(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-02
(45)【発行日】2022-05-13
(54)【発明の名称】界面活性剤を形成するための反応性蒸留
(51)【国際特許分類】
C09K 23/32 20220101AFI20220506BHJP
B01D 3/00 20060101ALI20220506BHJP
C07D 307/46 20060101ALI20220506BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20220506BHJP
B01J 29/70 20060101ALN20220506BHJP
【FI】
B01F17/32
B01D3/00 A
C07D307/46
C07B61/00 300
B01J29/70 Z
(21)【出願番号】P 2020551789
(86)(22)【出願日】2018-12-14
(86)【国際出願番号】 US2018065723
(87)【国際公開番号】W WO2019118862
(87)【国際公開日】2019-06-20
【審査請求日】2020-08-12
(32)【優先日】2017-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520211708
【氏名又は名称】シロニックス リニューアブルス,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【氏名又は名称】高橋 正俊
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ クラム
(72)【発明者】
【氏名】コナー ビーチ
(72)【発明者】
【氏名】ショーン イーディ
【審査官】山本 悦司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/079718(WO,A1)
【文献】米国特許第05338517(US,A)
【文献】特表平11-501312(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104162447(CN,A)
【文献】米国特許第06149879(US,A)
【文献】米国特許第06416659(US,B1)
【文献】特開平09-029090(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0327375(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 23/00-23/56
B01D 3/00、3/32
C07C 27/22、49/21
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
界面活性剤を形成する方法であって、
蒸留カラムデバイス内の第2の流体媒体空間に脂肪酸を提供することであって、前記蒸留カラムデバイスが、蒸留カラム内に、第1の触媒材料を含有する第1の触媒床を含み、前記第2の流体媒体空間が、前記第1の触媒床の上方にあり、第1の流体媒体空間が、前記蒸留カラムデバイス内の前記第1の触媒床の下方にある、前記脂肪酸を提供することと、
前記第1の触媒床でフラン系構造体による前記脂肪酸のアシル化を実行して、前記蒸留カラムデバイス内の前記第1の流体媒体空間でアルキルフランケトンを形成することと、
を含む、界面活性剤を形成する方法。
【請求項2】
前記フラン系構造体が、フランおよびメチルフランからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の触媒材料が、H-Bea、HY、超安定Y、MCM-41、SBA-15、タングステン酸ジルコニア、硫酸化ジルコニア、
及びアモルファスシリカからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第2の流体媒体空間に提供される前記脂肪酸が、脂肪酸無水物であり、前記アシル化を実行することが、前記第1の触媒床で前記フラン系構造体による前記脂肪酸無水物の前記アシル化を実行することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記蒸留カラムデバイス内の前記第2の流体媒体空間に前記脂肪酸無水物を提供することが、
前記蒸留カラムデバイス内の第3の流体媒体空間に前記脂肪酸を提供することであって、前記蒸留カラムデバイスが、前記蒸留カラム内に、第2の触媒材料を含有する第2の触媒床を含み、前記第2の触媒材料が、前記第1の触媒材料とは異なり、前記第3の流体媒体空間が、前記第2の触媒床の上方にあり、前記第2の流体媒体空間が、前記蒸留カラムデバイス内の前記第2の触媒床の下方にある、前記脂肪酸を提供することと、
前記第2の触媒床で前記脂肪酸の脱水を実行して、前記蒸留カラムデバイス内の前記第2の流体媒体空間で前記脂肪酸無水物を形成することと、
を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記蒸留カラムデバイス内の前記第3の流体媒体空間に前記脂肪酸を提供することが、
前記蒸留カラムデバイス内の第4の流体媒体空間にトリグリセリドを提供することであって、前記蒸留カラムデバイスが、前記蒸留カラム内に、第3の触媒材料を含有する第3の触媒床を含み、前記第3の触媒材料が、前記第1の触媒材料および前記第2の触媒材料とは異なり、前記第4の流体媒体空間が、前記第3の触媒床の上方にあり、前記第3の流体媒体空間が、前記蒸留カラムデバイス内の前記第3の触媒床の下方にある、前記トリグリセリドを提供することと、
前記第3の触媒床で前記トリグリセリドの加水分解を実行して、前記蒸留カラムデバイス内の前記第3の流体媒体空間で前記脂肪酸を形成することと、
を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記トリグリセリドを提供することが、前記トリグリセリドを前記蒸留カラムデバイスの第1の流体入口で前記蒸留カラムデバイスに投入することを含み、前記第1の流体入口が、前記第3の触媒床より上方にある前記蒸留カラムデバイスでの第1の高さにある、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記蒸留カラムデバイスから、前記トリグリセリドの加水分解により生成された副生成物を前記蒸留カラムデバイスの第1の流体出口で排出することをさらに含み、前記第1の流体出口が、前記第3の触媒床より上方にある前記蒸留カラムデバイスでの第1の高さにある、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記蒸留カラムデバイスから、前記アルキルフランケトンを前記蒸留カラムデバイスの第2の流体出口で排出することをさらに含み、前記第2の流体出口が、前記第1の触媒床より下方にある前記蒸留カラムデバイスでの第2の高さにある、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記脂肪酸が脂肪酸無水