(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-02
(45)【発行日】2022-05-13
(54)【発明の名称】車両空調システムアウトフローユニット
(51)【国際特許分類】
B60H 3/06 20060101AFI20220506BHJP
【FI】
B60H3/06 A
(21)【出願番号】P 2020514933
(86)(22)【出願日】2018-09-10
(86)【国際出願番号】 EP2018074333
(87)【国際公開番号】W WO2019052957
(87)【国際公開日】2019-03-21
【審査請求日】2020-05-08
(31)【優先権主張番号】102017121202.7
(32)【優先日】2017-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】505385251
【氏名又は名称】ヴァレオ クリマジステーメ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100217836
【氏名又は名称】合田 幸平
(72)【発明者】
【氏名】ライナー、ゾンネンベルガー
(72)【発明者】
【氏名】ゲルハルト、ノイマイアー
【審査官】安島 智也
(56)【参考文献】
【文献】特開昭52-149730(JP,A)
【文献】特開昭59-209664(JP,A)
【文献】特開平11-076390(JP,A)
【文献】特開2002-324651(JP,A)
【文献】特開2008-260520(JP,A)
【文献】特開2012-212519(JP,A)
【文献】特開2013-141883(JP,A)
【文献】特開2016-007542(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁(22、24、26、28、30)に囲まれ
、互いに並ぶ第1ダクト(14)及び第2ダクト(16)と、電源に接続された電極(20)と、を有する車両空調ユニット出口ユニット(10)において、
前記電極(20)は、前記
第1ダクト(14)内に突出する
第1傾斜部(68)及び前記第2ダクト(16)内に突出する第2傾斜部(70)であって、対応する前記
第1ダクト及び第2ダクト(14、16)を流れる空気をイオン化することが意図された
第1傾斜部及び第2傾斜部(68、70)と、前記電極(20)用のホルダ(74)が装着される保持部(66)と、を備え、
前記
第1ダクト及び第2ダクト(14、16)内に突出する前記
第1傾斜部及び第2傾斜部(68、70)は、前記保持部(66)に対して傾斜するとともに、前記保持部(66)に一体に結合する、
車両空調ユニット出口ユニット。
【請求項2】
前記電極(20)は、平坦材料から形成される、
ことを特徴とする請求項
1に記載の車両空調ユニット出口ユニット。
【請求項3】
前記ダクト(14、16)内に突出する前記傾斜部(68、70)は、前記隣接する壁(28)に対して実質的に垂直な態様で、前記ダクト中央部の方向において、前記傾斜部(68、70)の端部(
88)まで延びる、
及び/又は、
前記保持部(66)は、前記隣接する壁(28)に対して平行に延び、特に、前記保持部(66)の平坦な側部(67)が、前記隣接する壁(28)の内側のダクトに対して平行に延びる、
ことを特徴とする請求項
2に記載の車両空調ユニット出口ユニット。
【請求項4】
前記ダクト(14、16)内に突出する前記傾斜部(68、70)の部分(108)の平坦な側部(110)であって、互いに対向して配置された平坦な側部(110)が、前記流れ方向(S)に対して平行に延びる、
ことを特徴とする請求項
2又は3に記載の車両空調ユニット出口ユニット。
【請求項5】
各電極(20)が、前記保持部(66)に隣接するとともに前記ダクト(14、16)内に突出する傾斜部(68、70)を有し、
各電極(20)の前記ダクト(14、16)内に突出する前記
傾斜部(68、70)は、前記ダクト(14、16)において
前記壁(22、24、26、28、30)から離れて延びる、
ことを特徴とする請求項1乃至
4の一項に記載の車両空調ユニット出口ユニット。
【請求項6】
各傾斜部(68、70)は、前記ダクト(14、16)において
前記壁(22、24、26、28、30)から離れて延びる先端(90)と、前記先端(90)で終端する端部(88)と、を有し、
前記先端(90)は、前記流れ方向(S)を向く、
