(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-02
(45)【発行日】2022-05-13
(54)【発明の名称】水中世界で仮想現実シミュレーションを体験するための装置
(51)【国際特許分類】
A63G 31/00 20060101AFI20220506BHJP
B63H 11/04 20060101ALI20220506BHJP
【FI】
A63G31/00
B63H11/04
(21)【出願番号】P 2020526298
(86)(22)【出願日】2018-10-05
(86)【国際出願番号】 EP2018077210
(87)【国際公開番号】W WO2019091675
(87)【国際公開日】2019-05-16
【審査請求日】2020-05-18
(32)【優先日】2017-11-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】517168875
【氏名又は名称】ファオエル コースター ゲーエムベーハー ウント コー.カーゲー
【氏名又は名称原語表記】VR Coaster GmbH & Co. KG
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ヴァーグナー、ミリアム コリンナ
【審査官】松山 紗希
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/031417(WO,A1)
【文献】特開平06-221009(JP,A)
【文献】特表2010-541306(JP,A)
【文献】特開2005-007114(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 69/00-69/14
A63B 35/00
A63G 31/00-31/16
A63F 13/00-13/98
G09B 9/00
E04H 3/16
B63H 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中世界で少なくとも1つの仮想現実シミュレーションを体験するための少なくとも一人のユーザ(2)用の装置(1)であって、
少なくとも1つの流れ発生器(20)を有する少なくとも1つの水資源(10)と、
少なくとも1つのデータ処理システムと、
少なくとも1つのVR表示装置
(40)とを備え、
前記少なくとも1つのデータ処理システムは、前記少なくとも1つの仮想現実シミュレーションを生成し、
前記少なくとも1つの仮想現実シミュレーションのために前記少なくとも1つの流れ発生器(20)及び前記少なくとも1つのデータ処理システム
は同期され、
前記水資源(10)の水と前記少なくとも一人のユーザ(2)との間に生成されるシミュレーションに基づく相対的な動きによって、前記少なくとも1つの仮想現実シミュレーションと同期した流れが生成され、
前記仮想現実シミュレーションは、
前記少なくとも1つのVR表示装置(40)上に再現され
、
前記少なくとも1つのVR表示装置(40)は、水に適合可能なヘッドマウントディスプレイであり、前記少なくとも1つのVR表示装置(40)は、有線または無線で前記データ処理システムに接続されている、装置。
【請求項2】
前記水資源(10)は、プール(11)、湖、海、または川であることを特徴とする、請求項1に記載の装置(1)。
【請求項3】
前記
少なくとも1つの流れ発生器(20)は、ポンプ、タービン、ケーブルウインチ
、船舶、
および水中船の
少なくとも1つであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の装置(1)。
【請求項4】
少なくとも1つの保持装置(60)が前記水資源(10)内に設けられ、前記
少なくとも1つの保持装置(60)によって前記少なくとも一人のユーザ(2)が前記少なくとも1つの流れ発生器(20)に対して相対的に保持されることを特徴とする、請求項1~3の何れか一項に記載の装置(1)。
【請求項5】
前記
少なくとも1つの保持装置(60)が、少なくとも1つの移動装置(65)を備え、該移動装置(65)によって前記少なくとも1つの保持装置(60)が
前記水資源(10)に対して相対的に移動可能であることを特徴とする、請求項4に記載の装置(1)。
【請求項6】