物であり、前記第1の流体媒体空間および前記第2の流体媒体空間は、前記第2の流体媒体空間から前記第1の流体媒体空間へと通過する前記脂肪酸無水物が前記第1の触媒床を必ず通過するように、前記第1の触媒床により分離されている、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記アルキルフランケトンのアルキルフランへの水素化をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記水素化が、前記蒸留カラムデバイス内で実行される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記アルキルフランケトンが、前記蒸留カラムデバイスから、前記蒸留カラムデバイスに流体接続された第2の蒸留カラムデバイスへと通過し、前記水素化が、前記第2の蒸留カラムデバイス内で実行される、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記アルキルフランのアルコキシル化形態へのアルコキシル化をさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記水素化および前記アルコキシル化が、前記蒸留カラムデバイス内で実行される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記フラン系構造体による前記脂肪酸の前記アシル化を実行することが、前記脂肪酸の脱水を実行せずに、前記フラン系構造体により前記脂肪酸を直接アシル化することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記脂肪酸が、脂肪酸メチルエステルである、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
蒸留カラムデバイスであって、
前記蒸留カラムデバイス内の、第1の触媒材料を含有する第1の触媒床と、
前記蒸留カラムデバイス内の前記第1の触媒床の下方の第1の流体媒体空間と、
前記蒸留カラムデバイス内の前記第1の触媒床の上方の第2の流体媒体空間と、
を備え、
前記第1の触媒床が、フラン系構造体により脂肪酸をアシル化して、前記蒸留カラムデバイス内の前記第1の流体媒体空間でアルキルフランケトンを形成するように構成されている、蒸留カラムデバイス。
【請求項19】
前記脂肪酸が、脂肪酸無水物であり、
前記蒸留カラムデバイス内の、第2の触媒材料を含有する第2の触媒床であって、前記第2の触媒材料は、前記第1の触媒材料とは異なる、第2の触媒床と、
前記第2の触媒床の上方にある第3の流体媒体空間であって、前記第2の流体媒体空間は、前記第2の触媒床の下方にある、第3の流体媒体空間と、
をさらに備え、
前記第2の触媒床が、前記脂肪酸を脱水して、前記蒸留カラムデバイス内の前記第2の流体媒体空間で前記脂肪酸無水物を形成するように構成されている、請求項18に記載のデバイス。
【請求項20】
前記蒸留カラムデバイス内の、第3の触媒材料を含有する第3の触媒床であって、前記第3の触媒材料は、前記第1の触媒材料および前記第2の触媒材料とは異なる、第3の触媒床と、
前記第3の触媒床の上方にある第4の流体媒体空間であって、前記第3の流体媒体空間は前記第3の触媒床の下方にあり、前記第3の触媒床は、トリグリセリドを加水分解して、前記蒸留カラムデバイス内の前記第3の流体媒体空間で前記脂肪酸を形成するように構成されている、第4の流体媒体空間と、
前記蒸留カラムデバイスの前記第4の流体媒体空間への第1の流体入口であって、前記第3の触媒床より上方の、前記蒸留カラムデバイスでのある高さにある、第1の流体入口と、
前記蒸留カラムデバイスの前記第4の流体媒体空間からの第1の流体出口であって、前記第3の触媒床より上方の、前記蒸留カラムデバイスでのある高さにある、第1の流体出口と、
前記蒸留カラムデバイスの前記第1の流体媒体空間からの第2の流体出口であって、前記第1の触媒床より下方の、前記蒸留カラムデバイスでのある高さにある、第2の流体出口と、
をさらに備える、請求項19に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年12月15日に出願された米国仮特許出願第62/599,092号の利益を主張し、その内容は、参照により本明細書に援用される。
【0002】
本開示は、概して、界面活性剤を形成するためのデバイス、システム、および方法に関する。具体的には、本明細書に記載の実施形態は、反応性蒸留によりフラン系界面活性剤を形成するためのデバイス、システム、および方法を含む。
【背景技術】
【0003】
界面活性剤は、さまざまな用途を有する化学物質である。そのような用途としては、家庭用洗剤および洗浄剤、施設用および工業用洗浄製品、噴霧アジュバントなどの農薬、油田用途、ならびにさまざまなコーティング添加剤が挙げられる。「表面活性剤(surface active agent)」の省略形である界面活性剤(surfactant)は、水を引き付ける親水性部分、ならびに油および汚れを引き付ける疎水性部分から構成される。界面活性剤分子の両親媒性構造により、汚れの懸濁、乳化、および材料の表面特性の変更が可能になる。界面活性剤分子の化学構造の変化により、乳化能力(親水性/親油性バランス)、油/汚れの懸濁能力(臨界ミセル濃度)、冷水性能(クラフト(Krafft)点)、発泡、および生分解などの調整可能な特性を可能にすることができる。
【0004】
界面活性剤は、一般に、長鎖アルカン/アルケン、およびエチレンオキシドなどの石油化学原料から合成されてきた。しかしながら、石油化学原料から合成された界面活性剤は、いくつかの問題を提示し得る。1つには、そのような界面活性剤は、環境に有害であり得る化学物質を含む。さらに、そのような界面活性剤は、ある特定の用途で意図したように機能しない場合がある。例えば、何十年にもわたる開発にもかかわらず、これらのさまざまな界面活性剤構造は、1つの問題に直面しており、それは、硬水(例えば、カルシウム、マグネシウム、鉄などを含有する)の存在により、これらの界面活性剤が不活性になるということである。不活性化が発生すると、これにより界面活性剤が固体沈殿物を形成し、意図した機能を実質的に失う。
【0005】
石油化学原料から合成された界面活性剤に関連するこれらの問題に対処するために、界面活性剤は、ココナッツ油、大豆油、および糖類などの天然資源から得られ始めている。この開発は主に、石油化学界面活性剤を同一の化学構造を有するバイオベースの類似体(例えば、石油からのラウリル硫酸ナトリウムおよびココナッツ油からのココ硫酸ナトリウム)で置き換えることに焦点を合わせてきた。結果として、界面活性剤はより環境にやさしくなる。硬水の存在下での界面活性剤の不活性化の問題を解決するために、オレオフラン界面活性剤(「OFS」(複数可))と呼ばれる新しいクラスのバイオベースの界面活性剤が開発されてきた。実際、OFSは、他の界面活性剤と比較して50~100倍のカルシウム耐性を示している。
【0006】