ことを特徴とする請求項1乃至
5の一項に記載の車両空調ユニット出口ユニット。
【請求項7】
前記端部(88)は、接続部(92)に一体に隣接し、
前記接続部(92)は、前記電極(20)の前記保持部(66)まで延びて前記端部(88)とともにL字形状をなし、
特に、前記接続部(92)は、前記先端(90)の
延長部(94)に対して60‐120°の範囲にある角度(β)、好適には90°の角度(β)で延びる、
ことを特徴とする請求項
6に記載の車両空調ユニット出口ユニット。
【請求項8】
前記電極(20)は、前記保持部(66)に一体に結合する電気接触フィンガ(72)であって、前記電源との電気的接続を確立することを目的として設けられる電気接触フィンガ(72)を備える、
ことを特徴とする請求項1乃至
7の一項に記載の車両空調ユニット出口ユニット。
【請求項9】
前記保持部(66)は、オーバーモールドされて前記ホルダ(74)を形成する、
ことを特徴とする請求項1乃至
8の一項に記載の車両空調ユニット出口ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁に囲まれた少なくとも1つのダクトと、電源に接続された電極と、を有する車両空調ユニット出口ユニットに関する。電極は、ダクト内に突出する少なくとも1つの傾斜部であって、対応するダクトを流れる空気をイオン化することが意図された傾斜部と、電極用のホルダが取り付けられる保持部と、備える。
【背景技術】
【0002】
車両空調ユニット及び車両空調ユニット用出口ユニットが知られている。また、イオン化された空気流を提供するために、高電圧電極を空調ユニットにおいて使用することも知られている。この場合、先端が設けられた電極の一部分が、空気の流れる車両空調ユニットのダクト内に突出する。1キロボルト以上の高電圧により、高い電界強度を有する強力な電界が先端に形成される。このため、先端からの電界放射の結果、空気流中の荷電粒子が加速し、電子が解放される、すなわち放出される。自由電子及び加速した粒子は、蓄積又は衝突イオン化によって更にイオンを形成し、空気流がイオン化される。
【0003】
特にマイナス酸素イオンの高いイオン含有量は、人間の健康を増進することが意図された多くの有益な効果に関連付けられている。とりわけ、マイナス酸素イオンは、身体の防衛力を改善し、臭気を中和し、細菌やウイルスの成長を抑制し、アレルギー反応のリスクを減少させ、集中力を高め、ストレス耐性に対する有益な効果をもたらすことが意図されている。
【0004】
自動車の分野においては、効率性に鑑み、重量及び設置スペースの要件が可能な限り小さい部品を使用する努力が常になされている。更なる優先事項としては、潜在的な最適化を利用して製造コストを削減することを目指している。また、車両に乗っている人の快適性を高めるように、車両における全てのデバイスの動作音を最小にすることも目指している。
【発明の概要】
【0005】
したがって、本発明の目的は、コスト効果の高い態様で製造することができる、コンパクトでスムーズに作動する車両空調ユニット出口ユニットを提供することである。
【0006】
この目的を達成すべく、壁に囲まれた少なくとも1つのダクトと、電源に接続された電極と、を有する車両空調ユニット出口ユニットが提供される。電極は、ダクト内に突出する少なくとも1つの傾斜部であって、対応するダクトを流れる空気をイオン化することが意図された傾斜部と、電極用のホルダが装着される保持部と、を備える。ダクト内に突出する傾斜部は、保持部に対して傾斜するとともに、特に湾曲した態様で保持部に一体に結合する。電極が一部品から形成されるため、電極、ひいては出口ユニットをコスト効果の高い態様で製造できる。
【0007】
一実施形態によれば、互いに並ぶ少なくとも2つのダクトであって、そのそれぞれの内部に少なくとも1つの傾斜部が突出するダクトが設けられる。この利点は、互いに並ぶ複数のダクトをイオン化するために、単一の電極が設けられ得ることである。このようにして、出口ユニットをコスト効果の高い態様で製造できる
【0008】
更に、電極は、平坦材料から形成されることが想定され得る。本発明の意味において、平坦材料とは、0.001mm乃至0.3mmの範囲の実質的に均一な材料厚さを有する材料である。したがって、電極は、例えば打抜部品であってもよく、又はレーザー切断によって形成してもよいため、非常にコスト効果の高い態様で製造できる。
【0009】
