第3の面66は、第2の面64に対する凹部94として、最外縁80の端面82,84間の中心線Cx,Cy上にそれぞれ形成されている。
【0141】
関節鏡16及び処置具22の処置部54を図1に示す状態に配置すると、処置部54は図20Bに示すように、関節鏡16により認識される。そして、指標90の凸部92及び凹部94の両方又は片方が認識される。
【0142】
このとき、術者は、骨Bに対する超音波プローブ46の処置部54の長手軸Lの軸回りの向きを容易に認識することができる。凸部92が第1の面62の角に形成され、かつ、端面82,84に連続しているため、形成したい骨孔100の中央の位置と、凸部92との位置関係を認識させ易い。このため、骨Bに対する処置部54を所望の位置に配置した状態で、超音波振動を用いて凹孔100を形成することができる。
【0143】
凹部94が最外縁80に形成されていることで、形成するのを予定している骨Bの孔の位置及び処置部54の向きが認識され易い。
【0144】
長手軸Lに沿って先端側から基端側を見たとき、凸部92のうち、長手軸Lに対して直交するY軸方向(第1の直交方向)に沿う幅(寸法)が、第1の面62のうち、Y軸方向に沿う幅(寸法)よりも小さい。同様に、X軸方向(第2の直交方向)に沿う幅(寸法)が、第1の面62のうち、X軸方向に沿う幅(寸法)よりも小さい。各凸部92の先端面の面積S0は、第1の面62の面積S1よりも小さい。凸部92は第1の面62の角に形成されている。凸部92によって4つの凹孔がより早期に形成される。このため、処置部54が長手軸Lに対して回転方向の位置ズレを生じ難くした状態で、より早期に長手軸Lに沿って深さ方向に処置部54を移動させて凹孔100を形成し始めることができる。したがって、凸部92で凹孔100を形成すると、凸部92に続いて、第1の面62で骨Bを切削し、所望の位置に所望の向きに凹孔100を形成していくことができる。
【0145】
(第2実施形態の第3変形例)
本変形例は、図14A及び図14Bに示す処置部54の変形例である。図21Aに示すように、処置部54は、略ピラミッド状に形成されている。第1の面62は凸部92を有する。凸部92は、第1の面62の4つの角にそれぞれ形成されている。
【0146】
関節鏡16及び処置具22の処置部54を図1に示す状態に配置すると、処置部54は図21Bに示すように、関節鏡16により認識される。そして、指標90の凸部92が認識される。
【0147】
このとき、術者は、骨Bに対する超音波プローブ46の処置部54の長手軸Lの軸回りの向きを容易に認識することができる。凸部92が第1の面62の角に形成され、かつ、第1の側面72に連続しているため、形成したい骨孔100の中央の位置と、凸部92との位置関係を認識させ易い。このため、骨Bに対する処置部54を所望の位置に配置した状態で、超音波振動を用いて凹孔100を形成することができる。
【0148】
各凸部92の先端面の面積S0は、第1の面62の面積S1よりも小さい。凸部92は第1の面62の角に形成されている。凸部92によって4つの凹孔がより早期に形成される。このため、処置部54が長手軸Lに対して回転方向の位置ズレを生じ難くした状態で、より早期に長手軸Lに沿って深さ方向に処置部54を移動させて凹孔100を形成し始めることができる。
【0149】
したがって、図18Aから図21Bに示す例では、指標90により、骨Bのうちの骨孔100を形成したい位置に対する処置具22の処置部54の向きを、関節鏡16の視下で適宜の状態に容易に合わせることができる。
【0150】
また、指標90として凸部92を有する場合、初期切削を行い、骨Bに対して処置部54が滑るのを防止することができる。このため、本実施形態によれば、例えば骨に孔を形成する場合などの処置効率を向上させることが可能な超音波プローブ及び超音波処置アッセンブリを提供することができる。
【0151】
これまで、幾つかの実施形態について図面を参照しながら具体的に説明したが、この発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で行なわれるすべての実施を含む。

図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図9D
図9E
図10
図11A
図11B
図11C
図12A
図12B
図12C
図13A
図13B
図13C
図14A
図14B
図15A
図15B
図16A
図16B
図17A
図17B
図17C
図17D
図17E
図18A
図18B
図19A
図19B
図20A
図20B
図21A
図21B