前記データ処理システムに接続された少なくとも1つの入力装置(50)が少なくとも一人のユーザ(2)のために設けられ、前記仮想現実シミュレーションは、前記少なくとも1つの入力装置(50)によって制御され、前記少なくとも1つの入力装置(50)は、有線または無線で前記データ処理システムに接続されていることを特徴とする、請求項1~5の何れか一項に記載の装置(1)。
【請求項7】
前記
少なくとも1つの保持装置(60)は、前記少なくとも1つの入力装置(50)、少なくとも1つのセンサシステム、少なくとも1つの振動発生器、及び前記少なくとも1つの流れ発生器(20)のうち少なくともいずれか1つを備えることを特徴とする、請求項4
又は5に記載の装置(1)。
【請求項8】
前記流れ発生器(20)は、温水および/または冷水の混合を含む、請求項1~
7の何れか一項に記載の装置(1)。
【請求項9】
異なる流れ方向及び異なる速度を有する水の流れを生成する少なくとも2つの流れ発生器(20)が設けられることと、少なくとも1つの流れ発生器(20)が流れベクトル制御を備えることとのうち少なくとも一方を備えることを特徴とする、請求項1~
8の何れか一項に記載の装置(1)。
【請求項10】
前記水資源内に少なくとも1つの音源が配置され、該音源が前記仮想現実シミュレーションの機能として音を再現することを特徴とする、請求項1~
9の何れか一項に記載の装置(1)。
【請求項11】
少なくとも1つの気泡発生器が設けられ、該気泡発生器が前記仮想現実シミュレーションの機能として気泡を放出することを特徴とする、請求項1~
10の何れか一項に記載の装置(1)。
【請求項12】
少なくとも一人のユーザ(2)の位置を取得する少なくとも1つの位置取得装置が設けられることを特徴とする、請求項1~
11の何れか一項に記載の装置(1)。
【請求項13】
少なくとも1つの物体(26)が前記水資源(10)内に配置されることと
、前記水資源(10)内に少なくとも1つの物体(26)を供給可能な供給装置が提供されることと、のうち少なくとも一方を備えることを特徴とする、請求項1~
12の何れか一項に記載の装置(1)。
【請求項14】
前記水資源(10)内に少なくとも1つの物体(26)を供給可能な供給装置が提供されることを特徴とする、請求項1~12の何れか一項に記載の装置(1)。
【請求項15】
少なくとも1つのアクチュエータ(27)が設けられ、該少なくとも1つのアクチュエータ(27)が前記少なくとも1つの物体(26)を移動させることを特徴とする、請求項
13又は14に記載の装置(1)。
【請求項16】
前記少なくとも1つの物体(26)が前記仮想現実シミュレーションの一部であることを特徴とする、請求項
13~15
の何れか一項に記載の装置(1)。
【請求項17】
前記データ処理システムが、異なる経験を含む複数の仮想現実シミュレーションを生成することを特徴とする、請求項1~16の何れか一項に記載の装置(1)。
【請求項18】
複数のユーザ(2)の場合、各ユーザ(2)は、個々の仮想現実シミュレーションを体験可能であることを特徴とする、請求項1~17の何れか一項に記載の装置(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、仮想現実シミュレーションを体験するためのユーザ用の装置に関し、視覚的および感覚的に信じられる態様でシミュレートされた拡張水中世界を体験することを可能にする。
【背景技術】
【0002】
仮想現実シミュレーションは、従来から様々な設計で知られており、例えば、ユーザが着用するVR表示装置またはヘッドマウントディスプレイ上にジェットコースター乗車中の仮想現実を再現するために使用される。ここでは、ヘッドマウントディスプレイによって、光学的な現実の画像が、ユーザの実際の視野における仮想現実の立体表現に置き換えられる。ここで、仮想現実の表現は、ヘッドマウントディスプレイの位置および/または向きの関数として、ユーザの頭の動きにリアルタイムで同期して調整される。さらに、光学的な現実をカメラで記録し、拡張現実感の効果をもたらすことにより、ヘッドマウントディスプレイの表現を拡張することができる。
【0003】
これらのアトラクション会場の体験では、乗車体験中のユーザがヘッドマウントディスプレイを装着した乗車が表示されたり、その乗車と同期した乗車またはジェットコースターの乗車の仮想現実が表示され、ヘッドマウントディスプレイは通常、仮想現実シミュレーションを生成するデータ処理システムに接続される。
【0004】