一実施形態において、傾斜部は、隣接する壁に対して実質的に垂直な態様で、ダクト中央部の方向に、傾斜部の端部まで延びる。追加的に又は代替的に、保持部は、隣接する壁に対して平行に延び得る。この場合、特に、保持部の平坦な側部が、隣接する壁の内側のダクトに対して平行に延びる。したがって、保持部をダクトに特に近く配置することができ、傾斜部を特に短くできる。こうして、出口ユニットのスペース要件及び重量を低下させることができる。
【0010】
更に、ダクト内に突出する傾斜部の平坦な側部であって、互いに対向して配置された平坦な側部が、流れ方向に対して平行に延びる。平坦材料の薄い厚さや流れ方向に対して平行な部分の配向により、流れ抵抗が電極によって増加することはほとんどない。更に、このような配向により、ダクト内に突出する部分に作用する力が低減されるため、当該部分を特に薄くできる。
【0011】
各電極が、保持部に隣接するとともにダクト内に突出する傾斜部を有し得る。各電極のダクト内に突出する部分が、本例において、ダクトにおいて自由な態様で、すなわち、壁に対して支持されずに延びる。このようにして、ダクト内に突出する部分により流れ抵抗が大幅に増加することがなく、出口ユニットをコスト効果の高い態様で製造できる。
【0012】
更なる実施形態において、各傾斜部は、ダクトにおいて自由な態様で終端する少なくとも1つの先端と、単数又は複数の先端で終端する端部と、を有する。本例において、先端は、流れ方向を向いており、これにより、実験で実証されているように、空気流における電子脱離やイオン形成が良好になる。更に、先端が流れ方向を横切る方向に延びる場合より、空気流中に渦が形成されない。したがって、出口ユニットは、特にスムーズに作動する。
【0013】
端部は、接続部に一体に隣接し、接続部は、電極の保持部まで延びて端部とともにL字形状をなすことが想定され得る。特に、接続部は、先端の延長部に対して60‐120°の範囲にある角度、好適には90°の角度で延び得る。本例において、先端の延長部は、先端が向く方向に対応する。このようにして、先端は、接続部を介して電極の保持部に接続するとともに、接続部及び保持部の両方に対して傾斜した態様で延び得る。したがって、接続部がダクト壁からダクト内に、特にダクトの範囲に対して90°の角度で延びる場合、先端それ自体が流れ方向において延びることができる。これは、接続部を比較的短くできるという利点があるため、一方で材料を節約できるとともに、他方で接続部の剛性を高めることができる。
【0014】
更なる実施形態によれば、電極は、保持部に一体に結合する電気接触フィンガであって、電源との電気的接続を確立することを目的として設けられる電気接触フィンガを備える。このようにして、電極を1つのワークから完全に製造できるため、非常にコスト効果の高い態様で製造できる。更に、一部品構造の電極は、組付及び更なる処理の際や物流において利点を有する。
【0015】
保持部は、オーバーモールドされてホルダを形成し得る。これにより、電極を安全に収容するとともに、例えばハウジング内又はハウジング上に簡単に固定する又は取り付けることができる。
【0016】
或いは、保持部を壁に射出成形してもよいが、その場合交換することはできない。
【0017】
更なる利点及び特徴は、添付図面を参照しつつなされる以下の説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】電子ユニットと電極を有する電極アセンブリとを有する、本発明の実施形態による出口ユニットの斜視図。
【
図3】
図1の電子ユニットと電極アセンブリの分解図。
【
図4】
図1の電子ユニットと電極アセンブリの斜視図。
【
図7】
図1の出口ユニットを分解するための組付ステップの斜視図。
【
図8】
図1の出口ユニットを分解するための別の組付ステップの斜視図。
【
図9】
図1の出口ユニットを分解するための別の組付ステップの斜視図。
【
図10】
図1の出口ユニットを分解するための別の組付ステップの斜視図。
【
図11】
図1の出口ユニットを分解するための別の組付ステップの斜視図。
【
図12】
図1の出口ユニットを分解するための別の組付ステップの斜視図。
【
図13】
図1の出口ユニットを分解するための別の組付ステップの斜視図。
【
図14】
図1の出口ユニットを分解するための別の組付ステップの斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、自動車両の空調ユニットの車両空調ユニット出口ユニット10を示す。出口ユニット10は、第1ダクト14及び第2ダクト16を有するハウジング12、並びに電子ユニット18及び電極20を備えている。