OFSは、石油化学原料から合成された界面活性剤に関連する問題を解決することができるが、OFSを合成するために使用される現在の方法は独自の問題を有する。現在の方法は、複数のステッププロセスであり、副生成物を分離するためにプロセスの各ステップ間に精製フェーズが含まれている。現在の方法は、非効率的で複雑であり、拡大することが難しく、さらに、比較的大量のエネルギーを消費すると同時に、比較的大量の副生成物を生成し得る。この方法は、環境に有害であることに加えて、OFSが石油化学界面活性剤と経済的に競合することをより困難にするため、OFSの価値を阻害し得る。
【発明の概要】
【0007】
概して、界面活性剤を形成するためのデバイス、システム、および方法に関するさまざまな例示的な実施形態が本明細書で開示される。より具体的には、反応性蒸留によりフラン系界面活性剤を形成するためのデバイス、システム、および方法に関するさまざまな例示的な実施形態が本明細書で開示される。例えば、そのような実施形態は、反応および分離ステップを単一の反応ユニットに組み合わせることにより、反応性蒸留を使用して、オレオフラン界面活性剤(「OFS」(複数可))分子および中間体を合成する統合反応プロセスを提供することができる。さらに、この反応性蒸留では、触媒材料、触媒充填高さ/場所、および/または蒸留カラムの操作条件は、所望のOFSの高収率および高純度を達成するように反応と蒸留とを組み合わせたプロセスを調整できるように変えることができる。
【0008】
これらの実施形態は、例えば、OFSを合成するためのより単純で効率的な方法を容易にするのに有用であることができる。その結果、これはOFS合成の規模の拡大を可能にすることができ、それにより、OFSが石油化学界面活性剤と経済的に競合することを可能にし、一方で、なおより環境に優しく、硬水の存在下での界面活性剤の不活性化を防ぐ。さらに、OFSを合成するための従来の方法と比較して、本方法は、エネルギー消費の低減、および結果として生じる副生成物の減少に起因して環境への影響を低下させることができる。
【0009】
1つの例示的な実施形態は、界面活性剤を形成する方法を含む。本方法は、蒸留カラム内の触媒床に含有される触媒材料を有する蒸留カラムにトリグリセリドを導入するステップを含むことができる。本方法はまた、蒸留カラム内で第1の材料を第2の材料から分離するステップを含むことができ、ここで、第1の材料は触媒床の上方にある蒸留カラム内の第1の領域に分離され、第2の材料は触媒床の下方にある蒸留カラム内の第2の領域に分離される。本方法は、第1の領域の第1の出口で蒸留カラムから第1の材料を除去し、第2の領域の第2の出口で蒸留カラムから第2の材料を除去するステップをさらに含むことができる。さらに、本方法は、触媒床の下方にある蒸留カラム内の領域でオレオフラン界面活性剤を形成するステップを含むことができる。
【0010】
例示的な方法の実施形態は、単一の蒸留カラムまたは複数の流体的に相互接続された蒸留カラム(例えば、直前の蒸留カラムに関して記載されたものと同じかまたは類似の特徴を有する)内で以下の反応:脂肪酸およびグリセロールを形成するためのトリグリセリドの加水分解、脂肪酸の脂肪酸無水物への無水物合成、ならびにアルキルフランケトンを形成するためのフランによる脂肪酸または脂肪酸無水物のアシル化、のうちの1つ以上(これらの反応の各々を含む)を実行するステップを含むことができる。さらなる実施形態では、例示的な方法の実施形態は、その単一の蒸留カラムまたは複数の流体的に相互接続された蒸留カラム内で以下の反応:アルキルフランケトンのアルキルフランまたはアルキルフランアルコールへの水素化(または還元)、およびアルキルフランのアルコキシル化形態へのアルコキシル化(例えば、エトキシル化、プロポキシル化)、のうちの1つかまたは両方を実行するステップを含むことができる。
【0011】
別の例示的な実施形態は、蒸留カラムデバイスを含む。蒸留カラムデバイスは、第1の触媒床と、第1の触媒床の上方に画定された第1の流体媒体空間と、第1の触媒床の下方に画定された第2の流体媒体空間とを含む。いくつかの実施形態では、蒸留カラムデバイスは、第2の出口で排出された1つ以上の組成物が第1の触媒床を通過するように、第1の流体媒体空間における蒸留カラムの入口と、第1の流体媒体空間における蒸留カラムの第1の出口と、第2の流体媒体空間における蒸留カラムの第2の出口とをさらに含んでいてもよい。場合により、流体媒体空間は、不活性充填材(複数可)および蒸留トレイ(複数可)のうちの1つを含んでいてもよい。第1の触媒床は、入口から受容した流体との反応を実行するように適合させることができる。
【0012】
さらなるそのような実施形態では、蒸留カラムデバイスは、第2の流体媒体空間の下方の第2の触媒床と、第2の触媒床の下方に画定された第3の流体媒体空間とをさらに含んでいてもよい。そのような実施形態では、第2の出口は、このさらなる実施形態で第2の出口で排出された1つ以上の組成物が第1の触媒床および第2の触媒床を通過するように、第2の流体媒体空間ではなく、第3の流体媒体空間にあってもよい。第2の触媒床は、第1の触媒床とは異なる触媒組成物を含むことができ、第1および第2の触媒床は、第2の流体媒体により蒸留カラム内で互いに離間されていてもよい。一例では、第1の触媒床および第2の触媒床は各々、それぞれ、蒸留カラムに固定された保持物体を含み、ここで、保持物体は、当該保持物体に充填された触媒材料を含む。
【0013】
さらなるそのような実施形態では、蒸留カラムデバイスは、第3の流体媒体空間の下方の第3の触媒床と、第3の触媒床の下方に画定された第4の流体媒体空間とをさらに含んでもよい。このさらなる実施形態では、第2の出口は、このさらなる実施形態において第2の出口で排出された1つ以上の組成物が第1の触媒床、第2の触媒床および第3の触媒床を通過するように、第2または第3の流体媒体空間ではなく、第4の流体媒体空間にあってもよい。第1の触媒床、第2の触媒床および第3の触媒床の各々は、異なる触媒組成物を含むことができ、第1、第2および第3の触媒床は、それぞれ、第2および第3の流体媒体により蒸留カラム内で互いに離間されていてもよい。
【0014】
さらなる例示的な実施形態は、複数の蒸留カラムデバイスのシステムを含む。このシステムは、第1の蒸留カラムデバイスと、第2の蒸留カラムデバイスとを含むことができる。第1の蒸留カラムデバイスは、当該システムが第1の蒸留カラムデバイスから排出された流体を第2の蒸留カラムデバイスの流体投入口に運搬するように構成されるように、第2の蒸留カラムデバイスに流体接続されていてもよい。第1および第2の蒸留カラムデバイスは、上記の例示的な蒸留カラムデバイスの実施形態のうちのいずれか1つと類似するものであってもよい。例えば、第1の蒸留カラムデバイスは、少なくとも第1の触媒床と、第1の流体媒体空間と、第2の流体媒体空間とを有することができ、第2の蒸留カラムデバイスは、少なくとも第2の触媒床と第3の流体媒体空間とを有することができる。そのような例では、第1の蒸留カラムデバイスの第1の触媒床を通過した組成物は、それらの間の流体接続を介して第2の蒸留カラムデバイスに排出されることができ、第2の蒸留カラムデバイスの第2の触媒床を通過することができる。
