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特許7066869インモールドラベル及びインモールドラベル付き容器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-02
(45)【発行日】2022-05-13
(54)【発明の名称】インモールドラベル及びインモールドラベル付き容器
(51)【国際特許分類】
   G09F 3/04 20060101AFI20220506BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20220506BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20220506BHJP
   B65D 25/20 20060101ALI20220506BHJP
【FI】
G09F3/04 Z
B32B27/00 101
B32B27/30 A
B65D25/20 Q
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020549376
(86)(22)【出願日】2019-09-26
(86)【国際出願番号】 JP2019037933
(87)【国際公開番号】W WO2020067327
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-03-23
(31)【優先権主張番号】P 2018184065
(32)【優先日】2018-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000122313
【氏名又は名称】株式会社ユポ・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100154759
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 貴子
(74)【代理人】
【識別番号】100207240
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 喜弘
(72)【発明者】
【氏名】本田 駿介
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 卓哉
【審査官】藤井 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-345793(JP,A)
【文献】特開2004-136486(JP,A)
【文献】国際公開第2006/053267(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09F 3/00- 3/20
B29C 45/00-45/24
B29C 45/46-45/63
B29C 45/70-45/72
B29C 45/74-45/84
B29C 49/00-49/46
B29C 49/58-49/68
B29C 49/72-51/28
B29C 51/42
B29C 51/46
B65D 23/08
B65D 25/20
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層と、前記基材層の一方の面上に設けられた印刷層と、前記基材層の他方の面上に設けられたヒートシール性樹脂層と、を備え、
前記印刷層が設けられた前記基材層の一方の面側の最表面に、シリコーンを含有する保護層が設けられ、
前記ヒートシール性樹脂層が設けられた前記基材層の他方の面側の最表面に、極性基を有する(メタ)アクリル酸系共重合体を含有する接着強度低下抑止層が設けられた、
インモールドラベル。
【請求項2】
前記極性基を有する(メタ)アクリル酸系共重合体は、カチオン性基を有する(メタ)アクリル酸系共重合体である、
請求項1に記載のインモールドラベル。
【請求項3】
前記極性基を有する(メタ)アクリル酸系共重合体は、第3級アミノ基を有する(メタ)アクリル酸系共重合体である、
請求項1又は2に記載のインモールドラベル。
【請求項4】
前記インモールドラベルは、ポリエチレンテレフタレート樹脂容器用のインモールドラベルである、
請求項1~3のいずれか一項に記載のインモールドラベル。
【請求項5】
前記ヒートシール性樹脂層は、融点が60~130℃のポリエチレン系樹脂フィルムである、
請求項1~4のいずれか一項に記載のインモールドラベル。
【請求項6】
前記極性基を有する(メタ)アクリル酸系共重合体は、融点が60℃未満であるか、又は融点を有しない、
請求項1~5のいずれか一項に記載のインモールドラベル
【請求項7】
樹脂容器の表面にインモールドラベルが設けられたインモールドラベル付き容器であって、
前記インモールドラベルは、
基材層と、前記基材層の一方の面上に設けられた印刷層と、前記基材層の他方の面上に設けられたヒートシール性樹脂層と、を備え、
前記印刷層が設けられた前記基材層の一方の面側の最表面に、シリコーンを含有する保護層が設けられ、
前記ヒートシール性樹脂層が設けられた前記基材層の他方の面側の最表面に、極性基を有する(メタ)アクリル酸系共重合体を含有する接着強度低下抑止層が設けられた、
インモールドラベル付き容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インモールドラベル及びインモールドラベル付き容器に関する。
【背景技術】
【0002】
金型を用いて樹脂容器を成形する方法としては、原料樹脂のパリソンを用いるダイレクトブロー法と、原料樹脂のプリフォームを用いるストレッチブロー法がある。ダイレクトブロー法は、原料樹脂を融点以上に加熱して溶融させてパリソンを形成し、金型内で当該パリソンに空気圧を加えて膨張させることで容器を形成する方法である。ストレッチブロー法は、原料樹脂からプリフォームを形成しこれを軟化点付近まで加熱して、金型内で当該プリフォームをロッドで延伸するとともに空気圧を加えて膨張させることで容器を形成する方法である。一般的に、原料樹脂が、ポリエチレン等の比較的溶融粘度が高い樹脂である場合はダイレクトブロー法が利用され、ポリエチレンテレフタレート等の比較的溶融粘度の低い樹脂である場合はダイレクトブロー法よりも成形温度が低いストレッチブロー法が利用されている。
【0003】
上記のようにブロー成形される樹脂容器のラベルとしては、成形時の熱によって樹脂容器の表面に熱融着されるインモールドラベルが使用されている。例えば、ポリプロピレンフィルム上にエチレン-酢酸ビニル共重合体を含む感熱接着層が積層されたインモールドラベルがポリエチレン製の容器に使用されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
また、基材層上にポリエチレン系樹脂を含むヒートシール性樹脂層を備え、当該ヒートシール性樹脂層を表面酸化処理することで、ポリエチレンテレフタレートとの接着性を高めたインモールドラベルも提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2004-136486号公報
【文献】特開2018-060185号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方、インモールドラベルに、商品の表示等のための印刷により印刷層を形成した後、印刷層上に保護層を設けて、印刷層の傷、汚れ等を防ぐ場合がある。保護層は、オーバープリントニスと呼ばれる塗工液の塗工によって形成される。塗工液は、例えばアクリル樹脂、ウレタン樹脂、及びエポキシ系樹脂等の硬化型樹脂を含む。
【0007】
塗工液の中には、インモールドラベルの表面の滑り性を高めること等を目的として、シリコーンが配合されることがある。インモールドラベルのシートは、カットされて重ねて保管されるか又は巻き取られてロール状に保管されるが、シリコーンが配合された場合、インモールドラベルの保護層からその上に重ねられたインモールドラベルへとシリコーンが移行することがある。保護層と接するインモールドラベル面は容器との接着面であるが、このシリコーンの移行によって接着性が低下する現象が確認されている。
【0008】
本発明は、保護層側からヒートシール性樹脂層側にシリコーンが移行した場合でもインモールドラベルの接着性の低下を抑えることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らが上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、インモールドラベルのヒートシール性樹脂層側の最表面に、極性基を有する(メタ)アクリル酸系共重合体を含有する接着強度低下抑止層を設けることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明の1つの側面によれば、
(1)基材層と、前記基材層の一方の面上に設けられた印刷層と、前記基材層の他方の面上に設けられたヒートシール性樹脂層と、を備え、前記印刷層が設けられた前記基材層の一方の面側の最表面に、シリコーンを含有する保護層が設けられ、前記ヒートシール性樹脂層が設けられた前記基材層の他方の面側の最表面に、極性基を有する(メタ)アクリル酸系共重合体を含有する接着強度低下抑止層が設けられた、インモールドラベルが提供される。
【0011】
(2)前記極性基を有する(メタ)アクリル酸系共重合体は、カチオン性基を有する(メタ)アクリル酸系共重合体であることが好ましい。
【0012】