【0020】
空調ユニットの動作中、空気流が、ダクト14、16のそれぞれを流れ方向Sにおいて流れる。この空気流は、電極20によりイオン化され得る。図示の実施形態において、ダクト14、16は、自動車両内部の前方領域に、調整された空気を提供することを目的として設けられている。代替実施形態において、ダクト14、16は、車内の任意の所望の領域、特に互いに異なる領域に、調整された空気を提供することを目的として設けられ得る。
【0021】
流れ方向Sにおいて、出口ユニット10は、特に、内部への移行部としての格子状の通気口の直前に配置される。この目的は、時として非常に短命のイオンを可能な限り多く車両内部に提供することである。
【0022】
ダクト14、16は、流れ方向Sに対して垂直に複数の壁22、24、26、28に囲まれている。ダクト14、16は、共通の隔壁30によって互いに分離されている。
【0023】
壁22、24、26、28及び隔壁30は、ダクト14、16のそれぞれについて、流れ方向Sに対して垂直な実質的に長方形のダクト断面を形成している。本例において、隔壁30は、側壁22、26の間においてその中央に配置されている。このため、ダクト14、16は、実質的に同一のダクト断面を有している。
【0024】
電子ユニット18に隣接する壁28において、ハウジング12は、リブ形状の凸部32(
図2)を有している。凸部32は、壁28及びダクト16から鉛直方向外側に突出するとともに、流れ方向Sに延びている。また、凸部32は、中央に配置された隔壁30に対してオフセットした態様で設けられているため、ダクト14、16及び電子ユニット18に対して非対称に配置されている。
【0025】
ハウジング12は、一部品として形成されている。代替実施形態において、ハウジング12は、複数のハウジング部品から構成され得る。
【0026】
特に、ダクト14、16は、接続ウェブ38を介して互いに接続した別個のハウジング部品34、36によって形成され得る。本実施形態を、破線要素により
図2に示す。
【0027】
本例において、凸部32は、単数又は複数の接続ウェブ38により形成され得る。この結果、これら2つの機能が組み合わされる。
【0028】
ハウジング部品34、36を接続することを目的として設けられた接続ウェブ38は、例えば、さねはぎ接続部である。
【0029】
また、ハウジング12は、ウェブ42に設けられた挿入補助部40(
図1参照)も備えている。ウェブ42は、壁28上で、すなわちダクト14、16の反対側において、側壁22から側壁26まで、流れ方向Sを横切る方向に延びている。
【0030】
更に、固着装置44が、ハウジング12に設けられている。固着装置44は、壁28から外側に向かって、すなわちダクト14、16から離れるように延びている。固着装置44は、電子ユニット18を固着することを目的として設けられている。固着装置44は、2つのプレート形状の固着デバイス46、47(
図11参照)を備えている。固着デバイス46、47は、側壁22、26に対して平行に延びるとともに、電子ユニット18の両側部48、49(
図3参照)に配置されている。各固着デバイス46、47は、スロット形状の固着部50と、挿入面54と、を有している。固着部50には、電子ユニット18の対応する固着ピン52を嵌め込むことが意図されている。挿入面54は、固着部50に対応する固着ピン52を案内することを目的として設けられている。
【0031】
電子ユニット18(
図1参照)は、電子部品58を有する回路基板56と、電極20用の高電圧を生成することを目的として設けられた変圧器60と、を備えている。
【0032】
変圧器60は、イオン化に必要な3kVの電圧を提供するように設計されている。更に、変圧器60は、例えば10kVまでのより高い電圧を提供するように設計され得る。
【0033】
回路基板56は、壁28に平行に配置されるとともに、ダクト14、16に面する前側部62と反対側の後側部64とを有している(
図1参照)。電子部品58及び変圧器60は、前側部62に設けられるとともに、回路基板56からダクト14、16の方向に延びている(
図4参照)。電子部品58又は変圧器60の固定又は接触手段、例えば接触足を除いて、回路基板56の後側部64において回路基板56から電子部品は突出していない。回路基板56の一側のみに装着されているため、回路基板は特に平坦であり、したがってコンパクトである。或いは、回路基板56には、その前側部62にいわゆる表面実装装置(SMD)が装着され得る。この結果、後側部64から突出する固定又は接触手段がないため、電子ユニット18を更に平坦にすることができる。