従来から、ヘッドマウントディスプレイは既に知られており、水に適合するものであり、水中での用途に使用される。このような仮想現実のヘッドマウントディスプレイは、シミュレーションされた水中の世界をユーザに提示するために使用される。例えばプールなどの水中の世界で自由に泳ぎ回るユーザは、常にユーザとプールの壁との衝突という関連するリスクにさらされている。仮想現実ヘッドマウントディスプレイの位置は、光学的な現実のそのような障害物の位置を仮想現実でユーザに見えるようにして、衝突を防ぐために、継続的に決定されなければない。このような水中での位置決定は、高い減衰に起因して限られた条件下でのみ可能である。さらに、そのようなプール内の動きの自由は制限されることが多いため、位置決定の使用中、ユーザは限られた動きの自由しか体験できないため、拡張された水中世界のシミュレートされた体験は不満なものとなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明の目的は、VR表示装置によってユーザのための仮想現実を提示するとともに、シミュレートされた拡張された水中世界を体験するためのユーザ用の装置を提供することである。同時に、仮想現実の機能として、特に水の流れの感覚や水の抵抗による水の動きの触覚的知覚、および無限の動きの自由の錯覚は、特に刺激的な体験を提供する。ここでは、可能な限り最高の没頭度を達成するために、ユーザのすべての感覚を刺激して、体験を可能な限り真実となるように設計する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
これらの目的は、請求項1の特徴を有する装置によって達成される。有利な発展形態は従属請求項の主題である。
少なくとも1人のユーザのための本発明に係る装置は、少なくとも1つの水資源を備え、該水資源は、ユーザと水資源内に配置された水との間において水資源内に相対運動を生成するように構成される少なくとも1つの流れ発生器を有する。さらに、装置は、少なくとも1つのデータ処理システムおよび少なくとも1つのVR表示装置を備え、データ処理システムは、VR表示装置上で視覚的に再現される仮想現実シミュレーションを生成する。少なくとも1つの流れ発生器は、少なくとも1つの仮想現実シミュレーションの機能として少なくとも1つのデータ処理システムによって直接制御するか、少なくとも1つの仮想現実シミュレーションと同期した流れを生成することができる。それにより、水及び水資源と少なくとも一人のユーザとの間のシミュレーションに基づく相対的な動きが生成される。異なる相対運動の結果として、少なくとも一人のユーザは水の抵抗による水資源の動きを知覚することにより、ユーザは特に信じられる水中の世界を体験することができる。データ処理システムおよび流れ発生器は、VR表示装置上に表される仮想現実が水資源内の相対運動と協調するように操作される。
【0007】
ここで、水資源がプール、湖、海、または川である場合に特に有利である。したがって、本発明による装置は、十分なサイズであれば、あらゆる水域で多面的に使用することができる。ユーザが三方向すべての空間で自由に移動できる場合は、常に十分なサイズが存在する。特にプールが好ましく、特に水泳用プールが好ましい。
【0008】
本発明の追加の有利な実施形態によれば、流れ発生器は、ポンプ、タービン、ケーブルウインチおよび/または船舶、特に水中船である。ポンプまたはウォータータービンは、水資源に1つ以上の流れを局所的に生成するように構成され、ケーブルウインチ、船、および/または水中船は、水資源を介してユーザを引っ張る。異なる流れ発生器を組み合わせることが可能である。
【0009】
さらに、データ処理システムに接続された少なくとも1人のユーザのために少なくとも1つの入力装置が設けられていると有利である。ユーザは、入力装置によって仮想現実に影響を与えることができる。入力装置は、例えば、仮想現実シミュレーションを開始および終了するためのキー、またはオートバイのツイストグリップスロットル制御に類似して設計され、ユーザが仮想現実世界を移動する速度を変更するツイストグリップを備えることができる。
【0010】
入力装置は、有線または無線でデータ処理システムに接続できる。水中での電磁波の高い減衰により、無線伝送の範囲が制限されるため、有線による接続が特に好ましい。しかしながら、ワイヤレス接続は、Bluetooth(登録商標)またはWiFi(登録商標)接続などの短距離用に設計可能である。
【0011】
本発明の追加の好ましい実施形態によれば、少なくとも1つの保持装置が水資源に設けられ、保持装置によって少なくとも1人のユーザが少なくとも1つの流れ発生器に対して保持される。保持装置によって、ユーザは流れ発生器に対して静止した状態を維持することを意図しているので、流れ発生器が制御不能な方法で流れてプールの縁にぶつかる危険はない。