(3)前記極性基を有する(メタ)アクリル酸系共重合体は、第3級アミノ基を有する(メタ)アクリル酸系共重合体であることが好ましい。
【0013】
(4)前記インモールドラベルは、ポリエチレンテレフタレート樹脂容器用のインモールドラベルであることが好ましい。
【0014】
(5)前記ヒートシール性樹脂層は、融点が60~130℃のポリエチレン系樹脂フィルムであることが好ましい。
【0015】
また、本発明の1つの側面によれば、
(6)樹脂容器の表面にインモールドラベルが設けられたインモールドラベル付き容器であって、前記インモールドラベルは、基材層と、前記基材層の一方の面上に設けられた印刷層と、前記基材層の他方の面上に設けられたヒートシール性樹脂層と、を備え、前記印刷層が設けられた前記基材層の一方の面側の最表面に、シリコーンを含有する保護層が設けられ、前記ヒートシール性樹脂層が設けられた前記基材層の他方の面側の最表面に、極性基を有する(メタ)アクリル酸系共重合体を含有する接着強度低下抑止層が設けられた、インモールドラベル付き容器が提供される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、保護層側からヒートシール性樹脂層側にシリコーンが移行した場合でもインモールドラベルの接着性の低下を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】一実施形態のインモールドラベルの構成を示す断面図である。
図2】ラベル同士を重ねたときに保護層側のシリコーンがヒートシール性樹脂層側に移行したインモールドラベルを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明のインモールドラベル及びインモールドラベル付き容器について詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の一実施態様としての一例(代表例)であり、これらの内容に特定されるものではない。
以下の説明において、「(メタ)アクリル」の記載は、アクリルとメタクリルの両方を示す。また、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【0019】
(インモールドラベル)
本発明のインモールドラベルは、基材層と、基材層の一方の面上に設けられた印刷層と、基材層の他方の面上に設けられたヒートシール性樹脂層と、を備えるフィルム積層体である。基材層の一方の面側の最表面にはシリコーンを含有する保護層が設けられ、基材層の他方の面側の最表面には極性基を有する(メタ)アクリル酸系共重合体を含有する接着強度低下抑止層が設けられる。
【0020】
インモールドラベル同士を重ねたとき、インモールドラベルの保護層中のシリコーンが、当該保護層上に重ねられたもう1つのインモールドラベルのヒートシール性樹脂層に移行し、ヒートシール性樹脂層の接着性を低下させることがある。しかし、本発明のインモールドラベルは、ヒートシール性樹脂層側の最表面に接着強度低下抑止層が設けられる。接着強度低下抑止層が保護層とヒートシール性樹脂層間に介在するため、シリコーンがヒートシール性樹脂層に直接移行することを防止できる。シリコーンの移行を防ぐために保護層の面に剥離シートを設けることもできるが、接着強度低下抑止層は塗工等によって容易に形成できるため、低コスト及び製造工程の簡易化の実現が可能である。
【0021】
なお、保護層が基材層の一方の面側の最表面に設けられるのであれば、基材層と印刷層間、印刷層と保護層間に他の層が設けられていてもよい。他の層としては、例えばデザイン性、偽造防止等を目的として設けられる転写箔、ホログラム、及びセキュリティスレッド等のパターン層、厚み、及び強度等を調整するための中間層、偏光フィルム等の機能層等が挙げられる。
同様に、接着強度低下抑止層が基材層の他方の面側の最表面に設けられるのであれば、基材層とヒートシール性樹脂層間に上記他の層が設けられてもよい。
【0022】
図1は、本発明の一実施形態であるインモールドラベル1の構成を示す断面図である。
図1に示すように、インモールドラベル1は、基材層2と、基材層2の両面にそれぞれ設けられた印刷層3及びヒートシール性樹脂層4とを備える。また、インモールドラベル1は、印刷層3上に保護層5を備える。保護層5は、基材層2の一方の面側の最表層であり、シリコーン51を含有する。インモールドラベル1は、ヒートシール性樹脂層4上に基材層2の他方の面側の最表層である接着強度低下抑止層6を備える。
【0023】
(基材層)
基材層は、インモールドラベルに強度を付与できるのであれば特に限定されず、例えば、熱可塑性樹脂フィルムであることができる。すなわち、基材層は熱可塑性樹脂等から構成され得る。熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリスチレン樹脂、及びポリカーボネート樹脂等が挙げられる。基材層を構成する熱可塑性樹脂は、ポリオレフィン系樹脂又はポリエステル系樹脂を主成分とすることが好ましく、ポリオレフィン系樹脂を主成分とすることがより好ましい。主成分とは各樹脂の合計に対して50質量%以上を占める成分をいう。基材層を構成する熱可塑性樹脂がポリオレフィン系樹脂を主成分とする場合、基材層はポリオレフィン系樹脂フィルムである。
【0024】
基材層に使用できるポリオレフィン系樹脂としては、ポリプロピレン樹脂、及びポリエチレン樹脂等が挙げられる。なかでも、成形性及び機械的強度の観点からは、ポリプロピレン樹脂が好ましい。
【0025】
ポリプロピレン樹脂としては、例えばプロピレンを単独重合させたアイソタクティックホモポリプロピレン、シンジオタクティックホモポリプロピレン等のプロピレン単独重合体、プロピレンを主体とし、エチレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、及び4-メチル-1-ペンテン等のα-オレフィン等を共重合させたプロピレン共重合体等が挙げられる。プロピレン共重合体は、2元系でも3元系以上の多元系でもよく、またランダム共重合体でもブロック共重合体でもよい。
【0026】
ポリエチレン樹脂としては、例えば密度が0.940~0.965g/cmの高密度ポリエチレン、密度が0.920~0.935g/cmの中密度ポリエチレン、密度が0.900~0.920g/cmの直鎖状低密度ポリエチレン、及びエチレン等を主体とし、プロピレン、ブテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、及び4-メチルペンテン-1等のα-オレフィンを共重合させた共重合体、マレイン酸変性エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸アルキルエステル共重合体、エチレン-メタクリル酸アルキルエステル共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体の金属塩(金属は、例えば亜鉛、アルミニウム、リチウム、ナトリウム、カリウム等。)、エチレン-環状オレフィン共重合体、並びにマレイン酸変性ポリエチレン等が挙げられる。
上記ポリオレフィン系樹脂のうち、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0027】
基材層に使用できるポリエステル系樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、及びポリエチレンナフタレート等が挙げられる。また、基材層に使用できるポリアミド系樹脂としては、ナイロン-6、ナイロン-6,6、ナイロン-6,10、及びナイロン-6,12等が挙げられる。
【0028】
(フィラー)
基材層は、基材層を構成する熱可塑性樹脂フィルム中にフィラーを含有することができる。フィラーの含有により、フィルム内部に空孔が形成されやすく、白色度又は不透明度が高い多孔質フィルムが得られやすい。フィラーの種類、フィラーの含有量、フィラーの粒子径、フィルムの延伸条件等によって、インモールドラベルの白色度又は不透明度を調整することができる。
基材層に使用できるフィラーとしては、無機フィラー又は有機フィラーが挙げられる。
【0029】
無機フィラーとしては、例えば重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、焼成クレイ、シリカ、珪藻土、白土、タルク、ルチル型二酸化チタン等の酸化チタン、硫酸バリウム、硫酸アルミニウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、マイカ、セリサイト、ベントナイト、セピオライト、バーミキュライト、ドロマイト、ワラストナイト、及びガラスファイバー等が挙げられる。なかでも、重質炭酸カルシウム、クレイ又は珪藻土は、空孔の成形性が良好で、安価なために好ましい。なお、分散性改善等の目的から、無機フィラーの表面は脂肪酸等の表面処理剤で表面処理されていてもよい。
【0030】
基材層を構成する熱可塑性樹脂がポリオレフィン系樹脂を主成分とする場合、有機フィラーとしては、ポリオレフィン系樹脂と非相溶のポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリスチレン、環状オレフィン単独重合体、エチレン-環状オレフィン共重合体、ポリエチレンサルファイド、ポリイミド、ポリメタクリレート、ポリエチルエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド、及びメラミン樹脂等が挙げられる。