【0034】
電極20は、保持部66と、2つの傾斜部68、70と、を備えている。傾斜部68、70は、保持部66の両端に隣接し、保持部66とともにU字状の輪郭を形成している(
図5参照)。
【0035】
保持部66には、上方に突出するU字状の接触部72が設けられている。接触部72は、接触フィンガ形状である。
【0036】
傾斜部68、70は、保持部66に対して垂直であり、すなわち、90°の角度αをなしている。或いは、傾斜部68、70のそれぞれは、保持部66に対して任意の所望の角度αで配置され得る。
【0037】
電極20全体は、平坦材料から形成されている。保持部66、傾斜部68、70、及び接触部72は、互いに一体に接続している。
【0038】
平坦材料は、0.1mmの均一な材料厚さDを有している。或いは、材料厚さは、0.001mm乃至0.3mmの範囲にあってもよい。
【0039】
電極20を形成する材料は、X10CrNi18‐8である。代替実施形態において、電極20は、空気流をイオン化する電極を形成するのに適した任意の所望の材料、例えば、18CR9Niから形成され得る。
【0040】
電極20は、特に屈曲によりその最終形状とされた打抜部品である。或いは、電極20は、例えばレーザー切断により平坦材料から切断され得るとともに、次いで屈曲により成形され得る。
【0041】
代替実施形態において、傾斜部68、70は、保持部66に任意の所望の位置において隣接し得る。特に、電極20が2つより多い傾斜部68、70を備える場合、傾斜部68、70は、保持部66の両端部の間において、特に横方向に隣接し得る。
【0042】
保持部66、及び保持部66に隣接する傾斜部68、70の部分は、オーバーモールドされてホルダ74を形成している。ホルダ74と電極20とは、ともに電極アセンブリ76を形成している。
【0043】
電子ユニット18は、流れ方向Sにおける下流にあってダクト14、16に面する縁部78において、嵌込部80を有している。嵌込部80は、電極アセンブリ76と相補的であり、電極アセンブリ76を形状適合態様にて収容することを目的として設けられている。組立状態において、電子ユニット18及び電極アセンブリ76は、実質的に直方体の形状を有している。
【0044】
嵌込部80において、電子ユニット18は、嵌合接触部82を有している。嵌合接触部82は、接触部72の反対側に配置されて、電極20と電子ユニット18との電気接触を確立する。この結果、変圧器60により生成される高電圧が、電極20に提供され得る(
図4参照)。
【0045】
接触部72と嵌合接触部82との確実な接触を保証するように、接触部72と嵌合接点82とは、プレストレスにより弾性的に互いに当接し得る。このようにして、電子ユニット18の自重により、接触部72と嵌合接点82との電気的接続が保証される。代替的に又は追加的に、接触部72と嵌合接点82との確実な電気的接触を保証するように、電子ユニット18と電極アセンブリ76及び/又は壁との間にラッチ(図示せず)を設けることも可能である。
【0046】
代替実施形態において、電極20は専用の接触部72を有していなくてもよい。この場合、嵌合接点82は、例えば保持部66に直接的に当接するようにして、電子ユニット18と電極アセンブリ76との電気的接続を確立する。
【0047】
電極20の保持部66は、隣接する壁28に対して平行に延びている。保持部66の平坦な側部67、すなわち、保持部66の延びる方向を横切る幅広の側部が、壁28に対して平行である。
【0048】
電子ユニット18及びホルダ74は、凹部84を有している。凹部84は、ハウジング12の凸部32と相補的であり、特に電子ユニット18及びホルダ74のハウジング12の凸部32への形状適合接続を提供している。
【0049】
全体的高さを抑えるように、凹部84は、回路基板56の方向において、電気部品58及び/又は変圧器60の間で延びてもよい。回路基板56が凸部32を横切って延びない代替実施形態において、凹部84は、ダクト14、16から反対側に回路基板56の高さまで、又はその上方まで延び得る。
【0050】
このようにして、出口ユニット10は非常にコンパクトになり得る。更に、凸部32と凹部84の非対称配置により、電子ユニット18、電極アセンブリ76、そして電極20の配向に関する組立エラーが排除される。