【0015】
別の実施形態は、界面活性剤を形成する方法を含む。この方法の実施形態は、蒸留カラムデバイス内の第2の流体媒体空間に脂肪酸を提供することを含む。蒸留カラムデバイスは、蒸留カラム内に第1の触媒材料を含有する第1の触媒床を含む。蒸留カラムデバイス内では、第2の流体媒体空間は、第1の触媒床の上方にあり、第1の流体媒体空間は、第1の触媒床の下方にある。この方法の実施形態は、第1の触媒床でフラン系構造体による脂肪酸のアシル化を実行して、蒸留カラムデバイス内の第1の流体媒体空間でアルキルフランケトンを形成することも含む。
【0016】
この方法の実施形態の1つの適用例において、第2の流体媒体空間に提供される脂肪酸は、脂肪酸無水物であることができ、その場合、アシル化を実行することは、第1の触媒床でフラン系構造体による脂肪酸無水物のアシル化を実行することを含む。この適用例では、蒸留カラムデバイス内の第2の流体媒体空間に脂肪酸無水物を提供することは、i)蒸留カラムデバイス内の第3の流体媒体空間に脂肪酸を提供することであって、蒸留カラムデバイスは、蒸留カラム内に第2の触媒材料を含有する第2の触媒床を含み、この第2の触媒材料は、第1の触媒材料とは異なり、第3の流体媒体空間は、第2の触媒床の上方にあり、第2の流体媒体空間は、蒸留カラムデバイス内の第2の触媒床の下方にある、前記脂肪酸を提供することと、ii)第2の触媒床で脂肪酸の脱水を実行して、蒸留カラムデバイス内の第2の流体媒体空間で脂肪酸無水物を形成することと、を含むことができる。
【0017】
第2の流体媒体空間に提供される脂肪酸が脂肪酸であるこの方法の実施形態の別の適用例では、フラン系構造体による脂肪酸のアシル化の実行は、脂肪酸の脱水を実行せずに、フラン系構造体による脂肪酸の直接アシル化を含むことができる。
【0018】
一例として、本明細書に開示されるさまざまな実施形態では、脂肪酸は、ラウリン酸メチルエステルなどの脂肪酸メチルエステルであることができる。
【0019】
さらなる実施形態は、蒸留カラムデバイスを含む。この蒸留カラムデバイスは、当該蒸留カラムデバイス内の第1の触媒材料を含有する第1の触媒床と、当該蒸留カラムデバイス内の第1の触媒床の下方の第1の流体媒体空間と、当該蒸留カラムデバイス内の第1の触媒床の上方の第2の流体媒体空間とを含む。第1の触媒床は、フラン系構造体により脂肪酸無水物をアシル化して、当該蒸留カラムデバイス内の第1の流体媒体空間でアルキルフランケトンを形成するように構成される。
【0020】
1つ以上の例の詳細を添付の図面および以下の記述において記載する。他の特徴、目的、および利点は、記述および図面から明らかになるであろう。
【0021】
以下の図面は、本発明の特定の実施形態を図示するものであり、したがって、本発明の範囲を限定するものではない。図面は、(特に記載されていない限り)必ずしも縮尺通りではなく、以下の記述における説明と併せて使用することが意図されている。本発明の実施形態は、添付の図面と併せて以下に記載され、同様の参照文字は、同様の要素を示す。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、反応性蒸留により界面活性剤を形成するために各々使用できるいくつかの蒸留カラムデバイスの実施形態の概略立面図である。
【
図2】
図2は、反応性蒸留により界面活性剤を形成する方法の実施形態のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下の詳細な記述は本質的に例示的であり、決して本発明の範囲、適用性、または構成を限定することを意図しない。むしろ、以下の記述は、本発明の例示的な実施例を実施するためのいくつかの実際的な説明を提供する。構造、材料、形状、および/または寸法の例は、選択した要素に対して提供される。記載された例の多くがさまざまな好適な選択肢を有することを当業者は認識するであろう。
【0024】
OFS構造および合成方法の例は、WO2017/079718およびWO2017/079719に開示されており、それらの各々の全容は参照により本明細書に援用される。これらの刊行物では、OFSは、多段プロセスを使用して合成される。この多段プロセスには、脂肪酸を形成するためのトリグリセリド分子の加水分解、精製、脂肪酸無水物を形成するための脂肪酸の脱水、精製、および脂肪酸無水物によるフランのアシル化を含む異なるプロセスステップが含まれる。特に、各ステップ間に、副生成物、溶媒、および生成物を分離するための精製フェーズがある。さらに、このプロセスの後続のステップには、化学分岐構造を組み込むための酸素官能基の還元/水素化またはアルドール縮合、ならびに親水基を形成するためのスルホネート、スルフェート、または他の酸素部分によるフラン部分の化学修飾などの任意の反応が含まれてもよい。
【0025】
本開示の実施形態は、反応ステップおよび分離ステップを組み合わせた統合反応プロセスにおいてOFS分子および中間体を合成するために反応性蒸留を使用することができる。このようにして、本開示の実施形態は、上記の刊行物と同じかまたは類似の構造のOFSを、より単純かつ効率的な様式で合成することができる。結果として、本開示の実施形態は、OFS合成を拡大することを可能にすることができ、それにより、OFSが上記の刊行物の複数のステッププロセスと比較して石油化学界面活性剤に対して経済的に競争力をより向上させることを可能にする。加えて、上の刊行物の多段階プロセスと比較して、本開示の実施形態は、エネルギー消費の低減および生成する副生成物がより少ないことに起因して、環境への影響を低下させることができる。
【0026】
本開示の実施形態の反応性蒸留は、従来の蒸留で使用される不活性蒸留カラム充填物を、化学反応を実行することを意図する活性触媒材料で置き換えることができる。本開示のさまざまな実施形態では、「蒸留カラム」という用語の使用は、トリクルベッド反応器を含むと理解されるべきである。特定の所望のOFSの比較的高い収率および高純度を達成するために、触媒材料、触媒充填高さ/場所、および/または蒸留カラムの操作条件を変化させることにより、反応と蒸留とを組み合わせたプロセスは、さまざまな実施形態で調整できる。以下の反応スキーム1に図示される例示的な反応性蒸留ステップは、(1)トリグリセリド(例えば、ココナッツ油)の加水分解、(2)脂肪酸無水物(例えば、ココナッツ油脂肪酸無水物)を形成するための脂肪酸の脱水、(3)アルキルフランケトンを形成するためのフラン部分による脂肪酸または脂肪酸無水物のアシル化、(4)酸素および/またはアルケン官能基を除去するための還元/水素化、(5)エトキシル化/プロポキシル化または分子の一部分の酸素含有量を増加させる他の反応のうちのいずれか1つ以上(反応(1)~(5)の全てを含む)を含むことができる。複数の反応を、同一の蒸留カラム内または別個の接続された(例えば、直列に接続された)複数のカラム内の複数の触媒ゾーンで実行することができる。例示的な反応スキーム1は以下のように示され、ここで、複数の反応ステップが組み合わされて、トリグリセリドおよびフランからアルキルフランケトンを合成する。
【化1】
【0027】