基材層が含有するフィラーは、上記無機フィラー又は有機フィラーの1種であってもよいし、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0031】
基材層の白色度又は不透明度を高くする観点からは、基材層中のフィラーの含有量は、10質量%以上であることが好ましく、15質量%以上がより好ましい。また、基材層の成形の均一性を高める観点からは、基材層中のフィラーの含有量は、70質量%以下であることが好ましく、60質量%以下がより好ましく、50質量%以下がさらに好ましい。したがって、基材層中のフィラーの含有量は、10~70質量%であることが好ましく、10~60質量%であることがより好ましく、15~50質量%であることがさらに好ましい。
【0032】
無機フィラー又は有機フィラーの平均粒子径は、空孔の形成の容易性の観点から、0.01μm以上が好ましく、0.05μm以上がより好ましく、0.1μm以上がさらに好ましい。引裂き耐性等の機械的強度を付与する観点からは、無機フィラー又は有機フィラーの平均粒子径は、15μm以下が好ましく、5μm以下がより好ましく、2μm以下がさらに好ましい。したがって、無機フィラー又は有機フィラーの平均粒子径は、0.01~15μmが好ましく、0.05~5μmがより好ましく、0.1~2μmがさらに好ましい。
【0033】
無機フィラーの平均粒子径は、粒子計測装置、例えばレーザー回折式粒子径分布測定装置(マイクロトラック、株式会社日機装製)により測定した体積累積で50%にあたる体積平均粒子径(累積50%粒径)である。また、有機フィラーの平均粒子径は、溶融混練と分散により熱可塑性樹脂中に分散したときの平均分散粒子径である。平均分散粒子径は、有機フィラーを含有する熱可塑性樹脂フィルムの切断面を電子顕微鏡で観察し、少なくとも10個の粒子の最大径を測定し、その平均値として求めることができる。
【0034】
基材層は、目的に応じて、立体障害フェノール系、リン系、アミン系、イオウ系等の酸化防止剤;立体障害アミン系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系等の光安定剤;分散剤;滑剤;帯電防止剤等の添加剤を含有することができる。
基材層中の添加剤の含有量は、添加剤の十分な効果を得つつ印刷適性の低下を抑える観点から、通常、添加剤の種類ごとに独立して0.001~3質量%とすることができる。
【0035】
(厚さ)
基材層の厚さは、印刷時にシワの発生を抑え、金型内部への挿入時に目的の位置への固定を容易にする観点からは、20μm以上が好ましく、40μm以上がより好ましい。また、インモールドラベルを容器に設けたときにラベル境界部分の容器の薄肉化による強度低下を抑える観点からは、基材層の厚さは、200μm以下が好ましく、150μm以下がより好ましい。したがって、基材層の厚さは、20~200μmが好ましく、40~150μmがより好ましい。
【0036】
基材層は、単層構造であってもよく、多層構造であってもよい。多層構造の場合、各層により、白色不透明性、印刷層に用いられるインキとの密着性、断熱性、及び易剥離性等の各種機能を付与することができる。
【0037】
好適な透明の基材層としては、フィラーを含まない、ポリプロピレン系無延伸フィルム(CPPフィルム)、ポリプロピレン系二軸延伸フィルム(BOPPフィルム)、ポリエチレンテレフタレート系無延伸フィルム(CPETフィルム)、及びポリエチレンテレフタレート系二軸延伸フィルム(BOPETフィルム)等が挙げられる。
また、好適な不透明の基材層としては、フィラーを含む、CPPフィルム、BOPPフィルム、CPETフィルム、及びBOPETフィルム等が挙げられる。
【0038】
基材層の表面は、印刷層との密着性を高める観点から、活性化処理により活性化されていてもよい。活性化処理としては、例えばコロナ放電処理、フレーム処理、プラズマ処理、グロー放電処理、及びオゾン処理等が挙げられる。なかでも、コロナ放電処理又はフレーム処理が好ましく、コロナ処理がより好ましい。
【0039】
同様の観点から、基材層と印刷層の間に印刷可能層が設けられてもよい。印刷可能層は、印刷層との密着性を高めるため、バインダー及び帯電防止剤の少なくとも1つを含有することが好ましい。また、印刷可能層は、必要に応じて、アンチブロッキング剤、着色剤、消泡剤、及び防黴剤等の添加剤を含有することができる。
【0040】
バインダーとしては、例えばポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリオキシアルキレン誘導体、ポリエチレンイミン及びその誘導体、ポリアクリル酸共重合体、ウレタン樹脂等が挙げられる。これらのなかでも、ポリオレフィン系樹脂を主成分とする熱可塑性樹脂から構成される基材層に対しては、ポリエチレンイミン又はその誘導体が好ましい。
【0041】
帯電防止剤としては、例えばノニオン系、カチオン系又はアニオン系の界面活性剤又はポリマー、金属塩、及び導電性金属酸化物等が挙げられる。バインダーがポリエチレンイミンの場合、帯電防止剤としてはカチオン系のポリマーが好ましい。また、バインダーがポリオキシアルキレン誘導体の場合、帯電防止剤としてはリチウム塩が好ましい。
印刷可能層が帯電防止剤を含むことにより、インモールドラベルの表面抵抗率を1×10~1×1013Ωに調整することが好ましく、1×10~1×1012Ωに調整することがより好ましい。
【0042】
バインダーは、架橋剤を含むことがより好ましい。架橋剤としては、例えば反応性官能基としてヒドロキシ(水酸)基、カルボキシ基、エポキシ基、イソシアネート基、アルデヒド基、オキサゾリン骨格、及びカルボジイミド骨格等を有する2官能以上の物質が挙げられる。
【0043】
印刷可能層は、成形の容易性の観点から、上記物質を水等の媒質に溶解又は分散させて得られた塗工液を基材層上に塗工して、乾燥することによって形成されることが好ましい。
印刷可能層の乾燥後の片面当たりの固形分量は、通常、0.01~7g/mである。
【0044】
(印刷層)
印刷層は、絵柄、商品名、製造メーカー名、使用方法、バーコード等の意匠又は情報付与を目的として、印刷によって形成される。印刷方法としては特に限定されず、グラビア印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、シール印刷、スクリーン印刷等の公知の印刷方法を使用することができる。また、印刷方法に合わせて、油性インキ、酸化重合硬化型インキ、紫外線硬化型インキ、水性インキ、及び液体トナーインキ等のインキを使用することができる。
【0045】
また、印刷層は、上記印刷方法による印刷に限られず、各種プリンタによる印字、ホットスタンプ、コールドスタンプ等の箔押し、転写箔、及びホログラム等の従来公知の装飾を含むこともできる。
【0046】
(保護層)
保護層は、印刷層が設けられる基材層の一方の面側の最表面に位置する。保護層は、シリコーンを含有することによって、最表面の摩擦係数を低下させ、印刷層の損傷、及び汚れ等を減らすことができる。シリコーン(silicone)は、ポリシロキサン結合を有するケイ素化合物である。
【0047】
保護層中のSi原子の含有量は、摩擦係数を低下させて滑り性を高める観点から、1atm%以上が好ましく、2atm%以上がより好ましく、3atm%以上がさらに好ましい。ブリードアウトを減らす観点からは、保護層中のSi原子の含有量は、15atm%以下が好ましく、8atm%以下がより好ましく、6atm%以下がさらに好ましい。したがって、保護層中のSi原子の含有量は、1~15atm%が好ましく、2~8atm%がより好ましく、3~6atm%がさらに好ましい。
なお、上記Si原子の含有量は、XPS法により測定されるSi原子濃度として求めることができる。
【0048】
保護層は、成形を容易にする観点から、印刷層が設けられた基材層上にシリコーンを含有する塗工液を塗工することで形成されることが好ましい。塗工液としては、通常、オーバープリント(OP:Over Print)ニスと呼ばれる塗工液を用いることができる。OPニスは、一般的に、可視光線、紫外線、及び酸化重合等によって硬化する樹脂を含む、透明性の高い塗工液である。塗工液としては、あらかじめシリコーンを含有するOPニスの市販品を使用することもできるし、シリコーンを含有しないOPニスにシリコーンを混合して調製された塗工液を使用することもできる。
【0049】
可視光線硬化型又は紫外線硬化型のOPニスは、例えば40~80質量%のラジカル反応性モノマー及び20~60質量%のラジカル反応基を有するポリマーと、これらの混合物100質量部に対して、0.5~3質量部の架橋剤、1~5質量部の光反応開始剤及び0~3質量部のシリカ等のアンチブロッキング剤を配合することで得られる。
【0050】
シリコーンを含まない可視光線硬化型又は紫外線硬化型のOPニスの市販品としては、例えばOPニス(T&K TOKA(株)製、製品名:Lカートン OPニス KS)等が挙げられる。シリコーンを含まないOPニスに配合するシリコーンとしては、例えばシリコーン主剤(T&K TOKA(株)製、製品名:UV 反応性シリコン A)及びシリコーン助剤(T&K TOKA(株)製、製品名:UV 反応性シリコン B)の組合せ等が挙げられる。
【0051】
また、シリコーンを含まないOPニスとシリコーンを含むOPニスとを混合して塗工液を調製することもできる。シリコーンを含むOPニスとしては、例えばUVハクリOPニスシリーズ(T&K TOKA(株)製、製品名:UV ハクリOPニス UP-200、T&K TOKA(株)製、製品名:UV ハクリOPニス UP-2、T&K TOKA(株)製、製品名:UV ハクリOPニス A-3)等が挙げられる。