【0051】
凹部84は、第1傾斜部68と第2傾斜部70との間に配置されている。或いは、特に凸部が同一電極20の2つの傾斜部68、70の間に配置されない場合、電極20及び/又は電子ユニット18は、凸部32に対して、凹部84が電子ユニット18及び/又は電極アセンブリ76において別の位置にあるように配置され得る。
【0052】
第1傾斜部68は第1ダクト14内に延び、第2傾斜部70は第2ダクト16内に延びている。この目的のために、電極アセンブリ76に隣接する壁28は、流れ方向Sに延びるスロット86をそれぞれ有している(
図9参照)。
【0053】
更なる代替実施形態において、電極アセンブリ76は、例えば、ハウジング12と一体に成形されることにより、ハウジング12に一体化され得る。
【0054】
空気流をイオン化するのに適した十分に高い電界強度を提供するように、傾斜部68、70は、対応するダクト14、16において自由な態様で終端する先端90を持つ端部88をそれぞれ有している。
【0055】
傾斜部68、70の両者は実質的に同一の外形を有するので、両傾斜部68、70の外形について、
図6に示す傾斜部68に基づいて以下に説明する。
【0056】
傾斜部68は、接続部92を有している。接続部92は、端部88に一体に隣接し、電極20の保持部66まで延びている。
【0057】
本例において、接続部92は、先端90の延長部94に対して90°の角度βをなして延び、端部88とともにL字形状部を形成する。或いは、角度βは、任意の所望の値、特に60°乃至120°の範囲における値を有し得る。
【0058】
弓形の縁部領域96、97が、接続部92から端部88への移行部98を画定している。
【0059】
端部88は、凹形状の縁部領域102に隣接する凸形状の縁部領域100と、凹形状の縁部領域102の反対側に配置された凹形状の縁部領域104と、により形成されている。
【0060】
凹形状の縁部領域102及び凹形状の縁部領域104は、先端90まで延びている。或いは、凹形状の縁部領域102及び/又は凹形状の縁部領域104は、先端90の手前で終端してもよく、例えば先端90まで延びる直線又は接線において(それぞれ)終端してもよい。
【0061】
先端90の領域において、端部88は、8°の角度γを有している。すなわち、凹形状の縁部領域102、104は、先端90において8°の角度γで互いに交わっている。代替実施形態にいて、角度γは、90°未満、好適には30°未満、より好適には15°未満、特に10°未満の値を有し得る。
【0062】
凸形状の縁部領域100及び凸形状の縁部領域に隣接する凹形状の縁部領域102により、端部88は、接続部92の反対側に、二次元の滴の半体の形状を有する部分106を有している。
【0063】
先端90は、流れ方向Sを向いている。すなわち、先端90の延長部94は、流れ方向Sに平行である。
【0064】
先端90の曲率半径は0.005mmであり、したがって、平坦材料の材料厚さDの半分である。或いは、先端90の曲率半径は、平坦材料の材料厚さDの半分未満であってもよい。
【0065】
壁28からダクト14内に延びる傾斜部68の一部は、ダクト14内に突出する傾斜部68の部分108である。
【0066】
上述の特徴により、ダクト14内に突出する部分108は、特に側面視において、及び流れ方向を横切る方向において、先端90までいかなる角部も有さず、結果として特に流線形である。
【0067】
ダクト14、16内に突出する傾斜部68、70のこれらの部分108は、ホルダ74に隣接する壁28にそれぞれ垂直であるとともに、ダクト14、16において自由な態様で、すなわち、支柱等の構造体により支持されずに延びている(
図1参照)。
【0068】
更に、ダクト14、16内に突出する部分108は、ダクト14、16内に突出する部分108の平坦な側部110であって、互いに対向して配置された側面110が流れ方向Sに対して平行に延びるように配向されている。
【0069】
更に、ダクト14、16内に突出する部分108は、各先端90が対応するダクト14、16のダクト断面の中央部112において終端するように配置されている。本例において、中央部112は、ダクト断面の中心点Xに対して同心の円であって、ダクト断面の10%の面積を有する円である。したがって、先端90は、ダクト壁22、24,26、28、30から最大限距離を置くとともに、最大の体積流量を有するダクト14、16の領域に配置されている。このため、空気流中で生成されるイオンの品質は非常に高い。