【0012】
保持装置は、例えば、VR世界で提示される捕食性の魚の攻撃からユーザを保護するサメ保護ケージの形で設計することができる。
保持装置の別の可能な設計は、水中スクーターのレプリカである。完全に操作可能な水中スクーターと同様に、水中スクーターの対応するグリップ位置に入力装置を提供可能である。これにより、特に自然な体験と直感的な操作が可能である。
【0013】
さらに、保持装置は、ユーザが保持可能なロッドシステムおよび/またはロープによって形成することができる。
しかしながら、保持装置が、該保持装置を移動させることができる移動装置を備える場合も特に有利である。一方で、移動装置は、例えば、ユーザと共にサメ保護ケージとして形成された保持装置を水資源内で持ち上げるために使用可能であり、他方で、移動装置または別の移動装置は、保持装置に揺れと動きを生成可能である。VRの世界でシミュレートされた捕食魚との衝突は、移動装置によるサメ保護ケージの同期的な振動によって知覚可能にすることができる。
【0014】
移動装置は、好ましくは、ロープによって保持装置を所定の位置に保持することができる。出入りするために、保持装置が浮上し、そこからユーザが水から容易に出ることができるように、ロープは移動装置によって調整することができる。特に好ましくは、そのような移動装置は水中スクーターと関連して使用される。捕食魚の攻撃や衝突なども、保持装置としての移動装置や水中スクーターにより模擬でき、ユーザは振動や動きを触覚的に体験できる。
【0015】
本発明によれば、さらに、保持装置は、少なくとも1つの入力装置および/または少なくとも1つの流れ発生器を備える。このようにして、一方で保持装置は、ユーザが知覚できる流れを生成することができ、他方で、保持装置によって、ユーザは、VR世界の速度に影響を与えることができる。流れ発生器を保持装置に統合する場合、ユーザと流れ発生器との間の距離は、可能な限り近い距離まで低減される。これにより、流れ発生器によって移動する水流の量が低減され、一方で、発生した流れの変化が、ユーザによってわずかな遅延で知覚され得る。
【0016】
さらに、保持装置は、例えば、ユーザの流動抵抗または推進力を取得可能な手段によって、センサシステムを備えることができる。
例えば、ユーザは、自身の推進力を発生させることにより、保持装置に力を加えることができる。このユーザの推進力を取得し、VR世界での移動速度や流れ発生器で発生する流れを増やしたり、その逆を行ったりする。これにより、ユーザは泳ぎの動きやダイビングの動きによってVRの世界全体の速度に影響を与えることができる。さらに、センサシステムは、保持装置上でのユーザのステアリング動作を取得することもできるため、VR体験に影響を与えることができる。
【0017】
さらに、特に好ましくは、センサシステムは、流れの中の圧力または温度を取得することができる。センサシステムは、特に、流速と流れの方向を取得できるため、仮想現実シミュレーションは、流れ発生器によって生成された流れの関数として生成することもできる。
【0018】
好ましくは、VR表示装置は、水に適合可能なヘッドマウントディスプレイである。さらに好ましくは、ヘッドマウントディスプレイは、ユーザの頭の動きと同期して位置および/または向きを取得できる。ここでは、ヘッドマウントディスプレイによって、光学的な現実の画像が、ユーザの実際の視野における仮想現実の立体表現に置き換えられる。VR表示装置の追加の好ましい実施形態では、前記VR表示装置は、仮想現実を取得する少なくとも1つのカメラを備える。
【0019】
さらに、光学的な現実をカメラで記録し、拡張現実感の効果をもたらすことにより、ヘッドマウントディスプレイの表現を拡張することができる。
VR表示装置は、有線または無線でデータ処理システムに接続可能である。
【0020】
本発明の追加の好ましい実施形態によれば、流れ発生器は、温水および/または冷水の混合を含む。温水と冷水を混合することにより、異なる水の層をシミュレートできる。温水および/または冷水を混合する代わりに、対応するクーラー/ヒーターを設置することができる。
【0021】
さらに、異なる流れ方向および/または異なる速度で水流を生成可能な少なくとも2つの流れ発生器が提供される場合、それは特に有利である。これにより、特に渦などの剪断流をシミュレートすることができる。
【0022】
さらに、少なくとも1つの流れ発生器が、ユーザに対する流れの方向ベクトルを変更可能な流れベクトル制御を含む場合、特に有利である。