本開示のさまざまな実施形態によるこの反応性蒸留プロセスの進展における1つの特徴は、反応副生成物の管理である。例えば、トリグリセリドの加水分解は水を消費し、酸無水物合成は水を形成するため、そのような管理された副生成物の1つは、水であり得る。ある特定の副生成物と反応物質または触媒との相互作用が望ましくない結果を引き起こすことがあり、例えば、水または他の副生成物(例えば、グリセロール)と反応物または触媒との相互作用は、副反応および/または失活を引き起こし得るため、反応副生成物の管理は有益であり得る。
【0028】
本開示のさまざまな実施形態は、触媒ゾーン内の反応物および生成物の濃度を分離し、濃度の管理を助けるために反応性蒸留を使用することができる。これは、生成物の収率を最大化し、触媒の失活を最小化するように作用することができる。反応性蒸留カラムデバイスでは、アルキルフランまたはアルキルフランケトンなどの重質生成物は、液体状態のままでカラムの底部またはその近くに落ち着く。同時に、反応性蒸留カラムデバイスでは、フランおよび水などの軽質化合物は揮発し、カラムの頂部またはその近くに落ち着く。結果として、ある特定の実施形態では、所望の生成物(例えば、アルキルフランケトン)を、カラムの底部で収集できる。さらに、ある特定の実施形態では、規定量の揮発性材料をカラムに再循環させるために、カラムの頂部にある還流凝縮装置を使用できる。したがって、本開示の実施形態は、生成物の収率を最大化し、望ましくない失活を最小化するために、反応性蒸留を効率的に使用することができる。
【0029】
実施形態に応じて、反応性蒸留によって、トリグリセリドからのカルボン酸によるフランの直接アシル化と、それに続く水素化およびエトキシル化/プロポキシル化とを進展させるために、単一の蒸留カラムまたはいくつかの蒸留カラムを使用することができる。2つ以上の蒸留カラムが使用される実施形態では、これらの蒸留カラムは、直列または並列のいずれかで、蒸留カラム間の液体-液体抽出分離と相互接続されてもよい。一例として、そのような流体接続された蒸留カラムデバイスの実施形態では、蒸留カラムの数は、2~7つの範囲であることができる。しかし、他の実施形態では、他の数の流体接続された蒸留カラムデバイスが存在することができる。
【0030】
1つ以上の蒸留カラムデバイスの個々の構成は、すべて本開示の範囲内の特定の適用例の関数としてのいくつかの変数に応じて変えることができる。これらは、例えば、所望の収率、プロセス効率、および/または反応物質から生成物への触媒変換のタイプを含み得る。寸法の説明のための例として、蒸留カラムの高さは、約2~200フィート(0.6096~60.96m)で様々であることができ、蒸留カラムの幅(例えば、直径)は、約0.5インチ~20フィート(1.27cm~6.096m)で様々であることができる。1つ以上の蒸留カラムは、1つ以上の蒸留プレート、充填カラム領域、またはそれらの混合を含むことができ、反応物から生成物への所望の触媒変換、ならびに他のプロセス構成成分からの生成物の効率的な分離を達成するように作用することができる。
【0031】
図1は、反応性蒸留に使用できる蒸留カラムデバイスの実施形態の概略立面図を提供する。特に、
図1は、例示的な蒸留カラムデバイスA、例示的な蒸留カラムデバイスB、および例示的な蒸留カラムデバイスCを図示する。各蒸留カラム内には、少なくとも1つの触媒床100がある。反応は、蒸留カラム内の1つ以上の触媒床の各々で起こることができる。個々の触媒床に応じて、いくつかの実施形態では、2つ以上の反応が単一の触媒床を共用することができる。図示される例に示されるように、蒸留カラムAは1つの触媒床100を含み、蒸留カラムBは2つの触媒床100、105を含み、蒸留カラムCは3つの触媒床100、105、110を含む。各触媒床100、105、110は、異なる触媒材料を含有してもよい。蒸留カラムB(触媒床100、105)およびC(触媒床100、105、110)のように、2つ以上の触媒床が含まれる場合、蒸留カラム内の触媒床の順序は、その個々の蒸留カラムの操作条件および再循環流れに応じて様々であることができる。さらに、個々の触媒床の操作温度に応じて、意図された各反応の好ましい変換に十分な温度に到達するために、触媒床内に補助ヒーターが必要な場合がある。蒸留カラム内の滞留時間が短い成分(例えば、フラン、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、および/または水素)または変換率の低い成分(例えば、脂肪酸無水物、脂肪酸、トリグリセリド、アルキルフランケトン、アルキルフラン、および/または水)には、再循環流れが必要な場合がある。
【0032】
各蒸留カラムデバイスA、B、およびCは、蒸留カラムに1種以上の原料を受容するように適合された流体入口115を含むことができる。場合により、2つ以上の入口が、1つ以上の原料、例えば、2つの異なるタイプの原料を蒸留カラムデバイスに投入するために蒸留カラムデバイスに含まれてもよい。例えば、蒸留カラムデバイスBおよび蒸留カラムデバイスCの各々は、流体入口115および第2の流体入口120を含む。図示した実施形態では、流体入口115および120は、1つ以上の触媒床100、105、110が入口115、120の間に配置されるように、蒸留カラムデバイスB、Cで異なる高さに配置される。入口115、120は、蒸留カラムデバイスB、Cでのこれらの異なる高さの場所で蒸留カラムデバイスB、Cに異なる材料を投入するために使用することができる。蒸留カラムに供給される原料としては、例えば、鎖長が様々な(例えば、C3~C26)脂肪酸、例えば、脂肪酸メチルエステル(例えば、ラウリン酸メチルエステル)、両方が混合されたトリグリセリド、および鎖長が様々な(C3~C26)ホモトリグリセリド(これらは、飽和または不飽和(モノ、ジ、またはトリ)であることができる)、フランまたはフラン誘導体、トリフルオロ酢酸無水物、酢酸無水物、ならびに溶媒が挙げられるが、これらに限定されない。
【0033】
図示した実施形態にも示されるように、各蒸留カラムデバイスA、B、Cは、合成された材料を排出するように適合された流体出口125を含むことができる。場合により、2つ以上の出口が、異なる材料を排出するために蒸留カラムデバイスに含まれてもよい。例えば、蒸留カラムデバイスA、B、Cの図示した実施形態は、第2の流体出口130を含む。図示した実施形態では、流体出口125、130は、1つ以上の触媒床100、105、110が出口125と130の間に配置されるように、蒸留カラムデバイスA、B、Cで異なる高さに配置される。例えば、蒸留カラムデバイスCの場合、出口125は、触媒床100、105、および110の各々の下方に配置され、出口130は、触媒床100、105、110の各々の上方に配置される。出口125、130は、蒸留カラムデバイスA、B、Cでのこれらの異なる高さの場所で蒸留カラムデバイスA、B、Cから異なる材料を排出するために使用することができる。例えば、出口130は、反応副生成物を管理するために使用することができる。例えば、水および/またはグリセロールなどの1種以上の副生成物を出口130で排出して、蒸留カラムデバイスA、B、Cがそのような副生成物の有害な影響を低減できるようにすることができる。