【0070】
ダクト14、16内に突出する部分108のこのような配置及び配向により、ダクト14、16の流れ抵抗が実質的に増加しないことが保証される。更に、空気流中の渦が回避されるため、干渉ノイズが抑制される。更に、オゾンの生成が減少する。
【0071】
電子ユニット18及び電極アセンブリ76は、例えば故障した場合に対応する部品に交換するように、一緒に又は互いに別個に交換可能な交換部品である。
【0072】
更に、電子ユニット18及び電極アセンブリ76は、それぞれ差し込み部品の形状であるため、これらをハウジング12又は準備した設置スペースに差し込むことができる。好適には、この目的のためのツール及び/又は固定手段は必要ない。この結果、組付が特に単純な態様で実施され得る。
【0073】
電子ユニット18及び電子ユニット18とは別個に設計された電極アセンブリ76のコンパクトな構成により、電子ユニット18及び電極アセンブリ76を組み付ける、又は分解するのにごく小さいスペースしか必要ない。したがって、出口ユニット10を別の車両構造体、例えば
図1に示す横方向支柱114の下方に、電子ユニット18と横方向支柱114との間に十分に開けた高さHがある限り、直接配置することができる。本例において、開けた高さHは、電子ユニット18の設置状態における電子ユニット18と横方向支柱114との間の最短距離である。
【0074】
電子ユニット18及び電極アセンブリ76の設置及び取り外しに必要な電子ユニット18と横方向支柱114との間の最小の開けた高さHは、多数の要因に依存する。とりわけ、流れ方向Sにおける横方向支柱114の電子ユニット18に対する相対的位置、固着装置44及び挿入補助部40が壁28に対して垂直に延びるそれぞれの高さ、及び電子ユニット18が軸、特に2つの固着ピン52を通過して延びる軸を中心として回転可能であるか否か、及びどのようにして回転可能であるか、に依存する。固着装置44及び挿入補助部40が壁28に対して垂直に延びる高さがそれぞれ電子ユニット18の高さh(
図2参照)のおよそ90%である
図7に示す実施形態において、電子ユニット18が回転できない、又は回転すべきでない場合、最小の開けた高さHは、同様にこの高さ、すなわち高さhのおよそ90%に相当する。しかしながら、提示された例(
図9参照)のように電子ユニット18が回転可能である場合には、結果として高さhの90%未満の最小の開けた高さHが必要であり得る。
【0075】
代替実施形態において、最小の開けた高さHは、電子ユニット18の高さhの50%未満、好適には100%未満、特に150%未満であり得る。
【0076】
電極アセンブリ76の正確な組付を簡単にするとともに、ダクト14、16内への挿入中に非常に薄い傾斜部68、70が損傷しないことを保証するように、挿入補助部40が設けられている。ダクト14、16内に突出する各部分108について、挿入補助部40は、溝118を有する挿入手段116を備えている。溝118は、流れ方向Sにおいて側壁22、26に対して平行に延び、組付中にダクト14、16内に突出する部分108、特に接続部92を収容する又は案内することを目的として設けられている。特にダクト14,16内に突出する部分108が流れ方向Sに対して平行に配置されない代替実施形態において、溝118は異なった配向を有し得る。
【0077】
電子ユニット18及び電極アセンブリ76を取り外す、及び組み付けるための方法について
図7乃至
図14に基づいて以下に説明する。
【0078】
図7は、完全に組み立てられた状態の出口ユニット10を示す。電極アセンブリ76は、壁28、及び流れ方向Sにおいてウェブ42に隣接するように配置され、ダクト14、16内に突出する傾斜部68、70は、それぞれ対応するダクト14、16に配置されている。同様に、電子ユニット18は、壁28に隣接するように配置されるとともに、(固着ピン52を使用して)形状適合態様にて固着装置46、47の間に配置されている。本例において、電極アセンブリ76は嵌込部80に形状適合態様で収容され、接触部72は嵌合接点82と電気的に接続している(
図4参照)。この状態において、電子ユニット18は、壁28に平行な平面内で、流れ方向Sにおいて、及び流れ方向Sの逆方向において、且つ流れ方向Sを横切る方向において、変位不能に固定されている。電極アセンブリ76は、ハウジング12と電子ユニット18との間に形状適合態様でクランプ又は収容されており、したがって同じく固定されている。