【0052】
酸化重合硬化型のOPニスは、例えば樹脂成分としてウレタン樹脂、及びフェノールマレイン酸樹脂等を80~99質量%、セルロース誘導体、塩化ビニル、及び酢酸ビニル共重合体等を1~20質量%と、これらの混合物100質量部に対して、鉱油、植物油、2-プロパノール等のアルコール類、酢酸プロピル等のエステル類、及びメチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類等の溶剤成分を50~250質量配合した、いわゆる油性OPニスである。
市販されている油性OPニスは、一般に剥離剤としてシリコーンを元より含んでいることが多いが、可視光線又は紫外線によって硬化するタイプのOPニスと同様に、シリコーンを配合して目的のSi原子の含有量に調整することができる。
【0053】
保護層の厚さは、印刷方法によって異なるが、通常、0.5~20μmであり、1~10μmが好ましく、1.5~8μmがより好ましい。保護層が厚いほど滑り性又は耐擦過性が高まる傾向にあり、薄いほど硬化不良を抑えやすい傾向にある。
【0054】
(ヒートシール性樹脂層)
ヒートシール性樹脂層は、インモールドラベルの容器との接着性を高める目的で設けられる。容器のインモールド成形時には、容器とヒートシール性樹脂層が対面するようにインモールドラベルが金型の内側に設けられる。インモールド成形時の熱によってヒートシール性樹脂層が溶融し、容器の表面にインモールドラベルが熱融着する。
【0055】
インモールド成形の方法には、原料樹脂のパリソンを用いるダイレクトブロー法と、原料樹脂のプリフォームを用いるストレッチブロー法がある。ダイレクトブロー法は、原料樹脂を融点以上に加熱して溶融させてパリソンを形成し、金型内で当該パリソンに空気圧を加えて膨張させることで容器を形成する方法である。ストレッチブロー法は、原料樹脂から予め形成したプリフォームを原料樹脂の軟化点付近まで加熱し、金型内で当該プリフォームをロッドで延伸するとともに空気圧を加えて膨張させることで容器を形成する方法である。
【0056】
本発明のインモールドラベルのヒートシール性樹脂層は、特にポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂製の容器との接着性が高い。PETは溶融粘度が低く、溶融状態ではパリソンの形状を保つことが難しいため、通常は融点ではなく軟化点付近まで加熱するストレッチブロー法によりPET樹脂容器が形成される。そのため、PET樹脂容器へのインモールドラベルの熱融着も、PET樹脂の融点ではなく軟化点付近の加熱温度域で行われる。このようにして成形されるPET樹脂容器に対しては、融点以上に加熱するダイレクトブロー法に比べて低温の成形条件下でも、インモールドラベルのヒートシール性樹脂を十分に溶融して容器への接着性を高める観点から、ヒートシール性樹脂層は、60~130℃の低融点を有する熱可塑性樹脂のフィルムであることが好ましい。融点が低いほど少ない熱量で十分な接着性が得られるため、ヒートシール性樹脂層に用いられる熱可塑性樹脂の融点は、110℃以下がより好ましく、100℃以下がさらに好ましい。また、融点は高いほどフィルム成形がしやすく、フィルム製造時のロールへの貼り付き等も減らしやすいため、熱可塑性樹脂の融点は、70℃以上がより好ましく、75℃がさらに好ましい。したがって、熱可塑性樹脂の融点は70~110℃がより好ましく、75~100℃がさらに好ましい。
上記融点は、示差走査熱量計(DSC:Differential Scanning Calorimetry)により測定することができる。
【0057】
ヒートシール性樹脂層に使用できる熱可塑性樹脂としては、例えば密度が0.900~0.935g/cmの低密度又は中密度のポリエチレン、密度が0.880~0.940g/cmの直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸アルキルエステル共重合体、アルキル基の炭素数が1~8のエチレン-メタクリル酸アルキルエステル共重合体、及びエチレン-メタクリル酸共重合体のZn、Al、Li、K、Na等の金属塩等の融点が60~130℃のポリエチレン系樹脂が好ましく挙げられる。なかでも、X線法で計測される結晶化度が10~60%、数平均分子量が10,000~40,000の低密度又は中密度ポリエチレンか、又は直鎖状低密度ポリエチレンが好ましい。
【0058】
接着性を高め、かつインモールドラベル同士を重ねたときのブロッキングを減らす観点からは、ヒートシール性樹脂層の熱可塑性樹脂としては、極性構造単位と非極性構造単位とを含む共重合体を使用することが好ましい。
極性構造単位としては、例えば塩素原子を含む構造単位、酢酸ビニル構造単位、(メタ)アクリル酸構造単位、(メタ)アクリル酸エステル構造単位(アルキル基の炭素数は1~8が好ましい)、無水マレイン酸構造単位、ウレタン構造単位、及びアミド構造単位等が挙げられる。これらの中でも、酢酸ビニル構造単位、(メタ)アクリル酸構造単位、(メタ)アクリル酸エステル構造単位又は無水マレイン酸構造単位が好ましい。
非極性構造単位は、例えばエチレン構造単位、プロピレン等の炭素数2~8のオレフィン構造単位が挙げられ、なかでもエチレン構造単位が好ましい。より具体的には、ポリエチレンに上記極性構造単位を共重合させると、融点が低下してインモールド成形しやすい融点、例えばストレッチブロー法による成形温度の範囲内に調整することが容易になる。
【0059】
上記共重合体中の極性構造単位は、非極性構造単位がカルボン酸で変性された単位であってもよい。変性方法としては、主骨格であるポリオレフィン樹脂に有機過酸化物等のラジカル発生剤と無水マレイン酸等の変性剤等とを配合し、押出機内において溶融状態で混練する方法が挙げられる。この方法により得られた共重合体としては、例えばマレイン酸変性ポリオレフィン樹脂が挙げられる。
【0060】
非極性構造単位と極性構造単位とを含む共重合体の好ましい例としては、エチレン-ビニルエステル共重合体又はエチレン-α,β-不飽和カルボン酸エステルが挙げられる。
【0061】
エチレン-ビニルエステル共重合体の好ましい例としては、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)が挙げられる。
EVAのメルトマスフローレイト(JIS K 6924-1:1997)は、成形性の観点から、1~30g/10分が好ましい。
EVAの酢酸ビニル含有率(JIS K 6924-1:1997)は、接着性向上の観点から、5~40質量%であることが好ましく、8~30質量%であることがより好ましい。EVAの酢酸ビニル含有率は、多いほど十分な極性が得られやすくなって接着性が向上しやすく、少ないほど柔軟性が得られやすくなって接着性が向上しやすくなる。
EVAの密度(JIS K 6924-2:1997)は、接着性向上の観点から、9.30~9.50であることが好ましい。
【0062】
エチレン-α,β-不飽和カルボン酸エステルの好ましい例としては、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)が挙げられる。
【0063】
ヒートシール性樹脂層には、1種の熱可塑性樹脂を単独で使用してもよいし、2種以上の熱可塑性樹脂を混合して使用してもよいが、後者の場合、剥離を抑える観点からは、混合する2種以上の樹脂の相溶性が高いことが好ましい。
【0064】
ヒートシール性樹脂層は、ポリエステル樹脂、特にポリエチレンテレフタレート樹脂に代表される極性樹脂との接着性を向上させる観点から、粘着付与剤又は可塑剤を含むことが好ましい。
粘着付与剤としては、例えば水素化石油樹脂、芳香族炭化水素樹脂、脂肪族炭化水素樹脂等が挙げられる。水素化石油樹脂としては、例えば部分水添石油樹脂等が挙げられる。芳香族炭化水素樹脂としては、例えばテルペン系樹脂、ロジン系樹脂、スチレン系樹脂等が挙げられる。
粘着付与剤又は可塑剤は、1種を単独で又は2種以上を混合して使用してもよいが、剥離を抑える観点からは、ヒートシール性樹脂層に使用する熱可塑性樹脂との相溶性が高いことが好ましい。
【0065】
ヒートシール性樹脂層は、必要に応じて、防曇剤、滑剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、耐候安定剤、及び紫外線吸収剤等の高分子分野で一般に用いられる添加剤を含むことができる。
ヒートシール性樹脂層中のこれら添加剤の含有量は、通常、添加剤の種類ごとに独立して0.01~5質量%である。
【0066】
ヒートシール性樹脂層は、上述した熱可塑性樹脂フィルムのみの単層構造であってもよいし、多層構造であってもよい。単層構造の場合、ヒートシール性樹脂層の厚さは、接着性を高める観点からは、0.5μm以上が好ましく、0.7μm以上がより好ましく、1μm以上がさらに好ましい。また、ヒートシール性樹脂層の厚さは、ヒートシール性樹脂層内部での凝集破壊を抑える観点からは、10μm以下が好ましく、3μm以下がより好ましく、2μm以下がさらに好ましい。したがって、ヒートシール性樹脂層の厚さは、0.5~10μmが好ましく、0.7~3μmがより好ましく、1~2μmがさらに好ましい。
【0067】
多層構造の場合、ヒートシール性樹脂層は、最表面に位置する極性樹脂層と、極性樹脂層と基材層の間に位置する非極性樹脂層とを備えることが好ましい。このような構成によれば、インモールド成形時に、極性樹脂層だけでなく非極性樹脂層も容器を構成する樹脂と融着して、接着性が向上しやすい。
【0068】
極性樹脂層としては、上述した極性構造単位を有する熱可塑性樹脂のフィルムを使用できる。