本発明の追加の好ましい実施形態によれば、水資源内に、仮想現実シミュレーションの機能として音を再現可能な少なくとも1つの音源が配置される。音源によって、例えば、モーターボートの通過、サメの保護用ケージでの捕食性魚の噛むような音など、VR世界からの音を再現することができる。
【0023】
本発明の追加の好ましい実施形態によれば、水資源内に、仮想現実シミュレーションの機能として少なくとも1つの気泡発生器が提供される。気泡発生器は、接触した場合にユーザと相互作用する一以上の異なるサイズの気泡を生成する。気泡は局所的に人体の浮力を変化させるので、このようにして、知覚可能な力が気泡によってユーザに加えられる。気泡には、特定の感覚体験を生み出す加熱または冷却された空気も含む。
【0024】
また、好ましくは、少なくとも1つの位置取得装置を設けることができ、それにより、少なくとも1人のユーザの位置を取得できる。ここで、位置取得装置は、ユーザの位置だけでなく、例えば、ユーザのジェスチャおよび/または体位も取得することができる。複数のユーザが同時に装置を使用している場合、ユーザは仮想現実で相互に対話し、VR世界を共同で探索し、VR世界でジェスチャを使用して対話することもできる。
【0025】
本発明のさらなる有利な発展形態は、物体を水資源に供給可能な供給装置を提供する。そのような物体は、例えば、水泳用またはダイビング用のゴーグル、ならびにボール、ゴム魚などである。物体は、魚の皮膚に一致する表面の触感を有する表面コーティングを備えることができる。さらに、物体はVRの世界で表現可能である。物体は、この目的のために、対応する表面の触感のあるダイビングスーツを着用するオペレーターによって偽装することもできる。
【0026】
水資源内の物体は、アクチュエータを使用して移動できるように配置することもできる。物体は、アクチュエータによって制御される態様でユーザに向かって、またはユーザと接触して移動でき、VR世界でユーザと物理的に、またはその他の方法で相互作用する。
【0027】
これらの物体は、水生生物、水生植物、または他の水中の物体(石、岩、残骸、または実際の物体のレプリカなど)をシミュレートできる。
さらに、データ処理システムが、異なるイベントを伴う複数の仮想現実シミュレーションを含む場合に特に有利である。ユーザは、ターゲットを絞った方法で経験またはいくつかの連続した経験を受けることができる。または、ユーザインターフェースを介してターゲットを絞った方法で、イベントのデザインで特定の好みや嫌いを考慮することができる。
【0028】
有利には、装置の複数のユーザは、個々の仮想現実シミュレーションを体験することができる。
本発明を、添付の図面を参照して実施形態例に基づいて以下に詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】
図1は、VR表示装置によって提示されるVR世界を受け取るユーザが位置する水資源に流れを生成する流れ発生器を備える本発明に係る装置の概略図を示す。
【
図2】
図2は、本発明の第2の実施形態の例を示し、ユーザは、ベルト状の保持装置によって流れ発生器に対してある位置に静止して保持される。
【
図3】
図3は、ダイビングスクーターとして設計され、流れ発生器を含む保持装置を備えた、本発明に係る第3の実施形態の例を示す図である。
【
図4】
図4は、複数のユーザに対してVR水中体験を可能にする複数の流れ発生器および保持装置を備えた本発明に係る装置の第4の実施形態の例を示す。
【
図5】
図5は、サメ保護ケージとして形成された保持装置、2つの流れ発生器、および水資源内の移動装置によって移動でき、ユーザと相互作用可能な物体を備えた、本発明による第5の実施形態の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、
図1から
図5を参照して、本発明の異なる例示的な実施形態を詳細に説明する。同一または機能的に同一の部品は、同じ参照番号で示されている。
図1は、非常に図式的な表現で、本発明に係る装置1を示し、ユーザ2は、シミュレートされた拡張水中世界を特に信じられる態様で体験することができる。
【0031】
装置1は、コンピュータプログラムを使用して仮想現実シミュレーションを計算または生成するデータ処理システム(図示せず)を備える。この装置固有のコンピュータプログラムは、ダイビング中に水中世界の仮想現実をシミュレートするために使用される。仮想現実は、VR表示装置40でユーザに表示され、以下でさらに詳細に説明する追加の技術的手段によって、特に信じられる態様で体験できるようにシミュレートされる。