【0034】
さらに、各蒸留カラムデバイスA、B、およびCは、反応性蒸留に使用される溶媒、および/または、特定の方法の一部として含まれる場合に、その後の液体-液体抽出に使用される溶媒を含むことができる。これらの溶媒としては、例えば、アセトンおよびメチルエチルケトンを含むケトン;ペンタン、ヘキサン、およびヘプタン、シクロヘキサン、およびシクロペンタンを含むが、これらに限定されない炭化水素;ベンゼン、トルエンを含む芳香族有機物;アセトニトリル、プロピオニトリル、およびブチロニトリルを含む有機ニトリル;ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルムを含む有機クロロカーボン;メタノール、エタノール、およびイソプロパノールを含むが、これらに限定されないアルコール;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、およびテトラヒドロフランを含むが、これらに限定されないエーテル性溶媒;酢酸メチルおよび酢酸エチルを含むが、これらに限定されないエステル;ならびに水が挙げられる。しかし、ある特定の実施形態では、蒸留カラムに溶媒が存在していないことがある(「ニート」と呼ばれることもある)。場合により、使用される溶媒がアセトン、ヘプタン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、アセトニトリル、メタノール、エタノール、イソプロパノール、1-ブタノール、酢酸エチルおよび酢酸イソプロピル、シクロペンチルメチルエーテル、2-メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフラン、ならびに水(これらに限定されない)を含む場合、有用であることができる。
【0035】
上記のように、一例では、単一の蒸留カラムまたはいくつかの相互接続された蒸留カラムを、トリグリセリドからのカルボン酸によるフランの直接アシル化と、それに続く水素化およびエトキシル化/プロポキシル化とを進展させるための反応性蒸留を容易にするために使用することができる。この例では、蒸留カラム(複数可)内の最大5つの異なる触媒床で最大5つの反応が起こることができる。例えば、複数の蒸留カラムが使用される場合、1~4つの反応は、第1の蒸留カラム内で起こることができ、全反応5つの残りは、第2の蒸留カラム内で起こることができる。
【0036】
本開示は、以下のように記載される5つの反応のさまざまな組み合わせを含む、反応のさまざまな組み合わせを包含する。反応1は、脂肪酸およびグリセロールを形成するためのトリグリセリド加水分解であることができる。反応2は、脂肪酸の脂肪酸無水物への無水物合成であることができる。反応3は、アルキルフランケトンを形成するためのフランによる脂肪酸のアシル化であることができる。反応4は、アルキルフランケトンのアルキルフランまたはアルキルフランアルコールへの水素化/還元であることができる。反応4は、固定触媒床上の連続フロー反応器に好適である操作条件を有することができる。反応5は、アルキルフランのアルコキシル化形態へのアルコキシル化(例えば、エトキシル化、プロポキシル化)であることができる。1つの方法の実施形態では、反応1、2、3、4および5のうちのいずれか2つ以上が含まれてもよい。例えば、特定の方法の実施形態では、反応1、2、3、4および5の各々が含まれてもよい。別の特定の方法の実施形態では、反応2、3、4および5の各々が含まれてもよい。または、特定の方法の実施形態の別の例では、反応2、3および4の各々が含まれてもよい。別の説明のための例として、さらなる方法の実施形態では、反応2、3および5の各々が含まれてもよい。本開示の範囲内のいくつかの所与の方法の実施形態では、含まれてもよい反応1、2、3、4および5のうちのいずれか2つ以上は、実施形態の具体的な適用に従って変えることができ、選択することができる。
【0037】
表1は以下に提示されており、上の例で記載される反応1~5のうちの1つ以上(例えば、すべて)に使用することができる可能な触媒クラスおよびタイプを含む。1つ以上の蒸留カラムの最大5つの触媒床のすべては、表1からの触媒を含むことができる。1つ以上の蒸留カラムデバイスの触媒床には、単一の均一触媒、様々な濃度の2種以上の触媒を有する2種以上の触媒の混合物、または単一の触媒床内である触媒から別の異なる触媒に触媒が徐々に移り変わる触媒の勾配が含まれてもよい。いくつかの例では、反応1、2および3が表1の高酸性触媒床で起こることが好適であるこおtができる。さらに、いくつかの例では、反応4が表1の金属酸化物触媒床で起こることが好適であることができる。
【表1】
【0038】
例えば、触媒床100に含有される触媒材料(複数可)、触媒床105に含有される触媒材料(複数可)、および触媒床110に含有される触媒材料(複数可)は、表1に列挙される任意の1つ以上から選択することができる。表1に示される触媒のクラスおよびタイプは、本明細書の実施例に記載される反応1~5のうちの1つ以上(例えば、すべて)のための触媒床100、105、110で使用できるが、ある特定の触媒は、ある特定の用途に好ましい場合がある。例えば、触媒床100に含有される触媒材料(複数可)、触媒床105に含有される触媒材料(複数可)、および触媒床110に含有される触媒材料(複数可)は、以下:H-Bea、HY、超安定Y(Ultrastable-Y)、MCM-41、SBA-15、タングステン酸ジルコニア、硫酸化ジルコニア、アモルファスシリカ、ナフィオン(Nafion)NR-50、ナフィオンSAC-13、またはシリカなどの担体上に堆積したナフィオンから選択することができる。
【0039】
図1に示されるように、触媒床は、蒸留カラム内の特定の領域に含まれる。例えば、触媒床を、流体媒体空間により上下に挟まれた領域で蒸留カラム内に含めることができる。または、2つ以上の触媒床が含まれる実施形態では、触媒床の各々は、蒸留カラム内の各触媒床独自の特定の領域に含まれることができ、流体媒体空間は、各触媒床間の蒸留カラム内、ならびに最上部の触媒床の上方、および最下部の触媒床の下方に画定される。触媒床(複数可)を、蒸留カラム内に固定されている布または金網などの物体上に1種以上の触媒を充填することにより、蒸留カラム内のそれぞれの特定の領域に含めることができる。例えば、1種以上の触媒は、ペレットなどの粒子に圧縮されていてもよい。使用される場合、布は、例えば、ポリエステル、綿、またはテフロン(登録商標)などの合成または有機材料で作製されたものであることができる。使用される場合、触媒を充填するための網材料としては、ステンレス鋼またはアルミニウムが挙げられる。
【0040】
例えば、1つの特定の適用例において、