非極性樹脂層に用いる樹脂は、ストレッチブロー成形における低温条件下でも成形品との十分な接着性を得る観点から、60~130℃の低融点を有する熱可塑性樹脂であることが好ましい。融点が高いほどブロッキング、特にカットブロッキングが起きにくくなり、融点が低いほどインモールド成形時に非極性樹脂層が溶融しやすく、接着強度が高まりやすい。そのため、この融点は70~100℃がより好ましく、75~90℃がさらに好ましい。
【0069】
非極性樹脂層に使用される熱可塑性樹脂は、ポリエチレン系樹脂であることが好ましい。ポリエチレン系樹脂は、エチレンの単独重合体でもよく、エチレンと共重合可能なモノマーとエチレンとの共重合体であってもよい。エチレンと共重合可能なモノマーとしては、例えば炭素数3~10(好ましくは炭素数3~8)のα-オレフィン、及びスチレン等のヘテロ原子を有しないモノマー;酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸、アルキル基の炭素数が1~8の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、及び無水マレイン酸等のヘテロ原子を有するモノマー等が挙げられる。なかでも、耐水性の観点から、ヘテロ原子を有しないモノマーを使用しないことが好ましい。
【0070】
ポリエチレン系樹脂中のエチレン由来の構造単位の割合は、低温下での接着性を高める観点から、80mol%以上が好ましく、95mol%以上がより好ましく、97mol%以上がさらに好ましい。なお、同割合の上限は100mol%未満である。一方、ブロッキング抑制の観点から、ポリエチレン系樹脂中のエチレンと共重合可能なモノマー由来の構造単位の割合は、5mol%以下が好ましく、3mol%以下がより好ましい。なお、同割合の下限は0mol%を超える。
【0071】
2層構造の場合、極性樹脂層の厚さは、十分な接着性を得る観点から、0.05μm以上が好ましく、0.1μm以上がより好ましく、0.3μm以上がさらに好ましい。一方、極性樹脂層の厚さは、凝集破壊を抑える観点から、2μm以下が好ましく、1.6μm以下がより好ましく、1.2μm以下がさらに好ましく、1μm以下が特に好ましい。また、非極性樹脂層の厚さは、十分な接着性を得る観点から、1μm以上が好ましく、2μm以上がより好ましい。ヒートシール性樹脂層内部での凝集破壊を抑える観点からは、非極性樹脂層の厚さは、5μm以下が好ましく、3μm以下がより好ましい。
【0072】
非極性樹脂層と極性樹脂層の合計の厚さは、接着性向上の観点から、1.5μm以上が好ましく、1.6μm以上がより好ましく、1.7μm以上がさらに好ましい。一方、非極性樹脂層と極性樹脂層の合計の厚さは、ヒートシール性樹脂層内部での凝集破壊を抑える観点からは、8μm以下が好ましく、6μm以下がより好ましく、4μm以下がさらに好ましい。
【0073】
ヒートシール性樹脂層の表面は、後述する接着強度低下抑止層との密着性を高める観点から、基材層と同様の活性化処理が施されていてもよい。
【0074】
(接着強度低下抑止層)
接着強度低下抑止層は、ヒートシール性樹脂層が設けられる基材層の他方の面側の最表面に設けられる。接着強度低下抑止層は、ヒートシール性樹脂層の接着性を維持する観点から、ヒートシール性樹脂層に隣接するように積層されることが好ましい。接着強度低下抑止層は、極性基を有する(メタ)アクリル酸系共重合体を含有する。この接着強度低下抑止層により、保護層中のシリコーンによるヒートシール性樹脂層の接着性の低下を抑えることができる。
【0075】
インモールドラベルは、長尺シートとして製造された後、カットされてシートとして重ねて保管されるか、巻き取られてロール状に保管される。接着強度低下抑止層を備えないインモールドラベルの場合、一方のインモールドラベルの保護層と他方のインモールドラベルのヒートシール性樹脂層が隣接する。このとき、保管状況によっては、保護層から隣接するヒートシール性樹脂層へシリコーンが移行することがあり、シリコーンが移行したヒートシール性樹脂層の接着性が低下する現象が確認されている。
【0076】
一方、本発明のインモールドラベルは、基材層の他方の面側の最表面に接着強度低下抑止層が設けられ、接着強度低下抑止層がヒートシール性樹脂層と保護層の間に介在することで、ヒートシール性樹脂層に直接シリコーンが付着することを防ぐことができる。これにより、シリコーンがヒートシール性樹脂層に及ぼす影響を減らすことができ、接着性の低下を抑制することができたと推定される。メカニズムは明らかではないが、ヒートシール性樹脂層中の極性基を有する(メタ)アクリル酸系共重合体が作用して、シリコーンがヒートシール性樹脂層の接着性に及ぼす影響を減らしていると推定される。また、PET樹脂に対する極性基を有する(メタ)アクリル酸系共重合体自体の接着性も良好であり、PET樹脂製の容器との接着性が向上していることも接着性低下の抑制効果の1つと推定される。
【0077】
図2は、図1のインモールドラベル1同士を重ねた後、分離したときの1枚のインモールドラベル1を示す。
図2に示すように、ヒートシール性樹脂層4側に重ねられていた他のインモールドラベル1からシリコーンが移行しているが、接着強度低下抑止層6が介在することでヒートシール性樹脂層4へのシリコーンの付着を防いでいる。
【0078】
極性基を有する(メタ)アクリル酸系共重合体は、極性を有するのであれば、アニオン性、カチオン性又は両性でもよいが、ヒートシール性樹脂層の接着性の低下を抑制する効果を高める観点からは、カチオン性基を有する(メタ)アクリル酸系共重合体が好ましく、水溶性のカチオン性基を有する(メタ)アクリル酸系共重合体がより好ましい。極性基を有する(メタ)アクリル酸系共重合体が水溶性であれば、水性溶媒を用いた塗工液を調製して当該塗工液を塗工することにより、接着強度低下抑止層の形成が容易となる。極性基を有する(メタ)アクリル酸系共重合体は、例えばエチレンイミン系共重合体、第4級アンモニウム塩構造又はホスホニウム塩構造を有する水溶性ポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール等の水溶性ポリマーを変性によりカチオン化したビニル系ポリマー等とともに用いることができる。これらのうち、1種以上を組み合わせて用いることができる。
【0079】
カチオン性基を有する(メタ)アクリル酸共重合体のなかでも、接着性低下を抑制する観点から、アミノ基含有(メタ)アクリル酸系共重合体が好ましい。
本明細書において、カチオン性基とは、水に溶解したときに陽電荷を帯びる基をいう。カチオン性基は、例えば、(A)アニオンと結合して塩となり得る基、又は、(B)酸(例えば、酢酸)の存在下でプロトンと結合してカチオンとなり、酸アニオンと結合可能な基であることができる。上記(A)の基は、例えば、アニオンとともにアンモニウム塩基又はホスホニウム塩基であることができる。また、上記(B)の基は、例えば、アミノ基等の窒素化合物基であることができる。
【0080】
アミノ基とは下記式(a)で表される基であり、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1~3のアルキル基、又は炭素数1~3のアルケニル基であることができ、アンモニウム塩基を構成するカチオン性基は下記式(b)で表される基であり、R~Rはそれぞれ独立に、炭素数1~3のアルキル基、又は炭素数1~3のアルケニル基であることができる。本明細書において、R及びRがいずれも水素原子である場合、下記式(a)で表される基は第1級のアミノ基であり、R及びRのいずれか一方が水素原子である場合、下記式(a)で表される基は第2級のアミノ基であり、R及びRがいずれも水素原子でない場合、下記式(a)で表される基は第3級のアミノ基であるものとする。また、下記式(b)で表される基は、第4級アミノ基であるものとする。
-NR …(a)
-N …(b)
【0081】
アミノ基含有(メタ)アクリル酸系共重合体は、接着性向上の観点からは、第1級~第3級のアミノ基を有することが好ましく、第2級又は第3級のアミノ基を有することがより好ましく、第3級のアミノ基を有することがさらに好ましい。なお、接着強度低下抑止層に含まれる「極性基を有する(メタ)アクリル酸系共重合体」における上記「(メタ)アクリル酸系共重合体」は、ヒートシール性樹脂層に含まれるヒートシール性を有する熱可塑性樹脂とは異なるものであることができる。すなわち、接着強度低下抑止層に含まれる「極性基を有する(メタ)アクリル酸系共重合体」はヒートシール性を有する必要がなく、例えば、60℃未満、-50~50℃、又は、-20~40℃の融点を有していてもよく、或いは、融点を有しなくてもよい。また、「極性基を有する(メタ)アクリル酸系共重合体」は、例えば、-50~70℃、-20~60℃、又は、0~50℃のガラス転移点を有していてもよい。
【0082】
接着強度低下抑止層は、必要に応じて、帯電防止剤、架橋促進剤、アンチブロッキング剤、pH調整剤、消泡剤等のその他の助剤成分を含むことができる。
【0083】
(帯電防止剤)
接着強度低下抑止層は、帯電による埃の付着及び印刷時の搬送不良を減らす観点から、帯電防止剤を含有することが好ましい。
帯電防止剤のなかでも、ブリードアウトによる表面の汚染等を減らす観点から、ポリマー型帯電防止剤が好ましい。ポリマー型帯電防止剤としては、特に限定されるものではなく、カチオン型、アニオン型、両性型又はノニオン型の帯電防止剤を用いることができ、これらを単独で又は2種以上を組み合わせることができる。
【0084】