【0032】
さらに、装置1は、水で満たされた水資源10を備える。本実施形態の例では、水資源10は、ユーザ2がプール11の壁12と衝突することなく空間内のすべての三方向に自由に移動できるように十分な大きさの寸法のプール11である。水資源10の水は淡水であることが好ましく、塩水も問題なく使用できる。
【0033】
プール11の壁12には、流れ21を発生させるように構成された流れ発生器20が配置されている。流れ21は、水資源10を通って自由噴流の形態で流れ、ユーザの周りを流れるように構成される。流れ発生器20は、向流システムと同様に形成され、動作点は、仮想現実シミュレーションの関数としてデータ処理システムによって設定され、したがって動的に変化させることができる。この目的のための対応するポンプまたは水タービンは、水回路から、または装置1の真水供給から必要な水を汲み出す。ここで、複数の流れ発生器20をポンプに関連付けることができる。
【0034】
あるいは、流れ発生器20は、所定のフローシーケンスを有するプログラムを使用して、所定のフロー条件を生成することができる。フローシーケンスは、仮想現実シミュレーションと同時に開始され、アニメーションを開始する必要があることは、VR表示装置40内のアプリケーションに伝えられる。この代替実施形態では、データ処理システムによって生成された仮想現実シミュレーションは、流れ21と同期して生成される。フローパラメータを取得することにより、データ処理システムは、流れ発生器20の関数として仮想現実シミュレーションを生成または同期的に生成することもできる。
【0035】
ユーザ2は、流れ発生器20の流れ21に飛び込み、推進運動によって流れに逆らって前進しようと試みる。壁12との衝突を防止するために、水資源10におけるユーザ2の位置を取得する位置取得装置が設けられている。位置取得装置は、流れ発生器20が位置に依存して制御されることにより、ユーザが静止位置に保持されるという点で、ユーザ2の位置を監視する。ユーザ2がより多くの推進力を発生させる場合、彼/彼女は流れ発生器20の方向に動く。位置取得装置はこれを検出して流れ21の流速を上げ、ユーザは元の位置に戻る。逆に、ユーザ2の推進力が低下すると、状況は逆になる。
【0036】
水資源10における流れ21の流速は、仮想現実シミュレーションにより生成された仮想世界またはVR世界をユーザ2が移動する速度に対応する。速度のスケーリングも提供可能である。VRの世界は、例えば、サンゴ礁のダイビングを提示可能です。
【0037】
したがって、ユーザ2は、自身の運動コースによって、彼/彼女がVR世界を移動する速度を決定する。また、ユーザ2は、移動方向の変化により、VR体験に影響を与えることができる。
【0038】
ダイビング中、ユーザ2には、適切な装置を用いて呼吸用の酸素が供給され、呼吸用空気を供給するためのチューブは、VR表示装置40からのデータ送信にも使用することができる。
【0039】
さらに、VR表示装置40は、データ処理システムに無線で容易に接続することもでき、水中の電磁波の高い減衰に起因して、無線伝送は短距離でのみ可能である。データ処理システムとVR表示装置40との間のデータの無線伝送のために、好ましくは可能な限り長い波長を有する周波数が使用される。ISM帯域の一般的な標準周波数を介したデータ伝送も、上記の制限を考慮して使用可能である。
【0040】
VR表示装置40により提示される流速とVR世界との間の結合された相互作用により、特に高い没頭度が達成される。一方、ユーザ2は視覚的に表現された高品質の体験を受け、同時に流れを感じることによって水中の動きを知覚し、ユーザの意識が現実世界を背景に後退させる幻想的な刺激にさらされる。現実として認識されるのは、今やVRの世界である。
【0041】
さらに、ユーザ2の経験は、さらなる感覚刺激および劇的な効果によって増強され得る。さらに、流れ21によってユーザに対して流れ着く物体26が、流れ21に供給され得る。VRの世界では、これらの物体26は水生生物を表し、VR体験をさらに生き生きとさせることができる。物体26は、好ましくはゴム状弾性固体、特にボールであり、その密度は、水資源10中の水の密度よりもわずかに低い。その結果、物体26は流れ21内で直接浮くのではなく、代わりに流れに従い、ユーザと相互作用し、ゆっくりと浮くのみである。物体26の表面は、それぞれの場合において、VR世界で提示される動物をシミュレートする。