図1に図示される蒸留カラムデバイスCの例示的な実施形態は、アルキルフランケトンを合成するためのいくつかの記載した反応を実行することができる。例えば、入口115で、トリグリセリドを、触媒床110の上方の、蒸留カラムデバイスC内にある流体媒体空間135に導入することができる。触媒床110では、第1の反応であるトリグリセリド加水分解が起こり、1種以上の脂肪酸およびグリセロールを形成することができる。得られたグリセロールおよび水は、出口130で除去される副生成物であることができる。次に、得られた1種以上の脂肪酸を、蒸留カラムC内で、触媒床110(例えば、流体媒体空間140は触媒床110の下方にある)と触媒床100(例えば、流体媒体空間140は触媒床100の上方にある)との間にある流体媒体空間140に供給できる。触媒床100では、第2の反応である1種以上の脂肪酸の無水物合成が起こり、1種以上の脂肪酸無水物を形成することができる。次に、得られた1種以上の脂肪酸無水物を、蒸留カラムC内で、触媒床100(例えば、流体媒体空間145は触媒床100の下方にある)と触媒床105(例えば、流体媒体空間145は触媒床105の上方にある)との間にある流体媒体空間145に供給できる。触媒床105では、第3の反応であるフラン系構造体による脂肪酸のアシル化が起こり(例えば、入口120から)、アルキルフランケトンを形成することができる。得られたアルキルフランケトンを、出口125で排出することができる。
【0041】
この第3の反応であるフラン系構造体による脂肪酸のアシル化は、いくつかのさまざまなフラン系構造体を使用して実行することができる。例えば、脂肪酸のアシル化に使用されるフラン系構造体は、以下のフラン系構造体のうちの1つであることができる。
【化2】
【0042】
特定の例示的な適用例では、脂肪酸のアシル化に使用されるフラン系構造体が、フランおよびメチルフランからなる群から選択されることが好ましい場合がある。
【0043】
さらなる例示的な実施形態では、例えば、蒸留カラムデバイスC内または別の流体接続された蒸留カラムデバイス内にも、アルキルフランケトンが関わるさらなる反応が含められてもよい。例えば、アルキルフランまたはアルキルフランアルコールを形成するための、アルキルフランケトンの第4の反応、水素化、または還元。場合により、この第4の反応は、固定触媒床上の連続フロー反応器に好適である操作条件を有することができる。さらに、いくつかのさらなる例では、第5の反応であるアルキルフランのアルコキシル化(例えば、エトキシル化、プロポキシル化)が起こり、アルコキシル化形態を形成することができる。これは、第4の反応と同じ蒸留カラム内で起こってもよく、または、別の流体接続された蒸留カラムで起こってもよい。
【0044】
蒸留カラムデバイスCの実施形態に示されるように、触媒床100、105、110は、流体媒体空間135、140、145、150を分離する。このようにして、材料は、それぞれの流体媒体空間での蒸留に送られ、それぞれの触媒床で反応した後に、蒸留のための次の流体媒体空間及び次の触媒床でのその後の反応に送られる。
【0045】
蒸留カラムデバイスA、Bの例示的な実施形態は、蒸留カラムデバイスCの例示的な実施形態に関して記載されるのと同様の数字で図示される。したがって、蒸留カラムデバイスA、Bの例示的な実施形態は、各々について図示される特徴を含み、蒸留カラムデバイスCの例示的な実施形態における対応する特徴に関して記載されるのと類似の様式で機能することができる。
【0046】
いくつかの実施形態では、不活性充填材料または蒸留トレイを、分離効率を改善するために、触媒床が存在しない蒸留カラム内の流体媒体空間のうちの1つ以上で使用することができる。生成物および副生成物の適切な分離を容易にするために、蒸留カラム内の個々のトレイサイズまたは充填材料は、具体的な実施形態に好適になるように様々であることができる。蒸留カラム充填物は、例えば、ランダム充填、グリッド充填、または構造化充填であることができる。蒸留カラム内で使用されるトレイは、例えば、バブルキャップ(bubble cap)トレイ、シーブデッキ(sieve deck)トレイ、デュアルフロー(dual flow)トレイ、バルブ(valve)トレイ、またはバッフル(baffle)トレイであることができる。
【0047】
いくつかの実施形態では、蒸留カラム内で起こる反応は、化合物を液体相に保つために比較的高圧を必要とする場合がある。そのような実施形態では、蒸留カラムを、761~18,750mmHg(2.5MPa)の範囲の圧力下で操作することができる。この高圧は、蒸留カラム内でいくつかの方法で生じさせることができる。一例として、上記高圧は、温度の上昇、および/またはガス状水素、ヘリウム、アルゴン、窒素、空気、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、もしくは蒸気の導入により供給することができる。そのような温度は、1~700℃の範囲であることができる。さらに、ある特定の実施形態では、低揮発性化合物を除去するために真空蒸留を使用することができる。例えば、真空蒸留は、約0.001mmHg~759mmHgの範囲の圧力で操作することができる。
【0048】
触媒床へのコークス化は、失活をもたらすことがあり、これは、開示される例示的なプロセスにおける触媒床の機能に悪影響を及ぼし得る。一切のコークス化を防止または除去するのを助けるために、酸化的再生は、酸化的条件下で約100~800℃の範囲の比較的高温で、1つ以上の蒸留カラム内で実施することができる。例えば、純粋な酸素、または酸素濃度5~99%の酸素と希ガス(例えば、ヘリウム、アルゴン、ネオン)との混合物は、触媒床でコークスを除去するのに有用であることができる。固体酸/塩基触媒材料は、比較的大量の水を保持することができる。場合により、酸化的再生中に、触媒床のか焼が、静的空気、強制乾燥空気、窒素、または他のガス下で100~800℃の範囲の温度で必要とされることがある。
【0049】
図2は、反応性蒸留により界面活性剤を形成する方法200の実施形態のフロー図を示す。例えば、方法200を、本明細書で既に開示された蒸留カラムデバイスA、B、Cのうちの1つで実行することができる。別の例として、方法200を、本明細書で既に開示された反応スキーム1に従って実行することができる。
【0050】
ステップ210では、トリグリセリドの加水分解が起こる。例えば、ステップ210でのこの加水分解は、蒸留カラムデバイス内の触媒床で起こることができる。例えば、場合により、トリグリセリドは、ココナッツ油であることができる。いくつかの実施形態では、ステップ210は、グリセロールおよび/または水などの、蒸留カラムからの加水分解から生じる副生成物を除去することも含んでもよい。
【0051】
ステップ220では、1種以上の脂肪酸の脱水が起こって、ココナッツ油脂肪酸無水物などの1種以上の脂肪酸無水物が形成される。例えば、ステップ220でのこの脱水は、蒸留カラムデバイス内の触媒床で起こることができる。ステップ220の脱水が起こる触媒床は、ステップ210での加水分解が起こり得る触媒床の下方にあることができ、流体媒体空間によりステップ210での加水分解が起こり得る触媒床と離間されていてもよい。
【0052】