【0079】
電子ユニット18を取り外すためには、これを壁28に対して垂直に持ち上げ(
図8参照)、次いで固着ピン52の軸を中心として傾けることにより、電子ユニット18が解放される(
図9)。そして、電子ユニット18を、流れ方向Sに対して前方に取り外す(
図10)。
【0080】
電極アセンブリ76を、次のステップで取り外す。この目的のために、電極アセンブリ76を挿入補助部40に沿って案内し、組み合わせた動きにおいて、壁28から持ち上げると同時に、ホルダ74の軸方向(スパン方向)の延長部の方向に延びる軸を中心として回転させる(
図12及び
図13参照)。この回転により、傾斜部68、70は壁28のスロット86を通過して案内されるため、電極アセンブリ76は解放される。最終ステップにおいて、解放された電極アセンブリ76を、流れ方向Sに対して前方に取り外す(
図14参照)。
【0081】
電子ユニット18及び電極アセンブリ76を組み付けるためには、部品を取り外すための上述の方法を実質的に逆の順序で実施する。
【0082】
これは、傾斜部68、70が挿入手段116の各溝118に収容されるとともにスロット86の上方に、先端90がスロット86の方向を向いた状態で配置されるように、電極アセンブリ76をホルダ74とともに挿入補助部40に載置する、ということを意味する。
【0083】
そして、電極アセンブリ76を挿入補助部40に沿って案内し、電極アセンブリ76を回転させることで傾斜部68、70をスロット86を介してダクト14、16内に導入する(
図11乃至
図13参照)。次いで、ホルダ74が壁28に当接するまで(
図11)、傾斜部68、70をダクト14、16に押し込む。非対称に配置された凸部32及びこれに相補的な態様でホルダ74に配置された凹部84により、電極アセンブリ76を正しい配向で取り付けることが保証される。
【0084】
電極アセンブリ76の後に、電子ユニット18を組み付ける。この目的のために、嵌込部80が電極アセンブリ76の上方に配置されるとともに、固着ピン52が対応する固着装置46、47の上方に配置された状態で、電子ユニット18をハウジング12の上方に配置する(
図9参照)。そして、固着ピン52を固着装置46、47の挿入面54に沿って固着部50に案内し、電子ユニット18を壁28に対して平行に配向する(
図8参照)。最終ステップにおいて、電子ユニット18を壁28に対して垂直に下げ、壁28及び電極アセンブリ76に接触する最終状態とする(
図7参照)。
【0085】
本方法は、電子ユニット18及び電極アセンブリ76の安全な組付及び分解を保証する。更に、組付及び分解は、ツールを使用せずに、且つねじやペグ等の追加の固定手段を使用せずに実施される。
【0086】
代替実施形態において、電子ユニット18及び/又は電極アセンブリ76は、互換性がなく、ハウジング12に恒久的に接続可能であり、例えば、ハウジング12と一体に射出成形される。
【0087】
更に、別の代替実施形態によれば、電極アセンブリ76は、電子ユニット18に一体化され得る。これにより、これらは単一部品を形成する。
【0088】
代替実施形態によれば、電極20は壁28に一体化され得る。これにより、これらは、単一部品を形成する。本例において、特に、壁28が電極20のホルダ74を形成する。
【0089】
更なる代替実施形態において、電極20は、複数の傾斜部68、70を有し得る。複数の傾斜部68、70は、単数又は複数の空気流、すなわち単数又は複数のダクト14、16において空気流をイオン化することを目的として設けられる。傾斜部68、70は、共通の保持部66に一体に結合する。
【0090】
更に、電極アセンブリ76は、複数の電極20を有し得る。複数の電極20のそれぞれは、単数又は複数の空気流をイオン化することを目的として設けられた単数又は複数の傾斜部68、70を有する。
【0091】
更に、出口ユニット10は、2つのダクト14、16を有する実施形態に限定されない。出口ユニット10は、空気の流れる任意の所望の個数のダクト14、16を備え得る。
【0092】
上述の各実施形態は、コスト効果の高い態様で製造することができる、コンパクトでスムーズに作動する車両空調ユニット出口ユニット10を提供する。
【0093】
本発明は、図示の実施形態に限定されない。特に、実施形態の個々の特徴は、対応する実施形態の他の特徴とは無関係に、本発明による更なる実施形態に含まれ得る。すなわち、記載された特徴は任意の所望の態様で組み合わされ得る。