【0042】
さらに、一以上の音源を水資源10に配置することができ、それによって、例えば、典型的な海の音を再生することができる。音源の対応する配置により、VR表示装置40による視覚的表現に関連して、通り過ぎるモーターボートをシミュレートすることができる。
【0043】
水資源10には、気泡発生器を配置することもでき、気泡発生器は、ユーザ2と相互作用する気泡を意図的に放出する。
冷たい水を混合することで、さまざまな水の層への進入、特により深い水域への潜水をシミュレート可能である。人体は、顔の領域と手のひらに、小さな温度の変動でも感知できる特に多くの敏感な熱受体を有する。したがって、約0.25℃を超えるわずかな温度変化で十分である。
【0044】
図2に示される本発明に係る第2の実施形態の例は、流れ発生器20の前に位置するユーザ2の配置のタイプが異なる。ユーザ2の位置決めは、保持装置60を用いることにより、ユーザが自身の体力によって流れ21の中で位置決めをすることなく、容易となる。保持装置60は、ユーザ2をベルトで保持し、ロープ61によってユーザ2を流れ発生器20の前の所定の位置に固定する。ベルトは、好ましくは、ヒップ領域または身体の重心に配置され、ユーザが離れないようにする。したがって、保持装置60によって、ユーザが自分自身を何かに固定する必要なく、持続的な流れ体験を可能にすることができる。
【0045】
保持装置60は、さらに、移動装置65からなり、それによって、ユーザ2を流れ発生器20に対して移動させることができる。このような移動は、例えば、ユーザ2をプールの端から流れ発生器20の前の対応する位置に移動させるために、仮想体験の開始時および終了時に必要である。
【0046】
データ処理システムは、流れ発生器20、移動装置65を制御し、VR表示装置40上に表される仮想現実シミュレーションを生成する。
本発明に係る第3の実施形態の例は、
図3から得ることができ、同一または機能的に同一の部品は、先行する実施形態例と同じ参照番号で示されている。装置1は、各ユーザ2のために、流れ発生器20、保持装置60または水中スクーター25およびVR表示装置40を含む。また、流れ21は共通の流れ発生器20によって、すべてのユーザ2のために生成され得る。
【0047】
保持装置60は、水中スクーター25を模しており、フレーム62内のロープ61によって保持されている。
図2に示される実施形態の例と同様に、保持装置60は、移動装置65を備え、ロープ61のそれぞれは、移動装置65に向かって移動することができる。
【0048】
保持装置60または水中スクーター25は、乗り始める時および完了後に移動装置65によってプールの端に移動することができ、これにより、ユーザ2は昇降することができる。保持装置60は、ユーザ2が保持することができ、保持装置60から突出する2つのブラケット状グリップ66を備える。グリップ66には、少なくとも1つの入力装置50が設けられており、これにより、ユーザ2は、乗車または体験を開始および終了することができる。
【0049】
さらに、グリップ66上には、ツイストグリップスロットル制御として形成された第2の入力装置50が設けられており、これにより、ユーザ2は、VR世界を浮遊する速度を設定することができる。ここでのツイストグリップスロットル制御は、オートバイのステアリングハンドルのツイストグリップスロットル制御に基づいている。
【0050】
保持装置60には、流れ発生器20が配置されている。流れ発生器20は、保持装置60のユーザ2に対向する側にあり、ユーザ2の周りを流れる流れ21を生成する。保持装置60または水中スクーター25は、好ましくは、円筒形または魚雷形として設計され、流れ発生器20は、保持装置60の内部に配置される。電流供給ならびにデータ処理システムへのデータ接続は、ロープ61に沿ったワイヤーによって行われ得る。
【0051】
さらに、他の流れ発生器20を水資源10内に配置することができ、その結果、ユーザ2にとって、一方では潜水速度、そして他方では水中スクーター25または後流の伴流が生じる。水中スクーター25内の流れ発生器20が知覚され得る。
【0052】
また、保持装置60はセンサシステムを備えることができ、それによって、保持装置60に対するユーザ2の力の作用を取得することができる。保持装置60でのステアリング動作により、ユーザ2は、VR世界における進行方向に影響を与えることができる。センサシステムは、ユーザ2のステアリング動作を取得することにより、VR世界で対応する方向の変化が発生する。