ステップ230では、フラン系構造体による脂肪酸または脂肪酸無水物のアシル化が起こって、1種以上のアルキルフランケトンが形成される。例えば、ステップ230でのこのアシル化は、蒸留カラムデバイス内の触媒床で起こることができる。ステップ230のアシル化が起こる触媒床は、ステップ220での脱水が起こることができる触媒床の下方にあることができ、流体媒体空間によりステップ220での脱水が起こることができる触媒床と離間されていてもよい。ステップ230で使用されるフラン系構造体は、例えば、フランまたはメチルフランであることができる。例えば、脂肪酸がステップ230でアシル化される場合、脂肪酸は、脂肪酸メチルエステルであることができる。
【0053】
ステップ240では、i)酸素官能基を除去するための還元(または水素化)、およびii)エトキシル化(またはプロポキシル化)または分子の一部の酸素含有量を増加させるための他の反応のうちの1つかまたは両方が起こることができる。ステップ240での酸素の除去または増加は、方法200の他のステップと同じ蒸留カラムデバイス内で起こってもよく、または別個であるが流体接続された蒸留カラムデバイス内で起こってもよい。
【0054】
反応性蒸留により界面活性剤を形成する方法の一実施形態では、
図2に示されるステップのいくつかは、必ずしも実行される必要はない。例えば、反応性蒸留により界面活性剤を形成する1つの方法は、ステップ230のみを含むことができ、
図2に関して記載される他のステップのうちの1つ以上(例えば、ステップ210、220、および/またはステップ240)は、反応性蒸留により起こる必要はない。
【0055】
蒸留カラム(複数可)および関連する方法の例示的な特徴を記載したが、以下では、記載した蒸留カラム(複数可)により容易となるこれらの方法に関するさらなる詳細が記載される。単一の蒸留カラムまたは相互接続されるいくつかの蒸留カラムを、脂肪酸およびフランから生分解性界面活性剤を調製するためのハイスループットのプロセスであるタンデムプロセスで使用することができる。これは、トリグリセリドの加水分解、得られた脂肪酸の脱水による脂肪酸無水物の生成、および糖から供給されたフランによる酸無水物のアシル化を組み合わせて、アルキルフランケトン界面活性剤前駆体を生成する複数の反応ステップが関与することがある。さらなる反応としては、還元/水素化ステップ、ならびにアルコキシル化が挙げられる。以下に、蒸留カラム(複数可)の使用を通じて促進することができる高スループットのタンデムプロセスをさらに説明するためのいくつかの具体例を提供する。しかし、個々の適用例に応じて、他のさまざまな代替案が好適であり得ることが理解されるべきである。
【0056】
トリグリセリドの加水分解に関して、パーム油トリグリセリドをマクロポーラス樹脂(例えば、CT-165樹脂)と組み合わせ、約0.25~14時間の期間にかけて、約120~155℃の範囲の温度に加熱することができる。いくつかの例では、反応中に一定の蒸気注入を使用することができる。多くのそのような反応では、100mLのトリグリセリドあたり5グラムの触媒を、丸底フラスコで組み合わせ、恒温槽に浸漬することができる。次に、混合物を、機械的撹拌装置で撹拌し、蒸気も常に蒸気注入装置で供給することができる。脂肪酸への変換が完了後、触媒を濾過により除去することができ、残留水を加熱された真空により除去することができる。
【0057】
脂肪酸無水物の生成に関して、1つの例示的な場合では、カルボン酸を、トルエン、エチルベンゼン、またはテトラクロロエチレンを含む共沸剤の存在下で液体相中、酢酸無水物およびプロピオン無水物を含むが、これらに限定されない脱水剤と反応させることができる。連続沸騰を達成するために、この組み合わせを、100~160℃の温度範囲で加熱することができる。次に、脱水剤の対応する酸、水、および共沸剤を除去するために、圧力を低下させることができる。いくつかのそのような反応では、1部のカルボン酸を、37部の共沸剤および6部の脱水剤と、分留カラムを備えた丸底フラスコ内で組み合わせる。反応混合物は、150℃に到達するまで加熱することができ、150℃で、生成物のみが反応フラスコに残るまで圧力を低下させる。
【0058】
再び、脂肪酸無水物の生成に関して、別の例示的な場合では、脂肪酸(C3~C26)を、約5~30分の範囲の期間にかけて、約25~150℃の温度範囲で液体相中、酢酸無水物およびプロピオン酸無水物を含むが、これらに限定されない脱水剤と反応させることができる。このプロセスは、ある特定の例において、溶媒または触媒の不在下で実行することができる。非対称無水物不純物を除去するための無水物生成物のさらなる精製は、約0.1~60分の範囲の期間にかけて、約100~160℃の範囲の温度を維持しながら、約500~1mmHgの範囲の減圧下で脱水剤を連続的に除去することにより達成することができる。対称無水物生成物の完全な精製は、いくつかの例では、約0.01~1分の範囲の期間にかけて、約100~220℃の範囲の温度を維持しながら、約1~0.001mmHgの範囲の減圧下で薄膜短経路蒸発により達成することができる。そのようなある特定の反応では、等モル量の脂肪酸および脱水剤を、磁気撹拌しながら不活性雰囲気下で丸底フラスコ中で組み合わせることができる。フラスコには、Vigreux留出物カラムおよび留出物凝縮装置を取り付けることができ、対称無水物生成物への完全な変換が達成されるまで、反応物は部分真空下で加熱することができる。このとき、酸に対応する未反応の脱水剤の対応する酸を除去するために、完全な真空を適用することができる。次に、残留脂肪酸出発材料および非対称無水物を除去して精製を完了するために、短経路蒸発を使用することができる。
【0059】
さらに、脂肪酸無水物の生成に関して、さらに別の例示的な場合では、比較的高級なカルボン酸(C1~C20)は、約1~5時間の範囲の期間にかけて、酢酸金属水和物塩、Mx(OAc)x・YH2O(ここで、金属は、Co、Mn、Fe、Cr、Cu、およびPdである)を含むが、これらに限定されないある特定の金属塩の存在下で液体相中、140~220℃の温度範囲で反応することができる。このプロセスは、ヘプタン、ベンゼン、およびトルエンを含むが、これらに限定されない炭化水素溶媒中で実行することができる。これを不活性雰囲気中で実行することが有用であることがある。多くのそのような反応では、機械的撹拌装置を備えたガラス製反応器に、少量の溶媒に加えてカルボン酸および10倍モル過剰の金属酢酸塩を投入し、次に、例えば、溶剤で満たされたディーンスタークトラップを装備することができる。約200℃で約3時間激しく撹拌し、除去された水はディーンスターク管に収集でき、金属塩は濾過により除去でき、無水物生成物は溶媒および出発材料からロータリー蒸発によりさらに単離できる。
【0060】
脂肪酸無水物によるフランのアシル化に関して、本開示の実施形態に包含される方法の一部として、さまざまなプロセスが含まれてもよい。一例として、WO2017/079718およびWO2017/079719に開示されており、以前に本明細書に援用したそれらのプロセスのうちのいずれか1つ以上を使用することができる。
【0061】
ある特定の開示された実施形態を参照してさまざまな例を記載した。実施形態は、限定ではなく例示のために提示されている。当業者は、本発明の範囲から逸脱することなく、さまざまな変更、適合、および修飾を行うことができることを理解するであろう。