カチオン型の帯電防止剤としては、アンモニウム塩構造、及びホスホニウム塩構造等を有する帯電防止剤を例示できる。アニオン型の帯電防止剤としては、スルホン酸、リン酸、及びカルボン酸等のアルカリ金属塩(リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等。)の構造を有する帯電防止剤を例示できる。アニオン型の帯電防止剤は、分子構造中に、アクリル酸、メタクリル酸、及び(無水)マレイン酸等のアルカリ金属塩の構造を有する帯電防止剤であってよい。
【0085】
両性型の帯電防止剤としては、同一分子中に、カチオン型の帯電防止剤及びアニオン型の帯電防止剤の両方の構造を含有する帯電防止剤を例示できる。両性型の帯電防止剤としては、ベタイン型の帯電防止剤が挙げられる。ノニオン型の帯電防止剤としては、アルキレンオキシド構造を有するエチレンオキシド重合体、エチレンオキシド重合成分を分子鎖中に有する重合体等を例示できる。その他の帯電防止剤としては、分子構造中にホウ素を有するポリマー型帯電防止剤が挙げられる。
【0086】
なかでも、ポリマー型帯電防止剤としては、カチオン型の帯電防止剤が好ましく、窒素含有ポリマー型帯電防止剤がより好ましく、アンモニウム塩構造を有する帯電防止剤がさらに好ましく、第3級窒素又は第4級窒素含有アクリル系樹脂が特に好ましい。
ポリマー型帯電防止剤としては、三菱化学株式会社製のサフトマーST-1000、ST-1100、及びST-3200(商品名)等の市販品を使用することができる。
ポリマー型帯電防止剤としては、シランカップリング剤と反応する化合物を使用してもよいし、反応しない化合物を使用してもよい。ただし、帯電防止性能の発現しやすさの観点からは、シランカップリング剤と反応しない化合物が好ましい。
【0087】
接着強度低下抑止層中の帯電防止剤の含有量は、帯電防止の観点からは、極性基を有する(メタ)アクリル酸系共重合体100質量部に対して、0.01質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましく、2質量部以上がさらに好ましい。耐水性の観点からは、接着強度低下抑止層中の帯電防止剤の含有量は、極性基を有する(メタ)アクリル酸系共重合体100質量部に対して、85質量部以下が好ましく、75質量部以下がより好ましく、70質量部以下がさらに好ましく、65質量部以下が特に好ましい。
【0088】
(架橋促進剤)
架橋促進剤としては、例えばリン酸、硫酸、クエン酸、及びコハク酸等が挙げられる。
【0089】
(アンチブロッキング剤)
アンチブロッキング剤としては、例えばシリカ、軽質炭酸カルシウム、及びアクリル酸アルキルエステル共重合体等のアクリルポリマービーズ等が挙げられる。
【0090】
接着強度低下抑止層の厚さは、同抑止効果発現の観点から、0.01μm以上であることが好ましく、0.03μm以上であることがより好ましく、0.1μm以上であることがさらに好ましい。また、接着強度低下抑止層の厚さは、ヒートシール性樹脂層の接着性を維持する観点から、7μm以下であることが好ましく、3μm以下であることがより好ましく、1μm以下であることがさらに好ましい。
【0091】
(インモールドラベルの製造方法)
インモールドラベルの製造方法は特に限定されないが、基材層の一方の面にヒートシール性樹脂層を積層する方法により製造することができる。
単層構造の基材層のフィルムを成形する方法としては、Tダイによる押出し成形(キャスト成形)、Oダイによるインフレーション成形、及び圧延ロールによるカレンダー成形等が挙げられる。多層構造の基材層のフィルムを成形する方法としては、各層に用いる熱可塑性樹脂組成物をそれぞれ異なる押出機に供給して溶融し、各押出機から吐出された熱可塑性樹脂組成物を多層ダイス構成のTダイ又はOダイに供給し、多層ダイス内で積層してフィルム状に吐出する方法等が挙げられる。また、単層又は多層のシートに熱可塑性樹脂組成物を押出ラミネートすることもできる。この方法によれば、基材層に紙基材を使用することも可能である。
【0092】
基材層の他方の面にヒートシール性樹脂層を積層する方法としては、共押出法、押出ラミネート法、塗布法、及びフィルム貼合法等が挙げられる。
共押出法は、多層ダイスに基材層用の熱可塑性組成物と、ヒートシール性樹脂層用の熱可塑性組成物(それぞれ複数あってもよい)とを供給し、多層ダイス内で積層して押し出すため、成形と同時に積層が行われる。
押出ラミネート法は、基材層を先に成形し、これに溶融したヒートシール性樹脂層用の熱可塑性組成物を積層し、冷却しながらロールでニップするため、成形と積層とは別工程で行なわれる。
フィルム貼合法は、基材層とヒートシール性樹脂層とをそれぞれフィルム成形し、感圧接着剤を介して両者を貼り合わせるため、成形と積層とは別工程で行なわれる。
また、ヒートシール性樹脂層が非極性樹脂層と極性樹脂層との構成の場合は、上記方法で基材層の片面に非極性樹脂層を積層し、さらに塗布法で極性樹脂層を設けることができる。塗布法としては、溶剤塗工法及び水系塗工法を挙げることができる。
これらの方法のなかでも、各層を強固に接着できる観点から、共押出法が好ましい。
【0093】
基材層又はヒートシール性樹脂層は、無延伸フィルムであってもよいし、延伸フィルムであってもよい。
延伸方法としては、例えばロール群の周速差を利用した縦延伸法、テンターオーブンを利用した横延伸法、これらを組み合わせた逐次二軸延伸法、圧延法、テンターオーブンとパンタグラフの組み合わせによる同時二軸延伸法、及びテンターオーブンとリニアモーターの組み合わせによる同時二軸延伸法等が挙げられる。また、スクリュー型押出機に接続された円形ダイを使用して溶融樹脂をチューブ状に押し出し成形した後、これに空気を吹き込む同時二軸延伸(インフレーション成形)法等も使用できる。
【0094】
基材層とヒートシール性樹脂層は、各層を積層する前に個別に延伸しておいてもよいし、積層した後にまとめて延伸してもよい。また、延伸した層を積層後に再び延伸してもよい。
【0095】
延伸を実施するときの延伸温度は、各層に使用する熱可塑性樹脂が、非結晶性樹脂の場合は当該熱可塑性樹脂のガラス転移点以上の範囲であることが好ましい。また、熱可塑性樹脂が結晶性樹脂の場合の延伸温度は、当該熱可塑性樹脂の非結晶部分のガラス転移点以上であって、かつ当該熱可塑性樹脂の結晶部分の融点以下の範囲内であることが好ましく、具体的には熱可塑性樹脂の融点よりも2~60℃低い温度が好ましい。
【0096】
熱可塑性樹脂フィルムの延伸速度は、特に限定されるものではないが、安定した延伸成形の観点から、20~350m/分の範囲内であることが好ましい。
また、熱可塑性樹脂フィルムを延伸する場合の延伸倍率についても、使用する熱可塑性樹脂の特性等を考慮して適宜決定することができる。 例えば、プロピレンの単独重合体又はその共重合体を含む熱可塑性樹脂フィルムを一方向に延伸する場合、その延伸倍率は、通常は約1.2倍以上であり、好ましくは2倍以上である一方、通常は12倍以下であり、好ましくは10倍以下である。また、二軸延伸する場合の延伸倍率は、面積延伸倍率で通常は1.5倍以上であり、好ましくは10倍以上である一方、通常は60倍以下であり、好ましくは50倍以下である。
上記延伸倍率の範囲内であれば、目的の空孔率が得られて不透明性が向上しやすい。また、熱可塑性樹脂フィルムの破断が起きにくく、安定した延伸成形ができる傾向がある。
【0097】
基材層に積層されたヒートシール性樹脂層上に接着強度低下抑止層用の塗工液を塗工することにより基材層の他方の面側の最表面に接着強度低下抑止層が設けられる。塗工方法としては、印刷、及び塗布等が挙げられる。塗工液は、極性を有する(メタ)アクリル酸系共重合体等の接着強度低下抑止層の各成分を溶媒に溶解又は分散させることにより、調製することができる。極性を有する(メタ)アクリル酸系共重合体が水溶性である場合、水性溶媒を用いて水溶性の塗工液を調製することができる。工程管理が容易になり、安全上の観点からも好ましい。水性溶媒は水を主成分として、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、トルエン、及びキシレン等の水溶性有機溶媒を含有してもよい。水を主成分とするとは、全体の50質量%以上が水であることをいう。
【0098】
塗工液の塗工及び塗工膜の乾燥は、基材層の成形とともにインラインで実施してもよく、オフラインで実施してもよい。塗工液の塗工量は、乾燥後の接着強度低下抑止層の厚さや含有成分の濃度等を考慮して適宜調整することができる。塗布には、ダイコーター、バーコーター、ロールコーター、リップコーター、グラビアコーター、スプレーコーター、ブレードコーター、リバースコーター、及びエアーナイフコーター等の塗布装置を使用できる。乾燥には、熱風送風機、及び赤外線乾燥機等の乾燥装置を使用できる。
【0099】
塗工液中の極性を有する(メタ)アクリル酸系共重合体の含有量(固形分量)は、シリコーンによる接着性の低下を抑える観点から、0.5質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましい。また、同含有量は、接着強度低下抑止層の均一性の観点から、40質量%以下であることが好ましく、30質量%以下がより好ましい。
【0100】
インモールドラベルの基材層のヒートシール性樹脂層と反対側の面には、印刷によって印刷層を設けることができる。印刷情報としては、例えば商品名、ロゴ等の商品の表示、製造元、販売会社名、使用方法、及びバーコード等が挙げられる。
印刷方法としては、例えばグラビア印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、シール印刷、及びスクリーン印刷等が挙げられる。