【0053】
さらに、保持装置60のロープ61は、保持装置60または水中スクーター25、流れ発生器20、センサシステムおよびデータ処理システムを備えたVR表示装置40の間の電流供給および/またはデータ接続を確保にすることができる。
【0054】
センサシステムは、適切な測定技術を使用して、流れ21を計測学的に取得することもできる。圧力/温度センサは、流れ21、特に流速および流れ方向を取得するために提供され得る。センサシステムは、特に、流速と流れの方向を取得できるため、仮想現実シミュレーションは、流れ発生器によって生成された流れの関数として生成することもできる。
【0055】
位置取得装置は、体験中にユーザ2を観察する。位置取得装置により、例えば、ユーザ2の激しい動きまたは興奮した行動を取得することができる。激しい足の動きや手の動きは、例えば、VRの世界の堆積物をかき立てたり、水生生物を怖がらせたりする可能性がある。
【0056】
図4は、複数のユーザ2のための複数の保持装置を備えた装置1を示す。保持装置60は、プール11の壁12にしっかりと配置され、水中スクーター25として設計される。各ユーザ2は、彼/彼女自身のVR表示装置40を有し、各ユーザ2は、個別の経験を有することができ、またはユーザ2は、VR世界において共有される経験を有することができる。流れ発生器20は、各保持装置60と関連付けられ、その結果、各ユーザ2はまた、入力装置50またはセンサシステムによる対応する入力によって、VR世界における経験に個別に影響を与えることができる。
【0057】
ここで、位置取得装置は、個々のユーザ2を取得し、対応して他のユーザ2のVR世界でユーザ自身を提示することができるので、例えば、体験中に、VR世界の個々のユーザ間のジェスチャによる通信が可能である。
【0058】
図5は、第5の実施形態の例を示す。保持装置60は、ユーザ2が位置するサメ保護ケージ67として設計されている。
この実施例による装置1は、特にエキサイティングなVR体験、すなわちサメとのケージダイビングを可能にする。ここで、装置1は、特にコンパクトで移動可能であり、例えば、移動式イベント会場のような異なる場所で使用することができる。
【0059】
このVR体験は、ユーザが実際に水資源10内で没頭する前にすでに開始されている可能性がある。移動装置65は、例えば、流れ発生器20の前の所定の位置で、サメ保護ケージ67をボートから水資源10に移動させるクレーンとして設計されている。
【0060】
水中の世界では、流れは2つの流れ発生器20によってシミュレートされる。また、水資源10では、アクチュエータ27により物体26が移動可能に保持されている。物体26は、保持装置60に対してアクチュエータ27によって移動させることができる。
【0061】
物体26の動きは、VR世界のデータ処理システムによって生成された仮想現実シミュレーションに対応する態様で、VR表示装置40によってユーザ2へ提示され、その間、ユーザ2は、異なる流動抵抗に起因して物体26が過ぎ去ったことを知覚する。また、物体26は、サメの攻撃をシミュレートするために、シミュレートされた態様で保持装置60と衝突することができる。同期して、移動装置65は、保持装置60に対応する振動および/または振動運動を与えることができ、音源は、対応する音響効果を生成することができる。この触覚体験は、VR表示装置40またはVR世界において視覚的に表現される。
【0062】
特に剪断流、海洋動物のヒレの羽ばたきなどの拡張シミュレーションでは、流れ発生器は、流れ制御をランダムに設定できるベクトル制御を有し得る。したがって、VRアプリケーション40内の発生は、1つまたは複数の流れ発生器20の個別のまたは同期した作動によってシミュレートすることができる。
【0063】
本発明による技術的教示は、具体的な実施形態の例における個々の実施形態に限定されない。代わりに、個々の実施形態の例の組み合わせが可能である。
したがって、本発明によれば、水中世界1で仮想現実シミュレーションを体験するための装置1を提供することができ、多面的な態様で、可能な最大数の感覚印象を生成し、ユーザ2が信じられる水中の世界のシミュレーション体験をすることを可能にする。
【符号の説明】
【0064】
1…装置
2…ユーザ
10…水資源
11…プール
12…11の壁
20…流れ発生器
25…水中スクーター
26…物体
27…アクチュエータ
40…VR表示装置
50…入力装置
60…保持装置
61…ロープ
62…フレーム
65…移動装置
66…グリップ
67…サメ保護ケージ