【0101】
必要に応じてパターン層等の印刷層以外の他の層も設けた後、保護層用の塗工液を塗工することによって基材層の一方の面側の最表面に保護層が設けられる。なかでも、上記印刷層と同様に印刷により保護層を設けることが、工程が簡易になるとともに保護層材料を市販品から容易に選定でき、好ましい。
【0102】
(ラベル加工)
本発明のインモールドラベルは、裁断又は打ち抜きにより必要な形状及び寸法に加工される。裁断又は打ち抜きは、印刷前に行うこともできるが、作業の容易性からは印刷後に行うことが好ましい。
【0103】
インモールドラベルの厚さは、ラベルのシワ等を抑える観点から、25μm以上が好ましく、45μm以上がより好ましい。また、インモールドラベルを容器に設けたときにラベル境界部分の容器の薄肉化による強度低下を抑える観点からは、同厚さは、200μm以下が好ましく、150μm以下がより好ましい。したがって、インモールドラベルの厚さは、25~200μmが好ましく、45~150μmがより好ましい。
【0104】
(インモールドラベル付き容器)
本発明のインモールドラベル付き容器は、表面に上述した本発明のインモールドラベルが設けられた樹脂容器である。本発明のインモールドラベルは、低コストで成形性及び機械的強度に優れるポリオレフィン系樹脂フィルムが基材層として好適に用いられ得るが、ストレッチブロー成形の成形温度に応じた特定範囲の融点を有する熱可塑性樹脂フィルムがヒートシール性樹脂層として用いられていることから、基材層とは異質であり得るPET樹脂に対してもインモールドラベルの接着性が高く、ストレッチブロー成形されるPET樹脂容器用に最適化されたラベルである。ただし、本発明のインモールドラベルのヒートシール性樹脂層は、ダイレクトブロー成形でも高い接着性を示すため、PET樹脂容器以外のポリエチレン樹脂容器、及びポリプロピレン樹脂容器等にも使用することができる。
【0105】
(容器の材質)
本発明のインモールドラベルは、上述のようにPET樹脂に対する接着性が高くPET樹脂容器用のインモールドラベルとして最適化されているが、PET樹脂以外のポリエチレン樹脂、及びポリプロピレン樹脂等に対しても接着性が良好であり、容器の材質は特に限定されない。
【0106】
なかでも、ヒートシール性樹脂層が表面に極性樹脂層を有するインモールドラベルは、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンサクシネート、及びポリ乳酸等のポリエステル系樹脂等の極性樹脂容器に使用することができる。また、使用できる極性樹脂容器としては、ポリエステル系樹脂と同様の接着機構であることから、ポリカーボネート系樹脂、アクリロニトリル-スチレン(AS)樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)樹脂、及びメチルメタクリレート-スチレン(MS)樹脂等のその他の極性樹脂容器も挙げられる。
【0107】
容器の色は、透明か又は顔料、染料等の色材を含まない自然色であってもよく、色材又は着色による不透明色であってもよい。
容器の胴体の断面形状は、真円であってもよく、楕円形や矩形であってもよい。胴体の断面形状が矩形である場合は、角が曲率を有することが好ましい。強度の観点から、胴体の断面は真円か真円に近い楕円形であることが好ましく、真円であることがより好ましい。
【0108】
(インモールドラベル付き容器の製造方法)
(インモールド成形)
本発明のインモールドラベル付き容器の製造方法は、樹脂容器のインモールド成形時に樹脂容器の表面にインモールドラベルを設けることができるのであれば、特に限定されない。
本発明のインモールドラベルを使用するのに適したインモールド成形法としては、ストレッチブロー成形、ダイレクトブロー成形、インジェクション成形、及び差圧成形等が挙げられる。本発明のインモールドラベルは、上述のように、ストレッチブロー成形の低温条件下でも接着性が高く、特にPET樹脂容器に対する接着性に優れている。
【0109】
(インモールドラベル及びインモールドラベル付き容器の特性)
上記の通りにして容器の表面に、インモールドラベルが貼着しているラベル付き容器が得られる。本発明のインモールドラベル付き容器は以下の特性を有することが好ましい。
【0110】
(接着強度)
樹脂容器とインモールドラベルとの間の接着強度は、JIS K6854-2:1999「接着剤-はく離接着強さ試験方法-第2部:180度はく離」に従って測定する。容器とラベルとの間にブリスター(気泡)が生じない状況下で、上記接着強度は3N/15mm以上が好ましく、3.5N/15mm以上がより好ましく、4N/15mm以上がさらに好ましい。一方、上記接着強度の上限は特に限定されないが、ヒートシール性樹脂層の凝集破壊強度から15N/15mm以下であることが好ましい。
【0111】
(接着強度維持率)
一方の表面に保護層を設けたインモールドラベルを使用したラベル付き容器において、保護層からのシリコーン移行の影響を受けていないインモールドラベルと容器との上記接着強度を100%としたとき、保護層からのシリコーン移行の影響を受けたインモールドラベルと容器との上記接着強度との比を百分率で表した値を、接着強度維持率とする。
ヒートシール性樹脂層側の表面が、保護層から移行するシリコーンの影響を受けにくいほど、接着強度維持率は高い傾向にある。接着強度維持率は、60%以上が好ましく、70%以上がより好ましく、80%以上がさらに好ましい。接着強度維持率の上限は通常100%であるが、100%を超えても構わない。なお、シリコーンの移行性は、次のようにして確認できる。
【0112】
(シリコーンの移行性)
本発明のインモールドラベル同士が重ねられたときの保護層からヒートシール性樹脂層へのシリコーンの移行性は、接着強度低下抑止層を含めたヒートシール性樹脂層のSi原子濃度(atm%)から確認できる。Si原子濃度(atm%)は、XPS法により、インモールドラベルのヒートシール性樹脂層側の表面を測定することにより得られる。
【実施例
【0113】
(製造例1)
(基材層及びヒートシール性樹脂層の積層体)
基材層の材料として、プロピレン単独重合体(日本ポリプロ社製、製品名:ノバテックPP MA4、MFR:5g/10分、融点:167℃)84質量%、重質炭酸カルシウム微細粉末(備北粉化工業社製、製品名:ソフトン #1800、体積平均粒子径:1.8μm)15質量%、及びルチル型二酸化チタン微細粉末(石原産業社製、製品名:タイペーク CR-60、体積平均粒子径:0.2μm)1質量%を混合し、これを230℃に加熱した押出機内で溶融混練し、2層共押出ダイスに供給した。
【0114】
一方、ヒートシール性樹脂層の材料としてメタロセン系ポリエチレン(日本ポリエチレン社製、製品名:カーネル KS571、MFR:12g/10分、融点:100℃、密度:0.907g/cm)を用い、これを210℃に加熱した押出機で溶融して、2層共押出ダイスに供給した。
基材層の材料とヒートシール性樹脂層の材料とを2層共押出ダイスの中で積層し、同ダイスから2層構造のシートとして押出し、これを冷却装置により冷却して、2層構造の無延伸シートを得た。
【0115】
この無延伸シートを150℃に加熱し、複数のロール群の周速差を利用して縦方向に5倍延伸した。次いでこれを60℃の温度にまで冷却した後、再び150℃の温度にまで加熱してテンターを用いて横方向に8倍延伸し、160℃の温度でアニーリング処理し、60℃の温度にまで冷却して、2層構造の白色不透明な二軸延伸ポリオレフィン系樹脂フィルムを得た。
【0116】
次いで、二軸延伸ポリオレフィン系樹脂フィルムの耳部をスリットした後、コロナ放電処理装置に導き、基材層側及びヒートシール性樹脂層側の両表面にそれぞれ50W/mの処理量でコロナ放電処理を施し、巻き取り機でロール状に巻き取った。
得られた二軸延伸ポリオレフィン系樹脂フィルムの総厚さは70μmであり、密度は0.76g/cmであった。同フィルムにおいて、基材層の厚さは68μmであり、ヒートシール性樹脂層の厚さは2μmであった。
【0117】
(製造例2)
還流冷却器、窒素導入管、揚押機、温度計、滴下ロート及び加熱用のジャケットを装備した、内容積が150Lの反応器に、イソプロパノール(トクヤマ社製、製品名:トクソーIPA)40kgを仕込んだ。これを撹拌しながら、反応器内にN,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート(三洋化成工業社製、製品名:メタクリレートDMA)12.6kg、ブチルメタクリレート(三菱レイヨン社製、製品名:アクリエステルB)12.6kg及び高級アルコールメタクリル酸エステル(三菱レイヨン社製、製品名:アクリエステルSL、ラウリルメタクリレートとトリデシルメタクリレートの混合物)2.8kgを導入した。次いで系内の窒素置換を行い、反応器内の温度を80℃まで上昇させた後、重合開始剤として2,2′-アゾビスイソブチロニトリル(和光純薬工業社製、製品名:V-60(AIBN))0.3kgを反応器内に導入した。
【0118】
反応器内の温度を80℃に保ったまま4時間撹拌を継続して共重合反応を行った。次いで常温まで冷却した後、反応器内に氷酢酸(和光純薬工業社製)4.3kgを導入して得られた共重合体を中和した。次いで、反応器内にイオン交換水48.3kgを導入しながらイソプロパノールを留去して系内を水系に置換し、極性基として第3級アミノ基を側鎖に有するメタクリル酸系共重合体(融点を有しない、重量平均分子量40,000)の、粘調な水溶液(固形分濃度35質量%)を得た。なお、得られたメタクリル酸系共重合体は水溶液中でプロトンと結合し、カチオンとして酢酸イオンと結合していることから、上記極性基はカチオン性基であることが確認された。
【0119】
(製造例3)
OPニス(T&K TOKA社製、製品名:Lカートン OPニス KS)96.7質量部、シリコーン主剤(T&K TOKA社製、製品名:UV 反応性シリコン A)3質量部、及びシリコーン助剤(T&K TOKA社製、製品名:UV 反応性シリコン B)0.3質量部を混合して、シリコーンを含有する保護層用の塗工液を得た。
【0120】
[実施例]
上記製造例2で得た極性基を有するメタクリル酸系共重合体をイオン交換水で固形分濃度10質量%に希釈した塗工液を調製した。調製した塗工液を上記製造例1で得た二軸延伸ポリオレフィン系樹脂フィルムのヒートシール性樹脂層側の表面上にグラビアコーターを用いて塗工し、80℃のオーブンで乾燥して接着強度低下抑止層を形成した。得られた接着強度低下抑止層の厚さは0.5μmであった。
【0121】
次いで、二軸延伸ポリオレフィン系樹脂フィルムの基材層側の表面に、フレキソ印刷機(エムティーテック社製、機器名:FC11B)及びUVフレキソ用インキ(T&K TOKA社製、製品名:フレキソ500)を用いて、文字(MSゴシック、6~20ポイント)を含む絵柄を印刷して、印刷層を設けた。
次いで、同印刷層上に、製造例3で得られた保護層用の塗工液をグラビアロールを用いて塗工し、紫外線ランプで800Jのエネルギーを照射して保護層用の塗工液を硬化させて保護層を形成することで、実施例のインモールドラベルを得た。硬化後の保護層の厚さは2.5μmであった。
【0122】
[比較例1]
上記実施例で用いた極性基を有する(メタ)アクリル酸系共重合体の代わりに、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体の水性分散液(ジャパンコーティングレジン(株)製、製品名:アクアテックス AC-1127、固形分濃度45質量%、融点95℃)をイオン交換水で固形分濃度10質量%に希釈した塗工液を調製し、これを用いた。ここで用いたエチレン-メタクリル酸メチル共重合体は、極性基を有さない共重合体である。調製した塗工液を上記製造例1で得た二軸延伸ポリオレフィン系樹脂フィルムのヒートシール性樹脂層側の表面上にグラビアコーターを用いて塗工し、80℃のオーブンで乾燥して接着強度低下抑止層を形成した。接着強度低下抑止層の厚さは0.5μmであった。
【0123】
次いで、上記実施例と同様に、二軸延伸ポリオレフィン系樹脂フィルムの基材層側の表面に、フレキソ印刷機(エムティーテック社製、機器名:FC11B)及びUVフレキソ用インキ(T&K TOKA社製、製品名:フレキソ500)を用いて、文字(MSゴシック、6~20ポイント)を含む絵柄を印刷して、印刷層を設けた。
次いで、同印刷層上に、製造例3で得られた保護層用の塗工液をグラビアロールを用いて塗工し、紫外線ランプで800Jのエネルギーを照射して保護層用の塗工液を硬化させて保護層とし、比較例1のインモールドラベルを得た。硬化後の保護層の厚さは2.5μmであった。
【0124】
[比較例2]
接着強度低下抑止層を設けなかったこと以外は、実施例1と同様にして、比較例2のインモールドラベルを得た。
【0125】
<評価方法>
[インモールドラベル物性]
(各層の厚さ)
インモールドラベルの厚さ(全厚)は、JIS K7130:1999に準拠し、定圧厚さ測定器((株)テクロック製、製品名:PG-01J)を用いて測定した。また、インモールドラベルにおける各層の厚さは、次のようにして求めた。測定対象試料を液体窒素にて-60℃以下の温度に冷却し、ガラス板上に置いた試料に対してカミソリ刃(シック・ジャパン(株)製、製品名:プロラインブレード)を直角に当て切断し、断面観察用の試料を作製した。得られた試料の断面を走査型電子顕微鏡(日本電子(株)製、製品名:JSM-6490)を使用して観察し、外観から各層の熱可塑性樹脂組成物ごとの境界線を判別して、インモールドラベルの全厚に観察される各層の厚さ比率を乗算して求めた。
【0126】
[ラベル付き容器の特性]
実施例及び比較例で得たインモールドラベルを、作製直後に枚葉状に断裁し、長辺8cm及び短辺6cmの矩形に打ち抜いて、評価用のサンプル(A)をそれぞれ作製した。別途、実施例及び比較例で得たインモールドラベルをロール状に巻き取って、一方の最外層である保護層の表面と、もう一方の最外層である接着強度低下抑止層の表面が接する状態とし、これを温度25℃、相対湿度50%の環境下で8日間静置した。その後、ロール状のインモールドラベルを巻き出して枚葉状に断裁し、長辺8cm及び短辺6cmの矩形に打ち抜いて、評価用のサンプル(B)をそれぞれ作製した。
【0127】
打ち抜いたインモールドラベルを、静電気帯電装置を用いて帯電させ、続けてストレッチブロー成形機(日精ASB社製、機器名:ASB-70DPH)の成形用金型の内部に設置して型締めした。設置は、保護層が金型に接するように(接着強度低下抑止層がキャビティ側を向くように)行った。インモールドラベルは、金型内でラベルの長辺が樹脂容器の胴体の周方向に対して平行となるように設置した。金型は、キャビティ側の表面温度が20~45℃の範囲内となるように制御した。
【0128】
一方、ポリエチレンテレフタレート樹脂製のプリフォームを100℃に予熱した。次に、プリフォームを金型に導き、5~40kg/cmのブロー圧力下、1秒間ストレッチブロー成形した。その後、15秒間で50℃まで冷却した。
次に金型を開き、高さ12cm及び一辺約7cmの角型の胴部を有するインモールドラベル付き容器を得た。
【0129】
(インモールドラベルの接着強度)
得られたインモールドラベル付き容器を、温度23℃、相対湿度50%の環境下で2日間保管した。次に、インモールドラベル付き容器のラベルが設けられた部分のラベル及び容器本体を一体にカッターで切り取り、容器の胴の周方向を長手方向とする長さ12cm(ラベルの貼着部分は8cm、非貼着部分は4cm)及び幅1.5cm(全幅にラベルが貼着)の測定用サンプルを、2個の容器から合計6つ採取した。
【0130】
次に、ラベルの非貼着部分からラベルの貼着部分を丁寧に剥がしていき、約1cm剥離して、つかみしろを形成した。次に同つかみしろと幅1.5cmのPETフィルム(厚さ50μm)とを重ねて粘着剤で接着してラベル側のつかみしろ部分とし、接着強度測定用のサンプルを作製した。
【0131】
JIS K6854-2:1999に基づき、引張試験機(島津製作所社製、型式名:オートグラフAGS-5kNJ)を用いて、剥離速度300mm/minの条件で容器胴部とラベルとの180度剥離試験を実施した。剥離長さ25~75mm間の剥離力の平均値を測定し、さらにサンプル6点の測定値を平均して得られた値を接着強度とした。接着強度の単位はN/15mmとした。結果を表1に示す。
【0132】
(Si原子濃度)
上記のようにして作製した実施例及び比較例の、評価用のサンプル(A)及びサンプル(B)(計4種)を、アパーチャー径400μmのサンプルホルダに収まる寸法に打ち抜き、XPS(X線光電子分光計)測定用の試験片を3枚ずつ作製した。次いでXPS測定装置(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製、商品名「K-ALPHA」)を用い、インモールドラベルの接着強度低下抑止層側の表面のSi原子量、および全原子量の測定を1試験片に対してそれぞれ3回行った。全原子量の測定結果を100atm%としたときのSi原子の割合を求め、3点の3回の測定の平均値をSi原子濃度(atm%)とした。
【0133】
通常、保護層からのシリコーン転写の影響を受けていないサンプル(A)においては、使用原料がSi原子を含まないことから、Si原子濃度の測定結果は0atm%となるが、保護層からのシリコーン転写の影響を受けたサンプル(B)においては、有意の量が測定され、その量が多いほど、多くのシリコーンが移行したことを示す。
【0134】
【表1】
【0135】
上記表1に示すSi原子濃度の測定結果から、保護層から接着強度低下抑止層側の表面へのシリコーン転写の影響を受けたサンプル(B)において、実施例でも比較例1及び2でも多くのシリコーンが移行していることが分かった。
【0136】
一方、樹脂容器に直接接する最外層として極性基を有する(メタ)アクリル酸系共重合体を含有する接着強度低下抑止層を設けた実施例のインモールドラベルは、保護層からのシリコーン転写の影響を受けたサンプル(B)であっても3N/15mm以上の接着強度を維持でき、かつ保護層からのシリコーン転写の影響を受けていないサンプル(A)との対比において、接着強度維持率が80%以上と高いことがわかった。そのため、印刷層の保護のためにシリコーンを含有する保護層を用いた場合であって、かつストレッチブロー成形による低温条件下であっても成形品との接着強度が十分なインモールドラベル付き容器を得ることができた。
【0137】
本出願は、2018年9月28日に出願された日本特許出願である特願2018-184065号に基づく優先権を主張し、当該日本特許出願のすべての記載内容を援用する。
【符号の説明】
【0138】
1 インモールドラベル
2 基材層
3 印刷層
4 ヒートシール性樹脂層
5 保護層
51 シリコーン
6 接着強度低下抑止層
【産業上の利用可能性】
【0139】
本発明のインモールドラベルは、インモールド成形される成形体、例えばPET樹脂容器、及びポリエチレン樹脂容器等の樹脂容器の表面に設けるラベルとして広く利用することができる。また、本発明のインモールドラベル付き容器は、飲料のボトル状容器、化粧品、及び医薬品等の容器として広く利用することができる。

図1
図2